(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】内視鏡
(51)【国際特許分類】
A61B 1/018 20060101AFI20231025BHJP
G02B 23/24 20060101ALI20231025BHJP
A61B 1/005 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
A61B1/018 511
G02B23/24 A
G02B23/24 B
A61B1/005 511
A61B1/005 521
(21)【出願番号】P 2019190065
(22)【出願日】2019-10-17
【審査請求日】2022-08-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平山 哲
【審査官】北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-175385(JP,A)
【文献】特開2012-153076(JP,A)
【文献】特開平07-001630(JP,A)
【文献】国際公開第2012/077760(WO,A1)
【文献】特開2001-046314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 - 1/32
G02B 23/24 -23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入部と、
前記挿入部の内部に配置される管路と
を備え、
前記挿入部は、
操作に基づき湾曲可能な湾曲部と、
前記操作とは無関係な外力により湾曲可能な可撓管部と
を含み、
前記管路は、内層と、前記内層の外側に形成される外層とを備え、
前記内層は、充実構造のポリテトラフルオロエチレンで形成され、
前記外層は、多孔質構造のポリテトラフルオロエチレンで形成され、
前記湾曲部における前記外層の気孔率は、前記可撓管部における前記外層の気孔率よりも小さいことを特徴とする内視鏡。
【請求項2】
前記湾曲部における前記外層の気孔率は、前記可撓管部の端部において徐々に上昇するようにされている、請求項1に記載の内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡装置は一般に、被検者の体内(消化器官など)に挿入される挿入部を有している。挿入部は、光を伝達するためのライトガイド、及び撮像部からの電気信号を伝達するための電気配線をその内部に有している。これに加え、挿入部は、送水又は送気のための管路、及び処置具を挿脱するための処置具管路をその内部に有している。
【0003】
内視鏡の挿入部は、被検者の体内においてその形状を柔軟に変化させることが求められる。このため、挿入部の内部に含まれる各種管路についても、高い柔軟性を有することが望ましい。
【0004】
しかし、管路の柔軟性が高くなると、管路において座屈が生じる可能性が高まる。また、処置具管路の場合、処置具の挿脱により内壁が削れ、管路が破損することが生じ得る。このため、例えば特許文献1及び2に開示された内視鏡では、処置具管路を2層構造とし、内層を充実構造のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で形成し、外層を多孔質構造のPTFEで構成している。
【0005】
一方、内視鏡の挿入部の先端には一般に、オペレータの操作により能動的な湾曲動作が可能な湾曲部が備えられる。また挿入部は、例えば消化器官の壁面に先端部が当たることにより、オペレータの操作とは関係なく受動的に湾曲する可撓管部も有している。このように、挿入部が能動的な湾曲動作が出来る湾曲部と、受動的な湾曲動作のみが生じる可撓管部とを有していることで、消化器官の内部の任意の箇所を撮像することが容易となっている。なお、可撓管部は、更に異なる湾曲の度合を有する複数の部分に分割されることもある。
【0006】
