(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】吸引車
(51)【国際特許分類】
E03F 7/10 20060101AFI20231025BHJP
B60P 3/00 20060101ALI20231025BHJP
F04F 5/44 20060101ALI20231025BHJP
F04C 25/02 20060101ALI20231025BHJP
C02F 11/00 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
E03F7/10 Z
B60P3/00 Q
F04F5/44 C
F04C25/02 P
C02F11/00 A ZAB
(21)【出願番号】P 2020061994
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中津 俊介
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-237906(JP,A)
【文献】実公昭58-007111(JP,Y2)
【文献】実開昭51-006646(JP,U)
【文献】特開2005-111454(JP,A)
【文献】実公昭50-021686(JP,Y1)
【文献】特表平08-506398(JP,A)
【文献】実開昭59-167814(JP,U)
【文献】実開平6-67175(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 7/10
B60P 3/00
F04F 5/44
F04C 25/02
C02F 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回収対象物を回収するレシーバタンクと、
上記レシーバタンクの内部エアを加減圧してエアの流れを発生させる水封式ポンプとを備えた吸引車であって、
上記レシーバタンクと上記水封式ポンプとをつなぐ配管には、該配管の上流側よりも高い圧力のエアを駆動エアとして導入するエゼクタが介設されて
おり、
上記駆動エアは、車載のエアタンクから駆動エア用配管を通じて供給可能に構成されている
ことを特徴とする吸引車。
【請求項2】
請求項
1に記載の吸引車において、
上記エアタンクは、車両制動時に使用される加圧エアを蓄積するものである
ことを特徴とする吸引車。
【請求項3】
請求項
2に記載の吸引車において、
上記エゼクタと上記エアタンクとをつなぐ上記駆動エア用配管には、車両走行時に上記エゼクタへの駆動エアの供給を停止させるためのストップバルブが介設されている
ことを特徴とする吸引車。
【請求項4】
請求項
1から
3のいずれか1つに記載の吸引車において、
上記駆動エア用配管には、駆動エア切換バルブが介設され、
該駆動エア切換バルブには、車両外部と連通する外部エア導入管が接続され、
該駆動エア切換バルブの切換により、上記駆動エアを上記エアタンクらの加圧エアと上記外部エア導入管からの外部エアとのいずれか一方に切換可能に構成されている
ことを特徴とする吸引車。
【請求項5】
請求項
4の吸引車において、
上記駆動エア切換バルブは、所定の設定圧を境に自動で上記加圧エアと上記外部エアとの切換を行うように構成されている
ことを特徴とする吸引車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回収対象物を回収するレシーバタンクの内部エアを加減圧してエアの流れを発生させる水封式ポンプを備えた吸引車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建設作業現場、下水処理場等において、汚泥、土砂、廃液等の回収対象物をレシーバタンクに回収する吸引装置を備え、この回収した回収対象物を処理場等の所定の場所に運搬する吸引車が知られている。例えば、特許文献1のように、吸引装置が、水封式ポンプを備えたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、
図6に示すように、一般的な水封式ポンプ125では、円筒形のケーシング101に水を入れ、インペラ102を偏心させて回転させると、封水は遠心力によって、ケーシング101の内筒壁に押し付けられるように流れて水還流103を形成し、その内周部に三日月状断面の空間部が生じる。この空間部において、隣合った2枚の羽根と水還流103内面とによって形成される独立した気室は、インペラ102の回転と共に拡大、縮小をくり返すので、この気室の側面の適当な位置に吸気口104と排気口105を開けておけば、水還流103をピストン代わりとする往復式吸引機の回転連続化が可能となる。つまり、水封式ポンプ125は水を環状に回転させることで負圧を発生させるポンプである。このように水がポンプの一部を形成するため、清浄かつ静粛で金属接触がなく、油不要など多くの利点を持つ。また、「インペラ102とケーシング101との間に大きなスキがあるため異物に強い」、「水が無くなるとポンプとして動作しなくなることから焼付きしにくい」といった特徴がある。
