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  • 特許-空気入りタイヤ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 9/00 20060101AFI20231025BHJP
   B60C 9/18 20060101ALI20231025BHJP
   B60C 9/20 20060101ALI20231025BHJP
   D02G 3/48 20060101ALI20231025BHJP
   D02G 3/04 20060101ALI20231025BHJP
   D06M 13/152 20060101ALI20231025BHJP
   D06M 13/12 20060101ALI20231025BHJP
   D06M 101/36 20060101ALN20231025BHJP
【FI】
B60C9/00 A
B60C9/00 D
B60C9/00 G
B60C9/18 H
B60C9/18 K
B60C9/20 C
B60C9/20 D
D02G3/48
D02G3/04
D06M13/152
D06M13/12
D06M101:36
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020042226
(22)【出願日】2020-03-11
(65)【公開番号】P2021142851
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】山本 雅彦
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/035940(WO,A1)
【文献】特開2009-046116(JP,A)
【文献】特開2006-111072(JP,A)
【文献】特表2017-512262(JP,A)
【文献】特表2014-528970(JP,A)
【文献】特表2016-528337(JP,A)
【文献】特開2007-283827(JP,A)
【文献】特開2008-087243(JP,A)
【文献】特開2006-224729(JP,A)
【文献】特開2004-284375(JP,A)
【文献】国際公開第2019/117010(WO,A1)
【文献】特表2014-525973(JP,A)
【文献】特表2019-518087(JP,A)
【文献】国際公開第2012/112240(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107653677(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 9/00
B60C 9/18-9/22
D02G 3/04
D02D 3/48
D06M 13/12
D06M 13/152
D06M 101/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
5層以上のベルト層からなるベルトを備え、
前記ベルト層のうち少なくとも1層は、ベルトコードのゴム引き層がタイヤ周方向に螺旋状に巻回された状態である、スパイラルベルト層であり、
前記ベルト層のうち少なくとも1層は、ベルトコードがタイヤ周方向に対して傾斜して延びる、傾斜ベルト層であり、
前記ベルト層の前記ベルトコードは、有機繊維コードであり、
前記有機繊維コードは、ポリフェノール類及びアルデヒド類を含む接着剤組成物がコーティングされており、
前記スパイラルベルト層を1層のみ有し、前記スパイラルベルト層が、前記ベルト層のうちタイヤ径方向最内層に配置されていることを特徴とする、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記傾斜ベルト層は、前記ベルトコードをゴム被覆したストリップ部材が、一方のタイヤ幅方向端から他方のタイヤ幅方向端に向かって延在し、他方のタイヤ幅方向端で折り返されて、他方のタイヤ幅方向端から一方のタイヤ幅方向端に向かって延在し、一方のタイヤ幅方向端で折り返されて、一方のタイヤ幅方向端から他方のタイヤ幅方向端に向かって延在することが繰り返されるように、タイヤ周方向に螺旋状に巻回された状態である、エンドレスベルト層である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記有機繊維コードは、少なくともアラミド繊維を含む、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記有機繊維コードは、2種の有機繊維からなるフィラメントを撚り合わせてなるハイブリッドコードである、請求項1~3のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記有機繊維コードは、アラミド繊維とナイロン繊維とを撚り合わせてなるハイブリッドコードである、請求項4に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記ポリフェノール類は、3つ以上の水酸基を有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記アルデヒド類は、2つ以上のアルデヒド基を有することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記傾斜ベルト層の層数は、1~7層である、請求項1~のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
