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特許7372939ナノファイバーシートアセンブリ及びナノファイバーシートアセンブリの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】ナノファイバーシートアセンブリ及びナノファイバーシートアセンブリの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/04 20060101AFI20231025BHJP
   D04H 1/4382 20120101ALI20231025BHJP
【FI】
C08J5/04
D04H1/4382
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2020564618
(86)(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-13
(86)【国際出願番号】 US2019024040
(87)【国際公開番号】W WO2019221823
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】62/672,820
(32)【優先日】2018-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516124627
【氏名又は名称】リンテック オブ アメリカ インク
【氏名又は名称原語表記】LINTEC OF AMERICA, INC.
【住所又は居所原語表記】15930 S. 48th Street, Suite 110, Phoenix, Arizona 85048, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】リマ マルシオ ディー
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-167092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/04
D04H 1/4382
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノファイバーシートアセンブリであって、前記ナノファイバーシートアセンブリが、
円周及び長さを有するように撚られたナノファイバー糸と、
前記ナノファイバー糸と直接接触しているナノファイバーシートと、
前記ナノファイバー糸と前記ナノファイバーシートの中に配置された浸透材料とを含み、
前記ナノファイバー糸は、前記ナノファイバー糸内の撚られた繊維に対応する表面トポグラフィーを有し、前記ナノファイバーシートの少なくとも一部が、前記ナノファイバー糸の表面トポグラフィーに合致しており、前記ナノファイバーシートの内面及び外面の少なくとも1つにへこみがあり、
前記ナノファイバーシートのナノファイバーは、前記ナノファイバーの長手方向軸に沿って相互に実質的に平行で、前記ナノファイバーシートの前記内面及び前記外面に平行な平面の端から端まで一直線である
前記ナノファイバーシートアセンブリ。
【請求項2】
前記ナノファイバーシートが、前記ナノファイバー糸の前記長さの少なくとも一部に沿って、前記ナノファイバー糸の前記円周の少なくとも半分と直接接触している、請求項1に記載のナノファイバーシートアセンブリ。
【請求項3】
前記ナノファイバーシートアセンブリは、折り畳み、しわ、及び裂けの1つ又は複数に耐性があるように構成されている、請求項1に記載のナノファイバーシートアセンブリ。
【請求項4】
前記ナノファイバーシートが、前記ナノファイバー糸の前記円周の少なくとも75%と直接接触している、請求項1に記載のナノファイバーシートアセンブリ。
【請求項5】
前記ナノファイバーシートが、前記ナノファイバー糸の前記円周の少なくとも90%と直接接触している、請求項1に記載のナノファイバーシートアセンブリ。
【請求項6】
前記ナノファイバー糸が、複数の単プライナノファイバー糸、マルチプライナノファイバー糸、またはその両方を含む、請求項1に記載のナノファイバーシートアセンブリ。
【請求項7】
ナノファイバーシートアセンブリであって、前記ナノファイバーシートアセンブリが、
円周及び長さを有するように撚られたナノファイバー糸と、
前記ナノファイバー糸と直接接触しているナノファイバーシートと、
前記ナノファイバー糸と前記ナノファイバーシートの中に配置された浸透材料とを含み、
前記ナノファイバー糸は、間隔をおいた平行なアレイに構成されている複数のナノファイバー糸を含み、
前記ナノファイバーシートのナノファイバーは、前記ナノファイバーの長手方向軸に沿って相互に実質的に平行で、前記ナノファイバーシートの内面及び外面に平行な平面の端から端まで一直線であり、
前記ナノファイバーシートが、前記ナノファイバー糸の前記長さの少なくとも一部に沿って、前記ナノファイバー糸の前記円周の少なくとも半分と直接接触している、
前記ナノファイバーシートアセンブリ。
【請求項8】
ナノファイバーシートアセンブリであって、前記ナノファイバーシートアセンブリが、
円周及び長さを有するように撚られたナノファイバー糸と、
前記ナノファイバー糸と直接接触しているナノファイバーシートと、
前記ナノファイバー糸と前記ナノファイバーシートの中に配置された浸透材料とを含み、
前記ナノファイバー糸は、直交するアレイに編まれている複数のナノファイバー糸を含み、
前記ナノファイバーシートのナノファイバーは、前記ナノファイバーの長手方向軸に沿って相互に実質的に平行で、前記ナノファイバーシートの内面及び外面に平行な平面の端から端まで一直線である、
前記ナノファイバーシートアセンブリ。
【請求項9】