【0005】
しかしながら、この種の水封式ポンプ125では、ポンプ内の空間部は封水が蒸発したベーパー(気体となった蒸気)で充満しているため、高真空域での特性は吸込ガス温度と封水温度によって変化するベーパープレッシャーによって影響を受ける。このため、封水が高温になるにつれて負圧が低下するという問題がある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、水封式ポンプにおいて封水が高温になるにつれて負圧が低下するのを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明では、車載エアタンクのエアを利用可能なエゼクタ装置を取り付けた。
【0008】
具体的には、第1の発明では、回収対象物を回収するレシーバタンクと、
上記レシーバタンクの内部エアを加減圧してエアの流れを発生させる水封式ポンプとを備えた吸引車を対象とする。
【0009】
そして、上記吸引車において、
上記レシーバタンクと上記水封式ポンプとをつなぐ配管には、該配管の上流側よりも高い圧力のエアを駆動エアとして導入するエゼクタが介設されている。
【0010】
ここで、「介設する」とは、部材間に設けるという意味である。「エア」は、空気を含む概念である。
【0011】
上記の構成によると、エゼクタを設けることで、水封式ポンプによって負圧状態になっている配管に、大気など配管の上流側よりも高い圧力のエアを導入して高速でエアを噴出させることで、周囲がさらに減圧される。また、ポンプ本体には、配管の上流側よりも高い圧力のエアが導入されるので、キャビテーションは起こりにくい。さらに、大気などの配管の上流側よりも高い圧力のエアを導入することで、封水温度を低減させる効果を期待でき、連続運転時の吸引性能低下を抑制できる。
【0012】
第2の発明では、第1の発明において、
上記駆動エアは、車載のエアタンクから駆動エア用配管を通じて供給可能に構成されている。
【0013】
ここで、「駆動エアは、車載のエアタンクから駆動エア用配管を通じて供給可能」は、常にエアタンクから駆動エア用配管を通じて供給するという意味ではなく、必要なときに供給できるという意味である。
【0014】
上記の構成によると、水封式ポンプの駆動時など大気とレシーバタンク内との差圧が小さいときは、水封式ポンプは発熱しにくいため、大気圧を利用しても冷却能力を十分に発揮できる。一方、負圧が高まってくると、水封式ポンプの負荷が増大し、発熱が大きくなって、水温上昇しやすくなる。そこで、エアタンクの加圧エアを水封式ポンプ内に送ると、加圧エアが膨張して圧力が下がるときに当該エアの温度が下がるので、封水温度の上昇を抑えることができる。
【0015】
第3の発明では、第2の発明において、
上記エアタンクは、車両制動時に使用される加圧エアを蓄積するものである。
【0016】
上記の構成によると、標準装備で搭載される車両制動用エアタンクからの加圧エアを駆動エアとして利用すればよく、水封式ポンプのために別途エアタンクを設ける必要がない。通常は、吸引作業時に車両は走行しないので、車両制動用のエアタンクを兼用しても走行には問題がない。
【0017】
第4の発明では、第3の発明において、
上記エゼクタと上記エアタンクとをつなぐ上記駆動エア用配管には、車両走行時に上記エゼクタへの駆動エアの供給を停止させるためのストップバルブが介設されている。
【0018】
上記の構成によると、ストップバルブにより、エアタンクからエゼクタへは加圧エアが供給されないので、車両走行時におけるエアタンクによる車両制動動作を阻害することはない。
【0019】
第5の発明では、第2から第4のいずれか1つの発明において、
上記駆動エア用配管には、駆動エア切換バルブが介設され、該駆動エア切換バルブには、車両外部と連通する外部エア導入管が接続され、該駆動エア切換バルブの切換により、上記駆動エアを上記エアタンクらの加圧エアと上記外部エア導入管からの外部エアとのいずれか一方に切換可能に構成されている。
【0020】
上記の構成によると、通常は外部エアを外部エア導入管から導入し、必要なときだけエアタンクからの加圧エアを使用することにより、エアタンクの加圧エアが足りなくなるのが避けられる。
