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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】車体後部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/04 20060101AFI20231025BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20231025BHJP
   B62D 25/08 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
B62D25/04 D
B62D25/20 F
B62D25/08 L
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020173534
(22)【出願日】2020-10-14
(65)【公開番号】P2022064732
(43)【公開日】2022-04-26
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】河津 政裕
(72)【発明者】
【氏名】安田 紘之
(72)【発明者】
【氏名】市川 佳
(72)【発明者】
【氏名】繪面 瞳
【審査官】大宮 功次
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/170739(WO,A1)
【文献】特開2007-186040(JP,A)
【文献】特開2019-014331(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/04
B62D 25/20
B62D 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア開口部の下方且つ車体前後方向に延設するサイドシルと、
前記ドア開口部の上方且つ車体前後方向に延設するルーフサイドレールと、
前記サイドシルの車体後方と前記ルーフサイドレールとを連結するクォータピラーと、
前記クォータピラーの一部を形成するリアホイールハウスと、を備え、
前記クォータピラーは、前記ドア開口部の縁部を形成するドア開口フランジを有する荷重支持部を備える車体後部構造において、
前記荷重支持部は、
前記サイドシルを補強し、前記クォータピラーの一部を形成するサイドシルスティフナと、
前記サイドシルスティフナに連続して設けられ、前記クォータピラーを補強するクォータピラースティフナと、
前記リアホイールハウスの上方に設けられ、前記クォータピラースティフナおよび前記ルーフサイドレールに接合されるダンパスティフナと、を備え、
前記サイドシルの車幅方向内側に連結され、車体後方に向かうにつれ上方に傾斜する屈曲部を有するリアサイドフレームを備え、
前記サイドシルスティフナは、前記サイドシルの後端且つ車幅方向外側に配置され、車幅方向外側に凸となるハット断面部を備え、
前記ハット断面部は、車体後方に向かうにつれ車幅方向内側に傾斜する傾斜壁を設け、
前記傾斜壁の後端は、前記リアサイドフレームの前記屈曲部よりも車体前方に配置し、
前記サイドシルスティフナは、
前記ハット断面部よりも車体後方に設けられて車幅方向内側に凸となる凹形断面部を備え、
前記ハット断面部および前記凹形断面部は、
上部において車体前後方向に連続して設けられて前記ドア開口フランジを形成するサイドシルスティフナフランジと、
前記サイドシルスティフナフランジの下方において車体前後方向に連続して設けられて前記ドア開口部の稜線を形成するサイドシルスティフナ稜線部と、を有し、
前記サイドシルスティフナ稜線部は、
前記サイドシルスティフナフランジに対して上面視で交差するように連続して設けられる、
ことを特徴とする車体後部構造。
【請求項2】
前記ダンパスティフナは、ダンパスティフナ本体部と、ダンパスティフナフランジ部と、を備え、
前記ダンパスティフナフランジ部は、
車体前方側の第1ダンパフランジが前記ドア開口フランジの上部に設けられ、
車体後方側の第2ダンパフランジおよび車体上方側の第3ダンパフランジの少なくとも一方が前記ルーフサイドレールに接合されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の車体後部構造。
【請求項3】
前記荷重支持部は、
前記サイドシルスティフナの前端から前記ルーフサイドレールまで連続して延設する少なくとも1つのサイドシルスティフナ稜線部を備える、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車体後部構造。
【請求項4】
前記サイドシルスティフナは、前記傾斜壁よりも車体後方に前記リアサイドフレームに接合される溶接部を設け、
前記溶接部は、車体前後方向において前記屈曲部よりも車体前方位置および重なる位置の少なくとも一方に設けられる、
ことを特徴とする請求項に記載の車体後部構造。
【請求項5】
前記リアサイドフレームは、
車体後方に延びるフレーム本体部と、
前記サイドシルに連結され、前記屈曲部が形成された連結部と、を備え、
前記連結部は、
前記屈曲部よりも車体前方側の下面部が、前記ハット断面部の下面部と上下方向において重なる、
ことを特徴とする請求項または請求項に記載の車体後部構造。
【請求項6】
前記サイドシルスティフナは、前記ハット断面部の下稜線部を形成し、且つ車体前後方向へ延びるサイドシルスティフナ下稜線部を有し、
前記サイドシルスティフナ下稜線部は、
前記傾斜壁よりも車体後方に配置され、且つ車体後方へ向けて上方に傾斜する傾斜稜線部を有する、
ことを特徴とする請求項から請求項のいずれか1項に記載の車体後部構造。
【請求項7】
前記傾斜稜線部は、側面視にて前記リアサイドフレームの前記屈曲部の形状に沿って傾斜する、
ことを特徴とする請求項に記載の車体後部構造。
【請求項8】
ドア開口部の下方且つ車体前後方向に延設するサイドシルと、
前記ドア開口部の上方且つ車体前後方向に延設するルーフサイドレールと、
前記サイドシルの車体後方と前記ルーフサイドレールとを連結するクォータピラーと、
前記クォータピラーの一部を形成するリアホイールハウスと、を備え、
前記クォータピラーは、前記ドア開口部の縁部を形成するドア開口フランジを有する荷重支持部を備える車体後部構造において、
前記荷重支持部は、
前記サイドシルを補強し、前記クォータピラーの一部を形成するサイドシルスティフナと、
