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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】車椅子スロープ兼避難梯子
(51)【国際特許分類】
   B61K 13/04 20060101AFI20231025BHJP
   A61G 3/06 20060101ALI20231025BHJP
   B61D 23/02 20060101ALI20231025BHJP
   E06C 1/00 20060101ALI20231025BHJP
   E06C 5/02 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
B61K13/04
A61G3/06 711
B61D23/02
E06C1/00 A
E06C5/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020097326
(22)【出願日】2020-06-04
(65)【公開番号】P2021187402
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅原 泰輝
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 竜也
(72)【発明者】
【氏名】進藤 陽平
(72)【発明者】
【氏名】堀部 正樹
(72)【発明者】
【氏名】岡田 麻美
(72)【発明者】
【氏名】信太 悠佑
(72)【発明者】
【氏名】松枝 修
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 健
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-032399(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2017/0253164(US,A1)
【文献】特開2019-001458(JP,A)
【文献】実開昭58-089600(JP,U)
【文献】特開2015-83149(JP,A)
【文献】特表2006-513888(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61K 13/04
A61G 3/06
B61D 23/02
E06C 1/00
E06C 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の平行な骨材間に所定の間隔おいて複数のステップ部材が横架されてなる梯子構造の主フレームと、
前記主フレームの一方の側部に固着されスロープを構成する第1プレートを有する第1副フレームと、
前記主フレームの他方の側部に回動可能に連結されスロープを構成する第2プレートを有する第2副フレームと、
前記主フレームの一方の面に前記ステップ部材を覆うようにして着脱可能に接合されてスロープを構成する第3プレートと、
前記第2副フレームを前記主フレームに対して90度の角度をなすように維持するための固定金具と、
を備えていることを特徴とする車椅子スロープ兼避難梯子。
【請求項2】
前記主フレームと前記第1副フレームと前記第2副フレームと前記第3プレートは、長手方向の所定部位にて分割され、一方が他方に対して180度回動可能に連結され、分割され回動可能に連結されている前記主フレームと前記第1副フレームと前記第2副フレームと前記第3プレートを展開して平坦にした際に、分割部位が曲がらないようにするための補強板を備えることを特徴とする請求項1に記載の車椅子スロープ兼避難梯子。
【請求項3】
前記主フレームの上端部には、当該上端部を鉄道車両の車体の一部に係止するための係止手段が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の車椅子スロープ兼避難梯子。
【請求項4】
前記固定金具は、前記主フレームの一部に係合する第1係合部と前記第2副フレームの一部に係合する第2係合部とを有し、着脱可能に構成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の車椅子スロープ兼避難梯子。
【請求項5】
前記第3プレートは縞鋼板で形成され、前記第1プレートおよび前記第2プレートの表面には摩擦シートがそれぞれ貼着されていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の車椅子スロープ兼避難梯子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用非常脱出装置に関し、特に避難梯子としても車椅子スロープとしても使用可能な鉄道車両用の車椅子スロープ兼避難梯子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両には、非常時に乗客が車内から車外に脱出する際に使用する非常脱出装置が搭載されている。従来、このような非常脱出装置の発明として、折り畳み可能に構成した避難梯子に関する発明が提案されている(例えば特許文献1、2参照)。
