(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】カメラモジュールにおいて使用するための芳香族ポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 101/02 20060101AFI20231025BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20231025BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20231025BHJP
G02B 7/00 20210101ALI20231025BHJP
【FI】
C08L101/02
C08L83/04
C08L67/00
G02B7/00 Z
(21)【出願番号】P 2020531116
(86)(22)【出願日】2018-11-28
(86)【国際出願番号】 US2018062760
(87)【国際公開番号】W WO2019112847
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-10-13
(32)【優先日】2017-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500100822
【氏名又は名称】ティコナ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヤン・シン
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-514411(JP,A)
【文献】特開2003-213114(JP,A)
【文献】国際公開第2017/030788(WO,A1)
【文献】特表2018-525496(JP,A)
【文献】特表2016-534171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 101/02
C08L 83/04
C08L 67/00
G02B 7/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー組成物であって、少なくとも1種類のサーモトロピック液晶ポリマー、及び前記液晶ポリマー100重量部あたり
1~20重量部の量のトライボロジー処方物を含み、前記トライボロジー処方物は、
フルオロポリマー、及び
100,000グラム/モル以上の重量平均分子量を有するシロキサンポリマーを含み、更に、前記シロキサンポリマーに対する前記
フルオロポリマーの重量比は
0.5~12である、前記ポリマー組成物。
【請求項2】
前記液晶ポリマーが前記ポリマー組成物の
20重量%~70重量%を構成し、前記トライボロジー処方物が前記ポリマー組成物の
1重量%~30重量%を構成する、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
前記シロキサンポリマーが、前記液晶ポリマー100重量部あたり
0.1~10重量部の量で存在する、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記シロキサンポリマーが、骨格中に式:
R
rSiO
(4-r/2)
(式中、Rは、独立して、水素、又は置換若しくは非置換の炭化水素基であり、rは、0、1、2又は3である)
を有するシロキサン単位を含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
前記シロキサンポリマーが、Si原子の少なくとも70モル%に結合したアルキル基を含む、請求項4に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
前記シロキサンポリマーが、ジメチルポリシロキサン、フェニルメチルポリシロキサン、ビニルメチルポリシロキサン、トリフルオロプロピルポリシロキサン、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
前記シロキサンポリマーが
10,000センチストークス以上の動粘度を有する、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
前記トライボロジー処方物がシリカ粒子を更に含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
前記
フルオロポリマーが、前記液晶ポリマー100重量部あたり
0.1~15重量部の量で存在する、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
前記フルオロポリマーが、ポリテトラフルオロエチレン、ペルフルオロアルキルビニルエーテル、ポリ(テトラフルオロエチレン-co-ペルフルオロアルキビニルエーテル)、フッ素化エチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、又はそれらの組み合わせを含む、請求項
1に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
前記フルオロポリマーが支持体粒子上に被覆されている、請求項
1に記載のポリマー組成物。
【請求項12】
前記支持体粒子がシリケート粒子を含む、請求項
11に記載のポリマー組成物。
【請求項13】
前記液晶ポリマー100重量部あたり
10~95重量部の量の無機フィラーを更に含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項14】
前記無機フィラーが、モース硬度スケールに基づいて
2.5以上の硬度値を有する粒子を含む、請求項
13に記載のポリマー組成物。
【請求項15】
前記粒子が硫酸バリウムを含む、請求項
14に記載のポリマー組成物。
【請求項16】
前記液晶ポリマー100重量部あたり
0.1~20重量部の量の耐衝撃性改良剤を更に含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項17】
前記耐衝撃性改良剤がエポキシ官能化オレフィンコポリマーを含む、請求項
16に記載のポリマー組成物。
【請求項18】
前記液晶ポリマー100重量部あたり
0.1~20重量部の量の帯電防止フィラーを更に含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項19】
前記帯電防止フィラーがイオン液体を含む、請求項
18に記載のポリマー組成物。
【請求項20】
前記液晶ポリマーが、
100℃以上のガラス転移温度及び/又は
200℃以上の融点を有する、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項21】
前記液晶ポリマーが、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ヒドロキノン、4,4’-ビフェノール、アセトアミノフェン、又はそれらの組み合わせから誘導される繰り返し単位を含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項22】
前記組成物が、VDA 230-206:2007にしたがって求めて
1.0以下の動摩擦係数を示す、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項23】
前記組成物が、VDA 230-206:2007にしたがって求めて
500マイクロメートル以下の摩耗深さを示す、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項24】
前記組成物が、ASTM D3121-09にしたがって求めて
15ミリメートル以上のスパイラルフロー長さを示す、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項25】
請求項1に記載のポリマー組成物を含む成形部品。
【請求項26】
請求項
25に記載の成形部品を含むカメラモジュール。
【請求項27】
その上に支持材アセンブリが載置されたベースを含むカメラモジュールであって、前記ベース、支持材アセンブリ、又は両方は成形部品を含み、前記成形部品は、少なくとも1種類のサーモトロピック液晶ポリマー及びトライボロジー処方物を含むポリマー組成物を含み、前記組成物は、VDA 230-206:2007にしたがって求めて
1.0以下の動摩擦係数を示し、前記トライボロジー処方物は、
100,000グラム/モル以上の重量平均分子量を有するシロキサンポリマー、及び
フルオロポリマーを含み、更に、前記シロキサンポリマーに対する前記
フルオロポリマーの重量比は
0.5~12である、前記カメラモジュール。
【請求項28】
前記組成物が、VDA 230-206:2007にしたがって求めて
500マイクロメートル以下の摩耗深さを示す、請求項
27に記載のカメラモジュール。
【請求項29】
前記シロキサンポリマーが
10,000センチストークス以上の動粘度を有する、請求項
27に記載のカメラモジュール。
【請求項30】
前記フルオロポリマーがシリケート粒子上に被覆されている、請求項
27に記載のカメラモジュール。
【請求項31】
前記ポリマー組成物が、モース硬度スケールに基づいて
2.5以上の硬度値を有する無機フィラー粒子を更に含む、請求項
27に記載のカメラモジュール。
【請求項32】
前記ポリマー組成物が耐衝撃性改良剤を更に含む、請求項
27に記載のカメラモジュール。
【請求項33】
前記ポリマー組成物が帯電防止フィラーを更に含む、請求項
27に記載のカメラモジュール。
【請求項34】
前記液晶ポリマーが、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ヒドロキノン、4,4’-ビフェノール、アセトアミノフェン、又はそれらの組み合わせから誘導される繰り返し単位を含む、請求項
27に記載のカメラモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、米国特許出願第62/594,603号(2017年12月5日出願)及び第62/746,757号(2018年10月17日出願)(これらはそれらの全部を参照することによって本明細書中に包含される)に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
[0002]カメラモジュール(又は構成部品)は、携帯電話、ラップトップコンピュータ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラなどにおいてしばしば用いられている。例としては、例えば、ベースに載置された支持材(carrier)を含むコンパクトカメラモジュール、デジタルカメラシャッターモジュール、デジタルカメラの構成部品、ゲーム機内のカメラ、医療用カメラ、監視カメラなどが挙げられる。かかるカメラモジュールはより複雑になってきており、現在では多数の可動部品を含む傾向がある。例えば幾つかの場合においては、2つのコンパクトカメラモジュールアセンブリを単一のモジュール内に搭載して画質を向上させることができる(「デュアルカメラ」モジュール)。他の場合においては、列状のコンパクトカメラモジュールを用いることができる。特定の設計に関係なく、液晶ポリマーはそれらの高配向結晶構造のために製造中にしばしば使用され、これによりポリマーを非常に小さく複雑な部品に容易に成形することが可能になる。しかしながら残念なことに、高配向構造はまた、液晶ポリマーを摩耗しやすくする。すなわち、ポリマーの1以上のスキン層が使用中に部品から剥離する傾向があり、これは劣った外観及び/又は性能をもたらす可能性がある。
【発明の概要】
【0003】
[0003]したがって、カメラモジュールにおいて容易に使用することができるポリマー組成物に対する必要性が存在する。
[0004]本発明の一実施形態によれば、少なくとも1種類の芳香族ポリマー(例えばサーモトロピック液晶ポリマー)、及び芳香族ポリマー100重量部あたり約1~約20重量部の量のトライボロジー処方物(tribological formulation)を含むポリマー組成物が開示される。トライボロジー処方物は、フッ素化添加剤、及び約100,000グラム/モル以上の重量平均分子量を有するシロキサンポリマーを含む。シロキサンポリマーに対するフッ素化添加剤の重量比は、約0.5~約12である。
【0004】
[0005]本発明の更に別の実施形態によれば、その上に支持材アセンブリが載置されたベースを含むカメラモジュールが開示される。ベース、支持材アセンブリ、又は両方は成形部品を含む。成形部品は、少なくとも1種類のサーモトロピック液晶ポリマー及びトライボロジー処方物を含むポリマー組成物を含む。このポリマー組成物は、VDA 230-206:2007にしたがって求めて約0.4以下の動摩擦係数を示す。
