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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】開閉体制御装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 81/64 20140101AFI20231025BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20231025BHJP
   E05B 81/20 20140101ALI20231025BHJP
   E05B 81/36 20140101ALI20231025BHJP
【FI】
E05B81/64
B60J5/00 H
E05B81/20 B
E05B81/36
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020147700
(22)【出願日】2020-09-02
(65)【公開番号】P2022042319
(43)【公開日】2022-03-14
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上甲 篤
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-36598(JP,A)
【文献】特開2018-178448(JP,A)
【文献】実開平3-76982(JP,U)
【文献】特開2015-158040(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00-85/28
B60J 5/00- 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉体を開閉駆動させる駆動部と、
ストライカと係合し、開閉体を閉状態に保持する施錠動作、及びストライカを開放し、前記駆動部による開閉体の開閉駆動を可能とする解錠動作を行うラッチ機構と、
前記駆動部及び前記ラッチ機構の動作を制御する制御装置とを備える開閉体制御装置であって、
前記ラッチ機構は、
前記ストライカと係合した係合状態となるラッチ位置、及び前記ストライカが離脱可能な状態となるアンラッチ位置の間を回動可能に設けられるラッチと、
前記ラッチの回動動作を制御するセクタギアとを有し、
前記セクタギアは、
前記ラッチを前記ラッチ位置に保持する施錠位置、前記ラッチを前記アンラッチ位置に変位可能な状態とする解錠位置、及び前記施錠位置と前記解錠位置との間の中立位置に回動可能に設けられ、
前記制御装置は、
前記ラッチ機構の前記施錠動作を行う場合、
前記施錠動作の完了後に、前記施錠位置に到達した前記セクタギアを回動させて前記中立位置に復帰させる中立復帰動作を行い、
前記中立復帰動作において前記セクタギアが前記中立位置を通過した場合、
前記解錠位置まで一旦回動させ、その後、所定の中立復帰時間が経過するまでの間、前記解錠位置から前記施錠位置に向かって前記セクタギアを回動させるリトライ動作を行うとともに、
前記セクタギアが前記施錠位置に到達し、前記中立復帰動作を開始する時から、或いは前記中立復帰動作中から前記リトライ動作が完了するまでの間、前記駆動部の閉駆動を継続させる、
開閉体制御装置。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記リトライ動作において、
再び前記施錠位置に到達した前記セクタギアが、前記解錠位置に回動するまでの実回動時間を取得し、
当該実回動時間に所定比率を掛けることにより、前記中立復帰時間を算出する、
請求項1に記載の開閉体制御装置。
【請求項3】
前記ラッチ機構は、
前記セクタギアが前記中立位置に到達したことを検知する中立位置検知手段を有し、
前記制御装置は、
前記中立復帰動作において、
前記中立位置検知手段が、前記施錠位置から回動される前記セクタギアを検知した場合、前記中立位置検知手段の検知したタイミングによって前記セクタギアの回動動作を停止し、
前記中立位置検知手段が、所定時間が経過しても、或いは前記解錠位置に到達したことを検知しても、前記セクタギアを検知しなかった場合、前記中立位置検知手段が故障していると判断して、前記リトライ動作を行う、
請求項1または請求項2に記載の開閉体制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉体制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば車両のバックドアやスライドドア等からなる開閉体を、自動で「施錠」及び「解錠」する開閉体制御装置が知られている。
例えば、特許文献1においては、主に、バックドア(開閉体)を開閉駆動させるドア開閉装置(駆動部)、バックドアに設けられたストライカと係合して当該バックドアを閉状態に保持する施錠動作と、ストライカとの係合状態を開放してバックドアの開閉動作を可能にする解錠動作とを行うドアラッチ装置(ラッチ機構)、及びこれらのドア開閉装置やドアラッチ装置の動作を制御する電子制御装置(制御装置)などを備えるドア開閉制御システム(開閉体制御装置)が開示されている。
【0003】
ここで、前記ラッチ機構は、中立位置から開方向(解錠方向)及び閉方向(施錠方向)に向かって回動可能に設けられるセクタギア、当該セクタギアが閉方向に回動することによりストライカを係合する方向に回動されるラッチ、回動する当該ラッチを係止可能に設けられ、且つ前記セクタギアが開方向に回動することにより前記ラッチとの係止状態を開放するリリースレバー(ラチェット)、前記セクタギアを開方向及び閉方向に駆動させるラッチ駆動モータ(電動モータ)、並びに前記セクタギアが中立位置に位置することを検知する中立位置検出SW(中立位置検知手段)などを備える。
【0004】
そして、ラッチ機構は、解錠動作の完了後、開端(解錠位置)に到達したセクタギアを閉端(施錠位置)側に向かって中立位置検知手段が検知するまで回動させて、当該セクタギアを中立位置に復帰させる。
また、ラッチ機構は、施錠動作の完了後、閉端に到達したセクタギアを開端側に向かって中立位置検知手段が検知するまで回動させて、当該セクタギアを中立位置に復帰させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-36598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このような構成からなる開閉体制御装置においては、たとえ中立位置検知手段が予期せず故障していた場合であっても、通常時と変わることなく、施錠動作や解錠動作の完了後にセクタギアを中立位置まで復帰させるための対策として、近年、様々な技術が提案されている。
例えば、前述した特許文献1におけるドア開閉制御システム(開閉体制御装置)においては、施錠動作の完了後、閉端(施錠位置)に位置するセクタギアを中立位置に復帰させる際に中立位置検出SW(中立位置検知手段)が故障していた場合、以下のような制御を実行することで、セクタギアを中立位置に復帰させることとしている。
即ち、中立位置検出SWの故障によって検出されずに、中立位置を通過したセクタギアは、引き続き開端(解錠位置)まで一旦回動された後、再び閉端側に向かって回動され、中立位置近傍の位置であって、前述したリリースレバー(ラチェット)がラッチを係止した状態(ハーフラッチ状態)となる位置にて一時的に停止する。この際、セクタギアが開端まで回動されることで、閉状態にあったバックドアは、一旦開状態となる。
また、その一方において、セクタギアが開端に到達したタイミングをもって、前述したドア開閉装置(駆動部)の閉動作を開始し、セクタギアが開端まで回動されることで開状態となったバックドアを、再び閉状態に戻す。
【0007】
その後、一時的に停止していたセクタギアは、閉端側への回動を再開し、当該閉端に到達した後、再び開端側に向かって所定時間が経過するまで回動されることで、中立位置に復帰する。
また、セクタギアが閉端側への回動を再開した後、バックドアは直ちに閉状態となるとともに、リリースレバーとラッチとの係止状態(フルラッチ状態)が保持され、ドア開閉装置の閉動作を停止する。
【0008】
このような構成からなる特許文献1におけるドア開閉制御システムによれば、たとえ中立位置検出SW(中立位置検知手段)が故障していた場合であっても、施錠動作の完了後、閉端に位置するセクタギアを中立位置に復帰させることが可能である。
しかしながら、上記のようなドア開閉制御システムでは、中立位置を通過したセクタギアが開端まで回動される際、施錠動作の完了によって閉状態となっていたバックドアが、一時的に開状態となる。
従って、ユーザ側から見れば、バックドアの施錠動作の完了後、意図せず不意に当該バックドアが開くこととなるため、たとえ中立位置検知手段が故障していた場合であっても、このようなバックドアの一時的な開状態を伴うことなく、閉端に位置するセクタギアの中立位置への復帰を可能とする、さらなる技術が望まれていた。
