(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
G01N 27/416 20060101AFI20231025BHJP
G01N 27/409 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
G01N27/416 331
G01N27/409 100
(21)【出願番号】P 2020062603
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【氏名又は名称】山下 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100170542
【氏名又は名称】桝田 剛
(72)【発明者】
【氏名】安立 光輝
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-196917(JP,A)
【文献】特開2014-209104(JP,A)
【文献】特開2008-070380(JP,A)
【文献】特開2008-170398(JP,A)
【文献】特開2015-132491(JP,A)
【文献】特開2018-173319(JP,A)
【文献】特開2019-190904(JP,A)
【文献】国際公開第2015/076223(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/416
G01N 27/409
G01N 27/41
G01N 27/419
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定ガスにおける所定ガス成分の濃度を測定するように構成されたガスセンサであって、
後端寄りの表面に電極パッドが形成されたセンサ素子と、
前記センサ素子の一部分を保持する素子封止体と、
リード線と、
前記センサ素子のうち前記電極パッドが形成された部分を保持し、前記電極パッドと前記リード線とを電気的に接続するコネクタと、
前記素子封止体に固定され、前記コネクタの周囲を覆う外筒と、
前記外筒の後端に取り付けられ、前記リード線が貫通したグロメットとを備え、
前記コネクタの後端の面には、突起部が形成されており、
前記突起部と前記グロメットとが接触して
おり、
前記コネクタは、複数の板状部材を備え、
前記センサ素子のうち前記電極パッドが形成された部分は、前記複数の板状部材によって挟まれており、
前記複数の板状部材の各々の後端の面に前記突起部が形成されており、
前記板状部材の平面視、及び、前記板状部材の側面視の両方において、前記突起部には後端に向かうほど前記突起部が細くなるテーパが形成されている、
ガスセンサ。
【請求項2】
前記素子封止体に固定され、前記センサ素子の前端を覆う保護カバーをさらに備え、
前記素子封止体は、前記素子封止体と前記保護カバーとの間に形成される空間と、前記素子封止体と前記外筒との間に形成される空間との間を封止する、請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記突起部と前記グロメットとの接触面積は、前記グロメットの前端の面の面積に対して5%以下である、請求項1又は請求項2に記載のガスセンサ。
【請求項4】
前記複数の板状部材の各々の後端の面には、2つの突起部が形成されており、
前記2つの突起部の一方は、前記後端の面における長手方向の一方の端部に形成されており、
前記2つの突起部の他方は、前記後端の面における長手方向の他方の端部に形成されている、請求項
1から3の何れか1項に記載のガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスセンサに関し、特に、被測定ガスにおける所定ガス成分の濃度を測定するように構成されたガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2015-200643号公報(特許文献1)は、ガスセンサを開示する。このガスセンサは、被測定ガスにおける所定ガス成分の濃度を測定するように構成されている。このガスセンサにおいては、センサ素子の後端の周囲が外筒によって覆われている。外筒の後端にはグロメットが取り付けられており、外筒内は密閉されている。センサ素子に形成された電極パッドは、コネクタを介してリード線に電気的に接続されている。リード線は、グロメットを貫通し、外筒の外部に延びている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-200643号公報
【文献】特開平9-196885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されているようなガスセンサにおいては、ガスセンサの製造時におけるグロメットの位置決め等の理由で、グロメットがコネクタに押し当てられている場合がある。一方、ガスセンサの使用時にセンサ素子は高温になるため、センサ素子を保持するコネクタも高温になる。コネクタからグロメットへの熱伝達が容易であれば、グロメットが高温になり、グロメットが急速に劣化する可能性がある。
【0005】
このような問題を解決するために、例えば、ガスセンサの長さを長くし、熱源とグロメットとの間の長さを長くすることによって、グロメットを熱源から引き離す方法が考えられる。しかしながら、このような方法は、ガスセンサを大型化するため好ましくない。
【0006】
また、特開平9-196885号公報(特許文献2)に開示されているように、例えば、高温耐久性を有するグロメットを採用することによって上記問題を解決する方法も考えられる。しかしながら、このような方法は、部品コストを上昇させるため好ましくない。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであって、その目的は、ガスセンサの大型化及び部品コストの増加を抑制した状態で、グロメットの温度上昇を抑制可能はガスセンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に従うガスセンサは、被測定ガスにおける所定ガス成分の濃度を測定するように構成されている。このガスセンサは、センサ素子と、素子封止体と、リード線と、コネクタと、外筒と、グロメットとを備えている。センサ素子においては、後端寄りの表面に電極パッドが形成されている。素子封止体は、センサ素子の一部分を保持する。コネクタは、センサ素子のうち電極パッドが形成された部分を保持し、電極パッドと前記リード線とを電気的に接続する。外筒は、素子封止体に固定され、コネクタの周囲を覆う。グロメットは、外筒の後端に取り付けられ、リード線が貫通している。コネクタの後端の面には、突起部が形成されている。突起部とグロメットとが接触している。
