(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】ビームパワー入力に対する制御を伴うウェハー温度制御
(51)【国際特許分類】
H01J 37/317 20060101AFI20231025BHJP
H01L 21/265 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
H01J37/317 C
H01L21/265 603C
H01L21/265 T
(21)【出願番号】P 2020513317
(86)(22)【出願日】2018-09-18
(86)【国際出願番号】 US2018051466
(87)【国際公開番号】W WO2019055967
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2021-09-15
(32)【優先日】2017-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505413587
【氏名又は名称】アクセリス テクノロジーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】バゲット,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】フェラーラ,ジョー
(72)【発明者】
【氏名】テリー,ブライアン
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-525445(JP,A)
【文献】特開平09-082267(JP,A)
【文献】特表2017-512385(JP,A)
【文献】特表2015-515713(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0162459(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/317
H01J 21/265
H01J 37/20
H01J 37/32
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン注入システムであって、
イオンビームを形成するイオン源と、
前記イオンビームを質量分析するビームラインアセンブリと、
前記イオンビームを受けるエンドステーションであって、加熱チャックを含み、当該加熱チャックが、前記イオンビームからワークピースにイオン注入が行われている間に、前記ワークピースを固定し且つ加熱
し、前記加熱チャックは、その中に埋め込まれた1つ以上のヒーターを含み、前記1つ以上のヒーターは、前記加熱チャックを横切る複数のゾーンのそれぞれに複数のヒーターを含む、エンドステーションと、
前記ワークピースにイオン注入が行われている間の前記ワークピースを所望の温度に維持する
ために、前記1つ以上のヒーターに加えられるパワーと前記イオンビームのパワーとを制御するコントローラであって、
前記イオン注入システムの特性付けと、前記注入中に前記イオンビームから前記ワークピースに与えられる熱エネルギーとに少なくとも部分的に基づく前記加熱チャックの制御を介して、前記ワークピースを加熱するように構成されたコントローラと、
を備え、
前記イオン注入システムの前記特性付けは、前記ワークピースの物質組成および/または前記ワークピースの寸法を含む前記イオン注入システムにおいて処理対象の前記ワークピースを処理する前に定めた特性付け
であり、且つ、セットアップワークピースへのイオンの注入中の当該セットアップワークピースを横切る温度のマッピングを含み、
前記セットアップワークピースは、当該セットアップワークピースの表面を横切って配置された複数の熱電対を含み、
前記コントローラは、前記イオン注入の開始時には前記複数のヒーターを第1の温度に設定し、前記ワークピースに与えられる前記イオンビームのパワーを考慮して、イオン注入が進行するにつれて、マッピングされた温度範囲にわたって前記複数のヒーターの温度を下げるように構成されており、
前記複数のゾーンは、前記加熱チャックの中心に関連する内側ゾーンと、前記加熱チャックの周囲に関連する外側ゾーンとを含み、
前記コントローラは、前記内側ゾーン及び前記外側ゾーンに対する前記イオンビームの位置に少なくとも部分的に基づいて、前記複数のヒーターを個別に制御するように構成される、イオン注入システム。
【請求項2】
前記ワークピースと前記加熱チャックとの間の界面に裏面ガスを供給するように構成された1つ以上の裏面ガス源と、
前記加熱チャックを通る1つ以上の流路を通して冷却液を供給するように構成された冷却液源と、
をさらに備え、
前記コントローラは、前記イオン注入システムの前記特性付けに少なくとも部分的に基づいて、前記1つ以上の前記裏面ガス源、及び前記冷却液源をさらに制御する、請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項3】
前記イオンビームは、スポットイオンビーム及びリボンイオンビームのうちの1つ以上を含む、請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項4】
前記コントローラは、前記ワークピースへのイオン注入の間の当該ワークピースの所望温度を、所望の温度精度内に維持する、請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項5】
前記ワークピースの前記所望温度は約20℃~約1500℃であり、前記所望の温度精度は+/-5℃以内である、請求項
4に記載のイオン注入システム。
【請求項6】
イオン注入システムにおいてワークピースにイオンを注入する方法であって、
パラメータの所定の組を用いて前記イオン注入システムを特性付けする工程
であって、前記イオン注入システムの特性付けには、前記ワークピースの物質組成および/または前記ワークピースの寸法を含む前記イオン注入システムにおいて処理対象の前記ワークピースを処理する前に定めた特性付けと、表面を横切って配置された複数の熱電対を含むセットアップワークピースへのイオンの注入中の、前記パラメータの所定の組を用いた当該セットアップワークピースを横切る温度のマッピングとが含まれる、前記イオン注入システムを特性付けする工程と、
1つ以上のヒーターが中に埋め込まれた加熱チャックであって、前記1つ以上のヒーターが前記加熱チャックを横切る複数のゾーンのそれぞれに複数のヒーターを含む加熱チャックを
