(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04858 20160101AFI20231025BHJP
H01M 8/04313 20160101ALI20231025BHJP
H01M 8/04955 20160101ALI20231025BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20231025BHJP
H01M 8/04225 20160101ALI20231025BHJP
H01M 8/04302 20160101ALI20231025BHJP
B60L 58/40 20190101ALI20231025BHJP
B60L 58/31 20190101ALI20231025BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20231025BHJP
【FI】
H01M8/04858
H01M8/04313
H01M8/04955
H01M8/04537
H01M8/04225
H01M8/04302
B60L58/40
B60L58/31
H01M8/10 101
(21)【出願番号】P 2020129654
(22)【出願日】2020-07-30
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【氏名又は名称】山下 和也
(72)【発明者】
【氏名】木村 俊介
(72)【発明者】
【氏名】田中 正俊
【審査官】笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-36101(JP,A)
【文献】特開2003-134604(JP,A)
【文献】特開2013-207952(JP,A)
【文献】特開2002-008694(JP,A)
【文献】特開2006-238589(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00- 8/2495
B60L 58/40
B60L 58/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両に搭載される燃料電池システムであって、
走行駆動モータと、
前記走行駆動モータを駆動するための電力を発電可能な燃料電池と、
前記燃料電池を作動させるための燃料電池補機と、
充放電可能な二次電池と、
ループ回路と、
前記ループ回路に設けられた、第1電路制御部、第2電路制御部および第3電路制御部と、
鉄道走行パターンに基づいて、前記第1電路制御部、前記第2電路制御部および前記第3電路制御部を制御する制御回路と、を備え、
前記ループ回路は、前記走行駆動モータと前記燃料電池とを接続する第1電路と、前記燃料電池と前記燃料電池補機とを接続する第2電路と、前記燃料電池補機と前記二次電池とを接続する第3電路と、前記二次電池と前記走行駆動モータとを接続する第4電路と、を含み、
前記第1電路制御部は、前記第1電路における電力供給を許可または遮断し、
前記第2電路制御部は、前記第2電路における電力供給を許可または遮断し、
前記第3電路制御部は、前記第3電路における電力供給を許可または遮断し、
前記制御回路は、前記鉄道走行パターンの減速走行時、前記第1電路における電力供給および前記第3電路における電力供給を遮断し、前記第2電路における電力供給を許可するように、前記第1電路制御部、前記第2電路制御部および前記第3電路制御部を制御する、燃料電池システム。
【請求項2】
前記制御回路は、前記鉄道走行パターンの減速走行後の停止時、前記第1電路における電力供給および前記第2電路における電力供給を許可し、前記第3電路における電力供給を遮断するように、前記第1電路制御部、前記第2電路制御部および前記第3電路制御部を制御する、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記二次電池の充電量を検出する充電量検出部を更に備え、
前記制御回路は、前記鉄道走行パターンの減速走行後の停止時、前記充電量検出部により検出された前記二次電池の充電量に基づいて前記二次電池が満充電になったと判断した場合に、前記第1電路における電力供給を遮断するように、前記第1電路制御部を制御する、請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記制御回路は、前記鉄道走行パターンの車両停止時に前記燃料電池を起動する場合、前記第1電路における電力供給および前記第2電路における電力供給を遮断し、前記第3電路における電力供給を許可するように、前記第1電路制御部、前記第2電路制御部および前記第3電路制御部を制御する、請求項1~3のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記制御回路は、前記鉄道走行パターンの車両停止時に前記燃料電池の運転を開始する場合、前記第1電路における電力供給および前記第3電路における電力供給を許可し、前記第2電路における電力供給を遮断するように、前記第1電路制御部、前記第2電路制御部および前記第3電路制御部を制御する、請求項1~4のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記制御回路は、前記鉄道走行パターンの加速走行時および定速走行時、前記第1電路における電力供給および前記第3電路における電力供給を許可し、前記第2電路における電力供給を遮断するように、前記第1電路制御部、前記第2電路制御部および前記第3電路制御部を制御する、請求項1~5のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記第1電路制御部は、前記燃料電池から前記第1電路を通って前記走行駆動モータへの電力供給を許可するとともに、前記走行駆動モータから前記第1電路を通って前記燃料電池への電力供給を遮断する整流器を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料電池を、鉄道車両等の移動体の駆動電源として活用することが研究されている。
