(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】タービンハウジング、及びターボチャージャ
(51)【国際特許分類】
F02B 39/00 20060101AFI20231025BHJP
【FI】
F02B39/00 D
(21)【出願番号】P 2021569628
(86)(22)【出願日】2020-01-07
(86)【国際出願番号】 JP2020000151
(87)【国際公開番号】W WO2021140562
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-06-03
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】316015888
【氏名又は名称】三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】星 徹
(72)【発明者】
【氏名】中川 大志
(72)【発明者】
【氏名】三好 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】新田 憲司
(72)【発明者】
【氏名】入江 宗祐
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-126001(JP,U)
【文献】特開2010-209824(JP,A)
【文献】特開2009-221919(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクロール流路を有するタービンハウジングであって、
前記スクロール流路は、
前記タービンハウジングの軸線方向に沿って延在する外周側面と、
前記外周側面よりも前記タービンハウジングの径方向内側に位置する内周側面と、
前記タービンハウジングの軸線方向における一方側の側面である一方側面であって、前記タービンハウジングの径方向に沿って延在する一方側面と、
前記タービンハウジングの軸線方向における他方側の側面である他方側面であって、前記一方側面よりも前記タービンハウジングの出口側に配置されるとともに、前記タービンハウジングの径方向に沿って延在する他方側面と、
前記一方側面の外周端と前記外周側面の一方端とを接続する一方側外周R部と、
前記他方側面の外周端と前記外周側面の他方端とを接続する他方側外周R部と、
前記他方側面の内周端と前記内周側面の他方端とを接続する他方側内周R部と、を含み、
前記スクロール流路の断面視において、前記一方側外周R
部のR寸法に対する前記スクロール流路の前記軸線方向に沿った幅寸法の比率を、一方側外周R比率
と定義すると、
前記スクロール流路は、前記一方側外周R比率が、前記スクロール流路の上流から下流に向かうにつれて大きくなる一方側外周R比率拡大領域を含み、
前記タービンハウジングの軸線を中心とした前記スクロール流路の角度位置であって、前記スクロール流路の巻き始め部の角度位置を0度、前記スクロール流路の巻き終わり部の角度位置を360度と定義した場合に、
前記角度位置が180度以上360度未満における前記一方側外周R比率は、前記角度位置が0度以上180度未満における前記一方側外周R比率よりも大きい、
タービンハウジング。
【請求項2】
スクロール流路を有するタービンハウジングであって、
前記スクロール流路は、
前記タービンハウジングの軸線方向に沿って延在する外周側面と、
前記外周側面よりも前記タービンハウジングの径方向内側に位置する内周側面と、
前記タービンハウジングの軸線方向における一方側の側面である一方側面であって、前記タービンハウジングの径方向に沿って延在する一方側面と、
前記タービンハウジングの軸線方向における他方側の側面である他方側面であって、前記一方側面よりも前記タービンハウジングの出口側に配置されるとともに、前記タービンハウジングの径方向に沿って延在する他方側面と、
前記一方側面の外周端と前記外周側面の一方端とを接続する一方側外周R部と、
前記他方側面の外周端と前記外周側面の他方端とを接続する他方側外周R部と、
前記他方側面の内周端と前記内周側面の他方端とを接続する他方側内周R部と、を含み、
前記スクロール流路の断面視において、前記他方側外周R部のR寸法に対する前記スクロール流路の前記軸線方向に沿った幅寸法の比率を、他方側外周R比率と定義すると、
前記スクロール流路は、前記他方側外周R比率が前記スクロール流路の上流から下流に向かうにつれて大きくなる他方側外周R比率拡大領域を含み、