【0005】
[0006]本発明の他の特徴及び態様を下記においてより詳細に示す。
[0007]当業者に対するそのベストモードを含む、本発明の完全かつ実施可能な開示を、添付の図面の参照を含む本明細書の残りの部分においてより詳細に示す。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】[0008]
図1は、本発明の一実施形態にしたがって形成することができるコンパクトカメラモジュール(CCM)の斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態にしたがって形成することができるコンパクトカメラモジュール(CCM)の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[0009]当業者であれば、本議論は、単に例示的な実施形態の説明であり、本発明のより広い態様を限定することは意図しないことを理解する。
[0010]一般的に言えば、本発明は、芳香族ポリマーをトライボロジー処方物と組み合わせて含むポリマー組成物に関する。本発明者らは、これらの成分の性質及びそれらの相対濃度を選択的に制御することによって、得られるポリマー組成物が、当該組成物を含む部品の(例えばカメラモジュール内での)使用中にスキン層が剥離する程度を最小にする低い程度の表面摩擦を達成することができることを見出した。例えば、本ポリマー組成物は、VDA 230-206:2007にしたがって求めて約1.0以下、幾つかの実施形態においては約0.4以下、幾つかの実施形態においては約0.35以下、幾つかの実施形態においては約0.1~約0.3の動摩擦係数を示すことができる。また、摩耗深さは、VDA 230-206:2007にしたがって求めて約500マイクロメートル以下、幾つかの実施形態においては約200マイクロメートル以下、幾つかの実施形態においては約100マイクロメートル以下、幾つかの実施形態においては約10~約70マイクロメートルであり得る。
【0008】
[0011]従来は、かかる低摩擦面を有する部品はまた、十分に良好な機械特性を有しないと考えられていた。しかしながら、従来の考えに反して、本発明の組成物は優れた機械特性を有することが見出された。例えば、本組成物は、ISO試験No.179-1:2010(ASTM D256-10e1と技術的に同等)にしたがって23℃において測定して約20kJ/m2より高く、幾つかの実施形態においては約25~約100kJ/m2、幾つかの実施形態においては約30~約80kJ/m2のシャルピーノッチ無し衝撃強さを示すことができる。本組成物はまた、ISO試験No.179-1:2010(ASTM D256-10e1と技術的に同等)にしたがって23℃において測定して、約0.5kJ/m2より高く、幾つかの実施形態においては約1~約20kJ/m2、幾つかの実施形態においては約5~約15kJ/m2のシャルピーノッチ付き衝撃強さを示すことができる。引張及び曲げ機械特性も良好である。例えば、本組成物は、約20~約500MPa、幾つかの実施形態においては約50~約400MPa、幾つかの実施形態においては約60~約350MPaの引張強さ;約1%以上、幾つかの実施形態においては約2%~約15%、及び幾つかの実施形態においては約3%~約10%の引張破断歪み;及び/又は、約4,000MPa~約20,000MPa、幾つかの実施形態においては約5,000MPa~約18,000MPa、幾つかの実施形態においては約6,000MPa~約12,000MPaの引張弾性率;を示すことができる。引張特性は、ISO試験No.527:2012(ASTM D638-14と技術的に同等)にしたがって23℃において求めることができる。本組成物はまた、約20~約500MPa、幾つかの実施形態においては約50~約400MPa、幾つかの実施形態においては約80~約350MPaの曲げ強さ、及び/又は約4,000MPa~約20,000MPa、幾つかの実施形態においては約5,000MPa~約18,000MPa、幾つかの実施形態においては約6,000MPa~約15,000MPaの曲げ弾性率を示すことができる。曲げ特性は、ISO試験No.178:2010(ASTM D790-10と技術的に同等)にしたがって23℃において求めることができる。また、成形部品は、ASTM D648-07(ISO試験No.75-2:2013と技術的に同等)にしたがって1.8MPaの規定荷重において測定して、約180℃以上、幾つかの実施形態においては約190℃~約280℃の荷重撓み温度(DTUL)を示すことができる。また、本部品のロックウェル硬さは、ASTM D785-08(スケールM)にしたがって求めて、約25以上、幾つかの実施形態においては約30以上、幾つかの実施形態においては約35~約80であり得る。
【0009】
[0012]更に、本組成物はまた、特に上記で議論したように帯電防止フィラーをポリマー組成物内に含ませた場合に、優れた帯電防止挙動を示すことができる。かかる帯電防止挙動は、IEC-60093にしたがって求めて比較的低い表面及び/又は体積抵抗率によって特徴付けることができる。例えば、本組成物は、約1×1015Ω以下、幾つかの実施形態においては約1×1014Ω以下、幾つかの実施形態においては約1×1010Ω~約9×1013Ω、幾つかの実施形態においては約1×1011~約1×1013Ωの表面抵抗率を示すことができる。更に、本成形部品はまた、約1×1015Ω・m以下、幾つかの実施形態においては約1×109Ω・m~約9×1014Ω・m、幾つかの実施形態においては約1×1010~約5×1014Ω・mの体積抵抗率を示すことができる。勿論、かかる帯電防止挙動は決して必須ではない。例えば、幾つかの実施形態においては、本組成物は、約1×1015Ω以上、幾つかの実施形態においては約1×1016Ω以上、幾つかの実施形態においては約1×1017Ω~約9×1030Ω、幾つかの実施形態においては約1×1018~約1×1026Ωのような比較的高い表面抵抗率を示し得る。
【0010】
[0013]ここで、本発明の種々の実施形態をより詳細に説明する。
I.ポリマー組成物:
A.芳香族ポリマー:
[0014]芳香族ポリマーは、通常はポリマー組成物の約20重量%~約70重量%、幾つかの実施形態においては約30重量%~約65重量%、幾つかの実施形態においては約40重量%~約60重量%を構成する。芳香族ポリマーは、一般に、ポリマーの特定の性質に応じて比較的高いガラス転移温度及び/又は高い融点を有する「高性能」ポリマーと考えられる。而して、かかる高性能ポリマーは、得られるポリマー組成物に相当な程度の耐熱性を与えることができる。例えば、芳香族ポリマーは、約100℃以上、幾つかの実施形態においては約120℃以上、幾つかの実施形態においては約140℃~約350℃、幾つかの実施形態においては約150℃~約320℃のガラス転移温度を有していてよい。芳香族ポリマーはまた、約200℃以上、幾つかの実施形態においては約220℃~約400℃、幾つかの実施形態においては約240℃~約380℃の融点を有していてよい。ガラス転移温度及び融点は、示差走査熱量測定(DSC)を使用して当該技術において周知なように求めることができ、例えばISO試験No.11357-2:2013(ガラス転移温度)及び11357-3:2011(融点)によって求めることができる。
【0011】
[0015]芳香族ポリマーは、実質的に非晶質、半結晶質、又は結晶質であってよい。好適な半結晶質芳香族ポリマーの一例は、例えば芳香族ポリアミドである。特に好適な芳香族ポリアミドは、ISO試験No.11357にしたがって示差走査熱量測定を用いて求めて、例えば約200℃以上、幾つかの実施形態においては約220℃以上、幾つかの実施形態においては約240℃~約320℃のような比較的高い融点を有するものである。また、芳香族ポリアミドのガラス転移温度は、一般に約110℃~約160℃である。
【0012】
[0016]芳香族ポリアミドは、通常はアミド結合(NH-CO)によって結合している繰り返し単位を含んでおり、ジカルボン酸(例えば芳香族ジカルボン酸)、ジアミン(例えば脂肪族ジアミン)などの重縮合によって合成される。例えば、芳香族ポリアミドは、芳香族ジカルボン酸、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,4-フェニレンジオキシ-二酢酸、1,3-フェニレンジオキシ-二酢酸、ジフェン酸、4,4’-オキシジ安息香酸、ジフェニルメタン-4,4’-ジカルボン酸、ジフェニルスルホン-4,4’-ジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸など、並びにそれらの組み合わせから誘導される芳香族繰り返し単位を含んでいてよい。テレフタル酸が特に好適である。勿論、脂肪族ジカルボン酸単位、多官能性カルボン酸単位などのような他のタイプの酸単位もまた使用することができることも理解すべきである。芳香族ポリアミドはまた、通常は4~14個の炭素原子を有する脂肪族ジアミンから誘導される脂肪族繰り返し単位を含んでいてよい。かかるジアミンの例としては、線状脂肪族アルキレンジアミン、例えば1,4-テトラメチレンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミンなど;分岐脂肪族アルキレンジアミン、例えば2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、3-メチル-1,5-ペンタンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、2,4-ジメチル-1,6-ヘキサンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、5-メチル-1,9-ノナンジアミンなど;並びにそれらの組み合わせが挙げられる。1,9-ノナンジアミン及び/又は2-メチル-1,8-オクタンジアミンから誘導される繰り返し単位が特に好適である。勿論、脂環式ジアミン、芳香族ジアミンなどのような他のジアミン単位も使用することができる。
【0013】
[0017]特に好適なポリアミドとしては、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド)(PA9T)、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド/ノナメチレンデカンジアミド)(PA9T/910)、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド/ノナメチレンドデカンジアミド)(PA9T/912)、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド/11-アミノウンデカンアミド(PA9T/11)、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド/12-アミノドデカンアミド)(PA9T/12)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/11-アミノウンデカンアミド)(PA10T/11)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/12-アミノドデカンアミド)(PA10T/12)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/デカメチレンドデカンジアミド)(PA10T/1010)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/デカメチレンドデカンジアミド)(PA10T/1012)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/テトラメチレンヘキサンジアミド)(PA10T/46)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/カプロラクタム)(PA10T/6)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンヘキサンジアミド)(PA10T/66)、ポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド/ドデカメチレンドデカンジアミド)(PA12T/1212)、ポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド/カプロラクタム)(PA12T/6)、ポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンヘキサンジアミド(PA12T/66)などを挙げることができる。好適な芳香族ポリアミドの更に他の例は、Harderらの米国特許第8,324,307号に記載されている。
