(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】自由空間光通信用受信機
(51)【国際特許分類】
H04B 10/112 20130101AFI20231025BHJP
G03B 19/00 20210101ALI20231025BHJP
【FI】
H04B10/112
G03B19/00
(21)【出願番号】P 2019153331
(22)【出願日】2019-08-26
【審査請求日】2022-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】浅井 孝行
【審査官】鴨川 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-009803(JP,A)
【文献】特開2000-347065(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/112
G03B 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光を2つの方向の光に分岐させるビームスプリッタと、
分岐された一方の前記光を撮影する撮影部と、
前記撮影部が撮影した前記一方の光の画像の中から信号光を抽出して、当該信号光の画像中の位置を特定する特定部と、
分岐された他方の前記光を受光する受光素子と、
前記ビームスプリッタと前記受光素子との間に配置された遮断器を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記特定部が特定した前記画像中の前記信号光の位置に基づいて、前記遮断器に、前記他方の光のうち、前記信号光を含む限定された範囲の光のみを前記受光素子に入射させ、それ以外の前記他方の光を前記受光素子に入射させないように制御
し、
前記遮断器は、マトリクス状に配置された複数のミラー素子を備えるミラー機構で構成されており、
前記ミラー素子はそれぞれ、反射面を電磁的に傾斜させることができるように構成されており、
前記制御部は、前記ミラー機構の前記各ミラー素子の反射面の傾斜角をそれぞれ制御して、前記特定部が特定した前記画像中の前記信号光の位置に対応する前記ミラー機構の前記ミラー素子又は当該ミラー素子とその近傍の前記ミラー素子で前記光を反射させて前記受光素子に入射させ、それ以外の前記ミラー素子では前記受光素子に入射しない方向に前記光を反射させるように前記遮断器を制御することを特徴とする自由空間光通信用受信機。
【請求項2】
任意の方向から入射可能な前記信号光を所定の方向に進行するように屈折させて、前記ビームスプリッタに入射させるレンズ系を備えることを特徴とする
請求項1に記載の自由空間光通信用受信機。
【請求項3】
前記ビームスプリッタと前記受光素子との間に、前記ビームスプリッタで分岐された前記他方の光を前記遮断器上に中間結像させるためのレンズ系が配置されていることを特徴とする
請求項1又は請求項2に記載の自由空間光通信用受信機。
【請求項4】
入射光を2つの方向の光に分岐させるビームスプリッタと、
分岐された一方の前記光を撮影する撮影部と、
前記撮影部が撮影した前記一方の光の画像の中から信号光を抽出して、当該信号光の画像中の位置を特定する特定部と、
分岐された他方の前記光を受光する受光素子と、
前記ビームスプリッタと前記受光素子との間に配置された遮断器を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記特定部が特定した前記画像中の前記信号光の位置に基づいて、前記遮断器に、前記他方の光のうち、前記信号光を含む限定された範囲の光のみを前記受光素子に入射させ、それ以外の前記他方の光を前記受光素子に入射させないように制御し、
前記ビームスプリッタと前記受光素子との間に、前記ビームスプリッタで分岐された前記他方の光を前記遮断器上に中間結像させるためのレンズ系が配置されていることを特徴とする自由空間光通信用受信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自由空間光通信用受信機に関し、特に航空機等に搭載可能な自由空間光通信用受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機同士の間や、航空機と地上局との間で、レーザ光等の光を用いた自由空間光通信技術の開発が進められている。そして、その中で、自由空間光通信用受信機の開発も進められている。なお、以下、自由空間光通信用受信機を単に受信機と言う場合がある。
