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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】メカニカルシール
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/34 20060101AFI20231025BHJP
【FI】
F16J15/34 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019234947
(22)【出願日】2019-12-25
(65)【公開番号】P2021102990
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】日本ピラー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084342
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 久巳
(74)【代理人】
【識別番号】100213883
【弁理士】
【氏名又は名称】大上 雅史
(72)【発明者】
【氏名】三浦 直人
(72)【発明者】
【氏名】福本 崇人
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-041759(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0225066(US,A1)
【文献】特開2001-208202(JP,A)
【文献】実開平02-029355(JP,U)
【文献】特開2009-197945(JP,A)
【文献】特開2000-266189(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/34-15/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円環状の第1ケース部と当該第1ケース部から同心状に延び、前記第1ケース部より小さい径をなす円筒状の第2ケース部とを有するシールケースと、
前記第2ケース部に嵌合する貫通孔を有する取付板と、を備え、
前記取付板が、前記貫通孔を第2ケース部に嵌合させると共に前記第1ケース部が回転機器の軸封部ケーシングの端面に当接する状態で、当該軸封部ケーシングに取り付けられ
前記第2ケース部には、静止密封環の回転を阻止する係合ボルトがその頭部を第2ケース部上に位置させた状態で嵌挿されており、前記取付板の貫通孔には当該係合ボルトの頭部が係止される切欠部が形成されているメカニカルシール。
【請求項2】
前記第1ケース部と前記軸封部ケーシングとの間にはOリングが介在する、請求項1のメカニカルシール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メカニカルシールであって、特に回転機器への組み込み及び回転機器からの取り外しを極めて容易に行うことができるカートリッジ型のメカニカルシールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のカートリッジ型のメカニカルシールでは、特許文献1に開示される如く、シールケース及びこれに取り付けた静止密封環等からなる静止側密封要素と、スリーブ及びこれに取り付けた回転密封環等からなる回転側密封要素と、両密封要素を使用形態と同一形態に一時的に連結しておく連結手段とからなり、連結手段により両密封要素を使用形態と同一形態に連結したままで回転機器への組み込みや回転機器からの取外しを行うようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-048818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、シールケースを回転機器の軸封部ケーシングに直接取り付けているため、仮に回転軸の軸径が同一であっても、機種やメーカが異なると、軸封部ケーシングにシールケースを取り付け得ない事態が発生する。したがって、両密封要素を連結手段により使用形態と同一形態に連結した状態で準備しておいても、そのまま軸径が同一である回転機器すべてに適用することが困難である。
【0005】
すなわち、回転機器への組み込みや回転機器からの取外しが容易なカートリッジ型のメカニカルシールを準備していたとしても、シールケースを交換する必要がある。この場合、再度の組み立てを必要とし、その都度組み立て誤差を生ずる虞れがある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みてなされたもので、機種やメーカが異なっても回転軸の軸径が同一の回転機器に適用することができるメカニカルシールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決したメカニカルシールは、円環状の第1ケース部と当該第1ケース部から同心状に延び、前記第1ケース部より小さい径をなす円筒状の第2ケース部とを有するシールケースと、前記第2ケース部に嵌合する貫通孔を有する取付板と、を備え、前記取付板が、前記貫通孔を第2ケース部に嵌合させると共に前記第1ケース部が回転機器の軸封部ケーシングの端面に当接する状態で、当該軸封部ケーシングに取り付けられる。
【0008】
かかるメカニカルシールの好ましい実施の形態にあっては、前記第1ケース部と前記軸封部ケーシングとの間にはOリングが介在する。また、前記第2ケース部には、静止密封環の回転を阻止する係合ボルトがその頭部を第2ケース部上に位置させた状態で嵌挿されており、前記取付板の貫通孔には当該係合ボルトの頭部が係止される切欠部が形成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るメカニカルシールにおいては、機種やメーカが異なる場合であっても、取付板を交換するのみで、回転軸の軸径が同一の回転機器に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係るメカニカルシールの一例を示す断面図である。