【0003】
しかしながら、鉄道車両の走行時には、鉄道車両は走行と停止を繰り返す。例えば、鉄道車両を加速させる場合には、走行駆動モータを駆動するために、燃料電池の発電電力が走行駆動モータに供給される。一方、鉄道車両を減速させる場合や停止させる場合には、走行駆動モータを駆動させるための電力は不要となる。鉄道車両を減速させる場合や停止させる場合に、燃料電池の運転を停止することも考えられる。しかしながら、この場合、鉄道車両の加速と停止に合わせて燃料電池の運転と停止が繰り返される。このため、燃料電池の起動停止回数が増え、燃料電池の劣化が懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、鉄道車両の走行駆動モータを駆動するための燃料電池の起動停止回数を減らすことができる燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施の形態による燃料電池システムは、鉄道車両に搭載される。この燃料電池システムは、走行駆動モータと、走行駆動モータを駆動するための電力を発電可能な燃料電池と、燃料電池を作動させるための燃料電池補機と、充放電可能な二次電池と、ループ回路と、ループ回路に設けられた、第1電路制御部、第2電路制御部および第3電路制御部と、鉄道走行パターンに基づいて、第1電路制御部、第2電路制御部および第3電路制御部を制御する制御回路と、を備えている。ループ回路は、走行駆動モータと燃料電池とを接続する第1電路と、燃料電池と燃料電池補機とを接続する第2電路と、燃料電池補機と二次電池とを接続する第3電路と、二次電池と走行駆動モータとを接続する第4電路と、を含んでいる。第1電路制御部は、第1電路における電力供給を許可または遮断する。第2電路制御部は、第2電路における電力供給を許可または遮断する。第3電路制御部は、第3電路における電力供給を許可または遮断する。制御回路は、鉄道走行パターンの減速走行時、第1電路における電力供給および第3電路における電力供給を遮断し、第2電路における電力供給を許可するように、第1電路制御部、第2電路制御部および第3電路制御部を制御する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、鉄道車両の走行駆動モータを駆動するための燃料電池の起動停止回数を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態による燃料電池システムを示すブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す燃料電池システムの運転方法を説明するためのグラフである。
【
図3】
図3は、
図1に示す燃料電池システムにおいて、鉄道車両停止時に燃料電池を停止している場合のスイッチの状態を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、
図1に示す燃料電池システムにおいて、鉄道車両停止時に燃料電池を起動する場合のスイッチの状態を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、
図1に示す燃料電池システムにおいて、鉄道車両停止時に燃料電池を運転する場合のスイッチの状態を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、
図1に示す燃料電池システムにおいて、鉄道車両加速走行時のスイッチの状態を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、
図1に示す燃料電池システムにおいて、鉄道車両定速走行時のスイッチの状態を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、
図1に示す燃料電池システムにおいて、鉄道車両減速走行時のスイッチの状態を示すブロック図である。
【
図9】
図9は、
図1に示す燃料電池システムにおいて、鉄道車両停止時に燃料電池を運転する場合のスイッチの状態を示すブロック図である。
【
図10】
図10は、
図1に示す燃料電池システムにおいて、鉄道車両停止時に燃料電池を停止する場合のスイッチの状態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本実施の形態による燃料電池システムについて説明する。
【0010】
まず、
図1を用いて、本実施の形態による燃料電池システム1について説明する。本実施の形態による燃料電池システム1は、鉄道車両2に搭載され、燃料電池の発電電力は、鉄道車両2の駆動電力として用いられる。
