(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】トレーラ車のアンダーリフト構造
(51)【国際特許分類】
B60P 3/12 20060101AFI20231025BHJP
【FI】
B60P3/12
(21)【出願番号】P 2019177123
(22)【出願日】2019-09-27
【審査請求日】2022-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】514283711
【氏名又は名称】株式会社ロードサービス
(74)【代理人】
【識別番号】100091465
【氏名又は名称】石井 久夫
(72)【発明者】
【氏名】奥本 和夫
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-094182(JP,A)
【文献】登録実用新案第3213562(JP,U)
【文献】特開平10-329599(JP,A)
【文献】特開2002-036941(JP,A)
【文献】特開2006-096204(JP,A)
【文献】特表昭59-501403(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 3/12
B60D 1/155
B66F 7/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレーラ車
(1)の後方に延びる荷台フレーム
(3)の後部に、上端が前後に揺動可能に軸支され、起立して取り付けられる垂直フレーム
(20)と、該垂直フレーム
(20)の上端に一端が接続され、他端が前方に延びて荷台フレームに接続される、該垂直フレーム上端を前後に揺動させるための駆動シリンダ
(40)と、該垂直フレーム
(20)に折り畳んで起立位置に収納され、使用時には起立位置から水平位置まで傾倒し、後方に伸長させる伸縮式牽引アーム
(30)とからなり、
前記伸縮式牽引アーム(30)を後方に傾倒し、被牽引車の前部又は後部バンパー下からタイヤまでアーム先端の車載部を挿入し、前記駆動シリンダによる垂直フレームの前方揺動によって伸長した
前記伸縮式牽引アーム(30)で被牽引車両を牽引できる状態にリフトアップするアンダーリフト10において、
前記
伸縮式牽引アーム(30)が薄型幅広形態に設計されるとともに、それに伴い、前記垂直フレーム
(20)幅をほぼ牽引アーム幅に合わせ、幅広となし、さらに、前記垂直フレーム
(20)上端には、左右側面に一対の作動補助フレーム
(22)、(22)を、垂直フレーム間隔をおいて荷台フレーム
(3)の前方に突出するように設け、該左右一対の各補助フレーム
(22)の突出する先端に前記駆動シリンダ
(40)の上端を接続して複数のシリンダ駆動形式とするとともに、前記やや上向きに突出する作動補助フレーム
(22)に対し直角又はほぼ直角の角度をなしてほぼ垂下するように駆動シリンダ(40)を配置し、前記駆動シリンダ
(40)の駆動力
を前記作動補助フレーム
(22)を介して牽引アーム30に付与してリフトする構造となすとともに、
前記作動補助フレーム(22)が垂直フレーム
(20)とほぼ等しい長さで、水平線に対し15~30度の上向き角度をなして前記垂直フレーム
(20)の上端から前方に突出し、
前記駆動シリンダ
(40)の駆動軸線が、前記作動補助フレーム
(22)と駆動シリンダ
(40)との枢支点
(41)と前記垂直フレーム
(20)と牽引アーム
(30)との枢支点(30a)とがなす揺動軸に対し直交又はほぼ直交し、アンダーリフト
(10)での被牽引車のリフト時に最後尾タイヤを支点とし、支点前方車体荷重と支点後方のリフト荷重とをバランスさせることを特徴とするアンダーリフト構造。
【請求項2】
前記
伸縮式牽引アーム(30)は低床被牽引車を吊り上げ補助することなく、前部又は後部バンパー下からタイヤまでアーム先端の車載部を挿入可能な、高さ厚み200mm以下、特に150mm前後と薄型で、幅650mm前後と左右に広がる幅広に設計されることを特著とする請求項1記載のアンダーリフト構造。
