(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】医療装置のための制御ユニット
(51)【国際特許分類】
A61B 17/29 20060101AFI20231025BHJP
【FI】
A61B17/29
(21)【出願番号】P 2020552330
(86)(22)【出願日】2019-03-28
(86)【国際出願番号】 IL2019050361
(87)【国際公開番号】W WO2019186563
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-03-11
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515055063
【氏名又は名称】ヒューマン エクステンションズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ショレヴ モルデハイ
(72)【発明者】
【氏名】カウフマン アッサーフ
(72)【発明者】
【氏名】エリヘイ リラン
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-533241(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
関節運動するシャフトを有する医療装置のための制御ユニットであって、
ユーザの手によって係合可能であり、前記制御ユニットのハウジングに不動に取り付けられるインタフェースであって、前記ハウジングは前記医療装置に取り付け可能である、インタフェースと、
前記制御ユニットの空間
的位置および配向、および前記医療装置のエフェクタ端部の空間
的位置および配向を測定し、制御ユニットが組織に対して操作されるときに、組織に対する前記エフェクタ端部の前記空間
的位置および配向を維持するために、駆動ユニットを介して前記医療装置の前記関節運動するシャフトを操作するための情報を前記制御ユニットに提供するための感知ユニットと、を備
え、
前記感知ユニットは、前記制御ユニットが、前記医療装置の位置にかかわらず前記エフェクタ端部を同じ空間的配向に維持する、ホバリングモードを可能にする、制御ユニット。
【請求項2】
前記ハウジングの回転角度は、前記シャフトの関節運動領域の異なる回転角度に拡大または縮小される、
請求項1に記載の制御ユニット。
【請求項3】
前記インタフェースは、前記手のパームを介して操作可能なパームインタフェースである、
請求項1に記載の制御ユニット。
【請求項4】
前記ハウジングに枢動可能に取り付けられ、前記手の1つまたは複数の指によって係合可能であるフィンガインタフェースをさらに備える、
請求項1に記載の制御ユニット。
【請求項5】
パームインタフェースに枢動可能に取り付けられ、パームが前記パームインタフェースと係合したときに手の背面(甲)に拘束力を加えるように弾性変形することができる要素を有する拘束具をさらに備える、
請求項2に記載の制御ユニット。
【請求項6】
前記フィンガインタフェースは、親指および人差し指を介して同時に操作可能なレバーを含む、
請求項4に記載の制御ユニット。
【請求項7】
フィンガインタフェースは、前記医療装置の前記シャフトの関節運動を操作し、前記医療装置のエフェクタ端部を操作するように構成される、
請求項4に記載の制御ユニット。
【請求項8】
前記駆動ユニットは、前記医療装置の前記シャフトを制御するための少なくとも1つのモータを含む、
請求項1に記載の制御ユニット。
【請求項9】
前記感知ユニットは慣性測定ユニットを含む、
請求項8に記載の制御ユニット。
【請求項10】
前記慣性測定ユニットからの信号は、前記少なくとも1つのモータを動作させて前記シャフトを回転させる、
請求項9に記載の制御ユニット。
【請求項11】
関節運動可能なシャフトを有する最小侵襲性医療装置に取り付けられた、
請求項1に記載の制御ユニットを備えるシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願のセクション
本出願は、2018年3月29日に出願された米国仮特許出願第62/649,634号の優先権の利益を主張するものであり、その内容は、全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明は、最小侵襲性外科用ツールのような医療装置のための制御ユニット、およびその使用方法に関する。本発明の実施形態は、ハウジングと、ハウジングの回転角度をハウジングに取り付けられた操作可能な装置シャフトの関節運動領域の異なる回転角度に変換させるための感知ユニットとを含む制御ユニットに関する。
【0003】
最小侵襲性処置は、組織壁の小径アクセス部位を通して、または自然オリフィスを通して行われる。このような処置は、組織および器官に対する外傷を最小限に抑え、患者の回復期間を大幅に短縮する。
【0004】
組織アクセス部位を通して行われる内視鏡処置(例えば、腹腔鏡処置)では、小さな切開が組織壁に行われ、トロカールと呼ばれる小さなカニューレが切開を通して挿入される。トロカールは組織の切断、縫合、および除去を行うために、様々な外科用ツール(腹腔鏡)が挿入され得る通路を画定する。
【0005】
自然開口部から行う内視鏡処置では、口、尿道、肛門などから内視鏡を挿入し、消化管、膣腔または膀胱内の組織位置まで誘導して診断または外科的処置を行う。内視鏡処置はまた、自然口腔内視鏡手術(Natural Orifice Transluminal endoscopic Surgery)(NOTES)を含み、該手術において、内視鏡ツールは自然開口部を通過し、次いで、胃、膣、膀胱または結腸における内部切開を通過し、したがって、任意の外部切開または瘢痕を回避する。
【0006】
最小侵襲性手術ツールは、ユーザの手/腕の動きを手術ツールの動きおよび作動(まとめて「動作」)に変換する体外ユーザ制御ユニットを使用して体内で案内される。このように、制御ユニットは、ユーザが体外から体内の外科用ツールの動作を制御することを可能にする。多くのタイプのツールは、把持器およびシザー状ツールおよびカメラから複雑なロボットシステムまで、このようにして制御することができる。
【0007】
多数のタイプの手術ツールコントローラが当技術分野で知られており、例えば、特許文献1~7,15~18を参照されたい。
【0008】
ダヴィンチ(Da Vinci)、トランスエンテリックス(TransEnterix)、およびタイタンシステムズ(Titan systems)などの市販のロボットツールコントローラは、大きくて重く、外科医を患者ベッドから離れたコンソールに座らせる。このようなコントローラは、手/フィンガレバーまたはハンドル、ならびにフットペダルを介して操作され、ロボット手術ツールを円滑に操作するために高度な調整を必要とする。
