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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】トイレットロール包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 75/62 20060101AFI20231025BHJP
【FI】
B65D75/62 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019181736
(22)【出願日】2019-10-01
(65)【公開番号】P2021054520
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富岡 慎忠
【審査官】植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-116302(JP,A)
【文献】特開2019-081568(JP,A)
【文献】特開平08-217061(JP,A)
【文献】特開2004-269009(JP,A)
【文献】実開昭54-028618(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 67/00-79/02
B65D 5/54
B65D 85/67-85/677
B65D 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製フィルムで個包装された複数個のトイレットロールが、
外装フィルムによってガセット包装されたトイレットロール包装体であって、
トイレットロールがガセット包装における上部融着部と下部融着部との間において周面突合せで二列に配列されているとともに、前記上部融着部及び下部融着部がトイレットロールの周面に対向する位置にあり、
外装フィルムの最も上部融着部側に位置する一対のトイレットロールの隣接位置よりも上部融着部側に位置する範囲に、
易裂開線が上下方向に沿って延在するように配された基端部と、この基端部の中央部の側部側に近接した位置であって前記基端部の端に連続しない位置から易裂開線が下部融着部方向に向かうにしたがって離間距離が漸次拡開するように一対配されてなる拡開部とを有する、上部融着部側に向かって略凸形状の開封開始部が形成されている、
ことを特徴とするトイレットロール包装体。
【請求項2】
外装フィルムのトイレットロールの端面に対面する面から上部融着部に至る面の範囲に開封開始部が形成されている請求項1記載のトイレットロール包装体。
【請求項3】
外装フィルムのトイレットロールの端面に対面する面間にある側面に開封開始部が形成されている請求項1記載のトイレットロール包装体。
【請求項4】
拡開部を構成する易裂開線の下部側端に連続又は近接する位置から下部融着部側に向かって延在するように一対の易裂開線を配してなる帯状の取出口形成補助部を有する、請求項1~3記載のトイレットロール包装体。
【請求項5】
拡開部を構成する易裂開線の下部側端に連続又は近接する位置から下部融着部側に向かって延在するように一対の易裂開線を配してなる帯状の取出口形成補助部を有し、
前記取出口形成補助部を構成する各ミシン目が、二列に配される各列のトイレットロール群上に位置しているとともに、その幅がトイレットロールの直径の0.3~1.2倍である、請求項1又は2記載のトイレットロール包装体。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のトイレットロールをフィルム包装したトイレットロール包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
長尺のトイレットペーパーをロール状にしたトイレットロールは、トイレと一体化したバスルームで使用されたり、汎用性の高いポップアップ式のティシュペーパー製品やキッチンペーパーロールの代替として、キッチンやリビング等において使用されたりすることが多々ある。
【0003】
一方、トイレットロールは、購入後に複数個を保管しておくことができるように、複数個を纏めて外装フィルムによって包装されている。
【0004】