前記浸透材料が、前記ナノファイバー糸内のナノファイバーによって画定される第1の複数の隙間空間の中に、及び前記ナノファイバーシート内のナノファイバーによって画定される第2の複数の隙間空間の中に配置される、請求項1に記載のナノファイバーシートアセンブリ。
【請求項10】
前記浸透材料が、前記ナノファイバー糸と前記ナノファイバーシートを接続する連続的なネットワークを形成する、請求項9に記載のナノファイバーシートアセンブリ。
【請求項11】
前記浸透材料がポリマーである、請求項1に記載のナノファイバーシートアセンブリ。
【請求項12】
前記ポリマーが熱可塑性ポリマーである、請求項11に記載のナノファイバーシートアセンブリ。
【請求項13】
前記ポリマーがネットワークポリマーである、請求項11に記載のナノファイバーシートアセンブリ。
【請求項14】
前記ポリマーがエラストマーネットワークポリマーである、請求項11に記載のナノファイバーシートアセンブリ。
【請求項15】
前記ナノファイバーシートが、前記ナノファイバー糸の前記長さの前記円周の第1部分と接触する第1のナノファイバーシートであり、前記ナノファイバー糸の前記長さの前記円周の第2部分と接触する第2のナノファイバーシートであり、前記第1部分及び前記第2部分が前記円周の95%超を含む、請求項1に記載のナノファイバーシートアセンブリ。
【請求項16】
前記ナノファイバー糸、前記ナノファイバーシート及び前記浸透材料のアセンブリに接続されたポリマーシートを更に含む、請求項1に記載のナノファイバーシートアセンブリ。
【請求項17】
前記ナノファイバーシートの厚さが0.1μm未満である、請求項1に記載のナノファイバーシートアセンブリ。
【請求項18】
前記ナノファイバー糸の直径が5μm未満である、請求項1に記載のナノファイバーシートアセンブリ。
【請求項19】
前記ナノファイバー糸及び前記ナノファイバーシートの両方が、カーボンナノファイバーを含む、請求項1に記載のナノファイバーシートアセンブリ。
【請求項20】
ナノファイバーシートアセンブリを製造するための方法であって、前記方法が、
円周及び長さを有するように撚られたナノファイバー糸を提供することと、
ナノファイバーシートと前記ナノファイバー糸を互いに接触させて配置することと、
前記ナノファイバー糸は、前記ナノファイバー糸内の撚られた繊維に対応する表面トポグラフィーを有し、前記ナノファイバーシートの少なくとも一部が、前記ナノファイバー糸の表面トポグラフィーに合致しており、前記ナノファイバーシートの内面及び外面の少なくとも1つに凹凸があり、
前記ナノファイバーシートのナノファイバーを、前記ナノファイバーの長手方向軸に沿って相互に実質的に平行に、前記ナノファイバーシートの前記内面及び前記外面に平行な平面の端から端まで一直線にすることと、
前記ナノファイバー糸と前記ナノファイバーシートの両方に浸透材料を浸透させて、前記ナノファイバー糸と前記ナノファイバーシートの両方全体に前記浸透材料の連続的なネットワークを形成することと、を含む、前記方法。
【請求項21】
前記ナノファイバーシートを、前記ナノファイバー糸の前記長さの少なくとも一部に沿って前記ナノファイバー糸の前記円周の少なくとも半分に合致させることを更に含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ナノファイバーシートを合致させることが、前記ナノファイバーシートを前記ナノファイバー糸の表面トポグラフィーに合致させることを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ナノファイバーシート、前記ナノファイバー糸及び前記浸透材料の前記連続的なネットワークのアセンブリに、ポリマーシートを付着させることを更に含む、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記ナノファイバーシートが、前記ナノファイバー糸の前記円周の少なくとも75%と直接接触している、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記ナノファイバーシートが、前記ナノファイバー糸の前記円周の少なくとも90%と直接接触している、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記浸透させることが、前記ナノファイバー糸内のナノファイバーによって画定される第1の複数の隙間空間の中の、及び前記ナノファイバーシート内のナノファイバーによって画定される第2の複数の隙間空間の中の前記浸透材料を浸透させることを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
前記浸透材料は、浸透処理によって前記ナノファイバー糸及び前記ナノファイバーシートの中に配置され、
前記浸透処理は、ポリマー、溶媒に溶媒和されたポリマー、及びナノ粒子がその中に懸濁された溶媒に溶媒和されたポリマーのうちの少なくとも1つから選択される流体を提供することを含む、
請求項1に記載のナノファイバーシートアセンブリ。
【請求項28】
さらに、前記ナノファイバー糸により、対応する細長凹部が前記ナノファイバーシートの前記内面に形成され、対応する細長凸部が前記ナノファイバーシートの前記外面に形成されている、請求項1に記載のナノファイバーシートアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概ねナノファイバーに関する。具体的には、本開示は、耐引裂性ナノファイバーシートに関する。
【背景技術】
【0002】
