(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】紙容器に使用される縦シールテープ及び縦シールテープで縦シールした紙容器
(51)【国際特許分類】
C09J 7/35 20180101AFI20231025BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20231025BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20231025BHJP
B32B 27/28 20060101ALI20231025BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20231025BHJP
C09J 7/24 20180101ALI20231025BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20231025BHJP
C09J 123/02 20060101ALI20231025BHJP
B65D 65/40 20060101ALN20231025BHJP
【FI】
C09J7/35
B32B27/00 H
B32B27/18 Z
B32B27/28 102
B32B27/32 E
C09J7/24
C09J11/08
C09J123/02
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2020001757
(22)【出願日】2020-01-08
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000206163
【氏名又は名称】東洋平成ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074181
【氏名又は名称】大塚 明博
(74)【代理人】
【識別番号】100206139
【氏名又は名称】大塚 匡
(72)【発明者】
【氏名】佐瀬 和彦
(72)【発明者】
【氏名】宮川 茂和
(72)【発明者】
【氏名】古市 幸治
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-8230(JP,A)
【文献】特開2002-12216(JP,A)
【文献】特開2010-137895(JP,A)
【文献】特開2010-42841(JP,A)
【文献】特開2001-354916(JP,A)
【文献】特表2008-512317(JP,A)
【文献】国際公開第2017/164190(WO,A1)
【文献】特開平11-235768(JP,A)
【文献】特開平4-339753(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 27/18
B32B 27/28
B32B 27/00
B32B 27/32
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板紙をベース層とし、熱融着性合成樹脂層を表裏両面の最外層とする帯状の包材の長手方向(縦方向)の両縁部を重ね合わせて熱融着することにより包材チューブを形成する工程を経て成形される紙容器の縦方向の継ぎ目を被覆して縦シールするために使用される縦シールテープであって、
ガスバリアー性樹脂層を芯層とし、ガスバリアー性樹脂層の両面に接着樹脂層を介して熱融着性合成樹脂層を積層した積層構造を有し、前記接着樹脂層および/または熱融着性合成樹脂層を形成する接着樹脂に振動吸収材が添加されていることを特徴とする紙容器で使用される縦シールテープ。
【請求項2】
前記振動吸収材は、エラストマーであることを特徴とする請求項1に記載の紙容器で使用される縦シールテープ。
【請求項3】
前記エラストマーは、オレフィン系エラストマーまたはスチレン系エラストマーであることを特徴とする請求項2に記載の紙容器で使用される縦シールテープ。
【請求項4】
前記接着樹脂層を形成する接着樹脂は、ポリエチレン樹脂またはポリプロピレン樹脂であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の紙容器で使用される縦シールテープ。
【請求項5】
前記ガスバリアー性樹脂層を形成するガスバリアー性樹脂は、エチレン-ビニルアルコール共重合体であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の紙容器で使用される縦シールテープ。
【請求項6】
板紙をベース層とし、熱融着性合成樹脂層を表裏両面の最外層とする帯状の包材の長手方向(縦方向)の両縁部を重ね合わせて熱融着することにより包材チューブを形成する工程を経て成形される紙容器であって、