設け、前記イオン注入の開始時には前記複数のヒーターを制御して第1の温度に
することにより、前記加熱チャック上のワークピースを前記第1の温度に加熱する工程と、
前記ワークピースを加熱する
前記複数のヒーターを制御すると同時に前記ワークピース
に対するイオン注入
のイオンビームのパワーを制御する工程であって、
前記ワークピースにイオンを注入して前記ワークピースへ熱エネルギーを与える、前記ワークピースへイオン注入する工程と、
前
記イオンの注入中に、
前記ワークピースに与えられる前記熱エネルギーを考慮して、イオン注入が進行するにつれて、マッピングされた温度範囲にわたって前記複数のヒーターの温度を下げることにより前記加熱チャック上の前記ワークピースを第2の温度に加熱することによって、前記ワークピースの所望の温度を維持する工程とを含み、
前記複数のゾーンは、前記加熱チャックの中心に関連する内側ゾーンと、前記加熱チャックの周囲に関連する外側ゾーンとを含み、前記複数のヒーターを制御することは、前記内側ゾーン及び前記外側ゾーンに対する前記イオンビームの位置に少なくとも部分的に基づいて、前記複数のヒーターを個別に制御することを含み、
前記所望の温度は、所望の温度精度内に維持され且つ前記イオン注入システムの前記特性付けに少なくとも部分的に基づいており、前記ワークピースへのイオン注入に関連する前記熱エネルギーは、前記第2の温度での前記加熱チャック上の前記ワークピースの加熱によって軽減される、方法。
【請求項7】
前記第1の温度は約20℃~約1500℃であり、前記所望の温度精度は+/-5℃以内である、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記ワークピースへのイオンの注入中に前記ワークピースの前記所望の温度を維持する工程は、前記ワークピースと前記加熱チャックとの間の界面への裏面ガスの流れを変化させる工程と、前記加熱チャックを通る1つ以上の流路を通して冷却温度の冷却液を供給する工程との少なくとも1つをさらに含む、請求項
6に記載の方法。
【請求項9】
前記ワークピースへの前記イオン注入に用いられるイオンビームは、スポットイオンビーム及びリボンイオンビームのうちの1つ以上を含む、請求項
6に記載の方法。
【請求項10】
前記パラメータの所定の組は、処理手法、及び前記ワークピースへの前記イオン注入に用いられるイオンビームの所望のパワーを含む、請求項
6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願の参照〕
本出願は2017年9月18日に出願された「ビームパワー入力に対する制御を伴うウェハー温度制御(WAFER TEMPERATURE CONTROL WITH CONSIDERTION TO BEAM POWER INPUT)」という名称の米国仮出願第15/707,473号の利益を主張するものであり、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は、一般にはイオン注入システムに関し、より具体的にはイオン注入と同時にワークピースの温度を維持するシステム及び方法に関する。
【0003】
〔発明の背景〕
静電クランプ又はチャック(ESC)等のワークピースクランプ又はチャックは、イオン注入、エッチング、化学気相成長(CVD)等のプラズマベース又は真空ベースの半導体処理中にワークピース又は基板をクランプするために、半導体産業において、しばしば利用される。ESCのクランプ能力、並びにワークピースの温度制御は、半導体基板又はシリコンウェハー等のウェハーを処理する際に非常に価値があることが証明されている。典型的なESCは、例えば、導電性電極上に配置された誘電体層を含み、半導体ウェハーはESCの表面上に配置される(例えば、ウェハーは誘電体層の表面上に配置される)。半導体処理(例えば、イオン注入)の間、典型的にはウェハーと電極との間にクランプ電圧が印加され、ウェハーは静電気力によってチャック表面に対してクランプされる。
【0004】
ある種のイオン注入処理では、ワークピースがイオンビームに曝されている間に、ESCの加熱を介してワークピースを加熱することが望ましい。加工の間、ワークピースの温度制御及び精度がより重要であり続けるので、イオンビームからのパワーがウェハー温度に及ぼす影響は、特に高出力イオンビームでは精度が低く安定性の低いウェハー温度をもたらす。しかしながら、温度を測定するためにESC内に埋め込まれた熱電対は比較的遅い応答時間を有し、加熱されたESCの適切な高速且つ正確な制御を提供するほどに十分にはウェハーに近接して熱的に結合されないことが多い。ウェハーと接触している熱電対は高速の温度測定を提供することができるが、そのような接触熱電対は実施することが困難であり、より高い粒子をもたらし、イオン注入システムの信頼性を低下させる可能性がある。
【0005】
〔発明の概要〕
本開示は、イオン注入システムにおいてワークピースの温度を正確に制御するシステム及び方法を提供する。したがって、以下では、本発明のいくつかの態様の基本的な理解を提供するために、本発明の簡略化された概要を提示する。この概要は、本発明の広い概観ではない。これは、本発明の重要な、又は重大な要素を識別するものでも、本発明の範囲を描写するものでもない。その目的は、後に記載するより詳細な説明の序文として、本発明のいくつかの概念を単純化した形で示すことにある。
【0006】
1つの例示的な態様によれば、イオン注入システムが提供され、前記イオン注入システムは、イオンビームを形成するように構成されたイオン源を含む。ビームラインアセンブリは前記イオンビームを質量分析し、エンドステーションは前記イオンビームを受ける。前記エンドステーションは、前記イオンビームからワークピースへのイオンの注入中に前記ワークピースを選択的に固定し且つ選択的に加熱する加熱チャックを含む。
【0007】
一例によれば、コントローラは、前記ワークピースへのイオン注入中に当該ワークピースの所望の温度を維持する。前記コントローラは、例えば、前記注入中にイオン注入システムの所定の特性付けと前記イオンビームから前記ワークピースに与えられる熱エネルギーとに少なくとも部分的に基づいた前記加熱チャックの制御を介して、前記ワークピースを選択的に加熱する。加熱チャックは、例えば、その中に埋め込まれた1つ以上のヒーターを含み、前記コントローラは、前記1つ以上のヒーターの温度を制御するように構成される。
【0008】