【0021】
第6の発明では、第5の発明において、
上記駆動エア切換バルブは、所定の設定圧を境に自動で上記加圧エアと上記外部エアとの切換を行うように構成されている。
【0022】
上記の構成によると、レシーバタンク内と大気との差圧が小さいときには、外部エアを取り入れるように駆動エア切換バルブが切り換えられる。一方で、レシーバタンク内の負圧が高まってくると、レシーバタンク内のエアが薄まって水封式ポンプがエアを十分吸気できなくなることから、レシーバタンク内のエアが薄くなる所定圧を予め設定しておき、その所定圧よりも負圧が高まると、駆動エア切換バルブを自動で加圧エア側に切り換えるようにしておく。そうすることで、レシーバタンク内のエアが薄くなると、エアタンクの加圧エアを水封式ポンプ内に送ってエゼクタ効果により負圧効果を高めつつ、水封式ポンプには十分なエアが供給され、安定した運転が可能になる。併せて、水温上昇を抑えられる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明によれば、エゼクタを用いて、レシーバタンクと水封式ポンプとをつなぐ配管の上流側よりも高い圧力のエアを駆動エアとして水封式ポンプに導入することにより、封水が高温になるのを防ぎつつ負圧が低下するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1A】吸引時の水封式ポンプを含むエアの流れを説明する図である。
【
図1B】加圧時の水封式ポンプを含むエアの流れを説明する図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る水封式ポンプを有する吸引車を示す側面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る水封式ポンプを有する吸引車を示す平面図である。
【
図4】エアタンクからエゼクタへのエアの流れを示す空圧回路図である。
【
図6】水封式ポンプの作動を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
図2及び
図3は、本発明の実施形態に係る吸引車2を示し、この吸引車2の車台3上のサブフレーム4上に吸引装置1が設けられている。
【0027】
具体的には、サブフレーム4の後部に、例えば、汚泥、土砂、廃液等よりなる回収対象物を回収するレシーバタンク5が搭載されている。レシーバタンク5は、例えば、後端開口を有する断面円形容器状のタンク本体5aと、この後端開口を開閉するテールゲート5cとを有する。テールゲート5cは、例えば、タンク本体5aの上部後端部にヒンジピン5bを介して回動自在に軸支されている。タンク本体5aとテールゲート5cとの間には、開閉シリンダ5dが設けられており、この開閉シリンダ5dを伸縮操作することで、テールゲート5cがタンク本体5aの後端開口を開閉可能となっている。
【0028】
テールゲート5cの下部には、回収対象物の吸引口となる開閉弁付の吸引口8と、回収対象物の排出口となる開閉弁付の排出口9とが設けられている。
【0029】
そして、レシーバタンク5は、サブフレーム4の後方に設けた傾倒軸10を介してサブフレーム4に対して傾倒可能に軸支されている。すなわち、サブフレーム4とレシーバタンク5との間には、傾倒シリンダ11が設けられている。この傾倒シリンダ11を伸縮操作することで、レシーバタンク5が傾倒軸10の周りに起立回動又は倒伏回動するようになっている。
【0030】
詳しくは後述するが、吸引装置1がレシーバタンク5内に回収対象物を吸引し回収する場合、レシーバタンク5内の減圧及びエアの流れにより、吸引口8に接続した図示しない吸引ホースを通じて外部からレシーバタンク5内に回収対象物を吸引するようになっている。一方、吸引装置1でレシーバタンク5内の回収対象物を例えば汚泥処理場等に排出する場合、レシーバタンク5内のエアを加圧し、排出口9に接続した図示しない排出ホースを通じてレシーバタンク5内の回収対象物を外部へ排出するようになっている。また、テールゲート5cを開いてレシーバタンク5を起立回動させることによって、レシーバタンク5内の回収対象物を排出することも可能となっている。
【0031】
また、運転室13とレシーバタンク5との間のサブフレーム4上には、レシーバタンク5内のエアを加減圧し、エアの流れを発生させる水封式ポンプ25が設けられている。詳しくは図示しないが、水封式ポンプ25は、吸引車2のPTOのドライブシャフトを介して連結された図示しないエンジンの駆動力によって回転駆動されるようになっている。この水封式ポンプ25の周辺には、水封式ポンプ25に接続された配管類、各種バルブ、操作パネル15等が配置されている。
