(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】接着剤組成物、ゴム-有機繊維コード複合体及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
D06M 13/127 20060101AFI20231025BHJP
B60C 9/00 20060101ALI20231025BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20231025BHJP
C09J 121/02 20060101ALI20231025BHJP
D06M 13/07 20060101ALI20231025BHJP
D06M 13/256 20060101ALI20231025BHJP
D06M 13/395 20060101ALI20231025BHJP
D06M 15/693 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
D06M13/127
B60C9/00 A
C09J11/06
C09J121/02
D06M13/07
D06M13/256
D06M13/395
D06M15/693
(21)【出願番号】P 2020080681
(22)【出願日】2020-04-30
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【氏名又は名称】冨田 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(72)【発明者】
【氏名】中村 真明
(72)【発明者】
【氏名】高橋 有香
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特許第2584625(JP,B2)
【文献】特許第3036075(JP,B2)
【文献】特開平11-100772(JP,A)
【文献】特開平11-071562(JP,A)
【文献】特開2009-215419(JP,A)
【文献】特開2010-275338(JP,A)
【文献】特開2015-124357(JP,A)
【文献】特開2021-176952(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00 - 19/12
C09J 1/00 - 5/10
C09J 9/00 - 201/10
D06M 13/00 - 15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルデヒド類と、スルホン酸基を有する多環芳香族炭化水素と、を含むことを特徴とする、接着剤組成物。
【請求項2】
ゴムラテックスを、さらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
イソシアネート化合物を、さらに含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
前記多環芳香族炭化水素は、以下の式(1)で表されるナフタレン化合物であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【化1】
(式中、R
1は、同一又は異なっていてもよく、水素原子、水酸基又は芳香環ホルムアルデヒド縮合物からなる置換基であり、kは1~6であり、またYは、水素原子、アルカリ金属又は以下の式(2)であらわされるアンモニウム基である。)
【化2】
(式中、R
2、R
3、R
4は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基又はヒドロキシアルキル基である。)
【請求項5】
前記式(1)で表されるナフタレン化合物において、前記スルホン酸基(SO
3Y)の位置が、β位であることを特徴とする、請求項4に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
前記式(1)で表されるナフタレン化合物が、以下の式(3)で表される1,4-ジヒドロキシナフタレン-2-スルホン酸又はその塩であることを特徴とする、請求項4又は5に記載の接着剤組成物。
【化3】
(式中、Yは、式(1)のYと同じものである。)
【請求項7】
前記一般式(1)で表されるナフタレン化合物が、以下の式(4)で表わされるβ-ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩であることを特徴とする請求項4又は5に記載の接着剤組成物。
【化4】
(式中、Yは、R
1及びYは、式(1)のR
1及びYと同じものである。)
【請求項8】
前記式(4)で表されるβ-ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物塩の重量平均分子量が、1,000~30,000であることを特徴とする、請求項7に記載の接着剤組成物。
【請求項9】
前記式(4)で表されるβ-ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物塩の重量平均分子量が、8,000~30,000であることを特徴とする、請求項8に記載の接着剤組成物。
【請求項10】
前記アルデヒド類が、ホルムアルデヒド及び/又は2-ヒドロキシ-1-ナフトアルデヒドを含むことを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項11】
前記アルデヒド類の含有量が、前記ゴムラテックスの固形分100質量部に対して、0.5~20質量部であることを特徴とする、請求項2に記載の接着剤組成物。
【請求項12】
前記アルデヒド類の含有量が、前記ゴムラテックスの固形分100質量部に対して、0.5~20質量部であり、前記イソシアネート化合物の含有量が、前記ゴムラテックスの固形分100質量部に対して、10~100質量部であることを特徴とする、請求項3に記載の接着剤組成物。
【請求項13】
前記接着剤組成物が、
エポキシ化合物を含む第1浴処理液と、
アルデヒド類、及び、スルホン酸基を有する多環芳香族炭化水素を含む第2浴処理液と、を有することを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項14】
前記接着剤組成物が、レゾルシンを含まないことを特徴とする、請求項1~13のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項15】
ゴム部材と、有機繊維コードと、を備えた、ゴム-有機繊維コード複合体であって、
前記有機繊維コードの少なくとも一部に、請求項1~14のいずれか1項に記載の接着剤組成物がコーティングされていることを特徴とする、ゴム-有機繊維コード複合体。
【請求項16】
請求項15に記載のゴム-有機繊維コード複合体を用いたことを特徴とする、タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物、ゴム-有機繊維コード複合体及びタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエステル繊維等の有機繊維は、高い初期弾性率や、優れた熱時寸法安定性を有しているため、フィラメント、コード、ケーブル、コード織物、帆布等の形態で、タイヤ、ベルト、空気バネ、ゴムホース等のゴム物品の補強材として極めて有用であり、これらの繊維とゴムとの接着性を改良させるため、種々の接着剤組成物が提案されている。
接着剤組成物として、例えば、レゾルシンや、ホルマリン、ゴムラテックス等を含むRFL(レゾルシン・ホルマリン・ラテックス)接着剤を用い、該RFL接着剤を熱硬化させることにより接着力を確保する技術が、知られている(例えば、特許文献1~3等を参照。)。
【0003】
また、接着剤組成物については、レゾルシンとホルマリンを初期縮合させたレゾルシンホルマリン樹脂を用いる技術(特許文献4~7を参照)や、エポキシ樹脂でポリエステル繊維等からなるタイヤコードを前処理することにより、接着力の向上を図る技術が知られている。
【0004】
ただし、上述した接着剤組成物に一般的用いられているレゾルシンは、近年、作業環境を考慮して、使用量の削減が求められている。
そのため、レゾルシンを含まず、環境への配慮がされた接着剤組成物や、接着方法が提案されている。その一例として、レゾルシンの代替として、レゾルシノール以外の水溶性フェノール類と、芳香族アルデヒド類を、ゴムラテックスに混合する接着剤組成物が提案されている。
【0005】
ここで、レゾルシン以外の水溶性のフェノール類としては、例えば、フロログルシノールのような水溶性フェノール類と、フロログルシドのような水溶性ビフェニル類、テトラヒドロキシジフェニルスルフィド等の水溶性フェニルスルフィド、モリン等の植物成分由来のポリフェノール類が挙げられ、芳香族アルデヒドとしては、テレフタルアルデヒド(例えば、特許文献8を参照。)、フランカルボキシアルデヒドあるいはその置換体(例えば、特許文献9を参照。)等、が知られている。
【0006】
しかしながら、接着層をなす接着剤組成物の接着性能への要求は高くなっており、特許文献7~9に開示された技術では、十分な接着性を実現できていなかった。
【0007】
また、水溶性のポリフェノール類以外の芳香族とホルムアルデヒドからなる樹脂として、ナフタレン等の多環芳香族炭化水素(縮合環芳香族)とホルムアルデヒドとからなる樹脂が、芳香環の構造から材料の耐熱性が高いため着目されつつある。この樹脂は、先ずナフタレンとホルムアルデヒドの縮合樹脂(特許文献10を参照。)が乾性油になることが見いだされ種々の水溶性官能基を置換基として有するナフタレンとホルムアルデヒドの縮合樹脂が提案されている。
【0008】