【0011】
図1に示すように、本実施の形態による燃料電池システム1は、走行駆動モータ10と、第1電力変換回路15と、燃料電池20と、第2電力変換回路25と、燃料電池補機30と、第3電力変換回路35と、二次電池40と、第4電力変換回路45と、充電量検出部50と、ループ回路60と、第1電路スイッチ71と、第2電路スイッチ72と、第3電路スイッチ73と、制御回路80と、を備えている。
【0012】
走行駆動モータ10は、鉄道車両2を走行させるための駆動源である。走行駆動モータ10には、駆動電力が供給されて、鉄道車両2の駆動輪(図示せず)を駆動する。走行駆動モータ10は、交流モータであってもよい。
【0013】
第1電力変換回路15は、ループ回路60と走行駆動モータ10との間で供給される電力を変換するための回路である。力行モード時には、第1電力変換回路15は、ループ回路60から供給される直流電力を変換して交流電力を走行駆動モータ10に供給する。この場合、第1電力変換回路15は、インバータとして機能する。なお、走行駆動モータ10が直流モータである場合には、第1電力変換回路15は、DC/DCコンバータとして機能する。この場合、ループ回路60から供給される直流電力の電圧を変換して走行駆動モータ10に供給することができる。一方、回生モード時には、第1電力変換回路15は、走行駆動モータ10から供給される回生電力を直流電力に変換してループ回路60に供給する。この場合、第1電力変換回路15は、DC/DCコンバータとして機能する。
【0014】
燃料電池20は、発電可能になっている。すなわち、燃料電池20は、燃料ガスと、酸化剤ガスとを用いて発電を行う発電装置である。燃料ガスとしては、水素ガス、水素ガスを含む混合ガス等が挙げられる。酸化剤ガスとしては空気等が挙げられる。図示しないが、燃料電池20は、セルスタックと、マニホールドと、収納容器と、を含んでいてもよい。セルスタックは、積層された複数の燃料電池セルを含んでいる。各燃料電池セルにおいて、燃料ガスと酸化剤ガスとが電気化学反応して、発電が行われる。マニホールドは、燃料ガスや酸化剤ガスを各燃料電池セルに導入するとともに各燃料電池セルから排出させるための部材である。収容容器には、セルスタックがマニホールドとともに収容されている。燃料電池20の発電電力は、走行駆動モータ10を駆動するための駆動電力として用いられたり、燃料電池補機30を駆動するための駆動電力として用いられたりする。また、燃料電池20の発電電力は、二次電池の充電電力として用いられてもよい。なお、燃料電池は、固体高分子形燃料電池であってもよいが、これに限られることはなく、リン酸型燃料電池など他の形式の燃料電池であってもよい。
【0015】
第2電力変換回路25は、燃料電池20の発電電力の電圧を変換可能な回路である。第2電力変換回路25は、燃料電池20から供給される発電電力の電圧を変換して直流電力をループ回路60に供給する。また、第2電力変換回路25は、燃料電池20の発電電力の電圧が所定値に達したことを確認した後に、直流電力を出力する。このような第2電力変換回路25は、DC/DCコンバータであってもよい。
【0016】
燃料電池補機30は、燃料電池20を作動させるための機器である。例えば、燃料電池20に燃料ガスを供給するブロワ、燃料電池20に酸化剤ガスを供給するブロワ、および燃料電池20に冷却水を供給するポンプなどが、燃料電池補機30に該当する。燃料電池補機30には、燃料電池20の発電電力または二次電池40の放電電力が供給されて、燃料電池補機30の駆動電力として用いられる。
【0017】
第3電力変換回路35は、燃料電池補機30に供給する電力の電圧を変換可能な回路である。第3電力変換回路35は、ループ回路60から供給される直流電力の電圧を、燃料電池補機30の駆動に適した電圧に変換して、燃料電池補機30に供給する。この場合、第3電力変換回路35は、DC/DCコンバータとして機能する。また、燃料電池補機30が交流電力で駆動される場合には、第3電力変換回路35は、AC/DCコンバータとして機能する。この場合、ループ回路60から供給される直流電力を交流電力に変換して燃料電池補機30に供給する。なお、ループ回路60の直流電力で燃料電池補機30を駆動できる場合には、第3電力変換回路35は省略されていてもよい。
【0018】
二次電池40は、走行駆動モータ10に対して充放電可能になっている。二次電池40は、走行駆動モータ10に、駆動電力として放電電力を供給可能であるとともに、走行駆動モータ10の回生電力を充電可能になっている。また、二次電池40は、燃料電池20の発電電力を充電可能になっている。さらに、二次電池40は、燃料電池補機30の駆動電力として、放電電力を燃料電池補機30に供給可能になっている。二次電池40は、充放電可能な電池であれば任意の電池を用いることができ、例えば、リチウムイオン電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、鉛電池などを用いてもよい。
【0019】
第4電力変換回路45は、二次電池40の充放電の制御を行うための回路である。より具体的には、充電モード時には、第4電力変換回路45は、ループ回路60から供給される直流電力の電圧を変換して二次電池40に供給する。放電モード時には、第4電力変換回路45は、二次電池40から供給される放電電力の電圧を変換してループ回路60に供給する。第4電力変換回路45は、DC/DCコンバータであってもよい。
