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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】部分放電予測装置及び部分放電予測方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/12 20200101AFI20231025BHJP
【FI】
G01R31/12 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020058923
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021156792
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保田 芳永
(72)【発明者】
【氏名】川嵜 尚志
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-143072(JP,A)
【文献】特開2011-048656(JP,A)
【文献】特開2001-136131(JP,A)
【文献】特開2019-132695(JP,A)
【文献】特開2019-105557(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体と、該導体の外周に被覆された絶縁皮膜と、を備える2つの導線間において、部分放電が発生する前記2つの導線間の電圧の最低値である部分放電開始電圧と、部分放電が発生する位置と、を予測する、部分放電予測装置であって、
前記部分放電予測装置は、設定部と、電気力線解析部と、解析曲線生成部と、部分放電予測部と、表示処理部と、表示部と、を備え、
前記設定部によって、前記2つの導線の形状及び配置と、前記2つの導線間の前記電圧と、部分放電予測を行う予測領域と、が設定され、
前記電気力線解析部によって、前記設定部で設定された、前記2つの導線の前記形状及び前記配置と、前記2つの導線との間の前記電圧と、に基づいて、前記予測領域について、前記2つの導線間の電気力線を導出し、前記電気力線の電気力線長さと、前記電気力線における開始点と終了点との間の電位差及び電界強度の少なくとも一方と、を取得し、
前記解析曲線生成部によって、前記電気力線解析部で取得した、前記電気力線長さと、前記電位差又は前記電界強度と、に基づいて、解析曲線を生成し、
前記部分放電予測部によって、前記解析曲線生成部で生成された前記解析曲線と、パッシェンカーブと、を比較することにより、前記2つの導線間において、前記部分放電開始電圧と、部分放電が発生する前記位置と、を予測
前記表示処理部は、
前記2つの導線間の所定の前記電圧において、前記電気力線解析部によって導出された前記電気力線について、前記電気力線解析部によって算出された前記電位差又は前記電界強度と、前記パッシェンカーブにおいて、ギャップ長を前記電気力線長さとしたときの電位差又は電界強度と、の差に基づいて、前記電気力線の表示色又は表示濃さを設定し、
前記設定部によって設定された、前記2つの導線の前記形状及び前記配置に基づいて、前記2つの導線の表示情報を取得し、
前記表示部は、前記表示処理部で取得した前記2つの導線の前記表示情報に基づいて、前記2つの導線を表示し、前記所定の前記電圧おいて、前記電気力線解析部によって導出された前記電気力線を、前記表示処理部で設定された前記表示色又は前記表示濃さで表示して、前記所定の前記電圧のとき、前記2つの導線の間において、部分放電が発生するか否か、及び、前記2つの導線の間のどの部分で部分放電が発生しやすいか、を把握可能に表示する、
部分放電予測装置。
【請求項2】
請求項1に記載の部分放電予測装置であって、
前記設定部によって、前記2つの導線が配置された空間の気圧と、前記2つの導線間の空気の温度と、が設定され、
前記パッシェンカーブは、前記設定部で設定された前記気圧及び前記温度に基づいて生成された補正パッシェンカーブである、部分放電予測装置。
【請求項3】
導体と、該導体の外周に被覆された絶縁皮膜と、を備える2つの導線間において、部分放電が発生する前記2つの導線間の電圧の最低値である部分放電開始電圧と、部分放電が発生する位置と、を予測する、部分放電予測方法であって、
導線形状配置設定工程と、電圧設定工程と、領域設定工程と、電気力線解析工程と、解析曲線生成工程と、予測工程と、表示工程と、を含み、
前記導線形状配置設定工程によって、前記2つの導線の形状及び配置を設定し、
前記電圧設定工程によって、前記2つの導線間の前記電圧を設定し、
前記領域設定工程によって、部分放電予測を行う予測領域を設定し、
前記電気力線解析工程によって、前記導線形状配置設定工程で設定された、前記2つの導線の前記形状及び前記配置と、前記電圧設定工程で設定された、前記2つの導線との間の前記電圧と、に基づいて、前記予測領域について、前記2つの導線間の電気力線を導出し、前記電気力線の電気力線長さと、前記電気力線における開始点と終了点との間の電位差及び電界強度の少なくとも一方と、を取得し、
前記解析曲線生成工程によって、前記電気力線解析工程で取得した、前記電気力線長さと、前記電位差又は前記電界強度と、に基づいて、解析曲線を生成し、
前記予測工程によって、前記解析曲線生成工程で生成された前記解析曲線と、パッシェンカーブと、を比較することにより、前記2つの導線間において、前記部分放電開始電圧と、部分放電が発生する前記位置と、を予測
前記表示工程によって、
前記2つの導線間の所定の前記電圧において、前記電気力線解析工程によって導出された前記電気力線について、前記電気力線解析工程によって算出された前記電位差又は前記電界強度と、前記パッシェンカーブにおいて、ギャップ長を前記電気力線長さとしたときの電位差又は電界強度と、の差に基づいて、前記電気力線の表示色又は表示濃さを設定し、
前記導線形状配置設定工程によって設定された、前記2つの導線の前記形状及び前記配置に基づいて、前記2つの導線の表示情報を取得し、
前記表示情報に基づいて、前記2つの導線を表示し、前記所定の前記電圧おいて、前記電気力線解析工程によって導出された前記電気力線を、設定された前記表示色又は前記表示濃さで表示して、前記所定の前記電圧のとき、前記2つの導線の間において、部分放電が発生するか否か、及び、前記2つの導線の間のどの部分で部分放電が発生しやすいか、を把握可能に表示する、部分放電予測方法。
【請求項4】
請求項に記載の部分放電予測方法であって、
前記部分放電予測方法は、環境条件設定工程をさらに含み、
前記環境条件設定工程によって、前記2つの導線が配置された空間の気圧と、前記2つの導線間の空気の温度と、が設定され、
前記パッシェンカーブは、前記環境条件設定工程で設定された前記気圧及び前記温度に基づいて生成された補正パッシェンカーブである、部分放電予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機のコイル等に用いられる2つの導線間において、部分放電開始電圧と、部分放電が発生する位置と、を予測する部分放電予測装置及び部分放電予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、回転電機のコイル等には、導体と、該導体の外周に被覆された絶縁皮膜と、を備える導線が用いられている。回転電機のコイルにおいては、2つの導線間に高い電圧がかかると、2つの導線間で部分放電が発生する。部分放電が発生すると、導線の絶縁皮膜が損傷し、やがて絶縁破壊に至る虞があるため、2つの導線間で部分放電が発生しないように、導線の形状及び配置を設定する必要がある。そのためには、2つの導線間おいて、部分放電が発生する電圧の最低値である部分放電開始電圧と、部分放電が発生する位置と、を把握することが重要である。
【0003】