前記タービンハウジングの軸線を中心とした前記スクロール流路の角度位置であって、前記スクロール流路の巻き始め部の角度位置を0度、前記スクロール流路の巻き終わり部の角度位置を360度と定義した場合に、
前記角度位置が180度以上360度未満における前記他方側外周R比率は、前記角度位置が0度以上180度未満における前記他方側外周R比率よりも大きい、
タービンハウジング。
【請求項3】
スクロール流路を有するタービンハウジングであって、
前記スクロール流路は、
前記タービンハウジングの軸線方向に沿って延在する外周側面と、
前記外周側面よりも前記タービンハウジングの径方向内側に位置する内周側面と、
前記タービンハウジングの軸線方向における一方側の側面である一方側面であって、前記タービンハウジングの径方向に沿って延在する一方側面と、
前記タービンハウジングの軸線方向における他方側の側面である他方側面であって、前記一方側面よりも前記タービンハウジングの出口側に配置されるとともに、前記タービンハウジングの径方向に沿って延在する他方側面と、
前記一方側面の外周端と前記外周側面の一方端とを接続する一方側外周R部と、
前記他方側面の外周端と前記外周側面の他方端とを接続する他方側外周R部と、
前記他方側面の内周端と前記内周側面の他方端とを接続する他方側内周R部と、を含み、
前記スクロール流路の断面視において、前記他方側内周R部のR寸法に対する前記スクロール流路の前記軸線方向に沿った幅寸法の比率を他方側内周R比率とそれぞれ定義すると、
前記スクロール流路は、前記他方側内周R比率が前記スクロール流路の上流から下流に向かうにつれて大きくなる他方側内周R比率拡大領域を含み、
前記タービンハウジングの軸線を中心とした前記スクロール流路の角度位置であって、前記スクロール流路の巻き始め部の角度位置を0度、前記スクロール流路の巻き終わり部の角度位置を360度と定義した場合に、
前記角度位置が180度以上360度未満における前記他方側内周R比率は、前記角度位置が0度以上180度未満における前記他方側内周R比率よりも大きい、
タービンハウジング。
【請求項4】
前記タービンハウジングの軸線を中心とした前記スクロール流路の角度位置であって、前記スクロール流路の巻き始め部の角度位置を0度、前記スクロール流路の巻き終わり部の角度位置を360度と定義した場合に、
前記一方側外周R部の前記R寸法は、前記角度位置が少なくとも0度以上240度未満の範囲において一定である、請求項
1に記載のタービンハウジング。
【請求項5】
前記タービンハウジングの軸線を中心とした前記スクロール流路の角度位置であって、前記スクロール流路の巻き始め部の角度位置を0度、前記スクロール流路の巻き終わり部の角度位置を360度と定義した場合に、
前記他方側外周R部の前記R寸法は、前記角度位置が少なくとも0度以上240度未満の範囲において一定である、請求項
2に記載のタービンハウジング。
【請求項6】
請求項
1から5の何れか一項に記載のタービンハウジングを備えるターボチャージャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タービンハウジング、及びターボチャージャに関する。
【背景技術】
【0002】
車両等には、エンジンから排出される排ガスのエネルギを利用してタービンロータを回転させ、このタービンロータと同軸上に設けられているコンプレッサホイールを回転させることで吸入空気を過給し、エンジンの出力向上を図るターボチャージャが設けられている場合がある。
【0003】
特許文献1には、ターボチャージャのタービンハウジングは、エンジンから排出された直後の排ガスが流通するスクロール流路を有し、このスクロール流路は矩形状の断面形状を有していることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、スクロール流路が矩形状の断面形状を有する場合、熱膨張による応力がスクロール流路の角部分に集中し、この応力によってスクロール流路が損傷してしまう虞がある。しかしながら、特許文献1には、スクロール流路の角部分に応力が集中することについて何ら記載されていない。
【0006】
