IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本エイアンドエル株式会社の特許一覧

<図面はありません>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物及びその成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/02 20060101AFI20231025BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20231025BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20231025BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20231025BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20231025BHJP
   C08L 25/12 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
C08L67/02
C08L21/00
C08L9/00
C08L83/04
B29C45/00
C08L25/12
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022048211
(22)【出願日】2022-03-24
(65)【公開番号】P2023141732
(43)【公開日】2023-10-05
【審査請求日】2022-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】399034220
【氏名又は名称】日本エイアンドエル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】湯川 泰亮
(72)【発明者】
【氏名】赤木 一斗
【審査官】岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-037936(JP,A)
【文献】特開2021-063196(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0002684(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0069467(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 25/02
C08L 21/00
C08L 9/00
C08L 101/06
C08L 83/04
C08L 67/02
B29C 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂、(B)ゴム含有重合体、及び(C)共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物であって、下記条件(1)~(4)を満足する熱可塑性樹脂組成物。
(1)(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂のISO178で測定した曲げ弾性率が、400MPa以上2000MPa以下
(2)(C)共重合体が、芳香族ビニル系単量体と、その他の単官能性ビニル系単量体との共重合体であって、その他の単官能性ビニル系単量体がシアン化ビニル系単量体、又は、シアン化ビニル系単量体及びマレイミド系単量体を含む
(3)(A)+(B)+(C)の合計100質量部中に、(A)10~40質量部、(B)5~40質量部、(C)20~80質量部含む
(4)(B)ゴム含有重合体が、ゴム質重合体とグラフト成分とを含むグラフト重合体
【請求項2】
(B)ゴム質重合体が、共役ジエン系ゴムを含むことを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
(D)グリシジル基含有単量体とその他の単量体との共重合体を、(A)+(B)+(C)の合計100質量部に対して、0.1~5質量部含有することを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
(E)ポリオルガノシロキサンとスチレン系樹脂を含むポリオルガノシロキサン系改質剤を、(A)+(B)+(C)の合計100質量部に対して、0.5~10質量部含有することを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
シボ加工用である、請求項1~のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
