(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】積層体、回路基板、及びそれらに適用する液晶ポリマーフィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 15/08 20060101AFI20231025BHJP
B32B 7/025 20190101ALI20231025BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
B32B15/08 Z
B32B7/025
H05K1/03 610H
H05K1/03 630H
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020210284
(22)【出願日】2020-12-18
【審査請求日】2021-09-10
(32)【優先日】2019-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595009383
【氏名又は名称】長春人造樹脂廠股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHANG CHUN PLASTICS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】7F., No.301, Songkiang Rd., Zhongshan Dist Taipei City,Taiwan 104
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】杜安邦
(72)【発明者】
【氏名】陳建鈞
(72)【発明者】
【氏名】呉佳鴻
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-135301(JP,A)
【文献】国際公開第2018/186223(WO,A1)
【文献】特開2011-071815(JP,A)
【文献】小野寺 稔、他2名,回路基板としての液晶ポリマーフィルムの誘電特性改善,第26回エレクトロニクス実装学会春季講演大会,日本,2014年07月17日,pp.51-52,先付け
【文献】小出 直之,液晶ポリマーの開発技術 -高性能・高機能化-,日本,2009年12月22日,pp.75-83,122-125,128-135,137-159,先付け
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C08G 63/00-64/42
C08J 5/00- 5/02,
5/12- 5/22
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔及び液晶ポリマーフィルムから成る積層体であって、
前記液晶ポリマーフィルムは前記金属箔全体に渡って配置し、
前記積層体における液晶ポリマーフィルムは0.0012~0.0020である吸水前の誘電正接(Df′
0)、吸水後の誘電正接(Df′
1)、及び下記式、
により求める前記誘電正接間の相対的百分率差(ΔDf′)を有し、
式中、前記ΔDf′は16%以下であり、
前記Df′
0及びDf′
1はそれぞれ、IPC-TM-650の2.6.2.1Aに準拠して、前記積層体における前記液晶ポリマーフィルムを23℃の純水に24時間浸漬して吸水させ、次いで、乾燥させた前後に10GHzで測定し、
前記液晶ポリマーフィルムは液晶ポリマー樹脂から作製され、前記液晶ポリマー樹脂
を作製するために用いられる原料は
4-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸を除く芳香族ヒドロキシカルボン酸、及び無水アセチルを含み、前記4-ヒドロキシ安息香酸を除く芳香族ヒドロキシカルボン酸は3-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフタレンカルボン酸、及び4′-ヒドロキシ-4-ビフェニルカルボン酸を含むことを特徴とする、
積層体。
【請求項2】
前記積層体における前記液晶ポリマーフィルムの前記ΔDf′は5%~16%である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記積層体における前記液晶ポリマーフィルムの吸湿性は1%以下である、請求項1
又は2に記載の積層体。
【請求項4】
前記積層体は吸水前の剥離強度(F
0)及び吸水後の剥離強度(F
1)を有し、前記F
0及びF
1はそれぞれ、前記積層体を23℃の純水に24時間浸漬して吸水させた前後に測定し、前記F
0は0.85kN/m~0.95kN/mであり、前記F
1は0.85kN/m~0.95kN/mである、請求項1~
3のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項5】
前記積層体は下記式、
により求める前記剥離強度間の相対的百分率差(ΔF)を有し、式中、前記ΔFは5%以下である、請求項
4に記載の積層体。
【請求項6】
前記積層体は更に別の金属箔を備え、前記液晶ポリマーフィルムは前記金属箔と前記別の金属箔との間に挟む、請求項1~
5のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項7】
0.0012~0.0020である吸水前の誘電正接(Df
0)、吸水後の誘電正接(Df
1)、及び下記式、
により求める前記誘電正接間の相対的百分率差(ΔDf)を有する液晶ポリマーフィルムであって、
式中、前記ΔDfは16%以下であり、
前記Df
0及びDf
1はそれぞれ、IPC-TM-650の2.6.2.1Aに準拠して、前記液晶ポリマーフィルムを23℃の純水に24時間浸漬して吸水させ、乾燥させた前後に10GHzで測定し、
前記液晶ポリマーフィルムは液晶ポリマー樹脂から作製され、前記液晶ポリマー樹脂
を作製するために用いられる原料は
4-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸を除く芳香族ヒドロキシカルボン酸、及び無水アセチルを含み、前記4-ヒドロキシ安息香酸を除く芳香族ヒドロキシカルボン酸は3-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフタレンカルボン酸、及び4′-ヒドロキシ-4-ビフェニルカルボン酸を含むことを特徴とする、
液晶ポリマーフィルム。
【請求項8】
前記液晶ポリマーフィルムのΔDfは5%~15%である、請求項
7に記載の液晶ポリマーフィルム。
【請求項9】
請求項
7又は8に記載の前記液晶ポリマーフィルムから成ることを特徴とする、
回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、積層体、回路基板、及びそれらを構成する液晶ポリマー(LCP)フィルム、より具体的には、積層体、回路基板、及び低周波数帯域、中周波数帯域、及び/又は高周波数帯域の信号の伝送に適した電子製品用LCPフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