本開示は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、スクロール流路の損傷を抑制することができるタービンハウジングを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示に係るタービンハウジングは、スクロール流路を有するタービンハウジングであって、前記スクロール流路は、前記タービンハウジングの軸線方向に沿って延在する外周側面と、前記外周側面よりも前記タービンハウジングの径方向内側に位置する内周側面と、前記タービンハウジングの軸線方向における一方側の側面である一方側面であって、前記タービンハウジングの径方向に沿って延在する一方側面と、前記タービンハウジングの軸線方向における他方側の側面である他方側面であって、前記一方側面よりも前記タービンハウジングの出口側に配置されるとともに、前記タービンハウジングの径方向に沿って延在する他方側面と、前記一方側面の外周端と前記外周側面の一方端とを接続する一方側外周R部と、前記他方側面の外周端と前記外周側面の他方端とを接続する他方側外周R部と、前記他方側面の内周端と前記内周側面の他方端とを接続する他方側内周R部と、を含み、前記スクロール流路の断面視において、前記一方側外周R部、前記他方側外周R部、及び前記他方側内周R部のそれぞれのR寸法に対する前記スクロール流路の前記軸線方向に沿った幅寸法の比率を、一方側外周R比率、他方側外周R比率、及び他方側内周R比率とそれぞれ定義すると、前記スクロール流路には、前記一方側外周R比率、前記他方側外周R比率、及び前記他方側内周R比率のうち少なくとも1つが、前記スクロール流路の上流から下流に向かうにつれて大きくなるR比率拡大領域が形成される。
【発明の効果】
【0008】
本開示のタービンハウジングによれば、スクロール流路の角部分(一方側外周R部、他方側外周R部、他方側内周R部)のうち少なくとも1つは、R比率(一方側外周R比率、他方側外周R比率、他方側内周R比率)がスクロール流路の上流から下流に向かうにつれて大きくなるので、熱膨張による応力の集中が抑制され、スクロール流路の損傷を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の第1実施形態に係るターボチャージャを示す断面図である。
【
図2】本開示の第1実施形態に係るタービンハウジングの構成の一部を示す概略構成図である。
【
図3】本開示の第1実施形態に係るスクロール流路の断面を模式的に示す図である。
【
図4】本開示の第1実施形態に係るR比率拡大領域を説明するための図である。
【
図5】本開示の第1実施形態に係る一方側外周R比率と角度位置との関係を示す図である。
【
図6】従来のスクロール流路に作用する熱応力の大きさの分布を示した熱応力解析図である。
【
図7】本開示の第2実施形態に係るR比率拡大領域を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態によるタービンハウジング及びターボチャージャについて、図面に基づいて説明する。かかる実施の形態は、本開示の一態様を示すものであり、この開示を限定するものではなく、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0011】
<第1実施形態>
(ターボチャージャの構成)
本開示の第1実施形態に係るタービンハウジング1の構成について説明する。
図1は、本開示の第1実施形態に係るターボチャージャを示す断面図である。
図2は、本開示の第1実施形態に係るタービンハウジングの構成の一部を示す概略構成図である。
図3は、本開示の第1実施形態に係るスクロール流路の断面を模式的に示す図である。
【0012】
本開示の第1実施形態に係るターボチャージャ100は、例えば自動車などの車両に搭載されるエンジンの吸気を過給するための排気ターボ過給機である。
図1に示すように、ターボチャージャ100は、タービンハウジング1と、軸受ハウジング102と、コンプレッサハウジング104と、を有する。
【0013】
タービンハウジング1は、ハブ2a及びハブ2aの外周面に設けられた複数のタービン翼2bを含むタービンロータ2を収容するものである。また、タービンハウジング1は、エンジンから排出された排ガスGをタービンロータ2に導くためのスクロール流路6を有している。このスクロール流路6の説明は後述する。軸受ハウジング102は、回転軸線O(ロータシャフト)を中心としてタービンロータ2を回転可能に支持する軸受102aを収容しているものである。この回転軸線Oが、タービンハウジング1の軸線となっている。コンプレッサハウジング104は、回転軸線O(ロータシャフト)を介して、タービンロータ2と連結されたコンプレッサホイール104aを回転自在に収容するものである。
【0014】
