IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ブリストル−マイヤーズ スクイブ カンパニーの特許一覧

特許7372837薬物動態エンハンサーを含む修飾リラキシンポリペプチドおよびその使用
<>
  • 特許-薬物動態エンハンサーを含む修飾リラキシンポリペプチドおよびその使用 図1
  • 特許-薬物動態エンハンサーを含む修飾リラキシンポリペプチドおよびその使用 図2
  • 特許-薬物動態エンハンサーを含む修飾リラキシンポリペプチドおよびその使用 図3
  • 特許-薬物動態エンハンサーを含む修飾リラキシンポリペプチドおよびその使用 図4
  • 特許-薬物動態エンハンサーを含む修飾リラキシンポリペプチドおよびその使用 図5
  • 特許-薬物動態エンハンサーを含む修飾リラキシンポリペプチドおよびその使用 図6
  • 特許-薬物動態エンハンサーを含む修飾リラキシンポリペプチドおよびその使用 図7
  • 特許-薬物動態エンハンサーを含む修飾リラキシンポリペプチドおよびその使用 図8
  • 特許-薬物動態エンハンサーを含む修飾リラキシンポリペプチドおよびその使用 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】薬物動態エンハンサーを含む修飾リラキシンポリペプチドおよびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/64 20060101AFI20231025BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20231025BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 9/06 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 27/12 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20231025BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20231025BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20231025BHJP
   C07K 7/00 20060101ALN20231025BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20231025BHJP
【FI】
C07K14/64
C07K14/47 ZNA
A61K38/02
A61P9/00
A61P9/06
A61P9/04
A61P9/12
A61P9/10
A61P43/00 121
A61P43/00 105
A61P1/16
A61P3/06
A61P11/00
A61P13/12
A61P27/12
A61P27/02
A61P1/18
A61P17/00
A61P1/04
A61P17/02
A61P19/02
A61P25/02
A61P9/10 101
A61K9/127
A61K47/64
C07K7/00
C12N15/12
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2019563353
(86)(22)【出願日】2018-02-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-27
(86)【国際出願番号】 US2018017436
(87)【国際公開番号】W WO2018148419
(87)【国際公開日】2018-08-16
【審査請求日】2021-02-05
(31)【優先権主張番号】62/456,161
(32)【優先日】2017-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/627,411
(32)【優先日】2018-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391015708
【氏名又は名称】ブリストル-マイヤーズ スクイブ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL-MYERS SQUIBB COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(74)【代理人】
【識別番号】100162695
【弁理士】
【氏名又は名称】釜平 双美
(74)【代理人】
【識別番号】100156155
【弁理士】
【氏名又は名称】水原 正弘
(72)【発明者】
【氏名】ジーン・エム・ドゥボーチック
(72)【発明者】
【氏名】オーラヴル・エス・グズムンドソン
(72)【発明者】
【氏名】シャオジュン・ハン
(72)【発明者】
【氏名】アール・マイケル・ローレンス
(72)【発明者】
【氏名】ダーサ・リポヴシェク
(72)【発明者】
【氏名】コート・エス・マドセン
(72)【発明者】
【氏名】クラウディオ・マペッリ
(72)【発明者】
【氏名】ポール・イー・モーリン
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・シー・マイヤーズ
【審査官】中山 基志
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-542715(JP,A)
【文献】特表2016-531156(JP,A)
【文献】特表2014-529293(JP,A)
【文献】国際公開第2016/149501(WO,A2)
【文献】特表2016-536306(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K1/00-19/00
A61K38/00-38/58
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非自然コード化のアミノ酸を含む修飾リラキシンポリペプチドであって、ここで:
(a)該修飾リラキシンポリペプチドは、A鎖残基1にて非自然コード化のアミノ酸で置換される、配列番号:4のリラキシンA鎖ポリペプチド、および配列番号:5または配列番号:6のリラキシンB鎖ポリペプチドからなり;
(b)該非自然コード化のアミノ酸は、パラ-アセチル-フェニルアラニンであり;
(c)該非自然コード化のアミノ酸は、薬物動態エンハンサーと連結し、該薬物動態エンハンサーは該修飾リラキシンポリペプチドのインビボにおけるタンパク質分解または他の活性を減少させる化学修飾を防ぎ、遅らせ、または軽減させ、および/または該修飾リラキシンの血清半減期を増加させるものであって、ペプチド成分および血清半減期拡張部分からなり、ここで、前記血清半減期拡張部分は、-C13-COOH、-C14-COOH、および-C15-COOHから選択され、ならびに該ペプチド成分は、GGGGS-Gluγ(配列番号:139)、DRDDRD(配列番号:102)、KKKKKK-Gluγ(配列番号:103)、RGGEEKKKEKEK-Gluγ(配列番号:104)、GGGEEE-Gluγ(配列番号:105)、EEEGGG-Gluγ(配列番号:106)、KKKGGG-Gluγ(配列番号:107)、GGGKKK-Gluγ(配列番号:109)、GSHHHHHGS-Gluγ(配列番号:110)、Sar-Sar-Sar-Sar-Ser-Gluγ(配列番号:112)、Sar-Sar-Sar-Glu-Glu-Gluγ(配列番号:113)、およびKSGGSGG-Gluγ(配列番号:117)からなる群から選択される
修飾リラキシンポリペプチド。
【請求項2】
該ペプチド成分が、GGGGS-Gluγ(配列番号:139)である、請求項1に記載の修飾リラキシンポリペプチド。
【請求項3】
該薬物動態エンハンサーが、GGGGS-Glu γ -C14-COOH、DRDDRD-C13-COOH、KKKKKK-Glu γ -C13-COOH、RGGEEKKKEKEK-Glu γ -C13-COOH、GGGEEE-Glu γ -C13-COOH、EEEGGG-Glu γ -C13-COOH、EEEGGG-Glu γ -C15-COOH、KKKGGG-Glu γ -C13-COOH、GGGKKK-Glu γ -C13-COOH、GSHHHHHGS-Glu γ -C13-COOH、Sar-Sar-Sar-Sar-Ser-Glu γ -C13-COOH、Sar-Sar-Sar-Glu-Glu-Glu γ -C13-COOH、およびKSGGSGG-Glu γ -C13-COOHからなる群から選択される、請求項1に記載の修飾リラキシンポリペプチド。
【請求項4】
血清半減期拡張部分が-C14-COOHである、請求項1または2に記載の修飾リラキシンポリペプチド。
【請求項5】
非自然コード化のアミノ酸が、オキシム連結を介して薬物動態エンハンサーと連結する、請求項1~4のいずれか一項に記載の修飾リラキシンポリペプチド。
【請求項6】
リラキシンB鎖が配列番号:6のポリペプチドである、請求項1~のいずれか一項に記載の修飾リラキシンポリペプチド。
【請求項7】
【化1】
[式中、AQ1-リラキシンは配列番号:35に対して100%のアミノ酸配列同一性を有するリラキシンA鎖ポリペプチド、および配列番号:5または配列番号:6に対して100%のアミノ酸配列同一性を有するリラキシンB鎖ポリペプチドからなり、ここで式III中に示される修飾パラ-アセチル-L-フェニルアラニンが該リラキシンA鎖ポリペプチドのN-末端に位置する]
を含む、修飾リラキシンポリペプチド。
【請求項8】
AQ1-リラキシンが配列番号:35のリラキシンA鎖ポリペプチドおよび配列番号:6のリラキシンB鎖ポリペプチドからなる、請求項に記載の修飾リラキシンポリペプチド。
【請求項9】
図8にて示される構造を有するか、または図9にて示される構造を有する、修飾リラキシンポリペプチド。
【請求項10】
下記式IIIで示される修飾リラキシンポリペプチドであって、式中のAQ1-リラキシンは、配列番号:35のリラキシンA鎖ポリペプチドおよび配列番号:6のリラキシンB鎖ポリペプチドからなるものであって、ここで該AQ1-リラキシンの修飾パラ-アセチル-L-フェニルアラニンが、式III:
【化2】
にて示されるように、GGGGS-Gluγ(配列番号:139)-C14-COOHと連結する、修飾リラキシンポリペプチド。
【請求項11】
(a)修飾リラキシンポリペプチドが生物学的に活性であるか;
(b)修飾リラキシンポリペプチドがリラキシンと関連付けられる1または複数の疾患または症状を治療するのに治療的に効果的であるか;
(c)修飾リラキシンポリペプチドが、20kDa PEGに連結するAQ1-リラキシンと比べて、より少ない腎臓中空胞の形成をもたらすものであって、該AQ1-リラキシンは請求項7~10のいずれか一項に記載されるとおり定義され;
(d)修飾リラキシンポリペプチドが、20kDa PEGに連結するAQ1-リラキシンと比べて、腎機能の損傷が全くないか、またはその減少をもたらすものであって、該AQ1-リラキシンは請求項7~10のいずれか一項に記載されるとおり定義され;
(e)修飾リラキシンポリペプチドが、投与後に、腎血流を減少させることなく;
(f)修飾リラキシンポリペプチドが、投与後に、腎血流の増大能を有し;
(g)修飾リラキシンポリペプチドが修飾されていないリラキシンと比べてインビボでの血清半減期の増加を示すか;および/または
(h)インビボでの血清半減期が、修飾されていないリラキシンと比べて、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、または少なくとも50倍で増加する、
請求項1~10のいずれか一項に記載の修飾リラキシンポリペプチド。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の修飾リラキシンポリペプチド、および医薬的に許容される担体を含む医薬組成物であって、リラキシン関連障害を治療するのに効果的な量の請求項1~11のいずれか一項に記載の修飾リラキシンポリペプチドを含む、医薬組成物。
【請求項13】
リラキシン関連の疾患の治療用の医薬の製造における請求項1~11のいずれか一項に記載の修飾リラキシンポリペプチドまたは請求項12に記載の組成物の使用。
【請求項14】
該疾患が
(a)心臓血管疾患;または
(b)心不全の徴候
から選択される、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
該疾患が
(a)冠動脈疾患、心臓発作、不整脈、心不全、心筋症、および血管疾患から選択される心臓血管疾患;あるいは
(b)進行性心不全、心臓-腎臓症候群、腎機能の損傷に伴う心不全、慢性心不全、ミッドレンジ駆出率での慢性心不全(HFmEF)、急性心不全、ポスト急性心不全、代償性心不全、非代償性心不全、右心不全、左心不全、グローバル心不全、虚血性心筋症、拡張型心筋症、先天性心臓欠陥に付随する心不全、心臓弁の欠陥に付随する心不全、複合した心臓弁の欠陥に付随する心不全、糖尿病性心不全、アルコール性心筋症、心臓貯蔵障害に付随する心不全、拡張期心不全、収縮期心不全、心筋梗塞後リモデリング、駆出率が保持された心不全(HFpEF)、駆出率の低下した心不全(HFrEF)、狭心症、高血圧、肺高血圧、および肺動脈高血圧のうちのいずれかを含む、心不全またはこれに付随する疾患の徴候
から選択される、請求項13または14に記載の使用。
【請求項16】
該疾患が、
(i)慢性心不全、急性心不全、ポスト急性心不全、駆出率の低下した慢性心不全(HFrEF)、駆出率が保持された慢性心不全(HFpEF)、ミッドレンジ駆出率での慢性心不全(HFmEF)、拡張期心不全、収縮期心不全、心筋梗塞後リモデリング、狭心症、高血圧、肺高血圧、および肺動脈高血圧;または
(ii)ポスト急性心不全、進行性心不全、心臓-腎臓症候群、および腎機能の損傷に伴う心不全
を含む、請求項13~15のいずれか一項に記載の使用。
【請求項17】
ACE阻害剤、β-ブロッカー、利尿剤、ミネラルコルチコイド受容体アンタゴニスト、リアノジン受容体モジュレータ、SERCA2aアクチベータ、レニン阻害剤、カルシウムチャネルブロッカー、アデノシンA1受容体アゴニスト、部分アデノシンA1受容体、ドーパミンβ-ヒドロキシラーゼ阻害剤、アンジオテンシンII受容体アンタゴニスト、細胞シグナル化経路を選択するためにバイアスしたアゴニズムを有するアンジオテンシンII受容体アンタゴニスト、アンジオテンシンII受容体アンタゴニストおよびネプリライシン酵素阻害剤の組み合わせ、ネプリライシン酵素阻害剤、可溶性グアニル酸シクラーゼアクチベータ、ミオシンATPアーゼアクチベータ、rho-キナーゼ1阻害剤、rho-キナーゼ2阻害剤、アペリン受容体アゴニスト、ニトロキシル供与性化合物、カルシウム-依存性キナーゼII阻害剤、抗線維化剤、ガレクチン-3阻害剤、バソプレシン受容体アンタゴニスト、FPR2受容体モジュレータ、ナトリウム利尿ペプチド受容体アゴニスト、一過性受容体潜在的バニロイド-4チャネルブロッカー、抗不整脈剤、If「奇異性電流」チャネルブロッカー、ニトレート、ジギタリス化合物、変力剤、β-受容体アゴニスト、細胞膜リシーリング剤、抗脂質異常症剤、血漿中HDL上昇剤、抗-高コレステロール血症剤、コレステロール生合成阻害剤、LXRアゴニスト、FXRアゴニスト、プロブコール、ラロキシフェン、ニコチン酸、ナイアシンアミド、コレステロール吸収阻害剤、胆汁酸抑制剤、アニオン交換樹脂、四級アミン、コレスチルアミン、コレスチポール、低比重リポタンパク質受容体誘発剤、クロフィブラート、フェノフィブラート、ベザフィブラート、シプロフィブラート、ゲムフィブリゾール、ビタミンB6、ビタミンB12、抗酸化ビタミン、抗糖尿病剤、血小板凝集阻害剤、フィブリノーゲン受容体アンタゴニスト、アスピリン、フィブリン酸誘導体、PCSK9阻害剤、およびP2Y12阻害剤より選択される少なくとも1つのさらなる治療剤の使用をさらに含む、請求項13~16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
線維症に付随する疾患の治療用の医薬の製造における請求項1~11のいずれか一項に記載の修飾リラキシンポリペプチドまたは請求項12に記載の組成物の使用。
【請求項19】
(a)線維症に付随する疾患が、心臓、肺、腎臓、骨髄または肝臓の線維症、皮膚線維症、または線維性眼障害を含み、および/または
(b)線維症に付随する疾患が、肝線維症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝硬変、プレ肝硬変、びまん性実質性肺疾患、嚢胞性線維症、肺線維症、進行性塊状線維症、特発性肺線維症、インジェクション線維症、腎線維症、慢性腎疾患、糖尿病性腎疾患、巣状分節状糸球体硬化症、膜性腎症、IgA腎症、骨髄線維症、心不全、代謝性心不全、心臓線維症、白内障線維症、白内障、眼瘢痕、膵臓線維症、皮膚線維症、腸線維症、腸狭窄、心内膜心筋線維症、心房線維症、縦隔線維症、クローン病、後腹膜線維症、ケロイド、腎性全身性線維症、強皮症、全身性硬化症、関節線維症、ペイロニー症候群、デュピュイトラン拘縮、糖尿病性ニューロパシー、癒着性関節包炎、アルコール性肝疾患、肝脂肪症、ウイルス性肝炎、胆管疾患、原発性ヘモクロマトーシス、薬物関連肝硬変、原因不明肝硬変、ウィルソン疾患、アルファ1-抗トリプシン欠損症、間質肺疾患(ILD)、ヒト線維性肺疾患、黄斑変性、レチナール網膜症、硝子体網膜症、心筋線維症、グレーブス眼症、薬物誘発性エルゴチン中毒、心臓血管疾患、アテローム性動脈硬化症/再狭窄、肥厚性瘢痕、原発性または特発性骨髄線維症、炎症性腸疾患、およびコラーゲン蓄積大腸炎から選択される、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
(a)別の抗線維症剤の使用、または
(b)ニンテダニブ、ピルフェニドン、LPA1アンタゴニスト、LPA1受容体アンタゴニスト、GLP1アナログ、トラロキヌマブ(IL-13、AstraZeneca)、ビスモデギブ(ヘッジホッグアンタゴニスト、Roche)、PRM-151(ペントラキシン-2、TGFベータ-1、Promedior)、SAR-156597(二重特異性Mab IL-4&IL-13、Sanofi)、シムツズマブ((抗リシルオキシダーゼ様2(抗LOXL2)抗体、Gilead)、CKD-942、PTL-202(PDE阻害剤/ペントキシフィリン/NAC経口放出制御、Pacific Ther.)、オミパリシブ(経口PI3K/mTOR阻害剤、GSK)、IW-001(経口溶液、ウシV型コラーゲン修飾、ImmuneWorks)、STX-100(インテグリンアルファV/ベータ-6アント、Stromedix/Biogen)、アクティミューン(IFNガンマ)、PC-SOD(ミジスマーゼ;吸入剤、LTT Bio-Pharma/CKD Pharm)、レブリキズマブ(抗IL-13 SCヒト化mAb、Roche)、AQX-1125(SHIP1アクチベーター、Aquinox)、CC-539(JNK阻害剤、Celgene)、FG-3019(FibroGen)、SAR-100842(Sanofi)、およびオベチコール酸(OCAまたはINT-747、Intercept)のうちの1つまたはそれ以上の使用
をさらに含む、請求項18または19に記載の使用。
【請求項21】
腎不全の治療または予防のための、あるいは腎機能の改善、安定化または修復のための医薬の製造における請求項1~11のいずれか一項に記載の修飾リラキシンポリペプチドまたは請求項12に記載の組成物の使用。
【請求項22】
請求項1~11のいずれか一項に記載の修飾リラキシンポリペプチドを製造する方法であって、
(a)リラキシンA鎖およびリラキシンB鎖からなるポリペプチドを提供し、ここで該ポリペプチドは非自然コード化のアミノ酸を含み;および
(b)該非自然コード化のアミノ酸を薬物動態エンハンサーに連結する
ことを含み、ここで:
(i)非自然コード化のアミノ酸が、オキシム連結により薬物動態エンハンサーに連結され;および/または(ii)該非自然コード化のアミノ酸がリボソームで該ポリペプチドに組み込まれる、方法。
【請求項23】
非自然コード化のアミノ酸が、カルボニル基とアミノオキシ基との反応により形成されるオキシム連結により薬物動態エンハンサーに連結され、ここで該カルボニル基は該非自然コード化のアミノ酸の置換基であり、該アミノオキシ基は該薬物動態エンハンサーの構成要素であるか、または該アミノオキシ基は該非自然コード化のアミノ酸の置換基であり、該カルボニル基は該薬物動態エンハンサーの構成要素である、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の開示)
本願は、2018年2月7日付け出願の米国仮特許出願番号62/627,411および2017年2月8日付け出願の米国仮出願番号62/456,161の利益を主張するものであり、上記のすべての出願の全内容は出典明示により本明細書に組み込まれるものとする。
【0002】
(配列の開示)
本願は、その内容の一部として、2018年2月8日付けで作成された、大きさが150,746バイトであって、ファイル名が「46561o2413.txt」のファイルに入れられた、配列表を包含するものであって、それは出典明示により本明細書に組み込まれるものとする。
【背景技術】
【0003】
本開示は、一般に、薬物動態エンハンサーを含む修飾ヒトリラキシン2ポリペプチドなどの修飾リラキシンポリペプチドに、およびかかるポリペプチドを心血管症状(心不全など)および線維症に関連する症状を治療するために用いるなどの治療的使用に関する。例示としての実施態様において、該薬物動態エンハンサーは、リボソームを用いてリラキシンポリペプチド中に組み込むことのできる、非自然コード化のアミノ酸と連結する。
【0004】
心不全(HF)については、合衆国で推定5.8百万人の、世界中で23百万人より多くの患者がおり、今日の医療制度に対して多大な負担を示す(Rogerら、2012. Circulation, 125(1): e2-e220)。HFの症候は心拍出量が不適切である結果であり、その疾患の段階の進行に応じて衰弱させうる。HFの主たる症候および兆候として、1)左心室から前方への流れが非効率であり、肺毛細血管床での圧力が増加するため、肺水腫より生じる呼吸困難(息が苦しい);2)右心室が体静脈還流を調節できない場合に生じる下肢の浮腫;および3)不全心臓が身体の代謝要求を満たすのに十分な心拍出量を維持することができないことが原因の疲労が挙げられる(Kemp & Conte、2012. Cardiovascular Pathology, 21:365-371)。
【0005】
多くの寄与性疾患、リスク因子、および病理学的変化は、最終的に、心不全に至りうる(Jessup & Brozena、2003. N Engl J Med, 348(20): 2007-2018)。HFの病態生理学に関与していると考えられる損傷事象は、心筋梗塞などの極めて急性の損傷から生涯にわたる高血圧などのより慢性の損傷までの範囲に及ぶ。死亡率は、HFの人々の約50%が診断から5年以内に死亡すると、高いままである(Rogerら、2012. Circulation, 125(1): e2-e220;Rogerら、2004. Jama, 292(3): 344-50)。心不全が有意に満たされていない医療ニーズを示しているのは明らかである。
【0006】
ヒトリラキシン2ホルモン(H2リラキシンとも称される)は、分娩前の生殖器官の改修に関与し、そうして出生過程を容易にすることが知られている、53個のアミノ酸からなる6kDaのペプチドである。リラキシンはその大部分が妊娠のホルモンであるが、妊娠していない女性ならびに男性においても検出されている。ヒトリラキシンは、インスリン、多数のインスリン様ペプチド(INSL3-6)およびインスリン様成長因子(IGFIおよびIGFII)を含む、インスリンペプチドファミリーの一構成員である(Van Der Westhuizenら、2007. Curr Drug Targets, 8(1): 91-104)。これらのヘテロ二量体ペプチドは、すべて、各々が2つのジスルフィド結合によって結び付けられる2個のペプチド鎖(A&B)を含み、A-鎖が1個の分子内ジスルフィド結合を含有することで構造的に関連付けられる。リラキシンファミリーペプチド受容体1(RXFP1)と称される、リラキシン2の受容体(H2)は、マウスとヒトの間で85%のアミノ酸同一性が保存され、本質的にヒトおよび他の種にて普遍的に発現される(Hallsら、2007. Br J Pharmacol, 150(6): 677-91)。
【0007】
ヒトは妊娠している間は、胎児が強いる栄養学的要求を満たすために、女性の体は、全身性血管抵抗(SVR)にて約30%の有意な減少を、そして同時に心拍出量にて約50%の増加を経験する(Jeyabalan、2010:Renal and Electrolyte Disorders. Lippincott Williams & Wilkins. 462-518;ClappおよびCapeless、1997. Am J Cardiol, 80(11):1469-73)。さらなる血管適応性(vascular adaptation)として、効果的な心室-血管のカップリングを維持するのに重要である全動脈コンプライアンスが約30%増加すること、ならびに代謝廃棄物を排除するのに重要である腎血流(RBF)および糸球体濾過速度(GFR)の両方が約50%増加することが挙げられる(Jeyabalan、2010:Renal and Electrolyte Disorders. Lippincott Williams & Wilkins. 462-518;Poppasら、1997. Circulation, 95(10):p. 2407-15)。齧歯動物での前臨床実験ならびに種々の患者セッティングで行われる臨床実験は、その両方で、リラキシンが、これらの適応性生理学的変化の介在において、少なくともある程度は、関与しているとの証拠を提供する(Conrad、2011. Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol, 301(2)、R267-275;Teichmanら、2009. Heart Fail Rev, 14(4)、321-329)。これらの適応性応答の多くは、過度の線維症、不十分な動脈コンプライアンスおよび不十分な腎機能のすべてが、心不全の患者に共通する特性であるという点で、HF患者に有益であるようである(Mohammedら、2015. Circulation、131(6)、550-559)、(Wohlfahrtら、2015. Eur J Heart Fail, 17(1)、27-34;Dammonら、2011. Prog Cardiovasc Dis, 54(2), 144-153)。推定30%のHFの患者は中程度ないし重度の腎障害を患っているため(TriposkiadisおよびSkoularigis、2012. Curr Heart Fail Rep,(4):354-62)、血管の流れと電解質の取り扱いの両方を改善することによるリラキシンなどの薬剤は、HF患者に特に効果的である可能性がある。
【0008】
リラキシンペプチドは薬物動態半減期が短く:HFの治療のために開発された組換えヒトリラキシンペプチドである、セリラキシン(Serelaxin)は、第1相の薬物動態半減期が5-15分間と短く、治療的に有用であるためには48時間の連続的静脈内注入を必要とする(REASANZ(serelaxin)Briefing Document Prepared by Novartis for FDA Cardiovascular and Renal Drugs Advisory Committee Meeting. February 26、2014)。心不全のような慢性疾患では、改善された薬物動態特性を有するリラキシン分子は、連続的静脈内注入を超越して、慢性疾患に罹患している患者のための治療剤としてより受け入れやすい、別の経路で薬物を投与する機会を提供する。
【発明の概要】
【0009】
本明細書にて、非自然コード化のアミノ酸を含む修飾リラキシンポリペプチドであって、ここで(a)リラキシンポリペプチドが、A鎖残基1、A鎖残基2、A鎖残基5、A鎖残基13、A鎖残基18、B鎖残基5、B鎖残基7、およびB鎖残基25からなる群より選択される位置で、非自然コード化のアミノ酸で置換されており、該リラキシンA鎖および/または該リラキシンB鎖にて2個までのさらなるアミノ酸置換、挿入、および/または欠失を所望により有してもよい、配列番号:4のリラキシンA鎖ポリペプチドおよび配列番号:5または配列番号:6のリラキシンB鎖ポリペプチドを含み、(b)該非自然コード化のアミノ酸が、構造式:
【化1】
【0010】
[式中、R基は、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシンまたはバリンにおいて見られる側鎖以外のいずれかの置換基である]
で示され;および(c)該非自然コード化のアミノ酸が、2と30個の間のアミノ酸のペプチド成分および半減期拡張部分を含む薬物動態エンハンサーと連結している、修飾リラキシンポリペプチドが提供される。
【0011】
本明細書において、式:
【化2】
【0012】
[式中、AQ1-リラキシンは、配列番号:35と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するリラキシンA鎖ポリペプチドと、配列番号:5または配列番号:6と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するリラキシンB鎖ポリペプチドとを含み、式IIIにて示される修飾パラ-アセチル-フェニルアラニンは該リラキシンA鎖ポリペプチドのN-末端に位置付けられる]
で示される構造の、AQ1-GGGGS-Gluγ(配列番号:139)-C14-COOHを含む、修飾リラキシンポリペプチドが提供される。
【0013】
本明細書において記載される、式IIIの構造を有する、AQ1-リラキシン-GGGGS-Gluγ(配列番号:139)-C14-COOHを含む、修飾リラキシンポリペプチド(ここで、AQ1-リラキシンは、配列番号:35のリラキシンA鎖ポリペプチドと、配列番号:6のアミノ酸配列同一性を有するリラキシンB鎖ポリペプチドとを含み、式IIIにて示される修飾パラ-アセチル-フェニルアラニンは該リラキシンA鎖ポリペプチドのN-末端に位置付けられる)も本明細書にて提供される。
【0014】
図8にて示される構造を含む修飾リラキシンポリペプチドも本明細書にて提供される。
【0015】
図9にて示される構造を含む修飾リラキシンポリペプチドも本明細書にて提供される。
【0016】
もう一つ別の態様にて、本明細書に記載の修飾リラキシンポリペプチド、および医薬的に許容される担体を含む、医薬組成物が本明細書にて提供される。
【0017】
もう一つ別の態様にて、リラキシン関連の障害を治療するための本明細書に記載の効果的な量の修飾リラキシンポリペプチド、および医薬的に許容される担体を含む、医薬組成物が本明細書にて提供される。
【0018】
もう一つ別の態様にて、効果的な量の修飾リラキシンポリペプチドまたは本明細書に記載の修飾リラキシンポリペプチドを含む組成物を投与することを含む、リラキシンに関連する疾患の治療方法が本明細書にて提供される。
【0019】
もう一つ別の態様にて、効果的な量の修飾リラキシンポリペプチドまたは本明細書に記載の修飾リラキシンポリペプチドを含む組成物をその必要とする患者に投与することを含む、心血管疾患の治療方法が本明細書にて提供される。
【0020】
もう一つ別の態様にて、効果的な量の修飾リラキシンポリペプチドまたは本明細書に記載の修飾リラキシンポリペプチドを含む組成物をその必要とする患者に投与することを含む、心不全の症候を治療または緩和する方法が本明細書にて提供される。
【0021】
もう一つ別の態様にて、治療的に効果的な量の修飾リラキシンポリペプチドまたは本明細書に記載の修飾リラキシンポリペプチドを含む組成物をその必要とする患者に投与することを含む、線維症に関連する疾患を治療する方法が本明細書にて提供される。
【0022】
もう一つ別の態様にて、治療的に効果的な量の修飾リラキシンポリペプチドまたは本明細書に記載の修飾リラキシンポリペプチドを含む組成物をその必要とする患者に投与することを含む、腎不全を治療または防止する方法が本明細書にて提供される。
【0023】
もう一つ別の態様にて、治療的に効果的な量の修飾リラキシンポリペプチドまたは本明細書に記載の修飾リラキシンポリペプチドを含む組成物を患者に投与することを含む、その必要とする患者にて腎機能を改善、安定化または回復する方法が本明細書にて提供される。
【0024】
もう一つ別の態様にて、本明細書に記載の修飾リラキシンポリペプチドの製造方法であって、(a)該リラキシンA鎖および該リラキシンB鎖を含むポリペプチド(非自然コード化のアミノ酸を含む)を提供する工程;および(b)該非自然コード化のアミノ酸を該薬物動態エンハンサーと連結させる工程を含む、方法が本明細書にて提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】非自然コード化のアミノ酸のない、ヒトリラキシン2ポリペプチドの配列を示す。A鎖(配列番号:4)およびB鎖(配列番号:6)ポリペプチドは、図5に示されるように、ジスルフィド結合によって連結される。B鎖における位置1が、ヒトリラキシン2ポリペプチドB鎖(配列番号:5)(下線が付された位置、図示されるようにアスパラギン酸がアラニンで置換される)と関連して修飾され、そのことで効能に有意に悪影響を及ぼすことなく、製造性を改善することが観察された。本明細書の実施例において、このポリペプチドは「野生型」または「WT-RLX」と称される。
【0026】
図2】A鎖の位置1が非自然コード化のアミノ酸、パラ-アセチル-フェニルアラニン(pAcF、下線部)で置換されている、RLX-AQ1(「AQ1」)、ヒトリラキシン2ポリペプチドの配列を示す。A鎖(配列番号:35)およびB鎖(配列番号:6)は図5に記載される位置でジスルフィド結合によって連結される。
【0027】
図3】B鎖の位置25が非自然コード化のアミノ酸、パラ-アセチル-フェニルアラニン(pAcF、下線部)で置換され、さらにはA鎖の位置1がグルタミンの代わりにアスパラギンで置換される(下線部)、RLX-BM25/AN1(「BM25/AN1」)、ヒトリラキシン2ポリペプチドの配列を示す。A鎖(配列番号:36)およびB鎖(配列番号:37)は図5に記載される位置でジスルフィド結合によって連結される。
【0028】
図4】RLX-AQ1を発現するためのプレプロ-リラキシンポリペプチドを模式的に示す。プレプロ-リラキシンポリペプチド(配列番号:38)はイー・コリ(E. coli)または他の発現系にて発現される。pAcFなどの非自然コード化のアミノ酸は、リボソームでプレプロ-リラキシンポリペプチド配列に組み込まれ、薬物動態エンハンサー(「PK拡張部」)とのその後の連結を容易にしうる。イー・コリ発現に特異的なリーダー配列は灰色の円で示される。プロインスリンにて、ペプチド切断部位を添加し、LysをGlyに置換して誘導されるC-ペプチド(結合ペプチド)は黒色の円で示される。リーダー配列およびC-ペプチドは酵素切断(非標識矢印により示される切断部位)により除去される。B鎖残基1(「B1」)(配列番号:6中に存在する)でのアラニン置換は、リーダー配列の除去を助成する。部位特異的PKエンハンサー結合のためのpAcF残基が表示されている。A鎖およびB鎖をRLN2と命名されたHUGOと並べ、それはリラキシン2転写変異体1cDNA(refseqNM 134441)から誘導される。
【0029】
図5】A鎖の位置1で非自然コード化のアミノ酸を通して薬物動態エンハンサー(「PK」)に連結する、A鎖(配列番号:36)およびB鎖(配列番号:6)を含む、成熟RLX-AQ1の構造を示す。
【0030】
図6】qRT-PCRを用いてmRNA濃度を測定し、TGF-ベータヒト心臓線維芽細胞での平滑筋アルファ-アクチン遺伝子発現の変化に対するWT-RLX(図6A)およびAQ1-GGGGS-Gluγ(配列番号:139)-C14-COOH(図6B)の効果を示す。バーの上にある数字は、ビヒクルだけで基線としてセットしたTGF-ベータに対する減少%を示す。平均値±SEM;*P<0.05、Veh=ビヒクル、nM=ナノモル
【0031】
図7】雌のスプレーグ-ドーリラットにおけるPEG関連の腎皮質細管上皮細胞の空胞化を示す。ラットから由来の腎臓をビヒクルまたはリラキシン類似体を用いて一日に1回皮下(SQ)処理に付した。リラキシン類似体を含有するPEG(図7Bおよび7C)は、大きな合体空胞体の存在により特徴付けられる顕著な皮質管状空胞化を示す。ビヒクル(図7A)または非ペグ化リラキシン(図7D)処理の動物では空胞は観察されない。図7A:ビヒクル(10mMクエン酸バッファー(pH5.5中150mM Arg)SQ 10日間;図7B:AQ1-PEG36-Glu-C13-COOH(1.5kD PEG)SQ 40mg/kg/日、7日間;図7C:AQ1-20-kDa-PEG(20kD PEG)SQ 15mg/kg/日 10日間;図7D:AQ1-GGGGS-Gluγ(配列番号:139)-C14-COOH SQ 40mg/kg 7日間;倍率 40x、H&E
【0032】
図8】式IIIで表されるAQ1-GGGGS-Gluγ(配列番号:139)-C14-COOHの構造
【0033】
図9】式IIIで表されるAQ1-GGGGS-Gluγ(配列番号:139)-C14-COOHの構造
【発明を実施するための形態】
【0034】
定義
【0035】
本明細書および添付した特許請求の範囲において使用されるように、単数形の「a」、「an」および「the」は、文脈で別段の指示がない限り、複数への言及を包含する。かくして、例えば、「リラキシン」、「リラキシンポリペプチド」または「修飾リラキシンポリペプチド」に対する言及は、1または複数のかかるタンパク質に対する言及であり、当業者によって知られるその均等物を包含する。
【0036】
特記されない限り、本明細書において使用されるすべての技術的および科学的用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0037】
「薬物動態拡張部」、「薬物動態エンハンサー」、「PK拡張部」および「PKエンハンサー」なる語は、互換的に使用され、その各々は、所望により非自然コード化のアミノ酸を介して、本明細書に記載の修飾リラキシンポリペプチドに、共有結合(「コンジュゲート」または「縮合」)した、医薬的に許容される部分、ドメインまたは分子であって、修飾されたリラキシンポリペプチドの非コンジュゲート形態または野生型リラキシンポリペプチドなどの比較物と比べて、修飾リラキシンポリペプチドのインビボにおけるタンパク質分解または他の活動減退性化学修飾を妨げ、遅らせ、または軽減し、半減期(血清半減期および/または治療半減期)を延ばし、および/または吸収速度の増加、毒性の減少、溶解性の向上、凝集性の減少、生物活性および/または修飾リラキシンポリペプチドの標的選択性の向上、および/または修飾リラキシンポリペプチドの免疫原性の低下を包含するが、これらに限定されない、他の薬物動態学的または生物物理学的特性を改善または改変する、医薬的に許容される部分、ドメインまたは分子をいう。本明細書に記載のPKエンハンサーは、1または複数のアミノ酸を含むペプチド成分、および半減期拡張部を含んでもよい。
【0038】
「半減期拡張部」なる語は、所望により非自然コード化のアミノ酸を介して、例えばPK拡張部の成分として、本明細書に記載の修飾リラキシンポリペプチドに、直接的にまたはリンカー(例えば、ペプチド成分またはPEG)を介して共有結合(「コンジュゲート」または「縮合」)した、医薬的に許容される部分、ドメインまたは分子であって、修飾リラキシンポリペプチドの非コンジュゲート形態または野生型リラキシンポリペプチドなどの比較物と比べて、半減期(血清半減期および/または治療半減期)を延ばし、および/または吸収速度の増加、毒性の減少、溶解性の向上、凝集性の減少、生物活性および/または修飾リラキシンポリペプチドの標的選択性の向上、製造能の強化、および/または修飾リラキシンポリペプチドの免疫原性の低下を包含するが、これらに限定されない、他の薬物動態学的または生物物理学的特性を改善または改変する、医薬的に許容される部分、ドメインまたは分子をいう。半減期拡張部分なる語は、脂肪酸またはその誘導体、ポリエチレングリコール(PEG)またはディスクリートPEGなどの水溶性ポリマー、ヒドロキシエチル澱粉(HES)、脂質、分岐または非分岐状アシル基、分岐または非分岐状C8-C30アシル基、分岐または非分岐状アルキル基、および分岐または非分岐状C8-C30アルキル基などの非タンパク質性半減期拡張部分;ならびに血清アルブミン、トランスフェリン、アドネクチン(例えば、アルブミン結合性または薬物動態学的拡張性(PKE)アドネクチン)、Fcドメイン、およびXTENおよびPASポリペプチド(例えば、アミノ酸Pro、Ala、および/またはSerからなる、立体配座的に混乱したポリペプチド配列)などの非構造性ポリペプチド、および上記したいずれかの物質のフラグメントを包含するが、これらに限定されない。「リンカー」または「スペーサー」なる語は、半減期拡張部を修飾リラキシンポリペプチドに連結する、いずれの成分であってもよい。典型的なリンカーとして、限定されないが、小型有機化合物、ポリ(エチレングリコール)またはポリデキストランなどの種々の長さの水溶性ポリマー、および長さが例えば、50、40、30、25、20、15、10までの、または6までのペプチドまたはポリペプチドを包含する。
【0039】
「ペプチド成分」なる語は、PK拡張部の成分をいい、長さが50個までのアミノ酸のペプチドを含む。典型的なペプチド成分として、限定されないが、長さが40、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個のアミノ酸のペプチドを包含する。かかるペプチド成分は、本明細書に記載の修飾リラキシンポリペプチドと共有結合してもよい。ある実施態様において、該ペプチド成分は2-50個のアミノ酸を含んでもよい。ある実施態様において、該ペプチド成分は2-30個のアミノ酸を含んでもよい。ある実施態様において、該ペプチド成分は3-20個のアミノ酸を含んでもよい。ある実施態様において、該ペプチド成分は5-10個のアミノ酸を含んでもよい。
【0040】
「安定性」または「熱安定性」なる語は、熱を加えた時に、ポリペプチドがアンフォールディングに抵抗する能力をいう。一般に、分子の熱安定性が高いほど、ポリペプチドがアンフォールドするのに必要な温度は高くなる。ポリペプチドの熱安定性を測定する方法は、例えば、示差走査熱量測定(DSC)および熱走査蛍光法である。熱安定性は、比較化合物と関連して、例えば、ポリペプチドが熱安定性を増大させたことを同定するのに測定されてもよい。
【0041】
「凝集」なる語は、ポリペプチドが他の分子(同じポリペプチドの他の分子など)と非共有結合した複合体を形成する傾向をいい、それによって高分子量の複合体が形成される。凝集体の形成を測定する例示的な方法として、分析性サイズ排除クロマトグラフィーが挙げられる。相対的な凝集量は、比較化合物と関連して、例えば、ポリペプチドが凝集度を減らしたことを同定するのに測定されてもよい。
【0042】
「脱アミド化」なる語は、ポリペプチド内のアミノ酸残基が自発的に脱アミド化反応を受ける傾向をいい、それによりアミノ酸の化学構造が変化し、ポリペプチドの機能に影響を及ぼす可能性がある。脱アミド化を測定する方法として、例えば、画像キャピラリー等電点電気泳動(icIEF)が挙げられる。比較化合物との関連で、脱アミド化の相対量を測定し、例えば、脱アミド化の減少したポリペプチドを同定することができる。
【0043】
「インビボタンパク質分解」なる語は、生体系に導入された時に(例えば、生物内に注入された時に)、該生物において存在するプロテアーゼからもたらされ得る、ポリペプチドの分解をいう。タンパク質分解は、潜在的に、ポリペプチドの生物学的活性または半減期に影響を及ぼし得る。例えば、野生型リラキシンは、切断され、末端切断された不活性なポリペプチドがもたらされるかもしれない。リラキシンのインビボタンパク質分解を測定する方法が、例えば、メソスケールディスカバリー(Meso Scale Discovery、MSD)をベースとする-電気化学発光免疫吸着検定(ECLIA)である。比較化合物との関連で、インビボタンパク質分解の相対量を測定し、例えば、インビボタンパク質分解の減少したポリペプチドを同定することができる。
【0044】
「溶解度」なる語は、もう一つ別の物質に溶解しうる物質の量、例えば、水溶液中に溶けることのできる未修飾または修飾リラキシンポリペプチドの量をいう。未修飾または修飾リラキシンポリペプチドの溶解度を測定する代表的な方法がプラグフロー溶解度試験である。相対的な溶解度は、比較化合物と関連して、例えば、溶解度の高いポリペプチドを同定するのに測定されてもよい。
【0045】