従来、自由空間光通信用受信機では、望遠のレンズ系を用いて画角を絞ることで、受光素子に信号光のみを集光し、信号光以外の光ができるだけ入射しないようにしていた。そして、そのためには、受信機の視軸を信号光の発信源(送信機)に向け続けることが必要であり、受信機は例えばジンバル等の高性能な視軸安定機構が必要であった。
【0003】
しかし、このように構成すると受信機のコストが高騰するとともに、受信機が大型化するため、このような受信機を航空機等に複数搭載することが困難な場合があった。
そこで、近年、ジンバル等の視軸安定機構を必要とせず、コンパクトに構成可能な自由空間光通信用受信機が種々提案されている。
例えば、特許文献1、2には、受光素子の前段に、受光素子に入射する光を部分的に遮断する遮光板や液晶シャッタを設け、信号光のS/N比が高くなるように遮光板や液晶シャッタの位置を決めるように構成された受信機が記載されている。
【0004】
また、特許文献3には、送信機から赤外波長域の信号光を照射して送信させ、受信機では、入射光のうち赤外波長域の光のみを偏光させ、それを、電圧を印加すると透過する光の偏光方向が90度回転する液晶板を透過させるように構成し、液晶板に電圧を印加しない状態で撮影される信号光及び背景光(すなわち信号光以外の光)と、液晶板に電圧を印加した状態で撮影される背景光との差分をとることで信号光のみを抽出する技術が記載されている。
さらに、受信機に入射した、信号光を含む光を受光した受光素子からの出力信号にバンドパスフィルタをかけて信号光を抽出する方法もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平5-3454号公報
【文献】特開2006-148192号公報
【文献】特開平11-215062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1~3に記載された技術やバンドパスフィルタを用いる方法のいずれも、信号光を含む全ての光(すなわち信号光及び背景光)を一旦受光素子で受光することが必要になるが、受光素子のダイナミックレンジが小さいと信号が飽和してしまい、信号光と背景光とを切り分けることができない。
また、ダイナミックレンジが大きい受光素子を用いると、今度は分解能が低下する場合があり、やはり信号光と背景光との切り分けが難しくなる等の問題があった。
【0007】
本発明は、上記の点を鑑みてなされたものであり、コンパクトに構成することが可能で、かつ、背景光から信号光を確実に切り分けて受信することが可能な自由空間光通信用受信機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の問題を解決するために、請求項1に記載の発明は、自由空間光通信用受信機において、
入射光を2つの方向の光に分岐させるビームスプリッタと、
分岐された一方の前記光を撮影する撮影部と、
前記撮影部が撮影した前記一方の光の画像の中から信号光を抽出して、当該信号光の画像中の位置を特定する特定部と、
分岐された他方の前記光を受光する受光素子と、
前記ビームスプリッタと前記受光素子との間に配置された遮断器を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記特定部が特定した前記画像中の前記信号光の位置に基づいて、前記遮断器に、前記他方の光のうち、前記信号光を含む限定された範囲の光のみを前記受光素子に入射させ、それ以外の前記他方の光を前記受光素子に入射させないように制御し、
前記遮断器は、マトリクス状に配置された複数のミラー素子を備えるミラー機構で構成されており、
前記ミラー素子はそれぞれ、反射面を電磁的に傾斜させることができるように構成されており、
前記制御部は、前記ミラー機構の前記各ミラー素子の反射面の傾斜角をそれぞれ制御して、前記特定部が特定した前記画像中の前記信号光の位置に対応する前記ミラー機構の前記ミラー素子又は当該ミラー素子とその近傍の前記ミラー素子で前記光を反射させて前記受光素子に入射させ、それ以外の前記ミラー素子では前記受光素子に入射しない方向に前記光を反射させるように前記遮断器を制御することを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の自由空間光通信用受信機において、任意の方向から入射可能な前記信号光を所定の方向に進行するように屈折させて、前記ビームスプリッタに入射させるレンズ系を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の自由空間光通信用受信機において、前記ビームスプリッタと前記受光素子との間に、前記ビームスプリッタで分岐された前記他方の光を前記遮断器上に中間結像させるためのレンズ系が配置されていることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、自由空間光通信用受信機において、
