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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】収容箱
(51)【国際特許分類】
   B65D 5/66 20060101AFI20231025BHJP
   B65D 5/72 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
B65D5/66 311G
B65D5/72 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019506063
(86)(22)【出願日】2018-03-14
(86)【国際出願番号】 JP2018009867
(87)【国際公開番号】W WO2018168892
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2021-03-11
(31)【優先権主張番号】P 2017049339
(32)【優先日】2017-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000222141
【氏名又は名称】東洋アルミエコープロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101409
【弁理士】
【氏名又は名称】葛西 泰二
(74)【代理人】
【氏名又は名称】葛西 さやか
(74)【代理人】
【識別番号】100175662
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100206195
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 直樹
(72)【発明者】
【氏名】徳永 大輔
(72)【発明者】
【氏名】谷口 美香
【審査官】植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-328623(JP,A)
【文献】特開2014-234179(JP,A)
【文献】特開平09-142459(JP,A)
【文献】特開2005-263298(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02228310(EP,A1)
【文献】登録実用新案第3102426(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/00-5/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に開放された容器状の本体部(8)と、前記本体部の背面部(19)の上縁(22)に接続され、下方に開放された蓋状の蓋部(9)とから構成され、前記蓋部が前記本体部の背面部の上縁を中心に回動することで、前記蓋部が開いた開状態と前記蓋部の一方側面部(25、43)が前記本体部の一方側面部(17、42、64)の少なくとも一部を覆うように閉じた閉状態とを切替可能な収容箱(1、51、71)であって、
前記本体部の一方側面部の上縁の一部に接続され、外方に突出するように形成された係止部(37、57、77)と、
前記蓋部の一方側面部において、前記閉状態で前記係止部が係止するように形成された被係止部(45、85)とを備え、
前記本体部の一方側面部の上縁は、前記本体部の背面部側端部から正面部側端部の全体にわたって下方に傾斜し、
前記蓋部の前記一方側面部の内面に被係止シートを重ねて設けることで前記被係止部が構成され、
前記被係止部は、前記蓋部の一方側面部の内面において前記蓋部の平面部の一方側縁と前記被係止シートの上縁とに囲われる箇所であって、前記背面部側から前記正面部側に向かって先細りに延びる、収容箱。
【請求項2】
上方に開放された容器状の本体部(8)と、前記本体部の背面部(19)の上縁(22)に接続され、下方に開放された蓋状の蓋部(9)とから構成され、前記蓋部が前記本体部の背面部の上縁を中心に回動することで、前記蓋部が開いた開状態と前記蓋部の一方側面部(25、43)が前記本体部の一方側面部(17、42、64)の少なくとも一部を覆うように閉じた閉状態とを切替可能な収容箱(1、51、71)であって、
前記本体部の一方側面部の上縁の一部に接続され、外方に突出するように形成された係止部(37、57、77)と、
前記蓋部の一方側面部において、前記閉状態で前記係止部が係止するように形成された被係止部(45、85)とを備え、
前記本体部の一方側面部の上縁は、前記本体部の背面部側端部から正面部側端部の全体にわたって下方に傾斜し、
前記蓋部の前記一方側面部の内面に被係止シートを重ねて設けることで前記被係止部が構成され、
前記被係止部は、前記蓋部の一方側面部の内面において前記蓋部の平面部の一方側縁と前記被係止シートの上縁とに囲われる箇所であって、前記正面部側から前記背面部側に向かって先細りに延びる、収容箱。
【請求項3】
前記係止部は、前記本体部の一方側面部の上縁の平面視中央よりも前方に位置する、請求項1又は請求項2記載の収容箱。
【請求項4】
前記本体部の前記一方側面部の上縁に接続され、前記本体部の開口の一部を覆うように前記本体部の前記一方側面部の上縁の前記正面部側の端部から前記背面部側の端部にかけて形成されたフラップを備え、
前記フラップは、平面視において半円が後方に偏心した形状である、請求項1から請求項3のいずれかに記載の収容箱。
【請求項5】
所定形状に展開されたシート体を、正面部(2)、背面部(3)、平面部(4)、底面部(5)、一方側面部(6)及び他方側面部(7)からなる直方体形状に折り曲げて形成される収容箱(1、51、71)であって、
前記正面部を覆う正面シート(11)と、
前記正面シートの一方側縁(12)に折り曲げ自在に接続され、少なくとも前記一方側面部の一部を覆う一方側面第一後方折り曲げシート(13)と、
前記正面シートの下縁(14)に折り曲げ自在に接続され、前記底面部を覆う底面シート(15)と、
前記底面シートの一方側縁(16)に折り曲げ自在に接続され、少なくとも前記一方側面第一後方折り曲げシートの外面に固定される一方側面上方折り曲げシート(17、64)と、
前記底面シートの後縁(18)に折り曲げ自在に接続され、前記背面部を覆う背面シート(19、54、74)と、
前記背面シートの一方側縁(20)に折り曲げ自在に接続され、少なくとも前記一方側面上方折り曲げシートの内面に固定される一方側面前方折り曲げシート(21)と、