【0020】
充電量検出部50は、二次電池40の充電量を検出する。検出された充電量は、制御回路80に送信される。充電量検出部50は、二次電池40に組み込まれていてもよく、別体で構成されていてもよい。
【0021】
ループ回路60は、走行駆動モータ10、燃料電池20、燃料電池補機30および二次電池40を接続している。ループ回路60は、第1接続点P1と、第2接続点P2と、第3接続点P3と、第4接続点P4と、を含んでいる。
【0022】
第1接続点P1は、走行駆動モータ10とループ回路60とが接続する点である。第1接続点P1には、第1電力変換回路15を介して走行駆動モータ10が接続されている。
【0023】
第2接続点P2は、燃料電池20とループ回路60とが接続する点である。第2接続点P2には、第2電力変換回路25を介して燃料電池20が接続されている。
【0024】
第3接続点P3は、燃料電池補機30とループ回路60とが接続する点である。第3接続点P3には、第3電力変換回路35を介して燃料電池補機30が接続されている。
【0025】
第4接続点P4は、二次電池40とループ回路60とが接続する点である。第4接続点P4には、第4電力変換回路45を介して二次電池40が接続されている。
【0026】
また、ループ回路60は、第1電路61と、第2電路62と、第3電路63と、第4電路64と、を含んでいる。
【0027】
第1電路61は、走行駆動モータ10と燃料電池20を接続する電路である。より具体的には、第1電路61は、第1接続点P1と第2接続点P2との間に位置しており、第1接続点P1と第2接続点P2とを接続している。
【0028】
第2電路62は、燃料電池20と燃料電池補機30を接続する電路である。より具体的には、第2電路62は、第2接続点P2と第3接続点P3との間に位置しており、第2接続点P2と第3接続点P3とを接続している。
【0029】
第3電路63は、燃料電池補機30と二次電池40を接続する電路である。より具体的には、第3電路63は、第3接続点P3と第4接続点P4との間に位置しており、第3接続点P3と第4接続点P4とを接続している。
【0030】
第4電路64は、二次電池40と走行駆動モータ10を接続する電路である。より具体的には、第4電路64は、第4接続点P4と第1接続点P1との間に位置しており、第4接続点P4と第1接続点P1とを接続している。
【0031】
第1電路61、第2電路62、第3電路63および第4電路64は、この順番で接続されている。第4電路64が第1電路61に接続されることにより、4つの電路61~64によって、ループ回路60が構成されている。
【0032】
第1電路スイッチ71は、ループ回路60の第1電路61に設けられている。第1電路スイッチ71は、第1電路制御部の一例である。第1電路スイッチ71は、第1電路61における電力供給を許可または遮断するように構成されている。
【0033】
第2電路スイッチ72は、ループ回路60の第2電路62に設けられている。第2電路スイッチ72は、第2電路制御部の一例である。第2電路スイッチ72は、第2電路62における電力供給を許可または遮断するように構成されている。
【0034】
第3電路スイッチ73は、ループ回路60の第3電路63に設けられている。第3電路スイッチ73は、第3電路制御部の一例である。第3電路63は、第3電路63における電力供給を許可または遮断するように構成されている。
【0035】
制御回路80は、鉄道走行パターンに基づいて、各機器を制御する。制御回路80は、鉄道走行パターンを記憶した記憶部(図示せず)を含んでいる。鉄道車両2を運行する場合には、制御回路80は、記憶部に記憶された鉄道走行パターンを読み出して、各機器を制御する。
【0036】
制御回路80は、鉄道走行パターンに基づいて、燃料電池補機30を制御する。より具体的には、鉄道走行パターンのうち燃料電池20を起動する場合および駆動する場合、燃料電池20を構成するセルスタックに、燃料ガスの供給と酸化剤ガスの供給と冷却水の供給とを行うように、燃料電池補機30を制御する。
【0037】
また、制御回路80は、鉄道走行パターンに基づいて、第1電力変換回路15、第2電力変換回路25および第4電力変換回路45を制御する。
【0038】
より具体的には、制御回路80は、鉄道走行パターンに基づいて、第1電力変換回路15の力行モードと回生モードとを切り替える。制御回路80は、力行モード時には、ループ回路60の直流電力を交流電力に変換するように、第1電力変換回路15を制御する。一方、回生モード時には、走行駆動モータ10の回生電力を交流電力から直流電力に変換するように、第1電力変換回路15を制御する。制御回路80は、第1電力変換回路15の走行駆動モータ10の側の電圧が低い場合に力行モードを選択し、当該電圧が高い場合に回生モードを選択するようにしてもよい。
【0039】
制御回路80は、鉄道走行パターンに基づいて第2電力変換回路25を制御することにより、燃料電池20からループ回路60への発電電力の供給を制御する。より具体的には、制御回路80は、燃料電池20の発電電力の電圧を変換した直流電力をループ回路60に供給するように、第2電力変換回路25を制御する。そして、制御回路80は、第2電力変換回路25からループ回路60への電力の出力を制御する。このことにより、燃料電池20からループ回路60に供給される電力の電力量(例えば、電流)が調整される。
