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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 133/04 20060101AFI20231025BHJP
   C09D 5/16 20060101ALI20231025BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20231025BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20231025BHJP
【FI】
C09D133/04
C09D5/16
C09D7/63
C09D7/61
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2020550814
(86)(22)【出願日】2019-03-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 EP2019056663
(87)【国際公開番号】W WO2019179917
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-03-18
(31)【優先権主張番号】1804434.7
(32)【優先日】2018-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】519316391
【氏名又は名称】ヨツン アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(72)【発明者】
【氏名】マリート ダーリング
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2016/167360(JP,A1)
【文献】中国特許出願公開第103881576(CN,A)
【文献】米国特許第05008146(US,A)
【文献】特開2001-302989(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-10/00,101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)アクリルアセタールエステルコポリマー;及び
(ii)モノカルボン酸の亜鉛塩
を含む防汚コーティング組成物。
【請求項2】
(i)アクリルアセタールエステルコポリマー;
(ii)モノカルボン酸;及び
(iii)モノカルボン酸と反応してモノカルボン酸の亜鉛塩を形成する亜鉛化合物
を含む防汚コーティング組成物。
【請求項3】
アクリルアセタールエステルコポリマーが式(I):
【化1】
の少なくとも1つのモノマーの残基を含み、式中、
1はH又はメチルであり;
2はH又はC1-4アルキルであり;
3はC1-4アルキルであり;及び
4は任意選択で置換された直鎖又は分岐鎖のC1-20アルキル、C5-10シクロアルキル又はC6-10アリールであるか;又は
3及びR4は、それらが結合しているO原子とともに、任意選択で置換されたC4-8員の環を形成している、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
アクリルアセタールエステルコポリマーが(メタ)アクリル酸エステルモノマーに由来する繰り返し単位をさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
アクリルアセタールエステルコポリマーが、式(II):
【化2】
の少なくとも1つのモノマーの残基を含み、式中、
7はH又はメチルであり;
8は任意選択で置換されたC1-18アルキル、任意選択で置換されたC5-10シクロアルキル、任意選択で置換されたC6-10アリール又は任意選択で置換されたヘテロシクリルであり、その置換基はOR9及びヘテロシクリルから選択され;
9は水素、C1-8アルキル及び(CH2CH2-p(CH3pO)q10から選択され;
10は水素、C1-4アルキル及びフェニルから選択され;
pは0又は1であり;及び
qは1~20の整数である、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
式(II)において、R8が置換されていないC1-18アルキルである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
アクリルアセタールエステルコポリマーが少なくとも15wt%の式(I)のモノマーを含む、請求項3~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
アクリルアセタールエステルコポリマーが少なくとも25wt%の式(II)のモノマーを含む、請求項5又は6に記載の組成物。
【請求項9】
組成物の全体の質量に基づいて、アクリルアセタールエステルコポリマーの量が2~60wt%である、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
モノカルボン酸の亜鉛塩が、樹脂酸、樹脂酸の誘導体、C6-20環式モノカルボン酸、C5-24アクリル脂肪族モノカルボン酸、C7-20芳香族モノカルボン酸及びそれらの混合物から選択されるモノカルボン酸を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
組成物の全体の質量に基づいて、モノカルボン酸の亜鉛塩の量が1~30wt%である、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
モノカルボン酸が樹脂酸、樹脂酸の誘導体、C6-20環式モノカルボン酸、C5-24アクリル脂肪族モノカルボン酸、C7-20芳香族モノカルボン酸及びそれらの混合物である、請求項2に記載の、又は請求項2に従属する場合に請求項3~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
組成物の全体の質量に基づいて、モノカルボン酸の量が1~30wt%である、請求項2に記載の、又は請求項2に従属する場合に請求項3~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
亜鉛化合物が亜鉛酸化物、亜鉛硫化物、炭酸亜鉛及び炭酸亜鉛水酸化物から選択される、請求項2に記載の、又は請求項2に従属する場合に請求項3~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
組成物の全体の質量に基づいて、亜鉛化合物の量が0.2~20wt%である、請求項2に記載の、又は請求項2に従属する場合に請求項3~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
海洋防汚剤をさらに含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
安定剤をさらに含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
(i)アクリルアセタールエステルコポリマー;及び
(ii)モノカルボン酸の亜鉛塩
を混合することを含む、請求項1に記載の、又は請求項に従属する場合に請求項3~9のいずれか1項に記載の組成物を調製するための方法。
【請求項19】
(i)アクリルアセタールエステルコポリマー;
(ii)モノカルボン酸;及び
(iii)モノカルボン酸と反応してモノカルボン酸の亜鉛塩を形成する亜鉛化合物
を混合することを含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の組成物を調製するための方法。
【請求項20】
請求項1~17のいずれか1項に記載の組成物を含む塗料。
【請求項21】
請求項1~17のいずれか1項に記載の組成物を含有する塗料コンテナ。
【請求項22】
(i)アクリルアセタールエステルコポリマー並びに任意選択で安定剤及び/又は脱水剤を含有する第一のコンテナ;
(ii)モノカルボン酸の亜鉛塩及び任意選択で脱水剤を含有する第二のコンテナ;並びに
(iii)任意選択で、第一の及び第二のコンテナの内容物を混合するための説明書
を含む、請求項20に記載の塗料を調製するためのキット。
【請求項23】
(i) アクリルアセタールエステルコポリマー並びに任意選択で安定剤及び/又は脱水剤を含有する第一のコンテナ;
(ii)モノカルボン酸、モノカルボン酸と反応してモノカルボン酸の亜鉛塩を形成する亜鉛化合物及び任意選択で脱水剤を含有する第二のコンテナ;並びに
(iii)任意選択で、第一の及び第二のコンテナの内容物を混合するための説明書
を含む、請求項20に記載の塗料を調製するためのキット。
【請求項24】
物品の表面の少なくとも一部に、請求項1~17のいずれか1項に記載の組成物を含むコーティングを備える(例えば被覆された又はコートされた)物品。
【請求項25】
請求項1~17のいずれか1項に記載の組成物を用いて物品の表面の少なくとも一部をコートすること;及び
コーティングを乾燥及び/又は硬化すること
を含む、物品の汚損を防止するための、物品をコートする方法。
【請求項26】
物品の表面の少なくとも一部をコートしてその汚損を防止するための、請求項1~17のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリルアセタールエステルコポリマー及びモノカルボン酸の亜鉛塩を含む防汚コーティング組成物に関する。本発明はまた、アクリルアセタールエステルコポリマー、モノカルボン酸及びモノカルボン酸と反応してモノカルボン酸の亜鉛塩を形成する亜鉛化合物を含む防汚コーティング組成物に関する。本発明はまた、前記組成物を調製する方法、前記組成物を含む塗料、前記組成物を含有する塗料コンテナ並びに塗料を調製するためのキットに関する。加えて、本発明は、物品の表面の少なくとも一部にコーティングを備える物品、及び前記組成物を用いて物品の表面の少なくとも一部をコートすることを含む、物品の表面の汚損を防止するための、物品をコートする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海水中に沈められた表面は、海洋有機体、例えば緑藻及び褐藻、フジツボ、イガイ及びチューブワームによって汚損を受ける。海洋構造物、例えば船舶(船、タンカー)、石油プラットフォーム及び浮標において、このような汚損は望ましくなく、経済的な重要性を有する。汚損は、表面の生分解、増加した負荷及び加速された腐食に繋がる場合がある。船舶において、汚損は、速度の減少及び/又は増加した燃料消費を引き起こす摩擦抵抗を増加させる。
【0003】
海洋有機体の固着及び成長を防止するために、防汚塗料が使用される。現在、市場で最も成功している塗料の幾つかは、バインダーとしての加水分解性アクリルポリマーをベースとした自己研磨型防汚塗料である。2つの主要な自己研磨技術、シリルアクリレートコポリマー及び金属アクリレートコポリマーが存在し、そのうちシリルアクリレートコポリマーが最も成功している。これらのコポリマーが防汚コーティング組成物中に防汚剤とともに存在するとき、組成物は、効率的に乾燥して望ましい硬度のレベルを有する防汚コーティング又はフィルムを作り出すコーティングを作り出す。コーティングはまた、一度海水と接触すると、経時的にコーティングからの防汚剤の制御された放出をもたらして、一定の分解速度を示す。時には、制御された放出は、経時的な制御された研磨速度といわれる。
【0004】
加水分解性のバインダーとして開発されてきたコポリマーの第三の種類は、(メタ)アクリルアセタールエステルコポリマーである。これらのコポリマーは、シリルエステルコポリマーより安価であること及び持続可能なモノマーから製造されることから注目されている。しかし、(メタ)アクリルアセタールエステルコポリマーの自己研磨型防汚コーティング組成物及びコーティングにおける使用について直面する重大な難点は、それらがバルク加水分解する傾向があることである。このことは、遅い及び制御された初期研磨速度、次ぐコーティングの完全性の喪失並びに比較的短期間の間の崩壊において明らかである。このことは、防汚塗料は用途に応じて1~10年持続する必要があるため、この種類の自己研磨塗料の商業的な使用をかなり制限している。
【0005】
塗料産業が直面する困難な点は、効率的に乾燥してコーティング又はフィルムの適した硬度を生じさせる防汚コーティング組成物及び塗料を製造することである。そのことはまた、一度海水に接触して、長期間、例えば5年に至るまでの期間、制御された分解速度を示すコーティング又はフィルムのために非常に望ましい。標準的な技術、例えばエアレススプレーによって、組成物及び塗料を適用できることもまた明らかに重要であり、そのことは、一定の粘度レベルを有する、一方でそれらの揮発性有機化合物の含有量を最小化する、及び良好な適用特性をさらに達成する組成物及び塗料を意味する。
【発明の概要】
【0006】
第一の態様から見て、本発明は、
(i)アクリルアセタールエステルコポリマー;及び
(ii)モノカルボン酸の亜鉛塩
を含む防汚コーティング組成物を提供する。
【0007】
さらなる態様から見て、本発明は、
(i)アクリルアセタールエステルコポリマー;
(ii)モノカルボン酸;及び
(iii)モノカルボン酸と反応してモノカルボン酸の亜鉛塩を形成する亜鉛化合物
を含む防汚コーティング組成物を提供する。
【0008】
さらなる態様から見て、本発明は、
(i)アクリルアセタールエステルコポリマー;及び
(ii)モノカルボン酸の亜鉛塩
を混合することを含む、上で画定された組成物を調製するための方法を提供する。
【0009】
さらなる態様から見て、本発明は、
(i)アクリルアセタールエステルコポリマー;
(ii)モノカルボン酸;及び
(iii)モノカルボン酸と反応してモノカルボン酸の亜鉛塩を形成する亜鉛化合物
を混合することを含む、上で画定された組成物を調製するための方法を提供する。
【0010】
さらなる態様から見て、本発明は、上で説明された組成物を含む塗料を提供する。
【0011】
さらなる態様から見て、本発明は、上で説明された組成物を含有する塗料コンテナを提供する。
【0012】
さらなる態様から見て、本発明は、
(i)アクリルアセタールエステルコポリマー並びに任意選択で安定剤及び/又は脱水剤を含有する第一のコンテナ;
(iii)モノカルボン酸の亜鉛塩及び任意選択で脱水剤を含有する第二のコンテナ;並びに
(iv)任意選択で、第一の及び第二のコンテナの内容物を混合するための説明書
を含む、上で説明された塗料を調製するためのキットを提供する。
【0013】
さらなる態様から見て、本発明は、
(i) アクリルアセタールエステルコポリマー並びに任意選択で安定剤及び/又は脱水剤を含有する第一のコンテナ;