【0009】
ガスセンサにおいては、センサ素子が高温になる。したがって、センサ素子を保持するコネクタも高温になる。仮にコネクタの後端の面全体がグロメットに接触する場合には、コネクタからグロメットへ熱が容易に伝達する。その結果、グロメットが高温になる。本発明に従うガスセンサにおいては、コネクタの後端の面に形成された突起部がグロメットに接触しており、コネクタの後端の面全体がグロメットに接触するわけではない。したがって、このガスセンサによれば、コネクタの後端の面全体がグロメットに接触する場合と比較して、コネクタとグロメットとの接触面積が小さいため、コネクタからグロメットへの熱伝達を抑制することができる。その結果、このガスセンサによれば、グロメットの劣化が抑制されるため、ガスセンサの製品寿命を延ばすことができる。
【0010】
また、上記ガスセンサは、素子封止体に固定され、センサ素子の前端を覆う保護カバーをさらに備え、素子封止体は、素子封止体と保護カバーとの間に形成される空間と、素子封止体と外筒との間に形成される空間との間を封止してもよい。
【0011】
また、上記ガスセンサにおいて、突起部とグロメットとの接触面積は、グロメットの前端の面の面積に対して5%以下であってもよい。
【0012】
また、上記ガスセンサにおいて、コネクタは、複数の板状部材を備え、センサ素子のうち電極パッドが形成された部分は、複数の板状部材によって挟まれており、複数の板状部材の各々の後端の面に突起部が形成されていてもよい。
【0013】
また、上記ガスセンサにおいて、複数の板状部材の各々の後端の面には、2つの突起部が形成されており、2つの突起部の一方は、後端の面における長手方向の一方の端部に形成されており、2つの突起部の他方は、後端の面における長手方向の他方の端部に形成されていてもよい。
【0014】
グロメットにおいては、センサ素子からの輻射熱の影響で、センサ素子と対向している領域が比較的高温になることを本発明者(ら)は見出した。このガスセンサにおいては、各突起部が板状部材の後端の面における長手方向の端部に形成されている。したがって、各突起部は、グロメットの上記高温領域(センサ素子と対向している領域)から比較的遠い位置においてグロメットと接触する。その結果、このガスセンサによれば、板状部材からグロメットへの熱伝達が主にグロメットにおける比較的低温の領域を介して行なわれるため、グロメットにおける温度の偏りの発生を抑制することができる。その結果、このガスセンサによれば、グロメットの劣化が抑制されるため、ガスセンサの製品寿命を延ばすことができる。
【0015】
また、上記ガスセンサにおいて、板状部材の平面視、及び、板状部材の側面視の両方において、突起部には後端に向かうほど突起部が細くなるテーパが形成されていてもよい。
【0016】
このガスセンサによれば、突起部の先端部が突起部の付け根部よりも細くなっているため、突起部とグロメットとの接触面積をより小さくすることができる。また、このガスセンサによれば、突起部の付け根部が突起部の先端部よりも太くなっているため、突起部の強度をある程度確保することができる。すなわち、このガスセンサによれば、突起部とグロメットとの接触面積の低減と、突起部の強度の確保とを両立することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ガスセンサの大型化及び部品コストの増加を抑制した状態で、グロメットの温度上昇を抑制可能はガスセンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】ガスセンサの縦断面を模式的に示す図である。
【
図2】センサ素子の上面の後端付近の一部を模式的に示す図である。
【
図3】センサ素子の構成の一例を概略的に示した断面模式図である。
【
図4】板状部材を上下方向の一方から示した模式図である。
【
図5】板状部材を左右方向の一方から示した模式図である。
【
図7】仮のコネクタが用いられた場合に生じる問題を説明するための図である。
【
図8】実施の形態に従うガスセンサにおける
図7に対応する位置を模式的に示す図である。
【
図9】グロメットの前端の面を模式的に示す図である。
【
図10】変形例における、3室構造のセンサ素子の構成の一例を概略的に示した断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0020】
[1.ガスセンサの全体構成]
図1は、本実施の形態に従うガスセンサ100の縦断面を模式的に示す図である。なお、各図面においては、後述のセンサ素子101の長手方向が前後方向であり、センサ素子101の厚み方向が上下方向である。また、センサ素子101の幅方向が左右方向である。
【0021】
図1に示されるように、ガスセンサ100は、例えば、車両の排ガス管等の配管190に取り付けられる。ガスセンサ100は、排気ガス等の被測定ガスにおける所定ガス成分の濃度を測定するように構成されている。所定ガス成分としては、例えば、NOx及びO
2が挙げられる。なお、本実施の形態に従うガスセンサ100は、被測定ガスにおけるNOx濃度を測定するように構成されている。
【0022】
ガスセンサ100は、センサ素子101と、保護カバー130と、センサ組立体140と、リード線155と、グロメット157とを含んでいる。センサ素子101は、長尺な直方体形状を有し、被測定ガス中の所定ガス成分を検出するために用いられる。
【0023】
図2は、センサ素子101の上面の後端付近の一部を模式的に示す図である。
図2に示されるように、センサ素子101の上面においては、後端寄りの位置に複数(4つ)の電極パッド170が形成されている。また、センサ素子101の下面においても、後端寄りの位置に複数(4つ)の電極パッド170が形成されている。各電極パッド170は、各種信号の伝達等に用いられる。センサ素子101については、後程詳しく説明する。なお、「後端寄りの位置」とは、必ずしも後端を含んでいる必要はなく、前端よりも後端に近い位置という意味である。
