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特許7372961ビタミンD化合物を含有する水性医薬組成物
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  • 特許-ビタミンD化合物を含有する水性医薬組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】ビタミンD化合物を含有する水性医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/593 20060101AFI20231025BHJP
   A61K 31/59 20060101ALI20231025BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20231025BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20231025BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20231025BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20231025BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 5/20 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
A61K31/593
A61K31/59
A61K9/08
A61K47/18
A61K47/22
A61K47/10
A61P3/00
A61P3/02 102
A61P5/20
A61P19/10
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021157981
(22)【出願日】2021-09-28
(62)【分割の表示】P 2017015972の分割
【原出願日】2017-01-31
(65)【公開番号】P2022000466
(43)【公開日】2022-01-04
【審査請求日】2021-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003311
【氏名又は名称】中外製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100122644
【弁理士】
【氏名又は名称】寺地 拓己
(74)【代理人】
【識別番号】100135415
【弁理士】
【氏名又は名称】中濱 明子
(72)【発明者】
【氏名】江上 貴一
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 忠男
(72)【発明者】
【氏名】山下 正悟
(72)【発明者】
【氏名】村形 政利
【審査官】榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104415041(CN,A)
【文献】特開昭62-000017(JP,A)
【文献】特開平04-074123(JP,A)
【文献】特開平05-085930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61P 1/00-43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マキサカルシトールと、界面活性剤と、溶解補助剤と、ラジカル消去活性を有する少なくとも1つの化合物と、薬学的に許容される担体と、水性溶媒と、を混合する工程を含む、マキサカルシトール含有水性医薬製剤の製造方法であって、
前記ラジカル消去活性を有する少なくとも1つの化合物が、ピリドキシン塩酸塩、N-アセチル-DL-トリプトファン又はその塩、N-アセチル-L-トリプトファン又はその塩、及びL-カルニチンから選択される、製造方法。
【請求項2】
マキサカルシトールと、界面活性剤と、溶解補助剤と、ラジカル消去活性を有する少なくとも1つの化合物と、薬学的に許容される担体と、水性溶媒と、を混合する工程、及び、
得られた混合物を、ゴム部材を含む容器に封入する工程を含む、当該容器に封入されたマキサカルシトール含有水性医薬製剤の製造方法であって、
前記ラジカル消去活性を有する少なくとも1つの化合物が、ピリドキシン塩酸塩、N-アセチル-DL-トリプトファン又はその塩、N-アセチル-L-トリプトファン又はその塩、及びL-カルニチンから選択される、製造方法。
【請求項3】
製剤のpHを7.5~8.5に調整する工程をさらに含む、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
マキサカルシトール含有水性医薬製剤に、ラジカル消去剤を添加することを含む、当該製剤においてマキサカルシトールの異性体不純物の生成を抑制する方法であって、
前記ラジカル消去剤が、ピリドキシン塩酸塩、N-アセチル-DL-トリプトファン又はその塩、N-アセチル-L-トリプトファン、及びL-カルニチンから選択される、方法。
【請求項5】
マキサカルシトール含有水性医薬製剤に、ピリドキシン塩酸塩、N-アセチル-DL-トリプトファン又はその塩、N-アセチル-L-トリプトファン、及びL-カルニチンから選択される少なくとも1つのラジカル消去剤を添加すること、
該少なくとも1つのラジカル消去剤を加えた製剤を、ブチルゴム部材を含む容器に充填すること、及び
当該容器に充填された状態で製剤を保存すること
を含む、当該容器中の製剤においてマキサカルシトールの異性体不純物の生成を抑制する方法。
【請求項6】
60℃遮光条件下で1週間保存後、製剤中のマキサカルシトール残存率が93%以上である、請求項に記載の方法。
【請求項7】
60℃遮光条件下で1週間保存後、製剤中のマキサカルシトール異性体不純物の生成率が1%以下である、請求項またはに記載の方法。
【請求項8】
前記異性体不純物が、実施例記載の条件で逆相HPLC測定を実施して得られるマキサカルシトールの構造異性体である類縁体I、II、IV及びVである、請求項に記載の方法。
【請求項9】
製剤が、マキサカルシトールを製剤1mL当たり0.1~50μg含有する、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記ラジカル消去活性を有する少なくとも1つの化合物またはラジカル消去剤が、製剤1mL当たり0.01~5mg、又は0.1~10mM添加される、請求項に記載の方法。
【請求項11】
マキサカルシトール含有水性医薬製剤が、ゴム製のキャップ及び/又はガスケットを有するシリンジに封入されたプレフィルドシリンジ製剤である、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
マキサカルシトール含有水性医薬製剤が、二次性副甲状腺機能亢進症治療剤である、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はビタミンD化合物を有効成分として含有する水性医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ビタミンD化合物を含有する製剤は、骨粗しょう症や慢性腎不全、副甲状腺機能低下症、くる病、骨軟化症に伴うビタミンD代謝異常に伴う諸症状、及び維持透析下の二次性副甲状腺機能亢進症の治療薬として、販売されている。
【0003】
二次性副甲状腺機能亢進症の治療に用いられている静注透析用製剤として、ロカルトロール(登録商標)注及びオキサロール(登録商標)注があるが、ロカルトロール(登録商標)注、オキサロール(登録商標)注、及びその後発医薬品の全てが現在、アンプル製剤である。また、海外で売られているゼンプラー(登録商標)注はバイアル製剤である。
【0004】
しかし、人工透析ラインへの適用に当たり、調剤時汚染リスク、投与量過誤、誤投与を回避し、迅速投与、医療従事者労働生産性向上の観点から、プレフィルドシリンジ製剤が望まれてきた。
【0005】
一方、これまで、ビタミンD化合物を含有する注射用製剤は以下の流れで研究されてきた。一般に、ビタミンD化合物は化学的に不安定であることから、これまで多くの安定化方法が開示されてきた。注射剤として用いられる水溶液における安定化方法としては、可溶化目的の非イオン性界面活性剤の添加に加え、アスコルビン酸等の抗酸化剤、あるいは更にキレート剤を添加することにより、変色・着色を防止し、酸素存在下であっても安定な処方が開示されている(特許文献1、特許文献2)。その後、アスコルビン酸等の水溶性抗酸化剤自身の変色を回避するため、親油性抗酸化剤を使用し、空気に触れることによる酸化を防止する方法が開示された(特許文献3)。
【0006】
続いて、医療従事者の製剤使用利便性を考慮した、プラスチック製容器やゴム栓を使用した容器での製剤供給研究が為された。オレフィン重合体性容器を使用した場合、脂溶性化合物は吸着されて有効成分の含量が低下することが有るが、それを、可溶化剤としても用いている界面活性剤であるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類と糖アルコール又はグリセリンを使用することで解決する方法(特許文献4)や、ブチル材料ゴム栓を使用することで生じる有効成分の分解を、ハロゲン化ブチルポリマー栓を使用することで回避する方法(特許文献5)が報告され、バイアル製剤が開発された。
【0007】