【0014】
[0018]本発明において用いることができる他の好適な半結晶質芳香族ポリマーは、ポリアリールエーテルケトンである。ポリアリールエーテルケトンは、約300℃~約400℃、幾つかの実施形態においては約310℃~約390℃、幾つかの実施形態においては約330℃~約380℃のような比較的高い融点を有する半結晶質ポリマーである。また、ガラス転移温度は約110℃~約200℃であってよい。特に好適なポリアリールエーテルケトンは、主としてフェニル基をケトン及び/又はエーテル基と組み合わせて含むものである。かかるポリマーの例としては、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、ポリエーテル-ジフェニル-エーテル-エーテル-ジフェニル-エーテル-フェニル-ケトン-フェニルなど、並びにこれらのブレンド及びコポリマーが挙げられる。
【0015】
[0019]上記に示したように、識別できる融点を有しない実質的に非晶質のポリマーをポリマー組成物中において用いることもできる。好適な非晶質ポリマーとしては、例えば、ポリフェニレンオキシド(PPO)、芳香族ポリカーボネート、芳香族ポリエーテルイミドなどを挙げることができる。例えば芳香族ポリカーボネートは、通常は約130℃~約160℃のガラス転移温度を有し、1以上の芳香族ジオールから誘導される芳香族繰り返し単位を含む。特に好適な芳香族ジオールは、2つのフェノール基が二価連結基の単一の炭素原子に結合しているgem-ビスフェノールのようなビスフェノールである。かかるビスフェノールの例としては、例えば、4,4’-イソプロピリデンジフェノール(ビスフェノールA)、4,4’-エチリデンジフェノール、4,4’-(4-クロロ-a-メチルベンジリデン)ジフェノール、4,4’-シクロヘキシリデンジフェノール、4,4-(シクロヘキシルメチレン)ジフェノールなど、並びにこれらの組合せを挙げることができる。芳香族ジオールはホスゲンと反応させることができる。例えば、ホスゲンは、式:C(O)Cl2を有する塩化カルボニルであってよい。芳香族ポリカーボネートの合成に至る他の経路には、炭酸ジフェニルによる芳香族ジオール(例えばビスフェノール)のトランスエステル化を含ませることができる。
【0016】
[0020]上記のポリマーに加えて、ポリマー組成物中において結晶質ポリマーを使用することもできる。金型の小さな空間を有効に満たすことを可能にする高い結晶化度を有する液晶ポリマーが特に好適である。液晶ポリマーは、一般に、棒状構造を有し、それらの溶融状態(例えば、サーモトロピックネマチック状態)で結晶挙動を示すことができる限りにおいて「サーモトロピック」として分類される。このポリマーは、約250℃~約400℃、幾つかの実施形態においては約280℃~約390℃、幾つかの実施形態においては約300℃~約380℃のような比較的高い融点を有する。かかるポリマーは、当該技術において公知なように、1以上のタイプの繰り返し単位から形成することができる。液晶ポリマーには、例えば、通常はポリマーの約60モル%~約99.9モル%、幾つかの実施形態においては約70モル%~約99.5モル%、幾つかの実施形態においては約80モル%~約99モル%の量の1つ以上の芳香族エステル繰り返し単位を含ませることができる。芳香族エステル繰り返し単位は、一般に次式(I):
【0017】
【0018】
(式中、
環Bは、置換又は非置換の6員アリール基(例えば、1,4-フェニレン又は1,3-フェニレン)、置換又は非置換の5又は6員アリール基に縮合している置換又は非置換の6員アリール基(例えば2,6-ナフタレン)、或いは置換又は非置換の5又は6員アリール基に結合している置換又は非置換の6員アリール基(例えば4,4-ビフェニレン)であり;
Y1及びY2は、独立して、O、C(O)、NH、C(O)HN、又はNHC(O)である)
によって表すことができる。
【0019】
[0021]通常は、Y1及びY2の少なくとも1つはC(O)である。かかる芳香族エステル繰り返し単位の例としては、例えば、芳香族ジカルボン酸繰り返し単位(式Iにおいて、Y1及びY2はC(O)である)、芳香族ヒドロキシカルボン酸繰り返し単位(式Iにおいて、Y1はOであり、Y2はC(O)である)、並びにこれらの種々の組み合わせを挙げることができる。
【0020】
[0022]例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジカルボキシビフェニル、ビス(4-カルボキシフェニル)エーテル、ビス(4-カルボキシフェニル)ブタン、ビス(4-カルボキシフェニル)エタン、ビス(3-カルボキシフェニル)エーテル、ビス(3-カルボキシフェニル)エタンなど、並びにこれらのアルキル、アルコキシ、アリール、及びハロゲン置換体、並びにこれらの組み合わせのような芳香族ジカルボン酸から誘導される芳香族ジカルボン酸繰り返し単位を用いることができる。特に好適な芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸(TA)、イソフタル酸(IA)、及び2,6-ナフタレンジカルボン酸(NDA)を挙げることができる。用いる場合には、芳香族ジカルボン酸(例えば、IA、TA、及び/又はNDA)から誘導される繰り返し単位は、通常はポリマーの約5モル%~約60モル%、幾つかの実施形態においては約10モル%~約55モル%、幾つかの実施形態においては約15モル%~約50%を構成する。
【0021】
[0023]また、4-ヒドロキシ安息香酸;4-ヒドロキシ-4’-ビフェニルカルボン酸;2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸;2-ヒドロキシ-5-ナフトエ酸;3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸;2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸;4’-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸;3’-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸;4’-ヒドロキシフェニル-3-安息香酸等、並びにこれらのアルキル、アルコキシ、アリール、及びハロゲン置換体、並びにこれらの組み合わせのような芳香族ヒドロキシカルボン酸から誘導される芳香族ヒドロキシカルボン酸繰り返し単位を用いることもできる。特に好適な芳香族ヒドロキシカルボン酸は、4-ヒドロキシ安息香酸(HBA)及び6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(HNA)である。用いる場合には、ヒドロキシカルボン酸(例えばHBA及び/又はHNA)から誘導される繰り返し単位は、通常はポリマーの約10モル%~約85モル%、幾つかの実施形態においては約20モル%~約80モル%、幾つかの実施形態においては約25モル%~約75%を構成する。
【0022】
[0024]また、ポリマー中において他の繰り返し単位を用いることもできる。例えば幾つかの実施形態においては、ヒドロキノン、レゾルシノール、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル(又は4,4’-ビフェノール)、3,3’-ジヒドロキシビフェニル、3,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシビフェニルエーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタンなど、並びにこれらのアルキル、アルコキシ、アリール、及びハロゲン置換体、並びにこれらの組み合わせのような芳香族ジオールから誘導される繰り返し単位を用いることができる。特に好適な芳香族ジオールとしては、例えばヒドロキノン(HQ)及び4,4’-ビフェノール(BP)を挙げることができる。用いる場合には、芳香族ジオール(例えばHQ及び/又はBP)から誘導される繰り返し単位は、通常はポリマーの約1モル%~約30モル%、幾つかの実施形態においては約2モル%~約25モル%、幾つかの実施形態においては約5モル%~約20%を構成する。また、芳香族アミド(例えばアセトアミノフェン(APAP))、及び/又は芳香族アミン(例えば4-アミノフェノール(AP)、3-アミノフェノール、1,4-フェニレンジアミン、1,3-フェニレンジアミンなど)から誘導されるもののような繰り返し単位を用いることもできる。用いる場合には、芳香族アミド(例えばAPAP)及び/又は芳香族アミン(例えばAP)から誘導される繰り返し単位は、通常はポリマーの約0.1モル%~約20モル%、幾つかの実施形態においては約0.5モル%~約15モル%、幾つかの実施形態においては約1モル%~約10%を構成する。また、種々の他のモノマー繰り返し単位をポリマー中に導入することができることも理解すべきである。例えば幾つかの実施形態においては、脂肪族又は脂環式ヒドロキシカルボン酸、ジカルボン酸、ジオール、アミド、アミンなどのような非芳香族モノマーから誘導される1以上の繰り返し単位をポリマーに含ませることができる。勿論、他の実施形態においては、ポリマーは、非芳香族(例えば脂肪族又は脂環式)モノマーから誘導される繰り返し単位を含まないという点で「全芳香族」であってよい。
【0023】
[0025]必ずしも必要ではないが、液晶ポリマーは、ナフテン系ヒドロキシカルボン酸及びナフテン系ジカルボン酸、例えば、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸(NDA)、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(HNA)、又はそれらの組み合わせから誘導される繰り返し単位を最小含量で含む限りにおいて、「低ナフテン系」ポリマーであり得る。すなわち、ナフテン系ヒドロキシカルボン酸及び/又はジカルボン酸(例えば、NDA、HNA、又はHNAとNDAの組み合わせ)から誘導される繰り返し単位の総量は、通常はポリマーの30モル%以下、幾つかの実施形態においては約15モル%以下、幾つかの実施形態においては約10モル%以下、幾つかの実施形態においては約8モル%以下、幾つかの実施形態においては0モル%~約5モル%(例えば0モル%)である。高いレベルの従来のナフテン酸が存在しないにもかかわらず、得られる「低ナフテン系」ポリマーは、依然として良好な熱特性及び機械特性を示すことができると考えられる。
【0024】
[0026]1つの特定の実施形態においては、液晶ポリマーは、4-ヒドロキシ安息香酸(HBA)、並びにテレフタル酸(TA)及び/又はイソフタル酸(IA)、並びに種々の他の随意的な成分から誘導される繰り返し単位から形成することができる。4-ヒドロキシ安息香酸(HBA)から誘導される繰り返し単位は、ポリマーの約10モル%~約80モル%、幾つかの実施形態においては約30モル%~約75モル%、幾つかの実施形態においては約45モル%~約70%を構成することができる。更に、テレフタル酸(TA)及び/又はイソフタル酸(IA)から誘導される繰り返し単位は、ポリマーの約5モル%~約40モル%、幾つかの実施形態においては約10モル%~約35モル%、幾つかの実施形態においては約15モル%~約35%を構成することができる。また、ポリマーの約1モル%~約30モル%、幾つかの実施形態においては約2モル%~約25モル%、幾つかの実施形態においては約5モル%~約20%の量の4,4’-ビフェノール(BP)及び/又はヒドロキノン(HQ)から誘導される繰り返し単位を使用することもできる。他の可能な繰り返し単位としては、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(HNA)、2,6-ナフタレンジカルボン酸(NDA)、及び/又はアセトアミノフェン(APAP)から誘導されるものを挙げることができる。例えば幾つかの実施形態においては、HNA、NDA、及び/又はAPAPから誘導される繰り返し単位は、用いる場合には、それぞれ約1モル%~約35モル%、幾つかの実施形態においては約2モル%~約30モル%、幾つかの実施形態においては約3モル%~約25モル%を構成することができる。
【0025】
B.トライボロジー処方物:
[0027]また、通常はポリマー組成物中において使用される1種又は複数の芳香族ポリマー100部あたり約1~約30部、幾つかの実施形態においては約2~約15部、幾つかの実施形態においては約4~約12部の量のトライボロジー処方物をポリマー組成物中において用いることもできる。例えば、トライボロジー処方物は、ポリマー組成物の約1重量%~約30重量%、幾つかの実施形態においては約2重量%~約25重量%、幾つかの実施形態においては約4重量%~約10重量%を構成し得る。
