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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】柱の接続構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/24 20060101AFI20231025BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
E04B1/24 M
E04B1/58 505S
E04B1/58 508S
E04B1/24 L
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019161736
(22)【出願日】2019-09-05
(65)【公開番号】P2021038598
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】323005120
【氏名又は名称】センクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】青木 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】岩澤 大致
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-003448(JP,A)
【文献】特開平04-049328(JP,A)
【文献】特開2004-324129(JP,A)
【文献】米国特許第09334642(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/24
E04B 1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周側が垂直である側壁部と、開口部を有し前記側壁部の上部に接合された上部ダイアフラムと、前記側壁部の下部に接合された下部ダイアフラムとを有する容器部と、
前記容器部の下面に接合された下位柱と、
前記容器部の前記側壁部に接合された鋼製梁と、
前記開口部を介して前記容器部に挿入された上位柱と、
前記上位柱に接合された結合具と、
前記下位柱と前記上位柱とを接続するために、前記容器部に充填された充填剤と、を備え、
前記結合具には、前記上部ダイアフラムが接合されていることを特徴とする柱の接続構造。
【請求項2】
内周側が垂直である側壁部と、開口部を有し前記側壁部の上部に接合された上部ダイアフラムと、前記側壁部の下部に接合された下部ダイアフラムとを有する容器部と、
前記容器部の下面に接合された下位柱と、
前記容器部の前記側壁部に接合された鋼製梁と、
前記開口部を介して前記容器部に挿入された上位柱と、
前記上位柱に接合された結合具と、
前記下位柱と前記上位柱とを接続するために、前記容器部に充填された充填剤と、を備え、
前記結合具には、前記鋼製梁が接合されていることを特徴とする柱の接続構造。
【請求項3】
前記結合具には、スペーサを介して前記鋼製梁が接合されていることを特徴とする請求項2に記載の柱の接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱と柱とを上下方向に接続する接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
継ぎ手として機能する部材に梁を溶接し、この部材の下部と下位柱の天端とを溶接するとともに、この部材内に上位柱を挿入し、モルタル等の充填材を充填することで、下位柱と上位柱とを接続する接続構造が知られている。(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-003448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の接続構造においては、容器部に対して梁の上部から引張力が作用した際に、容器部における梁が溶接された部位の内側において、容器部が外側に開くように変形するおそれがあった。このような容器部の変形が発生すると、容器部と充填材との間に隙間ができたり、充填材そのものにひびが入ったり、充填材と上位柱との間に隙間ができたりするおそれがあった。そして、このような隙間やひびが発生することで、下位柱と上位柱とを接合する接続構造の強度が低下してしまうおそれがあった。
また、容器部が外側に変形することで、梁の位置が移動してしまうおそれもあった。
また、接続構造の強度が低下することを防止するためには、容器部を構成する各部材を頑丈なものとして、強度を高めることも考えられるが、この場合には、容器部を構成する各部材が大型化したり、重量化してしまうという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願請求項1に係る発明は、内周側が垂直である側壁部と、開口部を有し前記側壁部の上部に接合された上部ダイアフラムと、前記側壁部の下部に接合された下部ダイアフラムとを有する容器部と、前記容器部の下面に接合された下位柱と、前記容器部の前記側壁部に接合された鋼製梁と、前記開口部を介して前記容器部に挿入された上位柱と、前記上位柱に接合された結合具と、前記下位柱と前記上位柱とを接続するために、前記容器部に充填された充填剤と、を備え、前記結合具には、前記上部ダイアフラムが接合されていることを特徴とする柱の接続構造である。