前記1つ以上のヒーターは、前記加熱チャックを横切る複数のゾーンのそれぞれに設けられた複数のヒーターを含むことができる。前記複数のゾーンは、例えば、前記加熱チャックの中心に関連する内側ゾーンと、前記加熱チャックの周囲に関連する外側ゾーンとを含むことができる。前記コントローラは、例えば、前記内側ゾーン及び前記外側ゾーンに対する前記イオンビームの位置に少なくとも部分的に基づいて、前記複数のヒーターを個別に制御するように構成されることができる。
【0009】
別の例によれば、前記イオン注入システムの前記特性付けは、セットアップワークピースへのイオンの注入中に、当該セットアップワークピースを横切る温度のマッピングを含む。当該セットアップワークピースは、例えば、当該セットアップワークピースの表面を横切って配置された複数の熱電対を含む。
【0010】
別の例によれば、前記ワークピースと前記加熱チャックとの間の界面に裏面ガスを供給するように構成された1つ以上の裏面ガス源と、前記加熱チャックを通る1つ以上の流路を通して冷却液を供給するように構成された冷却液源とが提供される。前記コントローラは、例えば、前記イオン注入システムの前記特性付けに少なくとも部分的に基づいて、前記裏面ガス源及び前記冷却液源のうちの1つ以上を制御するようにさらに構成される。
【0011】
いくつかの例では、前記イオンビームは、スポットイオンビーム及びリボンイオンビームのうちの1つ以上を含む。別の例では、前記コントローラは、前記ワークピースへのイオンの注入中に前記ワークピースの所望の温度を前記ワークピースの所望の温度精度内に維持するように構成される。前記所望の温度は、例えば、ほぼ室温(RT)~約1500℃であり、前記所望の温度精度は+/-5℃以内である。
【0012】
本開示の別の例示的な態様によれば、イオン注入システムにおいてワークピースにイオンを注入するための方法が提供される。前記方法は、例えば、パラメータの所定の組を用いて前記イオン注入システムを特性付けすることと、第1の温度で加熱チャックを提供することと、を含む。前記ワークピースは、例えば、前記加熱チャック上で前記第1の温度まで加熱され、前記ワークピースを加熱すると同時に前記ワークピースにイオンが注入され、前記ワークピースへのイオン注入は前記ワークピースへ熱エネルギーをさらに与える。
【0013】
例示的な方法によれば、前記ワークピースの所望の温度は、前記加熱チャック上のワークピースを第2の温度に選択的に加熱することによって、前記ワークピースへのイオンの注入中に維持される。前記第2の温度は、例えば、前記第1の温度よりも低い。
【0014】
前記ワークピースの前記所望の温度は、例えば、前記イオン注入システムの特性付けに少なくとも部分的に基づいて所望の精度内に維持され、前記ワークピースへのイオン注入に関連する前記熱エネルギーは前記第2の温度での前記加熱チャック上のワークピースの選択的加熱によって軽減される。前記イオン注入システムの特性付けは、例えば、前記パラメータの所定の組を使用して、セットアップワークピースへのイオン注入中に、当該セットアップワークピースを横切る温度のマッピングをすることを含み、前記ワークピースへのイオン注入中に前記ワークピースの前記所望の温度を維持することは、前記ワークピースと前記加熱チャックとの間の界面への裏面ガスの流れを選択的に変化させることと、前記加熱チャックを通る1つ以上の流路を通して冷却温度の冷却液を選択的に供給することとの少なくとも1つをさらに含むことができる。
【0015】
したがって、前述の関連する目的を達成するために、本発明は、以下で十分に説明され、特に特許請求の範囲で指摘される特徴を含む。以下の記載及び添付の図面は、本発明の特定の例示的な実施形態を詳細に記載する。しかしながら、これらの実施形態は、本発明の原理を用いることができる様々な方法のうちのいくつかを示している。本発明の他の目的、利点及び新規な特徴は、図面を併せて考慮することによって、本発明の詳細な記載から明らかになるのであろう。
【0016】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、本発明の一例によるイオン注入システムの模式図を示す。
【0017】
図2は、本発明の別の例示的な態様によるイオン注入中にワークピースの温度を維持するための例示的な方法を示す。
【0018】
図3は、別の態様による例示的な制御システムを示す構成図である。
【0019】
〔発明の詳細な説明〕
本開示は一般に、加熱チャック上のワークピースの温度を制御するシステム及び方法に関し、これにより加熱チャックはワークピースに与えられたイオンビームのパワーの特性付けに少なくとも部分的に基づいて動的に制御される。したがって、本発明はここで、図面を参照して説明され、ここで、同様の参照番号は全体を通して同様の要素を指すために使用され得る。これらの態様の説明は単に例示的なものであり、限定的な意味で解釈されるべきではないことを理解されたい。以下の記載において、説明の目的のために、本発明の完全な理解を提供するために、多数の具体的な細部が記載される。しかしながら、当業者には明らかなように、本発明は、これらの具体的な細部なしに実施することができる。
【0020】
イオンをワークピースに注入する場合、テクノロジーノードが発展するにつれて、注入中のワークピースの温度の正確な制御がより重要になる。従来、ワークピースの温度の制御は伝統的に、注入中にワークピースが存在するチャックの温度を制御することによって実行される。例えば、チャックは、チャック内に埋め込まれたヒーターを介して、一定の事前設定された温度まで加熱される。したがって、一旦チャック上に置かれると、ワークピースはヒーターによって一定の事前設定された温度に加熱され、ワークピースが一定の事前設定された温度にあるときに注入が開始される。
【0021】
しかしながら、本開示は一旦注入が開始すると、ワークピースの温度は注入自体に関連するエネルギーに起因して上昇することを現在理解している。言い換えれば、イオン注入はそれと共にある量の注入パワーを運び、それによって、注入パワーは、チャックによって提供される加熱量を超えて、注入中にワークピースの温度をさらに上昇させる。ワークピースの昇温は、例えば、様々なパワー、分量、エネルギー等を用いた注入など、様々な注入に対して大きく異なる可能性がある。このように、従来、チャックの温度を一定の事前設定された温度に設定することによって、一定の事前設定された温度は、もはや、注入されるワークピースとして、温度制御の所望の精度を適切に維持しない。
【0022】