前記サイドシルスティフナに連続して設けられ、前記クォータピラーを補強するクォータピラースティフナと、
前記リアホイールハウスの上方に設けられ、前記クォータピラースティフナおよび前記ルーフサイドレールに接合されるダンパスティフナと、を備え、
前記ダンパスティフナは、前記クォータピラーに沿って傾斜する前辺、後辺、上辺、および下辺により側面視において台形状に形成され、
前記下辺は前記リアホイールハウスに接合され、前記前辺および前記後辺はダンパハウジングに接合され、上辺は前記ルーフサイドレールに接合される、
ことを特徴とする車体後部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体後部構造として、例えば、ロッカアウタリンフォース、クォータロックピラーリンフォース、およびクォータピラーリンフォースの3部材を接合する構造が開示されている。この車体後部構造によれば、3部材のリンフォースを接合することにより、クォータピラーの剛性を向上させて、結合箇所の変形を抑制することが可能である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、車体後部構造として、例えば、サイドシルとリアホイールハウスを連結するサイドシル補強部材を備え、サイドシル補強部材の稜線とリアホイールハウス補強部材の稜線が連続する構造が開示されている。この車体後部構造によれば、ドア開口部の剛性を向上するとともに車体のねじり剛性を高めることが可能である(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-43765号公報
【文献】特許第6540237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車体後部構造は、例えば、車体にねじれが生じた場合、サイドシルとルーフサイドレールに曲げが発生し、クォータピラーのドア開口フランジに引張荷重が入力される。しかし、特許文献1の車体後部構造は、リンフォース部材間の結合箇所やクォータピラーリンフォース周辺でリアドア開口部まで補強できていないため、クォータピラーの引張荷重を十分に支持することが難しくなることが考えられる。
【0006】
また、車体後部構造において、例えば、外板にアルミ合金製のパネルを適用すると、外板の面剛性低下によりボディ剛性が低下する。このため、ボディ剛性のリカバリが必要となる。しかし、特許文献2の車体後部構造は、サイドシルとクォータピラー間のドア開口部のみにしか荷重伝達経路を備えていない。このため、車体のねじりによって発生する引張荷重を十分に支持することが難しくなることが考えられる。
【0007】
本発明は、車体のねじれに対して、車体後部の剛性を向上することができる車体後部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
(1)本発明に係る車体後部構造は、ドア開口部(例えば、実施形態のドア開口部20)の下方且つ車体前後方向に延設するサイドシル(例えば、実施形態のサイドシル12)と、前記ドア開口部の上方且つ車体前後方向に延設するルーフサイドレール(例えば、実施形態のルーフサイドレール14)と、前記サイドシルの車体後方と前記ルーフサイドレールとを連結するクォータピラー(例えば、実施形態のクォータピラー15)と、前記クォータピラーの一部を形成するリアホイールハウス(例えば、実施形態のリアホイールハウス16)と、を備え、前記クォータピラーは、前記ドア開口部の縁部を形成するドア開口フランジ(例えば、実施形態のドア開口ピラーフランジ29)を有する荷重支持部(例えば、実施形態の荷重支持部30)を備える車体後部構造(例えば、実施形態の車体後部構造10)において、前記荷重支持部は、前記サイドシルを補強し、前記クォータピラーの一部を形成するサイドシルスティフナ(例えば、実施形態のサイドシルスティフナ31)と、前記サイドシルスティフナに連続して設けられ、前記クォータピラーを補強するクォータピラースティフナ(例えば、実施形態のクォータピラースティフナ32)と、前記リアホイールハウスの上方に設けられ、前記クォータピラースティフナおよび前記ルーフサイドレールに接合されるダンパスティフナ(例えば、実施形態のダンパスティフナ33)と、を備えている。
【0009】
ここで、車体にねじれが生じた場合、サイドシルとルーフサイドレールとに曲げが発生し、それによりクォータピラーが引っ張られてクォータピラーに引張荷重が入力する。
そこで、この構成によれば、クォータピラーの荷重支持部を、サイドシルスティフナ、クォータピラースティフナ、およびダンパスティフナの接合により形成した。さらに、荷重支持部は、ドア開口部の縁部を形成するドア開口フランジを有する。
【0010】
よって、ドア開口フランジの剛性を荷重支持部により確保できる。また、ドア開口フランジによりドア開口部(クォータピラー)の縁部が形成されている。よって、クォータピラーの剛性がドア開口フランジにより確保されている。これにより、クォータピラーに入力された引張荷重を、荷重支持部(すなわち、ドア開口フランジ)により十分に支持できる。
さらに、クォータピラーを補強する部材にダンパスティフナを用いた。ダンパスティフナは、ルーフサイドレールに接合されている。よって、クォータピラーに集中する引張荷重を、ルーフサイドレールおよび車体後部に分散することができる。
【0011】
このように、クォータピラーに入力された引張荷重を、荷重支持部(すなわち、ドア開口フランジ)により十分に支持し、さらに、クォータピラーに集中する引張荷重をルーフサイドレールおよび車体後部に分散できる。これにより、例えば、車体のねじれに対して、車体後部の剛性を向上することができる。
【0012】
(2)前記ダンパスティフナは、ダンパスティフナ本体部(例えば、実施形態のダンパスティフナ本体部81)と、ダンパスティフナフランジ部(例えば、実施形態のダンパスティフナフランジ部82)と、を備え、前記ダンパスティフナフランジ部は、車体前方側の第1ダンパフランジ(例えば、実施形態の第1ダンパフランジ86)が前記ドア開口フランジに接合され、車体後方側の第2ダンパフランジ(例えば、実施形態の第2ダンパフランジ87)および車体上方側の第3ダンパフランジ(例えば、実施形態の第3ダンパフランジ88)の少なくとも一方が前記ルーフサイドレールに接合されていてもよい。
【0013】