航空機用である、請求項1~のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル繊維等の有機繊維は、高い初期弾性率や、優れた熱時寸法安定性を有しているため、フィラメント、コード、ケーブル、コード織物、帆布等の形態で、タイヤ等のゴム物品の補強材として極めて有用である。従来、これらの有機繊維をタイヤのコードとして用いるに際して、コードとゴムとの接着性を改良させるための、種々の接着剤組成物が提案されている。接着剤組成物として、例えば、レゾルシン、ホルマリン、及びゴムラテックス等を含むRFL(レゾルシン・ホルマリン・ラテックス)接着剤を用い、該RFL接着剤を熱硬化させることにより接着力を確保する技術が知られている(例えば、特許文献1~3等を参照)。また、接着剤組成物については、レゾルシンとホルマリンとを初期縮合させたレゾルシンホルマリン樹脂を用いる技術(特許文献4、5参照)や、エポキシ樹脂でポリエステル繊維等からなるタイヤコードを前処理することにより、接着力の向上を図る技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭58-2370号公報
【文献】特開昭60-92371号公報
【文献】特開昭60-96674号公報
【文献】特開昭63-249784号公報
【文献】特公昭63-61433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した接着剤組成物に一般的用いられているレゾルシンは、近年、作業環境を考慮して、使用量の削減が求められている。そこで、レゾルシンを用いずともコードとゴムとの接着力を確保できることが望まれる。
【0005】
また、環境への配慮からタイヤ資源を有効に使うため、タイヤの耐久性を向上させることも望まれる。従って、レゾルシンを用いず作業環境を改善しても接着力を確保でき、その結果、タイヤの耐久性も向上させることが望ましい。
【0006】
そこで、本発明は、有機繊維コードにコーティングされる接着剤組成物にレゾルシンが含まれず、環境への負荷が少ないことに加えて、耐久性を向上させることができる、空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨構成は、以下の通りである。
(1)5層以上のベルト層からなるベルトを備え、
前記ベルト層のうち少なくとも1層は、ベルトコードのゴム引き層がタイヤ周方向に螺旋状に巻回された状態である、スパイラルベルト層であり、
前記ベルト層のうち少なくとも1層は、ベルトコードがタイヤ周方向に対して傾斜して延びる、傾斜ベルト層であり、
前記ベルト層の前記ベルトコードは、有機繊維コードであり、
前記有機繊維コードは、ポリフェノール類及びアルデヒド類を含む接着剤組成物がコーティングされていることを特徴とする、空気入りタイヤ。
【0008】
(2)前記傾斜ベルト層は、前記ベルトコードをゴム被覆したストリップ部材が、一方のタイヤ幅方向端から他方のタイヤ幅方向端に向かって延在し、他方のタイヤ幅方向端で折り返されて、他方のタイヤ幅方向端から一方のタイヤ幅方向端に向かって延在し、一方のタイヤ幅方向端で折り返されて、一方のタイヤ幅方向端から他方のタイヤ幅方向端に向かって延在することが繰り返されるように、タイヤ周方向に螺旋状に巻回された状態である、エンドレスベルト層である、上記(1)に記載の空気入りタイヤ。
【0009】
(3)前記有機繊維コードは、少なくともアラミド繊維を含む、上記(1)又は(2)に記載の空気入りタイヤ。
【0010】
(4)前記有機繊維コードは、2種の有機繊維からなるフィラメントを撚り合わせてなるハイブリッドコードである、上記(1)~(3)のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【0011】
(5)前記有機繊維コードは、アラミド繊維とナイロン繊維とを撚り合わせてなるハイブリッドコードである、上記(4)に記載の空気入りタイヤ。
【0012】
(6)前記ポリフェノール類は、3つ以上の水酸基を有することを特徴とする、上記(1)~(5)のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【0013】