このように、従来の内視鏡は、能動的な湾曲動作が可能な湾曲部と、受動的な湾曲動作が生じる可撓管部とを有している。しかし、従来の内視鏡においては、処置具管路の柔軟度は、湾曲部及び挿入部の全長に亘り略均一とされている。このため、可撓管部の柔軟度が十分に得られず、期待したような動作が得られないことが生じ得る。逆に、湾曲部における管路の柔軟度が高いと、管路の座屈などを含む管路の破損を生じさせることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2001-46314号公報
【文献】国際公開第2008/088087号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、湾曲の程度が異なる複数の部分の性能を十分に発揮させつつ、管路の破損も効果的に抑制することが可能な内視鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明に係る内視鏡は、挿入部と、前記挿入部の内部に配置される管路とを備える。前記挿入部は、操作に基づき湾曲可能な湾曲部と、前記操作とは無関係な外力により湾曲可能な可撓管部とを含む。前記管路は、内層と、前記内層の外側に形成される外層とを備え、前記内層は、充実構造のポリテトラフルオロエチレンで形成され、前記外層は、多孔質構造のポリテトラフルオロエチレンで形成される。前記湾曲部における前記外層の気孔率は、前記可撓管部における前記外層の気孔率よりも小さい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の内視鏡によれば、湾曲の程度が異なる複数の部分の性能を十分に発揮させつつ、管路の破損も効果的に抑制することが可能な内視鏡を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施の形態の内視鏡システム1の外観図である。
【
図2】内視鏡100の先端部104の部分の構造を説明する概略斜視図である。
【
図3】先端部104の断面構造を詳細に説明する断面図である。
【
図4】接続部103A、第1可撓管部101A、及び第2可撓管部101Bの構造について説明する断面図である。
【
図5】第1の実施の形態の処置具管路141の構造を説明する概略図である。
【
図6】第2の実施の形態の処置具管路141の構造を説明する概略図である。
【
図7】第2の実施の形態の変形例の処置具管路141の構造を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本実施形態について説明する。添付図面では、機能的に同じ要素は同じ番号で表示される場合もある。なお、添付図面は本開示の原理に則った実施形態と実装例を示しているが、これらは本開示の理解のためのものであり、決して本開示を限定的に解釈するために用いられるものではない。本明細書の記述は典型的な例示に過ぎず、本開示の特許請求の範囲又は適用例を如何なる意味においても限定するものではない。
【0013】
本実施形態では、当業者が本開示を実施するのに十分詳細にその説明がなされているが、他の実装・形態も可能で、本開示の技術的思想の範囲と精神を逸脱することなく構成・構造の変更や多様な要素の置き換えが可能であることを理解する必要がある。従って、以降の記述をこれに限定して解釈してはならない。
【0014】
[第1の実施の形態]
まず、本発明の実施の形態の内視鏡システムについて詳細に説明する。
図1は、第1の実施形態の内視鏡システム1の外観図であり、
図2は、内視鏡100の先端部104の構造を示す斜視図である。内視鏡システム1は、内視鏡100、プロセッサ200、光源装置300、送水送気部400、吸引部500、ディスプレイ600、及び入力部700から大略構成される。
【0015】
内視鏡100は、被検体の体内に挿入可能に構成されて被写体を撮像し、その撮像された画像の画像信号をプロセッサ200に伝送する機能を有する。プロセッサ200は、内視鏡100からの画像信号を受信して所定の信号処理を実行する。
【0016】
光源装置300は、プロセッサ200と接続可能に構成され、その内部に被写体を照射するための照射光を発する光源を備えている。光源からの光は、後述するライトガイドを介して被検体に向けて照射される。光源装置300は、プロセッサ200とは別体として構成されてプロセッサ200と接続可能に構成されてもよいし、プロセッサ200の内部に組み込まれていてもよい。
【0017】