この構成によれば、ダンパスティフナフランジ部の第1ダンパフランジをクォータピラーの上部に設けた。これにより、クォータピラーを第1ダンパフランジで補強することにより、クォータピラーの剛性を確保できる。
また、ダンパスティフナフランジ部の第2ダンパフランジ、第3ダンパフランジをルーフサイドレールに接合した。よって、クォータピラーのドア開口フランジに入力した荷重を、ダンパスティフナおよびルーフサイドレールを経て車体後方に伝達することができる。これにより、クォータピラーとルーフサイドレールとの接続部にかかる荷重を緩和することができ、車体後部の剛性を向上することができる。
【0014】
(3)前記荷重支持部は、前記サイドシルスティフナの前端から前記ルーフサイドレールまで連続して延設する少なくとも1つの荷重支持稜線部(例えば、実施形態の第1荷重支持稜線部101、第2荷重支持稜線部102)を備えていてもよい。
【0015】
この構成によれば、サイドシルスティフナの前端からルーフサイドレールまで、少なくとも1つのサイドシルスティフナ稜線部を連続して延設した。また、第1ダンパフランジはクォータピラーの上部に接合されている。さらに、ダンパスティフナフランジ部の第2ダンパフランジ、第3ダンパフランジはルーフサイドレールに接合されている。
よって、クォータピラーに入力した荷重を、ルーフサイドレールにサイドシルスティフナ稜線部を経て伝達し、ルーフサイドレールに伝達された荷重を、車体後方にルーフサイドレールを経て伝達できる。これにより、クォータピラーとルーフサイドレールとの接続部にかかる荷重を緩和することができ、車体後部の剛性を向上することができる。
【0016】
(4)前記サイドシルの車幅方向内側に連結され、車体後方に向かうにつれ上方に傾斜する屈曲部(例えば、実施形態の屈曲部25)を有するリアサイドフレーム(例えば、実施形態のリアサイドフレーム13)を備え、前記サイドシルスティフナは、前記サイドシルの後端且つ車幅方向外側に配置され、車幅方向外側に凸となるハット断面部(例えば、実施形態のハット断面部41)を備え、前記ハット断面部は、車体後方に向かうにつれ車幅方向内側に傾斜する傾斜壁(例えば、実施形態のハット傾斜側壁51)を設け、前記傾斜壁の後端(例えば、実施形態の後端51a)は、前記リアサイドフレームの前記屈曲部よりも車体前方に配置されていてもよい。
【0017】
この構成によれば、ハット断面部の傾斜壁を車幅方向内側に傾斜させることにより、リアサイドフレームに向けて配置できる。さらに、傾斜壁の後端をリアサイドフレームの屈曲部よりも車体前方に配置した。ハット断面部はサイドシルに連結されている。よって、車体のねじれにより発生する荷重をサイドシルからハット断面部の傾斜壁を経てリアサイドフレームに効率よく伝達できる。
また、ハット断面部を有するサイドシルスティフナは、クォータピラーに連結されている。これにより、車体のねじれによりサイドシルに発生する荷重を、クォータピラーとリアサイドフレームとで支持でき、サイドシルの曲げ剛性(すなわち、車体後部の剛性)を向上することができる。
【0018】
(5)前記サイドシルスティフナは、前記傾斜壁よりも車体後方に前記リアサイドフレームに接合される溶接部(例えば、実施形態の溶接部42)を設け、前記溶接部は、車体前後方向において前記屈曲部よりも車体前方位置および重なる位置の少なくとも一方に設けられていてもよい。
【0019】
この構成によれば、サイドシルスティフナをリアサイドフレームに溶接部で接合し、溶接部を傾斜壁よりも車体後方に設けた。また、溶接部を屈曲部よりも車体前方位置および重なる位置の少なくとも一方に設けた。これにより、サイドシルに入力した荷重を、溶接部を経て一層効率よくリアサイドフレームに伝達することができる。
【0020】
(6)前記リアサイドフレームは、車体後方に延びるフレーム本体部(例えば、実施形態のフレーム本体部23)と、前記サイドシルに連結され、前記屈曲部が形成された連結部(例えば、実施形態の連結部22)と、を備え、前記連結部は、前記屈曲部よりも車体前方側の下面部(例えば、実施形態の前下部24a)が、前記ハット断面部の下面部(例えば、実施形態のハット下部53)と上下方向において重なるようにしてもよい。
【0021】
この構成によれば、連結部の下面部を、屈曲部よりも車体前方側で、ハット断面部の下面部と上下方向において重なるようにした。よって、ハット断面の下面部を、屈曲部よりも車体前方側で、連結部の下面部と同一高さに設定できる。これにより、サイドシルに入力した荷重を、ハット断面部を経て一層効率よくリアサイドフレームに伝達することができる。
【0022】
(7)前記サイドシルスティフナは、前記ハット断面部の下稜線部を形成し、且つ車体前後方向へ延びるサイドシルスティフナ下稜線部(例えば、実施形態のサイドシルスティフナ下稜線部43)を有し、前記サイドシルスティフナ下稜線部は、前記傾斜壁よりも車体後方に配置され、且つ車体後方へ向けて上方に傾斜する傾斜稜線部(例えば、実施形態の第2下稜線部66)を有していてもよい。
【0023】
この構成によれば、サイドシルスティフナ下稜線部に傾斜稜線部を備え、傾斜稜線部を傾斜壁の車体後方に配置した。さらに、傾斜稜線部を車体後方へ向けて上方に傾斜させた。よって、例えば、サイドシルに入力した荷重の一部を、リアサイドフレームに伝達しきれなかった場合でも、傾斜稜線部を介してクォータピラーへ伝達できる。すなわち、サイドシルに入力した荷重を、リアホイールハウスに伝達することなく、リアサイドフレームおよびクォータピラーで支持できる。
【0024】
ここで、リアホイールハウスは、車体の骨格を形成するサイドシル、ルーフサイドレール、クォータピラーなどと比べて剛性が抑えられている。これにより、サイドシルに入力した荷重を、リアホイールハウスに伝達することなく、リアサイドフレームおよびクォータピラーで支持することにより、車体後部の剛性を向上することができる。
【0025】
(8)前記傾斜稜線部は、側面視にて前記リアサイドフレームの前記屈曲部の形状に沿って傾斜していてもよい。
【0026】
この構成によれば、リアサイドフレームの屈曲部の形状に沿って傾斜稜線部を傾斜させた。これにより、例えば、サイドシルに入力した荷重を、リアサイドフレームに傾斜稜線部を経て伝達できる。
【0027】