したがって、イオンビームがワークピースの温度に及ぼす影響を、注入毎に理解することが望ましい。ワークピースの温度は、熱電対(TC)、測温抵抗体(RTD)、又はチャック内に埋め込まれたヒーターに関連付けられた他の温度監視装置等の温度測定装置を利用して、注入中に測定され、それによって、TCはチャック内に埋め込まれたそれぞれのヒーターに近接したチャックの温度応答を示す。しかしながら、注入エネルギーに起因するワークピースの温度応答がヒーターに関連するTCに到達するまでに、チャック上に存在するワークピースは、既に所望の注入温度をかなり超えている可能性がある。さらに、ワークピースは、典型的にはチャック又は埋め込まれたヒーターTCに完全には熱的に結合されておらず、それに関連するいくらかの熱抵抗及び遅延時間が存在し得る。したがって、熱エネルギーが実際に温度測定装置に到達し、温度が(例えば、TC又はRTDによって)決定される時間までに、チャック上に存在するワークピースの温度は、既に許容可能な範囲の外である可能性がある。
【0023】
さらに、ワークピースの温度の制御の精度は、ワークピースの温度が所定の温度の約50度以内に保持されていれば、許容可能であると考えられてきた。これまで、ワークピースの温度のこのような制御は、イオンビームからワークピースに与えられるエネルギーをあまり考慮していなかった。
【0024】
しかしながら、技術が発展することにつれて、所定の温度の15、10、又はさらには5摂氏温度以内の精度を維持する等、注入中にワークピースの温度を維持する際のより高い精度が望まれている。さらに、イオン注入のパワーが増加することにつれて、イオンビームからのパワーが注入中にワークピースの温度に及ぼす影響は、より低い精度及びより低い安定性のワークピース温度をもたらす。加熱チャック内に埋め込まれた従来の熱電対は一般に、イオンビームからのエネルギーに応答するのが遅く、それによって、熱電対は十分に速いヒーター温度の調整を可能にするために、又は現在所望されている精度を提供するために、ワークピースに十分には近接して熱的に結合されない。
【0025】
そこで、本開示は、イオン注入システムにおいてワークピースに供給される熱エネルギーを、イオンビームからワークピースに与えられるパワーを加味することによって動的に制御する、システム及び方法を提供する。そのような制御を提供するために、システムは所与のイオンビームについて特性付けられ、それによって、一旦特性付けられると、システムは、イオンビームからのパワーが処理中にワークピース温度に及ぼす影響を考慮に入れる。例えば、システムの特性付けは、ワークピースの詳細な物質組成、並びに直径及び厚さ等のワークピースの寸法を考慮することができる。システムが特定のワークピース及びイオン注入について特性付けされると、制御システムは(例えば、ヒーター設定点、裏面ガス圧力及び流量、加熱チャックを通る冷却液の流れ、冷却液の温度等を介して)加熱チャックへの入力パワーを制御して、イオンビームに関連する温度変化を相応に打ち消すように構成される。従って、イオン注入を通して、より正確で且つより安定したワークピースの温度を達成することができる。
【0026】
本開示をより良く理解するために、一態様によると、
図1には例示的なイオン注入システム100が示されている。本実施例におけるイオン注入システム100は例示的なイオン注入装置を含むが、プラズマ処理システム、又は他の半導体処理システムなど、様々な他の種類の真空ベースの半導体処理システムも企図される。イオン注入装置101は、例えば、ターミナル102と、ビームラインアセンブリ104と、エンドステーション106とを含む。
【0027】
一般的に言えば、ターミナル102内のイオン源108は、電源110に結合されて、添加ガスを複数のイオンにイオン化し、イオンビーム112を形成する。本実施例におけるイオンビーム112は、質量分析装置114を通して方向づけられ、エンドステーション106に向かって開き口116から出る。エンドステーション106では、チャック120(例えば、機械的グリップチャック、静電チャック又はESC、又はワークピースの位置を維持するように構成された任意の装置)に選択的にクランプ又は取り付けられたワークピース118(例えば、シリコンウェハー、ディスプレイパネル等の基板)にイオンビーム112が衝突する。一旦ワークピース118の格子に埋め込まれると、注入されたイオンは、ワークピースの物理的及び/又は化学的特性を変化させる。このため、イオン注入は、半導体装置の製造及び金属仕上げ、並びに材料科学の研究における様々な用途において使用される。
【0028】
本開示のイオンビーム112はペンシル又はスポットビーム、リボンビーム、走査ビーム、若しくはイオンがエンドステーション106に向けられる任意の他の形態等、任意の形態をとることができ、そのような形態は全て、本開示の範囲内に入ると考えられる。
【0029】
1つの例示的な態様によれば、エンドステーション106は真空チャンバ124等の処理チャンバ122を含み、処理環境126は処理チャンバと関連付けられる。処理環境126は一般に、処理チャンバ122内に存在し、一例では、処理チャンバに結合され処理チャンバを実質的に排気するように構成された真空源128(例えば、真空ポンプ)によって生成される真空を含む。
【0030】
一例では、イオン注入装置101は高温イオン注入を提供するように構成され、ワークピース118は処理温度(例えば、約200~600℃)に加熱される。したがって、本実施例では、チャック120が加熱チャック130を含み、加熱チャックはワークピース118をそのクランプ面132上に支持し保持するように構成され、一方、ワークピースをイオンビーム112に曝す前、曝す間、及び/又は曝した後に、処理チャンバ122内でワークピース118を加熱することをさらに可能にする。
【0031】
加熱チャック130は、例えば、静電チャック(ESC)、機械的にグリップされたチャック、若しくはワークピース118を支持するように構成された任意のチャック又はクランプ装置を含み、ワークピースは周囲又は外部環境134の周囲又は大気温度(例えば、「大気環境」とも呼ばれる)よりもかなり高い処理温度に加熱される。例えば、加熱チャック130(例えば、クランプ面132)を加熱する加熱システム136をさらに設けることができ、上に存在するワークピース118を所望の処理温度まで加熱するように構成することができる。加熱システム136は、例えば、加熱チャック130内に配置された1つ以上のヒーター138を介してワークピース118を選択的に加熱するように構成されている。あるいは、加熱システム136の1つ以上のヒーター138は、加熱チャック130の外部にあるハロゲンランプ、発光ダイオード、及び赤外熱装置のうちの1つ以上等の放射熱源(図示せず)を含むことができる。
