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特許7372962パラボラアンテナ、音源表示装置および音源表示方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】パラボラアンテナ、音源表示装置および音源表示方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 3/803 20060101AFI20231025BHJP
   G01S 3/84 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
G01S3/803
G01S3/84
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021167350
(22)【出願日】2021-10-12
(65)【公開番号】P2022066168
(43)【公開日】2022-04-28
【審査請求日】2022-06-24
(31)【優先権主張番号】P 2020174512
(32)【優先日】2020-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390000011
【氏名又は名称】JFEアドバンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】竹内 悠人
(72)【発明者】
【氏名】永野 聡
(72)【発明者】
【氏名】森 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】▲桑▼田 泰範
(72)【発明者】
【氏名】末長 清佳
(72)【発明者】
【氏名】小田 将広
(72)【発明者】
【氏名】藤原 信悟
(72)【発明者】
【氏名】中田 教雄
【審査官】▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0307464(US,A1)
【文献】特公昭58-008637(JP,B2)
【文献】特公平04-035716(JP,B2)
【文献】特開2006-098271(JP,A)
【文献】特開2018-148340(JP,A)
【文献】特開昭63-173404(JP,A)
【文献】登録実用新案第3083476(JP,U)
【文献】米国特許第05869764(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 1/72 - G01S 1/82
G01S 3/80 - G01S 3/86
G01S 5/18 - G01S 5/30
G01S 7/52 - G01S 7/64
G01S 15/00 - G01S 15/96
H04R 1/00 - H04R 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射面と、前記反射面に対向して配置された複数のマイクロフォンと、を有し、
前記反射面は、特定の方向にある音源からの音波を特定の位置に集音する複数の放物曲面を含み、
前記複数の放物曲面は、前記特定の方向および前記特定の位置がそれぞれ異なり、
前記複数のマイクロフォンは、前記特定の位置にそれぞれ設けられ、
複数の前記放物曲面は同心円状に配置される、パラボラアンテナ。
【請求項2】
反射面と、前記反射面に対向して配置された複数のマイクロフォンと、を有し、
前記反射面は、特定の方向にある音源からの音波を特定の位置に集音する複数の放物曲面を含み、
前記複数の放物曲面は、前記特定の方向および前記特定の位置がそれぞれ異なり、
前記複数のマイクロフォンは、前記特定の位置にそれぞれ設けられ、
一つの前記反射面の中に、複数の前記放物曲面が配置されている、パラボラアンテナ。
【請求項3】
前記反射面は、3つ以上5つ以下の異なる特定の方向の音源からの音波をそれぞれ集音する3つ以上5つ以下の前記放物曲面を含む、請求項1または請求項2に記載のパラボラアンテナ。
【請求項4】
複数の前記放物曲面は同心円状に配置される、請求項2に記載のパラボラアンテナ。
【請求項5】
前記複数の同心円状に配置される放物曲面のうち周方向に配置される放物曲面は、中心に配置される放物曲面の軸と、周方向に配置される放物曲面の軸とが交わる方向に配置される、請求項1または4に記載のパラボラアンテナ。
【請求項6】
前記複数の同心円状に配置された放物曲面のうち周方向に配置される放物曲面の前記特定の位置は、中心に配置される放物曲面の前記特定の位置よりも遠い側にある、請求項1または4または5に記載のパラボラアンテナ。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のパラボラアンテナと、
前記反射面が向いた方向の測定対象を撮影して画像データを作成するカメラと、