【0024】
再び
図1を参照して、保護カバー130は、内側保護カバー131と、外側保護カバー132とを備えている。内側保護カバー131は、有底筒状の形状を有し、センサ素子101の前端を覆う。外側保護カバー132は、有底筒状の形状を有し、内側保護カバー131を覆う。内側保護カバー131及び外側保護カバー132の各々には、被測定ガスを保護カバー130内に流通させるための複数の孔が形成されている。内側保護カバー131によって囲まれた空間にはセンサ素子室133が形成されており、センサ素子101の前端はセンサ素子室133内に配置されている。
【0025】
センサ組立体140は、素子封止体141と、ナット147と、コネクタ150と、外筒148とを備えている。
【0026】
素子封止体141は、センサ素子101を封入固定する。素子封止体141は、筒状の主体金具142と、筒状の内筒143と、セラミックスサポーター144a-144cと、圧粉体145a,145bと、メタルリング146とを備えている。内筒143は、内筒143の中心軸の位置が主体金具142の中心軸の位置と同一となるように主体金具142に溶接固定されている。セラミックスサポーター144a-144c、圧粉体145a,145b及びメタルリング146の各々は、主体金具142及び内筒143の内側の貫通孔内に封入されている。センサ素子101は、素子封止体141の中心軸上に位置しており、素子封止体141を前後方向に貫通している。
【0027】
内筒143には、縮径部143a,143bが形成されている。縮径部143aは、圧粉体145bを内筒143の中心軸方向に押圧する。縮径部143bは、メタルリング146を介してセラミックスサポーター144a~144c,圧粉体145a,145bを前方に押圧する。縮径部143a,143bからの押圧力によって、圧粉体145a,145bは、主体金具142及び内筒143とセンサ素子101との間で圧縮される。これにより、圧粉体145a,145bが外筒148内の空間149とセンサ素子室133との間を封止すると共に、センサ素子101が固定される。
【0028】
ナット147は、いわゆるスクリューナットであり、素子封止体141に取り付けられている。ナット147の中心軸の位置は、主体金具142の中心軸の位置と同一である。ナット147の外周面には、雄ネジ部が形成されている。ナット147の雄ネジ部は、配管190に溶接された固定用部材191内に挿入される。固定用部材191の内周面には、雌ネジ部が設けられている。ナット147の雄ネジ部と固定用部材191の雌ネジ部とが係合することによって、センサ素子101の前端及び保護カバー130が配管190内に突出した状態で、ガスセンサ100が配管190に固定される。
【0029】
コネクタ150は、センサ素子101のうち電極パッド170が形成された部分を保持し、各電極パッド170と各リード線155とを電気的に接続する。コネクタ150は、複数(2つ)のセラミックス製の板状部材161と、固定部材162とを含んでいる。センサ素子101のうち電極パッド170が形成された部分は、複数の板状部材161によって挟まれている。各板状部材161上には複数(4つ)の金属端子が配置されており、該金属端子と電極パッド170とは接触している。各金属端子にはリード線155が溶接されている。すなわち、各金属端子を介して各電極パッド170と各リード線155とが電気的に接続される。固定部材162は、板状部材161上に配置された金属端子と電極パッド170との接触状態が維持されるように、複数の板状部材161及びセンサ素子101等を固定する。板状部材161については、後程詳しく説明する。
【0030】
外筒148は、主体金具142に固定されており、内筒143、センサ素子101及びコネクタ150の周囲を覆っている。外筒148の後端には、グロメット157が取り付けられている。グロメット157は、例えば、ゴム栓である。グロメット157の前端は、板状部材161の後端に押し当てられている。すなわち、グロメット157の前端は、板状部材161の後端に接触している。グロメット157には、リード線155が貫通している。すなわち、外筒148とリード線155との隙間は、グロメット157によって封止されている。外筒148内の空間149は、基準ガス(本実施の形態においては大気)で満たされている。センサ素子101の後端は、空間149内に配置されている。
【0031】
[2.センサ素子の構成]
図3は、ガスセンサ100が備えるセンサ素子101の構成の一例を概略的に示した断面模式図である。センサ素子101は、それぞれがジルコニア(ZrO2)等の酸素イオン伝導性固体電解質層からなる第1基板層1と、第2基板層2と、第3基板層3と、第1固体電解質層4と、スペーサ層5と、第2固体電解質層6との6つの層が、図面視で下側からこの順に積層された構造を有する素子である。また、これら6つの層を形成する固体電界質は緻密な気密のものである。係るセンサ素子101は、例えば、各層に対応するセラミックスグリーンシートに所定の加工及び回路パターンの印刷などを行った後にそれらを積層し、さらに、焼成して一体化させることによって製造される。
【0032】
センサ素子101の一先端部であって、第2固体電解質層6の下面と第1固体電解質層4の上面との間には、ガス導入口10と、第1拡散律速部11と、緩衝空間12と、第2拡散律速部13と、第1内部空所20と、第3拡散律速部30と、第2内部空所40とが、この順に連通する態様にて隣接形成されてなる。
【0033】
ガス導入口10と、緩衝空間12と、第1内部空所20と、第2内部空所40とは、スペーサ層5をくり抜いた態様にて設けられた上部を第2固体電解質層6の下面で、下部を第1固体電解質層4の上面で、側部をスペーサ層5の側面で区画されたセンサ素子101内部の空間である。
【0034】
第1拡散律速部11と、第2拡散律速部13と、第3拡散律速部30とはいずれも、2本の横長の(図面に垂直な方向に開口が長手方向を有する)スリットとして設けられる。なお、ガス導入口10から第2内部空所40に至る部位をガス流通部とも称する。
【0035】