【0032】
図1A及び
図1Bに示すように、吸引装置1は、1次キャッチャとしてのレシーバタンク5、サイクロンよりなる2次キャッチャ20及び3次キャッチャ21、気水分離器兼水タンクよりなる4次キャッチャ22等が金属製丸鋼管等よりなる配管を介して接続されている。本実施形態では、3次キャッチャ21、4次キャッチャ22及び一体型サイレンサ23が一体に設けられている。これらの機器は、レシーバタンク加減圧配管7により接続されている。
【0033】
レシーバタンク5は2次キャッチャ20と第1配管7aにより接続されている。また、2次キャッチャ20は3次キャッチャ21と第2配管7bにより接続されている。
【0034】
水封式ポンプ25、3次キャッチャ21、4次キャッチャ22、及び一体型サイレンサ23は、エア切換式四方弁24と配管を介して接続されるようになっている。具体的には、3次キャッチャ21とエア切換式四方弁24とが、第3配管7cにより接続されている。また、水封式ポンプ25とエア切換式四方弁24とが、第4配管7dにより接続されている。また、4次キャッチャ22とエア切換式四方弁24とが、第5配管7eにより接続されている。また、一体型サイレンサ23とエア切換式四方弁24とが、第6配管7fにより接続されている。吸引時には、3次キャッチャ21と水封式ポンプ25とがエア切換式四方弁24を介して接続される一方、4次キャッチャ22と一体型サイレンサ23とエア切換式が四方弁24を介して接続されるようになっている。また、エア切換式四方弁24を切り換えることにより、加圧時には、一体型サイレンサ23と水封式ポンプ25とがエア切換式四方弁24を介して接続される一方、4次キャッチャ22と3次キャッチャ21とがエア切換式四方弁24を介して接続されるようになっている。
【0035】
水封式ポンプ25は、吸引口25aと吐出口25bとを有している。吐出口25bは、4次キャッチャ22と第7配管7gにより接続されている。
【0036】
そして、本発明の特徴として、レシーバタンク5と水封式ポンプ25とをつなぐ配管には、この配管の上流側よりも高い圧力のエアを駆動エアとして導入するエゼクタ30が介設されている。具体的には、エア切換式四方弁24と水封式ポンプ25との間の第4配管7dにエゼクタ30が介設されている。なお、第4配管7dには、このエゼクタ30を通さずにエア切換式四方弁24から吸引口25aへ通るバイパス通路(図示せず)を設けてもよい。
【0037】
上流側大径円筒部30aと、上流側大径円筒部30aに連設される漸次縮径筒部30bと、漸次縮径筒部30bに連設される小径円筒部30cと、小径円筒部30cに連設される漸次拡径筒部30dと、漸次拡径筒部30dに連設される下流側大径円筒部30eと、漸次縮径筒部30bに向けて駆動エアを噴出させるように上流側大径円筒部30aの内部中心に配設されるノズル部30fと、を備えている。上流側大径円筒部30a、漸次縮径筒部30b、小径円筒部30c、漸次拡径筒部30d、下流側大径円筒部30e、ノズル部30fは、それぞれ同一の直線状中心線CLを通るように形成されている。上流側大径円筒部30aと下流側大径円筒部30eは同径となっている。また、下流側大径円筒部30eは、水封式ポンプ25の上面側に設けられた吸引口25aと接続されている。これにより、エゼクタ30は、水封式ポンプ25の上面側に立設されている。
【0038】
エゼクタ30の駆動エアは、
図4に示すように、車載のエアタンク41から駆動エア用配管60を通じてエゼクタ30のノズル部30fに供給可能に構成されている。本実施形態では、このエアタンク41は、車台3側に設けられ、車両制動時に使用される加圧エアを蓄積するものである。
【0039】
具体的に、この駆動エア用配管60について
図4を用いて説明する。駆動エア用配管60は、エアタンク41からノズル部30fに駆動エアを供給するための第1駆動エア用配管60aと、第1駆動エア用配管60aから分岐してエア切換式四方弁24の方に駆動エアを供給するための第2駆動エア用配管60bとを有している。第1駆動エア用配管60aには、上流側のエアタンク41に近い方から順に、プロテクションバルブ42、ボールバルブ43、ストップバルブ44、駆動エア切換バルブ49が介設されている。
【0040】
エアタンク41からは例えば、0.7MPaの加圧エアが供給されるようになっている。プロテクションバルブ42は、駆動エア用配管60内のエア漏れが発生したときに、それ以上エア漏れをさせないようにするものである。
【0041】