前記包材チューブ内面の前記包装材料素材の両縁部の縦方向継ぎ目が、ガスバリアー性樹脂層を芯層とし、ガスバリアー性樹脂層の両面に接着樹脂層を介して熱有着性合成樹脂層を積層した積層構造を有し、前記接着樹脂層および/または熱融着性合成樹脂層を形成する接着樹脂に振動吸収材が添加されている縦シールテープによって被覆されて縦シールが施されていることを特徴とする紙容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板紙をベース層とし、熱融着性合成樹脂層を表裏両面の最外層とする帯状の包材の長手方向(縦方向)の両縁部を重ね合わせて熱融着することにより包材チューブを形成する工程を経て成形される紙容器の内面に露出ずる縦方向の継ぎ目を被覆するために使用する縦シールテープ、及びこの縦シールテープで縦シールした紙容器に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料等を収容する紙容器の技術分野において、シール部に用いられ、その継ぎ目を被覆するためのシールテープとしては、低密度ポリエチレン(以下、LDPEと称する。)樹脂を単独に、或いはLDPE樹脂と直鎖状低密度ポリエチレン(以下、LLDPEと称する。)樹脂とのブレンド品、又はLDPE樹脂と高密度ポリエチレン(以下、HDPEと称する。)樹脂とのブレンド品を用いたLDPE樹脂を主体とするポリエチレン樹脂層を表裏両面の最外層とし、HDPE樹脂、延伸ポリエチレン・テレフタレート(以下、PETと称する。)樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体ケン化物(以下、EVOHと称する。)樹脂或いは非晶性コポリエステル樹脂等の材料を用いたガスバリアー性樹脂層を芯層として、芯層と表裏両面の最外層とを、ドライラミネーション法又は押出しラミネーション法によって貼り合わせた3層テープ等が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
こうしたシールテープを、板紙をベース層とし、表裏両面の少なくとも最外層が熱融着性合成樹脂層からなる帯状の包装材料素材(以下、包材と称する。)の長手方向両縁部同士を重ね合わせて縦シールする縦シールテープとして用い、できた包材チューブを紙容器1個分の距離をおいて一定幅を横シールしつつ中身の飲料等を充填し、該横シール領域の中間部を切断して分離して、煉瓦型等の最終形態にしてなるものがある。
上記した包材の長手方向両縁部同士の縦シールと包材チューブの横シールにあって、包材チューブの横シールは、その殆どが高周波溶着によって行われているが、一部超音波溶着や熱シール等によって行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
超音波溶着によるシールは、溶着時間と超音波振動と加圧力によって左右され、発振器の出力を上げ振動回数を高めることにより溶着時間を短縮できる。このため、紙容器の製造効率を高めるためには包材チューブの横シールを行う発振器の出力を上げればよい。
しかし、発振器の出力を上げると、振動が中央部に集中し、包材の長手方向両縁部を重ね合わせた継ぎ目を被覆している縦シールテープは、包材の長手方向両縁部の内面側の端部で強い振動を受けることになり、この振動でガスバリアー性樹脂層が薄くなり破断してしまう場合がある。ガスバリアー性樹脂層が破断すると、破断部が経路となって内容液が漏れてしまうおそれがある。
【0006】
このような事態を解決する手段として、ガスバリアー性樹脂層の両面に、例えば、ナイロンフィルムを積層して縦シールテープの強度をアップさせ、ガスバリアー性樹脂層の破断を防ぐことが考えられる。
しかし、縦シールテープの強度をアップさせると、超音波溶着による横シール時に縦シールテープの両側端部を十分に加圧できなくなり、縦シールテープの両側端部と包材との間に微細な空隙が発生してしまい、この空隙が経路となって内容液が漏れてしまうおそれがある。
【0007】
本発明者等は、高出力で発振した超音波振動によるシールで、漏れが生じないように横シールすることができるようにするために、試験、研究を重ねた結果、縦シールテープに振動を吸収し減衰させる作用を持たせることに着眼し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明の目的は、高出力で発振した超音波振動によるシールで、漏れの生じないように横シールすることができるようにした紙容器で使用される縦シールテープ及び縦シールテープで縦シールした紙容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、板紙をベース層とし、熱融着性合成樹脂層を表裏両面の最外層とする帯状の包材の長手方向(縦方向)の両