(ii)モノカルボン酸、モノカルボン酸と反応してモノカルボン酸の亜鉛塩を形成する亜鉛化合物及び任意選択で脱水剤を含有する第二のコンテナ;並びに
(iii)任意選択で、第一の及び第二のコンテナの内容物を混合するための説明書
を含む、上で説明された塗料を調製するためのキットを提供する。
【0014】
さらなる態様から見て、本発明は、物品の表面の少なくとも一部に上で説明された組成物を含むコーティングを備える(例えば被覆された又はコートされた)物品を提供する。
【0015】
さらなる態様から見て、本発明は、
上で説明された組成物を用いて物品の表面の少なくとも一部をコートすること;及び
コーティングを乾燥及び/又は硬化すること
を含む、物品の汚損を防止するための、物品をコートする方法を提供する。
【0016】
さらなる態様から見て、本発明は、物品の表面の少なくとも一部をコートしてその汚損を防止するための、上で説明された組成物の使用を提供する。
【0017】
定義
本明細書において使用されるとき、用語「防汚コーティング組成物」は、表面に適用されるとき、表面における海洋有機体の成長を防止又は最小化する組成物をいう。
【0018】
本明細書において使用されるとき、用語「塗料」は、本明細書において説明される防汚コーティング組成物、及び任意選択で、使用する、例えばスプレーするための準備ができている溶媒を含む組成物をいう。従って、防汚コーティング組成物は、それ自体が塗料であるか、又は防汚コーティング組成物は、溶媒が添加されて塗料を生じさせる濃縮物であってよい。
【0019】
本明細書において使用されるとき、用語「アクリルアセタールエステルコポリマー」は、(メタ)アクリル酸のヘミアセタール及びヘミケタールエステルに由来する繰り返し単位を含むポリマーをいう。繰り返し単位は-(CO)-OCR’R’’O-基を含み、R’はH又はアルキルであり、R’’はアルキルである。従って、前記用語は、メタクリレートアセタールエステルモノマー及びアクリレートアセタールエステルモノマーに由来する繰り返し単位を含むポリマーをカバーする。本明細書において使用するとき、用語「アセタールエステル」は、ヘミアセタールのエステルとヘミケタールのエステルの両方を包含する。
【0020】
用語「アクリルポリマー」は、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸のエステル、メタクリル酸のエステル、及びコポリマーの場合にはそれらの混合物、をベースとするポリマー及びコポリマーをいう。
【0021】
本明細書において使用されるとき、用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートのいずれかをいい;用語「(メタ)アクリル」は、アクリル又はメタクリルのいずれかをいう。
【0022】
本明細書において使用されるとき、用語「アルキル」は、飽和の、直鎖の、分岐鎖の又は環式の基をいう。アルキル基は置換されているか又は置換されていなくてもよい。
【0023】
本明細書において使用されるとき、用語「シクロアルキル」は、飽和又は部分飽和である、単環式又は二環式の3~10個の炭素原子を含有するアルキル環系をいう。シクロアルキル基は置換されているか又は置換されていなくてもよい。
【0024】
本明細書において使用されるとき、用語「アルキレン」は、2価のアルキル基をいう。
【0025】
本明細書において使用されるとき、用語「アリール」は、少なくとも1つの芳香族環を含む基をいう。用語アリールは、ヘテロアリール、並びに1つ又は複数の芳香族環がシクロアルキル環に縮合した縮合環系を包含する。アリール基は置換されているか又は置換されていなくてもよい。アリール基の一例はフェニル、すなわちC65である。フェニル基は置換されているか又は置換されていなくてもよい。
【0026】
本明細書において使用されるとき、用語「ヘテロシクリル」は、飽和(例えばヘテロシクロアルキル)又は不飽和(例えばヘテロアリール)の、3、4、5、6、7、8、9又は10個の環原子を有していて、環原子の少なくとも1つは窒素、酸素及び硫黄から選択される複素環部分をいう。
【0027】
本明細書において使用されるとき、「置換された」は、1つ又は複数の、例えば6までの、より特には1、2、3、4、5又は6個の基の中の水素原子が、互いに独立に、対応する数の説明される置換基によって置き換えられている基をいう。用語「任意選択で置換された」は、本明細書において使用されるとき、置換されているか又は置換されていないことを意味する。
【0028】
本明細書において使用されるとき、用語「モノカルボン酸」は、1つの-COOH基を含む化合物をいう。
【0029】
本明細書において使用されるとき、用語「樹脂酸」は、樹脂中に存在するカルボン酸の混合物をいう。
【0030】
本明細書において使用されるとき、用語「ロジン」は、ロジン及びロジンの誘導体をいう。
【0031】
本明細書において使用されるとき、用語「反応性亜鉛化合物」は、モノカルボン酸と反応してモノカルボン酸の亜鉛塩を生じさせる亜鉛含有化合物をいう。反応は、塗料の製造の間に、貯蔵の間に又は使用の前の混合の間に行うことができる。
【0032】
本明細書において使用されるとき、用語「モノカルボン酸の亜鉛塩」は、カルボン酸亜鉛をいう。モノカルボン酸の亜鉛塩は、少なくとも1つの、好ましくは2つの、亜鉛カチオンZn2+に結合又は配位したカルボキシレート(-COO-)基を含む。
【0033】
本明細書において使用されるとき、用語「安定剤」は、酸捕捉材をいう。安定剤は、本発明の組成物の貯蔵安定性に寄与する。
【0034】
本明細書において使用されるとき、用語「カルボジイミド」は、官能基-N=C=N-を含む化合物をいう。
【0035】
本明細書において使用されるとき、「脱水剤」は、組成物から水を除去する水捕捉剤又は乾燥剤をいう。
【0036】
本明細書において使用されるとき、「防汚剤」は、表面への海洋有機体の固着を防止するか、表面での海洋有機体の成長を防止するか、及び/又は表面からの海洋有機体の取り除きを促進する化合物又は化合物の混合物をいう。
【0037】
本明細書において使用されるとき、用語「増量剤」は、「充填剤」と互換的に使用され、コーティング組成物の体積又はバルクを増加させる化合物をいう。
【0038】
本明細書において使用されるとき、用語「分子量」は、他に明示されない限り、重量平均分子量(Mw)をいう。
【0039】
本明細書において使用されるとき、用語「PDI」又は多分散指数は、Mw/Mnをいい、Mnは数平均分子量をいう。
【0040】
本明細書において使用されるとき、用語「揮発性有機化合物(VOC)」は、101.3kPaの大気圧で250℃以下の沸点を有する化合物をいう。
【0041】
本明細書において使用されるとき、用語「組成物の全体の質量に基づくwt%」は、他に明示されない限り、最終の使用する準備ができている組成物中に存在する成分のwt%をいう。
【0042】
本発明の詳細な説明
本発明は、
(i)アクリルアセタールエステルコポリマー;及び
(ii)モノカルボン酸の亜鉛塩;又は
(i)アクリルアセタールエステルコポリマー;
(ii)モノカルボン酸;及び
(iii)モノカルボン酸と反応してモノカルボン酸の亜鉛塩を形成する亜鉛化合物
を含む、防汚コーティング組成物に関する。
【0043】
任意選択で、組成物は、1つ又は複数の(iv)防汚剤;(v)顔料及び/又は増量剤;(vi)コバインダー(cobinder);(vii)溶媒;(viii)安定剤化合物;(ix)脱水剤及び/又は(x)添加剤をさらに含む。
【0044】
本発明の防汚コーティング組成物において、アクリルアセタールエステルコポリマーの、モノカルボン酸の亜鉛塩との組み合わせは、有利には、比較的急速に乾燥して硬いコーティング又はフィルムを形成する組成物を提供する。モノカルボン酸の亜鉛塩は、初期の組成物中に存在しているか、又はモノカルボン酸及びモノカルボン酸と反応してモノカルボン酸の亜鉛塩を形成する亜鉛化合物からインサイチュで形成することができる。本発明の組成物から形成されたコーティングはまた、制御された、例えば実質的に線形である分解速度で、長期間、例えば1~10年の間、研磨される。このことは、コーティングが長期間、例えば1~10年の間、防汚剤の制御された放出を提供することを意味する。
【0045】
アクリルアセタールエステルコポリマー
本発明の防汚コーティング組成物中に存在するアクリルアセタールエステルポリマーは、コポリマーである。アクリルアセタールエステルコポリマーは、好ましくは少なくとも2つ(例えば2、3又は4つ)の異なるモノマー、より好ましくは2又は3つの異なるモノマーを含む。異なるモノマーは、異なる(メタ)アクリルアセタールエステルモノマー又は1種類の(メタ)アクリルアセタールエステルモノマー、及び別の種類のモノマー、例えば(メタ)アクリル酸エステルモノマーであってよい。本発明の防汚コーティング組成物中に存在する特に好ましいアクリルアセタールエステルコポリマーは、少なくとも1つの(メタ)アクリルアセタールエステルモノマー及び少なくとも1つの(メタ)アクリル酸エステルモノマーを含む。
【0046】
本発明の防汚コーティング組成物中に存在する好ましいアクリルアセタールエステルコポリマーは式(I):
【化1】
の少なくとも1つのモノマーの残基を含み、式中、
1はH又はメチルであり;
2はH又はC1-4アルキル、好ましくはHであり;
3はC1-4アルキルであり;及び
4は任意選択で置換された直鎖又は分岐鎖のC1-20アルキル、C5-10シクロアルキル又はC6-10アリールであるか;又は
3及びR4は、それらが結合しているO原子とともに、任意選択で置換されたC4-8員の環を形成している。
【0047】
式(I)のモノマーにおいて、R2がC1-4アルキルであるとき、R2は好ましくはC1-3アルキル、より好ましくはC1-2アルキルである。さらにより好ましくは、R2がC1-4アルキルであるとき、R2はメチル、エチル、n-プロピル及びi-プロピルから選択される。
【0048】
好ましい式(I)のモノマーにおいて、R2はメチル又はHであり、特に好ましくはHである。
【0049】
幾つかの好ましい式(I)のモノマーにおいて、R3はC1-4アルキル、より好ましくはC1-3アルキル、より一層好ましくはC1-2アルキルである。さらにより好ましくは、R3はメチル、エチル、n-プロピル及びi-プロピルから選択され、より一層好ましくはメチル及びエチルから選択される。好ましい式(I)のモノマーにおいて、R3はメチルである。
【0050】
幾つかの好ましい式(I)のモノマーにおいて、R2はHであり、R3はメチル又はエチル、とりわけメチルである。
【0051】
さらに好ましい式(I)のモノマーにおいて、R4は置換されていないC2-20アルキルである。R4が置換されていないC2-20アルキルであるとき、アルキル基は、好ましくは2~18個の炭素原子、より好ましくは4~12個の炭素原子、例えば4、5又は6個の炭素原子を含む。好ましいアルキル基は4~8個の炭素原子を含む。アルキル基は直鎖又は分岐鎖であってよい。R4が置換されていないC2-20アルキルであるとき、アルキル基は、好ましくはブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ドデシル及びオクタデシルから選択される。R4がブチルであるとき、R4は好ましくはn-ブチル又はイソブチルである。R4がオクチルであるとき、R4は、好ましくは2-エチルヘキシルである。
【0052】
さらに好ましい式(I)のモノマーにおいて、R4は置換されたC1-20アルキルである。R4が置換されたC1-20アルキルであるとき、アルキル基は、好ましくは1~12個の炭素原子、より好ましくは1~8個の炭素原子、例えば1、2、3、4又は6個の炭素原子を含む。アルキル基は、好ましくは直鎖である。アルキル基は、好ましくはメチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル及びオクチルから選択される。R4が置換されたC1-20アルキルであるとき、置換基はハロゲン、C5-10シクロアルキル、C6-10アリール、ヘテロシクリル又はOR5から選択され、R5はH、C1-8アルキル、C3-8シクロアルキル及び(CH2CH(2-m)(CH3mO)n6から選択され、R6はH、C1-4アルキル及びフェニルから選択され、mは0又は1であり、nは1~20、好ましくは1~6の整数である。任意選択で、C5-10シクロアルキル置換基は、それ自体がOH基によって置換されている。より好ましくは、置換基はアリール(例えばフェニル)、ヘテロシクリル又はOR5であり、R5はH、C1-8アルキル及び(CH2CH2O)n6から選択され、R6はH又はC1-4アルキルであり、nは1~20、好ましくは1~6の整数である。
【0053】
アルキル基がヘテロシクリルによって置換されているとき、ヘテロシクリルは、好ましくは3~10員の環又は環系、より好ましくは5又は6員の環であり、飽和又は不飽和であってよい。好ましくは、ヘテロシクリルは飽和である。あり得るヘテロシクリル基の代表的な例は、テトラヒドロフリル又はテトラヒドロピラニルである。
【0054】
アルキル基がOR5によって置換されているとき、R5は、好ましくはH、C1-8アルキル(例えばC1-3アルキル)及び(CH2CH(2-m)(CH3mO)n6から選択され、R6はH、C1-4アルキル又はフェニルであり、mは0又は1であり、nは1~20、好ましくは1~6の整数である。R5の代表的な例はH、メチル、エチル、(CH2CH2O)CH3及び(CH2CH2O)CH2CH3を含む。
【0055】
さらに好ましい式(I)のモノマーにおいて、R4は置換されていないC5-10シクロアルキルである。好ましい環式アルキル基は6~8個の炭素原子を含む。シクロアルキル基は架橋されているか又は多環式である環系であってよい。好ましいシクロアルキル基は単環式である。R4が置換されていないC5-10シクロアルキルであるとき、シクロアルキル基は、好ましくはシクロヘキシルである。
【0056】
さらに好ましい式(I)のモノマーにおいて、R4は置換されたC5-10シクロアルキルである。R4が置換されたC5-10シクロアルキルであるとき、アルキル基は、好ましくは6~8個、例えば6個の炭素原子を含む。シクロアルキル基は、好ましくはシクロヘキシルである。R4が置換されたC5-10シクロアルキルであるとき、置換基はC1-4アルキル又はOR5であってよく、R5はH又はC1-8アルキルから選択される。より好ましくは、置換基はC1-4アルキル又はOR5であり、R5はH及びC1-8アルキルから選択される。
【0057】
シクロアルキル基がOR5によって置換されているとき、R5は、好ましくはH及びC1-8アルキル(例えばC1-3アルキル)から選択される。R5の代表的な例はH、メチル及びエチルを含む。
