(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】負荷時タップ切換器
(51)【国際特許分類】
H02M 5/12 20060101AFI20231025BHJP
H01F 29/04 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
H02M5/12 C
H01F29/04 502C
H01F29/04 501D
(21)【出願番号】P 2020101851
(22)【出願日】2020-06-11
【審査請求日】2023-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】前田 博宣
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-117084(JP,A)
【文献】特開平04-064205(JP,A)
【文献】特開昭62-205610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 5/12
H01F 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タップ付変圧器の巻線が有する複数のタップを切り換えるための複数の切換スイッチと、該複数の切換スイッチをオンに駆動して導通させる駆動部とを備える負荷時タップ切換器であって、
各切換スイッチは、一端が前記複数のタップの何れか1つに接続され、且つ双方向に導通する複数の半導体スイッチが並列に接続されており、
一部の切換スイッチ及び該一部を除く他の切換スイッチは、それぞれ他端同士が接続されており、
前記一部の切換スイッチの他端同士又は前記他の切換スイッチの他端同士に対して流れる電流を検出する電流検出部を備え、
前記駆動部は、導通させる切換スイッチに含まれる各半導体スイッチを、前記電流検出部の検出結果に基づいて巡回的に且つ排他的にオンに駆動する
負荷時タップ切換器。
【請求項2】
前記半導体スイッチは、逆並列に接続されたサイリスタ、トライアック、逆直列若しくは逆並列的に接続されたIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor )又は逆直列若しくは逆並列的に接続されたFET(Field Effect Transistor )を含み、
前記駆動部は、導通させる切換スイッチに含まれる各半導体スイッチに対し、前記電流検出部が検出したゼロクロス点に同期してトリガ信号又はゲート信号を順次オン/オフする
請求項1に記載に負荷時タップ切換器。
【請求項3】
前記半導体スイッチは前記サイリスタを含み、
前記駆動部は、導通させる切換スイッチに含まれる各サイリスタに対し、前記電流検出部が検出した最新の2つのゼロクロス点の間で前記トリガ信号をオンしておき、前記電流検出部が電流を検出したときに前記トリガ信号をオフする
請求項2に記載の負荷時タップ切換器。
【請求項4】
前記半導体スイッチは前記トライアックを含み、
前記駆動部は、導通させる切換スイッチに含まれる各トライアックに対し、前記電流検出部が検出した最新のゼロクロス点にて前記トリガ信号をオンし、前記電流検出部が電流を検出したときに前記トリガ信号をオフする
請求項2に記載の負荷時タップ切換器。
【請求項5】
前記半導体スイッチは前記IGBT又は前記FETを含み、
前記駆動部は、導通させる切換スイッチに含まれる各IGBT又は各FETに対し、前記電流検出部が検出した最新のゼロクロス点にて前記ゲート信号をオンし、前記電流検出部が該ゼロクロス点に続くゼロクロス点を検出したときに前記ゲート信号をオフする
請求項2に記載の負荷時タップ切換器。
【請求項6】
前記半導体スイッチは、逆直列若しくは逆並列的に接続されたIGBT又は逆直列若しくは逆並列的に接続されたFETを含み、
前記駆動部は、導通させる切換スイッチに含まれる各半導体スイッチに対し、前記電流検出部が検出した最新のゼロクロス点を起点に所定の時間間隔でゲート信号を順次オン/オフする
請求項1に記載の負荷時タップ切換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変圧器のタップを切換スイッチにより切り換える負荷時タップ切換器に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる間接切換方式による電圧調整装置は、二次巻線が配電線に直列に接続される直列変圧器と、一次巻線が配電線に並列に接続され、二次巻線に複数のタップが設けられた調整変圧器と、該複数のタップを切り換えて直列変圧器の一次巻線に接続する負荷時タップ切換器とを備えている。
【0003】
負荷時タップ切換器は、直列変圧器の一次巻線に接続するタップを切り換えるための切換スイッチと、タップ切換を行う過程でタップ間に流れる矯絡電流を制限する限流抵抗器等の限流素子と、該限流素子のタップ間への接続及び切り離しを行う矯絡用スイッチとを有する。負荷時タップ切換器は、これらのスイッチを所定のシーケンスでオンオフすることにより、調整変圧器から直列変圧器の一次巻線に印加する調整電圧の大きさ及び極性を切り換える。
【0004】
切換スイッチにサイリスタ、双方向サイリスタ等の半導体素子を用いたTVR(Thyristor type Step Voltage Regulator )等の電圧調整装置では、市販されている半導体素子の容量に制約があるため、タップ切換の容量の上限が半導体素子の容量によって自ずと制限されることとなる。
【0005】
このような半導体素子にまつわる制限に対し、特許文献1には、複数のスイッチング素子を並列に接続し、少なくとも2つのスイッチング素子を駆動するパルス信号のオン期間を重ならせた状態で、オン期間を交互に前後させるスイッチング素子駆動装置が開示されている。この装置によれば、パルス信号が重なる期間にて各スイッチング素子のオン状態が重なることによりトータルの導通損失が低減されると共に、スイッチング素子のオン/オフによるスイッチング損失が特定のスイッチング素子に集中することを低減させるとされている。
【0006】
また、特許文献2には、例えばスイッチング電源のチョッパ回路のスイッチング素子を複数並列に接続し、順次1つのスイッチング素子を選択してオン/オフさせる半導体素子の並列駆動回路が開示されている。この回路によれば、スイッチング損失及びオン状態での定常損失を各スイッチング素子に分散させることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2019-165548号公報
【文献】特開2004-289938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の技術によれば、複数のスイッチング素子が同時にオン状態となる期間が存在するため、オン時の定常損失を均等に分散させることが難しいという問題が残る。また、特許文献2に記載の技術は、本来1つのスイッチング素子を1より小さいデューティ比でオン/オフさせるパルス信号を複数のスイッチング素子に均等に分散させるものであり、適用できる用途が限定されていた。具体的に電圧調整装置の切換スイッチのように、略常時導通させる期間が存在するスイッチに対して、特許文献2に記載の技術をそのままに適用することはできなかった。
【0009】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、切換スイッチに複数の半導体スイッチを用いて、スイッチング損失及び定常損失を分散させることが可能な負荷時タップ切換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る負荷時タップ切換器は、タップ付変圧器の巻線が有する複数のタップを切り換えるための複数の切換スイッチと、該複数の切換スイッチをオンに駆動して導通させる駆動部とを備える負荷時タップ切換器であって、各切換スイッチは、一端が前記複数のタップの何れか1つに接続され、且つ双方向に導通する複数の半導体スイッチが並列に接続されており、一部の切換スイッチ及び該一部を除く他の切換スイッチは、それぞれ他端同士が接続されており、前記一部の切換スイッチの他端同士又は前記他の切換スイッチの他端同士に対して流れる電流を検出する電流検出部を備え、前記駆動部は、導通させる切換スイッチに含まれる各半導体スイッチを、前記電流検出部の検出結果に基づいて巡回的に且つ排他的にオンに駆動する。
【0011】
本態様にあっては、タップ付変圧器の巻線にある複数のタップを切り換えるための複数の切換スイッチのそれぞれは、双方向に導通する複数の半導体スイッチを並列に接続して構成されており、一端が複数のタップの何れか1つに接続されている。一部の切換スイッチは自装置の一の出力とすべく他端同士が接続されており、他の切換スイッチは自装置の他の出力とすべく他端同士が接続されている。一部の切換スイッチのうちの1つと他の切換スイッチのうちの1つとが導通した場合、一のタップが一の出力に接続され、該一のタップと同一又は異なるタップが他の出力に接続される。駆動部は、上記一部の切換スイッチ又は他の切換スイッチの他端同士に対して流れる電流、即ち先に導通している半導体スイッチに流れる電流に基づいて、後に導通させる半導体スイッチを巡回的に且つ排他的にオンに駆動する。これにより、切換スイッチを構成する各半導体スイッチが、互いの駆動信号が実質的に重ならないように順次オンに駆動されるため、導通に伴う諸々の損失が各半導体スイッチに分散される。
【0012】
本発明の一態様に係る負荷時タップ切換器は、前記半導体スイッチは、逆並列に接続されたサイリスタ、トライアック、逆直列若しくは逆並列的に接続されたIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor )又は逆直列若しくは逆並列的に接続されたFET(Field Effect Transistor )を含み、前記駆動部は、導通させる切換スイッチに含まれる各半導体スイッチに対し、前記電流検出部が検出したゼロクロス点に同期してトリガ信号又はゲート信号を順次オン/オフする。
【0013】
本態様にあっては、単一方向に導通するサイリスタを逆並列に接続したサイリスタの組合せ、双方向に導通するトライアック、逆直列若しくは逆並列的に接続したIGBTの組み合わせ又は逆直列若しくは逆並列的に接続したFETの組み合わせが各半導体スイッチに含まれている。駆動部は、先に導通している半導体スイッチに流れる電流のゼロクロス点に同期して、後に導通させる半導体スイッチに対するトリガ信号又はゲート信号を順次オン/オフする。これにより、トライアック、サイリスタ、IGBT又はFETで構成された各半導体スイッチが、切換スイッチに流れる交流電流の周期の整数倍の時間間隔で順次オンに駆動される。