(7)前記アルデヒド類は、2つ以上のアルデヒド基を有することを特徴とする、上記(1)~(6)のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【0014】
(8)前記スパイラルベルト層の層数は、1~7層である、上記(1)~(7)のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【0015】
(9)前記傾斜ベルト層の層数は、1~7層である、上記(1)~(8)のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【0016】
(10)前記スパイラルベルト層が、前記ベルト層のうちタイヤ径方向最内層に配置される、上記(1)~(9)のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【0017】
(11)航空機用である、上記(1)~(10)のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、有機繊維コードにコーティングされる接着剤組成物にレゾルシンが含まれず、環境への負荷が少ないことに加えて、耐久性を向上させることができる、空気入りタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態にかかる空気入りタイヤのタイヤ幅方向断面図である。
図2】傾斜ベルト層の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に例示説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態にかかる空気入りタイヤのタイヤ幅方向断面図である。本実施形態では、空気入りタイヤは、航空機用空気入りラジアルタイヤであり、航空機の荷重を支持するように構成されている。
【0022】
図1に示すように、このタイヤ1は、一対のビード部2にそれぞれ埋設された一対のビードコア2a間にトロイダル状に跨るカーカス3のクラウン部のタイヤ径方向外側に、5層以上のベルト層(図示例では6層のベルト層5a~5f)からなるベルト4と、ベルト4のタイヤ径方向外側に配置されたトレッド5と、を備えている。
【0023】
図1に示すように、本例のタイヤは、一対のビード部2にそれぞれ埋設されたビードコア2aを有している。図示例では、ビードコア2aは、環状のケーブルビードからなる。図示例では、ビードコア2aは、断面円形状である。ビードワイヤは、例えば、高炭素の鋼線を用いることができる。
【0024】
また、本例では、ビードコア2aのタイヤ径方向外側にビードフィラー2bが配置されている。図示例では、ビードフィラー2bは、タイヤ径方向内側から外側に向かって、タイヤ幅方向の幅が先細りする、断面略三角形状をなしているが、ビードフィラー2bは、様々な断面形状とすることができる。ビードフィラー2bは、例えば、1種類以上の任意の既知の硬ゴムを用いることができる。
【0025】
また、図1に示すように、本例のタイヤは、2枚以上のカーカスプライからなるカーカス3(ラジアルカーカス)を備えている。カーカスプライの枚数は、2枚以上であれば特には限定されず、例えば3枚~8枚、あるいはそれ以上の枚数とすることもできる。本例では、カーカスプライは、6層~8層である。カーカス3は、一対のビードコア2a間をトロイダル状に跨るように延びている。図示例では、カーカスは、一対のビードコア2a間をトロイダル状に跨るように延びるカーカス本体部及び該カーカス本体部から延びてビードコア2a周りにタイヤ幅方向内側から外側に折り返されたカーカス折り返し部を有する。なお、適宜、1枚以上のカーカスプライを一対のビードコア2a間をトロイダル状に跨るように延びるカーカス本体部のみからなるダウンプライとすることもできる。図示は省略するが、2枚以上のカーカスプライの端のタイヤ径方向位置は、端に起因する故障の発生を抑制する観点からは異ならせることが好ましく、一方で、同じとすることもできる。カーカスコードには、有機繊維コードを用いることができ、例えばナイロン繊維からなるコードを用いることができ、あるいは、2種の有機繊維コードを撚り合わせてなるハイブリッドコードを用いることもできる(例えば、アラミド繊維とナイロン繊維とのハイブリッドコード)。
【0026】
ベルト4は、5層以上のベルト層からなる。図示例では、ベルト4は、6層のベルト層4a~4fから構成され、タイヤ径方向内側から順に、ベルト層4a、4b、4c、4d、4e、4fの順に積層されている。
【0027】
ここで、ベルト層のうち少なくとも1層は、ベルトコードのゴム引き層がタイヤ周方向に螺旋状に巻回された状態である、スパイラルベルト層である。図示例では、ベルト層4aの1層がスパイラルベルト層である。
【0028】