前記背面シートの上縁(22、55、75)に折り曲げ自在に接続され、前記平面部を覆う平面シート(23、83)と、
前記平面シートの一方側縁(24、84)に折り曲げ自在に接続され、少なくとも前記一方側面上方折り曲げシートの外面の上部を覆う一方側面下方折り曲げシート(25)と、
前記平面シートの前縁(26)に折り曲げ自在に接続され、少なくとも正面シートの一部を覆う正面下方折り曲げシート(27、61)とを備え、
前記一方側面上方折り曲げシートの上縁(36、65)又は上部折り曲げ線(36、65)の一部に接続され、外方に突出する係止部(37、57、77)が形成され、
前記一方側面下方折り曲げシートには、前記正面下方折り曲げシートが前記正面シートを覆うように閉じた状態において前記係止部が係止する被係止部(45、85)が形成され、
前記一方側面上方折り曲げシートの上縁又は前記上部折り曲げ線は、前記背面部側端部から前記正面部側端部の全体にわたって下方に傾斜しており、
前記正面下方折り曲げシートは、前記正面下方折り曲げシートの一方側縁に折り曲げ自在に接続され、前記一方側面上方折り曲げシートの外面の一部を覆うと共に前記一方側面下方折り曲げシートの内面に固定される一方側面第二後方折り曲げシートを有し、
前記被係止部は、前記一方側面下方折り曲げシートの内面において前記平面シートの一方側縁と前記一方側面第二後方折り曲げシートの上縁とに囲われる箇所であって、前記背面部側から前記正面部側に向かって先細りに延びる、収容箱。
【請求項6】
所定形状に展開されたシート体を、正面部(2)、背面部(3)、平面部(4)、底面部(5)、一方側面部(6)及び他方側面部(7)からなる直方体形状に折り曲げて形成される収容箱(1、51、71)であって、
前記正面部を覆う正面シート(11)と、
前記正面シートの一方側縁(12)に折り曲げ自在に接続され、少なくとも前記一方側面部の一部を覆う一方側面第一後方折り曲げシート(13)と、
前記正面シートの下縁(14)に折り曲げ自在に接続され、前記底面部を覆う底面シート(15)と、
前記底面シートの一方側縁(16)に折り曲げ自在に接続され、少なくとも前記一方側面第一後方折り曲げシートの外面に固定される一方側面上方折り曲げシート(17、64)と、
前記底面シートの後縁(18)に折り曲げ自在に接続され、前記背面部を覆う背面シート(19、54、74)と、
前記背面シートの一方側縁(20)に折り曲げ自在に接続され、少なくとも前記一方側面上方折り曲げシートの内面に固定される一方側面前方折り曲げシート(21)と、
前記背面シートの上縁(22、55、75)に折り曲げ自在に接続され、前記平面部を覆う平面シート(23、83)と、
前記平面シートの一方側縁(24、84)に折り曲げ自在に接続され、少なくとも前記一方側面上方折り曲げシートの外面の上部を覆う一方側面下方折り曲げシート(25)と、
前記平面シートの前縁(26)に折り曲げ自在に接続され、少なくとも正面シートの一部を覆う正面下方折り曲げシート(27、61)とを備え、
前記一方側面上方折り曲げシートの上縁(36、65)又は上部折り曲げ線(36、65)の一部に接続され、外方に突出する係止部(37、57、77)が形成され、
前記一方側面下方折り曲げシートには、前記正面下方折り曲げシートが前記正面シートを覆うように閉じた状態において前記係止部が係止する被係止部(45、85)が形成され、
前記一方側面上方折り曲げシートの上縁又は前記上部折り曲げ線は、前記背面部側端部から前記正面部側端部の全体にわたって下方に傾斜しており、
前記正面下方折り曲げシートは、前記正面下方折り曲げシートの一方側縁に折り曲げ自在に接続され、前記一方側面上方折り曲げシートの外面の一部を覆うと共に前記一方側面下方折り曲げシートの内面に固定される一方側面第二後方折り曲げシートを有し、
前記被係止部は、前記一方側面下方折り曲げシートの内面において前記平面シートの一方側縁と前記一方側面第二後方折り曲げシートの上縁とに囲われる箇所であって、前記正面部側から前記背面部側に向かって先細りに延びる、収容箱。
【請求項7】
前記係止部は、前記一方側面上方折り曲げシートの上縁又は前記上部折り曲げ線の平面視中央よりも前方に位置する、請求項5又は請求項6記載の収容箱。
【請求項8】
前記一方側面上方折り曲げシートの上縁に接続され、前記平面部の一部を覆うように前記一方側面上方折り曲げシートの上縁の前記正面部側の端部から前記背面部側の端部にかけて形成されたフラップを備え、
前記フラップは、平面視において半円が後方に偏心した形状である、請求項5から請求項7のいずれかに記載の収容箱。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は収容箱に関し、特に、開状態と閉状態とを切替可能な収容箱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上方が開放された容器状の本体部と、本体部の一端縁に接続され、下方に開放された蓋状の蓋部とから構成され、蓋部が当該一端縁を中心に回動することで、蓋部が開いた開状態と蓋部が閉じた閉状態とを切替可能な収容箱が存在する。
【0003】
例えば日本国特開2013-63785号公報には、閉状態において直方体形状となる巻筒体包装容器であって、側板に連接する折込み片とこれに連接する係合突起を有し、係合突起は側板の平面視中央位置に設けられており、蓋体(蓋部)を閉じたときにその内側に備える係合部に係合するものが開示されている。係合部は、蓋体を閉じたときに蓋体内部の側蓋板と補助側蓋板とが重なることで板厚みにより形成されるものである。これによって、閉状態において蓋体が係止力を有する。
【0004】
又、日本国特開2015-199507号公報には、側面板の前面板側の高さを背面板側の高さよりも低くして、側面板の上縁を傾斜させたシート包装箱が開示されている。これによって、蓋体(蓋部)を閉じた際に懸垂板を強く前面板に押しつけ、該懸垂板の先端縁の内側に取り付けられた切断刃の先端を引き出したシートに強く押しつけることができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本国特開2013-63785号公報
【文献】日本国特開2015-199507号公報
【0006】
しかしながら、上記の日本国特開2013-63785号公報に開示されたような従来の収容箱では、係合部が板厚みにより生じさせた段差部分に過ぎないため、係合突起と係合部との係合による係止力が微弱となり、蓋体が不用意に開いてしまう虞があった。
【0007】