送水送気部400は、被検体に対して供給される水流、又は空気流を放出するためのエアポンプを備えている。吸引部500は、内視鏡100を介して被検者の体内から吸引された体液や切除物を吸引するためのポンプ及びタンク(図示せず)を備えている。
【0018】
ディスプレイ600は、例えばプロセッサ200でのデータ処理結果等に基づく表示を行うための表示装置である。また、入力部700は、各種測定動作におけるオペレータからの指示を入力するための装置である。
【0019】
内視鏡100は、挿入部10と、手元操作部102と、ユニバーサルケーブル105と、コネクタ部106とを備えている。挿入部10は更に、可撓管部101と、接続部103Aと、湾曲部103と、先端部104とを備えている。
【0020】
内視鏡100の挿入部10は、
図1に示すように、可撓性を有し、被検体の体内に挿入するための可撓管部101を備えている。可撓管部101は、その一端において手元操作部102と接続されている。手元操作部102は、例えば湾曲操作ノブ102A、その他ユーザによって操作可能な操作部を備えており、内視鏡システム1による撮像のための各種操作をオペレータに行わせるための部分である。なお、手元操作部102には、処置具を挿入させるための処置具挿入口102Bが設けられている。
【0021】
可撓管部101のうち、湾曲部103に近い部分は、第1可撓管部101Aであり、手元操作部102に近い部分は、第2可撓管部101Bである。湾曲部103が、湾曲操作ノブ102Aのオペレータによる操作により能動的にその形状が変化可能にされているのに対し、この第1可撓管部101Aは、湾曲操作ノブ102Aの操作とは無関係な外力、例えば先端部104や湾曲部103が消化器官の壁面に当たることによる外力により、受動的にその形状が変化する部分である。第2可撓管部101Bも同様であるが、形状の変化の度合が第1可撓管部101Aに比べ小さい(最大曲率半径が大きい)。なお、
図1の例では、可撓管部101が2種類の可撓管部を有しているが、これに限定されるものではなく、3種類以上の可撓管部が備えられていても良いし、1種類でも構わない。
【0022】
可撓管部101の先端には、湾曲可能に構成された湾曲部103(能動湾曲部)が設けられている。前述のように、手元操作部102に設けられた湾曲操作ノブ102Aの回転操作に連動した操作ワイヤ(
図1では図示せず)の牽引によって湾曲部103は湾曲する。なお、湾曲部103と第1可撓管部101Aとの間には、湾曲用ワイヤWや外力により変形しない接続部103Aが設けられていてもよい。
【0023】
更に、湾曲部103の先端には、撮像素子(撮像部)を備えた先端部104が連結されている。湾曲操作ノブ102Aの回転操作による湾曲部103の湾曲動作に応じて先端部104の向きが変わることにより、内視鏡100による撮影領域を変化させることができる。
【0024】
手元操作部102の反対側からは、コネクタ部106に向けてユニバーサルケーブル105が延びている。ユニバーサルケーブル105は、挿入部10と同様に、その内部にライトガイド、各種配線、各種管路を含んでいる。
【0025】
コネクタ部106は、内視鏡100をプロセッサ200に接続させるための各種コネクタを含んでいる。また、コネクタ部106は、水流及び空気流を挿入部101に向けて送るための経路としての送水送気用管路108を含む。
【0026】
図2を参照して、内視鏡100の先端部104の構造を説明する。内視鏡100の先端部104には、配向レンズ112A、112Bが配置され、挿入部101の内部には、先端部104からコネクタ部106に亘って、ライトガイドLGa、LGbが延びている。光源装置300の光源からの光が、このライトガイドLGa、LGbにより導光され、先端部104に配置された配向レンズ112A、112Bにより、被検体に向けて照射される。
【0027】
また、内視鏡100は、
図2に示すように、先端部104において対物レンズ113と撮像素子133を備えている。先端部104に設けられる対物レンズ113は、被検体からの散乱光や反射光を集光して、撮像素子133の受光面上に被検体の像を結像させる。
【0028】