その後、更にプレフィルドシリンジ製剤での水溶液製剤の安定化方法が開示された(特許文献6、特許文献7)。これらは、ハロゲン化ブチルポリマー栓を使用する容器で起こるビタミンD化合物のゴム栓への吸着を、ポリテトラフルオロエチレン(商品名:テフロン(登録商標))で表面を加工したゴム部材を用いることで抑制した。
【0008】
その上で、特許文献6では、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンオレイン酸エステル、あるいはそれに加えてエデト酸ナトリウムを使用することにより、新たに表面加工部材に由来する未知の不純物、及び特定のビタミンD化合物由来の不純物(マキサカルシトールの9-ヒドロキシ-イソ体)を抑制するプレフィルドシリンジ製剤を開示した。
【0009】
また、特許文献7は、プレフィルドシリンジ容器内壁に塗布されたシリコンオイルの剥離・塩析による溶液変色を、糖アルコール(D-マンニトール、D-ソルビトール)、アミノ糖(メグルミン)、あるいは塩基性アミノ酸(L-アルギニン)等の添加により抑制する方
法を開示した。
【0010】
しかし、ガスケット(プランジャーストッパーと称されることもある)やキャップを用いた製剤では、ゴム部材の表面加工によって、ビタミンD化合物の吸着は抑制できても、新たな未知の不純物が生成している。一般に、不純物の含有レベルは、多くの場合に、組成物の毒物学的プロフィールに影響し得るので、上記のような不純物を全く生成しないか、あるいはこれまでに知られているよりこのような不純物の生成が少ない、より安定な溶液組成物を開発することが望ましい。
【0011】
一方、ビタミンD化合物のひとつであるED-71を含有する医薬品において、ED-71由来の不純物として、タキステロール体及びトランス体といった異性体不純物が生成することが知られている(特許文献8)。
【0012】
ビタミンD化合物の異性体は、一般的には、光変換(photo-conversion)で生成するが、ヨウ素存在下で起こることも一部のビタミンD化合物で報告されている(非特許文献1)。
【0013】
特許文献8は、ED-71をMCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)に溶解した溶液をソフトカプセルに内封した製剤を保存した場合に生成するED-71のタキステロール体及びトランス体といった、特定の異性体不純物の生成を、抗酸化剤添加により抑制する方法に関する。
【0014】
しかし、上記方法は、ソフトカプセル剤皮に接した、中鎖脂肪酸トリグリセリドのような油脂溶液中のED-71の異性体生成を抑制する技術であり、ブチルゴム部材に接する、水溶液製剤中のビタミンD化合物の異性体不純物生成とは関連が無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】特開平05-238936
【文献】特公平8-18990
【文献】特表2006-502185
【文献】特開2001-261579
【文献】特表2009-525063
【文献】特開2015-034142
【文献】WO2015-119183
【文献】WO2005-074943
【非特許文献】
【0016】
【文献】Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis 40 (2006) 850-863
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ゴム部材を含む容器に封入されたビタミンD化合物含有製剤であって、不純物の生成が抑制された、より安定かつ安全な製剤が求められている。
本発明は、ゴム部材を含む容器を用いたビタミンD化合物製剤において、有効成分であるビタミンD化合物を損失すること無く、不純物生成を抑制しうる製剤化処方を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、上述の問題点を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ゴム部材への接触に起因する製剤中の不純物はビタミンD化合物の異性体であること、更に、その生成は、たとえポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素系樹脂で表面を加工したとしても、(恐らくポリテトラフルオロエチレン被膜を透過して)ゴム部材から溶出した物質により引き起こされることを見出した。そして、ビタミンD化合物含有製剤において、特定の部分構造を有し、且つラジカル消去活性を有する化合物群から選択される1以上の化合物を添加することにより、これら異性体不純物の生成を抑制できることを見出した。
【0019】
本願は、以下の発明を提供する。
〔1〕(A)ビタミンD化合物;及び
(B)以下の式:
【0020】
【化1】
【0021】
【化2】
【0022】
【化3】
【0023】
の1以上により表される構造を部分構造として有し、且つラジカル消去活性を有する少なくとも1つの化合物;
を含有する、水性医薬組成物。
〔2-1〕(A)ビタミンD化合物;及び
(B)以下の式:
【0024】
【化4】
【0025】
[式中、X、Yは、独立に、ホルミル、-CHR11OR12、および-CHR13NR1415から選択され;
、R11およびR12は、独立に、水素原子、C1-6アルキル、(C1-20アルキル)カルボニル、-P(O)(OH)および-P(O)(OH)(O)から選択され;
13、R14およびR15は、独立に、水素原子、C1-6アルキル、および(C1-20アルキル)カルボニルから選択される]
で表される化合物、又はその塩;
【0026】
【化5】
【0027】
[式中、Rは、水素原子又はC1-6アルキルであり;
、R、およびRは、独立に、水素原子、C1-6アルキルおよび(C1-6アルキル)カルボニルから選択される]
で表される化合物、又はその塩;及び
【0028】
【化6】
【0029】
[式中、Rは、水素原子、-O-、C1-6アルキル、(C1-20アルキル)カルボ
ニル、-P(O)(OH)および-P(O)(OH)(O-)から選択され;
は、-O-、-OHおよびC1-6アルコキシから選択され;
はカウンターアニオンであるか、存在しない]
で表される化合物、又はその塩
から選択される少なくとも一つの化合物;
を含む、[1]に記載の水性医薬組成物。
〔2-2〕(A)ビタミンD化合物;及び
(B)以下の式:
【0030】
【化7】
【0031】
[式中、Xは、ホルミル、-CHR11OR12および-CHR13NR1415から選択され;
Yは、-CHR111OR121であり;
は、水素原子、C1-6アルキル又は(C1-20アルキル)カルボニルであり;
11は、水素原子又はC1-6アルキルであり;
12は、水素原子、C1-6アルキルおよび(C1-20アルキル)カルボニルから選択され;
111は、水素原子又はC1-6アルキルであり;
121は、水素原子、C1-6アルキルおよび(C1-20アルキル)カルボニルから選択され;
13は、水素原子又はC1-6アルキルであり;
14は、水素原子又はC1-6アルキルであり;
15は、水素原子又はC1-6アルキルである]
で表される化合物、又はその塩;
【0032】
【化8】
【0033】
[式中、Rは、水素原子又はC1-6アルキルであり;
は、水素原子、C1-6アルキルおよび(C1-6アルキル)カルボニルから選択され;
は、水素原子であり;
は、水素原子である]
で表される化合物、又はその塩;及び
【0034】
【化9】
【0035】
[式中、Rは、水素原子、C1-6アルキルおよび(C1-20アルキル)カルボニルから選択され;
は、-O-又はC1-6アルコキシであり;
はカウンターアニオンであるか、存在しない]
で表される化合物、又はその塩
から選択される少なくとも一つの化合物;
を含む、[1]又は[2-1]に記載の水性医薬組成物。
〔2-3〕(A)ビタミンD化合物;及び
(B)以下の式:
【0036】
【化10】
【0037】
[式中、Xは、ホルミル、-CHR11OR12および-CHR13NR1415から選択され;
Yは、-CHR111OR121であり;
は、水素原子又は(C1-20アルキル)カルボニルであり;
11は、水素原子であり;
12は、水素原子又は(C1-20アルキル)カルボニルであり;
111は、水素原子であり;
121は、水素原子又は(C1-20アルキル)カルボニルであり;
13は、水素原子であり;
14は、水素原子又はC1-3アルキルであり;
15は、水素原子又はC1-3アルキルである]
で表される化合物、又はその塩;
【0038】
【化11】
【0039】
[式中、Rは、水素原子又はC1-3アルキルであり;
は、水素原子、C1-3アルキルおよび(C1-3アルキル)カルボニルから選択され;
は、水素原子であり;
は、水素原子である]
で表される化合物、又はその塩;及び
【0040】
【化12】
【0041】
[式中、Rは、水素原子又は(C1-20アルキル)カルボニルであり;
は、-O-又はC1-3アルコキシであり;
はカウンターアニオンであるか、存在しない]
で表される化合物、又はその塩
から選択される少なくとも一つの化合物;
を含む、[1]、[2-1]又は[2-2]に記載の水性医薬組成物。
〔3〕(A)ビタミンD化合物、及び
(B)以下から選択される少なくとも一つの化合物:
(b-1)ピリドキシン、ピリドキサミン、ピリドキサール、およびそれらの炭素数14~20の脂肪酸またはリン酸とのモノ、ジ、およびトリエステル、およびそれらの塩;
(b-2)トリプトファン、およびそのアミノ基が炭素数1~4の脂肪酸アミドに変換された誘導体、およびそれらの塩;および