このうち特許文献1に記載されている発明は、避難梯子の下端と連続し一対のレール上に跨るように展開可能な渡り板部を設け、これらを一体にして折り畳むように構成している。
また、特許文献2に記載されている発明は、折り畳み可能な避難梯子と折り畳み可能な避難スロープを別々に用意して、鉄道車両の床下にそれぞれ折り畳んだ状態で収納するように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-70068号公報
【文献】特開2019-1458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の発明は、非常脱出装置を提供することに向けられており、プレート状の渡り板部を備えているものの、避難梯子と連結されているため、車椅子の乗客の昇降に使用するには適さないという課題がある。
また、特許文献2の発明は、折り畳み可能な避難スロープを備えており車椅子の乗客の昇降に使用することも考えられるが、鉄道車両の床下の一箇所に収納するのは避難梯子または避難スロープであるため、両方を一箇所に収納することができないという課題がある。
【0005】
この発明は上記のような課題に着目してなされたものでその目的とするところは、車椅子スロープとしても避難梯子としても使用できるとともに、折り畳んで鉄道車両の床下や小型の収納箱などの一箇所に収納することができる車椅子スロープ兼避難梯子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明に係る車椅子スロープ兼避難梯子は、
一対の平行な骨材間に所定の間隔おいて複数のステップ部材が横架されてなる梯子構造の主フレームと、
前記主フレームの一方の側部に固着されスロープを構成する第1プレートを有する第1副フレームと、
前記主フレームの他方の側部に回動可能に連結されスロープを構成する第2プレートを有する第2副フレームと、
前記主フレームの一方の面に前記ステップ部材を覆うようにして着脱可能に接合されてスロープを構成する第3プレートと、
前記第2副フレームを前記主フレームに対して90度の角度をなすように維持するための固定金具と、
を備えているようにしたものである。
【0007】
上記のような構成によれば、折り畳まれた状態の車椅子スロープ兼避難梯子を平坦な状態に展開することで車椅子スロープとして使用することができる。一方、主フレームの第3プレートを外すとともに、折り畳まれた状態の車椅子スロープ兼避難梯子を展開して固定金具によって第2副フレームを主フレームに対して90度の角度をなした状態に維持することで手摺りとして機能させて避難梯子として使用することができる。
【0008】
ここで、望ましくは、前記主フレームと前記第1副フレームと前記第2副フレームと前記第3プレートは、長手方向の所定部位にて分割され、一方が他方に対して180度回動可能に連結され、分割され回動可能に連結されている前記主フレームと前記第1副フレームと前記第2副フレームと前記第3プレートを展開して平坦にした際に、分割部位が曲がらないようにするための補強板を備えるようにする。
【0009】
かかる構成によれば、より小さく折り畳んで鉄道車両の床下や小型の収納箱などの一箇所に収納することができる。また、補強板を備えるため、展開して平坦にした際に分割部位が曲がらないようにすることができ、車椅子スロープまたは避難梯子として使用する際の安全性を高めることができる。なお、主フレームの下端に連結される延長用梯子を設けるようにしても良い。これにより、延長用梯子を前記主フレームの下端より外すことで、さらにコンパクトに折り畳んで小型の収納箱や空間に収納することができる。また、延長用梯子を設けることで、車椅子スロープ展開時と避難梯子展開時とで全体の長さを変えることができる。
【0010】
また、望ましくは、前記主フレームの上端部には、当該上端部を鉄道車両の車体の一部に係止するための係止手段が設けられているようにする。
かかる構成によれば、主フレームの上端部に係止手段が設けられているため、避難梯子として使用する際に梯子が車両から外れるのを防止して安全性を高めることができる。
【0011】
また、望ましくは、前記固定金具は、前記主フレームの一部に係合する第1係合部と前記第2副フレームの一部に係合する第2係合部とを有し、着脱可能に構成する。
このような構成によれば、第2副フレームを主フレームに対して90度の角度をなした状態に維持する固定金具が本体とは別個の部品として構成されるため、使用時に移動の邪魔にならないようにすることができる。また、設計の自由度が高くなり、コストアップを回避することができる。
【0012】
また、望ましくは、前記第3プレートは縞鋼板で形成され、前記第1プレートおよび前記第2プレートの表面には摩擦シートがそれぞれ貼着されているようにする。