【0026】
[0028]トライボロジー処方物は、一般に、内部潤滑性を向上し、別の表面に接触する組成物の摩耗及び摩擦特性を強化するのにも役立つシロキサンポリマーを含む。かかるシロキサンポリマーは、通常は、組成物中において使用される1種又は複数の芳香族ポリマー100部あたり約0.1~約20部、幾つかの実施形態においては約0.4~約10部、幾つかの実施形態においては約0.5~約5部を構成する。一般に、任意の種々のシロキサンポリマーをトライボロジー処方物において使用することができる。シロキサンポリマーは、例えば、骨格中に、式:
RrSiO(4-r/2)
(式中、
Rは、独立して、水素、又は置換若しくは非置換の炭化水素基であり、
rは、0、1、2又は3である)
を有するシロキサン単位を含む任意のポリマー、コポリマー、又はオリゴマーを包含し得る。
【0027】
[0029]好適な基Rの幾つかの例としては、例えば、場合によって置換されているアルキル、アリール、アルキルアリール、アルケニル、又はアルキニル、或いはシクロアルキル基が挙げられ、これらはヘテロ原子が介在していてもよく、すなわち炭素鎖又は環中に1つ又は複数のヘテロ原子を含んでいてもよい。好適なアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル及びtert-ペンチル基、ヘキシル基(例えばn-ヘキシル)、ヘプチル基(例えばn-ヘプチル)、オクチル基(例えばn-オクチル)、イソオクチル基(例えば2,2,4-トリメチルペンチル基)、ノニル基(例えばn-ノニル)、デシル基(例えばn-デシル)、ドデシル基(例えばn-ドデシル)、オクタデシル基(例えばn-オクタデシル)などを挙げることができる。更に、好適なシクロアルキル基としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル基、メチルシクロヘキシル基などを挙げることができ;好適なアリール基としては、フェニル、ビフェニル、ナフチル、アントリル、及びフェナントリル基を挙げることができ;好適なアルキルアリール基としては、はo-、m-、又はp-トリル基、キシリル基、エチルフェニル基などを挙げることができ;好適なアルケニル又はアルキニル基としては、ビニル、1-プロペニル、1-ブテニル、1-ペンテニル、5-ヘキセニル、ブタジエニル、ヘキサジエニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、エチニル、プロパルギル、1-プロピニルなどを挙げることができる。置換炭化水素基の例は、ハロゲン化アルキル基(例えば、3-クロロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、及びペルフルオロヘキシルエチル)、及びハロゲン化アリール基(例えば、p-クロロフェニル、及びp-クロロベンジル)である。1つの特定の実施形態においては、シロキサンポリマーは、Si原子の少なくとも70モル%に結合したアルキル基(例えばメチル基)、及び場合によってはSi原子の0.001~30モル%に結合したビニル及び/又はフェニル基を含む。シロキサンポリマーはまた、好ましくは主としてジオルガノシロキサン単位から構成される。ポリオルガノシロキサンの末端基は、トリアルキルシロキシ基、特にトリメチルシロキシ基、又はジメチルビニルシロキシ基であってよい。しかしながら、これらのアルキル基の1つ以上が、メトキシ又はエトキシ基のように、ヒドロキシ基又はアルコキシ基で置換されていることもあり得る。シロキサンポリマーの特に好適な例としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、フェニルメチルポリシロキサン、ビニルメチルポリシロキサン、及びトリフルオロプロピルポリシロキサンが挙げられる。
【0028】
[0030]シロキサンポリマーはまた、ポリマーのシロキサンモノマー単位の少なくとも一部の上に、ビニル基、ヒドロキシル基、ヒドリド、イソシアネート基、エポキシ基、酸基、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、及びプロポキシ)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ、及びオクタノイルオキシ)、ケトキシメート基(例えば、ジメチルケトキシム、メチルケトキシム、及びメチルエチルケトキシム)、アミノ基(例えば、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、及びブチルアミノ)、アミド基(例えば、N-メチルアセトアミド、及びN-エチルアセトアミド)、酸アミド基、アミノ-オキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基(例えば、ビニルオキシ、イソプロペニルオキシ、及び1-エチル-2-メチルビニルオキシ)、アルコキシアルコキシ基(例えば、メトキシエトキシ、エトキシエトキシ、及びメトキシプロポキシ)、アミノオキシ基(例えば、ジメチルアミノオキシ、及びジエチルアミノオキシ)、メルカプト基などの1以上のような反応性官能基を含んでいてもよい。
【0029】
[0031]その特定の構造にかかわらず、シロキサンポリマーは通常は比較的高い分子量を有し、これによりそれがポリマー組成物の表面に移動又は拡散する傾向が減少し、したがって相分離の可能性が更に最小になる。例えば、シロキサンポリマーは、通常は、約100,000グラム/モル以上、幾つかの実施形態においては約200,000グラム/モル以上、幾つかの実施形態においては約500,000グラム/モル~約2,000,000グラム/モルの重量平均分子量を有する。シロキサンポリマーはまた、約10,000センチストークス以上、幾つかの実施形態においては約30,000センチストークス以上、幾つかの実施形態においては約50,000~約500,000センチストークスのような比較的高い動粘度を有していてもよい。
【0030】
[0032]所望であれば、シリカ粒子(例えばヒュームドシリカ)をシロキサンポリマーと組み合わせて用いて、組成物中に分散するその能力の向上を助けることもできる。かかるシリカ粒子は、例えば、約5ナノメートル~約50ナノメートルの粒径、約50平方メートル/グラム(m2/g)~約600m2/gの表面積、及び/又は約160キログラム/立方メートル(kg/m3)~約190kg/m3の密度を有していてよい。使用する場合には、シリカ粒子は、通常はシロキサンポリマー100重量部を基準とする重量基準で約1~約100部、幾つかの実施形態においては約20~約60部を構成する。一実施形態においては、シリカ粒子は、シロキサンポリマーと混合した後に、この混合物をポリマー組成物に加えることができる。例えば、超高分子量ポリジメチルシロキサン及びヒュームドシリカを含む混合物をポリマー組成物中に含ませることができる。かかる予め形成された混合物は、Wacker Chemie, AGからGenioplast(登録商標)ペレットSとして入手できる。
【0031】
[0033]トライボロジー処方物にはまた、得られるポリマー組成物が低い摩擦と良好な耐摩耗性の良好な組合せを達成するのを助けることができる他の成分を含ませることもできる。例えば一実施形態においては、トライボロジー処方物は、シロキサンポリマーと組み合わせてフッ素化添加剤を使用することができる。理論によって限定されることは意図しないが、フッ素化添加剤は、中でも、より良好な金型充填性、内部潤滑性、離型性などを与えることなどによって組成物の加工性を向上することができると考えられる。使用する場合には、シロキサンポリマーに対するフッ素化添加剤の重量比は、通常は約0.5~約12、幾つかの実施形態においては約0.8~約10、幾つかの実施形態においては約1~約6である。例えば、フッ素化添加剤は、組成物中において使用される1種又は複数の芳香族ポリマー100部あたり約0.1~約20部、幾つかの実施形態においては約0.5~約15部、幾つかの実施形態においては約1~約10部を構成し得る。
【0032】
[0034]特定の実施形態においては、フッ素化添加剤として、水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されている炭化水素骨格ポリマーを含むフルオロポリマーを挙げることができる。骨格ポリマーはポリオレフィン性であってよく、フッ素置換された不飽和オレフィンモノマーから形成することができる。フルオロポリマーは、かかるフッ素置換モノマーのホモポリマー、又はフッ素置換モノマー若しくはフッ素置換モノマーと非フッ素置換モノマーの混合物のコポリマーであってよい。フッ素原子に加えて、フルオロポリマーは、塩素及び臭素原子のような他のハロゲン原子で置換されていてもよい。本発明において使用するためのフルオロポリマーを形成するのに好適な代表的なモノマーは、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロエチルビニルエーテル、ペルフルオロメチルビニルエーテル、ペルフルオロプロピルビニルエーテルなど、並びにそれらの混合物である。好適なフルオロポリマーの具体例としては、ポリテトラフルオロエチレン、ペルフルオロアルキルビニルエーテル、ポリ(テトラフルオロエチレン-co-ペルフルオロアルキルビニルエーテル)、フッ素化エチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレンなど、並びにそれらの混合物が挙げられる。
【0033】
[0035]フッ素化添加剤には、フルオロポリマーのみを含ませることができ、又はポリマー組成物内に均一に分散するその能力を助けるもののような他の成分を含ませることもできる。例えば一実施形態においては、フッ素化添加剤に、フルオロポリマーを複数の支持体粒子と組み合わせて含ませることができる。かかる実施形態においては、例えば、フルオロポリマーを支持体粒子上に被覆することができる。タルク(Mg3Si4O10(OH)2)、ハロイサイト(Al2Si2O5(OH)4)、カオリナイト(Al2Si2O5(OH)4)、イライト((K,H3O)(Al,Mg,Fe)2(Si,Al)4O10[(OH)2,(H2O)])、モンモリロナイト(Na,Ca)0.33(Al,Mg)2Si4O10(OH)2・nH2O)、バーミキュライト((MgFe,Al)3(Al,Si)4O10(OH)2・4H2O)、パリゴルスカイト((Mg,Al)2Si4O10(OH)・4(H2O))、パイロフィライト(Al2Si4O10(OH)2)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、マイカ、珪藻土、珪灰石などのようなシリケート粒子が、この目的のために特に好適である。例えば、マイカは本発明において用いるのに特に好適な鉱物である可能性がある。地質学的存在状態における相当な相違を有する幾つかの化学的に異なるマイカ種が存在するが、全て実質的に同じ結晶構造を有する。本明細書において用いる「マイカ」という用語は、モスコバイト(KAl2(AlSi3)O10(OH)2)、バイオタイト(K(Mg,Fe)3(AlSi3)O10(OH)2)、フロゴパイト(KMg3(AlSi3)O10(OH)2)、レピドライト(K(Li,Al)2~3(AlSi3)O10(OH)2)、グローコナイト(K,Na)(Al,Mg,Fe)2(Si,Al)4O10(OH)2)など、並びにこれらの組み合わせのような任意のこれらの種を総称的に包含すると意図される。支持体粒子は、約5~約50マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約10~20マイクロメートルの平均粒径を有していてよい。所望であれば、支持体粒子は、その長さに対する長軸の比が2以上であるという点で、板状粒子の形状であってもよい。
【0034】
C.他の任意成分:
i.無機フィラー:
[0036]所望であれば、ポリマー組成物の特定の特性を向上させるために無機フィラーを使用することができる。例えば、本発明者らは、特定の硬度値を有する無機フィラーを使用することにより、組成物を含む部品の機械強度、接着強度、及び表面平滑性を向上させることができることを見出した。得られるポリマー組成物はまた、ポリマースキン層のより少ない層間剥離を達成することもでき、これによりそれを非常に小さい部品に特に適するようにすることが可能である。無機フィラーは、ポリマー組成物中において使用される1種又は複数の芳香族ポリマー100部あたりの重量基準で約10~約95部、幾つかの実施形態においては約20~約90部、幾つかの実施形態においては約50~約85部の量でポリマー組成物中において使用することができる。例えば、無機フィラーは、ポリマー組成物の約10重量%~約70重量%、幾つかの実施形態においては約20重量%~約60重量%、幾つかの実施形態においては約30重量%~約60重量%を構成し得る。
