(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】バッテリ温度調整システム
(51)【国際特許分類】
B60L 58/26 20190101AFI20231025BHJP
B60L 53/14 20190101ALI20231025BHJP
B60L 58/27 20190101ALI20231025BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20231025BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20231025BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20231025BHJP
H01M 10/651 20140101ALI20231025BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20231025BHJP
H01M 10/6571 20140101ALI20231025BHJP
H01M 10/6569 20140101ALI20231025BHJP
H01M 10/663 20140101ALI20231025BHJP
H01M 10/633 20140101ALI20231025BHJP
B60K 11/04 20060101ALI20231025BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20231025BHJP
【FI】
B60L58/26
B60L53/14
B60L58/27
B60L58/12
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/651
H01M10/615
H01M10/6571
H01M10/6569
H01M10/663
H01M10/633
B60K11/04 G
B60K1/04 Z
(21)【出願番号】P 2022016699
(22)【出願日】2022-02-04
【審査請求日】2022-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】高地 修平
(72)【発明者】
【氏名】大垣 徹
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-027797(JP,A)
【文献】特開2018-067510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00-58/40
H01M 10/613-10/663
B60K 11/04
B60K 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電源からの電力により充電可能なバッテリと、
前記バッテリの温度を調整するバッテリ温調装置と、
前記バッテリ及びバッテリ温調装置を制御する制御装置と、を備えるバッテリ温度調整システムであって、
前記制御装置は、
車両の走行予定計画を取得する走行予定計画取得部と、
前記走行予定計画に基づいて、該走行予定計画における前記車両の状態に応じた前記バッテリ温調装置の温調能力で前記バッテリの温度が目標温度域に存在するよう
前記バッテリの温度を調整する通常バッテリ冷却制御を
行った場合のバッテリ温度予
測を導出する、通常バッテリ冷却制御計画部と、
前記バッテリの温調計画を作成する温調計画作成部と、を備え、
前記温調計画作成部は、
前記バッテリ温度予測が
、前記目標温度域の高温側目標温度以上の温度である所定温度を超えるオーバーシュートが発生することが予測されるとき、前記バッテリの温度を前記所定温度以下にするために必要なバッテリ温調量を導出し、
前記バッテリ温調量を、前記バッテリ温調装置の温調能力に基づいて、前記オーバーシュートの発生前に振り分ける
分配制御を行い、
前記分配制御において前記バッテリ温調量を振り分ける振分先は、前記通常バッテリ冷却制御においてバッテリ冷却量が零となる無冷却モード領域である、バッテリ温度調整システム。
【請求項2】
請求項1に記載のバッテリ温度調整システムであって、
前記温調計画作成部は、
前記分配制御では、前記無冷却モード領域のうち、前記オーバーシュートの発生時から