又、係合部の閉状態における上下方向幅が係合突起の厚さに対して余裕を持たせて設計されているため、係合突起ひいては係合突起が形成されている収容箱の蓋部の上下可動範囲が広く、閉状態においても蓋体が若干開いた状態となってしまう虞があった。
【0008】
このような蓋体が開いた状態で収容物を保管すると、塵埃や異物の混入の虞がある等、収容物の種類によっては収容箱として不良になりかねない。
【0009】
尚、収容物が上記日本国特開2013-63785号公報、日本国特開2015-199507号公報に開示されているような食品包装用ラップフィルムやアルミホイル箔といった巻筒体である場合は、そのサイズを基にして収容箱のサイズも決定されている場合が多い。このような場合には特に、基本的な全体構造を変更することなく係止力を向上させた収容箱が待望されている。
【0010】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、閉状態における蓋部の係止力が向上した収容箱を提供することを目的とする。
【発明の開示】
【0011】
上記の目的を達成するために、この発明の第1の局面における収容箱は、上方に開放された容器状の本体部と、本体部の背面部の上縁に接続され、下方に開放された蓋状の蓋部とから構成され、蓋部が本体部の背面部の上縁を中心に回動することで、蓋部が開いた開状態と蓋部の一方側面部が本体部の一方側面部の少なくとも一部を覆うように閉じた閉状態とを切替可能な収容箱であって、本体部の一方側面部の上縁の一部に接続され、外方に突出するように形成された係止部と、蓋部の一方側面部において、閉状態で係止部が係止するように形成された被係止部とを備え、本体部の一方側面部の上縁は、本体部の背面部側端部から正面部側端部の全体にわたって下方に傾斜し、蓋部の一方側面部の内面に被係止シートを重ねて設けることで被係止部が構成され、被係止部は、蓋部の一方側面部の内面において蓋部の平面部の一方側縁と被係止シートの上縁とに囲われる箇所であって、背面部側から正面部側に向かって先細りに延びるものである。
【0012】
このように構成すると、収容箱が閉状態から開状態に移行する際に係止状態が解除されるために必要な力が、一方側面部の上縁がその下縁と平行である場合に比して大きくなる。又、係止部が前方に位置するにつれて、係止部が形成されている蓋部の閉状態における上下可動範囲が狭くなる。
【0013】
この発明の第2の局面における収容箱は、上方に開放された容器状の本体部と、本体部の背面部の上縁に接続され、下方に開放された蓋状の蓋部とから構成され、蓋部が本体部の背面部の上縁を中心に回動することで、蓋部が開いた開状態と蓋部の一方側面部が本体部の一方側面部の少なくとも一部を覆うように閉じた閉状態とを切替可能な収容箱であって、本体部の一方側面部の上縁の一部に接続され、外方に突出するように形成された係止部と、蓋部の一方側面部において、閉状態で係止部が係止するように形成された被係止部とを備え、本体部の一方側面部の上縁は、本体部の背面部側端部から正面部側端部の全体にわたって下方に傾斜し、蓋部の一方側面部の内面に被係止シートを重ねて設けることで被係止部が構成され、被係止部は、蓋部の一方側面部の内面において蓋部の平面部の一方側縁と被係止シートの上縁とに囲われる箇所であって、正面部側から背面部側に向かって先細りに延びるものである。
【0014】
このように構成すると、収容箱が閉状態から開状態に移行する際に係止状態が解除されるために必要な力が、一方側面部の上縁がその下縁と平行である場合に比して大きくなる。又、閉状態から開状態に移行する際に係止状態が解除されるために必要な力が、係止部が平面視中央に位置する場合のものに比して大きくなる。
この発明の第3の局面における収容箱は、第1の局面又は第2の局面における発明の構成において、係止部は、本体部の一方側面部の上縁の平面視中央よりも前方に位置するものである。
このように構成すると、収容箱が閉状態から開状態に移行する際に係止状態が解除されるために必要な力が、係止部が平面視中央に位置する場合に比して大きくなる。
この発明の第4の局面における収容箱は、第1の局面から第3の局面のいずれかにおける発明の構成において、本体部の一方側面部の上縁に接続され、本体部の開口の一部を覆うように本体部の一方側面部の上縁の正面部側の端部から背面部側の端部にかけて形成されたフラップを備え、フラップは、平面視において半円が後方に偏心した形状であるものである。
このように構成すると、正面部側でフラップが正面シートと接することがなくなる。又、背面部側ではフラップが内方に突出する度合いが大きくなる。
【0017】
この発明の第の局面における収容箱は、所定形状に展開されたシート体を、正面部、背面部、平面部、底面部、一方側面部及び他方側面部からなる直方体形状に折り曲げて形成される収容箱であって、正面部を覆う正面シートと、正面シートの一方側縁に折り曲げ自在に接続され、少なくとも一方側面部の一部を覆う一方側面第一後方折り曲げシートと、正面シートの下縁に折り曲げ自在に接続され、底面部を覆う底面シートと、底面シートの一方側縁に折り曲げ自在に接続され、少なくとも一方側面第一後方折り曲げシートの外面に固定される一方側面上方折り曲げシートと、底面シートの後縁に折り曲げ自在に接続され、背面部を覆う背面シートと、背面シートの一方側縁に折り曲げ自在に接続され、少なくとも一方側面上方折り曲げシートの内面に固定される一方側面前方折り曲げシートと、背面シートの上縁に折り曲げ自在に接続され、平面部を覆う平面シートと、平面シートの一方側縁に折り曲げ自在に接続され、少なくとも一方側面上方折り曲げシートの外面の上部を覆う一方側面下方折り曲げシートと、平面シートの前縁に折り曲げ自在に接続され、少なくとも正面シートの一部を覆う正面下方折り曲げシートとを備え、一方側面上方折り曲げシートの上縁又は上部折り曲げ線の一部に接続され、外方に突出する係止部が形成され、一方側面下方折り曲げシートには、正面下方折り曲げシートが正面シートを覆うように閉じた状態において係止部が係止する被係止部が形成され、一方側面上方折り曲げシートの上縁又は上部折り曲げ線は、背面部側端部から正面部側端部の全体にわたって下方に傾斜しており、正面下方折り曲げシートは、正面下方折り曲げシートの一方側縁に折り曲げ自在に接続され、一方側面上方折り曲げシートの外面の一部を覆うと共に一方側面下方折り曲げシートの内面に固定される一方側面第二後方折り曲げシートを有し、被係止部は、一方側面下方折り曲げシートの内面において平面シートの一方側縁と一方側面第二後方折り曲げシートの上縁とに囲われる箇所であって、背面部側から正面部側に向かって先細りに延びるものである。
【0018】