自動車内装用である、請求項1~のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物及びその成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ハンドル周りといった車内装部品は高級感が求められることが多く、シボ加工の製品が多い。部品単一当たりに使用される材料は多岐にわたり、オレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、革など様々な材料が使用されている。そのような中、シボ外観の統一感が求められているが、様々な材料を使用するため、統一感を出すことが難しい。とりわけ、ABS樹脂は優れた寸法安定性といった材料特性を持つためしばしば使用されるが、シボ外観が他樹脂と比べ劣るため、統一感を出すことが難しい。ABS樹脂が他樹脂と比べシボ外観に劣る原因としては、金型への転写が十分でないことが挙げられ、金型転写性の向上が求められている。
【0003】
特許文献1には、耐衝撃性、成形加工性、耐薬品性及び金型転写性を課題として、ジエン系ゴムに、芳香族ビニル、シアン化ビニル及びエポキシ基を有するビニル系単量体をグラフト共重合してなるグラフト共重合体と芳香族ポリエステル樹脂とからなる成形用樹脂組成物が開示されている。しかし、未だ満足できる金型転写性に至っていない。さらに、成形品の表面外観(フローマークやシルバーなどの外観不良が発生しない)についても未だ改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平1-163254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、金型転写性と表面外観のバランスに優れる熱可塑性樹脂組成物及びその成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の[1]~[8]で構成される。
[1](A)ポリブチレンテレフタレート樹脂、(B)ゴム含有重合体、及び(C)共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物であって、下記条件(1)~(3)を満足する熱可塑性樹脂組成物。
(1)(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂のISO178で測定した曲げ弾性率が、2000MPa以下
(2)(C)共重合体が、芳香族ビニル系単量体とその他の単官能性ビニル系単量体との共重合体
(3)(A)+(B)+(C)の合計100質量部中に、(A)5~40質量部、(B)5~40質量部、(C)20~80質量部含む
[2](B)ゴム含有重合体が、共役ジエン系ゴムを含むことを特徴とする[1]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[3] (C)共重合体が、芳香族ビニル系単量体と、シアン化ビニル系単量体及び/又はマレイミド系単量体を含む共重合体を含むことを特徴とする[1]~[2]のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[4](D)グリシジル基含有単量体とその他の単量体との共重合体を、(A)+(B)+(C)の合計100質量部に対して、0.1~5質量部含有することを特徴とする[1]~[3]のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[5](E)ポリオルガノシロキサン系改質剤の含有量を、(A)+(B)+(C)の合計100質量部に対して、0.5~10質量部含有することを特徴とする[1]~[4]のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[6]シボ加工用である、[1]~[5]のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[7]自動車内装用である、[1]~[5]のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[8] [1]~[7]のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、金型転写性と表面外観のバランスに優れる熱可塑性樹脂組成物及びその成形品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0009】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂、(B)ゴム含有重合体、及び(C)共重合体を含むものである。
【0010】
本発明に用いる(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸単位および1,4-ブタンジオール単位がエステル結合した構造を有するポリエステル樹脂であって、ポリブチレンテレフタレート樹脂(ホモポリマー)の他に、テレフタル酸単位および1,4-ブタンジオール単位以外の、他の共重合成分を含むポリブチレンテレフタレート共重合体や、ホモポリマーと当該共重合体との混合物を含む。
【0011】