図2図1と異なる断面(断面は図3のII-II線に沿う)を示す当該メカニカルシールの断面図である。
図3図1のIII-III線に沿う断面図である。
図4】当該メカニカルシールの回転機器への組み込み状態を示す図1相当の断面図である。
図5】本発明に係るメカニカルシールの変形例を示す図1対応の断面図である。
図6図5と異なる断面を示す当該メカニカルシールの図2対応の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態を図面に基づいて具体的に説明する。
【0012】
図1及び図2に示すように、メカニカルシールの一例としてのカートリッジ型のメカニカルシールは、回転機器(プロセスポンプ、ブロワ、圧縮機、タービン、攪拌機等)の軸封部ケーシング1とこれを貫通して当該機器外に突出する回転軸2との間に組み込まれる。メカニカルシールは、回転機器の内部領域である機内流体領域Aと当該回転機器の外部領域である機外大気領域Bとの間を区画するように構成された端面接触形である。
【0013】
このカートリッジ型のメカニカルシールは、回転軸2に取り付けられる回転側密封要素3と、軸封部ケーシング1に取付板4により取り付けられる静止側密封要素5と、両密封要素3,5をメカニカルシールの使用形態(図1及び図2に示す運転状態における形態)と同一の形態に一時的に連結させておくための連結手段6とを備える。この例では、機内流体領域Aの流体(被密封流体)は正圧の液体である。
【0014】
図1及び図2に示す如く、軸封部ケーシング1は円形の貫通孔1aを有しており、貫通孔1aにはこれと同心状に回転軸2が貫通している。軸封部ケーシング1からは、機外大気領域B側の端面1bからボルト(2本の寸切ボルト)7,7が回転軸2と平行に突出している。ボルト7,7は、貫通孔1aを挟んで対称に設けられている。
【0015】
図1及び図2に示す如く、回転側密封要素3は、回転軸2に嵌合されたスリーブ8、これに取り付けた回転密封環9及びストッパリング10等からなる。
【0016】
スリーブ8は、薄肉円筒状の基端部81を機外大気領域B側に位置させると共に厚肉円筒状の先端部82を軸封部ケーシング1の貫通孔1aに位置させた状態で回転軸2に嵌合されている。スリーブ8は、基端部81に嵌合されたストッパリング10に、スリーブ8に締め付けられる複数(一個のみ図示)の第1スクリュー10aを螺合し、スリーブ8の基端部81に形成された貫通孔83を通して回転軸2に締め付けられる複数(一個のみ図示)の第2スクリュー10bを螺合することにより、回転軸2に固定される。
【0017】
回転密封環9は、スリーブ8の先端部82に嵌合されており、Oリング11a、ドライブピン11b及びシート材11cを介してスリーブ8の先端部82に固定されている。
【0018】
図1及び図2に示す如く、静止側密封要素5は、シールケース13、シールケース13に保持される静止密封環14及びスプリング15等を具備する。
【0019】
シールケース13は、静止側密封要素5における最大径の円環板状の第1ケース部131と、第1ケース部131の中間部から機外大気領域B方向に同心状に延びる2番目の大きさの径をなす円筒状の第2ケース部132と、第1ケース131の内周部に設けられた断面L字形のOリング保持部134とを具備する。シールケース13における第2ケース部132の内周部には、スプリングリテーナ133が嵌合される。
【0020】
第1ケース部131の端面は、軸封部ケーシング1の端面1bに密着しうる環状面131aとされており、この環状面131aにはOリング16が装填されている。第2ケース部132は、第1ケース部131に一体成形されている。第2ケース部132の外径は、2番目の大きさの径であって、第1ケース部131の外径より小さいが、シールケース13を構成する他の部材やスプリングリテーナ133の外径に比しては大きい。
【0021】
Oリング保持部134は、第1ケース部131の内周面に沿って延び、第2ケース部132の内径より小径である。Oリング保持部134は、第1ケース部131の環状面131aから若干飛び出す受け面134aと、その基端部から内方へと延びる移動阻止面134bとからなり、第1ケース部131に一体形成されている。受け面134aは、軸封部ケーシング1の貫通孔1aに接触している。スプリングリテーナ133の端部には、ストッパリング10から若干離れて位置しており、環状凸部133aが一体形成されている。
【0022】
静止密封環14は、先端部(機内流体領域A側の端部)を大径とする密封環保持体141と、密封環保持体141の先端部に装着された密封環本体142とを備える。
【0023】
密封環保持体141の中間部は、シールケース13のOリング保持部134にOリング17を介して軸線方向に移動可能に保持されている。密封環保持体141の基端部には切欠部141aが形成されている。この切欠部141aには、係合ボルト18が第1ケース体131を径方向に通過して第2ケース体132に螺合される。係合ボルト18の基端ピン部181は、切欠部141aに螺合することで、静止密封環14のシールケース13に対する相対回転を阻止する。係合ボルト18の頭部(先端部)182は、第2ケース部132の外周面に接触する状態で締め付けられている。すなわち、係合ボルト18の頭部182は、第2ケース部132の外周面よりも径方向外方に飛び出している。
【0024】
スプリング15は、密封環保持体141に保持されるスプリング受板19とスプリングリテーナ133との間に装填されていて、静止密封環14の密封環本体142を回転密封環9に接触させるべく軸方向に附勢している。なお、スプリング受板19は、密封環保持体141に形成された段部に位置し、スプリング15の附勢力により係止されている。
【0025】