他方で、トイレットロールの包装体の多くは、複数個のトイレットロールをそのままフィルム包装しているが、このようなトイレットロールをそのままフィルム包装した製品は、上記のトイレ一体のバスルームで保管すると開封後に残る一部の未使用のトイレットロールにシャワー等の水がかかるおそれがあり、また、キッチンやリビングで保管するに大きく、また、個々を取り出して保管するには見栄えがわるいという問題があった。
【0005】
そこで、トイレットロールを複数個纏めた包装体の中には、上記のバスルーム、キッチンやリビング等で使用しやすいように、トイレットロールを個包装したうえで、さらに集合包装して製品化することがある。しかしながら、このような製品はトイレットロールが二重に包装されているため開封に手間がかかり取り出しにくい。
【0006】
そこで、下記特許文献1のように、上部融着部と下部融着部との間に個包装したトイレットロールを周面突合せで二列に配列してガセット包装し、上部融着部側が頂部側となるようU字形もしくは略V字形にミシン目を配してなる開封開始部を設け、開封開始部から内包されるトイレットロールを取り出しやすい開口が形成されるようにしたトイレットロール包装体が知られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2019-116302号公報
【文献】特開2001‐294264号公報
【文献】実登第2591646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示される包装体のように、上部融着部と下部融着部との間に個包装したトイレットロールを周面突合せで二列に配列した形態のガセット包装において、U字形もしくは略V字形に単にミシン目を配して開封開始部を形成すると、商品荷扱時の衝撃や、上部融着部側を持って持ち上げるたり、持ち運んだりする際に、ミシン目が意図せずミシン目が裂開して開封してしまうことがあった。
【0009】
そこで、本発明の主たる課題は、個包装されたトイレットロールがさらに集合包装されたトイレットロール包装体において開封しやすく個々のトイレットロールを取り出しやすいものとするとともに、未使用時の取り扱いの際に意図せず開封されがたいようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための手段は次記のとおりである。
【0011】
その第一の手段は、
樹脂製フィルムで個包装された複数個のトイレットロールが、
外装フィルムによってガセット包装されたトイレットロール包装体であって、
トイレットロールがガセット包装における上部融着部と下部融着部との間において周面突合せで二列に配列されているとともに、前記上部融着部及び下部融着部がトイレットロールの周面に対向する位置にあり、
外装フィルムの最も上部融着部側に位置する一対のトイレットロールの隣接位置よりも上部融着部側に位置する範囲に、
易裂開線が上下方向に沿って延在するように配された基端部と、この基端部の側部側に近接する位置から、易裂開線が下部融着部方向に向かうにしたがって離間距離が漸次拡開するように一対配されてなる拡開部とを有する、上部融着部側に向かって略凸形状の開封開始部が形成されている、
ことを特徴とするトイレットロール包装体である。
【0012】
第二の手段は、
外装フィルムのトイレットロールの端面に対面する面から上部融着部に至る面の範囲に開封開始部が形成されている上記第一の手段に係るトイレットロール包装体である。
【0013】
第三の手段は、
外装フィルムのトイレットロールの端面に対面する面間にある側面に開封開始部が形成されている上記第一の手段に係るトイレットロール包装体である。
【0014】
第四の手段は、
拡開部を構成する易裂開線の下部側端に連続又は近接する位置から下部融着部側に向かって延在するように一対の易裂開線を配してなる帯状の取出口形成補助部を有する、上記第一~第三の手段に係るトイレットロール包装体である。
【0015】
第五の手段は、