【0009】
したがって、外科医が広範囲の装置およびエフェクタ-端部の動きを通して正確な制御およびスケーリングを可能にしながら、片手を使用して体内で外科用ツールを直感的かつ容易に操作することを可能にする制御ユニットが必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許第7996110号明細書
【文献】米国特許第7963913号明細書
【文献】米国特許第8521331号明細書
【文献】米国特許第8398541号明細書
【文献】米国特許第8939891号明細書
【文献】米国特許第9050120号明細書
【文献】米国特許第8332072号明細書
【文献】米国特許第2498692号明細書
【文献】米国特許第4753223号明細書
【文献】米国特許第6126649号明細書
【文献】米国特許第5873842号明細書
【文献】米国特許第7481793号明細書
【文献】米国特許第6817974号明細書
【文献】米国特許第7682307号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/0170519号明細書
【文献】米国特許出願公開第2009/0036901号明細書
【文献】米国特許出願公開第2014/0222023号明細書
【文献】米国特許出願公開第2014/0228631号明細書
【文献】米国特許出願公開第2009/0259141号明細書
【発明の概要】
【0011】
本発明の一態様によれば、関節運動するシャフトを有する医療装置のための制御ユニットが提供され、制御ユニットは(a)ユーザの手によって係合可能であり、制御ユニットのハウジングに不動に取り付けられるインタフェースであって、ハウジングは医療装置に取り付け可能である、インタフェースと、(b)ハウジングの回転角度をシャフトの関節運動領域の異なる回転角度に変換するための感知ユニットと、を備える。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、ハウジングの回転角度は、シャフトの関節運動領域の異なる回転角度に拡大または縮小される。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、インタフェースは、パームを介して操作可能なパームインタフェースである。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、制御ユニットは、ハウジングに枢動可能に取り付けられ、手の1つまたは複数の指によって係合可能であるフィンガインタフェースをさらに備える。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、制御ユニットは、パームインタフェースに枢動可能に取り付けられ、パームがパームインタフェースと係合したときに手の背面に拘束力を加えるように弾性変形することができる要素を有する拘束具をさらに備える。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、制御ユニットは、ハウジング内に駆動ユニットをさらに備える。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、フィンガインタフェースは、親指および人差し指を介して同時に操作可能なレバーを含む。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、フィンガインタフェースは、医療装置のシャフトの関節を操作し、医療装置のエフェクタ端部を操作するように構成される。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、駆動ユニットは、医療装置のシャフトを制御するための少なくとも1つのモータを含む。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、感知ユニットは、慣性測定ユニットを含む。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、慣性測定ユニットからの信号は、少なくとも1つのモータを動作させてシャフトを回転させる。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つのモータは、偏向位置にあるときにのみ関節領域を回転させる。
【0023】
本発明の別の態様によれば、関節運動可能なシャフトを有する最小侵襲性医療装置に取り付けられた制御ユニットを備えるシステムが提供される。
【0024】
本発明のさらに別の態様によれば、医療装置のための制御ユニットが提供され、制御ユニットは(a)シャフトの操作可能な関節を介して医療装置のシャフトに取り付けられたエフェクタ端部の位置および機能を制御するためのインタフェースと、(b)医療装置の制御ユニットおよびエフェクタ端部の位置を測定し、制御ユニットが組織に対して操作されるときに、組織に対するエフェクタ端部の配向を維持するための感知ユニットと、を備える。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、インタフェースは、ユーザのパームおよび指によって係合可能である。
【0026】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および/または科学用語は、本発明が関係する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または同等の方法および材料を、本発明の実施形態の実施または試験において使用することができるが、例示的な方法および/または材料を以下に記載する。矛盾する場合には、定義を含む特許明細書が優先する。さらに、材料、方法、および実施例は、例示にすぎず、必ずしも限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明は、添付の図面を参照して、単に例として本明細書に記載される。ここで図面を詳細に明確に参照すると、示される詳細は、例として、および本発明の実施形態の例示的な議論の目的のためたけであり、本発明の原理および概念的態様の最も有用で容易に理解される説明であると考えられるものを提供するために提示されることが強調される。この点に関して、本発明の基本的な理解のために必要である以上に詳細に本発明の構造的詳細を示す試みはなされておらず、図面を参照した説明は、本発明の実施形態がどのように実施され得るかを当業者に明らかにする。
