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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】アミノピリミジンSSAO阻害剤
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/04 20060101AFI20231025BHJP
   C07D 403/04 20060101ALI20231025BHJP
   C07D 239/34 20060101ALI20231025BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
C07D401/04
C07D403/04
C07D239/34 CSP
A61K31/506
A61P1/16
A61P43/00 111
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021149451
(22)【出願日】2021-09-14
(62)【分割の表示】P 2019507302の分割
【原出願日】2017-08-04
(65)【公開番号】P2022003049
(43)【公開日】2022-01-11
【審査請求日】2021-10-13
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2016/094833
(32)【優先日】2016-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド・アンドリュー・コーツ
(72)【発明者】
【氏名】チン・ルオ・ヘン
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ・イー
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ・ジンイェ
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-533658(JP,A)
【文献】国際公開第2012/124696(WO,A1)
【文献】特表2015-521167(JP,A)
【文献】国際公開第2007/120528(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
【化1】
からなる群から選択される化合物またはその薬学的に許容される塩を製造する方法であって、
工程a)
【化2】
と式
【化3】
〔式中、Bocはtert-ブトキシカルボニルである。〕
の化合物をN,N-ジイソプロピルエチルアミンおよび炭酸カリウムから選択される塩基の存在下で反応させて式
【化4】
〔式中、Bocはtert-ブトキシカルボニルである。〕
の化合物を製造する工程;および
工程b)式
【化5】
〔式中、Bocはtert-ブトキシカルボニルである。〕
の化合物と酸を反応させて
【化6】
からなる群から選択される化合物またはその薬学的に許容される塩を製造する工程
を含む方法。
【請求項2】
【化7】
からなる群から選択される化合物の薬学的に許容される塩と塩基を反応させて
【化8】
からなる群から選択される化合物を製造することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
【化9】
からなる群から選択される化合物と酸を反応させて
【化10】
からなる群から選択される化合物の別の薬学的に許容される塩を製造することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
塩基がN,N-ジイソプロピルエチルアミンまたは炭酸カリウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
工程a)が1,4-ジオキサンを溶媒として使用する、請求項1~4の何れかに記載の方法。
【請求項6】
工程b)で使用される酸が塩酸またはトリフルオロ酢酸である、請求項1~5の何れかに記載の方法。
【請求項7】
工程a)の式
【化11】
の化合物がtert-ブチルN-[(E)-2-(ブロモメチル)-3-フルオロ-アリル]カルバメートと2-クロロピリミジン-5-オールを反応させることによって製造される、請求項1~6の何れかに記載の方法。
【請求項8】
tert-ブチルN-[(E)-2-(ブロモメチル)-3-フルオロ-アリル]カルバメートと2-クロロピリミジン-5-オールの反応が炭酸カリウムの存在下で行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
tert-ブチルN-[(E)-2-(ブロモメチル)-3-フルオロ-アリル]カルバメートと2-クロロピリミジン-5-オールの反応がジメチルホルムアミドを溶媒として使用する、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
【化12】
からなる群から選択される化合物またはその薬学的に許容される塩が(E)-3-フルオロ-2-[[2-(4-メトキシ-1-ピペリジル)ピリミジン-5-イル]オキシメチル]プロプ-2-エン-1-アミン、二塩酸塩である、請求項1~3の何れかに記載の方法。
【請求項11】
【化13】
からなる群から選択される化合物またはその薬学的に許容される塩が(2E)-3-フルオロ-2-({[2-(4-メトキシピペリジン-1-イル)ピリミジン-5-イル]オキシ}メチル)プロプ-2-エン-1-アミン4-メチルベンゼンスルホン酸塩である、請求項1~3の何れかに記載の方法。
【請求項12】

【化14】
の化合物。
【請求項13】
tert-ブチルN-[(E)-2-(ブロモメチル)-3-フルオロ-アリル]カルバメートと2-クロロピリミジン-5-オールを塩基の存在下で反応させることを含む、請求項12の化合物を製造する方法。
【請求項14】
反応が炭酸カリウムの存在下で行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
反応がジメチルホルムアミドを溶媒として使用する、請求項13または14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアミノピリミジン化合物、該化合物の薬学的に許容される塩ならびに該化合物および塩の治療用途に関する。
【背景技術】
【0002】