単層ナノチューブ及び多層ナノチューブの両方からなる、ナノファイバーフォレストは、ナノファイバーのリボンまたはシートに引き出されることができる。事前に引き出された状態で、ナノファイバーフォレストは、互いに平行で、成長基材の表面に垂直なナノファイバーの層(または、いくつかの積み重ねられた層)を含む。ナノファイバーシートに引き出されると、ナノファイバーの配向は、成長基材の表面に対して垂直から平行に変化する。引き出されたナノファイバーシートのナノチューブは、端と端を重ねる構成で互いに接続して、ナノファイバーの長手方向軸がシートの平面に平行である(すなわち、ナノファイバーシートの第1及び第2の主表面の両方に平行である)連続シートを形成する。ナノファイバーシートは、ナノファイバーシートを紡糸してナノファイバー糸にすることを含む、様々な方法のいずれかで処理できる。
【発明の概要】
【0003】
実施例1は、円周及び長さを有するナノファイバー糸、ナノファイバー糸と直接接触しているナノファイバーシート、ナノファイバー糸及びナノファイバーシート内に配置された浸透材料を含む、ナノファイバーシートアセンブリである。
【0004】
実施例2は、ナノファイバーシートが、ナノファイバー糸の長さの少なくとも一部に沿って、ナノファイバー糸の円周の少なくとも半分と直接接触している、実施例1の主題を含む。
【0005】
実施例3は、ナノファイバーシートの一部が、ナノファイバー糸の表面トポグラフィーに合致する、実施例1または実施例2のいずれかの主題を含む。
【0006】
実施例4は、ナノファイバーシートが、ナノファイバー糸の円周の少なくとも75%と直接接触している、実施例3の主題を含む。
【0007】
実施例5は、ナノファイバーシートが、ナノファイバー糸の円周の少なくとも90%と直接接触している、実施例3の主題を含む。
【0008】
実施例6は、ナノファイバー糸が、複数のナノファイバー糸を含む、先行する実施例のいずれかの主題を含む。
【0009】
実施例7は、複数のナノファイバー糸が、平行なアレイに構成されている、実施例6の主題を含む。
【0010】
実施例8は、複数のナノファイバー糸が、直交するアレイに編まれている、実施例6の主題を含む。
【0011】
実施例9は、浸透材料が、ナノファイバー糸内のナノファイバーによって画定される第1の複数の隙間空間の中に、及びナノファイバーシート内のナノファイバーによって画定される第2の複数の隙間空間の中に配置される、先行する実施例のいずれかの主題を含む。
【0012】
実施例10は、浸透材料が、ナノファイバー糸とナノファイバーシートを接続する連続的なネットワークを形成する、実施例9の主題を含む。
【0013】
実施例11は、浸透材料がポリマーである、先行する実施例のいずれかの主題を含む。
【0014】
実施例12は、ポリマーが熱可塑性ポリマーである、実施例11の主題を含む。
【0015】
実施例13は、ポリマーがネットワークポリマーである、実施例11の主題を含む。
【0016】
実施例14は、ポリマーがエラストマーネットワークポリマーである、実施例13の主題を含む。
【0017】
実施例15は、ナノファイバーシートが、ナノファイバー糸の長さの円周の第1部分と接触する第1のナノファイバーシートであり、ナノファイバー糸の長さの円周の第2部分と接触する第2のナノファイバーシートであり、第1部分及び第2部分が円周の95%超を含む、先行する実施例のいずれかの主題を含む。
【0018】
実施例16は、ナノファイバー糸、ナノファイバーシート及び浸透材料のアセンブリに接続されたポリマーシートを更に含む、先行する実施例のいずれかの主題を含む。
【0019】
実施例17は、ナノファイバーシートの厚さが0.1μm未満である、先行する実施例のいずれかの主題を含む。
【0020】
実施例18は、ナノファイバー糸の直径が5μm未満である、先行する実施例のいずれかの主題を含む。
【0021】
実施例19は、ナノファイバー糸及びナノファイバーシートの両方がカーボンナノファイバーを含む、先行する実施例のいずれかの主題を含む。
【0022】
実施例20は、円周及び長さを有するナノファイバー糸を提供すること、ナノファイバーシートとナノファイバー糸を互いに接触させて配置すること、及び浸透材料をナノファイバー糸とナノファイバーシートの両方に浸透させて、ナノファイバー糸とナノファイバーシートの両方全体に浸透材料の連続的なネットワークを形成すること、を含む、ナノファイバーシートアセンブリを製造するための方法である。
【0023】
実施例21は、ナノファイバーシートを、ナノファイバー糸の長さの少なくとも一部に沿ってナノファイバー糸の円周の少なくとも半分に合致させることを更に含む、実施例20の主題を含む。
【0024】
実施例22は、ナノファイバーシートを合致させることが、ナノファイバーシートをナノファイバー糸の表面トポグラフィーに合致させることを含む、実施例21の主題を含む。
【0025】
実施例23は、ポリマーシートを、ナノファイバーシート、ナノファイバー糸及び浸透材料の連続ネットワークのアセンブリに付着させることを更に含む、実施例20または実施例21のいずれかの主題を含む。
【0026】
実施例24は、ナノファイバーシートがナノファイバー糸の円周の少なくとも75%と直接接触している、実施例20~23のいずれかの主題を含む。
【0027】
実施例25は、ナノファイバーシートが、ナノファイバー糸の円周の少なくとも90%と直接接触している、実施例20~24のいずれかの主題を含む。
【0028】
実施例26は、浸透させることが、ナノファイバー糸内のナノファイバーによって画定される第1の複数の隙間空間の中の、及びナノファイバーシート内のナノファイバーによって画定される第2の複数の隙間空間の中の浸透材料を浸透させることを含む、実施例20~25のいずれかの主題を含む。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】一実施形態の、基材上のナノファイバーの例示のフォレストの顕微鏡写真である。
図2】一実施形態の、ナノファイバーの成長のための例示の反応器の概略図である。
図3】一実施形態の、シートの相対寸法を確認するナノファイバーシートの図であり、シートの表面に平行な平面の端から端まで一直線になったシート内のナノファイバーを概略的に示す。