(9)前記サイドシルスティフナは、前記ハット断面部よりも車体後方に設けられて車幅方向内側に凸となる凹形断面部(例えば、実施形態の凹形断面部44)を備え、前記ハット断面部および前記凹形断面部は、上部において車体前後方向に連続して設けられて前記ドア開口フランジを形成するサイドシルスティフナフランジ(例えば、実施形態のサイドシルスティフナ上フランジ45)と、前記サイドシルスティフナフランジの下方において車体前後方向に連続して設けられて前記ドア開口部の稜線を形成するサイドシルスティフナ稜線部(例えば、実施形態の第2サイドシルスティフナ上稜線部47)と、を有し、前記サイドシルスティフナ稜線部は、前記サイドシルスティフナフランジに対して上面視で交差するように連続して設けられていてもよい。
【0028】
この構成によれば、サイドシルスティフナにサイドシルスティフナ稜線部とサイドシルスティフナフランジとを設けた。また、サイドシルスティフナ稜線部でドア開口部の稜線を形成し、サイドシルスティフナフランジでドア開口フランジを形成した。さらに、サイドシルスティフナ稜線部をサイドシルスティフナフランジに対して上面視で交差するように連続して設けた。
ここで、サイドシルスティフナは、剛性の高いクォータピラーに連続するように設けられている。これにより、サイドシルに入力した荷重を、サイドシルスティフナのサイドシルスティフナ稜線部とサイドシルスティフナフランジとを経て、剛性の高いクォータピラーのドア開口部に効率よく伝達できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、クォータピラーの荷重支持部を、サイドシルスティフナ、クォータピラースティフナ、およびダンパスティフナの接合により形成した。これにより、車体のねじれに対して、車体後部の剛性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明に係る一実施形態の車体後部構造を示す側面図である。
図2】一実施形態の車体後部構造を車体後方の左下方からみた斜視図である。
図3】一実施形態の車体後部構造を下方からみた底面図である。
図4図1のIV部を拡大した側面図である。
図5】一実施形態の車体後部構造に備える荷重支持部を個別に想像線で示す側面図である。
図6図4のVI部を拡大した側面図である。
図7図6のVII-VII線に沿って破断した斜視図である。
図8図6のVIII-VIII線に沿って破断した斜視図である。
図9】一実施形態の車体後部構造を車体前方の左上方からみた斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る車体後部構造を説明する。図面において、矢印FRは車両の前方、矢印UPは車両の上方、矢印LHは車両の左側方を示す。なお、車両は、用途や種類等は特に限定されないが、一実施形態として自動車を例に説明する。
【0032】
<車両>
図1図2に示すように、車両Veは、例えば、車両の後部に車体後部構造10を備えている。車体後部構造10は、概ね左右対称に構成されているので、以下、左側の構成について詳しく説明して右側の構成の説明を省略する。
【0033】
<車体後部構造>
車体後部構造10は、例えば、サイドシル12と、リアサイドフレーム13と、ルーフサイドレール14と、クォータピラー15と、リアホイールハウス16と、を備えている。車体後部構造10は、サイドシル12、ルーフサイドレール14、センタピラー18、およびクォータピラー15によりリアドア開口部20が形成されている。以下、リアドア開口部20を「ドア開口部20」と略記する。
ドア開口部20は、リアサイドドア(図示せず)により開閉され、例えば、リアサイドドアが開いた状態で乗員の乗降に使用される。
【0034】
サイドシル12は、車幅方向の左外側下部において、ドア開口部20の下方且つ、フロア(図示せず)の左側辺に沿って車体前後方向に延設されている。サイドシル12は、ドア開口部20の下部を形成している。サイドシル12は、例えば、断面矩形体の中空閉断面に形成された剛性の高い部材であり、車体の骨格を構成している。
【0035】
リアサイドフレーム13は、サイドシル12の後端部において車幅方向内側に連結されている。リアサイドフレーム13は、例えば、サイドシル12の後端部から車体後方へ向かうにつれて車幅方向内側に傾斜されている。リアサイドフレーム13は、例えば、断面矩形体の中空閉断面に形成された剛性の高い部材であり、車体の骨格を構成している。
【0036】
図2図3に示すように、リアサイドフレーム13は、連結部22と、フレーム本体部23と、を備えている。連結部22は、サイドシル12の後端部において車幅方向内側に連結されている。連結部22は、連結下部24に屈曲部25を有する。
屈曲部25は、サイドシル12の後端部において車幅方向内側に連結されている。屈曲部25は、折り曲げ部25aから車体後方に向かうにつれて上方に傾斜されている。
連結部22にフレーム本体部23の前端部が連結されている。フレーム本体部23は、連結部22から車体後方へむかうにつれて車幅方向内側に向けて傾斜されるように延びている。
【0037】
図1に戻って、ルーフサイドレール14は、ドア開口部20の上方且つ、車幅方向の左外側上部においてルーフ(図示せず)の左側辺に沿って車体前後方向に延設されている。ルーフサイドレール14は、ドア開口部20の上部を形成している。ルーフサイドレール14は、例えば、中空閉断面に形成された剛性の高い部材であり、車体の骨格を構成している。
センタピラー18は、クォータピラー15の車体前方に間隔をあけて配置され、ドア開口部20の前部を形成している。サイドシル12とルーフサイドレール14とを連結する剛性の高い部材であり、車体の骨格を構成している。センタピラー18には、ドア開口部20を開閉するリアサイドドアがヒンジ(図示せず)を介して支持されている。
【0038】
クォータピラー15は、サイドシル12の後端部(すなわち、サイドシル12の車体後方)とルーフサイドレール14とを連結する剛性の高い部材であり、車体の骨格を構成している。クォータピラー15は、クォータピラー本体28を備えている。クォータピラー本体28は、サイドシル12の後端部からルーフサイドレール14まで上方に向うにつれて車体後方へ傾斜するように直線状に延び、ドア開口部20の後部を形成している。
また、クォータピラー15は、荷重支持部30を備えている。荷重支持部30については、後で詳しく説明する。
リアホイールハウス16は、クォータピラー15の車体後方に設けられて後輪の上方を覆う部材である。
【0039】
<荷重支持部>
図4図5に示すように、荷重支持部30は、ドア開口部20のうちクォータピラー15(具体的には、クォータピラー本体28)に対応するドア開口ピラーフランジ(ドア開口フランジ)29を有する。ドア開口ピラーフランジ29は、ドア開口部20のうちクォータピラー本体28に対応する部位のピラー縁部(縁部)を形成する。すなわち、ドア開口ピラーフランジ29は、クォータピラー本体28のピラー縁部を形成する。