このように構成すると、収容箱が閉状態から開状態に移行する際に係止状態が解除されるために必要な力が、一方側面上方折り曲げシートの上縁がその下縁と平行である場合に比して大きくなる。又、係止部が前方に位置するにつれて、係止部が形成されている蓋部の閉状態における上下可動範囲が狭くなる。
この発明の第6の局面における収容箱は、所定形状に展開されたシート体を、正面部、背面部、平面部、底面部、一方側面部及び他方側面部からなる直方体形状に折り曲げて形成される収容箱であって、正面部を覆う正面シートと、正面シートの一方側縁に折り曲げ自在に接続され、少なくとも一方側面部の一部を覆う一方側面第一後方折り曲げシートと、正面シートの下縁に折り曲げ自在に接続され、底面部を覆う底面シートと、底面シートの一方側縁に折り曲げ自在に接続され、少なくとも一方側面第一後方折り曲げシートの外面に固定される一方側面上方折り曲げシートと、底面シートの後縁に折り曲げ自在に接続され、背面部を覆う背面シートと、背面シートの一方側縁に折り曲げ自在に接続され、少なくとも一方側面上方折り曲げシートの内面に固定される一方側面前方折り曲げシートと、背面シートの上縁に折り曲げ自在に接続され、平面部を覆う平面シートと、平面シートの一方側縁に折り曲げ自在に接続され、少なくとも一方側面上方折り曲げシートの外面の上部を覆う一方側面下方折り曲げシートと、平面シートの前縁に折り曲げ自在に接続され、少なくとも正面シートの一部を覆う正面下方折り曲げシートとを備え、一方側面上方折り曲げシートの上縁又は上部折り曲げ線の一部に接続され、外方に突出する係止部が形成され、一方側面下方折り曲げシートには、正面下方折り曲げシートが正面シートを覆うように閉じた状態において係止部が係止する被係止部が形成され、一方側面上方折り曲げシートの上縁又は上部折り曲げ線は、背面部側端部から正面部側端部の全体にわたって下方に傾斜しており、正面下方折り曲げシートは、正面下方折り曲げシートの一方側縁に折り曲げ自在に接続され、一方側面上方折り曲げシートの外面の一部を覆うと共に一方側面下方折り曲げシートの内面に固定される一方側面第二後方折り曲げシートを有し、被係止部は、一方側面下方折り曲げシートの内面において平面シートの一方側縁と一方側面第二後方折り曲げシートの上縁とに囲われる箇所であって、正面部側から背面部側に向かって先細りに延びるものである。
このように構成すると、収容箱が閉状態から開状態に移行する際に係止状態が解除されるために必要な力が、一方側面上方折り曲げシートの上縁がその下縁と平行である場合に比して大きくなる。又、閉状態から開状態に移行する際に係止状態が解除されるために必要な力が、係止部が平面視中央に位置する場合のものに比して大きくなる。
【0019】
この発明の第の局面における収容箱は、第5の局面又は第6の局面における発明の構成において、係止部は、一方側面上方折り曲げシートの上縁又は上部折り曲げ線の平面視中央よりも前方に位置するものである。
【0020】
このように構成すると、収容箱が閉状態から開状態に移行する際に係止状態が解除されるために必要な力が、係止部が平面視中央に位置する場合や一方側面上方折り曲げシートの上縁がその下縁と平行である場合に比して大きくなる。
【0021】
この発明の第の局面における収容箱は、第5の局面から第7の局面のいずれかにおける発明の構成において、一方側面上方折り曲げシートの上縁に接続され、平面部の一部を覆うように一方側面上方折り曲げシートの上縁の正面部側の端部から背面部側の端部にかけて形成されたフラップを備え、フラップは、平面視において半円が後方に偏心した形状であるものである。
【0022】
このように構成すると、正面部側でフラップが正面シートと接することがなくなる。更に、背面部側ではフラップが内方に突出する度合いが大きくなる。
【0023】
以上説明したように、この発明の第1の局面における収容箱は、収容箱が閉状態から開状態に移行する際に係止状態が解除されるために必要な力が、係止部が平面視中央に位置する場合に比して大きくなるため、係止状態の安定性が向上する。又、係止部が前方に位置するにつれて、係止部が形成されている蓋部の閉状態における上下可動範囲が狭くなるため、収容箱の閉状態の安定性を制御することができる。
【0024】
この発明の第2の局面における収容箱は、収容箱が閉状態から開状態に移行する際に係止状態が解除されるために必要な力が、一方側面部の上縁がその下縁と平行である場合に比して大きくなるため、係止状態の安定性が向上する。又、閉状態から開状態に移行する際に係止状態が解除されるために必要な力が、係止部が平面視中央に位置する場合のものに比して大きくなるため、係止状態の安定性が向上する。
この発明の第3の局面における収容箱は、第1の局面又は第2の局面における発明の効果に加えて、収容箱が閉状態から開状態に移行する際に係止状態が解除されるために必要な力が、係止部が平面視中央に位置する場合に比して大きくなるため、係止状態の安定性が更に向上する。
この発明の第4の局面における収容箱は、第1の局面から第3の局面のいずれかにおける発明の効果に加えて、正面部側でフラップが正面シートと接することがなく、収容箱に薄膜体が収納されている場合にスムーズな引き出しが阻害される虞が減少する。又、背面部側ではフラップが内方に突出する度合いが大きくなることにより、収容物の浮き上がりがより抑制される。
【0026】
この発明の第の局面における収容箱は、収容箱が閉状態から開状態に移行する際に係止状態が解除されるために必要な力が、一方側面上方折り曲げシートの上縁がその下縁と平行である場合に比して大きくなるため、係止状態の安定性が向上する。又、係止部が前方に位置するにつれて、係止部が形成されている蓋部の閉状態における上下可動範囲が狭くなるため、収容箱の閉状態の安定性を制御することができる。
この発明の第6の局面における収容箱は、収容箱が閉状態から開状態に移行する際に係止状態が解除されるために必要な力が、一方側面上方折り曲げシートの上縁がその下縁と平行である場合に比して大きくなるため、係止状態の安定性が向上する。又、閉状態から開状態に移行する際に係止状態が解除されるために必要な力が、係止部が平面視中央に位置する場合のものに比して大きくなるため、係止状態の安定性が向上する。
【0027】
この発明の第の局面における収容箱は、第5の局面又は第6の局面における発明の効果に加えて、係止部が前方に位置するにつれて、係止部が形成されている蓋部の閉状態における上下可動範囲が狭くなるため、収容箱の閉状態の安定性を制御することができる。
【0028】