例えば、特許文献1には、2つの導線間のギャップ距離と電位差との関係を示す曲線と、パッシェンカーブとを比較して、2つの導線間における部分放電開始電圧を予測する、部分放電予測方法が開示されている。特許文献1の部分放電予測方法においては、2つの導線間のギャップ距離と電位差との関係を示す曲線が、パッシェンカーブの上を通る部分で部分放電が発生するので、部分放電が発生する位置も予測できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-123418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1では、2つの導線が互いに対向して並んで延びているので、2つの導線間のギャップ距離を容易に定義することができる。しかしながら、2つの導線が複雑な位置関係で配置されている場合、特許文献1の部分放電予測方法では、2つの導線間のギャップ距離を一義的に定義できない。そのため、2つの導線が複雑な位置関係で配置されている場合、特許文献1の部分放電予測方法では、2つの導線間において、部分放電開始電圧と、部分放電が発生する位置と、を予測することが困難であった。
【0006】
本発明は、2つの導線が複雑な位置関係で配置されていても、2つの導線間において、部分放電開始電圧と、部分放電が発生する位置と、を予測できる部分放電予測装置及び部分放電予測方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
導体と、該導体の外周に被覆された絶縁皮膜と、を備える2つの導線間において、部分放電が発生する前記2つの導線間の電圧の最低値である部分放電開始電圧と、部分放電が発生する位置と、を予測する、部分放電予測装置であって、
前記部分放電予測装置は、設定部と、電気力線解析部と、解析曲線生成部と、部分放電予測部と、表示処理部と、表示部と、を備え、
前記設定部によって、前記2つの導線の形状及び配置と、前記2つの導線間の前記電圧と、部分放電予測を行う予測領域と、が設定され、
前記電気力線解析部によって、前記設定部で設定された、前記2つの導線の前記形状及び前記配置と、前記2つの導線との間の前記電圧と、に基づいて、前記予測領域について、前記2つの導線間の電気力線を導出し、前記電気力線の電気力線長さと、前記電気力線における開始点と終了点との間の電位差及び電界強度の少なくとも一方と、を取得し、
前記解析曲線生成部によって、前記電気力線解析部で取得した、前記電気力線長さと、前記電位差又は前記電界強度と、に基づいて、解析曲線を生成し、
前記部分放電予測部によって、前記解析曲線生成部で生成された前記解析曲線と、パッシェンカーブと、を比較することにより、前記2つの導線間において、前記部分放電開始電圧と、部分放電が発生する前記位置と、を予測し、
前記表示処理部は、
前記2つの導線間の所定の前記電圧において、前記電気力線解析部によって導出された前記電気力線について、前記電気力線解析部によって算出された前記電位差又は前記電界強度と、前記パッシェンカーブにおいて、ギャップ長を前記電気力線長さとしたときの電位差又は電界強度と、の差に基づいて、前記電気力線の表示色又は表示濃さを設定し、
前記設定部によって設定された、前記2つの導線の前記形状及び前記配置に基づいて、前記2つの導線の表示情報を取得し、
前記表示部は、前記表示処理部で取得した前記2つの導線の前記表示情報に基づいて、前記2つの導線を表示し、前記所定の前記電圧おいて、前記電気力線解析部によって導出された前記電気力線を、前記表示処理部で設定された前記表示色又は前記表示濃さで表示して、前記所定の前記電圧のとき、前記2つの導線の間において、部分放電が発生するか否か、及び、前記2つの導線の間のどの部分で部分放電が発生しやすいか、を把握可能に表示する
【0008】
また、本発明は、
導体と、該導体の外周に被覆された絶縁皮膜と、を備える2つの導線間において、部分放電が発生する前記2つの導線間の電圧の最低値である部分放電開始電圧と、部分放電が発生する位置と、を予測する、部分放電予測方法であって、
導線形状配置設定工程と、電圧設定工程と、領域設定工程と、電気力線解析工程と、解析曲線生成工程と、予測工程と、表示工程と、を含み、
前記導線形状配置設定工程によって、前記2つの導線の形状及び配置を設定し、
前記電圧設定工程によって、前記2つの導線間の前記電圧を設定し、
前記領域設定工程によって、部分放電予測を行う予測領域を設定し、
前記電気力線解析工程によって、前記導線形状配置設定工程で設定された、前記2つの導線の前記形状及び前記配置と、前記電圧設定工程で設定された、前記2つの導線との間の前記電圧と、に基づいて、前記予測領域について、前記2つの導線間の電気力線を導出し、前記電気力線の電気力線長さと、前記電気力線における開始点と終了点との間の電位差及び電界強度の少なくとも一方と、を取得し、
前記解析曲線生成工程によって、前記電気力線解析工程で取得した、前記電気力線長さと、前記電位差又は前記電界強度と、に基づいて、解析曲線を生成し、
前記予測工程によって、前記解析曲線生成工程で生成された前記解析曲線と、パッシェンカーブと、を比較することにより、前記2つの導線間において、前記部分放電開始電圧と、部分放電が発生する前記位置と、を予測し、
前記表示工程によって、
前記2つの導線間の所定の前記電圧において、前記電気力線解析工程によって導出された前記電気力線について、前記電気力線解析工程によって算出された前記電位差又は前記電界強度と、前記パッシェンカーブにおいて、ギャップ長を前記電気力線長さとしたときの電位差又は電界強度と、の差に基づいて、前記電気力線の表示色又は表示濃さを設定し、
前記導線形状配置設定工程によって設定された、前記2つの導線の前記形状及び前記配置に基づいて、前記2つの導線の表示情報を取得し、
前記表示情報に基づいて、前記2つの導線を表示し、前記所定の前記電圧おいて、前記電気力線解析工程によって導出された前記電気力線を、設定された前記表示色又は前記表示濃さで表示して、前記所定の前記電圧のとき、前記2つの導線の間において、部分放電が発生するか否か、及び、前記2つの導線の間のどの部分で部分放電が発生しやすいか、を把握可能に表示する
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、2つの導線間の電気力線を導出し、電気力線長さと、電気力線における開始点と終了点との間の電位差又は電界強度と、に基づいて解析曲線を生成し、解析曲線と、パッシェンカーブと、を比較することにより、2つの導線間において、部分放電開始電圧と、部分放電が発生する位置と、を予測するので、2つの導線が複雑な位置関係で配置されていても、2つの導線間において、部分放電開始電圧と、部分放電が発生する位置と、を予測できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態の部分放電予測装置のブロック図である。
図2図1の部分放電予測装置で部分放電予測を行う2つの導線の形状及び配置を示す斜視図である。
図3図1の部分放電予測装置の電気力線解析部で行われる電気力線解析工程によって導出された電気力線を示す図である。
図4図1の部分放電予測装置の解析曲線生成部で行われる解析曲線生成工程によって生成された解析曲線及びパッシェンカーブを示すグラフである。
図5】実際に、図1の部分放電予測装置の設定部で設定した通りに2つの導線を配置し、2つの導線間の電圧を変化させた場合における放電電荷量の変化の実測値を示すグラフである。
図6】2つの導線の導体及び絶縁皮膜の形状を変更した場合の解析曲線の変化をパッシェンカーブと比較して説明する図である。
図7】2つの導線が互いに対向するように延びている場合の予測領域における電気力線を示す図である。
図8図1の部分放電予測装置の表示部に表示される表示形態の一例を示す図である。
図9】本発明の第2実施形態の解析曲線生成部で行われる解析曲線生成工程によって生成された解析曲線及びパッシェンカーブの変形例を示すグラフである。