【0009】
本発明の目的は、セクタギアが中立位置に位置することを検知する中立位置検知手段が故障していた場合であっても、開閉体の施錠動作の完了後、開閉体の一時的な開状態を伴うことなく、セクタギアを中立位置に復帰させることができる開閉体制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0011】
即ち、本発明に係る開閉体制御装置は、開閉体を開閉駆動させる駆動部と、ストライカと係合し、開閉体を閉状態に保持する施錠動作、及びストライカを開放し、前記駆動部による開閉体の開閉駆動を可能とする解錠動作を行うラッチ機構と、前記駆動部及び前記ラッチ機構の動作を制御する制御装置とを備える開閉体制御装置であって、前記ラッチ機構は、前記ストライカと係合した係合状態となるラッチ位置、及び前記ストライカが離脱可能な状態となるアンラッチ位置の間を回動可能に設けられるラッチと、前記ラッチの回動動作を制御するセクタギアとを有し、前記セクタギアは、前記ラッチを前記ラッチ位置に保持する施錠位置、前記ラッチを前記アンラッチ位置に変位可能な状態とする解錠位置、及び前記施錠位置と前記解錠位置との間の中立位置に回動可能に設けられ、前記制御装置は、前記ラッチ機構の前記施錠動作を行う場合、前記施錠動作の完了後に、前記施錠位置に到達した前記セクタギアを回動させて前記中立位置に復帰させる中立復帰動作を行い、前記中立復帰動作において前記セクタギアが前記中立位置を通過した場合、前記解錠位置まで一旦回動させ、その後、所定の中立復帰時間が経過するまでの間、前記解錠位置から前記施錠位置に向かって前記セクタギアを回動させるリトライ動作を行うとともに、前記セクタギアが前記施錠位置に到達し、前記中立復帰動作を開始する時から、或いは前記中立復帰動作中から前記リトライ動作が完了するまでの間、前記駆動部の閉駆動を継続させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
即ち、本発明に係る開閉体制御装置によれば、セクタギアが中立位置に位置することを検知する中立位置検知手段が故障していた場合であっても、開閉体の施錠動作の完了後、開閉体の一時的な開状態を伴うことなく、セクタギアを中立位置に復帰させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る開閉体制御装置を備えた車両の概略構成を示した図である。
図2】本発明の一実施形態に係る開閉体制御装置の構成をブロック線図によって示した図である。
図3】ラッチ機構の全体構成を示した図である。
図4】ラッチ機構の内部構成を示した図である。
図5】主にセクタギアの動作態様を示した図であって、(a)はセクタギアが中立位置に位置した状態を示した図であり、(b)はセクタギアが施錠位置に到達した状態を示した図であり、(c)はセクタギアが解錠位置に到達した状態を示した図である。
図6】主にラッチの動作態様を示した図であって、(a)はラッチがアンラッチ位置に位置した状態を示した図であり、(b)はラッチがハーフラッチ位置に位置した状態を示した図であり、(c)はラッチがフルラッチ位置に位置した状態を示した図である。
図7】本発明の一実施形態に係る開閉体制御装置において、中立位置検出SWが故障していた場合の施錠動作をタイミングチャートによって示した図である。
図8】本発明の一実施形態に係る開閉体制御装置において、中立位置検出SWが故障していた場合に施錠動作を実行する際の、セクタギアの一連の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の一実施形態に係る開閉体制御装置1について、図1乃至図8を用いて説明する。
なお、以下の説明に関しては便宜上、図1図3乃至図6に示した矢印の方向によって、車両100、またはラッチ機構3の上下方向、前後方向、左右方向を規定して記述する。
【0015】
[開閉体制御装置1の全体構成]
先ず、開閉体制御装置1の全体構成について、図1及び図2を用いて説明する。
本実施形態における開閉体制御装置1は、駆動モータを備える駆動部によって、対象物である開閉体を、所定方向に移動させて開閉する装置である。
このような開閉体制御装置1の一例として、例えば図1に示すような、車両100の車体101において、後背面の開口部101aを開閉するバックドア102を開閉体とし、当該バックドア102を上下方向に移動(回動)させるバックドア開閉装置が挙げられる。
【0016】
なお、開閉体制御装置1の構成については、本実施形態のようなバックドア開閉装置に限定されるものではなく、例えば、車体101の側面において、前後方向にスライド移動可能に備えられたスライドドアを開閉させる、スライドドア開閉装置としても採用することができる。
また、開閉体制御装置1は、例えば、店舗やガレージ等の構造物に設置されるシャッター、引き戸、開き扉、或いは、構造物正面の開口の上方に配置される折り畳み式の庇等を開閉体とする開閉装置としても採用することができる。
即ち、本発明の実施形態である開閉体制御装置1は、上述したような、バックドア102を開閉させるバックドア開閉装置に限定されるものではなく、移動対象物である物品または構造を、上下方向、左右方向、または斜め方向に移動させる、様々な装置に適用することが可能である。
【0017】
開閉体制御装置1は、主に、開閉体の一例であるバックドア102、バックドア102を開方向(図1中における矢印Duの方向)と閉方向(図1中における矢印Ddの方向)とに移動(開閉駆動)させる駆動部2、バックドア102を解錠可能に施錠するラッチ機構3、及びこれらの駆動部2やラッチ機構3の動作を制御する制御装置4などを備える。
【0018】
バックドア102は、上端部の左右両側において、ヒンジ103等を介して、車体101に対して上下方向に移動(回動)可能に設けられている。
一方、駆動部2は、車体101の天井部であって、当該ヒンジ103の近傍に設けられており、旋回アーム21やリンクアーム22等によって構成されるリンク機構を介して、バックドア102に連結されている。
【0019】
そして、駆動部2は、駆動源であるPBD(Power Back Door)モータ23を備え、当該PBDモータ23によって旋回アーム21が回動されることにより、リンクアーム22を介して、バッグドア102の開閉動作が実行される。
【0020】
なお、駆動部2は、バックドア102の開閉動作を可能とするものであれば、その構造、形状、及び配置位置等について、本実施形態に特に限定されるものではない。
例えば、駆動部2の別実施形態として、軸方向の一方側に配置される駆動本体部、及び軸方向の他方側に配置され、当該駆動本体部から出没可能に設けられる進退部などにより構成された、伸縮可能な棒状のアクチュエータなどを採用してもよい。
また、車体101の左右両側、且つヒンジ103の近傍に、2基の駆動部2をそれぞれ配置することとしてもよく、或いは、当該2基の駆動部2の何れか一方を、ダンパー機構等によって代替することとしてもよい。
【0021】
ラッチ機構3は、バックドア102の前側面(即ち、車体101の車内側の面)の下端部に配置されており、当該バックドア102を閉状態とすることで、車体101における開口部101aの下部近傍に設けられたストライカ104を迎え入れて係合し、バックドア102を閉状態に保持する。
また、ラッチ機構3は、ラッチ駆動モータ34(図3を参照)を備え、当該ラッチ駆動モータ34によってラッチ31(図4を参照)を変位させることにより、ストライカ104との係合状態を開放し、バックドア102を開動作可能な状態とする。
つまり、ラッチ機構3は、ストライカ104と係合し、バックドア102を閉状態に保持する施錠動作、及びストライカ104を開放し、駆動部2によるバックドア102の開閉動作を可能とする解錠動作を行う。
【0022】
なお、ラッチ機構3の構成の詳細については、後述する。
【0023】
制御装置4は、例えば、車両100の各部を制御するECU(Electronic Control Unit)により構成され、開閉体制御装置1の各部の制御と監視を行う。
制御装置4は、図2に示すように、駆動部2及びラッチ機構3と、配線等を介して電気的に接続されており、例えば、車体101(図1を参照)後部の車内側に配置される。
また、制御装置4は、開操作部5及び閉操作部6と、配線等を介して電気的に接続されている。
【0024】
ここで、開操作部5及び閉操作部6は、バックドア102(図1を参照)の開閉動作を操作するための操作手段であって、例えば、操作ボタンまたは操作スイッチ等からなる操作ユニットによって各々構成され、車両100の車内、またはバックドア102の取手部等に配置されている。
【0025】
そして、開操作部5は、ユーザの操作に応じて、バックドア102の開動作の実行を指示する指示信号を、制御装置4に送信する。
その結果、開操作部5からの指示信号を受信した制御装置4は、駆動部2に電気信号を送信してPBDモータ23を駆動させ、バックドア102を開方向に移動(回動)させる。