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸以外のジカルボン酸単位を含んでいてもよいが、他のジカルボン酸の具体例としては、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ビフェニル-2,2’-ジカルボン酸、ビフェニル-3,3’-ジカルボン酸、ビフェニル-4,4’-ジカルボン酸、ビス(4,4’-カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類、1,4-シクロへキサンジカルボン酸、4,4’-ジシクロヘキシルジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸類、および、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸類等が挙げられる。
【0012】
ジオール単位としては、1,4-ブタンジオールの外に他のジオール単位を含んでいてもよいが、他のジオール単位の具体例としては、炭素原子数2~20の脂肪族または脂環族ジオール類、ビスフェノール誘導体類等が挙げられる。具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノ一ル、4,4’-ジシクロヘキシルヒドロキシメタン、4,4’-ジシクロヘキシルヒドロキシプロパン、ビスフェノ一ルAのエチレンオキシド付加ジオール等が挙げられる。また、上記のような二官能性モノマー以外に、分岐構造を導入するためトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の三官能性モノマーや分子量調節のため脂肪酸等の単官能性化合物を少量併用することもできる。
なお、これらの1,4-ブタンジオールの外に他のジオール単位を含んでいる場合の共重合量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂全セグメント中の1モル%以上、50モル%未満であることが好ましい。中でも、共重合量は好ましくは2モル%以上50モル%未満、より好ましくは3~40モル%、特に好ましくは5~20モル%である。
【0013】
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸と1,4-ブタンジオールとを重縮合させたポリブチレンテレフタレート単独重合体が好ましいが、また、カルボン酸単位として、前記のテレフタル酸以外のジカルボン酸1種以上および/またはジオール単位として、前記1,4-ブタンジオール以外のジオール1種以上を含むポリブチレンテレフタレート共重合体であってもよい。
【0014】
また、本発明に用いる(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂は、ISO178で測定した曲げ弾性率が、2000MPa以下である必要があり、1800MPa以下が好ましく、1700MPa以下がより好ましい。この範囲に調整することで、金型転写性に優れる傾向にある。また、下限は特に限定されないが、400MPa以上が好ましく、800MPa以上がより好ましい。この範囲に調整することで、耐衝撃性と機械的強度のバランスに優れる傾向にある。
【0015】
本発明に用いる(B)ゴム含有重合体は、ゴム質重合体及び/又はゴム質重合体とグラフト成分とを含むグラフト重合体である。
【0016】
ゴム質重合体としては、ポリブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)等の共役ジエン系ゴム;エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-非共役ジエン(エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン等)ゴム等のエチレン-プロピレン系ゴム;ポリブチルアクリレートゴム等のアクリル系ゴム;シリコーン系ゴムなどが挙げられ、1種又は2種以上用いることができ、さらに、これらを組み合わせた多層構造を有するゴム質重合体として用いることもできる。中でも、共役ジエン系ゴムを含むことが耐衝撃性の観点から好ましく、スチレン-ブタジエンゴムを含むことがより好ましい。
【0017】
(B)ゴム含有重合体が、ゴム質重合体とグラフト成分とを含むグラフト重合体を含む場合、グラフト重合体のゴム質重合体としては上述したものを使用でき、重量平均粒子径としては特に制限はないが、50~1000nmが好ましく、200~800nmがより好ましく、300~500nmがさらに好ましい。上記範囲に調整することで、機械的強度と表面外観のバランスに優れる傾向にある。
【0018】
グラフト成分としては、芳香族ビニル系単量体を含むことが好ましい。芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、パラメチルスチレン、ブロムスチレン等が挙げられ、中でも、スチレンが好ましく、1種又は2種以上用いることができる。
【0019】