セミカルバジド感受性アミノオキシダーゼ/血管接着タンパク質-1(SSAO)/VAP-1)は、セミカルバジド感受性アミノオキシダーゼファミリーのメンバーである。SSAO/VAP-1はVAP-1またはSSAOとも称されている。SSAO/VAP-1は、膜結合および可溶性両方のアイソフォームとして存在する酵素であり、内皮細胞表面、血管平滑筋および脂肪細胞から主に発現される。SSAO/VAP-1は、グルコース動態、炎症応答および白血球動員を含む多くの細胞プロセスに関与する。この酵素の高い活性レベルは、数ある障害の中で、糖尿病、アテローム性動脈硬化症、卒中、慢性腎疾患およびアルツハイマー病と関係する。最近SSAO/VAP-1は、脂肪性肝疾患などの肝疾患の病因と関連付けられている。Weston, C.J. et al., J Neural. Transm. 2011, 118, 1055-1064。脂肪性肝疾患(FLD)は、肝臓における脂肪蓄積が過剰量であり、炎症を伴う一連の疾患状態を包含する。FLDは、インスリン抵抗性により特徴付けられる非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)に至り得る。野放しのNAFLDは持続性炎症性応答または非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、進行性肝線維症、そして最終的に硬変に進行する。現在、NAFLDおよび/またはNASHなどの肝疾患のための新たな処置治療剤を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0003】
SSAO/VAP-1阻害剤は、肝臓の炎症および線維症を減少させ、それにより肝疾患の処置、特に、NAFLDおよび/またはNASHの処置を提供すると考えられる。本発明は、SSAO/VAP-1酵素を阻害し、このニーズの1以上に対処する、化合物を提供する。
【0004】
本発明は、式1
【化1】
〔式中、nは1または2であり;そしてR1はHまたは-CHである。〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【化2】
として示すフッ素への結合は、フッ素原子とメトキシピリミジン基が互いにZ(zusammen、同方向)またはE(entgegen、逆方向)であることを示す(Brecher, J., et al., “Graphical Representation of Stereochemical Configuration”, Pure and Appl. Chem, 2006, 78(10) 1897, at 1959)。式1により示される構造は、Z立体化学配置、E立体化学配置の化合物またはZもしくはE立体化学配置の化合物の混合物を含む。好ましい本発明の化合物はE立体化学配置を有する。
【0005】
ある形態において、本発明は、遊離塩基としての式1の化合物を提供する。他の形態において、本発明は、一または二HCl付加塩またはスルホン酸塩、好ましい4-メチルベンゼンスルホン酸塩(トシル酸塩)などの酸付加塩としての式1の化合物を提供する。
【0006】
ある形態において、本発明は、式2
【化3】
〔式中、nは1または2であり;そしてR1はHまたは-CHである。〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0007】
他の形態において、本発明は、式3
【化4】
〔式中、nは1または2であり;そしてR1はHまたは-CHである。〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0008】
ある実施態様において、本発明は、nが1である式1、2および3の化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。他の実施態様において、本発明は、nが2である式1、2および3の化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0009】
他の実施態様において、本発明は、R1がHである式1、2および3の化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。さらに他の実施態様において、本発明はR1が-CHである式1、2および3の化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0010】
他の形態において、本発明は式4
【化5】
〔式中、R1はHまたは-CHである。〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0011】
他の形態において、本発明は、式5
【化6】
の化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。ある実施態様において、式5の化合物は酸付加塩として提供される。好ましくは、酸付加塩は一または二HCl付加塩またはスルホン酸塩、例えばメチルスルホン酸または4-メチルベンゼンスルホン酸付加塩であり、メシル酸塩または4-メチルベンゼンスルホン酸(トシル酸)塩を提供する。
【0012】
他の形態において、本発明は、式1~5の何れかの化合物またはその薬学的に許容される塩および薬学的に許容される担体、希釈剤または添加物を含む、医薬組成物を提供する。ある実施態様において、医薬組成物は式5の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む。好ましくは、塩の薬学的に許容されるアニオンは、一または二塩化物、メシル酸または4-メチルベンゼンスルホン酸(トシル酸)である。
【0013】
他の形態において、本発明は、肝障害の処置を必要とする患者を処置する方法を提供する。本方法は、患者に有効量の式1~5の何れかの化合物またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を投与することを含む。
【0014】
他の形態において、本発明は、肝障害の処置を必要とする患者を処置する方法を提供する。本方法は、患者に有効量の式1~5の何れかの化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む。肝障害の例は、肝炎症、線維症および脂肪性肝炎を含む。ある実施態様において、肝障害が肝線維症、アルコール誘発線維症、アルコール性脂肪肝、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)および非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)からなる群から選択される、肝障害の処置を必要とする患者を処置する方法を提供する。特に好ましい実施態様において、方法は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の処置を必要とする患者の処置を含む。
【0015】
他の形態において、本発明は、(2E)-3-フルオロ-2-({[2-(4-メトキシピペリジン-1-イル)ピリミジン-5-イル]オキシ}メチル)プロプ-2-エン-1-アミン4-メチルベンゼンスルホン酸(1:1)塩である、式6の化合物を提供する。
【化7】
【0016】
ある実施態様において、(2E)-3-フルオロ-2-({[2-(4-メトキシピペリジン-1-イル)ピリミジン-5-イル]オキシ}メチル)プロプ-2-エン-1-アミン4-メチルベンゼンスルホン酸(1:1)塩は、CuKα源(λ=1.54056Å)から得た、a)2シータで18.6、19.1、21.0、21.9および22.4±0.2°またはb)2シータで17.6、11.0、16.8、18.6、19.1、21.0、21.9、22.4および26.1±0.2°にピークを含むX線粉末回折パターンにより特徴付けられる結晶形態で提供される。