さらに近年、多環芳香族炭化水素は、フェノール類に比べて高い耐熱性を有することから、アルカリ現像液に対して優れた溶解性を示すレジスト材料でノボラック反応によるナフトールホルムアルデヒド樹脂の提案があり(特許文献11を参照。)、アンモニア等のアルカリ下でのレゾール反応によるナフトールホルムアルデヒド樹脂についても開示されている(特許文献10を参照。)。
【0009】
さらにまた、ナフタレン等の多環芳香族炭化水素類とホルムアルデヒドとからなる樹脂として、例えば水溶性官能基としてスルホン酸基を有するβ-ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物が知られている。この縮合物は、縮合環の骨格を有するナフタレンをスルホン化した後、ホルムアルデヒドを用いた縮合反応で得たナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物を、中和することにより製造されている(例えば、特許文献13を参照。)。
このナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物は、ナフタレン環とのπ電子の移動での吸着力による分散粒子とπ電子系の相互作用が得られると考えられており、染料、顔料、農薬等として用いることができ、また土木や建築用でコンクリートに混和する減水剤として広く用いられている材料や(例えば、特許文献14を参照。)、分散剤としても用いられている(特許文献15及び16を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開昭58-2370号公報
【文献】特開昭60-92371号公報
【文献】特開昭60-96674号公報
【文献】特開昭63-249784号公報
【文献】特公昭63-61433号公報
【文献】特開2006-27429号公報
【文献】特開平6-123078号公報
【文献】米国特許出願公開第2014/0235124号明細書
【文献】特開平1-315411号公報
【文献】米国特許第898307号明細書
【文献】特開昭60-050531号公報
【文献】特開2008-239599号公報
【文献】特開2009-079010号公報
【文献】特開昭55-149153号公報
【文献】国際公開第2016/133190号
【文献】特開2010-106089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献13~16の技術については、レゾルシンを含む系での検討であり、レゾルシンを含まない場合であっても、接着性能が十分に得られた技術については、今のところ知られておらず、その開発が望まれていた。
【0012】
そのため、本発明の目的は、レゾルシンを含まない場合であっても、優れた接着性を実現できる接着剤組成物を提供することにある。
また、本発明の目的は、環境への負荷が小さく、ゴムと有機繊維コードとの接着性に優れた、ゴム-有機繊維コード複合体及びタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記目的を達成するべく検討を行った結果、接着剤組成物中に、アルデヒド類に加えて、レゾルシンの代替材料としてスルホン酸基を有する多環芳香族炭化水素を含有させることによって、多環芳香族炭化水素の溶媒中への溶解が可能となることに加え、接着剤組成物の接着力を向上させることができることを見出した。
【0014】
すなわち、本発明の接着剤組成物は、アルデヒド類と、スルホン酸基を有する多環芳香族炭化水素と、を含むことを特徴とする。
上記構成により、レゾルシンを含まない場合であっても、優れた接着性を実現できる。
【0015】
また、本発明の接着剤組成物は、ゴムラテックスをさらに含むことが好ましい。接着剤組成物のゴムラテックス成分を含むことにより、被着ゴムのゴム成分同士による相互作用と共加硫により、被着ゴムとの優れた接着性を実現できるためである。
【0016】
また、本発明の接着剤組成物では、前記イソシアネート化合物を、さらに含むことが好ましい。より優れた接着性を実現できるためである。
【0017】
さらに、本発明の接着剤組成物では、前記多環芳香族炭化水素は、以下の式(1)で表されるナフタレン化合物であることが好ましい。
【化1】
(式中、R
1は、同一又は異なっていてもよく、水素原子、水酸基又は芳香環ホルムアルデヒド縮合物からなる置換基であり、kは1~6であり、またYは、水素原子、アルカリ金属又は以下の式(2)であらわされるアンモニウム基である。)
【化2】
(式中、R
2、R
3、R
4は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基又はヒドロキシアルキル基である。)
生産性を低下させることなく、より優れた接着性を実現できるためである。
【0018】
さらにまた、本発明の接着剤組成物では、前記式(1)で表されるナフタレン化合物において、前記スルホン酸基(SO3Y)の位置が、β位であることが好ましい。生産性を低下させることなく、より優れた接着性を実現できるためである。
【0019】
また、本発明の接着剤組成物では、前記式(1)で表されるナフタレン化合物が、以下の式(3)で表される1,4-ジヒドロキシナフタレン-2-スルホン酸又はその塩であることが好ましい。
【化3】
(式中、Yは、式(1)のYと同じものである。)
生産性を低下させることなく、より優れた接着性を実現できるためである。
【0020】
また、本発明の接着剤組成物では、前記一般式(1)で表されるナフタレン化合物が、以下の式(4)で表わされるβ-ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩であることが好ましい。
【化4】
(式中、Yは、R
1及びYは、式(1)のR
1及びYと同じものである。)
生産性を低下させることなく、より優れた接着性を実現できるためである。
【0021】
さらに、本発明の接着剤組成物では、前記式(4)で表されるβ-ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物塩の重量平均分子量が、1,000~30,000であることが好ましく、8,000~30,000であることがより好ましい。作業性の低下を招くことなく、より確実に接着性を向上できるからである。
【0022】
また、本発明の接着剤組成物では、前記アルデヒド類が、ホルムアルデヒド及び/又は2-ヒドロキシ-1-ナフトアルデヒドを含むことが好ましい。より優れた接着性を実現できるためである。
【0023】
さらに、本発明の接着剤組成物では、前記アルデヒド類の含有量が、前記ゴムラテックスの固形分100質量部に対して、0.5~20質量部であることが好ましい。作業性等を悪化させることなく、より優れた接着性を確保できるからである。
【0024】
さらにまた、本発明の接着剤組成物では、前記アルデヒド類の含有量が、前記ゴムラテックスの固形分100質量部に対して、0.5~20質量部であり、前記イソシアネート化合物の含有量が、前記ゴムラテックスの固形分100質量部に対して、10~100質量部であることが好ましい。作業性等を悪化させることなく、より優れた接着性を確保できるからである。
【0025】
また、本発明の接着剤組成物は、エポキシ化合物を含む第1浴処理液と、アルデヒド類、及び、スルホン酸基を有する多環芳香族炭化水素を含む第2浴処理液と、を有することが好ましい。二液型の処理液として用いることも可能となるためである。
【0026】
さらに、本発明の接着剤組成物は、レゾルシンを含まないことが好ましい。作業環境等の環境負荷を低減できるためである。
【0027】
本発明のゴム-有機繊維コード複合体は、ゴム部材と、有機繊維コードと、を備えた、ゴム-有機繊維コード複合体であって、前記有機繊維コードの少なくとも一部に、上述した本発明の接着剤組成物がコーティングされていることを特徴とする。
上記構成によって、環境への負荷を抑えつつ、ゴムと有機繊維コードとの接着性を向上させることができる。
【0028】
本発明のタイヤは、上述した本発明のゴム-有機繊維コード複合体を用いたことを特徴とする。
上記構成によって、環境への負荷を抑えつつ、ゴムと有機繊維コードとの接着性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、レゾルシンを含まない場合であっても、優れた接着性を実現できる接着剤組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、環境への負荷が少なく、ゴムと有機繊維コードとの接着性に優れた、ゴム-有機繊維コード複合体及びタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】実施例2で用いた接着剤組成物の処理装置の構成を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
<接着剤組成物>
以下に、本発明の接着剤組成物の一実施形態について詳細に説明する。
本発明の接着剤組成物(以下、単に「接着剤組成物」又は「組成物」ということもある。)は、アルデヒド類と、スルホン酸基を有する多環芳香族炭化水素と、を含む。
【0032】
ここで、本発明の接着剤組成物は、接着対象が有機繊維コードであることが好ましい。
ポリエチレンテレフタラート(PET)やナイロン等からなる有機繊維コードは、通常の接着剤組成物では、ゴム等の他部材との十分な接着性が得られず、本発明の接着剤組成物のように、樹脂やゴムラテックス等を含む有機繊維コード用の接着剤組成物を用いることによって、他部材との接着性を確保している。
【0033】
(多環芳香族炭化水素)
本発明の接着剤組成物は、多環芳香族炭化水素を含む。接着剤組成物中に多環芳香族炭化水素を含むことによって、接着剤組成物の接着性を高めることができる。