図2は、傾斜ベルト層の構成を示す平面図である。ベルト層のうち少なくとも1層は、ベルトコードがタイヤ周方向に対して(例えば2~40°の傾斜角度で)傾斜して延びる、傾斜ベルトである。より具体的には、図2に示すように、本例では、ベルト層のうち少なくとも1層は、ベルトコードのゴム被覆したストリップ部材51が、一方のタイヤ幅方向端から他方のタイヤ幅方向端に向かって延在し、他方のタイヤ幅方向端で折り返されて、他方のタイヤ幅方向端から一方のタイヤ幅方向端に向かって延在し、一方のタイヤ幅方向端で折り返されて、一方のタイヤ幅方向端から他方のタイヤ幅方向端に向かって延在することが繰り返されるように、タイヤ周方向に螺旋状に巻回された状態である、エンドレスベルト層である。図示例では、ベルト層4b~4fの5層が、エンドレスベルト層である。なお、エンドレスベルト層は、タイヤ幅方向両端に有機繊維コードの裁断面が無いことから、無端ベルト層とも呼ばれている。
【0029】
ここで、各ベルト層4a~4fのベルトコードは、有機繊維コードであり、該有機繊維コードは、ポリフェノール類及びアルデヒド類を含む接着剤組成物がコーティングされている。本例では、有機繊維コードは、少なくともアラミド繊維を含む。また、有機繊維コードは、2種の有機繊維からなるフィラメントを撚り合わせてなるハイブリッドコードである。具体的には、本例では、有機繊維コードは、アラミド繊維とナイロン繊維とを撚り合わせてなるハイブリッドコードである。ポリフェノール類及びアルデヒド類についての説明等の有機繊維コードの説明は後述し、他のタイヤ内部構造について先に説明する。
【0030】
ベルト構造は、図1に示した実施形態の例には何ら限定されず、5層以上のベルト層からなり、ベルト層のうち少なくとも1層が上記のスパイラルベルト層であり、またベルト層のうち少なくとも1層が上記の傾斜ベルト層(例えばエンドレスベルト層)であり、またベルト層のベルトコードは、有機繊維コードであり、有機繊維コードは、ポリフェノール類及びアルデヒド類を含む接着剤組成物がコーティングされているのであれば良い。5層以上のベルト層のタイヤ幅方向の幅は、適宜設定することができ、各ベルト層の間での幅の大小関係も特には限定されない。以下、いくつかのベルト構造の変形例を例示するが、これらのベルト構造に限定されない。
【0031】
(i)例えば、上記の例において、傾斜ベルト層(例えばエンドレスベルト層)の層数を6層~9層とすることもできる。あるいは、(ii)例えば、上記の例において、カーカスコードをアラミド繊維とナイロン繊維とを撚り合わせてなるハイブリッドコードとすることもできる。あるいは、(iii)例えば、傾斜ベルト層(例えばエンドレスベルト層)のタイヤ径方向内側及び外側にスパイラルベルト層が配置された構成とすることもでき、一例としては、2層のスパイラルベルト層のタイヤ径方向外側に、4層の傾斜ベルト層(例えばエンドレスベルト層)が配置され、該傾斜ベルト層(例えばエンドレスベルト層)のタイヤ径方向外側に、3層のスパイラルベルト層が配置された構成とすることができる。あるいは、(iv)例えば、アラミド繊維からなるベルトコードを用いた6層のスパイラルベルト層のタイヤ径方向外側に、アラミド繊維からなるベルトコードを用いた2層の傾斜ベルト層(例えばエンドレスベルト層)を配置した構成とすることができる。あるいは、(v)例えば、1層のスパイラルベルト層のタイヤ径方向外側に、6層の傾斜ベルト層(例えばエンドレスベルト層)が配置された構成とすることができ、あるいは、(vi)例えば、2層のスパイラルベルト層のタイヤ径方向外側に4層の傾斜ベルト層(例えばエンドレスベルト層)が配置された構成とすることができ、あるいは、(vii)6層のスパイラルベルト層のタイヤ径方向外側に、2層の傾斜ベルト層(例えばエンドレスベルト層)が配置された構成とすることもできる。
なお、いずれの例の場合も、カーカスプライのコードの材質や枚数は特に限定されない。
【0032】
また、タイヤ1は、インナーライナー(図示せず)を有している。インナーライナーは、タイヤ1の内面を覆うように配置されている。
【0033】
次に、ベルトコードとゴムとの接着剤に用いている接着剤組成物のポリフェノール類及びアルデヒド類について説明する。
【0034】
(ポリフェノール類)
接着剤組成物は、樹脂成分としてポリフェノール類を含む。接着剤組成物中にポリフェノール類を含むことで、樹脂組成物の接着性を高めることができる。ここで、ポリフェノール類については、水溶性のポリフェノール類であり、レゾルシン(レゾルシノール)以外のポリフェノールであれば限定はされず、芳香族環の数や、水酸基の数についても、適宜選択することができる。また、ポリフェノール類は、より優れた接着性を実現する観点からは、2個以上の水酸基を有することが好ましく、3つ以上の水酸基を有することがより好ましい。3つ以上の水酸基を含むことにより水分を含む接着剤組成物液によりポリフェノールあるいはポリフェノールの縮合物は水溶することで接着剤組成物内に均一して分布できるので、より優れた接着性を実現できる。さらに、ポリフェノール類が、複数個(2個以上)の芳香環を含むポリフェノールの場合、それらの芳香環では、各々、2個又は3個の水酸基がオルト、メタ又はパラ位に存在する。