ボールバルブ43は、例えば、手動でエアタンク41からのエアを架装側(吸引装置1側)に供給しないように切換できるようになっている。
【0042】
ストップバルブ44は、車両走行時にエゼクタ30への駆動エアの供給を停止させるために設けられている。このストップバルブ44は、ソレノイドバルブよりなり、架装制御部(図示せず)の制御によってPTOスイッチ(図示せず)と連動するようになっている。PTOスイッチは、車両の走行用エンジン(図示せず)の駆動力を取り出して水封式ポンプ25を駆動可能にするためのスイッチである。このPTOスイッチがオンのときには、エアタンク41側と連通し、PTOスイッチがオフの際には、サイレンサ53側に切り換えられるようになっている。
【0043】
本実施形態では、車両走行時にはPTOスイッチはオフとなっていることから、ストップバルブ44により、エアタンク41からエゼクタ30へ加圧エアが供給されないので、エアタンク41による車両制動動作を阻害することはない。
【0044】
駆動エア切換バルブ49は、駆動エアをエアタンク41からの加圧エアと外部エア導入管50からの外部エアとのいずれか一方に切換可能にするものである。この駆動エア切換バルブ49には、車両外部と連通する外部エア導入管50が接続されている。例えば、この駆動エア切換バルブ49は、予め設定した所定の設定圧を境に自動で加圧エアと外部エアとの切換を行うように構成されている。
【0045】
駆動エア切換バルブ49は、操作パネル15に設けられた切換スイッチ15d(
図5参照)によって、3つのモードで切り換え操作される。この3つのモードは、手動でエアタンク41からの加圧エアをエゼクタ30へ供給するモードと、手動で外部エアをエゼクタ30へ供給するモードと、吸引開始時は外部エアをエゼクタ30へ供給すると共に負圧が高まれば所定の設定値を境に自動でエアタンク41の加圧エアをエゼクタ30に供給するモードとなっている。
【0046】
また、上記ストップバルブ44と駆動エア切換バルブ49との間において、第1駆動エア用配管60aから第2駆動エア用配管60bが分岐されている。
【0047】
第2駆動エア用配管60bには、エアタンク41側へのエアの逆流を防ぐ逆止弁45を介し、四方弁切換バルブユニット51が設けられている。この四方弁切換バルブユニット51の下流側には、上記エア切換式四方弁24が接続されている。四方弁切換バルブユニット51は、
図5に示す操作パネル15に設けられた吸引ボタン15a、中正ボタン15b、加圧ボタン15cのいずれかが押されたことに基づいて、架装制御部によって切換制御される。
【0048】
-吸引装置の作動-
次いで、吸引装置の作動について図面を用いて説明する。
【0049】
まず、吸引車2の走行を停止した状態で、運転室13等に設けられたPTOスイッチをオンにする。すると、車両の走行用エンジンの駆動力が水封式ポンプ25に供給されるようになる。また、架装制御部の制御により、ストップバルブ44は、エアタンク41と連通する側に切り換わる。
【0050】
次いで、吸引開始のために、作業者が操作パネル15の吸引ボタン15aを押す。すると、エアタンク41の加圧エアの圧力でエア切換式四方弁24のスプールが吸引側へ移動する。
【0051】
次に、
図1Aの状態にエア切換式四方弁24が切り換わり、水封式ポンプ25の駆動と共に、吸引口8からエアが吸い込まれてレシーバタンク5に回収対象物が回収される。エアは、レシーバタンク5、2次キャッチャ20、3次キャッチャ21を通り、エア切換式四方弁24を通って水封式ポンプ25の吸引口25aから吸い込まれる。このとき、エア切換式四方弁24からのエアは、エゼクタ30を通る。
【0052】
吸引開始時には、レシーバタンク5内は負圧が所定値よりも高まっていない(圧力が所定値以上である)ので、駆動エア切換バルブ49は、外部エア側となっており、外部エア導入管50からサイレンサ53を通して外部エア(大気)が吸引される。これにより、エゼクタ30内に大気が導入される。このように、水封式ポンプ25の駆動時など大気とレシーバタンク5内との差圧が小さいときは、水封式ポンプ25は発熱しにくいため、大気圧を利用しても冷却能力を十分に発揮できる。そして、封水より温度の低い外部エアが水封式ポンプ25に送り込まれるので、水封式ポンプ25及び封水の温度上昇が抑制される。
【0053】
一方、レシーバタンク5内の負圧が高まってくると、水封式ポンプ25の負荷が増大し、発熱が大きくなって、水温上昇しやすくなる。負圧が高まると封水は蒸発しやすくなり、キャビテーションが発生しやすくなる。そこで、レシーバタンク5内の負圧が所定値よりも高まると、駆動エア切換バルブ49に信号が送られ、外部エア側から加圧エア側に切り換えられる。