本願請求項2に係る発明は、内周側が垂直である側壁部と、開口部を有し前記側壁部の上部に接合された上部ダイアフラムと、前記側壁部の下部に接合された下部ダイアフラムとを有する容器部と、前記容器部の下面に接合された下位柱と、前記容器部の前記側壁部に接合された鋼製梁と、前記開口部を介して前記容器部に挿入された上位柱と、前記上位柱に接合された結合具と、前記下位柱と前記上位柱とを接続するために、前記容器部に充填された充填剤と、を備え、前記結合具には、前記鋼製梁が接合されていることを特徴とする柱の接続構造である。
本願請求項3に係る発明は、前記結合具には、スペーサを介して前記鋼製梁が接合されていることを特徴とする請求項2に記載の柱の接続構造である。
また、別発明として以下のものでも良い。
手段1は、側壁部と、開口部を有し前記側壁部の上部に接合された上部ダイアフラムと、前記側壁部の下部に接合された下部ダイアフラムとを有する容器部と、前記容器部の下面に接合された下位柱と、前記容器部に接合された梁と、前記開口部を介して前記容器部に挿入された上位柱と、前記上位柱に設けられた結合具と、前記下位柱と前記上位柱とを接続するために、前記容器部に充填された充填剤と、を備え、前記結合具によって、前記上位柱と前記上部ダイアフラムとが接合されたことを特徴とする柱の接続構造である。
【0006】
手段2は、側壁部と、開口部を有し前記側壁部の上部に接合された上部ダイアフラムと、前記側壁部の下部に接合された下部ダイアフラムとを有する容器部と、前記容器部の下面に接合された下位柱と、前記容器部に接合された梁と、前記開口部を介して前記容器部に挿入された上位柱と、前記上位柱に設けられた結合具と、前記下位柱と前記上位柱とを接続するために、前記容器部に充填された充填剤と、を備え、前記結合具によって、前記上位柱と前記梁とが接合されたことを特徴とする柱の接続構造である。
【0007】
手段3は、スペーサを介して、前記上位柱と前記梁とが接合されたことを特徴とする手段2に記載の柱の接続構造である。
【0008】
手段4は、前記側壁部の内周側が垂直であることを特徴とする手段1乃至3のうちいずれかに記載の柱の接続構造である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、容器部に対して梁の上部から引張力が作用した場合でも、下位柱と上位柱とを接続する接続構造において隙間やひびが発生することを抑制することができ、下位柱と上位柱とを接合する接続構造の強度が低下することを防止することができる。
また、梁の位置が移動してしまうことを防止することができる。
また、容器部を構成する各部材を軽量でシンプルなものとすることが可能となる。
【0010】
加えて、梁せいの低い梁を使用した場合でも、側壁部の上端に上部ダイアフラムを接合していることで、側壁部を変形しにくいものとすることができ、もって、下位柱と上位柱とを接合する接続構造の強度が低下することを防止することができる。
【0011】
加えて、容器部内への充填材をスムーズに充填させることが可能となり、容器部内において充填材の未充填箇所が発生することを防止でき、もって、下位柱と上位柱とを接合する接続構造の強度が低下することを防止することができる。
【0012】
加えて、従来、下位柱に対して上位柱を絞るための継ぎ手として、上方に行くに従って徐々に径が細くなっていく、絞ったような形状の継ぎ手を採用し、さらに、この継ぎ手に対して、上位柱を現場溶接する場合があったが、本発明によれば、現場において溶接を行う必要がなく、また、絞ったような形状の継ぎ手とする必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の実施形態における上位柱と下位柱との接続構造を示す図である。(ア)は断面図、(イ)は平面図である。
図2】第1の実施形態における施工手順を示す図である。(ア)は断面図、(イ)は平面図である。
図3】第1の実施形態における施工手順を示す図である。(ア)は断面図、(イ)は平面図である。
図4】第1の実施形態における施工手順を示す図である。(ア)は断面図、(イ)は平面図である。
図5】第2の実施形態における上位柱と下位柱との接続構造を示す断面図である。
図6】第3の実施形態における上位柱と下位柱との接続構造を示す断面図である。
図7】第4の実施形態における上位柱と下位柱との接続構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態につき図面を参照する等して説明する。なお、本発明は、実施形態に限定されないことはいうまでもない。
【0015】