この発明の第8の局面における収容箱は、第5の局面から第7の局面のいずれかにおける発明の効果に加えて、正面部側でフラップが正面シートと接することがなく、収容箱に薄膜体が収納されている場合にスムーズな引き出しが阻害される虞が減少する。更に、背面部側ではフラップが内方に突出する度合いが大きくなることにより、収容物の浮き上がりがより抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】この発明の第1の実施の形態による収容箱の閉状態の外観形状を示す概略斜視図であって、除去部分を切り取る前のものである。
図2図1で示した収容箱の開状態の外観形状を示す概略斜視図であって、除去部分を切り取った後のものである。
図3図1で示した収容箱を展開したシート体の構造を示す展開図である。
図4図1で示したIV-IVラインの拡大概略断面図である。
図5】従来の収容箱の右側面視における係止部の係止状態を示す模式図である。
図6】この発明の第1の実施の形態による収容箱の右側面視における係止部の係止状態を示す模式図である。
図7】この発明の第2の実施の形態による収容箱の右側面視における係止部の係止状態を示す模式図である。
図8】この発明の第3の実施の形態による収容箱の右側面視における係止部の係止状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1はこの発明の第1の実施の形態による収容箱の閉状態の外観形状を示す概略斜視図であって、除去部分を切り取る前のものであり、図2図1で示した収容箱の開状態の外観形状を示す概略斜視図であって、除去部分を切り取った後のものであり、図3図1で示した収容箱を展開したシート体の構造を示す展開図である。
【0031】
これらの図を参照して、収容箱1は、主に紙を素材としてなり、上方が開放され開口が形成された容器状の本体部8と、本体部8の背面シート19の上縁22に接続され、下方に開放された蓋状の蓋部9とから構成されている。又、収容箱1は、図3に示すような所定形状に原紙から打ち抜かれてなる展開された形状のシート体を、図1に示すような正面部2、背面部3、平面部4、底面部5、右側面部6(一方側面部)及び左側面部7(他方側面部)からなる直方体形状に折り曲げて形成される。
【0032】
尚、本明細書において、前方又は後方とは、図1に示すような閉状態の収容箱を基準とした前方(背面部側から正面部側に対する方向)又は後方(正面部側から背面部側に対する方向)をいう。又、同様に上方又は下方とは、図1に示すような閉状態の収容箱を基準とした上方(底面部側から平面部側に対する方向)又は下方(平面部側から底面部側に対する方向)をいう。更に、右方又は左方とは、図1に示すような閉状態の収容箱を基準とした一方側面部から他方側面部に対する方向又はその逆方向をいい、一方とは右であっても左であっても良く、他方はその逆に対応する。更に、内方とは、収容箱の外部から内部に対する方向をいい、外方はその逆である。
【0033】
そして、収容箱1は、正面部2を覆う正面シート11と、正面シート11の右側縁12(一方側縁)に折り曲げ自在に接続され、右側面部6の一部を覆う右側面第一後方折り曲げシート13(一方側面第一後方折り曲げシート)と、正面シート11の下縁14に折り曲げ自在に接続され、底面部5を覆う底面シート15と、底面シート15の右側縁16(一方側縁)に折り曲げ自在に接続され、右側面第一後方折り曲げシート13の外面に固定される右側面上方折り曲げシート17(一方側面上方折り曲げシート)と、底面シート15の後縁18に折り曲げ自在に接続され、背面部3を覆う背面シート19と、背面シート19の右側縁20(一方側縁)に折り曲げ自在に接続され、右側面上方折り曲げシート17の内面に固定される右側面前方折り曲げシート21(一方側面前方折り曲げシート)と、背面シート19の上縁22に折り曲げ自在に接続され、平面部4を覆う平面シート23と、平面シート23の右側縁24(一方側縁)に折り曲げ自在に接続され、右側面上方折り曲げシート17の外面の上部を覆う右側面下方折り曲げシート25(一方側面下方折り曲げシート)と、平面シート23の前縁26に折り曲げ自在に接続され、正面シート11の一部を覆う正面下方折り曲げシート27とから主に構成されている。
【0034】
又、右側面上方折り曲げシート17には、右側面上方折り曲げシート17の上縁(ミシン目による上部折り曲げ線)36の一部に後述するフラップ38を介して接続され、外方に突出する係止部37が形成されている。ミシン目による上部折り曲げ線は、係止部37となる部分を除いて形成されており、これに沿って係止部37以外の部分を折り曲げることにより、収容箱1において外方に突出する係止部37が形成される。そして、係止部37は、右側面上方折り曲げシート17の上縁36の平面視中央よりも前方に位置する。尚、平面視中央とは、平面視において右側面上方折り曲げシート17の背面部3側縁からこれと平行な正面部2側縁にかけての最短距離の中央位置をいう。
【0035】
更に、右側面上方折り曲げシート17には、右側面上方折り曲げシート17の上縁36に折り曲げ自在に接続され、本体部8の開口の一部を覆うように平面視において半円が後方に偏心した形状のフラップ38が形成されている。より具体的には、フラップ38は、右側面上方折り曲げシート17の上縁(上部折り曲げ線)36の正面部2側の端部34から延び始め、平面視中央より後方の一定区間までは正面部2側から背面部3側に向かうほど幅広となり、一定区間を過ぎ背面部3側に向かうまでは上記一定区間の幅広具合に比して急激に幅狭となり、右側面上方折り曲げシート17の上縁36の背面部3側の端部35に収束する形状を有している。
【0036】
係止部37やフラップ38をこのように構成することによる効果については後述する。
【0037】
又、正面下方折り曲げシート27は、平面シート23の前縁26と略平行に形成された切断自在のミシン目31を境界として上方の残存部分28と除去部分29とに分けられている。又、正面下方折り曲げシート27は、正面下方折り曲げシート27の残存部分28の右側縁30(一方側縁)に折り曲げ自在に接続され、右側面上方折り曲げシート17の外面の一部を覆うと共に右側面下方折り曲げシート25の内面に固定される右側面第二後方折り曲げシート32(一方側面第二後方折り曲げシート)を有する。
【0038】
尚、右側面第一後方折り曲げシート13、右側面上方折り曲げシート17、係止部37、フラップ38、右側面前方折り曲げシート21、右側面下方折り曲げシート25及び右側面第二後方折り曲げシート32は、収容箱1の左側面部7(他方側面部)にも同様に備えられている。
【0039】