さらに、グラフト成分として芳香族ビニル系単量体と共重合可能なその他の単量体が含まれていてもよく、シアン化ビニル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、マレイミド系単量体、アミド系単量体、不飽和カルボン酸系単量体、多官能性単量体等が挙げられ、1種又は2種以上用いることができる。
【0020】
シアン化ビニル系単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α-クロルアクリロニトリル、α-エチルアクリロニトリル等が挙げられ、中でも、アクリロニトリルが好ましく、1種又は2種以上用いることができる。
【0021】
(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸4-t-ブチルフェニル、(メタ)アクリル酸(ジ)ブロモフェニル、(メタ)アクリル酸クロルフェニル等が挙げられ、1種又は2種以上用いることができる。
【0022】
マレイミド系単量体としては、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等が挙げられ、1種又は2種以上用いることができる。
【0023】
アミド系単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド等が挙げられ、1種又は2種以上用いることができる。
【0024】
不飽和カルボン酸系単量体としては、(メタ)アクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸等が挙げられ、1種又は2種以上用いることができる。
【0025】
多官能性単量体としては、ジビニルベンゼン、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ジシクロペンタジエンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられ、1種又は2種以上用いることができる。
【0026】
グラフト成分の組成比率として特に制限はないが、芳香族ビニル系単量体50~90質量%とシアン化ビニル系単量体10~50質量%の組成比率、芳香族ビニル系単量体10~50質量%と(メタ)アクリル酸エステル系単量体50~90質量%の組成比率、芳香族ビニル系単量体20~70質量%、シアン化ビニル系単量体10~60質量%及び(メタ)アクリル酸エステル系単量体20~70質量%の組成比率が好ましい。
【0027】
グラフト重合体中のゴム質重合体の含有割合については特に制限はなく、20~80質量%が好ましく、40~70質量%がより好ましい。上記範囲に調整することで、機械的強度と表面外観のバランスに優れる傾向にある。
【0028】
グラフト重合体のグラフト率及びアセトン可溶分の還元粘度に特に制限はないが、グラフト率は20~150%であることが好ましく、30~100%がより好ましく、36~75%がさらに好ましい。アセトン可溶分の還元粘度は、0.2~1.5dl/gであることが好ましく、0.3~1.0dl/gであることがより好ましい。上記範囲に調整することで、機械的強度と流動性のバランスに優れる傾向にある。
【0029】
上記グラフト率及びアセトン可溶分の還元粘度は、下記により求めることができる。
【0030】
分別方法
三角フラスコにグラフト重合体を約2g、アセトンを60ml投入し、24時間浸漬させた。その後、遠心分離器を用いて15,000rpmで30分間、遠心分離することで可溶部と不溶部に分離する。不溶分は、真空乾燥により常温で一昼夜乾燥させることで得られる。可溶分は、アセトン可溶部をメタノールに沈殿させ、真空乾燥により常温で一昼夜乾燥させることで得られる。
グラフト率
グラフト率(%)=(X―Y)/Y×100
X:真空乾燥後のアセトン不溶分量(g)
Y:グラフト重合体中のゴム状重合体量(g)
アセトン可溶分の還元粘度(dl/g)
アセトン可溶分をN,N-ジメチルホルムアミドに溶解し、0.4g/100mlの濃度の溶液とした後、キャノンフェンスケ型粘度管を用い30℃で測定した流下時間より還元粘度を求める。
【0031】
本発明に用いる(C)共重合体は、芳香族ビニル系単量体とその他の単官能性ビニル系単量体との共重合体であり、1種又は2種以上用いることができる。
【0032】
(C)共重合体を構成する芳香族ビニル系単量体としては、上述のグラフト成分で記載した同様の単量体の1種又は2種以上を用いることができる。中でも、スチレンが耐衝撃性の観点から好ましい。
【0033】
(C)共重合体を構成するその他の単官能性ビニル系単量体としては、具体例を含め、上述のグラフト成分で記載したシアン化ビニル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、マレイミド系単量体、アミド系単量体、不飽和カルボン酸系単量体と同様の単量体の1種又は2種以上を用いることができる。
【0034】