【0026】
また、閉操作部6は、ユーザの操作に応じて、バックドア102の閉動作の実行を指示する指示信号を、制御装置4に送信する。
その結果、閉操作部6からの閉動作信号を受信した制御装置4は、駆動部2に電気信号を送信してPBDモータ23を駆動させ、バックドア102を閉方向に移動(回動)させる。
【0027】
制御装置4は、バックドア102の開閉制御に必要な各種処理を実行する演算処理部41、及び当該各種処理を実行する際に用いられる基準値等の各種情報を記憶する記憶部42などを備える。
また、演算処理部41は、各種判定処理を実行する判定処理部41a、並びに駆動部2及びラッチ機構3の各駆動制御を実行する駆動制御部41bなどを備える。
【0028】
そして、制御装置4は、後述するラッチ機構3の各検出スイッチ(中立位置検出SW61、ハーフラッチ検出62、フルラッチ位置検出SW63、及びラチェット検出SW64)から、検出信号をそれぞれ受信する。
また、制御装置4は、バックドア102の開閉操作の指示信号を、開操作部5または閉操作部6から受信する。
これにより、制御装置4は、これらの受信した各信号をもとにして、PBDモータ23及びラッチ駆動モータ34を適宜制御し、バックドア102の開閉動作を制御する。
【0029】
[ラッチ機構3の構成]
次に、ラッチ機構3の構成について、図3図4、及び図6を用いて具体的に説明する。
ラッチ機構3は、図3に示すように、主にラッチ31、ラチェット32(図4を参照)、セクタギア33、駆動源であるラッチ駆動モータ34、並びに、これらラッチ31、ラチェット32、及びセクタギア33の状態を各々検出する検出スイッチ群60等を有する。
【0030】
ラッチ31は、車体101(図1を参照)側に設けられるストライカ104を、係合するものである。
ラッチ31は、図4に示すように、例えば、外周部の一部に凹状の係合溝31A1が設けられた略「C」字状の板状部材からなるラッチ本体部31A、ラッチ本体部31Aの平面中央部において直交方向に貫設されるラッチ軸部31B、及びラッチ本体部31Aの平面部であって、ラッチ軸部31Bに対して係合溝31A1側との対向側において、ラッチ本体部31Aの外縁に沿って突設されるラッチカム部31Cなどにより構成される。
【0031】
ここで、図6に示すように、ラッチ本体部31Aの外周部には、後述するラチェット32の掛止部32Cと掛合可能なハーフラッチ掛止部31A2、及びフルラッチ掛止部31A3が、係合溝31A1に向かって順に近づく位置に設けられている。
【0032】
また、図4に示すように、ラッチ軸部31Bの先端部には、当該ラッチ軸部31Bとの直交方向に延出するラッチレバー35が設けられており、当該ラッチレバー35の延出端部には、ラッチ軸部31Bと平行、且つラッチ本体部31A側との反対側に延出するラッチピン36が設けられている。
【0033】
そして、ラッチ31は、ベースとなるロアカバー50の上面において、ラッチ軸部31Bの軸方向を上下方向としつつ、ラッチカム部31C及びラッチピン36が各々上方に突出するようにして配置されるとともに、ラッチ軸部31Bを中心として回動可能に設けられる。
【0034】
また、ロアカバー50の上面には、一方の側端部に設けられたストライカ進入口50aから、平面中央部に向かって延びるストライカ案内溝50bが形成されており、平面視において、ラッチ31は、ラッチ本体部31Aの係合溝31A1がストライカ案内溝50bと重なるようにして配置される。
【0035】
さらに、ラッチ軸部31Bの外径側には、第一捩じりコイルばね51が同軸上に設けられており、当該第一捩じりコイルばね51によって、ラッチ31は、ラッチ軸部31Bを中心として、係合溝31A1がストライカ進入口50a側に向く方向(即ち、平面視にてラッチ軸部31Bを中心とする反時計回り方向。以下、「開放方向」と記載する。)に回動するように、常に付勢されている。
【0036】
このような構成を有することにより、ラッチ31は、ストライカ進入口50aを通過してストライカ案内溝50b内に案内されるストライカ104(図6を参照)を、係合溝31A1内に迎え入れる。
【0037】
そして、第一捩じりコイルばね51の付勢力に抗して、ラッチピン36が、ラッチ軸部31Bに対して係合溝31A1側との反対側(即ち、図4中における右方側)に押されることにより、ラッチ31は、ラッチ軸部31Bを中心として、係合溝31A1がロアカバー50の平面中央部側に向く方向(即ち、平面視にてラッチ軸部31Bを中心とする時計回り方向。以下、「係合方向」と記載する。)に回動される。
その結果、ロアカバー50のストライカ案内溝50bは、ラッチ31の係合溝31A1によって隔絶されることとなり、当該係合溝31A1内において、ストライカ104は、ラッチ31によって係合される。
【0038】
ラチェット32は、所定位置まで回動したラッチ31を掛止するものである。
ラチェット32は、例えば、略「L」字状の板状部材からなるラチェット本体部32A、ラチェット本体部32Aの平面中央部において直交方向に貫設されるラチェット軸部32B、ラチェット本体部32Aの一端部に設けられる掛止部32C、及びラチェット本体部32Aの他端部において当該ラチェット軸部32Bと平行に突出する突起部32Dなどにより構成される。
また、ラチェット32は、ロアカバー50の上面において、ストライカ案内溝50bを間に挟んで、ラッチ31と隣接して配置されるとともに、ラチェット軸部32Bの軸方向を上下方向としつつ、掛止部32Cをラッチ31側に向け、且つ突起部32Dを上方に突出させた状態で、当該ラチェット軸部32Bを中心として回動可能に設けられる。
【0039】
ここで、ラチェット軸部32Bの外径側には、第二捩じりコイルばね52が同軸上に設けられており、当該第二捩じりコイルばね52によって、ラチェット32は、ラチェット軸部32Bを中心として、掛止部32Cがラッチ31と当接して掛止する方向(即ち、平面視にてラチェット軸部32Bを中心とする時計回り方向。以下、「掛止方向」と記載する。)に回動するように、常に付勢されている。
【0040】
そして、後述するように、ラッチ31がハーフラッチ位置Pb2(図6(b)を参照)まで回動した状態において、ラチェット32は、掛止部32Cを介して、ラッチ本体部31Aのハーフラッチ掛止部31A2と掛合し、第一捩じりコイルばね51の付勢力によるラッチ31の回動動作(平面視にて反時計回り方向の回動動作)を制限する。
また、ラッチ31がフルラッチ位置Pb3(図6(c)を参照)まで回動した状態において、ラチェット32は、掛止部32Cを介して、ラッチ本体部31Aのフルラッチ掛止部31A3と掛合し、上記と同じく、第一捩じりコイルばね51の付勢力によるラッチ31の回動動作を制限する。
【0041】
一方、ラチェット本体部32Aの一端には、ラチェット軸部32Bとの直交方向に延出するレバー部32Eがさらに設けられており、第二捩じりコイルばね52の付勢力に抗して、当該レバー部32Eが、ラッチ31と離間する側(即ち、図4中における左方側)に押されることにより、ラチェット32は、ラチェット軸部32Bを中心として、掛止部32Cがラッチ本体部31Aと離間する方向(即ち、平面視にてラチェット軸部32Bを中心とする反時計回り方向。以下、「解除方向」と記載する。)に回動される。
その結果、上述したようなラッチ31とラチェット32との掛合状態が開放され、ラッチ31は、ラッチ軸部31Bを中心として回動可能な状態となる。
【0042】
セクタギア33は、ラッチ31及びラチェット32を各々所定方向に回動させるものである。即ち、セクタギア33は、ラッチ31及びラチェット32の回動動作を制御する。
セクタギア33は、例えば、略扇形状の板状部材からなるセクタギア本体部33A、並びにセクタギア本体部33Aの平面部において、中心角部の近傍に直交方向に貫設されるセクタギア軸部33B、及び円弧部の近傍に突出して設けられるセクタカム部33Cなどにより構成される。
【0043】
また、セクタギア本体部33Aの平面部において、円弧部の近傍には、直交方向の一方側であって、セクタカム部33Cが設けられる側に延出するセクタピン37が、さらに設けられている。
【0044】
そして、セクタギア33は、ラッチ31及びラチェット32の上方であって、これら両部材31・32の間において、セクタギア本体部33Aの円弧部を上側に向けつつ、セクタギア軸部33Bの軸方向を、ラッチ軸部31B及びラチェット軸部32Bに対する直交方向とするとともに、セクタピン37の延出方向を前記両部材31・32側に向けた状態で、当該セクタギア軸部33Bを中心として回動可能に設けられる。
【0045】
このような構成を有することにより、セクタギア33は、セクタギア軸部33Bを中心としてラッチ31側(図4における右側)に回動することにより、セクタピン37をラッチピン36に押し当て、ラッチ31を上記の係合方向に回動させる。
【0046】