【0058】
さらに好ましい式(I)のモノマーにおいて、R4は置換されていないC6-10アリールである。R4が置換されていないC6-10アリールであるとき、アリール基は、好ましくは6又は10個の炭素原子を含む。好ましいアリール基はフェニルを含む。
【0059】
さらに好ましい式(I)のモノマーにおいて、R4は置換されたC6-10アリールである。R4が置換されたC6-10アリールであるとき、アリール基、好ましくは6又は10個の炭素原子を含む。好ましいアリール基はフェニルを含む。置換基は、好ましくはハロゲン、C1-8アルキル及びOR5から選択され、R5はH及びC1-8アルキルから選択される。
【0060】
より一層好ましい式(I)のモノマーにおいて、R4は任意選択で置換された直鎖又は分岐鎖のC4-18アルキル又はC5-10シクロアルキルである。より一層好ましくは、R4は置換されていないC4-18アルキル又は置換されていないC5-10シクロアルキルである。さらにより好ましくは、R4はブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ドデシル、オクタデシル及びシクロヘキシル、特に好ましくはブチル、オクチル、ドデシル、オクタデシル及びシクロヘキシルから選択される。R4がブチルであるとき、R4は好ましくはn-ブチル又はイソブチルである。R4がオクチルであるとき、R4は、好ましくは2-エチルヘキシルである。
【0061】
幾つかの好ましい式(I)のモノマーにおいて、R2はHであり、R3はメチル又はエチル、とりわけメチルであり、R4はブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ドデシル、オクタデシル及びシクロヘキシルから選択される。R4がブチルであるとき、R4は、好ましくはn-ブチル又はイソブチルである。R4がオクチルであるとき、R4は、好ましくは2-エチルヘキシルである。
【0062】
他の好ましい式(I)のモノマーにおいて、R3及びR4は、それらが結合しているO原子とともに、任意選択で置換されたC4-8員の環を形成する。R3及びR4が、それらが結合しているO原子とともに、置換されていないC4-8員の環を形成するとき、環は、好ましくは4又は5個の炭素原子を含み、すなわちそれらが結合しているO原子とともに、5又は6員の環が形成される。好ましくは、R3及びR4は、それらが結合しているO原子とともに、置換されていないテトラヒドロフラニル又はテトラヒドロピラニル環を形成する。R3及びR4が、それらが結合しているO原子とともに、置換されたC4-8員の環を形成するとき、環は、好ましくは4又は5個の炭素原子を含み、すなわちそれらが結合しているO原子とともに、5又は6員の環が形成される。好ましくは、R3及びR4は、それらが結合しているO原子とともに、置換されたテトラヒドロフラニル又はテトラヒドロピラニル環を形成する。置換基は、好ましくはハロゲン、C1-8アルキル及びOR5から選択され、ここでR5はH又はC1-8アルキルから選択される。
【0063】
幾つかの好ましい式(I)のモノマーにおいて、R2はHであり、R3及びR4は、それらが結合しているO原子とともに、置換されていないテトラヒドロフラニル又はテトラヒドロピラニル環を形成する。
【0064】
本発明の防汚コーティング組成物中に存在する好ましいモノマーは、1-n-ブトキシエチルメタクリレート、1-イソブトキシエチルメタクリレート、1-(2-エチルヘキシルオキシ)エチルメタクリレート、1-シクロヘキシルオキシエチルメタクリレート、1-ドデシルオキシエチルメタクリレート、1-オクタデシルオキシエチルメタクリレート、2-テトラヒドロフラニルメタクリレート、2-テトラヒドロピラニルメタクリレート、1-n-ブトキシエチルアクリレート、1-イソブトキシエチルアクリレート、1-(2-エチルヘキシルオキシ)エチルアクリレート、1-シクロヘキシルオキシエチルアクリレート、1-ドデシルオキシエチルアクリレート、1-オクタデシルオキシエチルアクリレート、2-テトラヒドロフラニルアクリレート及び2-テトラヒドロピラニルアクリレートを含む。1-イソブトキシエチルメタクリレート、1-シクロヘキシルオキシエチルメタクリレート及び2-テトラヒドロピラニルメタクリレートは、特に好ましいモノマーである。
【0065】
好ましくは、本発明の防汚コーティング組成物中に存在するアクリルアセタールエステルコポリマーは、(メタ)アクリル酸エステルモノマーに由来する繰り返し単位をさらに含む。特に好ましいアクリルアセタールエステルコポリマーは、式(II):
【化2】
の少なくとも1つのモノマーの残基を含み、式中、
7はH又はメチルであり;
8は任意選択で置換されたC1-18アルキル、任意選択で置換されたC5-10シクロアルキル、任意選択で置換されたC6-10アリール又は任意選択で置換されたヘテロシクリルであり、その置換基はOR9及びヘテロシクリルから選択され;
9はH、C1-8アルキル及び(CH2CH2-p(CH3pO)q10から選択され;
10はH、C1-4アルキル及びフェニルから選択され;
pは0又は1であり;及び
qは1~20、好ましくは1~6の整数である。
【0066】
幾つかの好ましい式(II)のモノマーにおいて、R8は置換されていないC1-18アルキルである。R8が置換されていないC1-18アルキルであるとき、アルキル基は、好ましくは1~12個の炭素原子、より好ましくは1~8個の炭素原子、例えば1、2、3又は4個の炭素原子を含む。好ましいアルキル基は1~4個の炭素原子を含む。アルキル基は、直鎖又は分岐鎖であってよいが、直鎖アルキル基が好ましい。
【0067】
8が置換されていないC1-18アルキルであるとき、R8は直鎖又は分岐鎖であってよい。R8が置換されていないC1-18アルキルであるとき、R8は、好ましくはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、ドデシル及びオクタデシルから選択される。より好ましいアルキル基はメチル、エチル、プロピル、n-ブチル及び2-エチルヘキシルである。
【0068】
幾つかの好ましい式(II)のモノマーにおいて、R8は置換されたC1-18アルキルである。R8が置換されたC1-18アルキルであるとき、アルキル基は、好ましくは1~4個の炭素原子、より好ましくは1~3個の炭素原子、例えば1、2又は3個の炭素原子を含む。アルキル基は、好ましくは直鎖である。好ましくは、アルキル基はメチル又はエチルである。
【0069】
8が置換されたC1-18アルキルであるとき、置換基はヘテロシクリル、OR9(R9はH、C1-8アルキル及び(CH2CH2-p(CH3pO)q10から選択され、R10はH又はC1-4アルキルであり、pは0又は1であり、qは1~20、好ましくは1~6の整数である。)又はN(R112(それぞれのR11は独立にH又はC1-6アルキルである。)であってよい。
【0070】
アルキル基がヘテロシクリルによって置換されているとき、ヘテロシクリルは、好ましくは3~10員の環又は環系、より好ましくは5又は6員の環であり、飽和又は不飽和であってよい。好ましくは、ヘテロシクリルは飽和である。あり得るヘテロシクリル基の代表的な例は、グリシジル、テトラヒドロフリル、ピロリドニル及びモルホリニルである。
【0071】
アルキル基がOR9によって置換されているとき、R9は、好ましくはH、C1-8アルキル(例えばC1-3アルキル)及び(CH2CH2-p(CH3pO)q10(R10はC1-4アルキルであり、pは0又は1であり、qは1~20、好ましくは1~6の整数である。)から、より一層好ましくはC1-8アルキル(例えばC1-3アルキル)から選択される。R9の代表的な例はH、メチル、エチル、(CH2CH2O)CH3及び(CH2CH2O)CH2CH3を含む。
【0072】
アルキル基がN(R112によって置換されているとき、R11は、好ましくはH又はC1-6アルキル、好ましくはC1-6アルキルから独立に選択される。R11の代表的な例はメチル及びエチルを含む。
【0073】
さらに好ましい式(II)のモノマーにおいて、R8は置換されていないC5-10シクロアルキルである。好ましい環式アルキル基は6~8個の炭素原子を含む。シクロアルキル基は、架橋されているか又は多環式である環系であってよい。好ましいシクロアルキル基は単環式である。R8が置換されていないC5-10シクロアルキルであるとき、シクロアルキル基は、好ましくはシクロペンチル、シクロヘキシル、ジシクロペンテニル及びイソボルニルから選択される。より好ましいシクロアルキル基はシクロヘキシルである。
【0074】
さらに好ましい式(II)のモノマーにおいて、R8は置換されたC5-10シクロアルキルである。R8が置換されたC5-10シクロアルキルであるとき、アルキル基は、好ましくは6~8個の炭素原子、例えば6個の炭素原子を含む。シクロアルキル基は、好ましくはシクロヘキシルである。R8が置換されたC5-10シクロアルキルであるとき、置換基はC1-8アルキル又はOR9であってよく、R9はH及びC1-8アルキルから選択される。
【0075】
シクロアルキル基がOR9によって置換されているとき、R9は、好ましくはH及びC1-8アルキル(例えばC1-3アルキル)から選択される。R9の代表的な例はH、メチル及びエチルを含む。
【0076】
さらに好ましい式(II)のモノマーにおいて、R8は置換されていないC6-10アリールである。R8が置換されていないC6-10アリールであるとき、アリール基は、好ましくは6又は10個の炭素原子を含む。好ましいアリール基はフェニルを含む。
【0077】
さらに好ましい式(II)のモノマーにおいて、R8は置換されたC6-10アリールである。R8が置換されたC6-10アリールであるとき、アリール基は、好ましくは6又は10個の炭素原子を含む。好ましいアリール基はフェニルを含む。R8が置換されたC6-10アリールであるとき、置換基はハロゲン、C1-8アルキル又はOR9であってよく、R9はH及びC1-8アルキルから選択される。より好ましくは、置換基はOR9であり、R9はH及びC1-8アルキルから選択される。
【0078】
6-10アリール基がOR9によって置換されているとき、R9は、好ましくはH及びC1-8アルキル(例えばC1-3アルキル)から選択される。R10の代表的な例はH、メチル及びエチルを含む。
【0079】
さらに好ましい式(II)のモノマーにおいて、R8は、OR9によって置換されたC2又はC3アルキル(例えばエチル又はイソプロピル)であり、R9は(CH2CH2-p(CH3pO)q10であり、R10はH、C1-4アルキル及びフェニルから選択され、pは0又は1であり、qは1~20、好ましくは1~6の整数である。R10の代表的な例は、H、メチル及びエチルを含む。
【0080】
さらに好ましい式(II)のモノマーにおいて、R8は置換されていないか又は置換されたC1-18アルキルであり、より好ましくは置換されていないか又は置換されたC1-8アルキルである。特に好ましい式(II)のモノマーにおいて、R8はメチル、エチル、プロピル、n-ブチル、2-エチルヘキシル及びテトラヒドロフルフリルから選択される。R8が置換されているとき、R8は好ましくはOR9によって置換されていて、R9はメチル又は(CH2CH2O)CH2CH3から選択される。
【0081】
本発明の防汚コーティング組成物中に存在するコポリマー中に存在する好ましいモノマーは、メチルアクリレート、エチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2-プロピルヘプチルアクリレート、デシルアクリレート、イソデシルアクリレート、ドデシルアクリレート、トリデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、ポリ(エチレングリコール)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール)アクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、2-(2-ブトキシエトキシ)エチルアクリレート、メトキシポリ(エチレングリコール)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2-N-モルホリノエチルアクリレート、N-(2-(アクリロイルオキシ)エチル)ピロリドン、ジメチルアミノエチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、イソオクチルメタクリレート、2-プロピルヘプチルメタクリレート、デシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルメタクリレート、ポリ(エチレングリコール)メタクリレート、ポリ(プロピレングリコール)メタクリレート、2-メトキシエチルメタクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルメタクリレート、2-(2-ブトキシエトキシ)エチルメタクリレート、メトキシポリ(エチレングリコール)メタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、2-N-モルホリノエチルメタクリレート、N-(2-(メタクリロイルオキシ)エチル)ピロリドン及びジメチルアミノエチルメタクリレートを含む。特に好ましくは、本発明の防汚コーティング組成物中に存在するコポリマー中に存在するモノマーは、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、メチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、2-メトキシエチルメタクリレート、及び2-(2-エトキシエトキシ)エチルメタクリレートから選択される。n-ブチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート及びメチルメタクリレートは、特に好ましいモノマーである。
【0082】
本発明の好ましい防汚コーティング組成物において、アクリルアセタールエステルコポリマーは、少なくとも2つ(例えば2、3又は4つ)の式(II)の異なる(メタ)アクリレートモノマー、より好ましくは2又は3つの式(II)の異なる(メタ)アクリレートモノマーを含む。幾つかの好ましい組成物において、コポリマーは、R7がHである少なくとも1つの式(II)のモノマー及びR7がCH3である少なくとも1つの式(II)のモノマーを含む。
【0083】
好ましくは、本発明の防汚コーティング組成物中に存在するアクリルアセタールエステルコポリマーは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸に由来する繰り返し単位を含まない。