撮像素子133は、一例としてCCD(Charge Coupled Device)、又はCMOSセンサ(Complementary Metal Oxide Semiconductor Sensor)により構成され得る。撮像素子133は、プロセッサ200から電気配線138を介して供給される信号(ゲインコントロール信号、露出制御信号、シャッタ速度制御信号など)により制御されるとともに、プロセッサ200に対し、撮像された画像の画像信号を電気配線138及びA/D変換回路(図示せず)を介して供給するようにされている。
【0029】
また、先端部104の端面には、各種管路の端部又は開口として、送気送水口114、副送水口115、及び処置具口116が設けられている。送気送水口114(ノズル)は、先端部104の洗浄等のための水流、又は空気流を導入するため、送気送水管路121に接続されている。
【0030】
また、副送水口115は、視野内の汚物除去のための副送水を導入するため、副送水管路122に接続されている。管路121~122は、先端部104、湾曲部103、挿入部101、手元操作部102、及びユニバーサルケーブル105の内部に沿って延びるように配置されている。
【0031】
このような管路121~122に加え、内視鏡100の内部には、処置具管路141が設けられている。処置具管路141は、鉗子等の処置具をその内部に進退自在に配置されている。処置具管路141の先端は、先端部104において処置具口116を構成している。なお、処置具管路141は、吸引管路を兼用してもよい。
【0032】
図3を参照して、先端部104の断面構造をより詳細に説明する。この断面図では、対物レンズ113~電気配線138、送気送水管路121、及び処置具管路141の構造の詳細を示している。配向レンズ112A、112B及びライトガイドLGa、LGbの構造については図示を省略している。また、副送水管路122の構造も図示を省略している。
【0033】
先端部104は、先端硬質部104Mを有している。先端硬質部104Mは、前述の送気送水口114、副送水口115、及び処置具口116を構成する孔部を備えている。
図3に示すように、送気送水管路121、及び処置具管路141が、先端硬質部104Mの対応する孔部に挿入されている。
【0034】
先端硬質部104Mは、対物レンズ113、絞りAP、遮光マスク131を保持するレンズ枠136を嵌入するための孔部も有している。レンズ枠136は、密封剤137を介して先端硬質部104Mの孔部に固定される。
【0035】
一方、対物レンズ113の後方には、一例として、遮光マスク131、カバーガラス132、撮像素子(CCD)133、及び回路基板134がCCDユニット枠135により保持され、このCCDユニット枠135が先端硬質部104Mの孔部に挿入・固定されている。回路基板134には、電気配線138が接続されている。
【0036】
上記のように構成された先端部104(先端硬質部104M)が、湾曲部103の先端に嵌め込まれる。湾曲部103は、略円筒状に形成された湾曲駒153をリベットで互いに回動可動に接続して構成される。湾曲駒153の外面は網状管152で被覆されている。網状管152は、その端部において接輪管151を介して先端硬質部104Mと接合される。また、網状管152の外面は、合成樹脂製の外皮ゴムチューブ155で覆われている。外皮ゴムチューブ155と先端硬質部l04Mとは、その端部において例えば固定用糸S1により固定される。
【0037】
複数の湾曲駒153の間には、ワイヤガイド154が設けられ、このワイヤガイド154に、湾曲動作のための湾曲用ワイヤWが貫通している。湾曲用ワイヤWは、1本の挿入部101内において、例えば周方向に略等間隔に4本設けられる。各湾曲用ワイヤWの一端は最前部の湾曲駒153に固定されている。この湾曲用ワイヤWの他端が湾曲操作ノブ102Aの操作により緊張・弛緩されることにより、湾曲部103が湾曲する。
【0038】
次に、
図4を参照して、接続部103A、第1可撓管部101A、及び第2可撓管部101Bの構造について説明する。
【0039】
接続部103Aは、前述のように湾曲部103と第1可撓管部101Aを接続する部材であり、湾曲用ワイヤWの動作や外力によりその外形が変形しない硬性部である。第1可撓管部101Aは、湾曲部103と同様に、複数の湾曲駒153Aを有している。湾曲駒153Aは、湾曲駒153と同様にリベットで互いに回動可動に接続して構成される。また、第2可撓管部101Bは、一例として、内側から、螺旋管153B(金属の平板コイル)、金属網153C、外皮樹脂153D(ポリウレタン等)を備えたものとすることができる。