【
図1A】腹腔鏡に取り付けられた本発明の制御ユニットの一実施形態を示す。
【
図1B】本発明の制御ユニットのピッチ、ロールおよびヨー軸を示す。
【
図1G】関節の座標系と本発明の制御ユニットとの間の関係を示す。
【
図2A】制御ユニットインタフェースに対する外科医の手の位置決めを示す。
【
図2B】制御ユニットインタフェースに対する外科医の手の位置決めを示す。
【
図3】モータの付いた腹腔鏡ツールおよび取り付けられた制御ユニットの一実施形態の全体図である。
【
図4A】本発明の制御ユニットの一実施形態のパームおよびフィンガインタフェースの移動を示す。
【
図4B】取り付けられた外科用装置の関節運動可能領域およびエフェクタ端部における対応する移動を示す。
【
図5A】本発明のインタフェースをより詳細に示す。
【
図5B】本発明の制御ユニットの一実施形態のインタフェースの制御位置を示す。
【
図5C】本発明の制御ユニットの一実施形態のインタフェースの制御位置を示す。
【
図5D】本発明の制御ユニットの一実施形態のインタフェースの制御位置を示す。
【
図5E】本発明の制御ユニットの一実施形態のインタフェースの制御位置を示す。
【
図5F】本発明の制御ユニットの一実施形態のインタフェースの制御位置を示す。
【
図5G】本発明の制御ユニットの一実施形態のインタフェースの制御位置を示す。
【
図6A】本発明の制御ユニットの一実施形態のフィンガインタフェースの一実施形態を示す。
【
図6B】本発明の制御ユニットの一実施形態のフィンガインタフェースの一実施形態を示す。
【
図6C-6D】本発明の制御ユニットの一実施形態のフィンガインタフェースの一実施形態を示す。
【
図7A】本発明の制御ユニットの一実施形態のパームインタフェースの一実施形態を示す。
【
図7B】本発明の制御ユニットの一実施形態のパームインタフェースの一実施形態を示す。
【
図7C】本発明の制御ユニットの一実施形態のパームインタフェースの一実施形態を示す。
【
図8A】本発明の制御ユニットの一実施形態の指およびパームインタフェースセンサの機械的構造および構成要素を示す。
【
図8B】本発明の制御ユニットの一実施形態の指およびパームインタフェースセンサの機械的構造および構成要素を示す。
【
図8C】本発明の制御ユニットの一実施形態の指およびパームインタフェースセンサの機械的構造および構成要素を示す。
【
図8D】本発明の制御ユニットの一実施形態の指およびパームインタフェースセンサの機械的構造および構成要素を示す。
【
図8E】本発明の制御ユニットの一実施形態の指およびパームインタフェースセンサの機械的構造および構成要素を示す。
【
図8F】本発明の制御ユニットの一実施形態の指およびパームインタフェースセンサの機械的構造および構成要素を示す。
【
図9A】本発明の制御ユニットの一実施形態のいくつかの動作モードを示す。
【
図9B】本発明の制御ユニットの一実施形態のいくつかの動作モードを示す。
【
図9C】本発明の制御ユニットの一実施形態のいくつかの動作モードを示す。
【
図9D】本発明の制御ユニットの一実施形態のいくつかの動作モードを示す。
【
図10】ユーザインタフェースからの信号が本発明の制御ユニットの一実施形態に取り付けられた腹腔鏡ツールの動作にどのように変換されるかを示すフローチャート図である。
【
図11】慣性測定ユニット(IMU)センサからの信号が姿勢方位基準システム(AHRS)を使用してピッチ、ロールおよびヨー角にどのように変換され、関節運動モータコマンドに変換されるかを示すフローチャート図である。
【
図12】本発明の教示に従って構成されたプロトタイプ制御ユニットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は医療装置のための制御ユニットに関し、より詳細には、自然な手の動きの腹腔鏡ツールなどの取り付けられた医療ツールへの変換を可能にし、それにより医療装置の位置および機能の正確かつ精密な制御を可能にする、制御ユニットおよび一体となったユーザインタフェースに関する。
【0029】
本発明の原理および動作は、図面および添付の説明を参照することにより、より良く理解することができる。
【0030】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、以下の説明に記載されるか、または実施例によって例示される詳細に限定されないことが理解されるべきである。本発明は他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実施または実行されることが可能である。また、本明細書で使用される語法および用語は説明の目的のためのものであり、限定とみなされるべきではないことを理解されたい。
【0031】
外科用ツールのための制御ユニットは、当技術分野で周知であり、機械的、電動式、またはロボットツールを制御するために使用される。このようなコントローラは体内で外科用器具を正確に位置決めおよび制御するために使用することができるが、それらはかさばり、操作が困難であり、しばしば、習得するために長い訓練期間を必要とすることがある。
【0032】
腹腔鏡手術では、外科医が治療する組織に隣接して医療装置シャフト(エフェクタ端部、例えば、把持器、カッター、針ホルダーを担持する)の遠位端を位置決めしなければならない。腹腔鏡を正確に位置決めするために、外科医は腹腔鏡全体を空間的に配向し、シャフトの関節運動可能領域の偏向を制御し、組織操作端を作動させなければならない。
【0033】
外科医は、典型的には、医療装置およびエフェクタ端部を関心のある組織部位に位置決めし、操縦し、保持し、操作するために、手術ツールの手動インタフェース(ハンドル)を使用する。現在使用されている装置インタフェースはそのような機能性を提供することができるが、操縦性と、装置全体およびそのエフェクタ端部の操作性との間のトレードオフによって制限されることがあり、したがって、最小侵襲性の処置手順を完了するために、外科医の側でかなりの時間および労力を必要とする。
【0034】
本発明を実施に移す一方で、本発明者は、解剖学的に制限された手/腕の動きのスケーリングを可能にし、それによって関心のある組織部位でのエフェクタ-端部位置決めを大幅に容易にしながら、1つまたは複数の外科用ツールを容易かつ自然に制御するために使用することができる外科用ツール制御ユニットを設計することを提示する。
【0035】
本発明者により出願された先の出願は、制御ユニットのハウジングに対して傾斜および回転(パームのヨー)が可能なパームインタフェースを有する制御装置を開示した。このようなパームインタフェースを用いて実験しながら、本発明者らは、固定されたパームインタフェースを左右に回転させる場合に外科医によって達成される可動範囲が、取り付けられた外科用ツールシャフトの関節運動領域の回転をスケーリングするために使用され得ることを発見した。