前記走行予定計画のスタート時に向かって順に優先的に振り分ける、バッテリ温度調整システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のバッテリ温度調整システムであって、
車室内の温度を調整する空調装置と、
該バッテリ温調装置の冷媒と該空調装置の冷媒同士で熱交換可能な熱交換部と、をさらに備える、バッテリ温度調整システム。
【請求項4】
請求項3に記載のバッテリ温度調整システムであって、
前記無冷却モード領域は、前記通常バッテリ冷却制御の下で前記熱交換部が非作動の領域である、バッテリ温度調整システム。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のバッテリ温度調整システムであって、
前記バッテリ温調装置の
温調能力は、前記車両の状態及び前記空調装置の状態に基づいて決定される、バッテリ温度調整システム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のバッテリ温度調整システムであって、
前記制御装置は、前記所定温度である目標バッテリ温度を設定する目標バッテリ温度設定部をさらに備え、
前記目標バッテリ温度設定部は、前記走行予定計画から前記バッテリのSOCの推移及び要求BAT出力を算出し、算出した前記バッテリのSOCの推移及び要求BAT出力から前記車両の走行時の前記目標バッテリ温度を設定する、バッテリ温度調整システム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のバッテリ温度調整システムであって、
前記制御装置は、前記所定温度である目標バッテリ温度を設定する目標バッテリ温度設定部をさらに備え、
前記目標バッテリ温度設定部は、前記走行予定計画から充電設備の情報を取得し、前記充電設備の情報から前記車両の充電時の前記目標バッテリ温度を設定する、バッテリ温度調整システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるバッテリ温度調整システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球の気候変動に対する具体的な対策として、低炭素社会又は脱炭素社会の実現に向けた取り組みが活発化している。車両においても、CO2排出量の削減やエネルギー効率の改善が強く要求され、駆動源の電動化が急速に進んでいる。具体的には、電気自動車(Electrical Vehicle)あるいはハイブリッド電気自動車(Hybrid Electrical Vehicle)といった、車両の駆動源としての電動機と、この電動機に電力を供給可能な二次電池としてのバッテリと、を備える車両の開発が進められている。
【0003】
このような車両では、外部電源に接続してバッテリを充電する普通充電や普通充電より大電流を流して充電する急速充電が行われ得る(例えば、特許文献1)。バッテリは充放電時に発熱するため、適切に冷却する必要がある。特に、急速充電時にはバッテリが発熱しやすい。バッテリが所定温度以上に発熱してしまうと、安全性の観点から充電出力が制限される。
【0004】
これに対し、特許文献1に記載の産業車両のバッテリ温度調節システムでは、コンテナ用無人搬送車が走行経路を周回するときに、充電前タイミングから充電タイミングにかけてバッテリを充電前目標温度まで冷却するようにバッテリ温度調節装置を制御することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のバッテリ温度調節システムを一般の車両に搭載しようとすると、バッテリを充電前目標温度まで冷却したくても空調装置(エアコン)の使用状況などに応じてバッテリ温度調節装置の冷却能力が足らず、バッテリを充電前目標温度まで冷却できない虞がある。一方、バッテリの冷却をするために空調装置(エアコン)の使用を制限すると、利便性が悪化してしまう。また、充電時に限らず、高負荷走行時においても、バッテリの発熱により出力が制限されることが起こり得る。
【0007】
本発明は、利便性を損なうことなく、バッテリの出力が制限されることを予め回避することができるバッテリ温度調整システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
外部電源からの電力により充電可能なバッテリと、
前記バッテリの温度を調整するバッテリ温調装置と、