前記取出口形成補助部を構成する各ミシン目は二列に配される各列のトイレットロール群上に位置しているとともに、その幅がトイレットロールの直径の0.3~1.2倍である、上記第一~第四の手段に係るトイレットロール包装体である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、個包装されたトイレットロールがさらに集合包装されたトイレットロール包装体において、開封しやすく個々のトイレットロールを取り出しやすいものとするとともに、未使用時の取り扱いの際に意図せず開封されがたいようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係るトイレットロール包装体の斜視図である。
図2】実施形態に係るトイレットロールの図である。
図3】第一実施形態に係る開封部を説明するための正面図である。
図4】第一実施形態に係る開封部を説明するための他の一部正面拡大図である。
図5】第二実施形態に係る開封部の構成を説明するための図である。
図6】第二実施形態に係る開封部を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次いで、本発明の包装体の実施形態を図1~5を参照しながら詳述する。
【0019】
(第一実施形態)
【0020】
本実施形態に係るトイレットロール包装体1は、外装フィルム2によってガセット包装されたトイレットロール包装体(以下、単に包装体という)である。
【0021】
ガセット包装に係る包装体1は、例えば、筒状の外装フィルムの側部2E,2Eを袋内側に折り込みして偏平にした状態で上部を融着して上部融着部41を形成したガセット包装の下方開口を開いて、トイレットロール30を挿入した後、下部を融着して開口を封止する下部融着部42を形成することで製造することができる。
【0022】
また、包装体1は、トイレットロール30を包装した状態において、偏平状態において折り込まれた外装フィルムの側部2E, 2Eが開かれて形成されるマチ部11,11と、このマチ部に連接する各面12,13,14,15とを有する。なお、マチ部11に連接する各面のうち上部融着部41に連接する面を天面12、下部融着部42に連接する面を底面15とする。また、天面12及び底面15と各マチ部11,11に連接する二つ目の面は、正面13及び背面14とする。但し、正面13及び背面14は相対的なものであり、いずれの面を正面とするかは限定されるものではない。
【0023】
上部融着部41及び下部融着部42は、熱融着、超音波融着等の公知の融着技術によって形成される。好ましくは、熱融着によるものである。
【0024】
包装体1の上部融着部41には、包装体1を持ち運びやすいように、上部融着部41に公知の指かけ孔20や指かけ孔形成スリットを形成するのが望ましい。
【0025】
この包装体1においては、特徴的にトイレットロール30がガセット包装における上部融着部41と下部融着部42との間において周面突合せで二列に配列されているとともに、前記上部融着部41及び下部融着部42がトイレットロール30の周面31に対向する位置にある。つまり、包装体1は、上部融着部41から下部融着部42に向かうトイレットロール30の列が二列であり、トイレットロール30の端面32が包装体1における正面13と背面14とに対向するように配置されている。この包装体1における好ましいトイレットロールの包装数は、2個×2列の合計4個、4個×2列の合計8個、5個×2列の合計10個、6個×2列の合計12個である。特に、図示例のように5個×2列の10個の場合に適する。
【0026】
ガセット包装による従来のトイレットロール包装体(以下、従来包装体という)の多くは、内包されるトイレットロールの上部融着部と下部融着部とにトイレットロールの端面が対向するように複数段上下積み重ねに配置されている。これは特にトイレットロールがそのまま包装されている製品では、上部融着部近傍を開封して一部を取り出した後に、残るトイレットロールを外装フィルム内に残しつつ開口部を閉じやすくすることで衛生的に保管しやすいようにするためである。しかし、この配置態様の従来包装体の場合、最下部のトイレットロールを取り出すに順次上部のトイレットロールを取り出す必要がある。
【0027】