図10】本発明の第2実施形態において、表示部に表示される表示形態の一例を示す図である。
図11】本発明の第3実施形態の補正パッシェンカーブを示すグラフである。
図12】本発明の第3実施形態において、表示部に表示される表示形態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の部分放電予測装置の各実施形態を、添付図面に基づいて説明する。
【0012】
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態の部分放電予測装置1について図1図8を参照しながら説明する。
【0013】
本実施形態の部分放電予測装置1は、2つの導線間の電圧を電圧V0として、2つの導線間において、部分放電が発生する電圧V0の最低値である部分放電開始電圧PDIVと、部分放電が発生する位置PSと、を予測する部分放電予測処理を実行する装置である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の部分放電予測装置1は、設定部11と、電気力線解析部12と、解析曲線生成部13と、部分放電予測部14と、表示処理部15と、表示部16と、を備える。設定部11は、2つの導線の形状及び配置を設定する導線配置設定部111と、2つの導線間の電圧V0を設定する電圧設定部113と、部分放電予測を行う予測領域を設定する領域設定部115と、2つの導線が配置された空間の気圧P及び2つの導線間の空気の温度Tを設定する環境条件設定部117と、を有する。
【0015】
部分放電予測装置1は、部分放電予測処理を実行する。部分放電予測処理は、2つの導線間において、部分放電が発生する電圧V0の最低値である部分放電開始電圧PDIV、及び、部分放電が発生する位置PS、の予測を行う。
【0016】
本実施形態では、図2に示すように、第1導線21と第2導線22とが、交差するように配置されており、第1導線21は、断面形状が略矩形状の導体21aと、導体21aの外周に被覆された絶縁皮膜21bと、を備え、第2導線22は、断面形状が略矩形状の導体22aと、導体22aの外周に被覆された絶縁皮膜22bと、を備える場合について説明する。
【0017】
(部分放電予測処理)
部分放電予測処理は、導線形状配置設定工程と、電圧設定工程と、領域設定工程と、電気力線解析工程と、解析曲線生成工程と、予測工程と、表示工程と、を含む。
【0018】
<導線形状配置設定工程>
まず、部分放電予測装置1は、設定部11の導線配置設定部111によって、第1導線21及び第2導線22の形状及び配置を設定する。具体的には、第1導線21の導体21a及び絶縁皮膜21b、並びに、第2導線22の導体22a及び絶縁皮膜22bの3次元位置情報、を設定する。例えば、第1導線21及び第2導線22の3次元CADデータにおける3次元位置座標データを読み込む等によって、当該3次元位置情報を設定する。なお、導線配置設定部111においては、第1導線21の導体21a及び絶縁皮膜21b、並びに、第2導線22の導体22a及び絶縁皮膜22bの3次元位置情報に加えて、第1導線21における導体21aの電気伝導率及び絶縁皮膜21bの比誘電率、並びに、第2導線22における導体22aの電気伝導率及び絶縁皮膜22bの比誘電率を、それぞれ設定できるようにしてもよい。
【0019】
<電圧設定工程>
次に、部分放電予測装置1は、設定部11の電圧設定部113によって、第1導線21を高電位側、第2導線22を低電位側として、第1導線21と第2導線22との間の電圧V0を設定する。なお、電圧設定部113では、電圧V0を入力により設定してもよいし、例えば、第1導線21及び第2導線22が、回転電機のコイルの巻線を構成する場合、回転電機に供給される電力の電圧を入力し、予め記憶されている算出式によって、第1導線21と第2導線22との間の電圧V0を算出して、電圧V0を設定するようにしてもよい。
【0020】
<領域設定工程>
次に、部分放電予測装置1は、設定部11の領域設定部115によって、第1導線21と第2導線22との間で、部分放電予測を行う予測領域Aを設定する。本実施形態では、図2に示すように、第1導線21と第2導線22との交差点近傍の領域を、部分放電予測を行う予測領域Aとして設定する。例えば、導線配置設定部111によって、読み込んだ第1導線21及び第2導線22の3次元CADデータにおける3次元位置座標データに基づいて、予測領域Aの3次元位置座標を設定する。
【0021】
<電気力線解析工程>
次に、部分放電予測装置1は、電気力線解析部12によって、設定部11で設定された、第1導線21及び第2導線22の形状及び配置と、第1導線21と第2導線22との間の電圧V0と、に基づいて、設定された予測領域Aについて、第1導線21と第2導線22との間の電気力線解析工程を行う。
【0022】
図3に示すように、電気力線解析工程では、まず、高電位側の第1導線21の絶縁皮膜21bの表面において、予測領域Aに位置するある地点を開始点21cとし、開始点21cから半径が所定長さ以内に位置する要素を抽出する。次に、抽出した要素における平均電界から電界ベクトルを求める。開始点21cから、求められた電界ベクトル方向に、予め設定された所定長さだけ電気力線Lefを伸ばす。そして、伸ばされた電気力線Lefの先端の座標において、同様に、半径が所定長さ以内に位置する要素を抽出、抽出した要素における平均電界から電界ベクトルを求め、求められた電界ベクトルの方向に所定長さだけさらに電気力線Lefを伸ばす。これを繰り返し、電気力線Lefが第2導線22の絶縁皮膜22bの表面に到達したとき、電気力線Lefが到達した第2導線22の絶縁皮膜22bの表面を電気力線Lefの終了点22cとして、1本の電気力線Lefの解析が終了し、1本の電気力線Lefが導出される。
【0023】
このとき、電気力線解析部12は、導出された電気力線Lefの電気力線長さL1を算出し、電気力線Lefにおける第1導線21の開始点21cと第2導線22の終了点22cとの間の電位差V1を取得する。さらに、電気力線解析部12は、取得した電位差V1を算出した電気力線長さL1で除して、電界強度E1を算出する。そして、電気力線解析部12は、得られた電気力線Lefの電気力線長さL1、電位差V1、及び電界強度E1を、解析曲線生成部13に出力する。
【0024】
さらに、予測領域Aに位置する第1導線21の絶縁皮膜21bの表面の複数の地点に対して、電気力線解析工程を行い、複数の電気力線Lefを得る。そして、複数の電気力線Lefにおける、電気力線長さL1、電位差V1、電界強度E1を、解析曲線生成部13に出力する。
【0025】
<解析曲線生成工程>
次に、部分放電予測装置1は、解析曲線生成部13によって、解析曲線C1を生成する、解析曲線生成工程を行う。解析曲線生成工程では、電気力線解析部12の電気力線解析工程で取得した、複数の電気力線Lefにおける、電気力線長さL1と電界強度E1とに基づいて、解析曲線C1を生成する。
【0026】
具体的には、図4に示すように、横軸を電気力線長さL1とし、縦軸を電界強度E1として、電気力線解析工程で取得した複数の電気力線Lefの電気力線長さL1と電界強度E1との各点をプロットする。プロットされた各点に基づいて、プロットされた各点を繋げる、プロットされた各点から近似曲線を生成する等によって、解析曲線C1を生成する。
【0027】
したがって、予測領域Aに位置する第1導線21の絶縁皮膜21bの表面の多数の地点に対して、電気力線解析工程を行うことによって、解析曲線生成工程において、より高精度の解析曲線C1を得ることができる。
【0028】
さらに、設定部11の電圧設定部113によって、第1導線21と第2導線22との間の電圧V0の設定を変更して、改めて電気力線解析工程及び解析曲線生成工程を行うことによって、複数の解析曲線C1を得る。
【0029】