【請求項3】
前記
伸縮式牽引アーム(30)は基礎アーム
(31)と、中間アーム
(32)と、先端アーム
(33)とから三段テレスコープ式に伸縮可能に構成されてなり、前記基礎アーム
(31)は、アーム
(31a),(31a)が間隔をおいて並列配置されてなり、前記中間アーム
(32)は、該基礎アームの一対の断面矩形アーム
(31a)、(31a)の各々にスライド可能に内装され、第1伸縮ロッド
(32b)で後方に伸縮可能な一対の断面矩形アーム
(32a)、(32a)からなり,前記先端アームは該中間アーム
(32)の一対の断面矩形アームの各々(32a)、(32a)にスライド可能に内装され、一対の第2伸縮ロッド
(33b)、(33b)で後方に伸縮する一対の断面矩形アーム
(33a)、(33a)からなり、更に、前記先端アーム
(33)はその先端に車載部を左右に揺動可能に取り付けてなることを特徴とする請求項1に記載のアンダーリフト構造。
【請求項4】
前記
伸縮式牽引アーム(30)の先端アーム
(33)及び中間アーム
(32)は、左右一対のアームが全長に渡って長手方向に延びる鋼製縦桟で補強され、縮小時およそ2000mm前後から伸長時およそ3600mm前後まで伸縮可能で、縮小状態でおよそ13000kgから伸長状態でおよそ7000kgの荷重で±10°のアーム傾斜角度をなすように設計される請求項1記載のアンダーリフト構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数のシリンダ駆動形式を採用するトレーラ車のアンダーリフト構造、特に薄型幅広牽引アームをリフトアップするに適するアンダーリフト構造に関する。
【背景技術】
【0002】
故障車の牽引配送には後部にアンダーリフトを有するトレーラ車が使用される。この種トレーラ車は、
図7に示すように、トレーラ車1の運転台2の後方に延びる荷台フレーム3の後部に垂直フレーム20の上端が前後に揺動可能に軸支され、起立して取り付けられる。そして、該垂直フレーム20の上端には、駆動シリンダ40の一端が取り付けられ、前方に延びて他端を荷台フレーム3に取り付け、前記垂直フレーム20を前後に揺動させる。前記垂直フレーム20には牽引アーム30が折り畳んで起立位置に収納され、使用時には
図8に示すように、伸縮牽引アーム30が起立位置から水平位置まで傾倒し、後方に伸長させ、被牽引車の前部又は後部バンパー下からタイヤまでアーム先端の車載部を挿入し、被牽引車両を牽引できる状態までリフトアップさせる。これがアンダーリフト10である。このアンダーリフト10は、後方に延びる牽引アーム30の後端に車載部を有し、牽引アーム30全体は被牽引車両をつり挙げる時の、過大な荷重に耐えるように、堅牢に構成される。そのため、ほぼ高さ厚みが400mmとなるほど頑丈である。したがって、車高が低い場合はジャッキ等で車体を持ち上げてバンパー下からタイヤ位置までアームの先端を差し入れる必要があった。また、牽引アーム30は被牽引車両の車重を受けるため、アンダーリフトの垂直アーム20を駆動シリンダ40で前方に傾動させるため、垂直アーム20から荷台前方に延びて配置するが、駆動シリンダの垂直フレームに作用する分力を大きくするためにはなるべく、前方に延在させる必要があり、構造的負担が大きくなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、複数の駆動シリンダを用いてコンパクトなアンダーリフト構造を実現し、しかも牽引アームを薄型とし、車高の低い被牽引車であっても、被牽引車の前部又は後部バンパー下からタイヤまでアーム先端の車載部を挿入可能な薄型牽引アームを有するアンダーリフト構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、トレーラ車1の運転台2の後方に延びる荷台フレーム3の後部に軸支され、起立して取り付けられる垂直フレーム20と、該垂直フレーム20の上端に取り付けられ、該垂直フレームを前後に揺動させるための駆動シリンダ40と、該垂直フレーム20に折り畳んで起立位置に収納され、使用時には起立位置から水平位置まで傾倒し、後方に伸長させる伸縮牽引アーム30とからなり、被牽引車の前部又は後部バンパー下からタイヤまでアーム先端の車載部を挿入し、被牽引車両を牽引できる状態まで吊り上げるアンダーリフト10において、