(b-3)カルニチン、およびその炭素数1~20の脂肪酸とのエステル、およびそれらの塩
を含む、〔1〕又は〔2〕に記載の水性医薬組成物。
〔4-1〕前記(B)の化合物が、ピリドキシン、ジパルミチン酸ピリドキシン、トリパルミチン酸ピリドキシン、ジカプリル酸ピリドキシン、リン酸ピリドキシン、ピリドキサミン、ピリドキサール、ピリドキサールモノリン酸エステル、N-アセチル-L-トリプトフ
ァン、N-アセチル-DL-トリプトファン、L-カルニチン、パルミトイル-DL-カルニチン及びアセチルカルニチン、並びにそれらの塩から選択される、〔3〕に記載の組成物。
[4-2](B)の化合物が水和物として使用される、〔3〕または[4-1]に記載の組成物。
〔4-3〕前記(B)の化合物が、ピリドキシン塩酸塩、ジパルミチン酸ピリドキシン、トリパルミチン酸ピリドキシン、ジカプリル酸ピリドキシン、リン酸ピリドキシン、ピリドキサミン二塩酸塩、ピリドキサミン二塩酸塩一水和物、ピリドキサール塩酸塩、ピリドキサールリン酸エステル水和物、N-アセチル-L-トリプトファン、N-アセチル-DL-トリプ
トファン、N-アセチル-L-トリプトファンナトリウム、L-カルニチン、パルミトイル-DL-
カルニチン及びアセチルカルニチンから選択される、〔3〕、[4-1]または〔4-2〕に記載の組成物。
〔4-4〕前記(B)の化合物が、ピリドキシン塩酸塩、N-アセチル-DL-トリプトファン、及びL-カルニチンから選択される、〔3〕、[4-1]~〔4-3〕のいずれかに記載の組成物。
〔4-5〕前記(B)の化合物がN-アセチル-L-トリプトファンである、〔3〕に記載の
組成物。
〔5-1〕前記ビタミンD化合物がカルシトリオール又はマキサカルシトールである、〔1〕から〔4〕のいずれかに記載の組成物。
〔5-2〕前記ビタミンD化合物がカルシトリオールである、〔1〕から〔4〕のいずれかに記載の組成物。
〔5-3〕前記ビタミンD化合物がマキサカルシトールである、〔1〕から〔4〕のいずれかに記載の組成物。
〔6-1〕(A)マキサカルシトール又はカルシトリオール;(B)ピリドキシン塩酸塩、ジパルミチン酸ピリドキシン、ピリドキサミン二塩酸塩、ピリドキサミン二塩酸塩一水和物、ピリドキサール塩酸塩、ピリドキサールリン酸エステル水和物、N-アセチル-L-トリプトファン、N-アセチル-DL-トリプトファン、N-アセチル-L-トリプトファンナトリウム、L-カルニチン、及びアセチルカルニチンから選択される少なくとも一つの化合物;及び(C)界面活性剤を含有する、水性医薬組成物。
〔6-2〕(A)マキサカルシトール又はカルシトリオール;(B)ピリドキシン塩酸塩、ピリドキサミン二塩酸塩、ピリドキサミン二塩酸塩一水和物、ピリドキサール塩酸塩、N-アセチル-L-トリプトファン、N-アセチル-DL-トリプトファン、アセチルトリプトファンナトリウム、L-カルニチン、及びアセチルカルニチンから選択される少なくとも一つの化合物;及び(C)界面活性剤を含有する、水性医薬組成物。
〔7-1〕前記(B)の化合物を、水性医薬組成物1mL当たり0.001~10mg含有する、〔1〕から〔6〕のいずれかに記載の組成物。
〔7-2〕前記(B)の化合物を、水性医薬組成物1mL当たり0.01~5mg含有する、〔1〕
から〔6〕のいずれかに記載の組成物。
〔7-3〕前記(B)の化合物を、水性医薬組成物1mL当たり0.01~3mg含有する、〔1〕から〔6〕のいずれかに記載の組成物。
〔7-4〕前記(B)の化合物を、水性医薬組成物1mL当たり0.1~10mM含有する、〔1〕から〔6〕のいずれかに記載の組成物。
〔7-5〕前記(B)の化合物を、水性医薬組成物1mL当たり1~10mM含有する、〔1〕から〔6〕のいずれかに記載の組成物。
〔8〕前記水性医薬組成物がゴム部材を含む容器に封入されている、〔1〕から〔7〕のいずれかに記載の組成物。
〔9〕前記ゴム部材が、容器のキャップ及び/又はガスケットに使用されている、〔8〕に記載の組成物。
〔10-1〕前記組成物が、更に、dl-α-トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、アスコルビン酸又はその塩から選ばれる抗酸化剤を含有する、〔1〕から〔9〕のいずれかに記載の組成物。
〔10-2〕前記抗酸化剤を水性医薬組成物1mL当たり0.001~10 mg含有する、〔10-
1〕記載の組成物。
〔10-3〕前記抗酸化剤を水性医薬組成物1mL当たり0.001~1 mg含有する、〔10-1〕記載の組成物。
〔10-4〕前記抗酸化剤を水性医薬組成物1mL当たり0.01~10 mM含有する、〔10-1〕記載の組成物。
〔10-5〕前記抗酸化剤を水性医薬組成物1mL当たり0.01~1 mM含有する、〔10-1
〕記載の組成物。
〔10-6〕前記抗酸化剤が、アスコルビン酸又はその塩である、〔10-1〕から〔10-5〕のいずれかに記載の組成物。
〔11-1〕pHが約7.0~8.5である〔1〕から〔10〕のいずれかに記載の組成物。
〔11-2〕pHが約7.5~8.5である〔1〕から〔10〕のいずれかに記載の組成物。
〔11-3〕pHが約7.8~8.2である〔1〕から〔10〕のいずれかに記載の組成物。
〔11-4〕pHが約7.0~7.7である〔1〕から〔10〕のいずれかに記載の組成
物。
〔12〕60℃遮光条件下で1週間保存後、93%以上のビタミンD化合物残存率と1%以下の異性体不純物生成率のプロファイルを有する、〔1〕から〔11〕のいずれかに記載の組成物。
〔13-1〕ビタミンD化合物と、
以下の式:
【0042】
【化13】
【0043】
【化14】
【0044】
【化15】
【0045】
の1以上により表される構造を部分構造として有し、且つラジカル消去活性を有する少なくとも1つの化合物を混合する工程、及び、得られた混合物を、ゴム部材を含む容器に封
入する工程を含む、当該容器に封入されたビタミンD化合物含有水性医薬製剤の製造方法。
〔13-2〕ビタミンD化合物と、
以下の式:
【0046】
【化16】
【0047】
【化17】
【0048】
【化18】
【0049】
の1以上により表される構造を部分構造として有し、且つラジカル消去活性を有する少なくとも1つの化合物、及び薬学的に許容される担体を混合する工程を含む、ゴム部材を含
む容器に封入されたビタミンD化合物含有水性医薬製剤の製造方法。
〔13-3〕上記製造方法の一態様において、ビタミンD化合物はカルシトリオール又はマキサカルシトールである。
〔13-4〕上記製造方法の一態様において、ビタミンD化合物はマキサカルシトールである。
〔13-5〕上記製造方法の一態様において、ビタミンD化合物はカルシトリオールである。
〔13-6〕上記製造方法の一態様において、ラジカル消去活性を有する少なくとも1つ
の化合物が、
(b-1)ピリドキシン、ピリドキサミン、ピリドキサール、およびそれらの炭素数14~20の脂肪酸またはリン酸とのモノ、ジ、およびトリエステル、およびそれらの塩;
(b-2)トリプトファン、およびそのアミノ基が炭素数1~4の脂肪酸アミドに変換された誘導体、およびそれらの塩;および
(b-3)カルニチン、およびその炭素数1~20の脂肪酸とのエステル、およびそれらの塩或はそれらのいずれかの水和物から選ばれる。
〔13-7〕上記製造方法の一態様において、ラジカル消去活性を有する少なくとも1つ
の化合物が、ピリドキシン塩酸塩、N-アセチル-DL-トリプトファン又はその塩、及びL-カルニチンから選ばれる。
〔13-8〕上記製造方法の一態様において、ラジカル消去活性を有する化合物が、N-アセチル-L-トリプトファンである。
〔13-9〕上記製造方法の一態様において、ラジカル消去活性を有する化合物が、製剤1mL当たり0.001~10mg、0.01~5mg、0.01~3mg、0.1~10mM、又は1~10mM添加される。
〔13-10〕上記製造方法の一態様において、dl-α-トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、アスコルビン酸又はその塩から選ばれる抗酸化剤を、製剤に添加する工程を更に含む。
〔13-11〕上記製造方法の一態様において、前記抗酸化剤は、製剤1mL当たり0.001~
10 mg、0.001~1 mg、0.01~10 mM又は0.01~1 mM添加される。
〔13-12〕上記製造方法の一態様において、更に、アスコルビン酸又はその塩が、製剤に添加されてもよい。
〔13-13〕上記製造方法は、製剤のpHを7.5~8.5に調整する工程を含んでもよい。
〔13-14〕上記製造方法は、製剤のpHを7.8~8.2に調整する工程を含んでもよい。
〔13-15〕上記製造方法の一態様において、前記ゴム部材は、ポリテトラフルオロエチレン系表面加工されたゴム部材である。
〔13-16〕上記製造方法の一態様において、前記ゴム部材又はポリテトラフルオロエチレン系樹脂で表面加工されたゴム部材が、容器のキャップ及び/若しくはガスケットに
使用されている。
〔14-1〕ビタミンD化合物含有医薬組成物に、以下の式:
【0050】
【化19】
【0051】
【化20】
【0052】
【化21】
【0053】
の1以上により表される構造を部分構造として有し、且つラジカル消去活性を有する少なくとも1つの化合物を添加することを含む、当該医薬組成物においてビタミンD化合物の
異性体不純物の生成を抑制する方法、ここで、該医薬組成物はゴム部材を含む容器に封入
されている。
〔14-2〕上記ビタミンD化合物の異性体不純物の生成を抑制する方法の一態様において、前記ビタミンD化合物が、カルシトリオール又はマキサカルシトールである。