【0040】
制御回路80は、鉄道走行パターンに基づいて、第4電力変換回路45の充電モードと放電モードとを切り替える。より具体的には、制御回路80は、充電モード時には、ループ回路60の直流電力の電圧を変換するように、第4電力変換回路45を制御する。一方、放電モード時には、二次電池40の放電電力の電圧を変換してループ回路60に供給するように、第4電力変換回路45を制御する。
【0041】
制御回路80は、鉄道走行パターンに基づいて、第1電路スイッチ71、第2電路スイッチ72および第3電路スイッチ73を制御する。制御回路80は、鉄道走行パターンの段階に応じて、第1電路スイッチ71の開閉、第2電路スイッチ72の開閉および第3電路スイッチ73の開閉を制御する。
【0042】
より具体的には、制御回路80は、鉄道走行パターンの車両停止時、第1電路61における電力供給および第3電路63における電力供給を遮断し、第2電路62における電力供給を許可するように、各電路スイッチ71~73を制御する(
図3参照)。本実施の形態では、制御回路80は、第1電路スイッチ71および第3電路スイッチ73を開き、第2電路スイッチ72は閉じる。
【0043】
また、制御回路80は、鉄道走行パターンの車両停止時に燃料電池20を起動する場合、第1電路61における電力供給および第2電路62における電力供給を遮断し、第3電路63における電力供給を許可するように、各電路スイッチ71~73を制御する(
図4参照)。本実施の形態では、制御回路80は、第1電路スイッチ71および第2電路スイッチ72を開き、第3電路スイッチ73を閉じる。
【0044】
また、制御回路80は、鉄道走行パターンの車両停止時に燃料電池20の運転を開始する場合、第1電路61における電力供給および第3電路63における電力供給を許可し、第2電路62における電力供給を遮断するように、各電路スイッチ71~73を制御する(
図5参照)。本実施の形態では、制御回路80は、第1電路スイッチ71および第3電路スイッチ73を閉じ、第2電路スイッチ72を開く。
【0045】
また、制御回路80は、鉄道走行パターンの加速走行時および定速走行時、第1電路61における電力供給および第3電路63における電力供給を許可し、第2電路62における電力供給を遮断するように、各電路スイッチ71~73を制御する(
図6、
図7参照)。本実施の形態では、制御回路80は、第1電路スイッチ71および第3電路スイッチ73を閉じ、第2電路スイッチ72を開く。
【0046】
また、制御回路80は、鉄道走行パターンの減速走行時、第1電路61における電力供給および第3電路63における電力供給を遮断し、第2電路62における電力供給を許可するように、各電路スイッチ71~73を制御する(
図8参照)。本実施の形態では、制御回路80は、第1電路スイッチ71および第3電路スイッチ73を開き、第2電路スイッチ72を閉じる。
【0047】
また、制御回路80は、鉄道走行パターンの減速走行後の停止時、第1電路61における電力供給および第2電路62における電力供給を許可し、第3電路63における電力供給を遮断するように、各電路スイッチ71~73を制御する(
図9参照)。本実施の形態では、制御回路80は、第1電路スイッチ71および第2電路スイッチ72を閉じ、第3電路スイッチ73を開く。
【0048】
また、制御回路80は、鉄道走行パターンの減速走行後の停止時、充電量検出部50により検出された二次電池40の充電量に基づいて二次電池40が満充電になったと判断した場合に、第1電路61における電力供給を遮断するように、第1電路スイッチ71を制御する(
図10参照)。本実施の形態では、制御回路80は、第1電路スイッチ71を開く。第2電路スイッチ72は閉状態で維持され、第3電路スイッチ73は開状態で維持される。
【0049】
次に、このような構成からなる本実施の形態による燃料電池システム1の運転方法について説明する。ここでは、
図2に示す鉄道走行パターンに基づいた燃料電池システム1の運転方法について説明する。以下の説明では、上述した制御回路80によって制御される各機器の動作について説明する。
【0050】
鉄道走行パターンは、主として、鉄道車両2の停止段階、加速走行段階、定速走行段階、減速走行段階、停止段階で構成されている。
図2に示す鉄道走行パターンでは、始発駅を出発してから終着駅に到着するまでに1つの駅(途中駅)に停車する例を示している。
【0051】
(始発駅停止時)
鉄道走行パターンの始発駅停止時、始発駅出発時刻が近づくまでは燃料電池20を停止する。この場合、
図3に示すように、第1電路スイッチ71および第3電路スイッチ73は開く。第2電路スイッチ72は閉じていてもよいが、開いていてもよい。二次電池40は満充電されているが、鉄道車両2も停止しているため、電流は流れない。燃料電池補機30も停止している。
【0052】
鉄道走行パターンにおける燃料電池20の起動開始時刻に達すると、燃料電池20が起動される。
【0053】
この場合、
図4に示すように、第1電路スイッチ71および第2電路スイッチ72を開くとともに第3電路スイッチ73を閉じる。第4電力変換回路45が放電モードに切り替えられ、二次電池40の放電電力がループ回路60に供給される。第3電路スイッチ73が閉じられていることにより、二次電池40の放電電力は、第3電路63および第3電力変換回路35を通って燃料電池補機30に供給される。そして、燃料電池補機30は駆動されて、燃料電池20に、燃料ガス、酸化剤ガスおよび冷却水が供給される。この間、