本発明に係る包装体1は、内包物であるトイレットロール30が樹脂製フィルム50で個包装されている二重包装であるため外装フィルム2を開封した後にすべて外装フィルム2外へ取り出してしまっても衛生的に保管することができる。素早く使用できるという点からは外装フィルム2からすべて取り出すのが望ましい。もちろん、外装フィルム2内に一部残しておいてもよい。ただし、この場合においても内包物であるトイレットロール30が樹脂製フィルム50で個包装されているため開口部を閉じる必要はない。したがって、内包物であるトイレットロール30が樹脂製フィルム50で個包装されている二重包装である本包装体1では、再封止性よりも外装フィルム2から外への取り出し性をより優れるようにするのが望ましい。この場合、上下複数段に配置する従来包装体の配置よりも、トイレットロール30の端面32を上下方向として置いて、トイレットロール30の端面32が包装体1における正面13と背面14とに対向するように配置するのが望ましい。したがって、トイレットロール30の端面32によりできる面を全体的に平たくして、使用者が使用する時に、すべてのトイレットロール30に手が届きやすいようにした本包装体1のような配置態様とするのがよい。
【0028】
包装体1を本形態のように上部融着部41と下部融着部42との間において、トイレットロール30が周面突合せで二列に配列されているとともに、前記上部融着部41及び下部融着部42がトイレットロール30の周面31に対向する位置にあるようにする場合、輸送時や店頭においてトイレットロール包装体自体を複数段重ねることがあり、また、下部融着部に最も近いトイレットロール30Aの周面側を底にして置くこともある。これらのような場合においてトイレットロール30を潰れ難くするために、内包するトイレットロール30はやや硬巻きにするとともに、次の形状とするが望ましい。
【0029】
すなわち、トイレットロール30は、1枚の坪量が11~25g/mであり、1枚の紙厚が70~150μmである単層もしくは多層のトイレットペーパーを、直径L1が36~45mmの芯に、トイレットロール直径L2が100~130mmとなるように長さ20~63m巻き付けたものとするのが望ましい。このような巻き形態のトイレットロール30は個包装にした状態において端面間方向においても周面方向においても潰れに対する強度が十分に高く、本包装体1のトイレットロールの配置形態において特に適する。さらに、トイレットロール30の形状は、その幅L3が95~110mmであるのが望ましい。このトイレットロール30の幅L3は、一般的なトイレットロールの幅より短い数値である。やや幅狭のトイレットロール形状とすることで上記配置において包装体1の正面13及び背面14を上下方向にして載置した際における安定性に優れるようになるとともに、後述の開封開始部60により形成される開口から取り出しやすいものとなる。
【0030】
外装フィルム2は、厚みが40~80μmであるのが望ましい。この外装フィルム2の厚みは、内包されるトイレットロールが上部融着部と下部融着部とにトイレットロールの端面が対向するように複数段上下積み重ねに配置されている多くの従来包装体に用いられるフィルムに比して厚い。外装フィルム2を厚くすることで、上記包装体全体としての強度を高めることができ、トイレットロール30が潰れ難いものとなる。また、特に上部融着部41に指かけ孔20を形成した場合、本包装体1のトイレットロール30の配置の場合に、指かけ孔20を用いて上部融着部41が上方となるようにして包装体1を持ち上げた際には、周面突合せで形成される二列のトイレットロール30が上下方向に連続する態様となる。この場合に外装フィルム2の厚みが薄く伸びやすいものであると、トイレットロール30の個数が概ね6個、各列3個を超えてくると外装フィルム2内における整列が崩れやすくなる。上記の外装フィルム2の厚さであれば、概ね各列5個以上であっても整列状態を保持できる程度の強度を確保できる。外装フィルム2は各融着部形成のため、融点は150℃以下であるのが望ましい。具体的には、ポリプロピレン樹脂製フィルム及びポリエチレン樹脂製フィルムであるのがコスト面及び開封性の点で望ましい。なお、包装フィルムの融点が低いほうが低温で熱融着処理できるため上部融着部41及び下部融着部42の形成において好ましいが、過度に融点が低い場合には、摩擦などによってフィルムに傷が付いたり、穴が空くおそれが高まるので、実質的な下限値は80℃である。ポリエチレン樹脂製フィルムとしては、直鎖低密度ポリエチレンフィルム(LLDPE)、低密度ポリエチレンフィルム(LDPE)、中密度ポリエチレンフィルム(MDPE)が挙げられる。