【0084】
本発明の防汚コーティング組成物中に存在する好ましいアクリルアセタールエステルコポリマーは、他のエチレン性不飽和モノマーに由来する繰り返し単位をさらに含む。適したエチレン性不飽和モノマーの代表的な例はスチレン、ビニルアセテート、1-ビニル-2-ピロリドン、1-ビニルカプロラクタム、3-ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、トリイソプロピルシリルアクリレート、トリイソプロピルシリルメタクリレート、2-(トリメチルシロキシ)エチルメタクリレート、亜鉛(メタ)アクリレート、亜鉛アセテート(メタ)アクリレート、亜鉛ネオデカノエート(メタ)アクリレートを含む。
【0085】
本発明の防汚コーティング組成物中に存在するアクリルアセタールエステルコポリマーは、コポリマーの乾燥質量に基づいて、好ましくは少なくとも15wt%の式(I)のモノマーを含む。アクリルアセタールエステルコポリマーは、コポリマーの乾燥質量に基づいて、より好ましくは15~70wt%、より一層好ましくは20~60wt%、さらにより好ましくは25~55wt%の式(II)のモノマーを含む。
【0086】
本発明の防汚コーティング組成物中に存在するアクリルアセタールエステルコポリマーは、コポリマーの乾燥質量に基づいて、好ましくは少なくとも25wt%の式(II)のモノマーを含む。アクリルアセタールエステルコポリマーは、コポリマーの乾燥質量に基づいて、より好ましくは25~85wt%、より一層好ましくは35~80wt%、さらにより好ましくは40~75wt%の式(II)のモノマーを含む。
【0087】
本発明の防汚コーティング組成物中に存在する好ましいアクリルアセタールエステルコポリマーは、5000~100000、より好ましくは15000~60000、より一層好ましくは20000~50000の重量平均分子量を有する。本発明の防汚コーティング組成物中に存在する好ましいアクリルアセタールエステルコポリマーは、実施例において提示される方法によって測定するとき、好ましくは10~70℃、より好ましくは15~60℃、より一層好ましくは20~50℃のガラス転移点(Tg)を有する。
【0088】
防汚コーティング組成物は、1つ又は複数(1、2、3、4又は5つ)の上で説明されたアクリルアセタールエステルコポリマーを含んでよい。本発明の好ましい防汚コーティング組成物は、1、2、3又は4つのアクリルアセタールエステルコポリマー、より一層好ましくは1又は2つのアクリルアセタールエステルコポリマーポリマーを含む。
【0089】
本発明の組成物中に存在するアクリルアセタールエステルコポリマーの合計の量は、最終組成物の合計の質量に基づいて(すなわち組成物が2パックに分けて与えられた場合、これらの値は最終の混合された組成物中に存在するwt%をいう。)、好ましくは2~60wt%、より好ましくは5~40wt%、より一層好ましくは7~25wt%である。
【0090】
適したアクリルアセタールエステルコポリマーは、当分野において公知の重合反応を使用して調製することができる。例えば、アクリルアセタールエステルコポリマーは、従来の方式の又は制御された重合技術を用いた任意の様々な方法によって、例えば溶液重合、バルク重合、乳化重合、分散重合及び懸濁重合によって、適した重合開始剤の存在する中で、少なくとも1つの式(I)のモノマーと1つ又は複数の式(II)のモノマーとを重合することによって得ることができる。アクリルアセタールコポリマーは、ランダムコポリマー、交互コポリマー、グラジエントコポリマー又はブロックコポリマーであってよい。
【0091】
上で説明されたアクリルアセタールエステルコポリマーを使用してコーティング組成物を調製するとき、好ましくは、ポリマーを有機溶媒で希釈して、適した粘度を有するポリマー溶液を与える。観点から、溶液重合を採用してコポリマーを調製することが望ましい。フリーラジカル重合のための適した開始剤の例はアゾ化合物、例えばジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)及び1,1’-アゾビス(シアノシクロヘキサン)、並びにペルオキシド、例えばtert-ブチルペルオキシピバレート、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルペルオキシオクタノエート、tert-ブチルペルオキシジエチルアセテート、tert-ブチルペルオキシイソブチレート、ジ-tert-ブチルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート及びtert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、tert-アミルペルオキシピバレート、tert-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1-ジ(tert-アミルペルオキシ)シクロヘキサン及びジベンゾイルペルオキシドを含む。これらの化合物は、単独で又はそれらの2つ以上の混合物として使用することができる。
【0092】
適した有機溶媒の例は、芳香族炭化水素、例えばキシレン、トルエン、メシチレン;ケトン、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、メチルイソアミルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン;エステル、例えばブチルアセテート、tert-ブチルアセテート、アミルアセテート、プロピルプロピオネート、n-ブチルプロピオネート、イソブチルイソブチレート、エチレングリコールメチルエーテルアセテート;エーテル、例えばエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン;アルコール、例えばn-ブタノール、イソブタノール、ベンジルアルコール;エーテルアルコール、例えばブトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、メチルイソブチルカルビノール;炭化水素、例えばホワイトスピリット、リモネン;並びに任意選択で2つ又は複数の溶媒の混合物を含む。これらの化合物は、単独で又はそれらの2つ以上の混合物として使用される。
【0093】
代わりに、適したアクリルアセタールエステルコポリマーは、商業的に購入することができる。
【0094】
モノカルボン酸
本発明の防汚コーティング組成物は、モノカルボン酸を含んでよい。このような組成物において、モノカルボン酸は、亜鉛化合物とインサイチュで反応してモノカルボン酸の亜鉛塩を生じさせる。好ましくは、モノカルボン酸は、本発明の組成物中で亜鉛塩に実質的に完全に変換されている。モノカルボン酸の亜鉛塩の形態において、フィルムの硬度とともに、コーティング又はフィルムの乾燥速度に対して改善を達成することができる。
【0095】
本発明の防汚コーティング組成物中に存在するモノカルボン酸は、好ましくは5~50個の炭素原子、より好ましくは10~40個の炭素原子、より一層好ましくは12~25個の炭素原子を含む。
【0096】
本発明の防汚コーティング組成物中に存在するモノカルボン酸は、好ましくは樹脂酸、樹脂酸の誘導体、C6-20環式モノカルボン酸、C5-24アクリル脂肪族モノカルボン酸、C7-20芳香族モノカルボン酸及びそれらの混合物から選択される。
【0097】
樹脂酸の代表的な例は、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、パルストリン酸、レボピマル酸、ピマル酸、イソピマル酸、サンダラコピマル酸、コムニン酸、メルクス酸、セコデヒドロアビエチン酸を含む。樹脂酸は天然原料に由来し、従って典型的には、それらは酸の混合物として存在することが理解される。樹脂酸はまた、ロジン酸ともいわれる。樹脂酸の原料の代表的な例は、ゴムロジン、ウッドロジン及びタル油ロジンである。コロホニー及びコロホニウムともいわれるゴムロジンが特に好ましい。好ましいロジンは、85%より多くの樹脂酸、より一層好ましくは90%より多くの樹脂酸を含むものである。
【0098】
しばしば、ロジンの商業的なグレードは、ASTM D509において規定される色のスケールに対する記号の指定、XC(最も明るい)、XB、XA、X、WW、WG、N、M、K、I、H、G、F、E、D(最も暗い)で、ロジンの色によって分類される。本発明の組成物についての好ましい色のグレードは、X、WW、WG、N、M、K、Iであり、より一層好ましくはWWである。典型的には、ロジンの商業的なグレードは、ASTM D465において規定される、155~180mg KOH/gの酸価を有する。本発明の組成物のための好ましいロジンは、155~180mg KOH/g、より好ましくは160~175mg KOH/g、より一層好ましくは160~170mg KOH/gの酸価を有する。典型的には、ロジンの商業的なグレードは、ASTM E28において規定される、70~80℃の軟化点(環球式)を有する。本発明の組成物のための好ましいロジンは、70~80℃、より好ましくは75~80℃の軟化点を有する。
【0099】
樹脂酸の誘導体の代表的な例は、部分的に水素化されたロジン、十分に水素化されたロジン、不均化ロジン、ジヒドロアビエチン酸、ジヒドロピマル酸及びテトラヒドロアビエチン酸を含む。
【0100】
6-20環式モノカルボン酸の代表的な例は、ナフタレン酸、1,4-ジメチル-5-(3-メチル-2-ブテニル)-3-シクロヘキセン-1-イル-カルボン酸、1,3-ジメチル-2-(3-メチル-2-ブテニル)-3-シクロヘキセン-1-イル-カルボン酸、1,2,3-トリメチル-5-(1-メチル-2-プロペニル)-3-シクロヘキセン-1-イル-カルボン酸、1,4,5-トリメチル-2-(2-メチル-2-プロペニル)-3-シクロヘキセン-1-イル-カルボン酸、1,4,5-トリメチル-2-(2-メチル-1-プロペニル)-3-シクロヘキセン-1-イル-カルボン酸、1,5,6-トリメチル-3-(2-メチル-1-プロペニル)-4-シクロヘキセン-1-イル-カルボン酸、1-メチル-4-(4-メチル-3-ペンテニル)-4-シクロヘキセン-1-イル-カルボン酸、1-メチル-3-(4-メチル-3-ペンテニル)-3-シクロヘキセン-1-イル-カルボン酸、2-メトキシカルボニル-3-(2-メチル-1-プロペニル)-5,6-ジメチル-4-シクロヘキセン-1-イル-カルボン酸、1-i-プロピル-4-メチル-ビシクロ[2,2,2]2-オクテン-5-イル-カルボン酸、1-i-プロピル-4-メチル-ビシクロ[2,2,2]2-オクテン-6-イル-カルボン酸、6-i-プロピル-3-メチル-ビシクロ[2,2,2]2-オクテン-8-イル-カルボン酸及び6-i-プロピル-3-メチル-ビシクロ[2,2,2]2-オクテン-7-イル-カルボン酸を含む。
【0101】
5-24アクリル脂肪族モノカルボン酸の代表的な例は、VersaticTM酸、ネオデカン酸、2,2,3,5-テトラメチルヘキサン酸、2,4-ジメチル-2-イソプロピルペンタン酸、2,5-ジメチル-2-エチルヘキサン酸、2,2-ジメチルオクタン酸、2,2-ジメチルヘキサン酸、ピバル酸、2,2-ジメチルプロピオン酸、トリメチル酢酸、ネオペンタン酸、2-エチルヘキサン酸、イソノナン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、16-メチルヘプタデカン酸、12,15-ジメチルヘキサデカン酸を含む。アクリル脂肪族モノカルボン酸は、好ましくは液体アクリルC10-24モノカルボン酸又は液体分岐鎖C10-24モノカルボン酸から選択される。アクリルC10-24モノカルボン酸の多くは天然原料に由来し、典型的には、その場合、遊離した状態で、それらは可変の分岐の程度を有する異なる鎖の長さの酸の混合物として存在することができることが理解される。
【0102】
適したモノカルボン酸は商業的に購入することができる。
【0103】
好ましくは、モノカルボン酸は、ゴムロジン、ゴムロジンの誘導体、アクリルC10-24モノカルボン酸、C6-20環式モノカルボン酸又はそれらの混合物である。酸の混合物は、好ましくは、少なくとも1つの樹脂酸、ゴムロジン又はゴムロジンの誘導体を含有する。
【0104】
本発明の組成物中に存在するモノカルボン酸の合計の量は、組成物の合計の質量に基づいて、好ましくは1~30wt%、より好ましくは2~20wt%、より一層好ましくは3~15wt%である。
【0105】
亜鉛化合物
本発明の防汚コーティング組成物はまた、亜鉛化合物及び特に反応性亜鉛化合物を含んでよい。このような組成物において、亜鉛化合物は、モノカルボン酸と反応してインサイチュでモノカルボン酸の亜鉛塩を生じさせる。モノカルボン酸と亜鉛化合物との間の反応は、好ましくは、組成物の製造の間に、組成物の貯蔵の間に及び/又は塗料の適用の前に塗料を混合する間に起こる。塗料中にモノカルボン酸の亜鉛塩が存在することは、例えばフーリエ変換赤外分光法-全反射測定法の分光法によって決定することができる。モノカルボン酸の亜鉛塩は、1580cm-1でカルボニル伸縮を生じさせる。
【0106】
亜鉛化合物は、組成物中に存在するモノカルボン酸と相互作用をするZn原子又はイオンを提供する。亜鉛とモノカルボン酸との間の相互作用は、組成物の乾燥特性並びに組成物から形成されたフィルムの硬度を改善する。
【0107】
亜鉛化合物の代表的な例は、無機亜鉛化合物、例えば亜鉛酸化物、亜鉛硫化物、炭酸亜鉛、炭酸亜鉛水酸化物、塩基性炭酸亜鉛、リトポン、Sachtolith、水亜鉛土、菱亜鉛鉱、硫酸亜鉛(zinc vitriol)、白色硫酸亜鉛(white vitriol)、亜鉛白及び亜鉛の配位化合物、例えば亜鉛ピリチオンを含む。亜鉛化合物は、好ましくは無機亜鉛化合物から、より好ましくは亜鉛酸化物、炭酸亜鉛水酸化物、亜鉛硫化物、水亜鉛土及びリトポンから選択される。コーティング組成物は、1つ又は複数の亜鉛化合物を含有してよい。
【0108】
亜鉛化合物は、好ましくは50μmより小さい、より好ましくは20μmより小さい、より一層好ましくは5μmより小さいd50の平均粒子サイズ分布を有する。亜鉛化合物は、好ましくは30nmより大きい、より好ましくは100nmより大きい、より一層好ましくは300nmより大きいd50の平均粒子サイズ分布を有する。亜鉛化合物は、好ましくは30nm~50μm、より好ましくは300nm~20μm、より一層好ましくは300nm~5μmのd50の平均粒子サイズ分布を有する。粒子サイズ及びd50は、ISO13320:2009において説明されるレーザー回折法によって決定される。
【0109】