〔14-3〕上記ビタミンD化合物の異性体不純物の生成を抑制する方法の一態様において、前記ビタミンD化合物が、マキサカルシトールである。
〔14-4〕上記ビタミンD化合物の異性体不純物の生成を抑制する方法の一態様において、前記ビタミンD化合物が、カルシトリオールである。
〔14-5〕上記ビタミンD化合物の異性体不純物の生成を抑制する方法の一態様において、前記添加物が、
(b-1)ピリドキシン、ピリドキサミン、ピリドキサール、およびそれらの炭素数14~20の脂肪酸またはリン酸とのモノ、ジ、およびトリエステル、およびそれらの塩;
(b-2)トリプトファン、およびそのアミノ基が炭素数1~4の脂肪酸アミドに変換された誘導体、およびそれらの塩;および
(b-3)カルニチン、およびその炭素数1~20の脂肪酸とのエステル、およびそれらの塩或はそれらのいずれかの水和物から1つ以上選ばれる。
〔14-6〕上記ビタミンD化合物の異性体不純物の生成を抑制する方法の一態様において、前記添加物が、ピリドキシン塩酸塩、N-アセチル-DL-トリプトファン又はその塩、L-カルニチンから1つ以上選ばれる。
〔14-7〕上記ビタミンD化合物の異性体不純物の生成を抑制する方法の一態様において、前記添加物が、N-アセチル-L-トリプトファンである。
〔14-8〕上記ビタミンD化合物の異性体不純物の生成を抑制する方法の一態様において、前記少なくとも1つの化合物が、製剤1mL当たり0.001~10mg、0.01~5mg、0.01~3mg
、0.1~10mM、又は1~10mM添加される。
〔14-9〕上記ビタミンD化合物の異性体不純物の生成を抑制する方法の一態様において、dl-α-トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、アスコルビン酸又はその塩から選ばれる抗酸化剤を、組成物に添加する工程を更に含む。
〔14-10〕上記ビタミンD化合物の異性体不純物の生成を抑制する方法の一態様において、前記抗酸化剤は、製剤1mL当たり0.001~10 mg、0.001~1 mg、0.01~10 mM、又は0.01~1 mM添加される。
〔14-11〕上記ビタミンD化合物の異性体不純物の生成を抑制する方法の一態様において、更に、アスコルビン酸又はその塩が、製剤に添加されてもよい。
〔14-12〕上記ビタミンD化合物の異性体不純物の生成を抑制する方法は、製剤のpHを7.5~8.5に調整する工程を含んでもよい。
〔14-13〕上記ビタミンD化合物の異性体不純物の生成を抑制する方法は、製剤のpHを7.8~8.2に調整する工程を含んでもよい。
〔14-14〕上記ビタミンD化合物の異性体不純物の生成を抑制する方法の一態様において、前記ゴム部材は、ポリテトラフルオロエチレン系表面加工されたゴム部材である。〔14-15〕上記ビタミンD化合物の異性体不純物の生成を抑制する方法の一態様において、前記ゴム部材又はポリテトラフルオロエチレン系樹脂で表面加工されたゴム部材が、容器のキャップ及び/又はガスケットに使用されている。
〔15〕ゴム部材を含む容器に封入されたビタミンD化合物含有医薬組成物の安定化のための、以下の式:
【0054】
【化22】
【0055】
【化23】
【0056】
【化24】
【0057】
の1以上により表される構造を部分構造として有し、且つラジカル消去活性を有する少なくとも1つの化合物の使用。
〔16〕(a)マキサカルシトール又はカルシトリオール;(b)N-アセチルトリプトファン又はピリドキシン;及び(c)ポリソルベート80又はポリソルベート20を含有する水性医薬組成物。
〔17〕更に(C)界面活性剤;及び(D)等張化剤を含む、〔1〕から〔5〕のいずれかに記載の水性医薬組成物。
〔18〕二次性副甲状腺機能亢進症治療水性医薬組成物であって、(a)マキサカルシト
ール又はカルシトリオール;(b)N-アセチルトリプトファン又はピリドキシン;及び
(c)ポリソルベート80又はポリソルベート20
を含有する前記組成物。
〔19〕前記(a)がマキサカルシトールである、〔18〕記載の水性医薬組成物。
〔20〕前記(a)がカルシトリオールである、〔18〕記載の水性医薬組成物。
〔21〕前記(b)がN-アセチルトリプトファンである、〔18〕から〔20〕のいず
れかに記載の水性医薬組成物。
〔22〕前記(b)がピリドキシンである、〔18〕から〔20〕のいずれかに記載の水
性医薬組成物。
〔23〕前記(a)を組成物1mL当たり0.1~100μg、0.1~50μg、又は0.2~20μg含有す
る、〔18〕から〔22〕のいずれかに記載の水性医薬組成物。
〔24〕前記(b)を組成物1mL当たり0.001~10mg、0.01~5mg、0.01~3mg、0.1~10mM、又は1~10mM含有する〔18〕から〔22〕のいずれかに記載の水性医薬組成物。
〔25〕上記の水性医薬組成物又は製剤が、ゴム製のキャップ及び/又はガスケットを有
するシリンジに封入されたプレフィルドシリンジ製剤。
〔26〕上記の水性医薬組成物又は製剤は、実質的にエデト酸ナトリウムを含有しないことができる。
〔27〕ビタミンD化合物含有医薬製剤に、
(b-1)ピリドキシン、ピリドキサミン、ピリドキサール、およびそれらの炭素数14~20の脂肪酸またはリン酸とのモノ、ジ、およびトリエステル、およびそれらの塩;
(b-2)トリプトファン、およびそのアミノ基が炭素数1~4の脂肪酸アミドに変換された誘導体、およびそれらの塩;および
(b-3)カルニチン、およびその炭素数1~20の脂肪酸とのエステル、およびそれらの塩或はそれらのいずれかの水和物
からなる群から選択される少なくとも1つの添加物を加えること、当該添加物を加えた製
剤をブチルゴム部材を含む容器に充填すること、及び当該容器に充填された状態で製剤を保存することを含む、当該容器中の製剤においてビタミンD化合物の異性体不純物の生成を抑制する方法。
〔28〕60℃遮光条件下で1週間保存後、製剤中のビタミンD化合物残存率が93%以上である、〔27〕の方法。
〔29〕60℃遮光条件下で1週間保存後、製剤中の異性体不純物生成率が1%以下である、〔27〕又は〔28〕の方法。
〔30〕前記ビタミンD化合物の異性体不純物が、実施例記載の条件で逆相HPLC測定を実施して得られるマキサカルシトールの構造異性体である類縁体I、II、IV及びVである、あるいはこれらの類縁体に相当するビタミンD化合物の構造異性体(但しプレビタミンD体
は除く)である、上記組成物又は方法。
【発明の効果】
【0058】
ビタミンD化合物を有効成分とする水性医薬組成物において、ビタミンD化合物を損失すること無く、同時に1種以上の異性体不純物の生成を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】ビタミンD化合物の異性体を示す、HPLC測定結果の代表例である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下、本開示について更に、詳しく説明する。
1.ビタミンD化合物
本開示で使用されるビタミンD化合物は、活性型ビタミンD3とその誘導体が含まれる。例として、特に限定されないが、活性型ビタミンD3としてはカルシトリオール(1,25(OH)2D3)等、活性型ビタミンD3誘導体としてはマキサカルシトール等が挙げられ、好ましくはマキサカルシトールが挙げられる。ここで、カルシトリオールは、(5Z,7E)-9,10-セコ-5,7,10(19)-コレスタトリエン-1α,3β,25-トリオール [(5Z,7E)-9,10-seco-5,7,10(19)-cholestatriene-1α,3β,25-triol]で表され、マキサカルシトールは、(+)‐(5Z, 7E)‐(1S, 3R, 20S)‐20‐(3‐ヒドロキシ‐3‐メチルブチルオキシ)‐9, 10‐セコプレグナ‐5, 7, 10(19)‐トリエン‐1, 3‐ジオール [(+)‐(5Z, 7E)‐(1S, 3R, 20S)‐20‐(3‐Hydroxy‐3‐methylbutyloxy)‐9, 10‐secopregna‐5, 7, 10(19)‐triene‐1, 3‐diol]で表される。なお、活性型ビタミンD3及びその誘導体のそれぞれには、薬学的に許容される塩(アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等)、及び水和物又は溶媒和物(アルコール溶媒和物等)が包含される。多くの場合、活性型ビタミンD3とその誘導体は公知物質であり、市販品を購入するか、あるいは公知の方法で製造することにより、入手できる。例えば、カルシトリオール等は、日本マイクロバイオファーマ社等から購入することが可能である。また、マキサカルシトールは、例えばOrganic Process Research & Development 2005年、9巻、278~287頁に記載された方法に従い、得ることができる。
【0061】
非限定的な一実施態様において、本開示の水性医薬組成物中のビタミンD化合物の含有
量は、例えば、組成物1mL当たり0.1~100μg、0.1~50μg、0.1~30μg、0.2~20μg、0.3~20μg、0.5~50μg、0.5~10μg、1.0~20μg等の中から選択してよい。
【0062】
2.ラジカル消去活性を有する化合物
本開示は、ビタミンD化合物を有効成分とする医薬製剤のための新たな有用な添加剤を提供する(本明細書において、以後、「本発明の添加剤」と称することもある)。具体的に、本発明者らは、(1)ピリドキシン等のピリジン誘導体、(2)インドール誘導体、(3)カルニチン誘導体である水溶性化合物が、ビタミンD化合物水溶液製剤中で、ビタミンD化合物そのものと反応することなく、薬剤容器のゴム部材への接触に由来する溶出物によるビタミンD化合物の異性体不純物生成に対する抑制効果を発揮することを見出した。理論に拘束されるものではないが、本発明者らは、これらの水溶性化合物群の特徴構造に起因するラジカル消去活性が、前述の効果に関与するものと仮説をたてている。