又、除去部分29の内面は、正面シート11の外面の左右方向に一定間隔に形成された複数の糊付け部40を接着面として、正面シート11の外面に固定されている。
【0040】
以上のように、収容箱1は、図1に示す閉状態では特定のシート体が右側面部6及び左側面部7を覆うように固定されていると共に、除去部分29が正面シート11に固定されている。収容箱1は、流通段階では、閉状態であって除去部分29が切り取られていない状態で主に取り扱われる。
【0041】
又、収容箱1の最初の使用時には、ミシン目31に沿って除去部分29を切り取ることで正面部2の固定状態が解除され、図2に示す開状態に移行可能となる。即ち、収容箱1は、主に正面シート11、底面シート15、右側面上方折り曲げシート17、左側面上方折り曲げシート42及び背面シート19からなる上方が開放され開口が形成された容器状の本体部8と、本体部8の背面シート19の上縁22に接続され、主に平面シート23、右側面下方折り曲げシート25、左側面下方折り曲げシート43及び正面下方折り曲げシート27(残存部分28)からなる下方に開放された蓋状の蓋部9とから構成され、蓋部9が背面シート19の上縁22を中心に回動することで、蓋部9が開いた開状態(図2)と蓋部9が閉じた閉状態(図1)とを切替可能である。
【0042】
そして、除去部分29を切り取った後の収容箱1にあっても、閉状態において(即ち、正面下方折り曲げシート27が正面シート11を覆うように閉じた状態において)、上述した係止部37が後述する被係止部に係止することにより、蓋部9が本体部8に対して係止力を発揮し、閉状態においては不用意に開くことを防止している。この係止部と被係止部との係止状態について以下説明する。
【0043】
図4図1で示したIV-IVラインの拡大概略断面図である。
【0044】
上述した図2及び図4を併せて参照して、被係止部45は、右側面下方折り曲げシート25の内面において平面シート23の右側縁24と右側面下方折り曲げシート25の上縁48との接続部分49と、右側面第二後方折り曲げシート32の上縁33とに囲われる箇所である。
【0045】
上述したように、右側面上方折り曲げシート17の上縁36の一部に接続され、外方に突出する係止部37は、閉状態において被係止部45に係止している。そのため、収容箱1が閉状態から開状態に移行する際に蓋部9が上方に回動しようとすると、係止部37が右側面第二後方折り曲げシート32の上縁33に接触し、右側面第二後方折り曲げシート32は接着剤等により右側面下方折り曲げシート25の内面に固定されているため蓋部9の上方への回動に対して抵抗する。この蓋部9を上方へ回動させる力が所定量となるまでは係止部37は被係止部45(右側面第二後方折り曲げシート32の上縁33)に係止した係止状態が維持されるが、更に蓋部9を上方へ回動させる力を加え続けると、右側面第二後方折り曲げシート32及び係止部37は主に紙からなるため、やがて変形し右側面第二後方折り曲げシート32は係止部37を越え、係止状態が解除される。このような、閉状態から開状態に移行させる際に蓋部9を上方に回動させるとき、右側面第二後方折り曲げシート32が係止部37を越えるための力が、係止状態が解除されるために必要な力である係止力となる。
【0046】
尚、上述した蓋部9の動きとは逆に、蓋部9を下方に回動させ右側面第二後方折り曲げシート32が係止部37を越える力を加えることで、収容箱1の開状態から閉状態に移行させることができる。
【0047】
ここで、上述したように、係止部37は、右側面上方折り曲げシート17の上縁36の平面視中央よりも前方(重心が正面部2側寄り)に位置するものである。このように構成することによる効果について以下説明する。
【0048】
図5は従来の収容箱の右側面視における係止部の係止状態を示す模式図であり、図6はこの発明の第1の実施の形態による収容箱の右側面視における係止部の係止状態を示す模式図である。
【0049】
尚、これらの図は係止状態の係止力を表現するためのものであるため、係止部を除いて各シート体の厚さを無視して模式的に描写している。
【0050】
まず図5を参照して、上述した日本国特開2013-63785号公報に開示されているような従来の収容箱91にあっては、係止部97が平面視中央に水平に位置する。尚、係止部97やこれに付随する図示しないフラップ等を除き、基本的な構造は上述した収容箱1と同様である。
【0051】
図に示す閉状態から開状態に移行するために、蓋部99の正面下方折り曲げシート101の上縁102を持ち背面シート94の上縁95を中心として上方に回動させようとすると、係止部97が、上方に移動しようとする右側面第二後方折り曲げシート92に接触する。
【0052】
このような係止状態が解除されるために蓋部99に上向きにかかる力をWと、又、正面下方折り曲げシート101の上縁102から背面シート94の上縁95までの距離をLと、更に、上方に回動する力のモーメントをMとおくと、次式が成り立つ。
【0053】
=W・L
又、係止状態が維持されるために係止部97に下向きにかかる力をFと、又、係止部97の重心から背面シート94までの水平距離をLとおくと、係止状態が維持され上方に回動する力のモーメントと下方に回動を抑制するように作用する力のモーメントが釣り合うとき、次式<1>が成り立つ。
【0054】
=W・L=F・L ・・・<1>
換言すると、W・L>F・Lとなるとき、係止状態が解除され蓋部99は開くこととなる。
【0055】
次に、図6を参照して、この発明の第1の実施の形態による収容箱1にあっては、上述した収容箱91の場合と同様に、係止状態が解除されるために蓋部9に上向きにかかる力をWとおくと、正面下方折り曲げシート27の上縁39から背面シート19の上縁22までの距離は同様にLであり、又、上方に回動する力のモーメントをMとおくと、次式が成り立つ。
【0056】
=W・L
又、係止部37において係止状態が維持されるために下向きにかかる力は同様にFであり、係止部37の重心から背面シート19までの水平距離をLとおくと、係止状態が維持され上方に回動する力のモーメントと下方に回動する力のモーメントが釣り合うとき、次式<2>が成り立つ。
【0057】
=W・L=F・L ・・・<2>
ここで、係止部37は平面視中央よりも前方に位置するため、係止部の重心から背面シートまでの距離は上述した従来の場合より長くなり、L>Lとなる。
【0058】
即ち、F・L>F・Lとなることから、式<1>及び式<2>より、係止状態が維持されるために必要な力を比較すると、W・L>W・Lとなる。
【0059】
そのため、係止状態が維持されるために必要な力の上限(即ち、係止状態が解除されるために必要な力)については、W>Wとなる。