【0035】
上述した3つ以上の水酸基を有するポリフェノール類としては、例えば以下に示すポリフェノール類が挙げられる。
フロログルシノール:
【化1】
モリン(2’,4’,3,5,7-ペンタヒドロキシフラボン):
【化2】
フロログルシド(2,4,6,3,’5’-ビフェニルペントール):
【化3】
【0036】
(アルデヒド類)
接着剤組成物は、上述したポリフェノール類に加えて、樹脂成分としてアルデヒド類を含む。接着剤組成物中にアルデヒド類を含有することで、上述したポリフェノール類と共に高い接着性を実現できる。ここで、アルデヒド類については、特に限定はされず、要求される性能に応じて、適宜選択することができる。なお、アルデヒド類が発生源であるルデヒド類の誘導体も、アルデヒド類の範囲に含まれる。アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、アクロレイン、プロピオンアルデヒド、クロラール、ブチルアルデヒド、カプロアルデヒド、アリルアルデヒド等のモノアルデヒドや、グリオキザール、マロンアルデヒド、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、アジポアルデヒド等の脂肪族ジアルデヒド類、芳香族環を有するアルデヒド、ジアルデヒドデンプンなどが挙げられる。これらのアルデヒド類は、一種類を用いても、複数種を混合して用いてもよい。これらの中でも、アルデヒド類は、芳香族環を有するアルデヒド類を含有することが好ましい。より優れた接着性を得ることができるためである。なお、アルデヒド類については、ホルムアルデヒドを含まないことが好ましい。なお、本発明において「ホルムアルデヒドを含まない」とは、アルデヒド類の総質量に基づくホルムアルデヒドの質量含有量が0.5質量%未満であることを意味する。
【0037】
また、芳香環を有するアルデヒド類は、1分子内に、少なくとも1つの芳香環を含み、少なくとも 1つのアルデヒド基を有する芳香族アルデヒドである。芳香環を有するアルデヒド類は、環境への負荷が少なく、また、優れた機械的強度、電気絶縁性、耐酸性、耐水性、耐熱性等を備えた、比較的安価な樹脂を形成することができる。また、芳香族環を有するアルデヒド類は、より優れた接着性を実現する観点からは、2つ以上のアルデヒド基を有することが好ましい。アルデヒド類が、複数のアルデヒド基により架橋し、縮合することによって、熱硬化性樹脂の架橋度を高くすることができるため、接着性をより高めることができる。さらに、アルデヒド類が、2つ以上のアルデヒド基を有する場合、1つの芳香族環において、2つ以上のアルデヒド基が存在することがより好ましい。なお、各アルデヒド基は、1つの芳香族環において、オルト、メタ又はパラの位置に存在することができる。このようなアルデヒド類としては、例えば、1,2-ベンゼンジカルボキサルデヒド、1,3-ベンゼンジカルボキサルデヒド、1,4-ベンゼンジカルボアルデヒド1,4-ベンゼンジカルボアルデヒド、2-ヒドロキシベンゼン-1,3,5-トリカルボアルデヒド、これらの化合物の混合物等が挙げられる。
【0038】
これらの中でも、より優れた接着性を実現できる観点から、芳香族環を有するアルデヒド類として、1,4-ベンゼンジカルボアルデヒドを少なくとも用いることが好ましい。
【化4】
【0039】
また、芳香族環を有するアルデヒド類については、ベンゼン環を有するものだけでなく、複素芳香族化合物も含まれる。複素芳香族化合物であるアルデヒド類としては、例えば、以下に示すようなフラン環を有するアルデヒド類が挙げられる。
【化5】
(式中、Xは、Oを含み;Rは、-Hまたは-CHOを示す。)
【0040】
上記のフラン環を有するアルデヒド類として、例えば、以下の化合物が挙げられる。
【化6】
(記式中、Rは、-Hまたは-CHO;R1、R2及びR3は、それぞれ、アルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール又はシクロアルキル基を示す。)
【0041】
なお、接着剤組成物では、ポリフェノール類及びアルデヒド類が縮合された状態であり、ポリフェノール類と芳香環を有するアルデヒド類との質量比(芳香環を有するアルデヒド類の含有量/ポリフェノール類の含有量)は、0.1以上、3以下であることが好ましく、0.25以上、2.5以下であることがより好ましい。ポリフェノール類と芳香環を有するアルデヒド類との間では、縮合反応が起こるが、その生成物である樹脂の硬度、接着性がより適したものになるからである。
【0042】
また、接着剤組成物中の、ポリフェノール類及び芳香族環を有するアルデヒド類の合計含有量は、3~30質量%であることが好ましく、5~25質量%であることがより好ましい。作業性等を悪化させることなく、より優れた接着性を確保できるためである。なお、ポリフェノール類及び芳香族環を有するアルデヒド類の質量比並びに合計含有量は、乾燥物の質量(固形分比)である。