図4】ナノファイバーフォレストから横方向に引き出されたナノファイバーシートのSEM顕微鏡写真の画像であり、ナノファイバーは、概略的に示されるように端から端まで一直線になる。
図5A】一実施形態の、ナノファイバーシートが3本の下にあるナノファイバー糸と接触している、例示のナノファイバーアセンブリの平面図である。
図5B】一実施形態の、図5Aのナノファイバーアセンブリの断面図及び一部の拡大断面図を示す。
図5C】一実施形態の、ナノファイバー糸の円周を示す。
図5D】実施形態にて、ナノファイバーシートアセンブリ内のナノファイバー糸の様々な代替の構成の平面図を概略的に示す。
図5E】実施形態にて、ナノファイバーシートアセンブリ内のナノファイバー糸の様々な代替の構成の平面図を概略的に示す。
図5F】実施形態にて、ナノファイバーシートアセンブリ内のナノファイバー糸の様々な代替の構成の平面図を概略的に示す。
図5G】実施形態にて、ナノファイバーシートアセンブリ内のナノファイバー糸の様々な代替の構成の平面図を概略的に示す。
図6A】一実施形態の、ナノファイバーシート及びナノファイバー糸のアセンブリの断面図を示す。
図6B】一実施形態の、ナノファイバーシートの間のナノファイバー糸のアセンブリの断面図を示し、所望により、アセンブリはポリマーシート上に配置される。
図7】一実施形態の、ナノファイバーシートアセンブリを製造するための例示の方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図は、説明の目的だけに本開示の種々の実施形態を示す。多くの変形、構成及び他の実施形態は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0031】
概要
「フォレスト」構成の基材上で成長したナノファイバー、特にカーボンナノファイバーは、フォレストから直接ナノファイバーシートに便利に引き出すことができる。以下でより詳細に説明するこれらのナノファイバーシートは、様々な新規かつ予想外の電気的、光学的及び熱的特性を有する。しかし、フォレストから引き出したナノファイバーシートは薄いため(1μm、0.5μmまたは0.1μm未満の厚さの場合もある)、それは、多くの場合機械的に繊細であり、裂けたり、しわが寄ったり、不可逆的に折り畳まれたり、それ自体に付着したりする傾向がある。したがって、シートは、技術的に有用性が低下する、または少なくとも製造工程での統合がより困難になる。
【0032】
ポリマーマトリックス内にナノファイバーシートを組み込むと、ナノファイバーシートの機械的安定性をいくらか改善することができる。ナノファイバーシートが組み込まれる、または封入されているポリマー層の追加の厚さ及び剛性は、ナノファイバーシートがしわになったり、折り畳まれたり、またはわずかな揺れ(例えば、ドアの開放によって引き起こされる突風、または室内の圧力の変化)に反応してそれ自体に接触するのを防ぐ。しかし、ポリマーマトリックスにナノファイバーシートを組み込むことは、ナノファイバーシートを通って伝播する裂け目を防ぐのに不十分な場合がある。これは、薄い複合材料を必要とする(例えば、薄い(例えば、5μm未満)のポリマーマトリックスを必要とする可能性がある)技術的用途で特に言えることである。この構成で、ポリマーマトリックスは、裂け、折り畳み、またはしわを防ぐには不十分であり得る。
【0033】
ナノファイバーシートを厚いポリマーシート内に封入して、厚い複合シートを形成することには、独自の課題がある。例えば、ポリマー分子は、封入されていないナノファイバーシート(「本来の」または「未処理の」ナノファイバーシートと呼ばれることもある)が示す、多くの有利な特性を損なう可能性がある。例えば、ナノファイバーシートが電気的かつ熱的に絶縁性のポリマー内でコーティングまたは封入されると、ナノファイバーシートの電気伝導率及び熱伝導率が低下する。別の実施例では、カーボンナノファイバーシートのいくつかの技術的用途は、広範囲の電磁放射線波長に対するカーボンナノファイバーシートの固有の透明性を利用している。これらの波長の多くは、ポリマーの存在によって吸収または遮断されるため、ナノファイバーシートからこの有利な特性が奪われる。
【0034】
したがって、本開示の実施形態によれば、1本または複数のナノファイバー糸を1つまたは複数のナノファイバーシートと統合するための技術が説明される。1本のナノファイバー糸(「シングルプライ糸」)または一緒に撚られた複数のナノファイバー糸(「マルチプライ糸」)を含むことができる、ナノファイバー糸は、ナノファイバーシートに追加の機械的安定性及び靭性を提供する。ナノファイバー糸とナノファイバーシートを統合することで、ナノファイバーシートが裂けたり、しわが寄ったり、折り畳まれたり、またはそれ自体にくっついたりする可能性が低下する。ナノファイバー糸とナノファイバーシートは同じ材料(例えば、カーボンナノチューブまたはカーボンナノファイバー)から製造されるため、予期しない及び/または有利な特性が維持される。代替の実施形態では、浸透材料は、ナノファイバー糸及びナノファイバーシート内のナノファイバーによって画定される、隙間空間の中に浸透することができる。次に、浸透材料は、ナノファイバー糸及びナノファイバーシート全体にわたって連続的なネットワークを形成することができる。組み合わされたナノファイバー糸とナノファイバーシートの中に材料を浸透させることで、予想外の特性の多くを維持しながら、組み立てられた糸及びシートの機械的耐久性を向上させることができる。
【0035】
本開示の実施形態を詳細に説明する前に、ナノファイバーフォレスト及びナノファイバーシートについて説明する。
【0036】
ナノファイバーフォレスト