そして、前記多環芳香族炭化水素がスルホン酸基を有することによって、水溶性が向上し、多環芳香族炭化水素を接着剤組成物内に均一して分布させることができる結果、優れた接着性を実現できる。
【0034】
ここで、前記多環芳香族炭化水素は、縮合環式化合物であり、例えば、四員環、五員環、六員環、七員環等が縮合した化合物が挙げられるが、これらの中でも、構造安定的に安定である六員環の縮合環式化合物であることが好ましい。
なお、本発明における前記多環芳香族炭化水素は、ヘテロ原子や置換基を含まない芳香環が縮合した縮合環式炭化水素であり、IUPAC規則の多環芳香族炭化水素である。
【0035】
また、六員環の縮合環式化合物は、上述した六員環の縮合環式化合物として、ナフタレン環、アントラセン環、テトラセン環、グリセリン環、ピレン環、ペンタセン環、等が挙げられる。これらの中でも、前記多環芳香族炭化水素は、ナフタレン環を有することが好ましい。環の縮合数が多くなるほど、水溶性が低下する傾向にあるため、ナフタレン環の場合には、接着剤組成物中に溶解しやすく、均一に分散することが可能となることから、接着剤組成物の生産性や接着性を向上できる。
【0036】
そして、本発明の接着剤組成物では、前記多環芳香族炭化水素がスルホン酸基を有することを特徴とする。前記多環芳香族炭化水素の水溶性が高くなるため、接着剤組成物の生産性や接着性を向上できる。ここで、前記多環芳香族炭化水素は、スルホン酸基を有しており、この付加される置換基は、スルホン酸であってもよいし、アルカリとの塩の形態であってもよく、例えば、Na塩、Li塩などのアルカリ塩、Ca塩、Mg塩などのアルカリ土類金属塩、アミン類等が好ましく挙げられる。
【0037】
また、前記多環芳香族炭化水素は、接着剤組成物中に溶解しやすく、より優れた接着性が得られる観点から、一般式(1)で示されるナフタレン化合物であることが好ましい。
【化5】
上記式(1)中、R
1は、同一又は異なっていてもよく、水素原子、水酸基又は芳香環ホルムアルデヒド縮合物からなる置換基であり、kは1~6であり、またYは、水素原子、アルカリ金属又は以下の式(2)であらわされるアンモニウム基である。
【化6】
上記式(2)中、R
2、R
3、R
4は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基又はヒドロキシアルキル基である。
【0038】
さらに、前記多環芳香族炭化水素は、より優れた水溶性が得られる観点から、上記式(1)で示されるナフタレン化合物における、前記スルホン酸基(SO3Y)の位置が、β位(2位)であることが好ましい。
なお、上記式(1)で示されるナフタレン化合物における置換官能基R1の置換位置は、1~8位のうち、前記スルホン酸基(SO3Y)の置換位置を除いた、残余の位置から選ばれる。
【0039】
また、前記多環芳香族炭化水素は、より優れた水溶性が得られる観点から、上記式(1)で示されるナフタレン化合物における置換官能基R1が、水酸基又は芳香環ホルムアルデヒド縮合物からなる置換基であることが好ましい。
前記置換官能基R1が水酸基である場合には、官能基が比較的に小さく立体障害となり難い置換基であり、かつ導入により前記多環芳香族炭化水素類(B)の水溶性が向上し、水系の接着剤組成物液への溶解性が高くなるためである。
さらに、同様の観点から、上記式(1)で示されるナフタレン化合物における前記水酸基の数は、2以上であることがより好ましく、前記水酸基の位置が、少なくとも1位及び4位にあることがさらに好ましい。
【0040】
なお、前記水酸基及び芳香環ホルムアルデヒド縮合物以外の、置換官能基R1としては、カルボキシル基、アルデヒド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ポリオキシアルキレン基、アミノ基、スルホ基、アルキル基、ハロゲノ原子等を用いることも可能である。
【0041】
また、上記式(1)で表されるナフタレン化合物は、より好ましくは、以下の式(3)で表される1,4-ジヒドロキシナフタレン-2-スルホン酸若しくはその塩、又は、以下の式(4)で表わされるβ-ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物若しくはその塩である。
【0042】
【化7】
上記式中、Yは、上記式(1)のYと同じものである。
【0043】
上記式(3)で表される1,4-ジヒドロキシナフタレン-2-スルホン酸の塩については、例えば、1,4-ジヒドロキシナフタレン-2-スルホン酸のアンモニウムがあげられる。前記1,4-ジヒドロキシナフタレン-2-スルホン酸塩は、例えば、ナフトキノンを有機溶媒に溶解して得た溶液と亜硫酸水素塩の水溶液とを混合することにより付加反応を行う方法等で得られる。また、1,4-ジヒドロキシナフタレン-2-スルホン酸アンモニウムは市販品として入手でき、例えば、川崎化成工業(株)製「キノパワー」等を挙げることができる。
【0044】
【化8】
上記式中、R
1及びYは、上記式(1)のR
1及びYと同じものである。
【0045】
上記式(4)で表されるβ-ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の塩については、例えば、上記式(4)で表わされるYがナトリウムである、β-ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物ナトリウム塩を用いることができる。
【0046】
前記β-ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物ナトリウム塩は、通常、ナフタレンを濃硫酸、発煙硫酸等のスルホン化剤を用いてスルホン化した後、ホルムアルデヒドで縮合しナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物を得て、必要に応じて水酸化ナトリウムなどの中和剤を用いて中和し、粗生成物を精製する方法等で得ることができる。
【0047】
また、上記式(4)で表されるβ-ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物塩の重量平均分子量は、好ましくは1,000以上、より好ましくは3,000以上、さらに好ましくは4,000以上、特に好ましくは5,000以上である。この理由としては、重量平均分子量が少なくなりホルムアルデヒドによるナフタレンの縮合核数が5~6核より少なくなると、β-ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物のπ電子遷移による基材などへの相互作用が少なくなるおそれがあるためである。さらに、上記式(4)で表されるβ-ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物塩の重量平均分子量は、好ましくは100,000以下、より好ましくは50,000以下、特に好ましくは30,000以下である。この理由は、分子量が低い場合には、接着剤組成物の作業性が十分に得られるためである。
【0048】
なお、上記式(4)で表されるβ-ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物塩は、市販品としても入手可能である。例えば、主に界面活性剤、乳化重合用の安定剤あるいは分散剤向けの重量平均分子量1,900~4,000である低縮合度の製品で、花王(株)製「デモールシリーズ」、第一工業製薬(株)製「ラベリンシリーズ」等が挙げられる。また、主にセメントに混和する減水剤向けの重量平均分子量8,000~30,000である高縮合度の製品で、花王(株)製「マイティシリーズ」、第一工業製薬(株)製「セルフローシリーズ」等についても市販品を入手できる。
また、上記式(4)で表されるβ-ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物塩の重量平均分子量については、混合した接着剤組成物のもつ強度が増大するために、重量平均分子量8,000~30,000の高縮合度であることが好ましい。
【0049】
また、本発明の接着剤組成物における、前記多環芳香族炭化水素の含有量については、特に限定はされず、要求される性能に応じて適宜選択できる。例えば、接着剤組成物の生産性を阻害することなく、より優れた接着性が得られる観点からは、後述するゴムラテックスの固形分100質量部に対して、多環芳香族炭化水素とアルデヒド類との合計含有量が1~80質量部であることが好ましく、2~40質量部であることがより好ましい。多環芳香族炭化水素とアルデヒド類との合計含有量が80質量部超過であると接着剤組成物に含まれるゴム成分が相対的に少なくなることで被着ゴムとの接着力が低下し、1質量部未満であると本発明の多環芳香族炭化水素とアルデヒド類含有させる効果が得られなくなるためである。
【0050】
(アルデヒド類)
本発明の接着剤組成物は、上述したスルホン酸基を有する多環芳香族炭化水素に加えて、樹脂成分としてアルデヒド類を含む。
接着剤組成物中にアルデヒド類を含有することで、上述した多環芳香族炭化水素と共に高い接着性を実現できる。
【0051】
ここで、前記アルデヒド類については、特に限定はされず、要求される性能に応じて、適宜選択することができる。
なお、本発明では、前記アルデヒド類が発生源であるアルデヒド類の誘導体も、アルデヒド類の範囲に含まれる。
【0052】
前記アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、アクロレイン、プロピオンアルデヒド、クロラール、ブチルアルデヒド、カプロアルデヒド、アリルアルデヒド等のモノアルデヒドや、グリオキザール、マロンアルデヒド、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、アジポアルデヒド等の脂肪族ジアルデヒド類、ジホルミルフラン、テレフタルアルデヒド、ナフタレンジアルデヒド、2―ヒドロキシ-1-ナフトアルデヒド等の芳香族アルデヒド、ジアルデヒドデンプンなどが挙げられる。これらのアルデヒド類は、一種類を用いても、複数種を混合して用いてもよい。