【0035】
[0037]無機フィラーの性質は、粒子、繊維などのように変化させることができる。例えば幾つかの実施形態においては、特定の硬度値を有する無機フィラー粒子を使用して、組成物の表面特性を改良するのを助けることができる。例えば、硬度値は、モース硬度スケールに基づいて、約2.5以上、幾つかの実施形態においては約3.0以上、幾つかの実施形態においては約3.0~約11.0、幾つかの実施形態においては約3.5~約11.0、幾つかの実施形態においては約4.5~約6.5であってよい。かかる粒子の例としては、例えば、炭酸カルシウム(CaCO3;3.0のモース硬度)、又は炭酸水酸化銅(Cu2CO3(OH)2;4.0のモース硬度)のような炭酸塩;フッ化カルシウム(CaFI2;4.0のモース硬度)のようなフッ化物;ピロリン酸カルシウム(Ca2P2O7;5.0のモース硬度)、無水リン酸二カルシウム(CaHPO4;3.5のモース硬度)、又は水和リン酸アルミニウム(AlPO4・2H2O;4.5のモース硬度)のようなリン酸塩;シリカ(SiO2;6.0のモース硬度)、カリウムアルミニウムシリケート(KAlSi3O8;6のモース硬度)、又はケイ酸銅(CuSiO3・H2O;5.0のモース硬度)のようなケイ酸塩;ホウケイ酸水酸化カルシウム(Ca2B5SiO9(OH)5;3.5のモース硬度)のようなホウ酸塩;アルミナ(AlO2;10.0のモース硬度);硫酸カルシウム(CaSO4;3.5のモース硬度)、又は硫酸バリウム(BaSO4;3~3.5のモース硬度)のような硫酸塩など、並びにこれらの組合せを挙げることができる。使用する場合には、無機粒子は、通常は、例えばISO-13320:2009にしたがうレーザー回折法を用いて(例えばHoriba LA-960粒径分布分析装置を用いて)求めて約0.1~約35マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約2~約20マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約3~約15マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約7~約12マイクロメートルのメジアン径(例えば直径)を有する。フィラー無機粒子はまた、狭い寸法分布を有していてもよい。すなわち、粒子の少なくとも約70体積%、幾つかの実施形態においては粒子の少なくとも約80体積%、幾つかの実施形態においては粒子の少なくとも約90体積%が上述の範囲内の寸法を有していてよい。
【0036】
[0038]無機フィラーはまた、所望の硬度値を有する材料から誘導される繊維であってもよい。この目的のために特に好適な繊維としては、シリケート、例えばネオシリケート、ソロシリケート、イノシリケート(例えば、珪灰石のようなカルシウムイノシリケート;トレモライトのようなカルシウムマグネシウムイノシリケート;アクチノライトのようなカルシウムマグネシウム鉄イノシリケート;アントフィライトのようなマグネシウム鉄イノシリケート;など)、フィロシリケート(例えば、パリゴルスカイトのようなアルミニウムフィロシリケート)、テクトシリケートなど;硫酸カルシウムのような硫酸塩(例えば、脱水又は無水石膏);ミネラルウール(例えば、ロックウール又はスラグウール);などの鉱物から誘導されるものが挙げられる。Nyco MineralsからNYGLOS(登録商標)(例えば、NYGLOS(登録商標)4W又はNYGLOS(登録商標)8)の商品名で商業的に入手できる珪灰石(4.5~5.0のモース硬度)のようなイノシリケートから誘導される繊維が特に好適である。使用する場合には、鉱物繊維は、ISO-13320:2009にしたがって(例えばHoriba LA-960粒径分布分析装置を用いて)レーザー回折技術を使用して求めて約0.1~約35マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約2~約20マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約3~約15マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約7~約12マイクロメートルのメジアン幅(例えば直径)を有していてよい。鉱物繊維はまた、狭い寸法分布を有していてもよい。すなわち、繊維の少なくとも約70体積%、幾つかの実施形態においては繊維の少なくとも約80体積%、幾つかの実施形態においては繊維の少なくとも約90体積%が上述の範囲内の寸法を有していてよい。鉱物繊維はまた、約1~約50、幾つかの実施形態においては約2~約20、幾つかの実施形態においては約4~約15のアスペクト比を有していてもよい。かかる鉱物繊維の体積平均長さは、例えば、約1~約200マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約2~約150マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約5~約100マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約10~約50マイクロメートルの範囲であってよい。
【0037】
ii.耐衝撃性改良剤:
[0039]所望であれば、ポリマー組成物中において耐衝撃性改良剤を使用して、ポリマー組成物の衝撃強さ及び柔軟性を向上させるのを助けることもできる。実際、本発明者らは、耐衝撃性改良剤が実際に成形部品の表面をより滑らかにし、使用中にスキン層がそれから剥離する可能性を最小にすることができることを見出した。使用する場合には、耐衝撃性改良剤は、通常はポリマー組成物中において使用される1種又は複数の芳香族ポリマー100部あたりの重量基準で約0.1~約20部、幾つかの実施形態においては約0.2~約10部、幾つかの実施形態においては約0.5~約5部を構成する。例えば、耐衝撃性改良剤は、ポリマー組成物の約0.1重量%~約10重量%、幾つかの実施形態においては約0.2重量%~約8重量%、幾つかの実施形態においては約0.5重量%~約4重量%を構成し得る。
【0038】
[0040]1つの特に好適なタイプの耐衝撃性改良剤としては、例えば、平均で分子あたり2以上のエポキシ官能基を含むという点で「エポキシ官能化されている」オレフィンコポリマーを挙げることができる。コポリマーは、一般に、1種類以上のα-オレフィンから誘導されるオレフィンモノマー単位を含む。かかるモノマーの例としては、例えば、2~20個の炭素原子、通常は2~8個の炭素原子を有する線状及び/又は分枝α-オレフィンが挙げられる。具体例としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン;3-メチル-1-ブテン;3,3-ジメチル-1-ブテン;1-ペンテン;1以上のメチル、エチル、又はプロピル置換基を有する1-ペンテン;1以上のメチル、エチル、又はプロピル置換基を有する1-ヘキセン;1以上のメチル、エチル、又はプロピル置換基を有する1-ヘプテン;1以上のメチル、エチル、又はプロピル置換基を有する1-オクテン;1以上のメチル、エチル、又はプロピル置換基を有する1-ノネン;エチル、メチル、又はジメチル-置換1-デセン;1-ドデセン;及びスチレンが挙げられる。特に望ましいα-オレフィンモノマーは、エチレン及びプロピレンである。コポリマーはまた、エポキシ官能性モノマー単位を含んでいてもよい。かかる単位の一例は、エポキシ官能性(メタ)アクリルモノマー成分である。本明細書において使用する「(メタ)アクリル」という用語は、アクリル及びメタクリルモノマー、並びにその塩又はエステル、例えば、アクリレート及びメタクリレートモノマーを包含する。例えば、好適なエポキシ官能性(メタ)アクリルモノマーとしては、グリシジルアクリレート及びグリシジルメタクリレートのような1,2-エポキシ基を含むものを挙げることができるが、これらに限定されない。他の好適なエポキシ官能性モノマーとしては、アリルグリシジルエーテル、グリシジルエタクリレート、及びグリシジルイタコネート(itoconate)が挙げられる。また、他の好適なモノマーを用いて、所望の分子量を達成するのを助けることもできる。
【0039】
[0041]もちろん、コポリマーは当該技術において公知の他のモノマー単位を含んでいてもよい。例えば、他の好適なモノマーとしては、エポキシ官能性でない(メタ)アクリルモノマーを挙げることができる。かかる(メタ)アクリルモノマーの例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、i-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、s-ブチルアクリレート、i-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、n-アミルアクリレート、i-アミルアクリレート、イソボルニルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、2-エチルブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレート、n-デシルアクリレート、メチルシクロヘキシルアクリレート、シクロペンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、i-プロピルメタクリレート、i-ブチルメタクリレート、n-アミルメタクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、i-アミルメタクリレート、s-ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、2-エチルブチルメタクリレート、メチルシクロヘキシルメタクリレート、シンナミルメタクリレート、クロチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロペンチルメタクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリル酸など、及びこれらの組み合わせを挙げることができる。例えば1つの特定の実施形態においては、コポリマーは、エポキシ官能性(メタ)アクリルモノマー成分、α-オレフィンモノマー成分、及び非エポキシ官能性(メタ)アクリルモノマー成分から形成されるターポリマーであってよい。コポリマーは、例えば、下記の構造:
【0040】
【0041】
(式中、x、y、及びzは1以上である)
を有するポリ(エチレン-co-ブチルアクリレート-co-グリシジルメタクリレート)であってよい。
【0042】
[0042]1つ又は複数のモノマー成分の相対割合は、エポキシ反応性とメルトフローレートの間のバランスを達成するように選択することができる。より詳しくは、高いエポキシモノマー含量はマトリクスポリマーとの良好な反応性をもたらすことができるが、含量が過度に高いと、コポリマーがポリマーブレンドの溶融強度に悪影響を与える程度までメルトフローレートが減少する可能性がある。したがって、殆どの実施形態において、1種類又は複数のエポキシ官能性(メタ)アクリルモノマーは、コポリマーの約1重量%~約20重量%、幾つかの実施形態においては約2重量%~約15重量%、幾つかの実施形態においては約3重量%~約10重量%を構成する。また、1種類又は複数のα-オレフィンモノマーは、コポリマーの約55重量%~約95重量%、幾つかの実施形態においては約60重量%~約90重量%、幾つかの実施形態においては約65重量%~約85重量%を構成し得る。用いる場合には、他のモノマー成分(例えば非エポキシ官能性(メタ)アクリルモノマー)は、コポリマーの約5重量%~約35重量%、幾つかの実施形態においては約8重量%~約30重量%、幾つかの実施形態においては約10重量%~約25重量%を構成し得る。得られるメルトフローレートは、通常は、ASTM D1238-13にしたがって2.16kgの荷重及び190℃の温度において求めて、約1~約30グラム/10分(g/10分)、幾つかの実施形態においては約2~約20g/10分、幾つかの実施形態においては約3~約15g/10分である。
【0043】
[0043]本発明において用いることができる好適なエポキシ官能化コポリマーの1つの例は、ArkemaからLOTADER(登録商標)AX8840の名称で商業的に入手できる。LOTADER(登録商標)AX8840は、例えば5g/10分のメルトフローレートを有し、8重量%のグリシジルメタクリレートモノマー含量を有する。他の好適なコポリマーは、DuPontからELVALOY(登録商標)PTWの名称で商業的に入手でき、これはエチレン、ブチルアクリレート、及びグリシジルメタクリレートのターポリマーであり、12g/10分のメルトフローレート、及び4重量%~5重量%のグリシジルメタクリレートモノマー含量を有する。