【0063】
本発明の一態様において、本発明の添加剤は、特定の部分構造を有し、且つラジカル消去活性を有する化合物群から選択される。そのような特定の部分構造は、以下の式(ia)若しくは(ib)、(ii)又は(iii)により表される構造から選択される。
【0064】
【化25】
【0065】
【化26】
【0066】
【化27】
【0067】
本発明の添加物は、これらの構造の1つ又はそれ以上を部分構造として分子内に有することができる。式(ia)、(ib)、(ii)又は(iii)の1つ又はそれ以上により表され
る構造を部分構造として有する化合物とは、これらの部分構造に、様々な置換基が置換した化合物や、更に別の構造が結合した化合物を含む。
【0068】
更に、これらの化合物は薬学的に許容される塩又はエステルの形態であってもよい。アミノ基を有する化合物は、アミドの形態となっていてもよい。塩の形態は、上記化合物と無機酸又は有機酸(例えば、塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸、酒石酸、グリコール酸、フマル酸、コハク酸、パルミチン酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、マレイン酸、ホスホン酸、スルホン酸、メタンスルホン酸、スルファミン酸、カプリル酸等)との酸付加塩、又は塩基性の塩(例えばナトリウム塩又はカリウム塩のようなアルカリ金属塩、例えばカルシウム塩又はマグネシウム塩のようなアルカリ土類金属塩、例えばアンモニウム塩、又は、例えばメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピペリジン、モルホリン、N-メチルピペリジン、N-エチルピペリジン、ジベンジルアミン、トリス-(2-ヒドロキシエチル)アミン、又は塩基性アミノ酸のような有機塩基との塩等)であることができる。更に、ピリジン誘導体、インドール誘導体、カルニチン誘導体が属する技術分野で慣用される他の酸又は塩基との塩が挙げられる。
【0069】
本発明の添加物の薬学的に許容されるエステルは、分子内の任意のヒドロキシル基又はカルボキシ基において形成することができる。例えば、リン酸エステル、炭酸アルキルエステル、カルバミン酸エステル、α-アシルオキシアルキルエーテル(例えばアセトキシメトキシ、2,2-ジメチルプロピオニルオキシメトキシ等)、C1-6アルコキシメチルエステル(例えばメトキシメチル)、C1-6アルカノイルオキシメチルエステル(例えばピバロイルオキシメチル、フタリジルエステル)、C3-8シクロアルコキシカルボニルオキシC1-6アルキルエステル(例えば1-シクロヘキシルカルボニルオキシエチル)、1,3-ジオキソレン-2-オニルメチルエステル(例えば5-メチル-1,3-ジオキソレン-2-オニルメチル)、C1-6アルコキシカルボニルオキシエチルエステル(例えば1-メトキシカルボニルオキシエチル)等が挙げられる。
【0070】
本発明の添加剤の具体例として、ピリドキシン、ピリドキサミン、ピリドキサール、トリプトファン、カルニチン又はそれらのいずれかの塩若しくはエステル若しくはアミド、或はそれらのいずれかの溶媒和物(水和物又はそれ以外の両方を含む)が挙げられる。これらの添加物の部分構造に関し、ピリドキシンと同様のラジカルの発生について、(i)の
部分構造が重要であることは知られている(J. Phys. Chem. B, Vol. 113, No. 29, 2009)。また、(ii)の部分構造については、N-アセチルトリプトファンがラジカル消去剤として知られていること、同様にラジカル消去剤として知られるL-システインでは効果が得られなかったことから特定される(WO2010/038771)。また、(iii)の部分構造はカルニチンの構造そのものであり、ラジカル消去活性を示す(Ilhami Gulcin. Life Sciences, 78, 803-811,2006.)。
【0071】
ラジカル消去活性は、以下のように測定することができる。例えば、ラジカルを放出す
る1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジル(DPPH)の517nmの吸収を、試験化合物
を加え、吸収の減少を観察することによって測定することができる。また、強力なラジカル消去剤である(R)-(+)-6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボン酸(Trolox:トロロックス)エタノール溶液の値を100%のコントロールとすることができる。計算式は次の通りである。
【0072】
ラジカル消去活性(%)= (ΔDPPH -ΔSample ) / (ΔDPPH -ΔTrolox)× 100
上記の計算において、ラジカル消去活性が10%以上である場合に、本発明の添加剤として用いた場合に効果的であるが、20%以上が好ましく、40%以上がより好ましく、70%以上が更に好ましい。
【0073】
別の態様として、本発明の添加剤は、以下の(iv)から(vi)の一般式で表現される化合物又はその塩から選択されてもよい。
【0074】
【化28】
【0075】
[式中、X、Yは、独立に、ホルミル、-CHR11OR12、および-CHR13NR1415から選択され;
、R11およびR12は、独立に、水素原子、C1-6アルキル、(C1-20アルキル)カルボニル、および-P(O)(OH)から選択され;
13、R14およびR15は、独立に、水素原子、C1-6アルキル、および(C1-20アルキル)カルボニルから選択される]
で表される化合物、又はその塩;
【0076】
【化29】
【0077】
[式中、Rは、水素原子又はC1-6アルキルであり;
、R、およびRは、独立に、水素原子、C1-6アルキルおよび(C1-6アルキル)カルボニルから選択される]
で表される化合物、又はその塩;及び
【0078】
【化30】
【0079】
[式中、Rは、水素原子、-O-、C1-6アルキル、(C1-20アルキル)カルボ
ニル、-P(O)(OH)および-P(O)(OH)(O-)から選択され;
は、-O-、-OHおよびC1-6アルコキシから選択され;
はカウンターアニオンであるか、存在しない]
で表される化合物、又はその塩。
【0080】
本明細書において「C1-6アルキル」とは、炭素数1~6の直鎖状、分岐鎖状、環状または部分的に環状のアルキル基を意味し、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、s-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、3-メチルブチル、2-メチルブチル、1-メチルブチル、1-エチルプロピル、n-ヘキシル、4-メチルペンチル、3-メチルペンチル、2-メチルペンチル、1-メチルペンチル、3-エチルブチル、および2-エチルブチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、およびシクロプロピルメチルなどが含まれ、例えば、C1-4アルキルおよびC1-3アルキルなども含まれる。また本明細書において「C1-6アルキル」は、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピルおよびシクロプロピルを意味する。
【0081】
本明細書において「(C1-20アルキル)カルボニル」とは、アルキル部分として炭素数1~20の直鎖状、分岐鎖状、環状または部分的に環状のアルキル基を有するアルキルカルボニル基[(C1-20アルキル)CO-基]を意味し、例えば、アセチル、プロピオニルなどの(C1-6アルキル)カルボニル基(ここで、C1-6アルキル基は既に定義した通り)のほか、炭素数5~12の中鎖脂肪酸由来のアルキルカルボニル基、炭素数12以上の長鎖脂肪酸由来のアルキルカルボニル基(例えば、パルミトイル基)であってもよい。
【0082】
本明細書において「C1-6アルコキシ」とは、アルキル部分として既に定義した炭素数1~6のアルキル基を有するアルキルオキシ基[-O-(C1-6アルキル)]を意味し、例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、s-ブトキシ、i-ブトキシ、t-ブトキシ、n-ペントキシ、3-メチルブトキシ、2-メチルブトキシ、1-メチルブトキシ、1-エチルプロポキシ、n-ヘキシルオキシ、4-メチルペントキシ、3-メチルペントキシ、2-メチルペントキシ、1-メチルペントキシ、3-エチルブトキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、シクロプロピルメチルオキシなどが含まれ、例えば、C1-4アルコキシおよびC1-3アルコキシなども含まれる。
【0083】
本明細書において「(C1-6アルキル)カルボニル」とは、アルキル部分として既に定義したC1-6アルキル基を有するアルキルカルボニル基を意味し、例えばメチルカルボニル(アセチル)、エチルカルボニル、tert-ブチルカルボニルの他、(C1-3アルキル)カルボニルなどが含まれる。
【0084】
本明細書において「-O-」は一価の負電荷を有する酸素原子を意味し、これは分子内
で双性イオンを形成していても、別途カウンターイオンを有していてもよい。