「生物学的活性」または「生物活性」なる語は、限定されないが、ウイルス、細菌、バクテリオファージ、トランスポゾン、プリオン、昆虫、真菌、植物、動物およびヒトを含む、生物に関連する、生物系、生物学的経路、生体分子または生物相互作用のいずれかの物理的または生化学的特性に影響を及ぼし得る、分子の能力をいう。例えば、非修飾または修飾リラキシンとの関連で、生物学的活性は、リラキシンによってなされるいずれの機能も包含する。例えば、「生物学的に活性な」修飾リラキシンポリペプチドは、以下に限定されないが、ヒト、ヒト以外の動物、および/または実験系のいずれであるかにおいて、ヒトおよび非ヒトRXFP1オルソログを含むリラキシン2受容体RXFP1の活性化、ヒトおよび非ヒトオルソログを含むRXFP2などのもう一つ別のリラキシン受容体の活性化、インビボまたはインビトロにおける抗線維化活性、心不全または線維症の治療における効能、ならびに本明細書にて開示される他の生物学的活性、例えば、全身性血管抵抗(SVR)の減少、心拍出量の増加、全動脈コンプライアンス増加、腎血流(RBF)および/または糸球体濾過速度(GFR)の増加を含む、野生型リラキシンの1または複数の生物学的活性を表すことができる。分子が野生型リラキシン(配列番号:4および配列番号:5の野生型リラキシンポリペプチドなど)の少なくとも1つの生物学的活性を有するかどうかを決定する例示的な方法として、インビトロ活性アッセイまたは受容体結合アッセイ、例えば、細胞内cAMP蓄積アッセイを挙げることができる。生物学的活性の相対レベルは、比較化合物に関して、例えば、生物学的活性を有するか、または意図する治療的使用のために十分に高い生物学的活性を有する、例えばインビトロまたはインビボ活性アッセイにおいて、比較化合物のEC50よりも、5倍未満、10倍、20倍未満、50倍未満、または100倍未満で高いEC50を有する、ポリペプチドを同定するために測定されてもよい。
【0046】
本明細書にて記載される比較化合物は、本明細書にて記載される修飾などの、修飾を欠くもう一つ別の配列であってもよい。例えば、比較化合物はPK拡張部との連結を除いて同じ修飾リラキシンポリペプチド配列であってもよい。比較化合物は、例えば、以下に限定されないが、配列番号:4および配列番号:5の野生型リラキシンポリペプチド、配列番号:4および配列番号:6の修飾リラキシンポリペプチド、配列番号:36および配列番号:6の修飾リラキシンポリペプチド、配列番号:35および配列番号:6の修飾リラキシンポリペプチド、またはもう一つ別の比較化合物が挙げられる。ある実施態様において、比較化合物は、リンカー、ポリマー、生物学的に活性な分子、ペプチド、ポリペプチド、または本明細書にて記載される半減期拡張部分(例、PEG、または脂肪酸)と連結することのできる、少なくとも1つの非自然コード化のアミノ酸を含有してもよい。ある実施態様において、比較化合物は、リンカー、ポリマー、生物学的に活性な分子、ペプチド、ポリペプチド、または本明細書にて記載される半減期拡張部分と連結しても、しなくてもよい、少なくとも1つの非自然コード化のアミノ酸を含有してもよい。ある実施態様において、比較化合物はさらなるアミノ酸置換、欠失、および/または挿入を含有してもよい。ある実施態様において、比較はアシル化または非アシル化形態のポリペプチドで行われてもよく;前者の場合には、比較は非自然コード化のアミノ酸を含むか、または含まないポリペプチドで行われてもよい。
【0047】
「対応する」なる語は、対照配列との比較によって同定される、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列の内にある位置(「対応する位置」)または領域(対応する領域」)をいう。対照配列は、配列番号:4および配列番号:5の野生型リラキシンポリペプチドなどの野生型または非修飾配列であってもよい。対応する位置または領域は、対照配列と配列を整列することにより同定されてもよい。例えば、「リラキシンA鎖におけるアミノ酸1に対応する位置」は、配列を配列番号:4と整列した場合に、配列番号:4においてアミノ酸1と同じアライメントカラムにある、配列の位置をいう。そのアライメントにおいて、アミノ酸またはヌクレオチドは、対照配列中の対応する位置にあるアミノ酸またはヌクレオチドと適合してもしなくてもよい。
【0048】
対応する位置または対応する領域を同定するのに使用されるアライメントは、Blast(Altschulら、J Mol Biol. 1990 Oct 5;215(3):403-10)、Smith-Waterman(SmithおよびWaterman、J Mol Biol. 1981 Mar 25;147(1):195-7)、またはNeedleman-Wunsch(NeedlemanおよびWunsch、J Mol Biol. 1970 Mar;48(3):443-53)などの従来のアライメントアルゴリズムを用いて得られてもよい。最高評点のグローバルアライメント(すなわち、ギャップにて開始および/または終結してもよいアライメントであるが、両方の配列においてあらゆる残基を含有するアライメント)を得るために、Needleman-Wunschアルゴリズムを用いてもよい。Blast、Smith-Waterman、またはNeedleman-Wunschのいずれを利用しようとも、最高評点のアライメントは、BLOSUM62評点化マトリックスの使用、11のギャップオープンペナルティ、および1のギャップエクステンドペナルティ、および(対アライメントにBlastを用いる場合に)3のワードサイズなどの、「デフォルト」パラメータを用いて同定され得る。
【0049】
「線維症に付随する疾患」なる語は、線維症の発症が観察されているか、線維症が疾患の原因、進行または徴候に付随または起因することが知られているか、または付随または起因すると考えられるか、あるいは疾患が進行するにつれて発症することが知られているか、または発症すると考えられる、疾患、障害および症状を包含する。線維症は、膵臓、肺、腎臓、肝臓、眼、神経系、骨髄、リンパ節、心内膜心筋、または後腹膜などの器官または組織に影響を及ぼし得る。線維症に付随する疾患として、例えば、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝線維症、プレ肝硬変、肝硬変、びまん性実質性肺疾患、嚢胞性線維症、肺線維症、進行性塊状線維症、特発性肺線維症、インジェクション線維症、腎線維症、慢性腎疾患、糖尿病性腎疾患、巣状分節状糸球体硬化症、膜性腎症、IgA腎症、骨髄線維症、心不全、代謝性心不全、心臓線維症、白内障線維症、白内障、眼瘢痕、膵臓線維症、皮膚線維症、腸線維症、腸狭窄、心内膜心筋線維症、心房線維症、縦隔線維症、クローン病、後腹膜線維症、ケロイド、腎性全身性線維症、強皮症、全身性硬化症、関節線維症、ペイロニー症候群、デュピュイトラン拘縮、糖尿病性ニューロパシー、癒着性関節包炎、アルコール性 肝疾患、肝脂肪症、ウイルス性肝炎、胆管疾患、原発性ヘモクロマトーシス、薬物関連肝硬変、原因不明肝硬変、ウィルソン疾患、アルファ1-抗トリプシン欠損症、間質肺疾患(ILD)、ヒト線維性肺疾患、黄斑変性、レチナール網膜症、硝子体(vitreal)網膜症、心筋線維症、グレーブス眼症、薬物誘発性エルゴチン中毒、心臓血管疾患、アテローム性動脈硬化症/再狭窄、肥厚性瘢痕、原発性または特発性骨髄線維症、および炎症性腸疾患(コラーゲン蓄積大腸炎を含むが、限定されない)が挙げられるが、これらに限定されない。ある実施態様において、線維症に付随する疾患は、肝線維症、腎線維症、肺線維症、および心臓または心線維症を包含してもよい。ある実施態様において、線維症に付随する疾患は肝線維症であってもよい。ある実施態様において、線維症に付随する疾患はNASHであってもよい。
【0050】
「実質的に精製された」なる語は、通常は、その自然発生の環境にて見られるようなタンパク質に付随し、または該タンパク質と相互作用する成分、すなわち、体内にて発生した細胞、または組換え技法により産生された非修飾または修飾リラキシンポリペプチドの場合には宿主細胞を実質的または本質的に含まない、非修飾または修飾リラキシンポリペプチドをいう。細胞材料を実質的に含まない非修飾または修飾リラキシンポリペプチドとして、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、または約1%未満(乾燥または湿式重量%)の汚染タンパク質を有するタンパク質の調製物が挙げられる。かくして、本開示の方法により産生されるような「実質的に精製された」非修飾または修飾リラキシンポリペプチドは、SDS/PAGE分析、RP-HPLC、SECおよびキャピラリー電気泳動法などの適切な方法により測定されるように、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%の純度、具体的には、少なくとも約75%、80%、85%の純度、より具体的には、少なくとも約90%の純度、少なくとも約95%の純度、少なくとも約99%以上の純度を有してもよい。
【0051】
「組換え宿主細胞」または「宿主細胞」は、挿入に使用される方法、例えば、直接的取り込み、形質導入、f-メーティング(f-mating)、または組換え宿主細胞を産生するのに当該分野にて公知の他の方法に関係なく、外因性ポリヌクレオチドを含む、細胞をいう。外因性ポリヌクレオチドは、非挿入性のベクター、例えばプラスミドとして維持されてもよく、あるいはまた、宿主ゲノムに組み込まれてもよい。
【0052】
本明細書において使用されるように、「真核生物」なる語は、動物(哺乳類、昆虫、爬虫類、鳥類等を含むが、限定されない)、繊毛虫類、植物(単子葉植物、双子葉植物、藻類等を含むが、限定されない)、真菌、酵母、鞭毛虫、微胞子虫、原生生物等などの系統発生上のドメインであるユーカリア(Eucarya)に属する生物をいう。
【0053】
本明細書において使用されるように、「非真核生物」なる語は、非真核生物または原核生物をいう。例えば、非真核生物は、真正細菌(エシェリヒア・コリ、サーマス・サーモフィルス、バチルス・ステアロテルモフィルス、シュードモナス・フルオレッセンス、シュードモナス・アエロギノーサ、シュードモナス・プチダ等を含むが、限定されない)の系統発生上のドメイン、またはアルカエア(メタノカルドコックス・ヤンナスキイ、メタノバクテリウム・サーモオウトトロフィカム、ハロフェラックス・ボロカニ、ハロバクテリウム種NRC-1などのハロバクテリウム、アルカエオグロブス・フルギダス、ピュロコックス・フリオスス、ピロコッカス・ホリコシイ、アエロピュルム・ペルニクス等)の系統発生上のドメインに属し得る。
【0054】
本明細書において使用されるように、「培地」なる語は、細菌性宿主細胞、酵母宿主細胞、昆虫宿主細胞、植物宿主細胞、真核生物宿主細胞、哺乳動物宿主細胞、CHO細胞、原核生物宿主細胞、イー・コリまたはシュードモナス宿主細胞、および細胞含有物を含む、いずれの宿主細胞をも支持または含有し得る、培養培地、溶液、固体、半固体または固定支持体を包含する。かくして、該用語は、宿主細胞が増殖している培地、例えば、増殖工程に付す前または後のいずれかの培地を含め、非修飾または修飾リラキシンポリペプチドが分泌されている培地を包含してもよい。該用語はまた、非修飾または修飾リラキシンポリペプチドが細胞内で産生され、その宿主細胞が溶解または破壊されて非修飾または修飾リラキシンポリペプチドを放出するような場合には、宿主細胞ライゼートを含有する緩衝液または試薬を包含してもよい。
【0055】
本明細書において使用されるような「リラキシン」なる語は、特記されない限り、ヒトリラキシン、具体的にはヒトリラキシン2(H2リラキシンまたはRLN2としても知られる)をいい、そのアミノ酸配列および空間的構造は周知である。ヒトリラキシンは、24個のアミノ酸のA-鎖と、29個のアミノ酸のB-鎖とからなり、それらはジスルフィド結合によって架橋されている(図5を参照のこと)。適切に架橋した野生型リラキシンは3個のジスルフィド架橋を含有する:1つはA-鎖の11位とB-鎖の11位の間にあり、2つ目はA-鎖の24位とB-鎖の23位の間にあり、3つ目はA-鎖の10位と15位の間にある。
【0056】
本明細書において使用されるように、「修飾リラキシンポリペプチド」または「修飾リラキシン」は、互換的に使用され、野生型リラキシン(例配列番号:4および配列番号:5の野生型ヒトリラキシン)と異なり、典型的には、リラキシン2、ならびにリラキシンアナログ、リラキシンイソ型、リラキシン模倣体、ポリ多形態(例、自然に生じるリラキシン配列変種)、リラキシンフラグメント、ハイブリッドリラキシンタンパク質、融合タンパク質、オリゴマーおよびマルチマー、ホモログ、糖鎖形成パターン変種、変異体、スプライス変種、およびその突然変異タンパク質の少なくとも1つの生物学的活性を有する、それらのポリペプチドおよびタンパク質を包含する。「修飾リラキシンポリペプチド」および「修飾リラキシン」なる語は、1または複数のアミノ酸置換、付加または欠失を含む、リラキシンポリペプチドを包含する。
【0057】
自然に存在するリラキシンにおける多種多様なアミノ酸の位置での置換は修飾リラキシンポリペプチドに組み込まれてもよい。溶解性または安定性を調節する置換、アゴニスト活性を増大させる置換、インビボまたはインビトロでの半減期を増大させる置換、プロテアーゼ耐性を増大させる置換、免疫原性または毒性を減少させる置換、精製または製造可能性を促進する置換等を含むが、これらに限定されない、置換は、「修飾リラキシンポリペプチド」または「修飾リラキシン」なる語により包含される。ある実施態様において、本明細書にて記載される非自然コード化のアミノ酸置換は、修飾リラキシンポリペプチドの範囲内にて他の付加、置換または欠失と組み合わされ、もう一つ別のリラキシンポリペプチド(例、配列番号:4および配列番号:5の野生型リラキシンポリペプチド、または該付加、置換または欠失なしでの同じリラキシンポリペプチドなどのもう一つ別のリラキシンポリペプチド、あるいはもう一つ別の非修飾または修飾リラキシン、非修飾または修飾ポリペプチド)と比べて、修飾リラキシンポリペプチドの生物学的特徴に影響を及ぼし得る。ある実施態様において、他の付加、置換または欠失は修飾リラキシンポリペプチドの安定性(限定されないが、タンパク質の分解)を増大させるか、または修飾リラキシンポリペプチドのその受容体に対するアフィニティを増大させるかもしれない。ある場合には、他の付加、置換または欠失は修飾リラキシンポリペプチドの医薬安定性を増大させる得る。ある場合には、他の付加、置換または欠失は、修飾リラキシンポリペプチドの溶解性を増大させ(イー・コリまたは他の宿主細胞にて発現される場合を含むが、限定されない)、製造可能性を増大させ、または凝集性を減少させることができる。ある実施態様において、付加、置換または欠失は、イー・コリまたは他の組換え宿主細胞にて発現させた後にポリペプチドの溶解性を増大させるかもしれない。ある実施態様において、部位は、イー・コリまたは他の組換え宿主細胞にて発現させた後にポリペプチドの溶解性の増大をもたらす非天然アミノ酸を組み込むためのもう一つ別の部位に加えて、自然コード化のまたは非天然のアミノ酸で置換するのに選択されてもよい。
【0058】
ある実施態様において、修飾リラキシンポリペプチドは、その修飾リラキシンポリペプチドの生物学的活性を調節するさらなる挿入、置換または欠失をさらに含んでもよい。例えば、該付加、置換または欠失は修飾リラキシンの1または複数の特性または活性を調節するかもしれない。該付加、置換または欠失は、リラキシンポリペプチド受容体、結合タンパク質、または結合リガンドに対するアフィニティを調節するか、リラキシン受容体に結合した後のシグナル伝達を調節するか、インビボまたは循環半減期を調節するか、治療半減期を調節するか、ポリペプチドの安定性を調節するか、プロテアーゼによる切断を調節するか、用量を調節するか、放出または生物学的利用能を調節するか精製を容易にするか、脱アミド化を減らすか、凝集を減らすか、保存可能期間またはインビトロでの半減期を改善するか、または特定の投与経路を改善または改変するかもしれない。同様に、修飾リラキシンポリペプチドは、プロテアーゼ切断配列、反応基、抗体結合ドメイン(FLAGまたはポリ-Hisを含むが、限定されない)または他のアフィニティベースの配列(FLAG、ポリ-His、GST等を含むが、限定されない)またはポリペプチドの検出(GFPを含むが、限定されない)、精製または他の特質を改善する連結分子(ビオチンを含むが、限定されない)を含んでもよい。
【0059】
「修飾リラキシンポリペプチド」なる語はまた、天然に存在するリラキシンの生物学的に活性なフラグメント、生物学的に活性な変種、および立体異性体、ならびに天然に存在するリラキシンのアゴニスト、模倣体およびアンタゴニスト変種、およびそのポリペプチド融合体を包含する。アミノ末端、カルボキシル末端またはその両方でさらなるアミノ酸を含む融合は、「修飾リラキシンポリペプチド」なる語に包含される。典型的な融合は、限定されないが、例えば、メチオニンが、リーダーまたはシグナルペプチドまたはその部分を欠くリラキシンの成熟形態の組換え発現よりもたらされるリラキシンA鎖および/またはB鎖のN-末端に連結する(例えば、メチオニンが、例えばイー・コリにおいて組換え発現よりもたらされるリラキシンA鎖および/またはB鎖のN-末端に連結する)メチオニルリラキシンを、精製のための融合(ポリ-ヒスチジンまたはアフィニティエピトープを含むが、限定されない)を、PKEアドネクチンなどの血清アルブミン結合ペプチドとの融合および血清アルブミンなどの血清タンパク質との融合を、ならびにリラキシンと、血清アルブミン、Fcドメイン、免疫グロブリン定常領域、非構造ポリペプチド、およびアドネクチン、ならびにそのフラグメントを含むが、限定されない1または複数の他の分子(「融合パートナー」)とを含む融合タンパク質を包含する。そのようないずれのフラグメントも、標準的な生化学方法によって、タンパク質から、または該フラグメントをコードするポリヌクレオチドを発現させることにより製造され得る。
【0060】
別途記載される場合を除き、一般に、本明細書において使用される「リラキシンポリペプチド」および「リラキシン」なる語は、非修飾(すなわち、野生型)リラキシンおよび修飾リラキシンポリペプチドの両方を包含する。
【0061】
「修飾リラキシンポリペプチド」なる語は、PEGまたはPK拡張部などのポリマーとコンジュゲートしたポリペプチドを包含し、所望により1または複数のシステイン、リシン、または他の残基の誘導化を含んでもよい。ある実施態様において、修飾リラキシンポリペプチドは、リンカー、ポリマー、またはPK拡張部を含んでもよく、ここで該リンカー、ポリマーまたはPK拡張部がコンジュゲートするアミノ酸は、本開示に係る非天然のアミノ酸であってもよく、あるいはリシンまたはシステインとのカップリングなどの、当該分野にて既知の技法を利用する、自然コード化のアミノ酸(例、リシンまたはシステイン)であってもよい。
【0062】
「修飾リラキシンポリペプチド」なる語はまた、リラキシンポリペプチドにある、自然コード化のアミノ酸、例えば、システインまたはリシンを介して、本明細書にて記載されるPK拡張部とコンジュゲートまたは連結したリラキシンポリペプチドを包含する。ある実施態様において、自然コード化のアミノ酸はリラキシンポリペプチドに置換または挿入されたものであってもよい。
【0063】
「修飾リラキシンポリペプチド」なる語はまた、限定されないが、いずれかのアミノ酸位置でグリコシル化ポリペプチド、N-連結またはO-連結したグリコシル化形態のポリペプチドなどのグリコシル化修飾リラキシンを包含する。さらには、スプライス変異体も包含される。
【0064】
本明細書にて記載される非修飾または修飾リラキシンにおけるアミノ酸位置に対するすべての言及は、特記されない限り、配列番号:4のA鎖または配列番号:5のB鎖にある対応する位置に基づく。当業者であれば、配列番号:4または5あるいは別のリラキシン配列の位置に相当するアミノ酸位置が、リラキシン融合体、変種、フラグメント等などの他のいずれかのリラキシン分子において容易に同定され得ることが分かるであろう。例えば、BLASTなどの配列アライメントプログラムを用いて、配列番号:4または5あるいは別のリラキシン配列を整列させ、それと対応するタンパク質中の特定の位置を同定することができる。配列番号:4または5あるいは別のリラキシン配列に関連して、本明細書にて記載されるアミノ酸の置換、欠失または付加はまた、本明細書にて記載されるか、または当該分野にて公知のリラキシンの融合体、変種、フラグメント等にある対応する位置での置換、欠失または付加を言うことを意図とするものであり、本開示により明確に包含される。
【0065】
「修飾リラキシンポリペプチド」なる語は、Fcドメインなどの融合パートナーを介して形成されるか、または非自然コード化のアミノ酸側鎖を介して直接連結されるものを含むが、限定されない、同じまたは異なる非自然コード化のアミノ酸側鎖のいずれかに、自然コード化のアミノ酸側鎖に連結されるか、またはリンカーを介して間接的に連結される、ホモダイマー、ヘテロダイマー、ホモマルチマー、およびヘテロマルチマーも包含する。リンカーとして、例えば、小型有機化合物、ポリ(エチレングリコール)またはポリデキストラン、あるいは例えば、長さが50、40、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2個までの、または1個までのアミノ酸のペプチドまたはポリペプチドなどの種々の長さの水溶液ポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
本明細書において使用される「修飾」なる語は、ポリペプチドの長さ、ポリペプチドのアミノ酸配列、化学構造、共翻訳修飾、または翻訳後修飾の変化などの所定のポリペプチドに加えられるいずれの変化もいう。「翻訳後修飾」なる語は、天然または非天然のアミノ酸がポリペプチド鎖に取り込まれた後に、かかるアミノ酸に生じる該アミノ酸のいずれの修飾もいう。該用語は、一例として、同時翻訳インビボ修飾、(無細胞翻訳系におけるような)同時翻訳インビトロ修飾、翻訳後インビボ修飾、および翻訳後インビトロ修飾を包含する。
【0067】
「非自然コード化のアミノ酸」は、20種の一般的アミノ酸またはピロリシンまたはセレノシステインの1つではないアミノ酸をいう。「非自然コード化のアミノ酸」なる語と同義に使用され得る他の用語が、「非-天然のアミノ酸」、「非天然アミノ酸」、「非-天然に生じるアミノ酸」およびそれらの種々のハイフンが付いた、およびハイフンが付いていないバージョンである。「非自然コード化のアミノ酸」なる語はまた、自然コード化のアミノ酸(20種の一般的アミノ酸またはピロリシンまたはセレノシステインを含むが、限定されない)の修飾(例、翻訳後修飾)により生じるが、それ自体は翻訳複合によって成長するポリペプチド鎖中に自然には組み込まれない、アミノ酸を含むが、これに限定されない。かかる非自然コード化のアミノ酸の例として、N-アセチルグルコサミニル-L-セリン、N-アセチルグルコサミニル-L-スレオニン、およびO-ホスホチロシンが挙げられるが、これに限定されない。
【0068】
修飾リラキシンポリペプチドの文脈において、本明細書において使用される「パラ-アセチル-フェニルアラニン」および「パラ-アセチル-L-フェニルアラニン」(略語のpAcFおよびpAFを含む)なる語はまた、パラ位にあるアセチル基が不在で、もう一つ別の分子との結合がその位置に存在する、化学反応の生成物も包含する。かくして、例えば、パラ-アセチル-フェニルアラニン(パラ-アセチル-L-フェニルアラニンなど)を含む、修飾リラキシンポリペプチドにおいては、パラ-アセチル-フェニルアラニンは、パラ位で、オキシム、トリアゾール、アミド、または他の連結を含んでもよく、例えば、パラ-アセチル-L-フェニルアラニンのカルボニル基とアミノオキシ基との反応によってもたらされるオキシム連結を有してもよく、そのパラ位でカルボニル炭素を欠いてもよい。かかるパラ-アセチル-フェニルアラニンは、「修飾パラ-アセチル-フェニルアラニン」、例えば「修飾パラ-アセチル-L-フェニルアラニン」と称することもできる。
【0069】
典型的な非自然コード化のアミノ酸はパラ-アセチルフェニルアラニン(pAcF)である。該化合物は、Zhang, Z.、Smith, B. A. C.、Wang, L.、Brock, A.、Cho, C. & Schultz, P. G.、Biochemistry, (2003) 42, 6735-6746(その内容を出典明示により本明細書の一部とする)において記載される操作を用いて合成されてもよい。
【0070】
「アミノ末端修飾基」は、ポリペプチドのアミノ末端と結合し得る、いずれの分子もいう。同様に、「カルボキシ末端修飾基」は、ポリペプチドのカルボキシ末端と結合し得る、いずれの分子もいう。末端修飾基は、種々の水溶性ポリマー、メチオニン、ペプチド、あるいは血清アルブミン、Fcドメイン、免疫グロブリン定常領域、非構築ポリペプチド、アドネクチン、またはそのフラグメント、その脂肪酸または誘導体、またはポリペプチドの血清(インビボ)半減期を増加させる他の分子を包含するが、これらに限定されない。
【0071】
「官能基」、「活性部分」、「活性化基」、「脱離基」、「反応性部位」、「化学的に反応的な基」および「化学的に反応的な部分」なる語、当該分野にて使用され、本明細書において分子の別個の定義可能な部分または単位をいう。該用語は化学の分野にてある程度同義であり、ある機能または活性を果たし、他の分子と反応的である分子の部分を示すのに本明細書にて使用される。
【0072】
「連結」なる語は、本明細書において、通常、化学反応の結果として形成される基または結合をいい、典型的には共有結合である。加水分解に対して安定している連結は、該連結が水中で実質的に安定しており、生理学的条件下で、長期間にわたって、おそらくは無制限であっても、有用なpH値で水と反応しないことを意味するが、これに限定されない。加水分解に対して不安定または加水分解で分解可能な結合は、結合が水中で、または水溶液、例えば血液中で分解可能であることを意味する。酵素的に不安定または分解可能な連結は、連結が1または複数の酵素で分解され得ることを意味する。当該分野にて理解されるように、PEG、脂肪酸、および他のポリマーは、ポリマー骨格中に、またはポリマー骨格と、該ポリマー分子の1または複数の末端官能基との間のリンカー基中に分解可能な連結を含んでもよい。例えば、生物学的に活性な剤上での、カルボン酸または活性化カルボン酸と、アルコール基との反応により形成され得るエステル結合は、一般に、生理学的条件下で加水分解され、活性な剤を放出する。他の加水分解で分解可能な連結として、限定されないが、カーボネート連結;アミンとアルデヒドとの反応から得ることができるイミン連結;アルコールとホスフェート基との反応により形成され得るホスフェートエステル連結;ヒドラジドとアルデヒドとの反応生成物であり得るヒドラゾン連結;アルデヒドとアルコールとの反応生成物であり得るアセタール連結;ホルメートとアルコールとの反応生成物であり得るオルトエステル連結;限定されないが、ポリマーの末端を含む、そこにあるアミン基と、ペプチドのカルボキシル基とで形成され得るペプチド連結;カルボニル官能基と、ヒドロキシルアミン-またはセミカルバジド-含有の試剤との反応生成物であり得るオキシムまたはセミカルバゾン連結;および限定されないが、ポリマーの末端を含む、そこにあるホスホロアミダイト基と、オリゴヌクレオチドの5’ヒドロキシル基によって形成され得るオリゴヌクレオチド連結が挙げられる。
【0073】
置換基がその化学式を慣用的に左から右に書くことで特定される場合、それはその構造を右から左に書くことで得られるであろう化学的に同一の置換基を等しく包含するものであり、例えば構造式の-CH2Oは構造式の-OCH2と均等である。本明細書にて記載される組成物は、通常自然において認められる原子質量または質量数と異なる原子質量または質量数を有する原子と置き換えられている1または複数の原子で同位体標識された化合物を包含してもよい。本明細書にて記載される組成物は、ジアステレオマー、エナンチオマーおよびそれらの混合物、例えば、L-アミノ酸および/またはD-アミノ酸(パラ-アセチル-D-フェニルアラニンおよび/またはパラアセチル-L-フェニルアラニンなど)を含むが、これらに限定されない、異性体を包含してもよい。
【0074】
「置換基」なる語は、「非干渉置換基」を包含するが、これに限定されない。「非干渉置換基」は安定した化合物を生み出す基である。適切な非干渉置換基または基は、ハロ、C1-C10アルキル、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、C1-C10アルコキシ、C1-C12アラルキル、C1-C12アルカリル、C3-C12 シクロアルキル、C3-C12シクロアルケニル、フェニル、置換フェニル、トルオイル、キシレニル、ビフェニル、C2-C12アルコキシアルキル、C2-C12アルコキシアリール、C7-C12アリールオキシアルキル、C7-C12オキシアリール、C1-C6アルキルスルフィニル、C1-C10アルキルスルホニル、--(CH2)m--O--(C1-C10アルキル)(ここでmは1~8である)、アリール、置換アリール、置換アルコキシ、フルオロアルキル、ヘテロ環状基、置換ヘテロ環状基、ニトロアルキル、--NO2、--CN、--NRC(O)--(C1-C10アルキル)、--C(O)--(C1-C10アルキル)、C2-C10アルキルチオアルキル、--C(O)O--(C1-C10アルキル)、--OH、--SO2、=S、--COOH、--NR2、カルボニル、--C(O)--(C1-C10アルキル)-CF3、--C(O)-CF3、--C(O)NR2、--(C1-C10アリール)-S--(C6-C10アリール)、--C(O)--(C1-C10アリール)、--(CH2)m--O--(--(CH2)m--O--(C1-C10アルキル)(ここでmは、各々、1~8である)、--C(O)NR2、--C(S)NR2、--SO2NR2、--NRC(O)NR2、--NRC(S)NR2、それらの塩等を包含するが、これらに限定されない。本明細書において使用されるRは、各々、H、アルキルまたは置換アルキル、アリールまたは置換アリール、アラルキル、またはアルカリルである。
【0075】
「ハロゲン」なる語はフッ素、塩素、ヨウ素、および臭素を包含する。
【0076】
「アルキル」なる語は、それ自体が、またはもう一つ別の置換基の一部として、特記されない限り、直鎖または分岐鎖の、または環状の炭化水素基、あるいはその組み合わせを意味し、それは完全に飽和されていても、モノ-またはポリ-不飽和であってもよく、指定された数の炭素原子を有する二価および多価の基を包含し得る(すなわち、C1-C10は1~10個の炭素を意味する)。飽和炭化水素基の例として、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチルなどの基、およびそのホモログおよび異性体等を包含するが、これらに限定されない。不飽和アルキル基は1または複数の二重結合または三重結合を有する基である。不飽和アルキル基の例として、ビニル、2-プロペニル、クロチル、2-イソペンテニル、2-(ブタジエニル)、2,4-ペンタジエニル、3-(1,4-ペンタジエニル)、エチニル、1-および3-プロピニル、3-ブチニル、ならびにその高級ホモログおよび異性体が挙げられるが、これらに限定されない。「アルキル」なる語は、特記されない限り、「ヘテロアルキル」などの下記に詳細に定義されるアルキルのそれらの誘導体も含むことを意図とする。炭化水素基に限定されるアルキル基は「ホモアルキル」と称される。
【0077】
「アルキレン」なる語は、それ自体が、またはもう一つ別の置換基の一部として、限定されないが、構造式:-CH2CH2-および-CH2CH2CH2CH2-によって説明されるような、アルカンより誘導される二価の基を意味し、さらには「ヘテロアルキレン」のような下記のそのような基も包含する。典型的には、アルキル(またはアルキレン)基は1~24個の炭素原子を有するであろうし、本明細書にて記載の方法および組成物の特定の実施態様では10個以下の炭素原子を有するそれらの基が用いられる。「低級アルキル」または「低級アルキレン」は、一般に、8個以下の炭素原子を有する、鎖の短いアルキルまたはアルキレン基である。
【0078】
「アルコキシ」、「アルキルアミノ」および「アルキルチオ」(またはチオアルコキシ)なる語は、その従来の意味で使用され、各々、酸素原子、アミノ基、または硫黄原子を介して分子の残基に結合したそれらのアルキル基をいう。
【0079】
「ヘテロアルキル」なる語は、それ自体が、またはもう一つ別の用語との組み合わせとして、特記されない限り、指定された数の炭素原子と、O、N、SiおよびSからなる群より選択される少なくとも1個のヘテロ原子とから構成される、安定した直鎖または分岐鎖の、または環状の炭化水素基、あるいはその組み合わせを意味し、ここで該窒素および硫黄原子は所望により酸化されてもよく、窒素ヘテロ原子は所望により四級化されてもよい。ヘテロ原子のO、N、SおよびSiは、ヘテロアルキル基の内部に、またはそのアルキル基が分子の残基と結合している位置にあってもよい。一例として、-CH2-CH2-O-CH3、-CH2-CH2-NH-CH3、-CH2-CH2-N(CH3)-CH3、-CH2-S-CH2-CH3、-CH2-CH2,-S(O)-CH3、-CH2-CH2-S(O)2-CH3、-CH=CH-O-CH3、-Si(CH3)3、-CH2-CH=N-OCH3、および-CH=CH-N(CH3)-CH3を包含するが、これらに限定されない。2個までのヘテロ原子が、例えば、-CH2-NH-OCH3および-CH2-O-Si(CH3)3のように連続していてもよい。同様に、「ヘテロアルキレン」なる語は、それ自体が、またはもう一つ別の置換基の一部として、限定されないが、-CH2-CH2-S-CH2CH2-および-CH2-S-CH2-CH2-NH-CH2-によって説明されるようにヘテロアルキルより誘導される二価の基を意味する。ヘテロアルキレン基では、同じか、または異なるヘテロ原子が鎖の片方または両端を占めることもできる(限定されないが、アルキレンオキシ、アルキレンジオキシ、アルキレンアミノ、アルキレンジアミノ、アミノオキシアルキレン等を包含する)。さらにその上、アルキレンおよびヘテロアルキレン結合基では、結合基の配向は、結合基の式が書かれている、その中の方向によって示唆されない。例えば、式:-C(O)2R’は-C(O)2R’および-R’C(O)2の両方を表す。
【0080】
「シクロアルキル」および「ヘテロシクロアルキル」なる語は、それ自体が、または他の用語との組み合わせにて、特記されない限り、各々、「アルキル」および「ヘテロアルキル」の環状バージョンを表す。かくして、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルは、飽和、部分不飽和、および完全不飽和の環連結を包含する。さらには、ヘテロシクロアルキルでは、ヘテロ環が分子の残基と結合するその位置をヘテロ原子が占めることができる。シクロアルキルの例として、限定されないが、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-シクロヘキセニル、3-シクロヘキセニル、シクロヘプチル等が挙げられる。ヘテロシクロアルキルの例として、限定されないが、1-(1,2,5,6-テトラヒドロピリジル)、1-ピペリジニル、2-ピペリジニル、3-ピペリジニル、4-モルホリニル、3-モルホリニル、テトラヒドロフラン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、テトラヒドロチエン-2-イル、テトラヒドロチエン-3-イル、1-ピペラジニル、2-ピペラジニル等が挙げられる。さらには、該用語は二環および三環構造を包含する。同様に、「ヘテロシクロアルキレン」なる語は、それ自体が、またはもう一つ別の置換基の一部として、ヘテロシクロアルキルより誘導される二価の基を意味し、「シクロアルキレン」なる語は、それ自体が、またはもう一つ別の置換基の一部として、シクロアルキルより誘導される二価の基を意味する。
【0081】
「アリール」なる語は、特記されない限り、単環あるいは縮合または共有結合している複数の環(限定されないが、1ないし3個の環を含む)であり得る、ポリ不飽和の、芳香族、炭化水素置換基を意味する。「ヘテロアリール」なる語は、N、OおよびSより選択される1~4個のヘテロ原子を含有するアリール基(または環)をいい、ここで窒素および硫黄原子は所望により酸化されてもよく、窒素原子は所望により四級化されてもよい。ヘテロアリール基はヘテロ原子を介して分子の残基と結合し得る。アリールおよびヘテロアリール基の例として、限定されないが、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、4-ビフェニル、1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル、3-ピラゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、ピラジニル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、2-フェニル-4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、3-イソキサゾリル、4-イソキサゾリル、5-イソキサゾリル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル、2-フリル、3-フリル、2-チエニル、3-チエニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-ピリミジル、4-ピリミジル、5-ベンゾチアゾリル、プリニル、2-ベンズイミダゾリル、5-インドリル、1-イソキノリル、5-イソキノリル、2-キノキサリニル、5-キノキサリニル、3-キノリル、および6-キノリルが挙げられる。上記した各アリールおよびヘテロアリール環系についての置換基は、下記の許容される置換基の群より選択される。
【0082】
簡潔にするために、他の用語と組み合わせて使用される場合の「アリール」なる語(アリールオキシ、アリールチオキシ、アリールアルキルを含むが、これらに限定されない)は、上記されるアリールおよびヘテロアリール環の両方を包含する。かくして、「アリールアルキル」なる語は、アリール基がアルキル基と結合しているそれらの基(ベンジル、フェネチル、ピリジルメチル等)を包含し、その中で炭素原子(限定されないが、メチレン基を含む)が、例えば酸素原子と置き換えられている、それらのアルキル基と結合している基(フェノキシメチル、2-ピリジルオキシメチル、3-(1-ナフチルオキシ)プロピル等)を含むことを意図とする。
【0083】
上記した用語(「アルキル」、「ヘテロアルキル」、「アリール」および「ヘテロアリール」を含むが、限定されない)は、各々、示唆される基の置換および非置換の両方の形態を包含することを意図する。
【0084】
アルキルおよびヘテロアルキル基(アルキレン、アルケニル、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル、およびヘテロシクロアルケニルと称されることも多いそれらの基を包含する)についての置換基は、1または複数の、0から(2m’+1)の範囲にある数で、m’がかかる基の炭素原子の総数である、-OR’、=O、=NR’、=N-OR’、-NR’R’’、-SR’、-ハロゲン、-SiR’R’’R’’’、OC(O)R’、-C(O)R’、-CO2R’、-CONR’R’’、-OC(O)NR’R’’、-NR’’C(O)R’、NR’C(O)NR’’R’’’、-NR’’C(O)2R’、-NR-C(NR’R’’R’’’)=NR’’’’、 NRC(NR’R’’)=NR’’’、-S(O)R’、-S(O)2R’、-S(O)2NR’R’’、-NRSO2R’、-CNおよび-NO2(これらに限定されない)より選択される種々の基であり得る。R’、R’’、R’’’およびR’’’’は、各々、独立して、水素、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換アリール(限定されないが、1-3個のハロゲンで置換されたアリール)、置換または非置換のアルキル、アルコキシまたはチオアルコキシ基、あるいはアリールアルキル基をいう。本発明の化合物が2個以上のR基を含む場合、例えば、該R基は、各々、1個より多くのR’、R’’、R’’’およびR’’’’基が存在している場合に、これらの各基が独立して選択されるのと同様にして、独立して選択される。R’とR’’が同じ窒素原子に結合している場合、それらの基は窒素原子と一緒になって5-、6-または7-員環を形成し得る。例えば、-NR’R’’は、限定されないが、1-ピロリジニルおよび4-モルホリニルを含むことを意図とする。上記の置換基の記載から、当業者であれば、「アルキル」なる語が、ハロアルキル(-CF3および-CH2CF3を含むが、限定されない)およびアシル(-C(O)CH3、-C(O)CF3、-C(O)CH2OCH3等を含むが、限定されない)などの、炭素原子が水素基以外の基に結合している基を包含することを意図とすることを理解するであろう。
【0085】
アルキル基について記載の置換基と同様に、アリールおよびヘテロアリール基についての置換基も変化し、以下に限定されないが、ハロゲン、OR’、=O、=NR’、=N-OR’、-NR’R’’、-SR’、-ハロゲン、-SiR’R’’R’’’、OC(O)R’、-C(O)R’、CO2R’、-CONR’R’’、-OC(O)NR’R’’、-NR’’C(O)R’、NR’C(O)NR’’R’’’、-NR’’C(O)2R’、NR-C(NR’R’’RR’’’)=NR’R’’’、NRC(NR’R’’)=NRR’’’、-S(O)R’、-S(O)2R’、-S(O)2NR’R’’、NRSO2R’、-CN、-NO2、-R’、-N3、-CH(Ph)2、フルオロ(C1-C4)アルコキシ、およびフルオロ(C1-C4)アルキルより、0から芳香族環系でのオープンバランスの総数までの範囲の数にて選択され;ここでR’、R’’、R’’’およびR’’’’は、独立して、水素、アルキル、ヘテロアルキル、アリールおよびヘテロアリールより選択される。本発明の化合物が2個以上のR基を含む場合、例えば、該R基は、各々、1個より多くのR’、R’’、R’’’およびR’’’’基が存在している場合に、これらの各基が独立して選択されるのと同様にして、独立して選択される。
【0086】
「脂肪酸」なる語は、6ないし20個の炭素原子を有する飽和または不飽和のアシル鎖またはその誘導体をいう。ある実施態様において、脂肪酸が本明細書において記載されるPKエンハンサーのペプチド成分と連結し、カルボン酸またはメチル基で終結してもよい。ある実施態様において、脂肪酸が本明細書において記載されるPKエンハンサーのペプチド成分と連結し、カルボン酸で終結してもよい。ある実施態様において、脂肪酸がアミド結合を介してペプチド成分と連結してもよい。ある実施態様において、脂肪酸が10~18個の炭素原子を有してもよい。ある実施態様において、脂肪酸が12~17個の炭素原子を有してもよい。ある実施態様において、脂肪酸が14、15または16個の炭素原子を有してもよい。ある実施態様において、脂肪酸が15個の炭素原子を有してもよい。
【0087】
本明細書において使用される場合、「水溶性ポリマー」は水性溶媒に可溶性であるポリマーをいう。水溶性ポリマーの修飾リラキシンポリペプチドとの連結は、限定されないが、血清(インビボ)半減期の増加または調節、または非修飾形態と比べて治療的半減期の増加または調節、免疫原性または毒性の減少または調節、凝集およびマルチマー形成の減少などの物理的結合特性の調節、受容体結合の改変、1または複数の結合パートナーとの結合の改変、および受容体の二量化または多量化の改変を含む、変化をもたらし得る。該水溶性ポリマーはそれ自体が生物活性を有しても有さなくてもよく、修飾リラキシンを他の物質(非修飾または修飾リラキシンポリペプチド、または1または複数の生物学的に活性な分子を含むが、限定されない)に結合させるためのリンカーとして利用されてもよい。適切なポリマーは、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒド、モノC1-C10アルコキシまたはそのアリールオキシ誘導体(米国特許第5,252,714号(出典明示によりその内容を本明細書の一部とする)に記載)、モノメトキシ-ポリエチレングリコール、個々のPEG、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアミノ酸、ジビニルエーテルマレイン酸無水物、N-(2-ヒドロキシプロピル)-メタクリルアミド、デキストラン、硫酸デキストランを含むデキストラン誘導体、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドのコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール、ヘパリン、ヘパリンフラグメント、多糖類、オリゴ糖類、グリカン、セルロースおよびセルロース誘導体(メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースを含むが、限定されない)、デンプンおよびデンプン誘導体、2またはそれ以上のアミノ酸のポリペプチド、ポリアルキレングリコールおよびその誘導体、ポリアルキレングリコールのコポリマーおよびその誘導体、ポリビニルエチルエーテル、およびアルファ-ベータ-ポリ[(2-ヒドロキシエチル)-DL-アスパルタミド等、またはその混合物を含むが、これらに限定されない。かかる水溶性ポリマーの例として、ポリエチレングリコールおよび血清アルブミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