以下では、回転軸線Oを中心として回転することで描かれる円形形状の軌跡の方向を「周方向」とし、この円形形状の軌跡の半径方向を「径方向」とする。この「径方向」は、タービンハウジング1の径方向と同じ意味である。また、タービンハウジング1の軸線方向(回転軸線O方向)を単に「軸線方向」とする。
【0015】
(タービンハウジングの構成)
図1及び
図2に示すように、タービンハウジング1は、スクロール流路6を有している。第1実施形態では、タービンハウジング1は、スクロール流路6(
図1及び
図2参照)に加え、導入流路12(
図2参照)と、タービン室14(
図1及び
図2参照)と、排出流路16(
図1参照)と、を有している。
【0016】
導入流路12は、タービンハウジング1内に導入された直後の排ガスGが流通するものである。この導入流路12には、排ガス入口部18が形成されており、エンジンから排出された排ガスGは排ガス入口部18を流通してタービンハウジング1内に導入される。導入流路12の排ガス入口部18とは反対側の端部12aには、スクロール流路6の入口部19aが接続されており、導入流路12を流通した排ガスGがスクロール流路6内に導入される。タービン室14は、上述したタービンロータ2が収容される空間であり、軸線方向他方側に向かって開口する開口部22を有している。また、タービン室14は、スクロール流路6より径方向内側に位置しており、後述するように、スクロール流路6から流出した排ガスGが、連通流路24を流通して、タービン室14内に導入されるようになっている。排出流路16は、タービン室14の開口部22と接続されており、タービン室14を流通した排ガスGが導入される。排出流路16内に導入された排ガスGは、不図示の排ガス出口を流通してタービンハウジング1外に排出される。
【0017】
スクロール流路6は、導入流路12の端部12aから円環形状を有するように構成されているものである。また、スクロール流路6の入口部19aと出口部19bとの境界部は、舌部20によって構成されている。スクロール流路6の入口部19aと出口部19bとは互いに連通しており、スクロール流路6の出口部19bを流通した排ガスGは、再びスクロール流路6の入口部19aに合流するようになっている。
【0018】
以下では、
図2に示すように、回転軸線O(タービンハウジング1の軸線)を中心としたスクロール流路6の角度位置であって、スクロール流路6の巻き始め部(舌部20)の角度位置を0度、スクロール流路6の巻き終わり部(舌部20)の角度位置を360度と定義する。角度位置は、排ガスGがスクロール流路6内を上流から下流に向かって流れる方向に沿って増加している。
【0019】
また、スクロール流路6は、上流から下流に向かうにつれて流路断面が徐々に小さくなるように構成されている。スクロール流路6の径方向内側には、スクロール流路6とタービン室14とを周方向全体に亘って連通する連通流路24が設けられている。このため、スクロール流路6を流通する排ガスGは円環形状の軌跡を描くように流通しながら、その一部が連通流路24を通って、タービン室14に流入するようになっている。
【0020】
(スクロール流路の構成)
図3に示すように、スクロール流路6の断面を視ると、スクロール流路6は、外周側面26と、内周側面28と、一方側面30と、他方側面32と、一方側外周R部34と、他方側外周R部36と、他方側内周R部38と、を含む。このようなスクロール流路6は、流路断面が略矩形状を有するように構成されている。尚、
図3には、角度位置が0度におけるスクロール流路6の断面が模式的に示されている。
【0021】
外周側面26は、軸線(回転軸線O)方向に沿って延在する部分である。内周側面28は、外周側面26よりも径方向内側に位置する部分である。一方側面30は、軸線方向における一方側の側面であって、径方向に沿って延在する部分である。他方側面32は、軸線方向における他方側の側面であって、一方側面30よりも軸線方向他方側(タービンハウジング1の出口側)に配置されるとともに、径方向に沿って延在する部分である。
【0022】
第1実施形態では、外周側面26は、軸線方向に対して平行な方向に沿って延在している。内周側面28は、軸線方向一方側に向かうにつれて、回転軸線Oに近づくように傾斜している。内周側面28の一方端28a、及び一方側面30の内周端30aは、上述した連通流路24に接続されている。尚、本実施形態では、一方側面30と連通流路24の内面とが面一である場合を例にしているが、本開示はこの実施形態に限定されず、一方側面30と連通流路24との間に段差部が設けられてもよい。