前記複数のマイクロフォンによって取得される音圧データと、前記カメラによって生成される画像データとから重ね合わせ画像データを作成する演算手段と、
前記重ね合わせ画像を表示する表示手段と、
を有する、音源表示装置。
【請求項8】
前記パラボラアンテナは周方向に回動可能に構成されており、
前記パラボラアンテナを周方向に回動可能にさせる駆動手段をさらに有する、請求項7に記載の音源表示装置。
【請求項9】
請求項7に記載された音源表示装置を用いた音源表示方法であって、
前記音源表示装置を鉛直方向または水平方向に移動させることで、前記演算手段は、前記複数のマイクロフォンから複数の音圧データを取得するとともに、前記カメラから複数の画像データを取得し、取得した複数の音圧データと複数の画像データとから重ね合わせ画像を作成し、前記表示手段に表示させる、音源表示方法。
【請求項10】
請求項8に記載された音源表示装置を用いた音源表示方法であって、
前記パラボラアンテナを前記駆動手段により周方向に所定の設定角度の範囲内で往復運動させると共に、前記音源表示装置を鉛直方向または水平方向に移動させ、
前記演算手段は、前記複数のマイクロフォンから複数の音圧データを取得するとともに、前記カメラから複数の画像データを取得し、取得した複数の音圧データと複数の画像データとから重ね合わせ画像を作成し、前記表示手段に表示させる、音源表示方法。
【請求項11】
前記演算手段は、取得した複数の音圧データと複数の画像データとからパノラマ画像の重ね合わせ画像を作成する、請求項9または10に記載の音源表示方法。
【請求項12】
前記音波は、部分放電によって発生した超音波である、請求項9ないし11のいずれか1項に記載の音源表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離れた場所に存在する音源位置を表示する音源表示装置、音源表示方法および当該音源表示装置に用いられるパラボラアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
高電圧の電気を扱う工場の受電設備や変電設備等には様々な絶縁体が使用されている。これらの絶縁体が外部環境や製造上の問題により劣化し、その劣化が進行すると絶縁部が短絡してこれらの設備が故障する。このため、劣化した絶縁体を早期に検出し、当該絶縁体の補修、交換等を行う必要がある。
【0003】
受電設備や変電設備等に用いられている絶縁体に劣化が生じるとコロナ放電や沿面放電といった局所的な微小放電である部分放電が発生する。絶縁体に部分放電が発生すると超音波が放出されるので、この超音波を検知することで絶縁体の劣化部位を検出できる。
【0004】
部分放電を検知する装置として、特許文献1には、パラボラ状の集音器と、当該集音構造に対向配置されたマイクアレイと、物体撮像装置と、を有し、高感度に部分放電の放電音を検知する音源探査装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭63-58182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された音源探査装置は、指向性が高いパラボラ状の集音器を用いているので1つの領域における音源の有無しか検知できず、広範囲に設置された受電設備や変電設備等の電力設備の中から部分放電位置を探索するには不向きである、といった課題があった。本発明は、このような課題を鑑みてなされた発明であり、その目的は、従来装置よりも広範囲について効率的に音源を探索できる音源表示装置、音源表示方法および当該音源表示装置に用いられるパラボラアンテナを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
(1)反射面と、前記反射面に対向して配置された複数のマイクロフォンと、を有し、前記反射面は、特定の方向にある音源からの音波を特定の位置に集音する複数の放物曲面を含み、前記複数の放物曲面は、前記特定の方向および前記特定の位置がそれぞれ異なり、前記複数のマイクロフォンは、前記特定の位置にそれぞれ設けられる、パラボラアンテナ。
(2)前記反射面は、3つ以上5つ以下の異なる特定の方向の音源からの音波をそれぞれ集音する3つ以上5つ以下の前記放物曲面を含む、(1)に記載のパラボラアンテナ。
(3)複数の前記放物曲面は同心円状に配置される、(1)または(2)に記載のパラボラアンテナ。
(4)前記複数の同心円状に配置される放物曲面のうち周方向に配置される放物曲面は、中心に配置される放物曲面の軸と、周方向に配置される放物曲面の軸とが交わる方向に配置される、(3)に記載のパラボラアンテナ。
(5)前記複数の同心円状に配置された放物曲面のうち周方向に配置される放物曲面の前記特定の位置は、中心に配置される放物曲面の前記特定の位置よりも遠い側にある、(3)または(4)に記載のパラボラアンテナ。