本明細書で使用する場合「ナノファイバー」という用語は、1μm未満の直径を有する繊維を意味する。本明細書の実施形態が、カーボンナノチューブから製造されると主として記載される一方で、他の炭素同素体(グラフェン、ミクロンまたはナノ寸法のグラファイト繊維及び/またはプレートにかかわらず)ならびナノ寸法繊維の他の組成物(例えば、窒化ホウ素)は、後述する技術を使用して密度を高くしてもよい。本明細書で使用する場合「ナノファイバー」及び「カーボンナノチューブ」という用語は、炭素原子が円筒状構造を形成するために結合されている、単層カーボンナノチューブ及び/または多層カーボンナノチューブの両方を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で参照されるカーボンナノチューブは、4~10の壁を有する。本明細書で使用する場合「ナノファイバーシート」または単に「シート」は、引き出し工程(PCT公開第WO2007/015710号に記載のとおりであり、その全体が本明細書に参照により組み込まれる)を介して一直線に並べられる、ナノファイバーのシートを指し、それにより、シートのナノファイバーの長手方向軸は、シートの主表面(すなわち、しばしば「フォレスト」と呼ばれる、シートの成膜直後の状態)に垂直である代わりに、シートの主表面と平行である。これは、それぞれ図3及び図4に例示され、示される。
【0037】
カーボンナノチューブの寸法は、使用する製造方法に応じて、大きく異なり得る。例えば、カーボンナノチューブの直径は0.4nm~100nmであり得て、その長さは10μm~55.5cm超の範囲であり得る。カーボンナノチューブは、また、132,000,000:1と大体同じ高さを伴うまたはそれよりも高い非常に高いアスペクト比(長さと直径との比)を有することが可能である。様々な寸法の可能性を考慮して、カーボンナノチューブの特性は、高度に調節可能または「調整可能」である。カーボンナノチューブの多くの興味深い特性が確認されているが、実際の適用でカーボンナノチューブの特性を利用するには、カーボンナノチューブの特徴を維持またはそれを強化するのを可能にする、スケーラブルで制御可能な製造方法を必要とする。
【0038】
カーボンナノチューブはその独特の構造により、カーボンナノチューブを特定の用途に適合させる特定の機械的、電気的、化学的、熱的及び光学的特性を有する。特にカーボンナノチューブは、優れた導電性、高い機械的強度、良好な熱安定性を示し、疎水性でもある。これらの特性に加えて、カーボンナノチューブは、有用な光学的特性も示し得る。例えば、カーボンナノチューブは、狭く選択した波長で光を発する、または検出するために、発光ダイオード(LED)及び光検出器で使用され得る。カーボンナノチューブは、光子輸送及び/またはフォノン輸送でも有用であることを証明し得る。
【0039】
本主題の開示の様々な実施形態に従って、ナノファイバー(カーボンナノチューブを含むが、これに限定されない)は、本明細書で「フォレスト」と称される構成を含む、様々な構成で配置されることができる。本明細書で使用する場合、ナノファイバーまたはカーボンナノチューブの「フォレスト」とは、基材上で相互に実質的に平行に並べられたほぼ同等の寸法を有するナノファイバーの配列を指す。図1は、基材上のナノファイバーの例示のフォレストを示す。基材は任意の形状でもよいが、いくつかの実施形態では、基材はフォレストがアセンブルされる平面を有する。図1に示すように、フォレストのナノファイバーは、高さ及び/または直径がほぼ等しくてもよい。
【0040】
本明細書にて開示するナノファイバーフォレストは、比較的高密度であり得る。具体的には、開示するナノファイバーフォレストは、少なくとも10億ナノファイバー/cmの密度を有し得る。いくつかの特定の実施形態では、本明細書に記載されているナノファイバーフォレストは、100億ナノファイバー/cmと300億ナノファイバー/cmの間の密度をし得る。他の実施例では、本明細書に記載されているナノファイバーフォレストは、900億ナノファイバー/cmの範囲の密度を有し得る。フォレストは高密度または低密度の領域を含んでもよく、特定の領域はナノファイバーがなくてもよい。フォレスト内のナノファイバーは、繊維間結合性も示し得る。例えば、ナノファイバーフォレスト内の隣接するナノファイバーは、ファンデルワールス力によって互いに引きつけられ得る。いずれにせよ、フォレスト内のナノファイバーの密度は、本明細書に説明される技術を適用することによって増加することができる。
【0041】
ナノファイバーフォレストを製造する方法は、例えばPCT第WO2007/015710号に記載されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0042】
様々な方法は、ナノファイバー前駆体フォレストを製造するために使用できる。例えば、いくつかの実施形態では、ナノファイバーは、図2に概略的に示される、高温の炉で成長し得る。いくつかの実施形態では、触媒は、基材上に堆積され、反応器に載置され、次に反応器に供給される燃料化合物に曝露され得る。基材は、800℃またはさらに1000℃よりも大きい温度に耐えることができ、不活性物質であり得る。基材は、下にあるシリコン(Si)ウエハに配置されるステンレス鋼またはアルミニウムを含み得るが、他のセラミック基材(例えば、アルミナ、ジルコニア、SiO、ガラスセラミック)をSiウエハの代わりに使用し得る。前駆体フォレストのナノファイバーがカーボンナノチューブである実施例で、炭素系化合物(例えば、アセチレン)を燃料化合物として使用し得る。反応器に導入された後、燃料化合物(複数可)は、次に触媒上に蓄積し始め得、基材から上向きに成長することにより集合して、ナノファイバーのフォレストを形成し得る。反応器は、また、燃料化合物(複数可)及びキャリアガスが反応器に供給され得るガス注入口と、消費された燃料化合物及びキャリアガスが反応器から放出され得るガス放出口とを含み得る。キャリアガスの実施例は、水素、アルゴン及びヘリウムを含む。これらのガス、特に水素は、また、ナノファイバーフォレストの成長を促進するために反応器に導入され得る。そのうえ、ナノファイバーに混合されるドーパントがガス流に加えられ得る。