【0040】
また、第1可撓管部101A及び第2可撓管部101Bには、手元操作部102から延びる湾曲用ワイヤWを通過させるためのコイルシース161が設けられている。湾曲用ワイヤWは、このコイルシース161の内部を摺動可能に配置されており、このため、湾曲用ワイヤWが緊張又は弛緩しても、第1可撓管部101A及び第2可撓管部101Bの形状は変化しない。第1可撓管部101A及び第2可撓管部101Bは、挿入部101に対し、例えば消化器官の外壁が当たることによる外力等により、湾曲駒153A、螺旋管153Bの可動範囲を限度として変形し得る。
【0041】
上述したように、湾曲部103、第1可撓管部101A、及び第2可撓管部101Bは、湾曲用ワイヤWの動作又は外力により変形し得るが、その変形の限度(最大曲率半径)は互いに異なる。また、最大曲率半径が異なるので、内部に挿通される管路用のチューブに求められる座屈強度(耐キンク性)も互いに異なる。
【0042】
第1の実施の形態では、湾曲部103、第1可撓管部101A、及び第2可撓管部101Bの特性が最大限に得られるよう、処置具管路141を、
図5のように構成している。
図5は、処置具管路141の断面構造を示す断面図と、その特性(気孔率Rah)を示すグラフである。
【0043】
処置具管路141は、内層201と、内層201よりも外側に配置される外層202の二層構造を備えている。内層201は、管路を通過する処置具と接触することによる破損を抑制するため、全長(先端部104~第2可撓管部101B)に亘り充実構造のPTFEから構成される。一方、外層202は、多孔質のPTFEから構成されている。充実構造のPTFEは硬く破損に対する耐性は高いが、座屈しやすい一方、多孔質PTFEは柔軟で破損に対する耐性は低いが、その分座屈しにくい。処置具管路141が充実構造のPTFEと多孔質のPTFEに二層構造とされることにより、破損に対する耐性と、座屈耐性との両立が図れる。換言すれば、内層201の充実構造のPTFEを、座屈しにくい外層202の多孔質PTFEで保持することで、柔軟で座屈しにくいチューブ得ることができる。
【0044】
加えて、この第1の実施の形態の外層202の多孔質のPTFEは、その気孔率Rahが位置によって異なっている。外層202の気孔率Rahが大きいと、それだけ処置具管路141の柔軟性が高まる。
【0045】
湾曲操作ノブ102Aにより湾曲が可能な湾曲部103に位置する外層202は、例えば気孔率Rahを10~40%程度に設定されている。一方、第1可撓管部101A及び第2可撓管部101Bに位置する外層202は、湾曲部103の内部よりも高い気孔率Rah(例えば30~80%で、湾曲部103の内部よりも高い数値)を与えられている。
【0046】
湾曲部103は、湾曲操作ノブ102Aによる湾曲用ワイヤWの操作により湾曲の度合を調整可能であるため、湾曲部103は、挿入部101に比べ高い柔軟性は必要ない。従って、湾曲部103における外層202は、湾曲用ワイヤWの操作に支障が無い程度に柔軟性を有していればよい。
【0047】
逆に、湾曲部103では、湾曲用ワイヤWにより、挿入部101に比べ大きな曲率変化を与えられるため、座屈による管路の破損を抑制することが求められる。このため、湾曲部103の内部での処置具管路141の外層202は、第1可撓管部101A及び第2可撓管部101Bにおけるよりも小さい気孔率を与えられる。これにより、湾曲部103は、湾曲用ワイヤWの変形が可能な程度に柔軟性を有すると共に、座屈に対する高い耐性を有することができる。
【0048】
一方、第1可撓管部101A及び第2可撓管部101Bは、患者の負担を軽減するため、先端部104等が消化器官の内壁に当接すること等に基づく外力により柔軟に変形することが求められ、湾曲部103よりも高い柔軟性が求められる。第1の実施の形態の処置具管路141の外層202は、第1可撓管部101A及び第2可撓管部101Bの内部においては、湾曲部103の内部におけるよりも高い気孔率Rahを与えられる。これにより、第1可撓管部101A及び第2可撓管部101Bは、高い柔軟性を与えられ、患者の負担が軽減される。なお、上記の例では、第1可撓管部101A及び第2可撓管部101Bにおける気孔率Rahは同一としているが、互いに異なる気孔率を与えられても良い。