【0036】
したがって、関節運動部位をより効果的に制御するために、本発明者らは、制御ユニットハウジングに固定して取り付けられた(したがって、制御ユニットハウジングに対して移動しない)パームインタフェースと、ハウジングの左右回転を、操作可能な外科用器具シャフト(ハウジングに取り付けられた医療装置の一部を形成する)の関節の平面のスケーリングされた(0≦scale)ロール量にスケーリングするための感知ユニットとを含む制御ユニットを考案した。
【0037】
したがって、本発明の一態様によれば、医療装置のための制御ユニットが提供される。
【0038】
制御ユニットは、駆動ユニットと、取り付けられたユーザインタフェースとを含む。本明細書にさらに記載されるように、インタフェースは、ユーザの単一の手によって操作され、制御ユニット内のモータおよび機械部品を作動させ、それによって制御ユニットに取り付けられた医療装置の位置決め、移動および動作を制御する。
【0039】
ユーザインタフェースは、装置の位置決め、移動およびエフェクタ端部位置決めの偏向(シャフト関節運動および/またはエフェクタ端部の傾斜を介して)および動作を制御する。ユーザインタフェースは、制御ユニットのハウジングに取り付けられた固定支持体上に固定的に(移動不能に)取り付けられたパームインタフェース(ドームとして形成することができる)を含む。パームインタフェースはパームによって係合可能であり(単にパームをドーム形状のパームインタフェース上に置くことによって)、ユーザがハウジングを回転させること(すなわち、パームを左右に回転させること-このような回転は、本明細書では制御ユニットおよび取り付けられた装置が直立して配置される場合、ロール回転または単に回転とも呼ばれる)、ならびに組織アクセス部位に対してハウジング(および取り付けられた医療装置)全体を傾斜させることを可能にする。
【0040】
装置位置決め操作(上下運動と同様に傾斜および回転運動)によって第1のインタフェースに対してユーザのパームを維持するために、制御ユニットは、パームインタフェースに枢動可能に取り付けられ、パームがパームインタフェースと係合したときに手の甲(背)に拘束力を加えるように弾性的に変形することができる要素を含む拘束具をさらに含む。この拘束具が手の背面(甲)に係合すると、要素は弾性的に変形し、手の背面に下向きの力を加え、手をパームインタフェースに対して維持し、このインタフェースの正確な制御を可能にするとともに、ユーザが医療装置を引き上げることを可能にする。
【0041】
制御ユニットはまた、パームインタフェースに枢動可能に取り付けられ、手の1本または複数の指によって係合可能なフィンガインタフェースを含む。
【0042】
本発明の制御ユニットは、哺乳動物(例えば、ヒト被験体)の体内または体上の治療部位における組織を観察または操作するように構成された任意の医療装置とともに使用され得る。
【0043】
医療装置は、最小侵襲手術で使用される外科用装置であってもよい。このような装置は、典型的には剛性または操作可能なシャフトに取り付けられた装置本体を含む。シャフトは、アクセス部位を通して被験者の体内に配置されるエフェクタ端部を担持することができる。シャフトおよびエフェクタ端部は、体外から(体外で)装置本体に取り付けられた制御ユニットによって制御される。本発明の制御ユニットによって操作され得る医療装置の例としては、内視鏡(例えば、腹腔鏡または胸腔鏡)、カテーテル、外科用ホルダーなどが挙げられる。
【0044】
本発明のユーザインタフェースは、操作可能なシャフトと、把持針ホルダーまたはカッターなどの遠位に取り付けられた器具とを有する腹腔鏡装置と共に使用するのに特に適している。
【0045】
腹腔鏡は、臓器、腔、通路、および組織を観察または治療するための最小侵襲手術において広く使用されている。一般に、このような装置は、体腔、血管または組織内に、外科用メス、把持器またはカメラ/カメラレンズなどの遠位に取り付けられた器具(エフェクタ端部)を送達し、位置決めするように設計された細長いシャフトを含む。
【0046】
このような装置は、組織壁(例えば、腹壁)の小さな切開を通して配置された送達ポートを通して送達され、そして解剖学的に拘束された空間(例えば、腹腔)において利用されるので、操縦可能なシャフトは、身体の外側(医療装置の近位端)に配置された制御を使用して身体の内側で操縦または操作され得るので、有利である。このような操縦は操作者が体内で装置を案内し、解剖学的目印に遠位に取り付けられた器具を正確に位置決めすることを可能にする。
【0047】
操作可能な装置の多くの例は当業者に知られており、例えば、特許文献8~14,19を参照されたい。
【0048】
シャフトの1つまたは複数の関節運動領域の偏向は、装置のシャフトに沿って操作可能部分の遠位端まで延びる1つまたは複数の制御ワイヤを介してもたらされることができる。各制御ワイヤの近位端は、制御ユニットの電動機構に接続されており、ワイヤを引っ張ると、引っ張られたワイヤに対してシャフトの一部を偏向させる力が加わる。
【0049】
装置のエフェクタ端部は、制御ユニットに同様に接続され、ユーザインタフェースによって作動される1つまたは複数のケーブルを介して制御される。
【0050】
従って、操作可能な腹腔鏡のような操作可能な装置のユーザインタフェースおよび制御ユニットは、3つの別々の機能、組織アクセス部位に対する装置シャフトの位置決め(上下、傾斜、ロール)、操作可能な部分の偏向、および遠位に装着された器具の作動を提供する。
【0051】
上記に加えて、本制御ユニットは、パームインタフェースを介して、取り付けられた医療装置のシャフトの関節運動領域のスケーリングされた回転にもたらされるように、制御ユニットハウジング(および取り付けられた医療装置)の回転を変換させるための感知ユニットをさらに含む。
【0052】
本発明のユーザインタフェースは、3つの別個の四肢関節および筋肉群の運動を介してこれらの機能を提供する。
(i)装置のシャフトは、手および腕の動き(主に手首、肘および/または肩関節の周り)によって、組織アクセス部位に対して、上下、左右に動かされ、左右に回転される。(手首、肘、および/または肩の動きによってもたらされるような)回転は、本発明の制御ユニットのハウジング内に配置された感知ユニットによってスケーリングされる(例えば、回転角度の増加)。
(ii)シャフトの関節は、手の動きによって(主に手首関節の小さな動きと組み合わされた指の動きによって)制御される。これは、フィンガインタフェースを傾斜させることによって達成される。