また、例えば本実施形態において、セクタギア33とラチェット32との間には、リリースレバー38がレバー軸部38Aを中心として回動可能に設けられており、セクタギア33は、セクタギア軸部33Bを中心としてラチェット32側(図4における左側)に回動することにより、セクタピン37をリリースレバー38に押し当て、当該リリースレバー38を回動させる。
その結果、回動されたリリースレバー38は、レバー部32Eを介して、ラチェット32を上記の解除方向に回動させる。
【0047】
ところで、セクタギア本体部33Aの円弧部には、歯形部33A1が外縁に沿って形成されており、当該歯形部33A1を介して、セクタギア33は、ラッチ駆動モータ34のピニオンギア39(図3を参照)と噛合されている。
【0048】
そして、後述するように、制御装置4(図2を参照)からの指示信号を受けて、ラッチ駆動モータ34が、ピニオンギア39を一方側または他方側へと回転駆動させることにより、これに応じてセクタギア33も所定方向に回動され、ラッチ31及びラチェット32が各々回動される。
【0049】
検出スイッチ群60は、主に、セクタギア33の状態を検知する中立位置検出SW61、ラッチ31の状態を検知するハーフラッチ位置検出SW62及びフルラッチ位置検出SW63、並びにラチェット32の状態を検知するラチェット検出SW64などにより構成される。
【0050】
中立位置検出SW61は、回動可能なセクタギア33が所定の中立位置Pa1(図5(a)を参照)に到達したことを検知する、中立位置検知手段の一例であって、セクタギア33が中立位置Pa1に位置した状態であるか否かを検知するための検知手段である。
ここで、「中立位置Pa1」とは、後述する施錠位置Pa2と解錠位置Pa3との間に位置するセクタギア33の回動位置であって、当該セクタギア33が、ラッチ31及びラチェット32の何れをも回動させない待機位置を意味する。
【0051】
中立位置検出SW61は、プッシュボタン式の検出器からなり、セクタギア33のセクタカム部33Cによってプッシュボタンが押圧されることにより「OFF」状態となり、また当該セクタカム部33Cによる押圧状態から開放されることで「ON」状態となる、所謂「b接点スイッチ」として機能するように設定されている。
【0052】
なお、中立位置検出SW61は、セクタギア33が中立位置Pa1に位置した状態であるか否かを検知可能であればよく、その検出方法やON-OFF切換形式については、本実施形態に限定されるものではない。
【0053】
ハーフラッチ位置検出SW62は、ラッチ31がハーフラッチ位置Pb2(図6(b)を参照)に到達したか否かを検知するための、検知手段である。
ここで、「ハーフラッチ位置Pb2」とは、バックドア102(図1を参照)が完全な閉状態となる手前の段階であって、ラッチ31によってストライカ104を係合可能な状態(所謂半ドア状態)とする回動位置を意味する。
【0054】
ハーフラッチ位置検出SW62は、プッシュボタン式の検出器からなり、ラッチ31のラッチカム部31Cによってプッシュボタンが押圧されることにより「ON」状態となり、また当該ラッチカム部31Cによる押圧状態から開放されることで「OFF」状態となる、所謂「a接点スイッチ」として機能するように設定されている。
【0055】
なお、ハーフラッチ位置検出SW62は、ラッチ31がハーフラッチ位置Pb2に到達したか否かを検知可能であればよく、その検出方法やON-OFF切換形式については、本実施形態に限定されるものではない。
【0056】
フルラッチ位置検出SW63は、ラッチ31がフルラッチ位置Pb3(図6(c)を参照)に到達したか否かを検知するための、検知手段である。
ここで、「フルラッチ位置Pb3」とは、バックドア102が完全な閉状態となる段階であって、ハーフラッチ位置Pb2を通過して、ラッチ31によってストライカ104を係合可能な状態とする回動位置を意味する。
【0057】
フルラッチ位置検出SW63は、プッシュボタン式の検出器からなり、上記のハーフラッチ位置検出SW62と同様に、ラッチ31のラッチカム部31Cによってプッシュボタンが押圧されることにより「ON」状態となり、また当該ラッチカム部31Cによる押圧状態から開放されることで「OFF」状態となる、所謂「a接点スイッチ」として機能するように設定されている。
【0058】
なお、フルラッチ位置検出SW63は、ラッチ31がフルラッチ位置Pb3に到達したか否かを検知可能であればよく、その検出方法やON-OFF切換形式については、本実施形態に限定されるものではない。
【0059】
ラチェット検出SW64は、ラチェット32がラッチ31と掛合した状態か否かを検知するための、検知手段である。
具体的には、ラチェット検出SW64は、ハーフラッチ位置Pb2またはフルラッチ位置Pb3に到達したラッチ31を、ラチェット32が掛止した状態であるか否かを検知するための、検知手段である。
【0060】
ラチェット検出SW64は、プッシュボタン式の検出器からなり、ラチェット32の突起部32Dによってプッシュボタンが押圧されることにより「OFF」状態となり、また当該突起部32Dによる押圧状態から開放されることで「ON」状態となる、所謂「b接点スイッチ」として機能するように設定されている。
【0061】
なお、ラチェット検出SW64は、ラチェット32がラッチ31と掛合した状態か否かを検知可能であればよく、その検出方法やON-OFF切換形式については、本実施形態に限定されるものではない。
【0062】
[ラッチ機構3の動作手順]
次に、バックドア102の開閉動作を行う際の、ラッチ機構3の動作手順について、図5及び図6を用いて説明する。
先ず始めに、図5(a)に示すように、例えば、制御装置4(図2を参照)からの指示信号を、ラッチ駆動モータ34(図3を参照)が未だ受信していない初期状態において、セクタギア33は通常、中立位置Pa1にて停止した状態となっている。
この状態において、セクタピン37は、ラッチピン36とリリースレバー38との間に位置し、これら両部材36・37の何れとも当接していない。
【0063】
なお、中立位置検出SW61は、セクタカム部33Cによって押圧されてOFF状態となっている。
【0064】
バックドア102(図1を参照)の閉動作を行う場合、図6(a)に示すように、ラッチ31は、初期状態としてアンラッチ位置Pb1にて停止した状態となっており、係合溝31A1が、ストライカ進入口50a側に向いてストライカ案内溝50bと連通した状態となっている。
ここで、「アンラッチ位置Pb1」とは、ストライカ104がストライカ案内溝50bから離脱可能な状態となる、ラッチ31の回動位置を意味する。
【0065】
また、ラチェット32は、第二捩じりコイルばね52(図4を参照)の付勢力によって掛止方向に回動されており、掛止部32Cが、ラッチ本体部31Aの外縁部に当接した状態となっている。
【0066】
なお、上記の状態において、ハーフラッチ位置検出SW62及びフルラッチ位置検出SW63は、ともにラッチカム部31Cによって押圧され、ON状態となっている。
また、ラチェット検出SW64は、突起部32Dによる押圧状態から開放された状態にあり、ON状態となっている。
【0067】
そして、前述した閉操作部6(図2を参照)が操作され、またはユーザの手によってバックドア102が閉方向に移動されることで、ストライカ104は、ストライカ案内溝50bに進入し、ラッチ31の係合溝31A1の内周部と当接する。
【0068】
その後、バックドア102の移動が進むにつれて、ラッチ31は、ストライカ104によって、第一捩じりコイルばね51(図4を参照)の付勢力に抗して徐々に係合方向に回動されるとともに、ラチェット32は、ラッチ本体部31Aの上記外縁部に形成される第一湾曲部31A4に沿って掛止部32Cを摺動させながら、第二捩じりコイルばね52の付勢力に抗して徐々に解除方向に回動される。
【0069】
なお、ラチェット32が解除方向に回動されることで、ラチェット検出SW64は、突起部32Dによって押圧されてOFF状態に切り替る。
【0070】
ラッチ31の回動動作がさらに進み、ラチェット32の掛止部32Cが第一湾曲部31A4を通過すると、ラチェット32は、第二捩じりコイルばね52の付勢力によって直ちに掛止方向に回動され、図6(b)に示すように、掛止部32Cがラッチ本体部31Aのハーフラッチ掛止部31A2と掛合する。
これにより、ラッチ31は、ストライカ104と係合した第一の係合状態となるハーフラッチ位置Pb2にて停止し、ラチェット32によって開放方向への回動動作を規制された状態となる。
その結果、バックドア102は、完全な閉状態となる手前の段階である、所謂半ドア状態に保持された状態となる。
【0071】
なお、ラッチ31がハーフラッチ位置Pb2に到達して停止すると、ハーフラッチ位置検出SW62は、ラッチカム部31Cによる押圧状態から開放されて(換言すると、ラッチカム部31Cがハーフラッチ位置検出SW62から外れて)OFF状態に切り替る。