(6)(1)から(5)のいずれか1つに記載のパラボラアンテナと、前記反射面が向いた方向の測定対象を撮影して画像データを作成するカメラと、前記複数のマイクロフォンによって取得される音圧データと、前記カメラによって生成される画像データとから重ね合わせ画像データを作成する演算手段と、前記重ね合わせ画像を表示する表示手段と、を有する、音源表示装置。
(7)前記パラボラアンテナは周方向に回動可能に構成されており、前記パラボラアンテナを周方向に回動可能にさせる駆動手段をさらに有する、(6)に記載の音源表示装置。
(8)(6)に記載された音源表示装置を用いた音源表示方法であって、前記音源表示装置を鉛直方向または水平方向に移動させることで、前記演算手段は、前記複数のマイクロフォンから複数の音圧データを取得するとともに、前記カメラから複数の画像データを取得し、取得した複数の音圧データと複数の画像データとから重ね合わせ画像を作成し、前記表示手段に表示させる、音源表示方法。
(9)(7)に記載された音源表示装置を用いた音源表示方法であって、前記パラボラアンテナを前記駆動手段により周方向に所定の設定角度の範囲内で往復運動させると共に、前記音源表示装置を鉛直方向または水平方向に移動させ、前記演算手段は、前記複数のマイクロフォンから複数の音圧データを取得するとともに、前記カメラから複数の画像データを取得し、取得した複数の音圧データと複数の画像データとから重ね合わせ画像を作成し、前記表示手段に表示させる、音源表示方法。
(10)前記演算手段は、取得した複数の音圧データと複数の画像データとからパノラマ画像の重ね合わせ画像を作成する、(8)または(9)に記載の音源表示方法。
(11)前記音波は、部分放電によって発生した超音波である、(8)ないし(10)のいずれか1つに記載の音源表示方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る音源表示装置、音源表示方法では、あらかじめ音源の場所や方向が正確にわかっていなくても音源を探索できるので、従来装置よりも効率的に音源を探索できる。このように、音源の位置を効率的に探索できれば、音源表示装置、音源表示方法を用いて、広範囲に設置された受電設備や変電設備等の電力設備の中から部分放電個所を容易に検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る音源表示装置10を示す模式図である。
図2】放物曲面23~27の位置を説明する模式図である。
図3】放物曲面23、24、26の集音位置を説明する図である。
図4】音波到来角とマイクロフォン31、33、35で測定される音圧との関係を示すグラフである。
図5】音波到来角とマイクロフォン31、33、35で測定される音圧との関係を示すグラフである。
図6】音源表示装置10の機能ブロック図である。
図7】表示手段42に表示される重ね合わせ画像の一例を示す図である。
図8】複数の音圧データと複数の画像データとから1つの重ね合わせ画像を作成する方法を説明する図である。
図9】本実施形態に係る音源表示装置10および駆動手段の一例を示す模式図である。
図10】本実施形態に係る音源表示装置10および駆動手段の他の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を発明の実施形態を通じて本発明を説明する。図1は、本実施形態に係る音源表示装置10を示す模式図である。図1(a)は、音源表示装置10の正面斜視図であり、図1(b)は、音源表示装置10の背面斜視図であり、図1(c)は音源表示装置10の断面図である。図1(a)~(c)を用いて、まず、本実施形態に係る音源表示装置10の構成を説明する。
【0011】
本実施形態に係る音源表示装置10は、パラボラアンテナ20と、表示手段42と、入力手段44と、演算手段46とを有する。パラボラアンテナ20は、反射面22と、5つのマイクロフォン31~35と、これら5つのマイクロフォン31~35を平面上または曲面上に配置して一体のモジュールとする支持板36と、カメラ40とを有する。反射面22は、部分放電によって発生した超音波を含む音波を、音源方向に応じて異なる位置に集音する。本実施形態に係る音源表示装置10では、反射面22は、例えば、同心円状に配置した5つの放物曲面23~27を含む。
【0012】