【0032】
ワークピース移送システム140は、例えば、処理環境126の真空中の加熱チャック130と、処理チャンバ122に動作可能なように結合された1つ以上のロードロックチャンバ142A、142Bとの間で、ワークピース118を移送するようにさらに構成される。
【0033】
熱伝達のための追加の機構を有効にするために、ワークピース118の裏面は、加熱チャック130と導電性情報伝達に参加する。この導電性情報伝達は、例えば、加熱チャック130とワークピース118との間の裏面ガス144(例えば、圧力制御ガス界面)を介して達成される。裏面ガス144の圧力は一般に、例えば加熱チャック130の静電気力によって制限され、概ね5~20トルの範囲内に抑えることができる。一例では、裏面ガス144に関連する界面厚さ(例えば、ワークピース118と加熱チャック130との間の距離)はミクロンのオーダー(典型的には5~20μm)に制御され、したがって、この圧力状況における分子平均自由行程は界面厚さがシステムを遷移及び分子ガス状況に押し込むのに十分な大きさになる。さらに、冷却液源146を設けることができ、それによって、冷却液源は加熱チャックのさらなる温度制御のために、加熱チャック130を通る冷却液の温度及び流量を選択的に制御するように構成される。
【0034】
別の例示的な態様によれば、コントローラ150がさらに設けられ、イオン注入装置101、加熱チャック130、加熱システム136、及び裏面ガス144等のイオン注入システム100の1つ以上の構成要素を選択的に制御して、ワークピース118の温度を選択的に制御するように構成される。コントローラ150は例えば、加熱チャック130及び加熱システム136を介して処理チャンバ122内でワークピース118を所定の温度に加熱し、イオン注入装置101を介してワークピースにイオンを注入し、外部環境134(例えば、大気)と処理環境126(例えば、真空環境)との間でワークピースを選択的に移送するように構成されてもよい。
【0035】
様々なイオン注入システム100は、異なる構成を有する様々な静電チャック120を利用して構成することができ、それによって、異なる温度範囲で実行される注入は、異なる熱伝達能力を有する異なる静電チャックをそれぞれ利用する。しかしながら、本開示の
図1のシステム100は、加熱チャック130を利用することによって高温注入(例えば、200~1500℃の範囲)及び準室温注入(例えば、20~200℃の範囲)のいずれか又は両方を実行するように構成されてもよい。
【0036】
対策が無いと、イオン注入システム100を利用したイオン注入中に、荷電イオンがワークピースに衝突する際に、ワークピース118上にエネルギーが熱の形態で蓄積する可能性がある。この熱はワークピース118を歪ませるか、又はひび割れさせ、いくつかの実装形態ではワークピースの価値を喪失させる(又は著しく価値の低いものにする)可能性がある。熱はワークピース118に送達されるイオンの分量を、所望の分量とは異なるものにする可能性があり、これは、所望のものから機能性を変更することがある。例えば、1×1017原子/cm3の分量がワークピース118の外面のすぐ下の極めて薄い領域に注入されることが望まれる場合、実際に達成される分量が1×1017原子/cm3未満になるように、予期せぬ加熱が送達されたイオンをこの極めて薄い領域から拡散させる可能性がある。実際には、望ましくない加熱が、注入された電荷を所望よりも大きな領域にわたって「汚す」ことがあり、それによって、有効分量を所望のものよりも少なく減少させる。他の望ましくない効果も起こり得る。
【0037】
したがって、1つの例示的な態様によれば、ワークピース118が曝されているイオンビーム112に関連するエネルギーに基づいて、ワークピース118の温度を決定し先んじて調整するか、そうでなければワークピース118の温度を制御するように、本開示のイオン注入システム100は構成される。したがって、作業手法は、様々なイオン注入エネルギー、様々なワークピース118、又は他の構成について、イオン注入システム100のために定式化され得る。本開示は、例えば、加熱チャック130に関連する1つ以上のヒーター138が加熱チャックを所定の温度(例えば、200℃)に加熱するように設定されていても、注入中にイオンビーム112からの所定のパワー(例えば、500W)で、ワークピース118の温度上昇が観察され得るということを有利に認知している。このように、本開示は、ワークピース130に注入するイオンビーム112がワークピース温度を追加量(例えば、20℃)上昇させるビームパワーを有することができるので、加熱チャック130の所定の温度(例えば、180℃)を有利に低下させることができ、したがって、注入されるワークピースにおいて所定の温度(例えば、200℃)を維持する。
【0038】
したがって、本開示は、ワークピース118の温度の積極的な制御を提供する。例えば、注入の開始時に、加熱チャック130内の1つ以上のヒーター138を第1の温度(例えば、200℃)に設定することができ、それによって、第1の温度は注入の進行を通して第2の温度(例えば、180℃)に低下する。したがって、加熱チャック130内の1つ以上のヒーター138に加えられるパワーは、イオンビーム112からワークピース118に与えられるパワーを考慮して、下げられる。例えば、1つ以上のヒーター138に加えられるパワー及びイオンビーム112のパワーの両方の制御は、コントローラ150によって制御されてもよく、したがって、有利なことに、既知のものよりも正確なワークピース温度をもたらす。第1の温度及び第2の温度が記載されているが、温度範囲にわたる連続的な制御のために、注入全体にわたって多数の温度を変化させることができることを理解されたい。
【0039】
例えば、1つ以上のヒーター138に加えられるパワーは一般に、加熱チャック130全体に加えられてもよく、又はパワーは局所化されてもよい。例えば、加熱チャック130全体に1つのヒーター138を使用する代わりに、複数のヒーター138を実装することができ、それによって局所的な温度制御を達成することができる。そのような温度制御の局所化は、例えば、ワークピース118が曝されるイオンビーム112の種類に基づいてもよい。例えば、走査スポット又はリボンイオンビームの形態のイオンビーム112は、ワークピース118上のイオンビームの位置に関連するイオンビーム112からのパワー入力の第1の特性付けを含むことができ、それによって、1つ以上のヒーター138の制御は、ワークピースを横切るイオンビームのパワー入力及び位置の第1の特性付けに基づくことができる。