図4には、電圧V0が1500[V]である場合の解析曲線C1である解析曲線Ca、電圧V0が1750[V]である場合の解析曲線C1である解析曲線Cb、電圧V0が2000[V]である場合の解析曲線C1である解析曲線Cc、電圧V0が2250[V]である場合の解析曲線C1である解析曲線Cd、電圧V0が2500[V]である場合の解析曲線C1である解析曲線Ce、電圧V0が2750[V]である場合の解析曲線C1である解析曲線Cf、及び電圧V0が3000[V]である場合の解析曲線C1である解析曲線Cg、が示されている。
【0030】
<予測工程>
次に、部分放電予測装置1は、部分放電予測部14によって、解析曲線生成工程で得られた解析曲線C1と、パッシェンカーブCp10と、を比較することにより、第1導線21と第2導線22との間における部分放電開始電圧PDIVと、第1導線21と第2導線22との間の電圧V0が部分放電開始電圧PDIV以上である場合に部分放電が発生する位置PSと、を予測する予測工程を行う。
【0031】
予測工程では、まず、横軸をパッシェンカーブにおける2点間のギャップ長とし、縦軸をパッシェンカーブにおける2点間のギャップ間電界強度として、パッシェンカーブCp10を生成し、解析曲線C1と重ね合わせる。
【0032】
そして、パッシェンカーブCp10と、解析曲線C1とを比較することによって、第1導線21と第2導線22との間における部分放電開始電圧PDIVと、第1導線21と第2導線22との間の電圧V0が部分放電開始電圧PDIV以上である場合に部分放電が発生する位置PSと、を予測する。
【0033】
解析曲線C1が、パッシェンカーブCp10よりも下を通る場合には、第1導線21と第2導線22との間において、電圧V0では部分放電が発生しないと予測する。図4に示す解析曲線Ca~Ceは、パッシェンカーブCp10よりも下を通っているので、第1導線21と第2導線22との間において、電圧V0が2500[V]以下の場合は、部分放電が発生しないと予測する。
【0034】
解析曲線C1が、パッシェンカーブCp10と接する場合、その電圧V0は、第1導線21と第2導線22との間において、部分放電が発生する電圧V0の最低値である部分放電開始電圧PDIVと予測する。具体的には、図4には示されていないが、図4から、解析曲線C1が、パッシェンカーブCp10と接する場合の電圧V0は、約2700[V]であるとわかる。よって、第1導線21と第2導線22との間の部分放電開始電圧PDIVは、約2700[V]であり、電気力線長さL1が約0.08[mm]の位置PSで、部分放電が発生すると予測する。
【0035】
解析曲線C1が、パッシェンカーブCp10と交差する場合には、第1導線21と第2導線22との間において、電圧V0で部分放電が発生すると予測する。さらに、電圧V0において、解析曲線C1がパッシェンカーブCp10の上を通る電気力線長さL1の部分が、部分放電が発生する位置PSであると予測する。具体的には、図4に示す解析曲線Cf、Cgは、パッシェンカーブCp10と交差しているので、第1導線21と第2導線22との間において、電圧V0が2750[V]の場合、及び電圧V0が3000[V]の場合は、部分放電が発生すると予測する。さらに、電圧V0が2750[V]の場合は、解析曲線C1がパッシェンカーブCp10の上を通る電気力線長さL1が約0.06[mm]~約0.09[mm]の部分が、部分放電が発生する位置PSであると予測する。同様に、電圧V0が3000[V]の場合は、解析曲線C1がパッシェンカーブCp10の上を通る電気力線長さL1が約0.04[mm]~約0.12[mm]の部分が、部分放電が発生する位置PSであると予測する。
【0036】
図5は、実際に、設定部11の導線配置設定部111で設定した通りに第1導線21及び第2導線22を配置し、第1導線21と第2導線22との間の電圧V0を変化させた場合における放電電荷量Qmaxの変化の実測値である。図5に示すように、電圧V0が2700[V]近傍で、放電電荷量Qmaxが急増し、部分放電が生じていることがわかる。したがって、部分放電予測装置1において、部分放電予測処理で得られる第1導線21と第2導線22との間の部分放電開始電圧PDIVは、第1導線21と第2導線22との間の実際の部分放電開始電圧に対し、精度よく予測できることがわかる。
【0037】
このように、部分放電予測装置1において、上述の部分放電予測処理を実行することにより、第1導線21と第2導線22との間において、部分放電が発生する電圧V0の最低値である部分放電開始電圧PDIVと、電圧V0が部分放電開始電圧PDIV以上である場合に部分放電が発生する位置PSと、を精度よく予測することができる。
【0038】
図4に示すように、電圧V0を高くしていくと、部分放電が発生する位置PSは、電気力線長さL1が約0.08[mm]の周辺部分であると予測されるので、図6に示すように、第2導線22について、断面形状は変更せずに、電気力線長さL1が約0.08[mm]の周辺部分である、導体22aの略矩形状の断面の角の周辺部分を大きく面取りし、大きく面取りされた導体22aの角部分の絶縁皮膜22bの厚さtを厚くし、電気力線長さL1が約0.08[mm]の周辺部分における絶縁距離を長くした場合において、同様に、部分放電予測処理を実行する。
【0039】
すると、図6の右下に示したグラフに示すように、第2導線22について、断面形状は変更せずに、電気力線長さL1が約0.08[mm]の周辺部分である、導体22aの略矩形状の断面の角を大きく面取りし、大きく面取りされた導体22aの角部分の絶縁皮膜22bの皮膜厚tを厚くし、電気力線長さL1が約0.08[mm]の周辺部分における絶縁距離を長くした場合に得られる解析曲線C1は、電圧V0が4500[V]のときに、パッシェンカーブCp10と接する。したがって、第2導線22について、断面形状は変更せずに、電気力線長さL1が約0.08[mm]の周辺部分である、導体22aの略矩形状の断面の角を大きく面取りし、大きく面取りされた導体22aの角部分の絶縁皮膜22bの厚さtを厚くし、電気力線長さL1が約0.08[mm]の周辺部分における絶縁距離を長くした場合、第1導線21と第2導線22との間の部分放電開始電圧PDIVは、4500[V]であると予測される。さらに、電圧V0が部分放電開始電圧PDIV以上である場合に部分放電が発生する位置PSは、電気力線長さL1が約0.5[mm]の周辺部分であると予測される。
【0040】
このように、部分放電予測装置1で、部分放電予測処理を実行することによって、第1導線21と第2導線22との間の部分放電開始電圧PDIVと、部分放電が発生する位置PSを精度よく予測することができる。これにより、実際に、第1導線21及び第2導線22を配置し、第1導線21と第2導線22との間の電圧V0を変化させて、部分放電の発生を実測する必要なく、第1導線21と第2導線22との間の部分放電開始電圧をより高くするように、第1導線21と第2導線22における、導体21a、22a及び絶縁皮膜21b、22bの形状や、絶縁皮膜21b、22bの皮膜厚を、容易に、かつ、精度よく設計することができる。
【0041】
第1導線21と第2導線22とは、交差するように配置されていなくてもよい。
【0042】
図7に示すように、第1導線21と第2導線22とは、互いに対向して延びるように配置されていてもよい。
【0043】
第1導線21と第2導線22とがそれぞれ対向して延びるように配置されている場合も、第1導線21と第2導線22とが交差するように配置されている場合と同様に、導線形状・配置設定工程、電圧設定工程、及び領域設定工程を行う。そして、電気力線解析工程によって、領域設定工程で設定した予測領域Bに位置する高電位側の第1導線21の絶縁皮膜21bの開始点21cから、求められた電界ベクトルに基づいて電気力線Lefを伸ばしていき、電気力線Lefが到達した第2導線22の絶縁皮膜22bの表面を電気力線Lefの終了点22cとする、1本の電気力線Lefの解析を行う。
【0044】