また、ラチェット32が掛止部32Cを介してラッチ本体部31Aのハーフラッチ掛止部31A2と掛合すると、ラチェット検出SW64は、突起部32Dによる押圧状態から再び開放された状態となり、ON状態に切り替る。
【0072】
各検出スイッチ(ハーフラッチ位置検出SW62、フルラッチ位置検出SW63、及びラチェット検出SW64)からの信号によって、ラッチ31がハーフラッチ位置Pb2に到達して停止したことを把握した制御装置4は、所定の待ち時間(タイムラグ)の経過後、ラッチ機構3による施錠動作を直ちに開始する。
具体的には、図5(a)において、制御装置4は、ラッチ駆動モータ34(図3を参照)に指示信号を送信し、ピニオンギア39を所定側(以下、「正転側」と記載する)に回転駆動させて、セクタギア33をラッチ31側(以下、「施錠側」と記載する)に向って回動させる。
【0073】
なお、セクタギア33の回動動作に伴い、セクタカム部33Cは中立位置検出SW61から外れることから、当該中立位置検出SW61は、セクタカム部33Cによる押圧状態から開放された状態となり、ON状態に切り替る。
【0074】
セクタギア33の回動動作が進むと、セクタピン37は、ラッチ31のラッチピン36と当接する。
その後、さらにセクタギア33の回動動作が進むと、ラッチ31は、セクタピン37によってラッチピン36を押されながら、第一捩じりコイルばね51の付勢力に抗して、再び徐々に係合方向に回動されるとともに、ラチェット32は、ラッチ本体部31A(図6(b)を参照)の上記外縁部に形成される第二湾曲部31A5に沿って掛止部32Cを摺動させながら、第二捩じりコイルばね52の付勢力に抗して、再び徐々に解除方向に回動される。
【0075】
なお、ラチェット32が解除方向に回動されることで、ラチェット検出SW64は、突起部32Dによって押圧されて再びOFF状態に切り替る。
【0076】
そして、図6(c)に示すように、ラチェット32の掛止部32Cが第二湾曲部31A5を通過すると、ラチェット32は、第二捩じりコイルばね52の付勢力によって直ちに掛止方向に回動され、掛止部32Cがラッチ本体部31Aのフルラッチ掛止部31A3と掛合する。
これにより、ラッチ31は、ストライカ104と係合した第二の係合状態となるフルラッチ位置Pb3にて停止し、ラチェット32によって開放方向への回動動作を規制された状態となる。
その結果、バックドア102は、完全な閉状態に保持された施錠状態となる。
【0077】
なお、ラッチ31がフルラッチ位置Pb3に到達して停止すると、フルラッチ位置検出SW63は、ラッチカム部31Cによる押圧状態から開放されて(換言すると、ラッチカム部31Cがフルラッチ位置検出SW63から外れて)OFF状態に切り替る。
また、ラチェット32が掛止部32Cを介してラッチ本体部31Aのフルラッチ掛止部31A3と掛合すると、ラチェット検出SW64は、突起部32Dによる押圧状態から再び開放された状態となり、ON状態に切り替る。
【0078】
一方、ラッチ31がフルラッチ位置Pb3に到達して停止すると、制御装置4は、ラッチ駆動モータ34への指示信号の送信を直ちに停止し、当該ラッチ駆動モータ34によるピニオンギア39の回転駆動を停止させる。
その結果、図5(b)に示すように、セクタギア33は、施錠位置Pa2にて停止した状態となる。
ここで、「施錠位置Pa2」とは、ラッチ31をラッチ位置(より具体的には、フルラッチ位置Pb3)に保持した状態となる、セクタギア33の回動位置を意味する。
【0079】
セクタギア33を施錠位置Pa2にて停止させた制御装置4は、その後、当該セクタギア33の中立位置Pa1への復帰動作を開始する。
具体的には、制御装置4は、再びラッチ駆動モータ34に指示信号を送信し、ピニオンギア39を、正転側との反対側(以下、「逆転側」と記載する)に回転駆動させて、セクタギア33をラチェット32側(以下、「解錠側」と記載する)に向って回動させる。
【0080】
そして、図5(a)に示すように、セクタカム部33Cによって中立位置検出SW61が押圧され、当該中立位置検出SW61が再びOFF状態となることで、制御装置4は、セクタギア33が中立位置Pa1に到達したと判断し、ラッチ駆動モータ34への指示信号の送信を停止して、セクタギア33の中立位置Pa1への復帰動作を終了する。
これにより、ラッチ機構3による施錠動作が終了し、バックドア102の閉動作が完了する。
【0081】
以上に示した手順に従い、バックドア102の閉動作が実行される一方、当該バックドア102の開動作を行う場合には、以下の手順に従い実行される。
即ち、バックドア102の開動作を行う場合、図6(c)に示すように、ラッチ31は、初期状態としてフルラッチ位置Pb3にて停止した状態となっており、係合溝31A1によってストライカ104が係合された状態となっている。
【0082】
また、ラチェット32は、第二捩じりコイルばね52の付勢力によって掛止方向に回動され、掛止部32Cが、ラッチ31のフルラッチ掛止部31A3と掛合した状態となっている。
つまり、ラッチ31は、ラチェット32によって開放方向への回動動作を規制された状態となっている。
【0083】
なお、上記の状態において、ハーフラッチ位置検出SW62及びフルラッチ位置検出SW63は、ともにラッチ31のラッチカム部31Cによる押圧状態から開放された状態にあり、OFF状態となっている。
また、ラチェット検出SW64は、ラチェット32の突起部32Dによる押圧状態から開放された状態にあり、ON状態となっている。
【0084】
一方、図5(a)に示すように、初期状態において、セクタギア33は通常、上述したバックドア102の閉動作を行う場合と同じく、中立位置Pa1にて停止した状態となっている。
【0085】
なお、中立位置検出SW61は、セクタカム部33Cによって押圧されてOFF状態となっている。
【0086】
そして、前述した開操作部5(図2を参照)が操作されることで、制御装置4は、ラッチ機構3による解錠動作を開始する。
具体的には、制御装置4は、ラッチ駆動モータ34に指示信号を送信し、ピニオンギア39を逆転側に回転駆動させて、セクタギア33を解錠側に向って回動させる。
【0087】
なお、セクタギア33の回動動作に伴い、セクタカム部33Cは中立位置検出SW61から外れることから、当該中立位置検出SW61は、セクタカム部33Cによる押圧状態から開放された状態となり、ON状態に切り替る。
【0088】
セクタギア33の回動動作が進むと、セクタピン37は、リリースレバー38と当接する。
その後、さらにセクタギア33の回動動作が進むと、リリースレバー38は、セクタピン37によって押されながら、レバー軸部38Aを中心として所定側に回動される。
その結果、ラチェット32は、リリースレバー38の下端部によってレバー部32Eを押されながら、第二捩じりコイルばね52の付勢力に抗して、徐々に解除方向に回動される。
【0089】
なお、ラチェット32が解除方向に回動されることで、ラチェット検出SW64は、突起部32Dによって押圧されてOFF状態に切り替る。
【0090】
そして、ラッチ31のフルラッチ掛止部31A3からラチェット32の掛止部32Cが外れて、当該ラチェット32によるラッチ31の開放方向への回動動作の規制が解除されると、ラッチ31は、係合溝31A1内にストライカ104を係合させた状態で、第一捩じりコイルばね51の付勢力によって直ちに開放方向に回動され、図6(a)に示すように、アンラッチ位置Pb1に到達して停止する。
また、ラッチ31の当該回動動作に伴い、フルラッチ位置検出SW63及びハーフラッチ位置検出SW62は、ラッチカム部31Cによって順に押圧されてON状態に切り替る。
これにより、ストライカ104は、ストライカ案内溝50bから離脱可能な状態となり、ラッチ機構3によるストライカ104の施錠状態を開放し、バックドア102の開閉動作を可能とする解錠状態となる。
【0091】
また、制御装置4は、フルラッチ位置検出SW62がON状態に切り替ったタイミングで、ラッチ駆動モータ34への指示信号の送信を直ちに停止し、当該ラッチ駆動モータ34によるピニオンギア39の回転駆動を停止させる。
その結果、図5(c)に示すように、セクタギア33は、解錠位置Pa3にて停止した状態となる。
ここで、「解錠位置Pa3」とは、ラチェット32による回動動作の規制からラッチ31を開放し、当該ラッチ31をアンラッチ位置Pb1に変位可能な状態とする、セクタギア33の回動位置を意味する。
【0092】
その後、例えば、ユーザの手によってバックドア102が開方向に移動され、ストライカ104がストライカ案内溝50bから完全に離脱すると、制御装置4は、セクタギア33の中立位置Pa1への復帰動作を開始する。
具体的には、制御装置4は、再びラッチ駆動モータ34に指示信号を送信し、ピニオンギア39を正転側に回転駆動させて、セクタギア33を施錠側に向って回動させる。
【0093】
セクタギア33の回動動作が進むと、リリースレバー38は、セクタピン37と当接した状態で、レバー軸部38Aを中心として回動され、当該リリースレバー38の下端部によって解除方向に押されていたラチェット32が、第二捩じりコイルばね52の付勢力によって、徐々に掛止方向に回動される。