また、ガス流通部よりも先端側から遠い位置には、第3基板層3の上面と、スペーサ層5の下面との間であって、側部を第1固体電解質層4の側面で区画される位置に基準ガス導入空間43が設けられている。基準ガス導入空間43には、NOx濃度の測定を行う際の基準ガスとして、例えば大気が導入される。
【0036】
大気導入層48は、多孔質アルミナからなる層であって、大気導入層48には基準ガス導入空間43を通じて基準ガスが導入されるようになっている。また、大気導入層48は、基準電極42を被覆するように形成されている。
【0037】
基準電極42は、第3基板層3の上面と第1固体電解質層4とに挟まれる態様にて形成される電極であり、上述のように、その周囲には、基準ガス導入空間43につながる大気導入層48が設けられている。また、後述するように、基準電極42を用いて第1内部空所20内や第2内部空所40内の酸素濃度(酸素分圧)を測定することが可能となっている。
【0038】
ガス流通部において、ガス導入口10は、外部空間に対して開口してなる部位であり、該ガス導入口10を通じて外部空間からセンサ素子101内に被測定ガスが取り込まれるようになっている。
【0039】
第1拡散律速部11は、ガス導入口10から取り込まれた被測定ガスに対して、所定の拡散抵抗を付与する部位である。
【0040】
緩衝空間12は、第1拡散律速部11より導入された被測定ガスを第2拡散律速部13へと導くために設けられた空間である。
【0041】
第2拡散律速部13は、緩衝空間12から第1内部空所20に導入される被測定ガスに対して、所定の拡散抵抗を付与する部位である。
【0042】
被測定ガスが、センサ素子101外部から第1内部空所20内まで導入されるにあたって、外部空間における被測定ガスの圧力変動(被測定ガスが自動車の排気ガスの場合であれば排気圧の脈動)によってガス導入口10からセンサ素子101内部に急激に取り込まれた被測定ガスは、直接第1内部空所20へ導入されるのではなく、第1拡散律速部11、緩衝空間12、第2拡散律速部13を通じて被測定ガスの濃度変動が打ち消された後、第1内部空所20へ導入されるようになっている。これによって、第1内部空間へ導入される被測定ガスの濃度変動はほとんど無視できる程度のものとなる。
【0043】
第1内部空所20は、第2拡散律速部13を通じて導入された被測定ガス中の酸素分圧を調整するための空間として設けられている。係る酸素分圧は、主ポンプセル21が作動することによって調整される。
【0044】
主ポンプセル21は、第1内部空所20に面する第2固体電解質層6の下面のほぼ全面に設けられた天井電極部22aを有する内側ポンプ電極22と、第2固体電解質層6の上面の天井電極部22aと対応する領域に外部空間に露出する態様にて設けられた外側ポンプ電極23と、これらの電極に挟まれた第2固体電解質層6とによって構成されてなる電気化学的ポンプセルである。
【0045】
内側ポンプ電極22は、第1内部空所20を区画する上下の固体電解質層(第2固体電解質層6及び第1固体電解質層4)、及び、側壁を与えるスペーサ層5にまたがって形成されている。具体的には、第1内部空所20の天井面を与える第2固体電解質層6の下面には天井電極部22aが形成され、また、底面を与える第1固体電解質層4の上面には底部電極部22bが形成され、そして、それら天井電極部22aと底部電極部22bとを接続するように、側部電極部(図示省略)が第1内部空所20の両側壁部を構成するスペーサ層5の側壁面(内面)に形成されて、該側部電極部の配設部位においてトンネル形態とされた構造において配設されている。
【0046】
内側ポンプ電極22と外側ポンプ電極23とは、多孔質サーメット電極(例えば、Auを1%含むPtとZrO2とのサーメット電極)として形成される。なお、被測定ガスに接触する内側ポンプ電極22は、被測定ガス中のNOx成分に対する還元能力を弱めた材料を用いて形成される。
【0047】
主ポンプセル21においては、内側ポンプ電極22と外側ポンプ電極23との間に所望のポンプ電圧Vp0を印加して、内側ポンプ電極22と外側ポンプ電極23との間に正方向あるいは負方向にポンプ電流Ip0を流すことにより、第1内部空所20内の酸素を外部空間に汲み出し、あるいは、外部空間の酸素を第1内部空所20に汲み入れることが可能となっている。
【0048】
また、第1内部空所20における雰囲気中の酸素濃度(酸素分圧)を検出するために、内側ポンプ電極22と、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4と、第3基板層3と、基準電極42によって、電気化学的なセンサセル、すなわち、主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80が構成されている。
【0049】
主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80における起電力V0を測定することで第1内部空所20内の酸素濃度(酸素分圧)がわかるようになっている。さらに、起電力V0が一定となるようにVp0をフィードバック制御することでポンプ電流Ip0が制御されている。これによって、第1内部空所内20内の酸素濃度は所定の一定値に保つことができる。
【0050】
第3拡散律速部30は、第1内部空所20で主ポンプセル21の動作により酸素濃度(酸素分圧)が制御された被測定ガスに所定の拡散抵抗を付与して、該被測定ガスを第2内部空所40に導く部位である。
【0051】
第2内部空所40は、第3拡散律速部30を通じて導入された被測定ガス中の窒素酸化物(NOx)濃度の測定に係る処理を行うための空間として設けられている。NOx濃度の測定は、主として、補助ポンプセル50により酸素濃度が調整された第2内部空所40において、さらに、測定用ポンプセル41の動作によりNOx濃度が測定される。
【0052】
第2内部空所40では、あらかじめ第1内部空所20において酸素濃度(酸素分圧)が調整された後、第3拡散律速部を通じて導入された被測定ガスに対して、さらに補助ポンプセル50による酸素分圧の調整が行われるようになっている。これにより、第2内部空所40内の酸素濃度を高精度に一定に保つことができるため、係るガスセンサ100においては精度の高いNOx濃度測定が可能となる。
【0053】