前記牽引アーム30が薄型幅広形態に設計されるとともに、それに伴い、前記垂直フレーム20幅をほぼ牽引アーム幅に合わせ、幅広となし、さらに、垂直フレーム上端には、左右側面に一対の作動補助フレーム22、22を、垂直フレーム間隔をおいて荷台フレーム3の前方に突出するように設け、該左右一対の各補助フレーム22の突出する先端に前記駆動シリンダ40の上端を接続して複数のシリンダ駆動形式とするとともに、前記やや上向きに突出する作動補助フレームに対し直角又はほぼ直角の角度をなしてほぼ垂下するように駆動シリンダ40を配置し、前記駆動シリンダ40の駆動力を前記補助作動フレーム22を介して牽引アーム30に付与してリフトする構造となすことを特徴とするアンダーリフト構造とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、アンダーリフト構造の垂直フレーム上端には、左右側面に一対の作動補助フレーム22、22が設けられ、複数のシリンダでの駆動形式となるので、コンパクトで大きな駆動力を得ることができる。しかも、本発明によれば、駆動シリンダ40の引っ張りFは、作動補助フレーム22に対し駆動シリンダ40が直角又はほぼ直角の角度をなしてほぼ垂下する(駆動シリンダの駆動軸と作動補助フレームの作動軸とが直角又はほぼ直角の角度をなす)ので、駆動シリンダ40の駆動力が前記補助作動フレーム22を介して牽引アーム30に付与され、リフトする構造となる。したがって、前記駆動シリンダ40の駆動軸線は前記作動補助フレーム22と駆動シリンダ40との枢支点22aと前記垂直フレーム20と牽引アーム30との枢支点30aとがなす揺動軸に対し直交、又はぼぼ直交することになり、駆動シリンダ40の駆動力が牽引アームに効率よく伝達されることになる。特に、前記作動補助フレーム22を垂直フレーム20とほぼ等しい長さとし、水平線に対し15~30度の上向き角度をなすと、駆動シリンダ40の駆動力の牽引アームへの伝達効率は最大となる。
【0007】
また、前記伸縮牽引アーム30を低床被牽引車を吊り上げ補助することなく、前部又は後部バンパー下からタイヤまでアーム先端の車載部を挿入可能な、高さ厚み200mm以下、特に150mm前後と薄型となし、幅650mm前後と左右に広がる幅広に設計される場合は、一対の作動補助フレーム22、22を介して、幅広の牽引アームをリフトする複数のシリンダ駆動形式は牽引アームの左右両側にリフト力を分散させて伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係るアンダーリフト構造を収納して備えるトレーラ車の側面図である。
【
図2】
図1のアンダーリフト構造の使用時の側面図である。
【
図3】本発明のアンダーリフト構造の全体の斜視図である。
【
図4】本発明のアンダーリフト構造の縮小時の牽引アームの斜視図である。
【
図5】本発明のアンダーリフト構造の伸長時の牽引アームの斜視図である。
【
図6】本発明のアンダーリフト構造の伸長時の牽引アームの平面図で、そのA-A線断面図は先端アームの内部構造を示し、B-B線断面図は中間アームの内部構造を示す。
【
図7】アンダーリフト構造の駆動シリンダを荷台フレーム上部に付けた場合の牽引アームの収納時のトレーラ車の側面図である。
【
図8】
図7のアンダーリフト構造の使用時の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のアンダーリフト構造の具体的態様を図面に基づいて説明する。
本発明のトレーラ車1には、