荷重支持部30は、サイドシルスティフナ31と、クォータピラースティフナ32と、ダンパスティフナ33と、を備えている。
【0040】
(サイドシルスティフナ)
図6図7に示すように、サイドシルスティフナ31は、サイドシル12の後端部に設けられて、サイドシル12の後端部の一部を形成する部材である。また、サイドシルスティフナ31は、クォータピラー本体28の一部(具体的には、下部)を形成する部材である。すなわち、サイドシルスティフナ31は、サイドシル12の一部(後部)、およびクォータピラー本体28の一部(下部)を構成する部材であり、サイドシル12の後部およびクォータピラー本体28の下部を補強する部材である。
サイドシルスティフナ31は、ハット断面部41と、溶接部42と、サイドシルスティフナ下稜線部43と、凹形断面部44と、サイドシルスティフナ上フランジ(サイドシルスティフナフランジ)45と、第1サイドシルスティフナ上稜線部46と、第2サイドシルスティフナ上稜線部(サイドシルスティフナ稜線部)47と、中央側壁48と、サイドシルスティフナ下フランジ49と、を備えている。
【0041】
ハット断面部41は、サイドシル12の後端部(後端)且つ、インナパネル57に対して車幅方向外側に配置されている。さらに、ハット断面部41は、車幅方向外側へ向けて凸となるように形成されている。
具体的には、ハット断面部41は、例えば、ハット傾斜側壁(傾斜壁)51と、ハット上部52と、ハット下部(ハット断面部41の下面部)53と、ハット上フランジ54と、ハット下フランジ55と、を有する。
【0042】
ハット傾斜側壁51は、サイドシル12のインナパネル57に対して車幅方向外側に間隔をあけて鉛直に配置されている。ハット傾斜側壁51は、サイドシル12のアウタパネル58の後端部58aから車体後方の中央側壁48に向かうにつれて車幅方向内側に傾斜するように形成されている。中央側壁48は、ハット断面部41と凹形断面部44との間に介在され、車体前後方向に向けて鉛直に配置されている。
すなわち、ハット傾斜側壁51は、車体前後方向に向かうにつれてインナパネル57からの間隔Lが小さくなるように傾斜されている。さらに、ハット傾斜側壁51は、車幅方向内側に傾斜されることにより、リアサイドフレーム13に向けて配置されている。
【0043】
ハット上部52は、ハット傾斜側壁51の上辺から車幅方向内側に向けて折り曲げられている。ハット下部53は、ハット傾斜側壁51の下辺から車幅方向内側に向けて折り曲げられている。よって、ハット傾斜側壁51、ハット上部52、およびハット下部53は、車幅方向外側へ向けて突出する断面U字状に形成される。
【0044】
ハット上フランジ54は、ハット上部52の内辺から上方へ向けて折り曲げられている。ハット上フランジ54は、例えば、インナパネル57のインナ上フランジ57aに、スポット溶接で接合されている。
ハット下フランジ55は、ハット下部53の内辺から下方へ向けて折り曲げられている。ハット下フランジ55は、例えば、インナパネル57のインナ下フランジ57bに、スポット溶接で接合されている。ハット下フランジ55は、サイドシルスティフナ下フランジ49の前側部を形成する。
よって、ハット断面部41は、インナパネル57に車幅方向外側から接合されている。
【0045】
ハット断面部41は、ハット傾斜側壁51、ハット上部52、ハット下部53、ハット上フランジ54、およびハット下フランジ55により、車幅方向外側に凸となるように断面ハット状に形成されている。
ハット断面部41は、ハット傾斜側壁51とハット上部52との交差部によりハット上稜線部61が形成されている。さらに、ハット断面部41は、ハット傾斜側壁51とハット下部53との交差部によりハット下稜線部(下稜線部)63が形成されている。
【0046】
また、中央側壁48は、下辺に沿って第1下稜線部65および第2下稜線部(傾斜稜線部)66が形成されている。第1下稜線部65および第2下稜線部66は、中央側壁48の下辺と中央下部48aとの交差部により形成されている。中央下部48aは、例えば、インナパネル57のインナ下フランジ57bに接合されている。
第1下稜線部65は、ハット下稜線部63の後端63aから車体後方に向けてハット下稜線部63の延長方向(すなわち、水平方向)に延びている。
第2下稜線部66は、第1下稜線部65の後端65aから車体後方に向うにつれて上方に傾斜するように延びている。具体的には、第2下稜線部66は、ハット傾斜側壁51よりも車体後方に配置され、側面視にてリアサイドフレーム13の屈曲部25(図2参照)の形状に沿って車体後方へ向けて上方(すなわち、クォータピラー本体28)へ向けて傾斜するように延びている。
【0047】
ここで、ハット下稜線部63、第1下稜線部65、および第2下稜線部66により、サイドシルスティフナ下稜線部43が形成されている。サイドシルスティフナ下稜線部43は、サイドシルスティフナ31の下部に沿って車体前後方向へ延びるように形成されている。
すなわち、サイドシルスティフナ下稜線部43は、前半部に形成されるハット下稜線部63と、後半部に形成される第1下稜線部65および第2下稜線部66と、を有する。
また、サイドシルスティフナ下稜線部43は、サイドシル12のサイドシル下稜線部67に連通されている。
【0048】
図2図3に戻って、ハット傾斜側壁51の後端51aは、リアサイドフレーム13の屈曲部25よりも車体前方に配置されている。また、ハット傾斜側壁51は、リアサイドフレーム13に向けて傾斜されている。さらに、ハット断面部41はサイドシル12に連結されている。これにより、例えば、車体のねじれにより発生する荷重をサイドシル12からハット断面部41のハット傾斜側壁51を経てリアサイドフレーム13に矢印Aの如く効率よく伝達できる。
【0049】
また、サイドシルスティフナ31は、クォータピラー本体28の下部を形成している。これにより、車体のねじれによりサイドシル12に発生する荷重を、クォータピラー15とリアサイドフレーム13とで支持でき、サイドシル12の曲げ剛性(すなわち、車体後部の剛性)を向上することができる。
【0050】
図2図6に示すように、溶接部42は、サイドシルスティフナ下フランジ49の後端部に設けられている。溶接部42は、ハット傾斜側壁51よりも車体後方に位置している。溶接部42は、リアサイドフレーム13の連結部22のうち連結フランジ22aに、例えばインナパネル57のインナ下フランジ57b(図8参照)を介してスポット溶接で接合される部位である。