中でも、(C)共重合体のその他の単官能性ビニル系単量体として、シアン化ビニル系単量体及び/又はマレイミド系単量体を含むことが、耐衝撃、機械的強度、耐熱性のバランスの観点から好ましい。
【0035】
(C)共重合体の組成比率として特に制限はないが、芳香族ビニル系単量体50~90質量%とシアン化ビニル系単量体10~50質量%の組成比率、芳香族ビニル系単量体20~70質量%とマレイミド系単量体30~80質量%の組成比率、芳香族ビニル系単量体40~65質量%、シアン化ビニル系単量体1~30質量%及びマレイミド系単量体5~59質量%の組成比率、芳香族ビニル系単量体1~35質量%、(メタ)アクリル酸エステル系単量体35~97質量%及びマレイミド系単量体2~30質量%の組成比率が好ましい。
【0036】
なお、(C)共重合体において、グリシジル基含有単量体に由来する構成単位を含む場合、その含有割合は2質量%未満であることが好ましく、(C)共重合体は、グリシジル基含有単量体に由来する構成単位を含まないことがより好ましい。
【0037】
(C)共重合体の還元粘度に特に制限はないが、0.2~1.5dl/gであることが好ましく、0.3~1.0dl/gであることがより好ましい。上記範囲に調整することで、耐衝撃性と流動性のバランスに優れる傾向にある。
【0038】
上記還元粘度は、下記式により求めることができる。
【0039】
(C)共重合体を、N,N-ジメチルホルムアミドに溶解し、0.4g/100mlの濃度の溶液とした後、キャノンフェンスケ型粘度管を用い30℃で測定した流下時間より還元粘度を求める。
【0040】
上記(B)ゴム含有重合体及び(C)共重合体の重合方法には特に制限はなく、公知の乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、塊状重合法及びこれらを組み合わせた方法により製造することができる。
【0041】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の含有量は、(A)+(B)+(C)の合計100質量部中に、5~40質量部であり、6~30質量部であることが好ましく、7~25質量部であることがより好ましく、8~23質量部であることがさらに好ましい。上記範囲に調整することで、金型転写性、表面外観及び曲げ弾性率のバランスに優れる傾向にある。
【0042】
(B)ゴム含有重合体の含有量は、(A)+(B)+(C)の合計100質量部中に、5~40質量部であり、7~35質量部であることが好ましく、10~30質量部であることがより好ましい。上記範囲に調整することで、耐衝撃性と曲げ弾性率のバランスに優れる傾向にある。
【0043】
(C)共重合体の含有量は、(A)+(B)+(C)の合計100質量部中に、20~80質量部であり、30~75質量部であることが好ましく、40~70質量部であることがより好ましい。上記範囲に調整することで、耐衝撃、機械的強度、曲げ弾性率及び耐熱性のバランスに優れる傾向にある。
【0044】
さらに、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、(D)グリシジル基含有単量体とその他の単量体との共重合体(以下、単に「(D)共重合体」と称する場合がある)を含むことが好ましい。(D)共重合体の含有量は、(A)+(B)+(C)の合計100質量部に対して、0.1~5質量部が好ましく、0.5~3質量部がより好ましい。上記範囲に調整することで、滞留熱安定性がより優れる傾向にある。
【0045】
(D)共重合体は、グリシジル基含有単量体及びグリシジル基含有単量体と共重合可能なその他の単量体を少なくとも含む単量体を共重合させて得られる共重合体である。すなわち、(D)共重合体は、グリシジル基含有単量体に由来する構成単位及びその他の単量体に由来する構成単位を少なくとも含むものである。(D)共重合体は、1種又は2種以上用いることができる。
【0046】
上記グリシジル基含有単量体としては、例えば、ラジカル重合性炭素-炭素二重結合及びグリシジル基を含む単量体が挙げられる。具体的には、アリルグリシジルエーテル、2-メチルアリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル等の不飽和グリシジルエーテル;(メタ)アクリル酸グリシジル、グリシジル基含有(メタ)アクリルアミド等の不飽和グリシジルエステルなどが挙げられる。中でも、(メタ)アクリル酸グリシジルが好ましい。上記グリシジル基含有単量体は、1種又は2種以上用いることができる。
【0047】
(D)共重合体におけるその他の単量体としては、例えば、α-オレフィン、脂肪酸ビニルエステル、ジエン系単量体、芳香族ビニル系単量体、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ビニルアルキルエーテル、シアン化ビニル系単量体、アミノ基含有単量体などが挙げられる。中でも、α-オレフィンを含むことが好ましく、α-オレフィン及び脂肪酸ビニルエステルを含むことが特に好ましい。上記その他の単量体は、1種又は2種以上用いることができる。
【0048】