入射光を2つの方向の光に分岐させるビームスプリッタと、
分岐された一方の前記光を撮影する撮影部と、
前記撮影部が撮影した前記一方の光の画像の中から信号光を抽出して、当該信号光の画像中の位置を特定する特定部と、
分岐された他方の前記光を受光する受光素子と、
前記ビームスプリッタと前記受光素子との間に配置された遮断器を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記特定部が特定した前記画像中の前記信号光の位置に基づいて、前記遮断器に、前記他方の光のうち、前記信号光を含む限定された範囲の光のみを前記受光素子に入射させ、それ以外の前記他方の光を前記受光素子に入射させないように制御し、
前記ビームスプリッタと前記受光素子との間に、前記ビームスプリッタで分岐された前記他方の光を前記遮断器上に中間結像させるためのレンズ系が配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、自由空間光通信用受信機をコンパクトに構成することが可能で、かつ、背景光から信号光を確実に切り分けて受信することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係る自由空間光通信用受信機の構成を表す図である。
【
図2】信号光等が撮影された画像の例を表す図である。
【
図3】信号光の発信、停止期間と、撮影部での画素値の読み出しタイミングと、特定部で画素値に乗じる値との関係を表す図である。
【
図5】
図4の構成例において割り出した小領域だけでなくその近傍の小領域でも光を透過させることを説明する図である。
【
図6】(A)遮断器の別の構成例等を表す図であり、(B)ミラー素子を電磁的に傾斜させることができるように構成されていることを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る自由空間光通信用受信機の実施の形態について、図面を参照して説明する。
なお、以下では、自由空間光通信用受信機を航空機に搭載し、他の航空機(例えばヘリコプタ)に搭載された送信機から照射されて送信された信号光を受信する場合について説明するが、本発明は、自由空間光通信用受信機が航空機に搭載される場合に限定されず、また、送信機が他の航空機に搭載されている場合に限定されない。
【0016】
また、以下では、自由空間光通信用受信機内での信号光の進行方向に沿って上流側、下流側という場合がある。
さらに、信号光は、可視光や赤外光等であってもよく、使用される信号光の波長は特に限定されない。また、信号光は、レーザ光源やランプ等から発信されたものであってもよく、その発信源や発信方法等も特に限定されない。
【0017】
図1は、本実施形態に係る自由空間光通信用受信機の構成を表す図である。なお、以下では、自由空間光受信機を単に受信機という場合がある。
本実施形態では、自由空間光通信用受信機1には、最も上流側に、入射光Rが平行光になるように屈折させるためのレンズ系2が設けられている。
レンズ系2は、
図1に示すように1枚のレンズで構成されていてもよく、複数の凸レンズや凹レンズ等を組み合わせて形成されていてもよい。また、レンズ系2による屈折光は必ずしも平行光でなくてもよい。
【0018】
レンズ系2の下流側には、ビームスプリッタ3が配置されている。
そして、
図1に示すように、入射光Rには発信源Tから発信された信号光Lが含まれる場合があるが、レンズ系2は、任意の方向から入射可能な信号光Lを所定の方向(
図1では図中右向きの方向)に進行するように屈折させてビームスプリッタ3に入射させるようになっている。
【0019】
ビームスプリッタ3は、入射光Rを2つの方向の光R1、R2に分岐させるようになっている。
本実施形態では、ビームスプリッタ3は、ハーフミラーで構成されており、平行光の進行方向に対して約45度の角度を有するように配置されている。そして、ビームスプリッタ3は、信号光Lを含む入射光Rの一部を透過して直進させるとともに、残りを平行光の進行方向に対して約90度方向に反射するようになっている。
【0020】
ビームスプリッタ3によって分岐された一方の光R1は、レンズ系4で屈折されて撮影部5に入射して、撮影部5で撮影されるようになっている。