図2に示すように、二次電池40の充電量が減少する。なお、燃料電池20の起動開始時刻は、始発駅出発時刻から燃料電池20の起動に要する時間を逆算して設定することができる。
【0054】
燃料ガスおよび酸化剤ガスが燃料電池20の燃料電池セルに到達して電気化学反応が行われると、発電が開始される。すなわち、燃料電池20の運転が開始する。燃料電池20の運転が開始して発電電力の電圧が所定値に達すると、第2電力変換回路25が、発電電力の電圧を変換した直流電力を出力する。
【0055】
この場合、
図5に示すように、第1電路スイッチ71および第3電路スイッチ73を閉じるとともに、第2電路スイッチ72を開く。このことにより、燃料電池20の発電電力が第2電力変換回路25を通ってループ回路60に供給される。一方、燃料電池20の運転開始に伴い、第4電力変換回路45が充電モードに切り替えられる。第1電路スイッチ71が閉じられていることにより、燃料電池20の発電電力は、第1電路61および第4電路64を通って二次電池40に供給され、二次電池40が充電される。また、第3電路スイッチ73が閉じられていることにより、燃料電池20の発電電力は、第1電路61、第4電路64、第3電路63および第3電力変換回路35を通って燃料電池補機30にも供給される。そして、燃料電池補機30の駆動は継続される。この間、
図2に示すように、二次電池40の充電量が増大する。なお、
図5において、第2電路スイッチ72を閉じるとともに第3電路スイッチ73を開くようにしてもよい。この場合においても、燃料電池補機30の駆動を継続することができる。
【0056】
(加速走行時)
鉄道走行パターンの加速走行開始時刻(始発駅出発時刻に相当)に達すると、鉄道車両2が走行し始めて、加速する。燃料電池20の運転は継続される。
【0057】
この場合、
図6に示すように、第1電路スイッチ71および第3電路スイッチ73を閉じるとともに、第2電路スイッチ72を開く。このことにより、燃料電池20の発電電力が第2電力変換回路25を通ってループ回路60に供給される。一方、加速走行開始時刻に達したことに伴い、第1電力変換回路15が力行モードに切り替えられる。第1電路スイッチ71が閉じられていることにより、燃料電池20の発電電力は、第1電路61を通って第1電力変換回路15に供給される。第1電力変換回路15において、燃料電池20の発電電力は交流電力に変換される。交流電力は、駆動電流として走行駆動モータ10に供給されて、走行駆動モータ10が駆動される。このことにより、走行駆動モータ10は、駆動輪を駆動して、鉄道車両2が加速する。
【0058】
また、加速走行開始時刻に達したことに伴い、第4電力変換回路45が放電モードに切り替えられる。このことにより、二次電池40の放電電力が、第4電路64および第1電力変換回路15を通って、駆動電力として走行駆動モータ10に供給される。このことにより、走行駆動モータ10の駆動電流を増大させて、鉄道車両2の加速を高めている。この間、
図2に示すように、二次電池40の充電量が減少する。
【0059】
また、加速走行時には、第3電路スイッチ73が閉じられていることにより、燃料電池20および二次電池40からループ回路60に供給された直流電力の一部は、第3電路63および第3電力変換回路35を通って燃料電池補機30に供給される。そして、燃料電池補機30の駆動は継続される。
【0060】
(定速走行時)
鉄道走行パターンの定速走行開始時刻に達すると、鉄道車両2はほぼ一定の速度で走行を継続する。燃料電池20の運転も継続される。
【0061】
この場合、
図7に示すように、第1電路スイッチ71および第3電路スイッチ73を閉じるとともに、第2電路スイッチ72を開く。すなわち、
図7に示すスイッチの開閉状態は、
図6に示す加速走行時におけるスイッチの開閉状態と同じである。このため、第1電路スイッチ71および第3電路スイッチ73は、閉状態に維持されるとともに、第2電路スイッチ72は、開状態に維持される。
【0062】
定速走行時においても、第1電力変換回路15は、力行モードに維持される。しかしながら、走行駆動モータ10で必要な駆動電力は少ない。このことにより、定速走行開始時刻に達したことに伴い、第4電力変換回路45が充電モードに切り替えられる。このことにより、燃料電池20の発電電力の一部は、第1電路61、第4電路64および第4電力変換回路45を通って二次電池40に供給され、二次電池40が充電される。この間、
図2に示すように、二次電池40の充電量が増大する。
【0063】
また、定速走行時には、加速走行時と同様に、燃料電池20の発電電力の一部は、第3電路63および第3電力変換回路35を通って燃料電池補機30に供給される。そして、燃料電池補機30の駆動は継続される。
【0064】
(減速走行時)
鉄道走行パターンの減速走行開始時刻に達すると、鉄道車両2が減速する。燃料電池20の運転は継続される。なお、鉄道車両2の減速は、制御回路80が図示しないブレーキを制御することにより実現され得る。
【0065】
減速走行時では、
図8に示すように、第1電路スイッチ71および第3電路スイッチ73を開くとともに、第2電路スイッチ72を閉じる。
【0066】