【0054】
すると、エアタンク41の加圧エアがエゼクタ30に送られる。この加圧エアを水封式ポンプ25内に送ることで、レシーバタンク5内の負圧がエゼクタ効果によりさらに高められる。また、水封式ポンプ25にはノズル部30fから大量のエアが供給される。ノズル部30fから噴出された加圧エアは、膨張して圧力が下がるときに温度が下がるので、水封式ポンプ25には大量の冷たいエアが供給されることになる。これにより、水封式ポンプ25の封水温度の上昇を抑えることができ、キャビテーション発生の心配も無くなる。
【0055】
水封式ポンプ25に吸い込まれたエアは、吐出口25bから吐出され、4次キャッチャ22を通ってエア切換式四方弁24に戻り、一体型サイレンサ23を通って外部に排気される。
【0056】
一方、吸引から中正に切り換えるときには、作業者が操作パネル15の中正ボタン15bを押す。すると、エアタンク41の加圧エアの圧力によりエア切換式四方弁24のスプールが中正側に戻る。
【0057】
そして、中正から加圧に切り換えるときには、作業者が操作パネル15の加圧ボタン15cを押す。すると、エアタンク41の加圧エアの圧力でエア切換式四方弁24のスプールが中正側から加圧側へ移動する。
【0058】
次いで、
図1Bの状態にエア切換式四方弁24が切り換わり、水封式ポンプ25の駆動と共に、吐出口25bから加圧エアが吐出され、4次キャッチャ22を通過したエアは、エア切換式四方弁24を通って3次キャッチャ21及び2次キャッチャ20を通り、レシーバタンク5に到達して回収した回収対象物と共に、排出口9から排出される。
【0059】
以上説明したように、エゼクタ30を設けることで、水封式ポンプ25によって負圧状態になっている配管に、大気など配管の上流側よりも高い圧力のエアを導入して高速でエアを噴出させることで、周囲がさらに減圧される。また、ポンプ本体には、配管の上流側よりも高い圧力のエアが導入されるので、キャビテーションは起こりにくい。さらに、配管の上流側のエアよりも低温で高い圧力のエアを導入することで、封水温度を低減させる効果が期待でき、連続運転時の吸引性能低下を抑制できる。
【0060】
本実施形態では、従来搭載されているエアタンク41を利用すればよく、水封式ポンプ25のために別途エアタンク41を設ける必要がない。通常は、吸引作業時に車両は走行しないので、車両制動用のエアタンク41を兼用しても走行には問題がない。
【0061】
本実施形態では、必要なときだけエアタンク41からの加圧エアを使用することにより、エアタンク41の加圧エアが足りなくなるのが避けられる。
【0062】
したがって、本実施形態に係る吸引車2によると、エゼクタ30により、レシーバタンク5と水封式ポンプ25とをつなぐ配管の上流側よりも高い圧力の外部エア又は加圧エアを駆動エアとして水封式ポンプ25に導入することにより、封水が高温になるにつれて負圧が低下するのを防止することができる。
【0063】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0064】
例えば、上記実施形態では、エゼクタ30に供給する加圧エアは、車両制動用のエアタンク41を利用して供給したが、本発明はこれに限らず、別途専用のコンプレッサー付エアタンクを設けてその加圧タンクからエゼクタに加圧エアを供給してもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 吸引装置
2 吸引車
3 車台
4 サブフレーム
5 レシーバタンク
5a タンク本体
5b ヒンジピン
5c テールゲート
5d 開閉シリンダ
7 レシーバタンク加減圧配管
8 吸引口
9 排出口
10 傾倒軸
11 傾倒シリンダ
13 運転室
15 操作パネル
15a 吸引ボタン
15b 中正ボタン
15c 加圧ボタン
15d 切換スイッチ
20 2次キャッチャ
21 3次キャッチャ
22 4次キャッチャ
23 一体型サイレンサ
24 エア切換式四方弁
25 水封式ポンプ
25a 吸引口
25b 吐出口
30 エゼクタ
30a 上流側大径円筒部
30b 漸次縮径筒部
30c 小径円筒部
30d 漸次拡径筒部
30e 下流側大径円筒部
30f ノズル部
41 エアタンク
42 プロテクションバルブ
43 ボールバルブ
44 ストップバルブ
45 逆止弁
49 駆動エア切換バルブ
50 外部エア導入管
51 四方弁切換バルブユニット
53 サイレンサ
60 駆動エア用配管
60a 第1駆動エア用配管
60b 第2駆動エア用配管
101 ケーシング
102 インペラ
103 水還流
104 吸気口
105 排気口
CL 中心線