撮影部5は、例えば1秒間に数十コマや数百コマの動画を撮影可能なカメラを用いることが可能であるが、静止画を撮影するカメラ等であってもよい。
【0021】
撮影部5には、コンピュータ等で構成された特定部6が接続されており、特定部6は、撮影部5が撮影した一方の光R1の画像の中から信号光Lを抽出して、当該信号光Lの画像中の位置を特定するようになっている。
以下、特定部6が信号光Lの画像中の位置を特定する方法等について、具体例を挙げて説明する。
【0022】
例えば、発信源T(
図1参照)から特定の色の信号光Lを発信するように構成し、特定部6は、
図2に示すように、撮影部5が撮影した画像Pの中で当該特定の色が撮影されている位置(画素(x,y))を信号光Lの画像中の位置として特定するように構成することが可能である。
この場合、特定の色を、自然界にあまり存在しないオレンジ色等とすれば、入射光R(一方の光R1)を撮影した画像Pの中から信号光Lを抽出しやすくなる。
【0023】
また、以下のように構成することも可能である。
例えば、
図3の上段に示すように、発信源Tから、明滅する信号光Lを発信する期間と信号光Lを発信しない期間とを時間間隔τで交互に繰り返すようにして信号光Lを発信するように構成する。なお、信号光Lを発信する期間と発信しない期間を異なる時間間隔とすることも可能である。
撮影部5は、
図3の中段に示すように、時間間隔τごとに画像Pの各画素(x,y)の各画素値Dを読み出して特定部6に送信する。なお、その際、発信源Tと撮影部5との間で同期を取る必要はない。
【0024】
そして、特定部6では、
図3の下段に示すように、あるタイミングで撮影部5から送信されてきた各画素(x,y)の各画素値Dと、次のタイミングで(すなわち先のタイミングから時間間隔τ後に)撮影部5から送信されてきた各画素(x,y)の各画素値Dに-1を乗じたものとを、各画素(x,y)ごとに加算する。
このように構成すると、例えば、空や雲などのように、明るさが時間的に変化しない、あるいは時間的に緩やかに変化するものが撮影されている画素では、先のタイミングで撮影部5から送信されてきた当該画素の画素値Dと、後のタイミングで撮影部5から送信されてきた当該画素の画素値Dとは同じ値(又はほとんど同じ値)であるため、上記の加算値は0(又はほぼ0)になる。
【0025】
しかし、信号光Lが撮影されている画素では、先のタイミングで送信されてきた当該画素の画素値Dは時間間隔τ1(
図3の上段参照)分の信号光Lに対応する値になるのに対し、後のタイミングで送信されてきた当該画素の画素値Dは時間間隔τ2分の信号光Lに対応する値でしかないため、後者に-1を乗じて前者に加算すると、加算値は正の値になるにせよ負の値になるにせよ0とは有意に異なる値になる(すなわち加算値の絶対値が0より大きな値になる。)。
そのため、特定部6で、時間的に隣接する2つのタイミングで撮影部5で撮影された画像Pの各画素(x,y)の各画素値Dに対して上記のような計算を行うことで、算出された各画素(x,y)ごとの加算値(あるいはその絶対値)に基づいて信号光Lの画像P中の位置(画素)を特定することが可能となる。
【0026】
なお、上記のτ1とτ2が同じ時間間隔あるいはほぼ同じ時間間隔になるような場合には、画像P中で信号光Lが撮影されている画素の加算値(その絶対値)がほぼ0になり、信号光Lの画像P中の位置(画素)を特定することが困難な場合があり得るが、そのような場合は、撮影部5で撮影するタイミング(すなわち各画素の各画素値Dを読み出すタイミング)を時間的に前後に振ることで、加算値が0とは有意に異なる値になるため(加算値の絶対値が0より大きな値になるため)、信号光Lの画像P中の位置(画素)を特定することができる。
【0027】
また、このように撮影部5で撮影するタイミングを時間的に前後に振っても加算値が0とは有意に異なる値にならない場合(加算値の絶対値が0より大きな値にならない場合)は、入射光R中に信号光Lは含まれていない(すなわち受信機1の受信可能範囲内に発信源Tはいない)と判定することができる。
さらに、上記のようにして信号光Lの画像P中の位置(画素)が一旦特定されれば、その後は、
図3の上段に示したように信号光Lを間欠的に発信する必要はなく、信号光Lを発信源Tから時間間隔τをあけずに連続的に発信するように構成することも可能である。そして、特定部6では、信号光Lの画像P中の位置(画素)を特定した後は、それに基づいて、その後、撮影部5で撮影される各画像P中で信号光Lを追跡していくようにして信号光Lの画像P中の位置(画素)を特定していくように構成することも可能である。
【0028】
一方、