【0017】
他の形態において、本発明は、治療に使用するための式1~6の何れかの化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。好ましい実施態様において、治療は肝障害に対してである。好ましくは、治療は、肝線維症、アルコール誘発線維症、アルコール性脂肪肝、非アルコール性脂肪性肝疾患および非アルコール性脂肪性肝炎から選択される肝障害に対してである。ある実施態様において、治療は肝線維症の処置のためである。他の実施態様において、治療は、非アルコール性脂肪性肝疾患に対してである。なおさらに別の実施態様において、治療は非アルコール性脂肪性肝炎に対してである。
【0018】
他の形態において、本発明は、肝障害の処置に使用するための、式1~6の何れかの化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。ある実施態様において、肝障害は、肝線維症、アルコール誘発線維症、アルコール性脂肪肝、非アルコール性脂肪性肝疾患および非アルコール性脂肪性肝炎から選択される。他の実施態様において、肝障害は非アルコール性脂肪性肝疾患または非アルコール性脂肪性肝炎である。特に好ましい実施態様において、肝障害は非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である。
【0019】
さらに他の実施態様において、本発明は、肝障害の処置のための医薬の製造における、式1~6の何れかの化合物の使用を提供する。好ましい実施態様において、肝障害は、肝線維症、アルコール誘発線維症、アルコール性脂肪肝、非アルコール性脂肪性肝疾患および非アルコール性脂肪性肝炎から選択される。
【0020】
ここで使用する用語“薬学的に許容される塩”は、臨床的および/または獣医学的使用に許容されると考えられる、本発明の化合物の塩をいう。薬学的に許容される塩の例およびそれを製造する一般的方法は、“Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection and Use” P. Stahl, et al., 2nd Revised Edition, Wiley-VCH, 2011 and S.M. Berge, et al., "Pharmaceutical Salts", Journal of Pharmaceutical Sciences, 1977, 66(1), 1-19に見られる。
【0021】
本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される添加物を使用して、製造され得る。医薬組成物についてここで使用する用語“薬学的に許容される添加物”は、組成物または製剤の他の添加物と適合性であり、かつ患者に有害ではない1以上の担体、希釈剤および添加物をいう。医薬組成物およびその製造法の例は、“Remington: The Science and Practice of Pharmacy”, Loyd, V., et al. Eds., 22nd Ed., Mack Publishing Co., 2012に見ることができる。薬学的に許容される担体、希釈剤および添加物の非限定的例は、次の食塩水、水、デンプン、糖、マンニトールおよびシリカ誘導体;カルボキシメチルセルロースおよび他のセルロース誘導体、アルギネート、ゼラチンおよびポリビニル-ピロリドンなどの結合剤;カオリンおよびベントナイト;ポリエチルグリコールを含む。
【0022】
ここで使用する用語“有効量”は、肝炎症、線維症および脂肪性肝炎を含む肝疾患などの障害の処置に有効である用量である量をいう。担当医師は、当業者として、慣用の方法を使用してかつ、類似の状況で得た結果の観察により、有効量を容易に決定できる。化合物の有効量または用量の決定に際し、化合物またはその塩を投与するか否か;使用するならば、他の薬剤の共投与;哺乳動物の種;その大きさ、年齢および一般的健康状態;障害の関与の程度または重症度;個々の患者の応答;投与方式;投与する製剤のバイオアベイラビリティ特徴;選択する投与レジメン;他の併用薬の使用;および他の関連状況を含む、多数の因子が考慮される。
【0023】
ここで使用する用語“処置する”、“処置のため”または“処置”は、存在する症状、障害、状態または疾患の進行または重症度の遅延、軽減または回復を含み、肝炎症、線維症および脂肪性肝炎などの肝疾患の処置を含み得る。
【0024】
ここで使用する用語“患者”は、哺乳動物、家禽または魚をいう。好ましくは、患者はヒトまたはコンパニオン哺乳動物、例えば、イヌまたはネコまたは他の家畜哺乳動物、例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ウサギおよびヤギである。
【0025】
処置する医師、獣医師または他の医療従事者は、必要とする患者の処置のための化合物の有効量を決定できる。好ましい医薬組成物は、経口投与用錠剤またはカプセル剤、経口用液剤または注射可能溶液として製剤化される。錠剤、カプセル剤または溶液剤は、処置を必要とする患者の処置に有効な量の本発明の化合物を含み得る。
【0026】
ここで使用する略語は、Daub G.H., et al., “The Use of Acronyms in Organic Chemistry” Aldrichimica Acta, 1984, 17(1), 6-23により定義される。他の略語は次のとおりである:“ACN”はアセトニトリルをいう;“AUC”は曲線下面積をいう;“Boc”はtert-ブトキシカルボニルをいう;“DCM”はジクロロメタンをいう;“DIPEA”はN,N-ジイソプロピルエチルアミンをいう;“DMF”はジメチルホルムアミドをいう;“DMSO”はジメチルスルホキシドをいう;“EDTA”はエチレンジアミンテトラ酢酸をいう;“EGTA”はエチレングリコールテトラ酢酸をいう;“ES/MS”はエレクトロスプレー質量分析をいう;“EtOAc”は酢酸エチルをいう;“HEPES”は4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸をいう;“HPLC”は高速液体クロマトグラフィーをいう;“hrまたはhrs”は時間をいう;“HRP”はホースラディッシュペルオキシダーゼをいう;“IC50”はその薬剤で可能な最大阻害性応答の50%を生じる薬剤の濃度(相対的IC50)またはプラセボ対照と比較して標的活性の50%阻害を生じる薬剤の濃度(絶対的IC50)をいう;“MAOaおよびMAOb”はそれぞれモノアミンオキシダーゼaおよびbアイソフォームをいう;“MeOH”はメチルアルコールまたはメタノールをいう;“min”は分をいう;“MS”は質量分析をいう;“PE”は石油エーテルをいう;“R”は保持時間をいう;“SSAO”はセミカルバジド感受性アミンオキシダーゼ;および“hSSAO”はヒトSSAOをいう。
【0027】