図2は、放物曲面23~27の位置を説明する模式図である。図2(a)は、反射面22の周面に設けられた4つの放物曲面24~27の周方向の中央が、鉛直上方を基準(0°)として、0°、90°、180°、270°になるように配置した例を示す。図2(b)は、周面に設けられた4つの放物曲面24~27の周方向の中央が、鉛直上方を基準(0°)として、27°、117°、207°、297°になるように配置した例を示す。本実施形態に係る音源表示装置10では、図2(b)に示すように、周面に設けられた4つの放物曲面24~27は、その中央が、鉛直上方を基準(0°)として、27°、117°、207°、297°になるように配置されている。放物曲面23~27は、それぞれの放物曲面の指向性で定まる特定の方向の音源からの音波を特定の位置に集音する曲面形状を有するので、このように放物曲面23~27を配置することで、放物曲面23~27の特定の方向、すなわち、音源の探索領域を鉛直方向および水平方向に互いに重なることなく異ならせることができ、水平または鉛直方向に移動させて音源を検知する際、探索領域の隙間を少なくする、または無くすことができる。
【0013】
また、パラボラアンテナ20を、周方向に回動可能、例えば、当該パラボラアンテナ20の中心と前記支持板36の中心とを通る軸(以下、中心軸と記す。)を回転中心軸として周方向に往復運動させる駆動手段をさらに備えるとより好適である。上記の支持板36の中心は当該支持板36の外径の中心であって、設計上、定められる。また、パラボラアンテナ20の中心はパラボラアンテナ20の外径の中心、あるいは、放物曲面23,24,25,26,27を同心円状に配置する場合の中心であって、設計上、定められる。本実施形態では、上記駆動手段により前記中心軸を回転中心軸として周方向にパラボラアンテナ20を往復運動させながら、水平方向または鉛直方向、もしくはその両方方向にパラボラアンテナ20を移動させて音源を検知するように構成されている。こうすることにより、周方向において、放物曲面23~27間で音源探索領域の隙間が生じる時もその隙間を埋めつつ音源を探索することができる。その結果、より精緻に音源位置を特定することが出来る。
【0014】
例えば、パラボラアンテナ20を、毎秒2回程度θ方向(パラボラアンテナ20の中心を軸とした周方向)に±4度の往復振動をさせながら、音源表示装置10を水平方向または鉛直方向もしくはその両方方向に移動させて音源を探索する。そして、音圧の最大点が生じた角度の位置にポイントを打つ事で、位置標定を精緻化することができる。
【0015】
図9は本実施形態に係る音源表示装置10および駆動手段の一例を示す模式図である。図9に示す例では、音源表示装置10の上下方向で上側に開いた樋形状を成すフレームの内側にパラボラアンテナ20が配置されており、当該パラボラアンテナ20の反射面22とは反対側のパラボラアンテナ20の裏面に駆動手段101が設けられている。駆動手段101は例えば、ステッピングモータやサーボモータなどの回転角度を適宜に制御できるモータを備えている。当該モータのローター軸にパラボラアンテナ20が接続されている。なお、上記のモータとパラボラアンテナ20との間に、モータの出力トルクを増減する変速機構が設けられていてもよい。
【0016】
駆動手段101は支持部102を介して前記フレームの内側の底面に固定されており、当該フレームは音源表示装置10を支える土台あるいは構造部分であるマウント103に回転可能に取り付けられている。支持部102における上部にパラボラアンテナ20の向きを上下方向に変更する上下回動機構104が設けられている。上下回動機構104は音源表示装置10の上下方向に対してほぼ直交する方向を回転中心軸線として回動するように構成されている。また、上下回動機構104はステッピングモータやサーボモータなどを備え、上記のモータの回転角度を制御することによってパラボラアンテナ20の向きを上下方向に変更するように構成されていてよい。あるいは、摩擦力によって上下方向での測定対象に対するパラボラアンテナ20の向きを保持し、当該摩擦力を超える荷重をパラボラアンテナ20に加えることによってパラボラアンテナ20の上下方向の向きを変更するように構成されていてもよい。
【0017】
マウント103の内部に前記上下方向とほぼ平行な軸線を中心として、音源表示装置10を左右に回転させる左右回転機構105が設けられている。左右回転機構105はステッピングモータやサーボモータなどを備え、モータの回転角度やトルクを制御することによって前記上下方向とほぼ平行な軸線を中心としてパラボラアンテナ20を左右に回動させるようになっている。なお、マウント103と図示しないフロアなどの固定部との間に、当該固定部に沿って音源表示装置10をほぼ平行に移動させる図示しないリニアスライダーが設けられていてよい。この時、マウント103の内部には、左右回転機構105が設けられていなくてもよいし、設けられていてもよい。要は、水平方向に音源の探索方向を移動できればよい。すなわち、音源表示装置10は、左右回転機構105によってパラボラアンテナ20を水平方向に回転させることによって水平方向に音源探索方向を移動するように構成されていてもよいし、パラボラアンテナ20の向きは変えずにリニアスライダーで固定部に沿ってパラボラアンテナ20全体を水平移動して音源探索方向を移動するように構成されていてもよい。また、左右回転機構105とリニアスライダーを組み合わせて水平方向に音源探索方向を移動するように構成されていてもよい。