前記バッテリ及びバッテリ温調装置を制御する制御装置と、を備えるバッテリ温度調整システムであって、
前記制御装置は、
車両の走行予定計画を取得する走行予定計画取得部と、
前記走行予定計画に基づいて、該走行予定計画における前記車両の状態に応じた前記バッテリ温調装置の温調能力で前記バッテリの温度が目標温度域に存在するよう前記バッテリの温度を調整する通常バッテリ冷却制御を行った場合のバッテリ温度予測を導出する、通常バッテリ冷却制御計画部と、
前記バッテリの温調計画を作成する温調計画作成部と、を備え、
前記温調計画作成部は、
前記バッテリ温度予測が、前記目標温度域の高温側目標温度以上の温度である所定温度を超えるオーバーシュートが発生することが予測されるとき、前記バッテリの温度を前記所定温度以下にするために必要なバッテリ温調量を導出し、
前記バッテリ温調量を、前記バッテリ温調装置の温調能力に基づいて、前記オーバーシュートの発生前に振り分ける分配制御を行い、
前記分配制御において前記バッテリ温調量を振り分ける振分先は、前記通常バッテリ冷却制御においてバッテリ冷却量が零となる無冷却モード領域である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、利便性の悪化を抑制しながら、出発後にバッテリの出力制限が行われることを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】バッテリ温度調整システム10の構成を示す図である。
【
図3】ナビゲーション装置17の構成を示す図である。
【
図4】走行予定計画の一例と、冷却能力分配制御を説明するグラフである。
【
図6】走行時における目標BAT温度の設定方法を説明する図である。
【
図7】急速充電時における目標BAT温度の設定方法を説明する図である。
【
図8】バッテリ温調装置の温調能力(チラー抜熱量)を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のバッテリ温度調整システムの一実施形態を、添付図面に基づいて説明する。
【0012】
[バッテリ温度調整システム]
バッテリ温度調整システム10は、
図1に示すように、バッテリBATと、温調装置16と、バッテリBAT及び温調装置16を制御する制御装置20と、を備え、電気自動車等の車両に搭載される。
【0013】
[バッテリ]
バッテリBATは、例えば、リチウムイオン電池などの二次電池である。バッテリBATには、車両の外部にある外部電源50、例えば急速充電器から導入される電力により充電可能に構成される。バッテリBATは、主として不図示の駆動モータに電力を供給する。また、バッテリBATは、駆動モータの回生時に供給された電力でも充電可能に構成される。
【0014】
[温調装置]
温調装置16は、
図2に示すように、空調装置(エアコンディショナー)18とバッテリ温調回路19とを備える。なお、以下、空調装置18をエアコン18と称する。エアコン18は、冷凍サイクル180を備え、車室内の空気の状態を調整することにより車室内の環境を調整する。エアコン18は、乗員(以下、ユーザとも称する)の操作を受け付けた後述の温調制御部21によって制御される。バッテリ温調回路19は、冷媒流路に冷媒を流すことで、バッテリBATなどを冷却又は加温する。バッテリ温調回路19の動作は、温調制御部21によって、バッテリ温調回路19の温調能力に基づきバッテリBATの温度が目標温度域に存在するよう制御される。以下、この制御を通常バッテリ冷却制御と称するが、バッテリ温調回路19の動作は、通常バッテリ冷却制御に加えて、後述する冷却能力分配制御によっても制御される。
【0015】
温調装置16では、エアコン18の冷凍サイクル180と、バッテリ温調回路19とが、チラー189を介して互いの冷媒同士が熱交換可能に構成される。
【0016】
図2を参照してより具体的に説明すると、エアコン18の冷凍サイクル180は、圧縮機181、凝縮器182、膨張弁183、及び蒸発器184を直列に備え、さらに膨張弁183及び蒸発器184が配置される第1流路185aに対し、他の膨張弁186及びチラー189が配置される第2流路185bが並列に設けられる。また、第1流路185aと第2流路185bの分岐部185cと膨張弁183との間には遮断弁187が設けられ、遮断弁187をON状態とすることで、冷媒が第1流路185a及び第2流路185bの両方に流れ、OFF状態とすることで、冷媒が第2流路185bにのみ流れる。