移動通信技術の急速な発展により、電気通信産業では、第4世代移動体通信網(4G)のデータ転送速度、応答時間、システム容量等の性能を最適化するため、5Gという略称の第5世代移動体通信網の開発が活発に行われている。
【0003】
5G通信技術は信号伝送用に高周波数帯域を使用している。信号の動作周波数が高くなるほど、伝送中の信号減衰の程度及び信号ひずみの程度が大きくなり、挿入損失も大きくなる。それにも関わらず、技術の進歩に伴い、業界では高周波数帯域における電子製品の信号伝送能の向上が活発に探究されている。
従って、高周波数帯域での信号伝送に起因する回路基板の挿入損失をいかに低減又は抑制するかが、業界が取り組む課題の1つとなっている。
【0004】
高周波数帯域における信号伝送能の向上に加えて、業界では、低周波、中周波、及び/又は高周波電子製品の小型化を図るために、より高い部品密度を有する回路基板も活発に探究されている。しかし、電子製品の素子が小さくなるほど、回路基板の吸水性が高くなる。即ち、小型化されるほど電子製品の品質及び性能は少量の水分にも影響を受けやすくなり、よって製造時や使用時に劣化する。更に、屋外用電子製品の中には、使用中、過酷な環境(例えば、高湿環境)に長時間さらされるものもあり、よって電子製品の品質や性能が水分の影響を受けて劣化する可能性がある。電子製品の挿入損失は吸水後に大きくなるため、電子製品は、低周波数帯域、中周波数帯域、及び/又は高周波数帯域において、期待されるような優れた信号伝送能を発揮できない。
【0005】
この欠点を克服するためには、電子製品における回路基板の耐吸水性を改善する必要がある。改良すれば、低周波数帯域、中周波数帯域、及び/又は高周波数帯域における回路基板の挿入損失が抑制又は低減され、回路基板は低周波数帯域、中周波数帯域、及び/又は高周波数帯域の電子製品に好適なものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本出願の目的の1つは、低周波数帯域、中周波数帯域、及び/又は高周波数帯域における信号伝送時、積層体から成る回路基板の挿入損失を低減及び/又は抑制することである。
【0008】
本出願の別の目的は、積層体から成る回路基板の耐湿性を向上させることであり、それにより回路基板は効果的に高湿環境の影響に対して耐性を持ち、よって吸水の前後で、低周波数帯域、中周波数帯域、及び/又は高周波数帯域における信号伝送時の回路基板の挿入損失が低減できる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するために、本出願は積層体を提供する。積層体は金属箔及びLCPフィルムから成り、LCPフィルムは金属箔全体に渡って配置する。積層体におけるLCPフィルムは吸水前の誘電正接(Df′
0)、吸水後の誘電正接(Df′
1)、及び下記式:
により求める誘電正接間の相対的百分率差(ΔDf′)を有し、式中、ΔDf′は16%以下であり、Df′
0及びDf′
1はそれぞれ、積層体におけるLCPフィルムを23℃の純水に24時間浸漬して吸水させた前後に10GHzで測定する。
【0010】
積層体におけるLCPフィルムの誘電正接間の相対的百分率差を制御することにより、低周波数帯域、中周波数帯域、及び/又は高周波数帯域における信号伝送時、積層体から成る回路基板の挿入損失を低減及び/又は抑制することが可能になる。また、吸水前後で、異なる周波数帯域における信号伝送時の回路基板の挿入損失間の差も小さくできるので、当該回路基板は多数の電子製品に好適である。
【0011】
1実施形態では、高湿環境に耐え得るように回路基板の耐湿性を向上させることにより、本出願の回路基板は5Gアンテナを有するような屋外電子製品にとって更に好適になり、過酷な環境(例えば、高湿度環境)における高周波数帯域での信号伝送能が優れたものとなる。
【0012】
本明細書における誘電正接とは、材料における信号消失を意味する。信号無欠性は、信号消失の程度を抑制及び/又は低減することにより改善し得る。材料の誘電正接は特に、水が材料に浸透したときに起こる吸水の影響を受けやすい。水の誘電正接は約40であり、これは一般的に使用されている材料の誘電正接よりはるかに大きいため、吸水性は材料の誘電正接に大きく影響する。空気の湿度のみを制御する一般的な吸水試験とは対照的に、本明細書では、吸水前後の材料の誘電正接を極めて過酷な条件下―材料を長時間水に浸漬する―で評価し、本出願で使用する材料は極めて過酷な条件下で、回路基板の挿入損失を確実に抑制及び/又は低減できることを確認する。
【0013】
1実施形態では、本出願の積層体におけるLCPフィルムのDf′0及びDf′1はそれぞれ0.0010~0.0030及び0.0011~0.0065であってもよい。別の実施形態では、本出願の積層体におけるLCPフィルムのDf′0及びDf′1はそれぞれ0.0012~0.0020及び0.0013~0.0023であってもよい。更に別の実施形態では、本出願の積層体におけるLCPフィルムのDf′0及びDf′1はそれぞれ0.0013~0.0015及び0.0015~0.0017であってもよい。積層体におけるLCPフィルムのDf′0及びDf′1は、積層体における銅箔をエッチングした後、IPC‐TM‐650の2.5.5.13に準拠して測定する。
当業者であれば以下の事を理解できている。誘電正接が低いほど、誘電特性は良好である。積層体におけるLCPフィルムの誘電正接と、他の積層体における他のLCPフィルムの誘電正接との間の絶対値差分が0.0005以上である場合、それら積層体におけるLCPフィルムの誘電特性が著しく異なることを意味する。
【0014】
1実施形態では、本出願の積層体におけるLCPフィルムのΔDf′は5%~16%であってもよい。別の実施形態では、本出願の積層体におけるLCPフィルムのΔDf′は10%~16%であってもよい。更に別の実施形態では、本出願の積層体におけるLCPフィルムのΔDf′は12%~15.5%であってもよい。
【0015】
場合により、本出願の積層体は吸水前の剥離強度(F0)及び吸水後の剥離強度(F1)を有し、F0及びF1は、積層体を23℃の純水に24時間浸漬する前及び後にそれぞれ測定する。1実施形態では、本出願の積層体のF0及びF1は両方とも0.85キロニュートン/メートル(kN/m)~0.95kN/mであってもよい。別の実施形態では、本出願の積層体のF0及びF1は両方とも0.90kN/m~0.95kN/mであってもよい。積層体におけるLCPフィルムと金属箔との間の剥離強度を評価するために、本出願の積層体のF0及びF1をIPC‐TM‐650の2.4.9Dに準拠して測定する。剥離強度が大きいほど、積層体におけるLCPフィルムと金属箔との剥離強度が強く、このことはLCPフィルムと金属箔とが容易に分離しないことを示している。
【0016】
場合により、本出願の積層体の剥離強度間の相対的百分率差(ΔF)は下記式:
により求めてもよい。
【0017】