【0053】
また、これらのアルデヒド類の中でも、より優れた接着性を実現できる観点から、ホルムアルデヒド、テレフタルアルデヒド又は2―ヒドロキシ-1-ナフトアルデヒドを少なくとも用いることが好ましい。
【0054】
また、前記アルデヒド類を発生源とする誘導体としては、例えば、パラホルムアルデヒド、ヘキサメチレンテトラミン、ポリオキシメチレン、又は、前記アルデヒド類にアンモニアなどアミンを混合してなるヘミアミナール等、が挙げられる。
【0055】
また、本発明の接着剤組成物における、前記アルデヒド類の含有量は、後述するゴムラテックスの固形分100質量部に対して、0.5~20質量部であることが好ましく、1~15質量部であることがより好ましい。生産性等を悪化させることなく、より優れた接着性を確保できるためである。
【0056】
また、本発明の接着剤組成物においては、前記アルデヒド類の含有量は、上述した多環芳香族炭化水素が、上記式(3)で表される1,4-ジヒドロキシナフタレン-2-スルホン酸の塩の場合は、後述するゴムラテックスの固形分100質量部に対して、1~15質量部であることが好ましく、上記式(4)で表されるβ-ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の塩の場合は、後述するゴムラテックスの固形分100質量部に対して、0.5~7質量部であることが好ましい。
この上記式(4)で表されるβ-ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の塩の場合に、アルデヒド類の好ましい範囲が小さい範囲である理由は、β-ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物は、既にその分子内にホルムアルデヒドで縮合された構造を含むために、β-ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物を架橋縮合するためのアルデヒド類が少なくすることができるためである。
【0057】
(ゴムラテックス)
本発明の接着剤組成物は、上述した多環芳香族炭化水素及びアルデヒド類に加えて、実質的にはゴムラテックスをさらに含む。ゴム部材との接着性をより高めることができるためである。
【0058】
ここで、前記ゴムラテックスについては、特に限定はされず、天然ゴム(NR)の他、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、ハロゲン化ブチルゴム、アクリロニリトル-ブタジエンゴム(NBR)、ビニルピリジン-スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(Vp)等の合成ゴムを用いることができる。これらのゴム成分は、一種単独で用いてもよいし、二種以上をブレンドして用いてもよい。
【0059】
また、前記ゴムラテックスは、上述したゴムの中でも、より優れた接着性を得る観点から、ビニルピリジン-スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(Vp)を少なくとも含有することが好ましい。
【0060】
前記ビニルピリジン-スチレン-ブタジエンゴムラテックスは、ビニルピリジン系単量体と、スチレン系単量体と、共役ジエン系ブタジエン単量体とを三元共重合させたものである。
ここで、前記ビニルピリジン系単量体は、ビニルピリジンと、該ビニルピリジン中の水素原子が置換基で置換された置換ビニルピリジンとを包含する。該ビニルピリジン系化合物としては、2-ビニルピリジン、3-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、2-メチル-5-ビニルピリジン、5-エチル-2-ビニルピリジン等が挙げられ、これらの中でも、2-ビニルピリジンが好ましい。なお、これらビニルピリジン系単量体は、1種単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、前記スチレン系単量体は、スチレンと、該スチレン中の水素原子が置換基で置換された置換スチレンとを包含する。該スチレン系単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2,4-ジイノプロピルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、4-t-ブチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン等が挙げられ、これらの中でも、スチレンが好ましい。これらのスチレン系単量体は、1種単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
さらに、前記共役ブタジエン系単量体としては、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン等の脂肪族共役ブタジエン化合物が挙げられ、これらの中でも、1,3-ブタジエンが好ましい。これら共役ブタジエン系単量体は、1種単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0061】
また、前記ビニルピリジン-スチレン-ブタジエンゴムラテックスの合成方法は、具体的には、発明者らの検討による「特開平9-78045」に記載の方法などで 同一粒子内で組成比が均一あるいは異ならせた共重合体など、様々な組成や粒子内構造を持たせることができ、これらは公知の方法で製造できる。
これらの方法に基づき合成したゴムラテックスとしては、均一な組成の単量体混合比の共重合体の市販品では、日本ゼオン(株)製「Nipol2518」、日本エイアンドエル(株)製「ピラテックス」等が挙げられる。また粒子内で異ならせた組成の単量体混合比からなる共重合体を持つラテックスとしてJSR(株)製「V0658」等の製品が挙げられ、これらを前記ゴムラテックスとして用いることもできる。
【0062】
さらに、前記ビニルピリジン-スチレン-ブタジエンゴムラテックスは、ビニルピリジン:スチレン:ブタジエンゴムラテックスの単量体比が、15:15:70の均一な単量体混合物を共重合させて、乳化剤にロジン酸のアルカリ金属塩と脂肪酸のアルカリ金属塩を用い、ゼラチンは添加化合物に用いない、汎用されるビニルピリジン-スチレン-ブタジエン共重体のゴムラテックス製造し、これを用いることもできる。
【0063】
さらにまた、前記ビニルピリジン-スチレン-ブタジエンゴムラテックスは、ビニルピリジン:スチレン:ブタジエンの単量体比は、特に限定されるものではないが、ビニルピリジン-スチレン-ブタジエン共重合体粒子を構成する共重合体に、ビニルピリジン5~20質量%、スチレン10~40質量%、ブタジエン45~75質量%からなる単量体混合物を重合した共重合体を含有することが好ましい。
前記ビニルピリジンが、5重量%以上の場合には、ゴム成分内で加硫促進効果のあるピリジン部位が多く硫黄による架橋度が十分に得られるため、所望の接着力が得られ、20重量%以下とすることで、ゴムの架橋度が過加硫になることを抑えることできるためである。また、前記スチレンが、10重量%以上の場合には、ラテックス粒子、接着剤層の強度低下を引き起こすことなく、接着力が十分に得られ、40重量%以下の場合には、接着剤層と被着ゴムとの共加硫性の低下を抑え、やはり接着力が十分に得られる。さらに、前記ブタジエンが、45重量%以上の場合には、十分な架橋が得られ、75重量%以下の場合には、過架橋を抑え、体積及びモジュラス変化による耐久性の低下を抑制できるためである。
【0064】
なお、前記ビニルピリジン-スチレン-ブタジエンゴムラテックスは、その他の共重合可能な単量体を共重合させた変性ビニルピリジン-スチレン-ブタジエン共重合体とすることができる。
これら共重合可能な単量体は、公知のものを用いることができる。例えば、エチレン;プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン等のα-オレフィン単量体;α-メチルスチレン、モノクロロスチレン等の芳香族ビニル単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体;アクリル酸、メタクリル酸、ケイ皮酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸等のエチレン系不飽和カルボン酸単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のエチレン系不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体;β-ヒドロキシエチルアクリレート、β-ヒドロキシエチルメタクリレート等のヒドロキシアルキル基を含有する不飽和単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド等のエチレン系不飽和カルボン酸アミド単量体;ポリオキシエチレンアルキルプロペニルエーテル硫酸アンモニウム塩、ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸アンモニウム塩、プロペニル-2-エチルヘキシルスルホコハク酸エステルナトリウム、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレン硫酸エステル、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレン燐酸エステル等のアニオン性の反応性乳化剤;あるいは;ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル等のノニオン性の反応性乳化剤;などを含ませて重合させた変性ビニルピリジン-スチレン-ブタジエン共重合体を用いることができる。