【0043】
(イソシアネート化合物)
接着剤組成物は、上述したポリフェノール類及びアルデヒド類に加えて、イソシアネート化合物をさらに含むことが好ましい。ポリフェノール類及びアルデヒド類との相乗効果によって、接着剤組成物の接着性を大きく高めることができる。ここで、イソシアネート化合物は、接着剤組成物の被着体である樹脂材料(例えば、ポリフェノール類及びアルデヒド類を縮合させたフェノール/アルデヒド樹脂) への接着を促進させる作用を有する化合物であって、極性官能基としてイソシアネート基を有する化合物である。イソシアネート化合物の種類については、特に限定はされないが、接着性をより向上できる観点から、(ブロックド)イソシアネート基含有芳香族化合物であることが好ましい。接着剤組成物中に、イソシアネート化合物を含ませると、被着体繊維と接着剤組成物の界面近傍の位置にブロックド)イソシアネート基含有芳香族が分布し、接着促進効果が得られる作用が得られ、この作用効果により、有機コードとの接着をより高度化することができる。(ブロックド)イソシアネート基含有芳香族化合物は、(ブロックド)イソシアネート基を有する芳香族化合物である。また、「(ブロックド)イソシアネート基」とは、ブロックドイソシアネート基又はイソシアネート基を意味し、イソシアネート基の他、イソシアネート基に対するブロック化剤と反応して生じたブロックドイソシアネート基、イソシアネート基に対するブロック化剤と未反応のイソシアネート基、又はブロックドイソシアネート基のブロック化剤が解離して生じたイソシアネート基等を含む。
【0044】
さらに、(ブロックド)イソシアネート基含有芳香族化合物は、芳香族類がアルキレン鎖で結合された分子構造を含むのが好ましく、芳香族類がメチレン結合した分子構造を含むことがより好ましい。芳香族類がアルキレン鎖で結合された分子構造としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート、又はフェノール類とホルムアルデヒドとの縮合物等にみられる分子構造が挙げられる。なお、(ブロックド)イソシアネート基含有芳香族化合物としては、例えば、芳香族ポリイソシアネートと熱解離性ブロック化剤を含む化合物、ジフェニルメタンジイソシアネート又は芳香族ポリイソシアネートを熱解離性ブロック化剤でブロック化した成分を含む水分散性化合物、水性ウレタン化合物等が挙げられる。芳香族ポリイソシアネートと熱解離性ブロック化剤とを含む化合物としては、ジフェニルメタンジイソシアネートと公知のイソシアネートブロック化剤を含むブロックドイソシアネート化合物等が好適に挙げられる。上記ジフェニルメタンジイソシアネート又は芳香族ポリイソシアネートを熱解離性ブロック化剤でブロック化した成分を含む水分散性化合物としては、ジフェニルメタンジイソシアネート又はポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートを、イソシアネート基をブロックする公知のブロック化剤でブロックした反応生成物が挙げられる。具体的には、エラストロンBN69(第一工業製薬(株)製)、エラストロンBN77(第一工業製薬(株)製)やメイカネートTP-10(明成化学工業(株)製)等の市販のブロックドポリイソシアネート化合物を用いることができる。水性ウレタン化合物は、芳香族類がアルキレン鎖で結合された分子構造、好ましくは芳香族類がメチレン結合した分子構造を含有する有機ポリイソシアネート化合物(α)と、複数の活性水素を有する化合物(β)と、イソシアネート基に対する熱解離性ブロック化剤(γ)とを反応させて得られる。また、水性ウレタン化合物(F)は、その可撓性のある分子構造から、接着改良剤としての作用のみならず、可撓性のある架橋剤として接着剤の高温時流動化を抑止する作用も有する。なお、「水性」とは、水溶性または水分散性であることを示し、「水溶性」とは必ずしも完全な水溶性を意味するのではなく、部分的に水溶性のもの、あるいは接着剤組成物の水溶液中で相分離しないものを意味する。
【0045】
ここで、水性ウレタン化合物(F)としては、例えば、下記一般式(I):
【化7】
(式中、Aは芳香族類がアルキレン鎖で結合された分子構造を含有する有機ポリイソシアネート化合物(α)の活性水素が脱離した残基を示し、Yはイソシアネート基に対する熱解離性ブロック化剤(γ)の活性水素が脱離した残基を示し、Zは化合物(δ)の活性水素が脱離した残基を示し、Xは複数の活性水素を有する化合物(β)の活性水素が脱離した残基であり、nは2~4の整数であり、p+mは2~4の整数(m≧0.25)である。)で表される水性ウレタン化合物が好ましい。
【0046】