まず、第1の実施形態における各部材の形状、接合態様等について、図1を参照して説明する。図1は、上位柱(上階柱)2、下位柱(下階柱)4、梁5が接続された接続構造1を示している。上位柱2、下位柱4、梁5は、容器部3を介して接合されている。
【0016】
上位柱2は、角型鋼管からなる。上位柱2の下端内周に沿って、上位柱蓋部24が接合されている。上位柱蓋部24は、正方形状である。また、上位柱2の下端には上位柱ダイアフラム22が溶接によって接合されている。上位柱ダイアフラム22は、平面視では正方形状であり、中央部に正方形状の開口部を有している。上位柱ダイアフラム22は、上位柱2よりも一回り大きく、平面視において上位柱2よりも外側にはみ出して視認される。
上位柱2の各側面の平面視における中央部には、結合具20が溶接により接合されている。結合具20は、長方形状の底面部20aと正面視で直角三角形の垂直部20cとを有している。底面部20aは、ボルト孔20bを2つ有している。結合具20、上位柱ダイアフラム22は鋼材からなる。
【0017】
下位柱4は、角型鋼管からなる。梁5はH型鋼からなり、上側フランジ5a、ウェブ5b、下側フランジ5cを有している。
【0018】
容器部3は、上部ダイアフラム30と側壁部32と下部ダイアフラム34とを有している。
上部ダイアフラム30は、容器部3の上面をなす部材である。上部ダイアフラム30は、平面視において正方形状であり、中央部に角型鋼管からなる上位柱2を貫通させることが可能な開口部30aを有している。開口部30aは正方形状である。上部ダイアフラム30の内周縁から外周縁までの寸法は、平面視で側壁部32よりも幅が広く、側壁部32の内側から側壁部32の外側にまたがるように設けられている。上部ダイアフラム30は各辺の略中央部の内周側に2つのボルト孔30bを有している。上部ダイアフラム30は4つの辺を有しているので、ボルト孔30bは上部ダイアフラム30に計8個設けられている。
側壁部32は、容器部3の側面をなす筒状の部材であり、平面視において正方形状である。側壁部32としては、所定の長さに切断した角型鋼管を用いてもよい。
下部ダイアフラム34は、容器部3の底面をなす部材である。下部ダイアフラム34は、平面視では正方形状である。
上部ダイアフラム30、側壁部32、下部ダイアフラム34は鋼材からなる。
側壁部32の下端には下部ダイアフラム34が、側壁部32の上端には上部ダイアフラム30が溶接によりそれぞれ接合されている。
【0019】
また、下位柱4には、容器部3が接合されている。具体的には、下位柱4の天端と容器部3の下面を構成する下部ダイアフラム34とが溶接によって接合されている。
また、容器部3には、梁5が接合されている。具体的には、上部ダイアフラム30に溶接によって梁5の上側フランジ5aが接合されており、側壁部32に溶接によって梁5のウェブ5bに接合されており、下部ダイアフラム34に溶接によって梁5の下側フランジ5cが接合されている。
【0020】
本実施形態の施工手順について図1図4を参照して説明する。
図2は、上位柱2が設置される前の状態を示した図である。
まず、下位柱4に設けられた容器部3に対して上位柱2の下端を挿入する。具体的には、容器部3が有する開口部30aに、上位柱2が有する上位柱ダイアフラム22を挿入する。さらに上位柱2を下降させていくことで、上部ダイアフラム30の上面と結合具20の底面部20aの底面とが接触し、上部ダイアフラム30の上面によって、結合具20の底面部20aが保持された状態となる。このようにして、上位柱2のレベルが決定される。
【0021】
図3は、上位柱2の設置(仮置き)が行われた状態を示している。上位柱2の設置が行われた状態において、下部ダイアフラム34と上位柱ダイアフラム22とは所定距離離間しており、接触はしていないが、これは、下部ダイアフラム34と上位柱ダイアフラム22との間に無収縮モルタル8をスムーズに充填させるためである。
【0022】
この状態において、結合具20に設けたボルト孔20bと上部ダイアフラム30に設けたボルト孔30bに高力ボルト6を挿入し、高力ボルト6をナット7により締結することで、結合具20と上部ダイアフラム30とが接合されて、容器部3に対して上位柱2が固定される。本実施形態においては、計8か所が高力ボルト6とナット7によって接合される。図4は、このようにして、結合具20と上部ダイアフラム30の接合が行われた状態を示している。
【0023】
その後、上部ダイアフラム30と上位柱2との隙間(開口部30a)から、容器部3内に、上部ダイアフラム30の上面と同じレベルまで無収縮モルタル8を充填し、養生することで、容器部3と上位柱2とが強固に結合され、下位柱4に対する上位柱2の接続が完了する。図1は、このようにして、下位柱4に対する上位柱2の接続が完了した状態を示している。なお、上位柱2の下端内周に沿って、上位柱蓋部24が接合されているので、上位柱2内に無収縮モルタル8は浸入しない。
【0024】