また、これらの共重合可能なその他の単量体は、20質量%以下となる量であれば、一種単独で使用してもよく、複数種類を併用してもよい。
【0065】
(イソシアネート化合物)
本発明の接着剤組成物は、上述した多環芳香族炭化水素、アルデヒド類及びゴムラテックスに加えて、イソシアネート化合物をさらに含むことが好ましい。前記多環芳香族炭化水素及び前記アルデヒド類との相乗効果によって、本発明の接着剤組成物の接着性をより高めることができる。
【0066】
ここで、前記イソシアネート化合物は、接着剤組成物の被着体である樹脂材料への接着を促進させる作用を有する化合物であって、極性官能基としてイソシアネート基を有する化合物である。
前記イソシアネート化合物の種類については、特に限定はされないが、接着性をより向上できる観点から、(ブロックド)イソシアネート基含有芳香族化合物であることが好ましい。本発明の接着剤組成物中に、前記イソシアネート化合物を含ませると、被着体繊維と接着剤組成物の界面近傍の位置に(ブロックド)イソシアネート基含有芳香族が分布し、接着促進効果が得られる作用が得られ、この作用効果により、有機コードとの接着をより高度化することができる。
前記(ブロックド)イソシアネート基含有芳香族化合物は、(ブロックド)イソシアネート基を有する芳香族化合物である。また、「(ブロックド)イソシアネート基」とは、ブロックドイソシアネート基又はイソシアネート基を意味し、イソシアネート基の他、イソシアネート基に対するブロック化剤と反応して生じたブロックドイソシアネート基、イソシアネート基に対するブロック化剤と未反応のイソシアネート基、又はブロックドイソシアネート基のブロック化剤が解離して生じたイソシアネート基等を含む。
【0067】
さらに、前記(ブロックド)イソシアネート基含有芳香族化合物は、芳香族類がアルキレン鎖で結合された分子構造を含むのが好ましく、芳香族類がメチレン結合した分子構造を含むことがより好ましい。芳香族類がアルキレン鎖で結合された分子構造としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート、又はフェノール類とホルムアルデヒドとの縮合物等にみられる分子構造が挙げられる。
【0068】
なお、前記(ブロックド)イソシアネート基含有芳香族化合物としては、例えば、芳香族ポリイソシアネートと熱解離性ブロック化剤を含む化合物、ジフェニルメタンジイソシアネート又は芳香族ポリイソシアネートを熱解離性ブロック化剤でブロック化した成分を含む水分散性化合物、水性ウレタン化合物等が挙げられる。
【0069】
前記芳香族ポリイソシアネートと熱解離性ブロック化剤とを含む化合物としては、ジフェニルメタンジイソシアネートと公知のイソシアネートブロック化剤を含むブロックドイソシアネート化合物等が好適に挙げられる。上記ジフェニルメタンジイソシアネート又は芳香族ポリイソシアネートを熱解離性ブロック化剤でブロック化した成分を含む水分散性化合物としては、ジフェニルメタンジイソシアネート又はポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートを、イソシアネート基をブロックする公知のブロック化剤でブロックした反応生成物が挙げられる。具体的には、エラストロンBN69(第一工業製薬(株)製)、エラストロンBN77(第一工業製薬(株)製)やメイカネートTP-10(明成化学工業(株)製)等の市販のブロックドポリイソシアネート化合物を用いることができる。
【0070】
前記水性ウレタン化合物は、有機ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に公知のブロック化剤を付加反応させることで得られるものである。このブロックドイソシアネートは、常温では水とは反応しないが、加熱することによりブロック剤が解離し、活性なイソシアネート基が再生される。
ここで、前記有機ポリイソシアネート化合物としては、芳香族イソシアネート類としては、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネートなどのフェニレンジイソシアネート類;2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート(TDI)などのトリレンジイソシアネート類;2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、などのジフェニルメタンジイソシアネート類;ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI);m-又はp-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート類;4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトビフェニルなどのジイソシアナトビフェニル類;1,5-ナフチレンジイソシアネートなどのナフタレンジイソシアネート類;等が挙げられる。芳香脂肪族ポリイソシアネート類としては、m-キシリレンジイソシアネート、p-キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、などのキシリレンジイソシアネート類;ジエチルベンゼンジイソシアネート;及び、α,α,α,α-テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI);等が挙げられる。また前記のポリイソシアネートのカルボジイミド、ポリオール及びアロファネート等の変性物;などが挙げられる。
メチレンジフェニルポリイこれらの芳香環を分子内に含むポリイソシアネートのうち、接着剤組成物のコード集束性の観点から、芳香族イソシアネートであることが好ましく、さらに好ましくは、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)又はポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI)、特に好ましくは、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートが挙げられる。
また、前記ブロック化剤としては、アルコール、フェノール、活性メチレン、オキシム、ラクタム、アミン等が挙げられ、特に限定されないが、具体的にはε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタムなどのラクタム類;フェノール、クレゾール、エチルフェノール、ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ジノニルフェノール、チオフェノール、クロルフェノール、アミルフェノールなどのフェノール類;メチルエチルケトキシム、アセトキシム、アセトフェノンオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム類;メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、シクロヘキサノールなどのアルコール類;ジメチルマロネート、ジエチルマロネート等のマロン酸ジアルキルエステル類;アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン等の活性メチレン類;ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類;アセトアニリド、酢酸アミド等のアミド類;コハク酸イミド、フタル酸イミド、マレイン酸イミド等のイミド類;重亜硫酸ソーダ等の亜硫酸塩類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;ピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール、3-メチルピラゾール、4-ベンジル-3,5-ジメチルピラゾール、4-ニトロ-3,5-ジメチルピラゾール、4-ブロモ-3,5-ジメチルピラゾール、3-メチル-5-フェニルピラゾール等のピラゾール類;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジフェニルアミン、キシリジン、N,N-ジエチルヒドロキシアミン、N,N’-ジフェニルホルムアミジン、2-ヒドロキシピリジン、3-ヒドロキシピリジン、2-メルカプトピリジン等のアミン類;1,2,4-トリアゾール等のトリアゾール類;などが挙げられる。これらのブロック化剤については、2種以上の混合物等を使用してもよい。
【0071】
なお、市販の熱解離性ブロックドイソシアネート基を有するウレタン樹脂として、第一工業製薬(株)製「エラストロンBN27」(固形分濃度30%、メチレンジフェニルの分子構造を含む熱反応型水性ウレタン樹脂)を用いることができる。
【0072】
また、本発明の接着剤組成物における、前記イソシアネート化合物の含有量は、特に限定はされないが、より確実に優れた接着性を確保する観点から、5~100質量%の範囲であることが好ましく、15~65質量%であることがより好ましい。
なお、前記イソシアネート化合物の含有量は、乾燥物の質量(固形分比)である。
【0073】
なお、本発明の接着剤組成物については、接着剤組成物を、含有成分を全て含んだ1つの処理液(一浴処理液)から構成することができる。