【0018】
なおまた、詳細は図示しないが、上下方向におけるパラボラアンテナ20の位置を変更する高さ調整機構が支持部102あるいはマウント103に設けられていてよい。高さ調整機構は上下方向でのパラボラアンテナ20の位置を変更可能に構成されていればよく、従来知られた昇降装置であってよい。例えば、ラックアンドピニオンや流体圧式のアクチュエータなどを使用した昇降装置であってよい。この時、支持部102の上部には、上下回動機構104が設けられていなくてもよいし、設けられていてもよい。要は、鉛直方向に音源の探索方向を移動できればよい。すなわち、音源表示装置10は、上下回動機構104によってパラボラアンテナ20を鉛直方向に回動させることによって鉛直方向に音源探索方向を移動するように構成されていてもよいし、パラボラアンテナ20の向きは変えずに高さ調整機構でパラボラアンテナ20全体を鉛直移動して音源探索方向を移動するように構成されていてもよい。また、上下回動機構104と高さ調整機構を組み合わせて鉛直方向に音源探索方向を移動するように構成されていてもよい。他の構成は図1あるいは図2に示す構成と同様であるため、図1あるいは図2に示す構成と同様の構成については図1あるいは図2と同様の符号を付してその説明を省略する。
【0019】
したがって、図9に示す構成によれば、各放物曲面23,24,25,26,27に対応する探索領域同士の間に隙間が生じるとしても、上述したように、パラボラアンテナ20を周方向に往復運動させるので、周方向における上記の隙間を可及的に小さくすることができ、または、なくすことができる。また、パラボラアンテナ20を周方向に往復運動させている状態で、音源表示装置10を固定部に沿う方向つまり水平方向、または、音源表示装置10の上下方向つまり鉛直方向、もしくはその両方方向に移動させる。そのため、広範囲を隙間なく探索することができる。さらに、本実施形態では、検出した音波の音圧が最大となったときにおける、水平面に対するパラボラアンテナ20の上下方向の角度いわゆる仰角と、予め設定した基準位置からの左右方向へのパラボラアンテナ20の回転角度と、固定部に対する水平方向や上下方向もしくはその両方方向におけるパラボラアンテナ20の位置情報などとに基づいて、部分放電箇所を特定する。そのため、部分放電箇所の特定の精度を向上することができる。
【0020】
図10は本実施形態に係るパラボラアンテナ20を、周方向に回動可能とした音源表示装置10および駆動手段の他の例を示す模式図である。ここに示す例は、ラックアンドピニオンを用いた駆動手段101によってパラボラアンテナ20を周方向に往復運動させるように構成した例である。図10に示すように、パラボラアンテナ20の裏面にピニオンギヤ106が一体に設けられており、ピニオンギヤ106に噛み合うラック107が音源表示装置10の上下方向に延びて設けられている。ピニオンギヤ106は軸受108を介して回転可能に支持部102に支持されている。ラック107は図示しないモータや流体圧式のアクチュエータなどによって上下方向に移動可能に構成されている。そして、モータの回転角度やアクチュエータの駆動量などを増減することによって上下方向へのラック107の移動量を増減してパラボラアンテナ20を周方向に往復運動させるようになっている。他の構成は図9に示す構成と同様であるため、図9に示す構成と同様の構成については図9と同様の符号を付してその説明を省略する。
【0021】
図10に示す構成であっても、パラボラアンテナ20を周方向に往復運動させている状態で、音源表示装置10を水平方向に移動させ、または、鉛直方向に移動させ、もしくはその両方方向に移動させることができる。したがって、図10に示す構成であっても、図9に示す構成と同様の作用・効果を得ることができる。
【0022】
再び、図1を参照する。各放物曲面23~27は、音波を音源方向に応じて異なる位置に集音する。放物曲面23は、音源から発せられた音波をマイクロフォン31に集音し、放物曲面24は、音源から発せられた音波をマイクロフォン33に集音する。また、放物曲面25は、音源から発せられた音波をマイクロフォン34に集音し、放物曲面26は、音源から発せられた音波をマイクロフォン35に集音し、放物曲面27は、音源から発せられた音波をマイクロフォン32に集音する。
【0023】
5つのマイクロフォン31~35は、支持板36における反射面22に対向する側に配置される。5つのマイクロフォン31~35は、1つのマイクロフォンを中央に、他のマイクロフォン32~35が、中央のマイクロフォン31を囲むように放物曲面24~27が設けられる位置に対応した位置に配置される。
【0024】