【0094】
その後、図6(a)に示すように、ラチェット32の掛止部32Cが、ラッチ本体部31Aの上記外縁部に当接すると、リリースレバー38は、ラチェット32から離れて回動動作を停止する。
また、リリースレバー38の回動動作が停止することにより、セクタギア33は、セクタピン37をリリースレバー38から離して、さらに施錠側に向って回動する。
【0095】
そして、図5(a)に示すように、セクタカム部33Cによって中立位置検出SW61が押圧され、当該中立位置検出SW61が再びOFF状態となることで、制御装置4は、セクタギア33が中立位置Pa1に到達したと判断し、ラッチ駆動モータ34への指示信号の送信を停止して、セクタギア33の中立位置Pa1への復帰動作を終了する。
これにより、ラッチ機構3による解錠動作が終了し、バックドア102の開動作が完了する。
【0096】
ところで、本実施形態における開閉体制御装置1においては、上述したバックドア102の閉動作を行う場合の、セクタギア33の中立位置Pa1への復帰動作において、中立位置検出SW61の故障に対する制御的な対応策が設けられている。
【0097】
即ち、詳細は後述するが、本実施形態においては、ラッチ31がストライカ104と係合した状態でフルラッチ位置Pb3にて停止した後、施錠位置Pa2に位置するセクタギア33を中立位置Pa1まで回動させる際、中立位置検出SW61が故障している場合には、解錠位置Pa3まで一旦回動させ、その後、予め設定されている算出プログラムによって導き出された、所定時間(後述する「中立復帰時間T」)だけラッチ31側に回動させて、セクタギア33を中立位置Pa1に到達させるリトライ動作を実行することで、セクタギア33を中立位置Pa1に到達させることとしている。
【0098】
また、本実施形態においては、上記施錠位置Pa2に到達した後、解錠側に向ってセクタギア33の回動(中立復帰動作)する時から、或いは上記中立復帰動作中から上記リトライ動作が完了するまでの間、駆動部2によるバックドア102の閉駆動を継続させることとしている。
【0099】
なお、上記算出プログラムは、施錠位置Pa2から解錠位置Pa3までセクタギア33が回動するのに要した実際の経過時間(後述する「実回動時間Ta」)に対して、予め設定された所定比率αを掛けることにより、所定時間(中立復帰時間T)を算出する。
【0100】
このような制御的な対応策を設けることで、中立位置検出SW61が故障している状況下において、ラッチ機構3の施錠動作の指示が行われた場合であっても、本実施形態における開閉体制御装置1によれば、ユーザにとって意図せず不意にバックドア102が開くようなこともなく、より確実にセクタギア33を中立位置Pa1に復帰させることができる。
【0101】
[中立位置検出SW61の故障時におけるバックドア102の閉動作の動作手順]
次に、中立位置検出SW61が故障している状況下において、バックドア102の閉動作を行う場合の動作手順について、図5乃至図8を用いて説明する。
先ず始めに、図7に示すように、中立位置検出SW61は故障しており、ラッチ機構3の各動作(後述するイベントE01~E06)に関わることなく、常にON状態となっている。
なお、中立位置検出SW61の故障状況については、本実施形態に限定されるものではなく、ラッチ機構3の各動作に関わることなく、常にOFF状態となる場合であってもよい。
【0102】
また、バックドア102の閉動作を行う前提条件として、当該バックドア102は完全な開状態となっており、図6(a)に示すように、ラッチ31は、アンラッチ位置Pb1にて停止し、ラチェット32の掛止部32Cが、ラッチ本体部31Aの外縁部に当接した状態となっている。
従って、図7に示すように、ハーフラッチ位置検出SW62及びフルラッチ位置検出SW63は、ともにON状態となっており、ラチェット検出SW64も、ON状態となっている。
【0103】
さらに、図5(a)に示すように、セクタギア33は、中立位置Pa1にて停止した状態となっている。
【0104】
このような初期状態におけるラッチ機構3において、閉操作部6(図2を参照)が操作され、またはユーザの手によってバックドア102が閉方向に移動されると、ストライカ104は、ストライカ案内溝50b内に進入し(ラッチングされ)、ラッチ31を係合方向へと回動させる。
また、ラッチ31の回動動作に伴い、ラチェット32は、解除方向へと回動される。
【0105】
その後、図7に示すように、ストライカ104のラッチング動作がさらに進み、ラッチ31がハーフラッチ位置Pb2の近傍にまで到達すると、ラチェット32もさらに解除方向に回動され、ラチェット検出SW64が、OFF状態に切り替る。
また、ラチェット検出SW64がOFF状態に切り替るのと略同時に、ラッチ31のラッチカム部31Cは、ハーフラッチ位置検出SW62から離脱する。これにより、ハーフラッチ位置検出SW62は、OFF状態に切り替る。
【0106】
そして、例えば、ハーフラッチ位置検出SW62がOFF状態となった後、所定の待ち時間が経過した時間t1のタイミングをもって、ストライカ104のラッチング動作は終了し、イベントE01が実行される。
【0107】
イベントE01が実行されると、制御装置4は、ラッチ駆動モータ34に指示信号を送信し、セクタギア33を施錠側(図8を参照)に向って回動させる。
つまり、ラッチ駆動モータ34の動作状態は、ラッチ機構3とストライカ104を嵌合させることで、バックドア102の施錠動作を行うための閉状態(CLOSE状態)となる。
【0108】
セクタギア33が回動されると、ラッチ31は、ラッチピン36にセクタピン37を押し当てられて係合方向に回動され、直ちにハーフラッチ位置Pb2に到達する。
その結果、図6(b)に示すように、ラチェット32の掛止部32Cは、ラッチ本体部31Aの第一湾曲部31A4を乗り越えて、ハーフラッチ掛止部31A2を掛止した状態となり、ラチェット検出SW64がON状態に切り替る。
【0109】
その後、引き続きセクタギア33が回動されることで、ラッチ31は、フルラッチ位置Pb3に向かって係合方向に回動される。
その結果、ラチェット32は、再び解除方向に回動され、ラチェット検出SW64が、OFF状態に切り替る。
また、ラチェット検出SW64がOFF状態に切り替るのと略同時に、ラッチ31のラッチカム部31Cは、フルラッチ位置検出SW63から離脱する。これにより、フルラッチ位置検出SW63は、OFF状態に切り替る。
【0110】
そして、図6(c)に示すように、ラッチ31がフルラッチ位置Pb3に到達すると、ラチェット32の掛止部32Cは、ラッチ本体部31Aの第二湾曲部31A5を乗り越えて、フルラッチ掛止部31A3を掛止した状態となり、ラチェット検出SW64が再びON状態に切り替る。
【0111】
また、図7に示すように、ラッチ31がフルラッチ位置Pb3に到達した時間t2のタイミングによって、制御装置4は、ラッチ駆動モータ34への指示信号の送信を停止し、セクタギア33を施錠位置Pa2(図8を参照)にて停止させる。
つまり、ラッチ駆動モータ34の動作状態は、停止状態(OFF状態)となる。
これにより、ラッチ機構3による施錠動作が完了し、イベントE01が終了するとともに、続いて、所定の待ち時間(タイムラグ)であるイベントE02が経過した時間t3のタイミングによって、イベントE03が実行される。
【0112】
イベントE03が実行されると、制御装置4は、施錠位置Pa2に到達したセクタギア33を回動させて、中立位置Pa1に復帰させる「中立復帰動作」を開始する。
具体的には、制御装置4は、時間t3のタイミングをもって、当該ラッチ駆動モータ34に指示信号を送信し、セクタギア33を解錠側(図8を参照)に向って回動させる。
つまり、ラッチ駆動モータ34の動作状態は、ラッチ機構3を解錠させることで、バックドア102の解錠動作を行うための開状態(OPEN状態)となる。
【0113】
ここで、制御装置4の演算処理部41(図2を参照)には、中立位置検出SW61の故障の有無を判定する異常判定プログラムが格納されており、当該異常判定プログラムは、施錠位置Pa2から中立位置Pa1にセクタギア33が十分到達し得る所定時間(異常判定時間)が経過しても、中立位置検出SW61がON状態からOFF状態に切り替らない(即ち、セクタギア33を検知しない)ことをもって、当該中立位置検出SW61が異常状態であり、故障していると判断する。
【0114】
そして、制御装置4は、セクタギア33の解錠側への回動動作の開始と同時に、上記異常判定プログラムを実行し、セクタギア33の中立位置Pa1への中立復帰動作を行う。
【0115】
なお、上記の異常判定プログラムの判定方法については、本実施形態のみに限定されるものではなく、例えば、施錠位置Pa2から解錠側(図8を参照)に向って回動されるセクタギア33が、解錠位置Pa3に到達したことを検知しても、中立位置検出SW61がON状態からOFF状態に切り替らない(即ち、セクタギア33を検知しない)ことをもって、当該中立位置検出SW61が異常状態であり、故障していると判断することとしてもよい。