このような構成によれば、上位柱2に対して上方に引張力が作用したり、上位柱2に対して曲げモーメントが作用したときに、上位柱ダイアフラム22と上部ダイアフラム30との間に圧縮力が作用することになるものの、上位柱ダイアフラム22と上部ダイアフラム30との間に位置している無収縮モルタル8がこの圧縮力に対して対抗する(図1(ア)の矢印Aを参照)とともに、無収縮モルタル8と側壁部32の内周との間の固着力や摩擦力がこの圧縮力に対して対抗するため、上位柱2と下位柱4とを接続する接続構造が十分に確保される。
【0025】
また、梁5の特に上部(上側フランジ5a)から容器部3(上部ダイアフラム30)に対して引張力が作用したとしても、上部ダイアフラム30に加えて、結合具20を介して上部ダイアフラム30に結合されている上位柱2もこの引張力に対抗する部材として機能することとなる。これにより、容器部3に対して梁5の上部から引張力が作用した場合でも、下位柱4と上位柱2とを接続する接続構造において隙間やひびが発生することを抑制することができ、下位柱4と上位柱2とを接合する接続構造の強度が低下することを防止することができる。また、梁5の位置が移動しまうことを防止することができる。また、容器部3を構成する各部材を軽量でシンプルなものとすることが可能となる。
【0026】
また、側壁部32を板状とし、側壁部32の内周側が垂直となっていることで、容器部3内に無収縮モルタル8をスムーズに充填することが可能となり、容器部3内における充填性が高まる。一方で、側壁部32を板状としていることで、梁5から側壁部32に引張力が作用したときに、側壁部32が変形しやすくなってしまうものの、本実施形態においては、側壁部32の上端に上部ダイアフラム30を接合していることで、側壁部32を変形しにくくしている。また、上部ダイアフラム30に加えて、結合具20を用いていることで、側壁部32をより変形しにくいものとしている。
【0027】
また、各ダイアフラムの溶接作業については鉄工所等において行い、現場では、高力ボルト6とナット7による接合及び無収縮モルタル8の打設を行うようにすることで、上位柱2と下位柱4の接続において、溶接は行う必要がなくなるため、施工を効率化できる。
【0028】
また、上位柱蓋部24を設けて、上位柱2内に無収縮モルタル8が浸入しないようにしていることで、無収縮モルタル8の使用量を軽減することが可能となる。
【0029】
加えて、従来、下位柱に対して上位柱を絞るための継ぎ手として、上方に行くに従って徐々に径が細くなっていく、絞ったような形状の継ぎ手を採用し、さらに、この継ぎ手に対して、上位柱を現場溶接する場合があったが、本実施形態によれば、現場において溶接を行う必要がなく、また、絞ったような形状の継ぎ手とする必要がない。
【0030】
〔第2の実施形態〕
図5を参照して、本発明の第2の実施形態を説明する。なお、第1の実施形態と共通する部分については、説明を省略する。
【0031】
第2の実施形態においては、第1の実施形態と比べて、結合具20を水平方向に横長にするとともに、第1の実施形態において上部ダイアフラム30に設けていたボルト孔30bに代えて、上側フランジ5aにボルト孔5dを設けている。施工においては、容器部3内へ上位柱2を下降させたのち、ボルト孔5dとボルト孔20bに高力ボルト6を挿入し、高力ボルト6をナット7により締結することで、上側フランジ5aと結合具20を接合する。
【0032】
このような構成とすることで、梁5から作用する引張力を、上部ダイアフラム30と結合具20に分散させることができ、側壁部32を変形しにくいものとすることができる。
また、第1の実施形態においては、高力ボルト6とナット7の締結に際し、開口部30a内に手を入れて高力ボルト6の挿入を行う必要があったが、第2の実施形態においては、高力ボルト6とナット7の締結位置を容器部3の外側としたことで、高力ボルト6の挿入作業を簡単に行うことができる。
【0033】
また、第1の実施形態においては、上位柱2に曲げモーメントが作用した場合に、無収縮モルタル8内に位置する高力ボルト6を中心に、無収縮モルタル8にひび割れが発生するおそれがあったが、第2の実施形態においては、高力ボルト6が容器部3の外側において締結されているため、上位柱2に曲げモーメントが作用した場合でも、このようなひび割れが発生することを防止できる。
【0034】
〔第3の実施形態〕
図6を参照して、本発明の第3の実施形態を説明する。なお、第1及び第2の実施形態と共通する部分については、説明を省略する。
【0035】
第3の実施形態においては、第1の実施形態と比べて、梁5の梁せいが低く、上側フランジ5aが側壁部32に接合されている。
このように、梁せいが低い梁5を上部ダイアフラム30ではなく容器部3に接合した場合でも、側壁部32の上端に上部ダイアフラム30を接合していることで、側壁部32を変形しにくいものとすることができる。
【0036】
〔第4の実施形態〕
図6を参照して、本発明の第4の実施形態を説明する。なお、第1乃至第3の実施形態と共通する部分については、説明を省略する。
【0037】