(iii)遠位に取り付けられた器具は、(主に指節間関節および中手骨-指節関節の周りの)指の動きを介して作動される。
【0053】
外科医が制御ユニットを使用する間にハウジングの回転をスケーリングすることによって、本制御ユニットはより大きくより自然な操縦性を可能にし、腹腔鏡はより少ない労力で、身体および四肢の極端な操縦を必要とせずに、操作され得る。
【0054】
次に、図面を参照すると、
図1A~
図12は、本明細書において制御ユニット10と称される本制御ユニットの実施形態を示す。
【0055】
図1Aは、腹腔鏡器具12に取り付けられたハウジング15を有する制御ユニット10を示す。腹腔鏡器具12は、近位ハウジング13(ハウジング15に取り外し可能に取り付け可能)と、関節運動領域19を有するシャフト17と、ジョー22および23を有する遠位端エフェクタ21とを含む。腹腔鏡12はここでは説明のために使用され、制御ユニット10は、任意の外科用器具に取り付けられるか、または一体化され得る。
【0056】
制御ユニット10は、ハウジング15に固定されたパームインタフェース30を含む。駆動ユニット32はハウジング15内に配置され、シャフト17の関節運動領域19の関節運動、エフェクタ端部動作並びにロール回転スケーリングを制御する。ハウジング15は、機械加工、3D印刷、および/または鋳造/成形加工手法を使用して、ポリマーおよび/または合金から製造することができる。これは、直径40~60mm、高さ約60~120mmとすることができる。
【0057】
制御ユニット10はまた、ヒンジを介して制御ユニット10のパームインタフェース30に接続されるフィンガインタフェース40を含む(
図8A~Fを参照してより詳細に記載される)。フィンガインタフェース40がパームインタフェース30に対して回転されると、回転センサ125は、回転量を測定し、
図10に関して以下にさらに説明するように、関節運動領域19の偏向を制御するために使用される信号を生成する。
【0058】
制御ユニット10のフィンガインタフェース40はまた、
図6A~Dおよび
図8A~Fを参照して以下にさらに説明されるように、端部エフェクタの動作を制御するために使用され得るフィンガレバー50を含む。
【0059】
図1B~
図1Gは、制御ユニットおよび取り付けられた装置の様々な動作を表現するために使用される座標系を示す。
【0060】
図1Bは、制御ユニットのピッチ、ロールおよびヨーを規定する。(装置シャフトの)ロールは、制御ユニットをシャフトの長手軸の周りに回転させる(左/右)ことによって影響を受ける。
図1Cは、空間で固定された主座標軸を示す。装置座標系は、制御ユニットに固定されている。外科医が操作している間に制御ユニットが移動すると、装置座標系は、空間座標系に対して、任意の位置および任意の配向であってもよい。装置座標系のY軸は、関節のX軸がそれに垂直である制御ユニットシャフトの長手軸である。関節座標系は、X関節軸の周りを回転することができる。
【0061】
図1Dは、空間座標系と装置座標系との間の関係を示す。装置座標系の原点は、ワールド座標系に対して任意の点および方向に位置決めされてもよい。関節座標系は、任意の角θに回転することができる。
【0062】
図1E~Fは、関節座標系に対する関節の動作を示す。図示のように、関節は、関節座標系のXY平面内で曲がる。
図1Eは直線の位置での関節を示し、
図1Fは曲がった位置での関節を示す。関節の第2の動作は、XY関節平面を関節座標系のX軸を中心に回転させることで達成される(
図1G)。XY関節平面の回転は、関節ケーブルを操作するか、その長手軸を中心にシャフトを回転させることで実現できる。
【0063】
本発明では、XY関節平面における関節の屈曲は、指のインタフェースを傾斜させることによって制御され、関節座標系のXYの回転は制御ユニットに固定された回転センサによって制御される。回転センサは、制御ユニットに回転を測定して、駆動ユニットに回転信号を供給して、関節座標系のXY平面を回転させる。制御ユニットの測定された回転は、外科医によって決定されたスケール係数によって乗算される。
【0064】
図2A~Bは、パームインタフェース30とユーザの手100との間の係合を示す。ユーザのパームはパームインタフェース30の表面に置かれ、手100の背側(甲)102は背側(甲)インタフェース104の下に配置される。背側インタフェース104の要素106は、弾性変形によって下方に押される(
図5A~Gにも示される)。他の2本の指(親指および人差し指)がフィンガインタフェース40のレバー50と係合(ピンチ)している間に、ユーザの指のうちの3本を使用してパームインタフェース30の周囲を把持することができる。パームインタフェース30に係合している間、ユーザは、ハウジング15および取り付けられた腹腔鏡12を、ハウジング13を介して操作(傾斜、ヨー、上下)することができる。
【0065】
図3は、ハウジング15内に含まれる主な内部部品を示す制御ユニット10の断面図である。制御ユニット10のインタフェースは、ハウジング15の近位部分の一部を形成する。ハウジング15は、少なくとも1つのモータ36および関連回路34を有する駆動ユニット32を含む。ハウジング15は、腹腔鏡12の近位ハウジングに接続するためのコネクタ39を含む。
【0066】
ハウジング15内に位置するセンサは回路34に電気的に接続されており、センサからの信号を測定し、その中で演算することができる。演算された信号は、回路34によって、モータ36を動作させる作用信号に変換される。モータ36の回転は、コネクタ37を介して取り付けられた腹腔鏡12に伝達され、端部エフェクタおよびシャフト17の関節運動領域19の動作に変換される。
【0067】
図4A~Bは、外科医の手および指によって作動されるインタフェース30および40における動作と、モータ36によって作動される端部エフェクタ21および関節運動領域19の動作との間の関係を示す。フィンガインタフェース40の傾斜は、関節運動領域19における関節の左右動作に変換される。フィンガインタフェース40のレバー50の開閉、すなわち親指と人差し指との間の距離の変化は、ジョー22および23の開閉、すなわちジョー間の距離の変化をもたらす。フィンガレバーを回転させることによって、フィンガインタフェース40の本体を回転させると、ジョーが回転する。ロール回転制御ユニット10および取り付けられた腹腔鏡12(関節面回転)はパームインタフェース30を回転させることにより、関節のXY平面のロール回転をもたらす。後者は、以下にさらに説明するように、ハウジング15内に位置決めされたIMUセンサ信号をスケーリングすることによる。