本明細書において使用される場合、「ポリアルキレングリコール(PEG)」または「ポリ(アルケングリコール)」なる語は、ポリエチレングリコール(ポリ(エチレングリコール))、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、およびその誘導体をいう。「ポリアルキレングリコール」なる語は、平均分子量が0.1kDaと100kDaの間にある、直鎖および分岐鎖の両方のポリマーを包含する。他の典型的な実施態様は、例えば、Shearwater Corporation’sカタログ「Polyethylene Glycol and Derivatives for Biomedical Applications」(2001)などのサプライヤー・カタログにて列挙される。
【0089】
本明細書において使用される場合、「血清半減期の調節」または「インビボ半減期の調節」なる語ならびに類似する用語は、その非修飾形態または野生型リラキシンなどの比較化合物と比べて、修飾リラキシンの循環半減期における陽性または陰性の変化をいう。血清半減期は、修飾リラキシンを投与した後の種々の時点で血液サンプルを採取し、その分子の各サンプル中での濃度を決定することにより測定され得る。血清中濃度と時間との相関性により血清半減期の計算が可能となる。血清(インビボ)半減期の増加は少なくとも約2倍であることが望ましいが、例えば、満足のいく投与計画を可能とするか、毒性作用を回避する場合には、より小さな増加でも有用であり得る。ある実施態様において、該増加は少なくとも約3倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、または少なくとも約50倍であり得る。
【0090】
本明細書において使用される「治療的半減期の調節」なる語は、その非修飾形態または野生型リラキシンなどの比較化合物と比べて、本明細書に記載の修飾リラキシンポリペプチドの治療的に効果的な量の血清中またはインビボでの半減期における陽性または陰性の変化を意味する。治療的半減期は、投与後の種々の時点で分子の薬物動態および/または薬力学特性を測定することにより測定される。治療的半減期の増加は、望ましくは、特定の有益な投与計画、特定の有益な総投与量での実施を可能とし、望ましくない作用を回避する。ある実施態様において、治療的半減期の増加は、効能を増加させるか、修飾分子のその標的との結合を増大または減少させるか、プロテアーゼなどの酵素による分子の分解を増大または減少させるか、または非修飾分子のもう一つ別のパラメータまたは作用機構の増加または減少、あるいは該分子の受容体介在性クリアランスの増加または減少をもたらす。ある実施態様において、治療的半減期の増加は、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、または少なくとも約50倍であり得る。
【0091】
「単離された」なる語は、核酸またはタンパク質に適用される場合、核酸またはタンパク質が、天然の状態で会合する少なくともいくつかの細胞成分を含まないか、または核酸またはタンパク質をそのインビボまたはインビトロ産生の濃度よりも高いレベルまで濃縮することを意味する。それは均一な状態とすることができる。単離された物質は、乾燥または半乾燥状態のいずれかと、または溶液(水溶液を含むが、限定されない)とすることができる。それは医薬的に許容される担体および/または賦形剤をさらに含む試薬組成物の成分でもあり得る。純度および均質性は、典型的には、ポリアクリルアミドゲル電気泳動または高性能液体クロマトグラフィーなどの分析化学技法を用いて決定される。調製物中に存在する優勢種である、タンパク質は、実質的には精製される。特に、単離遺伝子は、遺伝子に隣接し、目的の遺伝子以外のタンパク質をコードするオープン・リーディング・フレームから分離される。「精製された」なる語は、核酸またはタンパク質が電気泳動ゲルにおいて実質的に1つのバンドを生じさせることを意味する。特に、それは核酸またはタンパク質が少なくとも85%の純度、少なくとも90%の純度、少なくとも95%の純度、少なくとも99%またはそれ以上の純度を有することを意味してもよい。
【0092】
「核酸」なる語は、デオキシリボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオシド、リボヌクレオシド、またはリボヌクレオチド、およびその一本鎖または二本鎖形態のいずれかのポリマーをいう。特記されない限り、該用語は、参照となる核酸と同様の結合特性を有し、天然に存在するヌクレオチドと同様の方法にて代謝される、天然のヌクレオチドの既知のアナログを含有する核酸を包含する。他に特記されない限り、該用語はまた、PNA(ペプチド核酸)、アンチセンス技法にて使用されるDNAのアナログ(ホスホロチオエート、ホスホロアミデート等)を含む、オリゴヌクレオチドアナログをいう。特記されない限り、特定の核酸配列はまた、その保存的に修飾された変異体(縮重コドン置換を含むが、限定されない)および相補的配列ならびに明示的に指示された配列を暗黙のうちに包含する。
【0093】
「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」なる語は、本明細書において、アミノ酸残基のポリマーをいうのに互換的に使用される。すなわち、ポリペプチドに関する記載は、ペプチドの記載およびタンパク質の記載にも等しく適用され、その逆も同様である。該用語は、天然に存在するアミノ酸ポリマー、ならびに1または複数のアミノ酸残基が非自然コード化のアミノ酸であるアミノ酸ポリマーに適用される。本明細書において使用される場合、該用語は、全長タンパク質を含め、いずれの長さのアミノ酸鎖も包含し、ここで該アミノ酸残基は共有ペプチド結合により連結される。
【0094】
「保存的に修飾された変異体」は保存的置換を含有するアミノ酸配列をいう。例示としての保存的に修飾された変異体は、ポリペプチド配列またはコード化ポリペプチド配列にて、単一のアミノ酸または低パーセントのアミノ酸を、例えばポリペプチド配列またはコード化ポリペプチド配列にて、1、2、3、4または5個までのアミノ酸、または0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%または3%までのアミノ酸を改変、付加または欠失する、核酸、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質配列への置換、欠失または挿入を包含し、それは所望によりアミノ酸の化学的に類似するアミノ酸との置換であってもよく、その置換を包含するものであってもよい。機能的に類似するアミノ酸を提供する保存的置換表は当該分野における当業者に知られている。そのような保存的に修飾された変種は、開示される修飾リラキシンポリペプチドの多型変種、種間相同体およびアレルに加えて、それらを排除しない。
【0095】
機能的に類似するアミノ酸を提供する保存的置換表は当業者に公知である。下記の8つの群には、各々、相互に保存置換可能なアミノ酸が含まれる:
1)アラニン(AまたはAla)、グリシン(GまたはGly);
2)アスパラギン酸(DまたはAsp)、グルタミン酸(EまたはGlu);
3)アスパラギン(NまたはAsn)、グルタミン(QまたはGln);
4)アルギニン(RまたはArg)、リシン(KまたはLys)、ヒスチジン(HまたはHis);
5)イソロイシン(IまたはIle)、ロイシン(LまたはLeu)、メチオニン(MまたはMet)、バリン(VまたはVal);
6)フェニルアラニン(FまたはPhe)、チロシン(YまたはTyr)、トリプトファン(WまたはTrp);
7)セリン(SまたはSer)、トレオニン(TまたはThr);および
8)システイン(CまたはCys)、メチオニン(MまたはMet)
(例えば、Creighton、Proteins: Structures and Molecular Properties(W H Freeman & Co.;第2版(1993年12月)を参照のこと)。
【0096】
2以上の核酸またはポリペプチド配列に関連して、「同一」または「%同一」なる語は、同じである2以上の配列または部分配列をいう。以下の配列比較アルゴリズムの一つ(または当業者に利用可能な他のアルゴリズム)を用いて、あるいは手動アライメントおよび目視検査によって測定されるように、比較ウィンドウ(comparison window)または指定領域にわたって比較し、最大限の一致が得られるように位置合わせした場合に、仮に配列が同じである(すなわち、特定の領域にわたって、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%の同一性を有する)アミノ酸残基またはヌクレオチドのパーセンテージを有するとしたら、それらは「実質的に同一」である。同一性は、長さが少なくとも約20個のアミノ酸またはヌクレオチドの領域または比較ウィンドウにわたって、または長さが少なくとも約25個のアミノ酸またはヌクレオチドの領域にわたって存在してもよく、あるいは特定されない場合には、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの配列全体にわたって存在してもよい。本明細書において使用される「比較ウィンドウ」は、例えば、少なくともあるいは約10個、15個、20個、25個または30個の連続する位置のアミノ酸のいずれかのセグメントに対する言及を包含し、それにて、1の配列を隣接する位置が同じ数の対照配列と最適に並べた後に、その2つの配列を比較することができる。%配列同一性および配列類似性を決定するのに適するアルゴリズムの例が、BLASTおよびBLAST2.0アルゴリズム(各々、Altschulら(1997) Nuc. Acids Res. 25:3389-3402、およびAltschulら(1990) J. Mol. Biol. 215:403-410において記載される)、ならびにSmith-Waterman(Smith and Waterman、J Mol Biol. 1981 Mar 25;147(1):195-7)、またはNeedleman-Wunsch(Needleman and Wunsch、J Mol Biol. 1970 Mar;48(3)::443-53)アルゴリズムであり、これらのアルゴリズムは、例えば、それぞれの刊行物に記載されるように、デフォルトパラメータを用いて実行され得る。
【0097】
本明細書において使用される「対象」なる語は、治療、観察または実験の目的としての動物を、ある実施態様においては哺乳動物を、他の実施態様においてはヒトをいう。動物は、ペット(例、イヌ、ネコ等)、家畜(例、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ等)または実験動物(例、ラット、マウス、モルモット等)とすることができる。
【0098】
本明細書において使用される「効果的な量」なる語は、処理されている疾患、症状または障害の1または複数の徴候を、防止、治癒、緩和、軽減、発症の遅延、重篤度の低下、またはある程度まで和らげることのできる、投与される化合物(例、本明細書にて記載される修飾リラキシンポリペプチド)の量をいう。本明細書にて記載される修飾リラキシンポリペプチドを含有する組成物は、予防的、強化、および/または治療的処理のために投与され得る。
【0099】
「強化」または「強化する」なる語は、所望する効果を効能または持続期間のいずれかで増大または長くすることを意味する。かくして、治療剤の効果を強化することに関して、「強化する」なる語は、他の治療剤の効果を、システムにおいて、効能または持続期間のいずれかで増大または長くする能力をいう。
【0100】
予防的適用においては、修飾リラキシンポリペプチドを含有する組成物が、ある疾患、障害または症状に対して感受的である患者に、あるいはそのリスクのある患者に投与される。そのような量は「予防的に効果的な量」であると定義される。
【0101】
治療的適用においては、修飾非天然アミノ酸ポリペプチドを含む組成物が、疾患、症状または障害に既に罹患している患者に、該疾患、障害または症状の徴候を治癒するのに、あるいは少なくとも部分的に阻止または緩和するのに十分な量で投与される。そのような量は「治療的に効果的な量」であると定義され、該疾患、障害または症状の重篤度および治療単位、これまでの療法、患者の健康状態および薬物に対する応答、および治療医の判断に依存しうる。そのような治療的に効果的な量を慣用的な実験(例、用量増加臨床実験)により決定することは十分に当業者の範囲内であると考えられる。
【0102】
「治療する」なる語は、予防的および/または治療的処理をいうのに使用される。
【0103】
タンパク質のリフォールディングについて本明細書において使用される「還元剤」は、スルフヒドリル基を還元状態に維持し、分子内または分子間のジスルフィド結合を還元する、いずれかの化合物または材料として定義される。適切な還元剤は、ジチオスレイトール(DTT)、2-メルカプトエタノール、システイン、システアミン(2-アミノエタンチオール)および還元グルタチオンを包含するが、限定されない。多種多様な還元剤が本発明の方法および組成物に使用するのに適することは当業者には自明である。
【0104】
タンパク質のリフォールディングについて本明細書において使用される「酸化剤」は、電子を化合物から取り外し、酸化させる能力を有する、いずれかの化合物または材料として定義される。適切な酸化剤として、酸化グルタチオン、シスチン、シスタミン、酸化ジチオスレイトール、酸化エリスレイトール、および酸素が挙げられる、限定されない。多種多様な酸化剤が本発明の方法に使用するのに適することは当業者には自明である。
【0105】
本明細書において使用される「変性試剤」または「変性剤」は、タンパク質の可逆的なアンフォールディングを生じさせる、いずれかの化合物または材料として定義される。変性試剤または変性剤の強度は、個々の変性試剤または変性剤の特性および濃度の両方で決定されるであろう。適切な変性試剤または変性剤は、カオトロープ、界面活性剤、有機溶媒、水混和性溶媒、リン脂質、またはそのような試剤の2またはそれ以上の組み合わせであってもよい。適切なカオトロープは、尿素、グアニジン、およびチオシアン酸ナトリウムを包含するが、限定されない。有用な界面活性剤として、ドデシル硫酸ナトリウム、またはポリオキシエチレンエーテル(例、ツィーンまたはトリトン界面活性剤)、サルコシル(Sarkosyl)、中級非イオン性界面活性剤(例、ジギトニン)、N-2,3-(ジオレイルオキシ)-プロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウム、中級イオン性界面活性剤(例、コール酸ナトリウムまたはデオキシコール酸ナトリウム)または双イオン性界面活性剤(スルホベタイン(Zwittergent)、3-(3-クロラミドプロピル)ジメチルアンモニオ-1-プロパンスルフェート(CHAPS)、および3-(3-クロラミドプロピル)ジメチルアンモニオ-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホネート(CHAPSO)を含むが、限定されない)が挙げられるが、これらに限定されない。アセトニトリル、低級アルカノール(特にエタノールまたはイソプロパノールなどのC2-C4アルカノール)、または低級アルカンジオール(特にエチレングリコールなどのC2-C4アルカンジオール)などの有機水混和性溶媒は脱変性剤として使用され得る。本発明において有用なリン脂質は、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、およびホスファチジルイノシトールなどの天然に存するリン脂質であるか、またはジヘキサノイルホスファチジルコリンまたはジヘプタノイルホスファチジルコリンなどの合成リン脂質誘導体または変種であってもよい。
【0106】
本明細書において使用される「リフォールディング」は、ジスルフィド結合含有のポリペプチドを不適切にフォールディングまたはアンフォールディングされた状態からジスルフィド結合に関して天然のまたは適切にホールディングされた配座に形質転換する、いずれのプロセス、反応または方法もいう。
【0107】
本明細書において使用される「コフォールディング」は、具体的には、互いに相互作用する少なくとも2個のポリぺプチドを利用し、アンフォールディングまたは不適切にフォールディングされたポリペプチドの、天然の適切にホールディングされたポリペプチドへの形質転換をもたらす、リホールディングのプロセス、反応または方法をいう。
【0108】
「保護された」なる語は、特定の反応条件下で化学的に反応性に富む官能基の反応を防止する、「保護基」または保護部分の存在をいう。保護基は、保護される化学的反応性基の型に応じて変化するであろう。例えば、化学的反応基がアミンまたはヒドラジドであるならば、保護基はtert-ブチルオキシカルボニル(t-Boc)および9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)の群より選択され得る。化学的反応基がチオールである場合、該保護基はオルトピリジルジスルフィドであり得る。化学的反応基がブタン酸またはプロピオン酸などのカルボン酸、またはヒドロキシル基であるならば、保護基はメチル、エチル、またはtert-ブチルなどのベンジルまたはアルキル基であり得る。当該分野にて既知の他の保護基(NvocおよびMeNvocなどの光解離性基を含む)も、本明細書にて記載の方法および組成物において使用されてもよい。当該分野にて既知の他の保護基も、本明細書にて記載の方法および組成物において使用されてもよい。
【0109】
ほんの一例として、遮断/保護基は:
【化3】
より選択されてもよい。
【0110】
他の保護基は、GreeneおよびWuts、Protective Groups in Organic Synthesis、第3版、John Wiley & Sons、New York、NY、1999(出典明示によりその内容を本明細書の一部とする)に記載される。
【0111】
「心血管系の障害」または「心血管障害」なる語は、例えば、以下の障害:高血圧(高血圧症)、末梢および心臓血管障害、冠状心疾患、安定および不安定狭心症、心臓発作、心筋不全、心拍リズムの異常(または不整脈)、持続性虚血性機能障害(「冬眠心筋」)、一時的虚血後機能障害(「気絶心筋」)、心不全、末梢血流の混乱、急性冠不全症候群、心不全、心筋疾患(心筋症)、心筋梗塞および血管疾患(血液管疾患)を包含する。
を包含する。
【0112】
「心不全」なる語は、心不全の急性および慢性の両方の兆候を、ならびに進行性心不全、ポスト急性心不全、心臓-腎臓症候群、腎機能の損傷に伴う心不全、慢性心不全、ミッドレンジ駆出率での慢性心不全(HFmEF)、代償性心不全、非代償性心不全、右心不全、左心不全、グローバル不全、虚血性心筋症、拡張型心筋症、先天性心臓欠陥に付随する心不全、心臓弁の欠陥、心臓弁の欠陥に付随する心不全、僧帽弁狭窄、僧帽弁不全、大動脈狭窄、大動脈不全、三尖狭窄、三尖不全、肺狭窄、肺弁不全、複合した心臓弁の欠陥に付随する心不全、心筋炎症(心筋炎)、慢性心筋炎、急性心筋炎、ウイルス心筋炎、糖尿病性心不全、アルコール性心筋症、心臓貯蔵障害に付随する心不全、拡張期心不全、収縮期心不全、心不全の急性期悪化、駆出率が保持された心不全(HFpEF)、駆出率の低下した心不全(HFrEF)、駆出率の低下した慢性心不全(HFrEF)、駆出率が保持された慢性心不全(HFpEF)、心筋梗塞後リモデリング(post myocardial remodeling)、狭心症、高血圧、肺高血圧および肺動脈高血圧などのより具体的または関連する型の疾患を包含する。
【0113】
「線維性障害」なる語は、とりわけ、次の疾患および障害:肝線維症、肝硬変、NASH、肺線維症、心臓線維症、心内膜心筋 線維症、腎症、糸球体腎炎、間質腎線維症、糖尿病よりもたらされる線維性損傷、骨髄線維症および類似する線維性障害、強皮症、限局性強皮症、ケロイド、肥厚性瘢痕(外科的手術の後でも)、母斑(naevi)、糖尿病性網膜症、増殖性硝子体網膜症および結合組織の障害(例えば、サルコイドーシス)を含む、線維症により特徴付けられる疾患および障害を包含する。
【0114】
「リラキシン関連の障害」および「リラキシンに付随する疾患」は、血清中のリラキシンタンパク質の濃度を上げるなどの、体内のリラキシン濃度を調節することにより防止、治療、緩和あるいはまた影響を受ける可能性のある疾患および障害を包含する。リラキシン関連の障害は、本明細書に記載される心血管系の障害および線維性障害を包含するが、これらに限定されない。
【0115】
本明細書において記載される非自然コード化のアミノ酸を含むポリペプチドは、自然界にて一般に見られる原子量または質量数とは異なる原子量または質量数を有する原子によって置き換えられた1または複数の原子を有する、同位体標識の化合物を包含してもよい。本発明の化合物に組み込むことのできる同位体の例として、2H、3H、13C、14C、15N、18O、17O、35S、18F、36Clなどの、各々、水素、炭素、窒素、酸素、フッ素および塩素の同位体が挙げられる。本明細書において記載される特定の同位体標識された化合物、例えば、その中に3Hおよび14Cなどの放射性活性な同位体が組み込まれている化合物は、薬物および/または基質組織分配アッセイにて有用であり得る。さらには、重水素、すなわち、2Hなどの同位体との置き換えは、例えば、インビボでの半減期の拡張、または必要とされる投与量の減少などの、代謝安定性の向上よりもたらされるある種の治療的利点を付与し得る。
【0116】
I.概要
【0117】
PKエンハンサーと連結する修飾リラキシン分子が本開示において提供される。典型的な実施態様は、他の修飾または野生型リラキシンポリペプチドと比べて、インビボでの半減期の増加、腎臓空胞形成の減少、腎血流の増加、溶解度の上昇、凝集の減少、低粘度、製造可能性の向上より選択される、少なくとも1つの有利な特性を示すように説明される。
【0118】
1の態様において、本開示は、次の非自然コード化のアミノ酸を含む修飾リラキシンポリペプチドを提供する:
【0119】
(a)該修飾リラキシンポリペプチドは、A鎖残基1、A鎖残基2、A鎖残基5、A鎖残基13、A鎖残基18、B鎖残基5、B鎖残基7、およびB鎖残基25からなる群より選択される位置にて、非自然コード化のアミノ酸で置換される、配列番号:4のリラキシンA鎖ポリペプチドおよび配列番号:5または配列番号:6のリラキシンB鎖ポリペプチドを含んでおり、所望により、該リラキシンA鎖および/または該リラキシンB鎖において2個までのさらなるアミノ酸置換、挿入および/または欠失があってもよく;
【0120】
(b)該非自然コード化のアミノ酸は、次式の構造:
【化4】
【0121】
[式中、R基は、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシンまたはバリンにおいて認められる側鎖以外のいずれかの置換基である]
を有し;
【0122】
(c)該非自然コード化のアミノ酸は、2~30個のアミノ酸のペプチド成分および半減期拡張部分を含む薬物動態エンハンサーと連結する。
【0123】
ある実施態様において、該リラキシンA鎖ポリペプチドは、残基1にて非自然コード化のアミノ酸で置換された配列番号:4を含んでもよく、所望により2個までのさらなるアミノ酸置換、挿入および/または欠失を有してもよい。該リラキシンA鎖ポリペプチドは、残基1にて非自然コード化のアミノ酸で置換された配列番号:4を含んでもよく、所望により1個のさらなるアミノ酸置換、挿入および/または欠失を有してもよい。該リラキシンB鎖ポリペプチドは、所望により2個までのさらなるアミノ酸置換、挿入および/または欠失を有してもよい、配列番号:5または配列番号:6を含んでもよい。該リラキシンB鎖ポリペプチドは、所望により1個のさらなるアミノ酸置換、挿入および/または欠失を有してもよい、配列番号:5または配列番号:6を含んでもよい。該リラキシンA鎖ポリペプチドは残基1にて該非自然コード化のアミノ酸で置換されてもよく、該リラキシンB鎖ポリペプチドは配列番号:5または配列番号:6を含んでもよい。
【0124】
ある実施態様において、その少なくとも1つの非自然コード化のアミノ酸は、カルボニル基、アミノオキシ基、ヒドラジド基、ヒドラジン基、セミカルバジド基、アジド基、またはアルキン基を含んでもよい。該非自然コード化のアミノ酸は、フェニルアラニン誘導基を含んでもよい。該非自然コード化のアミノ酸は、パラ置換、オルト置換、またはメタ置換のフェニルアラニンから選択されてもよい。該非自然コード化のアミノ酸は、カルボニル基、アミノオキシ基、ヒドラジド基、ヒドラジン基、セミカルバジド基、アジド基、またはアルキン基を含む、パラ置換、オルト置換、またはメタ置換のフェニルアラニンから選択されてもよい。該非自然コード化のアミノ酸は、パラ-アセチル-L-フェニルアラニンを含んでもよい。該非自然コード化のアミノ酸は該薬物動態エンハンサーと連結してもよい。例えば、該非自然コード化のアミノ酸は、オキシム連結またはトリアゾール連結、例えばオキシム連結を介して該薬物動態エンハンサーと連結してもよい。
【0125】
ある実施態様において、該リラキシンA鎖ポリペプチドは配列番号:35を含み、該リラキシンB鎖ポリペプチドは配列番号:5または配列番号:6を含んでもよく、ここで該リラキシンA鎖またはB鎖は、所望により、2個までのさらなるアミノ酸置換、挿入および/または欠失を有してもよい。該修飾リラキシンポリペプチドは、配列番号:35と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するリラキシンA鎖ポリペプチド、および配列番号:5または配列番号:6と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するリラキシンB鎖ポリペプチドを含んでもよい。該リラキシンA鎖ポリペプチドは配列番号:35と少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有してもよい。該リラキシンB鎖ポリペプチドは配列番号:5または配列番号:6と少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有してもよい。該リラキシンA鎖ポリペプチドは配列番号:35を有してもよく、リラキシンB鎖ポリペプチドは配列番号:5または配列番号:6を含んでもよい。ある実施態様において、該リラキシンA鎖ポリペプチドは配列番号:35を含んでもよく、リラキシンB鎖ポリペプチドは配列番号:6を含んでもよい。
【0126】
ある実施態様において、該ペプチド成分は、1~25個のアミノ酸、例えば、2~20個のアミノ酸、3~10個のアミノ酸、または4~8個のアミノ酸を含んでもよい。該ペプチド成分はGlu、Gluγ、GGGGS Gluγ(配列番号:139)、DRDDRD(配列番号:102)、KKKKKK-Gluγ(配列番号:103)、RGGEEKKKEKEK-Gluγ(配列番号:104)、GGGEEE-Gluγ(配列番号:105)、EEEGGG-Gluγ(配列番号:106)、KKKGGG-Gluγ(配列番号:107)、GETGSSGEGT-Gluγ(配列番号:108)、GGGKKK-Gluγ(配列番号:109)、GSHHHHHGS-Gluγ(配列番号:110)、Sar-Sar-Sar-Sar-Ser-Sar-Sar-Sar-Sar-Gluγ(配列番号:111)、Sar-Sar-Sar-Sar-Ser-Gluγ(配列番号:112)、Sar-Sar-Sar-Glu-Glu-Gluγ(配列番号:113)、KKKSGGSGG-Gluγ(配列番号:118)、KKSGGSGG-Gluγ(配列番号:114)、KKSGGSGG-Gluα(配列番号:115)、KKSAGSAG-Gluγ(配列番号:116)、KSGGSGG-Gluγ(配列番号:117)、KKSGGSGGEE-Gluγ(配列番号:119)、dKdKdKdKdKdK-Gluγ(配列番号:120)、EESGGSGG-Gluγ(配列番号:121)、GSGSGSGS-Gluγ(配列番号:123)、EEEGGG-dGluγ(配列番号:128)、EGGGGSK-Gluγ(配列番号:130)、EEEEEE-Gluγ(配列番号:131)、EEEEPEEEEPEEEEPEEEE-Gluγ(配列番号:133)、EEEEPEEEEPEEEEPEEGGG(配列番号:135)、EEEEGEEEEGEEEEGEEEE-Gluγ(配列番号:136)、KGGEEKKKEKEKEPKGGEEKKKEKEK-Gluγ(配列番号:137)、EAQKAQAEAQKAQAEAQKAQA-Gluγ(配列番号:138)、KK-Gluγ(配列番号:140)、Gluγ、KGPKGP-Gluγ(配列番号:146)、SGGGS-Gluγ(配列番号:147)、KGGGS-Gluγ(配列番号:148)、KGGGSE-Gluγ(配列番号:149)、GSPGSP-Gluγ(配列番号:150)、GGGGP-Gluγ(配列番号:151)、EGGS-Gluγ(配列番号:152)、EGGGP-Gluγ(配列番号:153)、KGPGSE-Gluγ(配列番号:154)、スペルミン-Gluγ、またはKKGGS-Gluγ(配列番号:156)を含んでもよい。
【0127】
該ペプチド成分は、GGGGS-Gluγ(配列番号:139)、DRDDRD(配列番号:102)、KKKKKK-Gluγ(配列番号:103)、RGGEEKKKEKEK-Gluγ(配列番号:104)、GGGEEE-Gluγ(配列番号:105)、EEEGGG-Gluγ(配列番号:106)、KKKGGG-Gluγ(配列番号:107)、GGGKKK-Gluγ(配列番号:109)、GSHHHHHGS-Gluγ(配列番号:110)、Sar-Sar-Sar-Sar-Ser-Gluγ(配列番号:112)、Sar-Sar-Sar-Glu-Glu-Gluγ(配列番号:113)、またはKSGGSGG-Gluγ(配列番号:117)を含んでもよい。
【0128】
該ペプチド成分はGluγを含んでもよい。例えば、該ペプチド成分はGGGGS Gluγ(配列番号:139)を含んでもよい。
【0129】
典型的な実施態様において、該修飾リラキシンポリペプチドは、A鎖残基1にて非自然コード化のアミノ酸で置換された、配列番号:4のリラキシンA鎖ポリペプチドおよび配列番号:5または配列番号:6のリラキシンB鎖ポリペプチドを含んでもよく、ここで該非自然コード化のアミノ酸は該薬物動態エンハンサーと連結し、該薬物動態エンハンサーはペプチド成分のGGGGS-Gluγ(配列番号:139)を含んでもよい。ある実施態様において、ペプチド成分は、例えば、該非自然コード化のアミノ酸と、例えばオキシム連結を介して共有結合してもよい。
【0130】
典型的な実施態様において、該半減期拡張部分は脂肪酸またはその誘導体を含み、ここで該脂肪酸またはその誘導体は該ペプチド成分と共有結合してもよい。該半減期拡張部分は飽和脂肪酸またはその誘導体を含んでもよい。該半減期拡張部分はカルボン酸で末端処理された脂肪酸を含んでもよい。該半減期拡張部分は、式I:-Cn-COOH(式I)(式中、nは、12と17の間、または13、14、15または16のような10~18の整数である)で示される脂肪酸を含んでもよい。ある実施態様において、式Iの-Cn-は、第1のカルボニル炭素および-(CHn-1-を含んでもよい。例えば、-C13-は-(C=O)-(CH12-であってもよく;-C14-は-(C=O)-(CH13-であってもよく;-C15-は-(C=O)-(CH14-であってもよい。ある実施態様において、脂肪酸の第1のカルボニル炭素は、所望によりアミド結合を介して(ガンマ)Glu残基に結合してもよい。ある実施態様において、脂肪酸の第1のカルボニル炭素はアミド結合を介してガンマGlu残基に結合してもよい。
【0131】
さらに典型的な実施態様において、該半減期拡張部分は-C14-COOHを含んでもよい。
【0132】
さらに典型的な実施態様において、該薬物動態エンハンサーは、構造式:
【化5】
を含んでもよく、
【0133】
ここで、式IIのアミノオキシ基は、例えば、オキシム結合を介して、その修飾されたリラキシンポリペプチドにある非天然のアミノ酸と連結する。
【0134】
さらに典型的な実施態様において、該半減期拡張部分は、アミド結合を介して、該ペプチド成分にコンジュゲートしてもよい。
【0135】
さらに典型的な実施態様において、該リラキシンポリペプチドは、A鎖残基1にて非自然コード化のアミノ酸で置換された、配列番号:4のリラキシンA鎖ポリペプチド、および配列番号:5または配列番号:6のリラキシンB鎖ポリペプチドを含んでもよく、ここで該非自然コード化のアミノ酸はパラ-アセチル-L-フェニルアラニンを含み;該非自然コード化のアミノ酸は、GGGGS-Gluγ(配列番号:139)を含むペプチド成分;および-(C=O)-(CH13-COOHなどの-C14-COOHを含む半減期拡張部分を含む、該薬物動態エンハンサーに連結される。
【0136】
さらなる実施態様において、本開示は、構造:
【化6】
を含む、修飾リラキシンポリペプチドを提供し、
【0137】
ここで、該AQ1-リラキシンは、配列番号:35と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するリラキシンA鎖ポリペプチド、および配列番号:5または配列番号:6と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するリラキシンB鎖ポリペプチドを含み、ここで式IIIで示されるパラ-アセチル-L-フェニルアラニンは該リラキシンA鎖ポリペプチドのN-末端に位置付けられる。該リラキシンA鎖ポリペプチドは配列番号:35と少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有してもよい。該リラキシンB鎖ポリペプチドは配列番号:5または配列番号:6と少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有してもよい。該AQ1-リラキシンは配列番号:35のリラキシンA鎖ポリペプチド、および配列番号:5または配列番号:6のリラキシンB鎖ポリペプチドを含んでもよい。
【0138】
さらなる実施態様において、本開示は、配列番号:35のリラキシンA鎖ポリペプチドおよび配列番号:6のリラキシンB鎖ポリペプチドを含む、リラキシンコンジュゲート「AQ1-GGGGS-Gluγ(配列番号:139)-C14-COOH」を含む、修飾リラキシンポリペプチドを提供し、ここで該リラキシンA鎖ポリペプチドのN-末端に位置付けられるパラ-アセチル-L-フェニルアラニンは、式III:
【化7】
にて示されるように、PKエンハンサーGGGGS-Gluγ(配列番号:139)-C14-COOHと連結されてもよい。
【0139】
さらなる実施態様において、修飾リラキシンポリペプチドは図8にて示される構造を含む。
【0140】
さらなる実施態様において、修飾リラキシンポリペプチドは図9にて示される構造を含む。
【0141】
典型的な実施態様において、該修飾リラキシンポリペプチドは生物学的に活性であってもよい。該修飾リラキシンポリペプチドは、リラキシンに付随する1または複数の疾患または症状の治療に治療的に効果的であってもよい。該修飾リラキシンポリペプチドは、AQ1-20kDa PEG(平均MWが20kDaのPEGとコンジュゲートしたAQ1リラキシン)などの比較化合物と比べた場合に、腎空胞形成の減少を示す可能性がある。該修飾リラキシンポリペプチドは、AQ1-20kDa PEGなどの比較化合物と比べた場合に、腎機能の損傷を全く示さないか、あるいは減少して示し得る。該腎機能は、1または複数の推算糸球体濾過速度、クレアチンクレアランス、インスリン糸球体濾過速度、または同位体糸球体濾過速度を決定することにより測定され得る。
【0142】
典型的な実施態様において、該修飾リラキシンポリペプチドは腎血流の減少を示さず、および/または投与後に腎血流を増加させる能力を有するかもしれない。腎血流は
パラ-アミノ馬尿酸塩クリアランスを決定することにより測定されてもよい。
【0143】
該修飾リラキシンポリペプチドは、野生型リラキシンなどの比較化合物と比べて、インビボにおける半減期の増加、例えば、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、または少なくとも50倍の増加を示し得る。
【0144】
もう一つ別の態様において、本開示は、本明細書に記載される修飾リラキシンポリペプチド、および医薬的に許容される担体を含む、医薬組成物を提供する。
【0145】
もう一つ別の態様において、本開示は、リラキシン関連障害の治療または予防のための、本明細書に記載される効果的な量の修飾リラキシンポリペプチド、および医薬的に許容される担体を含む、医薬組成物を提供する。
【0146】
もう一つ別の態様において、本開示は、リラキシン関連の疾患を治療または予防する方法であって、本明細書に記載される効果的な量の修飾リラキシンポリペプチドまたは修飾リラキシンポリペプチドを含む組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、方法を提供する。
【0147】
もう一つ別の態様において、本開示は、心臓血管疾患を治療または予防する方法であって、本明細書に記載される効果的な量の修飾リラキシンポリペプチドまたは修飾リラキシンポリペプチドを含む組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、方法を提供する。該心臓血管疾患は、冠動脈疾患、心臓発作、不整脈、心不全、心筋症、および血管疾患より選択され得る。
【0148】
もう一つ別の態様において、本開示は、心不全の症候を治療、予防または緩和する方法であって、本明細書に記載される効果的な量の修飾リラキシンポリペプチドまたは修飾リラキシンポリペプチドを含む組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、方法を提供する。該心不全は、進行性心不全、心臓-腎臓症候群、腎機能の損傷に伴う心不全、慢性心不全、ミッドレンジ駆出率での慢性心不全(HFmEF)、急性心不全、ポスト急性心不全、代償性心不全、非代償性心不全、右心不全、左心不全、グローバル心不全、虚血性心筋症、拡張型心筋症、先天性心臓欠陥に付随する心不全、心臓弁の欠陥に付随する心不全、複合した心臓弁の欠陥に付随する心不全、糖尿病性心不全、アルコール性心筋症、心臓貯蔵障害に付随する心不全、拡張期心不全、収縮期心不全、心筋梗塞後リモデリング、駆出率が保持された心不全(HFpEF)、駆出率の低下した心不全(HFrEF)、狭心症、高血圧、肺高血圧、および肺動脈高血圧より選択され得る。
【0149】
ある実施態様において、該心不全は、慢性心不全、急性心不全、ポスト急性心不全、駆出率の低下した慢性心不全(HFrEF)、駆出率が保持された慢性心不全(HFpEF)、ミッドレンジ駆出率での慢性心不全(HFmEF)、拡張期心不全、収縮期心不全、心筋梗塞後リモデリング、狭心症、高血圧、肺高血圧および肺動脈高血圧より選択され得る。
【0150】
ある実施態様において、該心不全は、ポスト急性心不全、進行性 心不全、心臓-腎臓症候群、および腎機能の損傷に伴う心不全より選択され得る。
【0151】
該治療方法は、さらには、少なくとも1つの、ACE阻害剤、β-ブロッカー、利尿剤、ミネラルコルチコイド受容体受容体アンタゴニスト、リアノジン受容体モジュレータ、SERCA2aアクチベータ、レニン阻害剤、カルシウムチャネルブロッカー、アデノシンA1受容体アゴニスト、部分アデノシンA1受容体、ドーパミンβ-ヒドロキシラーゼ阻害剤、アンジオテンシンII受容体アンタゴニスト、細胞シグナル化経路を選択するためにバイアスしたアゴニズムを有するアンジオテンシンII受容体アンタゴニスト、アンジオテンシンII受容体アンタゴニストとネプリライシン酵素阻害剤との組み合わせ、ネプリライシン酵素阻害剤、可溶性グアニル酸シクラーゼアクチベータ、ミオシンATPアーゼアクチベータ、rho-キナーゼ1阻害剤、rho-キナーゼ2阻害剤、アペリン受容体アゴニスト、ニトロキシル供与性 化合物、カルシウム-依存性 キナーゼII阻害剤、抗線維化剤、ガレクチン-3阻害剤、バソプレシン受容体アンタゴニスト、FPR2受容体モジュレータ、ナトリウム利尿ペプチド受容体アゴニスト、一過性受容体潜在的バニロイド-4チャネルブロッカー、抗不整脈剤、I「奇異性電流」チャネルブロッカー、ニトレート、ジギタリス化合物、変力剤およびβ-受容体アゴニスト、細胞膜リシーリング剤、例えば、ポロキサマー188、抗脂質異常症剤、血漿中HDL上昇剤、抗高コレステロール血症剤、コレステロール生合成阻害剤(HMG CoAレダクターゼ阻害剤など)、LXRアゴニスト、FXRアゴニスト、プロブコール、ラロキシフェン、ニコチン酸、ナイアシンアミド、コレステロール吸収阻害剤、胆汁酸抑制剤、アニオン交換樹脂、四級アミン、コレスチルアミン、コレスチポール、低比重リポタンパク質受容体誘発剤、クロフィブラート、フェノフィブラート、ベザフィブラート、シプロフィブラート、ゲムフィブラート、ビタミンB6、ビタミンB12、抗酸化ビタミン、抗糖尿病剤、血小板凝集阻害剤、フィブリノーゲン受容体アンタゴニスト、アスピリンおよびフィブリン酸誘導体、PCSK9 阻害剤、アスピリン、およびクロピドグレルなどのP2Y12阻害剤より選択される、さらなる治療剤を、該修飾リラキシンポリペプチドと組み合わせて、同時にまたは連続して投与することを含んでもよい。
【0152】
もう一つ別の態様において、本開示は、線維症に付随する疾患の症候を治療、予防または緩和する方法であって、本明細書に記載される治療的に効果的な量の修飾リラキシンポリペプチドまたは修飾リラキシンポリペプチドを含む組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、方法を提供する。線維症に付随する該疾患は、心臓、肺、腎臓、骨髄または肝臓の線維症、皮膚線維症、または線維性眼障害を含んでもよい。線維症に付随する該疾患は、肝線維症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝硬変、プレ肝硬変、びまん性実質性肺疾患、嚢胞性線維症、肺線維症、進行性塊状線維症、特発性肺線維症、インジェクション線維症、腎線維症、慢性腎疾患、糖尿病性腎疾患、巣状分節状糸球体硬化症、膜性腎症、IgA腎症、骨髄線維症、心不全、代謝性心不全、心臓線維症、白内障線維症、白内障、眼瘢痕、膵臓線維症、皮膚線維症、腸線維症、腸狭窄、心内膜心筋線維症、心房 線維症、縦隔 線維症、クローン病、後腹膜線維症、ケロイド、腎性全身性 線維症、強皮症、全身性硬化症、関節線維症、ペイロニー症候群、デュピュイトラン拘縮、糖尿病性ニューロパシー、癒着性関節包炎、アルコール性 肝疾患、肝脂肪症、ウイルス性肝炎、胆管疾患、原発性ヘモクロマトーシス、薬物関連肝硬変、原因不明肝硬変、ウィルソン疾患、アルファ1-抗トリプシン欠損症、間質肺疾患(ILD)、ヒト線維性肺疾患、黄斑変性、レチナール網膜症、硝子体網膜症、心筋線維症、グレーブス眼症、薬物誘発性エルゴチン中毒、心臓血管疾患、アテローム性動脈硬化症/再狭窄、肥厚性瘢痕、原発性または特発性骨髄線維症、炎症性腸疾患、およびコラーゲン蓄積大腸炎より選択されてもよい。
【0153】
線維症に付随する疾患の該治療方法は、さらには、少なくとも1つの抗線維症剤を、該修飾リラキシンポリペプチドと組み合わせて、同時にまたは連続して該患者に投与することを含んでもよい。該抗線維症剤は、ニンテダニブ、ピルフェニドン、LPA1アンタゴニスト、LPA1受容体アンタゴニスト、GLP1アナログ、トラロキヌマブ(IL-13、AstraZeneca)、ビスモデギブ(ヘッジホッグアンタゴニスト、Roche)、PRM-151(ペントラキシン-2、TGFベータ-1、Promedior)、SAR-156597(二重特異性Mab IL-4&IL-13、Sanofi)、シムツズマブ((抗リシルオキシダーゼ様2(抗LOXL2)抗体、Gilead)、CKD-942、PTL-202(PDE阻害剤/ペントキシフィリン/NAC経口放出制御、Pacific Ther.)、オミパリシブ(経口PI3K/mTOR阻害剤、GSK)、IW-001(経口溶液、ウシV型コラーゲン修飾、ImmuneWorks)、STX-100(インテグリンアルファV/ベータ-6アント、Stromedix/Biogen)、アクティミューン(IFNガンマ)、PC-SOD(ミジスマーゼ;吸入剤、LTT Bio-Pharma/CKD Pharm)、レブリキズマブ(抗IL-13 SCヒト化mAb、Roche)、AQX-1125(SHIP1アクチベーター、Aquinox)、CC-539(JNK阻害剤、Celgene)、FG-3019(FibroGen)、SAR-100842(Sanofi)、およびオベチコール酸(OCAまたはINT-747、Intercept)より選択される。