1実施形態では、本出願の積層体のΔFは5%以下であってもよい。別の実施形態では、本出願の積層体のΔFは0%~2%であってもよい。即ち、本出願の積層体は優れた耐湿性を有する。本出願の積層体は、気泡や層間剥離を発生させずに吸水前後の過酷な耐熱性試験に合格していることが好ましい。場合により、本出願の積層体におけるLCPフィルムの吸湿性は1%以下であってもよい。
1実施形態では、本出願の積層体におけるLCPフィルムの吸湿性は0%~0.5%であってもよい。別の実施形態では、本出願の積層体におけるLCPフィルムの吸湿性は0.01%~0.5%であってもよい。別の実施形態では、本出願の積層体におけるLCPフィルムの吸湿性は0.02%~0.5%であってもよい。更に別の実施形態では、本出願の積層体におけるLCPフィルムの吸湿性は0.01%~0.09%であってもよい。また更に別の実施形態では、本出願の積層体におけるLCPフィルムの吸湿性は0.01%~0.05%であってもよい。その上更に別の実施形態では、本出願の積層体におけるLCPフィルムの吸湿性は0.01%~0.03%であってもよい。
【0018】
本出願によれば、積層体におけるLCPフィルムの厚さは特に制限しない。例えば、LCPフィルムの厚さは10マイクロメートル(μm)以上500μm以下であってもよい。1実施形態では、本出願のLCPフィルムの厚さは10μm以上300μm以下であってもよい。別の実施形態では、本出願のLCPフィルムの厚さは15μm以上200μm以下であってもよい。更に別の実施形態では、本出願のLCPフィルムの厚さは20μm以上200μm以下であってもよい。また更に別の実施形態では、本出願のLCPフィルムの厚さは50μm以上200μm以下であってもよい。
【0019】
1実施形態では、本出願の積層体が約50μm~200μmの厚さのLCPフィルムから成る場合、動作周波数1GHzでの積層体から成る回路基板の挿入損失は-0.70デシベル(dB)/10センチメートル(cm)以下であってもよい。また、10GHzでの回路基板の挿入損失は-3.50dB/10cm以下であってもよく、20GHzでの回路基板の挿入損失は-6.00dB/10cm以下であってもよく、30GHzでの回路基板の挿入損失は-8.50dB/10cm以下であってもよく、40GHzでの回路基板の挿入損失は-13dB/10cm以下であってもよい。上述の回路基板は吸水前の積層体から構成してもよく、また吸水後の積層体から構成してもよい。異なる周波数における回路基板の挿入損失は、上述の範囲内でうまく制御してもよい。
【0020】
場合により、前記積層体は更に別の金属箔を備えてもよく、前記LCPフィルムは前記金属箔(第1金属箔と称する)と前記別の金属箔(第2金属箔と称する)との間に配置してもよい。本出願によれば、第1金属箔及び/又は第2金属箔は銅箔、金箔、銀箔、ニッケル箔、アルミニウム箔、ステンレス鋼箔等であってもよいが、これらに限定されるものではない。1実施形態では、第1金属箔と第2金属箔とは異なる材料から製造する。好ましくは、第1金属箔及び/又は第2金属箔は銅箔であってもよく、そうすることで銅箔とLCPフィルムとを積層して銅張積層板(CCL)が形成される。また、第1金属箔及び/又は第2金属箔の製造方法は、本出願の目的に反しない限り、特に制限しない。例えば、金属箔はロールツーロール法や電着法により作製してもよいが、これらに限定されるものではない。
【0021】
本出願によれば、積層体におけるLCPフィルムは金属箔に積層し、金属箔全体に渡って配置してもよい。「積層」は直接接触方式での積層に限定せず、間接接触法式での積層も含む。例えば、本出願の1実施形態では、第1金属箔は、積層体において、LCPフィルムの第1表面に直接接触法式で積層する。本出願の別の実施形態では、第1金属箔は、積層体において、LCPフィルムの第1表面に間接接触法式で積層する。より具体的には、様々なニーズに基づいて、第1の金属箔とLCPフィルムの第1表面との間に接続層を配置してもよく、それにより、第1金属箔は接続層を介してLCPフィルムの第1表面に接触する。接続層の材料は様々なニーズに応じて調整してもよい。例えば、接続層の材料は、耐熱性、耐薬品性や電気抵抗性などの機能を提供するために、ニッケル、コバルト、クロム、又はこれらの合金を含んでもよい。同様に、積層体における第2金属箔及びLCPフィルムは、直接接触方式又は間接接触法式で互いに積層してもよい。1実施形態では、LCPフィルム及び第1金属箔の積層方式と、LCPフィルム及び第2金属箔の積層方式とは同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0022】
本出願によれば、第1金属箔及び/又は第2金属箔の厚さは特に制限せず、様々なニーズに基づいて当業者により調整可能である。例えば、1実施形態では、第1金属箔及び/又は第2金属箔の厚さは独立して、1μm以上200μm以下、好ましくは1μm以上40μm以下、より好ましくは1μm以上20μm以下、更に好ましくは3μm以上20μm以下であってもよい。
【0023】
本出願によれば、本出願の第1金属箔及び/又は第2金属箔は、様々なニーズに基づいて当業者により表面処理に供することが可能である。例えば表面処理は、粗面化処理、酸‐塩基処理、熱処理、脱脂処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、下塗り処理等から選択してもよいが、これらに限定されるものではない。
【0024】
本出願によれば、第1金属箔及び/又は第2金属箔の粗度は特に制限せず、様々なニーズに応じて当業者により調整可能である。1実施形態では、第1金属箔の十点平均粗度(Rz)及び/又は第2金属箔のRzは独立して0.1μm以上2.0μm以下、好ましくは、0.1μm以上1.5μm以下であってもよい。1実施形態では、第1金属箔のRz及び第2金属箔のRzは共に、上述の範囲に該当してもよい。第1金属箔のRz及び第2金属箔のRzは必要に応じて同じであってもよいし、異なっていてもよい。1実施形態では、第1金属箔のRz及び第2金属箔のRzは異なる。
【0025】
1実施形態では、様々なニーズに基づいて当業者により第3金属箔を追加してもよい。第3金属箔はLCPフィルム全体に渡って配置する。第3金属箔は、必要に基づいて第1金属箔及び/又は第2金属箔と同じであってもよいし、異なっていてもよい。1実施形態では、第3金属箔のRzは第1金属箔のRz及び/又は第2金属箔のRzの上述した範囲内に該当してもよい。1実施形態では、第1金属箔のRz、第2金属箔のRz、及び第3金属箔のRzは異なる。
好ましくは、第1金属箔、第2金属箔、及び/又は第3金属箔は、低粗度の金属箔、例えば低粗度の銅箔であってもよい。
【0026】
1実施形態では、積層体は複数のLCPフィルムから構成してもよい。本出願の精神に反しないという前提に基づいて、様々なニーズに応じて当業者により、本出願の複数のLCPフィルム、及び上記の第1、第2、及び/又は第3の金属箔などの複数の金属箔を積層して、複数のLCPフィルム及び複数の金属箔を有する積層体を作製してもよい。