亜鉛化合物は、好ましくは100μmより小さい、より好ましくは50μmより小さい、より一層好ましくは10μmより小さい粒子サイズを有し、好ましくは45μmのメッシュサイズで0.05wt%より少ないふるい残分を伴う。ふるい残分は、ISO787-7:2009において説明される通り決定される。
【0110】
商業的な塗料グレードの亜鉛化合物の代表的な例は、EverZincのZinc oxide red seal;Hanil Chemical Ind.Co.,Ltd.のZinc oxide KS-1、Zinc oxide KS-2;U.S.ZincのZinc oxide grade 210、Zinc oxide grade AZO 66;Sachtleben Chemie GmbHのSachtolith L、Sachtolith HD及びSactolith HD-S;Venator Materials PLCのLithopone 30 DS、Lithopone 30 L、Lithopone 60 L;Bruggemann ChemicalのZinc Carbonate AC、Zinc Oxide Red Seal及びZinc Oxide White Seal;LonzaのZinc Omadine;Kolon Life Science Inc.のCleanBio Zincである。
【0111】
しばしば防汚コーティング組成物中に存在する反応性亜鉛を提供しない亜鉛化合物の例は、ジネブ、亜鉛ホスフェート及び硫酸スルフェート、並びにそれらの水和物形態を含む。
【0112】
亜鉛化合物は、組成物の合計の質量に基づいて、好ましくは0.2~20wt%、より好ましくは0.5~15wt%、より一層好ましくは1~10wt%の量で本発明の組成物中に存在する。本発明の組成物中の亜鉛化合物:モノカルボン酸のモル比は、好ましくは20:1~1:4、より好ましくは15:1~1:3、より一層好ましくは10:1~1:2、例えば8:1~1:1である。
【0113】
モノカルボン酸の亜鉛塩
本発明の防汚組成物は、モノカルボン酸の亜鉛塩を含んでよい。上で説明された通り、亜鉛とモノカルボン酸との間の相互作用は、組成物の乾燥特性並びに組成物から形成されたフィルムの硬度を改善する。
【0114】
このような組成物において、亜鉛塩は、好ましくは5~50個の炭素原子、より好ましくは10~40個の炭素原子、より一層好ましくは12~25個の炭素原子を含むモノカルボン酸から形成される。
【0115】
より好ましくは、亜鉛塩は、樹脂酸、樹脂酸の誘導体、C6-20環式モノカルボン酸、C5-24アクリル脂肪族モノカルボン酸、C7-20芳香族モノカルボン酸及びそれらの混合物から選択されるモノカルボン酸から形成される。
【0116】
樹脂酸の代表的な例は、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、パルストリン酸、レボピマル酸、ピマル酸、イソピマル酸、サンダラコピマル酸、コムニン酸及びメルクス酸、セコデヒドロアビエチン酸を含む。樹脂酸は天然原料に由来し、従って典型的には、それらは酸の混合物として存在することが理解される。樹脂酸はまた、ロジン酸ともいわれる。樹脂酸の原料の代表的な例は、ゴムロジン、ウッドロジン及びタル油ロジンである。コロホニー及びコロホニウムともいわれるゴムロジンが特に好ましい。好ましいロジンは、85%より多くの樹脂酸、より一層好ましくは90%より多くの樹脂酸を含むものである。
【0117】
しばしば、ロジンの商業的なグレードは、ASTM D509において規定される色のスケールに対する記号の指定、XC(最も明るい)、XB、XA、X、WW、WG、N、M、K、I、H、G、F、E、D(最も暗い)で、ロジンの色によって分類される。本発明の組成物についての好ましい色のグレードは、X、WW、WG、N、M、K、Iであり、より一層好ましくはWWである。典型的には、ロジンの商業的なグレードは、ASTM D465において規定される155~180mg KOH/gの酸価を有する。本発明の組成物のための好ましいロジンは、155~180mg KOH/g、より好ましくは160~175mg KOH/g、より一層好ましくは160~170mg KOH/gの酸価を有する。典型的には、ロジンの商業的なグレードは、ASTM E28において規定される、70~80℃の軟化点(環球式)を有する。本発明の組成物のための好ましいロジンは、70~80℃、より好ましくは75~80℃の軟化点を有する。
【0118】
樹脂酸の誘導体の代表的な例は、部分的に水素化されたロジン、十分に水素化されたロジン、不均化ロジン、ジヒドロアビエチン酸、ジヒドロピマル酸及びテトラヒドロアビエチン酸を含む。
【0119】
6-20環式モノカルボン酸の代表的な例は、ナフタレン酸、1,4-ジメチル-5-(3-メチル-2-ブテニル)-3-シクロヘキセン-1-イル-カルボン酸、1,3-ジメチル-2-(3-メチル-2-ブテニル)-3-シクロヘキセン-1-イル-カルボン酸、1,2,3-トリメチル-5-(1-メチル-2-プロペニル)-3-シクロヘキセン-1-イル-カルボン酸、1,4,5-トリメチル-2-(2-メチル-2-プロペニル)-3-シクロヘキセン-1-イル-カルボン酸、1,4,5-トリメチル-2-(2-メチル-1-プロペニル)-3-シクロヘキセン-1-イル-カルボン酸、1,5,6-トリメチル-3-(2-メチル-1-プロペニル)-4-シクロヘキセン-1-イル-カルボン酸、1-メチル-4-(4-メチル-3-ペンテニル)-4-シクロヘキセン-1-イル-カルボン酸、1-メチル-3-(4-メチル-3-ペンテニル)-3-シクロヘキセン-1-イル-カルボン酸、2-メトキシカルボニル-3-(2-メチル-1-プロペニル)-5,6-ジメチル-4-シクロヘキセン-1-イル-カルボン酸、1-i-プロピル-4-メチル-ビシクロ[2,2,2]2-オクテン-5-イル-カルボン酸、1-i-プロピル-4-メチル-ビシクロ[2,2,2]2-オクテン-6-イル-カルボン酸、6-i-プロピル-3-メチル-ビシクロ[2,2,2]2-オクテン-8-イル-カルボン酸及び6-i-プロピル-3-メチル-ビシクロ[2,2,2]2-オクテン-7-イル-カルボン酸を含む。
【0120】
5-24アクリル脂肪族モノカルボン酸の代表的な例は、VersaticTM酸、ネオデカン酸、2,2,3,5-テトラメチルヘキサン酸、2,4-ジメチル-2-イソプロピルペンタン酸、2,5-ジメチル-2-エチルヘキサン酸、2,2-ジメチルオクタン酸、2,2-ジメチルヘキサン酸、ピバル酸、2,2-ジメチルプロピオン酸、トリメチル酢酸、ネオペンタン酸、2-エチルヘキサン酸、イソノナン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、16-メチルヘプタデカン酸、12,15-ジメチルヘキサデカン酸を含む。アクリル脂肪族モノカルボン酸は、好ましくは液体アクリルC10-24モノカルボン酸又は液体分岐鎖C10-24モノカルボン酸から選択される。アクリルC10-24モノカルボン酸の多くは天然原料に由来することができ、典型的には、その場合、遊離した状態で、それらは様々な分岐の程度を有する異なる鎖の長さの酸の混合物として存在することが理解される。
【0121】
適したモノカルボン酸の亜鉛塩は商業的に購入することができる。
【0122】
好ましくは、亜鉛塩は、ゴムロジン、ゴムロジンの誘導体、アクリルC10-24モノカルボン酸、C6-20環式モノカルボン酸又はそれらの混合物から選択されるモノカルボン酸から形成される。より好ましくは、亜鉛塩は、ゴムロジン及びゴムロジンの誘導体から選択されるモノカルボン酸から形成される。
【0123】
モノカルボン酸の亜鉛塩は、組成物の合計の質量に基づいて、好ましくは1~30wt%、より好ましくは2~20wt%、より一層好ましくは3~15wt%の量で本発明の組成物中に存在する。本発明の組成物中の亜鉛カチオン:モノカルボン酸のモル比は、好ましくは20:1~1:4、より好ましくは15:1~1:3、より一層好ましくは10:1~1:2、例えば8:1~1:1である。
【0124】
防汚剤
本発明の防汚コーティング組成物は、好ましくは防汚剤を含む。用語、防汚剤(antifouling agent)、生物活性化合物、殺生物剤、防汚剤(antifoulant)、毒性剤は、産業において表面における海洋汚損を防止するように作用する公知の化合物を説明するために使用される。本発明の組成物中に存在する防汚剤は、好ましくは海洋防汚剤である。防汚剤は無機物、有機金属又は有機物であってよい。適した防汚剤は商業的に入手可能である。
【0125】
無機防汚剤の例は、銅及び銅化合物、例えば酸化第一銅、酸化第二銅、銅硫化物、銅チオシアネート、銅粉末及び銅片を含む。
【0126】
典型的には、酸化第一銅材料グレードの商業的な塗料は、0.1~70μmの粒子径分布及び1~25μmの平均粒子サイズ(d50)を有する。酸化第一銅材料は、(例えば貯蔵及び輸送の間の表面酸化及びケーキングを防止するための)安定剤を含有してよい。商業的に入手可能な酸化第一銅の代表的な例は、Nordox ASのNordox Cuprous Oxide Red Paint Grade、Nordox XLT、Furukawa Chemicals Co.,Ltd.のCuprous oxide;American Chemet CorporationのRed Copp 97N、Purple Copp、Lolo Tint 97N、Chemet CDC、Chemet LD;Spiess-UraniaのCuprous Oxide Red;Taixing Smelting Plant Co.,Ltd.のCuprous oxide Roast、Cuprous oxide Electrolyticを含む。
【0127】
有機金属防汚剤の例は、亜鉛ピリチオン、銅ピリチオン、亜鉛ビス(ジメチルジチオカルバメート)[ジラム]及び亜鉛エチレンビス(ジチオカルバメート)[ジネブ]を含む。
【0128】
有機防汚剤の例は、2-(tert-ブチルアミノ)-4-(シクロプロピルアミノ)-6-(メチルチオ)-1,3,5-トリアジン[シブトリン]、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン[DCOIT]、2-(チオシアナトメチルチオ)-1,3-ベンゾチアゾール[benthiazole]、3-(3,4-ジシクロフェニル)-1,1-ジメチル尿素[ジウロン]、N-ジクロロフルオロメチルチオ-N’,N’-ジメチル-N-フェニルスルファミド[ジクロフルアニド]、N-ジクロロフルオロメチルチオ-N’,N’-ジメチル-N-p-トリルスルファミド[トリルフルアニド]、N-(2,4,6-トリクロロフェニル)マレイミドピリジントリフェニルボラン[TPBP]、3-ヨード-2-プロピニル N-ブチルカルバメート[IPBC]、2,4,5,6-テトラクロロイソフタロニトリル[クロロタロニル]、p-((ジヨードメチル)スルホニル)トルエン、4-ブロモ-2-(4-クロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピロール-3-カルボニトリル[トラロピリル]及び4-[1-(2,3-ジメチルフェニル)エチル]-1H-イミダゾール[メデトミジン]を含む。
【0129】
防汚剤の他の例は、テトラアルキルホスホニウムハロゲン化物、グアニジン誘導体、例えばドデシルグアニジンモノヒドロクロライド;マクロサイクリックラクトン、例えばアベルメクチン及びその誘導体、例えばイベルメクチン、を含むマクロサイクリックラクトン;スピノシン及びその誘導体、例えばスピノサド;カプサイシン及びその誘導体、例えばフェニルカプサイシン;並びに酵素、例えばオキシダーゼ、たんぱく質分解、半セルロース分解、セルロース分解、脂肪分解及びアミロース分解に活性な酵素を含む。
【0130】
好ましい防汚剤は、酸化第一銅、銅チオシアネート、銅ピリチオン、亜鉛ピリチオン、亜鉛エチレンビス(ジチオカルバメート)[ジネブ]、2-(tert-ブチルアミノ)-4-(シクロプロピルアミノ)-6-(メチルチオ)-1,3,5-トリアジン[シブトリン]、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン[DCOIT]、4-ブロモ-2-(4-クロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピロール-3-カルボニトリル[トラロピリル]及び4-[1-(2,3-ジメチルフェニル)エチル]-1H-イミダゾール[メデトミジン]である。
【0131】
特に好ましい防汚剤は、酸化第一銅、銅チオシアネート、亜鉛ピリチオン、銅ピリチオン、亜鉛エチレンビス(ジチオカルバメート)[ジネブ]、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン[DCOIT]、N-ジクロロフルオロメチルチオ-N’,N’-ジメチル-N-フェニルスルファミド[ジクロフルアニド]、N-ジクロロフルオロメチルチオ-N’,N’-ジメチル-N-p-トリルスルファミド[トリルフルアニド]、4-ブロモ-2-(4-クロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピロール-3-カルボニトリル[トラロピリル]、4-[1-(2,3-ジメチルフェニル)エチル]-1H-イミダゾール[メデトミジン]及びフェニルカプサイシンである。
【0132】
防汚剤は、単独で、又は異なる防汚剤が異なる海洋汚損有機体に対して作用するような混合物の形で使用することができる。防汚剤の混合物が一般的には好ましい。防汚剤の1つの好ましい混合物は、海洋の無脊椎動物、例えばフジツボ、チューブワーム、コケムシ及びヒドロイド;植物、例えば藻類(海藻及び珪藻);並びにバクテリアに対して活性である。
【0133】
本発明の幾つかの好ましいコーティング組成物は、本質的に無機銅防汚剤を有さない。このような組成物は、好ましくはトラロピリルと、亜鉛ピリチオン、銅ピリチオン、ジネブ、4,5-ジクロロ-2-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン及びメデトミジンから選択される1つ又は複数の作用剤との組み合わせを含む。
【0134】
他の好ましいコーティング組成物は、酸化第一銅及び/又は銅チオシアネート、及び銅ピリチオン、ジネブ、4,5-ジクロロ-2-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン及びメデトミジンから選択される1つ又は複数の作用剤を含む。
【0135】