【0044】
iii.帯電防止フィラー:
[0044]また、ポリマー組成物中において帯電防止フィラーを用いて、成形操作、輸送、回収、組立などの間において静電荷を生成する傾向の減少を助けることもできる。かかるフィラーは、用いる場合には、通常はポリマー組成物中において用いる1種類又は複数の芳香族ポリマー100部あたりの重量基準で約0.1~約20部、幾つかの実施形態においては約0.2~約10部、幾つかの実施形態においては約0.5~約5部を構成する。例えば、帯電防止フィラーは、ポリマー組成物の約0.1重量%~約10重量%、幾つかの実施形態においては約0.2重量%~約8重量%、幾つかの実施形態においては約0.5重量%~約4重量%を構成し得る。
【0045】
[0045]一般に、任意の種々の帯電防止フィラーをポリマー組成物中において用いて、その帯電防止特性の向上を助けることができる。好適な帯電防止フィラーの例としては、例えば、金属粒子(例えばアルミニウムフレーク)、金属繊維、炭素粒子(例えば、黒鉛、膨張黒鉛、グラフェン、カーボンブラック、黒鉛化カーボンブラックなど)、カーボンナノチューブ、炭素繊維などを挙げることができる。炭素繊維及び炭素粒子(例えば黒鉛)が特に好適である。用いる場合には、好適な炭素繊維としては、ピッチベースの炭素(例えばタールピッチ)、ポリアクリロニトリルベースの炭素、金属被覆炭素などを挙げることができる。望ましくは、炭素繊維は、それらが比較的高い炭素含量、例えば約85重量%以上、幾つかの実施形態においては約90重量%以上、幾つかの実施形態においては約93重量%以上の炭素含量を有するという点で高い純度を有する。例えば、炭素含量は、少なくとも約94重量%、例えば少なくとも約95%重量%、例えば少なくとも約96重量%、例えば少なくとも約97重量%、例えば更には少なくとも約98重量%であってよい。炭素純度は、一般に100重量%未満、例えば約99重量%未満である。炭素繊維の密度は、通常は約0.5~約3.0g/cm3、幾つかの実施形態においては約1.0~約2.5g/cm3、幾つかの実施形態においては約1.5~約2.0g/cm3である。
【0046】
[0046]一実施形態においては、炭素繊維は繊維の破断を最小にしてマトリクス中に導入する。成形後の繊維の体積平均長さは、一般に、約3mmの初期長さを有する繊維を用いる場合であっても約0.1mm~約1mmにすることができる。また、炭素繊維の平均長さ及び分布も、液晶ポリマーマトリクス内においてより良好な接続及び電気流路を達成するように、最終ポリマー組成物中において選択的に制御することができる。繊維の平均直径は、約0.5~約30マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約1~約20マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約3~約15マイクロメートルであってよい。
【0047】
[0047]ポリマーマトリクス内における分散を向上させるために、炭素繊維は、炭素繊維と液晶ポリマーとの適合性を増加させるサイジング剤で少なくとも部分的に被覆することができる。サイジング剤は、安定で、液晶ポリマーを成形する温度において熱分解しないものであってよい。一実施形態においては、サイジング剤に芳香族ポリマーのようなポリマーを含ませることができる。例えば、芳香族ポリマーは、約300℃より高く、例えば約350℃より高く、例えば約400℃より高い熱分解温度を有していてよい。本明細書において用いる材料の熱分解温度とは、ASTM試験E-1131(又はISO試験11358)にしたがって求めて、材料が熱重量分析中にその質量の5%を損失する温度である。サイジング剤はまた、比較的高いガラス転移温度も有していてよい。例えば、サイジング剤のガラス転移温度は、約300℃より高く、例えば約350℃より高く、例えば約400℃より高くてよい。サイジング剤の特定の例としては、ポリイミドポリマー、全芳香族ポリエステルポリマーなどの芳香族ポリエステルポリマー、及び高温エポキシポリマーが挙げられる。一実施形態においては、サイジング剤に液晶ポリマーを含ませることができる。サイジング剤は、少なくとも約0.1重量%の量、例えば少なくとも0.2重量%の量、例えば少なくとも約0.1重量%の量で繊維上に存在させることができる。サイジング剤は、一般に約5重量%未満の量、例えば約3重量%未満の量で存在する。
【0048】
[0048]他の好適な帯電防止フィラーはイオン液体である。かかる材料の1つの利益は、イオン液体はまた、帯電防止剤であることに加えて溶融加工中に液体形態で存在することができ、これによりポリマーマトリクス内により均一にブレンドすることが可能であることである。これにより導電性が向上し、それによって組成物がその表面から静電荷を速やかに消散させる能力が増大する。
【0049】
[0049]イオン液体は、一般に、液晶ポリマーと一緒に溶融加工する際に液体の形態であることができるのに十分に低い融点を有する塩である。例えば、イオン液体の融点は、約400℃以下、幾つかの実施形態においては約350℃以下、幾つかの実施形態においては約1℃~約100℃、幾つかの実施形態においては約5℃~約50℃であってよい。塩は、カチオン種及び対イオンを含む。カチオン種は、「カチオン中心」として少なくとも1つのヘテロ原子(例えば窒素又はリン)を有する化合物を含む。かかるヘテロ原子化合物の例としては、例えば次の構造:
【0050】
【0051】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8は、独立して、水素;置換又は非置換のC1~C10アルキル基(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチルなど);置換又は非置換のC3~C14シクロアルキル基(例えば、アダマンチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロオクチル、シクロヘキセニルなど);置換又は非置換のC1~C10アルケニル基(例えば、エチレン、プロピレン、2-メチルプロピレン、ペンチレンなど);置換又は非置換のC2~C10アルキニル基(例えば、エチニル、プロピニルなど);置換又は非置換のC1~C10アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、t-ブトキシ、sec-ブトキシ、n-ペントキシなど);置換又は非置換のアシルオキシ基(例えば、メタクリロキシ、メタクリロキシエチルなど);置換又は非置換のアリール基(例えばフェニル);置換又は非置換のヘテロアリール基(例えば、ピリジル、フラニル、チエニル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、イミダゾリル、イソキサゾリル、ピロリル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、キノリルなど);などからなる群から選択される)
を有する第4級オニウムが挙げられる。例えば1つの特定の実施形態においては、カチオン種は、構造:N+R1R2R3R4(式中、R1、R2、及び/又はR3は、独立してC1~C6アルキル(例えば、メチル、エチル、ブチルなど)であり、R4は、水素又はC1~C4アルキル基(例えばメチル又はエチル)である)を有するアンモニウム化合物であってよい。例えば、カチオン成分は、トリブチルメチルアンモニウム(R1、R2、及びR3はブチルであり、R4はメチルである)であってよい。
【0052】
[0050]カチオン種に対する好適な対イオンとしては、例えば、ハロゲン(例えば、塩素、臭素、ヨウ素など);スルフェート又はスルホネート(例えば、硫酸メチル、硫酸エチル、硫酸ブチル、硫酸ヘキシル、硫酸オクチル、ハイドロジェンスルフェート、メタンスルホネート、ドデシルベンゼンスルホネート、ドデシルスルフェート、トリフルオロメタンスルホネート、ヘプタデカフルオロオクタンスルホネート、ナトリウムドデシルエトキシスルフェートなど);スルホスクシネート;アミド(例えばジシアンアミド);イミド(例えば、ビス(ペンタフルオロエチル-スルホニル)イミド、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ビス(トリフルオロメチル)イミドなど);ボレート(例えば、テトラフルオロボレート、テトラシアノボレート、ビス[オキサラト]ボレート、ビス[サリチラト]ボレートなど);ホスフェート又はホスフィネート(例えば、ヘキサフルオロホスフェート、ジエチルホスフェート、ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィネート、トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、トリス(ノナフルオロブチル)トリフルオロホスフェートなど);アンチモネート(例えばヘキサフルオロアンチモネート);アルミネート(例えばテトラクロロアルミネート);脂肪酸カルボキシレート(例えば、オレエート、イソステアレート、ペンタデカフルオロオクタノエートなど);シアネート;アセテート;など、並びに上記の任意のものの組み合わせを挙げることができる。液晶ポリマーとの相溶性の向上を助けるために、イミド、脂肪酸カルボキシレートなどのような実質的に概して疎水性の対イオンを選択することが望ましい可能性がある。特に好適な疎水性対イオンとしては、例えば、ビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、及びビス(トリフルオロメチル)イミドを挙げることができる。
【0053】
iv.他の添加剤:
[0051]滑剤、熱伝導性フィラー、顔料、酸化防止剤、安定剤、界面活性剤、ワックス、難燃剤、垂れ防止剤、並びに特性及び加工性を向上させるために加える他の材料のような広範囲の更なる添加剤をポリマー組成物中に含ませることもできる。例えば、実質的に分解することなく液晶ポリマーの加工条件に耐えることができる滑剤を、ポリマー組成物中において用いることができる。かかる滑剤の例としては、脂肪酸エステル、その塩、エステル、脂肪酸アミド、有機ホスフェートエステル、及びエンジニアリングプラスチック材料の加工において滑剤として通常用いられるタイプの炭化水素ワックス、並びにこれらの混合物が挙げられる。好適な脂肪酸は、通常は、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、モンタン酸、オクタデシニック酸(octadecinic acid)、パリンリック酸(parinric acid)などのように、約12~約60個の炭素原子の骨格炭素鎖を有する。好適なエステルとしては、脂肪酸エステル、脂肪アルコールエステル、ワックスエステル、グリセロールエステル、グリコールエステル、及びコンプレックスエステルが挙げられる。脂肪酸アミドとしては、脂肪酸第1級アミド、脂肪酸第2級アミド、メチレン及びエチレンビスアミド、並びにアルカノールアミド、例えば、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、N,N’-エチレンビスステアラミドなどが挙げられる。また、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどのような脂肪酸の金属塩;パラフィンワックス、ポリオレフィン及び酸化ポリオレフィンワックス、並びに微結晶質ワックスなどの炭化水素ワックス;も好適である。特に好適な滑剤は、ステアリン酸の酸、塩、又はアミド、例えばペンタエリトリトールテトラステアレート、カルシウムステアレート、又はN,N’-エチレンビスステアラミドである。用いる場合には、1種類又は複数の滑剤は、通常は、ポリマー組成物の約0.05重量%~約1.5重量%、幾つかの実施形態においては約0.1重量%~約0.5重量%(重量基準)を構成する。
【0054】
[0052]もちろん、本発明の1つの有益な特徴は、得られる部品の寸法安定性に悪影響を与えることなく良好な機械特性を達成することができることである。この寸法安定性を維持すること確保することを助けるためには、ポリマー組成物は、ガラス繊維のような通常の繊維状フィラーを実質的に含まないままにすることが一般に望ましい。而して、使用したとしても、かかる繊維は、通常はポリマー組成物の約10重量%以下、幾つかの実施形態においては約5重量%以下、幾つかの実施形態においては約0.001重量%~約3重量%を構成する。
【0055】
II.形成:
[0053]芳香族ポリマー、トライボロジー処方物、及び他の随意的な添加剤は、一緒に溶融加工又はブレンドすることができる。これらの成分は、バレル(例えば円筒形のバレル)内に回転可能に取り付けられて収容されている少なくとも1つのスクリューを含み、スクリューの長さに沿って、供給セクション及び供給セクションの下流に配置される溶融セクションを画定することができる押出機に、別々か又は組み合わせて供給することができる。押出機は一軸又は二軸押出機であってよい。スクリューの速度は、所望の滞留時間、剪断速度、溶融加工温度などを達成するように選択することができる。例えば、スクリュー速度は、約50~約800の毎分回転数(rpm)、幾つかの実施形態においては約70~約150rpm、幾つかの実施形態においては約80~約120rpmの範囲にすることができる。また、溶融ブレンド中のみかけ剪断速度は、約100秒-1~約10,000秒-1、幾つかの実施形態においては約500秒-1~約5000秒-1、幾つかの実施形態においては約800秒-1~約1200秒-1の範囲にすることができる。みかけ剪断速度は、4Q/πR3(式中、Qはポリマー溶融体の体積流量(m3/秒)であり、Rはそれを通って溶融ポリマーが流れる毛細管(例えば押出機ダイ)の半径(m)である)に等しい。
【0056】
[0054]本発明者らは、それを形成する特定の方法には関係なく、得られるポリマー組成物は優れた熱特性を有することができることを見出した。例えば、ポリマー組成物を小さい寸法を有する金型のキャビティ中に容易に流入させることができるように、ポリマー組成物の溶融粘度を十分に低くすることができる。1つの特定の実施形態においては、ポリマー組成物は、1000秒-1の剪断速度において求めて約1~約200Pa・秒、幾つかの実施形態においては約5~約180Pa・秒、幾つかの実施形態においては約10~約150Pa・秒、幾つかの実施形態においては約60~約120Pa・秒の溶融粘度を有し得る。溶融粘度は、ISO試験No.11443:2005にしたがって、組成物の融点(例えば350℃)よりも15℃高い温度で求めることができる。
【0057】
III.成形部品:
[0055]種々の異なる技術を使用してポリマー組成物から成形部品を形成することができる。好適な技術としては、例えば、射出成形、低圧射出成形、押出圧縮成形、ガス射出成形、フォーム射出成形、低圧ガス射出成形、低圧フォーム射出成形、ガス押出圧縮成形、フォーム押出圧縮成形、押出成形、フォーム押出成形、圧縮成形、フォーム圧縮成形、ガス圧縮成形などを挙げることができる。例えば、その中にポリマー組成物を射出することができる金型を含む射出成形システムを使用することができる。射出機内部の時間は、ポリマーマトリクスが早期に固化しないように制御及び最適化することができる。サイクル時間に達して、バレルが排出のために満杯になった時点で、ピストンを使用して組成物を金型キャビティに射出することができる。圧縮成形システムを使用することもできる。射出成形と同様に、ポリマー組成物の所望の物品への成形も金型内で行われる。組成物は任意の公知の技術を使用して、例えば自動化ロボットアームによって取り上げることによって圧縮金型中に配置することができる。金型の温度は、固化を可能にするために、所望の時間、ポリマーマトリクスの固化温度以上に維持することができる。次に、成形品を融点より低い温度にすることによって、成形品を固化させることができる。得られた生成物を離型することができる。それぞれの成形プロセスのサイクル時間は、ポリマーマトリクスに適合するように、十分な結合を達成するように、及びプロセス全体の生産性を高めるように調整することができる。
【0058】
[0056]その高い流動性のために、比較的薄い成形部品(例えば射出成形部品)をそれから容易に形成することができる。例えば、かかる部品は、約10ミリメートル以下、幾つかの実施形態においては約5ミリメートル以下、幾つかの実施形態においては約0.2~約4ミリメートル(例えば0.3又は3ミリメートル)の厚さを有し得る。射出成形部品を形成する際には、例えば、比較的高い「スパイラルフロー長さ」を達成することができる。「スパイラルフロー長さ」という用語は、一般に、その中に螺旋流路が形成された金型の中央ゲートから一定の射出温度及び射出圧力で射出した場合に、螺旋流路内の組成物の流れによって到達する長さを指す。スパイラルフロー長さは、例えば、ASTM D3121-09にしたがって、230℃のバレル温度、40℃~60oCの金型温度、及び860barの最高射出圧力で求めて、約15ミリメートル以上、幾つかの実施形態においては約20ミリメートル以上、幾つかの実施形態においては約22ミリメートル以上、幾つかの実施形態においては約25~約80ミリメートルであり得る。
【0059】
[0057]ポリマー組成物はまた、部品に成形される際に寸法的に安定なままに維持することができ、したがって、比較的低い程度の反りを示す。反りの程度は、下記においてより詳細に記載する試験によって求めて低い「平坦度値」によって特徴付けることができる。より具体的には、ポリマー組成物は、約1ミリメートル以下、幾つかの実施形態においては約0.8ミリメートル以下、幾つかの実施形態においては約0.1~約0.7ミリメートルの平坦度値を示すことができる。組成物はまた、高温及び高湿度のレベル(例えば、85℃及び85%の相対湿度)において相当な時間(例えば72時間)コンディショニングした後においても、かかる低い反りを維持することができる。例えば、85℃/85%の相対湿度において72時間コンディショニングした後に、ポリマー組成物は、約2ミリメートル以下、幾つかの実施形態においては約1.5ミリメートル以下、幾つかの実施形態においては約0.1~約1.2ミリメートルの平坦度値を依然として示すことができる。
【0060】
[0058]本発明のポリマー組成物から広範囲のタイプの部品を形成することもできる。例えば、ポリマー組成物は、照明アセンブリ、電池システム、センサー及び電子コンポーネント、スマートホンのような携帯電子機器、MP3プレーヤー、携帯電話、コンピューター、テレビ、自動車部品などにおいて用いることができる。1つの特定の実施形態においては、ポリマー組成物は、無線通信機器(例えば携帯電話)において通常的に用いられているもののようなカメラモジュールにおいて用いることができる。例えば、カメラモジュールは、ベース、ベース上に載置された支持材アセンブリ、支持材アセンブリ上に載置されたカバーなどを用いることができる。ベースは、約500マイクロメートル以下、幾つかの実施形態においては約10~約450マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約20~約400マイクロメートルの厚さを有していてよい。更に、支持材アセンブリは、約500マイクロメートル以下、幾つかの実施形態においては約10~約450マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約20~約400マイクロメートルの壁厚を有していてよい。
【0061】
[0059]1つの特に好適なカメラモジュールを
図1~2に示す。示されているように、カメラモジュール500は、ベース506の上に配されている支持材アセンブリ504を含む。次にベース506は、場合によって用いるメインボード508の上に配される。これらの比較的薄い特徴のために、ベース506及び/又はメインボード508は、本発明のポリマー組成物から成形するのに特に適している。支持材アセンブリ504は、当該技術において公知の任意の種々の構造を有していてよい。例えば一実施形態においては、支持材アセンブリ504は、1以上のレンズ604を収容する中空のバレルを含んでいてよく、これはメインボード508の上に配置されて回路601によって制御される画像センサー602と連絡している。バレルは、長方形、円筒形などのような任意の種々の形状を有していてよい。幾つかの実施形態においては、バレルを本発明のポリマー組成物から形成することができ、上述の範囲内の壁厚を有していてよい。カメラモジュールの他の部品も本発明のポリマー組成物から形成することができることを理解すべきである。例えば、示されているように、例えば基材510(例えばフィルム)及び/又は断熱キャップ502を含むカバーによって、支持材アセンブリ504を覆うことができる。幾つかの実施形態においては、基材510及び/又はキャップ502も本ポリマー組成物から形成することができる。
【実施例】
【0062】
[0060]本発明は以下の実施例を参照してより良好に理解することができる。
試験方法:
[0061]摩擦及び摩耗: SSP-03機を使用し、VDA 230-206:2007(スティックスリップ試験)にしたがって求める平均動摩擦係数(無次元)によって、試料によって発生する摩擦の程度を特徴付けることができる。また、VDA 230-206:2007にしたがって、試験試料の摩耗の程度を求めることもできる。より詳しくは、ポリマー生成物を使用して、射出成形プロセスによってボール形状の試験片及びプレート形状の試験片を調製する。ボール試験片は直径0.5インチである。プレート試験片は、引張棒材の2つの端部領域を切断することによって、ISO引張棒材の中央部から得られる。プレート試験片を試料ホルダー上に固定し、ボール試験片を、150mm/秒及び15Nの力でプレート試験片と接触させて移動させる。1000サイクル後、動摩擦係数が得られる。摩耗の深さは、摩耗したボール領域の直径を測定することによって、ボール試験片から得られる。磨耗領域の直径に基づいて、ボール試験片の磨耗深さを計算して求める。
【0063】
[0062]溶融粘度:溶融粘度(Pa・秒)は、ISO試験No.11443:2005にしたがい、Dynisco LCR 7001毛細管流量計を用いて、1000秒-1の剪断速度、及び融点よりも15℃高い温度(例えば350℃)において求めることができる。流量計のオリフィス(ダイ)は、1mmの直径、20mmの長さ、20.1のL/D比、及び180°の入口角を有していた。バレルの直径は9.55mm+0.005mmであり、ロッドの長さは233.4mmであった。
【0064】
[0063]融点:融点(Tm)は、当該技術において公知なように示差走査熱量測定(DSC)によって求めることができる。融点は、ISO試験No.11357-2:2013によって求められる示差走査熱量測定(DSC)ピーク融解温度である。DSC手順においては、TA-Q2000装置上で行うDSC測定を用いて、ISO標準規格10350に示されているように試料を20℃/分で加熱及び冷却した。
【0065】
[0064]荷重撓み温度(DTUL):荷重撓み温度は、ISO試験No.75-2:2013(ASTM D648-07と技術的に同等)にしたがって求めることができる。より詳しくは、80mmの長さ、10mmの厚さ、及び4mmの幅を有する試験片試料を、規定荷重(最大外繊維応力)が1.8メガパスカルである沿層方向3点曲げ試験にかけることができる。試験片をシリコーン油浴中に降下させることができ、そこで0.25mm(ISO試験No.75-2:2013に関しては0.32mm)歪むまで温度を2℃/分で上昇させる。
【0066】
[0065]引張弾性率、引張応力、及び引張伸び:引張特性は、ISO試験No.527:2012(ASTM D638-14と技術的に同等)にしたがって試験することができる。80mmの長さ、10mmの厚さ、及び4mmの幅を有する同じ試験片試料について、弾性率及び強度の測定を行うことができる。試験温度は23℃であってよく、試験速度は1又は5mm/分であってよい。
【0067】
[0066]曲げ弾性率及び曲げ応力:曲げ特性は、ISO試験No.178:2010(ASTM D790-10と技術的に同等)にしたがって試験することができる。この試験は64mmの支持材スパンに関して行うことができる。試験は、未切断のISO-3167多目的棒材の中央部分について行うことができる。試験温度は23℃であってよく、試験速度は2mm/分であってよい。
【0068】
[0067]ノッチ無し及びノッチ付きシャルピー衝撃強さ:シャルピー特性は、ISO試験No.179-1:2010(ASTM D256-10,方法Bと技術的に同等)にしたがって試験することができる。この試験は、タイプ1の試験片寸法(80mmの長さ、10mmの幅、及び4mmの厚さ)を用いて行うことができる。ノッチ付き衝撃強さを試験する場合には、ノッチはタイプAのノッチ(0.25mmの底半径)であってよい。試験片は、一枚歯フライス盤を用いて多目的棒材の中央部分から切り出すことができる。試験温度は23℃であってよい。
【0069】
[0068]ロックウェル硬さ:ロックウェル硬さは材料の押し込み抵抗性の指標であり、ASTM D785-08(スケールM)にしたがって求めることができる。試験は、まず規定の小荷重を用いて鋼球圧子を材料の表面中に押し込むことによって行う。次に、荷重を規定の大荷重に増加させ、減少させて元の小荷重に戻す。ロックウェル硬さは、圧子の深さの正味の増加分の指標であり、貫入量を目盛分割で割った値を130から減じることによって計算される。
【0070】