【0051】
溶接部42は、車体前後方向において屈曲部25よりも車体前方位置および屈曲部25に重なる位置に設けられている。これにより、例えば、車体のねじれによりサイドシル12に入力した荷重を、溶接部42を経てリアサイドフレーム13に矢印A(図3参照)の如く一層効率よく伝達することができる。
なお、実施形態では、溶接部42を屈曲部25よりも車体前方位置と、屈曲部25に重なる位置とに設けた例について説明するが、これに限らない。その他の例として、例えば、溶接部42を屈曲部25よりも車体前方位置と、屈曲部25に重なる位置とのいずれか一方に設けてもよい。
【0052】
図6図7に示すように、ハット断面部41は、ハット下部53が、連結部22の連結下部24のうち前下部24aと上下方向において重なるように配置されている。連結部22の前下部24aは、屈曲部25よりも車体前方側の下面部である。
よって、ハット下部53を、屈曲部25よりも車体前方側で、連結部22の前下部24aに対して同一高さに設定できる。これにより、例えば、車体のねじれによりサイドシル12に入力した荷重を、ハット断面部41を経てリアサイドフレーム13に矢印A(図3参照)の如く一層効率よく伝達することができる。
【0053】
さらに、前述したように、第2下稜線部66をハット傾斜側壁51よりも車体後方に配置し、第2下稜線部66を屈曲部25(図2参照)の形状に沿って車体後方へ向けて上方(クォータピラー本体28)へ向けて傾斜させた。よって、例えば、車体のねじれによりサイドシル12に入力した荷重の一部を、リアサイドフレーム13に伝達しきれなかった場合でも、第2下稜線部66を経てクォータピラー本体28へ矢印Bの如く伝達できる。すなわち、サイドシル12に入力した荷重を、リアホイールハウス16に伝達することなく、リアサイドフレーム13およびクォータピラー15(特に、クォータピラー本体28)で支持できる。
【0054】
ここで、リアホイールハウス16は、車体の骨格を形成するサイドシル12、ルーフサイドレール14(図4参照)、クォータピラー15などと比べて剛性が抑えられている。これにより、例えば、車体のねじれによりサイドシル12に入力した荷重を、リアホイールハウス16に伝達することなく、リアサイドフレーム13およびクォータピラー本体28で支持することにより、車体後部の剛性を向上することができる。
【0055】
加えて、前述したように、第2下稜線部66をリアサイドフレーム13の屈曲部25の形状に沿って傾斜させた。これにより、例えば、サイドシル12に入力した荷重を、リアサイドフレーム13に第2下稜線部66を経て矢印C(図3参照)の如く伝達できる。
【0056】
図2図6に示すように、凹形断面部44は、ハット断面部41よりも車体後方に設けられて、且つ車幅方向内側に凸(すなわち、車幅方向外側に凹)となるように形成されている。
凹形断面部44は、例えば、凹形側壁71と、凹形上部72と、凹形上稜線部73と、凹形下部74と、凹形フランジ75と、を有する。
【0057】
凹形側壁71は、中央側壁48に対して車幅方向内側に間隔をあけて配置されている。凹形側壁71は、例えば、リアホイールハウス16に接合されている。
凹形上部72は、凹形側壁71の上辺から車幅方向外側に向けて折り曲げられている。凹形上部72は、ハット上部52の後端52aに連続して形成され、車体後方に向かうにつれて上方に傾斜するように延びている。
【0058】
凹形上稜線部73は、凹形側壁71と凹形上部72との交差部により形成されている。凹形上稜線部73は、ハット上稜線部61の後端61aに連続して形成され、車体後方に向かうにつれて上方に傾斜するように延びている。
凹形下部74は、例えば、凹形側壁71の下辺から車幅方向外側に向けて、中央側壁48まで水平に折り曲げられている。中央側壁48は、凹形下部74の外辺から下方へ向けて折り曲げられている。
【0059】
凹形フランジ75は、凹形上部72の外辺から上方へ向けて立ち上げられている。凹形フランジ75は、ハット上フランジ54の後端54aに連続して形成され、且つ車体後方に向かうにつれて上方に傾斜するように延びている。凹形フランジ75は、例えば、ハット上フランジ54と同様に、インナパネル57のインナ上フランジ57a(双方、図8参照)に、例えば、スポット溶接で接合されている。
なお、凹形断面部44(すなわち、凹形側壁71、凹形上部72、凹形下部74、および凹形フランジ75)は、中央側壁48ととともに、車幅方向内側に突出するハット断面部を形成する。
【0060】
図6図9に示すように、ハット上フランジ54および凹形フランジ75によりサイドシルスティフナ上フランジ45が形成されている。サイドシルスティフナ上フランジ45は、サイドシルスティフナ31の上部(上方)において車体前後方向に連続して設けられている。サイドシルスティフナ上フランジ45は、ドア開口ピラーフランジ29の下部(一部)を形成する。
サイドシルスティフナ上フランジ45の下辺には、第1サイドシルスティフナ上稜線部46が形成されている。
【0061】
また、第1サイドシルスティフナ上稜線部46に対して車体前後方向において交差するように第2サイドシルスティフナ上稜線部47が延びている。
第2サイドシルスティフナ上稜線部47は、前半部がハット上稜線部61で形成され、後半部が凹形上稜線部73で形成されている。第2サイドシルスティフナ上稜線部47は、サイドシルスティフナ上フランジ45の下方において車体前後方向に連続して設けられ、クォータピラー本体28の第2荷重支持稜線部102(後述する)の下部(一部)を形成する。
【0062】
第2サイドシルスティフナ上稜線部47は、サイドシルスティフナ上フランジ45(すなわち、第1サイドシルスティフナ上稜線部46)に対して上面視において交差部78で交差するように連続して設けられている。
また、第1サイドシルスティフナ上稜線部46は、サイドシル12の第1サイドシル上稜線部68に連通されている。第2サイドシルスティフナ上稜線部47は、サイドシル12の第2サイドシル上稜線部69に連通されている。
第2サイドシルスティフナ上稜線部47をサイドシルスティフナ上フランジ45に対して交差させた理由については後で詳しく説明する。
【0063】
(ダンパスティフナ)