【0068】
端部エフェクタ機構の制御、すなわちジョー22、23の開閉およびエフェクタの回転(
図4Bに示す)は、フィンガインタフェース40のレバー50を開/閉および/または回転させることによって行われる。レバーを操作する間、ハウジング15に位置するセンサ115(開閉)および125(回転)、(
図6A~Dおよび
図8A~B)は、コントローラ34によってサンプリングされ、処理される。処理された信号は演算され、ジョー機構を作動させるためにモータ36への作用信号に変換される。
【0069】
シャフト17の関節運動領域19のロール位置および偏向を制御するために、コントローラ34は、
図8Fに示すIMU-AHRSセンサ200および傾斜センサ135の両方からの信号を受信する。IMUセンサ200は、シャフト軸を中心としてハウジング15のロール回転を測定する。傾斜センサ(例えば、ポテンショメータ)135(
図8F)は、パームインタフェース30に対するフィンガインタフェース40の傾斜を測定する。
【0070】
結合されたIMU-AHRSセンサ200および傾斜センサ135からの処理された信号は、演算され、関節運動領域19の偏向を作動させるためにモータ36への作用信号に変換される。
【0071】
IMU-AHRSセンサ200のIMU部分は、1つまたは複数の加速度計を使用して線形加速度を検出し、1つまたは複数のジャイロスコープを使用して回転速度を検出することができる慣性測定ユニットである。IMUはまた、方位基準として一般に使用される磁力計を含むことができる。IMUの典型的な構成は3つの軸、すなわち、ピッチ、ロール、ヨーの各々に対して、1つの加速度計、1つのジャイロ、および1つの磁力計を軸ごとに含むことができる。
【0072】
IMU-AHRSセンサ200のAHRS部分は、制御ユニットフレームの姿勢を与えることができるモジュールである。これは、生レートジャイロスコープ、加速度計および磁力計の読み取り値を供給するソリッドステートのMEMSセンサブロックに基づくことができる。これらの読み取り値は、非線形統計フィルタ(拡張カルマンフィルタなど)に入力され、姿勢情報(ロール、ピッチ、ヨー)の安定した推定値を抽出する。モジュールはコンパクトでプリント回路基板と一体にできる。AHRSのロール測定値をシャフト軸に合わせるためには、制御ユニットフレーム上のモジュールの物理的な位置ずれを考慮してキャリブレーションを行う必要がある。キャリブレーションは、制御ユニットを平坦なテーブルのような整列した配向に置き、ダイアログボタン131によって整列リセットコマンドをAHRSモジュールに送ることによって行われる。キャリブレーションが完了した後、ロール軸の測定値が装置の長手軸に揃うと、キャリブレーション設定はフラッシュメモリに保存され、新しいキャリブレーションプロセスが実行されると、リフレッシュされる。IMUおよびAHRSモジュールは、Xsens Technologies B.V.が供給するMTi(登録商標)やMTx(登録商標)ユニットなど、単一の小型ユニットに一体化することができる。
【0073】
IMU信号に適用される統計フィルタは、動き自体に関する仮定に基づいて最適解を生成する。制御ユニットを使用している間、フィルタの結果がある程度ドリフトすることがある。制御ユニットおよび取り付けられた装置の回転に対する関節運動の反応がいつでも変化する場合、外科医は、装置を平坦なテーブル上に配置し、ボタン131の所定のクリックを介してリセットプロセスを起動することによって、キャリブレーションを繰り返すことができる。ドリフト現象は、付加的なIMUセンサを設けることによって、例えば、少なくとももう1つIMUセンサを制御ユニット内の第1のIMUとは異なる配向に取り付けることによって、低減することができる。
【0074】
ドリフトは、装置の使用に関するカルマンフィルタに仮定を追加することで、さらに改善することができる。例えば、装置シャフトがピボットとして作用する切開部(アクセス部位)を通して挿入されることを考慮に入れれば、アルゴリズムを改善することができる。移動範囲、システム空間周波数、最大加速度等のような、外科的処置に使用されている間の装置の一般的なキネマティクスに対する予備データも考慮に入れることができ、線形移動に対する境界制限をフィルタに適用することができる。
【0075】
図11に示すように、感知ユニットは、ワールド座標系に対する制御ユニットの完全な配向角度を提供する。その場合のAHRSシステムは、配向データ(ロール、ピッチおよびヨー)の安定した推定値を演算するために、レートジャイロスコープ、加速度計および磁力計測定(IMU)上の統計フィルタを駆動する。
【0076】
上述したように、ユーザインタフェースと関節運動領域との間の回転スケーリングの程度は、必要に応じて外科医によって選択され得る。機械的な関節の回転の合計は、制御ユニット本体の実際の回転と、関節ケーブルの組み合わせた引っ張り動作の結果生じるスケーリングされた回転とが加わったことの結果である。
【0077】
スケーリングを使用して、屈曲先端平面(関節平面)に追加のスケーリングされた傾斜量を生成することもできる。このような場合、屈曲傾斜は、フィンガインタフェース40から受信される信号と、装置コントローラによって測定されるような制御ユニット回転とで構成することができる。
【0078】
関節平面の回転は、関節運動ワイヤによって実行され、コントローラによってもたらされる。コントローラアルゴリズムは、ワールドに対する装置ロールおよびスケーリングポテンショメータアルゴリズムからの読み取りに関連する入力測定値を受信する。
【0079】
例えば、スケールポテンショメータからの0.0の読み取り値の場合、屈曲平面は、制御インタフェース自体と全く同様に回転する。制御ユニットを30度回転させると、屈曲平面の回転角度は同じになる。2.0に等しいスケール値を読み取ると、このロール測定値に200%が追加され、したがって、同じ制御インタフェースの回転が30度の場合、関節モータは、ワールド座標系に対する屈曲平面の合計90度の回転に対して、追加の60度で関節屈曲平面を駆動する。スケール値を-1.0に設定すると、ワールド座標系を基準とした固定屈曲平面となる。つまり、制御インタフェースのロールの動きは、屈曲平面には影響を与えず、つまり、空間で安定化される。
【0080】
図5Aは、制御ユニット10のユーザインタフェースの主要構成要素を示す。パームインタフェース30は、ネジ300によってハウジング15に固定される。背側インタフェース104は、パームインタフェース30の遠位端に取り付けられる。フィンガインタフェース40は、パームインタフェース30の首の下側に回転可能に取り付けられている。