なお、芳香族類がアルキレン鎖で結合された分子構造を含有する有機ポリイソシアネート化合物(α)としては、メチレンジフェニルポリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等が挙げられる。また、複数の活性水素を有する化合物(β)は、好ましくは2~4個の活性水素を有し、平均分子量が5,000以下の化合物である。かかる化合物(β)としては、(i)2~4個の水酸基を有する多価アルコール類、(ii)2~4個の第一級及び/又は第二級アミノ基を有する多価アミン類、(iii)2~4個の第一級及び/又は第二級アミノ基と水酸基を有するアミノアルコール類、(iv)2~4個の水酸基を有するポリエステルポリオール類、(v)2~4個の水酸基を有するポリブタジエンポリオール類及びそれらと他のビニルモノマーとの共重合体、(vi)2~4個の水酸基を有するポリクロロプレンポリオール類及びそれらと他のビニルモノマーとの共重合体、(vii)2~4個の水酸基を有するポリエーテルポリオール類であって、多価アミン、多価フェノール及びアミノアルコール類のC2~C4のアルキレンオキサイド重付加物、C3以上の多価アルコール類のC2~C4のアルキレンオキサイド重付加物、C2~C4のアルキレンオキサイド共重合物、又はC3~C4のアルキレンオキサイド重合物等が挙げられる。さらに、イソシアネート基に対する熱解離性ブロック化剤(γ)は、熱処理によりイソシアネート基を遊離することが可能な化合物であり、公知のイソシアネートブロック化剤が挙げられる。さらにまた、化合物(δ)は、少なくとも1つの活性水素とアニオン性及び/又は非イオン性の親水性基を有する化合物である。少なくとも1つの活性水素とアニオン性の親水基を有する化合物としては、例えば、タウリン、N-メチルタウリン、N-ブチルタウリン、スルファニル酸等のアミノスルホン酸類、グリシン、アラニン等のアミノカルボン酸類等が挙げられる。一方、少なくとも1つの活性水素と非イオン性の親水基を有する化合物としては、例えば、親水性ポリエーテル鎖を有する化合物類が挙げられる。
【0047】
また、接着剤組成物における、イソシアネート化合物の含有量は、特に限定はされないが、より確実に優れた接着性を確保する観点から、5~65質量%の範囲であることが好ましく、10~45質量%であることがより好ましい。なお、イソシアネート化合物の含有量は、乾燥物の質量(固形分比)である。
【0048】
(ゴムラテックス)
接着剤組成物は、上述したポリフェノール類、アルデヒド類及びイソシアネート化合物に加えて、実質的にはゴムラテックスをさらに含むことができる。ゴム部材との接着性をより高めることができるためである。ここで、ゴムラテックスについては、特に限定はされず、天然ゴム(NR)の他、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、ハロゲン化ブチルゴム、アクリロニリトル-ブタジエンゴム(NBR)、ビニルピリジン-スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(Vp)等の合成ゴムを用いることができる。これらのゴム成分は、一種単独で用いてもよいし、二種以上をブレンドして用いてもよい。また、ゴムラテックスについては、イソシアネート化合物を配合する前に、フェノール類及びアルデヒド類と混合させることが好ましい。さらに、接着剤組成物中のゴムラテックスの含有量は、20~70質量%であることが好ましく、25~60質量%であることがより好ましい。
【0049】
なお、有機繊維コード用接着剤組成物の製造方法は、特に限定はされないが、例えば、前記ポリフェノール類、アルデヒド類、ゴムラテックス等の原材料を混合し、熟成する方法、又は、ポリフェノール類とアルデヒド類とを混合して熟成した後に、ゴムラテックスをさらに加えて熟成する方法、等が挙げられる。また、イソシアネート化合物を含む場合には、ゴムラテックスを加え、熟成した後に、イソシアネート化合物を加えることができる。なお、多環芳香族炭化水素、アルデヒド類、ゴムラテックス及びイソシアネート化合物の構成や含有量等については、上述した接着剤組成物の中で説明した内容と同様である。
【0050】
(ゴム-有機繊維コード複合体)
ここで、本発明のタイヤでは、接着剤組成物がコーティングされた有機繊維コードを有しており、接着剤組成物がコーティングされた有機繊維コードは、コーティングゴム等のゴム部材と接着し、ゴム-有機繊維コード複合体を形成している。得られたゴム-有機繊維コード複合体は、上記の接着剤組成物を用いているため、環境への負荷が小さい。ここで、本発明のタイヤにおいて、ゴム-有機繊維コード複合体は、例えば、カーカスプライ30、ベルト補強層50として用いることが可能である。
これらの中でも、ゴム-有機繊維コード複合体は、カーカス及びベルト補強層の少なくともいずれかに用いられていることが好ましい。接着剤組成物がコーティングされた有機繊維コードの環境への負荷低減や、有機繊維とゴム部材との優れた接着性等を、より効果的に発揮できるためである。なお、ゴム-有機繊維コード複合体において、接着剤組成物は、有機繊維コードの少なくとも一部を覆っていればよいが、ゴムと有機繊維コードとの接着性をより向上できる点からは、接着剤組成物が有機繊維コードの全面にコーティングされていることが好ましい。また、有機繊維コードの材料については、特に限定はされず、用途によって適宜選択することができる。例えば、ポリエステル、6-ナイロン、6,6-ナイロン、4,6-ナイロン等の脂肪族ポリアミド繊維コード、ポリケトン繊維コード、パラフェニレンテレフタルアミドに代表される芳香族ポリアミド繊維コードに代表される合成樹脂繊維材料に使用することができる。有機繊維コードは、例えば、モノフィラメント又は撚り線で形成することができる。