かかる構成によれば、第3プレート上を移動する介助者や第1プレートおよび第2プレート上を転動する車椅子の車輪のスリップを防止することができ、車椅子スロープとして使用する際の安全性を高めることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の車椅子スロープ兼避難梯子によれば、車椅子スロープとしても避難梯子としても使用できるとともに、折り畳んで鉄道車両の床下や小型の収納箱などの一箇所に収納することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る車椅子スロープ兼避難梯子の実施形態を示すもので、車椅子スロープに展開した状態を示す斜視図である。
図2】実施形態の車椅子スロープ兼避難梯子を避難梯子に展開した状態を示す斜視図である。
図3】実施形態の車椅子スロープ兼避難梯子を折り畳んだ状態を示す斜視図である。
図4図3の折り畳んだ状態を展開した車椅子スロープ兼避難梯子の背面を示す斜視図である。
図5】主フレームに対する延長用梯子の連結構造を示す斜視図である。
図6】(A)~(D)は実施形態の車椅子スロープ兼避難梯子の付属部品を示すもので、(A)は補強板、(B)は固定金具、(C)は端部係止用フック、(D)は(C)に示す固定金具の使用状態を示す断面図である。
図7図6(A)の補強板の使用状態を示す斜視図である。
図8図6(B)の固定金具の使用状態の車椅子スロープ兼避難梯子を示す斜視図である。
図9】主フレームに対する主プレートの取付け構造を示す斜視図である。
図10図6(C)の端部係止用フックの使用状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る車椅子スロープ兼避難梯子の一実施形態を説明する。本発明に係る車椅子スロープ兼避難梯子は、折り畳み可能な構造を有するとともに、車椅子スロープとしても避難梯子としても使用できるように構成されている点に特徴を有している。
図1は本発明の一実施形態の車椅子スロープ兼避難梯子を車椅子スロープとして展開した状態を示す斜視図、図2は避難梯子として展開した状態を示す斜視図、図3は車椅子スロープ兼避難梯子を折り畳んだ状態を示す斜視図を示す。
【0016】
本実施形態における車椅子スロープ兼避難梯子10は、図1に示すように、左右非対称であり、車椅子スロープとして展開した場合、中心よりやや左側に偏った位置に、表面に滑り止め用の突起が形成された縞鋼板からなり介助者が移動するための縦方向に細長い平板状の主プレート11が設けられている。そして、この主プレート11の両側に、車椅子の車輪が転動可能な縦方向に細長い一対の副プレート12A,12Bが配設されている。
【0017】
副プレート12Aと12Bはそれぞれ幅が異なっており、12Aの幅(約14cm)よりも12Bの幅の方が大きな幅(およそ2倍)に設定されている。主プレート11の幅は副プレート12Bの幅とほぼ同じである。具体的には、例えば副プレート12Aの幅は約14cmで、副プレート12Bの幅は約27cm、主プレート11の幅は約26cmである。なお、副プレート12A,12Bの表面には、摩擦係数の大きなゴムシートなどからなる複数枚の滑り止めシート13が適当な間隔をおいて貼着されている。
【0018】
主プレート11および副プレート12A,12Bの両側縁には、各プレートが変形しないように保持する高強度の骨材11a,11bと21a,21b;22a,22bがそれぞれ設けられている。これらの骨材のうち、主プレート11の骨材11aと副プレート12Aの骨材21bは、溶接により結合され、主プレート11の骨材11bと副プレート12Bの骨材22aは、蝶番14によって回動可能に連結されている。上記副プレート12Aと骨材21a,21bによって第1副フレームが構成され、副プレート12Bと骨材22a,22bによって第2副フレームが構成される。
【0019】
また、主プレート11および副プレート12A,12Bは、A-A線に沿った部位で分割されており、背面に設けられている蝶番によって回動可能に連結されている。A-A線は中心から偏った位置に設定されており、A-A線よりも上側の長さはA-A線よりも下側の長さの約2倍とされている。具体的には、A-A線よりも上側の長さはおよそ860mm、A-A線よりも下側の長さはおよそ390mmである。
【0020】
さらに、主プレート11は、骨材11aと11bに対して着脱可能に取り付けられており、骨材11aと11bとの間には、図2に示すように、所定の間隔(約20cm)をおいて、梯子のステップを構成する複数のアングル材15が横架され、アングル材15の両端は骨材11a,11bに溶接等によってそれぞれ固着されている。骨材11a,11bとアングル材15とによって梯子構造の主フレームが構成される。
なお、図2は、主プレート11を外して避難梯子として展開した状態を示しており、副プレート12Bは、図1に示されている状態から手前に90度回動され、列車の乗客が当該梯子を使用して避難する際に手摺りとして機能する。
【0021】
また、本実施形態の車椅子スロープ兼避難梯子10を車椅子スロープとして使用するのは、鉄道車両とプラットフォームとの間に横架して通常の乗降に利用することを想定している一方、避難梯子として使用するのは、鉄道車両と地上との間に懸架して乗客が鉄道車両から避難するのに利用することを想定している。そのため、車椅子スロープとして展開した状態よりも避難梯子として展開した状態の方が全長を長くする必要がある。