【0116】
また、例えば、中立位置検出SW61の故障状況が、ラッチ機構3の各動作に関わることなく、常にOFF状態となる場合、図7中の破線L1によって示されるように、セクタギア33の回動動作によって、セクタカム部33Cが中立位置検出SW61から離脱するのに十分な所定時間が、イベントE01が開始される時間t1より経過しても、中立位置検出SW61がOFF状態からON状態に切り替らない(即ち、セクタギア33を検知したままの状態が継続する)ことをもって、当該中立位置検出SW61が異常状態であり、故障していると判断することとしてもよい。
【0117】
さらに、上述の数種類の異常判定プログラムの判定方法を組み合わせてもよく、またこれらのうちひとつで異常判定をした際、その中立位置検出SW61の故障状況が解消されるまで、異常状態と判定し続けることとしてもよい。
例えば、常に中立位置検出SW61がOFF状態であることで異常判定を行った際は、次に中立位置検出SW61のON状態が検出されるまで異常と判定し続ける。
【0118】
セクタギア33の回動動作が進み、当該セクタギア33が中立位置Pa1(図8を参照)に到達しても、上述したように、本実施形態においては、中立位置検出SW61が故障しており、ON状態からOFF状態に切り替ることはない。
従って、上記中立復帰動作において、セクタギア33は、中立位置Pa1にて回動動作を停止することなく、当該中立位置Pa1を解錠側に向って通過することとなる。
【0119】
このように、セクタギア33が中立位置Pa1を通過した場合、上記異常判定プログラムにおける所定時間(異常判定時間)が経過した時間t4のタイミングによって、制御装置4は、「中立位置検出SW61が異常状態である(故障している)」と判断する。
そして、制御装置4は、中立位置検出SW61が異常状態であると判断すると、セクタギア33の回動動作を停止させることなく、引続きイベントE04を実行し、当該セクタギア33の回動動作を継続する(即ち、セクタギア33の中立位置Pa1への復帰操作を再度試みる「リトライ動作」を開始する)。
【0120】
なお、上記異常判定プログラムにおける所定時間(異常判定時間)をラッチ駆動モータ34の印加電圧の変動や、周囲の温度変化、ラッチ機構3の個体バラつきなどの想定し得る全ての影響を考慮した最長時間を設定した場合、動作時、これらの条件によっては時間t4が経過する前にセクタギア33が解錠位置Pa3まで回動する。即ちイベントE04が先に完了する。
このような場合、時間t4が経過する前(イベントE03が完了する前)であっても、中立位置Pa1を通り越し、その結果として、解錠位置Pa3まで到達したにも関わらず、中立位置検出SW61が、ON状態からOFF状態に切り替ることがなかったとして、イベントE03が完了しなくても、イベントE04が完了した時点で「中立位置検出SW61が異常状態である(故障している)」と判断する。
【0121】
また、中立位置検出SW61が正常状態にあり、施錠位置Pa2から回動されるセクタギア33が中立位置Pa1に到達した際、当該中立位置検出SW61がセクタギア33を検知して、ON状態からOFF状態に切り替った場合、制御装置4は、中立位置検出SW61の検知したタイミングによって、ラッチ駆動モータ34への指示信号の送信を停止して、セクタギア33の回動動作を停止させるとともに、当該セクタギア33の中立位置Pa1への復帰動作(中立復帰動作)を終了する。
【0122】
一方、制御装置4は、上記の時間t3のタイミングによって、直ちにPBDモータ23(図2を参照)に指示信号を送信し、バックドア102を閉方向に移動(回動)させる。
つまり、PBDモータ23の動作状態は、バックドア102の閉動作を行うための閉状態(CLOSE状態)となる。
これにより、ラッチ31は、ストライカ104を介してフルラッチ位置Pb3に保持された状態となり、ハーフラッチ位置検出SW62及びフルラッチ位置検出SW63は、ともにOFF状態を保持される。
【0123】
なお、バックドア102を閉方向に移動(回動)するタイミングについては、本実施形態のような時間t3、即ち、上記の「中立復帰動作を開始する時」に限定されるものではなく、例えば、時間t3から僅かに遅れた所定時間(t3+Δt)、即ち、「中立復帰動作中」であってもよい。
また、上述のように常に時間t3もしくは所定時間(t3+Δt)のタイミングから、PBDモータ23を閉状態に回動させてもよく、前述の異常判定プログラムが異常状態の判定を判定状態が継続している時にのみPBDモータ23を閉状態に回動させてもよい。
【0124】
イベントE04の実行により、セクタギア33の回動動作が進み、当該セクタギア33が、中立位置Pa1に対して解錠側へと回動されると、セクタピン37によってリリースレバー38が回動され、ラチェット32が解除方向へと回動される。
これにより、ラチェット検出SW64は、OFF状態に切り替る。
【0125】
そして、制御装置4は、ラチェット検出SW64がOFF状態に切り替わった時間t5のタイミングによって、セクタギア33が解錠位置Pa3に到達したと判断し、ラッチ駆動モータ34への指示信号の送信を停止して、セクタギア33の回動動作を停止させる。
つまり、ラッチ駆動モータ34の動作状態は、停止状態(OFF状態)となる。
これにより、イベントE04が終了し、続いて、所定の待ち時間(タイムラグ)であるイベントE05が経過した時間t6のタイミングによって、イベントE06が実行される。
【0126】
ところで、通常の場合、セクタギア33の回動動作によってラチェット32が解除方向に回動され、ラチェット検出SW64がOFF状態に切り替ると、ラッチ31は、当該ラチェット32による回動動作の規制から解放された状態となり、例えば、車体101の開口部101aと、バックドア102との間において、当該開口部101a(または、バックドア102)の周囲に沿って介在するウェザーストリップ(図示せず)の反力等の影響を受けて、ラッチ31は、即座に開放方向に回動され、フルラッチ位置検出SW63及びハーフラッチ位置検出SW62が、直ちに順にON状態に切り替ることとなる。
【0127】
しかしながら、本実施形態においては、上述したように、時間t3のタイミングによって開始された、PBDモータ23によるバックドア102の閉動作は、依然として継続された状態にあるため、イベントE03、及びイベントE04において、セクタギア33が施錠位置Pa2から解錠位置Pa3まで回動される間、ラッチ31は、バックドア102のストライカ104を介して、フルラッチ位置Pb3に保持された状態となっている。
従って、イベントE04において、セクタギア33が施錠位置Pa2から解錠位置Pa3まで回動されることにより、意図せず不意にバックドア102が開くことはない。
【0128】
なお、ラチェット検出SW64がOFF状態に切り替わったタイミングをもって、セクタギア33が所定の解錠位置Pa3に到達したと判断するのは、以下の理由による。
即ち、セクタギア33の回動動作によってラチェット32が解除方向に回動され、ラッチ31が、当該ラチェット32による回動動作の規制から解放された状態となっても、上述したように、PBDモータ23によるバックドア102の閉動作が依然として継続された状態にあるため、ラッチ31は、ストライカ104からの押力により、引き続き相対的に閉方向に力を受け続けることになり、開方向に回動しないため、通常の場合と異なり、フルラッチ位置検出SW63及びハーフラッチ位置検出SW62はOFF状態のままとなるためである。
【0129】
図8に示すように、本実施形態においては、中立位置検出SW61の異常状態が確認された時間t4のタイミングより、上記のリトライ動作を行う場合、制御装置4は、イベントE03及びイベントE04の実行に際して、施錠位置Pa2に到達したセクタギア33が、解錠位置Pa3に回動するまでの実回動時間ta(=t3~t5)を取得するように予め設定されており、取得した実回動時間taの情報は、記憶部42(図2を参照)に一時的に記憶される。
【0130】
そして、制御装置4は、上記の実回動時間taの情報を記憶部42から読出して、演算処理部41(図2を参照)によって、直ちに、セクタギア33が解錠位置Pa3から中立位置Pa1まで回動するのに要する時間である中立復帰時間Tを、実回動時間taに所定比率αを掛けることにより算出するように予め設定されており(T=ta×α)、算出された中立復帰時間Tの情報は、記憶部42に一時的に記憶される。
なお、上記の中立復帰時間Tは、後述するイベントE06によるリトライ動作を実行する際に用いられるリトライ時間である。
【0131】
図7に示すように、イベントE06が実行されると、制御装置4は、ラッチ駆動モータ34に指示信号を送信し、セクタギア33を再び施錠側に向って回動させる。
つまり、ラッチ駆動モータ34の動作状態は、再び閉状態(CLOSE状態)となる。