本発明の化合物またはその塩は、多様な方法で製造でき、そのいくつかは、下記製造例および実施例に示す。下記方法における各工程の生成物を、抽出、蒸発、沈殿、クロマトグラフィー、濾過、摩砕および結晶化を含む常法により取得できる。特に断らない限り、反応材および出発物質は容易に入手可能である。
【0028】
ここに記載する製造例において、ヒドロキシルおよびアミノ官能基を、ここに記載する化合物の合成を促進するために保護し得る。保護官能基の例は、“Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis,” Wuts, P.G.M., et al., Eds. 5th Ed., John Wiley and Sons, 2014に見ることができる。ヒドロキシル基またはアミノ基に容易に変換される他の官能基を使用し得る。これらの基のこのような官能基、その製造および変換は、“Comprehensive Organic Transformations: A Guide to Functional Group Preparations” by Larock. R.C., Wiley VCH, 1999および“March’s Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms and Structure,” Smith, M.B., Ed., 7th Ed., Wiley-Interscience, 2013に見ることができる。
【0029】
化学合成セクション
次の製造例および実施例は、本発明をさらに説明し、本発明の化合物の典型的合成を示す。
【0030】
製造例1
tert-ブチル(3S)-3-メトキシピロリジン-1-カルボキシレート
ヨードメタン(0.398g、2.80mmol)を、tert-ブチル(3S)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキシレート(0.500g、2.67mmol)および水素化ナトリウム(鉱油中60重量%)(0.160g、4.01mmol)のDMF(5mL)中の混合物に加える。得られた混合物を室温で2時間撹拌する。飽和NHCl水溶液(30mL)で反応停止させ、EtOAc(3×30mL)で抽出する。水層を廃棄する。有機抽出物を合わせ、塩水で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、濾液を蒸発乾固して、表題化合物(475mg、0.475g、88.4%)を得る。粗製物質をさらに精製することなく次工程で使用できる。ES/MS (m/z): 224.2 (M+Na)
【0031】
製造例2
(3S)-3-メトキシピロリジン
tert-ブチル(3S)-3-メトキシピロリジン-1-カルボキシレート(475mg、2.36mmol)およびトリフルオロ酢酸(1mL、13.23mmol)のDCM(3mL)溶液を、室温で1時間撹拌する。反応混合物を減圧下濃縮して、表題化合物(240mg、2.35mmol、99.5%)を得て、これをさらに精製することなく次工程で使用できる。
【0032】
製造例3
1-(5-ベンジルオキシピリミジン-2-イル)ピペリジン-4-オール
【化8】
5-ベンジルオキシ-2-クロロ-ピリミジン(2.30g、9.90mmol)、ピペリジン-4-オール(1.23g、11.9mmol)およびDIPEA(3.88mL、29.7mmol)のDMF(30mL、388mmol)中の混合物を、100℃でN雰囲気下、17時間撹拌する。混合物を水(200mL)で希釈し、EtOAc(3×50mL)で抽出する。有機抽出物を合わせ、塩水(3×50mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、濾液を濃縮する。残留物を60%EtOAcおよび40%PEの混合物で溶出するシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーに付して、表題化合物(2.00g、6.31mmol、63.7%)を白色固体として得る。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.40-1.60 (m, 2H), 1.90-1.99 (m, 2H), 3.17-3.29 (m, 2H), 3.85-3.95 (m, 1H), 4.25-4.39 (m, 2H), 5.09 (s, 2H), 7.38-7.52 (m, 5H), 8.14 (s, 2H)
【0033】
製造例4
2-(4-ヒドロキシ-1-ピペリジル)ピリミジン-5-オール
【化9】
パラジウム(炭素上10質量%、600mg、0.564mmol)を1-(5-ベンジルオキシピリミジン-2-イル)ピペリジン-4-オール(2.00g、6.31mmol)のMeOH(40mL、989mmol)溶液に加える。得られた混合物を、15℃で水素雰囲気(103kPa)下、2時間撹拌する。得られた混合物を珪藻土で濾過する濾液を濃縮して、表題化合物(0.70g、3.59mmol、56.8%)を黄色固体として得る。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.23-1.38 (m, 2H), 1.60-1.77 (m, 2H), 2.65-2.90 (m, 2H), 3.00-3.25 (m, 2H), 3.50-3.70 (m, 2H), 4.05-4.16 (m, 1H), 7.90 (s, 2H)
【0034】
製造例5
tert-ブチルN-[(E)-2-[(2-クロロピリミジン-5-イル)オキシメチル]-3-フルオロ-アリル]カルバメート
【化10】
CO(5.71g、41.3mmol)を2-クロロピリミジン-5-オール(5.01g、38.3mmol)およびtert-ブチルN-[(E)-2-(ブロモメチル)-3-フルオロ-アリル]カルバメート(3.67g、13.7mmol)のDMF(25mL)溶液に加える。得られた溶液を室温で12時間撹拌する。水(80mL)およびEtOAc(100mL)を加えて、反応停止させる。有機相と水相を分離する。水相をEtOAc(3×100mL)で抽出する。全有機抽出物を合わせる。合わせた有機物をNaSOで乾燥させ、濾過し、濾液を減圧下濃縮して、残留物を得る。残留物を30%EtOAcのヘキサン中の混合物で溶出するシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーに付して、表題化合物を白色固体として得る(4.15g、13.1mmol、96%収率)。ES/MS (m/z): 340 (M+Na)
【0035】
製造例6
tert-ブチルN-[(Z)-3-フルオロ-2-[[2-(4-ヒドロキシ-1-ピペリジル)ピリミジン-5-イル]オキシメチル]アリル]カルバメート
【化11】