【0060】
即ち、この発明の第1の実施の形態による収容箱1にあっては、閉状態から開状態に移行する際に蓋部が上方に回動しようとするとき、係止状態が解除されるために必要な力(W)が、係止部が平面視中央に位置する場合のもの(W)に比して大きくなる。そのため、係止状態の安定性が向上する。
【0061】
次に、この発明の第2の実施の形態による収容箱について説明する。
【0062】
図7はこの発明の第2の実施の形態による収容箱の右側面視における係止部の係止状態を示す模式図である。
【0063】
尚、この収容箱51の基本的な構造は上述したこの発明の第1の実施の形態による収容箱1と同様であるので相違点を中心に説明する。
【0064】
図7を参照して、収容箱51の右側面上方折り曲げシート64の上縁65は、背面部側から正面部側に向かって下方に傾斜している。そのため、右側面上方折り曲げシート64の上縁65の一部に接続され、外方に突出する係止部57も、同様に背面部側から正面部側に向かって下方に傾斜している。尚、係止部57の重心から背面シート54までの水平距離は従来の収容箱91と同様にLである。又、開状態に移行する際に係止部57に接触することとなる右側面第二後方折り曲げシート52も、同様にその上縁53が背面部側から正面部側に向かって下方に傾斜している。換言すると、右側面第二後方折り曲げシート52の上縁53や係止部57は前傾している。
【0065】
この収容箱51にあっては、上述した収容箱91の場合と同様に、係止状態が解除されるために蓋部59に上向きにかかる力をWとおくと、正面下方折り曲げシート61の上縁62から背面シート54の上縁55までの距離は同様にLであり、上方に回動する力のモーメントをMとおくと、次式が成り立つ。
【0066】
=W・L
又、係止部57において係止状態を維持するために係止部57の前傾に対して垂直下方にかかる力は同様にFであり、係止部57の重心から背面シート54までの、係止部57の傾斜に対応した距離をLとおくと、係止状態が維持され上方に回動する力のモーメントと下方に回動する力のモーメントが釣り合うとき、次式<3>が成り立つ。
【0067】
=W・L=F・L ・・・<3>
ここで、係止部57は前傾しているため、上述したLが係止部の重心から背面シートまでの水平距離だったのに対し、本実施の形態のLは係止部の重心から背面シートの上縁までの斜めの距離となるため、L>Lとなる。
【0068】
即ち、F・L>F・Lとなることから、式<1>及び式<3>より、係止状態が維持されるために必要な力を比較すると、W・L>W・Lとなる。
【0069】
そのため、係止状態が維持されるために必要な力の上限(即ち、係止状態が解除されるために必要な力)については、W>Wとなる。
【0070】
即ち、この発明の第2の実施の形態による収容箱51にあっては、閉状態から開状態に移行する際に蓋部が上方に回動しようとするとき、係止状態が解除されるために必要な力(W)が、係止部が平面視中央に水平に位置する場合のもの(W)に比して大きくなる。そのため、係止状態の安定性が向上する。
【0071】
次に、この発明の第3の実施の形態による収容箱について説明する。
【0072】
図8はこの発明の第3の実施の形態による収容箱の右側面視における係止部の係止状態を示す模式図である。
【0073】
尚、この収容箱71の基本的な構造は上述したこの発明の第2の実施の形態による収容箱51と同様であるので相違点を中心に説明する。
【0074】
収容箱71にあっては、右側面第二後方折り曲げシート72が、その上縁73が正面部側から背面部側に向かって下方に傾斜する(即ち、後傾する)ように構成されている。
【0075】
この収容箱71にあっても、係止部77が前傾していることは上述した第2の実施の形態による収容箱51と同様であるので、係止部77の係止状態に係る各構成要素の位置関係については殆ど同様であり、係止部77と右側面第二後方折り曲げシート72との接触箇所がわずかに前方に変更されるに過ぎない。従って、係止部77の重心から背面シート74までの、係止部57の傾斜に対応した距離Lは上述した第2の実施の形態におけるLと同一となる(あるいはわずかに長くなる)。そのため、係止状態が解除されるために蓋部79に上向きにかかる力Wは上述した第2の実施の形態におけるWと同一となる(あるいはわずかに大きくなる)。
【0076】
即ち、この発明の第3の実施の形態による収容箱71にあっては、上述した第2の実施の形態による収容箱51と同様に、閉状態から開状態に移行する際に蓋部が上方に回動しようとするとき、係止状態が解除されるために必要な力(W)が、係止部が平面視中央に水平に位置する場合のもの(W)に比して大きくなる。そのため、係止状態の安定性が向上する。
【0077】
又、収容箱71にあっては、被係止部85は、図の二点鎖線で囲って示すように、右側面下方折り曲げシート(図示せず)の内面において平面シート83の右側縁84と右側面第二後方折り曲げシート72の上縁73とに囲われる箇所であって、背面部側から正面部側に向かって先細りに延びるものである。
【0078】
このように構成することで、係止部が前方に位置するにつれて、係止部が形成されている蓋部の閉状態における上下可動範囲が狭くなる。例えば、係止部77が図示されるように平面視中央位置にあるときの蓋部79の閉状態における上下可動範囲は図のDの長さに対応する範囲であり、係止部77が平面視中央より前方に位置するときの上記上下可動範囲は図のDの長さに対応する範囲であり、上記Dの長さに対応する範囲より狭いものである。ここで、蓋部79の閉状態における上下可動範囲が相対的に狭い場合は、収容箱71の閉状態において蓋部79が若干開いた状態となってしまう虞が減少する。これとは逆に、係止部77がより後方に位置しており上記上下可動範囲が相対的に広い場合は、収容箱71を開状態から閉状態に移行させるために必要な蓋部79を下方に押し込む距離(角度)を減少させることができ、主に紙からなる蓋部79の形状が潰れた状態で固定されてしまう事態(背面シート74の上縁75に曲がり癖が付いてしまうこと)を防止し、保形性を向上させることができる。即ち、収容箱71は、係止部77の位置を前後方向に調整することで、収容箱71の蓋部79の上下可動範囲を所望の範囲とすることができ、収容箱71の閉状態の安定性を制御することができる。
【0079】
このように、本発明の収容箱は、係止部の係止状態におけるモーメントを調整するという新規な着想に基づいて、従来の収容箱から基本的な全体構造を変更することなく係止力を向上させることに成功したものである。
【0080】