本明細書においてQ-はカウンターアニオンを意味し、医薬品の添加物などで利用され
るカウンターアニオンであれば特に限定されない。複数のカチオンと塩を形成する高アニオンであってもよく、分子内で双性イオンが形成される場合には不存在で合ってもよい。
【0085】
本発明の添加剤の具体例として、以下から選択される少なくとも一つの化合物が挙げられる:
(1)ピリドキシン、ピリドキサミン、ピリドキサール、およびそれらの炭素数14~20の脂肪酸またはリン酸とのモノ、ジ、およびトリエステル、およびそれらの塩;
(2)トリプトファン、およびそのアミノ基が炭素数1~4の脂肪酸アミドに変換された
誘導体、およびそれらの塩;および
(3)カルニチン、およびその炭素数1~20の脂肪酸とのエステル、およびそれらの塩。
【0086】
本発明の添加剤の別の具体的な例は、ピリドキシン、ジパルミチン酸ピリドキシン、トリパルミチン酸ピリドキシン、ジカプリル酸ピリドキシン、リン酸ピリドキシン、ピリドキサミン、ピリドキサール、ピリドキサールモノリン酸エステル、N-アセチル-L-トリプ
トファン、N-アセチル-DL-トリプトファン、L-カルニチン、パルミトイル-DL-カルニチン及びアセチルカルニチン、並びにそれらの塩を含む。
【0087】
上記の化合物は水和物として使用され得る。
いくつかの化学構造を例示する。
ジパルミチン酸ピリドキシン(CAS 635-38-1)
【0088】
【化31】
【0089】
トリパルミチン酸ピリドキシン(CAS 4372-46-7)
【0090】
【化32】
【0091】
リン酸ピリドキシン(C8H12NO6P、異性体3種)
【0092】
【化33】
【0093】
【化34】
【0094】
【化35】
【0095】
N-アセチルトリプトファンについて、アセチル化されているのはアミノ酸のα炭素に結合したアミノ基のNであり、側鎖インドール環のNではない。参考のため、N-アセチル-L-
トリプトファン(CAS 1218-34-4)の化学構造を示す。
【0096】
【化36】
【0097】
非限定的な一実施態様において、本発明の添加剤の具体例として、(1)ピリドキシン塩酸塩、(2)ピリドキシンパルミチン酸エステル(ジ、トリ)、(3)ジカプリル酸ピリドキシン、(4)ピリドキサミン二塩酸塩、(5)ピリドキサミン二塩酸塩一水和物、(6)ピリドキサール塩酸塩、(7)ピリドキサールリン酸エステル水和物、(8)N-アセチル-L-トリプトファン、(9)N-アセチル-DL-トリプトファン、(10)アセチルト
リプトファンナトリウム、(11)L-カルニチン、(12)アセチルカルニチン等が挙げられる。
【0098】
さらに別の非限定的な一実施態様において、本発明の添加剤の具体例として、ピリドキシン塩酸塩、ピリドキシンパルミチン酸エステル、ピリドキサミン二塩酸塩、ピリドキサミン二塩酸塩一水和物、ピリドキサール塩酸塩、ピリドキサールリン酸エステル水和物、N-アセチル-L-トリプトファン、N-アセチル-DL-トリプトファン、アセチルトルプトファ
ンナトリウム、L-カルニチン、アセチルカルニチン等が挙げられる。
【0099】
さらに別の非限定的な一実施態様において、本発明の添加剤の具体例として、ピリドキシン塩酸塩、ジパルミチン酸ピリドキシン、トリパルミチン酸ピリドキシン、ジカプリル酸ピリドキシン、リン酸ピリドキシン、ピリドキサミン二塩酸塩、ピリドキサミン二塩酸塩一水和物、ピリドキサール塩酸塩、ピリドキサールリン酸エステル水和物、N-アセチル-L-トリプトファン、N-アセチル-DL-トリプトファン、N-アセチル-L-トリプトファンナトリウム、L-カルニチン、パルミトイル-DL-カルニチン及びアセチルカルニチン等が挙げられる。
【0100】
本発明の添加剤の使用量は特に限定されないが、例えば、水性医薬組成物1mL当たり0.001~10mg、0.01~5mg、又は0.01~3mg等が挙げられる。また、水性医薬組成物中のモル濃度で0.01~100mM、0.1~50mM、0.1~30mM、0.1~10mM、1~10mM等が挙げられる。あるいは、ビタミンD化合物に対する本発明の添加剤の使用量は、例えば、ビタミンD化合物 1μgに対して0.0001~20mg、0.001~10mg、0.001~6mg等が挙げられる。
【0101】
本発明の添加剤は単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。例えば、上記の化合物を単独、又は組み合わせて、及び場合によっては従来用いられている他のラジカル消去能を有する化合物と組み合わせると共に、配合量を適宜調整して、効果を更に高めることができる。
【0102】
3.溶剤及び溶解補助のための剤
本開示の医薬組成物は、ビタミンD化合物の溶剤としての水性溶媒を含む。本開示の水性
溶媒の例としては、一般に従来から用いられている注射用水、注射用滅菌生理食塩水などが挙げられる。本開示の組成物中の水の量は、通常少なくとも約50~約99%w/wである。
【0103】
更に、一般にビタミンD化合物は水に対する溶解度が低い。したがって、本発明の水性
医薬組成物は、水性溶媒に加えて界面活性剤、及び所望により溶解補助剤を使用することが好ましい。
【0104】
界面活性剤としては、一般的な注射用液体製剤において用いられるものを使用することができ、特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体類、ソルビタン脂肪酸エステル類、グリセリン脂肪酸エステル類、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ショ糖脂肪酸エステル類等が挙げられ、好ましくはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等が挙げられる。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体類は特に限定されるものではないが、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(HCO-60)等が挙げられる。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類は特に限定されるものではないが、例えば、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンオレイン酸エステル(ポリソルベート80)、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.;ポリソルベート20)等が挙げられる。界面活性剤の使用量は特に限定されないが、例えば、医薬組成物1mL当たり0.01~5mg、0.05~2mg、0.1~10mg、0.1~3mg等が挙げられる。あるいは、医薬組成物全体の重量に対して、0.001~0.5重量%、0.005~0.2重量%、0.01~0.3重量%、0.05~1重量%等が挙げられる。
溶解補助剤としては、例えば、エタノール等のアルコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール等が挙げられる。これら溶解補助剤は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができるが、好ましくは無水エタノールが使用される。本発明の水性医薬組成物における、溶解補助剤の含有量は特に限定されないが、例えば、0.01~100μL/mL、0.05~50μL/mL、0.2~10μL/mL、0.5~5μL/mL等が挙げられる。
【0105】
4.投与経路
本開示の医薬組成物について、対象とする投与経路は、適切には非経口、すなわち、例えば動物又は人体に注入することによって使用する。前記経路としては、静脈内投与、筋内投与及び皮下投与が挙げられ、静脈内投与は、例えば、二次性副甲状腺機能亢進症と関連して使用する本開示の組成物に特に適している。
【0106】
しかしながら、関連がある場合にはいつでも、本開示の組成物は、例えば経口投与、局所経路又は経鼻経路のような他の投与経路で使用するのに適している場合がある。前記の場合、当業者は、活性成分の濃度及び組成物中に含まれる他の成分に関してあらゆる必要な調整を行うことができる。
【0107】
本開示の組成物は、通常水溶液として提供される。しかしながら、特定の場合に、例えば局所又は経口経路によって組成物の投与に関連して、本開示の組成物は、溶液又はゲルの形態で提供してもよい液体組成物を含む。
【0108】
5.他の成分
本開示の水性医薬組成物は、ビタミンD化合物、ラジカル消去活性を有する添加物以外に、他の有効成分及び/又は他の添加剤を含有してもよい。
【0109】
本開示の水性医薬組成物を注射剤として使用する場合における他の添加剤としては、一般的な注射用液体製剤において用いられる添加剤を使用することができ、抗酸化剤、pH調整剤、及び等張化剤が好適に使用される。
【0110】
抗酸化剤の例としては、水溶性の抗酸化剤及び脂溶性の抗酸化剤が挙げられる。水溶性の抗酸化剤としては、例えば、アスコルビン酸又はその金属塩、亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム等が挙げられ、脂溶性の抗酸化剤としては、例えば、トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、ノルジヒドログアイアレティック酸、ベンゾトリアゾール、2-メルカプトベンズイミダゾール