【0027】
積層体におけるLCPフィルムの上述した誘電特性を制御することに加えて、本出願ではLCPフィルム自体の誘電特性も制御する。LCPフィルム(生フィルム)は、吸水前の誘電正接(Df
0)、吸水後の誘電正接(Df
1)、及び下記式:
により求める前記誘電正接間の相対的百分率差(ΔDf)を有し、
式中、ΔDfは16%以下であり、Df
0及びDf
1はそれぞれ、LCPフィルムを23℃の純水に24時間浸漬して吸水させた前後に10GHzで測定する。
【0028】
1実施形態では、本出願のLCPフィルムのDf0は0.0010~0.0030であってもよく、本出願のLCPフィルムのDf1は0.0011~0.0065であってもよい。別の実施形態では、本出願のLCPフィルムのDf0は0.0012~0.0020であってもよく、本出願のLCPフィルムのDf1は0.0013~0.0023であってもよい。更に別の実施形態では、本出願のLCPフィルムのDf0は0.0013~0.0015であってもよく、本出願のLCPフィルムのDf1は0.0015~0.0017であってもよい。LCPフィルム(生フィルム)のDf0及びDf1はIPC‐TM‐650の2.5.5.13に準拠して測定する。
上述したように、当業者であれば以下の事を理解できる。誘電正接が低いほど、誘電特性は良好である。LCPフィルム(生フィルム)の誘電正接と、他のLCPフィルム(生フィルム)の誘電正接との間の絶対値差分が0.0005以上である場合、その2種のLCPフィルム(生フィルム)の誘電特性が大幅に異なることを意味する。
【0029】
好ましくは、本出願のLCPフィルムのΔDfは15%以下である。1実施形態では、本出願のLCPフィルムのΔDfは5%~16%であってもよい。別の実施形態では、本出願のLCPフィルムのΔDfは5%~15%であってもよい。更に別の実施形態では、本出願のLCPフィルムのΔDfは6.5%~14.5%であってもよい。
【0030】
本出願によれば、LCPフィルムはLCP樹脂から作製してもよく、LCP樹脂は市販のものでも、通常の原料から製造してもよい。本出願では、LCP樹脂は特に制限しない。例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、2,6‐ナフタレンジオール、エタンジオール、1,4‐ブタンジオール、及び1,6‐ヘキサンジオールなどの芳香族又は脂肪族ヒドロキシ化合物;テレフタル酸、イソフタル酸、2,6‐ナフタレンジカルボン酸、2‐クロロテレフタル酸、及びアジピン酸などの芳香族又は脂肪族ジカルボン酸;3‐ヒドロキシ安息香酸、4‐ヒドロキシ安息香酸、6‐ヒドロキシ‐2‐ナフタレンカルボン酸、及び4′‐ヒドロキシ‐4‐ビフェニルカルボン酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸;p‐フェニレンジアミン、4,4′‐ジアミノビフェニル、ナフタレン‐2,6‐ジアミン、4‐アミノフェノール、4‐アミノ‐3‐メチルフェノール、及び4‐アミノ安息香酸などの芳香族アミン化合物を原料として使用し、LCP樹脂を調製してもよい。その後、このLCP樹脂を用いて本出願のLCPフィルムを調製する。1実施形態では、LCP樹脂を得るために、6‐ヒドロキシ‐2‐ナフタレンカルボン酸、4‐ヒドロキシ安息香酸、無水アセチル(無水酢酸とも称する)、又は6‐ヒドロキシ‐2‐ナフタレンカルボン酸及び4‐ヒドロキシ安息香酸の誘導体のいずれかを選択してLCP樹脂を得てもよく、LCP樹脂は本出願のLCPフィルムを調製するために使用できる。
【0031】
1実施形態では、様々なニーズに基づいて、当業者により、本出願のLCPフィルムの調製中に、潤滑剤、酸化防止剤、電気絶縁剤、又は充填剤などの添加剤を添加してもよいが、これらに限定されるものではない。例えば、適用可能な添加剤はポリカーボネート、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン等であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0032】
別の態様では、本出願は上記LCPフィルムから成る回路基板を提供する。上述したように、本出願のLCPフィルムを採用することにより、低周波数帯域、中周波数帯域、及び/又は高周波数帯域での信号伝送中の回路基板の挿入損失を、非常に過酷な条件下であっても抑制及び/又は低減することが可能となる。
本発明の他の目的、利点及び新規な特徴は、添付図面と併せてとらえると、以下の詳細な説明から更に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】異なる動作周波数での回路基板の吸水前挿入損失を示す図である。各回路基板は実施例1A~3A(E1A~E3A)並びに比較例1A及び2A(C1A及びC2A)の積層体のうちの1種から成る。
【
図2】異なる動作周波数での回路基板の吸水後挿入損失を示す図である。各回路基板はE1A~E3A並びにC1A及びC2Aの積層体のうちの1種から成る。
【
図3A】異なる動作周波数での回路基板の吸水前後における挿入損失間の相対的百分率差を示す図である。各回路基板はE1A、C1A、及びC2Aの積層体のうちの1種から成る。
【
図3B】異なる動作周波数における回路基板の吸水前後における挿入損失間の相対的百分率差を示す図である。各回路基板はE2A、C1A、及びC2Aの積層体のうちの1種から成る。
【
図3C】異なる動作周波数における回路基板の吸水前後における挿入損失間の相対的百分率差を示す図である。各回路基板はE3A、C1A、及びC2Aの積層体のうちの1種から成る。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本出願のLCPフィルムの製造に使用する原料を説明するために、複数の調製例を示す。更に、本出願のLCPフィルム及び積層体の実装を説明するために複数の実施例を示しつつ、比較として複数の比較例を示す。当業者であれば、以下の実施例及び比較例から、本出願の利点及び効果を容易に実現できる。
本明細書で提案した記述は、単に説明目的のための好ましい実施形態にすぎず、本出願の範囲を限定することを意図したものではない。本出願の精神及び範囲から逸脱することなく、本出願を実践又は応用するために様々な改変及び変更が可能である。
【0035】
<LCP樹脂>
調製例1:LCP樹脂
6‐ヒドロキシ‐2‐ナフタレンカルボン酸(540g)、4‐ヒドロキシ安息香酸(1071g)、無水アセチル(1086g)、亜リン酸ナトリウム(1.3g)、及び1‐メチルイミダゾール(0.3g)の混合物を3リットルのオートクレーブに入れ、アセチル化するために、常圧窒素雰囲気下、160℃で約2時間撹拌した。次いで、混合物を毎時30℃の加熱速度で320℃まで加熱した。この温度条件下で、760トルから3トル以下へと徐々に減圧し、320℃から340℃へと昇温した。その後、撹拌力及び圧力を増加し、ポリマーを吐出する工程、ストランドを引き抜く工程、及びストランドをペレットへと切断する工程を行い、融点が約278℃、粘度が300℃で(以降、「300℃で」と表記する)約45パスカル‐秒(Pa・s)のLCP樹脂を得た。