【0014】
本発明の一態様に係る負荷時タップ切換器は、前記半導体スイッチは前記サイリスタを含み、前記駆動部は、導通させる切換スイッチに含まれる各サイリスタに対し、前記電流検出部が検出した最新の2つのゼロクロス点の間で前記トリガ信号をオンしておき、前記電流検出部が電流を検出したときに前記トリガ信号をオフする。
【0015】
本態様にあっては、駆動部は、各半導体スイッチを構成するサイリスタに対するトリガ信号を、先に導通しているサイリスタに流れる電流に係る最新の2つのゼロクロス点の間でオンしておき、該2つのゼロクロス点の後に切換スイッチに電流が流れたときにオフする。これにより、各サイリスタに対してトリガ信号を印加しても導通しない半周期の間にトリガ信号を印加し、実際にそれぞれのサイリスタにアノード電流が流れたときにトリガ信号をオフする。
【0016】
本発明の一態様に係る負荷時タップ切換器は、前記半導体スイッチは前記トライアックを含み、前記駆動部は、導通させる切換スイッチに含まれる各トライアックに対し、前記電流検出部が検出した最新のゼロクロス点にて前記トリガ信号をオンし、前記電流検出部が電流を検出したときに前記トリガ信号をオフする。
【0017】
本態様にあっては、駆動部は、各半導体スイッチを構成するトライアックに対するトリガ信号を、先に導通しているトライアックに流れる電流に係る最新のゼロクロス点にてオンし、該ゼロクロス点の後に切換スイッチに電流が流れたときにオフする。これにより、各トライアックの導通期間の開始時点でトリガ信号を印加し、実際に主電極間に主電流が流れたときにトリガ信号をオフする。
【0018】
本発明の一態様に係る負荷時タップ切換器は、前記半導体スイッチは前記IGBT又は前記FETを含み、前記駆動部は、導通させる切換スイッチに含まれる各IGBT又は各FETに対し、前記電流検出部が検出した最新のゼロクロス点にて前記ゲート信号をオンし、前記電流検出部が該ゼロクロス点に続くゼロクロス点を検出したときに前記ゲート信号をオフする。
【0019】
本態様にあっては、駆動部は、各半導体スイッチを構成するIGBT又は各FETに対するゲート信号を、切換スイッチに流れる電流に係る最新のゼロクロス点にてオンし、後続するゼロクロス点にてオフする。これにより、各IGBT又は各FETの導通期間の開始時点でゲート信号を印加し、導通期間の終了時点でゲート信号をオフする。
【0020】
本発明の一態様に係る負荷時タップ切換器は、前記半導体スイッチは、逆直列若しくは逆並列的に接続されたIGBT又は逆直列若しくは逆並列的に接続されたFETを含み、前記駆動部は、導通させる切換スイッチに含まれる各半導体スイッチに対し、前記電流検出部が検出した最新のゼロクロス点を起点に所定の時間間隔でゲート信号を順次オン/オフする。
【0021】
本態様にあっては、逆直列若しくは逆並列的に接続したIGBTの組み合わせ又は逆直列若しくは逆並列的に接続したFETの組み合わせが半導体スイッチに含まれている。駆動部は、先に導通している切換スイッチに流れる電流に係る最新のゼロクロス点を起点に、各半導体スイッチに対するゲート信号を順次オン/オフする。これにより、上記所定時間を適当に選択した場合は、例えば切換スイッチに流れる交流電流の周期の1/自然数の時間内で各半導体スイッチが順次オンに駆動される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、切換スイッチに複数の半導体スイッチを用いて、スイッチング損失及び定常損失を分散させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施形態1に係る負荷時タップ切換器を含む電圧調整装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】実施形態1に係る切換スイッチの構成例を示す回路図である。
【
図3】タップ位置とオンにする切換スイッチとの関係を示す図表である。
【
図4】実施形態1に係るサイリスタ対を順次駆動して導通させるシーケンスを示すタイミングチャートである。
【
図5】変形例1に係るサイリスタ対を順次駆動して導通させるシーケンスを示すタイミングチャートである。
【
図6】実施形態2に係る切換スイッチの構成例を示す回路図である。
【
図7】実施形態2に係るトライアックを順次駆動して導通させるシーケンスを示すタイミングチャートである。
【
図8】実施形態3に係る切換スイッチの構成例を示す回路図である。
【
図9】実施形態3に係るトランジスタ対を順次駆動して導通させるシーケンスを示すタイミングチャートである。
【
図10】変形例2に係る切換スイッチの構成例を示す回路図である。
【
図11】実施形態4に係る切換スイッチの構成例を示す回路図である。
【
図12】実施形態4に係るトランジスタ対を順次駆動して導通させるシーケンスを示すタイミングチャートである。
【
図13】実施形態5に係るトランジスタ対を順次駆動して導通させるシーケンスを示すタイミングチャートである。
【
図14】実施形態6に係る負荷時タップ切換器を含む電圧調整装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明をその実施形態を示す図面に基づいて詳述する。
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る負荷時タップ切換器3aを含む電圧調整装置100aの構成例を示すブロック図である。サイリスタ式の電圧調整装置(TVR=Thyristor type step Voltage Regulator )100aは、紙面左側の電源から供給される単相交流の電圧を調整し、紙面右側の負荷へ、配電線1u,1vを介して単相交流を配電する。
【0025】
電圧調整装置100aは、配電線1u,1vそれぞれに二次巻線112,122が直列に接続される直列変圧器1aと、配電線1u,1vに一次巻線21が並列に接続される調整変圧器2a(タップ付変圧器に相当)とを備える。電圧調整装置100aは、更に、調整変圧器2aの二次巻線22及び直列変圧器1aの一次巻線111,121の間に設けられた負荷時タップ切換器(以下、単にタップ切換器とも言う)3aを備える。タップ切換器3a及び調整変圧器2aが、負荷時タップ切換変圧器200aを構成する。
【0026】
直列変圧器1aは、二次巻線112,122それぞれに一次巻線111,121が対応している。一次巻線111,121は、それぞれ二次巻線112,122に互いに逆位相の電圧が誘起するように並列に接続されている。二次巻線112,122それぞれの上記負荷側の端子に対応する一次巻線111,121の端子をu1,v1とする。また、二次巻線112,122それぞれの上記電源側の端子に対応する一次巻線111,121の端子をu2,v2とする。
【0027】
調整変圧器2aは、一次巻線21が配電線1u,1v間に接続されている。一次巻線21に対応する二次巻線22は、一端及び他端から引き出されたタップt1及びt3と,一端及び他端の間から引き出された中間のタップt2とを有する。二次巻線22は、タップt1~t3の何れか1つがタップ切換器3aを介して直列変圧器1aの一次側の端子u2,v1に接続され、該1つと同一又は異なる他の1つがタップ切換器3aを介して直列変圧器1aの一次側の端子u1,v2に接続される。同一のタップが直列変圧器1aの一次側の各端子に接続されるのは、後述する素通しタップの場合である。
【0028】
調整変圧器2aの一次巻線21に印加される電圧を計測するために、配電線1u,1v間には計測用変圧器PT1の一次巻線が接続されている。後述する制御部31aが計測用変圧器PT1から計測電圧を取得することにより、一次巻線21に印加される電圧を検出する。計測用変圧器PT1に代えて、例えば抵抗分圧等の手段を用いて配電線1u,1v間の電圧を検出してもよい。
【0029】
タップ切換器3aは、調整変圧器2aの二次巻線22のタップt1~t3を切り換えるための6つの切換スイッチThA,ThB,ThC,Th1,Th2,Th3を有する。タップ切換器の構成は
図1に示すものに限定されず、例えば、直列変圧器1aに印加する電圧の極性を切り換える極性切換用タップ選択スイッチを含む構成であってもよい。
【0030】
タップ切換器3aは、更に、上記各切換スイッチの切り換えを制御する制御部31aと、制御部31aからの駆動信号に基づいて各切換スイッチをオンに駆動する駆動部32aとを有する。制御部31aには、計測用変圧器PT1の二次巻線と、後述する計測用変圧器PT及び変流器CT(電流検出部に相当)の二次巻線とが接続されている。制御部31aと計測用変圧器PT1,PT及び変流器CTとの接続、並びに駆動部32aと各切換スイッチとの接続は、図示を省略する。
【0031】
制御部31aは、不図示のCPU(Central Processing Unit )を有し、予めROM(Read Only Memory )に記憶された制御プログラムに従って、電圧の調整を制御する。一時的に発生した情報はRAM(Random Access Memory )に記憶される。制御部31aは、また、経過時間を計測するためのタイマカウンタを有する。
【0032】
二次巻線22のタップt1は、保護用のヒューズ(不図示:以下同様)を介して切換スイッチThA及びTh1の一端に接続され、タップt2は、ヒューズを介して切換スイッチThB及びTh2の一端に接続され、タップt3は、ヒューズを介して切換スイッチThC及びTh3の一端に接続されている。切換スイッチThA,ThB,ThCの他端同士は、接続線3uを介して直列変圧器1aの一次側の端子u1及びv2に接続されている。切換スイッチTh1,Th2,Th3の他端同士は、接続線3vを介して直列変圧器1aの一次側の端子u2及びv1に接続されている。
【0033】
接続線3u及び3v間には、限流抵抗器RS及び矯絡用スイッチThSの直列回路と、電磁接触器MCと、計測用変圧器PTの一次巻線とが接続されている。制御部31aが計測用変圧器PTの二次巻線から計測結果を取得することにより、一次巻線111,121に印加される電圧を検出する。接続線3vと、切換スイッチTh1,Th2,Th3の他端同士との接続部位には、該他端同士に対して流れる電流を計測するための変流器CTの一次巻線が結合している。変流器CTの一次巻線は、接続線3uと、切換スイッチThA,ThB,ThCの他端同士との接続部位に結合させてもよい。