【0154】
もう一つ別の態様において、本開示は、腎不全を治療または予防する方法であって、本明細書に記載される治療的に効果的な量の修飾リラキシンポリペプチドまたは修飾リラキシンポリペプチドを含む組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、方法を提供する。
【0155】
もう一つ別の態様において、本開示は、腎機能の改善、安定化または修復を必要とする患者においてその機能を改善、安定化または修復する方法であって、本明細書に記載される治療的に効果的な量の修飾リラキシンポリペプチドまたは修飾リラキシンポリペプチドを含む組成物を、該患者に投与することを含む、方法を提供する。
【0156】
もう一つ別の態様において、本開示は、本明細書に記載される修飾リラキシンポリペプチドを製造する方法であって:(a)リラキシンA鎖およびリラキシンB鎖を含むポリペプチドを提供すること、ここで該ポリペプチドは非自然コード化のアミノ酸を含む;および(b)該非自然コード化のアミノ酸を該薬物動態エンハンサーと連結させることを含む、方法を提供する。該非自然コード化のアミノ酸は、例えば、該非自然コード化のアミノ酸を薬物動態エンハンサーのペプチド成分に連結する、オキシム連結により該薬物動態エンハンサーに連結されてもよい。該オキシム連結は、カルボニル基とアミノオキシ基との反応によって形成されてもよい。該カルボニル基が該非自然コード化のアミノ酸の置換基であってもよく、該アミノオキシ基が該薬物動態エンハンサーの構成要素であってもよい。該アミノオキシ基が該非自然コード化のアミノ酸の置換基であってもよく、該カルボニル基が該薬物動態エンハンサーの構成要素、例えば、該薬物動態エンハンサーのペプチド成分の構成要素であってもよい。該非自然コード化のアミノ酸は、リボソーム的に該ポリペプチド中に組み込まれてもよい。
【0157】
II.一般的な組換え核酸および開示される修飾リラキシンポリペプチドを用いる方法
【0158】
本開示の実施態様において、組換え技術を用いて、目的とする修飾リラキシンポリペプチドをコードする核酸を単離し、クローンし、時に改変してもよい。かかる実施態様は、以下に限定されるものではないが、タンパク質を発現するために、または修飾リラキシンポリペプチドより誘導される変種、誘導体または他の配列を生成する間に使用されてもよい。ある実施態様において、本開示の修飾リラキシンポリペプチドをコードする配列は異種プロモータに作動的に連結される。ある実施態様において、修飾リラキシンポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列におけるDNAコドンの使用は、当該分野にて周知の技法を用いてイー・コリまたは哺乳動物細胞(例えば、CHO)の発現に最適化され得る。
【0159】
リラキシンA鎖(配列番号:10)、リラキシンB鎖(配列番号:11)、リラキシンAおよびB鎖(配列番号:12)をコードする典型的なポリヌクレオチド、およびリーダ配列(配列番号:13-14)が本明細書において提供される。
【0160】
本明細書に記載の修飾リラキシンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、親ポリペプチドのアミノ酸配列に基づいて、以下に限定されないが、配列番号:4、5、6、35、36、または37に示されるアミノ酸配列を有し、ついで関連するアミノ酸残基の導入(すなわち、組込みまたは置換)または除去(すなわち、欠失または置換)を行うようにヌクレオチド配列を変化させることを含んで合成されてもよい。ヌクレオチド配列は、従来の方法に従って、部位特異的変異誘発により都合よく修飾されてもよい。あるいはまた、ヌクレオチド配列は、化学的合成によって、以下に限定されないが、オリゴヌクレオチド合成装置を用いて、ここでオリゴヌクレオチドは所望するポリペプチドのアミノ酸配列に基づいて設計され、好ましくは組換えポリペプチドを産生しうる宿主細胞において望ましいコドンを選択することによって製造されてもよい。
【0161】
さらには、本明細書でさらに記載されるように、非自然コード化のアミノ酸をコードするセレクターコドンがポリヌクレオチド配列に組み込まれてもよい。
【0162】
本開示はまた、直交tRNA/RS対を介して非天然のアミノ酸をインビボにて組み込むための真核生物宿主細胞、非真核生物宿主細胞、および有機体に関する。宿主細胞は、本開示のポリヌクレオチドまたは本開示のポリヌクレオチドを含む構築物(例えば、クローニングベクターまたは発現ベクターとすることができる本開示のベクターを含むが、これに限定されない)を用いて遺伝的に操作される(限定されないが、形質転換、形質導入またはトランスフェクトされる操作を含む)。例えば、直交tRNA、直交tRNAシンセターゼ、および誘導化されるタンパク質のコード領域を、所望の宿主細胞にて機能的である遺伝子発現制御要素と作動的に連結させる。ベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、ファージ、細菌、ウイルス、裸のポリヌクレオチド、またはコンジュゲートしたポリヌクレオチドの形態とすることができる。ベクターは標準方法により細胞および/または微生物に導入されてもよい。
【0163】
III. セレクターコドン
【0164】
本開示のセレクターコドンはタンパク質生合成機構の遺伝的コドンフレームワークを拡張する。例えば、セレクターコドンは、以下に限定されないが、独特な3塩基コドン、停止コドンなどの非センスコドン(以下に限定されないが、アンバーコドン(UAG)、オーカーコドンまたはオパールコドン(UGA)を含む)、非天然コドン、4またはそれ以上の塩基コドン、希少コドン等を包含する。当業者にとって、所望の遺伝子またはポリヌクレオチドに導入することができるセレクターコドンの数が、修飾リラキシンポリペプチドの少なくとも一部をコードする単一のポリヌクレオチドにおいて、以下に限定されないが、1個以上、2個以上、3個以上、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の広範囲に存在することは明らかである。
【0165】
1の実施態様において、該方法は、インビボにて1または複数の非天然の(すなわち、非自然コード化の)アミノ酸を取り込むための停止コドンであるセレクターコドンの使用を含む。例えば、限定されないが、UAGを含む、停止コドンを認識するO-tRNAが産生され、所望する非天然のアミノ酸を有するO-RSでアミノアシル化される。このO-tRNAは天然に存在する宿主のアミノアシル-tRNAシンセターゼによって認識されない。従来の部位特異的変異誘発を用い、目的とするポリペプチド中にて目的の部位で停止コドン(TAGを含むが、これに限定されない)を導入することができる。例えば、Sayers, J.R.ら、(1988),Nucleic Acids Res, 16:791-802を参照のこと。O-RS、O-tRNAおよび目的とするポリペプチドをコードする核酸がインビボにて合わされる場合、UAGコドンに応答して非天然のアミノ酸が組み込まれ、特定の位置に非天然のアミノ酸を含有するポリペプチドを得る。
【0166】
インビボにおける非天然アミノ酸の組込みは、真核生物宿主細胞を有意に摂動することなく、行うことができる。例えば、UAGコドンの抑制能は、限定されるものではないが、アンバーサプレッサーのtRNAを含むO-tRNAと、(停止コドンに結合し、成長ペプチドのリボソームからの放出を開始させる)真核生物の終結因子(限定されないが、eRFを含む)との間の競合に依存するため、その抑制能は、限定されないが、O-tRNAおよび/またはサプレッサーのtRNAの発現レベルを上げることにより調節され得る。
【0167】
非天然アミノ酸は希少コドンでもコードされ得る。例えば、インビトロでのタンパク質合成反応にてアルギニン濃度が減少する場合、希少アルギニンコドン、AGGが、アラニンでアシル化された合成tRNAによるAlaの挿入に効果的であることが証明された。例えば、Maら、Biochemistry, 32:7939(1993)を参照のこと。この場合、合成tRNAは、エシェリヒア・コリにて微量種として存在する、天然のtRNA Argと競合する。
【0168】
セレクターコドンはまた、4、5、6またはそれ以上の塩基コドンなどの4またはそれ以上の塩基コドンを含む延長コドンを含むが、これらに限定されない。4塩基コドンの例として、AGGA、CUAG、UAGA、CCCU等が挙げられるが、これらに限定されない。5塩基コドンの例として、AGGAC、CCCCU、CCCUC、CUAGA、CUACU、UAGGC等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0169】
1の実施態様において、本開示では希少コドンまたは非センスコドンに基づく延長コドンを用いることができ、これにより他の望ましくない部位でのミスセンスリードスルーおよびフレームシフト抑制を減らすことができる。
【0170】
所定の系では、セレクターコドンは天然3塩基コドンの1つを含むこともでき、内在系では天然塩基コドンを用いない(またはほとんど用いない)。例えば、これは天然3塩基コドンを認識するtRNAを欠く系、および/または3塩基コドンが希少コドンである系を包含する。
【0171】
修飾リラキシンポリペプチドなどの目的とするタンパク質またはポリペプチドをコードする遺伝子は、当業者に公知の方法、本明細書に記載の方法を用いて変異誘発され、非天然アミノ酸を組み込むために1または複数のセレクターコドンを含めることができる。例えば、目的とするタンパク質の核酸を、1または複数のセレクターコドンを含め、1または複数の非天然アミノ酸の組み込みがなされるように変異誘発させる。本開示は、例えば、少なくとも1の非天然アミノ酸を含む、いずれのタンパク質の変異体、バージョンも含め、かかるいずれの変種も包含するが、これに限定されない。
【0172】
修飾リラキシンポリペプチドなどの目的とするタンパク質をコードする核酸分子は、該ポリペプチドの所望するいずれの位置でもシステインが導入されるように容易に変異させることができる。システインは、反応性分子、水溶性ポリマー、タンパク質、または多種多様な他の分子を目的とするタンパク質上に導入するのに広く使用される。
【0173】
IV. 非自然コード化のアミノ酸
【0174】
極めて多種多様な非自然コード化のアミノ酸が本開示にて使用するのに適している。いずれの数の非自然コード化のアミノ酸も修飾リラキシンポリペプチドに導入することができる。一般に、導入される非自然コード化のアミノ酸は、実質的に、20種の一般的な遺伝的にコードされるアミノ酸(すなわち、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリン)に対して化学的に不活性である。ある実施態様において、非自然コード化のアミノ酸は、20種の一般的なアミノ酸に見られない官能基と効率的かつ選択的に反応し、安定したコンジュゲートを形成する側鎖官能基(アジド、ケトン、アルデヒドおよびアミノオキシ基を包含するが、これらに限定されない)を包含する。例えば、アジド官能基を含有する非自然コード化のアミノ酸を含む修飾リラキシンポリペプチドを、ポリマーまたはPK拡張部と、あるいは別に、アルキン基を含有する別のポリペプチドと反応させてアジドおよびアルキン官能基の選択的反応をもたらす安定したコンジュゲートを形成し、ヒュスゲン[3+2]環化付加生成物を形成することができる。
【0175】
アルファ-アミノ酸の一般的構造は、次のように、式(IV):
【化8】
で示される。
【0176】
非自然コード化のアミノ酸は、典型的には、上記した式で示されるいずれかの構造を有する;ここで、R基は20種の天然アミノ酸にて使用される以外のいずれかの置換基であり、本開示の修飾リラキシンポリペプチドにて用いるのに適する。本開示の非自然コード化のアミノ酸は、典型的には、その側鎖の構造においてのみ天然アミノ酸と異なるため、非自然コード化のアミノ酸は、天然に存在するポリペプチドにて形成されるのと同様にして、天然または非自然コード化の他のアミノ酸とアミド結合を形成することを包含するが、これに限定されない。しかしながら、非自然コード化のアミノ酸は、自らを天然アミノ酸と区別する側鎖基を有する。例えば、Rは、所望により、アルキル-、アリール-、アシル-、ケト-、アジド-、ヒドロキシル-、ヒドラジン、シアノ-、ハロ-、ヒドラジド、アルケニル、アルキニル、エーテル、チオール、セレノ-、スルホニル-、ボレート、ボロネート、ホスホ、ホスホノ、ホスフィン、ヘテロサイクリック、エノン、イミン、アルデヒド、エステル、チオ酸、ヒドロキシルアミン、アミノ基等、あるいはそれらのいずれの組み合わせを含んでもよい。
【0177】
本開示において使用するのに適し、PK拡張部およびポリマーとの反応に有用な典型的な非自然コード化のアミノ酸として、カルボニル、アミノオキシ、ヒドラジン、ヒドラジド、セミカルバジド、アジドおよびアルキン反応基を有するアミノ酸が挙げられるが、これらに限定されない。ある実施態様において、非自然コード化のアミノ酸は、サッカリド部分を含む。かかるアミノ酸の例として、N-アセチル-L-グルコサミニル-L-セリン、N-アセチル-L-ガラクトサミニル-L-セリン、N-アセチル-L-グルコサミニル-L-スレオニン、N-アセチル-L-グルコサミニル-L-アスパラギンおよびO-マンノサミニル-L-セリンが挙げられる。
【0178】
本明細書にて提供される多くの非自然コード化のアミノ酸は、例えば、Sigma-Aldrich(St. Louis, MO, USA)、Novabiochem(EMD Biosciencesの分割, Darmstadt, Germany)、またはPepTech(Burlington, MA, USA)より商業的に入手可能である。市販されていないアミノ酸は、所望により、本明細書で提供されるように、または当業者に公知の標準的方法を用いて合成されてもよい。有機合成技法については、例えば、Organic Chemistry by Fessendon and Fessendon(1982, Second Edition, Willard Grant Press, Boston Mass.);Advanced Organic Chemistry by March(Third Edition, 1985, Wiley and Sons, New York);およびAdvanced Organic Chemistry by Carey and Sundberg(Third Edition, Parts A and B, 1990, Plenum Press, New York)を参照のこと。また、出典明示により本明細書の一部とされる、米国特許第7,045,337号および第7,083,970号も参照のこと。新規な側鎖を含有する非天然アミノ酸に加えて、本開示にて用いるのに適する非天然アミノ酸もまた、所望により、構造式VおよびVI:
【化9】
[式中、Zは、典型的には、OH、NH、SH、NH-R’、またはS-R’を含み;XおよびYは、同一または異なるとすることができ、典型的にはSまたはOを含み、RおよびR’は、所望により同一または異なってもよく、典型的には式Iの非天然アミノ酸について上記されたR基に関する構成要素の同じリスト、ならびに水素より選択される]
で示されるように、修飾された骨格構造を含んでもよい。例えば、本開示の非天然アミノ酸は、所望により、式VおよびVIで示されるように、アミノまたはカルボキシル気において置換基を含んでもよい。この型の非天然アミノ酸は、通常の20種の天然アミノ酸に対応する側鎖(を包含するが、限定されるものではない)、または非天然側鎖を有する、α-ヒドロキシ酸、α-チオ酸、α-アミノチオカルボキシレートを包含するが、これらに限定されない。加えて、α-炭素にある置換基は、所望により、D-グルタメート、D-アラニン、D-メチル-O-チロシン、アミノ酪酸等などのL、D、またはα-α-ジ置換アミノ酸を含んでもよいが、これらに限定されない。他の代替構造物はプロリンアナログ、ならびに3、4、6、7、8、および9員環のプロリンアナログなどの環状アミノ酸、置換β-アラニンおよびγ-アミノ酪酸などのβおよびγアミノ酸を包含する
【0179】
多くの非天然アミノ酸は、チロシン、グルタミン、フェニルアラニン等などの天然アミノ酸を基礎とし、本開示における使用に適する。チロシンアナログは、パラ置換チロシン、オルト置換チロシン、およびメタ置換チロシンを包含するが、これらに限定されず、ここで置換チロシンは、ケト基(アセチル基を含むが、これに限定されない)、ベンゾイル基、アミノ基、ヒドラジン、ヒドロキシアミン、チオール基、カルボキシ基、イソプロピル基、メチル基、C-C20直鎖または分岐した炭化水素、飽和または不飽和炭化水素、O-メチル基、ポリエーテル基、ニトロ基、アルキニル基等を含むが、これらに限定されない。加えて、複数回置換されたアリール環も考慮される。本開示における使用に適するグルタミンアナログは、α-ヒドロキシ誘導体、γ-置換誘導体、環状誘導体、およびアミド置換グルタミン誘導体を包含するがこれらに限定されない。本開示における使用に適するフェニルアラニンアナログの例として、パラ置換フェニルアラニン、オルト置換フェニルアラニン、およびメタ置換フェニルアラニンが挙げられるが、これらに限定されなず、ここで該置換基はヒドロキシ基、メトキシ基、メチル基、アリル基、アルデヒド、アジド、ヨード、ブロモ、ケト基(アセチル基を含むが、これに限定されない)、ベンゾイル、アルキニル基等を含むが、これらに限定されない。本開示における使用に適する非天然アミノ酸の具体的な例として、p-アセチル-L-フェニルアラニン、O-メチル-L-チロシン、L-3-(2-ナフチル)アラニン、3-メチル-フェニルアラニン、O-4-アリル-L-チロシン、4-プロピル-L-チロシン、トリ-O-アセチル-GlcNAcβ-セリン、L-Dopa、フッ素化フェニルアラニン、イソプロピル-L-フェニルアラニン、p-アジド-L-フェニルアラニン、p-アシル-L-フェニルアラニン、p-ベンゾイル-L-フェニルアラニン、L-ホスホセリン、ホスホノセリン、ホスホノチロシン、p-ヨード-フェニルアラニン、p-ブロモフェニルアラニン、p-アミノ-L-フェニルアラニン、イソプロピル-L-フェニルアラニン、およびp-プロパルギルオキシ-フェニルアラニン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0180】
1の実施態様において、非天然のアミノ酸(p-アセチル-L-フェニルアラニンなど)を含む修飾リラキシンポリペプチドの組成物が提供される。p-アセチル-L-フェニルアラニンを含む種々の組成物(タンパク質および/または細胞を含むが、これらに限定されない)も提供される。1の態様において、p-フェニル-L-フェニルアラニンの非天然アミノ酸を含む組成物は、さらには、直交tRNAを含む。非天然アミノ酸は、直交tRNAの末端リボース糖の3’OHまたは2’OH等に共有結合した、直交tRNAにアミノ-アシル結合を介して共有結合(これに限定されない)した、直交tRNAに結合(限定されないが、共有結合を含む)し得る。
【0181】
本明細書に記載の修飾リラキシンポリペプチドは、出典明示によりその内容が本明細書の一部とされる、米国特許第8,735,539号(発明の名称:「Relaxin polypeptide comprising non-naturally encoded amino acids」)に記載の非自然コード化のアミノ酸を含んでもよい。
【0182】
V. 非天然アミノ酸の構造および合成
【0183】
ある実施態様において、本開示は、例えば脂肪酸を含む、PKエンハンサーに、オキシム結合または連結により、連結した修飾リラキシンポリペプチドを提供する。多くの型の非自然コード化のアミノ酸は、オキシム結合の形成に適する。これらは、カルボニル、ジカルボニル、カルボニル様、マスキングされたカルボニル、保護カルボニル、またはヒドロキシルアミン基を含有する非自然コード化のアミノ酸を包含するが、これらに限定されない、かかるアミノ酸、その構造および合成は、出典明示によりその内容が本明細書の一部とされる、米国特許第8,012,931号および第8,735,539号に記載される。
【0184】
ヒドロキシルアミンを含有するアミノ酸を含む非自然コード化のアミノ酸の例示として構造および合成方法は、例えば、米国特許第7,332,571号、米国特許公開番号2006/0194256、2006/0217532、および2006/0217289およびWO 2006/069246において開示されるように当該分野にて公知であり、その各々はその内容が出典明示により本明細書の一部とされる。
【0185】
非自然コード化のアミノ酸の化学合成
【0186】
本開示における使用に適する非天然アミノ酸の多くは、例えば、Sigma(USA)またはAldrich(Milwaukee, WI, USA)から市販されている。市販されていないものは、所望により、本明細書において提供されるように、または種々の刊行物にて提供されるように、あるいは当業者に公知の標準的方法を用いて提供されてもよい。
【0187】
A. カルボニル反応基
【0188】
カルボニル反応基を有するアミノ酸は、種々の反応に関して、分子(PEGまたはペプチド成分などの他の水溶性分子を含むが、これに限定されない)を、とりわけ、求核付加反応またはアルドール縮合反応を介して連結させることを可能とする。
【0189】
p-アセチル-(+/-)-フェニルアラニンおよびm-アセチル-(+/-)-フェニルアラニンの合成は、Zhang, Z.ら、Biochemistry 42:6735-6746(2003)(出典明示によりその内容を本明細書の一部とする)において記載される。他のカルボニル含有のアミノ酸は、同様にして当業者により製造され得る。
【0190】
ある実施態様において、非自然コード化のアミノ酸を含む修飾リラキシンポリペプチドは化学的に修飾されて反応性カルボニル官能基を生成してもよい。例えば、コンジュゲーション反応に有用なアルデヒド官能基は、隣接したアミノ基とヒドロキシル基との官能基より生成され得る。
【0191】
本開示において、ヒドロキシル基とアミノ基を隣接して有する非自然コード化のアミノ酸が、「マスキングされた」アルデヒド官能基としてポリペプチドに組み込まれ得る。例えば、5-ヒドロキシリシンは、イプシロンアミンに隣接してヒドロキシル基を有する。アルデヒドを生成するための反応条件は、典型的には、そのポリペプチド内にて他の部位での酸化を回避するのに温和な条件下でモル過剰量のメタ過ヨウ素酸ナトリウムを添加することを含む。酸化反応のpHは典型的には約7.0である。典型的な反応は、約1.5モル過剰量のメタ過ヨウ素酸ナトリウムをポリペプチドの緩衝液に添加し、つづいて暗所にて約10分間にわたってインキュベートすることを含む。例えば、米国特許第6,423,685号(出典明示によりその内容を本明細書の一部とする)を参照のこと。
【0192】
カルボニル官能基は、水溶液中、温和な条件下でヒドラジン-、ヒドラジド-、ヒドロキシルアミン-、またはセミカルバジド-含有の試薬と選択的に反応し、各々、生理的条件下で安定する、対応するヒドラゾン、オキシム、またはセミカルバゾンを形成することができる。例えば、Jencks, W. P.、J. Am. Chem. Soc. 81, 475-481(1959);Shao, J.およびTam, J. P.、J. Am. Chem. Soc. 117:3893-3899(1995)を参照のこと。その上、カルボニル基の独特な反応性は、他のアミノ酸側鎖の存在下において選択的な修飾を可能とする。例えば、Cornish, V. W.ら、J. Am. Chem. Soc. 118:8150-8151(1996);Geoghegan, K. F. & Stroh, J. G.、Bioconjug. Chem. 3:138-146(1992);Mahal, L. K.ら、Science 276:1125-1128(1997)を参照のこと。
【0193】
B. ヒドラジン、ヒドラジドまたはセミカルバジド反応基
【0194】
ヒドラジン、ヒドラジドまたはセミカルバジドなどの求核基を含有する非自然コード化のアミノ酸は、種々の求電子基と反応し、コンジュゲートを形成させる。
【0195】
ヒドラジド-、ヒドラジン-、およびセミカルバジド-を含有するアミノ酸は商業的供給源より入手可能である。例えば、L-グルタメート-γ-ヒドラジドはSigma Chemical(St. Louis, MO)より入手可能である。商業的に入手できない他のアミノ酸は当業者によって製造され得る。例えば、米国特許第6,281,211号(出典明示によりその内容を本明細書の一部とする)を参照のこと。
【0196】
ヒドラジド、ヒドラジンまたはセミカルバジド官能基を有する非自然コード化のアミノ酸を含有する修飾リラキシンポリペプチドは、アルデヒドまたは同様の化学反応性を有する他の官能基を含有する種々の分子と、効率的かつ選択的に反応し得る。例えば、Shao, J.およびTam, J.、J. Am. Chem. Soc. 117:3893-3899(1995)を参照のこと。ヒドラジド、ヒドラジンおよびセミカルバジド官能基の独特な反応性は、20種の共通アミノ酸にある求核基(セリンまたはスレオニンのヒドロキシル基、あるいはリシンおよびN-末端のアミノ基を包含するが、限定されない)と比べて、それらをアルデヒド、ケトンおよび他の求電子基に対して有意により反応的なものとする。
【0197】
C. アミノオキシ含有のアミノ酸
【0198】
アミノオキシ(ヒドロキシルアミンとも称される)基を含有する非自然コード化のアミノ酸は、種々の求電子基と反応し、コンジュゲート(PEGまたはペプチド成分とのコンジュゲートを含むが、これらに限定されない)を形成させる。ヒドラジン、ヒドラジドおよびセミカルバジドのように、アミノオキシ基の求核性の増大は、それがアルデヒドまたは同様の化学反応性を有する他の官能基を含有する、種々の分子と効率的かつ選択的に反応することを可能とする。例えば、Shao, J.およびTam, J.、J. Am. Chem. Soc. 117:3893-3899(1995);H. HangおよびC. Bertozzi、Acc. Chem. Res. 34:727-736(2001)を参照のこと。しかしながら、ヒドラジン基との反応の結果がその対応するヒドラゾンであるのに対して、オキシムは、一般にアミノオキシ基とケトンなどのカルボニル含有基との反応よりもたらされる。
【0199】
アミノオキシ含有のアミノ酸は、容易に入手可能なアミノ酸先駆体(ホモセリン、セリンおよびスレオニン)より製造され得る。例えば、M. CarrascoおよびR. Brown、J. Org. Chem. 68:8853-8858(2003)を参照のこと。L-2-アミノ-4-(アミノオキシ)酪酸などの特定のアミノオキシ含有のアミノ酸は、天然供給源より単離された(Rosenthal, G.、Life Sci. 60:1635-1641(1997)。他のアミノオキシ含有のアミノ酸は当業者により製造され得る。
【0200】
D. アジドおよびアルキン反応基
【0201】
アジドおよびアルキンの独特な反応性は、ポリペプチドおよび他の生体分子を選択的に修飾することについてそれらを有用なものとする。有機アジド、特に脂肪族アジド、およびアルキンは、一般に、普通の反応性化学条件に対して安定している。特に、アジドおよびアルキン官能基の両方は、天然に存在するポリペプチドにおいて認められる20種の共通アミノ酸に側鎖(すなわち、R基)に対して不活性である。しかしながら、極めて接近させると、アジドとアルキン基の「ばね荷重」特性が現れ、それらはヒュスゲン[3+2]環化付加反応を介して選択的かつ効率的に反応し、対応するトリアゾールを生成する。例えば、Chin J.ら、Science 301:964-7(2003);Wang, Q.ら、J. Am. Chem. Soc. 125, 3192-3193(2003);Chin, J. W.ら、J. Am. Chem. Soc. 124:9026-9027(2002)。
【0202】
ヒュスゲン環化付加反応は、求核置換反応よりもむしろ選択的環化付加反応に関係しているため(例えば、Padwa, A.、COMPREHENSIVE ORGANIC SYNTHESIS、Vol.4(Trost, B.M.編, 1991)、1069-1109頁;Huisgen, R.、1,3-DIPOLAR CYCLOADDITION CHEMISTRY、(Padwa, A.編、1984)、1-176頁を参照のこと)、アジドおよびアルキン含有の側鎖を有する非自然コード化のアミノ酸を組み込むことにより、得られたポリペプチドを非自然コード化のアミノ酸の位置で選択的に修飾することが可能となる。アジドまたはアルキン含有の修飾リラキシンポリペプチドに関する環化付加反応は、系内にてCu(II)をCu(I)に還元する還元剤が触媒量で存在する下で、Cu(II)(触媒量のCuSOの形態を含むが、これに限定されない)を添加することで、水性条件下の室温で実施され得る。例えば、Wang, Q.ら、J. Am. Chem. Soc. 125, 3192-3193(2003);Tornoe, C. W.ら、J. Org. Chem. 67:3057-3064(2002);Rostovtsevら、Angew. Chem. Int. Ed. 41:2596-2599(2002)を参照のこと。典型的な還元剤として、アスコルビン酸塩、金属銅、キニン、ヒドロキノン、ビタミンK、グタチオン、システイン、Fe2+、Co2+および適用される電位が挙げられるが、これらに限定されない。
【0203】
アジドとアルキンの間でヒュスゲン[3+2]環化付加反応が望ましい場合には、その修飾リラキシンポリペプチドがアルキン部分を含む非自然コード化のアミノ酸を含んでもよく、アミノ酸と結合するPKエンハンサーがアジド部分を含んでもよい。あるいはまた、逆の反応(すなわち、アミノ酸上にあるアジド部分と、水溶性ポリマー上に存在するアルキン部分との反応)もまた実施され得る。
【0204】
アジド官能基はまた、アリールエステルを含有する水溶性ポリマーと選択的に反応し、アリールホスフィン部分で適宜官能基付与され、アミド連結を生成し得る。アリールホスフィン基は系内でアジドを還元し、そうして得られたアミンは次に近位にあるエステル連結と効果的に反応して対応するアミドを生成する。例えば、E. SaxonおよびC. Bertozzi、Science 287, 2007-2010(2000)を参照のこと。アジド含有のアミノ酸は、アルキルアジド(2-アミノ-6-アジド-1-ヘキサノン酸を含むが、これに限定されない)またはアリールアジド(p-アジド-フェニルアラニン)のいずれかでありうる。
【0205】
アジド官能基はまた、チオエステルを含有する水溶性ポリマーと選択的に反応し、アリールホスフィン部分で適宜官能基付与され、アミド連結を生成し得る。アリールホスフィン基は系内でアジドを還元し、そうして得られたアミンは次にチオエステル連結と効果的に反応して対応するアミドを生成する。
【0206】
アルキン含有のアミノ酸は商業的に入手可能である。あるいはまた、アルキン含有のアミノ酸は標準的方法に従って製造され得る。例えば、p-プロパルギルオキシフェニルアラニンは、例えば、Deiters, A.ら、J. Am. Chem. Soc. 125:11782-11783(2003)、および4-アルキニル-L-フェニルアラニンは、Kayser, B.ら、Tetrahedron 53(7):2475-2484(1997)に記載されるように合成され得る。他のアルキン含有のアミノ酸は当業者により製造され得る。
【0207】
アジド含有のアミノ酸は商業的供給源より入手可能である。商業的に入手できないアジド含有のアミノ酸の場合、該アジド基は当業者に公知の標準的方法(適切な脱離基(ハライド、メシレート、トリレートを含むが、限定されない)の置換を介する方法、または適宜保護されたラクトンの開環を介する方法)を含むが、これらに限定されない)を用いて比較的容易に製造され得る。例えば、Advanced Organic Chemistry by March(第3版、1985、Wiley and Sons、New York)を参照のこと。
【0208】
[3+2]環化付加反応を介して本開示のタンパク質に付加することのできる分子は、実質的に、アジドまたはアルキニル誘導体を有するいずれの分子も包含する。分子として、色素、発蛍光団、架橋剤、糖誘導体、ポリマー(ポリエチレングリコールを含むポリマーを包含するが、限定されない)、光架橋剤、細胞毒性化合物、アフィニティラベル、ビオチン誘導体、樹脂、ビーズ、ペプチド、第2タンパク質またはポリペプチド、ポリヌクレオチド(DNA、RNA等を含むが、これらに限定されない)、金属キレート剤、コファクター、脂肪酸、炭水化物等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの分子はアルキニル基を有する非天然アミノ酸(p-プロパルギルオキシフェニルアラニンを包含するが、限定されな)またはアジド基を有する非天然アミノ酸(p-アジド-フェニルアラニンを包含するが、限定されない)に付加され得る。
【0209】
E. アミノチオール反応基
【0210】
ベータ-置換のアミノチオール官能基の独特な反応性は、アルデヒド基を含有する、ポリペプチドおよび他の生体分子をチアゾリジンの形成を介して選択的に修飾することについてそれらを有用なものとする。例えば、J. ShaoおよびJ. Tam、J. Am. Chem. Soc. 1995, 117(14), 3893-3899を参照のこと。ある実施態様において、ベータ-置換のアミノチオールアミノ酸は、修飾リラキシンポリペプチドに組み込まれ、次にアルデヒド官能基を含むPKエンハンサーと反応させることができる。ある実施態様において、PKエンハンサー、薬物コンジュゲートまたは他のペイロードを、チアゾリジンの形成を介して、ベータ-置換のアミノチオールアミノ酸を含む修飾リラキシンポリペプチドとカップリングさせることができる。
【0211】
F. さらなる反応基
【0212】
本開示の修飾リラキシンポリペプチドに組み込まれ得るさらなる反応基および非自然コード化のアミノ酸は、下記の特許出願(出典明示によりその内容をすべて本明細書の一部とする):米国特許出願番号2006/0194256、米国特許出願番号2006/0217532、米国特許出願番号2006/0217289、および国際特許出願公開番号WO /2007/070659において記載される。
【0213】
VI. 非自然コード化のアミノ酸を含む修飾リラキシンポリペプチドのインビボ生成
【0214】
本開示の修飾リラキシンポリペプチドは、修飾tRNAおよびtRNAシンセターゼを用いてインビボにて生成され、天然に存する系にてコードされないアミノ酸を付加または置換することができる。かかる方法は、米国特許第8,735,539号(出典明示によりその内容を本明細書の一部とする)に記載される。
【0215】
天然に存する系にてコードされない、アミノ酸を用いる、tRNAおよびtRNAシンセターゼの生成方法は、例えば、米国特許第7,045,337および第7,083,970号(出典明示により本明細書の一部とする)において記載される。これらの方法は翻訳系に内在する(従って、しばしば、「直交」とも称される)シンセターゼおよびtRNAと独立して機能する翻訳機構を作製することを含む。典型的には、該翻訳系は直交tRNA(O-tRNA)および直交アミノアシルtRNAシンセターゼ(O-RS)を含む。典型的には、O-RSは、翻訳系においてO-tRNAを少なくとも1つの天然に存在しないアミノ酸で優先的にアミノアシル化し、そのO-tRNAは、その系にて他のtRNAで認識されない少なくとも1つのセレクターコドンを認識する。かくして、翻訳系は、コードされたセレクターコドンに応じて、非自然コード化のアミノ酸を該系にて産生されたタンパク質中に挿入し、それによってアミノ酸をコードされたポリペプチドの位置で「置換する」ものである。
【0216】
O-tRNA/アミノアシル-tRNAシンセターゼの使用が、非自然コード化のアミノ酸をコードする特異的コドンを選択することに関与する。いずれのコドンを用いることもできるが、O-tRNA/アミノアシル-tRNAシンセターゼを発現する細胞において使用されることが稀であるか、決して使用されないコドンを選択することが一般には望ましい。例えば、典型的なコドンとして、停止コドン(アンバー、オーカーおよびオパール)、4またはそれ以上の塩基コドン、およびほとんどまたは全く使用されたことがない他の天然3塩基コドンなどの非センスコドンが挙げられる。
【0217】
特異的セレクターコドンは、当該分野にて既知の変異誘発法(以下に限定されないが、
部位特異的変異誘発、カセット式変異誘発、制限選択変異誘発等を含む)を用い、修飾リラキシンポリヌクレオチドのコード配列中の適切な位置に導入され得る。
【0218】
VII. 非真核生物および真核生物における発現
【0219】
発現系、培養および単離
【0220】
非修飾または修飾リラキシンポリペプチドは、例えば、酵母、昆虫細胞(例えば、バキュロウイルス感染の昆虫細胞)、哺乳動物細胞、および細菌を含む、多数の適切な発現系にて発現されてもよい。典型的な発現系の記載は下記にて提供される。
【0221】
酵母:本明細書において使用されるように、「酵母」なる語は、以下に限定されないが、P.pastoris、P.guillerimondii、S.cerevisiae、S.carlsbergensis、S.diastaticus、S.douglasii、S.kluyveri、S.norbensis、S.oviformis、K.lactis、K.fragilis、C.albicans、C.maltosa、およびH.polymorphaを含む、修飾リラキシンポリペプチドをコードする遺伝子の発現能を有するいずれの様々な酵母も包含する。出典明示により本明細書の一部とされるWO 2005/091944は、酵母でのリラキシンの発現を記載する。
【0222】
イー・コリ、シュードモナス種、および他の原核生物:
【0223】
「細菌宿主」または「細菌宿主細胞」なる語は、組換えベクターまたは他のトランスファーDNAのレシピエントとして使用され得るか、または使用されてきた細菌をいう。該用語はトランスフェクトされた原細菌宿主細胞の子孫を包含する。単一の親細胞の子孫は、偶発的または意図的な変異に起因して、必ずしも形態的またはゲノム的に完全に同一でなくてもよく、あるいは元の親に対して全DNAを補完するものでなくてもよいと理解される。非修飾または修飾リラキシンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の存在などの、関連する特性によって特徴付けられる、親と十分に類似する親細胞の子孫は、この定義が意図する子孫に包含される。
【0224】
発現用の細菌宿主を選択するにおいて、適切な宿主は、とりわけ、良好な封入体形成能、低タンパク質分解活性、および全体ロバスト性を有することが示された宿主を包含してもよい。工業的/製薬的発酵は、一般に、K株(例、W3110)から誘導される細菌またはB株(例、BL21)より誘導される細菌を使用する。適切なイー・コリの別の例として、限定されないが、BL21、DH10Bの菌株、またはその誘導株が挙げられる。本開示の方法のもう一つ別の実施態様において、イー・コリ宿主は、OMP-およびLON-を包含するが、これらに限定されない、プロテアーゼマイナス菌株である。宿主細胞株は、蛍光菌(Pseudomonas fluorescens)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)およびシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)を包含するが、これらに限定されない、シュードモナス種であってもよい。MB101株と称される、シュードモナス・フルオレッセンス・バイオバール1(Pseudomonas fluorescens biovar 1)は、組換え産生に有用であり、治療用タンパク質の産生プロセスに利用可能であることが知られている。
【0225】
組換え宿主細胞株が確立されると(すなわち、発現構築物が宿主細胞に導入され、適切な発現構築物を有する宿主細胞が単離されると)、その組換え宿主細胞株は修飾リラキシンポリペプチドの産生に適する条件下で培養される。
【0226】
組換え宿主細胞は、細胞を(修飾リラキシンポリペプチドが細胞内で蓄積する場合には)バッチ式または連続フォーマットにて採取するか、または培養上清をバッチまたは連続フォーマットのいずれかで採取するかのいずれかで培養されてもよい。
【0227】
細菌宿主細胞にて産生される修飾リラキシンポリペプチドは、難溶性または不溶性(封入体の形態)であってもよい。本開示の1の実施態様において、組換え技法により産生されたタンパク質の溶解性を向上させる目的で選択される、アミノ酸置換は修飾リラキシンポリペプチドにて容易に行うことができる。修飾リラキシンポリペプチドは、例えば、尿素または塩酸グアニジンを用いて可溶化されてもよい。
【0228】
可溶性修飾リラキシンタンパク質の場合には、リラキシンは細胞周辺腔または培地中に分泌されてもよい。例えば、修飾リラキシンを、配列番号:39-44に列挙された配列を含め、8種の異なるリーダー配列を含む構築物をコードするプラスミドを用いることによりW3110-B2細胞の細胞周辺腔中に分泌させ、これらをW3110-B2細胞に形質転換させ、次に細胞を37℃でODが約0.8に達するまで培養させ、その時点で0.01%アラビノースを用いて発現を誘発させる。5時間後、ぺリプラスム放出サンプルを培養物より準備することができる。さらには、可溶性修飾リラキシンが宿主細胞の細胞質中に存在してもよい。精製工程を行う前に可溶性修飾リラキシンを濃縮することが望ましい。
【0229】
修飾リラキシンポリペプチドが融合タンパク質として産生される場合、その融合配列を取り除くこともできる。融合配列の除去は酵素的または化学的切断により達成され得る。融合配列の酵素的除去は当業者に既知の方法を用いて達成されてもよい。融合配列を除去するための酵素の選択は融合の同一性により決定され、反応条件は当業者に明らかなように酵素の選択により具体的にすることができる。化学的切断は当業者に既知の試薬、臭化シアン、TEVプロテアーゼ、および他の試薬を包含するが、限定されない試薬を用いて達成されてもよい。その切断された修飾リラキシンポリペプチドは、当業者に既知の方法によりその切断した融合配列から精製することができる。
【0230】
一般に、場合によっては、発現したポリペプチドを変性かつ還元し、ついで該ポリペプチドを好ましい配座にリフォールディングさせることが望ましい。例えば、グアニジン、尿素、DTT、DTE、および/またはシャペロニンを目的とする翻訳生成物に添加することができる。タンパク質は、酸化グルタチオンおよびL-アルギニンを含むが、限定されない、物質を含有するレドックス緩衝液中でリフォールドされ得る。リフォールディング試薬は、1または複数のポリペプチドあるいは他の発現産物と接触するように流されるか、または別の方法で移動させることができ、あるいはその逆も可能である。
【0231】
修飾リラキシンポリペプチドを原核生物で産生する場合には、こうして産生された修飾リラキシンポリペプチドはミスフォールドされるかもしれず、かくして生物学的活性を欠くか、または減少しているかもしれない。タンパク質の生物活性は、「リフォールディング」により回復されてもよい。一般に、ミスフォールドの未修飾または修飾リラキシンポリペプチドは、ポリペプチド鎖を、例えば、1または複数のカオトロピック剤(例、尿素および/またはグアニジン)およびジスルフィド結合の還元能を有する還元剤(例、ジチオスレイトール、DTTまたは2-メルカプトエタノール、2-ME)を用いて、(修飾リラキシンポリペプチドもまた不溶性である場合に)可溶化し、アンフォールドし、減数分裂させることによりリフォールドされる。カオトロープを中程度の濃度で加え、次に酸化剤(例、酸素、シスチンまたはシスタミン)を添加し、それによりジスルフィド結合を再形成させる。修飾リラキシンポリペプチドは、米国特許第4,511,502号、第4,511,503号、および第4,512,922号(その内容を出典明示により本明細書の一部とする)に記載の方法などの、当該分野にて既知の標準的方法を用いてリフォールドされてもよい。修飾リラキシンポリペプチドはまた、他のタンパク質とコフォールドされ、ヘテロダイマーまたはヘテロマルチマーを形成してもよい。
【0232】