図3は、放物曲面23、24、26の集音位置を説明する図である。図3(a)は、周面に設けられた放物曲面24、26の軸を外向きにして中心の放物曲面の軸と交わらないようにしつつ、近いマイクロフォンに集音するように構成された例を示し、図3(b)は、放物曲面24、26の軸を内向きにして中心の放物曲面の軸と交わるようにしつつ、遠いマイクロフォンに集音するように構成された例を示す。
【0025】
図4および図5は、音波到来角とマイクロフォン31、33、35で測定される音圧との関係を示すグラフである。図4は、図3(a)のように構成されたパラボラアンテナを用いた場合のグラフを示し、図5は、図3(b)のように構成されたパラボラアンテナを用いた場合のグラフを示す。図4および図5の実験条件は、図3(a)(b)に示した構成の違い以外は全て同じである。
【0026】
図4、5を比較すると、図4よりも図5の方が全体的に測定される音圧が高くなった。この結果から、放物曲面24、26が遠いマイクロフォンに集音するように構成することで、パラボラアンテナの音圧測定の感度が高くなることがわかる。放物曲面の軸を内向きにして放物曲面から焦点までの焦点距離を長くした方が放物曲面24、26を音波が到来する方向に投影した投影面積を大きくすることができる。投影面積が大きくなることで、放物曲面はより多くの音波を集音できるようになり、これにより、パラボラアンテナの音圧測定の感度が高くなったと考えられる。
【0027】
このため、本実施形態に係る反射面22の周方向に設けられる放物曲面24~27は、図3(b)に示すように、マイクロフォン32~35のうち、それぞれの放物曲面から離れた位置にあるマイクロフォンに音波を集音する。このように離れた位置のマイクロフォンに音波を集音させることが好ましく、近い位置にマイクロフォンに音波を集音させた場合よりも放物曲面による音圧測定の感度を高めることができる。
【0028】
再び、図1を参照する。マイクロフォン31~35は、対応する放物曲面によって集音された音波の音圧を測定し音圧データを演算手段46に出力する。
【0029】
カメラ40は、予め定められた時間間隔で、反射面22が向いた方向の測定対象を撮像し、画像データを生成する。カメラ40は、当該画像データを演算手段46に出力する。カメラ40の倍率、視野の広さ等は、各放物曲面23~27の全探査領域の大きさと、カメラ40によって撮影される測定対象の大きさとが対応した大きさになるように予め定められる。
【0030】
演算手段46は、使用者からの重ね合わせ画像作成の指示を受け付けると、マイクロフォン31~35から取得した音圧情報と、カメラ40から取得した画像データとを用いて、画像データに音圧データを重ね合わせた重ね合わせ画像データを作成する。
【0031】
表示手段42は、例えば、LCDであり、演算手段46で作成された重ね合わせ画像を表示する。入力手段44は、例えば、プッシュスイッチであり、表示手段42の下方に複数設けられている。使用者は、入力手段44を押圧することで、所定の入力信号が演算手段46に入力される。なお、入力手段44は、タッチパネル方式の入力装置であってもよく、この場合には、入力手段44を設けなくてもよい。
【0032】
図6は、音源表示装置10の機能ブロック図である。図6を用いて、演算手段46による重ね合わせ画像の作成方法について説明する。演算手段46は、画像処理部48と、格納部49とを有する。画像処理部48は、例えば、CPU等であって、格納部49に格納されたプログラムやデータを用いて、音源表示装置10の動作を制御し、所定の演算を実行する。格納部49は、例えば、更新記録可能なフラッシュメモリ、内蔵あるいはデータ通信端子で接続されたメモリカード等の情報記録媒体およびその読み書き装置である。格納部49には、音源表示装置10が有する種々の機能を実現するためのプログラムや当該プログラム実行中に使用するデータ等が予め格納されている。
【0033】
画像処理部48は、使用者からの重ね合わせ画像作成の指示を受け付けると、マイクロフォン31~35から音圧データを取得するとともに、カメラ40から画像データを取得する。画像処理部48は、マイクロフォン31~35から取得した音圧データの強度を算出する。また、画像処理部48は、放物曲面23~27で音源が探索された領域と、取得された画像データにおけるデータ領域とを対応づけるテーブルを格納部49から読み出し、当該テーブルを用いて音圧データが取得された画像データのデータ領域を特定して、当該領域を音圧データの音圧強度に応じて色付ける。例えば、音圧強度が低い場合には薄く色付けし、音圧強度が高い場合には濃く色付けする。このようにして、画像処理部48は、重ね合わせ画像データを作成する。画像処理部48は、作成した重ね合わせ画像データを表示手段42に表示する。なお、放物曲面23~27で音源が探索された領域と画像データにおけるデータ領域とを対応つけるテーブルは、予め格納部49に格納されている。