【0034】
矯絡用スイッチThSは、二次巻線22のタップt1~t3を切り換える過程で、限流抵抗器RSを介してタップ間を矯絡させておくために、タップ間への限流抵抗器RSの接続及び切り離しを行うためのものである。電磁接触器MCは、過電流が検出されて全ての切換スイッチがオフされる場合、又はタップ切換器3aの運用が停止される場合に、直列変圧器1aの一次側の端子u1,u2間及び端子v1,v2間を矯絡して、開放状態にしないようにするためのものである。
【0035】
次に、各切換スイッチの構成を、切換スイッチTh1を例として説明する。他の切換スイッチについても同様である。
図2は、実施形態1に係る切換スイッチTh1の構成例を示す回路図である。切換スイッチTh1は、サイリスタ対(半導体スイッチに相当)Th1_1,Th1_2,Th1_3,Th1_4,Th1_5を並列に接続してなる。並列に接続されるサイリスタ対の数は5つに限定されない。各サイリスタ対Th1_m(mは1から5の整数:以下同様)は、アノードからカソードへ一方向に導通するサイリスタTh1a_m及びTh1b_mが逆並列に接続されている。
【0036】
サイリスタTh1a_mのアノード及びサイリスタTh1b_mのカソードは、接続線3vに接続されている。サイリスタTh1a_mのカソード及びサイリスタTh1b_mのアノードは、調整変圧器2aの二次巻線22のタップt1に接続されている。サイリスタTh1a_m及びTh1b_mのゲートは、駆動部32aに接続されている。
【0037】
サイリスタTh1a_m及びTh1b_mは、カソードに対してアノードに正の電圧が印加されている間に駆動部32aからトリガ信号がゲートに印加された場合、アノードに正の電圧が印加されている間だけ導通する。実際は最低動作電流より大きいアノード電流が流れている間だけ当該サイリスタが導通するが、ここでは、最低動作電流が限りなくゼロに近いものとする。各サイリスタ対Th1_mは、駆動部32aによって同時に導通することがないように駆動される。
【0038】
次に、オンにする切換スイッチの組合せについて説明する。
図3は、タップ位置とオンにする切換スイッチとの関係を示す図表である。切換スイッチの組合せは7通りあり、これらの組合せをタップ1からタップ7までのタップ位置で表す。例えば、タップ位置をタップ1にした場合、切換スイッチThC及びTh1がオンする。これにより、二次巻線22のタップt1が接続線3vに接続され、タップt3が接続線3uに接続される。この場合、タップt1及びt3間の巻数が二次巻線22の巻数に等しくなり、タップ切換器3aが出力する電圧の大きさが最大となる。
【0039】
タップ2からタップ3までについては、タップ間の巻数が段階的に少なくなるようなタップの組合せに応じて、2つのタップを接続線3u及び3vに接続する切換スイッチが決まる。例えば、タップ位置をタップ3にした場合、切換スイッチThC及びTh2がオンする。これにより、二次巻線22のタップt2が接続線3vに接続され、タップt3が接続線3uに接続される。この場合、タップt2及びt3間の巻数が0を除いて最小となり、タップ切換器3aが出力する電圧の大きさが0を除いて最小となる。
【0040】
タップ位置をタップ4にした場合、切換スイッチThA及びTh1がオンする。これにより、二次巻線22のタップt1が接続線3u及び3vに接続される。この場合、タップ切換器3aが出力する電圧が0となる。これが、いわゆる素通しタップである。なお、素通しタップにするための切換スイッチは、切換スイッチThA及びTh1に限定されず、切換スイッチThB及びTh2でもよいし、切換スイッチThC及びTh3でもよい。
【0041】
タップ5からタップ7までについては、タップ間の巻数が段階的に多くなるようなタップの組合せに応じて、2つのタップを接続線3u及び3vに接続する切換スイッチが決まる。例えば、タップ位置をタップ7にした場合、切換スイッチThA及びTh3がオンする。これにより、二次巻線22のタップt1が接続線3uに接続され、タップt3が接続線3vに接続される。この場合、タップt1及びt3間の巻数が二次巻線22の巻数に等しくなり、タップ切換器3aが出力する電圧の大きさが最大となる。但し、タップ1の場合と比較して、出力される電圧の位相が反転する。
【0042】
前述の通り、タップ切換によって接続線3u及び3vに接続される2つのタップに係るタップ間の巻数は、タップ位置に応じて決まる、換言すれば、タップ位置に応じて、調整変圧器2aの巻数比が決まる。ここで言う巻数比は、タップ切換によって接続線3u及び3vに接続される2つのタップに係るタップ間の巻数に対する一次巻線21の巻数の比である。そこで、
図3に示すように、タップ1からタップ7までのタップ位置と、NT1からNT7までの巻数比とを対応付けておく。但し、タップ位置がタップ4の場合、上記の定義による巻数比の算出は不能となるから、タップ位置と巻数比との対応付けは行わない。
【0043】
本実施形態1にあっては、
図3に示すタップ位置と、オンにする切換スイッチ及び巻数比とを対応付けたテーブルが、制御部31aのROMに予め記憶されている。タップ位置を上げ下げする毎にこのテーブルを参照して、オンにすべき切換スイッチを示す情報と巻数比とを読み出すことにより、タップ切換の処理が容易に行える。
【0044】
次に、電源側からの交流電圧に加算又は減算される電圧について説明する。
図3を用いて説明したように、タップ位置がタップ1からタップ3までの何れかである場合と、タップ位置がタップ5からタップ7までの何れかである場合とでは、タップ切換器3aが出力する電圧の位相が互いに反転する。ここでは、タップ位置がタップ4からタップ7までの間にある場合について説明する。
【0045】
タップ位置がタップ4からタップ7までの間にある場合、接続線3vに対する接続線3uの電圧は、配電線1vに対する配電線1uの電圧と同相になる。即ち、直列変圧器1aの一次巻線111の端子u2に対する端子u1の電圧は、配電線1vに対する配電線1uの電圧と同相になる。また、一次巻線121の端子v2に対する端子v1の電圧は、配電線1vに対する配電線1uの電圧と逆相になる。従って、接続線3u及び3v間の電圧が直列変圧器1aの一次巻線111,121に印加されることにより、二次巻線112,122から配電線1u,1vに配電される電圧が昇圧されて負荷側に配電される。
【0046】
以上のことから、タップ位置をタップ1からタップ7まで切り換えることにより、電源側からの単相交流を降圧した電圧から昇圧した電圧まで段階的に調整して負荷側に配電することができる。制御部31aは、計測用変圧器PT1により、配電線1u,1v間の電圧を検出し、検出した電圧が不感帯を逸脱した場合に、タップ位置を上げ下げすることによって、配電線1u,1v間電圧が基準電圧に近づくように調整する。
【0047】
次に、駆動部32aによる各切換スイッチの駆動について、切換スイッチTh1を例として説明する。他の切換スイッチTh2,Th3,ThA,ThB,ThCについても同様である。
図4は、実施形態1に係るサイリスタ対Th1_mを順次駆動して導通させるシーケンスを示すタイミングチャートである。
図4に示す12種類の信号は、何れも同一の時間軸を横軸にしてあり、最上段から順に切換スイッチの電流、ゼロクロス信号、サイリスタTh1a_1のトリガ信号、サイリスタTh1b_1のトリガ信号、・・・サイリスタTh1a_5のトリガ信号、サイリスタTh1b_5のトリガ信号を示す。切換スイッチの電流の縦軸は電流の大きさを表し、他の信号の縦軸は信号のオン/オフ状態を表す。切換スイッチの電流の向きは、接続線3vから二次巻線22に向かう方向を正とする。
【0048】
切換スイッチの電流は、時刻t1a,t2a,t3a,t4a,t5a,t6aで負からゼロに達し、時刻t1b,t2b,t3b,t4b,t5b,t6bで正からゼロに達する。即ち、これらの各時刻が、切換スイッチに流れる電流のゼロクロス点(以下、単にゼロクロス点と言う)に相当する。
【0049】
ゼロクロス信号は、ここでは、切換スイッチの電流が負からゼロにゼロクロスするゼロクロス点で立ち上がり、正からゼロにゼロクロスするゼロクロス点で立ち下がる信号であるが、これに限定されるものではない。ゼロクロス信号は、変流器CTの二次巻線が接続された制御部31aに含まれるゼロクロス検出回路で生成されて駆動部32aに与えられる。ゼロクロス検出回路は、例えばコンパレータを用いて構成されている。前述のCPU又は不図示のFPGA(Field Programmable Gate Array )でゼロクロス点を検出することも可能である。これらは何れも周知の技術であるため、ここでの説明を省略する。
【0050】
以下、サイリスタTh1a_m及びTh1b_m(前述の通りmは1から5の整数)それぞれを、切換スイッチに流れる電流の半周期ずつ順次導通させる方法について説明する。この方法により、各サイリスタ対Th1_mが、双方向に導通する1つの半導体スイッチであるかのように1周期毎に順次導通し、切換スイッチTh1を見かけ上1つの双方向スイッチとして、略連続的に導通させることができる。
【0051】
切換スイッチTh1を導通させる場合、駆動部32aは、各サイリスタ対Th1_mをゼロクロス信号に基づいて巡回的にオンに駆動する。具体的に駆動部32aは、サイリスタTh1a_m及びTh1b_mそれぞれを導通させる正及び負の半周期以前の最新の(即ち直前の)2つのゼロクロス点の間でトリガ信号をオンする。なお、サイリスタTh1a_m及びTh1b_mそれぞれを導通させる半周期の開始時点は、カソード電流が流れ始める直前の時点であり、これらの開始時点は、上記最新の2つのゼロクロス点のうち、最新の(直前の)ゼロクロス点に相当する。
【0052】
例えば、サイリスタTh1a_1は、これを導通させる時刻t1aからt1bまでの半周期以前に、時刻t1aに相当するゼロクロス点及びその1つ前のゼロクロス点(不図示)の間でトリガ信号がオンされる。このトリガ信号は、上記1つ前のゼロクロス点に同期して直ちにオンしてもよいし、上記1つ前のゼロクロス点から一定の時間後(但し時刻t1a以前の時刻)にオンしてもよいし、時刻t1aに相当するゼロクロス点にてオンしてもよい。同様に、サイリスタTh1a_1は、時刻t6aからt6bまでの半周期以前に、時刻t5b及びt6aに相当するゼロクロス点の間でトリガ信号がオンされる(以下、5周期毎に繰り返し)。
【0053】