【0017】
バッテリ温調回路19は、冷媒を供給するポンプEWP、チラー189、バッテリBAT、及びヒーター30が直列に接続されている。
【0018】
チラー189では、冷凍サイクル180の冷媒とバッテリ温調回路19の冷媒との間で熱交換が行われる。したがって温調装置16では、エアコン18の冷凍サイクル180の冷却能力が、エアコン用とバッテリ冷却用とに配分される。即ち、エアコン18を利用しない場合(エアコンOFF)、遮断弁187がOFF状態となり、冷凍サイクル180の冷却能力を全てバッテリ冷却用に用いることができる。一方、エアコン18を利用している場合(エアコンON)、遮断弁187がON状態となり、冷凍サイクル180の冷却能力のうちバッテリ冷却用に用いることができる冷却能力は、エアコン用に分配される分だけ少なくなる。したがって、冷凍サイクル180の冷却能力のうちバッテリ冷却用に用いることができる冷却能力は、エアコン18のON/OFFに依存する。なお、バッテリBATを加温する際には、ヒーター30をONにすればよい。
【0019】
[ナビゲーション装置]
つぎに、
図3を参照して、ナビゲーション装置17の構成の一例について説明する。
図3に示すように、ナビゲーション装置17は、プロセッサ171と、メモリ172と、GPSユニット173と、表示部174と、操作部175と、インターフェース176と、を備える。また、各構成部171~176は、バス177によってそれぞれ接続されている。
【0020】
プロセッサ171は、例えば、ナビゲーション装置17全体の制御を司るCPUである。メモリ172は、例えば、RAM等のメインメモリと、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリである補助メモリと、を含む。メインメモリは、プロセッサ171のワークエリアとして使用される。補助メモリは、ナビゲーション装置17を動作させる各種プログラムを記憶する。補助メモリに記憶されたプログラムは、メインメモリにロードされ、プロセッサ171によって実行される。
【0021】
また、ナビゲーション装置17の補助メモリは、車両の現在位置の特定や、目的地までの経路案内等に用いられる地図データも記憶している。詳細な説明は省略するが、地図データは、車両が移動可能な道路をあらわす道路データや、各施設についての情報をあらわす施設データ等を含んでいる。
【0022】
GPSユニット173は、GPS衛星からのGPSシグナル(電波)を受信し、車両の現在位置を測位する。GPSユニット173により測位された現在位置は、車両の現在位置を特定する際に利用される。
【0023】
表示部174は、文字や画像を表示するディスプレイ、ディスプレイ全体の制御を行うグラフィックコントローラ、ディスプレイに表示する画像の画像データを一時的に記録するVRAM(Video RAM)等のバッファメモリを含んで構成される。ディスプレイは、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイである。
【0024】
操作部175は、ユーザから受け付けた操作に対応する操作信号をナビゲーション装置17の内部(例えばプロセッサ171)へ入力する。操作部175は、例えばタッチパネルである。また、操作部175は、複数のキーを備えたリモコン、キーボード、マウス等であってもよい。
【0025】
インターフェース176は、ナビゲーション装置17と外部(例えばバッテリ情報取得部22、走行予定計画取得部23)との間のデータの入出力を制御する。インターフェース176は、プロセッサ171によって制御される。なお、ナビゲーション装置17は、一部又は全部の機能が、例えば、車両のユーザの保有するスマートフォンやタブレット端末等の端末装置の機能によって実現されてもよい。
【0026】
ナビゲーション装置17は、例えば、車両の現在地である自車位置から、車両のユーザにより設定された目的地までの経路を、地図データなどを参照して決定する。また、ナビゲーション装置17は、バッテリ情報取得部22からバッテリBATのSOC(State Of Charge;充電率)情報を取得し、充電が必要な場合には充電ステーションでの充電を誘導経路に組み込んだ走行予定計画を作成し、作成した走行予定計画をディスプレイに表示することによってユーザに案内する。