【0043】
多層ナノファイバーフォレストを作製するために使用される工程で、1つのナノファイバーフォレストは基材上に形成され、その後、第1のナノファイバーフォレストと接触する第2のナノファイバーフォレストが成長する。多層ナノファイバーフォレストは、第1のナノファイバーフォレストを基材上に形成し、触媒を第1のナノファイバーフォレスト上に堆積させ、次に追加の燃料化合物を反応器に導入して、第1のナノファイバーフォレスト上にある触媒から第2のナノファイバーフォレストの成長を促進することなどによる、多くの適切な方法によって形成されることができる。適用される成長方法、触媒の種類、及び触媒の場所に応じて、第2のナノファイバー層は、第1のナノファイバー層の上で成長し得る、または例えば水素ガスで触媒をリフレッシュした後、基材上で直接成長し得る、したがって第1のナノファイバー層の下で成長する。いずれにせよ、第2のナノファイバーフォレストは、第1のナノファイバーフォレストのナノファイバーとほぼ端から端まで一直線になることができるが、第1のフォレストと第2のフォレストとの間に容易に検出可能な界面がある。多層ナノファイバーフォレストは、任意の数のフォレストを含み得る。例えば、多層前駆体フォレストは、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれよりも多いフォレストを含み得る。
【0044】
ナノファイバーシート
フォレスト構成での配置に加えて、本出願のナノファイバーはシート構成で配置されてもよい。本明細書で使用する場合「ナノファイバーシート」、「ナノチューブシート」または単に「シート」という用語は、ナノファイバーが平面の端から端まで一直線になる、ナノファイバーの配列を指す。例示のナノファイバーシートの図は、寸法の表示と共に図3に示す。いくつかの実施形態では、シートは、シートの厚さより100倍超の長さ及び/または幅を有する。いくつかの実施形態では、長さ、幅または両方は、シートの平均厚さより10、10または10倍を超える。ナノファイバーシートは、例えば約5nmと30μmとの間の厚さ、ならびに目的の用途に適している任意の長さ及び幅を有することができる。いくつかの実施形態では、ナノファイバーシートは、1cmと10mの間の長さ及び1cmと1mの間の幅を有し得る。これらの長さは、単に例示として提供される。ナノファイバーシートの長さ及び幅は製造装置の構成によって拘束され、ナノチューブ、フォレストもしくはナノファイバーシートのいずれかの物理的または化学的性質によるものではない。例えば、連続工程は、任意の長さのシートを製造することができる。それらを製造する際、これらのシートはロール上に巻かれることができる。
【0045】
図3に示すように、ナノファイバーが端から端まで一直線になる軸は、ナノファイバー配列の方向と称される。いくつかの実施形態では、ナノファイバー配列の方向は、ナノファイバーシート全体にわたって連続的でもよい。ナノファイバーは必ずしも互いに完全に平行である必要はなく、ナノファイバーの配列の方向は、ナノファイバーの配列の方向の平均的または一般的な基準であると理解される。
【0046】
ナノファイバーシートは、シートを作製できる任意の種類の適切な方法を使用してアセンブルしてもよい。いくつかの例示の実施形態では、ナノファイバーシートは、ナノファイバーフォレストから引き出され得る。ナノファイバーフォレストから引き出されるナノファイバーシートの実施例を、図4に示す。
【0047】
図4に示すように、ナノファイバーは、フォレストから横方向に引き出されて、ナノファイバーシートを形成するために、端から端まで一直線になり得る。ナノファイバーシートがナノファイバーフォレストから引き出される実施形態で、フォレストの寸法は、特定の寸法を有するナノファイバーシートを形成するために制御され得る。例えば、ナノファイバーシートの幅は、シートが引き出されたナノファイバーフォレストの幅にほぼ等しくてもよい。そのうえ、シートの長さは、所望のシート長さが得られたとき、例えば引き出し工程を終えることにより制御されることができる。
【0048】
ナノファイバーシートは、種々の用途のために利用できる、多くの特性を有する。例えば、ナノファイバーシートは、調整可能な不透明度、高い機械的強度及び可撓性、熱的及び電気伝導度を有し得、疎水性も示し得る。シート内のナノファイバーの高度の配列を考慮すると、ナノファイバーシートは極めて薄くてもよい。いくつかの実施例では、ナノファイバーシートは、それをほとんど2次元にする、厚さ約10nm程度(通常の測定公差内で測定)である。他の実施例では、ナノファイバーシートの厚さは、200nmまたは300nmと同じ程度であり得る。したがってナノファイバーシートは、軽微な追加の厚さを構成要素に加えてもよい。
【0049】
ナノファイバーフォレストと同様に、ナノファイバーシートのナノファイバーは、シートのナノファイバーの表面に化学基または元素を添加することにより、処理剤によって官能基化され得、それはナノファイバー単独とは異なる化学活性を提供する。ナノファイバーシートの官能基化は、以前に官能基化されたナノファイバーに実施することができる、または以前に非官能基化されたナノファイバーに実施することができる。官能基化は、これらに限定されないがCVD及び種々のドーピング技術を含む、本明細書に記載の技術のいずれかを使用して実施することができる。
【0050】
ナノファイバーから引き出される際、ナノファイバーシートは、高純度を有し得、いくつかの例では、ナノファイバーシートの重量パーセントの90%超、95%超または99%超は、ナノファイバーに起因している。同様に、ナノファイバーシートは、90重量%超、95重量%超、99重量%超または99.9重量%超の炭素を含んでもよい。