図1に示すように、運転台2の後方に延びる荷台フレーム3の後部に、アンダーリフト10が取り付けられる。アンダーリフト10は、上端が前後に揺動可能に軸支され、起立して取り付けられる垂直フレーム20と、該垂直フレーム20の上端に一端41が接続され、他端が前方に延びて荷台フレーム3に接続される、該垂直フレーム上端を前後に揺動させるための駆動シリンダ40と、該垂直フレーム20に折り畳んで起立位置に収納され、
図2に示すように、使用時には起立位置から水平位置まで傾倒し、後方に伸長させる伸縮式牽引アーム30とからなる。
【0010】
本発明では、前記牽引アーム30を、後方に傾倒し、伸長させて被牽引車の前部又は後部バンパー下からタイヤまでアーム先端の車載部を挿入できるように、薄型かつ幅広に設計される。具体的には、前記牽引アーム30は低床被牽引車を吊り上げ補助することなく、前部又は後部バンパー下からタイヤまでアーム先端の車載部を挿入可能な、高さ厚み200mm以下、特に150mm前後と薄型で、幅650mm前後と左右に広がる幅広に設計される。
【0011】
前記牽引アーム30が薄型幅広形態に設計されるに伴い、
図3に示すように、前記垂直フレーム20はその幅をほぼ牽引アーム幅に合わせ、幅広となし、その下端21,21を荷台フレームに軸支持して前後に揺動可能に連結する。そして、垂直フレーム20の上端には、左右側面に一対の作動補助フレーム22、22を、垂直フレーム間隔をおいて荷台フレーム3の前方に突出するように設け、該左右一対の各補助フレーム22の突出する先端に前記駆動シリンダ40の上端41の各々を接続して複数のシリンダ駆動形式とする。駆動シリンダ40は前方やや上向きに突出する作動補助フレームに対し直角又はほぼ直角の角度をなしてほぼ垂下させ、下端42、42を荷台フレームに接続する一方、各駆動シリンダ40を油圧コントローラ43、43の制御にて下方に引っ張って垂直フレーム20を前方に揺動させる。他方、垂直フレーム20の反対側には前記牽引アーム30が起立して収納されている。牽引アーム30は基礎アーム31の取付フランジ30aを介して垂直フレーム20に回動可能に取り付けてあり、その基礎アーム31から、中間アーム32及び先端アーム31がテレスコープ式に伸縮し、先端には載置台34が左右揺動可能に取り付けてある。
【0012】
詳しくは、
図4から
図6に示される。前記伸縮牽引アーム30は基礎アーム31と、中間アーム32と、先端アーム33とから三段テレスコープ式に伸縮可能に構成されてなり、前記基礎アーム31は、アーム31a,31aが間隔をおいて並列配置され、前記中間アーム32は、該基礎アームの一対の断面矩形アーム31a,31aの各々にスライド可能に内装され、第1伸縮ロッド32bで後方に伸縮可能な一対の断面矩形アーム32a,32aからなる。前記先端アーム33は該中間アーム32の一対の断面矩形アームの各々32a,32aにスライド可能に内装され、一対の第2伸縮ロッド33b、33bで後方に伸縮する一対の断面矩形アーム33a,33aからなる。更に、前記先端アーム33はその先端に車載部を左右に揺動可能に取り付けてなる。特に、前記伸縮牽引アーム30では、
図6A-A線、B-B線断面図に示すように、その先端アーム33及び中間アーム32は、左右一対のアームが全長に渡って長手方向に延びる鋼製縦桟で補強され、縮小時およそ2000mm前後から伸長時およそ3600mm前後まで伸縮可能で、縮小状態でおよそ13000kgから伸長状態でおよそ7000kgの荷重で±10°のアーム傾斜角度をなすように設計される。
【0013】
前記作動補助フレーム22が垂直フレーム20とほぼ等しい長さで、水平線に対し15~30度の上向き角度をなして前記垂直フレーム20の上端から前方に突出し、前記駆動シリンダ40の駆動軸線が前記作動補助フレーム22の作動軸線とほぼ直交し、その結果、前記作動補助フレーム22と駆動シリンダ40との枢支点と前記垂直フレーム20と牽引アーム30との枢支点30aとがなす揺動軸に対しほぼ直交するので、駆動シリンダ40の駆動力の伝達効率は前記作動補助フレーム22を介して牽引アームに対し、最大となって作用することになる。
【符号の説明】
【0014】
1:トレーラ車
3:荷台フレーム
10:アンダーリフト
20:垂直フレーム
30:牽引アーム
40:駆動シリンダ