2-(4-ヒドロキシ-1-ピペリジル)ピリミジン-5-オール(400mg、2.05mmol)、tert-ブチルN-[(Z)-2-(ブロモメチル)-3-フルオロ-アリル]カルバメート(1.10g、4.02mmol)およびKCO(0.858g、6.15mmol)のDMF(10mL)の中の混合物を60℃で3時間撹拌する。得られた混合物をEtOAc(50mL)で希釈する。混合物を水(100mL)、次いで塩水(2×50mL)で連続的に洗浄する。有機相をNaSOで乾燥させ、濾過し、濾液を濃縮して、残留物を得る。残留物をPE中の65~75%EtOAc勾配で溶出するシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーに付して、表題化合物(558mg、1.46mmol、71.2%)を黄色ガム状物として得る。1H NMR (400 M Hz, CDCl3) δ 1.25 (s, 9H), 1.40-1.65 (m, 4H), 1.89-1.98 (m, 2H), 3.23-3.30 (m, 2H), 3.91 (s, 1H), 3.89-3.97 (m, 1H), 4.36-4.40 (m, 2H), 4.64 (s, 2H), 4.76 (br, 1H), 6.62 (d, J = 84.0 Hz, 1H) 8.10 (s, 2H)
【0036】
製造例7
tert-ブチルN-[(E)-3-F-2-[[2-(4-ヒドロキシ-1-ピペリジル)ピリミジン-5-イル]オキシメチル]アリル]カルバメート
【化12】
tert-ブチルN-[(E)-2-[(2-クロロピリミジン-5-イル)オキシメチル]-3-フルオロ-アリル]カルバメート(21.3g、67.0mmol)、ピペリジン-4-オール(25.0g、235mmol)およびDIPEA(41mL、235mmol)を1,4-ジオキサン(200mL)中で合わせる。得られた混合物をN雰囲気下、105℃で7時間加熱する。混合物を濃縮し、水(100mL)およびEtOAc(150mL)に分配し、相を分離する。水相をEtOAc(100mL)で抽出する。全有機相を合わせる。塩水(100mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、濾液を濃縮して、残留物を得る。残留物をEtOAc(21mL)に溶解し、ヘプタン(126mL)を滴下する。得られた混合物を室温で20時間撹拌する。混合物を濾過して固形物を集め、固形物をEtOAc/ヘプタン(5:1、21mL)で濯ぐ。固形物を減圧下乾燥させて、表題化合物(23.5g、61.5mmol、91.7%)を得る。ES/MS (m/z): 383 (M+H)
【0037】
製造例8
tert-ブチルN-[(E)-3-フルオロ-2-[[2-(4-メトキシ-1-ピペリジル)ピリミジン-5-イル]オキシメチル]アリル]カルバメート
【化13】
tert-ブチルN-[(E)-2-[(2-クロロピリミジン-5-イル)オキシメチル]-3-フルオロ-アリル]カルバメート(4.10g、12.9mmol)を2等分し(2.05g+2.05g)、それぞれ別々のマイクロ波バイアル(20mL)に入れる。各バイアルに、4-メトキシピペリジン(4.31g、37.3mmol)、1,4-ジオキサン(30mL、15mL)およびDIPEA(6mL、34.4mmol、3mL)を加える。バイアルをNガスでフラッシュし、密封し、マイクロ波により120℃で12時間加熱する。2つの反応混合物を合わせ、減圧下で濃縮して、残留物を得る。残留物を30%EtOAcのヘキサン中の混合物で溶出するシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーに付して、表題化合物を黄色油状物として得る(4.24g、10.2mmol、79%)。ES/MS (m/z): 397 (M+H)
【0038】
製造例9
tert-ブチルN-[(E)-3-フルオロ-2-[[2-[(3S)-3-メトキシピロリジン-1-イル]ピリミジン-5-イル]オキシメチル]アリル]カルバメート
【化14】
tert-ブチルN-[(E)-2-[(2-クロロピリミジン-5-イル)オキシメチル]-3-フルオロ-アリル]カルバメート(400mg、1.26mmol)を、(3S)-3-メトキシピロリジン(240mg、2.37mmol)およびKCO(0.696g、5.04mmol)の1,4-ジオキサン(5mL)中の混合物に加える。得られた混合物を、マイクロ波条件下、120℃で12時間撹拌する。混合物を減圧下濃縮して、表題化合物を粗製物質として得て、これをさらに精製することなく次工程で使用できる(481mg、1.26mmol、99.9%)。ES/MS (m/z): 383.2 (M+H)
【0039】
製造例10
tert-ブチルN-[(E)-3-フルオロ-2-[[2-[(3S)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]ピリミジン-5-イル]オキシメチル]アリル]カルバメート
【化15】
tert-ブチルN-[(E)-2-[(2-クロロピリミジン-5-イル)オキシメチル]-3-フルオロ-アリル]カルバメート(594.3mg、1.87mmol)および(3S)-ピロリジン-3-オール(488.9mg、5.61mmol)を1,4-ジオキサン(15mL)およびDIPEA(3mL、17.2mmol)に溶解する。溶液をNガスでフラッシュし、容器を密封し、マイクロ波により混合物を120℃で12時間加熱する。得られた混合物を減圧下濃縮して、残留物を得る。残留物をヘキサン中80~90%EtOAc勾配で溶出するシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーに付して、表題化合物を黄色泡状物として得る(608.8mg、1.57mmol、84%)。ES/MS (m/z): 369 (M+H)
【0040】
実施例1
1-[5-[(Z)-2-(アミノメチル)-3-フルオロ-アリルオキシ]ピリミジン-2-イル]ピペリジン-4-オール塩酸塩
【化16】
tert-ブチルN-[(Z)-3-フルオロ-2-[[2-(4-ヒドロキシ-1-ピペリジル)ピリミジン-5-イル]オキシメチル]アリル]カルバメート(558mg、1.46mmol)をHCl(4mol/L)およびMeOH(10mL)に加える。得られた混合物を1.5時間、10℃で撹拌する。混合物を減圧下濃縮して、残留物を得る。残留物をACN中10~15%0.05%水性HCl勾配;流速:25mL/分、R:5.95分で溶出する分取HPLCカラム:(Phenomenex Synergi C18 150 30mm、4μm)に付して、20:1より大きなZ:E比の表題化合物(456mg、1.43mmol、98.0%)を黄色固体として得る。ES/MS (m/z): 283.1 (M+H), 1H NMR (400 MHz , d4-MeOD) δ 1.56-1.78 (m, 2H), 1.92-2.13 (m, 2H), 3.61-3.72 (m, 2H), 3.75 (s, 2H), 3.95-4.06 (m, 1H), 4.11-4.25 (m, 2H), 4.89-4.93 (m, 2H), 7.19 (d, J = 80.4 Hz, 1H), 8.47 (s, 2H)
【0041】
実施例2
1-[5-[(E)-2-(アミノメチル)-3-フルオロ-アリルオキシ]ピリミジン-2-イル]ピペリジン-4-オール二塩酸塩
【化17】