縁部を重ね合わせて熱融着することにより包材チューブを形成する工程を経て成形される紙容器の縦方向の継ぎ目を被覆して縦シールするために使用される縦シールテープであって、ガスバリアー性樹脂層を芯層とし、ガスバリアー性樹脂層の両面に接着樹脂層を介して熱融着性合成樹脂層を積層した積層構造を有し、前記接着樹脂層および/または熱融着性合成樹脂層を形成する接着樹脂に振動吸収材が添加されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の、前記振動吸収材は、エラストマーであることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の、前記エラストマーは、オレフィン系エラストマーまたはスチレン系エラストマーであることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の、前記接着樹脂層を形成する接着樹脂は、ポリエチレン樹脂またはポリプロピレン樹脂であることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載の、前記ガスバリアー性樹脂層を形成するガスバリアー性樹脂は、エチレン-ビニルアルコール共重合体であることを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、板紙をベース層とし、熱融着性合成樹脂層を表裏両面の最外層とする帯状の包材の長手方向(縦方向)の両縁部を重ね合わせて熱融着することにより包材チューブを形成する工程を経て成形される紙容器であって、前記包材チューブ内面の前記包装材料素材の両縁部の縦方向継ぎ目が、ガスバリアー性樹脂層を芯層とし、ガスバリアー性樹脂層の両面に接着樹脂層を介して熱融着性合成樹脂層を積層した積層構造を有し、前記接着樹脂層および/または熱融着性合成樹脂層を形成する接着樹脂に振動吸収材が添加されている縦シールテープによって被覆されて縦シールが施されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る紙容器に使用される縦シールテープによれば、ガスバリアー性樹脂層を芯層とし、ガスバリアー性樹脂層の両面に接着樹脂層を介して熱融着性合成樹脂層を積層した積層構造を有し、接着樹脂層および/または熱融着性合成樹脂層を形成する接着樹脂に振動吸収材が添加されているので、包材チューブの横シールが発振器から高出力で発振された超音波による溶着によるシールであっても、発振器から高出力で発振された超音波振動が振動吸収材で吸収されて減衰し、ガスバリアー性樹脂層の破断を発生させることなくシールすることができることになり、これにより紙容器の製造効率の向上を図ることができる。
【0016】
そして、振動吸収材が添加された接着樹脂で形成された接着樹脂層および/または熱融着性合成樹脂層による縦シールテープの強度のアップは僅かであり、超音波溶着による横シール時に縦シールテープの両側端部を十分に加圧でき、縦シールテープの両側端部と包材との間を埋めることができるのでシールの完全性を得ることができる。
【0017】
また、上記の縦シールテープで縦シールした紙容器によれば、縦シールテープのガスバリアー性樹脂層が破断していないので、液漏れの無い縦シールテープ付紙容器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る紙容器で使用される縦シールテープの実施の形態の一例を示す拡大断面図である。
【
図2】
図1に示す縦シールテープで縦シールして形成した包材チューブを横シールした包材チューブを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1乃至
図3は、本発明に係る紙容器で使用される縦シールテープの実施の形態の一例を示すものであり、
図1は本例の縦シールテープを示す拡大断面図、
図2は
図1に示す縦シールテープで縦シールして形成した包材チューブを横シールした包材チューブを示す説明図、
図3は
図2のX-X線一部拡大断面説明図である。
【0020】
本例の縦シールテープ1は、板紙をベース層2とし、熱融着性合成樹脂層3,4を表裏両面の最外層とする帯状の包材5の長手方向(縦方向)の両縁部5a、5bを重ね合わせて熱融着することにより包材チューブ6を形成する工程を経て成形される紙容器7の縦方向の継ぎ目を被覆して縦シールするために使用されるものであり、ガスバリアー性樹脂層8を芯層とし、ガスバリアー性樹脂層8の両面に接着樹脂層9,10を介して熱融着性合成樹脂層11,12を積層した積層構造を有し、接着樹脂層9,10および/または熱融着性合成樹脂層11,12を形成する接着樹脂には振動吸収材が添加されている。
【0021】