なかでも、本発明においては、熱融着性及びコストの点で、密度0.90~1.00g/cm程度で融点が80~150℃の直鎖低密度ポリエチレンフィルム層(LLDPE)が、特に適する。また、トイレットロール30として香り付きのトイレットロールなど臭気のあるものを包装する場合には、エチレンビニルアルコール共重合体樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを用いてもよい。さらに、エチレンビニルアルコール共重合体樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムの一方面または両面に、ポリエチレン樹脂製フィルムやポリプロピレン樹脂製フィルムを積層して熱融着性が高められた複層の樹脂フィルムであってもよい。
【0031】
包装体1は、外装フィルム2の最も上部融着部41側に位置する一対のトイレットロールの隣接位置P1よりも上部融着部41側に位置する範囲に、易裂開線による特徴的な開封開始部60が形成されている。この開封開始部60から開封することで形成される外装フィルム2の開口から内部のトイレットロール30が極めて容易に取り出せるようになる。
【0032】
本第一の実施形態に係る包装体1は、特に、外装フィルム2のトイレットロールの端面32に対面する面から上部融着部41に至る面の範囲、つまり正面13及び背面14からその面に続く天面12を含む範囲に開封開始部60が形成されている。なお、開封開始部60は、正面側及び背面側の一方面のみに設けてもよいし、双方の面に設けてもよい。また、図示例では、開封開始部60は、好ましく二列のトイレットロール列間の中央部分範囲に形成されている。
【0033】
この特徴的な本発明に係る開封開始部60は、易裂開線61A,61Aが上下方向に沿って延在するように配された基端部61と、この基端部61Aの側部側に近接する位置62sから、易裂開線62A,62Aが下部融着部42方向に向かうにしたがって離間距離が漸次拡開するように一対配されてなる拡開部62とを有しており、全体として、上部融着部41側に向かって略凸形状をなしている。
【0034】
略凸形状であることにより、指等でこの開封開始部60、特に基端部61上又はそれよりも下部融着部42側の近傍を、外装フィルム2の包装内方に押し込むことで、摘まみやすい形状の自由縁片が形成される。そして、その自由縁片を摘まんで上部熱融着部側から下部熱融着部42側に向かって容易に開口が形成されるようになる。
【0035】
本発明に係る易裂開線61A,62Aとしては、ミシン目又はアンカット部を設けたスリットカットが例示できる。好ましくはミシン目である。ミシン目又はスリットカットにおけるカット部とアンカット部(タイ部)の比であるカットタイ比(カット:タイ)は、2:1~1:3であるのが望ましい。カット部の長さは1~2mmであるのが望ましい。開封開始部60を外装フィルム2の包装内方に押し込んだ際に容易に裂開して自由縁片が形成されるようになる。
【0036】
ここで、本発明に係る開封開始部60は、上記のとおり全体として凸形状をなすが、基端部61に係る易裂開線61Aの延在方向と、拡開部62に係る易裂開線61Bの延在方向が異なっているとともに、拡開部62の一端62sが基端部61に近接して位置しているもののその位置が基端部61の側部側に位置しており基端部61に係る易裂開線61Aの端61sに連続していない。したがって、指で押し込むような操作によっては、基端部61に係る易裂開線61A,61Aの裂開と、拡開部62に係る易裂開線62A,62の特に基端部61側からの裂開が連続的に進んで開封が容易になされるが、商品荷扱時の衝撃や、上部融着部41側を持って持ち上げるたり、持ち運んだりする際に、基端部61に係る易裂開線61A,61Aが裂開しても、その裂開が拡開部62に係る易裂開線62A,62Aに連続的に伝わり難い。また、反対に拡開部62に係る易裂開線62A,62Aが裂開しても、その裂開が基端部61に係る易裂開線61A,61Aに伝わり難い。このため、商品荷扱時の衝撃等のような未使用時の取り扱いの際に意図せず何れかの易裂開線に裂開が生じても小スリットが形成されるのみで自由縁片が形成されるような大きな開口が形成されがたい。つまり、開封しやすく個々のトイレットロール30を取り出しやすい開口を形成しやすく、しかも未使用時の取り扱いの際に意図せず開封されがたい。そして、この包装体1における開封開始部60は、外装フィルム2が上記のとおり厚みがある場合において特に好適に作用する。