【0027】
[制御装置]
制御装置20は、
図1に示すように、温調制御部21と、バッテリ情報取得部22と、走行予定計画取得部23と、目標バッテリ温度設定部24と、通常バッテリ冷却制御計画部25と、バッテリ温調計画作成部26と、を備える。制御装置20は、プロセッサ、メモリ、インターフェース等を備えるECU(Electronic Control Unit)によって実現される。なお、各機能部は、それぞれ別体の制御装置で構成されていてもよい。
【0028】
温調制御部21は、ユーザの要求等に応じてエアコン18を制御するとともに、通常バッテリ冷却制御及び冷却能力分配制御によりバッテリ温調回路19を制御する。
【0029】
バッテリ情報取得部22は、不図示のセンサ装置から現在のバッテリBATの温度、セル電圧を取得するとともに、各種情報に基づいてSOCを推定する。
【0030】
走行予定計画取得部23は、ナビゲーション装置17から走行予定計画を取得する。
図4は、走行予定計画の一例を示しており、例えば、時刻t1から時刻t2までは時速120kmでクルーズ走行を行い、時刻t2から時刻t3まで充電ステーションで急速充電を行う走行予定を含む走行予定計画である。
【0031】
通常バッテリ冷却制御計画部25は、走行予定計画に沿ってバッテリ温調回路19の温調能力に基づきバッテリBATの温度が目標温度域に存在するよう通常バッテリ冷却制御を設定する。なお、この目標温度域は、本実施形態ではT2(℃)~T3(℃)である。また、バッテリ温調回路19の温調能力は、バッテリBATを冷却する場合、温調装置16においてバッテリ冷却用に用いることができる冷却能力であり、チラー189がバッテリ温調回路19の冷媒の熱を下げることができる熱量である。以下、この熱量をチラー抜熱量と称する。
【0032】
バッテリ温調回路19の温調能力、即ちチラー抜熱量は、車両の状態及びエアコン18の状態に基づいて決定される。
図8に示すように、車両の状態は、例えば、プラグアウトされた状態で車両が放置された状態(Plug-out放置(IG-OFF))、走行中、普通充電中、急速充電中、プラグインされた状態で車両が放置された状態(Plug-in放置(IG-OFF))の5段階に分類される。また、エアコン18の状態は、エアコン18がオフ状態(A/C_OFF)、エアコン18が空調優先モードである状態(空調優先モード)、エアコン18がオン状態(A/C_ON)の3段階に分類される。空調優先モードは、車両の始動時に積極的に車室を温調するモードである。
【0033】
そして、車両の状態及びエアコン18の状態の組合せに応じて、5つのチラー冷却モードに分類される。チラー冷却モードは、無冷却モード、空調優先モード、A/C協調時チラー冷却モード、停車時且つA/C協調時チラー冷却モード、チラー単独運転時モード、停車時且つチラー単独運転時モード、の6段階から構成される。この6段階のモードにはそれぞれ冷却能力(0<W1<W3<W2<W5<W4)が設定される。したがって、バッテリ温調計画作成部26は、走行予定計画に基づいて、バッテリ温度予測とともに、その際のバッテリ温調回路19の冷却能力、即ちチラー抜熱量を演算することができる。
【0034】
通常バッテリ冷却制御計画部25は、走行予定計画において通常バッテリ冷却制御を行った場合のバッテリ温度予測と、その際のチラー抜熱量を演算する。
図4は、走行予定計画とともに、通常バッテリ冷却制御計画部25によって演算されたバッテリ温度予測とチラー抜熱量(図中A~C)とを示している。
図4中、A/Cはエアコンを意味し、IGはイグニッションを意味する。
【0035】
目標バッテリ温度設定部24は、走行予定計画からバッテリBATのSOCの推移(以下、SOC推移)及び要求BAT出力を算出する。
【0036】
さらに目標バッテリ温度設定部24は、算出したバッテリBATのSOC推移及び要求BAT出力から目標BAT温度を設定する。例えば、目標バッテリ温度設定部24は、
図6に示すように、走行予定計画における走行時には、取得したバッテリBATのSOC推移及び要求BAT出力に基づいて、SOC-バッテリ温度マップを参照して未来で要求されるBAT出力を満足する、目標BAT温度を設定する。また、目標バッテリ温度設定部24は、