修飾リラキシンはリフォールドした後にさらに精製されてもよい。修飾リラキシンの精製は、疎水性相互作用クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、逆相高性能液体クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー等、またはそのいずれかの組み合わせを含む、当業者に既知の種々の技法を用いて達成され得る。さらなる精製はまた、精製されたタンパク質の乾燥または沈殿工程を含んでもよい。
【0233】
精製した後、修飾リラキシンは、透析濾過および透析を含むが、限定されない、当業者に既知の種々のいずれかの方法によって、異なる緩衝液に交換され、および/または濃縮され得る。単一の精製タンパク質として提供される修飾リラキシンは凝集および沈殿に供されてもよい。
【0234】
精製された修飾リラキシンは、少なくとも90%純度(逆相高性能液体クロマトグラフィー、RP-HPLC、またはドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法、SDS-PAGEで測定した場合)または少なくとも95%純度、または少なくとも98%純度、あるいは少なくとも99%またはそれ以上の純度を有し得る。修飾リラキシンの純度の正確な数値を問わず、該修飾リラキシンは十分に純度が高く、医薬生成物として用いることも、PKエンハンサーとコンジュゲートするなどのさらなる処理に付すこともできる。
【0235】
特定の修飾リラキシン分子は、他の活性成分またはタンパク質(賦形剤、担体および安定化剤、血清アルブミン等)の不在の下で治療剤として用いられてもよく、あるいは該分子はもう一つ別のタンパク質またはポリマーと一緒に複合体形成されてもよい。
【0236】
ある実施態様において、各精製工程に付した後の修飾リラキシンの収率は、各精製工程に付す出発材料における非修飾または修飾リラキシンの少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約99.9%、または少なくとも約99.99%とすることができる。
【0237】
VIII. 代替系での発現
【0238】
本開示の修飾リラキシンポリペプチドは、無細胞(例えば、インビトロ)での翻訳系を用いて発現され得る。翻訳系は細胞性であっても無細胞性であってもよく、原核生物性であっても真核生物性であってもよい。細胞翻訳系は、以下に限定されないが、所望の核酸配列がmRNAに転写され、該mRNAが翻訳され得る、透過性細胞または細胞培養物などの全細胞調製物を包含する。無細胞翻訳系は商業的に入手可能であり、多くの異なる型および系が周知である。無細胞系の例として、以下に限定されないが、エシェリヒア・コリ溶解物などの原核生物溶解物、および小麦胚芽抽出物、昆虫細胞溶解物、ウサギ網状赤血球溶解物、ウサギ卵母細胞溶解物およびヒト細胞溶解物などの真核生物溶解物が挙げられる。分泌タンパク質を翻訳するのに有用である、ミクロソーム膜を含有するイヌ膵臓抽出物などの膜抽出物もまた、利用可能である。
【0239】
IX. 修飾リラキシンポリペプチドを含有する融合タンパク質
【0240】
本開示はまた、修飾リラキシンポリペプチド配列および融合パートナーを含む、修飾リラキシンポリペプチドまたはそのフラグメントを提供する。融合パートナーは、以下に限定されないが、半減期を拡張すること、タンパク質の精製および/または製造を容易にすること、溶解性または安定性の向上などの生物物理的特性を強化すること、および免疫原性または毒性を下げることを含む、機能的特性、または他のいずれの目的を付与してもよい。例えば、融合タンパク質は、インビボでの半減期の拡張を示すことができ、それによって治療計画においてより少ない頻度の投与(1週間に2回、1週間に1回、または1週間おきに1回の投与)を容易にすることができる。典型的な融合タンパク質は、アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン)、PK拡張(PKE)アドネクチン、XTEN、Fcドメイン、免疫グロブリン定常領域、またはこれらのいずれかのフラグメント、あるいはこれらのいずれかの組み合わせなどの融合パートナーと融合した修飾リラキシンを含む。融合タンパク質は、同じリーディングフレーム中にて修飾リラキシンポリペプチド配列および融合パートナー配列をコードする核酸を発現することで産生することができ、所望により連結ペプチドをコードする配列によって分離されてもよい。その融合タンパク質は、修飾リラキシンポリペプチドおよび融合パートナーをいずれの順序で含んでもよく、例えば、1または複数の融合パートナーを修飾リラキシンポリペプチド配列のN-末端および/またはC-末端に連結させるか、あるいは1または複数の融合パートナーをN-末端およびC-末端の両方に連結させる。
【0241】
X. 修飾および非修飾リラキシンポリペプチドの糖鎖形成
【0242】
本開示は、糖残基を有する1または複数の非自然コード化のアミノ酸を含む、修飾リラキシンポリペプチドを包含する。糖残基は天然(N-アセチルグルコサミンを含むが、限定されない)または非天然(3-フルオロガラクトースを含むが、限定されない)のいずれであってもよい。糖類は、N-またはO-結合のグリコシド連結(N-アセチルガラクトース-L-セリンを含むが、限定されない)または非天然連結(オキシムまたは対応するC-またはS-連結のグリコシドを含むが、限定されない)のいずれかで非自然コード化のアミノ酸に連結されてもよい。
【0243】
糖(グリコシルを含むが、限定されない)部分は、インビボまたはインビトロのいずれかで修飾リラキシンポリペプチドに付加され得る。本開示のある実施態様において、カルボニル含有の非自然コード化のアミノ酸を含む修飾リラキシンポリペプチドは、アミノオキシ基で誘導される糖で修飾され、オキシム結合を介して連結した対応するグリコシル化ポリペプチドを生成してもよい。非自然コード化のアミノ酸と結合すると、該糖はグリコシルトランスフェラーゼおよび他の酵素で処理することによってさらに合成されて修飾リラキシンポリペプチドと結合したオリゴ糖を生成することができる。例えば、H. Liuら、J. Am. Chem. Soc. 125:1702-1703(2003)を参照のこと。
【0244】
XI. 投与および医薬組成物
【0245】
本明細書にて記載の治療的に効果的な量の修飾リラキシンポリペプチド、および医薬的に許容される担体または賦形剤を含む組成物も本明細書にて提供される。かかる担体または賦形剤は、セイライン、緩衝セイライン、デキストロース、シュークロース、ヒスチジン、水、グリセロール、PS80(ポリソルベート80)、エタノール、および/またはその組み合わせを含むが、これらに限定されない。該製剤は投与方法に適するように製造される。
【0246】
例えば、本明細書に記載の修飾リラキシンポリペプチドは、患者の体重に付き約0.1と100mg/kgの間の濃度で患者に投与されてもよい。ある実施態様において、本明細書に記載の修飾リラキシンポリペプチドは、患者の体重に付き約0.5-5mg/kgの濃度で患者に投与されてもよい。もう一つ別の実施態様において、本明細書に記載の修飾リラキシンポリペプチドは、週に約1回、週に2回、二日毎に1回、三日毎に1回、四日毎に1回、五日毎に1回、または六日毎に1回のように、一日に1回と、二週間、三週間、または四週間に1回との間の頻度で患者に投与されてもよい。もう一つ別の実施態様において、本明細書に記載の修飾リラキシンポリペプチドは一週間毎に1回患者に投与されてもよい。
【0247】
所定のの患者に投与される修飾リラキシンポリペプチドの濃度は、上記される例示としての投与濃度よりも大きくても小さくてもよいことを理解すべきである。
【0248】
本開示にて提供される情報に基づき、当業者は、例えば、本明細書の開示によって指導される慣用的な実験、およびGoodmanら、(2006), Goodman & Gilman’s the pharmacological basis of therapeutics, New York:McGraw-Hill;またはHowlandら、(2006), Pharmacology. Lippincott’s illustrated reviews, Philadelphia:Lippincott Williams & Wilkinsにおける技法を介して効果的な投与量および投与頻度を決定できる。
【0249】
修飾リラキシンの平均量は変化してもよく、特に医師の推奨および処方に基づいて変化すべきである。修飾リラキシンの量は、正確には、治療される症状の正確な型、治療される患者の状態、ならびに組成物中の他の成分などの因子に対する優先度によって変化する。本開示はまた、治療的に効果的な量のもう一つ別の活性剤の投与を提供する。投与されるべき量は当業者により容易に決定され得る。
【0250】
「医薬組成物」は哺乳動物に投与するのに適する化学的または生物学的組成物をいう。かかる組成物は、口腔内、経皮、硬膜外、吸入、動脈内、心腔内、脳室内、皮内、筋肉内、鼻腔内、眼内、腹腔内、脊髄内、髄腔内、静脈内、経口、非経口、浣腸または坐剤を介して経直腸、皮下、皮膚下、舌下、経皮および経粘膜を含むが、限定されない1または複数の数の経路を介する投与のために具体的に処方されてもよい。加えて、投与は、注射、散剤、液剤、ゲル、点滴の手段または他の投与手段のより行うことができる。
【0251】
本明細書において使用される「医薬的に許容される担体」または「賦形剤」は、生理的に適合しうる、ありとあらゆる溶媒、分散媒、被覆剤、抗菌および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤を包含する。1の実施態様において、担体は非経口投与に適する。もう一つ別の実施態様において、担体は皮下投与に適する。あるいはまた、担体は静脈内、腹腔内、筋肉内、または舌下投与に適する。医薬的に許容される担体は、滅菌水溶液または分散液、および滅菌注射溶液または分散液をその場で製造するための滅菌粉末を包含する。
【0252】
ある実施態様において、医薬組成物は凍結乾燥された形態にて提供されてもよい。組成物は、溶液、ミクロエマルジョン、リポソーム、または薬物を高濃度で配合することに適する他の秩序だった構造として処方され得る。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール)、およびその適切な混合液を含有する溶媒または分散媒とすることができる。ある実施態様において、医薬組成物は安定化剤を含む。適切な流動性は、例えば、分散液の場合には必要とされる粒度を維持することにより、海面活性剤を用いることにより維持され得る。
【0253】
ある実施態様において、医薬組成物は、等張剤、例えば、シュークロースなどの糖類、マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコール、または塩化ナトリウムを組成物中に含む。モノステアリン酸塩およびゼラチンなどの剤を含めることで、注射可能な組成物の吸収を延ばすことができる。その上、該ポリペプチドは、時間放出処方にて、例えば、遅延放出ポリマーを含む組成物にて処方され得る。活性な化合物は、インプラントおよびマイクロカプセル化デリバリーシステムを含む放出制御システムのように、該化合物を迅速な放出から保護することのできる担体と一緒に製造され得る。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリ乳酸、およびポリ乳酸、ポリグリコール酸のコポリマー(PLG)などの生分解性、生体的合成性ポリマーを用いることができる。
【0254】
本開示の修飾リラキシンポリペプチドおよび組成物は、非経口投与、例えば、注射を含むが、限定されない、皮下的または静脈内投与を含むが、限定されない、あるいは注射または点滴の他のいずれかの形態にて、タンパク質またはペプチドに適する、慣用的ないずれの経路によっても投与され得る。ポリペプチド組成物は、経口、静脈内、腹腔内、筋肉内、経皮、皮下、局所、舌下、または直腸手段を含むが、限定されない、多くの経路により投与され得る。修飾リラキシンを含む組成物はリポソームを介して投与されてもよい。修飾リラキシンポリペプチドは、単独で、または医薬担体などの他の適切な成分と組み合わせて使用されてもよい。修飾リラキシンポリペプチドは本明細書に記載の他の剤と組み合わせて使用されてもよい。
【0255】
例えば、関節内(関節における)、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、および皮下経路によるなどの非経口投与に適した製剤は、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、および該製剤を意図する患者の血液と等張にする溶質を含有し得る、水性および非水性の等張性滅菌注射液、ならびに沈殿防止剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤、および保存剤を含み得る、水性および非水性の滅菌懸濁液を包含する。修飾リラキシンの製剤は、アンプルおよびバイアルなどの単位用量および複数用量を密封した容器にて提供され得る。
【0256】
本開示に照らして、患者に投与される用量は、用途に応じて、経時的に患者にて有益な治療応答を、または他の適切な活性をもたらすのに十分である。その用量は、該製剤の効能、利用される修飾リラキシンポリペプチドの活性、安定性または血清半減期、および患者の状態、ならびに治療される患者の体重または表面積で決定される。
【0257】
例えば、70kgの患者に投与される用量は、典型的には、現在使用されている治療タンパク質の投与量に相当する範囲にあり、その関連する組成物の活性または血清半減期の変化で調節される。
【0258】
投与について、本開示の製剤は、その関連する製剤のLD-50またはED-50、および/またはその修飾リラキシンポリペプチドの副作用(患者の集団および健康全般に適用されるものを含むが、これらに限定されない)を種々の濃度で観察することにより決定される速度で投与される。投与は単回用量または分割用量を介して達成され得る。
【0259】
本開示の修飾リラキシンポリペプチドは哺乳動物の対象に直接投与され得る。本開示の修飾リラキシンポリペプチドは、単位投与量の注射可能な形態(溶液、懸濁液またはエマルジョンを含むが、限定されない)にて、医薬的に許容される担体との混合物で製造され得る。本開示の修飾リラキシンポリペプチドは、連続注入(浸透圧ポンプなどのミニポンプの使用を含むが、限定されない)、単一ボーラスまたは遅延放出性デポー製剤によっても投与され得る。
【0260】
投与に適する製剤は、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、および該製剤を等張にする溶質を含有し得る、水性および非水性の溶液、ならびに沈殿防止剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤、および保存剤を含み得る、水性および非水性の滅菌懸濁液を包含する。溶液および懸濁液は、上記される種類の滅菌粉末、顆粒および錠剤より製造され得る。
【0261】
医薬的に許容される担体として、スクシネート、ホスフェート、ボレート、HEPES、シトレート、ヒスチジン、イミダゾール、アセテート、ビカルボネート、および他の有機酸を含有する緩衝剤;アスコルビン酸を含むが、限定されない、酸化防止剤;残基が約10個未満であるポリペプチドを含むが、限定されない、低分子量ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンを含むが、限定されない、タンパク質;ポリビニルピロリドンを含むが、限定されない、親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、ヒスチジンまたはヒスチジン誘導体、メチオニン、グルタメート、またはリシンを含むが、限定されない、アミノ酸;トレハロース、シュークロース、グルコース、マンノース、またはデキストリンを含むが、限定されない、単糖類、二糖類および他の糖質;EDTAおよびエデンテートジソジウムを含むが、限定されない、キレート化剤;亜鉛、コバルト、または銅を含むが、限定されない、二価金属;マンニトールまたはソルビトールを含むが、限定されない、糖アルコール;ナトリウムおよび塩化ナトリウムを含むが、限定されない、塩形成カウンターイオン;および/またはツィーン(Tween)(登録商標)(ツィーン80(ポリソルベート80またはPS80)およびツィーン20(ポリソルベート20)を含むが、限定されない)、プルロニックス(Pluronics)(登録商標)および他のプルロン酸(プルロン酸F68(ポロキサマー188)を含むが、限定されない)、またはPEGが挙げられるが、これらに限定されない。適切な界面活性剤はとして、例えば、ポリ(エチレンオキシド)-ポリ(プロピレンオキシド)-ポリ(エチレンオキシド)を基礎とするポリエーテル、すなわち、(PEO-PPO-PEO)、またはポリ(プロピレンオキシド)-ポリ(エチレンオキシド)-ポリ(プロピレンオキシド)を基礎とするポリエーテル、すなわち、(PPO-PEO-PPO)、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。PEO-PPO-PEOおよびPPO-PEO-PPOは、商品名:プルロニックス(Pluronics)(登録商標)、R-プルロニックス(登録商標)、テトロニックス(Tetronics)(登録商標)およびR-テトロニックス(登録商標)(BASF Wyandotte Corp., Wyandotte, Mich.)の下で商業的に入手可能であり、さらには米国特許第4,820,352(出典明示によりその内容を本明細書の一部とする)において記載される。他のエチレン/ポリプロピレンブロックポリマーも適切な界面活性剤でありうる。界面活性剤または界面活性剤の組み合わせは、1または複数のストレス(撹拌よりもたらされるストレスを含むが、限定されない)に対抗して修飾リラキシンを安定化するのに使用されてもよい。上記した物質のいくつかは「凝集剤(bulking agent)」と称することができる。いくつかはまた「張度調整剤」と称することもできる。抗菌性保存剤は、製品の安定性および抗菌性効果にも適用され得る;適切な保存剤として、ベンジルアルコール、塩化ベンズアルコニウム、メタクレソール、メチル/プロピルパラベン、クレソール、およびフェノール、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。ある実施態様において、医薬組成物は、スクシネート、ホスフェート、ボレート、HEPES、シトレート、ヒスチジン、イミダゾール、アセテート、ビカルボネート、および/または他の有機酸を含有する緩衝剤;トレハロース、シュークロース、グルコース、マンノース、またはデキストリンなどの糖質(例えば、単糖類、二糖類および他の糖質);およびツィーン(登録商標)80(ポリソルベート80またはPS80)またはツィーン20(ポリソルベート20)などの界面活性剤を含んでもよい。ある実施態様において、医薬組成物は、ヒスチジンを含有する緩衝剤、シュークロースなどの糖質;PS80などの界面活性剤を含んでもよい。
【0262】
本開示の修飾リラキシンポリペプチドは、PKエンハンサーと連結したポリペプチドを含め、徐放性システムにより、またはその一部として投与することもできる。徐放性組成物は、以下に限定されないが、成形品の形態(以下に限定されないが、フィルム、またはマイクロカプセルを含む)の半透過性ポリマーマトリックスを包含する。徐放性マトリックスは、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、エチレンビニルアセテート(またはポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸、ポリラクチド(ポリ乳酸)、ポリグリコライド(グリコール酸のポリマー)、ポリラクチドコグリコライド(乳酸とグリコール酸のコポリマー)ポリ無水物、L-グルタミン酸とガンマ-エチル-L-グルタメートのコポリマー、ポリ(オルト)エステル、ポリペプチド、ヒアルロン酸、コラーゲン、硫酸コンドロイチン、カルボン酸、脂肪酸、リン脂質、多糖類、核酸、ポリアミノ酸、フェニルアラニン、チロシン、イソロイシンなどのアミノ酸、ポリヌクレオチド、ポリビニルプロピレン、ポリビニルピロリドンおよびシリコーンなどの生体適合性材料からのものを包含する。徐放性組成物はまた、リポソームに取り込まれた化合物を包含する。
【0263】
本開示の文脈で患者に投与される用量は、対象において経時的に有益な応答を生じさせるのに十分な量とすべきである。一般に、非経口的に(例えば、静脈内的または皮下的に)投与される本開示の修飾リラキシンポリペプチドの治療的に効果的な総量は、用量当たり、患者の体重に付き約0.01μg/kg~約500mg/kg、約0.01μg/kg~約100mg/kg、約0.05mg/kg~約50mg/kg、約100μg/kg~約40mg/kg、約0.2mg/kg~約20mg/kg、または約0.5mg/kg~約10mg/kgの範囲にあるか、あるいは約0.5mg/kg、約1mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kg、約4mg/kg、約5mg/kg、約6mg/kg、約7mg/kg、約8mg/kg、約9mg/kg、約10mg/kg、約12mg/kg、約15mg/kg、約20mg/kg、約30mg/kg、約40mg/kg、約50mg/kg、または約100mg/kgであってもよいが、これは治療的判断の対象となる。ある実施態様において、非経口的に(例えば、静脈内的または皮下的に)投与される本開示の修飾リラキシンポリペプチドは、用量当たり、約0.2mg/kg~約5mg/kg、0.5mg/kg~約3mg/kg、または1mg/kg~約3mg/kgの範囲にあるか、あるいは約0.5mg/kg、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、10mg/kg、20mg/kg、30mg/kg、50mg/kg、または80mg/kgである。ある実施態様において、非経口的に(例えば、静脈内的または皮下的に)投与される本開示の修飾リラキシンポリペプチドは、用量当たり、約1mg/kgであってもよい。ある実施態様において、非経口的に(例えば、静脈内的または皮下的に)投与される本開示の修飾リラキシンポリペプチドは、用量当たり、約0.1mg~約10,000mg、約1mg~約5,000mg、約10mg~約2,500mg、約100mg~約1,000mg、約200mg~約800mg、約400mg~約600mg、約1mg~約10mg、約10mg~約50mg、約50mg~約100mg、約100mg~約300mg、約300mg~約500mg、約500mg~約700mg、約700mg~約900mg、約900mg~約1,200mg、約1,000mg~約2,000mg、約2,000mg~約3,000mg、約3,000mg~約4,000mg、約4,000mg~約5,000mg、約5,000mg~約6,000mg、約6,000mg~約7,000mg、約7,000mg~約8,000mg、約8,000mg~約9,000mg、または約9,000mg~約10,000mgの範囲にある均一な用量であってもよい。
【0264】
XII. 修飾リラキシンポリペプチドの治療的使用
【0265】
本開示は、心不全、すい臓炎、炎症、がん、強皮症、肺線維症、腎線維症、肝線維症、または心臓線維症などの心臓血管疾患または線維症を含む疾患の治療における修飾リラキシンポリペプチドの使用を提供する。
【0266】
該心臓血管疾患は、以下に限定されないが、冠動脈疾患、心臓発作、不整脈または心拍リズムの異常、心不全、心臓弁疾患、先天性心疾患、心筋症(心筋疾患)、心膜疾患、大動脈疾患、マルファン症候群、または血管疾患(血管病)を包含しうる。
【0267】
ある実施態様において、、該心不全は、1または複数の進行性心不全、心臓-腎臓症候群、腎機能の損傷に伴う心不全、慢性心不全、ミッドレンジ駆出率での慢性心不全(HFmEF)、急性心不全、ポスト急性非代償性心不全などのポスト急性心不全、代償性心不全、非代償性心不全、右心不全、左心不全、グローバル心不全、虚血性心筋症、拡張型心筋症、先天性心臓欠陥に付随する心不全、心臓弁の欠陥に付随する心不全、僧帽弁狭窄、僧帽弁不全、大動脈狭窄、大動脈不全、三尖狭窄、三尖不全、肺狭窄、肺弁不全、狭心症、高血圧、肺高血圧または肺動脈高血圧、複合した心臓弁の欠陥に付随する心不全、心筋炎症(心筋炎)、慢性心筋炎、急性心筋炎、ウイルス心筋炎、糖尿病性心不全、アルコール性心筋症、心臓貯蔵障害に付随する心不全、拡張期心不全、収縮期心不全、拡張期機能不全、心筋梗塞後リモデリング、駆出率が保持された慢性心不全(HFpEF)、または駆出率の低下した慢性心不全(HFrEF)を含みうる。
【0268】
ある実施態様において、該心不全は、慢性心不全、急性心不全、ポスト急性心不全、駆出率の低下した慢性心不全(HFrEF)、駆出率が保持された慢性心不全(HFpEF)、ミッドレンジ駆出率での慢性心不全(HFmEF)、拡張期心不全、収縮期心不全、心筋梗塞後リモデリング、狭心症、高血圧、肺高血圧、および肺動脈高血圧より選択される。ある実施態様において、該心不全は、ポスト急性心不全、進行性心不全、心臓-腎臓症候群、および腎機能の損傷に伴う心不全より選択される。
【0269】
線維症は器官または組織において線維性結合組織を過剰に形成することである。線維性組織の過剰な蓄積は器官または組織の機能の障害につながりうる病理学的症状と関連付けられる。罹患した器官は肺(肺線維症)、肝臓(肝線維症)、腎臓(腎線維症)、および心臓(心臓線維症)を包含しうる。線維症はまた、関節、皮膚、腸、骨髄などを含む、他の組織および器官にも影響を及ぼし得る。典型的な線維性症状または疾患は、以下に限定されないが、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)(肝臓に影響を及ぼす);糖尿病性腎疾患および糖尿病性腎症(腎臓に影響を及ぼす);および代謝性心不全(心臓に影響を及ぼす)を包含する。例えば、NASHは、アルコールをほとんどまたは全く消費せず、肝硬変に至りうる、人々の肝臓における脂肪、炎症および損傷によって特徴付けられる。NASHは、血中脂質濃度が高く、糖尿病または糖尿病予備軍であることが多い、体重過多または肥満の中年の人々にて診断される傾向にある。
【0270】
治療的使用の可能性のある修飾リラキシンポリペプチドの生物学的活性は、標準的または既知のインビトロまたはインビボアッセイを用いて測定され得る。リラキシンポリペプチドは当該分野にて公知の適切な方法により生物学的活性について分析され得る。かかるアッセイは、受容体結合アッセイを包含するが、それに限定されない。
【0271】
心不全および線維症などの疾患に関して、修飾リラキシンポリペプチドの活性は1または複数のインビボアッセイを用いて測定され得る。該アッセイは、典型的には、該疾患の動物モデルにてリラキシンを投与し、疾患の進行、重篤度または有効な治療の他の兆候についての効果を決定することを含む。かかるアッセイを用い、実験系において効果的な投与量および治療計画を決定し、それに基づいて、例えばヒト患者での臨床的使用のための投与計画を予測してもよい。利用可能なHFアッセイの例として、1)心筋梗塞を患っている患者の心臓の変化およびHFへの進行を模倣する、マウス左冠動脈前下降枝(LAD)結紮実験(Samuelら、Lab. Investigation 91:675-690, 2011);2)
最低濃度のAngIIを利用して心臓線維症を誘発する制限AngII-注入実験(Xuら、J. Cardiovasc. Pharmacol. 51:62-70, 2008);3)高血圧、腎損傷、および血液量のオーバーロードにより特徴付けられるダール-食塩(Dahl-Salt)感受性ラット実験(Sakataら、Circulation 109:2143-2149, 2004);4)WT-RLXの効能を証明するのに以前に利用された心臓および腎線維症の老齢の自発的高血圧ラット(SHR)実験(Lekgabeら、hypertension 46:412-418, 2005);および5)圧負荷のラット胸部大動脈狭窄実験(Kusterら、Circulation 111:420-427, 2005)が挙げられる。これらの実験に加えて、修飾リラキシンの活性は、正常な、およびタキピリング誘発性HFのイヌのようなイヌを用いる実験にて測定されてもよい。加えて、これらのアッセイは、予防モードだけでなく、治療モードにおいても、修飾リラキシンが効果的であるかどうかを決定するのに行われてもよい。さらには、修飾リラキシンは、腎線維症(Yoshidaら、Nephrol. Dialysis Transplant 27:2190-2197, 2012)、肺線維症(Huangら、Am. J. Pathol. 179:2751-2765, 2011)、および肝線維症(Williamsら、Gut 49:577-583, 2001)を含む、線維症の実験にて試験されてもよい。例えば、修飾リラキシンの効能を野生型リラキシン(例えば、野生型ヒトリラキシン)の効能と比較してもよい。
【0272】
本発明のリラキシン、リラキシンポリペプチド、および/またはリラキシンアナログの投与量は変化してもよく、特に医師の推奨および処方に基づくべきである。本発明のリラキシン、リラキシンポリペプチド、および/またはリラキシンアナログの正確な量は、治療される症状の正確な型および/または重篤度、治療される患者の状態、ならびに組成物に配合される他の成分などの因子でどれを優先するかで変化する。本発明はさらに、治療的に効果的な量の他の活性剤を投与することを含む。投与すべき量は、当業者であれば、リラキシンでの療法、利用可能なリラキシン療法、および/または他のリラキシンアナログ療法に基づいて、容易に決定することができる。
【0273】
本開示の化合物は、梗塞が影響を及ぼす心筋の面積を減少させるのに、および2次梗塞を防止するために使用されてもよい。さらには、血栓塞栓性障害、虚血後の再灌流損傷、最小血管および大血管病変(血管炎)、動脈および静脈血栓症、浮腫、心筋梗塞、脳卒中および一過性虚血性発作などの虚血性疾患を予防および/または治療するための、冠状動脈バイアス術(冠状動脈バイアス移植片、CABG)、直接的経皮経管的冠動脈形成術(PTCA)、血栓溶解後のPTCA、レスキューPTCA、心臓移植および開心術との関連で心臓を保護するための、ならびに移植、バイアス手術、カテーテル検査および他の外科的処置との関連で器官を保護するための、本開示の化合の使用が提供される。さらには、例えば、慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎、COPD)、喘息、肺気腫、気管支拡張症、嚢胞性線維症および肺高血圧、特に肺動脈高血圧などの呼吸障害を予防および/または治療するための、本開示の化合の使用が提供される。
【0274】
本開示の例示としての実施態様は、以下の:急性および慢性腎疾患、および急性および慢性腎機能不全、ならびに急性および慢性腎不全(透析の必要がある、またはない急性および慢性段階の腎不全を包含する)、ならびに腎低かん流などの内在または関連する腎疾患、透析誘発の低血圧、糸球体症、糸球体性および尿細管性たんぱく尿、腎浮腫、血尿、原発性、続発性、ならびに急性および慢性糸球体腎炎、膜性および膜増殖性糸球体腎炎、アルポート症候群、糸球体硬化、間質性尿細管疾患、腎障害性疾患、例えば、原発性および先天性腎疾患、腎炎症、腎移植拒絶反応のような免疫学的腎疾患、免疫複合体誘発性腎疾患、ならびに中毒誘発性腎疾患、糖尿病性および非糖尿病性腎疾患、腎盂腎炎、嚢胞腎、腎硬化、高血圧性腎硬化、ネフローゼ症候群(クレアチンクレアランスおよび/または水分排泄の異常な減少、尿素、窒素、カリウムおよび/またはクレアチンの血中濃度の異常な上昇、グルタミルシンセターゼなどの腎酵素の活性の変化、尿浸透圧および尿量、高ミクロアルブミン尿、マクロアルブミン尿、糸球体および細動脈病変、尿細管拡張、高リン血症、および/または透析の必要性によって特徴付けられ、診断学的にそれらに付随する症候群)を含むが、これらに限定されない、腎疾患を予防および/または治療するための医薬としての、本開示の修飾リラキシンの使用を提供する。
【0275】
加えて、本開示の修飾リラキシンは、腎臓の切除が不完全であった腎臓がん、利尿剤を過剰に使用した後の脱水症、悪性高血圧での制御されない血圧上昇、尿管の閉塞症および感染症、アミロイド症、ならびに紅斑性狼瘡、およびリウマチ性免疫学的全身性疾患などの糸球体損傷に付随する全身性疾患、ならびに腎動脈狭窄症、腎動脈血栓症、腎静脈血栓症、鎮痛剤誘発性腎症および腎尿細管性アシドーシスの予防および/または治療用の医薬として使用され得る。
【0276】
加えて、本開示は、造影剤誘発性および薬物誘発性の急性および慢性間質腎疾患、代謝性症候群および異脂肪血症を予防および/または治療するための医薬としての、本開示の修飾リラキシンの使用を提供する。
【0277】
加えて、本開示は、肺気腫、心不全、尿毒症、貧血症、電解質異常(例えば、高カルシウム血症、低ナトリウム血症)、ならびに骨および炭水化物の代謝などの慢性および/または急性腎疾患に付随する後遺症または徴候を予防、緩和および/または治療するための医薬としての、本開示の修飾リラキシンの使用を提供する。
【0278】
加えて、本開示は、腎機能の改善、安定化または回復を必要とする患者、例えば上記した腎疾患のある患者において、その腎機能を改善、安定化または回復するための医薬としての、本開示の修飾リラキシンの使用を提供する。
【0279】
さらには、例示としての実施態様は、肺疾患、特に喘息性障害、肺動脈高血圧(PAH)および左心疾患を含む他の形態の肺高血圧(PH)、HIV、鎌状赤血球貧血、血小板塞栓症(CTEPH)、サルコイドーシス、COPDまたは肺線維症関連の肺高血圧、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、急性呼吸困難症候群(ARDS)、急性肺損傷(ALI)、アルファ-1-アンチトリプシン欠乏症(AATD)、肺線維症、肺気腫(例えば、喫煙により誘発される肺気腫)および嚢胞性線維症(CF)を治療および/または予防するための、修飾リラキシンの使用を提供する。
【0280】
さらなる例示としての実施態様は、例えば、肺、心臓、腎臓、骨髄、特に肝臓などの臓器の線維性障害を含む、線維性障害、およびまた皮膚線維症および線維性眼障害を治療および/または予防するための、修飾リラキシンの使用を提供する。
【0281】
本開示は、さらには、障害、特に上記した障害の治療および/または予防用の医薬を製造するための、修飾リラキシンの使用を提供する。
【0282】
本開示は、さらには、効果的な量の少なくとも1つの本開示の修飾リラキシンを用いて、障害、特に上記した障害の治療および/または予防するための方法を提供する。
【0283】
本開示は、さらには、冠状心疾患、急性冠状動脈症候群、心不全(例えば、急性心不全、慢性心不全、または進行性心不全)、および心筋梗塞の治療および/または予防方法にて用いるための修飾リラキシンを提供する。
【0284】
本開示の方法および組成物にて使用するのに適する医薬組成物は、活性成分が意図する目的、例えば心不全の治療を達成するのに効果的な量にて含有される、組成物を包含する。効果的な用量の決定は、本開示を考慮して、十分に当業者の能力の範囲内にある。
【0285】
いずれの化合物でも、治療的に効果的な用量は、例えばRXFP1受容体を活性化する、単離された潅流ラットの心臓におけるエクスビボでのインビトロアッセイにて、または通常はマウス、ラット、ウサギ、イヌまたはブタでの動物実験のいずれかにて最初に評価することができる。動物実験は、望ましい濃度範囲および投与経路を獲得するのに用いることもできる。次にかかる情報を用いてヒトでの有用な用量および投与経路を決定することができる。
【0286】
治療的に効果的な用量とは、徴候または症状を改善する修飾リラキシンの量をいう。かかる化合物の治療効果および毒性、例えばED50(集団の50%にて治療的に効果的である用量)およびLD50(集団の50%に致死的である用量)は、インビトロまたは実験動物での標準的な薬剤操作により決定され得る。治療効果と毒性効果の間にある用量割合が治療指数であり、ED50/LD50の割合として表すことができる。例示となる医薬組成物は大きな治療指数を示す。インビトロアッセイおよび動物実験より得られるデータはヒトに用いるための一連の投与量を処方するのに使用される。かかる化合物の投与量は、例えば、毒性がほとんどないかまたは全くないED50を包含する一連の血中濃度の範囲内にある。投与量は、利用される剤形、患者の感受性および投与経路に応じてこの範囲内で変化する。
【0287】
正規の投与量は、投与経路に応じて、0.1~100,000ミリグラムの全用量で変化してもよい。個々の投与量およびデリバリー方法に関する指針は文献にて提供される。米国特許第4,657,760号;第5,206,344号;または第5,225,212号を参照のこと。
【0288】
XIII. 組み合わせ
【0289】
本開示の修飾リラキシンは、単独で、または他の活性化合物と組み合わせて投与され得る。これに関連して、「組み合わせ」なる語は、修飾リラキシンおよび他の薬剤が同じ組成物中に含有されるか、または別個に投与されるかどうかに関わりなく、投与が同じまたは異なる投与方法を介するものであってもよい、同時に、または連続して投与されるいずれの手段をも包含する。本開示は、上記の障害を治療および/または予防するための医薬組成物中に少なくとも1つの修飾リラキシンと、1または複数のさらなる活性成分とを含む薬剤であって、賦形剤または医薬的に許容される担体と混合される、薬剤を提供する。
【0290】
組み合わせるための適切な活性成分として、例えば、脂質代謝を調整する活性成分、抗糖尿病剤、降圧剤、潅流促進および/または抗血栓剤、酸化防止剤、ケモカイン受容体アンタゴニスト、p38-キナーゼ阻害剤、NPVアゴニスト、オレキシンアゴニスト、食欲抑制剤、PAF-AH阻害剤、消炎剤(COX阻害剤、LTB4-受容体アンタゴニスト)、鎮痛剤、例えばアスピリン、クロピドグレルなどのP2Y12阻害剤、エボロクマブ(REPATHA)またはアリロクマブ(PRALUENT)などのPCSK9阻害剤、抗鬱剤および他の精神薬が挙げられてもよい。
【0291】
本開示は、さらには、少なくとも1つの修飾リラキシンと、少なくとも1つの脂質代謝改変活性成分、抗糖尿病剤、血圧低下活性成分および/または抗血栓効果を有する薬剤との組み合わせを提供する。
【0292】
修飾リラキシンは、1または複数の脂質代謝調整活性成分、例えば、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤、HMG-CoAレダクターゼ発現の阻害剤、スクワレン合成阻害剤、ACAT阻害剤、LDL受容体インダクター、コレステロール吸収阻害剤、ポリマー胆汁酸吸着剤、胆汁酸再吸収阻害剤、MTP阻害剤、リパーゼ阻害剤、LpLアクチベータ、フィブレート、ナイアシン、ナイアシン受容体アゴニスト、CETP阻害剤、PPAR-a、PPAR-γおよび/またはPPAR-δアゴニスト、RXRモジュレータ、FXRモジュレータ、LXRモジュレータ、甲状腺ホルモンおよび/または甲状腺ホルモン模倣体、ATPシトレートリアーゼ阻害剤、Lp(a)アンタゴニスト、カンナビノイド受容体1アンタゴニスト、レプチン受容体アゴニスト、ボンベシン受容体アゴニスト、PCSK9 阻害剤、ヒスタミン受容体アゴニストおよび酸化防止剤/ラジカルスカベンジャーと組み合わせることができる。
【0293】
ある実施態様において、修飾リラキシンは、一連のスタチン、例えばロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、ロスバスタチンまたはピタバスタチンからのHMG-CoAレダクターゼ阻害剤と組み合わせて投与される。もう一つ別の実施態様において、修飾リラキシンはスクワレン合成阻害剤、例えば、BMS-188494またはTAK-475と組み合わせて投与される。もう一つ別の実施態様において、修飾リラキシンはACAT阻害剤、例えば、アバシミベ、メリナミド、パクチミベ、エフルシミベまたはSMP-797と組み合わせて投与される。もう一つ別の実施態様において、別の修飾リラキシンはコレステロール吸収阻害剤、例えば、エゼチミベ、チクエシドまたはパマクエシドと組み合わせて投与される。もう一つ別の実施態様において、修飾リラキシンはMTP阻害剤、例えば、インプリタピド、BMS-201038、R-103757またはJTT-130と組み合わせて投与される。もう一つ別の実施態様において、修飾リラキシンはリパーゼ阻害剤、例えば、オルリスタットと組み合わせて投与される。もう一つ別の実施態様において、修飾リラキシンは甲状腺ホルモンおよび/または甲状腺ホルモン模倣体、例えば、D-チロキシンまたは3,5,3’-トリヨードチロニン(T3)と組み合わせて投与される。もう一つ別の実施態様において、修飾リラキシンはナイアシン受容体のアゴニスト、例えば、ナイアシン、アシピモックス、アシフランまたはラデコールと組み合わせて投与される。もう一つ別の実施態様において、修飾リラキシンはCETP阻害剤、例えば、ダルセトラピブ、BAY60-5521、アナセトラピブまたはCETPワクチン(CETi-1)と組み合わせて投与される。もう一つ別の実施態様において、修飾リラキシンはPPAR-γアゴニスト、例えば、チアゾリジンジオンのクラスからの、例えば、ピオグリタゾンまたはロシグリタゾンと組み合わせて投与される。もう一つ別の実施態様において、修飾リラキシンはPPAR-δアゴニスト、例えば、GW-501516またはBAY68-5042と組み合わせて投与される。もう一つ別の実施態様において、修飾リラキシンはポリマー胆汁酸吸着剤、例えば、コレスチルアミン、コレスチポール、コレソルバン、コレスタゲルまたはコレスチミドと組み合わせて投与される。もう一つ別の実施態様において、修飾リラキシンは胆汁酸再吸収阻害剤、例えば、ASBT(=IBAT)阻害剤(例えば、AZD-7806、S-8921、AK-105、BARI-1741、SC-435またはSC-635など)と組み合わせて投与される。もう一つ別の実施態様において、修飾リラキシンは抗酸化剤/ラジカルスカベンジャー、例えば、プロブコール、AGI-1067、BO-653またはAEOL-10150と組み合わせて投与される。もう一つ別の実施態様において、修飾リラキシンはカンナビノイド受容体1アンタゴニスト、例えば、リモナバントまたはSR-147778と組み合わせて投与される。
【0294】
修飾リラキシンは、1または複数の抗糖尿病剤、例えば、インスリンおよびインスリン誘導体、スルホニル尿素、ビグアニド、メグリチニド誘導体、グルコシダーゼ阻害剤、PPAR-ガンマアゴニスト、ジペプチジル-ペプチダーゼIVの阻害剤(DPP-IV阻害剤)、オキサジアゾリジノン、チアゾリジンジオン、GLP1受容体アゴニスト、グルカゴンアンタゴニスト、インスリン感作剤、CCK1受容体アゴニスト、レプチン受容体アゴニスト、グルコース新生および/またはグリコーゲン分解の刺激に関与する肝酵素の阻害剤、グルコース摂取のモジュレータ、およびまたカリウムチャネル開口剤
と組み合わせることができる。
【0295】
ある実施態様において、修飾リラキシンはインスリンまたはインスリン誘導体と組み合わせて投与される。もう一つ別の実施態様において、修飾リラキシンはスルホニル尿素、例えば、トルブタミド、グリベンクラミド、グリメピリド、グリペジドまたはグリクラジドと組み合わせて投与される。もう一つ別の実施態様において、修飾リラキシンはビグアニド、例えば、メトホルミンと組み合わせて投与される。もう一つ別の実施態様において、修飾リラキシンはメグリチニド誘導体、例えば、レパグリニドまたはナテグリニドと組み合わせて投与される。もう一つ別の実施態様において、修飾リラキシンはグルコシダーゼ阻害剤、例えば、ミグリトールまたはアカルボースと組み合わせて投与される。もう一つ別の実施態様において、修飾リラキシンはDPP-IV阻害剤、例えば、シタグリプチンおよびビルダグリプチンと組み合わせて投与される。もう一つ別の実施態様において、修飾リラキシンはPPAR-ガンマアゴニスト、例えばチアゾリンジオンのクラスからの、例えば、ピオグリタゾンまたはロシグリタゾンと組み合わせることができる。
【0296】
修飾リラキシンは、1または複数の降圧活性成分、例えば、カルシウムアンタゴニスト、アンジオテンシンIIアンタゴニスト、ACE阻害剤、レニン阻害剤、ベータ-受容体遮断剤、アルファ-受容体遮断剤、利尿剤、アルドステロンアンタゴニスト、ミネラルコルチコイド受容体受容体アンタゴニスト、ECE阻害剤、ACE/NEP阻害剤およびバソペプチダーゼ阻害剤と組み合わせることができる。
【0297】