【0051】
耐引裂性ナノファイバーシート
上述のように、本開示のいくつかの実施形態は、1つまたは複数のナノファイバー糸によって強化されたナノファイバーシートを含む。更に上述したように、ナノファイバー糸は、シングルプライ(例えば、撚られたナノファイバーの一本鎖)またはマルチプライ(例えば、すべてが一緒に撚られた複数のシングルプライ糸)であり得る。
【0052】
本開示の実施形態の1つの平面図を、図5Aに概略的に示す。図5Aの平面図は、ナノファイバーシート504、ならびに複数のナノファイバー糸508A、508B及び508C(集合的かつ総称的に「508」)のアセンブリ500を含む。
【0053】
ナノファイバーシート504は、図1図4に関連して上述の方法に従って作製することができる。すなわち、ナノファイバーシート504は、ナノファイバーフォレストから引き出され、それにより、フォレストのナノファイバー(最初は、成長基材に垂直な長手方向軸を有するように配向される)がシート内に再配置され、それにより、ナノファイバーの長手方向軸は、互いに平行であり、ナノファイバーシートの主表面に平行である。この配向を、図3及び図4に示す。いくつかの実施例では、シートの厚さ(図5Bで「T」と示す)は、1μm未満、0.5μm未満または0.1μm未満であり得る。
【0054】
ナノファイバー糸508は、上述のように、ナノファイバーフォレストから最初のナノファイバーを引き出すことにより製造されて、ナノファイバーシートまたはナノファイバーリボンを形成することができる。次に、撚り力をナノファイバーシート内のナノファイバーに加えて、ナノファイバー糸を形成することができる。撚り力により、ナノファイバーは互いに近づき、ナノファイバーの長さに応じて、長手方向軸の周囲で撚られる。いくつかの実施例では、撚りは、シートの一端を固定し、反対側の端を一方向に繰り返し回転させて、糸にらせん回転を与える「正の撚り」技術を使用して適用することができる。他の実施例では、撚りは、シート/糸の2つの対向する端の間に撚り力が加える「負の撚り」技術を使用して、適用することができる。ナノファイバー糸は、PCT公開第WO2007/015710号に更に詳細に記載されており、負の撚り技術は、米国特許出願第15/844,756号に更に詳細に記載されており、これらは両方とも参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0055】
ナノファイバー糸508を製造するために使用される技術にかかわらず、ナノファイバー糸508は、ナノファイバーシート504と(直接または間接的に)接触して配置される。接触は、ナノファイバーシート504が、ナノファイバー糸508の長さLの少なくとも一部に沿って、少なくとも1本のナノファイバー糸508の円周の少なくとも半分に合致するようにする。この配置は、図5Bの断面図で示され、図5Aに示す位置で取られている。図5A及び図5Bに示すナノファイバー糸の幅(または、同様に直径)が、一定の縮尺で描かれておらず、描写を明確にするために強調されていることは理解されるであろう。
【0056】
図5Bに示されるように、ナノファイバー糸508A、508B、508Cは、基材512(例示の便宜のために含まれる)上に配置される。この実施例では、厚さTを有するナノファイバーシート504は、ナノファイバー糸508の円周の少なくとも50%と直接接触して配置されている。他の実施形態では、ナノファイバーシート504と1本または複数のナノファイバー糸508の円周との間の直接接触は、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%または90%超であり、糸508の長さLの少なくとも一部に沿って存在することは理解されるであろう。明確にするために、一般的なナノファイバー糸508に対応する円周寸法C(その慣習的な意味に従って使用される)が図5Cに示されている。描写を明確にするために、円周Cを示す破線は、糸自体の円周からずれていることが理解されよう。接触量は、シートの断面のSEMを調べることで決定できる。ナノファイバー糸508の例示の直径は、30μm未満、10μm未満、5μm未満、または1μm未満であり得る。
【0057】
図5Bのナノファイバー糸508は、均一な円形断面を有するものとして示されているが、これは単に例示の便宜のためである。ナノファイバー糸508は、シングルプライ糸であろうとマルチプライ糸であろうと、糸内の撚られた繊維に対応する表面トポグラフィーを有し、ならびにシングルプライ糸を一緒にマルチプライ糸に撚り合わせるために使用する撚りを有する。糸の表面トポグラフィー(0.01μm~0.5μmのスケールであり得る)にかかわらず、ナノファイバーシート504は表面トポグラフィーに合致する。これの概略図は、挿入される拡大図に表示される。
【0058】
アセンブリ500は、3本のナノファイバー糸508A、508B、508Cのみを含むことが示されているが、アセンブリは、任意の数のナノファイバー糸508を含み得ることは理解されよう。更に、図5Aに示す実施例では、糸508は平行構成で示されている。糸508の他の構成は、図5D図5Gに示されている。これらの代替の構成には、特に長方形グリッド516(図5D)、正方形グリッド520(図5E)、スパイラルグリッド524(図5F)、及び不規則なポリゴングリッド528(図5D)が含まれるが、これらに限定されない。
【0059】
浸透材料の連続ネットワーク
代替の実施形態では、図6Aは、アセンブリ600の断面図を示す。アセンブリ600は、ナノファイバーシート604、複数のナノファイバー糸608A、608B及び608C(集合的かつ総称的に「608」)、ならびに浸透材料620を含む。
【0060】