ここで、一浴処理については、接着させる有機繊維コードを、1つの処理液(接着剤組成物)にディップさせることで、有機繊維コードの表面に接着剤組成物を付着させる処理である。
【0074】
また、本発明の接着剤組成物については、エポキシ化合物を含む第1浴処理液と、アルデヒド類、及び、スルホン酸基を有する多環芳香族炭化水素を含む第2浴処理液との、2つの処理液(二浴処理液)から構成することも可能である。
ここで、二浴処理については、接着させる有機繊維コードを、2つの処理液に順番にディップさせることで、有機繊維コードの表面に接着剤組成物を付着させる処理液である。そのため、得られた接着剤組成物が二浴処理液の場合には、一浴目(エポキシ化合物を含む第1浴処理液)と二浴目(アルデヒド類、及び、スルホン酸基を有する多環芳香族炭化水素を含む第2浴処理液)の処理液を合わせたものが、接着剤組成物である。
【0075】
<接着剤組成物の製造方法>
次に、本発明の接着剤組成物の製造方法について説明する。
本発明の接着剤組成物の製造方法は、特に限定はされないが、例えば、前記スルホン酸基を有する多環芳香族炭化水素を含む化合物、前記アルデヒド類、前記ゴムラテックス等の原材料を混合し、熟成する方法、又は、前記スルホン酸基を有する多環芳香族炭化水素を含む化合物と前記アルデヒド類とを混合して熟成した後に、前記ゴムラテックスをさらに加えて熟成する方法、等が挙げられる。
なお、前記多環芳香族炭化水素、前記アルデヒド類及び前記ゴムラテックスの構成や含有量等については、上述した本発明の接着剤組成物の中で説明した内容と同様である。
【0076】
上述した添加順序では、前記アルデヒド類がテレフタルアルデヒドのように水への溶解度が低い芳香族アルデヒドの場合には、前記スルホン酸基を有する多環芳香族炭化水素を含む化合物(B)にアルデヒド類を少量ずつ添加して混合させることが好ましい。水に少量溶解したアルデヒド類は、水溶性の高いスルホン酸基を有する多環芳香族炭化水素を含む化合物と縮合して溶解させることで、より確実に各成分の溶解及び熟成が可能となるためである。
【0077】
なお、前記スルホン酸基を有する多環芳香族炭化水素を含む化合物と、前記アルデヒド類との混合は、これらを水に溶解させることが好ましく、水酸化ナトリウム、アンモニアなどの塩基性物質を添加して、熟成条件は10℃から70℃で、pHが少なくとも6.5以上、好ましくは8.0以上の塩基性の条件下で溶解させて反応させることがより好ましい。
なお、接着剤組成物中にアルカリを添加する場合、アルカリの具体的な量は、原材料に用いるスルホン酸基を有する多環芳香族炭化水素を含む化合物及びアルデヒド類、又は、スルホン酸基を有する多環芳香族炭化水素とアルデヒドとの縮合物の、水溶媒への自己溶解性にもよるが、生成した多環芳香族炭化水素とアルデヒドとの縮合物の析出が安定して発生しない最低限のアルカリ量以上を添加することが好ましい。
【0078】
なお、本発明の接着剤組成物へのアルカリ添加量は、一般的に、接着力が低下していく不具合がある。例えば、従来のRFLからなる接着剤組成物のアルカリを増量していくと接着の低下をもたらすことが知られている(日本接着協会、Vol.8 No.1(1972年))。この理由としては、ゴム物品の接着形成させるための加硫工程において、ゴムから硫黄が、接着剤組成物に移行してゴムラテックス成分と架橋反応するが、接着剤組成物のアルカリが多くなると、加硫反応が促進されるため、長時間加熱下では、接着剤層が過加硫になり接着力が低下するためと考えられている(WO97/13818号等を参照。)。
本発明の接着剤組成物おいても前記ゴムラテックスを含む加硫系を用いた接着であるため同様であり、水溶性が高いレゾルシンを用いないことで、接着剤組成物に含める芳香族化合物を水に溶解するアルカリ添加が過剰となりやすく、加硫にともなう接着力低下のある接着剤組成物になりやすいという課題があった。
【0079】
本発明の接着剤組成物は、前記スルホン酸基を有する多環芳香族炭化水素を含む化合物を含むため、スルホン酸基が芳香環に導入されることにより、水溶性が改善された多環芳香族炭化水素を含む化合物となり、アルカリ添加量を削減できることで、耐熱接着力を改善する配合としての効果が高められ、また一方で、多環芳香族炭化水素・アルデヒド縮合物の生成反応を妨げずに反応性を向上させるという効果が得られる。
【0080】
また、接着剤組成物がイソシアネート化合物を含む場合には、前記多環芳香族炭化水素を含む化合物とアルデヒド類とゴムラテックスとを混合させて熟成した後、前記イソシアネート化合物を加えることが好ましい。
なお、前記イソシアネート化合物の構成や含有量等については、上述した本発明の接着剤組成物の中で説明した内容と同様である。
【0081】
また、本発明の接着剤組成物はレゾルシンを含まないことが好ましい。これによって、作業環境などの環境負荷が少ない接着剤組成物を提供することができる。
【0082】
また、本発明の接着剤組成物の調製後は、従来のRFLからなる接着剤組成物と同等の使用期間で、有機繊維コードの被覆処理に供することが好ましい。
【0083】
<ゴム-有機繊維コード複合体>
本発明のゴム-有機繊維コード複合体は、ゴム部材と、有機繊維コードとを備えた、ゴム-有機繊維コード複合体であって、前記有機繊維コードの少なくとも一部に、上述した本発明の接着剤組成物がコーティングされていることを特徴とする。
【0084】
ここで、本発明のゴム-有機繊維コード複合体の用途は、特に限定はされない。例えば、ベルト、空気ばね、ホース、空気ばね等の部材として用いることができる。
境への負荷が少なく、ゴムと有機繊維コードとの接着性に優れる。
【0085】
なお、本発明のゴム-有機繊維コード複合体では、本発明の接着剤組成物が前記有機繊維コードの少なくとも一部を覆っていればよいが、ゴムと有機繊維コードとの接着性をより向上できる点からは、本発明の接着剤組成物が前記有機繊維コードの全面にコーティングされていることが好ましい。
【0086】
また、前記有機繊維コードの材料については、特に限定はされず、用途によって適宜選択することができる。例えば、ポリエステル、6-ナイロン、6,6-ナイロン、4,6-ナイロン等の脂肪族ポリアミド繊維コード、ポリケトン繊維コード、パラフェニレンテレフタルアミドに代表される芳香族ポリアミド繊維コードに代表される合成樹脂繊維材料に使用することができる。これらのうちポリエステル、6-ナイロン、6,6-ナイロンが好ましく、特にはポリエステルが好ましい。
前記ポリエステル材料は、主鎖中にエステル結合を有する高分子であり、具体的には、主鎖中の繰り返し単位の結合様式の80%以上がエステル結合様式のものである。このポリエステルは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、ペンタエリスリトール等のグリコール類と、テレフタル酸、イソフタル酸、及びそれらのジメチル体等のジカルボン酸類のエステル化反応、あるいはエステル交換反応によって縮合して得られるものである。最も代表的なポリエステルはポリエチレンテレフタレートである。
有機繊維コードは、複数のコードを撚ったコードを用いてもよく、モノフィラメントを用いてもよい。
【0087】
また、前記有機繊維コードに、本発明の有機繊維コード用組成物をコーティングする方法としては、特に限定はされず、接着剤組成物に樹脂材料を浸漬する方法、接着剤組成物をハケで塗布する方法、接着剤組成物をスプレーする方法等があるが、必要に応じて適当な方法を選択することができる。
また、本発明の接着剤組成物を有機繊維コードに被覆させる際、接着剤組成物を種々の溶剤に溶解して粘度を下げると、塗布が容易になるため好ましい。またかかる溶剤は主に水からなると環境的に好ましい。
【0088】
ここで、前記接着剤組成物による接着剤層の厚さは、特に限定されるものではないが、50μm 以下であることが好ましく、0.5μm以上、30μm 以下であることがより好ましい。
また、前記有機繊維コードに含侵した接着剤組成物の濃度は、特に限定されるものではないが、前記有機繊維コードの質量に対して、5.0 質量%以上、25.0 質量%以下であることが好ましく、7.5質量%以上、20.0質量%以下であることがより好ましい(何れも固形分換算値)。
【0089】
なお、接着処理による接着剤組成物の付着量が厚くなると、タイヤ転動下での接着耐久性が低下する傾向がある。この理由は、被着する繊維材料の界面の接着剤組成物は、繊維材料の剛性が高いため歪による応力を負担することにより比較的に変形小さくなるが、界面から離れるに従って歪による変形が大きくなるためである。被着ゴム材料に比べて接着剤組成物は熱硬化性縮合物を多く含むため、硬くもろいことにより繰り返し歪下での接着疲労が大きくなりやすい。
そのため、前記有機繊維にコーティングした接着剤組成物の平均厚さは50μm以下とすることが好ましく、0.5~30μmの範囲にすることがより好ましい。
【0090】
接着剤組成物を有機繊維コード表面にコーティングした後、例えば、100℃~210℃の温度で乾燥させ、その後の熱処理は、有機繊維コード中のポリマーのガラス転移温度以上、好ましくは、該ポリマーの〔融解温度-70℃〕以上、〔融解温度-10℃〕以下の温度で施すのが好ましい。この理由としては、ポリマーのガラス転移温度未満では、ポリマーの分子運動性が悪く、接着剤組成物のうちの、接着を促進する成分と有機繊維中のポリマーとが十分な相互作用を行えないため、十分な接着力が得られないおそれがあるためである。
【0091】
なお、前記有機繊維コードの形態については、コードの他、コードを集めた、ケーブル、フィラメント、コード織物、帆布等も含まれる。
【0092】
また、本発明のゴム-有機繊維コード複合体の、被着ゴムの構成については、特に限定はされず、要求される用途や性能に応じて適宜選択することができる。