【0037】
なお、意図せずに基端部61に係る易裂開線61A,61Aの裂開が拡開部62に係る易裂開線62A,62Aに連続的に伝わり難くすべく、好ましくは、拡開部62に係る易裂開線62A,62Aの一端62sは、基端部61に係る易裂開線61Aの長手方向の中央部近傍位置にあるのがより望ましい。また、意図せずに基端部61に係る易裂開線61A,61Aの裂開が拡開部62に係る易裂開線62A,62Aに連続的に伝わり難くすべく、基端部61を構成する易裂開線61A,61Aと、基端部61に近い側の拡開部62の易裂開線62A,62Aの端62sとの間の距離は1~5mmとするのが望ましい。
【0038】
ここで、本発明に係る基端部61に係る易裂開線61A,61Aは上下方向に沿って一本でもよいが図示の形態のように二本設けるのが望ましい。二本配することで基端部61が脆弱になるとともに、拡開部62を構成する一方の易裂開線62Aから他方の易裂開線62Aへの裂開の連続性がより失われやすく、意図する開封が容易になるとともに、意図しない裂開が好適に防止される。なお、基端部61に係る易裂開線61Aは三本以上あってもよいが、過度に多くすると基端部61の脆弱性が高まりすぎるようになるとともに、上下方向に直交する方向の存在範囲が広くなり指で押し込む操作をした際に、基端部から拡開部62への易裂開線62A,62Aの裂開が連続にスムーズに行われなくなるおそれが高まる。
【0039】
他方で、基端部61に係る易裂開線61A,61Aの長さは2~10mmであるのが望ましい。この範囲であると指で押し込むような操作をした際に、基端部61に係る易裂開線61A,61Aのみが裂開することなく連続的に拡開部62に係る易裂開線62A,62Aの裂開が発現しやすくなる。
【0040】
基端部61の位置としては、押し込み操作がしやすいように。外装フィルム直下にトイレットロールが存在しない部分であるのが望ましく、特に、上部融着部側に最も近い一対のトイレットロール30B、30Bの最上部融着部側位置P2よりもトイレットロールの幅L3以内の位置にあるのが望ましい。この位置であれば、上部融着部41を手で持って上部融着部41側方向に引っ張った際に、開封開始部61の外装フィルム2の内側が空間となるため指で押し込みやすくなる。
【0041】
他方で、拡開部62を構成する一対の易裂開線62A,62Aの基端部61側の離間距離L4は、5~15mmとするのが望ましい。この範囲であると指で押し込むような操作をした際に、基端部61に係る易裂開線61A,61Aとともに、連続的に拡開部62に係る一対の易裂開線62A,62Aの裂開が発現しやすくなり、さらに、拡開部62に係る一方の易裂開線62Aの意図しない裂開が他方の易裂開線62Aに好適に伝わり難くなる。
【0042】
また、拡開部62に係る一対の易裂開線62A,62Aの基端部61に近い側と反対の下部側間の幅(上下方向に直交する方向の幅)L5は、30~100mmとするのが望ましい。自由縁片を形成したち、これを摘まんで上部熱融着部41側から下部熱融着部42側に向かって引っ張る操作をした際に、トイレットロール30を十分に取り出せる広さの開口が形成されるようになる。
【0043】
拡開部62の上下方向の長さL6は、指が差し入れることができる程度の大きさの開封開始部60が形成される長さであればよく限定されないが、過度に長いと押し込みによって容易に開封し難くなるため、好ましくい長さL6としては15~30mmである。
【0044】
他方で、本発明に係る包装体1では、拡開部62を構成する易裂開線62A、62Aの下部側端62eに連続又は近接する位置から下部融着部42側に向かって延在するように一対の易裂開線63A,63Aを配してなる取出口形成補助部63を有するのが望ましい。取出口形成補助部63を形成することで、開封開始部60を裂開して形成される自由縁片を摘まんで上部熱融着部41側から下部熱融着部42側に向かって引っ張る際に、連続的に取出口形成補助部63が分離除去されて、より容易に開口が形成されるようになる。なお、係る効果が好適となるように取出口形成補助部63に係る易裂開線63Aの端63sと、拡開部62を構成する易裂開線62A,62Aの下部側端62eとの離間距離L9は、25mm以内とするのがよい。