等が挙げられる。非限定的な一実施態様において、例えば、トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、アスコルビン酸が挙げられ、好ましくは、トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、アスコルビン酸が挙げられる。抗酸化剤の使用量は特に限定されないが、水性医薬組成物1mL当たり0.001~10mg、0.002~5mg、0.005~0.1mg、0.01~0.05mg、あるいは0.01~10mM、0.01~1mMが
挙げられる。
【0111】
本開示の水性医薬組成物のpHは5.0~9.5、好ましくは7.0~8.5であること
が、人体に対する安全性、液中でのビタミンD化合物の可溶化性及び安定性などの点から
好ましい。更に、ビタミンD化合物の種類により、本開示の水性医薬組成物のpHは、7.5~8.5、7.8~8.2、7.0~7.7等に適宜調整することができる。ビタミンD化合物含有液のpHを前記した範囲に調節するに当たっては、医薬品添加物として使用できる化合物であればいずれも使用でき、例えば、クエン酸、酢酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、プロピオン酸、アジピン酸、グルコン酸、コハク酸、マレイン酸、リンゴ酸などの有機酸、炭酸、硼酸、リン酸、硫酸、塩酸などの無機酸;水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ性化合物などを用いてpH調節を行うことができる。pHを7.5~8.5に調整する場合、典型的には、リン酸水素二ナトリウム及びリン酸二水素カリウムあるいはリン酸二水素ナトリウムを組み合わせて、pH調節剤として用いることができる。
【0112】
等張化剤としては、例えば、塩化ナトリウム等の塩類、ブドウ糖等の糖類等が挙げられる。水溶液製剤において、等張化剤は体液や生理食塩水と同じ浸透圧となるような量で添加すればよい。
【0113】
上記水溶液製剤には、上記の成分以外にも、無痛化剤(ベンジルアルコール、リドカイン、プロカイン等)、防腐剤(パラオキシ安息香酸、クロロブタノール、塩化ベンザルコニウム、チメロサール等)等の他の成分を含有させてもよい。
【0114】
本発明の水性医薬組成物は、所望により薬学的に許容可能な担体又は賦形剤を含むことができる。
【0115】
6.薬剤容器
本開示の水性医薬組成物は容器に充填されていることが好ましい。容器の形状は特に限定されないが、例えば、バイアル、シリンジ、バック、ボトル等が挙げられ、好ましくはシリンジが挙げられる。このシリンジの形態は特に限定されるものではないが、例えば、液体製剤が予め充填されたプレフィルドシリンジの形態が挙げられる。容器の材質は特に限定されるものではないが、例えば、ガラス容器又はプラスチック容器が挙げられる。そのような容器は、キャップ及び/又はガスケットを有することができる。
【0116】
キャップ及び/又はガスケットは、例えば、熱可塑性エラストマー、ブチルゴム、ハロ
ゲン化ブチルゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム等が挙げられる。一般的な材料は、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム等のゴムである。
【0117】
本開示中の「ゴム部材を含む容器」とは、上述の容器に、ゴム製の部材が装着されたものを指す。その具体的な一態様は、ゴム部材が、キャップ及び/又はガスケット(プランジャーストッパー)に使用されている容器である。
【0118】
また、特に限定されるものではないが、キャップ及び/又はガスケットはフッ素系樹脂で表面加工されていてもよい。表面加工に使用されるフッ素系樹脂は特に限定されるものではないが、例えば、テフロン(登録商標)等が挙げられ、より具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン/エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン/エチレン共重
合体(ECTFE)等が挙げられ、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレ
ン/エチレン共重合体(ETFE)等が挙げられる。本開示の水性医薬組成物が容器に充填され、キャップ及び/又はガスケットと直接接触し得る場合に、本開示の効果が顕著である。
【0119】
7.ビタミンD化合物含有溶液の調製
本開示の水性医薬組成物の調製法は特に制限されず、液中に含まれるビタミンD化合物やその他の成分の分解や変質を生じない方法であればいずれの方法で調製してもよい。その代表例としては、以下の方法を挙げることができる。
【0120】
先ず界面活性剤中にビタミンD化合物を、必要に応じて加温しながら溶解する。また、微量のエタノールにビタミンD化合物を溶解し、該溶液を界面活性剤溶液に添加し撹拌してもよい。この時、不活性ガス雰囲気下で実施することが好適である。
【0121】
次いで、注射用蒸留水に前記のビタミンD化合物の界面活性剤溶液を加え、同時に本発明の添加剤、及び所望の抗酸化剤、等張化剤、防腐剤、緩衝剤等を加え、不活性ガス雰囲気下に撹拌し溶解する。
【0122】
次いで、得られた溶液を更に注射用蒸留水で所望の容積に調製し、この溶液を不活性ガス雰囲気下でろ過又は無菌ろ過し、所望の量を無菌・乾燥容器に充填し、必要に応じて加熱滅菌を施すことにより、本開示の水性医薬組成物を得る。なお、必要に応じて注射用蒸留水で所望の容積に調製する前、又は注射用蒸留水で所望の容積に調製した後に、溶液を所望のpHに調節してもよい。更に使用される注射用蒸留水は、予め脱気、窒素バブリング、沸騰処理等を施し、溶存酸素量を低減させることが好ましい。
【0123】
8.使用形態
本開示の水性医薬組成物の使用形態は特に限定されないが、例えば、本開示の水性医薬組成物をそのまま使用、本開示の水性医薬組成物を希釈して使用、又は本開示の水性医薬組成物の凍結乾燥品を水等に再溶解(すなわち再構成)したものを使用してもよい。本開示の水性医薬組成物は、例えば、治療において用いられる注射用製剤として使用することが好ましい。治療の対象となる疾患は特に限定されないが、例えば、二次性副甲状腺機能亢進症等が挙げられる。本開示の水性医薬組成物を患者に投与する際には、ビタミンD化合
物として1回当たり0.1~30μgとなるように投与すること、又は0.5~20μgとなるように
投与することが挙げられる。
【0124】
9.ビタミンD化合物の異性体不純物
本発明の添加剤により、本開示の水性医薬組成物においては、ビタミンD化合物を損失すること無く、同時に1種以上の異性体不純物の生成を抑制することができる。
【0125】
60℃遮光条件下で1週間保存後、製剤中のビタミンD化合物残存率が93%以上であることが好ましい。更に、60℃遮光条件下で1週間保存後、製剤中の異性体不純物生成率が1%以下であることが好ましい。
【0126】
ビタミンD化合物の異性体不純物の具体例は、実施例記載の条件で逆相HPLC測定を実施して見出されるマキサカルシトールの構造異性体(類縁体)、あるいは当該マキサカルシトールの構造異性体に相当する別のビタミンD化合物の構造異性体(但しプレビタミンD体は除く)である。
【0127】
一態様において、マキサカルシトールの異性体不純物の代表例は、類縁体IVである。別の態様において、マキサカルシトールの異性体不純物の代表例は、類縁体II及びIVである。更に別の態様において、マキサカルシトールの異性体不純物の代表例は、類縁体I、II、IV及びVである。
【実施例
【0128】
以下に、実施例に基づいて本開示をより詳細に説明するが、本開示はこれら実施例に限
定されるものではない。
マキサカルシトール残存率の測定
各実施例において、以下の条件で逆相HPLC測定を実施し、保存前後のマキサカルシトール濃度を算出した。充填直後の製剤に含まれていたマキサカルシトールの含有量に対する割合(残存率:%)を求めた。
【0129】
逆相HPLC
液体クロマトグラフィー装置:Waters製「e2695」
移動相:25mmol/L リン酸緩衝液/MeCN/THF混液 (65:35:5)
流速:0.7 mL/min
検出波長:265 nm
使用カラム:Kinetex 2.6μm C18 100A (phenomenex)
カラム温度:25°C
サンプル温度:10°C
【0130】
未知不純物の同定
ビタミンD化合物の異性体を「類縁体I, II, III, IV, V」とし、これらのHPLC測定結果から、 RRT(Relative Retention Time:相対保持時間)を算出した(表1、図1)。
【0131】
【表1-1】
【0132】
取得したMSスペクトル(全てのデータは開示しない)より、いずれもメインピークであるマキサカルシトール(C26H42O4)と分子量の等しい構造異性体であると考えられる(表1-2)。
【0133】
【表1-2】
【0134】
類縁体IIは、既知不純物である9-ヒドロキシイソ体であり(特許文献6)、類縁体III
は、プレビタミンD体である。ビタミンD類は溶液中では温度及び時間に依存して可逆的異性化反応が起こり、プレビタミンD体との平衡混合物となることが知られている。
【0135】
異性体不純物生成率の測定
類縁体Iの割合 (%) =A類I / Atotal× 100
類縁体IIの割合 (%) =A類II / Atotal× 100
類縁体IIIの割合 (%) =A類III / Atotal× 100
類縁体IVの割合 (%) =A類IV / Atotal× 100