tert-ブチルN-[(E)-3-フルオロ-2-[[2-(4-ヒドロキシ-1-ピペリジル)ピリミジン-5-イル]オキシメチル]アリル]カルバメート(31g、81.07mmol)、MeOH(20mL、494mmol)およびHClをMeOH(120mL、4mol/L、486.4mmol)中で合わせる。得られた混合物を、30時間、N雰囲気下、室温で撹拌する。EtOAc(250mL)を滴下し、混合物を30分撹拌する。混合物を濾過して固形物を集め、固形物をEtOAc(20mL)で濯ぎ、固形物を減圧下乾燥させて、20:1より大きなE:Z比の表題化合物(26.4g、72.8mmol、89.8%)を得る。ES/MS (m/z): 283 (M+H), 1H NMR (500 MHz, d6-DMSO) δ 1.28-1.36 (m, 2H), 1.73-1.76 (m, 2H), 3.18-3.25 (m, 2H), 3.55-3.60 (m, 2H), 3.68-3.75 (m, 1H), 4.18 (dt, J = 13.5, 4.5 Hz, 2H), 4.65 (d, J = 3.0 Hz, 2H), 6.55-7.10 (br, 2H), 7.27 (d, J = 82.0 Hz, 1H), 8.27 (s, 2H), 8.32-8.45 (br, 3H), 19F NMR (500 MHz, d6-DMSO) δ 122.2 (s)
【0042】
実施例3
(E)-3-フルオロ-2-[[2-(4-メトキシ-1-ピペリジル)ピリミジン-5-イル]オキシメチル]プロプ-2-エン-1-アミン、二塩酸塩
【化18】
tert-ブチルN-[(E)-3-フルオロ-2-[[2-(4-メトキシ-1-ピペリジル)ピリミジン-5-イル]オキシメチル]アリル]カルバメート(4.2374g、10.69mmol)をHClのMeOH溶液(100mL、50mmol、0.5mol/L)に溶解する。得られた透明溶液を60℃で4時間加熱する。混合物を減圧下濃縮して、残留物(3.95g)を得る。残留物をMeOH(7mL)に懸濁し、混合物を還流して、透明溶液を得る。溶液を室温に冷却し、針状結晶を得て、混合物を-20℃に冷却する。混合物を濾過して固形物を集め、固形物を冷MeOHで洗浄して、表題化合物を淡黄色結晶として得る(2.73g、7.01mmol、66%)。得られた黄色結晶を上記と同じ操作で再結晶して、表題化合物を、20:1より大きなE:Z比の無色、結晶物質として得る。ES/MS (m/z): 297 (M+H), 1H NMR (500 MHz, d6-DMSO) δ 1.33-1.40 (m, 2H), 1.84-1.89 (m, 2H), 3.26 (dt, J = 13.5, 9.5 Hz, 2H), 3.27 (s, 3H), 3.40-3.45 (m, 1H), 3.56-3.62 (m, 2H), 4.11 (dt, J = 13.5, 5.0 Hz, 2H), 4.62 (d, J = 3.0 Hz, 2H), 5.26-5.94 (br, 1H), 7.27 (d, J = 82.0 Hz, 1H), 8.26 (s, 2H), 8.21-8.31 (br, 3H), 19F NMR (500 MHz, d6-DMSO) δ 122.1 (s)
【0043】
実施例4
(E)-3-フルオロ-2-[[2-(4-メトキシ-1-ピペリジル)ピリミジン-5-イル]オキシメチル]プロプ-2-エン-1-アミン
【化19】
N-[(E)-3-フルオロ-2-[[2-(4-メトキシ-1-ピペリジル)ピリミジン-5-イル]オキシメチル]アリル]カルバメート(167.0mg、0.42mmol)を0.95M HClの18mL EtOAc/MeOH(10:1v/v)溶液に溶解する。混合物を一夜撹拌する。得られた懸濁液を減圧下濃縮し、残留物を水に溶解する。残留物を分取HPLC(LCカラム:XBridge(登録商標)C18 30×150mm 5μm;0~11分のACN中14~24%10mM NHHCO水溶液の勾配で溶出;カラム温度:室温;流速:35mL/分、R=7.8分、17分後停止。UVでモニター)に付す。適切なフラクションを合併し、濃縮して、残留物を油状物として得る。残留物を水に溶解し、凍結乾燥させて、20:1より大きなE:Z比の表題化合物を白色固体として得る(97mg、0.31mmol、74%、95%純度)。ES/MS (m/z): 297 (M+H), 1H NMR (500 MHz, d6-DMSO) δ 1.33-1.41 (m, 2H), 1.52-1.69 (br, 1H), 1.83-1.89 (m, 2H), 3.23-3.29 (m, 4H), 3.27 (s, 3H), 3.30-3.35 (br, 1H), 3.38-3.44 (m, 1H), 4.11 (dt, J = 13.5, 4.5 Hz, 2H), 4.55 (d, J = 4.5 Hz, 2H), 6.93 (d, J = 85.0 Hz, 1H), 8.22 (s, 2H), 19F NMR (500 MHz, d6-DMSO) δ 131.8 (s)
【0044】
実施例4a
(2E)-3-フルオロ-2-({[2-(4-メトキシピペリジン-1-イル)ピリミジン-5-イル]オキシ}メチル)プロプ-2-エン-1-アミン4-メチルベンゼンスルホン酸塩(1:1)
【化20】
(E)-3-フルオロ-2-[[2-(4-メトキシ-1-ピペリジル)ピリミジン-5-イル]オキシメチル]プロプ-2-エン-1-アミン(2.316g、7.81mmol)を酢酸メチル(3mL)に溶解し、1000rpmで室温で撹拌して、淡黄色溶液を得る。4-トルエンスルホン酸一水和物(1.62g、8.43mmol)の酢酸メチル(4mL)溶液を加える。混合物は濁り始め、濃い黄色スラリーが急速に形成される。固形物を濾紙で吸引濾過する。フィルターケーキを酢酸メチル(4mL)で濯ぎ、白色フィルターケーキを得る。固形物を、減圧気流下10分、次いで真空オーブン中室温で一夜乾燥させて、表題化合物(3.00g、81.8%)を得る。
【0045】
実施例4a化合物のX線粉末回折
結晶(2E)-3-フルオロ-2-({[2-(4-メトキシピペリジン-1-イル)ピリミジン-5-イル]オキシ}メチル)プロプ-2-エン-1-アミン4-メチルベンゼンスルホン酸塩のX線粉末回折(XRD)パターンを、CuKa源(λ=1.54060Å)およびVantec検出器を備え、35kVおよび50mAで操作するBruker D4 Endeavor X線粉末回折計で得る。サンプルを、2θで4~40°の間走査し、ステップサイズは2θで0.009°であり、走査速度は0.5秒/ステップであり、0.6mm発散、5.28固定散乱線除去および9.5mm検出器スリットである。乾燥粉末を石英サンプルホルダーに詰め、スライドグラスを使用して、表面を滑らかにする。結晶形態回折パターンを環境温度および相対湿度で得る。ある結晶形態について、回折ピークの相対強度は結晶形態および晶癖などの因子によりもたらされる好ましい配向により、変わり得ることは結晶学分野では周知である。好ましい配向の影響が存在するとき、ピーク強度は変わるが、多形の特徴的ピーク位置は変わらない。例えば、The United States Pharmacopeia #23, National Formulary #18, pages 1843-1844, 1995参照。さらに、ある結晶形態について、角度ピーク位置がわずかに変わり得ることも結晶学分野では周知である。例えば、ピーク位置はサンプルを分析する時点での温度または湿度の差、サンプル移動または内部標準の存在または非存在によりシフトし得る。本件の場合、2θで±0.2のピーク位置変動性を、当該結晶形態の明確な同定を妨げることなく、これらの可能性のある変動を考慮に入れる。結晶形態の確認は、識別可能なピーク(2θ°単位)で、一般により顕著なピークの何れかの特有の組み合わせに基づいてなし得る。結晶形態回折パターンを環境温度および相対湿度で取り、8.853°および26.774°2シータでのNIST 675標準ピークに基づき調節する。