ある実施態様において、修飾リラキシンはカルシウムアンタゴニスト、例えば、ニフェジピン、アムロジピン、ベラパミルまたはジルチアゼムと組み合わせて投与される。もう一つ別の実施態様において、修飾リラキシンはアンジオテンシンIIアンタゴニスト、例えば、ロサルタン、バルサルタン、カンデサルタン、エンブサルタン、オルメサルタンまたはテルミサルタンと組み合わせて投与される。もう一つ別の実施態様において、修飾リラキシンはACE阻害剤、例えば、エナラプリル、カプトプリル、リシノプリル、ラミプリル、デラプリル、ホシノプリル、キノプリル、ペリンドプリルまたはトランドプリルと組み合わせて投与される。もう一つ別の実施態様において、修飾リラキシンはベータ-受容体遮断剤、例えば、プロプラノロール、アテノロール、チモロール、ピンドロール、アルプレノロール、オキソプレノロール、ペンブトロール、ブプラノロール、メチプラノロール、ナドロール、メピンドロール、カラザロール、ソタロール、メトプロロール、ベタキソロール、セリプロロール、ビソプロロール、カルテオロール、エスモロール、ラベタロール、カルベジロール、アダプロロール、ランジオロール、ネビボロール、エパノロールまたはブシンドロールと組み合わせて投与される。もう一つ別の実施態様において、修飾リラキシンはアルファ-受容体遮断剤、例えば、プラゾシンと組み合わせて投与される。もう一つ別の実施態様において、修飾リラキシンは利尿剤、例えば、フルセミド、ブメタニド、トルセミド、ベンドロフルメチアジド、クロロチアジド、ヒドロクロロチアジド、ヒドロフルメチアジド、メチクロチアジド、ポリチアジド、トリクロロメチアジド、クロロタリドン、インダパミド、メトラゾン、キネタゾン、アセタゾールアミド、ジクロロフェナミド、メタゾールアミド、グリセロール、イソソルビド、マンニトール、アミドリドまたはトリアムテレンと組み合わせて投与される。もう一つ別の実施態様において、修飾リラキシンはアルドステロンまたはミネラルコルチコイド受容体受容体アンタゴニスト、例えば、スピロノラクトンまたはエプレレノンと組み合わせて投与される。もう一つ別の実施態様において、修飾リラキシンはバソプレシン受容体アンタゴニスト、例えば、コニバプタン、トルバプタン、リキシバプタンまたはSR-121463と組み合わせて投与される。
【0298】
修飾リラキシンは、1または複数の次の:抗血栓剤、例えば、血小板凝集阻害剤または抗凝血剤;利尿剤;バソプレシン受容体アンタゴニスト;有機ニトレートおよびNO供与体;陽性変力活性のある化合物;例えば、ホスホジエステラーゼ(PDE)1、2、3、4および/または5の阻害剤、特にPDE5阻害剤(シルデナフィル、バルデナフィルおよびタダラフィルなど)およびまたPDE3阻害剤(ミルリノンなど)などの環状グアノシン一リン酸(cGMP)および/または環状アデノシン一リン酸の分解を阻害する化合物;ナトリウム利尿ペプチド、例えば、「心房ナトリウム利尿ペプチド」(ANP、アナリチド)、「B型ナトリウム利尿ペプチド」または「脳ナトリウム利尿ペプチド」(BNP、ネシリチド)、「C型ナトリウム利尿ペプチド」(CNP)およびまたウロジラチン;プロスタシクリン受容体のアゴニスト(IP受容体)、例えば、イロプロスト、ベラプロスト、シカプロスト;If(奇異性チャネル)チャネルの阻害剤、例えば、イバブラジン;例えば、レボシメンダンなどのカルシウム感作剤;カリウム補足剤;NO-独立性であるが、ヘム依存性のグアニル酸シクラーゼの刺激剤、例えば、WO 00/06568、WO 00/06569、WO 02/42301およびWO 03/095451に記載の化合物;NO-およびヘム-依存性のグアニル酸シクラーゼのアクチベータ、例えば、WO 01/19355、WO 01/19776、WO 01/19778、WO 01/19780、WO 02/070462およびWO 02/070510に記載の化合物;ヒト好中性エラスターゼ(HNE)の阻害剤、例えば、シベレスタットおよびDX-890(レルトラン);シグナル変換カスケードを阻害する化合物、例えば、チロシン-キナーゼ阻害剤、例えば、ソラフェニブ、イマチニブ、ゲフィチニブおよびエルロチニブ;および/または心臓のエネルギー代謝を調整する化合物、例えば、エトモキシル、ジクロロアセテート、ラノラジンおよびトリメタジジンと組み合わせることができる。
【0299】
ある実施態様において、修飾リラキシンは、有機ニトレートまたはNO供与体、例えば、ナトリウムニトロプルシド、ニトログリセロール、イソソルビド・モノニトレート、イソソルビド・ジニトレート、モルシドミンまたはSIN-1と組み合わせて、あるいは吸入性(inhalative)NOと組み合わせて投与される。もう一つ別の実施態様において、修飾リラキシンは陽性変力化合物、例えば、心臓グリコシド(ジゴキシン)、ベータ-アドレナリン作動性およびドーパミン作動性アゴニスト、例えばイソプロテレノール、アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミンまたはドブタミンと組み合わせて投与される。もう一つ別の実施態様において、修飾リラキシンは交感神経遮断剤(antisympathotonic)、例えばレセルピン、クロニジンまたはアルファ-メチルドーパと組み合わせて、またはカリウムチャネルアゴニスト、例えばミノキシジル、ジアゾキシド、ジヒドララジンまたはヒドララジンと組み合わせて、あるいは酸化窒素を放出する物質、例えばグリセロールニトレートまたはナトリウムニトロプルシドと組み合わせて投与される。もう一つ別の実施態様において、修飾リラキシンは血小板凝集阻害剤、例えば、アスピリン、クロピドグレル、チクロピジンまたはジピリダモールと組み合わせて投与される。もう一つ別の実施態様において、修飾リラキシンはトロンビン阻害剤、例えば、キシメラガトラン、メラガトラン、ダビガトラン、ビバリルジンまたはクレキサンと組み合わせて投与される。もう一つ別の実施態様において、修飾リラキシンはGPIIb/IIIaアンタゴニスト、例えば、チロフィバンまたはアブシキマブと組み合わせて投与される。もう一つ別の実施態様において、修飾リラキシンはXa因子阻害剤、例えば、リバロキサバン(BAY59-7939)、DU-176b、アピキサバン、オタミキサバン、フィデキサバン、ラザキサバン、ホンダパリヌクス、イドラパリヌクス、PMD-3112、YM-150、KFA-1982、EMD-503982、MCM-17、MLN-1021、DX9065a、DPC906、JTV803、SSR-126512またはSSR-128428と組み合わせて投与される。もう一つ別の実施態様において、修飾リラキシンはヘパリンまたは低分子量(LMW)ヘパリン誘導体と組み合わせて投与される。もう一つ別の実施態様において、修飾リラキシンは例示としてのクマディン(ワルファリン)などのビタミンKアンタゴニストと組み合わせて投与される。
【0300】
本開示は、さらには、少なくとも1つの修飾リラキシンと、通常は1または複数の不活性な非毒性の医薬的に適切な助剤と一緒に含む薬剤を、またそれの上記した目的での使用を提供する。所望により、該薬剤は、該修飾リラキシンと、上記される成分などのもう一つ別の活性成分を含んでもよい。例えば、該薬剤は該修飾リラキシンと、もう一つ別の活性成分とを、心不全および/または線維症に付随する疾患の治療または予防に対して効果的な量で含んでもよい。
【0301】
実施例
実施例1:非自然コード化のアミノ酸のプレプロリラキシンへのリボソームでの組み込み
【0302】
この実施例では、非自然コード化のアミノ酸を含む、イー・コリにおけるリラキシンポリペプチドのクローニングおよび発現が説明される。
【0303】
リラキシンのクローニング方法は当業者に知られている。リラキシンのポリペプチドおよびポリヌクレオチド配列、およびリラキシンの宿主細胞へのクローニングは、米国特許第4,758,516号;米国特許第5,166,191号;米国特許第5,179,195号、第5,945,402号;および第5,759,807号にて詳細に記載されており;その特許の内容をすべて出典明示により本明細書に組み込まれるものとする。
【0304】
リラキシンをコードするcDNAを配列番号:12で示し、その成熟ポリペプチドのアミノ酸配列を配列番号:1で示す。典型的なリラキシン配列を表1にて提供する。
表1:リラキシン配列
【表1】
【表2】
【0305】
直交tRNA(O-tRNA)および直交アミノアシルtRNAシンターゼ(O-tRNAシンセターゼ(O-RS)を含む翻訳系を導入し、非自然コード化のアミノ酸を含有するリラキシンまたはリラキシンアナログを発現するのに用いる。O-RSはO-tRNAを非自然コード化のアミノ酸で選択的にアミノアシル化する。次に、該翻訳系は、コード化セレクターコドンに応答して、非自然コード化のアミノ酸を該リラキシンまたはリラキシンアナログに挿入する。適切なO-RSおよびO-tRNA配列が、出典明示により本明細書の一部とされる、WO 2006/068802(発明の名称「アミノアシル-tRNAシンセターゼの組成物およびその使用」(E9;配列番号:16)およびWO 2007/021297(発明の名称「tRNAの組成物およびその使用」(F13;配列番号:17)に記載される。利用することのできる典型的な配列が表2にて説明される。
表2:発現系において利用される配列
【表3】
【0306】
イー・コリを修飾リラキシンまたはリラキシンアナログの遺伝子を含有するプラスミドおよび(所望の非自然コード化のアミノ酸に対して特異的である)直交アミノアシルtRNAシンセターゼ/tRNAのペアで形質転換し、非自然コード化のアミノ酸をリラキシンポリペプチドに部位特異的に組み込ませる(出典明示により本明細書の一部とされる米国特許第8,735,539の記載を参照のこと)。
【0307】
野生型成熟リラキシンは、PCRによってcDNA合成反応から標準プロトコルを用いて増幅され、pET30(Ncol-BamHI)などのプラスミドベクター中にクローニングされる。リラキシン配列を、イー・コリのリポタンパク質プロモーター配列から誘導される合成プロモーターの構造的制御下で、メタノカルドコックス・ヤンナスキイ(Methanococcus jannaschii)から由来のアンバーサプレッサーチロシンtRNA・Tyr/CUA(Mj tRNATyr/CUA)(Miller, J.H.、Gene, 1986)を、ならびにイー・コリのGlnRSプロモーターの制御下で直交チロシル-tRNA-シンセターゼ(MjTyrRS)(例えば、E9)を含有する抑制ベクター中にサブクローン化する。リラキシンの発現は、T7プロモーターの制御下にあり、L-アラビノースによって間接的に誘発される。アンバー変異は標準的な急速変化変異プロトコルを用いて導入される(Stratagene;La Jolla、California)。構成を配列検証する。
【0308】
パラ-アセチル-フェニルアラニン(pAcF)を用いる抑制
【0309】
アンバー変異(配列番号:38をA鎖残基1にてpAcFでコードする、図4を参照のこと)を含む修飾リラキシン遺伝子、および上記される直交アミノアシルtRNAシンセターゼ/tRNAのペアを含有するプラスミドを用い、エシェリヒア・コリ株W3110B55[F-IN(rrnD-rrnE)lambdaaraB::g1 tetA fhuA::dhfr proS W375R::cat]に形質転換させ、T7ポリメラーゼの発現をアラビノース誘発性プロモーターの制御下でイー・コリの菌株を産生した。一夜培養した細菌培養物を2X YT培地を含有する振盪フラスコにて1:100に希釈し、37℃で約0.8のOD600になるまで増殖させた。タンパク質発現は、アラビノース(最終0.2%)を添加し、パラ-アセチル-フェニルアラニン(pAcF)を4mMの最終濃度まで加えることで誘発される。培養物を37℃で5時間インキュベートする。細胞をペレット状にし、B-PER溶解緩衝液(Pierce)100μl/OD/ml+10μg/ml DNaseに再懸濁させ、37℃で30分間インキュベートする。細胞材料を遠心分離により取り除き、上清を除去する。ペレットを等量のSDS-PAGEタンパク質ローディング緩衝液に再懸濁させる。サンプルはすべてMESおよびDTTを含む4-12%PAGEゲルにロードされる。リラキシンの発現は、SDS-PAGE、ウェスタンブロット分析、または電子噴射イオン化イオントラップ質量分析等によって確認される。
【0310】
修飾リラキシン遺伝子配列は、N-末端Hisタグ、例えば、HHHHHHSGG(配列番号:55)を含んでもよい。Hisタグ化変異体のリラキシンタンパク質は当業者に既知の方法を用いて精製され得る。プロボンド(ProBond)ニッケル-キレート化樹脂(Invitrogen、Carlsbad、CA)は、製造者により供給される標準的Hisタグ化タンパク質精製操作を介して使用されてもよい。タンパク質の機能測定は、当該分野にて既知の方法、本願および組み込まれた引用文献に記載の方法を通してなされてもよく、あるいはまたELISAを生存細胞に対して開発して、本発明のリラキシンポリペプチドを評価することもできる。
【0311】
実施例2:非自然コード化のアミノ酸を含有する成熟リラキシンの製造および精製
【0312】
プレプロリラキシン(配列番号:38をA鎖残基1にてpAcFでコード、図4を参照のこと)は、封入体としてのイー・コリの細胞にて発酵させることで産生された。非自然コード化のアミノ酸 パラ-アセチル-フェニルアラニンは、実施例1に示される一般的方法を用いてリボソーム的に組み込まれた。
【0313】
修飾リラキシンポリペプチドを発現するプラスミドを含有するイー・コリ細胞を発酵培地を含有する発酵器中で増殖させた。カナマイシンを該発酵器に加え、プラスミドの安定性を続伸させた。L-アラニン-L-パラ-アセチルフェニルアラニン・塩酸塩(L-Ala-pAcF)を該反応器に加え、p-アセチルフェニルアラニン(pAcF)がプレプロリラキシンアミノ酸配列に組み込まれるようにした。最後に、L-アラビノースを添加してプロプレリラキシン発現を誘発させた。細胞内で産生されたプレプロリラキシンは不溶性封入体(IB)の形成をもたらした。誘導後持続期間の経過した後に発酵ブロスを採取した。発酵価は1Lの発酵に付きプレプロリラキシンが約4.5gであった。
【0314】
細胞を高せん断下で溶解させることで無傷の細胞から封入体(IB)を分離した。無傷のIBを遠心分離により回収した。回収した後、IBペレットを水中に再懸濁させ、再度遠心分離に付して不純物を除去した。洗浄したIBを5mMジチオスレイトール(DTT)含有の5Mグアニジン/トリス緩衝液(pH8.5)中で可溶化させた。5mM DTTおよび8.5mMシスタミンを含有する、冷却したトリス緩衝液(pH8.5)中に、可溶化されたIB溶液を約4.5倍にゆっくりと希釈することにより、プレプロリラキシンのリフォールディングを達成した。そのリフォールディング溶液を最低12時間インキュベートし、続いてプロセッシングを続けた。インキュベーション期間が完了した後、酢酸および塩酸を添加することでそのpHを3.5-4.0に落とし、不純物の沈殿を促進した。沈殿材料を遠心分離により、つづいて深層濾過により除去した。
【0315】
深層濾過に付したリフォールディング溶液を酢酸塩溶液(pH4)で約6.5倍に希釈し、東ソー・バイオサイエンス(Tosoh Bioscience)SP550Cカチオン交換カラムに装填するのに調製中の導電性を低下させた。装填した後、SP550Cカラムを洗浄し、ついでプレプロリラキシンを10%-90%勾配の50mM酢酸塩(pH5.5)緩衝液(1M NaClを含有)を用いて溶出させた。SP550C溶出液を、プレプロリラキシン濃度が1.5mg/mLとなるまで、精製水で希釈した。pHを、酵素変換のために調製中にて2Mトリス(pH8.0)を添加し、つづいて2mM CaCl2を添加することで8.0に調整した。
【0316】
野生型トリプシンを無水コハク酸で修飾し(すなわち、スクシニル化に付し)、トリプシン処理工程の終了の際にプレプロリラキシン/トリプシン反応混合物からの取り出しを容易にした。野生型トリプシンの10mM HCl、20mM CaCl2中の濃縮物を精製水で5mg/mLに希釈し、次に1Mホウ酸塩緩衝液(pH7.6)を添加し、0.2Mの最終濃度とした。その希釈し、pH調整したトリプシン溶液に、トリプシンに対して100モル過剰で3回の等モル添加量(3x33.3モル過剰添加量)にて、各添加の間には混合を10分間行いながら、無水コハク酸の固形物を添加した。
【0317】
スクシニル化トリプシンを22℃で4時間インキュベートしたプレプロリラキシン溶液に添加し、結合ペプチドおよびそのプレプロリラキシン分子のリーダー配列を酵素的に完全に除去されるようにした。得られたリラキシン-R分子はB鎖上のC-末端にアルギニンを含有する。次にトリプシン処理の材料を、リラキシン-Rを流れの中で集めながら、スクシニル化トリプシンと結合する、Sartobind STIC(登録商標)PAアニオン交換フィルターを通して加工処理に付した。カルボキシペプチダーゼ-B(CPB)をSTIC(登録商標)PA濾液に加え、撹拌しながら2時間インキュベートし、B鎖のC末端にあるアルギニン残基を酵素的に完全に除去されるようにした。その反応混合物のpHを2.8-3.2に落とすことで該CPB反応をクエンチさせた。
【0318】
成熟リラキシンは東ソー・バイオサイエンスSP-5PWカチオン交換樹脂を用いて精製された。成熟リラキシン該カラムに装填し、次につづいて3回のカラム洗浄;1)50mM酢酸塩(pH5.5)、2)50mM酢酸塩(pH5.5)、0.1M NaCl、および3)50mM酢酸塩(pH4.0)が行われた。結合したリラキシンを20倍のカラム容量にて0%~100%の2M KClの線形勾配を用いてpH4で溶出させた。その溶出したリラキシン溶液を、さらなる処理に付す前に、そのpHを1M HClを用いて3.0に調整した。別法として、沈殿処理によりトリプシンを反応混合物より除去した。反応混合物のpHを室温で1時間8.0に上げた後にリラキシンが沈殿する。次に沈殿したリラキシンを遠心分離により回収した。該ペレットをトリス緩衝液(pH8)に再懸濁させ、つづいて遠心分離に付すことにより該ペレットを3回洗浄した。最終に洗浄した後、該ペレットを20mM酢酸に再び可溶化させた。精製したリラキシンは何らトリプシン活性を示さなかった。最終生成物は成熟リラキシンであった。
【0319】
基本的に同じ合成方法を用い、プレプロリラキシン配列を適宜修飾して、RLX-AQ1(「AQ1」)(図2)およびRLX-BM25/AN1(「BM25/AN1」)(図3)を生成した。
【0320】
実施例3:脂肪酸に連結したペプチドを含む、リラキシンのPKエンハンサーとのコンジュゲーション
【0321】
精製リラキシンを限外濾過により約10mg/mLんい濃縮した。ペプチドとC15脂肪酸を含むアミノオキシ活性化PKエンハンサー(例えば、GGGGS-Gluγ(配列番号:139)-C14-COOH)をリラキシンに対して1.5倍モル過剰量で該反応混合物に添加した。次にヒドラジド添加物(すなわち、4-アミノ-ベンゾイックヒドラジド)をリラキシンに対して45モル過剰量で該反応混合物に添加した。該溶液を必要に応じて1M HClでpHが3.5と4.0の間を維持し、温度が30℃で制御されるように調整した。該コンジュゲーション反応は、実施例4に記載の操作に従って製造されるように、C15脂肪酸に連結したペプチドリンカー(例えば、GGGGS-Gluγ(配列番号:139)-C14-COOH)と、リラキシンにおけるパラ-アセチル-フェニルアラニン残基との間で安定したオキシム結合を形成した。該反応は16時間以内に終了した。
【0322】
コンジュゲーション反応の混合物を10mM酢酸塩緩衝液(pH4.0)で4mS/cmに希釈し、次にGE Healthcare SP HPカチオン交換カラムに装填した。装填の完了した後、該カラムを20mMヒスチジン(pH6.0)で洗浄し、不純物を除去した。次に、リラキシン-C15のコンジュゲート(例えば、AQ1-リラキシン-GGGGS-Gluγ(配列番号:139)-C14-COOH)を50mM炭酸水素アンモニウム(pH8.5)で溶出した。成熟リラキシンの構造は図5にて模式的に説明されおり、式III:
【化10】
で示される。
【0323】
精製したリラキシン-C15のコンジュゲートを濃縮し、適切な最終処方の緩衝液中に透析濾過した。該コンジュゲートの典型的な組成物は、20mMヒスチジン、0.25Mシュークロース、0.05%(w/v)ポリソルベート80(pH5.5)中の、8mg/mLのリラキシン-C15のコンジュゲートである。該組成物は-60℃で凍結して貯蔵される。
【0324】
他のリラキシン-脂肪酸のコンジュゲートは同様の方法を用いて製造されてもよい。
【0325】
実施例4:PKエンハンサーの固相合成
【0326】
本明細書に開示されるPKエンハンサーは、下記に例示される操作を用いて製造されてもよい。
【0327】
本願(特に下記のスキームおよび実施例を含む)において使用される略語は当業者に公知である。使用される略語のいくつかは次のとおりである:minは分に;hは時間に;rtは室温に;sat.は飽和に;TFAはトリフルオロ酢酸に;DMFはN,N-ジメチルホルムアミドに;DCMはジクロロメタンに;Fmocは9-フルオレニルメチルオキシカルボニルに;HATUは1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム 3-オキシドヘキサフルオロホスフェートに;DIEAまたはDOPEAはジイソプロピルエチルアミンに;NMPはN-メチルピロリドンに;EDCは1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドに;DMSOはジメチルスルホキシドに;MeOHはメタノールに;EtOAcは酢酸エチルに;Et3Nはトリエチルアミンに;MeCNまたはACNはアセトニトリルについての略語である。
【0328】
分析データ:質量分析:「ESI-MS(+)」は陽イオンモードで行われる電子噴射イオン化質量分析法を意味し;「ESI-MS(-)」は陰イオンモードで行われる電子噴射イオン化質量分析法を意味し;「ESI-HRMS(+)」は陽イオンモードで行われる高分解能電子噴射イオン化質量分析法を意味し;「ESI-HRMS(-)」は陰イオンモードで行われる高分解能電子噴射イオン化質量分析法を意味する。検出された質量は「m/z」の単位表示に従って報告される。1000よりも大きな正確な質量を有する化合物が、しばしば、二価、三価、および/または四価イオンとして検出される。
CAD:荷電化粒子検出器;ELSD:蒸発光散乱検出器
【0329】
分析用LCMS条件A:カラム:ウォーターズ・アクイティ(Waters Acuity)UHPLC BEH C18、2.1x50mm、1.7μm粒子;移動相A:5:95 アセトニトリル:水+0.05%TFA;移動相B:95:5 アセトニトリル:水+0.05%TFA;温度:50℃;勾配:3分間にわたって0-100%Bとし、次に100%Bで1.0分間保持する;流速:1mL/分;検出:マス
【0330】
分析用LCMS条件B:カラム:ウォーターズ・アクイティ UHPLC BEH C18、2.1x50mm、1.7μm粒子;移動相A:5:95 アセトニトリル:水+10mM酢酸アンモニウム;移動相B:95:5 アセトニトリル:水+10mM酢酸アンモニウム;温度:50℃;勾配:3分間にわたって0-100%Bとし、次に100%Bで1.0分間保持する;流速:1.0mL/分;検出:マス
【0331】
分析用UHPLC-CAD条件A:カラム:ウォーターズ(Waters) BEH フェニル(Phenyl)、150x2.1mm、1.7μm粒子;移動相A:水+0.05%TFA、移動相B:アセトニトリル+0.05%TFA;温度:35℃;勾配特性:0分~15分で10%B~35%Bとし、16分~25分で35%B~95%Bとし、次に95%Bで1.0分間保持する;作動後の時間:4分間(初期移動相条件下);流速:0.35mL/分;注入容量:DMSO中2mg/mLのサンプルを3μL注入;検出:CAD(100PA範囲および35psi気体)
【0332】
分析用UHPLC-CAD条件B:カラム:ウォーターズ BEH フェニル、150x2.1mm、1.7μm粒子;移動相A:水+0.05%TFA、移動相B:アセトニトリル+0.05%TFA;温度:35℃;勾配特性:0分~25分で10%B~95%Bとし、次に95%Bで1.0分間保持する;作動後の時間:4分間(初期移動相条件下);流速:0.35mL/分;注入容量:DMSO中2mg/mLのサンプルを3μL注入;検出:CAD(100PA範囲および34psi気体)
【0333】
一般的操作:
【0334】
あらゆる操作はプレリュード型ペプチド合成装置(Protein Technologies)での自動化の下で実施された。操作はすべて、特記されない限り、底部フリットを取り付けた40mLのポリプロピレン製反応容器中で行われた。該容器を該容器の底部と頂部の両方を介してプレリュード型ペプチド合成装置に接続した。該容器の頂部および底部を通してDMFを添加し、それにより該容器の側面は上下に等しく洗い流すことができる。試薬は容器の底部からしか添加されず、下からフリットを通って樹脂と接触する。溶液はすべて該容器の底部を通って取り出された。「周期的なかき混ぜ」はNガスを短いパルスで底部フリットに通すことをいい;パルスは約5秒間続き、それが30秒毎に発生する。アミノ酸溶液は、一般に、製造から2週間を越えて使用されなかった。HATU溶液は製造から2週間以内に使用された。DMF=ジメチルホルムアミド;HATU=1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム 3-オキシド・ヘキサフルオロホスフェート;DIPEA=ジイソプロピルエチルアミン;2-クロロトリチルクロリド樹脂=2-クロロトリフェニルメチルクロリド樹脂(Chem-Imprex、100-200メッシュ、黄色ビーズ、1.1meg/g)。使用されるコモンアミノ酸(Common amino acid)を側鎖保護基を括弧内に示して、下記に列挙する。Fmoc-Ala-OH;Fmoc-Arg(Pbf)-OH;Fmoc-Asn(Trt)-OH;Fmoc-Asp(OtBu)-OH;Fmoc-Bzt-OH;Fmoc-Cys(Trt)-OH;Fmoc-Dab(Boc)-OH;Fmoc-Dap(Boc)-OH;Fmoc-Gln(Trt)-OH;Fmoc-Gly-OH;Fmoc-His(Trt)-OH;Fmoc-Hyp(Bu)-OH;Fmoc-Ile-OH;Fmoc-Leu-OH;Fmoc-Lys(Boc)-OH;Fmoc-Nle-OH;Fmoc-Met-OH;Fmoc-[N-Me]Ala-OH;Fmoc-[N-Me]Nle-OH;Fmoc-Phe-OH;Fmoc-Pro-OH;Fmoc-Sar-OH;Fmoc-Ser(Bu)-OH;Fmoc-Thr(Bu)-OH;Fmoc-Trp(Boc)-OH;Fmoc-Tyr(Bu)-OH;Fmoc-Val-OH。次の脂肪酸誘導体は最後のカップリング工程に使用された;HOC(CHCH、n=10-18、およびHOC(CH(CO Bu)、n=10-18
【0335】
一般的操作は、0.4ミリモルのスケールでなされる実験を記載し、そのスケールは樹脂と結合する(9H-フルオレン-9-イル)メチル (2-(アミノオキシ)エチル)カルバメートの量で決定された。このスケールは上記の上記の樹脂の約364mgに相当する。しかしながら、ローディング効率が46%であるとの前提のもとに800mgの樹脂を使用した。ローディング反応の終わりの際にメタノールで過剰量の2-クロロトリフェニルメチルクロリドをクエンチさせた。複数のスケールで記載される容量を調整することによってすべての操作は0.400ミリモルのスケールよりスケールダウンさせることができる。アミノ酸カップリングの前に、ペプチド合成の順序は、すべて、下記の「リンカーローディング操作」および「樹脂-膨潤操作」にて記載されるように、リンカーローディング操作および樹脂-膨潤操作で始まった。次に、アミノ酸と第1アミンのN-末端とのカップリングは下記の「第1アミン-カップリング操作」を用いた。アミノ酸と第2アミンのN-末端とのカップリングは下記の「第2アミン-カップリング操作」を用いた。樹脂からのグローバル脱保護および切断は下記の「グローバル脱保護」を用いた。最後に、LC-MSで精製する粗生成物を含有する清澄溶液の製造は下記の「サンプル製造操作」を用いた。
【0336】
リンカー-ローディング操作:0.4ミリモルのスケールを用いて、各反応容器(RV)中にて樹脂用に0.4ミリモルの(9H-フルオレン-9-イル)メチル(2-(アミノオキシ)エチル)カルバメートをローディングした6個のRVを製造した。DIEA(2.95mL、16.9ミリモル)を(9H-フルオレン-9-イル)メチル(2-(アミノオキシ)エチル)カルバメート・塩酸塩(化合物4、0.803g、2.4ミリモル)のCHCl(72mL)中混合物に0℃で添加した。それが均質となった直後に、12mLのこの清澄溶液を、800mgの2-クロロチリチルクロリド樹脂を含有する、30mLのバイアルに加えた。6個すべてのバイアルをシェーカー上にて750rpmで75分間振盪した。次に、0.2mLのMeOHを一度に1のバイアルに添加し、各々、750rpmで2分間振盪した。樹脂を40mLのRVに移し、CHCl(8mLx3)、DMF(8mLx3)、CHCl(10mLx3)で洗浄した。この工程(MeOHクエンチおよびCHCl/DMF/CHCl洗浄)を他の5個のバイアルに適用し、6個のRVにて樹脂結合のリンカー化合物5を得た。
【0337】
樹脂-膨潤操作:上記工程から由来の樹脂を含有するRVをプレリュード型ペプチド合成装置に接続し、次のように3回洗浄した(膨潤させた):該RVにDMF(10mL)を加え、その後に該混合物を周期的に10分間かき混ぜ、つづいて溶媒をフリットを通して排出させた。
【0338】
第1アミン-カップリング操作:
【0339】
上記した工程から由来の樹脂含有のRVに、ピペリジン:DMF(20:80 v/v、10.0mL)を添加した。該混合物を周期的に5分間かき混ぜ、次に該溶液をフリットを通して排出させた。該RVに再びピペリジン:DMF(20:80 v/v、10.0mL)を添加した。該混合物を周期的に5分間かき混ぜ、次に該溶液をフリットを通して排出させた。樹脂を一度次のようにボトム洗浄に付した:DMF(10.0mL)を該容器の底部を通して加え、得られた混合物を周期的に2分間かき混ぜ、その後で該溶液をフリットを通して排出させた。該樹脂を4回連続して次のようにトップ洗浄に付した:各洗浄にて、DMF(10.0mL)を該容器の頂部を通して添加し、得られた混合物を周期的に2分間かき混ぜ、つづいて該溶液をフリットを通して排出させた。該RVに、アミノ酸または脂肪酸(DMF中0.2M、4.0mL、2当量)、HATU(DMF中0.2M、4.0mL、2当量)、およびDIPEA(DMF中0.8M、2.0mL、4当量)をその順序で添加した。該混合物を周期的に15分間または30分間かき混ぜ、ついで該反応混合物の溶液をフリットを通して排出させた(プレリュード型合成装置で第1のアミド結合を形成させるのに全く初めてのカップリング反応の場合だけ、15分間の反応時間を用い;他のすべてのシーケンスでは、30分間の反応時間を適用した)。該樹脂を3回連続して次のように洗浄した:各洗浄には、DMF(8.0mL)を容器の頂部を通して加え、得られた混合物を周期的に2分間かき混ぜ、つづいて該溶液をフリットを通して排出させた。該RVにDMF(3.3mL)、DIPEA(DMF中0.8M、1.5mL、3当量)を添加した。該混合物を20秒間かき混ぜた後、無水酢酸(DMF中1.0M、5.0mL、12.5当量)を添加した。該混合物を周期的に10分間かき混ぜ、次に該溶液をフリットを通して排出させた。該樹脂を次のように一度ボトム洗浄に付した:DMF(10.0mL)を容器の底部を通して添加し、得られた混合物を周期的に2分間かき混ぜ、つづいて該溶液をフリットを通して排出させた。該樹脂を4回連続して次のようにトップ洗浄に付した:各洗浄には、DMF(10.0mL)を容器の頂部を通して加え、得られた混合物を周期的に2分間かき混ぜ、つづいて該溶液をフリットを通して排出させた。得られた樹脂を次の工程にて直接使用した。
【0340】
第二アミンカップリング操作:
【0341】
上記した工程から由来の樹脂含有のRVに、ピペリジン:DMF(20:80 v/v、10.0mL)を添加した。該混合物を周期的に5分間かき混ぜ、次に該溶液をフリットを通して排出させた。該RVに再びピペリジン:DMF(20:80 v/v、10.0mL)を添加した。該混合物を周期的に5分間かき混ぜ、次に該溶液をフリットを通して排出させた。樹脂を一度次のようにボトム洗浄に付した:DMF(10.0mL)を該容器の底部を通して加え、得られた混合物を周期的に2分間かき混ぜ、その後で該溶液をフリットを通して排出させた。該樹脂を4回連続して次のようにトップ洗浄に付した:各洗浄にて、DMF(10.0mL)を該容器の頂部を通して添加し、得られた混合物を周期的に2分間かき混ぜ、つづいて該溶液をフリットを通して排出させた。該反応容器に、アミノ酸または脂肪酸(DMF中0.2M、4.0mL、2当量)、HATU(DMF中0.2M、4.0mL、2当量)、およびDIPEA(DMF中0.8M、2.0mL、4当量)をこの順序で添加した。該混合物を周期的に30分間かき混ぜ、ついで該反応溶液をフリットを通して排出させた。該樹脂を3回連続して次のように洗浄した:各洗浄には、DMF(8.0mL)を容器の頂部を通して加え、得られた混合物を周期的に2分間かき混ぜ、つづいて該溶液をフリットを通して排出させた。該反応容器に、アミノ酸または脂肪酸(DMF中0.2M、4.0mL、2当量)、HATU(DMF中0.2M、4.0mL、2当量)、およびDIPEA(DMF中0.8M、2.0mL、4当量)をこの順序で添加した。該混合物を周期的に30分間かき混ぜ、ついで該反応溶液をフリットを通して排出させた。該樹脂を3回連続して次のように洗浄した:各洗浄には、DMF(8.0mL)を容器の頂部を通して加え、得られた混合物を周期的に2分間かき混ぜ、つづいて該溶液をフリットを通して排出させた。該RVに、DMF(3.3mL)、DIPEA(DMF中0.8M、1.5mL、3当量)を添加した。該混合物を30秒間かき混ぜた後、無水酢酸(DMF中1.0M、5.0mL、12.5当量)を添加した。該混合物を周期的に10分間かき混ぜ、次に該溶液をフリットを通して排出させた。該樹脂を次のように一度ボトム洗浄に付した:DMF(10.0mL)を容器の底部を通して添加し、得られた混合物を周期的に2分間かき混ぜ、つづいて該溶液をフリットを通して排出させた。該樹脂を4回連続して次のようにトップ洗浄に付した:各洗浄には、DMF(10.0mL)を容器の頂部を通して加え、得られた混合物を周期的に2分間かき混ぜ、つづいて該溶液をフリットを通して排出させた。得られた樹脂を次の工程にて直接使用した。
【0342】
グローバル脱保護操作:
【0343】
プレリュード型装置での操作が終了した後に、各RVをCHCl(8mLx6)で洗浄し、風乾させた。樹脂が自由な流動性を有するようになったら、それを30mLのバイアルに移し、8mLの切断溶液(下記参照)を添加した。バイアルを振盪器にて750rpmで75分間かき混ぜた後、該反応混合物を濾過した。得られた清澄黄褐色溶液を4本の25mLの試験管に分け、その各々は16mLのジエチルエーテルを含有し、白色懸濁液の形成をもたらした。各々を遠心分離に付し、ジエチルエーテルで2回洗浄し、各試験管にて白色固体を形成させた。切断溶液(50mL)を次のように製造した:250mlのエルレンマイヤーフラスコに、500mgのジチオスレイトール、46mLのTFA、2.5mLの水、および1.0mLのトリイソプロピルシランを撹拌しながら添加し、清澄溶液を形成させた。
【0344】
サンプル製造操作:
【0345】
上記の工程より得られた粗生成物を含有する各試験管に、0.4mLのDMSOおよび0.4mLのMeOHを順序通りに添加した。1分間撹拌した後、多くのケースで清澄な溶液が形成された。しかしながら、試験管中にまだ固形物があるならば、さらなる DMSO(0.2mL)を添加し、その混合物を2分間撹拌した。この時点で、まだ固形物が残っているならば、清澄な溶液を取り出し、さらなるDMSO(1.0mLまで)を添加した。得られた清澄溶液を注入1回に付き2.0mLで分取性LC-MSに供した。
化合物Aの合成
【化11】
【0346】
DMAP(2.80g、23.0ミリモル)を、ペンタデカン二酸(25.0g、92.0ミリモル)の2-Me-THF(250mL)中混合物に添加した。室温で10分間撹拌した後、tert-ブタノール(13.2mL、138ミリモル)を加え、撹拌を室温で10分間続けた。得られた懸濁液を60℃で10分間加熱した後、それは清澄な無色の溶液になった。無水BOC(26.0g、119ミリモル)のTHF(100mL)中溶液を均圧滴下漏斗において上記した反応混合物に60℃で2時間にわたって添加した。添加が終了する少し前に、反応混合物は明桃色の清澄溶液となった。撹拌を60℃で18時間続けた。0℃に冷却した後、100mLの1.5N HClを5分間にわたって添加した。次に、該混合物を室温までの加温に供し、15分間撹拌させた。分離した後、有機層をブライン(250mLx2)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過して濃縮させた。得られた材料をアセトニトリル(250mL)に懸濁させ、室温で1時間撹拌し、濾過して未反応の二酸の出発材料を除去した。次に、濾液を約125mLに濃縮した。得られた懸濁液を0℃で2時間撹拌し、時間の経過と共に、だんだんと混濁した。得られた固体を濾過し、冷却(0℃)アセトニトリル(2x15mL)で洗浄し、乾燥させ、15-(tert-ブトキシ)-15-オキソペンタデカン酸(化合物1、8.20g、25.0ミリモル、収率27.2%)をオフホワイトの固体として得た。H NMR(400MHz、CDCl、ppm) δ 2.35(t,J=7.58Hz,2H)、2.20(t,J=7.46Hz,2H)、1.68-1.54(m,4H)、1.45(s,9H)、1.34-1.24(m,18H);13C NMR(125MHz、CDCl、ppm) δ 179.91、173.44、79.93、35.64、34.08、29.57、29.48、29.46、29.41、29.39、29.29、29.23、29.09、29.06、28.12、25.12、24.70
【0347】
以下の化合物は、上記した操作に従って、製造された:HOC(CHCO Bu、n=10-18。所望の生成物であるモノエステル:HOC(CHCO Buの未反応二酸:HOC(CHCOHおよび過剰反応のジエステル:BuO2C(CHCO Buからの分離は、各ケースにて、アセトニトリル中でのその溶解度の違いを利用することによって達成された。
【化12】
【0348】
炭酸カリウム(74.1g、1122ミリモル)をtert-ブチル N-ヒドロキシカルバメート(50.0g、376ミリモル)の無水エタノール(500mL)中清澄溶液に0℃にて10分間にわたって少しずつ添加した。機械撹拌機を用いて0℃で10分間、ついで室温で20分間撹拌した後、反応混合物を0℃に冷却し、2-ブロモエチルアミン・臭化水素酸塩(100g、488ミリモル)を15分間にわたって少しずつ添加した。0℃で30分間、次に室温で5時間撹拌した後、得られた白色懸濁液を濾過し、濾過ケーキをEtOH(40mLx2)で洗浄した。濾液を合わせ、100mLの容量に濃縮し、t-BuOMe(500mL)およびH2O(250mL)で抽出した。分離した後、水層をt-BuOMe(200mL)で抽出した。有機層を合わせ、ブライン(2x200mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、濃縮し、高真空下で乾燥させて粘性の高い液体(20.0g)を得た。得られた液体をt-BuOMe(300mL)に溶かした。HCl(シクロペンチルメチルエーテル中3M)(40mL、120ミリモル)を上記の清澄溶液に室温で滴下して加えた。白色懸濁液を形成した。室温で4時間撹拌した後、得られた白色固体を濾過し、t-BuOMeで洗浄し、真空下で45分間乾燥させてtert-ブチル 2-アミノエトキシカルバメート・塩酸塩(化合物2、15.5g、72.9ミリモル、収率19.4%)を白色固体として得た。H NMR(400MHz、DMSO-d、ppm) δ 10.21(brs,1H)、8.27(brs,2.6H)、3.92(t,J=5.26Hz,2H)、2.98(t,J=5.26Hz,2H)、1.41(s,9H);13C NMR(125MHz、DMSO-d、ppm) δ 157.10、80.79、72.00、37.46、28.46
【化13】
【0349】
炭酸水素ナトリウム(8.00g、95ミリモル)をtert-ブチル 2-アミノエトキシカルバメート・塩酸塩(化合物2、13.5g、63.5ミリモル)、Fmoc-OSu(25.7g、76.0ミリモル)のTHF(450mL)および水(150mL)中の撹拌した混合物に添加した。室温で一夜撹拌した後、すべての揮発性成分を真空下で除去した。水層を固形NaClで飽和させた後で残渣をEtOAc(400mL、200mL)で抽出した。有機層を合わせ、NaSOで乾燥させ、濾過して濃縮した。残渣をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーに付し、EtOAc/ヘキサンで溶出した。純粋なフラクションを合わせ、濃縮し、残渣を上記した条件を用いて再び精製した。再度、より純粋なフラクションを合わせて濃縮した。残渣を同じ条件を用いて三度目の精製に付した。純粋なフラクションを合わせ、濃縮し、高真空下で乾燥させて化合物3(19.2g、48.2ミリモル、収率76%)を得た。H NMR(400MHz、CDCl、ppm) δ 7.78(d,J=7.32Hz,2H)、7.65(d,J=7.32Hz,2H)、7.63、(s,1H)、7.42(t,J=7.32Hz,2H)、7.33(t,J=7.232Hz,2H)、6.00(brs,1H)、4.40(d,2H)、4.26(t,J=7.10Hz,1H)、3.91(t,J=4.20Hz,2H)、3.49-3.46(m,2H)、1.52(s,9H);13C NMR(125MHz、CDCl、ppm) δ 157.54、156.90、144.06、141.32、127.68、127.08、125.23、119.96、82.11、75.66、66.91、47.30、39.23、28.24
【化14】
【0350】
HCl(100mL、400ミリモル、ジオキサン中4M)を、室温で化合物3(8.6g、21.6ミリモル)、1,4-ジメトキシベンゼン(7.46g、54.0ミリモル)のジエチルエーテル(100mL)中の撹拌した溶液に添加した。室温で一夜撹拌した後、該混合物は辛うじて撹拌することのできる粘度の高い懸濁液となった。さらなるエーテル(400mL)を添加し、得られた懸濁液を室温で30分間撹拌した。次にそれを窒素下で濾過し、固体をエーテル(3x100mL)で洗浄し、化合物4(6.36g、19.0ミリモル、収率87%)を白色の固体として得た。H NMR(400MHz、DMSO-d、ppm) δ 11.10(brs,2.60H)、7.89(d,J=7.58Hz,2H)、7.70(d,J=7.34Hz,2H)、7.54(brt,J=5.5Hz,1H)、7.42(t,J=7.32Hz,2H)、7.34(t,J=7.32Hz,2H)、4.31(d,J=6.6Hz,2H)、4.23(t,J=6.6Hz,1H)、4.06(t,J=5.38Hz,2H)、3.28(q,J=5.22Hz);13C NMR(125MHz、DMSO-d、ppm) δ 156.74、144.32、141.22、128.11、127.57、125.64、120.60、73.50、66.08、47.17、38.91
【化15】
【0351】
該粗材料を次の条件を用いて分取性LC/MSを介して精製した:カラム:エックスブリッジ(XBridge)CSH C18、19x200mm、5μm粒子;移動相A:5:95 アセトニトリル:水+0.1%トリフルオロ酢酸;移動相B:95:5 アセトニトリル:水+01.%トリフルオロ酢酸;勾配:23分間にわたって0-34.9%Bとし、次に100%Bで2分間保持する;流速:20mL/分。所望の生成物を含有するフラクションを合わせ、揮発性の有機物を窒素の流れを用いて除去した。得られた所望の生成物を含有する水層を窒素の流れの下で-78℃に冷却し、凍結乾燥させて表記化合物Aを白色の固体(88mg、収率25.9%、LC-CAD純度 98.6%)として得た。
【0352】
分析用条件A:保持時間=1.24分間;ESI-MS(M+H)+=775.30
【0353】
分析用条件B:保持時間=1.05分間;ESI-MS(M+H)+=775.25
【化16】
【0354】
該粗材料を分取性LC/MSを介して次の条件を用いて精製した:カラム:エックスブリッジ C18、19x200mm、5μm粒子;移動相A:5:95 アセトニトリル:水+0.1%トリフルオロ酢酸;移動相B:95:5 アセトニトリル:水+0.1%トリフルオロ酢酸;勾配:20分間にわたって20-70%Bとし、ついで100%Bで5分間保持する;流速:20mL/分。所望の生成物を含有するフラクションを合わせ、揮発性の有機物を窒素の流れを用いて除去した。得られた所望の生成物を含有する水層を窒素の流れの下で-78℃に冷却し、凍結乾燥させ、表記化合物を白色の固体(47mg、収率3.4%、LC-CAD純度 72%)として得た。
【0355】
分析用条件A: 保持時間=1.14分間;ESI-MS(M+3H)+3=1166.90、(M+3H)+4=875.45.