防汚剤の合わせた量は、組成物の合計の量に対して(すなわち組成物が2液パックに分けて与えられるときには両方の組成物に基づいて)、合計のコーティング組成物の60wt%まで、例えば0.1~50wt%、例えば0.2~45wt%を構成してよい。無機銅化合物が存在するところにおいて、適した防汚剤の量はコーティング組成物中で5~60wt%である場合がある。無機銅化合物が回避されるところにおいて、より少ない量、例えば0.1~25wt%、例えば0.2~10wt%が使用される場合がある。防汚剤の量が最終用途及び使用される防汚剤に応じて変化することが理解される。これらの防汚剤の使用は防汚コーティングにおいて公知であり、それらの使用は当業者にとって精通しているものである。防汚剤は、制御された放出のために、被包であるか、不活性担体に吸着されるか又は他の材料に結合していてよい。これらの割合は、存在する活性な防汚剤の量に関するものであり、従って使用される任意の担体に関するものではない。
【0136】
顔料及び/又は増量剤
本発明の防汚コーティング組成物は、好ましくは1つ又は複数の増量剤及び/又は顔料を含む。
【0137】
用語、増量剤は、本明細書において、増量剤並びに充填剤を包含して使用される。これらの化合物は組成物のバルクを増加させる。増量剤及び充填剤の例は、鉱物、例えばドロマイト、プラストライト、石英、重晶石、マグネサイト、アラゴナイト、シリカ、ウォラストナイト、タルク、緑泥石、マイカ、カオリン、パーライト及び長石;合成無機化合物、例えばカルシウムカーボネート、マグネシウムカーボネート、バリウムスルフェート、カルシウムシリケート、亜鉛ホスフェート及び(コロイダルシリカ、ヒュームドシリカなどを含む)シリカ;ポリマー及び無機の微粒子、例えば非コーティングの又はコーティングされた中空の及び中実のガラスビーズ、非コーティングの又はコーティングされた中空の及び中実のセラミックビーズ、ポリマー材料、例えばポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート-コ-エチレングリコールジメタクリレート)、ポリ(スチレン-コ-エチレングリコールジメタクリレート)、ポリ(スチレン-コ-ジビニルベンゼン)、ポリスチレン、ポリ(ビニルクロライド)の、中空の、多孔性の及び密集したビーズである。
【0138】
顔料は無機顔料、有機顔料又はそれらの混合物であってよい。無機顔料が好ましい。これらの化合物は、組成物に色及び隠ぺい力を与える。無機顔料の例は、チタン二酸化物、赤色鉄酸化物、黄色鉄酸化物、黒色鉄酸化物、亜鉛酸化物、亜鉛硫化物、リトポン及びグラファイトを含む。有機顔料の例は、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ナフトールレッド、ジケトピロロピロールレッドを含む。顔料は、塗料組成物中でより容易に分散されるように任意選択で表面処理することができる。
【0139】
好ましい無機顔料はチタン二酸化物及び鉄酸化物を含む。
【0140】
本発明の組成物中に存在する増量剤、充填剤及び/又は顔料の合計の量は、組成物の合計の質量に基づいて、好ましくは0~40wt%、より好ましくは2~35wt%、より一層好ましくは5~30wt%である。当業者は、粒子サイズ分布、粒子形状、表面モルフォロジー、粒子表面-樹脂の親和性、他の存在する成分及びコーティング組成物の最終用途に応じて、増量剤及び顔料の含有量を変えることを理解する。
【0141】
コバインダー
アクリルアセタールエステルコポリマーに加えて、追加のバインダーを任意選択で使用して、防汚コーティング組成物の特性を調整することができる。
【0142】
使用することができる他のポリマー性バインダーの例は、
アクリル樹脂、例えばメチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート及びイソブチルメタクリレートのホモポリマー並びにコポリマー;
親水性ポリマー、例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート又はアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートのモノマー単位を含有する(メタ)アクリレートコポリマー;(メタ)アクリルアミドのホモポリマー及びコポリマー、並びに1-ビニル-2-ピロリドン及び1-ビニルカプロラクタムのホモポリマー及びコポリマー;
ポリエチレンオキシド及びポリプロピレンオキシド;
ビニルエーテルホモポリマー及びコポリマー、例えばポリ(メチルビニルエーテル)、ポリ(エチルビニルエーテル)、ポリ(イソブチルビニルエーテル)、ポリ(n-ブチルアクリレート-コ-イソブチルビニルエーテル)、ポリ(塩化ビニル-コ-イソブチルビニルエーテル);
上で明示されるポリマー群の任意のものからのポリマー可塑剤
を含む。用語ポリマー可塑剤は、25℃より低いガラス転移点(Tg)を有するポリマーをいう。
【0143】
本発明の防汚コーティング組成物中に存在してよい他のバインダーの追加の例は、
シリルエステル(メタ)アクリレートコポリマー、例えばトリイソプロピルシリル(メタ)アクリレートを含むコポリマー;
金属(メタ)アクリレートコポリマー、例えば亜鉛(メタ)アクリレート、亜鉛水酸化物(メタ)アクリレート、亜鉛ネオデカノエート(メタ)アクリレート又は亜鉛オレアート(メタ)アクリレートを含むコポリマー;
飽和脂肪族ポリエステル、例えばポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(2-ヒドロキシ酪酸)、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸)、ポリ(4-ヒドロキシ吉草酸)、ポリカプロラクトン及び上に記載された単位から選択される単位の2つ以上を含有する脂肪族ポリエステルコポリマー;
国際公開第2009/100908号で説明されるポリシュウ酸;
アルキド樹脂及び改質されたアルキド樹脂;
ゴムロジン及び水素化されたゴムロジンのエステル、例えばロジンのメチルエステル、ロジンのグリセロールエステル及びロジンのペンタエリスリトールエステル;
ゴムロジン及び水素化されたゴムロジンの樹脂酸金属、例えば樹脂酸アルカリ土類金属、例えば樹脂酸マグネシウム、樹脂酸カルシウム、及び樹脂酸遷移金属、例えば樹脂酸亜鉛、樹脂酸銅;並びに
炭化水素樹脂、例えばC5脂肪族モノマー、C9芳香族モノマー、インデンクマロンモノマー若しくはテルペン又はそれらの混合物から選択される少なくとも1つのモノマーの重合から形成される炭化水素樹脂
を含む。
【0144】
とりわけ適した追加のバインダーはアクリル樹脂、ゴムロジンのエステル及びポリマー可塑剤である。
【0145】
コバインダーは、組成物の合計の質量に基づいて、好ましくは0~15wt%、より好ましくは0.5~10wt%、より一層好ましくは1~7wt%の量で本発明の組成物中に存在する。
【0146】
溶媒
本発明の防汚コーティング組成物は、好ましくは溶媒を含む。溶媒は好ましくは揮発性である。好ましくは、溶媒は有機物である。防汚コーティング組成物の成分は、コーティング組成物又は水性分散体中のフィルム形成成分(例えばポリマー)の代わりに、有機非溶媒中に分散することができる。本発明の組成物中での使用のために適した溶媒は商業的に入手可能である。
【0147】
適した有機溶媒及び溶剤の例は、芳香族炭化水素、例えばキシレン、トルエン、メシチレン;ケトン、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、メチルイソアミルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン;エステル、例えばブチルアセテート、tert-ブチルアセテート、アミルアセテート、イソアミルアセテート、プロピルプロピオネート、n-ブチルプロピオネート、イソブチルイソブチレート;エーテルエステル、例えばエチレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、エチル3-エトキシプロピオネート;エーテル、例えばエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン;エーテルアルコール、例えばブトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール;アルコール、例えばn-ブタノール、イソブタノール、メチルイソブチルカルビノール、ベンジルアルコール;炭化水素、例えばホワイトスピリット及びリモネン;並びに任意選択で、2つ以上の溶媒及び溶剤の混合物である。
【0148】
本発明の防汚コーティング組成物中に存在する溶媒の合計の量は、好ましくは、揮発性有機化合物の含有量を最小とするのに可能な限り低い。本発明の組成物中に存在する合計の溶媒は、組成物の合計の質量に基づいて、好ましくは0~40wt%、より好ましくは10~35wt%、より一層好ましくは15~30wt%である。当業者は、幾つかの原材料が溶媒を含み、上で明示されるように合計の溶媒含有量に寄与すること、及び従って、存在する他の成分に応じて追加された溶媒含有量を変えることを理解する。
【0149】
脱水剤及び安定剤
本発明の防汚コーティング組成物は、任意選択で、水捕捉剤又は乾燥剤ともいわれる脱水剤を含む。好ましくは、脱水剤は、水が存在する組成物から水を除去する化合物である。脱水剤は、防汚コーティング組成物中の、原材料、例えば顔料及び溶媒からもたらされる水分、又はカルボン酸化合物と金属酸化物、金属水酸化物若しくは金属炭酸塩化合物との反応によって形成される水を除去することによって、防汚コーティング組成物の貯蔵安定性を改善する。防汚コーティング組成物中で使用することができる脱水剤は、有機及び無機化合物を含む。
【0150】
脱水剤は、水を吸収する又は結晶水として水をバインドする吸湿性の材料であってよい。これらは、しばしば防湿剤ともいわれる。このような化合物の例は、硫酸カルシウム半水和物、硫酸カルシウム無水和物、硫酸マグネシウム無水和物、硫酸ナトリウム無水和物、硫酸亜鉛無水和物、分子ふるい及びゼオライトを含む。
【0151】
脱水剤はまた、水と化学的に反応する化合物であってよい。水と化学的に反応する脱水剤の例は、オルトエステル、例えばトリメチルオルトギ酸、トリエチルオルトギ酸、トリプロピルオルトギ酸、トリイソプロピルオルトギ酸、トリブチルオルトギ酸、トリメチルオルトアセテート、トリエチルオルトアセテート、トリブチルオルトアセテート及びトリエチルオルトプロピオネート;ケタール;アセタール;エノールエーテル;オルトホウ酸、例えばトリメチルホウ酸、トリエチルホウ酸、トリプロピルホウ酸、トリイソプロピルホウ酸、トリブチルホウ酸及びトリ-tert-ブチルホウ酸;オキサゾリジン、例えば3-エチル-2-メチル-2-(3-メチルブチル)-1,3-オキサゾリジン及び3-ブチル-2-(1-エチルペンチル)-1,3-オキサゾリジン;単官能性イソシアネート、例えばp-トルエンスルホニルイソシアネート;並びにオルガノシラン、例えばトリメトキシメチルシラン、トリエトキシメチルシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン及びエチルポリシリケートを含む。
【0152】
安定剤は、好ましくは防汚コーティング組成物の貯蔵安定性に寄与する酸補足材である。安定剤の例は、カルボジイミド化合物、例えばビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド及びビス(2-メチルフェニル)カルボジイミド、並びに特許出願国際公開第2014/064049号で説明される他のもの;アミン化合物、例えばトリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリス(2-エチルヘキシル)アミン、トリイソオクチルアミン、トリベンジルアミン及び1-メチルイミダゾールを含む。
【0153】
脱水剤及び安定剤は、組成物の合計の質量に基づいて、好ましくは0~5wt%、より好ましくは0.5~2.5wt%、より一層好ましくは1.0~2.0wt%の質量で本発明の組成物中にそれぞれ存在する。
【0154】
添加物
本発明の防汚コーティング組成物は、好ましくは1つ又は複数の他の成分を含む。防汚コーティング組成物に添加することができる他の成分の例は、補強剤、レオロジー改質剤、分散剤、湿潤剤及び可塑剤である。
【0155】
補強剤の例は、薄片及び繊維である。繊維は、天然及び合成の、無機及び有機の繊維、例えば国際公開第00/77102号で説明されるものを含む。代表的な例は、鉱物繊維、例えば鉱物ガラス繊維、ウラストナイト繊維、モンモリロナイト繊維、トバモライト繊維、アタパルジャイト繊維、か焼ボーキサイト繊維、火山岩繊維、ボーキサイト繊維、岩綿繊維及び鉱物綿から加工された鉱物繊維を含む。
【0156】
好ましくは、繊維は、少なくとも5の平均長さ/平均太さの比とともに、25~2000μmの平均長さ及び1~50μmの平均太さを有する。補強剤は、組成物の合計の質量に基づいて、好ましくは0~20wt%、より好ましくは0.5~15wt%、より一層好ましくは1~10wt%の量で本発明の組成物中に存在する。
【0157】
任意選択で本発明の組成物中に存在するレオロジー改質剤のクラスの例は、チキソトロープ剤、増粘剤及び沈降防止剤を含む。レオロジー改質剤の代表的な例は、シリカ、例えばヒュームドシリカ、有機改質粘土、アミドワックス、ポリアミドワックス、アミド誘導体、ポリエチレンワックス、酸化されたポリエチレンワックス、水素化されたひまし油ワックス、エチルセルロース、アルミニウムステアレート及びそれらの混合物である。活性化を必要とするチキソトロープ剤、増粘剤及び沈降防止剤をコーティング組成物に添加することができ、塗料製造工程の間に活性化することができるか、又はそれらはコーティング組成物に予備活性形態で、例えば溶媒ペーストの形態で添加することができる。
【0158】
チキソトロープ剤、増粘剤及び沈降防止剤は、組成物の合計の質量に基づいて、好ましくは0~5.0wt%、より好ましくは0.2~3.0wt%、より一層好ましくは0.5~2.0wt%の量で本発明の組成物中にそれぞれ存在する。
【0159】
可塑剤の例は、塩素化パラフィン、シリコーンオイル(非反応性ポリジメチルシロキサン)、フタラート、ホスフェートエステル、スルホンアミド、アジペート及びエポキシ化植物油である。可塑剤は、最終組成物の合計の質量に基づいて、好ましくは0~10wt%、より好ましくは0.5~7wt%、より一層好ましくは1~5wt%の量で本発明の組成物中に存在する。
【0160】
組成物及び塗料
本発明の幾つかの好ましい防汚コーティング組成物は、
(i)2~60wt%、より好ましくは5~40wt%のアクリルアセタールエステルコポリマー;
(ii)1~30wt%、より好ましくは2~20wt%のモノカルボン酸の亜鉛塩
を含む。
【0161】
本発明のさらに好ましい防汚コーティング組成物は、
(i) 2~60wt%、より好ましくは5~40wt%のアクリルアセタールエステルコポリマー;