【0051】
また、有機繊維コードについては、低速及び高温時の操縦安定性と、高速耐久性とを高いレベルで両立する観点から、2種の有機繊維からなるフィラメントを撚り合わせてなるハイブリッドコードであることが好ましい。さらに、高速耐久性をより向上させる観点からは、ハイブリッドコードは、177℃における熱収縮応力(cN/dtex)が0.20cN/dtex以上であることが好ましく、0.25~0.40cN/dtexの範囲内であることがより好ましい。さらにまた、低速及び高温時の操縦安定性をより向上させる観点からは、前記ハイブリッドコードは、25℃における1%歪時の引張弾性率が60cN/dtex以下、特には35~50cN/dtexであることが好ましく、25℃における3%歪時の引張弾性率が30cN/dtex以上、特には45~70cN/dtexであることが好ましい。前記ハイブリッドコードに用いる2種の有機繊維としては、特に制限されるものではないが、剛性の高い有機繊維として、レーヨン、リヨセルなどを挙げることができ、熱収縮率の高い有機繊維として、ポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)等、ナイロン、ポリケトン(PK)等を挙げることができる。より好適には、レーヨン又はリヨセルと、ナイロンとの組み合わせを用いることができる。
なお、これら有機繊維を用いたハイブリッドコードの熱収縮応力及び引張弾性率を調整する方法としては、ディップ処理時におけるテンションを制御する方法が挙げられ、例えば、高いテンションを掛けながらディップ処理を行うことで、コードの熱収縮応力の値を大きくすることができる。すなわち、各有機繊維において固有の物性値範囲はあるものの、ディップ処理条件を制御することにより、その範囲内で物性値を調整して、所望の物性を有するハイブリッドコードを得ることができる。
あるいは、有機繊維コードは、横糸を有しない単線コードであることも好ましい。横糸を有しないことにより、縦糸と横糸とのこすれあいによる耐疲労性の低下を抑制することができる。
【0052】
以下、本実施形態の空気入りタイヤの作用効果について説明する。
【0053】
本実施形態の空気入りタイヤによれば、まず、ポリフェノール類及びアルデヒド類を含む接着剤組成物がコーティングされた、有機繊維コードを有している(本例では、ベルトコードに用いている)。これにより、ベルトコードにコーティングされる接着剤組成物にレゾルシンが含まれず、環境への負荷が少なく、また、コードとゴムとの高い接着性を達成することができる。
さらに、本実施形態の空気入りタイヤでは、5層以上のベルト層のうち、少なくとも1層に傾斜ベルト層を用いているため、タガ効果を得ることができる。特に本実施形態では、傾斜ベルト層としてエンドレスベルト層を用いているため、ベルトコード端に起因する故障を抑制して、タイヤの耐久性を向上させることができる。また、本実施形態の空気入りタイヤでは、5層以上のベルト層のうち、少なくとも1層にスパイラルベルト層を用いているため、径成長を抑制することができる。
【0054】
スパイラルベルト層の層数は、1~7層であることが好ましい。スパイラルベルト層の層数を(例えば2層以上とするなど)ある程度多くすることにより、径成長をより一層抑制することができ、一方で、軽量化の観点からは、スパイラルベルト層の層数が少ない方が(例えば本実施形態のように1層)好ましい。ここで、スパイラルベルト層が、ベルト層のうちタイヤ径方向最内層に配置されることが好ましい。
【0055】
傾斜ベルト層(例えばエンドレスベルト層)の層数は、1~7層であることが好ましい。傾斜ベルト層(例えばエンドレスベルト層)の層数を(例えば本実施形態のように5層とするなど)ある程度多くすることにより、耐久性より一層向上させることができ、一方で、軽量化の観点からは、傾斜ベルト層(エンドレスベルト層)の層数が少ない方が(例えば1層又は2層)好ましい。
【0056】
本発明のタイヤは、航空機用であることが好ましい。
【0057】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に何ら限定されるもではない。例えば、上記の各例において、ベルト構造とカーカス構造との組み合わせは任意とすることができる。本発明のタイヤは、スチーム加硫や電気加硫で成形することができる。
【符号の説明】
【0058】
1:タイヤ、
2:ビード部、
3:カーカス、
4:ベルト、
5:トレッド
図1
図2