補助ポンプセル50は、第2内部空所40に面する第2固体電解質層6の下面の略全体に設けられた天井電極部51aを有する補助ポンプ電極51と、外側ポンプ電極23(外側ポンプ電極23に限られるものではなく、センサ素子101と外側の適当な電極であれば足りる)と、第2固体電解質層6とによって構成される、補助的な電気化学的ポンプセルである。
【0054】
係る補助ポンプ電極51は、先の第1内部空所20内に設けられた内側ポンプ電極22と同様なトンネル形態とされた構造において、第2内部空所40内に配設されている。つまり、第2内部空所40の天井面を与える第2固体電解質層6に対して天井電極部51aが形成され、また、第2内部空所40の底面を与える第1固体電解質層4には、底部電極部51bが形成され、そして、それらの天井電極部51aと底部電極部51bとを連結する側部電極部(図示省略)が、第2内部空所40の側壁を与えるスペーサ層5の両壁面にそれぞれ形成されたトンネル形態の構造となっている。
【0055】
なお、補助ポンプ電極51についても、内側ポンプ電極22と同様に、被測定ガス中のNOx成分に対する還元能力を弱めた材料を用いて形成される。
【0056】
補助ポンプセル50においては、補助ポンプ電極51と外側ポンプ電極23との間に所望の電圧Vp1を印加することにより、第2内部空所40内の雰囲気中の酸素を外部空間に汲み出し、あるいは、外部空間から第2内部空所40内に汲み入れることが可能となっている。
【0057】
また、第2内部空所40内における雰囲気中の酸素分圧を制御するために、補助ポンプ電極51と、基準電極42と、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4と、第3基板層3とによって電気化学的なセンサセル、すなわち、補助ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル81が構成されている。
【0058】
なお、この補助ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル81にて検出される起電力V1に基づいて電圧制御される可変電源52にて、補助ポンプセル50がポンピングを行う。これにより第2内部空所40内の雰囲気中の酸素分圧は、NOxの測定に実質的に影響がない低い分圧にまで制御されるようになっている。
【0059】
また、これとともに、そのポンプ電流Ip1が、主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80の起電力の制御に用いられるようになっている。具体的には、ポンプ電流Ip1は、制御信号として主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80に入力され、その起電力V0が制御されることにより、第3拡散律速部30から第2内部空所40内に導入される被測定ガス中の酸素分圧の勾配が常に一定となるように制御されている。NOxセンサとして使用する際は、主ポンプセル21と補助ポンプセル50との働きによって、第2内部空所40内での酸素濃度は約0.001ppm程度の一定の値に保たれる。
【0060】
測定用ポンプセル41は、第2内部空所40内において、被測定ガス中のNOx濃度の測定を行う。測定用ポンプセル41は、第2内部空所40に面する第1固体電解質層4の上面であって第3拡散律速部30から離間した位置に設けられた測定電極44と、外側ポンプ電極23と、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4とによって構成された電気化学的ポンプセルである。
【0061】
測定電極44は、多孔質サーメット電極である。測定電極44は、第2内部空所40内の雰囲気中に存在するNOxを還元するNOx還元触媒としても機能する。さらに、測定電極44は、第4拡散律速部45によって被覆されてなる。
【0062】
第4拡散律速部45は、アルミナ(Al2O3)を主成分とする多孔体にて構成される膜である。第4拡散律速部45は、測定電極44に流入するNOxの量を制限する役割を担うと共に、測定電極44の保護膜としても機能する。
【0063】
測定用ポンプセル41においては、測定電極44の周囲の雰囲気中における窒素酸化物の分解によって生じた酸素を汲み出して、その発生量をポンプ電流Ip2として検出することができる。
【0064】
また、測定電極44の周囲の酸素分圧を検出するために、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4と、第3基板層3と、測定電極44と、基準電極42とによって電気化学的なセンサセル、すなわち、測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル82が構成されている。測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル82にて検出された起電力V2に基づいて可変電源46が制御される。
【0065】
第2内部空所40内に導かれた被測定ガスは、酸素分圧が制御された状況下で第4拡散律速部45を通じて測定電極44に到達することとなる。測定電極44の周囲の被測定ガス中の窒素酸化物は還元されて(2NO→N2+O2)酸素を発生する。そして、この発生した酸素は測定用ポンプセル41によってポンピングされることとなるが、その際、測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル82にて検出された制御電圧V2が一定となるように可変電源の電圧Vp2が制御される。測定電極44の周囲において発生する酸素の量は、被測定ガス中の窒素酸化物の濃度に比例するものであるから、測定用ポンプセル41におけるポンプ電流Ip2を用いて被測定ガス中の窒素酸化物濃度が算出されることとなる。
【0066】
また、測定電極44と、第1固体電解質層4と、第3基板層3と、基準電極42とを組み合わせて、電気化学的センサセルとして酸素分圧検出手段を構成するようにすれば、測定電極44の周りの雰囲気中のNOx成分の還元によって発生した酸素の量と基準大気に含まれる酸素の量との差に応じた起電力を検出することができ、これによって被測定ガス中のNOx成分の濃度を求めることも可能である。
【0067】