【0046】
(2E)-3-フルオロ-2-({[2-(4-メトキシピペリジン-1-イル)ピリミジン-5-イル]オキシ}メチル)プロプ-2-エン-1-アミン4-メチルベンゼンスルホン酸塩の製造サンプルは、CuKa照射を使用して、下記表1に記載の回折ピーク(2シータ値)、特に22.4、19.1および21.0から選択されるピークの1以上と組み合わさった18.6のピークを有するとしてXRDパターンにより特徴付けられ、2シータでの±0.2°の回折角の許容範囲で、あるいは塩は、2シータで18.6、19.1、21.0、21.9および22.4±0.2°または2シータで17.6、11.0、16.8、18.6、19.1、21.0、21.9、22.4および26.1±0.2°の1以上のピークを有するXRDパターンとして特徴付けられ得る。
【0047】
【表1】
【0048】
実施例5
(E)-3-フルオロ-2-[[2-[(3S)-3-メトキシピロリジン-1-イル]ピリミジン-5-イル]オキシメチル]プロプ-2-エン-1-アミン
【化21】
tert-ブチルN-[(E)-3-フルオロ-2-[[2-[(3S)-3-メトキシピロリジン-1-イル]ピリミジン-5-イル]オキシメチル]アリル]カルバメート(481mg、1.26mmol)およびトリフルオロ酢酸(1mL、13.23mmol)のDCM(3mL)溶液を、室温で1時間撹拌する。混合物を減圧下濃縮する。残留物を、分取HPLC(LCカラム:XBridge(登録商標)C18 30×150mm 5μm;ACN中5%10mM NHHCO水溶液で0~2分、次いで、2~12分でACN中6~11%10mM NHHCO水溶液の勾配で溶出;18分で停止;カラム温度:室温;流速:35mL/分、R=10.6分;UVで検出)に付して、20:1より大きなE:Z比の表題化合物(226mg、61.7%)を白色固体として得る。ES/MS (m/z): 283.1 (M+H), 1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 1.12-1.78 (br, 2H), 2.07-2.16 (m, 2H), 3.37 (s, 3H), 3.53-3.68 (m, 6H), 4.07 (m, 1H), 4.44 (s, 2H), 6.57 (d, J = 83.0 Hz, 1H), 8.12 (s, 2H)
【0049】
実施例6
(3S)-1-[5-[(E)-2-(アミノメチル)-3-フルオロ-アリルオキシ]ピリミジン-2-イル]ピロリジン-3-オール;二塩酸塩
【化22】
tert-ブチルN-[(E)-3-フルオロ-2-[[2-[(3S)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]ピリミジン-5-イル]オキシメチル]アリル]カルバメート(605.9mg、1.65mmol)を、HClのMeOH溶液(30mL、15mmol、0.5mol/L)とHClの水溶液(5mL、60mmol、12mol/L)の混合物に溶解する。得られた透明溶液を一夜撹拌する。反応混合物を減圧下濃縮して、残留物を得る。残留物を分取HPLC(LCカラム:XBridge(登録商標)C18 30×150mm 5μm;HO 10nM NHHCO;室温;2%ACNで0~2分、次いで2~10%ACN勾配で2~10分、流速:35mL/分で溶出、R=8.0分(UV検出でモニター);16分で停止)に付す。適切なフラクションを集め、濃縮して、表題化合物の遊離塩基を得る。遊離塩基化合物を0.5M HClのMeOH溶液(15mL)に溶解する。溶液を濃縮し、水を加え、凍結乾燥して、20:1より大きなE:Z比の表題生成物を淡黄色固体として得る(352.7mg、0.982mmol、59%)。ES/MS (m/z): 269 (M+H), 1H NMR (500 MHz, d6-DMSO) δ 1.87-1.94 (m, 1H), 1.98-2.05 (m, 1H), 3.44 (d, J = 11.5 Hz 1H), 3.51-3.61 (m, 5H), 4.39-4.42 (m, 1H), 4.66 (d, J = 3.0 Hz, 2H), 5.33-5.90 (br, 2H), 7.28 (d, J = 82.0 Hz, 1H), 8.35 (s, 2H), 8.35-8.44 (br, 3H), 19F NMR (500 MHz, d6-DMSO) δ 121.9 (s)
【0050】
実施例6の別製造例
tert-ブチルN-[(E)-3-フルオロ-2-[[2-[(3S)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]ピリミジン-5-イル]オキシメチル]アリル]カルバメート(1.1601g、3.15mmol)をHClのEtOAc溶液(50mL、50mmol、1.0mol/L)(0.5mol/L HClとMeOH、5mLを予め混合)に溶解する。得られた溶液を一夜撹拌する。白色懸濁液を減圧下濃縮して、白色粉末を得る。白色粉末を水に溶解し、溶液を凍結乾燥して、表題化合物を淡黄色固体(860.7mg、2.42mmol、77%)として得る。
【0051】
実施例6として製造された物質を水(5mL)に溶解し、別実施例6の水(5mL)溶液と合わせる。混合物を凍結乾燥して、20:1より大きなE:Z比の表題化合物(1.151g、3.27mmol)を得る。ES/MS m/z: 269 (M+H), 1H NMR (500 MHz, d6-DMSO) δ 1.87-1.94 (m, 1H), 1.98-2.05 (m, 1H), 3.44 (d, J = 11.5 Hz 1H), 3.51-3.61 (m, 5H), 4.39-4.42 (m, 1H), 4.66 (d, J = 3.0 Hz, 2H), 5.33-5.90 (br, 2H), 7.28 (d, J = 82.0 Hz, 1H), 8.35 (s, 2H), 8.35-8.44 (br, 3H), 19F NMR (500 MHz, d6-DMSO) δ 121.9 (s)
【0052】
生物学的アッセイ
SSAO/VAP-1インビトロ活性