サイリスタTh1a_1に対して時刻t1a以前にオンされたトリガ信号は、時刻t1a及びt1bに相当するゼロクロス点の間でオフされる。このトリガ信号は、時刻t1aから一定の時間後(但し時刻t1b以前の時刻)にオフしてもよいが、実用上は、時刻t1aより後に変流器CTによって切換スイッチの電流(この場合は、サイリスタTh1a_1のアノード電流)が検出されたときに、オフすることが好ましい。同様に、サイリスタTh1a_1に対して時刻t5b及びt6aに相当するゼロクロス点の間でオンされたトリガ信号は、時刻t6a及びt6bに相当するゼロクロス点の間でオフされる。
【0054】
なお、変流器CTが検出する電流が比較的小さい場合、例えばタップ位置が素通しタップの場合、配電線1u,1vの負荷側に流れる電流が比較的小さい場合、又はタップ切換中で矯絡用スイッチThSがオンしている場合は、ゼロクロス点が検出され難いことがある。ゼロクロス点が検出されないほど切換スイッチに流れる電流が小さい場合は、切換スイッチでの損失が比較的小さいため、各サイリスタの駆動は厳密に行わなくてもよい。
【0055】
例えば、タイマカウンタでゼロクロス点の検出間隔を監視し、ゼロクロス点が検出されない場合に、ゼロクロス点が検出されるべき時間間隔で
図4に示すシーケンスの通り、切換スイッチに含まれるサイリスタを順次オンに駆動するようにしてもよい。また、ゼロクロス点が検出されない場合であっても、計測用変圧器PTにより、タップ切換された二次巻線22の電圧のゼロクロス点が検出される場合は、該ゼロクロス点に同期して切換スイッチに含まれるサイリスタを順次オンに駆動するようにしてもよい。
【0056】
サイリスタTh1b_1については、サイリスタTh1a_1と比較して半周期だけ遅れて駆動される。具体的にサイリスタTh1b_1は、時刻t1bからt2aまでの半周期以前に、時刻t1a及びt1bに相当するゼロクロス点の間でトリガ信号がオンされ、時刻t1b及びt2aに相当するゼロクロス点の間でオフされる。このように、サイリスタTh1a_1及びTh1b_1に対するゲート信号により、サイリスタ対Th1_1が、極く短時間を除いて時刻t1aから時刻t2aまで導通する。
【0057】
サイリスタ対Th1_2,・・・サイリスタ対Th1_5については、サイリスタ対Th1_1と比較して、それぞれ1周期,・・・4周期だけ遅れて駆動される。具体的にサイリスタTh1a_2は、時刻t1b及びt2aに相当するゼロクロス点の間でトリガ信号がオンされ、時刻t2a及びt2bに相当するゼロクロス点の間でオフされる。サイリスタTh1b_2は、時刻t2a及びt2bに相当するゼロクロス点の間でトリガ信号がオンされ、時刻t2b及びt3aに相当するゼロクロス点の間でオフされる・・・。サイリスタTh1a_5は、時刻t4b及びt5aに相当するゼロクロス点の間でトリガ信号がオンされ、時刻t5a及びt5bに相当するゼロクロス点の間でオフされる。サイリスタTh1b_5は、時刻t5a及びt5bに相当するゼロクロス点の間でトリガ信号がオンされ、時刻t5b及びt6aに相当するゼロクロス点の間でオフされる。
【0058】
まとめると、サイリスタTh1a_1及びTh1b_1,・・・サイリスタTh1a_5及びTh1b_5に対するゲート信号により、サイリスタ対Th1_1,・・・サイリスタ対Th1_5それぞれが、極く短時間を除いて時刻t1aから時刻t2aまで,・・・時刻t5aから時刻t6aまで導通する(
図4の最上段参照)。サイリスタTh1a_1及びTh1b_1,・・・サイリスタTh1a_5及びTh1b_5に対するゲート信号は、相互に多少の重なりがあっても、2つ以上のサイリスタ対が同時に導通することがない。即ち、各サイリスタ対は、実質上排他的にオンに駆動される。
【0059】
なお、各サイリスタ対Th1_m(mは1から5の整数)に含まれるサイリスタTh1a_m及びTh1b_mに対するトリガ信号は、オン期間のオアをとって同じ期間だけオンしてもよい。例えば、サイリスタ対Th1_2に含まれるサイリスタTh1a_2及びTh1b_2に対し、
図4に示す時刻t1b及びt2aに相当するゼロクロス点の間でトリガ信号をオンし、時刻t2b及びt3aに相当するゼロクロス点の間でオフするようにしてもよい。但し、トリガ信号のオフが遅れて、時刻t3a以降もサイリスタ対Th1_2が導通し続けることがないように考慮する。
【0060】
以上のように本実施形態1によれば、調整変圧器2aの二次巻線22にあるタップt1,t2,t3を切り換えるための6つの切換スイッチThX(X=1,2,3,A,B,C)のそれぞれは、一端がタップt1,t2,t3の何れか1つに接続されている。例えば切換スイッチTh1は、双方向に導通する5つのサイリスタ対Th1_1,・・・サイリスタ対Th1_5を並列に接続して構成されている。一部の切換スイッチTh1,Th2,Th3は、接続線3vへのタップ切換器3aの出力とすべく他端同士が接続されている。他の切換スイッチThA,ThB,ThCは、接続線3uへのタップ切換器3aの出力とすべく他端同士が接続されている。一部の切換スイッチTh1,Th2,Th3のうちの1つと他の切換スイッチThA,ThB,ThCのうちの1つとが導通した場合、一のタップが接続線3vに接続され、素通しタップであるか否かに応じて該一のタップと同一又は異なるタップが接続線3uに接続される。駆動部32aは、上記一部の切換スイッチTh1,Th2,Th3の他端同士に対して流れる電流、即ち先に導通しているサイリスタ対に流れる電流に基づいて、後に導通させるサイリスタ対を巡回的に且つ実質上排他的にオンに駆動する。従って、切換スイッチを構成する各サイリスタ対が、互いのゲート信号が実質的に重ならないように順次オンに駆動されるため、導通に伴う諸々の損失を各サイリスタ対に分散させることが可能となる。
【0061】
また、実施形態1によれば、各サイリスタ対Th1_mは、単一方向に導通するサイリスタTh1a_m及びTh1b_mを逆並列に接続してなる。駆動部32aは、先に導通しているサイリスタ対に流れる電流のゼロクロス点に同期して、後に導通させるサイリスタ対に対するトリガ信号を巡回的にオン/オフする。従って、逆並列に接続されたサイリスタで構成された各サイリスタ対を、切換スイッチに流れる交流電流の周期で順次オンに駆動することができる。
【0062】
更に、実施形態1によれば、駆動部32aは、各サイリスタ対Th1_mを構成するサイリスタTh1a_m及びTh1b_mに対するトリガ信号を、先に導通しているサイリスタに流れる電流に係る最新の2つのゼロクロス点の間でオンしておき、該2つのゼロクロス点の後に切換スイッチに電流が流れたときにオフする。従って、各サイリスタに対してトリガ信号を印加しても導通しない半周期の間にトリガ信号を印加し、実際にそれぞれのサイリスタにアノード電流が流れたときにトリガ信号をオフすることができる。
【0063】
(変形例1)
実施形態1が、各サイリスタ対Th1_mについて、切換スイッチに流れる交流電流の周期で順次オンに駆動する形態であるのに対し、変形例1は、切換スイッチに流れる電流の周期の整数倍の周期で順次オンに駆動する形態である。変形例1に係る電圧調整装置100a及び切換スイッチTh1の構成は、実施形態1の
図1及び
図2に示すものと同様であるため、これらの図示を省略する。
【0064】
図5は、変形例1に係るサイリスタ対Th1_mを順次駆動して導通させるシーケンスを示すタイミングチャートである。
図5に示す8種類の信号は、何れも同一の時間軸を横軸にしてあり、最上段から順に切換スイッチの電流、ゼロクロス信号、サイリスタTh1a_1のトリガ信号、サイリスタTh1b_1のトリガ信号、・・・サイリスタTh1a_3のトリガ信号、サイリスタTh1b_3のトリガ信号を示す。切換スイッチの電流の縦軸は電流の大きさを表し、他の信号の縦軸は信号のオン/オフ状態を表す。
【0065】
切換スイッチの電流は、時刻t1a1,t1a2,t2a1,t2a2,t3a1,t3a2負からゼロに達し、時刻t1b1,t1b2,t2b1,t2b2,t3b1,t3b2で正からゼロに達する。即ち、これらの各時刻がゼロクロス点に相当する。
【0066】
以下、サイリスタTh1a_m及びTh1b_m(
図5ではmは1から3の整数)それぞれを、切換スイッチに流れる電流の1周期ずつ順次導通させる方法について説明する。この方法により、各サイリスタ対Th1_mが、双方向に導通する1つの半導体スイッチであるかのように2周期毎に順次導通し、切換スイッチTh1を見かけ上1つの双方向スイッチとして、略連続的に導通させることができる。
【0067】
切換スイッチTh1を導通させる場合、駆動部32aは、各サイリスタ対Th1_mをゼロクロス信号に基づいて巡回的にオンに駆動する。具体的に駆動部32aは、サイリスタTh1a_m及びTh1b_mそれぞれを最初に導通させる正及び負の半周期以前の最新の2つのゼロクロス点の間でトリガ信号をオンする。
【0068】
例えば、サイリスタTh1a_1は、これを最初に導通させる時刻t1a1からt1b1までの半周期以前に、時刻t1a1に相当するゼロクロス点及びその1つ前のゼロクロス点(不図示)の間でトリガ信号がオンされる(以下、10周期毎に繰り返し)。
【0069】
サイリスタTh1a_1に対して時刻t1a1以前にオンされたトリガ信号は、時刻t1a2及びt1b2に相当するゼロクロス点の間でオフされる。このトリガ信号は、時刻t1a2から一定の時間後(但し時刻t1b2以前の時刻)にオフしてもよいが、実用上は、時刻t1a2より後に変流器CTによって切換スイッチの電流(この場合は、サイリスタTh1a_1のアノード電流)が検出されたときに、オフすることが好ましい。
【0070】
サイリスタTh1b_1については、サイリスタTh1a_1と比較して半周期だけ遅れて駆動される。具体的にサイリスタTh1b_1は、時刻t1b1からt2a2までの半周期以前に、時刻t1a1及びt1b1に相当するゼロクロス点の間でトリガ信号がオンされ、時刻t1b2及びt2a1に相当するゼロクロス点の間でオフされる。このように、サイリスタTh1a_1及びTh1b_1に対するゲート信号により、サイリスタ対Th1_1が、極く短時間を除いて時刻t1a1から時刻t2a1まで導通する。
【0071】
サイリスタ対Th1_2,Th1_3については、サイリスタ対Th1_1と比較して、それぞれ2周期,4周期だけ遅れて駆動される。具体的にサイリスタTh1a_2は、時刻t1b2及びt2a1に相当するゼロクロス点の間でトリガ信号がオンされ、時刻t2a2及びt2b2に相当するゼロクロス点の間でオフされる。サイリスタTh1b_2は、時刻t2a1及びt2b1に相当するゼロクロス点の間でトリガ信号がオンされ、時刻t2b2及びt3a1に相当するゼロクロス点の間でオフされる。サイリスタTh1a_3は、時刻t2b2及びt3a1に相当するゼロクロス点の間でトリガ信号がオンされ、時刻t3a2及びt3b2に相当するゼロクロス点の間でオフされる。サイリスタTh1b_3は、時刻t3a1及びt3b1に相当するゼロクロス点の間でトリガ信号がオンされ、時刻t3b2及び後続するゼロクロス点の間でオフされる。