【0034】
図7は、表示手段42に表示される重ね合わせ画像の一例を示す図である。図7において、音源が探索された領域70~78を点線で示す。領域70は、放物曲面23によって音波が測定される領域であり、領域72は、放物曲面24によって音源が探索される領域であり、領域74は、放物曲面25によって音源が探索される領域であり、領域76は、放物曲面26によって音源が探索される領域であり、領域78は、放物曲面27によって音源が探索される領域である。
【0035】
例えば、領域78に対応した位置の設備で部分放電が発生したとすると、当該部分放電によって生じた超音波によって領域78に対応した位置の音圧強度が高くなるので、表示手段42に表示される重ね合わせ画像では、領域78が色付けされて示される。したがって、当該重ね合わせ画像を視認した使用者は、色付けされた領域78で部分放電が発生していることを容易に認知でき、当該位置を調査することで絶縁体の劣化部位を検出できる。
【0036】
このように、本実施形態に係る音源表示装置10は、5つの放物曲面23~27を有するパラボラアンテナを用いるので、5つの放物曲面23~27に対応した5つの探索領域で、離れた位置の部分放電箇所を探索できる。このため、本実施形態に係る音源表示装置10は、1つの放物曲面で構成されるパラボラアンテナを有し、1つの探索領域でしか部分放電箇所を探索できない従来装置よりも、より広い範囲について音源を効率的に探索できる。なお、本実施形態では、パラボラアンテナ20の反射面22が5つの放物曲面23~27を含む例を示したが、これに限らない。反射面22は放物曲面を複数含んでいればよく、これにより、従来装置よりも効率的に音源を探査できる音源表示装置となる。
【0037】
一方、図7に示した重ね合わせ画像には、音源を探査できていない領域を含む。このため、音源表示装置10を鉛直方向または水平方向もしくはその両方方向に移動させることで、パラボラアンテナ20から位置の異なる複数の音圧データを取得するとともに、カメラ40から複数の画像データを取得し、これら複数の音圧情報と複数の画像データとから重ね合わせ画像を作成することが好ましい。
【0038】
図8は、複数の音圧データと複数の画像データとから1つの重ね合わせ画像を作成する方法を説明する図である。まず、使用者からの重ね合わせ画像を取得する指示を受け付けると、画像処理部48は、マイクロフォン31~35およびカメラ40から音圧データと画像データとを取得して1つの重ね合わせ画像データ60(1枚目)を作成する。この重ね合わせ画像を示すのが図8(a)である。図8において、点線で示した領域は、放物曲面23~27によって音源が探索された領域を示す。
【0039】
その後、音源表示装置10は予め定められた速度で水平方向に移動される。画像処理部48は、マイクロフォン31~35およびカメラ40から音圧データと画像データを所定の間隔で取得する。この所定間隔は、放物曲面23~27によって音源が探索される領域に隙間が生じない間隔となるように、音源表示装置10の移動速度と、画像データにおける音波が測定できる領域の大きさによって定められる。したがって、音源表示装置10の移動は、音源表示装置10を一定速度で移動させることができる駆動装置を用いて行うことが好ましい。
【0040】
画像処理部48は、マイクロフォン31~35およびカメラ40から音圧データと画像データを取得して重ね合わせ画像データ62(2枚目)を作成する。画像処理部48は、例えば、後に取得された画像データのうち、先に取得された画像の一部(例えば、左端部)を参照画像として、先に取得された画像データとパターンマッチングを行うことで、先に作成された重ね合わせ画像における当該参照画像の位置を特定する。画像処理部48は、特定された参照画像の位置で、先に作成された画像データと、後に作成された重ね合わせ画像データを合成する。この合成された重ね合わせ画像を示すのが図8(b)である。
【0041】
この操作を、1つの画像データ中に音源が探索されていない領域がなくなるまで繰り返し実施する。図8に示した例では、9つの重ね合わせ画像を合成することで、全ての領域で音源が探索された1つの重ね合わせ画像が取得できる。図8(c)は、9つの重ね合わせ画像を示し、図8(d)は、全ての領域で音源が探索された重ね合わせ画像64を示す。このようにして、全ての領域で音源が探索された重ね合わせ画像を合成できる。なお、図8(d)において、斜線部80は、測定された音圧の強度が高い領域を示す。
【0042】