そこで、本実施形態においては、図2に示すように、B-B線よりも下方に、縦方向の一対の骨材16a,16bとこれらの間に横架されたステップ16cとからなる延長用梯子16が着脱可能に接続されている。
【0022】
延長用梯子16は、両側の骨材16aと16bの端部が、アングル材15が横架されている骨材11aと11bの端部に係合可能にされ、図5に示されているように、係合部分を貫通するように挿入される連結ピン25によって係合が外れないように構成されている。延長用梯子16の長さは約53cmで、このうち3cmは係合部に使用されるため、延長用梯子16を連結することで避難梯子の全長はおよそ50cm長くなる。
【0023】
なお、避難梯子の全長は、軌道で鉄道車両に避難梯子を立て掛けた際に、避難梯子が地面に対しておよそ60度の角度となるように設計される。また、延長用梯子16の下端には、地面と面接触するように約60度のテーパ面が形成されている。さらに、避難梯子を立て掛けた際に、ステップの一面が水平となるように、ステップを構成するアングル材15,16cが骨材に固着され、使用時にステップ15,16cの上面となる部位に、滑り止め用の摩擦シートが貼付されている。
【0024】
図3は、上記のような構成を有する車椅子スロープ兼避難梯子10を折り畳んだ状態を示す。図3に示されているように、車椅子スロープ兼避難梯子10には、折り畳んだ状態を維持するためのベルト式固定金具17が設けられている。本実施形態の車椅子スロープ兼避難梯子は、2回の折り畳み作業によって、車椅子スロープの展開状態に対して面積的にほぼ元の大きさの1/3の大きさにすることができる。なお、厚みは、最も厚いところで元の4倍程度である。厚みの薄い部位には隙間空間が生じるが、図6(A)~(C)に示す付属部品を収納するスペースとして有効に利用することができる。
【0025】
図6(A)~(C)に示す付属部品は、展開時に使用するもので、このうち、(A)は蝶番を中心にして回動させて展開して使用状態にした際に蝶番を設けたところが曲がらないようにするための補強板18A,18B、(B)は避難梯子に展開した際に手摺りとして機能する部位をステップ部位に対して90度の角度に保持するための固定金具19、(C)は展開した避難梯子を使用する際に梯子の上端を鉄道車両の車体の一部に係止するための端部係止用フック20である。端部係止用フック20は、鋼棒をコの字状に折り曲げることで形成されている。固定金具19は、図6(D)に示すように、主プレートが接合される梯子状のフレームを構成する骨材11a,11bのうち11bに係合する第1係合部19aと、副プレート12Bの骨材22aの縁部に係合する第2係合部19bとを有する。
【0026】
次に、上記実施形態の車椅子スロープ兼避難梯子10を、図3に示す折り畳み状態から車椅子スロープまたは避難梯子に展開する作業手順について説明する。
車椅子スロープに展開するに際しては、先ず、図3に表われている固定金具17を外してから、骨材11a,11bの端部にある蝶番(図3では隠れて見えていない)を中心にして、上側にある部材を上方へ回動させる。回動した状態を裏面から見た図が図4に示されている。この状態で、図5に示されている連結ピン25を引き抜いてから、延長用梯子16の両側の骨材16a,16bの端部を引き抜いて延長用梯子16を取り外す。なお、図3の状態で、連結ピン25を引き抜いて延長用梯子16を骨材16a,16bの端部から引き抜いて取り外してから、固定金具17を外して蝶番を中心にして上側にある部材を上方へ回動させるようにしても良い。
【0027】
次に、図7に示すように、2つに分割されている副プレート12Aの裏面の境界Aの前後に設けられている4個の支持片23Aと骨材21a,21b(図7では21bは見えない)との隙間に、図6(A)の補強板18Aを差し込んで回動を阻止した状態にした後に、全体を裏返しにする。この状態で、表面に現われた2つに分割されている副プレート12Bの裏面の境界前後に設けられている4個の支持片(図示略)と骨材22a,22bとの隙間に、図6(A)の補強板18Bを差し込んで回動を阻止した状態にする。その後、蝶番14(図1参照)を中心にして、上側にある部材を左側へ回動させる。これにより車椅子スロープ兼避難梯子10は、図1に示す車椅子スロープの展開状態になる。
【0028】
車椅子スロープ兼避難梯子10を避難梯子に展開する作業手順は、延長用梯子16の骨材16a,16bを主プレート11の骨材11a,11bの端部から引き抜いて取り外す代わりに、縞鋼板からなる主プレート11を骨材11a,11bから外す作業を行う点と、副プレート12Bを90度回動させた状態で、図6(B)の固定金具19を、図8に示すように、副プレート12Bの骨材22aと主フレームの骨材11bとの境界にセットして90度の角度を保持させた状態にする点と、図6(C)の端部係止用フック20を、図10に示すように、骨材11a,11bの上端部に差し込んでセットする点にある。
【0029】