【0072】
まとめると、サイリスタTh1a_1及びTh1b_1,・・・サイリスタTh3a_1及びTh3b_1に対するゲート信号により、サイリスタ対Th1_1,・・・サイリスタ対Th1_3それぞれが、極く短時間を除いて時刻t1a1から時刻t2a1まで,・・・時刻t3a1から時刻t3b2に後続するゼロクロス点まで導通する(
図5の最上段参照)。サイリスタTh1a_1及びTh1b_1,・・・サイリスタTh3a_1及びTh3b_1に対するゲート信号は、相互に重なりがあっても、2つ以上のサイリスタ対が同時に導通することがない。即ち、各サイリスタ対は、実質上排他的にオンに駆動される。
【0073】
なお、変形例1にあっては、各サイリスタ対Th1_mを、双方向に導通する1つの半導体スイッチであるかのように2周期毎に順次導通させたが、3周期毎,4周期毎,・・・に順次導通させるようにしてもよい。また、実施形態1の場合と同様に、各サイリスタ対Th1_m(mは1から5の整数)に含まれるサイリスタTh1a_m及びTh1b_mに対するトリガ信号は、オン期間のオアをとって同じ期間だけオンしてもよい。
【0074】
以上のように本変形例1によれば、駆動部32aは、先に導通しているサイリスタ対に流れる電流のゼロクロス点に同期して、後に導通させるサイリスタ対に対するトリガ信号を順次オン/オフする。従って、逆並列に接続されたサイリスタで構成された各サイリスタ対を、切換スイッチに流れる交流電流の周期の整数倍の周期で順次オンに駆動することができる。
【0075】
(実施形態2)
実施形態1が、半導体スイッチに2つのサイリスタを用いる形態であるのに対し、実施形態2は、半導体スイッチにトライアックを用いる形態である。実施形態2に係る電圧調整装置100aの構成は、実施形態1に係る電圧調整装置100aと比較して切換スイッチThX(X=1,2,3,A,B,C)を切換スイッチThXtに置き換えただけであるため、電圧調整装置100aの図示を省略する。
図6は、実施形態2に係る切換スイッチTh1tの構成例を示す回路図である。他の切換スイッチについても同様である。
【0076】
切換スイッチTh1tは、トライアック(半導体スイッチに相当)Th1t_1,Th1t_2,Th1t_3,Th1t_4,Th1t_5を並列に接続してなる。並列に接続されるトライアックの数は5つに限定されない。トライアックTh1t_m(mは1から5の整数)の一方の主電極は接続線3vに接続され、他方の主電極は調整変圧器2aの二次巻線22のタップt1に接続されている。トライアックTh1t_mのゲートは、駆動部32aに接続されている。
【0077】
トライアックTh1t_mは、駆動部32aからトリガ信号がゲートに印加された場合に導通する。実際は最低動作電流より大きい主電流が流れている間だけ当該トライアックが導通するが、ここでは、最低動作電流が限りなくゼロに近いものとする。各トライアックTh1t_mは、駆動部32aによって同時に導通することがないように駆動される。
【0078】
次に、駆動部32aによる各切換スイッチの駆動について、切換スイッチTh1tを例として説明する。
図7は、実施形態2に係るトライアックTh1t_mを順次駆動して導通させるシーケンスを示すタイミングチャートである。
図7に示す7種類の信号は、何れも同一の時間軸を横軸にしてあり、最上段から順に切換スイッチの電流、ゼロクロス信号、トライアックTh1t_1のトリガ信号、・・・トライアックTh1t_5のトリガ信号を示す。切換スイッチの電流の縦軸は電流の大きさを表し、他の信号の縦軸は信号のオン/オフ状態を表す。
【0079】
切換スイッチの電流は、時刻t1a,t2a,t3a,t4a,t5a,t6aで負からゼロに達し、時刻t1b,t2b,t3b,t4b,t5b,t6bで正からゼロに達する。即ち、これらの各時刻が、切換スイッチに流れる電流のゼロクロス点に相当する。
【0080】
以下、トライアックTh1t_m(mは1から5の整数)それぞれを、切換スイッチに流れる電流の1周期ずつ順次導通させる方法について説明する。この方法により、各トライアックTh1t_mが、双方向に導通する1つの半導体スイッチとして1周期毎に順次導通し、切換スイッチTh1tを見かけ上1つの双方向スイッチとして、略連続的に導通させることができる。
【0081】
切換スイッチTh1tを導通させる場合、駆動部32aは、各トライアックTh1t_mをゼロクロス信号に基づいて巡回的にオンに駆動する。具体的に駆動部32aは、トライアックTh1t_mに対し、最新のゼロクロス点にてトリガ信号をオンする。例えば、トライアックTh1t_1は、時刻t1aに相当するゼロクロス点でトリガ信号がオンされ、更に時刻t1bに相当するゼロクロス点でトリガ信号がオンされる(以下、5周期毎に繰り返し)。
【0082】
トライアックTh1t_1に対して時刻t1aにてオンされたトリガ信号は、時刻t1a及びt1bに相当するゼロクロス点の間でオフされる。このトリガ信号は、時刻t1aから一定の時間後(但し時刻t1b以前の時刻)にオフしてもよいが、実用上は、時刻t1aより後に変流器CTによって切換スイッチの電流(この場合は、トライアックTh1t_1の主電流)が検出されたときに、オフすることが好ましい。同様に、時刻t1bにてオンされたトリガ信号は、時刻t1b及びt2aに相当するゼロクロス点の間でオフされる。このように、トライアックTh1t_1に対するゲート信号により、トライアックTh1t_1が、極く短時間を除いて時刻t1aから時刻t2aまで導通する。
【0083】
トライアックTh1t_2,・・・トライアックTh1t_5については、トライアックTh1t_1と比較して、それぞれ1周期,・・・4周期だけ遅れて駆動される。具体的にトライアックTh1t_2は、時刻t2a及びt2bに相当するゼロクロス点にてトリガ信号がオンされ、後続するゼロクロス点より前にオフされる。トライアックTh1t_3は、時刻t3a及びt3bに相当するゼロクロス点にてトリガ信号がオンされ、後続するゼロクロス点より前にオフされる。トライアックTh1t_4は、時刻t4a及びt4bに相当するゼロクロス点にてトリガ信号がオンされ、後続するゼロクロス点より前にオフされる。トライアックTh1t_5は、時刻t5a及びt5bに相当するゼロクロス点にてトリガ信号がオンされ、後続するゼロクロス点より前にオフされる。
【0084】
まとめると、トライアックTh1t_1,・・・トライアックTh1t_5に対するゲート信号により、トライアックTh1t_1,・・・トライアックTh1t_5それぞれが、極く短時間を除いて時刻t1aから時刻t2aまで,・・・時刻t5aから時刻t6aまで導通する(
図7の最上段参照)。トライアックTh1t_1,・・・トライアックTh1t_5に対するゲート信号は、相互に重なりがないように印加される。即ち、各トライアックは、排他的にオンに駆動される。
【0085】
なお、各トライアックTh1t_m(mは1から5の整数)に対するトリガ信号は、2つのオン期間を連結させてもよい。例えば、トライアックTh1t_1に対し、
図7に示す時刻t1aにてトリガ信号をオンし、時刻t1b及びt2aに相当するゼロクロス点の間でオフするようにしてもよい。但し、トリガ信号のオフが遅れて、時刻t2a以降もトライアックTh1t_1が導通し続けることがないように考慮する。
【0086】
以上のように本実施形態2によれば、駆動部32aは、各トライアックTh1t_mに対するトリガ信号を、先に導通しているトライアックに流れる電流に係る最新のゼロクロス点にてオンし、該ゼロクロス点の後に切換スイッチに電流が流れたときにオフする。従って、各トライアックの導通期間の開始時点でトリガ信号を印加し、実際に主電極間に主電流が流れたときにトリガ信号をオフすることができる。
【0087】
なお、実施形態2にあっては、各トライアックTh1t_mを、双方向に導通する1つの半導体スイッチとして1周期毎に順次導通させたが、2周期毎,3周期毎,・・・に順次導通させるようにしてもよい。
【0088】
(実施形態3)
実施形態2が、半導体スイッチにトライアックを用いる形態であるのに対し、実施形態3は、半導体スイッチに2つのIGBTを用いる形態である。実施形態3に係る電圧調整装置100aの構成は、実施形態1に係る電圧調整装置100aと比較して切換スイッチThX(X=1,2,3,A,B,C)を切換スイッチIgXsに置き換えただけであるため、電圧調整装置100aの図示を省略する。
図8は、実施形態3に係る切換スイッチIg1sの構成例を示す回路図である。他の切換スイッチについても同様である。
【0089】
切換スイッチIg1sは、IGBTの対を含むトランジスタ対(半導体スイッチに相当)Ig1s_1,Ig1s_2,Ig1s_3,Ig1s_4,Ig1s_5を並列に接続してなる。並列に接続されるトランジスタ対の数は5つに限定されない。各トランジスタ対Ig1s_m(mは1から5の整数)は、コレクタからエミッタへ一方向に導通するIGBTであるトランジスタIg1sa_m及びIg1sb_mが、コレクタ突き合わせによって逆直列に接続されている。トランジスタIg1sa_m及びIg1sb_mは、エミッタ突き合わせにしてもよい。トランジスタIg1sa_m及びIg1sb_mそれぞれのコレクタ・エミッタ間には、ダイオードが逆並列に接続されている。
【0090】
トランジスタIg1sb_mのエミッタは、接続線3vに接続されている。トランジスタIg1sa_mのエミッタは、調整変圧器2aの二次巻線22のタップt1に接続されている。トランジスタIg1sa_m及びIg1sb_mのゲートは、駆動部32aに接続されている。
【0091】
トランジスタIg1sa_m及びIg1sb_mは、エミッタに対してコレクタに正の電圧が印加されている間に駆動部32aからゲート信号がゲートに印加された場合、コレクタに正の電圧が印加されている間だけ導通する。各トランジスタ対Ig1s_mは、駆動部32aによって同時に導通することがないように駆動される。
【0092】
次に、駆動部32aによる各切換スイッチの駆動について、切換スイッチIg1sを例として説明する。
図9は、実施形態3に係るトランジスタ対を順次駆動して導通させるシーケンスを示すタイミングチャートである。