ナノファイバーシート604及びナノファイバー糸608は、上述のものと類似しており、更に説明する必要はない。同様に、ナノファイバーシート604とナノファイバー糸608との間の直接接触、及びナノファイバー糸608を配置することができるパターンは、上述されており、図6Aに示される実施形態に適用可能である。
【0061】
アセンブリ600にて、浸透材料620は、少なくとも、ナノファイバーシート604のナノファイバーによって画定され、ナノファイバー糸608によっても画定される、隙間空間内に配置される。いくつかの実施例では、浸透材料620は、ナノファイバーシート604及びナノファイバー糸608の両方全体にわたって連続ネットワークを形成するようにこれらの隙間空間内に配置され、そうしてナノファイバーシート604及びナノファイバー糸608を一緒に接続する。したがって、浸透材料620の存在は、糸608と適合するナノファイバーシート604の組み合わせによって提供される利点に加えて、ナノファイバーシート604の折り畳み、しわ、または裂けの可能性を低減することができる、アセンブリ600の追加の構造を形成することができる。
【0062】
浸透材料620の実施例には、ポリマー、溶媒、接着剤、ナノ粒子、及びそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。浸透材料620として使用することができるポリマーの実施例には、熱可塑性ポリマー、エポキシドを含むネットワークポリマー、及びエラストマーネットワークポリマーが含まれる。エラストマーネットワークポリマーの場合、エラストマーの弱い架橋及びエラストマーの固有の弾性、及びナノファイバー糸608とナノファイバーシート604の両方の間のエラストマーネットワークの連続性は、この場合の浸透材料620が、アセンブリ600に弾性を提供するだけでなく、アセンブリ600が引き伸ばされたときにナノファイバー糸608とナノファイバーシート604との間の切断に抵抗する、アセンブリ600への物理的一体性を提供することもできることを意味する。
【0063】
図6Bに示すように、いくつかの実施形態は、その追加がアセンブリ602を形成する、第2のナノファイバーシート606を含む。第2のナノファイバーシート606は、シート604、606がナノファイバー糸の円周の少なくとも75%または少なくとも90%と直接接触するように、ナノファイバーシート604及びナノファイバー糸608に付着させることができる。第2のナノファイバーシート606は(示されるように)浸透材料620も含むことができるが、この必要性はこの限りではない。アセンブリ602はまた、所望のポリマーシート622に取り付けられて示されている
【0064】
方法
図7は、上述のように、ナノファイバー糸及びナノファイバーシートを含む、ナノファイバーシート複合材料を製造するための方法700を示している。ナノファイバー糸が704で提供される。上に示したように、ナノファイバー糸は、糸の円周及び糸の長さに比例する横方向の表面積を有する。ナノファイバーシートは、ナノファイバー糸と接触(直接または間接接触)して配置される。次にナノファイバーシートは、712で、ナノファイバー糸の円周の少なくとも半分に対応し、ナノファイバー糸の長さの少なくとも一部に沿って、糸の外面に合致させる。ナノファイバーシートを糸の外面に合致させることは、例えば、1つまたは複数のナノファイバーシート及び/またはナノファイバー糸に圧力を加えることによって、712で引き起こされ得る。これには、ナノファイバーシートをナノファイバー糸に向かって引き寄せるために、ナノファイバーシートの片側に正圧(例えば、低表面エネルギー表面を使用する圧縮)を加えること、または負圧(例えば、真空)を加えることが含まれ得る。ナノファイバーシートをナノファイバー糸の表面に合致させる712の他の技術は、本開示に照らして理解されるであろう。
【0065】
次に716で、浸透材料は、ナノファイバー糸及びナノファイバーシートの一方または両方の中に浸透される。この浸透により、浸透材料の連続的なネットワークがナノファイバー糸とナノファイバーシートの両方全体にわたって形成される。浸透材料の連続的なネットワークは、ナノファイバー糸内のナノファイバーによって画定される第1の複数の隙間空間内に配置され、更にナノファイバーシート内のナノファイバーによって画定される第2の複数の隙間空間内に配置される。これは図6に概略的に示される。
【0066】
浸透材料の浸透716は、ナノファイバーシートに流体を提供することによって達成することができる。流体の実施例には、特に、ポリマー、溶媒に溶媒和されたポリマー、ナノ粒子がその中に懸濁された溶媒に溶媒和されたポリマーが含まれる。
【0067】
所望により、方法700は、図6Bに示されるように、ポリマーシートをナノファイバーシート、ナノファイバー糸及び浸透材料に付着させること、720が続くことができる。ポリマーシートは、例えば、温度をポリマーのガラス転移点より上げる、またはポリマーを軟化させることができる溶媒を加えることによって、ナノファイバーシート内に組み込むことができる。
【0068】
更なる考察
本開示の実施形態の上述の説明は、例示の目的のために提示されており、包括的であること、または開示した明確な形態に特許請求の範囲を制限することを意図していない。関連技術分野の当業者は、多くの修正及び変更が、上述の開示を考慮して可能であることを理解することができる。
【0069】
本明細書で使用する文言は、主に読みやすさ及び説明目的のために選択されており、それは、本発明の主題を詳細に描写する、または制限するために選択されていない場合がある。本開示の範囲は、この詳細な説明によってではなく、むしろこれに基づく出願において生じる、任意の請求項によって制限されることが意図される。したがって、本実施形態の開示は、限定ではないが、以下の特許請求の範囲に記載されている本発明の範囲を例示することを意図している。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図6A
図6B
図7