減速走行開始時刻に達したことに伴い、第1電力変換回路15が回生モードに切り替えられる。このことにより、走行駆動モータ10で発生した回生電力が、第1電力変換回路15を通ってループ回路60に供給される。減速走行時においても、第4電力変換回路45は充電モードに維持される。このことにより、走行駆動モータ10の回生電力は、第4電路64および第4電力変換回路45を通って二次電池40に供給され、二次電池40が充電される。この間、
図2に示すように、二次電池40の充電量が増大する。なお、減速走行時には、走行駆動モータ10で発生する回生電力の供給先は、実質的に二次電池40のみとなる。このため、
図2においては、減速走行時の二次電池40の充電量の増大速度が、定速走行時の二次電池40の充電量の増大速度よりも大きくなっている。しかしながら、二次電池40の充電量の増大速度は、これに限られることはなく、第2電力変換回路25を制御することにより、燃料電池20からループ回路60に供給される電力量を任意に調整してもよい。
【0067】
また、減速走行時には、第2電路スイッチ72が閉じられていることにより、燃料電池20からループ回路60に供給された直流電力は、第2電路62および第3電力変換回路35を通って燃料電池補機30に供給される。そして、燃料電池補機30の駆動は継続される。なお、減速走行時には、第2電力変換回路25を制御することにより、燃料電池20からループ回路60に供給される電流を低減させてもよい。このことにより、燃料電池20の発電電力が、余剰になることを抑制できる。
【0068】
また、減速走行時には、第1電路スイッチ71および第3電路スイッチ73が開いている。このことにより、走行駆動モータ10の回生電力が、燃料電池20に供給されることを防止できる。すなわち、燃料電池20は、充電されると劣化しやすい。このため、第1電路スイッチ71および第3電路スイッチ73を開くことにより、燃料電池20の劣化を抑制できる。また、燃料電池補機30の駆動電力として燃料電池20の発電電力を用いることができ、燃料電池20の運転を継続することができる。また、燃料電池補機30の駆動電力に二次電池40を放電することを不要にでき、二次電池40の充電量の低減を抑制できる。
【0069】
(途中駅停止時)
鉄道走行パターンの途中駅停止時刻に達すると、鉄道車両2が停止する。燃料電池20の運転は継続される。
【0070】
この場合、
図9に示すように、第1電路スイッチ71および第2電路スイッチ72を閉じるとともに、第3電路スイッチ73を開く。このことにより、燃料電池20の発電電力が第2電力変換回路25を通ってループ回路60に供給される。途中駅停止時においても、第4電力変換回路45が充電モードに維持される。このことにより、燃料電池20の発電電力の一部は、第1電路61、第4電路64および第4電力変換回路45を通って二次電池40に供給され、二次電池40が充電される。この間、
図2に示すように、二次電池40の充電量が増大する。なお、途中駅停止時には、燃料電池20の発電電力の多くが、二次電池40に供給される。このため、
図2においては、途中駅停止時の二次電池40の充電量の増大速度が、減速走行時の二次電池40の充電量の増大速度よりも大きくなっている。
【0071】
また、途中駅停止時には、第2電路スイッチ72が閉じられていることにより、燃料電池20の発電電力の一部は、第2電路62および第3電力変換回路35を通って燃料電池補機30に供給される。そして、燃料電池補機30の駆動は継続される。なお、
図9において、第2電路スイッチ72を開くとともに第3電路スイッチ73を閉じるようにしてもよい。この場合においても、燃料電池補機30の駆動を継続することができる。
【0072】
鉄道走行パターンの途中駅出発時刻に達すると、上述した加速走行時の運転、定速走行時の運転、減速走行時の運転が行われる。
【0073】
(終着駅停止時)
鉄道走行パターンの終着駅停止時刻に達すると、鉄道車両2が停止する。燃料電池20の運転は継続される。
【0074】
この場合、
図9に示すように、上述した途中駅停止時と同様にして、第1電路スイッチ71および第2電路スイッチ72を閉じるとともに、第3電路スイッチ73を開く。このことにより、燃料電池20の発電電力の一部が二次電池40に供給されて、二次電池40が充電される。この間、
図2に示すように、二次電池40の充電量が増大する。また、終着駅停止時には、燃料電池20の発電電力の一部は、燃料電池補機30に供給される。
【0075】
終着駅停止時、充電量検出部50により、二次電池40の充電量が検出される。充電量検出部50により検出された二次電池40の充電量に基づいて二次電池40が満充電になるまで、二次電池40の充電が継続される。
【0076】
二次電池40が満充電になると、燃料電池20の運転を停止する。
【0077】
この場合、
図10に示すように、第1電路スイッチ71および第3電路スイッチ73を開く。第2電路スイッチ72は閉じていてもよいが、開いていてもよい。二次電池40は満充電されているが、鉄道車両2は停止しているため、電流は流れない。燃料電池補機30も停止している。
【0078】
このようにして、鉄道走行パターンに基づいて燃料電池システム1の運転を行うことができる。とりわけ、上述した鉄道走行パターンでは、始発駅停止時に燃料電池20を起動してから、終着駅停止時まで燃料電池20の運転を継続することができる。
【0079】