【0036】
調製例2:LCP樹脂
6‐ヒドロキシ‐2‐ナフタレンカルボン酸(440g)、4‐ヒドロキシ安息香酸(1145g)、無水アセチル(1085g)、及び亜リン酸ナトリウム(1.3g)の混合物を3リットルのオートクレーブに入れ、アセチル化するために、常圧窒素雰囲気下、160℃で約2時間撹拌した。次いで、混合物を毎時30℃の加熱速度で320℃まで加熱した。この温度条件下で、760トルから3トル以下へと徐々に減圧し、320℃から340℃へと昇温した。その後、撹拌力及び圧力を増加し、ポリマーを吐出する工程、ストランドを引き抜く工程、及びストランドをペレットへと切断する工程を行い、融点が約305℃、粘度が320℃で約40Pa・sのLCP樹脂を得た。
【0037】
<LCPフィルム>
実施例1:LCPフィルム
調製例1から得たLCP樹脂を、スクリュー径27ミリメートル(mm)の押出機(メーカー:Leistritz社、型式:ZSE27)に投入し、300℃~320℃の範囲の温度まで加熱した後、毎時5.5キログラム(kg/hr)の送り速度で、幅500mmのTダイから押し出した。次いで、約300℃の温度であり、約35cm~45cmの直径を有する2つの鋳造ホイールの間の空間にLCP樹脂を送り、約20キロニュートン(kN)~60kNの力で押し出し、その後、室温の冷却用の冷却ホイールに移し、厚さ約50μmのLCPフィルムを得た。本明細書では、鋳造ホイールはTダイから約20mmの間隔をとっていた。
【0038】
実施例2:LCPフィルム
調製例2から得たLCP樹脂を、スクリュー径27mmの押出機(メーカー:Leistritz社、型式:ZSE27)に投入し、300℃~320℃の範囲の温度まで加熱した後、7.5kg/hrの送り速度で、幅500mmのTダイから押し出した。次いで、約310℃の温度であり、約35cm~45cmの直径を有する2つの鋳造ホイールの間の空間にLCP樹脂を送り、約20kN~60kNの力で押し出し、その後、室温の冷却用の冷却ホイールに移し、厚さ約50μmのLCPフィルムを得た。本明細書では、鋳造ホイールはTダイから約20mmの間隔をとっていた。
【0039】
実施例3:LCPフィルム
調製例1から得たLCP樹脂を、スクリュー径27mmの押出機(メーカー:Leistritz社、型式:ZSE27)に投入し、300℃~320℃の範囲の温度まで加熱した後、6.5kg/hrの送り速度で、幅500mmのTダイから押し出した。次いで、約305℃の温度であり、約35cm~45cmの直径を有する2つの鋳造ホイールの間の空間にLCP樹脂を送り、約20kN~60kNの力で押し出し、その後、室温の冷却用の冷却ホイールに移し、厚さ約200μmのLCPフィルムを得た。本明細書では、鋳造ホイールはTダイから約20mmの間隔をとっていた。
【0040】
上述したLCPフィルムの調製方法は本出願の実施を例示するために使用しているにすぎない。当業者であれば、ラミネート延伸法、膨張法、及び溶媒鋳造法などの従来の方法を用いてLCPフィルムを調製し得る。
【0041】
1実施形態では、TダイからLCP樹脂を押し出した後、LCP樹脂を2枚の耐高温性フィルムと共に2つの鋳造ホイール間の空間に送り、当業者の必要に応じて3層の積層構造体を形成してもよい。2枚の耐高温性フィルムを室温でLCP樹脂から分離し、本出願のLCPフィルムを得た。鋳造ホイールの直径は特に制限していないことは理解されているものとする。耐高温性フィルムはポリ(テトラフルオロエテン)(PTFE)フィルム、ポリイミド(PI)フィルム、及びポリ(エーテルスルホン)(PES)フィルムから選択してもよいが、これらに限定されるものではない。
【0042】
また、得られたLCPフィルムに対する後処理は、様々なニーズに基づいて当業者により行うことが可能である。後処理としては、研磨、紫外線照射、加熱、プラズマ処理等が挙げられるが、これに限定されるものではない。プラズマ処理を例にとると、様々なニーズに基づいて、当業者により減圧又は常圧(1atm)で、窒素雰囲気下、酸素雰囲気下、又は空気雰囲気下、1kWの電力で作動するプラズマを印加してもよいが、これに限定されるものではない。
【0043】
比較例1:市販ポリマーフィルム
比較例1は、カネカ社製;型式:PIXEO BP FRS‐282#SW;厚さ:約50μmの市販ポリマーフィルムであった。
【0044】
比較例2:市販ポリマーフィルム
比較例2は、宇部興産社製;型式:UPILEX‐50NVT;厚さ:約50μmの市販ポリマーフィルムであった。
【0045】
<積層体>
実施例1A~3A及び比較例1A及び2A:積層体
同種の2枚の市販銅箔間に、実施例1~3のLCPフィルム並びに比較例1及び2の市販ポリマーフィルムをそれぞれ挟み、実施例1A~3A並びに比較例1A及び2Aの積層体を作製した。
【0046】
具体的には、初めに、上述のポリマーフィルム(実施例1~3のLCPフィルム並びに比較例1及び2の市販ポリマーフィルム)、及び2枚の同種の市販銅箔(型式:CF‐H9A‐HD2、福田金属箔粉工業社製、Rz:約1.0μm)を、それぞれ20cm×20cmのサイズへと切断した。次いで、各ポリマーフィルムを2枚の市販銅箔で挟み、積層構造体を形成した。この積層構造体を、1平方センチメートル当たり5キログラム(kg/cm2)の圧力で、180℃で60秒間、積層工程に供し、その後、20kg/cm2の圧力で、300℃で25分間(min)、更なる積層工程に供した後、室温まで冷却し、積層体を得た。
【0047】
実施例1A~3Aの各積層体は、それぞれが厚さ約12μmの2枚の市販銅箔、及び2枚の市販銅箔の間に挟まれたLCPフィルムから成っていた。実施例1A~3Aの積層体は、それぞれ、実施例1の厚さ50μmのLCPフィルム、実施例2の厚さ50μmのLCPフィルム、及び実施例3の厚さ200μmのLCPフィルムを含んでいた。比較例1A及び2Aの各積層体は、それぞれが厚さ約12μmの2枚の市販銅箔、及び2枚の市販銅箔の間に挟まれた市販ポリマーフィルムから成っていた。比較例1A及び2Aの積層体はそれぞれ、比較例1の厚さ50μmの市販ポリマーフィルム、及び比較例2の厚さ50μmの市販ポリマーフィルムを含んでいた。
【0048】
積層体の積層方法は特に制限しないことは理解されているものとする。当業者であれば、ワイヤ積層や表面積層などの従来技術を用いて積層工程を実施し得る。本出願に適用可能なラミネータは間欠ホットプレス機、ロールツーロールホイール機、ダブルベルトプレス機等であってもよいが、これらに限定されるものではない。様々なニーズに応じて、当業者であればLCPフィルムを銅箔と並べて積層構造体を形成することが可能であり、次いでこの積層構造体を加熱工程及びプレス工程を含む表面積層により処理してもよい。
【0049】