【0023】
一方側外周R部34は、一方側面30の外周端30bと外周側面26の一方端26aとを接続する部分である。他方側外周R部36は、他方側面32の外周端32bと外周側面26の他方端26bとを接続する部分である。他方側内周R部38は、他方側面32の内周端32aと内周側面28の他方端28bとを接続する部分である。一方側外周R部34、他方側外周R部36、及び他方側内周R部38のそれぞれは、弧形状を有している。
【0024】
ここで、スクロール流路6の断面視において、一方側外周R部34、他方側外周R部36、及び他方側内周R部38のそれぞれのR寸法r1,r2,r3に対するスクロール流路6の軸線方向に沿った幅寸法Xの比率を、一方側外周R比率R1(=r1/X)、他方側外周R比率R2(=r2/X)、及び他方側内周R比率R3(=r3/X)とそれぞれ定義する。第1実施形態では、R寸法r1,r2,r3のそれぞれは、軸線方向に対して平行な方向に沿って延びる大きさである。つまり、r1は、軸線方向における一方側面30の外周端30bと外周側面26の一方端26aとの間の距離の大きさである。同様に、r2は、軸線方向における他方側面32の外周端32bと外周側面26の他方端26bとの間の距離の大きさである。同様に、r3は、軸線方向における他方側面32の内周端32aと内周側面28の他方端28bとの間の距離の大きさである。尚、本開示はこの実施形態に限定されず、他の実施形態では、R寸法r1,r2,r3のそれぞれは、径方向に対して平行な方向に沿って延びる大きさであってもよい。
【0025】
図4は、本開示の第1実施形態に係るR比率拡大領域を説明するための図である。
図5は、本開示の第1実施形態に係る一方側外周R比率と角度位置との関係を示す図である。
図4には、角度位置が0度、30度、60度、90度、120度、150度、180度、210度、240度、270度、300度におけるスクロール流路6の断面が示されている。
図5には、角度位置が0度、30度、60度、90度、120度、150度、180度、210度、240度、270度、300度における一方側外周R比率R1が示されている。
【0026】
図4に示すように、スクロール流路6にはR比率拡大領域Aが形成される。R比率拡大領域Aは一方側外周R比率拡大領域A1を含んでおり、この一方側外周R比率拡大領域A1は、一方側外周R比率R1がスクロール流路6の上流から下流に向かうにつれて大きくなる領域である。第1実施形態では、一方側外周R部34のR寸法r1は、角度位置が0度から300度おいて、一定であるように維持されている。一方で、スクロール流路6の幅寸法Xは、角度位置が0度から240度に向かうにつれて小さくなり、240度から300度において、一定となるように維持されている。尚、他方側外周R比率R2、及び他方側内周R比率R3のそれぞれは、角度位置が0度から300度に向かうにつれて、小さくなる、又は一定になるように構成されてもよい。
【0027】
また、
図5に示すように、角度位置が180度以上360度未満における一方側外周R比率R1は、角度位置が0度以上180度未満における一方側外周R比率R1よりも大きくてもよい。つまり、角度位置が180度以上360度未満における一方側外周R比率R1の最小値は、角度位置が0度以上180度未満における一方側外周R比率R1の最大値より大きい。
【0028】
(作用・効果)
本開示の第1実施形態に係るタービンハウジング1の作用・効果について説明する。スクロール流路6が矩形状の断面形状を有する場合、熱膨張による応力がスクロール流路6の角部分(一方側外周R部34、他方側外周R部36、他方側内周R部38)に集中し、この応力によって損傷してしまう虞がある。
【0029】
しかしながら、第1実施形態によれば、スクロール流路6には、一方側外周R比率R1が、スクロール流路6の上流から下流に向かうにつれて大きくなる一方側外周R比率拡大領域A1が形成されている。このため、スクロール流路6の角部分に相当する一方側外周R部34は、熱膨張による応力の集中が抑制され、スクロール流路6の損傷を抑制することができる。
【0030】
また、本発明者らの知見によれば、熱膨張による応力は、スクロール流路6のうち軸受ハウジング102側(軸線方向一方側)の方が大きい。第1実施形態によれば、R比率拡大領域Aは軸線方向一方側に形成される一方側外周R比率拡大領域A1を含む。このため、スクロール流路6の軸受ハウジング102側の角部分に相当する一方側外周R部34に集中する熱膨張による応力を低減し、スクロール流路6の損傷を抑制することができる。