例えば、前記被着ゴムのゴム成分として、天然ゴムの他、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)等の共役ジエン系合成ゴム、更には、エチレン-プロピレン共重合体ゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体ゴム(EPDM)、ポリシロキサンゴム等が挙げられる。これらの中でも、天然ゴム及び共役ジエン系合成ゴムが好ましい。また、これらゴム成分は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0093】
さらに、前記被着ゴムの加硫のため、例えば、硫黄、テトラメチルチラリウムジスルフィド、ジペンタメチレンチラリウムテトラサルファイド等のチラリウムポリサルファイド化合物、4,4-ジチオモルフォリン、p-キノンジオキシム、p,p’-ジベンゾキノンジオキシム、環式硫黄イミドなど有機加硫剤を含むことができる。中でも、硫黄を用いることが好ましい。
さらにまた、前記被着ゴムは、通常ゴム業界で用いられるカーボンブラック、シリカ、水酸化アルミニウム等の充填剤、加硫促進剤、老化防止剤、軟化剤等の各種配合剤を、適宜含有することができる。
【0094】
<タイヤ>
本発明のタイヤは、上述した本発明のゴム-有機繊維コード複合体を、用いたことを特徴とする。
本発明のタイヤでは、述した本発明のゴム-有機繊維コード複合体を、例えば、カーカスプライ、ベルト層、ベルト補強層、フリッパー等のベルト周り補強層等として用いることが可能である。
【0095】
なお、本発明の空気入りタイヤは、上述のゴム物品を用いる以外特に制限はなく、常法に従って製造することができる。また、該タイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【実施例】
【0096】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0097】
(1)ゴムラテックス(A)
実施例及び比較例の各サンプルに使用するゴムラテックス(A)は、これを含むビニルピリジン-スチレン-ブタジエン共重合体ラテックス液(a)を、特開平9-78045の比較例1に準拠して、以下の方法で作製した。
窒素置換した5リットル容量のオートクレーブに脱イオン水130質量部、ロジン酸カリウム4.0質量部を仕込み溶解する。これに、ビニルピリジン単量体を15質量部、スチレン15質量部、およびブタジエン70質量部組成の単量体混合物と、t-ドデシルメルカプタンを0.60質量部仕込み、乳化する。その後、50℃に昇温後、過硫酸カリウム0.5質量部を加え、重合を開始する。単量体混合物の反応率が90%に達した後、ハイドロキノン0.1質量部を加え、重合を停止する。次に、減圧下、未反応単量体を除去し、ゴムラテックス(A)の固形分を濃度41%で含んでいるゴムラテックス液(a)を得た。
【0098】
(2)多環芳香族炭化水素(B-1)~(B-9)
実施例及び比較例の各サンプルに使用する多環芳香族炭化水素(B-1)~(B-9)については、多環芳香族炭化水素(B-1)~(B-7)、多環芳香族炭化水素(B-8)~(B-9)成分を含んだ水溶液である(b-8)~(b-9)を用いた。
多環芳香族炭化水素(B-1): 1,7-ジヒドロキシナフタレン、東京化成工業(株)製、試薬、「1,7-Dihydroxynaphthalene」、分子量160.17、純度>98%
多環芳香族炭化水素(B-2): 2,7-ジヒドロキシナフタレン、東京化成工業(株)製、試薬、「2,7-Dihydroxynaphthalene」、分子量160.17、純度>99%
多環芳香族炭化水素(B-3): 2,3-ジヒドロキシナフタレン、東京化成工業(株)製、試薬、「2,3-Dihydroxynaphthalene」、分子量160.17、純度>98%
多環芳香族炭化水素(B-4): 6-ヒドロキシ-1ナフトエ酸、東京化成工業(株)製、試薬、「1,4-Dihydroxy-2-naphthoic Acid」、分子量188.18、純度>98%
多環芳香族炭化水素(B-5): 1-ヒドロキシ-2ナフトエ酸、東京化成工業(株)製、試薬、「1-Hydroxy-2-naphthoic acid」、分子量188.18、純度>98%
多環芳香族炭化水素(B-6): 1,4-ジヒドロキシ-2-ナフトエ酸、東京化成工業(株)製、試薬、「1,4-Dihydroxy-2-naphthoic Acid」、分子量204.18、純度>98%
多環芳香族炭化水素(B-7): 1,4-ジヒドロキシナフタレン-2-スルホン酸アンモニウム塩の40wt%水溶液、川崎化成工業(株)製、「キノパワーQS-W10」、pH=3~4、分子量(1,4-Dihydroxy-2-naphthalenesulfonic acid of ammonium salt)=257.26
多環芳香族炭化水素(b-8): β-ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物ナトリウム塩(B-8)、花王(株)製、「デモールRN-L」、GPCによる重量平均分子量:約2,900、固形分41%〔内、ナトリウム分:約3.9%〕
多環芳香族炭化水素(b-9): β-ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物ナトリウム塩(B-9)、花王(株)製、「マイティ150」、GPCに重量平均分子量:約14,500、固形分42%〔内、ナトリウム分:約4.0%〕
【0099】
(3)アルデヒド類(C-1)~(C-2)
実施例及び比較例の各サンプルに使用するアルデヒド類(C-1)~(C-2)については、アルデヒド類(C-1)を含むアルデヒド類溶液(c-1)およびアルデヒド類(C-2)を用いた。
アルデヒド類溶液(c-1): ホルムアルデヒド、関東化学(株)製、特級試薬、品名「ホルムアルデヒド液、分子量30.03、アルデヒド類(C-1)純度37%(36%~38%)
アルデヒド類(C-2): 2-ヒドロキシ-1-ナフトアルデヒド、東京化成工業(株)製、試薬、「2-Hydroxy-1-naphthaldehyde」、分子量172.18、純度>98%
【0100】
(4)イソシアネート化合物(D)
実施例及び比較例の各サンプルに使用するイソシアネート化合物(D)で熱解離性ブロック化芳香族イソシアネート基を有する水性ウレタン化合物(第一工業製薬(株)製、品名「エラストロンBN77」、熱解離性ブロック化イソシアネートの熱解離温度約120℃)を、固形分31%で含んだイソシアネート化合物水溶液(d)を用いた。
【0101】
(5)アルカリ(E-1)~(E-2)
実施例及び比較例の各サンプルに使用するアルカリ成分(E-1)~(E-2)の配合で、水に溶解させたアルカリ溶液(e-1)~(e-2)を用いた。
アルカリ溶液(e-1): 水酸化ナトリウム水溶液、関東化学(株)製、容量分析用標準液、濃度1mol/L(4.0wt%)、分子量(NaOH)=39.99
アルカリ溶液(e-2): 25%アンモニア水、富士フイルム和光純薬(株)製、一級、濃度35%、分子量(NH3)=17.03
【0102】
<多環芳香族炭化水素Bの水溶性確認する事前テスト>
まず、固体成分である多環芳香族炭化水素(B-1)~(B-6)の溶解性は、多環芳香族炭化水素に対する水酸化ナトリウムのモル比を変化させた、次のi)、ii)の2水準の配合液を作成することにより確認した。
i)多環芳香族炭化水素を「モル比1」程度の水酸化ナトリウム配合溶液に溶解するテスト(配合b-1-1~b-6-1)
表1に示す多環芳香族炭化水素(B-1~B-6)を、表1に示す質量部の比で配合して、60℃近傍の攪拌下で溶解できるか否かを確認した。
具体的には、表1に示された含有量である1質量部を1gに換算し、50mlビーカーを容器に用いて、軟水38gに0.48g水酸化ナトリウムを加え溶解し、次に表1に示す多環芳香族炭化水素(B1~B6)を2g加えた配合(b-1-1~b-6-1)を、60℃で1時間攪拌して、多環芳香族炭化水素(B)が溶解できるか否かを確認した。
ii)多環芳香族炭化水素を「モル比2」程度の水酸化ナトリウム水溶液に溶解するテスト(配合b-1-2~b-3-2、および、b-5-2)
表2に示す多環芳香族炭化水素(B-1、B-2、B-3、B-5)を、表2に示す質量部の比で配合して、60℃近傍の攪拌下して溶解できるか否かを確認した。
具体的には、表2に示された含有量である1質量部を1gに換算し、50mlビーカーを容器に用いて、軟水38gに0.48g水酸化ナトリウムを加え溶解し、次に表2に示す多環芳香族炭化水素(B-1、B-2、B-3、B-5)を2g加えた配合(b-1-1~b-6-1)を、60℃で1時間攪拌して、多環芳香族炭化水素(B)が溶解できるか否かを確認した。
【0103】
【0104】
【0105】
表1及び2の結果から、上表の水への溶解の確認より、多環芳香族炭化水素(B-1)、(B-2)、(B-4)、(B-6)は、アルカリ溶液(E-1)である水酸化ナトリウムに溶解可能であり、これらを接着剤組成物液の調製が可能となる。
なお、多環芳香族炭化水素(B-1)、(B-2)のジヒドロキシナフタレンは、2つのフェノール性水酸基を有する多環芳香族炭化水素であるが、その2つのフェノール性水酸基と殆どモル等量である2.04モルの塩基量で、水に溶解できている。
これらに比べて多環芳香族炭化水素(B-3)、(B-5)は、2つのフェノール性水酸基と等モル量以上としても溶解せず、難溶性な多環芳香族炭化水素であったために水溶液を調整できなかった。
なお、多環芳香族炭化水素(B-7)~(B-9)については、すでに水溶液であり、溶解していることは明らかであるため、溶解試験の実施は省略した。
【0106】
<接着剤組成物配合液の製造向けの多環芳香族炭化水素(B)とアルカリを含む水溶解液(b)の調液>