【0132】
セクタギア33の回動動作が進むと、リリースレバー38からセクタピン37が離れ、ラチェット32は、掛止方向へと回動される。
これにより、ラチェット検出SW64は、ON状態に切り替る。
【0133】
そして、時間t6から所定の上記中立復帰時間(リトライ時間)Tが経過した時間t7のタイミングによって、制御装置4は、ラッチ駆動モータ34への指示信号の送信を停止して、セクタギア33の回動動作を停止させる。
つまり、ラッチ駆動モータ34の動作状態は、停止状態(OFF状態)となる。
【0134】
また、制御装置4は、上記の時間t7のタイミングによって、直ちにPBDモータ23への指示信号の送信を停止して、バックドア102の閉動作を停止させる。
つまり、PBDモータ23の動作状態は、停止状態(OFF状態)となる。
【0135】
こうして、ラッチ駆動モータ34及びPBDモータ23の動作状態が、ともに停止状態(OFF状態)となることで、イベントE06が終了して「リトライ動作」が完了し、セクタギア33の位置が中立位置Pa1に復帰する。
【0136】
このように、本実施形態においては、たとえイベントE03による通常の「中立復帰動作」によって、セクタギア33の位置が中立位置Pa1に復帰しなかった場合であっても、その後のイベントE04~06による「リトライ動作」を行うことで、セクタギア33の位置を中立位置Pa1に復帰可能な構成となっている。
具体的には、中立位置Pa1を通過したセクタギア33を、解錠位置Pa3まで一旦回動させ(イベントE04)、その後、所定の中立復帰時間(リトライ時間)Tが経過するまでの間、解錠位置Pa3から施錠位置Pa2に向かって回動させる(イベントE06)リトライ動作を行うこととしている。
また、セクタギア33が施錠位置Pa2に到達し、通常の中立復帰動作(イベントE03)を開始する時(時間t3)から、或いは当該中立復帰動作中(所定時間(t3+Δt))から上記リトライ動作(イベントE04~E06)が完了する時(時間t7)までの間、駆動部2(PBDモータ23)の閉駆動を継続させることとしている。
【0137】
従って、本実施形態における開閉体制御装置1によれば、例えば、中立位置Pa1を通過したセクタギア33が解錠位置Pa3まで回動されることで、施錠動作の完了によって閉状態となっていたバックドア102が、一時的に開状態となることもなく、バックドア102の閉状態を確実に維持しつつ、リトライ動作によってセクタギア33を中立位置Pa1に復帰させることができる。
【0138】
[効果]
以上のように、本実施形態における開閉体制御装置1は、バックドア(開閉体)102を開閉駆動させる駆動部2と、ストライカ104と係合し、バックドア102を閉状態に保持する施錠動作、及びストライカ104を開放し、駆動部2によるバックドア102の開閉駆動を可能とする解錠動作を行うラッチ機構3と、駆動部2及びラッチ機構3の動作を制御する制御装置4とを備える。
【0139】
ここで、ラッチ機構3は、ストライカ104と係合した係合状態となるラッチ位置(ハーフラッチ位置Pb2及びフルラッチ位置Pb3)、及びストライカ104が離脱可能な状態となるアンラッチ位置Pb1の間を回動可能に設けられるラッチ31と、ラッチ31の回動動作を制御するセクタギア33とを有する。
また、セクタギア33は、ラッチ31をラッチ位置(ハーフラッチ位置Pb2及びフルラッチ位置Pb3)に保持する施錠位置Pa2、ラッチ31をアンラッチ位置Pb1に変位可能な状態とする解錠位置Pa2、及び施錠位置Pa2と解錠位置Pa3との間の中立位置Pa1に回動可能に設けられる。
【0140】
そして、制御装置4は、ラッチ機構3の施錠動作を行う場合、当該施錠動作の完了後に、施錠位置Pa2に到達したセクタギア33を回動させて中立位置Pa1に復帰させる中立復帰動作を行う。
この際、上記中立復帰動作においてセクタギア33が中立位置Pa1を通過した場合、解錠位置Pa3まで一旦回動させ(イベントE04)、その後、所定の中立復帰時間Tが経過するまでの間、解錠位置Pa3から施錠位置Pa2に向かってセクタギア33を回動させる(イベントE06)リトライ動作を行うとともに、セクタギア33が施錠位置Pa2に到達し、前記中立復帰動作を開始する時(時間t3)から、或いは前記中立復帰動作中(所定時間(t3+Δt))から上記リトライ動作が完了する時(時間t7)までの間、駆動部2のPBDモータ23による、バックドア102の閉駆動を継続させることを特徴としている。
【0141】
このように、本実施形態における開閉体制御装置1においては、施錠動作の完了後に中立復帰動作を行う際、例えば、中立位置検出SW61の故障によってセクタギア33が中立位置Pa1を通過した場合、当該セクタギア33は、引き続き解錠位置Pa3まで回動し、リトライ動作によって、所定の中立復帰時間Tが経過するまでの間、解錠位置Pa3から施錠位置Pa2に向かって回動される。
また、前記中立復帰動作を開始する時から、或いは前記中立復帰動作中から、前記リトライ動作が完了するまでの間、駆動部2は、バックドア102に対して閉駆動を継続させることとしている。
【0142】
従って、本実施形態における開閉体制御装置1によれば、例えば、中立位置Pa1を通過したセクタギア33が解錠位置Pa3まで回動されることで、施錠動作の完了によって閉状態となっていたバックドア102が、一時的に開状態となることもなく、バックドア102の閉状態を確実に維持しつつ、リトライ動作によってセクタギア33を中立位置Pa1に復帰させることができる。
【0143】
また、本実施形態における開閉体制御装置1において、制御装置4は、上記のリトライ動作において、再び施錠位置Pa2に到達したセクタギア33が、解錠位置Pa3に回動するまでの実回動時間taを取得し、当該実回動時間taに所定比率αを掛けることにより、前記中立復帰時間Tを算出する(T=ta×α)ことを特徴としている。
【0144】
ここで、セクタギア33が解錠位置Pa3から中立位置Pa1まで回動する際の回動時間は、例えば、当該セクタギア33を回動させるラッチ駆動モータ34の印加電圧の変化や、周囲の温度変化、ラッチ機構3の個体バラつきなどの影響を受けるためにばらつきが大きい。
しかしながら、セクタギア33が施錠位置Pa2と解錠位置Pa3との間を回動する際の総回動時間に対する上記回動時間の比率は、このようなラッチ駆動モータ34の印加電圧の変化や、周囲の温度変化、ラッチ機構3の個体バラつきなどの影響を受け難く、略一定である。
【0145】
このようなことから、本実施形態における開閉体制御装置1においては、施錠動作の完了後の中立復帰動作にてリトライ動作を行う場合、施錠位置Pa2から解錠位置Pa3までセクタギア33が回動する際の実回動時間taに所定比率αを掛けた中立復帰時間Tを算出し(T=ta×α)、セクタギア33を中立位置Pa1へと復帰させる際には、当該中立復帰時間Tが経過するまでの間、解錠位置Pa3から施錠位置Pa2に向かってセクタギア33を回動させることとしている。
従って、本実施形態の開閉体制御装置1によれば、リトライ動作によって、より正確に、セクタギア33を中立位置Pa1に復帰させることができる。
【0146】
また、本実施形態における開閉体制御装置1において、ラッチ機構3は、セクタギア33が中立位置Pa1に到達したことを検知する中立位置検出SW(中立位置検知手段)61を有する。
【0147】
そして、制御装置4は、中立復帰動作において、中立位置検出SW61が、施錠位置Pa2から回動されるセクタギア33を検知した場合、中立位置検出SW61の検知したタイミングによってセクタギア33の回動動作を停止する。
【0148】
一方、制御装置4は、所定時間が経過しても、或いは前記解錠位置に到達したことを検知しても、中立位置検出SW61がセクタギア33を検知しなかった場合、中立位置検出SW61が故障していると判断して、リトライ動作を行うことを特徴とする。
【0149】
このような構成を有することにより、本実施形態における開閉体制御装置1によれば、中立位置検出SW61の故障が継続している場合には、上述したリトライ動作によって、確実にセクタギア33を中立位置Pa1に復帰させることができるとともに、中立位置検出SW61の故障が改修された場合には、直ちに当該中立位置検出SW61によってセクタギア33を直接的に検知し、確実にセクタギア33を中立位置Pa1に復帰させることができる。
【符号の説明】
【0150】
1 開閉体制御装置
2 駆動部
3 ラッチ機構
4 制御装置
23 PBDモータ
31 ラッチ
33 セクタギア
61 中立位置検出SW(中立位置検知手段)
102 バックドア(開閉体)
104 ストライカ
Pa1 中立位置
Pa2 施錠位置
Pa3 解錠位置
Pb1 アンラッチ位置
Pb2 ハーフラッチ位置(ラッチ位置)
Pb3 フルラッチ位置(ラッチ位置)
T 中立復帰時間
ta 実回動時間
α 所定比率
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8