図1に示すように、ビームスプリッタ3で分岐されたもう一方の光R2、すなわち本実施形態の場合はビームスプリッタ3であるハーフミラーを透過して直進した光R2は、レンズ系7に入射するようになっている。
なお、このレンズ系7や前述したレンズ系4、後述するレンズ系9も、1枚のレンズで構成されていてもよく、複数の凸レンズや凹レンズ等を組み合わせて形成されていてもよい。
【0029】
レンズ系7の下流側には、遮断器8が配置されており、レンズ系7に入射した光R2がレンズ系7により屈折されて遮断器8上に中間結像されるようになっている。
そして、遮断器8の下流側には、遮断器8から出射した光R3を受光素子10上に結像させるためのレンズ系9と、光信号を電気信号に変換して出力する受光素子10とが配置されている。本実施形態では、このように、ビームスプリッタ3と受光素子10との間に、少なくともレンズ系7と遮断器8とが配置されている。
【0030】
遮断器8は、前述した特定部6と接続された制御部11によって制御されるようになっている。本実施形態では、制御部11はコンピュータ等で構成されている。制御部11を特定部6と一体的に構成することも可能である。
そして、制御部11は、前述したように特定部6が特定した画像P中の信号光Lの位置(画素)に基づいて、遮断器8に、ビームスプリッタ3を透過した光R2のうち、信号光Lを含む限定された範囲の光R3のみを受光素子10に入射させ、それ以外の他方の光を受光素子10に入射させないように制御するようになっている。
以下、遮断器8の構成等を含め、具体的に説明する。
【0031】
例えば、遮断器8は、
図4に示すように、一領域ごとに光の透過及び遮断を切り替え可能な複数の小領域αに区画された液晶パネルで構成することができる。すなわち、例えば、遮断器8の小領域αは、所定の電圧が印加されるといわば透明になって光を透過し、別の所定の電圧が印加されると暗転して光を遮断するように構成されている。
なお、
図4における小領域αの遮断器8全体に対する大きさは、必ずしも実際の遮断器8における大きさを反映したものではなく、小領域αの相対的な大きさは適宜決められる。
【0032】
そして、この場合、制御部11は、撮影部5が撮影した画像Pの各画素(x,y)と遮断器8の各小領域αとの関係、すなわち遮断器8の1つの小領域αを光の遮断状態から透過状態に切り替えた場合に、ビームスプリッタ3を透過した光R2のうち、撮影部5で撮影された画像Pにおけるどの画素に対応する部分の光を透過するようになるかを小領域αごとに対応付けた関係を予め有している。
そして、制御部11は、特定部6が上記のようにして画像P中の信号光Lの位置(画素。
図2参照)を特定すると、上記の関係を参照して、特定された画像P中の信号光Lの位置(画素)に対応する遮断器8(液晶パネル)の小領域α1を割り出す。そして、その小領域α1(
図4参照)では光R2を透過させ、それ以外の小領域αでは光R2を遮断するように遮断器8を制御するように構成される。なお、
図4や後述する
図5では、ハッチングされた小領域αが光を透過する小領域であることを表しており、それ以外の各小領域αでは光は遮断される。
【0033】
このように構成すれば、制御部11は、特定部6が特定した画像P中の信号光Lの位置(画素)に基づいて、ビームスプリッタ3を透過した光R2のうち、信号光Lを含む限定された範囲の光R3のみを受光素子10に入射させるように遮断器8を制御することが可能となる。
この場合、信号光Lを含む光R3以外の、信号光Lを含まない他方の光は受光素子10に入射されない。
【0034】
なお、信号光Lを確実に受光素子10に入射させるために、例えば
図5に示すように、上記のようにして割り出した小領域α1だけでなくその近傍の小領域α(例えば当該小領域α1とその周囲の各小領域α)でも光を透過させるように構成することも可能である。
そして、この場合も、それら以外の小領域αでは光を遮断するように制御される。
【0035】
一方、遮断器8の別の構成例としては、例えば、
図6(A)に示すように、遮断器8を、マトリクス状に配置された複数のミラー素子βを備えるミラー機構で構成することも可能である。
この場合、ミラー素子βは、例えば
図6(B)に示すように、反射面sを電磁的に傾斜させることができるように構成されている。なお、
図6(B)では、ミラー素子βを1本の回動軸周りに回動させることで反射面sの傾斜角を変えることができるように構成されている場合が示されているが、ミラー素子βの反射面sの傾斜角の変え方はこのような方法に限定されない。
【0036】