[0069]表面/体積抵抗率:表面及び体積抵抗率の値は、一般にIEC-60093(ASTM D257-07と同等)にしたがって求められる。この手順によると、標準試験片(例えば1メートル立方)を2つの電極の間に配置する。電圧を60秒間印加し、抵抗を測定する。表面抵抗率は、電位勾配(V/m)と単位電極長さあたりの電流(A/m)との商であり、概して絶縁材料の表面に沿った漏れ電流に対する抵抗を表す。電極の4つの端が正方形を画定するので、商において長さは約分されて表面抵抗率はΩで報告されるが、Ω/スクエアのより説明的な単位を見ることも通常的である。体積抵抗率もまた、電流密度に対する材料において電流に平行な電位勾配の比として求められる。SI単位においては、体積抵抗率は1メートル立方の材料の対向面の間の直流抵抗(Ω・m)に数値的に等しい。
【0071】
[0070]ウェルドライン強度:ウェルドライン強度は、当該技術において周知のように、まずポリマー組成物試料から射出成形コンパクトカメラモジュールを形成することによって求めることができる。形成したら、コンパクトカメラモジュールを試料ホルダ上に配置することができる。5.08ミリメートル/分の速度で移動するロッドによって、モジュールのウェルドラインを引張力にかけることができる。破断時の最大力(kgf)を、ウェルドライン強度の概算値として記録することができる。
【0072】
[0071]スパイラルフロー長さ:「スパイラルフロー長さ」という用語は、一般に、その中に螺旋流路が形成された金型の中央ゲートから一定の射出温度及び射出圧力で射出した場合に、螺旋流路(0.3mmの厚さ)内の組成物の流れによって到達する長さを指す。スパイラルフロー長さは、ASTM D3121-09にしたがって、230℃のバレル温度、40℃~60oCの金型温度、及び860barの最高射出圧力で求めることができる。
【0073】
[0072]平坦度値:LGAコネクタ試料の平坦度値(反り)は、OGP Smartscope Quest 300光学測定システムを用いて測定することができる。XYZ測定は、5、22.5、50、57.5、及び75mmに対応するX及びYの値から開始して、試験片を横切ってとることができる。Z値は、最小Z値がゼロの高さに対応するように正規化することができる。平坦度値は、25の正規化されたZ値の平均として計算される。
【0074】
実施例1:
[0073]下表1に示す種々の割合の液晶ポリマー、硫酸バリウム、耐衝撃性改良剤(Lotader(登録商標)8840)、トライボロジー処方物、黒色マスターバッチ、及び帯電防止フィラーから、試料1~6を形成する。トライボロジー処方物は、高分子量シロキサンポリマー(Genioplast(登録商標)Pellet S)とフッ素化添加剤(Thor FPzマイカ)との組み合わせを含む。黒色マスターバッチは、80重量%の液晶ポリマー及び20重量%のカーボンブラックを含む。帯電防止フィラーはイオン液体、すなわちトリ-n-ブチルメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)-イミド(3MからのFC-4400)である。試料1~4における液晶ポリマー(LCP-1)、はLeeらの米国特許第5,508,374号に記載されているように、HBA、HNA、TA、BP、及びAPAPから形成し、試料5~6における液晶ポリマー(LCP-2)は、HBA、HNA、及びTAから形成する。配合は、18mmの一軸押出機を用いて行う。試料をプラーク(60mm×60mm)に射出成形して部品を形成する。
【0075】
【0076】
[0074]試料1~3及び5~6はまた、熱特性、機械特性、及び摩耗特性についても試験する。結果を下表2に示す。
【0077】
【0078】
実施例2:
[0075]下表3に示す種々の割合の液晶ポリマー、無機フィラー(硫酸バリウム又はマイカ)、耐衝撃性改良剤(Lotader(登録商標)8840)、トライボロジー処方物、及び黒色マスターバッチから、試料7~12を形成する。トライボロジー処方物は、高分子量シロキサンポリマー(Genioplast(登録商標)Pellet S)及びフッ素化添加剤(KT-300MPTFE)の組合せを含む。黒色マスターバッチは、80重量%の液晶ポリマー及び20重量%のカーボンブラックを含む。試料10~12における液晶ポリマー(LCP-1)は、Leeらの米国特許5,508,374に記載されているように、HBA、HNA、TA、BP、及びAPAPから形成し、一方で試料7~9における液晶ポリマー(LCP-2)は、HBA、HNA、及びTAから形成する。配合は、18mmの一軸押出機を用いて行う。試料をプラーク(60mm×60mm)に射出成形して部品を形成する。
【0079】
【0080】
[0076]試料7~12はまた、熱特性、機械特性、及び摩耗特性についても試験する。結果を下表4に示す。
【0081】
【0082】
[0077]本発明のこれら及び他の修正及び変形は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、当業者によって実施することができる。更に、種々の実施形態の複数の態様は、全体的に又は部分的に交換することができることを理解すべきである。更に、当業者であれば、上記の記載が単に例示の目的であり、添付の特許請求の範囲に更に記載される本発明を限定することは意図しないことを理解する。
以下に、本願の出願時の特許請求の範囲の記載を示す。
[請求項1]
ポリマー組成物であって、少なくとも1種類の芳香族ポリマー、及び前記芳香族ポリマー100重量部あたり約1~約20重量部の量のトライボロジー処方物を含み、前記トライボロジー処方物は、フッ素化添加剤、及び約100,000グラム/モル以上の重量平均分子量を有するシロキサンポリマーを含み、更に、前記シロキサンポリマーに対する前記フッ素化添加剤の重量比は約0.5~約12である、前記ポリマー組成物。
[請求項2]
前記芳香族ポリマーが前記ポリマー組成物の約20重量%~約70重量%を構成し、前記トライボロジー処方物が前記ポリマー組成物の約1重量%~約30重量%を構成する、請求項1に記載のポリマー組成物。
[請求項3]
前記シロキサンポリマーが、前記芳香族ポリマー100重量部あたり約0.1~約20重量部の量で存在する、請求項1に記載のポリマー組成物。
[請求項4]
前記シロキサンポリマーが、骨格中に式:
RrSiO(4-r/2)
(式中、Rは、独立して、水素、又は置換若しくは非置換の炭化水素基であり、rは、0、1、2又は3である)
を有するシロキサン単位を含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
[請求項5]
前記シロキサンポリマーが、Si原子の少なくとも70モル%に結合したアルキル基を含む、請求項4に記載のポリマー組成物。
[請求項6]
前記シロキサンポリマーが、ジメチルポリシロキサン、フェニルメチルポリシロキサン、ビニルメチルポリシロキサン、トリフルオロプロピルポリシロキサン、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
[請求項7]
前記シロキサンポリマーが約10,000センチストークス以上の動粘度を有する、請求項1に記載のポリマー組成物。
[請求項8]
前記トライボロジー処方物がシリカ粒子を更に含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
[請求項9]
前記フッ素化添加剤が、前記芳香族ポリマー100重量部あたり約0.1~約20重量部の量で存在する、請求項1に記載のポリマー組成物。
[請求項10]
前記フッ素化添加剤がフルオロポリマーを含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
[請求項11]
前記フルオロポリマーが、ポリテトラフルオロエチレン、ペルフルオロアルキルビニルエーテル、ポリ(テトラフルオロエチレン-co-ペルフルオロアルキビニルエーテル)、フッ素化エチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、又はそれらの組み合わせを含む、請求項10に記載のポリマー組成物。
[請求項12]
前記フルオロポリマーが支持体粒子上に被覆されている、請求項10に記載のポリマー組成物。
[請求項13]
前記支持体粒子がシリケート粒子を含む、請求項12に記載のポリマー組成物。
[請求項14]
前記芳香族ポリマー100重量部あたり約10~約95重量部の量の無機フィラーを更に含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
[請求項15]
前記無機フィラーが、モース硬度スケールに基づいて約2.5以上の硬度値を有する粒子を含む、請求項14に記載のポリマー組成物。
[請求項16]
前記粒子が硫酸バリウムを含む、請求項15に記載のポリマー組成物。
[請求項17]
前記芳香族ポリマー100重量部あたり約0.1~約20重量部の量の耐衝撃性改良剤を更に含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
[請求項18]
前記耐衝撃性改良剤がエポキシ官能化オレフィンコポリマーを含む、請求項17に記載のポリマー組成物。
[請求項19]
前記芳香族ポリマー100重量部あたり約0.1~約20重量部の量の帯電防止フィラーを更に含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
[請求項20]
前記帯電防止フィラーがイオン液体を含む、請求項19に記載のポリマー組成物。
[請求項21]
前記芳香族ポリマーが、約100℃以上のガラス転移温度及び/又は約200℃以上の融点を有する、請求項1に記載のポリマー組成物。
[請求項22]
前記芳香族ポリマーがサーモトロピック液晶ポリマーである、請求項1に記載のポリマー組成物。
[請求項23]
前記液晶ポリマーが、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ヒドロキノン、4,4’-ビフェノール、アセトアミノフェン、又はそれらの組み合わせから誘導される繰り返し単位を含む、請求項22に記載のポリマー組成物。
[請求項24]
前記組成物が、VDA 230-206:2007にしたがって求めて約1.0以下の動摩擦係数を示す、請求項1に記載のポリマー組成物。
[請求項25]
前記組成物が、VDA 230-206:2007にしたがって求めて約500マイクロメートル以下の摩耗深さを示す、請求項1に記載のポリマー組成物。
[請求項26]
前記組成物が、ASTM D3121-09にしたがって求めて約15ミリメートル以上のスパイラルフロー長さを示す、請求項1に記載のポリマー組成物。
[請求項27]
請求項1に記載のポリマー組成物を含む成形部品。
[請求項28]
請求項26に記載の成形部品を含むカメラモジュール。
[請求項29]
その上に支持材アセンブリが載置されたベースを含むカメラモジュールであって、前記ベース、支持材アセンブリ、又は両方は成形部品を含み、前記成形部品は、少なくとも1種類のサーモトロピック液晶ポリマー及びトライボロジー処方物を含むポリマー組成物を含み、前記組成物は、VDA 230-206:2007にしたがって求めて約1.0以下の動摩擦係数を示す、前記カメラモジュール。
[請求項30]
前記組成物が、VDA 230-206:2007にしたがって求めて約500マイク
ロメートル以下の摩耗深さを示す、請求項29に記載のカメラモジュール。
[請求項31]
前記トライボロジー処方物が、約100,000グラム/モル以上の重量平均分子量を有するシロキサンポリマーを含む、請求項29に記載のカメラモジュール。
[請求項32]
前記シロキサンポリマーが約10,000センチストークス以上の動粘度を有する、請求項31に記載のカメラモジュール。
[請求項33]
前記トライボロジー処方物がフッ素化添加剤を更に含む、請求項29に記載のカメラモジュール。
[請求項34]
前記フッ素化添加剤がフルオロポリマーを含む、請求項33に記載のカメラモジュール。
[請求項35]
前記フルオロポリマーがシリケート粒子上に被覆されている、請求項34に記載のカメラモジュール。
[請求項36]
前記ポリマー組成物が、モース硬度スケールに基づいて約2.5以上の硬度値を有する無機フィラー粒子を更に含む、請求項29に記載のカメラモジュール。
[請求項37]
前記ポリマー組成物が耐衝撃性改良剤を更に含む、請求項29に記載のカメラモジュール。
[請求項38]
前記ポリマー組成物が帯電防止フィラーを更に含む、請求項29に記載のカメラモジュール。
[請求項39]
前記液晶ポリマーが、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ヒドロキノン、4,4’-ビフェノール、アセトアミノフェン、又はそれらの組み合わせから誘導される繰り返し単位を含む、請求項29に記載のカメラモジュール。