【0031】
図6は、従来のスクロール流路06に作用する熱応力の大きさの分布を示した熱応力解析図である。
図6に示すように、従来のスクロール流路06では、角度位置が180度以上360度未満における熱膨張による応力は、角度位置が0度以上180度未満における熱膨張による応力よりも大きくなる場合が多い。これに対して、第1実施形態によれば、
図5に示すように、角度位置が180度以上360度未満における一方側外周R比率R1は、角度位置が0度以上180度未満における一方側外周R比率R1よりも大きいので、一方側外周R部34のうち角度位置が180度以上360度未満の部分に集中する熱膨張による応力を低減し、スクロール流路6の損傷を抑制することができる。
【0032】
また、第1実施形態によれば、一方側外周R部34のR寸法r1は、角度位置が0度以上300度未満の範囲において一定であるため、R寸法r1が一定でない場合と比較して、一方側外周R部34の形成が容易となり、スクロール流路6の製造を容易にすることができる。尚、幾つかの実施形態では、一方側外周R部34のR寸法r1は、角度位置が少なくとも0度以上240度未満の範囲において一定である。この場合、角度位置が240度以上では、一方側外周R部34のR寸法r1は、下流に向かうにつれて小さくなっていってもよい。
【0033】
また、第1実施形態によれば、ターボチャージャ100は上述した効果を奏するタービンハウジング1を備えるため、スクロール流路6が損傷する虞を低減させ、ターボチャージャ100の製品寿命を延ばすことができる。
【0034】
尚、第1実施形態では、R比率拡大領域Aは、一方側外周R比率R1がスクロール流路6の上流から下流に向かうにつれて大きくなる一方側外周R比率拡大領域A1を含む場合を例にして説明したが、本開示はこの実施形態に限定されない。本開示に係るタービンハウジング1のスクロール流路6には、一方側外周R比率R1、他方側外周R比率R2、及び他方側内周R比率R3のうち少なくとも1つが、スクロール流路6の上流から下流に向かうにつれて大きくなるR比率拡大領域Aが形成される。
【0035】
<第2実施形態>
本開示の第2実施形態に係るタービンハウジング1について説明する。第2実施形態は、R比率拡大領域Aが他方側外周R比率拡大領域A2をさらに含む点で異なるが、それ以外の構成は第1実施形態で説明した構成と同じである。第2実施形態において、第1実施形態の構成要件と同じものは同じ参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0036】
図7は、本開示の第2実施形態に係るR比率拡大領域を説明するための図である。
図7に示すように、スクロール流路6には、他方側外周R比率拡大領域A2をさらに含むR比率拡大領域Aが形成される。この他方側外周R比率拡大領域A2は、他方側外周R比率R2がスクロール流路6の上流から下流に向かうにつれて大きくなる領域である。第2実施形態では、他方側外周R部36のR寸法r2は、角度位置が0度から300度おいて、一定となるように維持されている。
【0037】
また、不図示であるが、角度位置が180度以上360度未満における他方側外周R比率R2は、角度位置が0度以上180度未満における他方側外周R比率R2よりも大きくてもよい。つまり、角度位置が180度以上360度未満における他方側外周R比率R2の最小値は、角度位置が0度以上180度未満における他方側外周R比率R2の最大値より大きい。
【0038】
第2実施形態によれば、スクロール流路6のタービンハウジング1の出口側(軸線方向他方側)の角部分に相当する他方側外周R部36に集中する熱膨張による応力を低減し、スクロール流路6の損傷を抑制することができる。また、第2実施形態によれば、他方側外周R部36のうち角度位置が180度以上360度未満の部分に集中する熱膨張による応力を低減し、スクロール流路6の損傷を抑制することができる。また、第2実施形態によれば、他方側外周R部36のR寸法r2は、角度位置が0度以上300度未満の範囲において一定であるため、R寸法r2が一定でない場合と比較して、他方側外周R部36の形成が容易となり、スクロール流路6の製造を容易にすることができる。尚、幾つかの実施形態では、他方側外周R部36のR寸法r2は、角度位置が少なくとも0度以上240度未満の範囲において一定である。この場合、角度位置が240度以上では、他方側外周R部36のR寸法r2は、下流に向かうにつれて小さくなっていってもよい。