このとき、第1導線21と第2導線22とが交差するように配置されている場合と同様に、電気力線解析部12は、得られた電気力線Lefの電気力線長さL1、電位差V1、及び電界強度E1を、解析曲線生成部13に出力する。
【0045】
さらに、予測領域Bに位置する第1導線21の絶縁皮膜21bの表面の複数の地点に対して、電気力線解析工程を行い、複数の電気力線Lefを得る。そして、複数の電気力線Lefにおける、電気力線長さL1、電位差V1、電界強度E1を、解析曲線生成部13に出力する。
【0046】
そして、解析曲線生成部13によって、解析曲線生成工程を行い、電気力線解析部12の電気力線解析工程で取得した、複数の電気力線Lefにおける、電気力線長さL1、電位差V1及び電界強度E1に基づいて、解析曲線C1を生成する。
【0047】
そして、第1導線21と第2導線22とが交差するように配置されている場合と同様に、部分放電予測部14によって、予測工程を行い、第1導線21と第2導線22との間における部分放電開始電圧PDIVと、第1導線21と第2導線22との間の電圧V0が部分放電開始電圧PDIV以上である場合に部分放電が発生する位置PSと、を予測する。
【0048】
このように、部分放電予測処理を実行することにより、第1導線21と第2導線22との位置関係を問わず、第1導線21と第2導線22との間において、部分放電が発生する電圧V0の最低値である部分放電開始電圧PDIVと、電圧V0が部分放電開始電圧PDIV以上である場合に部分放電が発生する位置PSと、を予測できる。
【0049】
したがって、第1導線21と第2導線22とが複雑な位置関係で配置されていても、部分放電予測処理を実行することにより、第1導線21と第2導線22との間において、部分放電が発生する電圧V0の最低値である部分放電開始電圧PDIVと、電圧V0が部分放電開始電圧PDIV以上である場合に部分放電が発生する位置PSと、を予測できる。
【0050】
<表示工程>
部分放電予測装置1は、表示処理部15によって、表示部16に表示する情報を取得し、表示部16に表示する、表示工程を行う。
【0051】
部分放電予測装置1は、部分放電予測部14によって得られた、第1導線21と第2導線22との間において、部分放電が発生する電圧V0の最低値である部分放電開始電圧PDIVと、電圧V0が部分放電開始電圧PDIV以上である場合に部分放電が発生する位置PSと、の少なくとも一方を表示部16に表示する。
【0052】
表示処理部15は、所定の電圧V0において、電気力線解析部12によって導出された各電気力線Lefについて、電界強度E1と、パッシェンカーブCp10において、ギャップ長を電気力線Lefの電気力線長さL1としたときの電界強度Epと、の差である指標Yeを算出する。指標Yeは下記の式(1)によって求められる。
Ye=E1-Ep ・・・(1)
【0053】
表示処理部15は、指標Yeの値に応じて、各電気力線Lefの表示色又は表示濃さを設定する。例えば、指標Yeの値が大きくなるほど、各電気力線Lefが濃くなるように設定する。表示処理部15は、指標Yeの値が大きくなるほど各電気力線Lefが赤色に、指標Yeの値が小さくなるほど各電気力線Lefが紫色になるように、各電気力線Lefの表示色を設定してもよい。
【0054】
表示処理部15は、設定部11の導線配置設定部111によって設定された、第1導線21の導体21a及び絶縁皮膜21b、並びに、第2導線22の導体22a及び絶縁皮膜22bの3次元位置情報に基づいて、第1導線21及び第2導線22の表示情報を取得する。
【0055】
図8に示すように、表示部16は、第1導線21及び第2導線22の表示情報に基づいて、第1導線21及び第2導線22を表示し、さらに、所定の電圧V0において、電気力線解析工程によって導出された各電気力線Lefを、表示処理部15で設定された表示色又は表示濃さで表示する。
【0056】
これにより、所定の電圧V0のとき、第1導線21と第2導線22との間において、部分放電が発生するか否か、及び、第1導線21と第2導線22との間のどの部分で部分放電が発生しやすいか、を容易に把握することができる。
【0057】
なお、表示部16は、図4に示す、解析曲線生成部13で得られた複数の電圧V0それぞれの解析曲線C1と、パッシェンカーブCp10と、の関係を示したグラフを表示してもよい。また、表示部16は、図8に示す、第1導線21及び第2導線22を表示し、所定の電圧V0において、電気力線解析部12によって導出された各電気力線Lefを、表示処理部15で設定された表示色又は表示濃さで表示する表示形態と、図4に示す、解析曲線生成工程で得られた複数の電圧V0それぞれの解析曲線C1と、パッシェンカーブCp10と、の関係を示したグラフと、の双方を一画面に表示してもよい。また、表示部16は、切替操作により、図8に示す、第1導線21及び第2導線22を表示し、所定の電圧V0において、電気力線解析部12によって導出された各電気力線Lefを、表示処理部15で設定された表示色又は表示濃さで表示する表示形態と、図4に示す、解析曲線生成部13で得られた複数の電圧V0それぞれの解析曲線C1と、パッシェンカーブCp10と、の関係を示したグラフと、を切り替え可能に表示してもよい。
【0058】
[第2実施形態]
続いて、本発明の第2実施形態の部分放電予測装置1について、図9及び図10を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態の部分放電予測装置1と同一の構成要素については同一の符号を付して説明を省略又は簡略化する。
【0059】
第1実施形態の部分放電予測装置1では、解析曲線生成部13によって行われる解析曲線生成工程は、横軸を電気力線長さL1とし、縦軸を電界強度E1として、電気力線解析工程で取得した複数の電気力線Lefの電気力線長さL1と電界強度E1との各点をプロットし、プロットされた各点に基づいて、プロットされた各点を繋げる、プロットされた各点から近似曲線を生成する等によって、解析曲線C1を生成するものとしたが、第2実施形態の部分放電予測装置1では、解析曲線生成部13によって行われる解析曲線生成工程は、横軸を電気力線長さL1とし、縦軸を電位差V1として、電気力線解析工程で取得した複数の電気力線Lefの電気力線長さL1と電位差V1との各点をプロットし、プロットされた各点に基づいて、プロットされた各点を繋げる、プロットされた各点から近似曲線を生成する等によって、解析曲線C2を生成する。以下、第1実施形態の部分放電予測装置1と第2実施形態の部分放電予測装置1との相違点について詳細に説明する。
【0060】
本実施形態では、図7に示すように、第1導線21と第2導線22とが、それぞれ対向して延びるように配置されており、領域設定工程によって、図7に示す予測領域Bを設定した場合を例に説明する。
【0061】
<解析曲線生成工程>
部分放電予測装置1は、解析曲線生成部13によって、解析曲線C2を生成する、解析曲線生成工程を行う。解析曲線生成工程では、電気力線解析部12の電気力線解析工程で取得した、複数の電気力線Lefにおける、電気力線長さL1、電位差V1及び電界強度E1に基づいて、解析曲線C2を生成する。
【0062】
具体的には、図9に示すように、横軸を電気力線長さL1とし、縦軸を電位差V1として、電気力線解析工程で取得した複数の電気力線Lefの電気力線長さL1と電位差V1との各点をプロットする。プロットされた各点に基づいて、プロットされた各点を繋げる、プロットされた各点から近似曲線を生成する等によって、解析曲線C2を生成する。
【0063】
第1実施形態と同様、予測領域Bに位置する第1導線21の絶縁皮膜21bの表面の多数の地点に対して、電気力線解析工程を行うことによって、解析曲線生成工程において、より高精度の解析曲線C2を得ることができる。
【0064】