【0040】
代わりに、ワークピース118にわたる平均温度は、特定の範囲内に維持されてもよい。例えば、ワークピース上の1つの位置におけるスポットイオンビームの形態のイオンビーム112へのワークピース118の曝露は、ワークピースを通る熱伝導を介してワークピース上の別の位置を加熱することがあり、それによって、伝導は、温度変化を分散させる。ワークピース118全体への注入の場合、例えば、ワークピースの平均温度を所望の温度にできるだけ近づけることができる。
【0041】
加熱チャック130の1つ以上のヒーター138は、例えば、ワークピース118を横切って均一な温度を提供するように構成されたヒーター線(例えば、抵抗ヒーターワイヤー)を含んでもよい。このように、イオン注入システム100の特性付けにおいてワークピース118又は加熱チャック130の幾何学的等が考慮され、均一な温度を提供する。
【0042】
しかしながら、注入中に、イオンビーム112がワークピースの直径を横切って走査されるにつれて、ワークピース118の全体的な温度がドリフトし始めることがあり、それによって、イオンビームパワーは、様々な位置でワークピースに入力される。本開示はさらに、加熱チャック130を横切る複数のゾーンに設けられた1つ以上のヒーター138に調整を提供することができる。例えば、加熱チャック130で加熱するための2つのゾーン(例えば、内側ゾーン及び外側ゾーン)を有する場合、注入パワーが外側ゾーンにエネルギーを与えるにつれて、外側ゾーンに関連するヒーター138の温度が低下し、注入パワーが内側ゾーンにエネルギーを与える場合、内側ゾーンに関連するヒーターの温度が低下して、より均一な温度プロファイルを提供する、と本開示は決定することができる。
【0043】
理論的には、ワークピース118がヒーター138に関連する熱電対等の温度測定装置に十分に熱的に結合されている場合、高速応答を達成することができる。しかしながら、実際には、ヒーター138に関連する熱電対は、加熱チャック130に埋め込まれ、且つ粒子汚染を防止するために一般にワークピース118から切り離される。このように、ワークピース118における温度変化が熱電対に到達するまでに、ワークピースの温度は既に高すぎて、ヒーター138の温度を低下させることで応答することができない。したがって、本開示は、1つ以上のヒーター138へのパワーを低減し、ワークピース118全体にわたって所望の温度が均等に維持されるように、少なくとも部分的にはシステム100の特性に基づいて、前もって遅延(例えば、注入から10秒)を企図する。
【0044】
したがって、1つ以上のヒーター138は、処理手法及び/又はイオンビーム112に与えられる温度上昇の知見に基づいて制御される。1つ以上のヒーター138の制御は、例えば、加熱システム136によって1つ以上のヒーター138に供給されるヒーターパワーを直接的に制御すること、裏面ガス144を制御すること、ESCを通る冷却液146の流れを制御すること、冷却液の温度を制御すること、又は他の方法によって達成することができる。例えば、1つ以上のヒーター138に加えられるパワーの設定点は、イオンビーム112からの温度上昇を考慮し、ワークピース118の所望の温度を提供するように、制御されてもよい。1つ以上の裏面ガス144、並びに冷却液146の流量及び/又は温度は、ワークピース118の所望の温度を提供するように、さらに制御されてもよい。本開示は、例えば、ワークピース118内の熱放散及び/又は熱蓄積を考慮して、1つ以上のヒーター138へのパワーが所定の遅延時間を先取りすることができることをさらに企図する。
【0045】
ワークピース118の所望の温度を維持するために、例えば、熱損失(パワー損失又は温度損失とも呼ばれる)を把握することがさらに望まれることがあり、それは、所望の温度を維持することをパワー入力だけで達成することは困難である可能性があるからである。したがって、加熱チャック138内の1つ以上の冷却液ループを通って流れる冷却液146は、加熱チャックから熱エネルギーを除去するように構成され、それによって、冷却液ループは加熱チャックの温度のさらなる制御を可能にする。したがって、準平衡を維持するために、パワー又は熱エネルギーが追加され、除去される。
【0046】
したがって、本開示は、イオンビーム112から与えられるエネルギーによってワークピース118の温度が上昇するのに要する時間を決定し、且つ1つ以上のヒーター138による応答が温度増加を適切に打ち消すことができる速さを決定するために、イオン注入システム100を特性付ける。このような特性付けは、例えば、ビームパワー、注入の長さ、及び注入のエネルギーに基づいて、決定することができる。システム100の特性付けは、例えば、一般に、イオン注入システム、注入の種類(例えば、注入されるイオンの種類及びエネルギー)、ワークピース118の構成等ごとに変化することができ、それによって、流れ、幾何学的形状、放射損失等の変化を各特性付けにおいて考慮することができる。したがって、イオンビーム112に対する応答は、イオンビームからの任意の所与のエネルギー及びパワー、並びにワークピース118の構成に対する処理手法によって特性付けることができる。
【0047】
一例によれば、イオン注入システム100を使用して、所定の注入処理手法のために、イオンビーム112の所定のパワーを供給することができ、それによって、上述したように、イオン注入システムが特性付けられる。したがって、本開示は、ワークピースにおいて均一かつ正確な温度を提供するために、注入と同時に、加熱チャック130を通したワークピース118の加熱を能動的に制御する。注入の均一性は、例えば、ワークピース118全体で見られる温度差と関連していてもよい。1つの注入例では、ワークピースを200℃に維持するために、1つ以上のヒーター138に500Wのパワーを供給することができる。例えば、追加の200Wのパワーがイオンビーム112からワークピース118に加えられる場合、ワークピース温度は200℃の所望の注入温度を超えて上昇する。したがって、本開示はイオンビームから与えられるパワーを考慮するために、1つ以上のヒーター138へのパワーを有利に低下させ(例えば、200Wだけパワーを低下させ)、それによって、ワークピース118においてより正確で安定した温度を提供する。
【0048】