(ii)1~30wt%、より好ましくは2~20wt%のモノカルボン酸の亜鉛塩;
(iv)0.1~50wt%、より好ましくは0.2~45wt%の防汚剤;
(v)0~40wt%、より好ましくは2~35wt%の顔料及び/又は増量剤;
(vi)0~15wt%、より好ましくは0.5~10wt%のコバインダー;
(vii)0~35wt%、より好ましくは1~30wt%の溶媒;
(viii)0~5wt%、より好ましくは0.5~2.5wt%の安定剤;
(ix)0~5wt%、より好ましくは0.5~2.5wt%の脱水剤;及び
(x)0~5wt%、より好ましくは0.2~3wt%のレオロジー改質剤
を含む。
【0162】
本発明の他の好ましい防汚コーティング組成物は、
(i) 2~60wt%、より好ましくは5~40wt%のアクリルアセタールエステルコポリマー;
(ii)1~30wt%、より好ましくは2~20wt%のモノカルボン酸化合物;及び
(iii)0.2~20wt%、より好ましくは0.5~15wt%の亜鉛化合物
を含む。
【0163】
本発明のさらに好ましい防汚コーティング組成物は、
(i) 2~60wt%、より好ましくは5~40wt%のアクリルアセタールエステルコポリマー;
(ii)1~30wt%、より好ましくは2~20wt%のモノカルボン酸化合物;
(iii)0.2~20wt%、より好ましくは0.5~15wt%の亜鉛化合物;
(iv)0.1~50wt%、より好ましくは0.2~45wt%の防汚剤;
(v)0~40wt%、より好ましくは2~35wt%の顔料及び/又は増量剤;
(vi)0~15wt%、より好ましくは0.5~10wt%のコバインダー;
(vii)0~35wt%、より好ましくは1~30wt%の溶媒;及び
(viii)0~5wt%、より好ましくは0.5~2.5wt%の安定剤;
(ix)0~5wt%、より好ましくは0.5~2.5wt%の脱水剤;及び
(x)0~5wt%、より好ましくは0.2~3wt%のレオロジー改質剤
を含む。
【0164】
本発明はまた、上で説明された組成物を調製する方法に関するものであり、組成物中に存在する成分は混合されている。任意の従来の製造方法を使用することができる。
【0165】
本明細書において説明される組成物は、使用、例えばスプレー塗装のための適した濃度で調製することができる。この場合、組成物はそれ自体が塗料である。代わりに、組成物は塗料の調製のための濃縮物であってよい。この場合、さらに溶媒が本明細書において説明される組成物に添加されて塗料を形成する。好ましい溶媒は、組成物と関連して上で説明された通りである。
【0166】
混合した後、及び任意選択で溶媒を添加した後、防汚コーティング組成物又は塗料は、好ましくはコンテナに充填される。適したコンテナは缶、ドラム及びタンクを含む。
【0167】
本発明の防汚コーティング組成物は、1パック又は多パック、例えば2パックとして与えることができる。好ましくは、組成物は2パックとして与えられる。
【0168】
1パックとして与えられるとき、組成物は、好ましくはすでに混合されているか、又は使用する準備ができている形態である。任意選択で、1パックの製品は、適用の前に溶媒によって薄めることができる。この組成物は、好ましくはアクリルアセタールエステルコポリマー及びモノカルボン酸の亜鉛塩を含む。
【0169】
2パックとして与えられるとき、第一のコンテナは、好ましくは上で画定されたアクリルアセタールエステルコポリマー及び任意選択で安定剤を含有し、第二のコンテナは、好ましくはモノカルボン酸及び亜鉛化合物を含有する。モノカルボン酸及び亜鉛化合物はインサイチュで反応してモノカルボン酸の亜鉛塩を発生させる。2パックとして与えられるとき、第一及び第二のコンテナの内容物は、好ましくは組成物の使用の前にすぐに混合される。好ましくは、モノカルボン酸の亜鉛塩への変換は、混合前に第二のコンテナ中で完了される。任意選択で、塗料を形成するために、さらなる溶媒が組成物に添加される。好ましい溶媒は、組成物と関連して上で説明された通りである。
【0170】
従って、本発明はまた、上で説明された塗料の調製のためのキットに関する。塗料の調製のための第一のキットは、アクリルアセタールエステルコポリマー及び任意選択で安定剤を含有する第一のコンテナ;モノカルボン酸の亜鉛塩及び任意選択で脱水剤を含有する第二のコンテナ;並びに任意選択で第一及び第二のコンテナの内容物を混合するための説明書を含む。塗料の調製のためのさらなるキットは、アクリルアセタールエステルコポリマー及び任意選択で安定剤を含有する第一のコンテナ;モノカルボン酸及び亜鉛化合物を含有する第二のコンテナ;並びに任意選択で第一及び第二のコンテナの内容物を混合するための説明書を含む。両方のキットにおいて、好ましくは、第一のコンテナはまた顔料及び/又は増量剤を含有する。両方のキットにおいて、顔料及び/又は増量剤、防汚剤、コバインダー、溶媒及び添加剤は、第一のコンテナ、第二のコンテナ又は両方のコンテナに任意選択で存在する。好ましいアクリルアセタールエステルコポリマー、モノカルボン酸、亜鉛化合物、安定剤、防汚剤、顔料及び/又は増量剤、コバインダー、溶媒及び添加剤は、全体の防汚コーティング組成物と関連して上で説明された通りである。好ましいキットは、第一及び第二のコンテナの内容物を混合するための説明書をさらに含む。
【0171】
本発明の防汚コーティング組成物及び塗料は、好ましくは40~80vol%、より好ましくは45~70vol%、より一層好ましくは50~65vol%の固形分を有する。
【0172】
本発明の防汚コーティング組成物及び塗料は、好ましくは50~1500cP、より好ましくは100~1000cP、より一層好ましくは150~850cPの粘度を有する。好ましくは、粘度は、実施例で説明されるようにコーンプレート粘度計(ISO2884-1:1999)を使用して測定される。
【0173】
好ましくは、本発明の防汚コーティング組成物及び塗料は50~500g/L、好ましくは100~420g/L、例えば150~380g/Lの揮発性有機化合物(VOC)の含有量を有する。VOC含有量は、例えばASTM D5201-05若しくはIED 2010/75/EUで説明されるように計算することができるか、又は例えばUS EPA Method24若しくはISO 11890―2で説明されるように測定することができる。
【0174】
本発明の防汚コーティング組成物は、当分野の当業者にとって周知であるプロセスを採用することによって製造することができる。例えば、防汚コーティング組成物は、組成物の成分を(任意の順序で)同時に又は順次添加して、次いで組成物中の成分を撹拌、混合及び/又は分散することによって調製することができる。混合物に高いせん断力を適用する方法、例えば高速度分散機、様々なミル及びインラインミキサーを含む任意の従来の混合方法を採用することができる。
【0175】
本発明の組成物を調製するための好ましいプロセスにおいて、任意の顔料、増量剤及び/又は防汚剤及び分散及び/又は活性化を必要とするレオロジー改質剤は第一の工程で溶媒とともに、好ましくはハイシアミキサーを使用して混合される。時には、この工程は粉砕(milling)、摩砕(grinding)又は分散(dispersing)といわれる。任意選択で他の構成要素、例えばアクリルアセタールエステルコポリマー、モノカルボン酸の亜鉛塩又は亜鉛化合物とモノカルボン酸、バインダー、安定剤及び/又は脱水剤もまた粉砕プロセスにおいて含められる。1つの好ましいプロセスにおいて、アクリルアセタールエステルコポリマー、モノカルボン酸の亜鉛塩、防汚剤、任意選択で安定剤、任意選択で脱水剤及び任意選択で溶媒は、顔料及び/又は増量剤、防汚剤、バインダー及び/又はレオロジー改質剤の粉砕された混合物と混合される。様々な成分を(任意の順序で)同時に又は順次添加することができる。好ましくは、結果として生じた混合物は、撹拌、混合及び/又は分散によってさらに混合される。この方法は、1液製品を製造する。
【0176】
2液製品を製造するための好ましい方法において、第一の混合物は、アクリルアセタールエステルコポリマー、任意選択で安定剤、任意選択で脱水剤並びに任意選択で任意の顔料及び/又は増量剤、バインダー並びに活性化及び/又は分散を必要とするレオロジー改質剤、並びに任意選択で溶媒を粉砕することによって調製される。第二の混合物は、モノカルボン酸並びにモノカルボン酸と反応してモノカルボン酸の亜鉛塩を生じさせる亜鉛化合物、並びに任意選択で任意の顔料及び/又は増量剤、バインダー並びに活性化又は分散を必要とするレオロジー改質剤、並びに任意選択で溶媒を粉砕することによって別々に調製される。最後には、2つの結果として生じた組成物はともに混合されて、防汚コーティング組成物を形成する。この最終混合工程は、好ましくは防汚組成物の使用の前にすぐに行われる。
【0177】
本発明の防汚コーティング組成物及び塗料は、汚損にさらされる任意の物品の表面の全体又は一部に適用することができる。表面は(例えば潮の動き、貨物積載又は波を通して)持続的又は断続的に水中にある場合がある。物品表面は、典型的には船舶の船体又は固定された海洋オブジェクトの表面、例えば石油プラットフォーム若しくは浮標である。コーティング組成物及び塗料の適用は、任意の従来の手法によって、例えば(例えばブラシ又はローラーを用いた)塗装によって、又はより好ましくは物品にコーティングをスプレーすることによって達成することができる。典型的には、表面は、コーティングを可能とするために海水から離れている必要がある。コーティングの適用は、当分野において従来公知の通り達成することができる。コーティングが適用された後、コーティングは好ましくは乾燥又は硬化される。
【0178】
防汚コーティングを物体(例えば船の船体)に適用するとき、物体の表面26は、典型的には、防汚組成物の単一コートによって単独では保護されていない。表面の性質によっては、防汚コーティングは既存のコーティング系に直接適用することができる。このようなコーティング系は、異なる一般形(例えば、エポキシ、ポリエステル、ビニル若しくはアクリル又はそれらの混合物)の塗料の幾つかの層を含んでよい。表面が汚れておらず、かつ先の適用からそのままの防汚コーティングである場合、新規の防汚塗料を、典型的には1つ又は2つのコートとして、例外的な場合にはより多くのコートで直接適用することができる。
【0179】
代わりに、適用する者は、コートされていない表面(例えば、鋼、アルミニウム、プラスチック、複合材、ガラス遷移又は炭素繊維)を用いて開始することができる。このような表面を保護するために、全体のコーティング系は、典型的には、耐食コーティング(例えば、硬化可能なエポキシコーティング又は硬化可能な改質されたエポキシコーティング)の1つ又は複数の層、タイコート(例えば、硬化可能な改質されたエポキシコーティング又は物理乾燥ビニルコーティング)の1つの層及び防汚塗料の1つ又は2つの層を含む。当分野における当業者は、これらのコーティング層に精通している。
【0180】
従って、本発明の幾つかの好ましい物品は、その表面の少なくとも一部にコーティングを備え、コーティングは耐食コーティング層、例えばプライマー、接合層及び本明細書において画定される防汚コーティング組成物を含む。
【0181】
本発明は、次に、以下の非限定的実施例に関連して画定される。
【実施例
【0182】
ポリマーの特性評価並びにポリマー特性及びポリマー溶液特性の決定のための方法
ポリマー溶液の粘度の決定
ASTM D2196-15に従って、Brookfield DV-I Primeデジタル粘度計を使用して、LV-2又はLV-4スピンドルを用いて、12rpmで,ポリマー溶液の粘度を決定した。測定の前に、23.0℃±0.5℃にポリマーを調節した。
【0183】
ポリマー溶液の非揮発性物質含有量の決定
非揮発性含有量として、質量で、ISO 3251:2008に従って、ポリマー溶液中の固形分を決定した。0.5g±0.1gのテストサンプルを平底の金属皿に移して、通風炉中で105℃で180分間乾燥した。非揮発性物質(NVM)として残留材料の質量を考えた。サンプルの非揮発性物質含有量は質量パーセントで表す。与える値は3つの並列サンプルの平均である。
【0184】
ポリマーの平均分子量分布の決定
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定によってポリマーを特性評価した。Malvern Omnisec Resolve and Reveal systemを使用して、Agilentの直列の2つのPLgel 5μm Mixed-Dカラムを用いて分子量分布(MWD)を決定した。従来の校正によって狭いポリスチレン標準を使用してカラムを校正した。分析条件を下の表に提示した。
【0185】
【表1】
【0186】
5mLのTHF中の25mgの乾燥ポリマーに応じたポリマー溶液の量を溶解することによってサンプルを調製した。GPC測定のためのサンプリングの前に、最低3時間、室温でサンプルを保持した。分析の前に、0.45μmのナイロンフィルターを通してサンプルをろ過した。重量平均分子量(Mw)及びMw/Mnとして与えられる多分散指数(PDI)を報告した。
【0187】
ガラス転移温度の決定
示差走査熱量分析(DSC)測定によってガラス転移温度(Tg)を得た。TA Instruments DSC Q200でDSC測定を実行した。ガラス板への、100μmのギャップサイズを有する塗布器を使用した、ポリマー溶液のドローダウンによって、サンプルを調製することができる。一晩、室温で、続いて24時間、50℃で、通風加熱室中でガラス板を乾燥した。ガラス板から乾燥ポリマー材料を削り取って、乾燥ポリマー材料約10mgをアルミニウム皿に移した。非密封蓋を用いて皿をふさいだ。-80~120℃の温度範囲で、10℃/minの加熱速度及び10℃/minの冷却速度で、参照として空の皿を使用して加熱-冷却-加熱の手順を実行することによって、測定を実行した。TA InstrumentsのUniversal Analysisソフトウェアを使用して、温度走査から記録されたデータを処理した。ポリマーのTgとして、ASTM E1356-08で定義される、第二の加熱のガラス遷移範囲の変曲点を報告した。
【0188】
比色滴定による酸価の決定
ISO 2114:2000 Method Aで説明される手順によって、カルボン酸化合物の酸価を決定した。秤量したカルボン酸化合物の分量、約1gを、約50mLのJotun Thinner No.17に溶解した。フェノールフタレインを色指示薬として添加して、赤の呈色が現れるまで溶液を0.1MのKOH溶液とともにエタノール中で滴定して、溶液は10~15秒の間、溶液を撹拌しているにもかかわらず安定であった。報告した酸価は3つの並列測定の平均値である。溶液中のカルボン酸化合物については、試験されたカルボン酸化合物溶液の測定された非揮発性物質に基づいて、乾燥カルボン酸化合物についての酸価を計算した。