また、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4と、第3基板層3と、外側ポンプ電極23と、基準電極42とから電気化学的なセンサセル83が構成されており、このセンサセル83によって得られる起電力Vrefによりセンサ外部の被測定ガス中の酸素分圧を検出可能となっている。
【0068】
このような構成を有するガスセンサ100においては、主ポンプセル21と補助ポンプセル50とを作動させることによって酸素分圧が常に一定の低い値(NOxの測定に実質的に影響がない値)に保たれた被測定ガスが測定用ポンプセル41に与えられる。したがって、被測定ガス中のNOxの濃度に略比例して、NOxの還元によって発生する酸素が測定用ポンプセル41より汲み出されることによって流れるポンプ電流Ip2に基づいて、被測定ガス中のNOx濃度を知ることができるようになっている。
【0069】
さらに、センサ素子101は、固体電解質の酸素イオン伝導性を高めるために、センサ素子101を加熱して保温する温度調整の役割を担うヒータ部70を備えている。ヒータ部70は、ヒータ電極71と、ヒータ72と、スルーホール73と、ヒータ絶縁層74と、圧力放散孔75とを備えている。
【0070】
ヒータ電極71は、第1基板層1の下面に接する態様にて形成されてなる電極である。ヒータ電極71を外部電源と接続することによって、外部からヒータ部70へ給電することができるようになっている。
【0071】
ヒータ72は、第2基板層2と第3基板層3とに上下から挟まれた態様にて形成される電気抵抗体である。ヒータ72は、スルーホール73を介してヒータ電極71と接続されており、該ヒータ電極71を通して外部より給電されることにより発熱し、センサ素子101を形成する固体電解質の加熱と保温を行う。
【0072】
また、ヒータ72は、第1内部空所20から第2内部空所40の全域に渡って埋設されており、センサ素子101全体を上記固体電解質が活性化する温度に調整することが可能となっている。
【0073】
ヒータ絶縁層74は、ヒータ72の上下面に、アルミナ等の絶縁体によって形成されてなる絶縁層である。ヒータ絶縁層74は、第2基板層2とヒータ72との間の電気的絶縁性、及び、第3基板層3とヒータ72との間の電気的絶縁性を得る目的で形成されている。
【0074】
圧力放散孔75は、第3基板層3を貫通し、基準ガス導入空間43に連通するように設けられてなる部位であり、ヒータ絶縁層74内の温度上昇に伴う内圧上昇を緩和する目的で形成されてなる。
【0075】
[3.コネクタに含まれる各板状部材の構成]
図4は、板状部材161を上下方向の一方から示した模式図である。
図5は、板状部材161を左右方向の一方から示した模式図である。
図6は、板状部材161を後方から示した模式図である。
【0076】
図4、
図5及び
図6に示されるように、板状部材161は、平面視において略矩形状の板状の部材である。板状部材161の左右方向の幅は、センサ素子101の幅よりも長い。板状部材161は、略平面状の板状部材本体部163と、複数(3つ)の仕切壁部165と、複数(3つ)の仕切壁部166と、当接部167,168と、複数(2つ)の突起部164とを備えている。
【0077】
各仕切壁部165,166は、平面視で前後方向に延びた矩形状であり、板状部材本体部163から例えば
図4における手前方向に向かって隆起している。板状部材本体部163上に配置される上述の複数の金属端子間には、仕切壁部165,166が位置している。したがって、複数の金属端子同士は接触しない。
【0078】
当接部167,168は、板状部材本体部163から例えば
図4における手前方向に向かって隆起している。上述のように、2つの板状部材161によって、センサ素子101のうち電極パッド170が形成された部分が挟まれる。当接部167,168の各々は、2つの板状部材161がセンサ素子101を挟んだ状態で、対向する板状部材161の板状部材本体部163に当接する。
【0079】
複数の突起部164の各々は、板状部材161の後端の面169(
図6)から後方に向かって延びている。一方の突起部164は面169における長手方向(左右方向)の一方の端部に形成されており、他方の突起部164は面169における長手方向の他方の端部に形成されている。板状部材161の平面視(
図4参照)において、突起部164には後端に向かうほど突起部164が細くなるテーパT1が形成されている。また、板状部材161の側面視(
図5参照)において、突起部164には後端に向かうほど突起部164が細くなるテーパT2が形成されている。
【0080】
[4.グロメットの劣化抑制]
上述のように、ガスセンサ100においては、コネクタ150に含まれる板状部材161の後端にグロメット157の前端が押し当てられている。グロメット157の前端を板状部材161の後端に押し当てることによって、ガスセンサ100の製造時におけるグロメット157の位置決めが容易となる。また、グロメット157の前端を板状部材161の後端に押し当てることによって、ガスセンサ100の使用時にセンサ素子101等に生じる振動が抑制される。
【0081】
一方、ガスセンサ100の使用時にセンサ素子101は高温になるため、センサ素子101を保持するコネクタ150も高温になる。仮にコネクタ150からグロメット157への熱伝達が容易であれば、グロメット157が高温になり、グロメット157が急速に劣化する可能性がある。
【0082】
図7は、コネクタ150の代わりに仮のコネクタ150Aが用いられた場合に生じる問題を説明するための図である。なお、
図7においては、理解の容易のために、リード線155等が省略されている。
【0083】
図7に示されるように、コネクタ150Aは、2つの板状部材161Aと、固定部材162Aとを含んでいる。各板状部材161Aにおいては、本実施の形態における板状部材161と異なり、突起部164が形成されていない。したがって、この場合には、板状部材161Aの後端の面全体がグロメット157に接触する。その結果、コネクタ150Aからグロメット157への熱伝達が容易になり、グロメット157が高温になる。
【0084】
図8は、本実施の形態に従うガスセンサ100における
図7に対応する位置を模式的に示す図である。