別の実施形態では、様々なニーズに基づいて当業者により、LCPフィルム上の銅箔などの金属箔を、スパッタリング、電気めっき処理、化学めっき処理、蒸着等を経て形成してもよい。あるいは、様々なニーズに基づいて当業者により、接着剤層、ニッケル層、コバルト層、クロム層、又はこれらの合金層などの接続層をLCPフィルムと金属箔との間に形成してもよい。
【0050】
試験例1:ポリマーフィルムの誘電特性分析
本試験例では、試験試料として実施例1~3のLCPフィルム並びに比較例1及び2の市販ポリマーフィルムを用いた。吸水前後の試験試料の誘電正接を、IPC‐TM‐650の2.5.5.13に準拠して空洞共振器を備えたマイクロ波ネットワーク解析機(型式:ZNB20、ROHDE&SCHWARZ社製)により、10GHzで測定した。
【0051】
各試験試料の吸水前誘電正接(Df0)を以下のように測定した。試験試料をそれぞれ105℃~110℃のオーブン中で1時間加熱した後、デシケータ中で乾燥させ、室温まで冷却した。その後、上述した方法に従って、各試験試料の吸水前誘電正接(Df0)を測定した。更に、各試験試料の吸水後誘電正接(Df1)を以下のように測定した。IPC‐TM‐650の2.6.2.1Aに準拠して、試験試料を23℃の純水に24時間浸漬した。次いで、試験試料を、その表面に水分が残らなくなるまで乾布で乾燥させた。最後に、各試験例の吸水後誘電正接(Df1)を、上述した方法に従って測定した。実験結果を以下の表1に示す。
【0052】
また、試験試料の吸水前後における誘電正接間の相対的百分率差を分析するために、下記式を用い、試験試料の誘電正接間の相対的百分率差(ΔDf)を評価する。ΔDfの単位はパーセント(%)である。下記式に示すように、Df
1とDf
0間の差として絶対値記号を用いているため、ポリマーフィルムの誘電正接間の相対的百分率差を正の百分率値として示す。
【0053】
表1:10GHzで測定した実施例1~3のLCPフィルム並びに比較例1及び2の市販ポリマーフィルムの吸水前後における誘電正接
【0054】
【0055】
表1から、実施例1~3のLCPフィルム(生フィルム)のΔDfは16%未満であることが明らかである。具体的には、実施例1~3のLCPフィルムのΔDfは5%~16%の範囲内に収まっており、実施例1~3の各LCPフィルムは吸水後の誘電正接を良好に維持していることが分かる。対照的に、比較例1及び2の市販ポリマーフィルムのΔDfは200%を超える。
【0056】
表1に示すように、吸水前の誘電正接(Df0)については、実施例1~3のLCPフィルムのDf0は0.0014~0.0015であり、これは比較例1及び2の市販ポリマーフィルムのDf0より大幅に小さい。他の実施形態では、本出願のLCPフィルムのDf0は0.0010~0.0030であってもよい。また、吸水後の誘電正接(Df1)については、実施例1~3のLCPフィルムのDf1は0.0016~0.0017であり、これは比較例1及び2の市販ポリマーフィルムのDf1より大幅に小さい。他の実施形態では、本出願のLCPフィルムのDf1は0.0011~0.0065であってもよい。
【0057】
試験例2:積層体におけるポリマーフィルムの誘電特性分析
本試験例では、初めに実施例1A~3A並びに比較例1A及び2Aの各積層体をエッチング液でエッチングし、2枚の市販銅箔を除去し、積層体においてポリマーフィルムを得た。ここでエッチング液は、銅イオンの濃度が約150グラム/リットル(g/L)~240g/L、塩酸の正規性(N)が約0.04N~0.3Nの酸性塩化第二銅エッチング溶液であった。試験試料として使用できるように、ポリマーフィルムを純水で数回洗浄し、エッチング液を除去した。吸水前後における試験試料の誘電正接を、IPC‐TM‐650の2.5.5.13に準拠して空洞共振器を備えたマイクロ波ネットワーク解析機(型式:ZNB20、ROHDE&SCHWARZ社製)により、10GHzで測定した。
【0058】
各試験試料の吸水前誘電正接(Df′0)を以下のように測定した。試験試料をそれぞれ105℃~110℃のオーブン中で1時間加熱した後、デシケータ中で乾燥させ、室温まで冷却した。その後、上述した方法に従って、各試験試料の吸水前誘電正接(Df′0)を測定した。更に、各試験試料の吸水後誘電正接(Df′1)を以下のように測定した。IPC‐TM‐650の2.6.2.1Aに準拠して、試験試料を23℃の純水に24時間浸漬した。次いで、試験試料を、その表面に水分が残らなくなるまで乾布で乾燥させた。最後に、各試験例の吸水後誘電正接(Df′1)を、上述した方法に従って測定した。実験結果を以下の表2に示す。
【0059】
また、試験試料の吸水前後における誘電正接間の相対的百分率差を分析するために、下記式を用い、試験試料の誘電正接間の相対的百分率差(ΔDf′)を評価する。ΔDf′の単位はパーセント(%)である。下記式に示すように、Df′
1とDf′
0間の差として絶対値記号を用いているため、各積層体におけるポリマーフィルムの誘電正接間の相対的百分率差を正の百分率値で示す。
【0060】
試験試料の調製から、各試験試料について測定した吸水前後の誘電正接は、実施例1A~3A並びに比較例1A及び2Aの各積層体におけるポリマーフィルムの吸水前後の誘電正接を示していることが分かる。即ち、表2において、実施例1A~3AそれぞれのDf′0、Df′1、及びΔDf′は、実施例1A~3Aの各積層体におけるLCPフィルムのDf′0、Df′1、及びΔDf′を指し、比較例1A及び2AそれぞれのDf′0、Df′1、及びΔDf′は、比較例1A及び2Aの各積層体における市販ポリマーフィルムのDf′0、Df′1、及びΔDf′を指す。
【0061】
表2:10GHzで測定した実施例1A~3Aの積層体におけるLCPフィルム並びに比較例1A及び2Aの積層体における市販ポリマーフィルムの吸水前後における誘電正接
【0062】
【0063】
表2で示すように、実施例1A~3Aの各積層体におけるLCPフィルムのΔDf′は16%未満である。具体的には、実施例1A~3Aの各積層体におけるLCPフィルムのΔDf′は5%~16%の範囲内に収まっており、実施例1A~3Aの各積層体におけるLCPフィルムは吸水後の誘電正接を良好に維持していることが分かる。
対照的に、比較例1A及び2Aの各積層体における市販ポリマーフィルムのΔDf′は185%より大きく225%以下であり、比較例1A及び2Aの各積層体における市販ポリマーフィルムは多湿環境に影響を受けやすいことが分かる。結果として、比較例1A及び2Aにおける各市販ポリマーフィルムの吸水後誘電正接の誘電特性が明らかに劣化している。
【0064】
表2に示すように、吸水前誘電正接(Df′0)については、実施例1A~3Aの各積層体におけるLCPフィルムのDf′0は0.0013~0.0015であり、これは比較例1A及び2Aの各積層体における市販ポリマーフィルムのDf′0より大幅に小さい。他の実施形態では、本出願の積層体におけるLCPフィルムのDf′0は0.0010~0.0030であってもよい。また、吸水後の誘電正接(Df′1)については、実施例1A~3Aの各積層体におけるLCPフィルムのDf′1は0.0015~0.0017であり、これは比較例1A及び2Aの各積層体における市販ポリマーフィルムのDf′1より大幅に小さい。他の実施形態では、本出願の積層体におけるLCPフィルムのDf′1は0.0011~0.0065であってもよい。