第4の実施形態は、第2の実施形態における梁5の梁せいを低く変形した実施形態であって、梁せいを低く変更することに伴って、スペーサ40を結合具20と上側フランジ5aとの間に配置している。スペーサ40は、ボルト孔40aを有し、鋼材からなる。スペーサ40の厚さは上部ダイアフラム30の厚さと同一である。また、梁5は側壁部32の側部上端及び上部ダイアフラム30の下面のうちのいずれか一方または双方に溶接により接合されている。施工においては、容器部3内へ上位柱2を下降させたのち、ボルト孔5d、ボルト孔40a、ボルト孔20bに高力ボルト6を挿入し、高力ボルト6をナット7により締結することで、スペーサ40を介して、上側フランジ5aと結合具20とを接合する。これにより、結合具20の下面とスペーサ40の上面、スペーサ40の下面と上側フランジ5aの上面とが摩擦接合によって接合された状態となる。また、結合具20の下面と上部ダイアフラム30の上面が摩擦接合によって接合された状態となる。
【0038】
このように、梁5の梁せいが低く、上部ダイアフラム30と結合具20とを直接接合できない場合であっても、梁5から作用する引張力を、上部ダイアフラム30と結合具20に分散させることができ、側壁部32を変形しにくいものとすることができる。
【0039】
〔その他の実施形態〕
本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。例えば以下のようなものも含まれる。
【0040】
第1の実施形態においては、上位柱2の下端に上位柱蓋部24を設けていたが、上位柱蓋部24を設けずに、上位柱2内に無収縮モルタル8を充填するようにしてもよい。この場合、結合具20の底面部20aの上面と同じレベルまで、あるいは、結合具20の垂直部20cの上端と同じレベルまで、無収縮モルタル8を充填するとよい。このような構成とすることで、結合具20に対する梁5からの圧縮力によって、上位柱2が変形することを防止することが可能となる。
【0041】
第1の実施形態においては、上位柱2の下端に上位柱蓋部24を設けることで上位柱2の下端から上位柱2内に無収縮モルタル8が浸入しないようにしていたが、上位柱蓋部24を設置せず、開口部を有さない上位柱ダイアフラム22のみによって、上位柱2の下端から上位柱2内に無収縮モルタル8が浸入しないようにしてもよい。
【0042】
第1の実施形態においては、結合具20を用いて上位柱2と容器部3とを接続していたが、結合具20、高力ボルト6、ナット7を用いずに、無収縮モルタル8のみによって、上位柱2と容器部3とを接続するようにしてもよい。
【0043】
第1の実施形態においては、容器部3に対して梁5を4つ接合していたが、接合する梁5の個数は、4つに限られるものではなく、1~3個としてもよい。また、梁5を2つ接合する際には、梁5の接合態様を、平面視における容器部3の上辺と右辺、あるいは、上辺と下辺のように、梁5同士が垂直となる位置に接合してもよいし、梁5同士が同一線上に位置するように接合してもよい。梁5同士が同一線上に位置する場合には、上部ダイアフラム30が双方の梁5によって逆方向に引っ張られることで、梁5による引張力を相殺することができる。
【0044】
第1の実施形態における接続構造と同じ構造を、連続する複数階に設けてもよい。例えば、1つの柱材における上端を下位柱4の上端と同じ構造にするとともに、この柱材の下端を上位柱2の下端と同じ構造とし、この柱材を上下方向に複数接続してもよい。
【0045】
第1の実施形態においては、上位柱2と下位柱4として角型鋼管を用いていたが、円形鋼管を用いてもよい。この場合、上位柱ダイアフラム22、上位柱蓋部24、上部ダイアフラム30、開口部30a、側壁部32、下部ダイアフラム34を平面視で円形にするとよい。
【0046】
第1の実施形態においては、上位柱2と下位柱4を同径としていたが、下位柱4よりも上位柱2の径が小さくなるようにしてもよい。
【0047】
第1の実施形態において高力ボルト6を用いていたが、高力ボルト6として、トルシア型高力ボルトを用いるようにしてもよい。特に第1の実施形態のように、高力ボルト6の頭部が容器部3内に位置する場合には、高力ボルト6とナット7の共周りを防止するために、ナット7の締結の際に高力ボルト6の頭部をレンチなどの工具で保持しておく必要があるが、高力ボルト6としてトルシア型高力ボルトを採用し、結合具20の底面部20aの上面において、ナットとの締結を行うようにした場合には、高力ボルト6の頭部を保持することなく、ナット7の締結を行うことが可能となる。
【0048】
いずれの実施形態における各技術的事項を他の実施形態に適用して実施例としても良い。
【符号の説明】
【0049】
1 接続構造
2 上位柱
3 容器部
4 下位柱
5 梁
5a 上側フランジ
5b ウェブ
5c 下側フランジ
5d ボルト孔
6 高力ボルト
7 ナット
8 無収縮モルタル
20 結合具
20a 底面部
20b ボルト孔
20c 垂直部
22 上位柱ダイアフラム
24 上位柱蓋部
30 上部ダイアフラム
30a 開口部
30b ボルト孔
32 側壁部
34 下部ダイアフラム
40 スペーサ
40a ボルト孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7