図7に示すように、走行予定計画における充電時には、ナビゲーション装置17やサーバ装置から充電予定の充電ステーションの充電器の電流(設備電流)と閉回路電圧CCV(Closed circuit voltage)推移を取得し、CCV-バッテリ温度マップを参照してBAT回生制限にかからないように、走行予定計画における充電時の目標BAT温度を設定する。なお、この目標BAT温度は、バッテリBATのパワーセーブを行うパワーセーブ温度よりも低い温度であって、通常バッテリ冷却制御の高温側目標温度(T3(℃))以上の温度である。
【0037】
バッテリ温調計画作成部26は、バッテリBATの温調計画を作成する。バッテリ温調計画作成部26は、通常バッテリ冷却制御計画部25で演算されたバッテリ温度予測と、目標バッテリ温度設定部24で設定した目標BAT温度を比較し、バッテリ温度予測が目標BAT温度を超える(いわゆる、オーバーシュートが発生する)場合、不足するバッテリ冷却量を算出する。不足するバッテリ冷却量とは、バッテリ温度予測を目標BAT温度以下にするために必要なバッテリ冷却量である。
【0038】
不足するバッテリ冷却量の最小値をグラフで表した場合、
図5に示すように、オーバーシュートが発生した時点から温度予測の変曲点までにおける、バッテリ温度予測と目標BAT温度との間の面積に相当する(
図5中のD)。
【0039】
バッテリ温調計画作成部26は、オーバーシュートが発生する場合、不足するバッテリ冷却量を、オーバーシュートが発生する前に振り分ける。上記した不足するバッテリ冷却量の最小値を用いることで、最小の消費電力でオーバーシュートを抑制できる。
【0040】
バッテリ温調計画作成部26は、オーバーシュート前であって、且つ、通常バッテリ冷却制御においてバッテリ冷却量が零の領域、即ち、無冷却モードに対応する領域(以下、チラー非動作領域と称する)に割り当てる。
【0041】
具体的には、
図4に示すように、チラー非動作領域E~Gのうち、オーバーシュート発生時からスタート時に向かってE、F、Gの順に割り当てる。
【0042】
図9は、冷却能力分配制御のフロー図である。
先ず、走行予定計画取得部23は、ナビゲーション装置17から走行予定計画を取得する(S1)。続いて、通常バッテリ冷却制御計画部25は、走行予定計画において通常バッテリ冷却制御を行った場合のバッテリ温度予測及びチラー抜熱量を演算する(S2)。また、目標バッテリ温度設定部24は、走行予定計画からバッテリBATのSOCの推移(以下、SOC推移)及び要求BAT出力を算出し(S3)、目標BAT温度を設定する(S4)。なお、ステップS2と、ステップS3及びステップS4とは、順番が逆でもよく、同時に行ってもよい。
【0043】
バッテリ温調計画作成部26は、バッテリ温度予測と目標BAT温度を比較する(S5)。バッテリ温度予測が目標BAT温度を超えるオーバーシュートが発生しない場合(S6のNO)、処理を終了する。
【0044】
バッテリ温度予測が目標BAT温度を超えるオーバーシュートが発生する場合(S6のYES)、バッテリ温調計画作成部26は、不足するバッテリ冷却量を算出し(S7)、不足するバッテリ冷却量をオーバーシュートが発生する前に振り分ける(S8)。バッテリ温調計画作成部26は、ステップS5~ステップS8の走行予定計画の全てにおいてオーバーシュートが発生しなくなるまでこの処理を繰り返す。
【0045】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【0046】
また、本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。なお、括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を示しているが、これに限定されるものではない。
【0047】
(1) 外部電源(外部電源50)からの電力により充電可能なバッテリ(バッテリBAT)と、
前記バッテリの温度を調整するバッテリ温調装置(バッテリ温調回路19)と、
前記バッテリ及びバッテリ温調装置を制御する制御装置(制御装置20)と、を備えるバッテリ温度調整システム(バッテリ温度調整システム10)であって、
前記制御装置は、
車両の走行予定計画を取得する走行予定計画取得部(走行予定計画取得部23)と、
前記バッテリの温度が目標温度域に存在するよう通常バッテリ冷却制御を計画し、該通常バッテリ冷却制御におけるバッテリ温度予測とバッテリ温調装置の温調能力を導出する、通常バッテリ冷却制御計画部(通常バッテリ冷却制御計画部25)と、