【0065】
試験例3:積層体の剥離強度分析
本試験例では、試験試料として実施例1A~3Aの積層体を使用した。吸水前後の試験試料の剥離強度はIPC‐TM‐650の2.4.9Dに準拠して測定した。初めに、各試験試料を長さ約228.6mm及び幅約3.2mmのエッチングした試験片へと切断した。当該エッチング試験片はIPC‐TM‐650の2.4.9DにおけるAタイプのエッチング試験片であった。次いでエッチング試験片を温度23±2℃及び相対湿度50±5%で24時間静置し、安定化させた。その後、両面接着テープを用いて、各エッチング試験片を、試験機(メーカー:Hung Ta Instrument社;型式:HT‐9102)の固定部に接着した。固定部上のエッチング試験片を剥離速度50.8mm/minで固定部から剥離し、剥離工程時の剥離強度を連続的に記録した。ここで、当該剥離強度は試験機が耐えられる最大剥離強度の15%~85%の範囲内に制御し;剥離距離は少なくとも57.2mmを超すべきであり、初期剥離距離6.4mmでの剥離強度は無視した。
【0066】
本試験例では、吸水前剥離強度を測定するためのエッチング試験片は、IPC‐TM‐650の2.4.9Dに準拠して実施例1A~3Aの積層体から直接調製したのに対し、吸水後剥離強度を測定するためのエッチング試験片は、実施例1A~3Aの積層体から、初めに積層体を23℃の純水に24時間浸漬し、表面に水分が残らなくなるまで乾布で積層体を乾燥させ、次いでIPC‐TM‐650の2.4.9Dに準拠して調整した。
【0067】
実施例1A~3Aの各積層体の吸水前剥離強度(F
0)及び吸水後剥離強度(F
1)を以下の表3に示す。更に、試験試料の吸水前後における剥離強度間の相対的百分率差を分析するために、下記式を用いて試験試料の剥離強度間の相対的百分率差(ΔF)を評価する。ΔFの単位はパーセント(%)である。下記式に示すように、F
1とF
0間の差として絶対値記号を用いているため、積層体の剥離強度間の相対的百分率差を正の百分率値で示す。
【0068】
表3:実施例1A~3Aの積層体の吸水前後における剥離強度
【0069】
【0070】
表3に示すように、実施例1A~3Aの各積層体のF0は0.90kN/m~0.91kN/mである一方、実施例1A~3Aの各積層体のF1は0.91kN/m~0.92kN/mである。実施例1A~3Aの各積層体のF0及びF1は類似しており、ΔFは2%未満である。特に、実施例3Aの積層体のΔFは0%であり、実施例3Aは他の2つの実施例より良好である。他の実施形態では、本出願の積層体のF0は0.85kN/m~0.95kN/mであってもよく、本出願の積層体のF1も0.85kN/m~0.95kN/mであってもよい。また、本出願の積層体のΔFは5%以下、具体的には、0%~2%であってもよい。
【0071】
試験例4:積層体におけるポリマーフィルムの吸湿性分析
本試験例はIPC‐TM‐650の2.6.2.1Aに準拠して実施した。実施例1A~3A並びに比較例1A及び2Aの各積層体を初めにエッチング液でエッチングし、2枚の市販銅箔を除去し、積層体においてポリマーフィルムを得た。ここでエッチング液は銅イオン濃度が約150g/L~240g/L、塩酸の正規性(N)が約0.04N~0.3Nの酸性塩化第二銅エッチング溶液であった。次いで、このポリマーフィルムを長さ約2.0インチ、幅約2.0インチのエッチング試験片へと切断した。その後、エッチング試験片を105℃~110℃で1時間乾燥させて室温まで冷却し、乾燥重量(W
0)として秤量した。次いで、エッチング試験片を23±1.1℃の純水に24時間浸漬し、表面に水分が残らなくなるまで乾布で乾燥させ、湿重量(W
1)として秤量した。各積層体のポリマーフィルムの吸湿性(ΔW)を下記式により求めた。ΔWの単位はパーセント(%)である。実験結果を以下の表4に示す。
【0072】
表4に示すように、実施例1A~3Aの各積層体におけるLCPフィルムの吸湿性はわずか0.02%~0.03%であり、これは比較例1A及び2Aの積層体の吸湿性(1.28%及び1.49%)より大幅に低い。いくつかの実施形態では、本出願の積層体におけるLCPフィルムの吸湿性は1%以下であってもよい。他の実施形態では、本出願の積層体におけるLCPフィルムの吸湿性は0.01%~0.5%であってもよい。
【0073】
試験例5:積層体の耐熱性分析
本試験例では、実施例1A~3A並びに比較例1A及び2Aの積層体を試験試料として使用し、吸水前後にIPC‐TM‐650の2.4.13Fに準拠して処理した。初めに、各試験試料は約50mm×50mmのサイズへと切断した。試験試料の金属箔の1つにはんだ付けフラックスを塗布し、次に試験試料を135±10℃で1時間焼成し、室温まで冷却した。その後、試験試料を288±5℃で10秒間の耐熱試験に供し、実施例1A~3Aの積層体におけるLCPフィルム並びに比較例1A及び2Aの積層体における市販ポリマーフィルムの表面に、泡立ちや層間剥離が発生したかどうかを観察した。
【0074】
上記のようにして、積層体を23℃の純水に24時間浸漬して吸水させた後、表面に水分が残らなくなるまで乾布で乾燥させた。
【0075】
吸水前後の耐熱性試験に試験試料を供した後、各試験試料について、泡立ちや層間剥離が発生しているかどうかを評価した。泡立ちも層間剥離も観察されない場合、以下の表4に「合格」と表した。しかし、泡立ち又は層間剥離のいずれかが観察される場合、以下の表4に「不合格」と表した。
【0076】
表4:実施例1A~3A並びに比較例1A及び2Aの積層体におけるポリマーフィルムの吸水前後の吸湿性と、実施例1A~3A並びに比較例1A及び2Aの積層体の吸水前後の耐熱性
【0077】
【0078】
表4(試験例4及び5の実験結果を示す)に示すように、実施例1A~3Aの積層体におけるLCPフィルムの吸湿性は比較例1A及び2Aの積層体における市販ポリマーフィルムの吸湿性より大幅に低いため、吸水後の実施例1A~3Aの積層体では泡立ちも層間剥離も発生しなかった。従って、実施例1A~3Aの積層体は耐熱性試験に合格した。
対照的に、比較例1A及び2Aの積層体におけるLCPフィルムの吸湿性の方がはるかに高かったため、吸水及び288℃の高温での焼成後、積層体では泡立ち及び層間剥離が発生した。従って、比較例1A及び2Aの積層体は耐熱性試験に不合格であった。
【0079】
試験例6:積層体から成る回路基板の挿入損失分析
本試験例では、実施例1A~3A並びに比較例1A及び2Aの積層体を、吸水前後にIPC‐TM‐650の2.5.5.7Aに準拠して処理した。即ち、各積層体の片面をエッチングして、長さ約100mm、幅約100μm~250μm、インピーダンス約50オーム(Ω)±10Ωのストリップラインを形成した。一方、各積層体の他方の面をアース線である銅箔で全面被覆し、回路基板を得た(本試験例の試験試料として用いた)。回路基板では、ストリップラインの幅は積層体の誘電特性や厚さに基づいて調整可能であった。次いで、マイクロ波ネットワーク解析機(型式:8722ES、Agilent Technology社製)及びプローブ(型式:ACP40‐250、Cascade Microtech社製)を用いて、各試験試料の挿入損失を1GHz~40GHzで測定した。