ここで、本発明の収容箱が備えるフラップについて、第1の実施の形態の収容箱1を用いて説明する。
【0081】
戻って図2及び図3を参照して、上述したように、右側面上方折り曲げシート17には、右側面上方折り曲げシート17の上縁36に折り曲げ自在に接続され、平面部4の一部を覆うように平面視において半円が後方(背面部3側)に偏心した形状のフラップ38が形成されている。フラップ38の基本的な機能としては、例えば図示しない収容物が薄膜体からなる巻筒体であって該薄膜体を収容箱1外部に引き出して使用する場合に、巻筒体全体が収容箱1外部に抜け出てしまうことを防止するものである。即ち、収容物の浮き上がりを抑制するものである。
【0082】
ここで、従来のフラップは、日本国特開2013-63785号公報に開示されているように、平面視中央位置に形成された係止部(係合突起)に対応して平面視略矩形状のフラップ(折込み片)も平面視中央位置において内方に延び、平面部の一部を覆うように形成されていた。しかしながら、上述した第1の実施の形態の収容箱1のように、係止部37が平面視中央より前方に位置する場合であって、係止部37に対応して平面視略矩形状のフラップを平面視中央より前方に位置させたときには、収容物が収容箱に対応した大きさの上記巻筒体である場合には、収容箱の開状態において引き出した薄膜体がフラップに引っ掛かりスムーズな引き出しが阻害される虞があった。
【0083】
これに対し、本発明に係る収容箱1のフラップ38にあっては、平面視において半円が後方に偏心した形状であるため、正面部2側でフラップ38が正面シート11と接することがなく、上述した薄膜体のスムーズな引き出しが阻害される虞が減少したものである。又、背面部3側でもフラップ38が内方に突出する度合いが大きくなることにより、収容物の浮き上がりがより抑制されたものである。
【0084】
尚、上述した各実施の形態では、収容箱及びこれを構成する各シートが特定の形状であったが、他の形状であっても良い。即ち、用途や収容物の形状に応じて収容箱の全体形状を変更しても良く、例えば立方体形状や、縁が湾曲線状のものや、切欠が形成されているもの等も本発明の収容箱に含まれる。又、特定面の一部を覆ったり一部に固定されたりしていた各シートの形状もこれに限定されず、例えば特定面の全部を覆ったり他の面にも重複して固定されるように構成しても良い。
【0085】
又、図3に示したような展開図は本発明の収容箱の展開図の一例であり、このように展開することが可能な収容箱であれば良く、他の展開方法を採用した形状のシート体からなるものも本発明の収容箱に含まれる。例えば上述した各実施の形態では、右側面上方折り曲げシートは底面シートの右側縁に折り曲げ自在に接続されていたが、右側面上方折り曲げシートは底面シートの右側縁とは分離され、右側面第一後方折り曲げシートの下縁に折り曲げ自在に接続されたものであっても良い。
【0086】
更に、上述した各実施の形態では、収容箱は主に紙からなるものであったが、紙の表面に樹脂層、印刷層やアルミニウム等の金属層等を形成しても良いし、紙以外の素材からなるものであっても良い。
【0087】
更に、上述した各実施の形態において、収容箱の正面下方折り曲げシート(残存部分)の先端に刃を備え、最初の使用時に除去部分を切り取ることで刃先が露出するように構成しても良い。このようにすると、収容物が食品包装用ラップフィルムやアルミホイル箔といった巻筒体である場合には刃によって所望の大きさでカットすることができる。
【0088】
更に、上述した各実施の形態では、係止部が特定形状の外方突出片であったが、部分的に突き出たものであって被係止部と係止することにより収容箱の閉状態における係止状態を生じさせることができるものであれば良く、例えば突起状や板状のもの、特定縁や面の凹凸により形成された突出部分、接着剤等により特定縁や面に接続され外方に突出するもの等であっても良い。
【0089】
更に、上述した各実施の形態では、被係止部が特定部分であったが、係止部が係止することのできるものであれば他の形態の部分であっても良い。例えば、右側面下方折り曲げシートの閉状態における係止部に対応する位置及び形状に形成された貫通孔であっても良い。
【0090】
更に、上述した各実施の形態では、フラップが形成されており係止部は右側面上方折り曲げシートのミシン目である上部折り曲げ線の一部に接続されていたが、フラップが形成されていなくとも良く、フラップが存在しない場合には係止部は右側面上方折り曲げシートの上縁の一部に接続されていれば良い。
【0091】
更に、上述した第2の実施の形態にあっては、係止部は右側面上方折り曲げシートの上縁の平面視中央に位置するものであったが、上述した第1の実施の形態と同様に係止部が右側面上方折り曲げシートの上縁(上部折り曲げ線)の平面視中央よりも前方に位置するものであっても良い。このように構成することで、収容箱が閉状態から開状態に移行する際に係止状態が解除されるために必要な力が、係止部が平面視中央に位置する場合や右側面上方折り曲げシートの上縁がその下縁と平行である場合に比して大きくなるため、係止状態の安定性が更に向上する。
【0092】
更に、上述した第2の実施の形態にあっては、係止部は右側面上方折り曲げシートの上縁の平面視中央に位置するものであったが、中央よりも後方にあってもL>Lとなる位置関係であれば良い。
【0093】
更に、上述した第2又は第3の実施の形態にあっては、右側面下方折り曲げシートの上縁が水平(その下縁と平行)であったが、右側面上方折り曲げシートの上縁の前傾形状に対応して、右側面下方折り曲げシートをその上縁が背面部側から正面部側に向かって下方に傾斜する(前傾する)ように構成しても良い。この場合も、係止部及び右側面第二後方折り曲げシートが前傾していることは上述した第2又は第3の実施の形態と同様であるため、係止状態が解除されるために必要な力が、係止部が水平に位置する場合に比して大きくなる。そのため、係止状態の安定性が向上する。又、収容箱の正面下方折り曲げシート(残存部分)の先端に刃を備え、収容物である薄膜体を引き出して刃先で切断して使用する場合には、上記のように構成することで刃先が薄膜体により密着するようになり、使用勝手が向上する。
【0094】
更に、上述した各実施の形態では、右側面第二後方折り曲げシートを有していたが、右側面第二後方折り曲げシートがなくとも良い。
【産業上の利用可能性】
【0095】
以上のように、本発明に係る収容箱は、例えば、アルミホイル等のシート体を巻き取った巻回物等を収容するのに適している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8