図4図5に示すように、ダンパスティフナ33は、リアホイールハウス16の上方で、且つダンパハウジング17の側方に車幅方向外側から設けられている。ダンパスティフナ33は、クォータピラースティフナ32(後述する)およびルーフサイドレール14に接合されている。ダンパスティフナ33は、ダンパスティフナ本体部81と、ダンパスティフナフランジ部82と、を備えている。
【0064】
ダンパスティフナ本体部81は、前辺81a、後辺81b、上辺81c、および下辺81dにより、側面視において台形状に形成されている。
下辺81dは、例えば、リアホイールハウス16にスポット溶接で接合されている。前辺81aおよび後辺81bは、例えば、ダンパハウジング17にスポット溶接で接合されている。上辺81cは、例えば、ルーフサイドレール14にスポット溶接で接合されている。
ダンパスティフナ本体部81は、ダンパハウジング17の上方に形成された第1開口部84と、第1開口部84の上方に形成された第2開口部85と、を有する。
【0065】
ダンパスティフナフランジ部82は、第1ダンパフランジ86と、第2ダンパフランジ87と、第3ダンパフランジ88と、を有する。
第1ダンパフランジ86は、ダンパスティフナ本体部81の車体前方側に設けられている。具体的には、第1ダンパフランジ86は、ダンパスティフナ本体部81の前辺81aから車体前方側に向けて張り出され、クォータピラー本体28(ドア開口ピラーフランジ29を含む)のうち上部のアウタ部位を形成する。
【0066】
第1ダンパフランジ86は、例えば、ドア開口ピラーフランジ29のうち上部のインナ(以下、ドア開口ピラーフランジ29の上部インナと言うこともある)にスポット溶接で接合されている。また、第1ダンパフランジ86は、例えば、下端部86aがクォータピラースティフナ32(後述する)の上端部32aに車幅方向外側から重ねられた状態においてスポット溶接で接合されている。
第1ダンパフランジ86は、例えば、第1ダンパスティフナ稜線部91と、第2ダンパスティフナ稜線部92と、を有する。
第1ダンパスティフナ稜線部91および第2ダンパスティフナ稜線部92は、車体前後方向において間隔をあけて配置され、第1ダンパフランジ86の長手方向に延びている。
【0067】
第2ダンパフランジ87は、ダンパスティフナ本体部81の車体後方側に設けられている。具体的には、第2ダンパフランジ87は、ダンパスティフナ本体部81の後辺81bから車体後方側に向けて張り出されている。第2ダンパフランジ87は、例えば、ルーフサイドレール14に車幅方向外側からスポット溶接で接合されている。
【0068】
第3ダンパフランジ88は、ダンパスティフナ本体部81の上方側(すなわち、車体上方側)に設けられている。具体的には、第3ダンパフランジ88は、ダンパスティフナ本体部81の前辺81aの上部からルーフサイドレール14に沿って車体前方に延びている。第3ダンパフランジ88は、例えば、ルーフサイドレール14に車幅方向外側からスポット溶接で接合されている。
【0069】
なお、実施形態では、第2ダンパフランジ87および第3ダンパフランジ88の両方のフランジをルーフサイドレール14に接合する例について説明するが、これに限らない。その他の例として、例えば、第2ダンパフランジ87および第3ダンパフランジ88の一方のフランジをルーフサイドレール14に接合してもよい。
【0070】
(クォータピラースティフナ)
クォータピラースティフナ32は、サイドシルスティフナ31の上端31aに連続して配置され、クォータピラー本体28の上下方向において中央部に設けられている。クォータピラースティフナ32は、クォータピラースティフナ本体部95と、クォータピラースティフナフランジ96と、を備えている。
クォータピラースティフナ本体部95は、例えば、クォータピラー本体28のうち上下方向中央部のインナ(例えば、リアホイールハウス16)に車幅方向外側からスポット溶接で接合されている。
【0071】
クォータピラースティフナフランジ96は、例えば、ドア開口ピラーフランジ29のうち上下方向中央部のインナ(以下、ドア開口ピラーフランジ29の中央インナと言うこともある)に車幅方向外側からスポット溶接で接合されている。すなわち、クォータピラースティフナフランジ96は、ドア開口ピラーフランジ29のうち上下方向の中央部を形成する。
このように、クォータピラースティフナ本体部95がクォータピラー本体28のインナ(例えば、リアホイールハウス16)に接合され、クォータピラースティフナフランジ96がドア開口ピラーフランジ29の中央インナに接合されている。これにより、クォータピラースティフナ32によりクォータピラー本体28(すなわち、クォータピラー15)が補強されている。
【0072】
また、クォータピラースティフナ本体部95は、例えば、第1クォータピラースティフナ稜線部98と、第2クォータピラースティフナ稜線部99と、を有する。第1クォータピラースティフナ稜線部98および第2クォータピラースティフナ稜線部99は、車体前後方向において間隔をあけて配置され、クォータピラースティフナフランジ96の長手方向に延びている。
第1クォータピラースティフナ稜線部98は、第1サイドシルスティフナ上稜線部46および第1ダンパスティフナ稜線部91(図4も参照)に連通するように形成されている。第2クォータピラースティフナ稜線部99は、第2サイドシルスティフナ上稜線部47および第2ダンパスティフナ稜線部92(図4も参照)に連通するように形成されている。
【0073】
図4図6に示すように、荷重支持部30は、例えば、サイドシルスティフナ31がサイドシル12、リアホイールハウス16、およびリアサイドフレーム13などに接合されている。また、ダンパスティフナ33が、例えば、リアホイールハウス16、ダンパハウジング17、ドア開口ピラーフランジ29の上部インナ、およびルーフサイドレール14などに接合されている。さらに、クォータピラースティフナ32が、例えば、リアホイールハウス16、およびドア開口ピラーフランジ29の中央インナなどに接合されている。
【0074】
この状態において、サイドシルスティフナ上フランジ45によりドア開口ピラーフランジ29の下部を形成する。また、第1ダンパフランジ86によりドア開口ピラーフランジ29の上部を形成する。さらに、クォータピラースティフナフランジ96によりドア開口ピラーフランジ29の中央部を形成する。
すなわち、荷重支持部30は、ドア開口ピラーフランジ29のインナに車幅方向外側から接合するアウタを備えている。また、荷重支持部30は、クォータピラー本体28のインナに車幅方向外側から接合するアウタを備えている。