【0080】
このように、積層体を23℃の純水に24時間浸漬して吸水させた後、表面に水分が残らなくなるまで乾布で乾燥させた。上述の方法に従って周波数を変えて測定した試験試料の吸水前挿入損失(I
0)及び吸水後挿入損失(I
1)を以下の表5に示した。また、回路基板における吸水前後における挿入損失間の相対的百分率差を分析するために、下記式を用いて、回路基板の挿入損失間の相対的百分率差(ΔI)を求める。ΔIの単位はパーセント(%)である。下記式に示すように、I
1とI
0間の差として絶対値記号を用いているため、回路基板の挿入損失間の相対的百分率差は正の百分率値として示す。実験結果を表5に示す。
【0081】
表5:1GHz~40GHzで測定した回路基板のI0、I1及びΔIであって、各回路基板は実施例1A~3A並びに比較例1A及び2Aの積層体のうちの1種から成る。
【0082】
【0083】
表5に示すように、吸水前挿入損失(I0)では、1GHz~40GHzで測定した実施例1A~3Aの積層体のうちの1種からそれぞれ成る回路基板のI0は、1GHz~40GHzで測定した比較例1A及び2Aの積層体のうちの1種からそれぞれ成る回路基板のI0より大幅に低い。吸水後挿入損失(I1)では、1GHz~40GHzで測定した実施例1A~3Aの積層体のうちの1種からそれぞれ成る回路基板のI1も、1GHz~40GHzで測定した比較例1A及び2Aの積層体のうちの1種からそれぞれ成る回路基板のI1より大幅に低い。また、挿入損失間の相対的百分率差(ΔI)では、1GHz~40GHzで測定した実施例1A~3Aの積層体のうちの1種からそれぞれ成る回路基板のΔIも、1GHz~40GHzで測定した比較例1A及び2Aの積層体のうちの1種からそれぞれ成る回路基板のΔIより大幅に低い。
【0084】
表2及び5から、実施例1A~3Aの積層体におけるLCPフィルムのΔDf′は16%以下の範囲内に制御されているので、高湿環境下における回路基板の耐吸水性が向上し、それにより1GHz~40GHzでの回路基板の挿入損失を効果的に抑制及び/又は低減できる。従って、実施例1A~3Aの積層体のうちのいずれかから成る回路基板は、吸水前後で異なる周波数帯域において信号伝送能を良好に維持する。同様に、表1及び5から、実施例1~3のLCPフィルム(生フィルム)のΔDfは16%以下の範囲内に制御しているので、高湿環境下における実施例1~3のLCPフィルムのいずれかから成る回路基板の耐吸水性が向上し、それにより1GHz~40GHzでの回路基板の挿入損失を効果的に抑制及び/又は低減できることは理解されているものとする。従って、実施例1A~3Aの積層体のいずれかから成る回路基板は、吸水前後で異なる周波数帯域において信号伝送能を良好に維持する。
【0085】
回路基板の挿入損失は、信号の動作周波数が高くなるにつれて大幅に増加し、即ち、挿入損失はより高い負の値となる。上記表5及び
図1の回路基板の吸水前挿入損失から、動作周波数の変化全体に対する挿入損失の変化の比率である実施例1A~3Aの積層体のうちのいずれかから成る回路基板の挿入損失の勾配は、比較例1A及び2Aの積層体のうちのいずれかから成る回路基板の挿入損失の勾配より平坦であることは理解されている。このことは、実施例1A~3Aの積層体のうちのいずれかから成る回路基板をより高い周波数で操作しても、回路基板の挿入損失は効果的に抑制及び/又は低減されることを示している。
表5及び
図2の回路基板の吸水後挿入損失から、動作周波数の変化全体に対する挿入損失の変化の比率である実施例1A~3Aの積層体のうちのいずれかから成る回路基板の挿入損失の勾配も、比較例1A及び2Aの積層体のうちのいずれかから成る回路基板の挿入損失の勾配より平坦であることは理解されている。このことは、吸水後の実施例1A~3Aの積層体のうちのいずれかから成る回路基板をより高い周波数で操作しても、回路基板の挿入損失は効果的に抑制及び/又は低減されることを示しており、よって当該回路基板は高周波数帯域で信号伝送能を良好に維持する。
【0086】
上記表5及び
図3Aにおいて、実施例1A並びに比較例1A及び2Aの積層体のうちの1種からそれぞれ成る回路基板の吸水前後における挿入損失間の相対的百分率差(ΔI)から、実施例1Aの積層体から成る回路基板の1GHz~40GHzでのΔIは10%以内に制御されているのに対し、比較例1A及び2Aの積層体のうちの1種からそれぞれ成る回路基板のΔIは、10GHzで約60%、20GHzで約70%、30GHzで約80%、40GHzで約60%である。
以上の結果から、実施例1Aの積層体は、その積層体中に備えられるLCPフィルムのΔDf′が16%以内に制御されているため、高湿環境下での耐吸水性が良好であり、よって、実施例1Aの積層体から成る回路基板の1GHz~40GHzでのΔIを効果的に抑制又は低減できることが分かる。従って、実施例1Aの積層体から成る回路基板は、吸水前後で異なる周波数帯域において信号伝送能を良好に維持する。
同様に、
図3B及び
図3Cから、実施例2A及び3Aの積層体も、その積層体中に備えられるLCPフィルムのΔDf′が16%以内に制御されているため、高湿環境下での耐吸水性が良好であり、よって、実施例2A及び3Aの積層体のうちの1種から成る回路基板の1GHz~40GHzでのΔIを効果的に抑制又は低減できることが立証されている。従って、実施例2A及び3Aの積層体のうちのいずれかから成る回路基板は、吸水前後で異なる周波数帯域において信号伝送能を良好に維持する。
【0087】
まとめると、積層体におけるLCPフィルムの誘電正接間の相対的百分率差(ΔDf′)又はLCPフィルム(生フィルム)の誘電正接間の相対的百分率差(ΔDf)を16%以下に制御することにより、本出願の積層体から成る回路基板は高湿環境下で優れた耐吸水性を有する。従って、1GHz~40GHzでの回路基板の吸水前挿入損失及び吸水後挿入損失を低減でき、1GHz~40GHzでの吸水前後における挿入損失間の相対的百分率差(ΔI)を効果的に抑制又は低減できる。
本明細書では、本出願の回路基板は吸水前後において低周波数帯域、中周波数帯域、及び/又は高周波数帯域での信号伝送能を良好に維持することから、LCPフィルム、及びLCPフィルムから成る積層体は共に、優れた耐湿性を有しており、様々な最高仕様の電子製品や屋外用電子製品に好適であることが立証されている。
【0088】
本出願の多数の特徴及び利点を本発明の構造及び特性の詳細と共に上述の説明において記載してきたが、本開示は例示にすぎない。特に部品の形状、サイズ、及び配置の事項については、本発明の原理の範囲内で、添付の特許請求の範囲を表現する用語の広範な一般的意味が示す最大範囲まで、詳細に変更を加えることが可能である。