図8に示されるように、ガスセンサ100においては、板状部材161の突起部164のみがグロメット157に接触している。より具体的には、突起部164の後端の面のみがグロメット157に接触している。すなわち、ガスセンサ100においては、板状部材161の後端の面全体がグロメット157に接触するわけではない。したがって、ガスセンサ100によれば、板状部材161の後端の面全体がグロメット157に接触する場合と比較して、板状部材161とグロメット157との接触面積が小さいため、板状部材161からグロメット157への熱伝達を抑制することができる。その結果、ガスセンサ100によれば、グロメット157の劣化が抑制されるため、ガスセンサ100の製品寿命を延ばすことができる。
【0085】
特に、ガスセンサ100においては、突起部164の先端部(後端寄りの端部)が突起部164の付け根部よりも細くなっているため、突起部164とグロメット157との接触面積をより小さくすることができる。また、ガスセンサ100によれば、突起部164の付け根部が突起部164の先端部よりも太くなっているため、突起部164の強度をある程度確保することができる。すなわち、ガスセンサ100によれば、突起部164とグロメット157との接触面積の低減と、突起部164の強度の確保とを両立することができる。例えば、突起部164とグロメット157との接触面積は、グロメット157の前端の面の面積に対して5%以下である。
【0086】
図9は、グロメット157の前端の面を模式的に示す図である。
図9を参照して、領域A1は、グロメット157がコネクタ150に押し当てられた状態で、センサ素子101に対向する領域である。各領域A2は、2つの板状部材161のいずれかの突起部164が接触する領域である。
【0087】
各板状部材161においては後端の面169の長手方向の両端部に突起部164が形成されているため、2つの板状部材161によってセンサ素子101が挟まれた状態で、領域A1の四隅の位置に領域A2が形成される。
【0088】
グロメットがコネクタに押し当てられているガスセンサにおいては、通常センサ素子からの輻射熱の影響で、グロメットのうちセンサ素子と対向している領域が比較的高温になることを本発明者(ら)は見出した。
【0089】
本実施の形態に従うガスセンサ100において、各突起部164は、グロメット157の領域A1(センサ素子101と対向している領域)から比較的遠い位置においてグロメット157と接触する。その結果、ガスセンサ100によれば、板状部材161からグロメット157への熱伝達が主にグロメット157における比較的低温の領域(領域A2)を介して行なわれるため、グロメット157における温度の偏りの発生を抑制することができる。その結果、ガスセンサ100によれば、グロメット157の劣化が抑制されるため、ガスセンサ100の製品寿命を延ばすことができる。
【0090】
[5.特徴]
以上のように、本実施の形態に従うガスセンサ100においては、板状部材161(コネクタ150)の後端の面169に形成された突起部164がグロメット157に接触しており、板状部材161の後端の面全体がグロメット157に接触するわけではない。したがって、ガスセンサ100によれば、板状部材161の後端の面全体がグロメットに接触する場合と比較して、板状部材161とグロメット157との接触面積が小さいため、板状部材161からグロメット157への熱伝達を抑制することができる。その結果、ガスセンサ100によれば、グロメット157の劣化が抑制されるため、ガスセンサ100の製品寿命を延ばすことができる。
【0091】
なお、ガスセンサ100は本発明の「ガスセンサ」の一例であり、センサ素子101は本発明の「センサ素子」の一例である。素子封止体141は本発明の「素子封止体」の一例であり、リード線155は本発明の「リード線」の一例である。コネクタ150は本発明の「コネクタ」の一例であり、外筒148は本発明の「外筒」の一例である。グロメット157は本発明の「グロメット」の一例であり、板状部材161は本発明の「板状部材」の一例である。突起部164は本発明の「突起部」の一例であり、保護カバー130は本発明の「保護カバー」の一例である。
【0092】
[6.変形例]
以上、実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。以下、変形例について説明する。
【0093】
(6-1)
上記実施の形態に従うガスセンサ100において、センサ素子101には、第1内部空所20と、第2内部空所40とが形成されていた。すなわち、センサ素子101は、2室構造であった。しかしながら、センサ素子101は、必ずしも2室構造である必要はない。例えば、センサ素子101は、3室構造であってもよい。
【0094】
図10は、3室構造のセンサ素子101Xの構成の一例を概略的に示した断面模式図である。
図10に示されるように、第2内部空所40(
図3)を第5拡散律速部60でさらに2室に分け、第2内部空所40Xと第3内部空所61とを作成してもよい。この場合、第2内部空所40Xに補助ポンプ電極51Xを配置し、第3内部空所61に測定電極44Xを配置してもよい。また3室構造にする場合には、第4拡散律速部45を省略してもよい。
【0095】
(6-2)
また、上記実施の形態に従うガスセンサ100においては、各板状部材161に2つの突起部164が形成されていた。しかしながら、板状部材161に形成される突起部164の数は2つに限定されない。例えば、板状部材161に、1つの突起部164が形成されてもよいし、3つ以上の突起部164が形成されてもよい。
【0096】
(6-3)
また、上記実施の形態に従うガスセンサ100においては、各板状部材161の後端の面169の長手方向の両端部に突起部164が形成された。しかしながら、突起部164が形成される位置は必ずしもこれに限定されない。例えば、突起部164は、板状部材161の後端の面169における中央付近の位置に形成されてもよい。
【0097】
(6-4)
また、上記実施の形態に従うガスセンサ100に含まれる素子封止体141においては、セラミックスサポーター144a,144bによって圧粉体145aが挟まれ、セラミックスサポーター144b,144cによって圧粉体145bが挟まれた。しかしながら、セラミックスサポーター及び圧粉体の数及び配置はこれに限定されない。たとえば、セラミックスサポーターとしては2つのみが用いられ、2つのセラミックスサポーターの間に圧粉体が挟まれる構成であってもよい。