図9に示す12種類の信号は、何れも同一の時間軸を横軸にしてあり、最上段から順に切換スイッチの電流、ゼロクロス信号、トランジスタIg1sa_1のゲート信号、トランジスタIg1sb_1のゲート信号、・・・トランジスタIg1sa_5のゲート信号、トランジスタIg1sb_5のゲート信号を示す。切換スイッチの電流の縦軸は電流の大きさを表し、他の信号の縦軸は信号のオン/オフ状態を表す。
【0093】
切換スイッチの電流は、時刻t1a,t2a,t3a,t4a,t5a,t6aで負からゼロに達し、時刻t1b,t2b,t3b,t4b,t5b,t6bで正からゼロに達する。即ち、これらの各時刻が、切換スイッチに流れる電流のゼロクロス点に相当する。
【0094】
以下、トランジスタIg1sa_m及びIg1sb_m(前述の通りmは1から5の整数)それぞれを、切換スイッチに流れる電流の半周期ずつ順次導通させる方法について説明する。この方法により、各トランジスタ対Ig1s_mが、双方向に導通する1つの半導体スイッチであるかのように1周期毎に順次導通し、切換スイッチIg1sを見かけ上1つの双方向スイッチとして、略連続的に導通させることができる。
【0095】
切換スイッチIg1sを導通させる場合、駆動部32aは、トランジスタ対Ig1s_mをゼロクロス信号に基づいて巡回的にオンに駆動する。具体的に駆動部32aは、トランジスタIg1sa_m及びIg1sb_mに対し、最新のゼロクロス点にてゲート信号をオンする。例えば、トランジスタIg1sa_1は、時刻t1aに相当するゼロクロス点でゲート信号がオンされる。同様に、トランジスタIg1sa_1は、時刻t6aに相当するゼロクロス点でゲート信号がオンされる(以下、5周期毎に繰り返し)。
【0096】
トランジスタIg1sa_1に対して時刻t1aにてオンされたトリガ信号は、時刻t1bに相当するゼロクロス点にてオフされる。同様に、トランジスタIg1sa_1に対して時刻t6aにてオンされたトリガ信号は、時刻t6bに相当するゼロクロス点にてオフされる。
【0097】
トランジスタIg1sb_1については、トランジスタIg1sa_1と比較して半周期だけ遅れて駆動される。具体的にトランジスタIg1sb_1は、時刻t1bに相当するゼロクロス点でゲート信号がオンされ、時刻t2aに相当するゼロクロス点にてオフされる。このように、トランジスタIg1sa_1及びIg1sb_1に対するゲート信号により、トランジスタ対Ig1s_1が、時刻t1aから時刻t2aまで導通する。
【0098】
トランジスタ対Ig1s_2,・・・トランジスタ対Ig1s_5については、トランジスタ対Ig1s_1と比較して、それぞれ1周期,・・・4周期だけ遅れて駆動される。具体的にトランジスタIg1sa_2は、時刻t2aに相当するゼロクロス点でゲート信号がオンされ、時刻t2bに相当するゼロクロス点にてオフされる。トランジスタIg1sb_2は、時刻t2bに相当するゼロクロス点でゲート信号がオンされ、時刻t3aに相当するゼロクロス点にてオフされる・・・。トランジスタIg1sa_5は、時刻t5aに相当するゼロクロス点でゲート信号がオンされ、時刻t5bに相当するゼロクロス点にてオフされる。トランジスタIg1sb_5は、時刻t5bに相当するゼロクロス点でゲート信号がオンされ、時刻t6aに相当するゼロクロス点にてオフされる。
【0099】
まとめると、トランジスタIg1sa_1及びIg1sb_1,・・・トランジスタIg1sa_5及びIg1sb_5に対するゲート信号により、トランジスタ対Ig1s_1,・・・トランジスタ対Ig1s_5それぞれが、時刻t1aから時刻t2aまで,・・・時刻t5aから時刻t6aまで導通する(
図9の最上段参照)。トランジスタ対Ig1s_1,・・・トランジスタ対Ig1s_5に対するゲート信号は、相互に重なりがないように印加される。即ち、各トランジスタ対は、排他的にオンに駆動される。
【0100】
なお、各トランジスタ対Ig1s_m(mは1から5の整数)に含まれるトランジスタIg1sa_m及びIg1sb_mに対するトリガ信号は、オン期間のオアをとって同じ期間だけオンしてもよい。例えば、トランジスタ対Ig1s_1に含まれるトランジスタIg1sa_1及びIg1sb_1に対し、
図9に示す時刻t1aに相当するゼロクロス点にてトリガ信号をオンし、時刻t2aに相当するゼロクロス点にてオフするようにしてもよい。
【0101】
以上のように本実施形態3によれば、駆動部32aは、各トランジスタ対Ig1s_mを構成するトランジスタIg1sa_m及びIg1sb_mに対するゲート信号を、切換スイッチに流れる電流に係る最新のゼロクロス点にてオンし、後続するゼロクロス点にてオフする。従って、各トランジスタの導通期間の開始時点でゲート信号を印加し、導通期間の終了時点でゲート信号をオフすることができる。
【0102】
なお、実施形態3にあっては、各トランジスタ対Ig1s_mを、双方向に導通する1つの半導体スイッチとして1周期毎に順次導通させたが、2周期毎,3周期毎,・・・に順次導通させるようにしてもよい。
【0103】
(変形例2)
実施形態3が、各トランジスタ対Ig1s_mに、逆直列に接続されたトランジスタIg1sa_m及びIg1sb_mが含まれる形態であるのに対し、変形例2は、各トランジスタ対Ig1p_mに、逆並列的に接続されたトランジスタIg1pa_m及びIg1pb_mが含まれる形態である。変形例2に係る電圧調整装置100aの構成は、実施形態1に係る電圧調整装置100aと比較して切換スイッチThX(X=1,2,3,A,B,C)を切換スイッチIgXpに置き換えただけであるため、電圧調整装置100aの図示を省略する。
図10は、変形例2に係る切換スイッチIg1pの構成例を示す回路図である。他の切換スイッチについても同様である。
【0104】
切換スイッチIg1pは、IGBTの対を含むトランジスタ対(半導体スイッチに相当)Ig1p_1,Ig1p_2,Ig1p_3,Ig1p_4,Ig1p_5を並列に接続してなる。並列に接続されるトランジスタ対の数は5つに限定されない。各トランジスタ対Ig1p_m(mは1から5の整数)は、IGBTであるトランジスタIg1pa_m及びIg1pb_mが、それぞれのコレクタにダイオードが直列接続された状態で逆並列的に接続されている。
【0105】
トランジスタIg1pb_mのエミッタは、接続線3vに接続されている。トランジスタIg1pa_mのエミッタは、調整変圧器2aの二次巻線22のタップt1に接続されている。トランジスタIg1pa_m及びIg1pb_mのゲートは、駆動部32aに接続されている。各トランジスタ対Ig1p_mは、駆動部32aによって同時に導通することがないように駆動される。
【0106】
駆動部32aによる各切換スイッチの駆動については、実施形態3の
図9に示すタイミングチャートと全く同様に示される。但し、図中のトランジスタIg1sa_m及びIg1sb_mそれぞれは、トランジスタIg1pa_m及びIg1pb_mに読み替える。
【0107】
以上のように本変形例2によれば、駆動部32aは、各トランジスタ対Ig1p_mを構成するトランジスタIg1pa_m及びIg1pb_mに対するゲート信号を、切換スイッチに流れる電流に係る最新のゼロクロス点にてオンし、後続するゼロクロス点にてオフする。従って、各トランジスタの導通期間の開始時点でゲート信号を印加し、導通期間の終了時点でゲート信号をオフすることができる。
【0108】
(実施形態4)
実施形態3が、半導体スイッチに2つのIGBTを用いる形態であるのに対し、実施形態4は、半導体スイッチに2つのFETを用いる形態である。実施形態4に係る電圧調整装置100aの構成は、実施形態1に係る電圧調整装置100aと比較して切換スイッチThX(X=1,2,3,A,B,C)を切換スイッチFeXに置き換えただけであるため、電圧調整装置100aの図示を省略する。
図11は、実施形態4に係る切換スイッチFe1の構成例を示す回路図である。他の切換スイッチについても同様である。
【0109】
切換スイッチFe1は、FETの対を含むトランジスタ対(半導体スイッチに相当)Fe1_1,Fe1_2,Fe1_3,Fe1_4,Fe1_5を並列に接続してなる。並列に接続されるトランジスタ対の数は5つに限定されない。各トランジスタ対Fe1_m(mは1から5の整数)は、双方向に導通するNチャネル型のFETであるトランジスタFe1a_m及びFe1b_mが、ソース突き合わせによって逆直列に接続されている。トランジスタFe1a_m及びFe1b_mは、ゲート同士が接続されている。トランジスタFe1a_m及びFe1b_mそれぞれのドレイン・ソース間には、寄生ダイオードが逆並列に接続されている。トランジスタFe1a_m及びFe1b_mは、Pチャネル型のFETであってもよいし、ドレイン突き合わせにしてもよい。
【0110】
トランジスタFe1b_mのドレインは、接続線3vに接続されている。トランジスタFe1a_mのドレインは、調整変圧器2aの二次巻線22のタップt1に接続されている。トランジスタFe1a_m及びFe1b_mのゲートは、一括して駆動部32aに接続されている。
【0111】
トランジスタFe1a_m及びFe1b_mは、駆動部32aからゲート信号がゲートに印加された場合、双方向に導通する。トランジスタFe1a_m及びFe1b_mそれぞれをソース突き合わせにするのは、切換スイッチFe1のオフ時に逆流を防止するためである。各トランジスタ対Fe1_mは、駆動部32aによって同時に導通することがないように駆動される。
【0112】
次に、駆動部32aによる各切換スイッチの駆動について、切換スイッチFe1を例として説明する。
図12は、実施形態4に係るトランジスタ対Fe1_mを順次駆動して導通させるシーケンスを示すタイミングチャートである。
図12に示す7種類の信号は、何れも同一の時間軸を横軸にしてあり、最上段から順に切換スイッチの電流、ゼロクロス信号、トランジスタ対Fe1_1のゲート信号、・・・トランジスタ対Fe1_5のゲート信号を示す。切換スイッチの電流の縦軸は電流の大きさを表し、他の信号の縦軸は信号のオン/オフ状態を表す。
【0113】
切換スイッチの電流は、時刻t1a,t2a,t3a,t4a,t5a,t6aで負からゼロに達し、時刻t1b,t2b,t3b,t4b,t5b,t6bで正からゼロに達する。即ち、これらの各時刻が、切換スイッチに流れる電流のゼロクロス点に相当する。
【0114】
以下、トランジスタ対Fe1_m(ここではmは1から5の整数)それぞれを、切換スイッチに流れる電流の1周期ずつ順次導通させる方法について説明する。この方法により、各トランジスタ対Fe1_mが、双方向に導通する1つの半導体スイッチとして1周期毎に順次導通し、切換スイッチFe1を見かけ上1つの双方向スイッチとして、略連続的に導通させることができる。