【0081】
フィンガインタフェース40は、カップリング41を介してセンサハウジング43に接続される(
図8A~Eを参照してさらに記述される)。弾性カバー49は、ハウジング43内のセンサ機構を保護しながらカップリング41を傾斜させ、回転させることを可能にする。
【0082】
外科医の指のピンチ動作は、フィンガインタフェース40の本体52に対するフィンガレバー50の角度を介して測定される。レバー機構は、レバーの角度回転を、ピン56の近位端に位置するスロット57を有するピン56の回転に変換する。この例では、レバーの25度の角度回転は、ピン56およびスロット57の90度の角度回転に変換される。
【0083】
図8Dは、インナーシャフト640を有するポテンショメータ115を示す。ポテンショメータ115は、インナーシャフト640の回転を測定する。
図8Eに示すように、インナーシャフト640は、フィンガインタフェース40のスロット57に嵌合する雄型バルジ641を有する。フィンガインタフェース40がハウジング43に取り付けられると、スロット57とバルジ641が結合されて一緒に回転し、レバー50が動かされると、ピンチの測定が可能になる。
【0084】
図8Fは、フィンガインタフェース40の回転を測定する機構の構成要素を示す。ベース170は本体180に対して回転することができ、フィンガインタフェース40における指のピンチ移動を測定するポテンショメータ115のためのハウジングとして機能する。ベース170は、シャフト624に次いで接続されるギア627と噛み合うギア623を含み、シャフト624の回転運動は、ポテンショメータ125によって測定される。フィンガインタフェースが回転されると、ギア623が回転し、ギア627が反対方向に回転する。ギア627の回転は、指の回転の測定を可能にするポテンショメータ125によって測定される。コントローラは、
図7Cに示されるスイッチ114の選択された位置によって選択された予め決定された係数によって、実際の指回転角度をジョーロールに変換される。バルジ621およびリミットスイッチセンサ622ccwは、ギア623の回転に対する機械的制限として機能する。ギア623が回転リミッタに到達すると、レバー50へのトルクの適用により、ボタン622aが押し下げられ、センサ622ccwからの信号が、選択された角速度でジョーを反時計回り(CCW)方向に回転させるモータに指令する。同じ機構により、外科医は、リミットスイッチ622cwを押すことによって、ジョーを時計回り(CW)方向に回転させ続けることができる。
【0085】
図5B~Gは、フィンガインタフェース40における動きの範囲を示している。
図5B~Cは、フィンガインタフェース40の右(
図5C)および左(
図5B)への傾斜を示す。
図5Dは、開位置にあるレバー50を示し、一方、
図5Eは、閉(ピンチ)位置にあるレバー50を示す。
図5Fは、フィンガインタフェース40を時計回り(CW)に回転させた状態を示し、
図5Gは、フィンガインタフェース40を反時計回り(CCW)に回転させた状態を示す。
【0086】
図6A~Dは、フィンガインタフェース40の構造を詳細に示す。レバー50は、ヒンジ51を介して円筒形本体52に接続されている。ピン54は、レバー50の回転を制限するために使用される。指パッド55は、各フィンガレバー50の遠位端に接続される。
図6Bに示すようにレバーが押されると、ピン53がスロット59内をスライドする。以下、
図8B~Cを参照して更に説明するが、ピン53のスライドにより角度センサ115が回転し、スロット57を介してピン56に接続する。ピン53は、レバー50が本体52に対してそれらの角度を変化させながら、ピン53を直線的に移動させるように強制する細長いスロット59内に配置される。ピン53の直線移動は、以下に説明するように、ピン56の回転に変換される。
【0087】
ベース70は、本体52の近位端に配置される。フィンガインタフェース40は、カップリング41によってセンサハウジング43に接続することができる。溝73は、ハウジング43の側面に接続されたプランジャのハウジングとして機能する。
【0088】
図6Dは、フィンガインタフェース40の内部機構を示す。レバー50は、各レバー50のギア79および81を介して、ヒンジ51によって本体52に接続されている。ギア79および81は噛み合い、両方のレバー50が同じ角度に進むことを確実にする。また、これらのギアを噛み合わせることにより、外科医は、必要に応じて、単一の指でレバー50を操作することができる。ピン54は、レバー50の回転のリミッタとして機能する。レバー50が挟まれると、表面85はピン56の遠位端部に回転可能に取り付けられたホイール87に力を加え、したがって、ホイール87は装填されたばね228に対してフィンガインタフェース40の近位ベースに向かって直線的に移動するように強制される。ピン89は、ピン56に接続されている。ピン89は、螺旋状スロット82内を強制的に移動する。ピン53がホイール83上のレバー50によって加えられた力によって強制的に動かされると、ピン89は螺旋状スロット82の経路に従い、ピン56を時計回りに回転させる。ピン56の回転は、角度センサ115を回転させる軸のオス接続部へのスロット57の接続を介してセンサ115に伝達され、レバー50角度の測定を可能にする。外科医がレバー50上の力を解放すると、負荷されたばね228がピン89を押し、ピン89を反時計回りに回転させる。レバーに力が加えられていないとき、レバーは本体52に対して最大角度に達し、端部エフェクタ21のジョーが完全に開いていることを示す。
【0089】
図7A~Cは、センサハウジング44の構造を示す。センサハウジング44は、ハウジング15(図示せず)に固定され、パームインタフェース30によって覆われている。組み合わされたIMUおよびAHRSセンサ200は、カラム171を介してプレート116に接続される。電気回路310は、センサハウジング44内に配置されたすべてのセンサから信号を受信し、それらをハウジング15内の回路34に渡す。封入されたセンサモジュールは、フィンガインタフェース40の回転センサおよび開閉センサを含む。
【0090】
指の左右の動きは、プレート117の遠位端のハウジング313内に位置するセンサ125を介して測定される。
【0091】