前述したように、加熱チャック130内の熱電対は、一般にはワークピース118から分離されていると考えることができ、そのため、加熱チャック内の熱電対は加熱チャックの温度の表示を提供することを意図しているが、ワークピースの直接的な温度測定を提供しない。例えば、加熱チャック130は所定の温度(例えば、200℃)に加熱されてもよく、それによって、加熱チャック内の熱電対は、1つ以上のヒーター138の温度を制御するためのフィードバックを直接的に提供する。しかし、イオン注入が始まると、熱電対が加熱チャック130に埋め込まれているので、注入によりワークピース118に与えられる追加のエネルギーは、エネルギーがワークピース118を通過して1つ以上のヒーター138に近接する加熱チャックの材質内に入るまで、熱電対に記録されない。1つ以上のヒーター138を制御するために注入からの追加のエネルギーが加熱チャック内の熱電対によって記録されるときまでには、ワークピース118の温度は既に所望の処理温度を超えている可能性があり、したがって、注入中の温度制御の精度が制限される。
【0049】
したがって、一例では、イオン注入システム100は特性付けされ、それにより任意の所与の注入に対して、イオンビーム112の分量、注入時間、注入エネルギー、及び総パワーが決定される。例えば、セットアップワークピース(例えば、特性付けに使用される非製品ワークピース)として構成されたワークピース118を介してイオンビーム112が所定のパワーでワークピース118に衝突する時間にわたって、注入は特性付けされることができ、それによって、セットアップワークピースは、例えば、その中に埋め込まれた1つ以上の熱電対を有することができる。セットアップワークピースは、例えば、所定のパワーで注入され、その中に埋め込まれた1つ以上の熱電対は、注入中にイオンビーム112からワークピース118に実際にどれだけのパワーが与えられるかを示す。
【0050】
本開示は、これまで、注入されるワークピースの温度が、それが存在するチャックの温度に概ね一致すると仮定されてきたことを理解する。しかしながら、このようなワークピース温度の仮定は、イオンビームを介してワークピースに与えられるパワーを考慮しておらず、これもまた、注入中のワークピースの温度に影響を及ぼす。したがって、本開示によれば、ワークピース118の温度の所望の精度(例えば、+/-5℃)はイオン注入中に達成されてもよく、それによって、イオン注入は、所望の精度に基づいてさらに制御されてもよい。本開示はさらに、加熱チャック130及びワークピース118の温度を制御する際に、イオンビーム112のパワーを考慮する。
【0051】
一例によれば、イオン注入システム100は、所望のイオン注入パラメータの第1の組について特性付けられる。例えば、所望のイオン注入パラメータの第1の組は所望のワークピース温度(例えば、200℃)を含むことができる。所望のイオン注入パラメータの第1の組の一部として、処理手法をさらに確認することができ、それによって、加熱チャック138の所望の温度及びイオンビーム112の所望のパワーが決定される。本開示によれば、加熱チャック138の温度は、イオン注入中に能動的に制御されてもよく、それによって、加熱チャックの温度の制御は、少なくとも部分的に、イオンビーム112からワークピース118に与えられるエネルギーに基づく。このように本開示は、有利にはイオンビーム112からワークピース118内外に移送されるエネルギー(例えば、熱エネルギー)を考慮し、従って、1つ以上の裏面ガス144(例えば、裏面ガス圧力)、加熱チャック138の温度設定点、冷却液146の温度、及び加熱チャックを通る冷却液の流量の制御を介して、注入中のワークピースの温度を制御する方法を提供し、ここで、ワークピースの温度の制御は、少なくとも部分的には、イオンビームからワークピースに与えられる注入エネルギーの特性付けに基づいている。
【0052】
本発明の別の例示的な態様によれば、
図2は、イオン注入中にワークピースの温度を制御するための例示的な方法200を示す。例示的な方法は一連の行為又は事象として本明細書に示され説明されるが、いくつかのステップは、本明細書に示され説明されるものとは別の他のステップとは異なった順序で、且つ/又は同時に起こり得るので、本発明はそのような行為又は事象の図示された順序によって限定されないことに留意されたい。さらに、本発明による方法を実施するために、図示された全てのステップが必要とされるわけではない。さらに、当該方法は、本明細書で図示及び説明されるシステムに関連して、並びに図示されていない他のシステムに関連して実施され得ることが理解されよう。
【0053】
図2の200は行為202で始まり、イオン注入システムは、パラメータの所定の組を使用して特性付けられる。パラメータの所定の組は、例えば、処理手法及びイオンビームの所望のパワーを含むことができる。行為204では、加熱チャックは第1の温度に加熱される。行為206では、例えば、ワークピースは加熱チャック上で第1の温度まで加熱され、ワークピースの加熱と同時に、行為208でイオンはワークピースに注入される。行為206及び208における加熱及びワークピースへのイオンの注入と同時に、イオン注入に関連する熱エネルギーがワークピースに与えられる。
【0054】
行為210において、ワークピースへのイオンの注入中に、加熱チャック上のワークピースを第2の温度に選択的に加熱することによって、ワークピースの所望の温度は維持される。行為208及び210は、一般に同時に実行され得ることに留意されたい。所望の温度は、例えば、イオン注入システムの特性付けに少なくとも部分的に基づいて、所望の精度内に維持される。例えば、行為210において、イオン注入システムにおけるワークピースへのイオンビームの熱衝撃を決定するために行われる測定又は他の分析に基づいて、所望の温度を代替的に、又は追加として維持することができる。したがって、イオンをワークピースに注入することに関連する熱エネルギーは、第2の温度に加熱されたチャック上でワークピースを選択的に加熱することによって、緩和される。
【0055】
一例では、第2の温度は第1の温度よりも低い。別の例では、第1の温度は約100℃~約300℃であり、所望の精度は+/-5℃以内である。
【0056】
一例によれば、行為202におけるイオン注入システムの特徴付けは、パラメータの所定の組を使用して、セットアップワークピースへのイオン注入中に、セットアップワークピースを横切る温度のマッピングをすることを含む。セットアップワークピースは、例えば、セットアップワークピースの表面を横切って配置された複数の熱電対を含むことができる。
【0057】