【0115】
切換スイッチFe1を導通させる場合、駆動部32aは、各トランジスタ対Fe1_mをゼロクロス信号に基づいて巡回的にオンに駆動する。具体的に駆動部32aは、トランジスタ対Fe1_mに対し、最新のゼロクロス点にてゲート信号をオンする。例えば、トランジスタ対Fe1_1は、時刻t1aに相当するゼロクロス点でゲート信号がオンされる。同様に、時刻t6aに相当するゼロクロス点でトリガ信号がオンされる(以下、5周期毎に繰り返し)。
【0116】
トランジスタ対Fe1_1に対して時刻t1aにてオンされたトリガ信号は、時刻t2aに相当するゼロクロス点にてオフされる。同様に、トランジスタ対Fe1_1に対して時刻t6aにてオンされたトリガ信号は、時刻t6bに後続するゼロクロス点(不図示)にてオフされる。このように、トランジスタ対Fe1_1に対するゲート信号により、トランジスタ対Fe1_1が、時刻t1aから時刻t2aまで導通する。
【0117】
トランジスタ対Fe1_2,・・・トランジスタ対Fe1_5については、トランジスタ対Fe1_1と比較して、それぞれ1周期,・・・4周期だけ遅れて駆動される。具体的にトランジスタ対Fe1_2は、時刻t2aに相当するゼロクロス点にてトリガ信号がオンされ、時刻t3aに相当するゼロクロス点にてオフされる。トランジスタ対Fe1_3は、時刻t3aに相当するゼロクロス点にてトリガ信号がオンされ、時刻t4aに相当するゼロクロス点にてオフされる。トランジスタ対Fe1_4は、時刻t4aに相当するゼロクロス点にてトリガ信号がオンされ、時刻t5aに相当するゼロクロス点にてオフされる。トランジスタ対Fe1_5は、時刻t5aに相当するゼロクロス点にてトリガ信号がオンされ、時刻t6aに相当するゼロクロス点にてオフされる。
【0118】
まとめると、トランジスタ対Fe1_1,・・・トランジスタ対Fe1_5に対するゲート信号により、トランジスタ対Fe1_1,・・・トランジスタ対Fe1_5それぞれが、時刻t1aから時刻t2aまで,・・・時刻t5aから時刻t6aまで導通する(
図12の最上段参照)。トランジスタ対Fe1_1,・・・トランジスタ対Fe1_5に対するゲート信号は、相互に重なりがないように印加される。即ち、各トランジスタ対は、排他的にオンに駆動される。
【0119】
以上のように本実施形態4によれば、各トランジスタ対Fe1_mを構成するトランジスタFe1a_m及びFe1b_mに対するゲート信号を、切換スイッチに流れる電流に係る最新のゼロクロス点にてオンし、後続する2つ目のゼロクロス点にてオフする。従って、各トランジスタの導通期間の開始時点でゲート信号を印加し、導通期間の終了時点でゲート信号をオフすることができる。
【0120】
なお、実施形態4にあっては、各トランジスタ対Fe1_mを、双方向に導通する1つの半導体スイッチとして1周期毎に順次導通させたが、2周期毎,3周期毎,・・・に順次導通させるようにしてもよい。
【0121】
また、実施形態4にあっては、各トランジスタ対Fe1_mに含まれるトランジスタFe1a_m及びFe1b_mを逆直列に接続したが、逆並列的に接続してもよい。具体的には、変形例2の
図10に示す切換スイッチIg1pにおける各トランジスタIg1pa_m及びIg1pb_mそれぞれをトランジスタFe1a_m及びFe1b_mに置き換えたものを、切換スイッチFe1の代わりに用いればよい。この場合、トランジスタFe1a_m及びFe1b_mの駆動方法は、
図12に示すものと同様であってもよいし、実施形態3の
図9に示すものと同様であってもよい。但し、
図9ではトランジスタIg1sa_m及びIg1sb_mそれぞれを、トランジスタFe1a_m及びFe1b_mに読み替える。
【0122】
(実施形態5)
実施形態3及び4が、各トランジスタ対を1周期毎に順次導通させる形態であるのに対し、実施形態5は、各トランジスタ対を1周期内で順次導通させる形態である。実施形態5に係る電圧調整装置100a及び切換スイッチFe1それぞれの構成は、実施形態1の
図1及び実施形態4の
図11に示すものと同様であるため、これらの図示を省略する。
【0123】
図13は、実施形態5に係るトランジスタ対Fe1_m(mは1から5の整数)を順次駆動して導通させるシーケンスを示すタイミングチャートである。
図12に示す7種類の信号は、何れも同一の時間軸を横軸にしてあり、最上段から順に切換スイッチの電流、ゼロクロス信号、トランジスタ対Fe1_1のゲート信号、・・・トランジスタ対Fe1_5のゲート信号を示す。切換スイッチの電流の縦軸は電流の大きさを表し、他の信号の縦軸は信号のオン/オフ状態を表す。
【0124】
切換スイッチの電流は、時刻t1a,t2aで負からゼロに達し、時刻t1bで正からゼロに達する。即ち、これらの各時刻が、切換スイッチに流れる電流のゼロクロス点に相当する。
【0125】
以下、トランジスタ対Fe1_mそれぞれを、切換スイッチに流れる電流の1周期内で順次導通させる方法について説明する。この方法により、各トランジスタ対Fe1_mが、双方向に導通する1つの半導体スイッチとして1周期内で順次導通し、切換スイッチFe1を見かけ上1つの双方向スイッチとして、略連続的に導通させることができる。以下では、切換スイッチに流れる電流の周期に相当する時間をTとする。
【0126】
切換スイッチFe1を導通させる場合、駆動部32aは、各トランジスタ対Fe1_mをゼロクロス信号に基づいて巡回的にオンに駆動する。具体的に駆動部32aは、トランジスタ対Fe1_1に対し、最新のゼロクロス点にてゲート信号をオンする。例えば、トランジスタ対Fe1_1は、時刻t1aに相当するゼロクロス点でゲート信号がオンされる。トランジスタ対Fe1_1に対して時刻t1aにてオンされたトリガ信号は、時間T/5の経過時にオフされる。この時、トランジスタ対Fe1_2に対するゲート信号がオンされる。以後、時間T/5毎に同様の処理が繰り返される。
【0127】
具体的に、トランジスタ対Fe1_2に対してオンされたトリガ信号は、時間T/5の経過時にオフされる。この時、トランジスタ対Fe1_3に対するゲート信号がオンされる。トランジスタ対Fe1_3に対してオンされたトリガ信号は、時間T/5の経過時にオフされる。この時、トランジスタ対Fe1_4に対するゲート信号がオンされる。トランジスタ対Fe1_4に対してオンされたトリガ信号は、時間T/5の経過時にオフされる。この時、トランジスタ対Fe1_5に対するゲート信号がオンされる。トランジスタ対Fe1_5に対してオンされたトリガ信号は、時間T/5の経過時にオフされてもよいし、時刻t2aに相当するゼロクロス点でオフされてもよい。
【0128】
まとめると、トランジスタ対Fe1_1,・・・トランジスタ対Fe1_5に対するゲート信号により、トランジスタ対Fe1_1,・・・トランジスタ対Fe1_5それぞれが、時間T/5毎に導通する(
図13の最上段参照)。トランジスタ対Fe1_1,・・・トランジスタ対Fe1_5に対するゲート信号は、相互に重なりがないように印加される。即ち、各トランジスタ対は、排他的にオンに駆動される。
【0129】
以上のように本実施形態5によれば、駆動部は、先に導通している切換スイッチに流れる電流に係る最新のゼロクロス点を起点に、各トランジスタ対Fe1_mに対するゲート信号を時間T/5毎に順次オン/オフする。従って、FETで構成された各トランジスタ対を、例えば切換スイッチに流れる交流電流の1周期内で順次オンに駆動することができる。この場合、トランジスタ対Fe1_2及びFe1_4に流れる電流の二乗積算値が最も大きく、トランジスタ対Fe1_3に流れる電流の二乗積算値が最も小さくなるため、消費電力をトランジスタ対の容量に応じて不均等に分散させることができる。
【0130】
なお、実施形態5にあっては、各トランジスタ対Fe1_mに対するゲート信号を時間T/5毎に順次オン/オフしたが、これに限定されるものではない。例えばゲート信号を時間T/10毎に順次オン/オフした場合は、切換スイッチに流れる交流電流の1/2周期内で各トランジスタ対を順次オンに駆動することができる。
【0131】
(実施形態6)
実施形態1から5は、負荷時タップ切換器3aが単相交流を出力する形態であるのに対し、実施形態6は、負荷時タップ切換器3bが3相交流を出力する形態である。
図14は、実施形態6に係る負荷時タップ切換器3bを含む電圧調整装置100bの構成例を示すブロック図である。電圧調整装置100bは、紙面左側の電源から供給されるU相,V相,W相の3相交流の電圧を調整し、紙面右側の負荷へ、配電線1u,1v,1wを介してu相,v相,w相の3相交流を配電する。
【0132】
電圧調整装置100bは、配電線1u,1v,1wそれぞれに二次巻線112,122,132が直列に接続される直列変圧器1bと、配電線1u,1v,1wに一次巻線211,221,231がΔ結線される調整変圧器2b(タップ付変圧器に相当)とを備える。電圧調整装置100bは、更に、調整変圧器2bの二次巻線212,222,232及び直列変圧器1bの一次巻線111,121,131の間に設けられた負荷時タップ切換器(タップ切換器)3bを備える。タップ切換器3b及び調整変圧器2bが、負荷時タップ切換変圧器200bを構成する。
【0133】
直列変圧器1bは、二次巻線112,122,132それぞれに一次巻線111,121,131が対応している。一次巻線111,121,131はΔ結線されている。二次巻線112,122,132それぞれの上記負荷側の端子に対応する一次巻線111,121,131の端子をu1,v1,w1とする。また、二次巻線112,122,132それぞれの上記電源側の端子に対応する一次巻線111,121,131の端子をu2,v2,w2とする。
【0134】
調整変圧器2bは、一次巻線211が配電線1u,1v間に、一次巻線221が配電線1v,1w間に、一次巻線231が配電線1w,1u間にそれぞれ接続されている。一次巻線211,221,231のそれぞれには、二次巻線212,222,232が対応している。
【0135】
二次巻線212,222,232のそれぞれは、一端及び他端から引き出されたタップt1及びt4と,一端及び他端の間から引き出された中間のタップt2及びt3とを有する。二次巻線212,222,232のそれぞれは、タップt1~t4の何れか1つがタップ切換器3bを介して直列変圧器1bの一次側の端子u2,v2,w2と、端子v1,w1,u1とに接続され、該1つと同一又は異なる他の1つが中性点Nとしてアースに接続される。即ち、調整変圧器2bの二次巻線212,222,232は、タップ切換器3bを介してY結線される。