【0039】
また、幾つかの実施形態では、スクロール流路6には、他方側内周R比率R3がスクロール流路6の上流から下流に向かうにつれて大きくなる領域を含むR比率拡大領域Aが形成されてもよい。この場合、角度位置が180度以上360度未満における他方側内周R比率r3は、角度位置が0度以上180度未満における他方側内周R比率r3よりも大きくてもよい。
【0040】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0041】
(1)本開示に係るタービンハウジング(1)は、スクロール流路(6)を有するタービンハウジングであって、前記スクロール流路は、前記タービンハウジングの軸線(O)方向に沿って延在する外周側面(26)と、前記外周側面よりも前記タービンハウジングの径方向内側に位置する内周側面(28)と、前記タービンハウジングの軸線方向における一方側の側面である一方側面であって、前記タービンハウジングの径方向に沿って延在する一方側面(30)と、前記タービンハウジングの軸線方向における他方側の側面である他方側面であって、前記一方側面よりも前記タービンハウジングの出口側に配置されるとともに、前記タービンハウジングの径方向に沿って延在する他方側面(32)と、前記一方側面の外周端(30b)と前記外周側面の一方端(26a)とを接続する一方側外周R部(34)と、前記他方側面の外周端(32b)と前記外周側面の他方端(26b)とを接続する他方側外周R部(36)と、前記他方側面の内周端(32a)と前記内周側面の他方端(28b)とを接続する他方側内周R部(38)と、を含み、前記スクロール流路の断面視において、前記一方側外周R部、前記他方側外周R部、及び前記他方側内周R部のそれぞれのR寸法(r1、r2、r3)に対する前記スクロール流路の前記軸線方向に沿った幅寸法の比率を、一方側外周R比率(R1)、他方側外周R比率(R2)、及び他方側内周R比率(R3)とそれぞれ定義すると、前記スクロール流路には、前記一方側外周R比率、前記他方側外周R比率、及び前記他方側内周R比率のうち少なくとも1つが、前記スクロール流路の上流から下流に向かうにつれて大きくなるR比率拡大領域(A)が形成される。
【0042】
スクロール流路が矩形状の断面形状を有する場合、熱膨張による応力がスクロール流路の角部分に集中し、この応力によってスクロール流路が損傷してしまう虞がある。しかしながら、上記(1)に記載の構成によれば、スクロール流路には、一方側外周R比率、他方側外周R比率、及び他方側内周R比率のうち少なくとも1つが、スクロール流路の上流から下流に向かうにつれて大きくなるR比率拡大領域が形成される。このため、スクロール流路の角部分に相当する一方側外周R部、他方側外周R部、及び他方側内周R部のうち少なくとも1つは、熱膨張による応力の集中が抑制され、スクロール流路の損傷を抑制することができる。
【0043】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の構成において、前記R比率拡大領域は、前記一方側外周R比率が前記スクロール流路の上流から下流に向かうにつれて大きくなる一方側外周R比率拡大領域(A1)を含む。
【0044】
熱膨張による応力は、スクロール流路のうち軸受ハウジング側(軸線方向一方側)の方が大きい。上記(2)に記載の構成によれば、R比率拡大領域は、一方側外周R比率がスクロール流路の上流から下流に向かうにつれて大きくなる一方側外周R比率拡大領域を含む。このため、スクロール流路の軸受ハウジング側の角部分に相当する一方側外周R部に集中する熱膨張による応力を低減し、スクロール流路の損傷を抑制することができる。
【0045】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)に記載の構成において、前記R比率拡大領域は、前記他方側外周R比率が前記スクロール流路の上流から下流に向かうにつれて大きくなる他方側外周R比率拡大領域(A2)を含む。
【0046】
上記(3)に記載の構成によれば、スクロール流路のタービンハウジングの出口側(軸線方向他方側)の角部分に相当する他方側外周R部に集中する熱膨張による応力を低減し、スクロール流路の損傷を抑制することができる。
【0047】