さらに、設定部11の電圧設定部113によって、第1導線21と第2導線22との間の電圧V0の設定を変更して、改めて電気力線解析工程及び解析曲線生成工程を行うことによって、複数の解析曲線C2を得る。
【0065】
図9には、図7に示すように、第1導線21と第2導線22とが、それぞれ対向して延びるように配置されている場合の予測領域Bにおいて、電圧V0が1500[V]である場合の解析曲線C2である解析曲線Ch、電圧V0が1750[V]である場合の解析曲線C2である解析曲線Ci、電圧V0が2000[V]である場合の解析曲線C2である解析曲線Cj、電圧V0が2250[V]である場合の解析曲線C2である解析曲線Ck、が示されている。
【0066】
<予測工程>
次に、部分放電予測装置1は、部分放電予測部14によって、解析曲線生成工程で得られた解析曲線C2と、パッシェンカーブCp20と、を比較することにより、第1導線21と第2導線22との間における部分放電開始電圧PDIVと、第1導線21と第2導線22との間の電圧V0が部分放電開始電圧PDIV以上である場合に部分放電が発生する位置PSと、を予測する予測工程を行う。
【0067】
予測工程では、まず、横軸をパッシェンカーブにおける2点間のギャップ長とし、縦軸をパッシェンカーブにおける2点間のギャップ間電位差として、パッシェンカーブCp20を生成し、解析曲線C2と重ね合わせる。
【0068】
そして、パッシェンカーブCp20と、解析曲線C2とを比較することによって、第1導線21と第2導線22との間における部分放電開始電圧PDIVと、第1導線21と第2導線22との間の電圧V0が部分放電開始電圧PDIV以上である場合に部分放電が発生する位置PSと、を予測する。
【0069】
解析曲線C2が、パッシェンカーブCp20よりも下を通る場合には、第1導線21と第2導線22との間において、電圧V0では部分放電が発生しないと予測する。図9に示す解析曲線Ch、Ciは、パッシェンカーブCp20よりも下を通っているので、第1導線21と第2導線22との間において、電圧V0が1750[V]以下の場合は、部分放電が発生しないと予測する。
【0070】
解析曲線C2が、パッシェンカーブCp20と接する場合、その電圧V0は、第1導線21と第2導線22との間において、部分放電が発生する電圧V0の最低値である部分放電開始電圧PDIVと予測する。具体的には、図9に示す解析曲線Cjが、パッシェンカーブCp20と接している。よって、第1導線21と第2導線22との間の部分放電開始電圧PDIVは、約2000[V]であり、電気力線長さL1が約0.08[mm]の位置PSで、部分放電が発生すると予測する。
【0071】
解析曲線C2が、パッシェンカーブCp20と交差する場合には、第1導線21と第2導線22との間において、電圧V0で部分放電が発生すると予測する。さらに、電圧V0において、解析曲線C2がパッシェンカーブCp20の上を通る電気力線長さL1の部分が、部分放電が発生する位置PSであると予測する。具体的には、図9に示す解析曲線Ckは、パッシェンカーブCp20と交差しているので、第1導線21と第2導線22との間において、電圧V0が2250[V]の場合は、部分放電が発生すると予測する。さらに、電圧V0が2250[V]の場合、解析曲線C2がパッシェンカーブCp20の上を通る電気力線長さL1が約0.04[mm]~約0.12[mm]の部分が、部分放電が発生する位置PSであると予測する。
【0072】
このように、部分放電予測装置1において、上述の部分放電予測処理を実行することにより、第1導線21と第2導線22との間において、部分放電が発生する電圧V0の最低値である部分放電開始電圧PDIVと、電圧V0が部分放電開始電圧PDIV以上である場合に部分放電が発生する位置PSと、を精度よく予測することができる。
【0073】
<表示工程>
部分放電予測装置1は、表示処理部15によって、表示部16に表示する情報を取得し、表示部16に表示する、表示工程を行う。
【0074】
部分放電予測装置1は、部分放電予測部14によって得られた、第1導線21と第2導線22との間において、部分放電が発生する電圧V0の最低値である部分放電開始電圧PDIVと、電圧V0が部分放電開始電圧PDIV以上である場合に部分放電が発生する位置PSと、の少なくとも一方を表示部16に表示する。
【0075】
表示処理部15は、所定の電圧V0において、電気力線解析部12によって導出された各電気力線Lefについて、電位差V1と、パッシェンカーブCp20において、ギャップ長を電気力線Lefの電気力線長さL1としたときの電位差Vpと、の差である指標Yvを算出する。指標Yvは下記の式(2)によって求められる。
Yv=V1-Vp ・・・(2)
【0076】
表示処理部15は、指標Yvの値に応じて、各電気力線Lefの表示色又は表示濃さを設定する。例えば、指標Yvの値が大きくなるほど、各電気力線Lefが濃くなるように設定する。表示処理部15は、指標Yvの値が大きくなるほど各電気力線Lefが赤色に、指標Yvの値が小さくなるほど各電気力線Lefが紫色になるように、各電気力線Lefの表示色を設定してもよい。
【0077】
表示処理部15は、設定部11の導線配置設定部111によって設定された、第1導線21の導体21a及び絶縁皮膜21b、並びに、第2導線22の導体22a及び絶縁皮膜22bの3次元位置情報に基づいて、第1導線21及び第2導線22を表示する表示情報を取得する。
【0078】
図10に示すように、表示部16は、第1導線21及び第2導線22を表示する表示情報に基づいて、第1導線21及び第2導線22を表示し、さらに、所定の電圧V0において、電気力線解析工程によって得られた各電気力線Lefを、表示処理部15で設定された表示色又は表示濃さで表示する。
【0079】
これにより、所定の電圧V0のとき、第1導線21と第2導線22との間において、部分放電が発生するか否か、及び、第1導線21と第2導線22との間のどの部分で部分放電が発生しやすいか、を容易に把握することができる。
【0080】
[第3実施形態]
続いて、本発明の第3実施形態の部分放電予測装置1について、図11及び図12を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、第2実施形態の部分放電予測装置1と同一の構成要素については同一の符号を付して説明を省略又は簡略化する。
【0081】
第2実施形態の部分放電予測装置1では、部分放電予測部14によって行われる予測工程は、解析曲線C2と、パッシェンカーブCp20と、を比較することにより、第1導線21と第2導線22との間における部分放電開始電圧PDIVと、第1導線21と第2導線22との間の電圧V0が部分放電開始電圧PDIV以上である場合に部分放電が発生する位置PSと、を予測する予測工程を行うものとしたが、第3実施形態の部分放電予測装置1では、部分放電予測部14によって行われる予測工程は、解析曲線C2と、補正パッシェンカーブCp21と、を比較することにより、第1導線21と第2導線22との間における部分放電開始電圧PDIVと、第1導線21と第2導線22との間の電圧V0が部分放電開始電圧PDIV以上である場合に部分放電が発生する位置PSと、を予測する。以下、第1実施形態の部分放電予測装置1と第2実施形態の部分放電予測装置1との相違点について詳細に説明する。
【0082】
<環境条件設定工程>
図11に示すように、パッシェンカーブCp20は、環境条件によって変動する。具体的には、パッシェンカーブCp20は、第1導線21及び第2導線22が配置されている空間の気圧P、及び、第1導線21と第2導線22との間の空気の温度Tによって変動する。
【0083】
部分放電予測装置1は、設定部11の環境条件設定部117によって、第1導線21及び第2導線22が配置されている空間の気圧P、及び、第1導線21と第2導線22との間の空気の温度Tを設定する。
【0084】