類縁体Vの割合 (%) =A類V / Atotal× 100

AMaxa: ピーク面積値 (Maxacalcitol)
A類I : ピーク面積値 (類縁体I)
A類II : ピーク面積値 (類縁体II) / 1.1
A類III : ピーク面積値 (類縁体III) / 0.5
A類IV : ピーク面積値 (類縁体IV)
A類V : ピーク面積値 (類縁体V)
Aothers: ピーク面積値 (その他)
Atotal: AMaxa + A類I +A類II +A類III + A類IV + A類V + AOthers
【0136】
実施例1:ゴム栓からの溶出物がマキサカルシトール残存率と異性体不純物生成率に与える影響(1)
リン酸水素二ナトリウム十二水和物 57.6 g、リン酸二水素カリウム 1.32 g、塩化ナトリウム 15 gをそれぞれ秤取しメスシリンダーに投入した。本メスシリンダーに2700 mLの注射用蒸留水を加え、撹拌して原料を溶解させた。その後、注射用蒸留水にて全量が3000
mLとなるように液量を調整し、再度撹拌を実施してプラセボ溶液を得た。ポリソルベー
ト20 (SEPPIC製) 0.25 gを秤量し、新しいメスシリンダーに投入した。本メスシリンダー
に事前に調製した2500 mLのプラセボ溶液を投入し、撹拌を実施して均一な0.1 mg/mL ポ
リソルベート20含有プラセボ溶液を調製した。ガラス容器に本プラセボ溶液100 mL及びポリテトラフルオロエチレン (PTFE) で天面ラミネート処理された塩素化ブチルゴム製のプランジャーストッパー (D21-7H: 大協精工株式会社) 100個を加え、60°C恒温槽にて遮光条件下で1週間保管することで、ゴム栓抽出液を得た。
【0137】
本抽出液 (ゴム栓抽出液割合: 100%) について、0.1 mg/mL ポリソルベート20含有プラセボ溶液を用いて5倍希釈 (ゴム栓抽出液割合: 20%)、10倍希釈 (ゴム栓抽出液割合: 10%)、20倍希釈 (ゴム栓抽出液割合: 5%)、100倍希釈 (ゴム栓抽出液割合: 1%) を行い、ゴム栓抽出液割合が異なる5種溶液を調製した。これら溶液のpH調整後にマキサカルシトールを最終含量 2.5 g/mLとなるように添加することで、表2に示す薬液(処方1-1から1-5)を得た。これらの薬液をそれぞれ褐色バイアルに1 mL充填した。
【0138】
【表2】
【0139】
上述の5種製剤を、60°C恒温槽にて遮光条件下で1週間保存した。保存開始前及び1週間保存後にマキサカルシトール濃度を逆相HPLCにより測定し、保存開始前に対する1週間保
存のメインピーク残存率 (%) を算出した。5種の薬液の全てで、類縁体IVのピークが認められた。これは、ゴム栓抽出液とマキサカルシトール薬液とを混合したことによる生成物であると推察された。本結果を以下表3に示す。
【0140】
【表3】
【0141】
ゴム栓抽出液濃度の最も高い処方1-1においては、大幅なメインピーク残存率の減少及
び類縁体IV量の増加が認められた。一方、溶液中に含有するゴム栓抽出物濃度の低下 (100%→20%→10%→5%→1%) に伴い、メインピーク残存率の上昇及び類縁体IV生成量の減少が確認された。
本結果より、ゴム栓からの溶出物がビタミンD化合物の安定性に影響を及ぼしていることが明らかとなった。
【0142】
実施例2:ゴム部材を含むプレフィルドシリンジ中の薬液における各種ラジカル消去剤添加の影響
リン酸水素二ナトリウム十二水和物 38.4 g、リン酸二水素カリウム 0.88 g、塩化ナトリウム 10 g、ポリソルベート20 (SEPPIC製) 0.2 gをそれぞれ秤取しメスシリンダーに投入した。本メスシリンダーに1600 mLの注射用蒸留水を加え、撹拌して溶解させた。その後
、注射用蒸留水にて全量が2000 mLとなるように液量を調整し、再度撹拌した。本溶液を40 mLずつ分取後に規定量の各ラジカル消去剤を加え、1 M 水酸化ナトリウムを用いてpHを7.80-8.20に調整した。その後、マキサカルシトールを最終含量 2.5 g/mLとなるように添加し、表4に示す処方の薬液(処方2-2から2-7)を得た。
【0143】
ブチルゴム製チップキャップ (West) 付ガラスバレル (Hypak SCF 1 mL: BD) に上記処方の薬液それぞれ1 mLを充填後、ポリテトラフルオロエチレン (PTFE) で天面ラミネート処理された塩素化ブチルゴム製のプランジャーストッパー (D21-7H: 大協精工株式会社)
で打栓し、プレフィルドシリンジ製剤を得た。
【0144】
【表4】
【0145】
処方2-1から2-7の製剤について、チップキャップを上向きにして60°C恒温槽にて
遮光条件下で1週間保存した。保存開始前及び1週間保存後にマキサカルシトール濃度を逆相HPLCにより測定し、保存開始前に対する1週間保存後のメインピーク残存率 (%) を算出した。本結果を以下表5に示す。
【0146】
【表5】
【0147】
上市品であるオキサロール(登録商標)注の処方(ラジカル消去剤不含)をプレフィルドシリンジに充填した処方2-1においては、類縁体IVのピークが認められた。これは、プ
レフィルドシリンジに充填した際に接液するゴム栓あるいはそこから薬液への溶出物と活性型ビタミンD3との反応に由来する生成物であると推察された。
【0148】
しかしながら、ピリドキシン塩酸塩 (処方2-2)又はN-アセチル-DL-トリプトファン (処方2-3)又はL-カルニチン (処方2-4) を適当量添加することにより、マキサカルシトール
の含量を維持しつつ、類縁体IV量の低下が可能であることが明らかとなった。
【0149】
一方、トロロックス (処方2-5)の添加では、類縁体IVの生成は抑制したものの、マキサカルシトール含量の大幅な低下が認められた。したがって、単にラジカル消去活性の高さのみがビタミンD化合物の安定化に貢献するとはいえない。
【0150】
また、効果の認められたN-アセチル-DL-トリプトファン (処方2-3) と同じアミノ酸で
あるDL-アスパラギン酸 (処方2-6) 及びN-アセチル-L-システイン (処方2-7) の添加では、逆にマキサカルシトール含量の低下及び類縁体IV量の増加が認められた。
【0151】
アミノ酸の反応性は自身の持つ側鎖に大きく依存していることが広く知られている。これらの結果より、処方2-3で示すN-アセチル-DL-トリプトファンの効果は分子内のインド
ール環の寄与によるものと考えられた。
【0152】
また、マキサカルシトール残存率及び類縁体IV量の比較から、ゴム栓抽出割合5% (×20) 溶液 (処方1-4、実施例1) はプレフィルドシリンジに充填した処方2-1と同等量のゴム栓からの溶出物を薬液中に含んでいるものと考えられた。従って、本ゴム栓抽出割合を以後の評価系として設定した。
【0153】
実施例3:各種添加剤の影響
リン酸水素二ナトリウム十二水和物 76.8 g、リン酸二水素カリウム 1.76 g、塩化ナトリウム 20 gをそれぞれ秤取しメスシリンダーに投入した。本メスシリンダーに3800 mLの注射用蒸留水を加え、撹拌して原料を溶解させた。その後、注射用蒸留水にて全量が4000 mLとなるように液量を調整し、再度撹拌を実施してプラセボ溶液を得た。ポリソルベート80 (SEPPIC製) 5.0 gを秤量し、新しいメスシリンダーに投入した。本メスシリンダーに事前に調製した2500 mLのプラセボ溶液を投入し、撹拌を実施して均一な2 mg/mL ポリソルベート80含有プラセボ溶液を調製した。ガラス容器に本プラセボ溶液100 mL及びポリテトラフルオロエチレン (PTFE) で天面ラミネート処理された塩素化ブチルゴム製のプランジャーストッパー (D21-7H: 大協精工株式会社) 100個を加え、60°C恒温槽にて遮光条件下で1週間保管することで、ゴム栓抽出液を得た。
【0154】
本抽出液について、2 mg/mL ポリソルベート80含有プラセボ溶液を用いて20倍希釈 (ゴム栓抽出液割合: 5%)を行った。これらの溶液に規定量の添加剤を加えpH調整後に、マキ
サカルシトールを最終含量 2.5 g/mLとなるように添加することで、表6に示す処方3-1から処方3-4の薬液を得た。これらの薬液をそれぞれ褐色バイアルに1 mL充填した。
【0155】
【表6】
【0156】
上述の4種製剤(処方3-1から3-4)について、60°C恒温槽にて遮光条件下で1週間保存
した。保存開始前及び1週間保存後にマキサカルシトール濃度を逆相HPLCにより測定し、
保存開始前に対する1週間保存のマキサカルシトール残存率 (%) を算出した。本結果を以下表7に示す。
【0157】
【表7】
【0158】
N-アセチル-DL-トリプトファン (処方3-2)又はピリドキシン塩酸塩(処方3-3)を適当量
添加することにより、類縁体IV含量を0.15%以下まで低減できることが明らかとなった。
また、N-アセチル-DL-トリプトファンの添加により、9-ヒドロキシイソ体(類縁体II)の生成についても抑制できることが示された。
【0159】
一方、活性型ビタミンD3の安定化作用が報告されているエデト酸ナトリウム(特許文献6)を検討したところ(処方3-1)、類縁体IV量は検出限界以下レベルまで低減されたの
に対し、マキサカルシトール残存率の低下が認められた。また、エデト酸ナトリウム添加
により、既知不純物である9-ヒドロキシイソ体(類縁体II)の生成量も増加することが明らかとなった。
【0160】
従って、ゴム栓からの溶出物が活性型ビタミンD3に及ぼす影響を抑制するためには、ピリドキシン塩酸塩、又はN-アセチル-DL-トリプトファンに代表されるラジカル消去剤の添加が最も有効であると考えられる。
図1