【0075】
さらに、荷重支持部30は、第1サイドシルスティフナ上稜線部46、第1クォータピラースティフナ稜線部98、および第1ダンパスティフナ稜線部91により、第1荷重支持稜線部(荷重支持稜線部)101が形成されている。
さらに、荷重支持部30は、第2サイドシルスティフナ上稜線部47、第2クォータピラースティフナ稜線部99、および第2ダンパスティフナ稜線部92により、第2荷重支持稜線部(荷重支持稜線部)102が形成されている。
第1荷重支持稜線部101および第2荷重支持稜線部102は、サイドシルスティフナ31の前端からルーフサイドレール14まで連続して延設されている。
なお、実施形態では、荷重支持部30に第1荷重支持稜線部101および第2荷重支持稜線部102を備えた例について説明したが、これに限らない。その他の例として、例えば、荷重支持部30に第1荷重支持稜線部101および第2荷重支持稜線部102の一方のみを備えてもよい。
【0076】
以上説明したように、実施形態の車体後部構造10によれば、例えば、車体にねじれが生じた場合、サイドシル12とルーフサイドレール14とに曲げが発生し、それによりクォータピラー15が引っ張られてクォータピラー15に引張荷重が入力する。
そこで、実施形態において、クォータピラー15の荷重支持部30を、サイドシルスティフナ31、クォータピラースティフナ32、およびダンパスティフナ33により形成した。さらに、荷重支持部30にドア開口ピラーフランジ29のインナに車幅方向外側から接合するアウタを備えた。ドア開口ピラーフランジ29は、ドア開口部20のピラー縁部を形成する。
【0077】
よって、ドア開口ピラーフランジ29は、荷重支持部30により剛性が確保されている。すなわち、クォータピラー15(特に、クォータピラー本体28)の剛性がドア開口ピラーフランジ29により確保されている。これにより、クォータピラー15に入力される引張荷重を、荷重支持部30により十分に支持できる。
さらに、荷重支持部30は、クォータピラー15を補強する部材としてダンパスティフナ33を備えた。ダンパスティフナは、ルーフサイドレールに接合されている。よって、クォータピラー15(特に、クォータピラー本体28)に集中する引張荷重を、ルーフサイドレール14、およびルーフサイドレール14を経て車体後部に分散できる。これにより、例えば、車体のねじれに対して、車体後部の剛性を向上することができる。
【0078】
また、第1荷重支持稜線部101および第2荷重支持稜線部102は、サイドシルスティフナ31の前端からクォータピラー15を経てルーフサイドレール14まで連続して延設されている。さらに、ダンパスティフナフランジ部82の第2ダンパフランジ87、第3ダンパフランジ88は、ルーフサイドレール14に接合されている。
よって、クォータピラー15に入力した荷重(引張荷重)を、ルーフサイドレール14に第1荷重支持稜線部101および第2荷重支持稜線部102を経て矢印D(図4参照)の如く伝達できる。さらに、ルーフサイドレール14に伝達された荷重を、車体後方にルーフサイドレール14を経て矢印E(図4参照)の如く伝達できる。よって、クォータピラー15とルーフサイドレール14との接続部にかかる荷重を緩和することができる。これにより、例えば、車体のねじれに対して、車体後部の剛性を向上することができる。
【0079】
また、ダンパスティフナフランジ部82の第1ダンパフランジ86がクォータピラー本体28のうち上部のインナに設けられている。これにより、クォータピラー本体28が第1ダンパフランジ86で補強され、クォータピラー本体28(すなわち、クォータピラー15)の剛性が確保される。これにより、例えば、車体のねじれに対して、車体後部の剛性を一層向上することができる。
【0080】
さらに、サイドシルスティフナ31に第2サイドシルスティフナ上稜線部47とサイドシルスティフナ上フランジ45とが設けられている。また、第2サイドシルスティフナ上稜線部47でクォータピラー本体28の第2荷重支持稜線部102の下部が形成されている。さらに、サイドシルスティフナ上フランジ45でドア開口ピラーフランジ29の下部が形成されている。
加えて、第2サイドシルスティフナ上稜線部47とサイドシルスティフナ上フランジ45(すなわち、第1サイドシルスティフナ上稜線部46)とが上面視において交差部78(図9参照)で交差するように連続して設けられている。
【0081】
ここで、サイドシルスティフナ31は、剛性の高いクォータピラー15(特に、クォータピラー本体28)に連続するように設けられている。
よって、サイドシル12に入力した荷重を、第2サイドシルスティフナ上稜線部47とサイドシルスティフナ上フランジ45(すなわち、第1サイドシルスティフナ上稜線部46)とを経て矢印F(図9参照)の如く伝達できる。これにより、サイドシル12に入力した荷重を、剛性の高いクォータピラー本体28に効率よく伝達できる。
【0082】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0083】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0084】
Ve 車両
10 車体後部構造
12 サイドシル
13 リアサイドフレーム
14 ルーフサイドレール
15 クォータピラー
16 リアホイールハウス
20 ドア開口部
22 連結部
23 フレーム本体部
24 連結下部
24a 連結部の前下部(連結部の下面部)
25 屈曲部
28 クォータピラー本体
29 ドア開口ピラーフランジ(ドア開口フランジ)
30 荷重支持部
31 サイドシルスティフナ
32 クォータピラースティフナ
33 ダンパスティフナ
41 ハット断面部
42 溶接部
43 サイドシルスティフナ下稜線部
44 凹形断面部
45 サイドシルスティフナ上フランジ(サイドシルスティフナフランジ)
47 第2サイドシルスティフナ上稜線部(サイドシルスティフナ稜線部)
51 ハット傾斜側壁(傾斜壁)
51a ハット傾斜側壁の後端
53 ハット下部(ハット断面部の下面部)
66 第2下稜線部(傾斜稜線部)
81 ダンパスティフナ本体部
82 ダンパスティフナフランジ部
86 第1ダンパフランジ
87 第2ダンパフランジ
88 第3ダンパフランジ
101 第1荷重支持稜線部(荷重支持稜線部)
102 第2荷重支持稜線部(荷重支持稜線部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9