次に接着剤組成物配合液を製造するために、多環芳香族炭化水素(B)とアルカリを含む水溶解液(b)を、前述のi)、ii)と同じ配合比で必要量を再度調液した。すなわち、多環芳香族炭化水素(B-1)、(B-2)、(B-4)、(B-6)、(B-7)、(B-8)、(B-9)をアルカリ(e)の水溶液に溶解させ、接着剤組成物配合の調液に用いる水溶液配合(b-1-2)、(b-2-2)、(b-4-1)、(b-6-1)、(b-7)、(b-8)、(b-9)を、次の手順iii)、iv)又はv)に従って準備した。
なお、本発明においては、調液する多環芳香族炭化水素(B)とアルカリを含む水溶液(b)の量は、後述する表3での接着剤組成物調液で、水溶液(b)を配合する量より多め調液するが、必要量を調液できれば、以下に記載した質量部と同じ質量比であれば必要とされる調液量に変更して調液することができる。
【0107】
iii)接着剤組成物配合液の製造向けの多環芳香族炭化水素(B)アルカリを含む水溶液(b-4-1)、(b-6-1)の調液
接着剤組成物配合の調液向けの多環芳香族炭化水素(B)とアルカリを含む水溶液(b-4-1)、(b-6-1)の調液は、前述i)の手順に準拠して、表1に示す配合(b-4-1)、(b-6-1)の質量部の比で配合した配合液を用いた。
具体的には、表1に示された含有量の1質量部を10gに換算し、本発明の多環芳香族炭化水素(B)とアルカリを含む水溶液の調液は、500mlビーカーを容器に用いて、軟水380gに、水酸化ナトリウム4.8gを加えて溶解し、表1に示す多環芳香族炭化水素(B-4、B-6)を20g加えた配合(b-4-1、b-6-1)を60℃で1時間攪拌した水溶液404.8gを調液し、室温に冷却した。
iv)接着剤組成物配合の製造向けの多環芳香族炭化水素(B)アルカリを含む水溶液(b-1-2)、(b-2-2)の調液
接着剤組成物配合液の調液向けの多環芳香族炭化水素(B)とアルカリを含む水溶液(b-1-2)、(b-2-2)の調液は、前述ii)の手順に準拠して、表2に示す配合(b-1-2)、(b-2-2)の質量部の比で配合した配合液を用いた。
具体的には、表2に示された含有量の1質量部を10gに換算し、本発明の多環芳香族炭化水素(B)とアルカリを含む水溶液の調液は、500mlビーカーを容器に用いて、軟水380gに、水酸化ナトリウム10.0gを加えて溶解し、表1に示す多環芳香族炭化水素(B-4、B-6)を20g加えた配合(b-4-1、b-6-1)を60℃で1時間攪拌した水溶液410.0gを調液し、室温に冷却した。
v)接着剤組成物配合液の製造向けの多環芳香族炭化水素(B)とアルカリを含む水溶液(b-7)~(b-9)の調液
環芳香族炭化水素(B-7)~(B-9)とアルカリを含む水溶液は、すでに水溶液であるため、そのまま、多環芳香族炭化水素(B)及びアルカリを含む水溶液(b-7)~(b-9)として用いた。
【0108】
<接着剤組成物配合液(比較例1~16、本発明例1~9)の調液>
(比較例1~7、本発明例1~2)
表3の配合(薬液配合量ベース)の質量比となるように、軟水、アルカリ水溶液(e)、多環芳香族炭化水素成分を含む溶液(b)、アルデヒド類(c)、ゴムラテックス(a)を、この順番で投入・混合し十分に攪拌を行なった後、27℃で24時間静置して熟成させて、その後、イソシアネート化合物水溶液(d)を混合して、濃度が18重量%の各サンプルの接着剤組成物液を調製した。
具体的には、本実施例では、表3の配合(薬液配合量ベース)で1質量部が1gとなり、接着剤組成物液の合計質量が1000gとなるように、容器は1000mlビーカーを用い、軟水、アルカリ水溶液(e)、環芳香族炭化水素とアルカリを含む水溶液(b)を加えて攪拌で混合した後、アルデヒド類溶液(c―1)あるいは固形の粉体(C-2)を攪拌しながら投入し、室温で30分間攪拌した後、27℃で3時間静置させた。その後、ゴムラテックス(a)を加えて、均一になるまで攪拌した後、27℃で24時間静置して熟成させ、イソシアネート水溶液(d)を混合することで、固形分濃度が18重量%の各サンプルの接着剤組成物液を調製した。また表3に示すWetベースの液配合については、固形分重量%(配合量Dryベース)を併せて記入した。
また、表3に示す配合については、固形の配合量(固形分ベース)を併せて記入した。
なお、比較例3、比較例5、比較例10、比較例13の配合組成は、環芳香族炭化水素(B)が水溶しないため、接着剤組成物液を接着処理に用いることができなかった。
また、比較例7の多環芳香族炭化水素(B-6)の配合組成は、アルデヒド類(C-1)を投入したところ、水溶液から固形物が析出(ゲレーション)したことから、接着剤組成物液を接着処理に用いることができなかった。
【0109】
(比較例8~16、本発明例3~9)
表3の配合(薬液配合量ベース)の質量部の比となるように、軟水、アルカリ水溶液(e)、多環芳香族炭化水素成分を含む溶液(b)、アルデヒド類(c)、ゴムラテックス(a)を、この順番で投入・混合し十分に攪拌を行なった後、27℃で24時間静置して熟成させて、その後、イソシアネート化合物水溶液(d)を混合し、十分に攪拌を行うことで、固形分濃度が18重量%の接着剤組成物液を調製した。
具体的には、本実施例では、表3の配合(Wetベース)で1質量部が1gとなり、接着剤組成物液の合計質量が1000gとなるように、容器は1000mlビーカーを用い、軟水、アルカリ水溶液(e)、環芳香族炭化水素とアルカリを含む水溶液(b)、アルデヒド溶液(c-1)、ゴムラテックス(a)の順番で投入・混合し、十分に攪拌を行なった後、27℃で24時間静置して熟成させた液に、その後、イソシアネート化合物(d)を混合し、十分に攪拌を行って、固形分濃度が18重量%の接着剤組成物液を調製した。
また表3に示すWetベースの液配合については、固形分重量%(配合量Dryベース)を併せて記入した。
【0110】
<接着性評価>
以下の条件で、有機繊維コードに、各サンプルの接着剤組成物をコーティングし、接着剤組成物の接着性について評価を行った。
(i)比較例1~6、比較例8、実施例1~2の接着剤組成物を処理した供試繊維の製造
樹脂材料として、撚構造1670dtex/2、上撚数40回/10cm、下撚数40回/10cmであり、エポキシ化合物を含む組成物を下塗処理したポリエチレンテレフタレートタイヤコードを用いた。この下塗層処理は、上記の樹脂材料を、特開2000-248254号公報の実施例8で用いた接着剤液(S-40)に浸漬させ、その後、接着剤液(S)の水溶剤を乾燥する処理(140℃、60秒)を行った後、加熱による接着処理(200℃、60秒)を行なった。
その後、各サンプルの接着剤液に浸漬させ、次に、接着剤が付着したタイヤコードを、この接着剤液の漬浸、乾燥および乾燥処理(ディップ)は
図1に示す装置で、乾燥ゾーン1(150℃、60秒)、ホットゾーン2(235℃、60秒)、ノルマライズゾーン3(240℃、60秒)の条件で、乾燥・熱処理することによって、接着剤組成物を被覆処理した有機繊維コードを作製した。
(ii)比較例8~13、比較例15~16、実施例3~9の接着剤組成物を処理した供試繊維の製造
樹脂材料として、撚構造1670dtex/2、上撚数40回/10cm、下撚数40回/10cmのポリエチレンテレフタレートタイヤコードを、
図1に示す装置によって、各サンプルの接着剤液に浸漬させ、その後、接着剤が付着したタイヤコードに、0.8kg/本の張力(コードテンション)をかけながら、乾燥ゾーン1(150℃、60秒)、ホットゾーン2(235℃、60秒)、ノルマライズゾーン3(240℃、60秒)の条件で、乾燥・熱処理することによって、接着剤組成物を被覆処理した有機繊維コードを作製した。
【0111】
そして、接着剤組成物を被覆処理した有機繊維コードを、下記に示す未加硫配合ゴム組成物に埋め込み、155℃×20分で加硫した。得られた加硫物からコードを掘り起こし、300mm/分の速度にて引っ張って加硫物からコードを剥離し、コード1本あたりの剥離抗力を求めて、これを接着力(N/本)とした。また、剥離後のコードについて、ゴムの付着状態を観察し、下記の基準に従いランク付けを行って、ゴム付着率(ゴム付)を測定した。接着力及びゴム付着率の結果を表3に示す。
A+:ゴム付着率:100%、加硫物からコードを剥離できずにコードが切れる
A:ゴム付着率:80%以上、100%未満
B:ゴム付着率:60%以上、80%未満
C:ゴム付着率:40%以上、60%未満
D:ゴム付着率:20%以上、40%未満
E:ゴム付着率:20%未満
【0112】
【0113】
表3の結果から、本発明例の各サンプルについては、接着性についても良好な結果を示すことがわかった。
また、比較例7の多環芳香族炭化水素(B-6)の1,4-ジヒドロキシ-2-ナフトエ酸は、多環芳香族炭化水素(B-7)の1,4-ジヒドロキシナフタレン-2-スルホン酸を用いた場合と比較すると、式(3)であらわされるナフタレン環の置換基がカルボン酸基とスルホン酸基の違い以外は同じ分子構造であるものの、アルデヒド類を投入した後に水溶液中に固形物を析出する。スルホン酸基を有する多環芳香族炭化水素を含むことを特徴とすると、水系の接着剤組成物液として用いることができ、接着処理でより好適に使用できることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明によれば、レゾルシンを含まない場合であっても、優れた接着性を実現できる接着剤組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、環境への負荷が少なく、ゴムと有機繊維コードとの接着性に優れた、ゴム-有機繊維コード複合体及びタイヤを提供することができる。
【符号の説明】
【0115】
1 乾燥ゾーン、 2 ホットゾーン、 3 ノルマライズゾーン、 4 絞りロール