具体的には、先ず、図3の状態で固定金具17を外してから、骨材11a,11bの端部にある蝶番(図3では隠れて見えていない)を中心にして、上側にある部材を上方へ回動させる。回動した状態を裏面から見た図が図4に示されている。ここで、主プレート11は、図9に示すように、主プレート11の裏面に溶接されたブラケット11dの端部の係止部11cによってステップ15に係止され、中央のブラケット11dに一端が固着された固定用ロープ24の他端に設けられたフック24Aを離れた位置にあるステップ15のプレートエッジに引っ掛けることによって、固定用ロープ24が中間にあるステップ15を抱え込むようにすることで固定されているので、この固定用ロープ24の端部のフック24Aを外してから、主プレート11を少しだけスライドさせて骨材11a,11bから取り外す。
なお、ステップ15の端部に係止部11cが係止可能な溝を設けることにより、主プレート11が車椅子スロープ幅方向(図9において上下方向)に移動することを防ぐことができる。
【0030】
次に、図7に示すように、2つに分割されている副プレート12Aの裏面の境界Bの前後に設けられている4個の支持片23Aと骨材21a,21b(図7では21bは見えない)との隙間に、図6(A)の補強板18Aを差し込んで回動を阻止した状態にした後に、全体を裏返しにする。この状態で、表面に現われた2つに分割されている副プレート12Bの裏面の境界前後に設けられている4個の支持片(図示略)と骨材22a,22bとの隙間に、図6(A)の補強板18Bを差し込んで回動を阻止した状態にする。
【0031】
その後、蝶番14(図1参照)を中心にして、上側にある部材を90度回動させる。続いて、図8に示すように、図6(B)の固定金具19を、副プレート12Bの骨材22aと主フレームの骨材11bとの境界にセットして90度の角度を保持させた状態にする。さらに、図6(C)の端部係止用フック20を、図10に示すように、骨材11a,11bの上端部に差し込んでセットする。これにより車椅子スロープ兼避難梯子10は、図2に示す避難梯子の展開状態になる。
なお、固定金具19には、図6(B)に示すように山切カット部19cが設けられており、この山切カット部19cをステップ15の側部に噛み合わせることにより、固定金具19の落下を防ぐとともに、副プレート12Bが0度方向にも180度方向にも動かないように固定することができる。
【0032】
以上説明したように、上記実施形態の車椅子スロープ兼避難梯子によれば、車椅子スロープとしても避難梯子としても使用できるため、別々の装置として構成する場合に比べてコストを低減することができるともに、折り畳み可能な構造を有するため、鉄道車両の床下や小型の収納箱などの一箇所に収納することができる。
【0033】
また、車椅子スロープとして展開した場合に、車椅子の車輪が載る副プレート12A,12Bの表面に摩擦シート13が貼着されているため車椅子の車輪がスリップして急加速することがなく、安全に移動できるとともに、介助者がいる場合には介助者は中央の縞鋼板からなる主プレート11の上を移動できるため、安全に介助することができる。一方、避難梯子として展開した場合には、副プレート12Bがステップに対して90度折り曲げられて手摺りとして機能するため、不慣れな乗客であっても安全かつ速やかに鉄道車両から地上へ降りて避難することできる。
【0034】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば前記実施形態では、避難梯子として展開して鉄道車両に立てかける際に鋼棒からなる端部係止用フック20を使用しているが、骨材11a,11bの端部(上端)に鉤状の係止片を形成して鉄道車両の車体の一部に係止するように構成しても良い。
また、前記実施形態では、装置の全長に対して約2:1の箇所に蝶番を設けて折り畳み可能に構成しているが、中心すなわち1:1の箇所に蝶番を設けて折り畳むことができるように構成しても良い。
また、前記実施形態では、梯子が地面に対しておよそ60度の角度になるように設計されているが、骨材11a,11bもしくは延長用梯子16端部に回動可能に枢着された補助脚もしくは曲面形状補助脚を備えても良い。これにより梯子下端が道床の砂利上に接地する場合でも安定性を保つことができる。
【0035】
さらに、前記実施形態では、固定金具19が着脱可能な部品として構成されているが、この固定金具19はピン等によって骨材11bまたは22aに回転可能に取り付けられていても良い。
また、前記実施形態では、展開した際に蝶番を設けたところで曲がらないように補強するための補強板18A,18Bを設けているが、骨材の強度が充分に高ければ、補強板18A,18Bを省略した構成も可能である。
【符号の説明】
【0036】
10 車椅子スロープ兼避難梯子
11 主プレート
11a,11b 骨材
12A,12B 副プレート
13 摩擦シート
14 蝶番
15 ステップ(アングル材)
16 延長用梯子
16a,16b 骨材
16c ステップ
17 ベルト式固定金具
18A,18B 補強板
19 固定金具
20 端部係止用フック
21a,21b 骨材
22a,22b 骨材
23A,23B 支持片
24 固定用ロープ
25 連結ピン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10