【0049】
なお、先端部104の内部における外層202の気孔率Rahは任意であり、例えば湾曲部103の内部における気孔率Rahと同一であってもよい。先端部104は湾曲(変形)しないため、その内部を通過する処置具管路141の硬さは不問である。先端部103の外層202のみ、充実構造のPTFEで構成されてもよい。
【0050】
以上説明したように、この第1の実施の形態の内視鏡は、処置具管路141が内層201と外層202の二層構造とされ、内層201は充実構造のポリテトラフルオロエチレンで形成され、外層202は、多孔質構造のポリテトラフルオロエチレンで形成され、湾曲部103における外層202の気孔率は、第1可撓管部101A及び第2可撓管部101Bにおける外層202の気孔率よりも小さくされる。これにより、湾曲部103においてはある程度の柔軟性と十分な座屈耐性が得られる一方で、第1可撓管部101A及び第2可撓管部101Bでは、高い柔軟性が得られる。従って、可撓管部101及び湾曲部103の機能を十分に発揮させた内視鏡を提供することが可能になる。なお、上述した例では、処置具管路141について二層構造を採用したが、処置具管路141以外の管路に関しても同様の構造を採用してもよいことは言うまでもない。
【0051】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態に係る内視鏡を、
図6を参照して説明する。この第2の実施の形態の内視鏡の全体構成は、第1の実施の形態(
図1)と同様である。また、先端部104、湾曲部103及び挿入部101の構成も、次に説明する点を除き、第1の実施の形態(
図2~
図3)と同様である。
【0052】
この第2の実施の形態は、湾曲部103の内部での外層202の気孔率Rahが、可撓管部101の内部での外層202の気孔率Rahよりも小さい点で、第1の実施の形態と同様である。ただし、湾曲部103の気孔率Rahは、先端部104側では低い値に設定される一方、湾曲部103の第1可撓管部101A側の端部において徐々に上昇し、湾曲部103と可撓管部101との境界付近では、第1可撓管部101Aの内部での気孔率Rahと略同一とされる。なお、先端部104の内部での外層202の気孔率Rahは、第1の実施の形態と同様に、湾曲部103の内部での気孔率Rahと略同一としてもよいが、
図7に示すように、湾曲部103の内部での気孔率Rahよりも大きい値としてもよい。なお、湾曲部103と可撓管部101との境界とは、厳密に定義される必要は無く、接続部0103Aのいずれかの位置とすることができる。
【0053】
この第2の実施の形態の構成によれば、湾曲部103の機能を一層高めることが可能になる。湾曲部103では一般に、先端部104側の端部において曲率が小さく、可撓管部101の側で曲率が大きくなる。このため、湾曲部103の内部において、
図6に示すような気孔率Rahの分布を採用することで、湾曲部103はその先端部104側の端部において座屈耐性を高めることができる、一方、挿入部101側では柔軟性を高めることができる。
【0054】
[その他]
本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0055】
1…内視鏡システム、 100…内視鏡、10…挿入部、 101…可撓管部、 101A…第1可撓管部、 101B…第2可撓管部、102…手元操作部、 102A…湾曲操作ノブ、 103…湾曲部、 104…先端部、 105…ユニバーサルケーブル、 106…コネクタ部、 108…送水送気用管路、 LGa、LGb…ライトガイド、 112A、112B…配向レンズ、 113…対物レンズ、 114…送気送水口、 115…副送水口、 116…処置具口、 121…送気送水管路、 122…副送水管路、 141…処置具管路、 133…撮像素子、 134…回路基板、 135…CCDユニット枠、 136…レンズ枠、 137…密封剤、 138…電気配線、 161…コイルシース、 200…プロセッサ、 300…光源装置、 400…送水送気部、 500…吸引部、 600…ディスプレイ、 700…入力部。