なお、本実施形態では、水平方向に音源表示装置10を移動させて全ての領域で音源が探索された重ね合わせ画像を作成する例を示したが、これに限らず、音源表示装置10の移動方向は鉛直方向でもよい。本実施形態に係るパラボラアンテナ20では、放物曲面23~27を所定の位置に配置して、音源が探索される領域が鉛直方向および水平方向に重ならないように異ならせている。これにより、音源表示装置10を鉛直方向または水平方向に移動させて複数の音圧データおよび複数の画像データを取得させることで、隙間なく全ての領域において音源が探索された画像データを作成、表示できる装置となる。
【0043】
また、図8に示した例では、カメラ40で取得される画像データと同じ大きさの画像データを合成する例を示したが、これに限らない。例えば、表示手段42を水平方向に移動させる場合に、さらに画像データおよび音圧データを取得して、全ての領域で音源位置が探査されたパノラマ画像データを合成し、当該パノラマ画像を表示手段42に表示させてもよい。
【0044】
また、本実施形態では、5つの放物曲面23~27の音源が探索される領域が鉛直方向および水平方向に重ならないように、5つの放物曲面23~27を配置した例を示したがこれに限らない。5つの放物曲面23~27の音源が探索される領域が水平方向および鉛直方向の少なくとも一方向に重ならず異なる位置になるように、各放物曲面23~27を配置すればよい。また、放物曲面の数は3つ以上5つ以下であることが好ましく、例えば、放物曲面の数が3つの場合には、3つの放物曲面の中心が鉛直上方を基準(0°)として、30°、150°、270°になるように各放物曲面を配置すればよい。
【0045】
さらに、5つの放物曲面23~27の音源が探索される領域が鉛直方向および水平方向で隙間が無いように、5つの放物曲面23~27を配置した例を示したがこれに限らない。パラボラアンテナ20を、該パラボラアンテナ20の中心と支持板36の中心と結んだ線を軸として周方向に往復運動させる駆動手段をさらに備え、上記駆動手段によりパラボラアンテナ20を該パラボラアンテナ20の中心と支持板36の中心と結んだ線を軸として周方向に往復運動させながら、水平または鉛直方向に移動させて音源を検知すれば、放物曲面23~27間で音源探索領域の隙間が生じる時もその隙間を埋めつつ音源を探索することができる。その結果、より精緻に音源位置を特定することが出来る。
【0046】
例えば、パラボラアンテナ20を、毎秒2回程度θ方向(パラボラアンテナ20の中心と支持板36の中心と結んだ線を軸とした周方向)に±4度の往復振動をさせながら、音源表示装置10を水平方向または鉛直方向に移動させて音源を探索する。そして、音圧の最大点が生じた角度の位置にポイントを打つ事で、位置標定を精緻化することができる。なお、本実施形態では、パラボラアンテナ20を周方向に往復運動させることに替えて、パラボラアンテナ20を周方向で一方向に連続して回転させ、あるいは、予め定めた角度ずつ一方向に回転させるように構成してもよい。要は、駆動手段101によってパラボラアンテナ20を周方向に回転させることによって上述した周方向の隙間を減じるように構成されていればよい。
【0047】
受電設備や変電設備の絶縁体で発生するコロナ放電のような部分放電は、交流電源周期における特定の時間ごとに発生する。このため、マイクロフォンで測定される音圧データを包絡線処理および周波数解析することで算出された周波数スペクトルにおける交流電源周期の整数倍となる周波数成分は、部分放電によるものと考えられる。したがって、当該周波数スペクトルの全強度に対する交流電源周期の整数倍となる周波数成分の強度の和の比率は、周波数スペクトルの全成分強度に対する部分放電成分の比率、すなわち、マイクロフォン31~35で測定された音圧に対する放電成分の寄与率を示す。
【0048】
画像処理部48は、マイクロフォン31~35で取得される音圧データを包絡線処理および周波数解析(高速フーリエ変換)して、例えば、0~300Hzの範囲の周波数スペクトルを算出する。画像処理部48は、上記周波数スペクトルの全強度に対する電源周波数の整数倍となる周波数成分の強度の和の比率を算出し、当該比率を、重ね合わせ画像における音圧強度が高い領域に併せて表示させてもよい。これにより、使用者は、重ね合わせ画像に示された音圧の高い領域で発生しているのが部分放電なのか、それともリーク音やノイズ音なのか容易に判別できる。
【符号の説明】
【0049】
10 音源表示装置
20 パラボラアンテナ
22 反射面
23 放物曲面
24 放物曲面
25 放物曲面
26 放物曲面
27 放物曲面
31 マイクロフォン
32 マイクロフォン
33 マイクロフォン
34 マイクロフォン
35 マイクロフォン
36 支持板
40 カメラ
42 表示手段
44 入力手段
46 演算手段
48 画像処理部
49 格納部
60 画像データ
62 画像データ
64 重ね合わせ画像
70 領域
72 領域
74 領域
76 領域
78 領域
80 斜線部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10