上記α-オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、イソブテンなどの炭素数2~5のα-オレフィンが好ましく、より好ましくはエチレンである。
【0049】
上記脂肪酸ビニルエステルとしては、酢酸ビニルが好ましい。
【0050】
上記ジエン系単量体としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、フェニルプロパジエン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、1,5-ノルボルナジエン、1,3-シクロヘキサジエン、1,4-シクロヘキサジエン、1,5-シクロオクタジエン、1,3-シクロオクタジエン、α,ω-非共役ジエンなどが挙げられる。
【0051】
上記芳香族ビニル系単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、パラメチルスチレン、ブロモスチレンなどが挙げられる。
【0052】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸i-プロピル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等、アルキルエステルの炭素数が1~22のものが挙げられる。
【0053】
上記ビニルアルキルエーテルとしては、例えば、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルi-プロピルエーテル、ビニルn-プロピルエーテル、ビニルi-ブチルエーテル、ビニルn-アミルエーテル、ビニルi-アミルエーテル、ビニル2-エチルヘキシルエーテル、ビニルオクタデシルエーテルなど、炭素数が1~22のものが挙げられる。
【0054】
上記シアン化ビニル系単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α-クロルアクリロニトリル、α-エチルアクリロニトリル等が挙げられる。
【0055】
上記アミノ基含有単量体としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミドなどが挙げられる。
【0056】
上記その他の単量体としては、上述したものの他、マレイン酸ジ-n-アミルエステル、マレイン酸ジ-i-ブチルエステル、マレイン酸ジメチルエステル、マレイン酸ジ-n-プロピルエステル、マレイン酸ジ-オクチルエステル、マレイン酸ジ-ノニルエステル、アリルエチルエーテル、アリルn-オクチルエーテル、N-フェニルマレイミド、N-メチルマレイミド、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、塩化ビニルなどが挙げられる。
【0057】
(D)共重合体におけるグリシジル基含有単量体に由来する構成単位の割合は、特に限定されないが、(D)共重合体の総量(100質量%)に対して、2~40質量%が好ましく、より好ましくは5~30質量%、さらに好ましくは7~20質量%である。
【0058】
(D)共重合体におけるα-オレフィンに由来する構成単位の割合は、特に限定されないが、(D)共重合体の総量(100質量%)に対して、50~95質量%が好ましく、より好ましくは60~90質量%、さらに好ましくは70~85質量%である。
【0059】
(D)共重合体が脂肪酸ビニルエステルに由来する構成単位を含む場合、(D)共重合体における脂肪酸ビニルエステルに由来する構成単位の割合は、特に限定されないが、(D)共重合体の総量(100質量%)に対して、0.5~30質量%が好ましく、より好ましくは1~20質量%、さらに好ましくは2~15質量%である。
【0060】
さらに、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、(E)ポリオルガノシロキサン系改質剤を含むことが好ましい。
【0061】
ポリオルガノシロキサンとしては、シロキサン結合に有機基を持つポリマーであれば周知のものを用いることができ、未変性ポリオルガノシロキサン、変性ポリオルガノシロキサン等が挙げられる。未変性ポリオルガノシロキサンとしては、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリメチルハイドロジェンシロキサン等が挙げられる。変性ポリオルガノシロキサンとしては、ポリオルガノシロキサン構造中の側鎖が一部変性されたもの、ポリオルガノシロキサン構造中の片末端が変性されたもの、ポリオルガノシロキサン構造中の両末端が変性されたもの、ポリオルガノシロキサン構造中の側鎖の一部及び両末端が変性されたもの等が挙げられる。変性ポリオルガノシロキサンの導入有機基としては、アミン基、アミノ基、エポキシ基、脂環式エポキシ基、カルビノール基、メルカプト基、カルボキシル基、ハイドロジェン基、アミノ・ポリエーテル基、エポキシ・ポリエーテル基、エポキシ・アラルキル基、ポリエーテル基、アラルキル基、フロロアルキル基、長鎖アルキル基、高級脂肪酸エステル基、高級脂肪酸アミド基、ポリエーテル・長鎖アルキル・アラルキル基、長鎖アルキル・アラルキル基、フェニル基、アクリル基、メタクリル基、フェノール基、シラノール基、カルボン酸無水物基、ジオール基、メトキシ基等が挙げられる。