【0356】
分析用条件B:保持時間=0.991分間;ESI-MS(M+3H)+3=1166.90、(M+3H)+4=875.50
【0357】
実施例5:PKエンハンサーの液相合成
【0358】
本明細書に開示のPKエンハンサーは、下記に例示される操作を用いて製造されてもよい。
【化17】
【0359】
ベンジル (2-(((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)オキシ)エチル)カルバメート 3
DBU(26.3ml、174ミリモル)をベンジル(2-ブロモエチル)カルバメート(30g、116ミリモル)およびtert-ブチル ヒドロキシカルバメート(24.76g、186ミリモル)のTHF(75ml)中の撹拌溶液に少しずつ添加した。該反応混合物を室温で一夜撹拌した(沈殿物が観察された)。LCMSは出発材料がほんの微量残っていることを示す。該反応混合物を濃縮し、水でクエンチさせ、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル相を合わせ、水、ブラインで洗浄し、次にNaSOで乾燥させた。濃縮した後、45gの粗生成物を得、クロマトグラフィー分離(ヘキサン中0-20%アセトン)に供した。分離した後、ベンジル (2-(((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)オキシ)エチル)カルバメート(32.9g、106ミリモル、収率91%)を粘性の高い明黄色の油として得た。H NMR(400MHz、クロロホルム-d) δ 7.43-7.30(m,5H)、5.75(brs,1H)、5.32(s,1H)、5.14(s,2H)、3.94-3.85(m,2H)、3.54-3.42(m,2H)、1.50(s,9H)
【0360】
tert-ブチル (2-アミノエトキシ)カルバメート・塩酸塩 4
ベンジル (2-(((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)オキシ)エチル)カルバメート(16.4g、52.8ミリモル)をMeOH(161ml)に溶かし、クロロホルム(5.33ml、66.1ミリモル)を加えた。該溶液を窒素でパージし、その後でPd/C(2.81g、2.64ミリモル)を注意して添加した。次に該溶液を0℃に冷却し、トリエチルシラン(76ml、476ミリモル)をゆっくりと滴下して加えた。添加している間にH2発生が観察され、それは発熱反応であった。添加した後、該反応物を次に一夜にわたって室温まで徐々に加温させた。該反応混合物をセライトパッドを通して濾過し、さらにメタノールで洗浄し、つづいて真空下で蒸発させた。次に残渣をヘキサンでトリチュレートし、得られた固体を濾過し、さらなるヘキサンで洗浄し、吸引下で乾燥させてtert-ブチル 2-アミノエトキシカルバメート・塩酸塩(10.2g、48.0ミリモル、収率91%)を桃色がかった固体として得た。H NMR(400MHz、クロロホルム-d) δ 8.78(brs,1H)、8.31(brs,2H)、4.24(s,2H)、3.39(s,2H)、1.48(s,9H)
【0361】
tert-ブチル ((3,6,9-トリオキソ-1-フェニル-2-オキサ-4,7,10-トリアザドデカン-12-イル)オキシ)カルバメート 5
N-メチルモルホリン(5.17ml、47.0ミリモル)をtert-ブチル 2-アミノエトキシカルバメート・塩酸塩(4g、18.81ミリモル)、2-(2-(((ベンジルオキシ)カルボニル)アミノ)アセトアミド)酢酸(5.01g、18.81ミリモル)およびHATU(7.87g、20.69ミリモル)の無水DMF(75ml)中溶液に滴下して加えた。該混合物を室温で一夜撹拌させた。該反応物を酢酸エチルで希釈し、1N HClで洗浄した。次に水層を分離し、さらなる酢酸エチル部で抽出し、有機層を合わせ、ついで1N HCl、ブライン、炭酸水素ナトリウム飽和溶液で洗浄し、つづいてさらなるブライン洗浄液で洗浄した。ついで有機層を乾燥させ(NaSO)、真空下で蒸発させた。次に粗製物をカラムクロマトグラフィーに付し、溶出液として酢酸エチル-ヘキサンを溶出液として用いて精製し、6.25g(78%)の表記化合物を得た。H NMR(400MHz、クロロホルム-d) δ 7.69(s,1H)、7.41-7.28(m,6H)、7.00-6.87(m,1H)、5.81(brs,1H)、5.14(s,2H)、3.98(dd,J=16.7、5.7Hz,4H)、3.86(t,J=4.8Hz,2H)、3.55-3.46(m,2H)、1.46(s,9H);MS m/e 447.0(M+Na
【0362】
tert-ブチル (2-(2-(2-アミノアセトアミド)アセトアミド)エトキシ)カルバメート・塩酸塩 6
5(6.25g、14.72ミリモル)を無水メタノール(58.9ml)に溶かし、クロロホルム(1.782ml、22.09ミリモル)を、つづいてPd-C(1.567g、1.472ミリモル)を添加した。次に反応フラスコを水素でパージし(バルーン)、6時間撹拌させ、その後でセライトを介して濾過し、蒸発させてtert-ブチル 2-(2-(2-アミノアセトアミド)アセトアミド)エトキシカルバメート・塩酸塩(4.87g、14.90ミリモル、収率101%)を得た。H NMR(400MHz、DMSO-d) δ 10.00(brs,1H)、8.71(brt,J=5.7Hz,1H)、8.18-7.99(m,4H)、3.77(d,J=5.7Hz,2H)、3.69(t,J=5.9Hz,2H)、3.59(s,2H)、3.36-3.23(m,3H)、1.41(s,9H)
【化18】
【0363】
(S)-tert-ブチル 2-(((ベンジルオキシ)カルボニル)アミノ)-5-(((S)-3-ヒドロキシ-1-メトキシ-1-オキソプロパン-2-イル)アミノ)-5-オキソペンタノエート 8
(S)-4-(((ベンジルオキシ)カルボニル)アミノ)-5-(tert-ブトキシ)-5-オキソペンタン酸(7、ChemImpexから購入)(15g、44.5ミリモル)および(S)-メチル 2-アミノ-3-ヒドロキシプロパノエート・塩酸塩(6.92g、44.5ミリモル)をDMF(148ml)に溶かし、該溶液を0℃に冷却した。HATU(18.60g、48.9ミリモル)を、つづいてN-メチルモルホリン(12.22ml、111ミリモル)を添加した。反応物をN下の0℃で12時間撹拌させた。反応混合物をEtOAcで希釈し、1N HClでクエンチさせ、次に飽和NaHCO、およびブラインで洗浄した。有機相を無水NaSOで乾燥させ、真空下で濃縮させた。粗生成物をクロマトグラフィー精製(0-40%アセトン/ヘキサン)に付して精製し、(S)-tert-ブチル 2-(((ベンジルオキシ)カルボニル)アミノ)-5-(((S)-3-ヒドロキシ-1-メトキシ-1-オキソプロパン-2-イル)アミノ)-5-オキソペンタノエート(16.31g、36.5ミリモル、収率82%)をオフホワイト色の固体として得た。H-NMR(CDCl、400MHz) δ 7.37(m,5H)、6.5(bs,1H)、5.53(m,1H);5.1(s,2H)、4.7(m,1H)、4.28(m,1H)、4.1(bs,1H)、3.95(m,1H)、3.8(s,3H)、2.4(m,2H)、2.3(m,1H)、1.7(m,1H)、1.5(s,9H);MS m/e 439.2(M+H
【0364】
(S)-2-((S)-4-(((ベンジルオキシ)カルボニル)アミノ)-5-(tert-ブトキシ)-5-オキソペンタンアミド)-3-ヒドロキシプロパン酸 9
(S)-tert-ブチル 2-(((ベンジルオキシ)カルボニル)アミノ)-5-(((S)-3-ヒドロキシ-1-メトキシ-1-オキソプロパン-2-イル)アミノ)-5-オキソペンタノエート(14g、31.9ミリモル)をTHF(106ml)および水(53.2ml)に溶かし、0℃に冷却した。30分間撹拌した後、LiOH(0.688g、28.7ミリモル)を添加した。該反応混合物をN下のこの温度で撹拌した。反応が終了した後、反応混合物のpHを0℃で約4に調整した。該反応混合物をEtOAc(3x150ml)で抽出した。有機相を合わせ、無水NaSOで乾燥させ、ロータリーエバポレーターで濃縮して(S)-2-((S)-4-(((ベンジルオキシ)カルボニル)アミノ)-5-(tert-ブトキシ)-5-オキソペンタンアミド)-3-ヒドロキシプロパン酸(13.01g、30.7ミリモル、収率96%)をオフホワイト色の固体として得た。MS m/e 425.0(M+H
【0365】
(5S,10S)-メチル 5-(tert-ブトキシカルボニル)-10-(ヒドロキシメチル)-3,8,11,14-テトラオキソ-1-フェニル-2-オキサ-4,9,12,15-テトラアザヘプタデカン-17-オエート 10
メチル 2-(2-アミノアセトアミド)アセテート・塩酸塩(5g、27.4ミリモル)をDMF(116ml)に溶かし、(S)-2-((S)-4-(((ベンジルオキシ)カルボニル)アミノ)-5-(tert-ブトキシ)-5-オキソペンタンアミド)-3-ヒドロキシプロパン酸(11.62g、27.4ミリモル)を添加した。この反応混合物にHATU(11.45g、30.1ミリモル)およびN-メチルモルホリン(7.53ml、68.5ミリモル)を加えた。該反応混合物をN下の室温で12時間撹拌した。LC/MSおよびHPLCは反応が完了したことを示した。該反応混合物をEtOAc(150ml)で希釈し、1N HClでクエンチさせた。有機層を分離し、ブライン(50ml)、水性NaHCO(50ml)、最後にブライン(3x50ml)で洗浄した。有機層を無水NaSOで乾燥させ、真空下で蒸発させて所望の生成物を粘度の高い油として得、それをクロマトグラフィー精製(0-10%MeOH/DCM)に付し、所望の生成物(5S,10S)-メチル 5-(tert-ブトキシカルボニル)-10-(ヒドロキシメチル)-3,8,11,14-テトラオキソ-1-フェニル-2-オキサ-4,9,12,15-テトラアザヘプタデカン-17-オエート(14g、25.3ミリモル、収率93%)を粘度の高い油として得た。H-NMR(CDCl、400MHz) δ 7.38(m,5H)、5.1(m,2H)、4.0(m,6H)、3.7(s,3H)、2.4(m,2H)、2.2(m,1H)、1.9(m,1H)、1.45(s,9H);MS m/e 553.2(M+H
【0366】
(5S,10S)-5-(tert-ブトキシカルボニル)-10-(ヒドロキシメチル)-3,8,11,14-テトラオキソ-1-フェニル-2-オキサ-4,9,12,15-テトラアザヘプタデカン-17-オン酸 11
(5S,10S)-メチル(5S,10S)-メチル 5-(tert-ブトキシカルボニル)-10-(ヒドロキシメチル)-3,8,11,14-テトラオキソ-1-フェニル-2-オキサ-4,9,12,15-テトラアザヘプタデカン-17-オエート(20g、36.2ミリモル)をTHF(193ml)および水(97ml)に溶かし、0℃に冷却した。30分間撹拌した後、LiOH(0.780g、32.6ミリモル)を添加した。該反応混合物をN下の0℃で5時間撹拌した。反応の進行はLC/MSおよびHPLCでモニターした。反応が完了した後、それをEtOAc(150mL)で希釈し、1N HClで中和した。有機相を分離し、水相をEtOAc(3x50mL)で抽出し、無水NaSOで乾燥させ、真空下で濃縮し、高真空下にて12時間乾燥させ、所望の生成物をオフホワイト色の固体(18g、収率96%)として得た。MS m/e 539.1(M+H
【化19】
【0367】
15-(tert-ブトキシ)-15-オキソペンタデカン酸 13
ペンタデカン二酸(20.2g、70.5ミリモル)の無水酢酸(70ml)中懸濁液をAr下で128℃に加熱した。得られた溶液をこの温度で6.0時間撹拌し、ついで室温に冷却した。該溶液をトルエン(100mL)で希釈し、蒸発させた。残渣をトルエン(4x80mL)できれいにし、真空下で6.5時間乾燥させ、27.53gのオフホワイト色の固体を得た。上記した固体(27.53g)およびt-ブタノール(235ml)の混合物に、室温およびAr下で、4-ジメチルアミノピリジン(34.8g、282ミリモル)を15分間にわたって3回に分けて添加した。該混合物を50℃に加熱し、得られた溶液をこの温度で34.0時間撹拌した。室温に冷却した後、該混合物をトルエン(50mL)で希釈し、蒸発させた。残渣をトルエン(2x100mL)できれいにし、次に9/1 エーテル/CHCl(600mL)に溶かした。該溶液を1M HCl(400mL)、0.5M HCl(400mL)、水(300mL)およびブライン(300mL)で洗浄した。有機層を乾燥(NaSO)かつ蒸発させた。該粗製物をCHCl(50mL)に溶かし、音波処理に付した。得られた懸濁液を中程度のフリット漏斗を介して濾過し、該漏斗にある固体を少量のCHClで2回濯いだ。濾液およびリンス液を合わせ、蒸発させた。濃縮液をクロマトグラフィー(120gフラッシュカラムカートリッジ、CHCl~9/1 CHCl/i-PrOH)に供し、溶出順にて:
【0368】
・ジ-tert-ブチル ペンタデカンジオエートおよび15-(tert-ブトキシ)-15-オキソペンタデカン酸の約5/1の混合物(7.19g、無色油)
【0369】
・白色の固体としての15-(tert-ブトキシ)-15-オキソペンタデカン酸(4.38g、収率19%):LC/MS[M-H]-1=327;H NMR(400MHz、CDCl) δ 2.37(t,J=7.4Hz,2H)、2.22(t,J=7.5Hz,2H)、1.63(m,4H)、1.47(s,9H)、1.28(m,18H)
【0370】
・15-(tert-ブトキシ)-15-オキソペンタデカン酸およびペンタデカン二酸の約4/1の混合物(4.42g、オフホワイト色の固体)
を得た。
【0371】
ジ-およびモノ-tert-ブチルエステルの混合物(7.19g)をクロマトグラフィー(120gフラッシュカラムカートリッジ、CHCl~9/1 CHCl/i-PrOH)で分離し、さらなる量の15-(tert-ブトキシ)-15-オキソペンタデカン酸(0.8g、収率4%)を白色の固体として得た。
【0372】
モノtert-ブチルエステルおよびニ酸の混合物(4.42g)をクロマトグラフィー(330gフラッシュカラムカートリッジ、ヘキサン~4/1 ヘキサン/アセトン)で分離し、さらなる量の15-(tert-ブトキシ)-15-オキソペンタデカン酸(2.92g、収率13%)を白色の固体として得た。
【0373】
単離された15-(tert-ブトキシ)-15-オキソペンタデカン酸の量は合計で8.1g(収率36%)であった。
【化20】
【0374】
tert-ブチル N2-((ベンジルオキシ)カルボニル)-N5-((S)-1-((2-((2-((2-((2,2-ジメチル-4,10-ジオキソ-3,6-ジオキサ-5,9-ジアザウンデカン-11-イル)アミノ)-2-オキソエチル)アミノ)-2-オキソエチル)アミノ)-2-オキソエチル)アミノ)-3-ヒドロキシ-1-オキソプロパン-2-イル)-L-グルタミネート 14
tert-ブチル 2-(2-(2-アミノアセトアミド)アセトアミド)エトキシカルバメート・塩酸塩(3.73g、11.41ミリモル)および(5S,10S)-5-(tert-ブトキシカルボニル)-10-(ヒドロキシメチル)-3,8,11,14-テトラオキソ-1-フェニル-2-オキサ-4,9,12,15-テトラアザヘプタデカン-17-オン酸(5.85g、10.87ミリモル)を、窒素雰囲気下の室温で、DMF(36.2ml)に溶解させた。該溶液を0℃に冷却し、その後でHATU(4.55g、11.96ミリモル)を加え、つづいてN-メチルモルホリン(2.99ml、27.2ミリモル)を滴下して加えた。該反応物を一夜室温までの加温に供した。該反応物を0℃に冷却し、その後で氷水でクエンチさせ、氷が溶けるように激しく撹拌した。フラスコを取り囲むすべての氷が溶解した時に、沈殿物(ppte)が形成し、次にそれを吸引しながら一夜にわたって(ゆっくりと)濾過した。得られたワックス状の固体をメタノール(200mL)に溶かして蒸発させた。メタノール(約20mL)で、つづいてジエチルエーテルを添加して処理、生成物を沈殿させ、それを吸引して集め、(23S,28S)-tert-ブチル 28-(((ベンジルオキシ)カルボニル)アミノ)-23-(ヒドロキシメチル)-2,2-ジメチル-4,10,13,16,19,22,25-ヘプタオキソ-3,6-ジオキサ-5,9,12,15,18,21,24-ヘプタアザノナコサン-29-オエート 6.4g(収率73%)を得た。H NMR(400MHz、DMSO-d) δ 9.96(brs,1H)、8.24-8.01(m,5H)、7.87(brt,J=5.6Hz,1H)、7.62(brd,J=7.8Hz,1H)、7.40-7.30(m,5H)、5.10-4.96(m,3H)、4.30-4.24(m,1H)、4.10(q,J=5.3Hz,3H)、3.93-3.84(m,1H)、3.80-3.53(m,13H)、3.31-3.23(m,2H)、3.17(d,J=5.3Hz,7H)、2.90(s,1H)、2.75-2.67(m,1H)、2.35-2.20(m,2H)、1.98-1.86(m,1H)、1.82-1.71(m,1H)、1.42-1.24(m,20H);MS m/e 811.4(M+H
【0375】
tert-ブチル N5-((S)-1-((2-((2-((2-((2,2-ジメチル-4,10-ジオキソ-3,6-ジオキサ-5,9-ジアザウンデカン-11-イル)アミノ)-2-オキソエチル)アミノ)-2-オキソエチル)アミノ)-2-オキソエチル)アミノ)-3-ヒドロキシ-1-オキソプロパン-2-イル)-L-グルタミネート 15
メタノール(158ml)を(23S,28S)-tert-ブチル 28-(((ベンジルオキシ)カルボニル)アミノ)-23-(ヒドロキシメチル)-2,2-ジメチル-4,10,13,16,19,22,25-ヘプタオキソ-3,6-ジオキサ-5,9,12,15,18,21,24-ヘプタアザノナコサン-29-オエート(6.4g、7.89ミリモル)に一度に加え、その固体をアミンが溶解するまで(約3時間)窒素雰囲気下にて撹拌させた。次にPd/C(0.840g、0.789ミリモル)を添加し、ついでバルーンで水素雰囲気を導入した。該反応物をを室温で撹拌させ、その後でガラスフィルター紙を通して濾過し、濾液を蒸発させて(23S,28S)-tert-ブチル 28-アミノ-23-(ヒドロキシメチル)-2,2-ジメチル-4,10,13,16,19,22,25-ヘプタオキソ-3,6-ジオキサ-5,9,12,15,18,21,24-ヘプタアザノナコサン-29-オエート 4.8g(収率90%)をオフホワイト色のクリスプな固体として得た。
【0376】
H NMR(400MHz、DMSO-d) δ 9.96(brs,1H)、8.29-8.19(m,1H)、8.17-7.96(m,3H)、7.87(brt,J=5.7Hz,1H)、5.00(brs,1H)、4.28-4.08(m,1H)、3.78-3.56(m,10H)、3.30-3.14(m,3H)、2.90(s,1H)、2.75-2.67(m,1H)、2.34-2.06(m,3H)、1.87-1.74(m,1H)、1.68-1.50(m,1H)、1.41(d,J=4.3Hz,15H)、1.10(s,1H)
【0377】
tert-ブチル (23S,28S)-28-(tert-ブトキシカルボニル)-23-(ヒドロキシメチル)-2,2-ジメチル-4,10,13,16,19,22,25,30-オクタオキソ-3,6-ジオキサ-5,9,12,15,18,21,24,29-オクタアザテトラテトラコンタン-44-オエート 16
【0378】
N-メチルモルホリン(1.950ml、17.73ミリモル)を、(23S,28S)-tert-ブチル 28-アミノ-23-(ヒドロキシメチル)-2,2-ジメチル-4,10,13,16,19,22,25-ヘプタオキソ-3,6-ジオキサ-5,9,12,15,18,21,24-ヘプタアザノナコサン-29-オエート(4.8g、7.09ミリモル)、15-(tert-ブトキシ)-15-オキソペンタデカン酸(2.446g、7.45ミリモル)およびHATU(2.97g、7.80ミリモル)の0℃で窒素雰囲気下での部分溶液に滴下して加えた。新たに20mLのDMFを添加して反応混合物を溶解させ、次にそれを一夜にわたって室温までのゆっくりした加温に供した。次に反応物を氷浴中で冷却し、氷でクエンチさせ、該混合物を激しく撹拌しながら融解させた。ついで固体を濾過し、ガム様固体(6.1g)を得、それを精製用SFCに移した。SFC精製に供し、(23S,28S)-tert-ブチル 28-(tert-ブトキシカルボニル)-23-(ヒドロキシメチル)-2,2-ジメチル-4,10,13,16,19,22,25,30-オクタオキソ-3,6-ジオキサ-5,9,12,15,18,21,24,29-オクタアザテトラテトラコンタン-44-オエート(2.5g、2.53ミリモル、収率35.7%)を白色の固体として得、それを次の工程にて用いた。H NMR(400MHz、DMSO-d) δ 9.96(brs,1H)、8.23-8.02(m,1H)、7.97(brd,J=7.5Hz,1H)、7.84(t,J=5.8Hz,1H)、4.96(t,J=5.6Hz,1H)、4.32-4.21(m,1H)、4.17-4.03(m,1H)、3.85(d,J=6.0Hz,1H)、3.76(brd,J=5.1Hz,1H)、3.72-3.55(m,1H)、3.30-3.24(m,1H)、2.27-2.07(m,1H)、2.01-1.86(m,1H)、1.80-1.65(m,1H)、1.49-1.38(m,5H)、1.35(brs,1H)、1.29-1.16(m,4H);MS m/e 987.7(M+H
【0379】
(17S,22S)-1-(アミノオキシ)-22-カルボキシ-17-(ヒドロキシメチル)-4,7,10,13,16,19,24-ヘプタオキソ-3,6,9,12,15,18,23-ヘプタアザオクタトリアコンタン-38-オン酸 化合物A
(23S,28S)-tert-ブチル 28-(tert-ブトキシカルボニル)-23-(ヒドロキシメチル)-2,2-ジメチル-4,10,13,16,19,22,25,30-オクタオキソ-3,6-ジオキサ-5,9,12,15,18,21,24,29-オクタアザテトラテトラコンタン-44-オエート(2.5g、2.53ミリモル)を92:8 TFA:TIPSの冷却した25mLの混合液に溶かし、さらに10mLの混合液で洗浄した。溶液を白色固体に直接添加し、室温で3時間撹拌させた。該溶液を0℃に冷却し、ヘプタン:MTBE(320mL:40mL)を加え、その後で一夜冷蔵庫に移した。清澄な油が分離し、フラスコの底部で見られた。上澄みを除去し、冷ジエチルエーテル(1L)を添加した。得られた白色固体を2時間撹拌し、ブフナー漏斗にて迅速に濾過し、乾燥させて(17S,22S)-1-(アミノオキシ)-22-カルボキシ-17-(ヒドロキシメチル)-4,7,10,13,16,19,24-ヘプタオキソ-3,6,9,12,15,18,23-ヘプタアザオクタトリアコンタン-38-オン酸 2.1g(収率95%)を得た。H NMR(400MHz、DMSO-d) δ 8.42-8.34(m,1H)、8.20-7.95(m,3H)、4.81-4.74(m,1H)、4.61(dd,J=10.9、4.6Hz,1H)、4.48(dd,J=10.8、7.5Hz,1H)、4.30-4.03(m,1H)、3.93-3.30(m,10H)、2.47-2.39(m,1H)、2.33(dt,J=3.7、1.9Hz,1H)、2.27-2.08(m,3H)、2.05-1.91(m,1H)、1.82-1.69(m,1H)、1.52-1.43(m,2H)、1.24(s,9H)、1.21-1.00(m,1H);CAD検出でのHPLC分析(アジレント(Agilent)1100 LC/UV/CAD、ACE C18-300 300x4.6mm ID、5μm、A:水 0.05%TFA;B:ACN 0.05%TFA)は81%純度を示した。
【0380】
実施例6:PKエンハンサーのさらなる液相合成
【0381】
分析用LCMS条件A:カラム:ウォーターズ・アクイティ UHPLC BEH C18、2.1x50mm、1.7μm粒子;移動相A:5:95 アセトニトリル:水+0.05%TFA;移動相B:95:5 アセトニトリル:水+0.05%TFA;温度:50℃;勾配:3分間にわたって0-100%Bとし、次に100%Bで1.0分間保持する;流速:1mL/分;検出:マス
【0382】
分析用LCMS条件B:カラム:ウォーターズ・アクイティ UHPLC BEH C18、2.1x50mm、1.7μm粒子;移動相A:5:95 アセトニトリル:水+10mM酢酸アンモニウム;移動相B:95:5 アセトニトリル:水+10mM酢酸アンモニウム;温度:50℃;勾配:3分間にわたって0-100%Bとし、次に100%Bで1.0分間保持する;流速:1.0mL/分;検出:マス
【0383】
分析用UHPLC-ELSD条件A:HPLC条件:カラム:ウォーターズ BEH C18、150x2.1mm、1.7μm粒子;移動相A:水+0.05%TFA、移動相B:アセトニトリル+0.05%TFA;温度:35℃;勾配特性:0分~15分にわたって10%B~50%Bとし、16分~20分にわたって50%B~60%Bとし、21分~26分にわたって60%B~95%Bとし、ついで95%Bで4.0分間保持する;作動後の時間:4分間(初期移動相条件下);流速:0.35mL/分;注入容量:50/50 MeCN/水中の1mg/mLのサンプルを5μL;MS条件:質量範囲m/z 120-2000;イオン化およびモード:電子噴射イオン化、陽イオンモード;ELSD条件:ゲイン:20;ドリフト管の温度:60℃;ガス流量:40psi
【0384】
分析用UHPLC-ELSD条件B:HPLC条件:カラム:ウォーターズ BEH CSH C18、150x2.1mm、1.7μm粒子;移動相A:水+0.05%TFA、移動相B:アセトニトリル+0.05%TFA;温度:35℃;勾配特性:0分~24分にわたって10%B~95%Bとし、ついで95%Bで3.0分間保持する;作動後の時間:4分間(初期移動相条件下);流速:0.35mL/分;注入容量:50/50 MeCN/水中の1mg/mLのサンプルを2μL;MS条件:質量範囲m/z 120-2000;イオン化およびモード:電子噴射イオン化、陽イオンモード;ELSD条件:ゲイン:50;ドリフト管の温度:60℃;ガス流量:40psi
【0385】
分析用UHPLC-CAD条件C:HPLC条件:カラム:ウォーターズ BEH フェニル、150x2.1mm、1.7μm粒子;移動相A:水+0.05%TFA、移動相B:アセトニトリル+0.05%TFA;温度:35℃;勾配特性:0分~25分にわたって10%B~95%Bとし、ついで95%Bで2.0分間保持する;作動後の時間:4分間(初期移動相条件下);流速:0.35mL/分;注入容量:MeOH中の1mg/mLのサンプルを5μL;MS条件:質量範囲m/z 120-2000;イオン化およびモード:電子噴射イオン化、陽イオンモード;CAD条件:範囲:100PA;ガス流量:35psi
【0386】
分析用UHPLC-CAD条件D:HPLC条件:カラム:ウォーターズ BEH フェニル、150x2.1mm、1.7μm粒子;移動相A:水+0.05%TFA、移動相B:アセトニトリル+0.05%TFA;温度:35℃;勾配特性:0分~15分で10%B~35%Bとし、16分~25分で35%B~95%Bとし、ついで95%Bで2.0分間保持する;作動後の時間:3分間(初期移動相条件下);流速:0.35mL/分;注入容量:50/50 MeOH/水中の1mg/mLのサンプルを2μL;MS条件:質量範囲m/z 120-2000;イオン化およびモード:電子噴射イオン化、陽イオンモード;CAD条件:範囲:100PA;ガス流量:35psi
【0387】
PEG36-Gluγ-C13-CH(8)の合成
【化21】
【0388】
2,5-ジオキソピロリジン-1-イルテトラデカノエート(1)
DCC/CHCl(1M、99mL、99ミリモル)をテトラデカン酸(20.55g、90ミリモル)のDMF(100mL)中の撹拌した溶液に添加した。該混合物を室温で一夜撹拌し、濾過し、濃縮して高真空下で乾燥させた。得られた固体をエーテル/ヘキサン(1:3、80mL)に45分間懸濁させ、濾過により集め、乾燥させて2,5-ジオキソピロリジン-1-イルテトラデカノエート(1)(16.96g、52.1ミリモル、収率58%)を白色の固体として得、それをさらに精製することなく次の工程にて直接使用した。
【0389】
(S)-5-(tert-ブトキシ)-5-オキソ-4-テトラデカナミドペンタン酸(2)
水(150ml)を(S)-4-アミノ-5-(tert-ブトキシ)-5-オキソペンタン酸(10.5g、51.7ミリモル)、2,5-ジオキソピロリジン-1-イル テトラデカノエート(1)(16.81g、51.7ミリモル)、およびNaHCO(5.21g、62.0ミリモル)のDME(450mL)中の撹拌した混合物に添加した。得られた清澄な溶液を室温で4時間撹拌した。DMEを真空下で除去し、ついで水性HCl(1M、67.2ml、67.2ミリモル)を加え、そのpHを2-3に調整した。得られた懸濁液を0℃で30分間撹拌し、ついで濾過した。得られた白色固体をDME(2x)との共沸蒸留により乾燥させ、次にエーテル/ヘキサン 1:3(160mL)中に室温で1時間懸濁させた。得られた白色固体を濾過により集め、高真空下で乾燥させ、(S)-5-(tert-ブトキシ)-5-オキソ-4-テトラデカナミドペンタン酸(2)(8.5g、21ミリモル、収率40%)を得、それをさらに精製することなく次の工程にて直接使用した。
【0390】
(S)-1-tert-ブチル 5-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル) 2-テトラデカナミドペンタンジオエート(3)
DCC/CHCl(1M、26.6mL、26.6ミリモル)を(S)-5-(tert-ブトキシ)-5-オキソ-4-テトラデカナミドペンタン酸(2)(10.0g、24.2ミリモル)、および1-ヒドロキシピロリジン-2,5-ジオン(3.06g、26.6ミリモル)のDMF(30mL)中の撹拌した混合物に室温で添加した。該反応混合物を室温で一夜撹拌し、濾過して濃縮させた。残渣をCHClに溶かし、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーに付し、EtOAc/ヘキサン(1:2)で溶出して精製し、(S)-1-tert-ブチル 5-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル) 2-テトラデカナミドペンタンジオエート(3)(8.95g、17.5ミリモル、収率73%)を白色の固体として得た。H-NMR(CDCl、400MHz) δ 6.29(d,J=8.0Hz,1H)、4.58(m,1H)、2.82(s,4H)、2.70(m,1H)、2.63(m,1H)、2.29(m,1H)、2.20(t,J=7.5Hz,2H)、2.06(m,1H)、1.60(m,2H)、1.46(s,9H)、1.25(m,20H)、0.86(t,J=6.3Hz,3H);13C-NMR(CDCl、100MHz) δ ppm 173.0、170.3、168.7、167.6、82.4、51.2、36.0、31.5、29.29. 29.27、29.25、29.11、28.97、28.92、27.6、27.15、27.10、25.21、25.11、22.3、13.7
【0391】
化合物5
水(4.5mL)を室温で化合物4(750mg、0.448ミリモル)、(S)-1-tert-ブチル 5-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル) 2-テトラデカナミドペンタンジオエート 3(297mg、0.582ミリモル)、およびNaHCO(75mg、0.90ミリモル)のDME(13.5mL)中の撹拌した混合物に加えた。得られた清澄な溶液を室温で一夜撹拌し、水性HCl(1M、0.896mL、0.896ミリモル)を加え、該混合物を真空下で濃縮した。残渣を中圧逆相クロマトグラフィー(C-18カラム)に付し、MeCN/水性NHOAcで溶出して精製した(ELSD-MSでモニター観察した)。所望の生成物を含有するフラクションを合わせ、揮発性の有機物を窒素の流れを用いて除去した。得られた所望の生成物を含有する水溶液を凍結乾燥させ、表記化合物5(610mg、収率66%)を白色の固体として得た。(M+2H)2+ 1036、(M+3H)3+ 691
【0392】
化合物6
DCC/CHCl(1M、0.32mL、0.32ミリモル)を化合物5(550mg、0.266ミリモル)および1-ヒドロキシピロリジン-2,5-ジオン(36.7mg、0.319ミリモル)のCHCl(12mL)中の撹拌混合物に添加した。該混合物を室温で一夜撹拌し、濾過し、真空下で濃縮し、化合物6を白色の固体として得、それをさらに精製することなく次の工程にて直接使用した。
【0393】
化合物7
水(2.5mL)を化合物6(577mg、0.266ミリモル)、tert-ブチル 2-アミノエトキシカルバメート(Miao, Z.;Liu, J.;Norman, T.;Driver, R. WO 2006/069246)(70.3mg、0.399ミリモル)、およびNaHCO(33.5mg、0.40ミリモル)のDME(7.5mL)中の撹拌した混合物に室温で添加した。該混合物を室温で一夜撹拌し、濃縮した。残渣を中圧逆相クロマトグラフィー(C-18カラム)に付し、MeCN/水性NHOAcで溶出して精製した(ELSD-MSでモニター観察した)。所望の生成物を含有するフラクションを合わせ、揮発性の有機物を窒素の流れを用いて除去した。得られた所望の生成物を含有する水溶液を凍結乾燥させ、表記化合物7(360mg、収率61%)を白色の固体として得た。(M+2H)2+ 1115、(M+3H)3+ 743
【0394】
化合物8
TFA(2mL)を化合物7(274mg、0.123ミリモル)、1,4-ジメトキシベンゼン(155mg、1.12ミリモル)のCHCl(2mL)中の撹拌した混合物に室温で添加した。該混合物を室温で4時間撹拌し、ついで濃縮した。その残渣を中圧逆相クロマトグラフィー(C-18カラム)に付し、MeCN/水性NHOAcで溶出して精製した(ELSD-MSでモニター観察した)。所望の生成物を含有するフラクションを合わせ、揮発性の有機物を窒素の流れを用いて除去した。得られた所望の生成物を含有する水溶液を凍結乾燥させ、表記化合物8(228mg、収率84%)を白色の固体として得た。そのUHPLC-ELSD純度は、分析用UHPLC-ELSD条件Aを用いて93.3%であると決定された。(M+2H)2+ 1037、(M+3H)3+ 691
【0395】
PEG36-Gluγ-C13-COH(16)の合成
【化22】
【0396】
14-(tert-ブトキシ)-14-オキソテトラデカン酸(9)
1Lのフレーム乾燥させた丸底フラスコに、テトラデカンジオン酸(21g、81ミリモル)、DMAP(9.93g、81ミリモル)およびトルエン(300mL)を充填した。該混合物を室温で15分間撹拌させた後、2-メチルプロパン-2-オール(11.7mL、122ミリモル)およびジ-tert-ブチルジカルボナート(26.6g、122ミリモル)を添加した。得られた混合物を室温で30分間撹拌し、ついで116℃で15時間加熱した。該混合物を濃縮し、残渣をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーに付し、1%HOAcを含有するEtOAc/ヘキサン(1:2)で溶出して、14-(tert-ブトキシ)-14-オキソテトラデカン酸(9)(9.0g、29ミリモル、収率35%)を得た。H-NMRによれば該材料は約80%の純度を有し(主たる不純物はジ-tert-ブチルエステルであり)、それをさらに精製することなく次の工程にて直接使用した。
【0397】
1-tert-ブチル 14-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)テトラデカンジオエート(10)
DCC/CHCl(1M、59.6mL、59.6ミリモル)を14-(tert-ブトキシ)-14-オキソテトラデカン酸(9)(12.5g、39.8ミリモル)、および1-ヒドロキシピロリジン-2,5-ジオン(6.86g、59.6ミリモル)のCHCl(200mL)中の撹拌溶液に添加した。該混合物を室温で一夜撹拌し、濾過して濃縮させた。残渣をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーに付し、CHClで溶出して精製し、1-tert-ブチル 14-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル) テトラデカンジオエート(10)(6.2g、15ミリモル、収率38%)を白色の固体として得た。H-NMR(CDCl、400MHz) δ 2.84(brs,4H)、2.60(t,J=7.2Hz,2H)、2.20(t,J=7.5Hz,2H)、1.74(m,2H)、1.57(m,2H)、1.44(s,9H)、1.40(m,2H)、1.26(m,14H);13C-NMR(CDCl、100MHz) d 173.4、169.2、168.7、79.9、35.6、31.0、29.54、29.51、29.47、29.34、29.31、29.09、28.8、28.1、25.6、25.1
【0398】
(S)-5-(tert-ブトキシ)-4-(14-(tert-ブトキシ)-14-オキソテトラデカナミド)-5-オキソペンタン酸(11)
水(40ml)を(S)-4-アミノ-5-(tert-ブトキシ)-5-オキソペンタン酸(1.600g、7.87ミリモル)、1-tert-ブチル 14-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル) テトラデカンジオエート(10)(3.6g、7.87ミリモル)、およびNaHCO(0.794g、9.45ミリモル)のDME(120mL)中の撹拌した混合物に添加した。得られた清澄な溶液を室温で一夜撹拌した。DMEを真空下で除去し、水性HCl(1M、9.45ml、9.45ミリモル)を添加し、そのpHを2-3に調整した。水層を固形NaClで飽和させると同時に、該混合物をCHCl(1x250mL、2x50mL)で抽出した。有機層を合わせ、NaSOで乾燥させ、濾過し、濃縮し、高真空下で乾燥させて(S)-5-(tert-ブトキシ)-4-(14-(tert-ブトキシ)-14-オキソテトラデカナミド)-5-オキソペンタン酸(11)(5.14g、10.3ミリモル)を白色の固体として得、それをさらに精製することなく次の工程にて直接使用した。
【0399】
(S)-1-tert-ブチル 5-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル) 2-(14-(tert-ブトキシ)-14-オキソテトラデカナミド)ペンタンジオエート(12)
DCC/CHCl(1M、11.8mL、11.8ミリモル)を(S)-5-(tert-ブトキシ)-4-(14-(tert-ブトキシ)-14-オキソテトラデカナミド)-5-オキソペンタン酸(11)(3.93g、7.87ミリモル)、および1-ヒドロキシピロリジン-2,5-ジオン(1.359g、11.81ミリモル)のCHCl(100mL)中の撹拌した溶液に添加した。該混合物を室温で20時間撹拌し、ついで濾過した。濾液を真空下で濃縮し、残渣をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーに付し、EtOAc/CHCl(1:19)で溶出して精製し、((S)-1-tert-ブチル 5-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル) 2-(14-(tert-ブトキシ)-14-オキソテトラデカナミド)ペンタンジオエート(12)(3.2g、収率68%)を得た。H-NMR(CDCl、400MHz) δ 6.27(d,J=7.8Hz,1H)、4.59(m,1H)、2.84(s,4H)、2.71(m,1H)、2.63(m,1H)、2.31(m,1H)、2.22(d,J=8.2Hz,2H)、2.18(d,J=7.8Hz,2H)、2.08(m,1H)、1.58(m,4H)、1.47(s,9H)、1.43(s,9H)、1.25(m,16H);13C-NMR(CDCl、100MHz) d 173.41、173.37、170.7、169.1、168.0、82.8、79.9、51.6、36.4、35.6、29.58、29.47、29.35、29.30、29.10、28.12、27.99、27.55、27.50、25.59、25.48、25.13
【0400】
化合物13
水(4mL)を化合物4(750mg、0.448ミリモル)(Quanta BioDesign、Powell、Ohioより購入)、(S)-1-tert-ブチル 5-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル) 2-(14-(tert-ブトキシ)-14-オキソテトラデカナミド)ペンタンジオエート(12)(401mg、0.672ミリモル)、およびNaHCO(45.1mg、0.537ミリモル)のDME(12mL)中の撹拌した混合物に添加した。該混合物を室温で一夜撹拌した後、水性HCl(1M、0.537mL、0.537ミリモル)を添加した。該混合物を真空下で濃縮し、残渣を中圧逆相クロマトグラフィー(C-18カラム)に付し、MeCN/水性NHOAcで溶出して精製した(ELSD-MSでモニター観察した)。所望の生成物を含有するフラクションを合わせ、揮発性の有機物を窒素の流れを用いて除去した。得られた所望の生成物を含有する水溶液を凍結乾燥させ、表記化合物13(870mg、収率90%)を白色の固体として得た。(M+2H)2+ 1079、(M+3H)3+ 719
【0401】
化合物14
DCC/CHCl(1M、0.605mL、0.605ミリモル)を化合物13(870mg、0.403ミリモル)、および1-ヒドロキシピロリジン-2,5-ジオン(69.6mg、0.605ミリモル)のCHCl(10mL)中の撹拌した混合物に室温で添加した。該混合物を室温で一夜撹拌し、濾過し、濃縮し、高真空下で乾燥させて化合物14を白色の固体として得、それをさらに精製することなく次の工程にて直接使用した。
【0402】
化合物15
水(4mL)を化合物14(908mg、0.403ミリモル)、およびtert-ブチル 2-アミノエトキシカルバメート(2)(142mg、0.806ミリモル)のDME(12mL)中の撹拌した混合物に室温で添加した。該混合物を室温で一夜撹拌し、濃縮し、残渣を中圧逆相クロマトグラフィー(C-18カラム)に付し、MeCN/水性NHOAcで溶出して精製した(カラム:Teledyne Isco C18 Redi SepRf High performance Gold;検出器:ELSD;速度:60mL/分;溶媒A:95%H2O、5%MeCN 10mM NHOAc;溶媒B:5%H2O、95%MeCN、10mM NHOAc)。所望の生成物を含有するフラクションを合わせ、揮発性の有機物を窒素の流れを用いて除去した。得られた所望の生成物を含有する水溶液を凍結乾燥させ、表記化合物15(730mg、収率78%)を白色の固体として得た。(M+2H)2+ 1158、(M+3H)3+ 772
【0403】
化合物16
TFA(8mL、104ミリモル)を化合物15(420mg、0.181ミリモル)、および1,4-ジメトキシベンゼン(201mg、1.451ミリモル)のCHCl(8mL)中の撹拌した混合物に室温で添加した。該混合物を室温で3時間撹拌し、濃縮し、残渣を中圧逆相クロマトグラフィー(C-18カラム)に付し、MeCN/水性NHOAcで溶出して精製した(ELSD-MSでモニター観察した)。所望の生成物を含有するフラクションを合わせ、揮発性の有機物を窒素の流れを用いて除去した。得られた所望の生成物を含有する水溶液を凍結乾燥させて表記化合物16(240mg、収率63%)を白色の固体として得た。そのUHPLC-ELSD純度は分析用UHPLC-ELSD条件Bを用いて75.2%であると決定された。(M+2H)2+ 1052、(M+3H)3+ 701
【0404】
スペルミン(Spermine)-Gluγ-C14-COH(27)の合成
【化23】
【化24】
【0405】
tert-ブチル (4-((3-アミノプロピル)(tert-ブトキシカルボニル)アミノ)ブチル)(3-(((ベンジルオキシ)カルボニル)アミノ)プロピル)カルバメート(18)
水(100mL)をN-(ベンジルオキシカルボニルオキシ)スクシンイミド(16.6g、66.4ミリモル)、ジ-tert-ブチル ブタン-1,4-ジイルビス((3-アミノプロピル)カルバメート)(17)(Stromgaard, K; Bjornsdottir, I;Andersen, K;Brierley, M. J.;Rizoli, S.;Eldursi, N;Mellor, I,. R.;4 Peter N. R. Usherwood, P. N. R.;Hansen, S. H.;Krogsgaard-Larsen, P.;Jaroszewski, J. W. Chirality, 2000, 12, 93)(19.1g、47.4ミリモル)のTHF(300mL)中混合物に添加した。それを室温で一夜撹拌した後、THFをすべて真空下で除去し、水層を固形NaClで飽和させる一方で、該混合物をCHCl(350ml、100mlx2)で抽出した。有機層を合わせ、NaSOで乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮し、フラスコに付し、2M NH3-MeOH/CHCl(1:19~1:9)で溶出して精製し、tert-ブチル (4-((3-アミノプロピル)(tert-ブトキシカルボニル)アミノ)ブチル)(3-(((ベンジルオキシ)カルボニル)アミノ)プロピル)カルバメート(18)(5.19g、9.67ミリモル、収率20.4%)を得た。H-NMR(400MHz、CDCl) δ ppm 7.22-7.40(m,5H)、5.01-5.12(m,2H)、3.34-3.48(m,4H)、3.01-3.31(m,5H)、2.65(brt,J=6.60Hz,2H)、1.86-2.19(m,4H)、1.55-1.75(m,4H)、1.43-1.50(m,4H)、1.43(s,9H)、1.42(s,9H)。13C-NMRスペクトルは回転異性体が存在するために大変複雑であった。
【0406】
1-(tert-ブチル) 15-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)ペンタデカンジオエート(19)
15-(tert-ブトキシ)-15-オキソペンタデカン酸(実施例4の化合物1)(3.28g、10.0ミリモル)、1-ヒドロキシピロリジン-2,5-ジオン(1.73g、15.0ミリモル)、およびEDC(2.88g、15.0ミリモル)のCHCl(100mL)中混合物を室温で16時間撹拌した。次にそれをCHCl(200mL)で希釈し、ブライン/水(1:1)で2回洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、濃縮し、高真空下で乾燥させて1-tert-ブチル 15-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)ペンタデカンジオエート(19)(4.26g、10.0ミリモル、収率100%)を得、それを次の工程にて直接使用した。
【0407】
(S)-5-(tert-ブトキシ)-4-(15-(tert-ブトキシ)-15-オキソペンタデカンアミド)-5-オキソペンタン酸(20)
NaHCO(1.01g、12.0ミリモル)の水(30mL)中溶液を(S)-4-アミノ-5-(tert-ブトキシ)-5-オキソペンタン酸(2.44g、12.0ミリモル)、および1-tert-ブチル 15-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)ペンタデカンジオエート(19)(4.26g、10.0ミリモル)のDME(90mL)中混合物に添加した。該混合物を室温で16時間撹拌した後、すべてのDMEを真空下で除去し、そのpHを2-3に調整し、その混合物をCHCl(350mL、150mL)で抽出した。有機層を合わせ、NaSOで乾燥させ、濾過し、濃縮し、高真空下で乾燥させて(S)-5-(tert-ブトキシ)-4-(15-(tert-ブトキシ)-15-オキソペンタデカンアミド)-5-オキソペンタン酸(20)(5.14g、10.0ミリモル、収率100%)を得、それを次の工程にて直接使用した。
【0408】
1-(tert-ブチル) 5-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)(15-(tert-ブトキシ)-15-オキソペンタデカノイル)-L-グルタメート(21)
(S)-5-(tert-ブトキシ)-4-(15-(tert-ブトキシ)-15-オキソペンタデカンアミド)-5-オキソペンタン酸(20)(5.14g、10.0ミリモル)、1-ヒドロキシピロリジン-2,5-ジオン(1.73g、15.0ミリモル)、EDC(2.88g、15.0ミリモル)のCHCl(100mL)中混合物を室温で16時間撹拌した。次にそれをCHCl(200mL)で希釈し、ブライン/水(1:1)で2回洗浄した。有機層をNaSOで乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮し、残渣をフラッシュクロマトグラフィーに供し、EtOAc/CHClで溶出し、(S)-1-tert-ブチル 5-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル) 2-(15-(tert-ブトキシ)-15-オキソペンタデカンアミド)ペンタンジオエート(21)(3.41g、5.58ミリモル、収率55.8%)(3工程で収率55.8%)を白色固体として得た。H-NMR(400MHz、CDCl) δ ppm 6.20(brd,J=7.82Hz,1H)、4.62(td,J=7.95、4.89Hz,1H)、2.80-2.91(m,4H)、2.56-2.79(m,2H)、2.29-2.42(m,1H)、2.17-2.28(m,4H)、2.02-2.16(m,1H)、1.54-1.69(m,4H)、1.48-1.53(m,9H)、1.44-1.48(m,9H)、1.21-1.39(m,18 H);13C-NMR(101MHz、CDCl) δ ppm 173.35、173.33、170.66、168.95、168.01、82.82、79.85、51.66、36.46、35.66、29.61、29.49、29.35、29.31、29.12、28.15、28.00、27.62、27.54、25.60、25.48、25.15
【0409】
tert-ブチル (S)-8,13,21-トリス(tert-ブトキシカルボニル)-3,18,23-トリオキソ-1-フェニル-2-オキサ-4,8,13,17,22-ペンタアザヘプタトリアコンタン-37-オエート(22)