【0136】
調整変圧器2bの一次巻線211,221,231に印加される電圧を計測するために、配電線1u,1v、1wには計測用変圧器PT1,PT2がV結線されている。即ち、配電線1u及び1v間には計測用変圧器PT1の一次巻線が接続されており、配電線1v及び1w間には計測用変圧器PT2の一次巻線が接続されている。
【0137】
タップ切換器3bは、調整変圧器2bの二次巻線212のタップt1~t4を切り換えるための8つの切換スイッチThA_U,ThB_U,ThC_U,ThD_U,Th1_U,Th2_U,Th3_U,Th4_Uと、二次巻線222のタップt1~t4を切り換えるための8つの切換スイッチThA_V,ThB_V,ThC_V,ThD_V,Th1_V,Th2_V,Th3_V,Th4_Vと、二次巻線232のタップt1~t4を切り換えるための8つの切換スイッチThA_W,ThB_W,ThC_W,ThD_W,Th1_W,Th2_W,Th3_W,Th4_Wとを有する。各切換スイッチは、双方向に導通する複数の半導体スイッチが並列に接続されている。
【0138】
タップ切換器3bは、更に、上記各切換スイッチの切り換えを制御する制御部31bと、制御部31bからの駆動信号に基づいて各切換スイッチをオンに駆動する駆動部32bとを有する。制御部31bには、計測用変圧器PT1,PT2の二次巻線と、後述する計測用変圧器PT3,PT4,PT5及び変流器CT1,CT2,CT3(電流検出部に相当)の二次巻線とが接続されている。
【0139】
二次巻線212のタップt1は、保護用のヒューズを介して切換スイッチThA_U及びTh1_Uの一端に接続され、タップt2は、ヒューズを介して切換スイッチThB_U及びTh2_Uの一端に接続され、タップt3は、ヒューズを介して切換スイッチThC_U及びTh3_Uの一端に接続され、タップt4は、切換スイッチThD_U及びTh4_Uの一端に接続されている。切換スイッチThA_U,ThB_U,ThC_U,ThD_Uの他端同士は、中性点Nに接続されている。切換スイッチTh1_U,Th2_U,Th3_U,Th4_Uの他端同士は、接続線3uを介して直列変圧器1bの一次側の端子u2及びv1に接続されている。
【0140】
二次巻線222のタップt1は、ヒューズを介して切換スイッチThA_V及びTh1_Vの一端に接続され、タップt2は、ヒューズを介して切換スイッチThB_V及びTh2_Vの一端に接続され、タップt3は、ヒューズを介して切換スイッチThC_V及びTh3_Vの一端に接続され、タップt4は、切換スイッチThD_V及びTh4_Vの一端に接続されている。切換スイッチThA_V,ThB_V,ThC_V,ThD_Vの他端同士は、中性点Nに接続されている。切換スイッチTh1_V,Th2_V,Th3_V,Th4_Vの他端同士は、接続線3vを介して直列変圧器1bの一次側の端子v2及びw1に接続されている。
【0141】
二次巻線232のタップt1は、ヒューズを介して切換スイッチThA_W及びTh1_Wの一端に接続され、タップt2は、ヒューズを介して切換スイッチThB_W及びTh2_Wの一端に接続され、タップt3は、ヒューズを介して切換スイッチThC_W及びTh3_Wの一端に接続され、タップt4は、切換スイッチThD_W及びTh4_Wの一端に接続されている。切換スイッチThA_W,ThB_W,ThC_W,ThD_Wの他端同士は、中性点Nに接続されている。切換スイッチTh1_W,Th2_W,Th3_W,Th4_Wの他端同士は、接続線3wを介して直列変圧器1bの一次側の端子w2及びu1に接続されている。
【0142】
接続線3u及び3v間には、限流抵抗器R_UV及び矯絡用スイッチThS_UVの直列回路と、電磁接触器MC_UVとが並列に接続されている。接続線3v及び3w間には、限流抵抗器R_VW及び矯絡用スイッチThS_VWの直列回路と、電磁接触器MC_VWとが並列に接続されている。接続線3uと、切換スイッチTh1_U,Th2_U,Th3_U,Th4_Uの他端同士との接続部位には、該他端同士に対して流れる電流を計測するための変流器CT1の一次巻線が結合している。接続線3vと、切換スイッチTh1_V,Th2_V,Th3_V,Th4_Vの他端同士との接続部位には、該他端同士に対して流れる電流を計測するための変流器CT2の一次巻線が結合している。接続線3wと、切換スイッチTh1_W,Th2_W,Th3_W,Th4_Wの他端同士との接続部位には、該他端同士に対して流れる電流を計測するための変流器CT3の一次巻線が結合している。
【0143】
接続線3u,3v、3wには計測用変圧器PT3,PT4,PT5がY結線されている。即ち、接続線3u及びアース間には、計測用変圧器PT3の一次巻線が接続されており、接続線3v及びアース間には、計測用変圧器PT4の一次巻線が接続されており、接続線3w及びアース間には、計測用変圧器PT5の一次巻線が接続されている。計測用変圧器PT3,PT4,PT5の二次巻線は、Y結線されて制御部31bに接続されている。
【0144】
上述の電圧調整装置100bの構成と、実施形態1の
図1に示す電圧調整装置100aの構成とを比較する。電圧調整装置100aでは、切換スイッチTh1,Th2,Th3の他端同士に対して流れる電流が変流器CTで検出され、タップ切換された二次巻線22の電圧が計測用変圧器PTで検出される。これに対し、電圧調整装置100bでは、切換スイッチTh1_U,Th2_U,Th3_U,Th4_Uの他端同士に対して流れる電流が変流器CT1で検出され、タップ切換された二次巻線212の電圧が計測用変圧器PT3で検出される。同様に、切換スイッチTh1_V,Th2_V,Th3_V,Th4_Vの他端同士に対して流れる電流が変流器CT2で検出され、タップ切換された二次巻線222の電圧が計測用変圧器PT4で検出される。また、切換スイッチTh1_W,Th2_W,Th3_W,Th4_Wの他端同士に対して流れる電流が変流器CT3で検出され、タップ切換された二次巻線232の電圧が計測用変圧器PT5で検出される。
【0145】
即ち、本実施形態6にて各切換スイッチThY_U,ThY_V,ThY_W(Y=1,2,3,4,A,B,C,D)に複数の半導体スイッチを含ませた場合に、各半導体スイッチを巡回的に且つ排他的にオンに駆動する制御は、例えば実施形態1にて各切換スイッチThX(X=1,2,3)に対する制御と同様に行うことができる。
【0146】
以上のように本実施形態6によれば、調整変圧器2bの二次巻線212,222,232にあるタップt1,t2,t3,t4を切り換えるためのそれぞれ8つの切換スイッチThY_U,ThY_V,ThY_Wは、双方向に導通する複数の半導体スイッチが並列に接続されており、一端がタップt1,t2,t3,t4の何れか1つに接続されている。例えば、一部の切換スイッチTh1_U,Th2_U,Th3_U,Th4_Uは、接続線3uへのタップ切換器3bの出力とすべく他端同士が接続されている。他の切換スイッチThA_U,ThB_U,ThC_U,ThD_Uは、中性点Nへのタップ切換器3bの出力とすべく他端同士が接続されている。一部の切換スイッチTh1_U,Th2_U,Th3_U,Th4_Uのうちの1つと他の切換スイッチThA_U,ThB_U,ThC_U,ThD_Uのうちの1つとが導通した場合、一のタップが接続線3uに接続され、素通しタップであるか否かに応じて該一のタップと同一又は異なるタップが中性点Nに接続される。駆動部32bは、上記一部の切換スイッチTh1_U,Th2_U,Th3_U,Th4_Uの他端同士に対して流れる電流、即ち先に導通している半導体スイッチに流れる電流に基づいて、後に導通させる半導体スイッチを巡回的に且つ実質上排他的にオンに駆動する。従って、切換スイッチを構成する半導体スイッチが、互いの駆動信号が実質的に重ならないように順次オンに駆動されるため、導通に伴う諸々の損失を各半導体スイッチに分散させることが可能となる。
【0147】
なお、実施形態6にあっては、調整変圧器2bの二次巻線がタップ切換器3bを介してY結線され、直列変圧器1bの一次巻線111,121,131がΔ結線されている場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、調整変圧器2bの二次巻線212,222,232がタップ切換器を介してΔ結線され、直列変圧器1bの一次巻線111,121,131がY結線されていてもよい。また、調整変圧器の二次巻線212,222がタップ切換器を介してV結線され、直列変圧器1bの一次巻線111,121,131がY結線されていてもよい。これらの場合であっても、実施形態6の場合と同様に、各切換スイッチを構成する半導体スイッチを巡回的に且つ実質上排他的にオンに駆動することが可能であり、実施形態6の場合と同様の効果を奏する。
【0148】
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。また、各実施形態で記載されている技術的特徴は、お互いに組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0149】
1u,1v,1w 配電線、 100a,100b 電圧調整装置、 1a,1b 直列変圧器、 111,121,131 一次巻線、 112,122,132 二次巻線、 u1,u2,v1,v2,w1,w2 端子、 200a,200b 負荷時タップ切換変圧器、 2a,2b 調整変圧器(タップ付変圧器)、 21,211,221,231 一次巻線、 22,212,222,232 二次巻線、 t1,t2,t3,t4 タップ、 3a,3b 負荷時タップ切換器(タップ切換器)、 31a,31b 制御部、 32a,32b 駆動部、 Th1,Th2,Th3,ThA,ThB,ThC,Th1_U,Th2_U,Th3_U,Th4_U,ThA_U,ThB_U,ThC_U,ThD_U,Th1t,Ig1s,Ig1p,Fe1 切換スイッチ、 3u,3v,3w 接続線、 ThS,ThS_UV,ThS_VW 矯絡用スイッチ、 RS,R_UV,R_VW 限流抵抗器、 PT,PT1,PT2,PT3,PT4,PT5 計測用変圧器、 CT,CT1,CT2,CT3 変流器、Th1_1,サイリスタ対、 Th1a_1,Th1b_1 サイリスタ、 Th1t_1 トライアック、Ig1s_1,Ig1p_1,Fe1_1 トランジスタ対、Ig1sa_1,Ig1sb_1,Ig1pa_1,Ig1pb_1,Fe1a_1,Fe1b_1 トランジスタ