なお、第1導線21における導体21aの電気伝導率及び絶縁皮膜21bの比誘電率、並びに、第2導線22における導体22aの電気伝導率及び絶縁皮膜22bの比誘電率も、第1導線21及び第2導線22が配置されている空間の気圧P、及び、第1導線21と第2導線22との間の空気の温度Tによって変動する。
【0085】
したがって、導線配置設定部111において、第1導線21における導体21aの電気伝導率及び絶縁皮膜21bの比誘電率、並びに、第2導線22における導体22aの電気伝導率及び絶縁皮膜22bの比誘電率を、それぞれ設定できるようにした場合、環境条件設定部117によって設定された、気圧P及び空気の温度Tに基づいて、第1導線21における導体21aの電気伝導率及び絶縁皮膜21bの比誘電率、並びに、第2導線22における導体22aの電気伝導率及び絶縁皮膜22bの比誘電率を修正する工程を含んでいてもよいし、設定された第1導線21における導体21aの電気伝導率及び絶縁皮膜21bの比誘電率、並びに、第2導線22における導体22aの電気伝導率及び絶縁皮膜22bの比誘電率を修正するように促す工程を含んでいてもよい。
【0086】
<予測工程>
部分放電予測装置1は、部分放電予測部14によって、環境条件設定部117で設定された気圧P及び温度Tに基づいて、補正パッシェンカーブCp21を生成する。図11には、温度Tが20[℃]、気圧Pが1000[hPa]のパッシェンカーブCp20と、温度Tが150[℃]、気圧Pが1000[hPa]の補正パッシェンカーブCp21aと、温度Tが20[℃]、気圧Pが400[hPa]の補正パッシェンカーブCp21bと、温度Tが150[℃]、気圧Pが400[hPa]の補正パッシェンカーブCp21cと、を示している。
【0087】
図11に示すように、温度Tが20[℃]、気圧Pが1000[hPa]のパッシェンカーブCp20と比較して、補正パッシェンカーブCp21は、温度Tが高くなると、ギャップ長に対するギャップ間電位差が小さくなり、気圧Pが低くなると、ギャップ長に対するギャップ間の電位差が小さくなる。
【0088】
そして、予測工程において、補正パッシェンカーブCp21と、解析曲線C2とを比較することによって、第1導線21と第2導線22との間における部分放電開始電圧PDIVと、第1導線21と第2導線22との間の電圧V0が部分放電開始電圧PDIV以上である場合に部分放電が発生する位置PSと、を予測する。
【0089】
解析曲線C2が、補正パッシェンカーブCp21よりも下を通る場合には、第1導線21と第2導線22との間において、電圧V0では部分放電が発生しないと予測する。
【0090】
解析曲線C2が、補正パッシェンカーブCp21と接する場合、その電圧V0は、第1導線21と第2導線22との間において、部分放電が発生する電圧V0の最低値である部分放電開始電圧PDIVであり、解析曲線C2が補正パッシェンカーブCp21と接する電気力線長さL1の位置PSで、部分放電が発生すると予測する。
【0091】
解析曲線C2が、補正パッシェンカーブCp21と交差する場合には、第1導線21と第2導線22との間において、電圧V0で部分放電が発生すると予測する。さらに、電圧V0において、解析曲線C2が補正パッシェンカーブCp21の上を通る電気力線長さL1の部分が、部分放電が発生する位置PSであると予測する。
【0092】
図11に示すように、気圧Pが1000[hPa]、温度Tが20[℃]、である場合のパッシェンカーブCp20よりも、温度Tが150[℃]、気圧Pが400[hPa]の補正パッシェンカーブCp21cは、ギャップ長に対するギャップ間の電位差が小さくなる。そして、解析曲線C2は、パッシェンカーブCp20と電気力線長さL1が約0.08[mm]の部分で接しているが、電気力線長さL1が約0.02[mm]~約0.28[mm]の部分で、補正パッシェンカーブCp21cの上を通っている。
【0093】
したがって、予測工程によって、解析曲線C2が補正パッシェンカーブCp21cの上を通る電気力線長さL1が約0.02[mm]~約0.28[mm]の部分が、部分放電が発生する位置PSであると予測される。
【0094】
このように、部分放電予測装置1において、補正パッシェンカーブCp21を用いて部分放電予測処理を実行することにより、多様な環境条件の下で、第1導線21と第2導線22との間において、部分放電が発生する電圧V0の最低値である部分放電開始電圧PDIVと、電圧V0が部分放電開始電圧PDIV以上である場合に部分放電が発生する位置PSと、をより精度よく予測することができる。
【0095】
<表示工程>
図12は、設定部11の環境条件設定部117によって、第1導線21及び第2導線22が配置されている空間の気圧Pを150[℃]、第1導線21と第2導線22との間の空気の温度Tを400[hPa]と設定し、設定部11の電圧設定部113によって、第1導線21と第2導線22との間の電圧V0を2250[V]と設定した場合に、表示部16に表示される予測結果を示している。
【0096】
図12に示すように、気圧Pが1000[hPa]、温度Tが20[℃]、である場合の図10と比較して、温度Tが150[℃]、気圧Pが400[hPa]である場合、部分放電が発生する位置PSの領域が大きくなることを、容易に把握することができる。
【0097】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
【0098】
例えば、第3実施形態では、部分放電予測部14によって、環境条件設定部117で設定された気圧P及び温度Tに基づいて、パッシェンカーブCp20を補正した補正パッシェンカーブCp21を生成するものとしたが、部分放電予測部14によって、環境条件設定部117で設定された気圧P及び温度Tに基づいて、パッシェンカーブCp10を補正した補正パッシェンカーブを生成するものとしてもよい。
【0099】
また、本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。なお、括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を示しているが、これに限定されるものではない。
【0100】
(1) 2つの導線(第1導線21、第2導線22)間において、部分放電が発生する前記2つの導線間の電圧(電圧V0)の最低値である部分放電開始電圧(部分放電開始電圧PDIV)と、部分放電が発生する位置(位置PS)と、を予測する、部分放電予測装置(部分放電予測装置1)であって、
前記部分放電予測装置は、設定部(設定部11)と、電気力線解析部(電気力線解析部12)と、解析曲線生成部(解析曲線生成部13)と、部分放電予測部(部分放電予測部14)と、を備え、
前記設定部によって、前記2つの導線の形状及び配置と、前記2つの導線間の前記電圧と、部分放電予測を行う予測領域(予測領域A、B)と、が設定され、
前記電気力線解析部によって、前記設定部で設定された、前記2つの導線の前記形状及び前記配置と、前記2つの導線との間の前記電圧と、に基づいて、前記予測領域について、前記2つの導線間の電気力線(電気力線Lef)を導出し、前記電気力線の電気力線長さ(電気力線長さL1)と、前記電気力線における開始点(開始点21c)と終了点(終了点22c)との間の電位差(電位差V1)及び電界強度(電界強度E1)の少なくとも一方と、を取得し、
前記解析曲線生成部によって、前記電気力線解析部で取得した、前記電気力線長さと、前記電位差又は前記電界強度と、に基づいて、解析曲線(解析曲線C1、C2)を生成し、
前記部分放電予測部によって、前記解析曲線生成部で生成された前記解析曲線と、パッシェンカーブ(パッシェンカーブCp10、Cp20)と、を比較することにより、前記2つの導線間において、前記部分放電開始電圧と、部分放電が発生する前記位置と、を予測する、部分放電予測装置。
【0101】