組み換えSSAO、MAOaおよびMAObアイソフォームのアミンオキシダーゼ活性を、PromegaのMAO-GloTMアッセイキット(V1402)を使用して測定する。試験化合物(SSAOについて媒体としてDMSO、0.5%v/v)および酵素を、10分、室温でインキュベートして、発光基質を加える。基質濃度はヒト組み換えSSAOについて10μMである。アッセイを、pH7.4緩衝液(50mM HEPES、120mM NaCl、5mM KCl、2mM CaCl、1.4mM MgCl、0.001%Tween-20)でウェルプレートで行う。基質酸化を2時間行い、製造業者のプロトコールに従い、検出試薬を加える。試験化合物のIC50値を、用量応答曲線を4パラメータ非線形回帰ルーティンに適合させることにより、計算する。実施例3、5および6の化合物のIC50値を表2に記載する。
【表2】

データをアッセイ数(n)に対する平均±SEM(SEM=平均の標準誤差)で表す。
実施例化合物は、hSSAOに対して60nM未満のIC50を示す。実施例化合物は、それぞれ50μMおよび200μMを超えるhMAOaおよびhMAObに対するIC50を示し、実施例化合物がhMAOaまたはhMAObの何れよりもhSSAOに選択的であることが示される。
【0053】
SSAO標的結合
ラット血漿および肝臓組織でのSSAO活性を、PromegaからのMAO-GloTMアッセイキット(V1402)を使用して測定する。化合物処置後のラットにおける残存SSAO活性を、MAO阻害剤クロルギリンおよびパルギリン存在に非感受性である、血漿または肝臓ライセート中の総アミンオキシダーゼ活性の測定により概算する。ラットに、実施例化合物2を15mg/kg、3mg/kg、0.6mg/kg、0.12mg/kg、0.025mg/kg、0.005mg/kg用量で投与する。対照群に等量(2ml/kg)の投与媒体(ヒドロキシエチルセルロース1%w/v、0.25%Tween 80)を投与する。化合物処置2時間または24時間後の血漿および肝臓を採取し、分析まで-78℃で保存する。組織ライセートを、溶解緩衝液(20mM HEPES、pH7.4、150mM NaCl、1mM EDTA、1mM EGTA、1%Triton X-100および1×Roche Complete protease inhibitor錠)中で均質化することにより調製する。組織片を、12,000rpmで、4℃で30分の遠心分離により除く。40μlの血漿または肝臓ライセートをクロルギリン(10μM)およびパルギリン(10μM)と、20分、室温でインキュベートし、発光基質(50μM)を60分加える。生成物を、製造業者のプロトコールにより定量する。MAO阻害剤の存在に非感受性である活性画分を残存SSAO活性のサロゲートとして使用する。実施例化合物2を、本質的に上記プロトコールで、種々の用量で投与して評価した。結果を表3に記載する。
【表3】

データを平均±SEM、n=6で表す
結果は、実施例化合物2がラット血漿および肝臓両者におけるSSAO活性を用量依存性に阻害することを示す。
【0054】
3H餌により誘発されたNASHおよび線維症のマウスモデル
雄C57BL/6NマウスにD09100301餌(Research Diets、40%脂肪、2%コレステロール、24%フルクトース(脂肪、コレステロールおよびフルクトース、“3H餌”))を150日間与える。各マウスを、順応期間の5日間の後、一匹ずつで飼育する。血漿アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)およびサイトケラチン18(CK18)を測定する。1週間の回復後、マウスをALT値、CK18値および体重に基づき5群に無作為化する。各群の動物に、媒体(蒸留水中0.5%メチルセルロース(MC)+0.25%Tween 80)または実施例6化合物(0.06mg/kg、2mg/kg、6mg/kgおよび20mg/kg用量)を、1日1回、5ml/kg容積で11週間与える。
実施例6化合物で76日処置マウスを、最終投与2時間後に採血する。血漿中の化合物レベルを質量分析で分析する。結果を下の表4に示す。処置マウスは、血漿化合物レベルの用量依存的増加を示す。実施例6で処置した全群のマウスは、ALTの有意な減少を示し、これらの動物における肝臓病変減少を示す。6mg/kgおよび20mg/kgの実施例6化合物で処置した動物も、血中トリグリセリドレベルの減少を示す。
【0055】
試験の最後に、動物を屠殺し、肝臓を摘出する。左葉および右葉の2切片を中性緩衝化10%ホルマリンに固定する。肝臓組織スライドをヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)、シリウスレッドおよびマッソントリクロームで染色して、組織分析用スライドを調製する。全切片を顕微鏡で試験し、修飾Brunt score NASH Activity Scoreとして採点する。採点は、Brunt E. M, et al., “Histopathology of nonalcoholic fatty liver disease,” World J. of Gastroenterol, 2010, 16(42), 5286-5296に記載の等級付けスキームおよびエンドポイントに基づく。次いで群平均を、各個々のエンドポイントについて計算する。次のエンドポイントを使用して、NASHエンドポイントから改変された、マウスにおけるNASHのファーストフードモデルを特徴付ける(Brunt, E. M. “Histopathology of nonalcoholic fatty liver disease,” Clin Liver Dis., 2009, 13, 533-544 and Brunt, E. M, et al., “Nonalcoholic steatohepatitis: A proposal for grading and staging the histological lesions”, Am J Gastroenterology, 1999, 94(9), 2467-2474参照)。
実施例6化合物処置マウスからの肝臓の組織病理学的分析を表4に示す。結果は、20mg/kgの実施例化合物6で処置されたマウスにおいて、肝炎症、大滴性空胞化および類洞周囲線維症の有意な減少があることを示す。
【0056】
【表4】

MIXEDモデルを適用して、化合物処置群と媒体群間のベースラインにより調節したベースラインからの変化倍率を比較する(“Generalized, Linear, and Mixed Models,” McCulloch, C.E., and Searle, S.R., Eds. John Wiley and Sons, 2000 and “Mixed-Effects Models in S and S-PLUS”, Pinheiro J.C., and Bates, D. M., Eds. Springer, 2000.参照)データを平均±SEMで示す。 p<0.05;**p<0.01;*** p<0.001
【0057】
【表5】

ノンパラメトリック検定を適用して、化合物処置群と媒体群の間のスコアを比較する。左側方および右側方のスコアを別々に比較する。データを平均±SEMで示す。 p<0.05;**p<0.01;*** p<0.001