図2及び図3に示す如く、連結手段6は、保管時、運搬時、回転機器の組み込み時には両密封要素3,5を使用状態と同一状態に連結しておくものである。
【0026】
すなわち、連結手段6は、スプリングリテーナ133に形成された環状凸部133aと係合する凹部及びスプリングリテーナ133とストッパリング10との隙間に係合する凸部を有する係合体61と、係合体61をストッパーリング10に上面から固定するボルト62とからなる。連結手段6は、ストッパーリング10とスプリングリテーナ133(シールケース13)とを連結する。
また、図3に示す如く、連結手段6は、周方向に等間隔を隔てた3ケ所に設けられる。
【0027】
ストッパリング10に取りけられたボルト62の頭部62aは、シールケース13の第2ケース部132の外径よりやや高くなるように設定されている。また、ストッパリング10の外径はシールケース13の第2ケース部132の内径より小さく、ボルト62の頭部62aはシールケース13の第1ケース部131の外径より小さく設定されている。
【0028】
而して、図1及び図2に示す如く、カートリッジ型のメカニカルシールは、静止側密封要素5のシールケース13が取付板4により軸封部ケーシング1に取り付けられている。
【0029】
取付板4は、中央部に円形の貫通孔41が形成された板状のものであり、各端部にボルト7を通すための長孔42が形成される。貫通孔41は、シールケース13の第2ケース部132の外径に合わせて形成されており、第2ケース部132に嵌合しうる径に設定されている。取付板4の貫通孔41には、切欠部43,44が形成されている。切欠部43,44は、シールケース13の第2ケース部132の外周部に飛び出す係合ボルト18の頭部182、及び第2ケース部132の外径より外周側に飛び出す連結手段6の各ボルト62の頭部62aが通過する。
【0030】
したがって、取付板4によれば、両密封要素3,5を連結手段6により連結された状態で保管場所から取り出し、回転機器まで運搬し、図4に示す如く、回転機器の回転軸2に挿通させることにより、回転機器の軸封部ケーシング1に取り付けることができる。
【0031】
すなわち、図4に示す如く、両密封要素3,5を回転軸2に挿通させる。このとき、ストッパリング10の第2スクリュー10bは回転軸2に締め付けず、両密封要素3,5の回転軸2への挿通を容易にしておく。このとき、各ボルト7には、シールケース13の第1ケース部131の厚みに相当する環状のカラー21を通しておく。そして、シールケース13の第1ケース部131の環状面131aを軸封部ケーシング1の端面1bに接触させる。そして、端面1b及び環状面131aにOリング16を介在させた状態で、シールケース13の第2ケース部132に貫通孔41を挿入する。その後、各長孔42にボルト7を挿通させ、各ボルト7にナット20を螺合する。図1及び図2に示す如く、各ナット20を締め付けることにより、取付板4を第1ケース部131に押し付けた状態で軸封ケーシング1に固定する。また、取付板4は、連結手段6の各ボルト62の頭部62aを切欠部44から通した後、所定角度回転させることにより、係合ボルト18の頭部182に切欠部43を係合させる。
【0032】
而して、取付板4によりシールケース13が軸封部ケーシング1に取り付けられると、最後にストッパリング10の第2スクリュー10bを締め付けて、ストッパリング10を回転軸2に固定する。このとき、係合ボルト8の頭部182は取付板4の切欠部42に引っかかる。これにより、静止側密封要素5は、回転機器の軸封部ケーシング1に対する相対回転を阻止する。
【0033】
このように、取付板4によれば、両密封要素3,5が連結手段6により使用状態と同一状態に連結されたままで、管理から運搬、回転軸2への挿通を経て軸封部ケーシング1に取り付けられるから、シールケース13を含めて両密封要素3,5を変更する必要がない。
【0034】
したがって、回転軸2の軸径が同一であれば、機種やメーカが異なる場合にも、取付板4を軸封部ケーシング1に適合する形状に変更するだけであらゆる回転機器に対応することができる。しかも、シールケース13を変更する必要がないから、機種やメーカが異なっても回転軸2の軸径が同一である限り、両密封要素3,5の変更を余儀なくされることがなく、シールケース13の変更に伴う分解,再組み立てによる組み立てミスを生じることがない。
【0035】
図5及び図6には、上記メカニカルシールの変形例を示す。図5に示す如く、本変形例のメカニカルシールは、軸封部ケーシング1への取り付け手段が寸切ボルト7ではなく、穴付ボルトや六角ボルト等の軸封ケースにねじ込むタイプのボルト70である。また、カラー21は必ずしも設けておく必要はない。なお、ボルト70以外の構成は、図1図4に示すものと同一のものを使用しているため、同一符号を付して説明を省略している。
【0036】
また、図5及び図6に示す如く、軸封部ケーシング1の貫通孔1aが大きく、シールケース13の受け面134aが貫通孔1aに接触しない場合にあっても、シール機能上は何ら問題が生じない。
【0037】
更に、図6に示す如く、係合ボルト18の頭部182がシールケース13の第2ケース部132の上面に突出せず、第2ケース部132に埋設されている場合には、取付部4とシールケース13の第1ケース部131及び第2ケース部132との摩擦係合力によりシールケース13の軸封部ケーシング1に対する相対回転が阻止される。
【0038】
このように、本発明のメカニカルシールにあっては、取付板4を種々準備してもおくことにより、回転軸2の軸径が同一である場合、両密封要素3,5を変更することなく機種やメーカが異なるあらゆる回転機器に適用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 軸封部ケーシング
4 取付板
13 シールケース
14 静止密封環
16 Oリング
18 係合ボルト
41 貫通孔
43 切欠部
131 第1ケース部
132 第2ケーズ部
182 頭部
図1
図2
図3
図4
図5
図6