(4)幾つかの実施形態では、上記(2)に記載の構成において、前記タービンハウジングの軸線を中心とした前記スクロール流路の角度位置であって、前記スクロール流路の巻き始め部(20)の角度位置を0度、前記スクロール流路の巻き終わり部(20)の角度位置を360度と定義した場合に、前記角度位置が180度以上360度未満における前記一方側外周R比率は、前記角度位置が0度以上180度未満における前記一方側外周R比率よりも大きい。
【0048】
図6に示すように、角度位置が180度以上360度未満における熱膨張による応力は、角度位置が0度以上180度未満における熱膨張による応力よりも大きくなる場合が多い。上記(4)に記載の構成によれば、角度位置が180度以上360度未満における一方側外周R比率は、角度位置が0度以上180度未満における一方側外周R比率よりも大きいので、一方側外周R部のうち角度位置が180度以上360度未満の部分に集中する熱膨張による応力を低減し、スクロール流路の損傷を抑制することができる。
【0049】
(5)幾つかの実施形態では、上記(3)に記載の構成において、前記タービンハウジングの軸線を中心とした前記スクロール流路の角度位置であって、前記スクロール流路の巻き始め部(20)の角度位置を0度、前記スクロール流路の巻き終わり部(20)の角度位置を360度と定義した場合に、前記角度位置が180度以上360度未満における前記他方側外周R比率は、前記角度位置が0度以上180度未満における前記他方側外周R比率よりも大きい。
【0050】
上記(5)に記載の構成によれば、他方側外周R部のうち角度位置が180度以上360度未満の部分に集中する熱膨張による応力を低減し、スクロール流路の損傷を抑制することができる。
【0051】
(6)幾つかの実施形態では、上記(4)に記載の構成において、前記タービンハウジングの軸線を中心とした前記スクロール流路の角度位置であって、前記スクロール流路の巻き始め部(20)の角度位置を0度、前記スクロール流路の巻き終わり部(20)の角度位置を360度と定義した場合に、前記一方側外周R部の前記R寸法は、前記角度位置が少なくとも0度以上240度未満の範囲において一定である。
【0052】
上記(6)に記載の構成によれば、一方側外周R部のR寸法は、角度位置が少なくとも0度以上240度未満の範囲において一定であるため、R寸法が一定でない場合と比較して、一方側外周R部の形成が容易となり、スクロール流路の製造を容易にすることができる。
【0053】
(7)幾つかの実施形態では、上記(5)に記載の構成において、前記タービンハウジングの軸線を中心とした前記スクロール流路の角度位置であって、前記スクロール流路の巻き始め部(20)の角度位置を0度、前記スクロール流路の巻き終わり部(20)の角度位置を360度と定義した場合に、前記他方側外周R部の前記R寸法は、前記角度位置が少なくとも0度以上240度未満の範囲において一定である。
【0054】
上記(7)に記載の構成によれば、他方側外周R部のR寸法は、角度位置が少なくとも0度以上240度未満の範囲において一定であるため、R寸法が一定でない場合と比較して、他方側外周R部の形成が容易となり、スクロール流路の製造を容易にすることができる。
【0055】
(8)本開示に係るターボチャージャ(100)は、上記(1)から(7)の何れか1つに記載のタービンハウジングを備える。上記(8)に記載の構成によれば、上記(1)から(7)の何れか1つに記載のタービンハウジングを備えるため、スクロール流路が損傷する虞を低減させ、ターボチャージャの製品寿命を延ばすことができる。
【符号の説明】
【0056】
1 タービンハウジング
2 タービンロータ
6 スクロール流路
12 導入流路
14 タービン室
16 排出流路
18 排ガス入口部
19a スクロール流路の入口部
19b スクロール流路の出口部
20 舌部
24 連通流路
26 外周側面
26a 外周側面の一方端
26b 外周側面の他方端
28 内周側面
28a 内周側面の一方端
28b 内周側面の他方端
30 一方側面
30a 一方側面の内周端
30b 一方側面の外周端
32 他方側面
32a 他方側面の内周端
32b 他方側面の外周端
34 一方側外周R部
36 他方側外周R部
38 他方側内周R部
100 ターボチャージャ
102 軸受ハウジング
104 コンプレッサハウジング
A R比率拡大領域
A1 一方側外周R比率拡大領域
A2 他方側外周R比率拡大領域
G 排ガス
O 回転軸線
R1 一方側外周R比率
R2 他方側外周R比率
R3 他方側内周R比率
r1 一方側外周R部のR寸法
r2 他方側外周R部のR寸法
r3 他方側内周R部のR寸法
X スクロール流路の幅寸法