水(20mL)をtert-ブチル (4-((3-アミノプロピル)(tert-ブトキシカルボニル)アミノ)ブチル)(3-(((ベンジルオキシ)カルボニル)アミノ)プロピル)カルバメート(18)(1.42g、2.65ミリモル)、(S)-1-tert-ブチル 5-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル) 2-(15-(tert-ブトキシ)-15-オキソペンタデカンアミド)ペンタンジオエート(21)(1.62g、2.65ミリモル)のDME(60mL)中混合物に添加した。該混合物を室温で一夜撹拌した後、すべての揮発性成分(水を含む)を高真空下で除去し、残渣をMeOH(2x)と共に共沸蒸留させた。その残渣をMeOH/CHCl(1:9、<10mL)に溶かし、フラッシュクロマトグラフィーに供し、MeOH/CHClで溶出して(S)-tert-ブチル 8,13,21-トリス(tert-ブトキシカルボニル)-3,18,23-トリオキソ-1-フェニル-2-オキサ-4,8,13,17,22-ペンタアザヘプタトリアコンタン-37-オエート(22)(2.74g、2.65ミリモル、収率100%)を粘性の液体として得た。H-NMR(400MHz、CDCl) δ ppm 7.29-7.39(m,5H)、7.12-7.25(m,1H)、6.69-6.89(m,1H)、5.67-5.95(m,1H)、5.03-5.15(m,2H)、4.30-4.47(m,1H)、3.38-3.54(m,8 H)、3.05-3.32(m,8 H)、2.12-2.35(m,6H)、1.86-2.05(m,1H)、1.51-1.76(m,7 H)、1.45(s,9H)、1.44(s,27 H)、1.17-1.33(m,20H)。13C-NMRスペクトルは回転異性体の存在を理由に大変複雑であった。
【0410】
tert-ブチル (S)-5-(3-アミノプロピル)-10,18-ビス(tert-ブトキシカルボニル)-2,2-ジメチル-4,15,20-トリオキソ-3-オキサ-5,10,14,19-テトラアザテトラトリアコンタン-34-オエート(23)
(S)-tert-ブチル 8,13,21-トリス(tert-ブトキシカルボニル)-3,18,23-トリオキソ-1-フェニル-2-オキサ-4,8,13,17,22-ペンタアザヘプタトリアコンタン-37-オエート(22)(1.36g、1.32ミリモル)、およびPd-C(0.140g、10重量%)のエタノール(100mL)中混合物をパール(Parr)振盪器(H2、30psi)にて室温で18時間水素添加に付した。該混合物を濾過し、EtOHで洗浄し、濃縮し、高真空下で乾燥させて(S)-tert-ブチル 5-(3-アミノプロピル)-10,18-ビス(tert-ブトキシカルボニル)-2,2-ジメチル-4,15,20-トリオキソ-3-オキサ-5,10,14,19-テトラアザテトラトリアコンタン-34-オエート(23)(1.19g、1.32ミリモル、収率100%)を得、それを次の工程にて直接使用した。H-NMR(400MHz、CDCl) δ ppm 6.91-7.09(m,1H)、6.46-6.73(m,1H)、4.34-4.54(m,1H)、3.66-3.81(m,1H)、3.10-3.36(m,10H)、2.82-2.93(m,2H)、2.58-2.67(m,3 H)、2.13-2.36(m,6H)、1.55-1.72(m,6H)、1.49-1.53(m,4H)、1.48(s,9H)、1.47(d,J=3.18Hz,27 H)、1.22-1.37(m,20H)。13C-NMRスペクトルは回転異性体の存在を理由に大変複雑であった。
【0411】
(S)-20,28,33-トリス(tert-ブトキシカルボニル)-2,2-ジメチル-4,18,23,38-テトラオキソ-3-オキサ-19,24,28,33,37-ペンタアザヘンテトラコンタン-41-オン酸(24)
ピリジン(13mL)を(S)-tert-ブチル 5-(3-アミノプロピル)-10,18-ビス(tert-ブトキシカルボニル)-2,2-ジメチル-4,15,20-トリオキソ-3-オキサ-5,10,14,19-テトラアザテトラトリアコンタン-34-オエート(23)(1.19g、1.32ミリモル)、およびジヒドロフラン-2,5-ジオン(0.66g、6.6ミリモル)の混合物に添加した。該混合物を室温で16時間撹拌した後、すべての揮発性成分を真空下で除去し、残渣をフラッシュクロマトグラフィーに供し、MeOH/CHCl(0.5%AcOHを含有する)で溶出して(S)-20,28,33-トリス(tert-ブトキシカルボニル)-2,2-ジメチル-4,18,23,38-テトラオキソ-3-オキサ-19,24,28,33,37-ペンタアザヘンテトラコンタン-41-オン酸(24)(1.32g、1.32ミリモル、収率100%)を粘性の液体として得た。H-NMR(400MHz、クロロホルム-d) δ ppm 4.38-4.50(m,1H)、3.47-3.58(m,1H)、3.09-3.32(m,9H)、2.75(s,4H)、2.64-2.73(m,2H)、2.46-2.59(m,2H)、2.27-2.35(m,2H)、2.17-2.27(m,4H)、2.07-2.14(m,4H)、1.83-2.04(m,1H)、1.67-1.80(m,3 H)、1.55-1.66(m,4H)、1.41-1.54(m,38 H)、1.19-1.37(m,20H)
【0412】
21,36-ジ-tert-ブチル 1-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル) (S)-8,13-ビス(tert-ブトキシカルボニル)-3,18,23-トリオキソ-4,8,13,17,22-ペンタアザヘキサトリアコンタン-1,21,36-トリカルボキシレート(25)
DCC/CHCl(1.0M、2.0mL、2.0ミリモル)を(S)-20,28,33-トリス(tert-ブトキシカルボニル)-2,2-ジメチル-4,18,23,38-テトラオキソ-3-オキサ-19,24,28,33,37-ペンタアザヘンテトラコンタン-41-オン酸(24)(1.32g、1.32ミリモル)、1-ヒドロキシピロリジン-2,5-ジオン(0.23g、2.0ミリモル)のCHCl(20mL)中混合物に添加した。該混合物を室温で16時間撹拌した後、それを濾過し、濃縮し、高真空下で乾燥させて21,36-ジ-tert-ブチル 1-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル) (S)-8,13-ビス(tert-ブトキシカルボニル)-3,18,23-トリオキソ-4,8,13,17,22-ペンタアザヘキサトリアコンタン-1,21,36-トリカルボキシレート(25)(1.45g、1.32ミリモル、収率100%)を得、それを次の工程にて直接使用した。
【0413】
tert-ブチル (S)-18,23,31-トリス(tert-ブトキシカルボニル)-2,2-ジメチル-4,10,13,28,33-ペンタオキソ-3,6-ジオキサ-5,9,14,18,23,27,32-ヘプタアザヘプタテトラコンタン-47-オエート(26)
NaHCO(0.233g、2.77ミリモル)の水(4mL)中溶液を(S)-21,36-ジ-tert-ブチル 1-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル) 8,13-ビス(tert-ブトキシカルボニル)-3,18,23-トリオキソ-4,8,13,17,22-ペンタアザヘキサトリアコンタン-1,21,36-トリカルボキシレート(25)(1.45g、1.32ミリモル)、およびtert-ブチル 2-アミノエトキシカルバメート・塩酸塩(0.561g、2.64ミリモル)のDME(12mL)中混合物に室温にて添加した。該混合物を室温で6時間撹拌した後、すべての揮発性成分(水を包含する)を真空下で除去し、その残渣をTHFと共に共沸蒸留により乾燥させた。該残渣をフラッシュクロマトグラフィーに供し、MeOH/CHClで溶出してtert-ブチル (S)-18,23,31-トリス(tert-ブトキシカルボニル)-2,2-ジメチル-4,10,13,28,33-ペンタオキソ-3,6-ジオキサ-5,9,14,18,23,27,32-ヘプタアザヘプタテトラコンタン-47-オエート(26)(0.87g、0.75ミリモル、収率57%)を粘性の液体として得た。H-NMR(400MHz、CDCl) δ ppm 4.33-4.48(m,1H)、3.80-3.94(m,4H)、3.42-3.55(m,14H)、3.08-3.32(m,7 H)、2.68-2.77(m,4H)、2.50-2.63(m,4H)、2.13-2.34(m,4H)、1.54-1.74(m,6H)、1.43-1.53(m,45H)、1.22-1.35(m,20H)。13C-NMRスペクトルは回転異性体の存在を理由として大変複雑であった。
【0414】
(S)-1-(アミノオキシ)-25-カルボキシ-4,7,22,27-テトラオキソ-3,8,12,17,21,26-ヘキサアザヘンテトラコンタン-41-オン酸(27)
(S)-tert-ブチル 18,23,31-トリス(tert-ブトキシカルボニル)-2,2-ジメチル-4,10,13,28,33-ペンタオキソ-3,6-ジオキサ-5,9,14,18,23,27,32-ヘプタアザヘプタテトラコンタン-47-オエート(26)(0.50g、0.43ミリモル)、およびDTT(0.067g、0.43ミリモル)のTFA(1.5ml)中混合物に、トリエチルシラン(0.10ml、0.63ミリモル)および水(0.10mL、5.6ミリモル)を添加した。得られた混合物を室温で2時間撹拌し、ついですべての揮発性成分をNの流れを一夜にわたって用いて除去した。残渣を分取性LC/MSに付し、次の条件:カラム:ウォーターズ CSH C18、19x200mm、5μm粒子;移動相A:5:95 アセトニトリル:水+0.1%トリフルオロ酢酸;移動相B:95:5 アセトニトリル:水+0.1%トリフルオロ酢酸;勾配:25分間にわたって0-35%Bとし、次に100%Bで5分間保持する;流速:20mL/分を用いる精製に供した。所望の生成物を含有するフラクションを合わせ、揮発性有機成分を窒素の流れを用いて除去した。得られた所望の生成物を含有する水溶液を窒素の流れの下で-78℃に冷却し、凍結乾燥に付し、表記化合物(27)(72mg、収率21%)を白色の固体として得た。そのLC-CAD純度は、分析用UHPLC-CAD条件Cを用いて94.9%であると決定された。[MH] 745.09
【0415】
分析用条件A:保持時間=1.27分間;ESI-MS(MH)+=744.55
【0416】
分析用条件B: 保持時間=1.20分間;ESI-MS(MH)+=744.40
【0417】
化合物39の合成:
【化25】
【化26】
【0418】
1-(tert-ブチル) 18-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル) オクタデカンジオエート(29)
EDC(1.406g、7.33ミリモル)を18-(tert-ブトキシ)-18-オキソオクタデカン酸(28)(実施例4にて化合物1を製造するのに用いた方法と同様の方法により製造)(2.09g、5.64ミリモル)、および1-ヒドロキシピロリジン-2,5-ジオン(0.844g、7.33ミリモル)のCHCl(40mL)中混合物に添加した。該混合物を室温で一夜撹拌し、CHCl(100mL)で希釈し、NaHCOで洗浄した。分離した後、水層をCHCl(80mLx2)で抽出した。有機層を合わせ、ブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィーに供し、CHClで溶出して1-tert-ブチル 18-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル) オクタデカンジオエート(29)(2.13g、4.55ミリモル、収率81%)を白色の固体として得た。H-NMR(400MHz、CDCl) δ 2.85(brs,4H)、2.62(t,J=7.5Hz,2H)、2.22(t,J=7.6Hz,2H)、1.77(quin,J=7.5Hz,2H)、1.67-1.54(m,3H)、1.50-1.37(m,10H)、1.37-1.21(m,22H);13C-NMR(101MHz、CDCl) δ ppm 173.33、169.12,168.67、79.85、35.67、30.98、29.65(brs)、29.62(brs)、25.61、29.55、29.50、29.36、29.31、29.12、29.09、28.81、28.15、25.15、24.60
【0419】
tert-ブチル(S)-18-((6-(((ベンジルオキシ)カルボニル)アミノ)-1-(tert-ブトキシ)-1-オキソヘキサン-2-イル)アミノ)-18-オキソオクタデカノエート(30)
NaHCO(0.41g、4.83ミリモル)を1-tert-ブチル 18-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル) オクタデカンジオエート(29)(1.13g、2.416ミリモル)、およびLys(Nε-CBZ)-OtBu・塩酸塩(1.17g、3.14ミリモル)のDME(60mL)および水(20mL)中混合物に添加した。得られた明色懸濁液を室温で一夜撹拌した。DMEを真空下で除去し、次に水性HCl(1M、4.83mL、4.83ミリモル)を加え、そのpHを2-3に調整した。該混合物をEtOAc(200mL、100mLx2)で抽出した。有機層を合わせ、ブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮し、フラッシュクロマトグラフィーに供し、EtOAc/CHClで溶出して(S)-tert-ブチル 18-((6-(((ベンジルオキシ)カルボニル)アミノ)-1-(tert-ブトキシ)-1-オキソヘキサン-2-イル)アミノ)-18-オキソオクタデカノエート(30)(1.66g、2.42ミリモル、収率100%)を無色の粘性の液体として得た。H-NMR(400MHz、CDCl) δ ppm 7.29-7.38(m,5H)、6.08(brd,J=7.34Hz,1H)、5.06-5.19(m,2H)、4.84-5.02(m,1H)、4.48(td,J=7.70、5.14Hz,1H)、3.07-3.27(m,2H)、2.15-2.24(m,4H)、1.75-1.88(m,1H)、1.49-1.70(m,7 H)、1.46(s,9H)、1.44(s,9H)、1.20-1.34(m,26H);13C-NMR(101MHz、CDCl) δ ppm 173.30、172.87、171.81、171.05、156.49、136.67、128.47、128.03、82.03、79.82、66.55、60.35、52.24、40.66、36.65、35.64、32.35、29.67、29.64、29.61、29.50、29.48、29.44、29.33、29.29、29.10、28.13、28.00、25.63、25.13、22.25、21.00、14.19;[MH] 689.62
【0420】
tert-ブチル (S)-18-((6-アミノ-1-(tert-ブトキシ)-1-オキソヘキサン-2-イル)アミノ)-18-オキソオクタデカノエート(31)
(S)-tert-ブチル 18-((6-(((ベンジルオキシ)カルボニル)アミノ)-1-(tert-ブトキシ)-1-オキソヘキサン-2-イル)アミノ)-18-オキソオクタデカノエート(30)(1.060g、1.2ミリモル)、およびPd-C(0.128g、1.200ミリモル)のEtOH(50mL)中混合物を室温で一夜水素添加(バルーン)に供した。真空化と窒素でのパージのサイクルを数回行った後、反応混合物を注意して濾過し、EtOHで洗浄した。濾液を濃縮し、高真空下で乾燥させて(31)(S)-tert-ブチル 18-((6-アミノ-1-(tert-ブトキシ)-1-オキソヘキサン-2-イル)アミノ)-18-オキソオクタデカノエート(0.67g、1.2ミリモル、収率100%)を無色の液体として得、それを次の工程にて直接使用した。H-NMR(400MHz、CDCl) δ ppm 6.40-6.59(m,1H)、4.30-4.50(m,1H)、3.16-3.37(m,2H)、2.65-2.81(m,2H)、2.10-2.25(m,4H)、1.72-1.84(m,1H)、1.47-1.67(m,7 H)、1.43(s,9H)、1.41(s,9H)、1.22-1.36(m,26H);13C-NMR(CDCl) δ ppm 173.53、173.48、171.90、82.10、79.95、52.47、50.19、40.80、36.50、35.62、32.11、30.66、29.63、29.60、29.56、29.48、29.44、29.33、29.25、29.05、28.07、27.94、25.66、25.09、22.41;[MH] 555.63
【0421】
tert-ブチル(S)-19-(tert-ブトキシカルボニル)-1-(9H-フルオレン-9-イル)-3,13,21-トリオキソ-2,7,10-トリオキサ-4,14,20-トリアザオクタトリアコンタン-38-オエート(32)
NaHCO(0.202g、2.40ミリモル)を2,5-ジオキソピロリジン-1-イル 1-(9H-フルオレン-9-イル)-3-オキソ-2,7,10-トリオキサ-4-アザトリデカン-13-オエート(0.715g、1.44ミリモル)、(S)-tert-ブチル 18-((6-アミノ-1-(tert-ブトキシ)-1-オキソヘキサン-2-イル)アミノ)-18-オキソオクタデカノエート(31)(0.67g、1.2ミリモル)のDME(15mL)および水(5mL)中混合物に添加した。室温で一夜にわたって撹拌した後、すべての揮発性成分を真空下で除去し、残渣をフラッシュクロマトグラフィーに供し、EtOAc/CHClで溶出して(S)-tert-ブチル 19-(tert-ブトキシカルボニル)-1-(9H-フルオレン-9-イル)-3,13,21-トリオキソ-2,7,10-トリオキサ-4,14,20-トリアザオクタトリアコンタン-38-オエート(32)(1.12g、1.20ミリモル、収率100%)を無色の粘性の液体として得た。H-NMR(400MHz、CDCl) δ ppm 7.78(d,J=7.58Hz,2H)、7.63(d,J=7.34Hz,2H)、7.37-7.47(m,2H)、7.30-7.36(m,2H)、6.21-6.37(m,1H)、6.00-6.17(m,1H)、5.43-5.63(m,1H)、4.40-4.54(m,3 H)、4.19-4.33(m,1H)、3.75(t,J=5.87Hz,2H)、3.53-3.68(m,6H)、3.42(brd,J=4.89Hz,2H)、3.22(q,J=6.28Hz,2H)、2.44(brt,J=5.38Hz,2H)、2.22(t,J=7.58Hz,4H)、1.75-1.89(m,1H)、1.55-1.69(m,7 H)、1.47(s,9H)、1.46(s,9H)、1.20-1.35(m,26H);13C-NMR(101MHz、CDCl) δ ppm 173.34、173.01、171.82、171.38、156.56、143.99、141.34、127.70、127.05、125.06、119.98、82.07、79.87、70.25、70.12、70.05、67.29、66.63、52.27、47.33、40.86、38.99、37.03、36.67、35.67、32.45、29.70、29.67、29.64、29.63、29.53、29.51、29.38、29.33、29.13、29.03、28.15、28.04、25.68、25.16、22.47;[MH] 936.80
【0422】
tert-ブチル (S)-1-アミノ-15-(tert-ブトキシカルボニル)-9,17-ジオキソ-3,6-ジオキサ-10,16-ジアザテトラトリアコンタン-34-オエート(33)
Et3N(2.5mL、18ミリモル)を(S)-tert-ブチル 19-(tert-ブトキシカルボニル)-1-(9H-フルオレン-9-イル)-3,13,21-トリオキソ-2,7,10-トリオキサ-4,14,20-トリアザオクタトリアコンタン-38-オエート(32)(1.12g、1.20ミリモル)のDMF(10mL)中混合物に添加した。該混合物を室温で一夜にわたって撹拌し、Et3N(1.0mL、7.2ミリモル)をさらに加えた。該混合物を室温で別に7時間撹拌した。揮発性成分をすべて真空下で除去し、その残渣を高真空下で乾燥させて(S)-tert-ブチル 1-アミノ-15-(tert-ブトキシカルボニル)-9,17-ジオキソ-3,6-ジオキサ-10,16-ジアザテトラトリアコンタン-34-オエート(33)(0.857g、1.20ミリモル、収率100%)を無色の液体として得、それを次の工程にて直接使用した。[MH] 714.70
【0423】
tert-ブチル (S)-39-(tert-ブトキシカルボニル)-1-(9H-フルオレン-9-イル)-3,13,23,33,41-ペンタオキソ-2,7,10,17,20,27,30-ヘプタオキサ-4,14,24,34,40-ペンタアザオクタペンタコンタン-58-オエート(34)
NaHCO(0.20g、2.4ミリモル)を2,5-ジオキソピロリジン-1-イル 1-(9H-フルオレン-9-イル)-3-オキソ-2,7,10-トリオキサ-4-アザトリデカン-13-オエート(0.715g、1.44ミリモル)、(S)-tert-ブチル 1-アミノ-15-(tert-ブトキシカルボニル)-9,17-ジオキソ-3,6-ジオキサ-10,16-ジアザテトラトリアコンタン-34-オエート(33)(0.857g、1.20ミリモル)のDME(15mL)および水(5mL)中混合物に添加した。該混合物を室温で一夜にわたって撹拌した後、すべての揮発性成分を真空下で除去し、水性HCl(1M、2.4mL、2.4ミリモル)を添加してそのpHを2-3に調整した。得られた混合物をEtOAc(200mL、100mLx2)で抽出した。有機層を合わせ、ブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮した。該残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル)に供し、MeOH/CHClで溶出して(S)-tert-ブチル 29-(tert-ブトキシカルボニル)-1-(9H-フルオレン-9-イル)-3,13,23,31-テトラオキソ-2,7,10,17,20-ペンタオキサ-4,14,24,30-テトラアザオクタテトラコンタン-48-オエート(34)(1.03g、0.940ミリモル、収率78%)を無色の粘性の液体として得た。H-NMR(400MHz、CDCl) δ ppm 7.78(d,J=7.58Hz,2H)、7.63(brd,J=7.34Hz,2H)、7.39-7.46(m,2H)、7.30-7.36(m,2H)、6.74(brs,1H)、6.27-6.39(m,1H)、6.05-6.24(m,1H)、5.60-5.78(m,1H)、5.19-5.40(m,3 H)、4.38-4.55(m,3 H)、4.17-4.32(m,1H)、3.74-3.79(m,2H)、3.72(t,J=5.99Hz,2H)、3.61-3.67(m,4H)、3.54-3.61(m,8 H)、3.48-3.54(m,6H)、3.37-3.47(m,4H)、3.17-3.29(m,2H)、2.49(brt,J=5.87Hz,2H)、2.43(t,J=5.87Hz,2H)、2.18-2.26(m,4H)、1.76-1.90(m,1H)、1.51-1.73(m,7 H)、1.48(s,9H)、1.46(s,9H)、1.18-1.37(m,26H);13C-NMR(101MHz、CDCl) δ ppm 173.34、173.04、171.80、171.43、171.34、156.62、144.00、141.35、127.69、127.05、125.04、119.97、82.05、79.87、77.55、70.22、70.18、70.16、70.07、69.92、67.23、66.51、53.40、52.29、50.86、47.34、40.99、39.18、39.04、37.04、36.95、36.67、35.67、32.42、29.70(brs)、29.68(brs)、29.65(brs)、29.63(brs)、29.54、29.51、29.38、29.34、29.32、29.12、29.01、28.15、28.0、25.68、25.16、22.51;[MH] 1254.90
【0424】
tert-ブチル (S)-1-アミノ-25-(tert-ブトキシカルボニル)-9,19,27-トリオキソ-3,6,13,16-テトラオキサ-10,20,26-トリアザテトラテトラコンタン-44-オエート(35)
Et3N(1.2mL、8.61ミリモル)を(S)-tert-ブチル 29-(tert-ブトキシカルボニル)-1-(9H-フルオレン-9-イル)-3,13,23,31-テトラオキソ-2,7,10,17,20-ペンタオキサ-4,14,24,30-テトラアザオクタテトラコンタン-48-オエート(34)(330mg、0.301ミリモル) のDMF(3mL)中混合物に添加した。該混合物を室温で20時間撹拌した後、すべての揮発性成分を高真空下で除去した。該残渣をフラッシュクロマトグラフィーに供し、2M NH3-MeOH/CHCl(1:9)で溶出し、(S)-tert-ブチル 1-アミノ-25-(tert-ブトキシカルボニル)-9,19,27-トリオキソ-3,6,13,16-テトラオキサ-10,20,26-トリアザテトラテトラコンタン-44-オエート(35)(164mg、0.188ミリモル、収率62.3%)を無色の液体として得た。H-NMR(400MHz、CDCl) δ ppm 6.78-6.92(m,1H)、6.48-6.62(m,1H)、6.15-6.35(m,1H)、4.35-4.53(m,1H)、3.75(q,J=6.11Hz,4H)、3.59-3.68(m,8 H)、3.54-3.59(m,2H)、3.49-3.54(m,2H)、3.40-3.48(m,3 H)、3.16-3.29(m,2H)、2.80-2.92(m,2H)、2.38-2.57(m,4H)、2.12-2.32(m,4H)、1.75-1.87(m,1H)、1.49-1.75(m,8 H)、1.47(s,9H)、1.45(s,9H)、1.20-1.38(m,26H);13C-NMR(101MHz、CDCl) δ ppm 173.32、173.04、171.80、171.47、171.37、81.99、79.85、74.86、73.34、70.30、70.23、70.12、70.08、69.88、67.30、52.31、50.60、41.74、39.18、39.00、37.05、37.00、36.64、35.65、32.35、29.67、29.66、29.61、29.52、29.48、29.33、29.31、29.31、29.11、29.04、28.13、28.03、25.68、25.13、22.51;[MH] 873.75
【0425】
(S)-23-(tert-ブトキシカルボニル)-2,2-ジメチル-4,21,29,39,49-ペンタオキソ-3,32,35,42,45-ペンタオキサ-22,28,38,48-テトラアザドペンタコンタン-52-オン酸(36)
ピリジン(5.0mL)を(S)-tert-ブチル 1-アミノ-25-(tert-ブトキシカルボニル)-9,19,27-トリオキソ-3,6,13,16-テトラオキサ-10,20,26-トリアザテトラテトラコンタン-44-オエート(35)(164mg、0.188ミリモル)、およびジヒドロフラン-2,5-ジオン(94mg、0.939ミリモル)の混合物に室温で添加した。該混合物を室温で一夜にわたって撹拌した後、すべての揮発性成分を高真空下で除去した。該残渣を中圧逆相クロマトグラフィーにC-18カラム上で供し、MeCN/水性TFAで溶出して精製した(ELSD-MSでモニター観察した)。所望の生成物を含有するフラクションを合わせ、揮発性有機成分を窒素の流れを用いて除去した。得られた所望の生成物を含有する水溶液を凍結乾燥させて表記化合物の(S)-23-(tert-ブトキシカルボニル)-2,2-ジメチル-4,21,29,39,49-ペンタオキソ-3,32,35,42,45-ペンタオキサ-22,28,38,48-テトラアザドペンタコンタン-52-オン酸(36)(123mg、0.126ミリモル、収率67.3%)を無色の液体として得た。[MH] 973.81
【0426】
29,47-ジ-tert-ブチル 1-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)(S)-3,13,23,31-テトラオキソ-7,10,17,20-テトラオキサ-4,14,24,30-テトラアザヘプタテトラコンタン-1,29,47-トリカルボキシレート(37)
(S)-23-(tert-ブトキシカルボニル)-2,2-ジメチル-4,21,29,39,49-ペンタオキソ-3,32,35,42,45-ペンタオキサ-22,28,38,48-テトラアザドペンタコンタン-52-オン酸(36)(123mg、0.126ミリモル)、1-ヒドロキシピロリジン-2,5-ジオン(21.8mg、0.190ミリモル)、およびEDC(31.5mg、0.164ミリモル)の混合物に、CHCl(5mL)を添加した。その得られた清澄な溶液を室温で一夜撹拌した後、LC/ELSD-MSは約70%の変換を示した。さらに1-ヒドロキシピロリジン-2,5-ジオン(21.8mg、0.190ミリモル)、およびEDC(31.5mg、0.164ミリモル)を加え、その混合物を室温で3.5時間撹拌した。LC/ELSD-MSは変換の終了を示した。該混合物をCHCl(150mL)で希釈し、水/ブライン(2:1)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、高真空下で濃縮して(S)-29,47-ジ-tert-ブチル 1-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル) 3,13,23,31-テトラオキソ-7,10,17,20-テトラオキサ-4,14,24,30-テトラアザヘプタテトラコンタン-1,29,47-トリカルボキシレート(37)(135mg、0.126ミリモル、収率100%)を無色の液体として得、それを次の工程にて直接使用した。[MH] 1070.93
【0427】
tert-ブチル (S)-39-(tert-ブトキシカルボニル)-2,2-ジメチル-4,10,13,23,33,41-ヘキサオキソ-3,6,17,20,27,30-ヘキサオキサ-5,9,14,24,34,40-ヘキサアザオクタペンタコンタン-58-オエート(38)
NaHCO(21.2mg、0.252ミリモル)を(S)-29,47-ジ-tert-ブチル 1-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル) 3,13,23,31-テトラオキソ-7,10,17,20-テトラオキサ-4,14,24,30-テトラアザヘプタテトラコンタン-1,29,47-トリカルボキシレート(37)(135mg、0.126ミリモル)、およびtert-ブチル 2-アミノエトキシカルバメート・塩酸塩(53.6mg、0.252ミリモル)のDME(4.5mL)および水(1.5mL)中混合物に添加した。得られた清澄な溶液を室温で一夜撹拌した。すべての揮発性成分を真空下で除去し、該残渣を中圧逆相クロマトグラフィーにC-18カラム上で供し、MeCN/水性TFAで溶出して精製した(ELSD-MSでモニター観察した)。所望の生成物を含有するフラクションを合わせ、揮発性有機成分を窒素の流れを用いて除去した。得られた所望の生成物を含有する水溶液を凍結乾燥させ、表記化合物の(S)-tert-ブチル 39-(tert-ブトキシカルボニル)-2,2-ジメチル-4,10,13,23,33,41-ヘキサオキソ-3,6,17,20,27,30-ヘキサオキサ-5,9,14,24,34,40-ヘキサアザオクタペンタコンタン-58-オエート(38)(118mg、0.104ミリモル、収率83.0%)得た。[MH] 1131.99
【0428】
(S)-1-(アミノオキシ)-33-カルボキシ-4,7,17,27,35-ペンタオキソ-11,14,21,24-テトラオキサ-3,8,18,28,34-ペンタアザドペンタコンタン-52-オン酸(39)
TFA(2mL)を0℃で(S)-tert-ブチル 39-(tert-ブトキシカルボニル)-2,2-ジメチル-4,10,13,23,33,41-ヘキサオキソ-3,6,17,20,27,30-ヘキサオキサ-5,9,14,24,34,40-ヘキサアザオクタペンタコンタン-58-オエート(38)(118mg、0.104ミリモル)、および1,4-ジメトキシベンゼン(144mg、1.043ミリモル)のCHCl(2mL)中混合物に添加した。該混合物を0℃で5分間、ついで室温で2時間撹拌した。該混合物を濃縮し、次に高真空下で30分間乾燥させた。該残渣を中圧逆相クロマトグラフィーにC-18カラム上で供し、MeCN/水性TFAで溶出して精製した(ELSD-MSでモニター観察した)。所望の生成物を含有するフラクションを合わせ、揮発性有機成分を窒素の流れを用いて除去した。得られた所望の生成物を含有する水溶液を窒素の流れの下で-78℃に冷却し、凍結乾燥させて(S)-1-(アミノオキシ)-33-カルボキシ-4,7,17,27,35-ペンタオキソ-11,14,21,24-テトラオキサ-3,8,18,28,34-ペンタアザドペンタコンタン-52-オン酸(39)(60.0mg、0.064ミリモル、収率61.3%)を白色の固体として得た。そのLC-CAD純度は分析用UHPLC-CAD条件Dを用いて98.0%であると決定された。[MH] 919.88、[M+2H]/2 460.69
【0429】
実施例7:細胞内cAMP蓄積アッセイ
【0430】
H2リラキシンの効果は、細胞型依存的であり、アデニレートシクラーゼ、タンパク質キナーゼA、タンパク質キナーゼC、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ、および細胞外シグナル調節キナーゼ(Erk1/2)を含みうる、細胞シグナル経路のコンビネーションの刺激をもたらす、その類似したGタンパク質結合受容体、リラキシンファミリーペプチド受容体(RXFP1)を介して媒介される。Bathgateら、2006. Pharmacol. Rev. 58, 7-31を参照のこと。本明細書において記載の細胞内cAMP蓄積アッセイを用いてリラキシンの生物活性および有効性を評価した。試験化合物は、WT-RLX(図1)、AQ1(図2)、およびBM25/AN1(図3)をベースとした。図示されるPK拡張部を、実施例3において記載されるオキシム連結を介してAQ1およびBM25/AN1に含有されるパラ-アセチル-フェニルアラニンとコンジュゲートさせた。
【0431】
ヒトRXFP1受容体(ローカス番号LOC59350)を安定して発現するCHO-K1細胞(ATCC;カタログ番号CRL-9618)(10,000個/ウェル)を96-ウェルプレートに置き、37℃、5%COで一夜培養した。その翌日に、ウェルから培地を除去し、リガンド(リラキシンポリペプチド)を50μLの緩衝液(1xHBSS、5mM HEPES(pH7.2)、0.5mM IBMX、0.1%BSA)中にて添加することで細胞を刺激し;インキュベーションを37℃で10分間行った。未刺激の細胞を対照基準として利用した。反応を終わらせ、細胞cAMPレベルを均質型時間分解蛍光測定(HTRF)ダイナミック2cAMPキット(CisBio、#62AM4PEC)を用い、製造業者のプロトコルに従って測定した。プレートをEnVision2104マルチラベルリーダー(PerkinElmer)を用いて分析した。665nmでの蛍光強度/620nmでの蛍光強度の割合x10,000の単位でシグナルを表現した。サンプル中のcAMPの濃度は、既知の濃度のcAMPより作成される標準曲線と比較することにより測定された。各リラキシンの効能は、10点の濃度応答曲線を用いて測定され、その測定は重複して行われた。データは、マイクロソフトエクセル、バージョン2013 XIフィットソフトウェア(Microsoft Excel, Version 2013 Xlfit software)を用いて分析された。応答が最大の半分である点での効果濃度50(EC50)値は、可変法面を考慮した、4パラメータロジスティックの式を用いて計算された(表3)。
【0432】
表3. 細胞内cAMP稚樹席アッセイの結果
この表で使用される略語は、dK:D-リシン;Sar:サルコシン(N-メチルグリシン);dGlu:D-グルタミン酸;20kDa PEG:ポリ(エチレングリコール)、20kDa分子量;PEGn(例えば、nは2、12、24、または36である):-(O-CH-CH-O-;-C13-:-(C=O)-(CH12-;-C14-:-(C=O)-(CH13-;-C15-:-(C=O)-(CH14-(これらの略語は、限定されないが、式Iの-Cn-の例示であるか、またはこれらの用語のこの表以外での使用を示す)である。表3にあるGluγ-C13-、Gluγ-C14-、Gluγ-C15-、およびGluγ-C17-において、脂肪酸の第1のカルボニル炭素は、アミド結合を介して(ガンマ)Glu残基と結合する。
【表4】
【表5】
【表6】
a リラキシンコンジュゲート AQ1-GGGGS-Gluγ(配列番号:139)-C14-COOHは、配列番号:35のリラキシンA鎖ポリペプチドおよび配列番号:6のリラキシンB鎖ポリペプチドを含み、ここで該リラキシンA鎖ポリペプチドのN-末端に位置する修飾パラ-アセチル-L-フェニルアラニンは、式IIIで示される、GGGGS-Gluγ(配列番号:139)-C14-COOHを含む、PKエンハンサーと連結する。
【化27】
【0433】
実施例8:インビボ薬物動態(PK)研究
【0434】
雄スプレーグドーリラット(n=3)に、適切な緩衝液(例えば、20mMヒスチジン、750mM NaCl、pH6.0)に処方された、単回静脈内(IV)または皮下(SC)用量(1mg/kg)のリラキシン構造物(上記の実施例7に記載)を投与した。血液サンプルを72時間までの異なる時点で頸静脈を通して採集した。血液サンプルを室温(30-60分間)で凝固させ、ついで4℃で遠心分離(1500-2000)に付して血清を得た。遠心分離の後、血清サンプルを96ウェルのプレートに移し、生物分析に付すまで-80℃で貯蔵した。リラキシン濃度をELISAにより血清より測定した。
【0435】
個々の動物から由来のリラキシン濃度-時間特性を分析に用いた。薬物動態変数は、ノンコンパートメント方法により、Phoenix WinNonlin(バージョン6.4)またはKinetica(バージョン5)を用いて計算された。平均薬物動態変数Cmax、AUCinf、C24および半減期が報告された(表4)
表4. インビボPKデータ(表3と同じ略語)
【表7】
【表8】
a 0.2mpkより調整
b 0.3mpkより調整
c 0.5mpkより調整
【0436】
実施例9:ラットの腎血流研究
【0437】
雄スプレーグドーリラット(約250-300g)をナトリウムペントバルビタール(50mg/kg)で麻酔処理に付し、気管にPE-205管を挿管し、気道開存性を維持し、加熱した外科用プレートを用いて温度を37℃に維持した。1.4F圧力カテーテル(Millar Inc.、Houston、TX)を右頸動脈に入れ、大動脈血圧を測定した。試験品を投与するために右頸静脈にPE-50管を挿管した。腹膜後方を切開することにより左腎臓を暴露させ、ドップラー(Doppler)フロープローブ(モデル0.5VB、Transonic System Inc.、Ithaca、NY)を左腎動脈に装着し、血流をモニター観察した。これらの外科的操作を完了した後に、ナトリウムペントバルビタール(15mg/kg、腹腔内)を補足した。10-15分間の平衡状態を維持した後に、リラキシンを注入ポンプ(Harvard Apparatus、Holliston、MA)を介して30秒間にわたって0.15~1.82mL/kgの投与容量にて1mg/kgで静脈内に投与した。血圧、心拍数および腎血流を、リラキシンを投与した後の45分間にわたって、LabChart 7-Proデータ取得ソフトウェア(ADInstruments、Dunedin、New Zealand)で作動するデスクトップ式コンピュータに接続したMillar MPVS Ultra Signal Conditioningユニットを用いて連続的に記録した(表5)。
【0438】
表5. ラット腎血流変化(表3と同じ略語)
【表9】
【表10】
a. 動物は化合物を投与した直後に死んだ。剖検により腎臓が淡色であることが示され、それは血流が完全に喪失されたことを意味する。
b. 化合物は難溶性であることが観察された。
【0439】
上記した表に示される結果は、コンジュゲート構造と位置および得られた腎血流との間の複雑な関連性を示唆する。WT-RLXは単独で腎血流を基線から約25%の増加を誘発し、それはリラキシンが付与する既知の血管活性と考えられた。リラキシンのアゴニストである、種々の試験化合物(実施例7を参照のこと)は、同様に腎血流の増加を誘発すると考えられる。しかしながら、意外にも、いくつかの化合物が腎血流の減少を誘発することが観察された。そのような腎血流の障害は、特に心不全、そのうち腎障害が観察されることも多い心不全において、臨床的に有意な禁忌でありうる。化合物のBM25/AN1、BM25/AN1-C13-CH3、BM25/AN1-PEG36-C13-CH3、BM25/AN1-PEG36-Glu-C13-CH3、AQ1、およびAQ1-Glu-C13-CH3はすべて腎血流の損傷をもたらした(上記の表5)。
【0440】
これらの結果は、予想外であり、予測不可能であった。構造的に関連する化合物は腎血流に対して分岐効果を示した。レベミル(LEVEMIR)(登録商標)は、糖尿病を治療するためにFDAで承認されている、市販の長時間作用型のインスリンであり、安全性が証明されている(NDA21-878、ノボノルディクス(Novo Nordisk)A/S、ページ1)、インスリン-C13-CH3コンジュゲートである。対照的に、レベミル(登録商標)と構造的に類似するBM25/AN1-C13-CH3の投与は、ラットにて致命的であり、剖検は腎血流が遮断されたことを示す淡色の腎臓を示した。加えて、A鎖の位置1にてパラ-アセチル-フェニルアラニンで単一のアミノ酸置換されている、AQ1リラキシンは、腎血流を減少させたが、その一方で同じ非天然のアミノ酸置換を有するが、20kDa PEGとコンジュゲートしている、AQ1-20kDa PEG化合物は腎血流を増加させた。さらには、BM25/AN1-PEG36-Glu-C13-CH3は腎血流を減少させたが、AQ1-PEG36-Glu-C13-CH3は腎血流を増加させた。腎血流の減少を引き起こす上記した数種の化合物は、末端がメチル基のPKエンハンサー、例えばBM25/AN1-C13-CH3、BM25/AN1-PEG36-C13-CH3、およびAQ1-Glu-C13-CH3を含有した。しかしながら、AQ1-EEEGGG-Gluγ-C15-CH3およびAQ1-PEG36-Glu-C13-CH3で治療した動物は良好な腎血流を示し、そのメチル基が必ずしも十分でない腎血流を惹起するものではないことを示した。対照的に、AQ1-GGGGS-Gluγ(配列番号:139)-C14-COOH、およびペプチド成分および-C13-COOH、-C14-COOHまたは-C15-COOHの脂肪酸を含むPKエンハンサーとコンジュゲートした他の試験AQ1リラキシンは、一般に、腎血流の改善を示した(上記の表5)。
【0441】
実施例10:ラット毒性研究
【0442】
AQ1-20kDa-PEGを、1、5、および15mg/kg/日の用量で10日間、皮下投与することによりラットに付与した。最後に投与した後、動物を殺し、解剖して腎臓の組織病理を行った。空胞が尿細管上皮細胞においてすべての用量で観察された(図7C)。対照的に、ビヒクル(10mMクエン酸塩緩衝液(pH5.5)中150mM Argを皮下的に10日間投与したラットの尿細管上皮細胞において空胞は観察されなかった(図7A)。
【0443】
AQ1-PEG36-Glu-C13-COOHを10および40mg/kg/日の用量で7日間皮下投与することによりラットに付与した。最後に投与した後、動物を殺し、解剖して腎臓の組織病理を行った。空胞が尿細管上皮細胞においてすべての用量で観察された(図7B)。
【0444】
AQ1-GGGGS-Gluγ(配列番号:139)-C14-COOHを、5、20および40mg/kg/日の用量で7日間皮下投与することにより、ラットに付与した。最後に投与した後、動物を殺し、解剖して腎臓の組織病理を行った。すべての用量で、尿細管上皮細胞は外観が正常であり、試験品と関連する空胞の証拠はなかった(図7D)。
【0445】
化合物AQ1-GGGGS-Gluγ(配列番号:139)-C14-COOHもまた良好な腎血流結果を示し(実施例9)、有益な溶解特性を示し(データは示さず)、粘度はAQ1-20kDa PEGよりも有意に低かった。
【0446】
実施例11:リラキシンのヒト原発性心臓線維芽細胞に対する効果
【0447】
原発性ヒト心臓線維芽細胞(NHCF-V)をロンザ(Lonza)、Fair Lawn、NJ(カタログ番号:CC-2904)より購入した。NHCF-V細胞を正常な成人の心臓細胞の心室より単離した。細胞は平滑筋α-アクチンについて陽性で染色し、90%のコラーゲンIおよび10%のフォン・ヴィレブランド因子VIIIを発現した。3ないし6代継体の細胞をリアルタイム定量逆転写-ポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)研究に用いた。細胞を10%FBS完全培地を含有するFGM(登録商標)-3BulletKit(登録商標)(カタログ番号:CC-4526、Lonza)で培養した。コンフルエンスした際に、細胞を分け、6ウェルのプレートにおいて完全培地中にて150,000個/ウェルの密度で24時間培養した。その後で細胞の培地を血清不含培地(カタログ番号CC-3131、線維芽細胞基底培地(Fibroblast Basal Medium)、Lonza)に変更して24時間経過した後、0.5ng/mLのTGF-β(カタログ番号:240-B、R & D Systems)の存在下にて、ヒトH2リラキシン(カタログ番号:3596-RN、R & D Systems)またはAQ1-GGGGS-Gluγ(配列番号:139)-C14-COOHを用いて別途さらに24時間処理した。TGF-β濃度をプロファイリングのために選択すること、および処理期間は、以前の報告に基づくものであった。6ウェルプレートの細胞を全RNA抽出およびqRT-PCR分析のために回収した。
【0448】
全RNAが、RNeasy Mini Kit(カタログ番号:74106、Qiagen)を用い、製造業者のプロトコル(ゲノムcDNAのカラム上での除去を含む)に従って抽出された。リアルタイムqRT-PCRを2段階方式で行った;cCDNA合成およびリアルタイム検出は、各々、PTC-100 Thermal Cycler(MJ Research)およびABI Prism 7700 Sequence Detectin System(Applied Biosystems)で実施された。TaqMan Universal PCR Master Mix(Applied Biosystems)をその後のPCR反応において製造業者のプロトコルに従って用いた。qRT-PCR反応はすべて重複して実施された。平滑筋アルファ-アクチン(センス:5’-AAATACTCTGTCTGGATCGGTGGCTCC-3’(配列番号:51);アンチセンス:5’-CACATAGGTAACGAGTCAGAGCTTTGGCTA-3’(配列番号:52))およびハウスキーピング遺伝子L30(センス:5’-GCTGGAGTCGATCAACTCTAGG-3'(配列番号:53);アンチセンス:5’-CCAATTTCGCTTTGCCTTGTC-3’(配列番号:54))に対する配列特異的プライマーは、公開された配列(www.ncbi.nlm.nih.gov)に基づき、Primer Express Version2ソフトウェア(Applied Biosystems)を用いて設計された。平滑筋アルファ-アクチンの発現レベルをハウスキーピング遺伝子L30の発現レベルに対して正常化した。AQ1-GGGGS-Gluγ(配列番号:139)-C14-COOHで処理したヒト心臓線維芽細胞を、スチューデントT-試験(Microsoft Excel、Version 2013)を用いてビヒクル処理の細胞との有意差について分析した(0.05のP値が有意であるとみなされる)。
【0449】
AQ1-GGGGS-Gluγ(配列番号:139)-C14-COOHは、TGF-β処理(0.5ng/mL;24時間)した初代ヒト心臓線維芽細胞において、プロ線維性遺伝子の発現を減少させることが証明された。図6A-6Bにて示されるように、遺伝子発現の減少は濃度依存的であり、ヒトH2リラキシンおよびAQ1-GGGGS-Gluγ(配列番号:139)-C14-COOHの両方について等しく確固たるものであった。AQ1-GGGGS-Gluγ(配列番号:139)-C14-COOHは、線維症、例えば、心臓線維症を治療するための抗線維化剤として使用されてもよい。
【0450】
実施例12:PKエンハンサーのさらなる実施例
【0451】
下記の表6に示されるようなPKエンハンサーを、一般に、上記した実施例4、5および6にて記載される方法に従って製造する。これらのPKエンハンサーは、実施例3にて記載の方法を用い、非自然コード化のアミノ酸を含む修飾リラキシンポリペプチドに(例えば、RLX-AQ1のようにA鎖の位置1で)コンジュゲートされ、実施例7-11に記載されるような、生物活性、薬物速度論的特性、腎血流での効果、空胞形成、および心臓線維芽細胞に対する効果についての試験を含め、特徴付けられる。
表6. 典型的なPKエンハンサー(略語は表3と同様、下記のとおり)
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
X=Gluγ、(D)-Gluγ、Aspα、Aspβ、(D)-Aspα、または(D)-Aspβ
Z=(D)-Gluγ、Aspα、Aspβ、(D)-Aspα、または(D)-Aspβ
FA=脂肪酸=例えば、特記されない限り、C13-COOH、C14-COOH、またはC15-COOH
【0452】
表7に示されるPKエンハンサーを、一般に、本明細書中の実施例3-6にて記載される方法に従って合成した。
これらのPKエンハンサーは、実施例3にて記載の方法を用い、非自然コード化のアミノ酸を含む修飾リラキシンポリペプチドに(例えば、RLX-AQ1のようにA鎖の位置1で)コンジュゲートされ、実施例7-11に記載されるような、生物活性、薬物速度論的特性、腎血流での効果、空胞形成、および心臓線維芽細胞に対する効果についての試験を含め、特徴付けられる。
表7. 典型的なPKエンハンサー(略語:N-MeK:6-N-メチルリシン;Dap:2,3-ジアミノプロピオン酸;他は表3と同様)
【表15】
【表16】
【0453】
本明細書にて記載される実施例および実施態様は単に例示を目的とするものに過ぎず、種々の修飾または変形が、そのことを考慮して当業者に示唆されること、ならびに本願の精神および権限の範囲内に、および添付される特許請求の範囲の範囲内に含まれるべきものであることが理解される。本明細書にて使用される用語は、単なる例示としての実施態様を記載する目的のためのものであり、本開示の範囲を限定することを意図とせず、それは添付した特許請求の範囲によってのみ限定されることも理解される。本願において引用される、あらゆる刊行物、特許、特許出願および/または他の文献は、仮に各々個々の刊行物、特許、特許出願および/または他の文献が、出典明示によりあらゆる目的のために本明細書の一部とすると個別的に示唆されるものであったとしても、出典明示によりあらゆる目的のために同程度で本明細書に組み込まれるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
0007372837000001.app