前記バッテリの温調計画を作成する温調計画作成部(バッテリ温調計画作成部26)と、を備え、
前記温調計画作成部は、
前記バッテリ温度予測が所定温度を超えるオーバーシュートが発生することが予測されるとき、前記バッテリの温度を前記所定温度以下にするために必要なバッテリ温調量を導出し、
前記バッテリ温調量を、前記バッテリ温調装置の温調能力に基づいて、前記オーバーシュートの発生前に振り分ける、バッテリ温度調整システム。
【0048】
(1)によれば、走行予定計画において通常バッテリ冷却制御を行ったときのバッテリ温度予測が所定温度を超えるとき、バッテリの温度を所定温度以下にするために必要なバッテリ温調量を導出し、オーバーシュートの発生前に振り分ける計画を予め立てることで、出発後にバッテリの出力制限が行われることを回避でき、目的地到着時間が延長されることを回避できる。また、バッテリ温調装置の温調能力に基づいて必要なバッテリ温調量を振り分けるので、利便性の悪化を抑制できる。
【0049】
(2) (1)に記載のバッテリ温度調整システムであって、
前記温調計画作成部は、
前記バッテリ温調量を、前記バッテリ温調装置の温調能力を超えないように、前記オーバーシュートの発生時からスタート時に向かって順に優先的に振り分ける、バッテリ温度調整システム。
【0050】
(2)によれば、オーバーシュートの発生時からスタート時に向かって順に優先的に振り分けることで、オーバーシュートの発生をより適切に回避できる。
【0051】
(3) (1)又は(2)に記載のバッテリ温度調整システムであって、
車室内の温度を調整する空調装置(空調装置18)と、
該バッテリ温調装置の冷媒と該空調装置の冷媒同士で熱交換可能な熱交換部(チラー189)と、をさらに備える、バッテリ温度調整システム。
【0052】
(3)によれば、バッテリ冷却装置の冷媒と空調装置の冷媒同士で熱交換可能な熱交換部を備えるので、バッテリ冷却装置及び空調装置の冷凍サイクルの大型化を抑制できる。
【0053】
(4) (3)に記載のバッテリ温度調整システムであって、
前記バッテリ温調量を振り分ける振分先は、前記通常バッテリ冷却制御の下で前記熱交換部が非作動の領域である、バッテリ温度調整システム。
【0054】
(4)によれば、空調装置とバッテリ冷却装置とで冷却能力を分配するシステムで、熱交換部が非作動の領域にバッテリ温調量を振り分けることで、熱交換部の温調能力を有効に利用できる。
【0055】
(5) (3)又は(4)に記載のバッテリ温度調整システムであって、
前記バッテリ温調装置の冷却能力は、前記車両の状態及び前記空調装置の状態に基づいて決定される、バッテリ温度調整システム。
【0056】
(5)によれば、空調装置とバッテリ冷却装置とで冷却能力を分配するシステムで、バッテリ温調装置の冷却能力を適切に把握できる。
【0057】
(6) (1)~(5)のいずれかに記載のバッテリ温度調整システムであって、
前記制御装置は、前記所定温度である目標バッテリ温度を設定する目標バッテリ温度設定部(目標バッテリ温度設定部24)をさらに備え、
前記目標バッテリ温度設定部は、前記走行予定計画から前記バッテリのSOCの推移及び要求BAT出力を算出し、算出した前記バッテリのSOCの推移及び要求BAT出力から前記車両の走行時の前記目標バッテリ温度を設定する、バッテリ温度調整システム。
【0058】
(6)によれば、オーバーシュートを判断する車両走行時の目標バッテリ温度を、適切に設定できる。
【0059】
(7) (1)~(6)のいずれかに記載のバッテリ温度調整システムであって、
前記制御装置は、前記所定温度である目標バッテリ温度を設定する目標バッテリ温度設定部をさらに備え、
前記目標バッテリ温度設定部は、前記走行予定計画から充電設備の情報を取得し、前記充電設備の情報から前記車両の充電時の前記目標バッテリ温度を設定する、バッテリ温度調整システム。
【0060】
(7)によれば、オーバーシュートを判断する車両充電時の目標バッテリ温度を、適切に設定できる。
【符号の説明】
【0061】
10 バッテリ温度調整システム
18 空調装置
19 バッテリ温調回路(バッテリ温調装置)
20 制御装置
23 走行予定計画取得部
24 目標バッテリ温度設定部
25 通常バッテリ冷却制御計画部
26 バッテリ温調計画作成部(温調計画作成部)
50 外部電源
189 チラー(熱交換部)
BAT バッテリ