芯層となるガスバリアー性樹脂層8は、エチレン-ビニル共重合体(以下、EVOH樹脂という。)、延伸ポリエチレン・テレフタレート樹脂(以下、PET樹脂と言う。)、非晶性コポリエステル樹脂等によって形成することができる。 本例では、EVOH樹脂を使用している。また、ガスバリアー性樹脂層2の厚みは、必要とされるガスバリアー性を発揮できるだけの厚みとすればよい。本例では25μmとなっている。
【0022】
ガスバリアー性樹脂層8の両面に接着樹脂層9,10を介して積層した熱融着性合成樹脂層11,12は、低密度ポリエチレン樹脂(以下、LDPE樹脂という。)や直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(以下、LLDPE樹脂という。)、またはLDPE樹脂とLLDPE樹脂とのブレンド品、もしくはLDPE樹脂と高密度ポリエチレン樹脂(以下、HDPE樹脂という。)とのブレンド品を用いたLDPE樹脂を主体とするポリエチレン樹脂によって形成することが好ましい。
【0023】
この熱融着性合成樹脂層11,12の厚みにあては、特に規定しないが、薄すぎるとシール不良が生じたり、厚すぎると経済性を損ねたり、機械適正が損なわれたりするので、20μm~60μm程度の厚みが好ましい。
【0024】
ガスバリアー性樹脂層8と熱融着性合成樹脂層11,12の間に積層される接着樹脂層9,10は、ポリエチレン樹脂またはポリプロピレン樹脂で形成されおり、特にHDPE樹脂が好ましい。本例では、HDPE樹脂によって形成されている。
【0025】
そして、接着樹脂層9,10および/または熱融着性合成樹脂層11,12を形成する接着樹脂には振動吸収材が添加されている。振動吸収材としては、接着樹脂層9,10および/または熱融着性合成樹脂層11,12に海島状に微分散するゴム成分であれば特に限定されない。
接着樹脂層9,10や熱融着性合成樹脂層11,12を形成するポリエチレン樹脂またはポリプロピレン樹脂に微分散するゴム成分としては、熱可塑性エラストマーであるオレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマーが使いやすい。
また、臭気や味、溶出などの内容物適性、安全性の点からもオレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマーが好適である。
本例では、接着樹脂層9,10を形成する接着樹脂に振動吸収材が添加されているが、熱融着性合成樹脂層11,12を形成する接着樹脂に振動吸収材が添加されていてもよく、また、接着樹脂層9,10および熱融着性合成樹脂層11,12を形成するそれぞれの接着樹脂に振動吸収材が添加されていてもよい。
る。
【0026】
接着樹脂層9,10の厚みについては特に規定しないが、薄すぎると部分的な膜抜けが起こったり、厚すぎると経済性を損ねたりするので、3μm~20μm程度の厚みが好ましい。
【0027】
このように構成された本発明に係る紙容器に使用される縦シールテープによれば、ガスバリアー性樹脂層8を芯層とし、ガスバリアー性樹脂層8の両面に接着樹脂層9,10を介して熱融着性合成樹脂層11,12を積層した積層構造を有し、接着樹脂層9,10および/または熱融着性合成樹脂層11,12を形成する接着樹脂には振動吸収材が添加されているので、包材チューブ6の横シールAが発振器から高出力で発振された超音波による溶着によるシールであっても、発振器から高出力で発振された超音波振動が振動吸収材で吸収されて減衰し、ガスバリアー性樹脂層8の破断を発生させることなくシールすることができる。
【0028】
本例では、接着樹脂層9,10および/または熱融着性合成樹脂層11,12を形成する接着樹脂に添加する振動吸収材として、接着樹脂内での微分散性がよいエラストマーが使用されているので、接着樹脂層9,10に均一した振動吸収性が備わるものとなる。
【0029】
また、振動吸収材が添加された接着樹脂で形成された接着樹脂層9,10および/または熱融着性合成樹脂層11,12による縦シールテープ1の強度のアップは僅かであり、超音波溶着による横シール時に縦シールテープ1の両側端部1a、1bを十分に加圧でき、縦シールテープ1の両側端部1a、1bと包材5との間を埋めることができるのでシールの完全性を得ることができる。
【0030】
また、上記の縦シールテープ1で縦シールBをした紙容器7によれば、縦シールテープ1のガスバリアー性樹脂層8が破断していないので、液漏れの無い縦シールテープ付紙容器を得ることができる。
【符号の説明】
【0031】
1 縦シールテープ
1a、1b 縦シールテープの側端部
2 ベース層
3,4 熱融着性合成樹脂層
5 包材
5a,5b 縁部
6 包材チューブ
8 ガスバリアー性樹脂層
9,10 接着樹脂層
11,12 熱融着性合成樹脂層
A 横シール
B 縦シール