(1)によれば、2つの導線間の電気力線を導出し、電気力線長さと、電気力線における開始点と終了点との間の電位差又は電界強度と、に基づいて解析曲線を生成し、解析曲線と、パッシェンカーブと、を比較することにより、2つの導線間において、部分放電開始電圧と、部分放電が発生する位置と、を予測するので、2つの導線が複雑な位置関係で配置されていても、2つの導線間において、部分放電開始電圧と、部分放電が発生する位置と、を予測できる。
【0102】
(2) (1)に記載の部分放電予測装置であって、
前記部分放電予測装置は、表示処理部(表示処理部15)と、表示部(表示部16)と、をさらに備え、
前記表示処理部は、
前記2つの導線間の所定の前記電圧において、前記電気力線解析部によって導出された前記電気力線について、前記電気力線解析部によって算出された前記電位差又は前記電界強度と、前記パッシェンカーブにおいて、ギャップ長を前記電気力線長さとしたときの電位差(電位差Vp)又は電界強度(電界強度Ep)と、の差(指標Ye、Yv)に基づいて、前記電気力線の表示色又は表示濃さを設定し、
前記設定部によって設定された、前記2つの導線の前記形状及び前記配置に基づいて、前記2つの導線の表示情報を取得し、
前記表示部は、前記表示処理部で取得した前記2つの導線の前記表示情報に基づいて、前記2つの導線を表示し、前記所定の前記電圧おいて、前記電気力線解析部によって導出された前記電気力線を、前記表示処理部で設定された前記表示色又は前記表示濃さで表示する、部分放電予測装置。
【0103】
(2)によれば、表示処理部で取得した2つの導線の表示情報に基づいて2つの導線を表示し、所定の電圧おいて、電気力線解析部によって導出された電気力線を、電気力線解析工程によって算出された電位差又は電界強度と、パッシェンカーブにおいて、ギャップ長を電気力線長さとしたときの電位差又は電界強度と、の差に基づいて設定された表示色又は表示濃さで表示するので、所定の電圧のとき、2つの導線間において、部分放電が発生するか否か、及び、2つの導線間のどの部分で部分放電が発生しやすいか、を容易に把握することができる。
【0104】
(3) (1)又は(2)に記載の部分放電予測装置であって、
前記設定部によって、前記2つの導線が配置された空間の気圧(気圧P)と、前記2つの導線間の空気の温度(温度T)と、が設定され、
前記パッシェンカーブは、前記設定部で設定された前記気圧及び前記温度に基づいて生成された補正パッシェンカーブ(補正パッシェンカーブCp21)である、部分放電予測装置。
【0105】
(3)によれば、パッシェンカーブは、設定部で設定された気圧及び温度に基づいて生成された補正パッシェンカーブであるので、多様な環境条件の下で、2つの導線間において、部分放電開始電圧と、部分放電が発生する位置と、をより精度よく予測することができる。
【0106】
(4) 2つの導線(第1導線21、第2導線22)間において、部分放電が発生する前記2つの導線間の電圧(電圧V0)の最低値である部分放電開始電圧(部分放電開始電圧PDIV)と、部分放電が発生する位置(位置PS)と、を予測する、部分放電予測方法であって、
導線形状配置設定工程と、電圧設定工程と、領域設定工程と、電気力線解析工程と、解析曲線生成工程と、予測工程と、を含み、
前記導線形状配置設定工程によって、前記2つの導線の形状及び配置を設定し、
前記電圧設定工程によって、前記2つの導線間の前記電圧を設定し、
前記領域設定工程によって、部分放電予測を行う予測領域(予測領域A、B)を設定し、
前記電気力線解析工程によって、前記導線形状配置設定工程で設定された、前記2つの導線の前記形状及び前記配置と、前記電圧設定工程で設定された、前記2つの導線との間の前記電圧と、に基づいて、前記予測領域について、前記2つの導線間の電気力線(電気力線Lef)を導出し、前記電気力線の電気力線長さ(電気力線長さL1)と、前記電気力線における開始点(開始点21c)と終了点(終了点22c)との間の電位差(電位差V1)及び電界強度(電界強度E1)の少なくとも一方と、を取得し、
前記解析曲線生成工程によって、前記電気力線解析工程で取得した、前記電気力線長さと、前記電位差又は前記電界強度と、に基づいて、解析曲線(解析曲線C1、C2)を生成し、
前記予測工程によって、前記解析曲線生成工程で生成された前記解析曲線と、パッシェンカーブ(パッシェンカーブCp10、Cp20)と、を比較することにより、前記2つの導線間において、前記部分放電開始電圧と、部分放電が発生する前記位置と、を予測する、部分放電予測方法。
【0107】
(4)によれば、2つの導線間の電気力線を導出し、電気力線長さと、電気力線における開始点と終了点との間の電位差又は電界強度と、に基づいて解析曲線を生成し、解析曲線と、パッシェンカーブと、を比較することにより、2つの導線間において、部分放電開始電圧と、部分放電が発生する位置と、を予測するので、2つの導線が複雑な位置関係で配置されていても、2つの導線間において、部分放電開始電圧と、部分放電が発生する位置と、を予測できる。
【0108】
(5) (4)に記載の部分放電予測方法であって、
前記部分放電予測方法は、表示工程をさらに含み、
前記表示工程によって、
前記2つの導線間の所定の前記電圧において、前記電気力線解析工程によって導出された前記電気力線について、前記電気力線解析工程によって算出された前記電位差又は前記電界強度と、前記パッシェンカーブにおいて、ギャップ長を前記電気力線長さとしたときの電位差(電位差Vp)又は電界強度(電界強度Ep)と、の差(指標Ye、Yv)に基づいて、前記電気力線の表示色又は表示濃さを設定し、
前記導線形状配置設定工程によって設定された、前記2つの導線の前記形状及び前記配置に基づいて、前記2つの導線の表示情報を取得し、
前記表示情報に基づいて、前記2つの導線を表示し、前記所定の前記電圧おいて、前記電気力線解析工程によって導出された前記電気力線を、設定された前記表示色又は前記表示濃さで表示する、部分放電予測方法。
【0109】
(5)によれば、2つの導線の表示情報に基づいて2つの導線を表示し、所定の電圧において、電気力線解析工程によって導出された電気力線を、電気力線解析工程によって算出された電位差又は電界強度と、パッシェンカーブにおいて、ギャップ長を電気力線の電気力線長さとしたときの電位差又は電界強度と、の差に基づいて設定された表示色又は表示濃さで表示するので、所定の電圧のとき、2つの導線間において、部分放電が発生するか否か、及び、2つの導線間のどの部分で部分放電が発生しやすいか、を容易に把握することができる。
【0110】
(6) (4)又は(5)に記載の部分放電予測方法であって、
前記部分放電予測方法は、環境条件設定工程をさらに含み、
前記環境条件設定工程によって、前記2つの導線が配置された空間の気圧(気圧P)と、前記2つの導線間の空気の温度(温度T)と、が設定され、
前記パッシェンカーブは、前記環境条件設定工程で設定された前記気圧及び前記温度に基づいて生成された補正パッシェンカーブ(補正パッシェンカーブCp21)である、部分放電予測方法。
【0111】
(6)によれば、パッシェンカーブは、環境条件設定工程で設定された気圧及び温度に基づいて生成された補正パッシェンカーブであるので、多様な環境条件の下で、2つの導線間において、部分放電開始電圧と、部分放電が発生する位置と、をより精度よく予測することができる。
【符号の説明】
【0112】
1 部分放電予測装置
11 設定部
12 電気力線解析部
13 解析曲線生成部
14 部分放電予測部
15 表示処理部
16 表示部
21 第1導線(導線)
21c 開始点
22 第2導線(導線)
22c 終了点
A、B 予測領域
Lef 電気力線
L1 電気力線長さ
C1、C2 解析曲線
Cp10、Cp20 パッシェンカーブ
Cp21 補正パッシェンカーブ
E1、Ep 電界強度
V1、Vp 電位差
V0 電圧
PDIV 部分放電開始電圧
PS 位置
P 気圧
T 温度
Ye、Yv 指標(差)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12