【0098】
(6-5)
また、上記実施の形態に従うガスセンサ100においては、コネクタ150が2つの板状部材161を含んでいた。しかしながら、コネクタ150は、必ずしも2つの板状部材161を含む必要はない。例えば、センサ素子101のうち電極パッド170が形成される部分を保持する部材は、2つの板状部材161が一体的に形成されたような部材であってもよいし、センサ素子101のうち電極パッド170が形成される部分の周囲を覆う筒状の部材であってもよい。
【0099】
[7.実施例等]
(7-1.実施例1,2及び比較例1)
実施例1,2となる2つのガスセンサ100を作成すると共に、比較例1となるガスセンサを作成した。実施例1,2及び比較例1における違いは、板状部材161の形状のみであった。実施例1,2において、板状部材161の形状は、
図8に示されるように突起部164を有する形状であった。比較例1において、板状部材161の形状は、
図7に示されるように突起部164を有さない形状であった。なお、実施例1,2及び比較例1の各々において、グロメット157の前端の面の面積は75.8mm
2であった。
【0100】
実施例1におけるガスセンサ100において、2つの板状部材161に含まれる合計4つの突起部164の後端の面の面積の合計は3.4mm2であった。すなわち、突起部164とグロメット157との接触面積は、グロメット157の前端の面の面積に対して4.5%であった。
【0101】
実施例2におけるガスセンサ100において、2つの板状部材161に含まれる合計4つの突起部164の後端の面の面積の合計は2.6mm2であった。すなわち、突起部164とグロメット157との接触面積は、グロメット157の前端の面の面積に対して3.4%であった。
【0102】
比較例1におけるガスセンサにおいて、2つの板状部材161Aの後端の面の面積の合計は15.1mm2であった。すなわち、板状部材161Aとグロメット157との接触面積は、グロメット157の前端の面の面積に対して19.9%であった。
【0103】
(7-2.評価試験)
実施例1,2及び比較例1におけるガスセンサのうち保護カバー130部分のみを灼熱炉内に挿入した。この状態で、ガスセンサを作動させた。その後、灼熱炉内を昇温した。
【0104】
図11は、灼熱炉内のヒートカーブを示す図である。
図11に示されるように、灼熱炉内は、800℃以上になるまで徐々に昇温された。
【0105】
本評価試験においては、グロメット157の温度と、ナット147の温度とが測定された。グロメット157の温度は、突起部164が接触している位置から約1mm後端側の位置に熱電対を突き刺すことによって測定された。ナット147の温度は、ナット147の表面に熱電対を配置することによって測定された。本評価試験においては、ナット147の温度が650℃となった時点におけるグロメット157の温度を比較することによって行なわれた。
【0106】
図12は、評価試験の結果を示す図である。
図12に示されるように、比較例1においては、グロメット157の温度が268℃であった。一方、実施例1においてはグロメット157の温度が258℃であり、実施例2においてはグロメット157の温度が253℃であった。すなわち、実施例1においてはグロメット157の温度が10℃低減され、実施例2においてはグロメット157の温度が15℃低減された。
【0107】
例えば、ガスセンサ100が車両の排ガス管等の配管190(
図1)に取り付けられて使用される場合、配管190内は常に高温であるわけではない。すなわち、通常の使用環境においては、ガスセンサ100の昇温と降温とが繰り返される。したがって、グロメット157の温度上昇スピードが緩やかになれば、グロメット157の劣化が急激に進行する程度までグロメット157の温度が上昇する可能性が低減する。上記実施例1,2においては、比較例1と比較して、グロメット157の温度上昇スピードが緩やかになった。すなわち、実施例1,2におけるガスセンサ100によれば、比較例1におけるガスセンサと比較して、グロメット157の劣化を抑制することができた。
【符号の説明】
【0108】
1 第1基板層、2 第2基板層、3 第3基板層、4 第1固体電解質層、5 スペーサ層、6 第2固体電解質層、10 ガス導入口、11 第1拡散律速部、12 緩衝空間、13 第2拡散律速部、20 第1内部空所、21 主ポンプセル、22 内側ポンプ電極、22a,51a,51aX 天井電極部、22b,51b,51bX 底部電極部、23 外側ポンプ電極、30 第3拡散律速部、40,40X 第2内部空所、41 測定用ポンプセル、42 基準電極、43 基準ガス導入空間、44,44X 測定電極、45 第4拡散律速部、46,52 可変電源、48 大気導入層、50 補助ポンプセル、51,51X 補助ポンプ電極、60 第5拡散律速部、61 第3内部空所、70 ヒータ部、71 ヒータ電極、72 ヒータ、73 スルーホール、74 ヒータ絶縁層、75 圧力放散孔、80 主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル、81 補助ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル、82 測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル、83 センサセル、100 ガスセンサ、101 センサ素子、130 保護カバー、131 内側保護カバー、132 外側保護カバー、133 センサ素子室、140 センサ組立体、141 素子封止体、142 主体金具、143 内筒、143a,143b 縮径部、144a-144c セラミックスサポーター、145a,145b 圧粉体、146 メタルリング、147 ナット、148 外筒、149 空間、150,150A コネクタ、155 リード線、157 グロメット、161,161A 板状部材、162,162A 固定部材、163 板状部材本体部、164 突起部、165,166 仕切壁部、167,168 当接部、169 面、170 電極パッド、190 配管、191 固定用部材、A1,A2 領域、T1,T2 テーパ。