モジュール145は、プレート117上に取り付けられたセットアップセンサを含む。セットアップセンサは、処置前および処置中に外科医によって使用されてもよい。スイッチ114は、端部エフェクタにおけるジョーロールの範囲を選択するために使用され得る。外科医は、例えば、±45度、±60度、または±90度などの範囲を選択することができる。ポテンショメータは、ポテンショメータ118に取り付けられたレバー119を所望の位置に移動させることによって、IMUセンサによって測定されるハウジング15(および取り付けられた腹腔鏡12)の回転と、関節面回転との間のスケーリングを決定するために使用されてもよい。例えば、関節平面の回転をスケールアップ(増加)することは、レバー119を時計回りに、またその逆に動かすことによって行うことができる。例えば、3のスケール係数は、ハウジング15および取り付けられた腹腔鏡12(IMUセンサによって測定される)の1度の回転ごとに、3度の関節平面の回転をもたらす。
【0092】
ボタン131は、フィンガインタフェース40の近くでプレート117上に取り付けられ、処置中に外科医により使用され、取り付けられた腹腔鏡12の所望の動作モードをオンザフライで選択する。
【0093】
制御ユニット10の制御回路は、異なる機能を提供するために、ボタン131の様々な押下とクリックとを区別するようにプログラムすることができる。
【0094】
例えば、外科医がフィンガインタフェース40のフィンガレバー50を保持しない場合であっても、約1秒の短い押圧を使用して、エフェクタ端部のジョーを閉鎖したままにするように指示することができる。例えば、3秒の長押しを使用して、関節を所定の直線位置(例えば、180度)に設定することができる。
【0095】
単一の短いクリックを使用して、関節角度を所望の角度に固定することができる。ダブルクリックは、通常の動作モードを再開するために使用される。
【0096】
スケーリングのための回転信号を提供することに加えて、組み合わされたIMUおよびAHRSセンサ200はまた、ホバリングモードを外科医に提供するために使用され得る。このモードは例えば、ボタン131を3回短くクリックすることによって起動することができる。
【0097】
ホバリングモードが起動されると、制御ユニット10は、腹腔鏡12の位置決めにかかわらず、端部エフェクタ22を同じ空間的配向に維持する。
【0098】
制御回路は、IMUからの信号を用いて装置の空間位置を測定することにより端部エフェクタ21の空間的配向を演算し、ホバリングモードの起動点でのプルケーブルの既知の長さによる関節角度を演算するようにプログラムされる。
【0099】
コントローラは、装置の配向の変化、すなわちシャフト17の配向を演算し、それに応じて関節を作動させて、端部エフェクタを組織に対して同じ空間位置に維持する。
【0100】
このモードは、外科医が小さな拘束された体腔内で手術する場合に有用であり得る。このモードを使用する場合、端部エフェクタは選択された器官に対して所望の配向で「ホバリング」することができ、これにより、外科医は例えば、複雑な操作を行う必要なく、正確な縫合線を予備形成することができる。
【0101】
図9Aは、切断部930を縫合することによって体腔内の組織920を修復するための外科的処置を示す。
【0102】
ホバリングモードによって補助される縫合処置を開始するために、外科医は切断部930と同じ配向に端部エフェクタ21を位置決めし、次いで、外科医は、ダイアログボタン131上の一連の所定のクリックによってホバリングモードを作動させる。ここから、シャフト17の配向のすべての変化は、端部エフェクタを同じ空間位置に維持するために、(引っ張りワイヤを介して)関節を修正するために、モータ36に信号を送る(
図9B-Dに示される関節修正)。
【0103】
図10は、装置モジュール間の信号のフローおよび処理シーケンスを示す。上述したように、装置に取り付けられた外科用ツールの操作は、フィンガインタフェース40と、組み合わされたIMUおよびAHRSセンサ200を含むハウジング15の配向と、端部エフェクタの動作および移動(例えば、関節の偏向、ジョーの開閉、およびジョーの回転)との間の機能的関係を確立することによって行われる。
【0104】
本明細書で使用される「約」という用語は±10%を意味する。
【0105】
本発明のさらなる目的、利点、および新規な特徴は限定することを意図しない以下の実施例を検討することにより、当業者に明らかになるのであろう。
【0106】
例
ここで、以下の実施例を参照するが、これは上記の説明と共に、本発明を非限定的な様式で例示する。
【0107】
本発明の教示に従って構成されたプロトタイプ制御ユニットは、
図12に示されている。プロトタイプは、モータパックと、駆動ユニットにしっかりと取り付けられた制御ユニットと、腹腔鏡器具とを含む。モータパックは、4つの小型モータと、シャフトの遠位端における関節および端部エフェクタを作動させるための関連するトランスミッションとを含む。モータパックの大きさおよび重量は、外科医が持ち運ぶのに十分に小さい。インタフェースは、シャフト軸の同じ方向でモータパックの上側に固定される。モータパックには、インストール制御ソフトウェアを許可するプログラマブル制御回路が含まれる。
【0108】
明確にするために、別の実施形態の文脈で説明される本発明の特別な特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよいことが理解される。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈で説明されている本発明の様々な特徴は、別々に、または任意の適切なサブコンビネーションで、または本発明の任意の他の説明された実施形態で適切なものとして提供されてもよい。様々な実施形態の文脈で説明される特別な特徴は、実施形態がそれらの要素なしで動作不能でない限り、それらの実施形態の本質的な特徴と見なされるべきではない。
【0109】
本発明をその特定の実施形態に関連して説明してきたが、多くの代替、修正、および変形が当業者には明らかであろうことは明白である。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲の精神および広い範囲内にある、そのような代替、修正、および変形のすべてを包含することが意図される。本明細書において言及されるすべての刊行物、特許および特許出願は、各個々の刊行物、特許または特許出願が参照により本明細書に組み込まれるように具体的および個別に示されたのと同範囲で、参照により本明細書に組み込まれる。さらに、本出願における任意の参考文献の引用または同定は、そのような参考文献が本発明の先行技術として利用可能であることを自認するものとして解釈されるべきではない。節の見出しが使用される範囲において、それらは必ずしも限定するものと解釈されるべきではない。
【0110】
さらに、本出願の任意の優先権書類は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。