【0062】
本発明に用いる(E)ポリオルガノシロキサン系改質剤は、ポリオルガノシロキサンと熱可塑性樹脂を含む態様又はポリオルガノシロキサンをシリカに担持させたシリコーンパウダーである態様が耐傷性の観点から好ましく、ポリオルガノシロキサンと熱可塑性樹脂を含む態様がより好ましく、ポリオルガノシロキサンとスチレン系樹脂を含む態様がさらに好ましい。スチレン系樹脂としては、アクリロニトリル-ブタジエン系ゴム-スチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリル-アクリル系ゴム-スチレン樹脂(ASA樹脂)、アクリロニトリル-オレフィン系ゴム-スチレン樹脂(AES樹脂)などのゴム質重合体にスチレンを含む単量体がグラフト重合されたグラフト重合体;ポリスチレン樹脂(PS樹脂)、スチレン-アクリロニトリル樹脂(AS樹脂)、スチレン-メチルメタクリレート樹脂(MS樹脂)、スチレン-アクリロニトリル-メチルメタクリレート樹脂(MAS樹脂)、スチレン-N-フェニルマレイミド系樹脂などのスチレン系硬質重合体が挙げられる。
【0063】
(E)ポリオルガノシロキサン系改質剤の含有量は、(A)+(B)+(C)の合計100質量部に対して、0.5~10質量部であり、1~8質量部であることが好ましく、2~7質量部であることがさらに好ましい。上記範囲に調整することで、耐傷性と表面外観に優れる傾向にある。
【0064】
さらに、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂、(B)ゴム含有重合体、(C)共重合体及び(D)共重合体以外の、その他樹脂を含んでもよい。その他樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA樹脂)などのアクリル系樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリ乳酸樹脂(PLA樹脂)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)などのポリエステル樹脂;ポリアミド樹脂;ポリエチレン(PE樹脂)、ポリプロピレン樹脂(PP樹脂)などのオレフィン系樹脂などを使用することができる。その他の樹脂の含有量は、本発明の熱可塑性樹脂組成物中、10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量%以下、さらにこの好ましくは1質量以下である。
【0065】
さらに、本発明の効果を損なわない範囲で、公知の添加剤を使用することができる。例えば、ヒンダードアミン系の光安定剤;ヒンダードフェノール系、含硫黄有機化合物系、含リン有機化合物系等の酸化防止剤;フェノール系、アクリレート系等の熱安定剤;ベンゾエート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系の紫外線吸収剤;高級脂肪酸塩、高級脂肪酸アミド類等の滑剤;リン酸エステル類等の可塑剤;難燃剤、難燃助剤、臭気マスキング剤、帯電防止剤、顔料、染料等を添加することもできる。さらに、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、セルロース繊維等の繊維状充填剤;タルク、二酸化チタン、シリカ、マイカ、アルミナ、カオリン、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等の無機充填剤等を添加することもできる。
【0066】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上述の成分を溶融混練することで得ることができる。溶融混練するためには、例えばロール、バンバリーミキサー、単軸押出機、多軸押出機、ニーダー等公知の混練機を用いることができる。
【0067】
各成分を混練する方法には、特に制限がなく、例えば、(1)すべての成分を1度に混練する方法や、(2)特定の成分を混練した後、残りの成分を混練する方法等が挙げられる。(2)の具体的な方法としては、先に(E)ポリオルガノシロキサン系改質剤と他の成分の一部を混練した後、残りの成分を混練する方法が挙げられる。
【0068】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、金型転写性と表面外観のバランスに優れるので、シボ加工用熱可塑性樹脂組成物や自動車内装用熱可塑性樹脂組成物として好適に用いることができる。
【0069】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、射出成形、押出成形、圧縮成形、射出圧縮成形、ブロー成形等により成形することで、成形品を得ることができる。さらに、シボ形状を有する金型やロールを用いることで、金型やロール表面のシボ形状が表面に転写された成形品を得ることができる。