【0045】
取出口形成補助部63に係る易裂開線63Aも、基端部61や拡開部62に係る易裂開線61A,62Aと同様に、ミシン目又はアンカット部を設けたスリットカットが例示できる。好ましくはミシン目である。ミシン目又はスリットカットにおけるカット部とアンカット部(タイ部)の比であるカットタイ比(カット:タイ)も同様に、2:1~1:3であるのが望ましい。カット部の長さは1~2mmであるのが望ましい。
【0046】
また、取出口形成補助部63を構成する各易裂開線63A,63Aは、二列に配される各列のトイレットロール群上に位置してもよい。その取出口形成補助63の幅L7は、拡開部62の下部融着部41側の幅L5と同様でよいが、やや広くしてもよい。
【0047】
取出口形成補助部63の上下方向の長さL8は、限定されないが3~15mmとすればよい。この程度であれば輸送時等や指かけ孔で持ち運ぶ際に意図せず裂開するおそれが小さい。
【0048】
ここで、包装体1に係るトイレットロール30は樹脂製フィルム50で個包装されたものであるが、樹脂製フィルム50によるトイレットロール30の個包装形態は、一般的なトイレットロールの個包装でよく、つまり、樹脂製フィルムを概ねトイレットロールの形状に変形密着するように包む形態である。個包装されたトイレットロール30Yと包装されていない状態のトイレットロール30Xとは芯部分の空隙の有無程度であり実質的に外寸の差はない。なお、個包装は、単に樹脂製フィルム50でトイレットロールを包むだけでもよいが、図2(B)に示すようなキャラメル包装等、接着剤や融着によって封止するように個包装されているのが望ましい。
【0049】
個包装のための樹脂製フィルム50は、ポリプロピレンフィルムやポリエチレンフィルムが挙げられる。また、厚みは15~30μmが望ましい。
【0050】
(第二実施形態)
【0051】
次いで、第二実施形態を図6を参照しながら説明する。この第二実施形態は、上記第一実施形態と開封開始部60を設ける面が異なっている。その他については第一実施形態と同様である。
【0052】
本第二実施形態の開封開始部60は、外装フィルム2のトイレットロール30の端面32に対面する面間にある側面11、つまりマチ部11に開封開始部が形成されている。このようにマチ部11に開封開始部60を設けるようにしても第一実施形態と同様に、開封しやすく個々のトイレットロール30を取り出しやすい開口を形成しやすく、しかも未使用時の取り扱いの際に意図せず開封されがたい包装体1となる。なお、開封開始部60は、マチ部11,11の一方の面のみに設けてもよいし、双方に設けてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…包装体、2…外装フィルム、2E…外装フィルムの側部、11…マチ部、12…天面、13…正面、14…背面、15…底面、20…指かけ孔、30…トイレットロール、30A…下部融着部に最も近いトイレットロール、30B…上部融着部に最も近いトイレットロール、30C…上部融着部に二番目に近いトイレットロール、30X…個包装されていない状態のトイレットロール、30Y…個包装されたトイレットロール、31…トイレットロールの周面、32…トイレットロールの端面、41…上部融着部、42…下部融着部、50…樹脂製フィルム、60…開封開始部、61…基端部、61A…基端部に係る易裂開線、62…拡開部、62A…拡開部に係る易裂開線、63…取出口形成補助部、63A…取出口形成補助部に係る易裂開線、P1…上部融着部に最も近い一対のトイレットロール30Bの隣接位置、P2…上部融着部に最も近い一対のトイレットロール30Bの最上部融着部側位置、L1…芯の直径、L2…トイレットロールの直径、L3…トイレットロールの幅、L4…拡開部に係る易裂開線の基端部側の離間距離、L5…拡開部に係る易裂開線の基端部と反対側の離間距離、L6…拡開部の上下方向長さ、L7…取出口形成補助部の幅、L8…取出口形成補助部の長さ、L9…拡開部に係る易裂開線と取出口形成補助部に係る易裂開線の離間距離。
図1
図2
図3
図4
図5
図6