【0189】
コポリマー溶液A1及びA2の調製のための一般的な手順
撹拌器、凝縮器、供給物入口及び窒素入口を有する反応器に溶媒を充填した。反応器の内容物を85℃に加熱して、その温度で維持した。モノマー、溶媒及び開始剤の混合物からなる供給物を、反応器に一定速度で2時間の間添加した。供給物添加が完了した1時間後に、溶媒及び開始剤の混合物を添加した。反応器を冷却する前に、反応した混合物を85℃でさらに2時間保持した。
【0190】
コポリマーを調製するための構成要素を下の表1に記載する。全ての量を質量部で与える。
【0191】
コポリマー溶液A3~A12の調整のための一般的な手順
溶媒を、撹拌器、凝縮器、供給物入口及び窒素入口を有する反応器に充填した。反応器の内容物を85℃に加熱して、その温度で維持した。モノマー及び開始剤の混合物からなる供給物を、反応器に一定速度で3時間の間添加した。供給物添加が完了した1時間後に、溶媒及び開始剤の混合物を添加した。溶媒の分量を添加して反応器を冷却する前に、反応した混合物を85℃でさらに2時間保持した。
【0192】
コポリマーを調製するための構成要素を下の表1に記載する。全ての量を質量部で与える。
【0193】
【表2】
【0194】
コポリマー溶液CA1の調整のための手順
国際公開第2016/167360号の製造例B-2を繰り返してコポリマー溶液CA1を調製した。
【0195】
国際公開第2016/167360号の手順に次いで、75部のキシレンを、撹拌器、凝縮器、窒素入口及び供給物入口を有する温度制御された反応容器に充填した。反応容器を加熱して、内容物を撹拌している間、85℃で維持した。10部のメチルメタクリレート、40部の2-メトキシエチルメタクリレート、50部の1ーイソブトキシエチルメタクリレート及び1.3部の2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)の混合物を調製した。混合物を、反応容器に4時間の間、一定の速度で窒素雰囲気下で添加した。添加が完了した後、0.5部のt-ブチルペルオキシオクタノエート及び2部のキシレンの混合物を、4回、30分の間隔で添加した。反応器の内容物を、1時間の間、85℃でさらに撹拌した。次いで、7.1部のイソブチルビニルエーテル、6.7部のキシレン及び3部のブチルアセテートを添加して、反応容器を室温に冷却した。
【0196】
コポリマー溶液A3は、51.3wt%の非揮発性物質含有量、307cPの溶液粘度、25200のMw、2.34のPDI及び37℃の測定されたTgを有していた。
【0197】
コポリマー溶液A2の調製のための手順
特開平04-103671の参照例5(ポリマーa-4)を繰り返してコポリマー溶液CA2を調製した。
【0198】
特開平04-103671の手順に次いで、800部のキシレンを、撹拌器、凝縮器、窒素入口及び供給物入口を有する温度制御された反応容器に充填した。反応容器を加熱して、内容物を撹拌している間、110℃で維持した。200部のキシレン、15部のt-ブチルペルオキシオクタノエート、5部の2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、300部のメチルメタクリレート、200部のn-ブチルアクリレート及び500部の1-イソブトキシエチルメタクリレートの混合物を調製した。混合物を、反応容器に5時間の間、一定の速度で窒素雰囲気下で添加した。添加が完了した後、反応器の内容物を、5時間の間、110℃でさらに撹拌した。反応容器を室温に冷却した。
【0199】
コポリマー溶液A4は、50.1wt%の非揮発性物質含有量、357cPの溶液粘度、11200のMw、2.39のPDI及び31℃の測定されたTgを有していた。
【0200】
アクリルコポリマー溶液X1の調製のための手順
48.0部のキシレン及び20.0部の1-メトキシ-2-プロパノールを、撹拌器、凝縮器、供給物入口及び窒素入口を有する温度制御された反応容器に充填した。反応内容物を85℃に加熱して、その温度で維持した。93.0部のn-ブチルアクリレート、4.0部のメチルメタクリレート、3.0部のメタクリル酸、1.58部の2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)及び20.0部のキシレンの予備混合物を調製して、反応器に一定の速度で2時間30分の間に窒素雰囲気下で添加した。供給物添加が完了した1時間後に、0.30部の2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)及び10.0部のキシレンの混合物を、反応容器に一定速度で15分間の間添加した。反応器を室温に冷却する前に、反応した混合物を85℃でさらに1時間保持した。構成要素の量を質量部で与える。
【0201】
アクリルコポリマー溶液は、49.9wt%の非揮発性含有量、98cPの溶液粘度を有していた。アクリルコポリマー溶液は、28700のMw、3.12のPDI及び-35℃の測定されたTg及び18.6mg KOH/g乾燥ポリマー、の酸価を有していた。
【0202】
ゴムロジンの亜鉛塩Z1の調製のための手順
1400g溶液のポルトガルゴムロジン(キシレン中で60wt%;実施例のセクションで説明される方法によって決定された酸価109mg KOH/g溶液)、220gの亜鉛酸化物及び60gのキシレンを、撹拌器、ディーン-スタークトラップ及び還流冷却器を有する2Lの温度制御された反応容器に充填した。ディーン-スタークトラップでもう水が凝縮されなくなるまで、反応混合物を140~160℃で還流した。ゴムロジン亜鉛塩の溶液をろ過する前に、過剰な亜鉛酸化物を沈下させた。
【0203】
ろ過されたロジン酸亜鉛溶液は、66.9wt%の非揮発性物質含有量を有していた。
【0204】
トリメチルイソブテニルシクロヘキセンカルボン酸の調製のための手順
中国特許第103980112号明細書で説明される手順に基づいて、トリメチルイソブテニルシクロヘキセンカルボン酸を調製した。
【0205】
54部のメタクリル酸、102部の新たに蒸留したアロオシメン及び0.1部の4-メトキシフェノールを、撹拌器、凝縮器及び窒素入口を有する反応フラスコに添加した。反応混合物を、90℃に加熱する前に、窒素下に置いた。72時間の反応の後、103部のアロオシメンを添加して、反応混合物を11時間の間保持して反応を完了した。生成物を真空蒸留によって精製し、粗生成物のための第一の蒸留は137~150℃、3mbarであり、生成物のための第二の蒸留は140~147℃、3mbarである。
【0206】
生成物は、室温で、薄い黄色の、透明の、半固体の材料であった。生成物は、246mg KOH/gの酸価を有していた。
【0207】
生成物は、トリメチルイソブテニルシクロヘキセンカルボン酸の異性体の混合物であった。
【0208】
本明細書において例示する防汚コーティング組成物に採用する他の化合物を、下の表2a及び2bに要約する。これらの化合物は、商業的な供給元から全て購入することができる。
【0209】
【表3】
【0210】
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【0211】
防汚コーティング組成物特性及びそれから形成されるコーティングの特性の決定
コーンプレート粘度計を使用した塗料粘度の決定
防汚コーティング組成物の粘度を、ISO 2884-1:1999に従って、RELデジタルコーンプレート粘度計を使用して、23℃の温度に設定して、10000s-1のせん断速度で動作させて、及び0~10Pの範囲で粘度測定を提供して決定した。結果を3つの測定の平均として与える。
【0212】
VOCの決定
防汚コーティング組成物のVOC(g/L)を、ASTM D5201-05に従って計算した。
【0213】
コーティングフィルムのケーニッヒペンデュラム硬度の測定
コーティングフィルムの硬度を、ペンデュラム硬度計を使用して決定した。ISO 1522:2006によって試験を実行した。
【0214】
防汚コーティング組成物のそれぞれを、透明なガラス板(100×200×3mm)に、300μmのギャップサイズを有するフィルム塗布器を使用して適用した。コーティングフィルムを、23℃で、相対湿度50%で1週間乾燥して、次いで50℃で72時間、通風加熱室中で乾燥した。24時間の乾燥の後及び24時間の強制乾燥の後、乾燥コーティングフィルムのコーティングフィルム硬度を、23℃の温度で、Erichsen 299/300ペンデュラム硬度計を使用して測定した。6°から3°に振幅を小さくする振り子振動の数として、硬度を定量化する。振動のより高い数は、コーティングのより高い硬度を示唆する。
【0215】
海水中における回転ディスク上の防汚コーティングフィルムの研磨速度の決定
経時的なコーティングフィルムのフィルム厚さの減少を測定することによって、研磨速度を決定した。この試験のために、PVCディスクを使用した。コーティング組成物を、放射状の縞として、ディスク上に、300μmのギャップサイズを有するフィルム塗布器を使用して適用した。乾燥コーティングフィルムの厚さを、表面プロファイラーによって測定した。典型的な初期乾燥フィルムは、適用された防汚コーティング組成物の固形分及び適用の速さに依存する。実施例の部で試験されたコーティングについての典型的な初期フィルム厚さは100±15μmであった。PVCディスクをシャフトに据え付け、中で海水が通過するコンテナ中で回転させた。ろ過された、及び25℃±2℃に温度調節された天然海水を使用した。回転シャフトの速さは、ディスク上で16ノットの平均のシミュレートされた速さを提供した。フィルム厚さを測定するために、PVCディスクを規則的な間隔で取り出した。フィルム厚さを測定する前に、ディスクを一晩、室温で乾燥させた。結果をフィルムの消耗として、すなわち初期フィルム厚さと所与の時間で測定された厚さとの間の差として与える。薄い、非研磨性のこされた層が表面に典型的には10~20μmの厚さで残存するとき、又はフィルムが表面から全体的に研磨されて取り去られたとき、コーティングフィルムは研磨され終えた(polished through)と考えられる。研磨し終えることはPTといわれる。コーティングフィルム及び薄片の分離によるコーティング不良はFLといわれる。
【0216】
下の表3,5、7~8、10及び12~13で与えられる割合で成分を混合した。混合物を、ガラスビーズ(直径約3~4mm)の存在の下、250mLの塗料缶中で、振動振り出し器を使用して、15分間分散させた。残った構成要素を添加して混合物を分散する前に、固体樹脂を溶媒中に溶解させ、50~60wt%固体の樹脂溶液を与えた。表3a、3b、5、7、10及び13で説明される組成物を、2つの成分(成分A及び成分B)として、別々の塗料缶(それぞれ250mL)中で、それぞれ最初に調製して、所与の比で適用のわずかに前に混合した。
【0217】
【表5】
【0218】
【表6】
【0219】
【表7】
【0220】
【表8】
【0221】
【表9】
【0222】
【表10】
【0223】
【表11】
【0224】
【表12】
【0225】
【表13】
【0226】
【表14】
【0227】
【表15】
【0228】
【表16】
【0229】
【表17】
【0230】
【表18】
【0231】
結果
特許実施例は、本発明の防汚コーティング組成物の範囲を例示する。実施例は、本発明の防汚コーティング組成物によって達成された改善されたフィルム硬度を実証する。
【0232】
表4の結果は、異なる種類及び異なる量の両方の反応性亜鉛化合物を試験した防汚コーティング組成物中に使用する場合、適用後24時間で及び乾燥されたフィルムでの両方で、本発明の組成物によって形成したフィルムのペンデュラム硬度は比較的高いことを示す。これらの結果は、反応性亜鉛化合物を欠いた並びに従って適用の24時間後及び乾燥後にかなり低い硬度を生じる比較例CPA1~CPA4についての結果と比較することができる。結果はまた、比較例から形成されたコーティングは研磨されて取り去られるか又は研磨速度が横ばいであるかのいずれかであるが、本発明の防汚コーティング組成物中から形成されたコーティングは制御された速度で研磨されることを示す。
【0233】
表6の結果は、異なる種類及び異なる量の両方のモノカルボン酸化合物を試験した防汚コーティング組成物中に使用する場合、適用後24時間で及び乾燥されたフィルムでの両方で、本発明の組成物によって形成したフィルムのペンデュラム硬度は比較的高いことを示す。これらの結果は、同じ種類のモノカルボン酸化合物を含有するが反応性亜鉛化合物を欠いた並びに従って適用の24時間後及び乾燥後にかなり低い硬度を生じる比較例CPB1~CPB3についての結果と比較することができる。結果はまた、比較例から形成されたコーティングは最終的に不良であるが、本発明の防汚コーティング組成物中から形成されたコーティングは制御された速度で研磨されることを示す。
【0234】
表9の結果は、試験した防汚コーティング組成物中に使用される異なる調合可変物(formulations variables)、例えば異なるアセタールエステルコポリマー、異なるコバインダー、異なる殺生物剤及び異なる増量剤を示し、適用後24時間で及び乾燥されたフィルムでの両方で、本発明の組成物によって形成したフィルムのペンデュラム硬度は比較的高い。結果はまた、本発明の防汚コーティング組成物から形成したコーティングは制御された速度で研磨されることを示す。
【0235】
CPC2及びCPC3レプリカ組成物は、先行技術において開示されている。これらの組成物の両方は、反応性亜鉛化合物を欠いている。表9に示す通り、これらの組成物は全て、(24時間で及び乾燥後で)本発明の組成物よりかなり低い硬度レベルを生じさせる。CPC1は、CPCと同じであるが加えてモノカルボン酸化合物を欠いたさらなる比較物である。加えて、比較組成物から形成したコーティングは、研磨されて取り去られるか又は研磨速度が横ばいであるかのいずれかである。
【0236】
表11の結果は、銅フリーの防汚コーティング組成物の場合、適用後24時間で及び乾燥されたフィルムでの両方で、本発明の組成物によって形成したフィルムのペンデュラム硬度は比較的高いことを示す。結果はまた、本発明の銅フリーの防汚コーティング組成物から形成したコーティングは制御された速度で研磨されることを示す。これらの結果は、適用の24時間後及び乾燥後にかなり低い硬度を生じる比較例と比較することができる。さらに、比較例から形成した組成物は研磨試験において不良である。
【0237】
表14の結果は、アクリルアセタールエステルコポリマーの範囲は、本発明の防汚コーティング組成物において採用することができ、比較的高いペンデュラム硬度及び制御された研磨速度を有するフィルムを製造することができることを示す。例示された組成物は1パック及び2パック組成物を含む。