そして、この場合は、制御部11は、撮影部5が撮影した画像Pの各画素(x,y)と遮断器8の各ミラー素子βとの関係、すなわち遮断器8の1つのミラー素子βの反射面sの傾斜角を変えた場合に、ビームスプリッタ3を透過した光R2のうち、撮影部5で撮影された画像Pにおけるどの画素に対応する部分の光が反射されて受光素子10に入射するようになるかをミラー素子βごとに対応付けた関係を予め有している。
そして、制御部11は、特定部6が上記のようにして画像P中の信号光Lの位置(画素。
図2参照)を特定すると、上記の関係を参照して、特定された画像P中の信号光Lの位置(画素)に対応する遮断器8(ミラー機構)の各ミラー素子β1を割り出す。そして、遮断器8(ミラー機構)の各ミラー素子βの反射面sの傾斜角をそれぞれ制御して、割り出したミラー素子β1(
図6(A)参照)では光R2を反射させてレンズ系9を介して光R3を受光素子10に入射させ、それ以外のミラー素子βでは受光素子10に入射しない方向に光R2を反射させるように遮断器8を制御するように構成される。なお、
図6(A)では、ハッチングされたミラー素子βが光を受光素子10に反射するミラー素子であることを表しており、それ以外の各ミラー素子βでは光は遮断される(すなわち受光素子10には反射されない。)。
【0037】
このように構成すれば、制御部11は、特定部6が特定した画像P中の信号光Lの位置(画素)に基づいて、ビームスプリッタ3を透過した光R2のうち、信号光Lを含む限定された範囲の光R3のみを受光素子10に入射させるように遮断器8を制御することが可能となる。
この場合、信号光Lを含む光R3以外の、信号光Lを含まない他方の光は受光素子10に入射されない。
【0038】
なお、図示を省略するが、この場合も、信号光Lを確実に受光素子10に入射させるために、上記のようにして割り出したミラー素子β1だけでなくその近傍のミラー素子β(例えば当該ミラー素子β1とその周囲の各ミラー素子β)で光を受光素子10に反射するように構成することも可能である。
そして、この場合も、それら以外のミラー素子βでは光を受光素子10に入射しない方向に反射するように制御される。
【0039】
以上のように、本実施形態に係る自由空間光通信用受信機1によれば、受信機1に入射した光R、すなわち受信機1に入射可能な全方向からの入射光Rを受光素子10で受光するのではなく、受信機1への入射光Rのうち、遮断器8で、信号光Lを含む限定された範囲の光R3のみを受光素子10に入射させ、それ以外の光は受光素子10に入射させないように構成されているため、背景光(すなわち信号光L以外の光)から信号光Lを確実に切り分けて受信することが可能となる。
【0040】
そして、本実施形態に係る自由空間光通信用受信機1では、受光素子10に信号光Lを含む限定された範囲の光R3のみが入射するため、受光素子10に入射する光の量がさほど多くない。そのため、受光素子10のダイナミックレンジが大きくなくても信号が飽和してしまうことがないため、ダイナミックレンジが大きな受光素子10を用いる必要がない。
また、受光素子10に信号光Lを含む限定された範囲の光R3のみが入射するため、受信機1では信号をS/N比が高い状態で受信することが可能となる。
【0041】
さらに、本実施形態に係る自由空間光通信用受信機1では、ビームスプリッタ3で分岐させた入射光R1を撮影した画像P中の信号光Lの位置(画素)に基づいて信号光Lの発信源Tの位置(方向)を特定するため、受信機1の視軸を信号光Lの発信源Tに向け続ける必要がない。
そのため、受信機1がジンバル等の視軸安定機構を備える必要がないため、本実施形態では、自由空間光通信用受信機1をコンパクトに構成することが可能となる。
【0042】
なお、本発明が上記の実施形態等に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更可能であることは言うまでもない。
例えば、上記の自由空間光通信用受信機1を複数備え、それらを搭載する航空機等から各方向を向くように配置すれば、発信源Tが航空機に対してどのような位置にいても、発信源Tから発信された信号光Lをいずれかの受信機1で受信することが可能となり、信号光Lを的確に受信することが可能となる。
【符号の説明】
【0043】
1 自由空間光通信用受信機
2 レンズ系
3 ビームスプリッタ
5 撮影部
6 特定部
7 レンズ系
8 遮断器
10 受光素子
11 制御部
L 信号光
P 画像
R 入射光
R1 光(分岐された一方の光)
R2 光(分岐された他方の光)
R3 光(信号光を含む限定された範囲の光)
s 反射面
α 小領域
α1 小領域(画像中の信号光の位置に対応する小領域)
β ミラー素子
β1 ミラー素子(画像中の信号光の位置に対応するミラー素子)