別の例では、ワークピースへのイオンの注入中にワークピースの所望の温度を維持することは、ワークピースと加熱チャックとの間の界面への裏面ガスの流れを選択的に変化させることと、加熱チャックを通る1つ以上の流路を通して冷却温度の冷却液を選択的に供給することとの少なくとも1つをさらに含む。
【0058】
別の態様によれば、前述の方法は、コントローラ、汎用コンピュータ、又はプロセッサベースのシステムのうちの1つ以上におけるコンピュータプログラムコードを使用して実施され得る。
図3に示すように、別の実施形態によるプロセッサベースのシステム300の構成図が提供される。プロセッサベースのシステム300は汎用コンピュータプラットホームであり、本明細書で説明する処理を実施するために使用することができる。プロセッサベースのシステム300は、デスクトップコンピュータ、ワークステーション、ラップトップコンピュータ、又は特定のアプリケーション用にカスタマイズされた専用ユニット等の処理ユニット302を含むことができる。プロセッサベースのシステム300は、ディスプレイ318と、マウス、キーボード、又はプリンターなどの1つ以上の入出力装置320とを備えることができる。処理ユニット302は、セントラルプロセシングユニット(CPU)304と、メモリ306と、大容量記憶装置308と、ビデオアダプタ312と、バス310に接続された入出力インターフェース314とを含むことができる。
【0059】
バス310は、メモリバス又はメモリコントローラ、周辺バス、又は映像バスを含む任意の種類のいくつかのバスアーキテクチャのうちの1つ以上とすることができる。CPU304は任意の種類の電子データプロセッサを含むことができ、メモリ306は、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、又はリードオンリメモリ(ROM)などの任意の種類のシステムメモリを含むことができる。
【0060】
大容量記憶装置308はデータ、プログラム、及び他の情報を記憶し、データ、プログラム、及び他の情報をバス310を介してアクセス可能にするように構成された任意の種類の記憶装置を含むことができる。大容量記憶装置308は、例えば、ハードディスクドライブ、磁気ディスクドライブ、光ディスクドライブ、又は任意の非一時的なコンピュータ読み取り可能な媒体のうちの1つ以上を含むことができる。
【0061】
ビデオアダプタ312及び入出力インターフェース314は、外部入出力装置を処理ユニット302に結合するためのインターフェースを提供する。入出力装置の例は、ビデオアダプタ312に結合されたディスプレイ318と、入出力インターフェース314に結合されたマウス、キーボード、プリンター等の入出力装置320とを含む。他のデバイスを処理ユニット302に結合することができ、追加の又はより少ないインタフェースカードを利用することができる。例えば、シリアルインターフェースカード(図示せず)を使用して、プリンター用のシリアルインターフェースを提供することができる。処理ユニット302はまた、ローカルエリアネットワーク(LAN)又はワイドエリアネットワーク(WAN)322への有線リンク及び/又は無線リンクであり得るネットワークインターフェース316も含み得る。
【0062】
プロセッサベースのシステム300は、他の構成要素を含むことができることに留意されたい。例えば、プロセッサベースのシステム300は、電源、ケーブル、マザーボード、取り外し可能な記憶媒体、ケース等を含むことができる。これらの他の構成要素は図示されていないが、プロセッサベースのシステム300の一部と見なされる。
【0063】
本開示の実施形態は、CPU304によって実行されるプログラムコード等によって、プロセッサベースのシステム300上で実施することができる。なお、上述した実施形態に係る様々な方法は、プログラムコードによって実施することができる。したがって、ここでの明示的な説明は省略する。
【0064】
さらに、
図1内の様々なモジュール及び装置は、
図3の1つ以上のプロセッサベースのシステム300上に実装され、それによって制御され得ることに留意されたい。異なるモジュールと装置との間の情報伝達は、モジュールがどのように実装されるかに応じて変わり得る。モジュールが1つのプロセッサベースのシステム300上に実装される場合、データはCPU304による様々なステップのためのプログラムコードの実行の間に、メモリ306又は大容量記憶装置308に保存されてもよい。次に、データはそれぞれのステップの実行中に、CPU304がバス310を介してメモリ306又は大容量記憶装置308にアクセスすることによって提供することができる。異なったプロセッサベースのシステム300上にモジュールが実装される場合、又はデータが別個のデータベース等の別の記憶システムから提供される場合、入出力インターフェース314又はネットワークインターフェース316を介してシステム300の間にデータを提供することができる。同様に、装置又はステージによって提供されるデータは、入出力インターフェース314又はネットワークインターフェース316によって、1つ以上のプロセッサベースのシステム300に入力され得る。当業者は、様々な実施形態の範囲内で企図されるシステム及び方法を実施する際の他の変形及び修正を容易に理解するのであろう。
【0065】
以上、特定の1つの好ましい実施形態又は実施形態達に関して図示及び説明したが、本明細書及び添付の図面を読んで理解すれば、同等の変更及び修正が当業者には明らかであろう。特に、上述の構成要素(アセンブリ、装置、回路など)によって実行される様々な機能に関して、そのような構成要素を説明するために使用される用語(「手段」への言及を含む)は、別段の指示がない限り、本明細書で示される例示的な実施形態で機能を実行する開示された構成と構造的に同等ではないにもかかわらず、説明された構成要素の指定された機能を実行する(すなわち、機能的に同等である)任意の構成要素に対応することが意図される。加えて、いくつかの実施形態のうちの1つのみに関して本発明の特定の特徴を開示してきたが、そのような特徴は任意の所与の又は特定の用途に望ましく、かつ有利であり得るように、他の実施形態の1つ以上の他の特徴と組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【
図1】
図1は、本発明の一例によるイオン注入システムの模式図を示す。
【
図2】
図2は、本発明の別の例示的な態様によるイオン注入中にワークピースの温度を維持するための例示的な方法を示す。
【
図3】
図3は、別の態様による例示的な制御システムを示す構成図である。