このように本実施の形態によれば、鉄道走行パターンの減速走行時、ループ回路60の第1電路61における電力供給および第3電路63における電力供給を遮断し、第2電路62における電力供給を許可する。このことにより、燃料電池20の発電電力を、第2電路62を通って燃料電池補機30に供給することができる。このため、燃料電池20の発電電力の供給先を確保することができ、燃料電池20の運転を継続することができる。この結果、燃料電池20の運転停止を回避することができ、鉄道車両2の走行駆動モータ10を駆動するための燃料電池20の起動停止回数を低減することができる。この場合、燃料電池20の劣化を抑制することができる。
【0080】
また、本実施の形態によれば、第1電路61における電力供給および第3電路63における電力供給が遮断される。このことにより、走行駆動モータ10の回生電力が、燃料電池20に供給されることを防止できる。このため、燃料電池20が、回生電力で充電されることを防止でき、燃料電池20の劣化を抑制することができる。
【0081】
また、本実施の形態によれば、鉄道走行パターンの減速走行後の停止時、第1電路61における電力供給および第2電路62における電力供給を許可し、第3電路63における電力供給を遮断する。このことにより、燃料電池20の発電電力を、第1電路61および第4電路64を通って二次電池40に供給することができるとともに、第2電路62を通って燃料電池補機30に供給することができる。このため、燃料電池20の発電電力の供給先を確保することができ、燃料電池20の運転を継続することができる。この結果、燃料電池20の運転停止を回避することができ、燃料電池20の起動停止回数を低減することができる。また、二次電池40が充電されて、二次電池40の充電量を増大させることができる。このため、次の走行のための準備を行うことができる。
【0082】
また、本実施の形態によれば、充電量検出部50により検出された二次電池40の充電量に基づいて、二次電池40が満充電になった場合に、第1電路61における電力供給が遮断される。このことにより、燃料電池20の発電電力が二次電池40に供給されることを防止できる。
【0083】
また、本実施の形態によれば、鉄道走行パターンの車両停止時に燃料電池20を起動する場合、第1電路61における電力供給および第2電路62における電力供給を遮断し、第3電路63における電力供給を許可する。このことにより、二次電池40の放電電力を、第3電路63を通って燃料電池補機30に供給することができる。このため、燃料電池補機30を駆動させて、燃料電池20を起動させることができる。
【0084】
また、本実施の形態によれば、鉄道走行パターンの車両停止時に燃料電池20の運転を開始する場合、第1電路61における電力供給および第3電路63における電力供給を許可し、第2電路62における電力供給を遮断する。このことにより、燃料電池20の発電電力を、第1電路61および第4電路64を通って二次電池40に供給することができる。このため、二次電池40を充電させて、充電量を増大させることができる。また、燃料電池20の発電電力を、第1電路61、第4電路64および第3電路63を通って燃料電池補機30に供給することができる。このため、燃料電池補機30の駆動を継続することができる。
【0085】
また、本実施の形態によれば、鉄道走行パターンの加速走行時および定速走行時に、第1電路61における電力供給および第3電路63における電力供給を許可し、第2電路62における電力供給を遮断する。このことにより、燃料電池20の発電電力を、走行駆動モータ10に供給することができる。加速走行時には、二次電池40の充電電力を走行駆動モータ10に供給することができ、走行駆動モータ10の駆動電力を増大させることができる。定速走行時には、二次電池40を燃料電池20の発電電力で充電することができる。また、燃料電池20の発電電力を、第1電路61、第4電路64および第3電路63を通って燃料電池補機30に供給することができる。このため、燃料電池補機30の駆動を継続することができる。
【0086】
なお、上述した本実施の形態においては、ループ回路60の第1電路61に、第1電路スイッチ71が設けられている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、
図11に示すように、第1電路スイッチ71の代用として整流器90が設けられていてもよい。
図11に示す整流器90は、燃料電池20から第1電路61を通って走行駆動モータ10への電力供給を許可するとともに、走行駆動モータ10から第1電路61を通って燃料電池20への電力供給を遮断する。より具体的には、整流器90は、第2接続点P2から第1接続点P1への電力供給を許可するとともに、第1接続点P1から第2接続点P2への電力供給を遮断する。すなわち、整流器90は、第1接続点P1から第2接続点P2への電流の逆流を防止するように構成されている。
【0087】
以上述べた実施の形態によれば、鉄道車両の走行駆動モータを駆動するための燃料電池の起動停止回数を減らすことができる。
【0088】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0089】
1:燃料電池システム、2:鉄道車両、10:走行駆動モータ、20:燃料電池、30:燃料電池補機、40:二次電池、50:充電量検出部、60:ループ回路、61:第1電路、62:第2電路、63:第3電路、64:第4電路、71:第1電路スイッチ、72:第2電路スイッチ、73:第3電路スイッチ、80:制御回路、90:整流器