【実施例
【0070】
以下に実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら制限されるものではない。なお、実施例及び比較例中にて示す部及び%は質量に基づくものである。また、各実施例、比較例での各種物性の測定は次の方法による。
【0071】
[金型転写性評価]
各実施例及び比較例で得られたペレットを、射出成形機((株)日本製鋼所製「J-180ADS」)を用い、シボ試験片(縦×横×厚み=210mm×100mm×3mm、シボパターンGR-004 100%)を、成形温度250℃、金型温度80℃、射出速度40mm/min、保圧60MPaで成形した。得られた試験片を温度23度、湿度50%の恒温室に24時間静置した後に、光沢度計(日本電色株式会社製VG-7000)を用いて測定角75°で評価した。そして、以下の判断基準で金型転写性を評価した。
A(良好):光沢度6未満
C(不可):光沢度6以上
【0072】
[表面外観評価]
各実施例及び比較例で得られたペレットを、射出成形機((株)日本製鋼所製「J-180ADS」)を用い、シボ試験片(縦×横×厚み=210mm×100mm×3mm、シボパターンGR-004 100%)を、成形温度250℃、金型温度80℃、射出速度40mm/min、保圧60MPaで成形した。そして、以下の判断基準で表面外観を評価した。
A(良好):表面外観不良なし
C(不可):フローマークやシルバーなど著しい表面外観不良発生
【0073】
[滞留熱安定性]
各実施例及び比較例で得られたペレットを、射出成形機((株)山城精機製作所製「SAV-100」)を用い、フィルムゲート試験片(縦×横×厚み=60mm×60mm×2mm) を、270℃で5分間シリンダー内に滞留させた後、成形した。得られた試験片ゲート部をカッターで切込みを入れ、以下の判断基準で滞留熱安定性を評価した。
A(優) :相剥離がほとんど見られない
B(良好):実使用上問題無い軽微な相剥離が見られる
C(不可):明らかな相剥離が見られる
【0074】
[曲げ弾性率]
ISO 178に準拠し、4mm厚みで曲げ弾性率を測定し、以下の判断基準で評価した。
A(優) :2000MPa以上
B(良好):1500MPa以上2000MPa未満
C(不可):1500MPa未満
【0075】
<(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂>
(A-1)三菱エンジニアリングプラスチックス社製 商品名「ノバデュラン5010R8M」(曲げ弾性率:1650MPa)
(A‘-1)三菱エンジニアリングプラスチックス社製 商品名「ノバデュラン5010TRX5」(曲げ弾性率:2200MPa)
(A‘-2)三菱エンジニアリングプラスチックス社製 商品名「ノバデュラン5020」(曲げ弾性率:2300MPa)
【0076】
<(B)ゴム含有重合体>
ガラスリアクターに、凝集肥大化スチレン-ブタジエンゴムラテックス(スチレン5質量%、ブタジエン95質量%、質量平均粒子径440nm)を固形分換算で60質量部仕込み、撹拌を開始させ、窒素置換を行った。窒素置換後、槽内を昇温し65℃に到達したところで、ブドウ糖0.06質量部、無水ピロリン酸ナトリウム0.03質量部及び硫酸第1鉄0.001質量部を脱イオン水10質量部に溶解した水溶液を添加した後に、70℃に昇温した。その後、アクリロニトリル10質量部、スチレン30質量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.3部、t-ブチルハイドロパーオキサイド0.1質量部の混合液及びオレイン酸カリウム1.0質量部(固形分換算)を脱イオン水20質量部に溶解した乳化剤水溶液を4時間かけて連続的に滴下した。滴下後、3時間保持してグラフト重合体ラテックスを得た。その後、塩析、脱水、乾燥し、(B)グラフト重合体のパウダーを得た。得られた(B)グラフト重合体のグラフト率は42%、アセトン可溶部の還元粘度は0.28dl/gであった。また、上記凝集肥大化スチレン-ブタジエンゴムラテックスの質量平均粒子径は下記のように求めた。四酸化オスミウム(OsO)で染色し、乾燥後に透過型電子顕微鏡で写真撮影した。画像解析処理装置(装置名:旭化成(株)製IP-1000PC)を用いて800個のゴム粒子の面積を計測し、その円相当径(直径)を求め、質量平均粒子径を算出した。
【0077】
<(C)共重合体>
(C-1)スチレン・アクリロニトリル共重合体(AS樹脂):公知の塊状重合法により、スチレン75質量部、アクリロニトリル25質量部からなる共重合体を得た。還元粘度は0.58dl/gであった。
(C-2)アクリロニトリル・スチレン・N-フェニルマレイミド共重合体(イミド系樹脂、還元粘度0.57dl/g)
【0078】
<(D)共重合体(グリシジル基含有単量体とその他の単量体との共重合体)>
(D)エチレン・グリシジルメタクリレート共重合体(質量比=88/12)(住友化学株式会社製 商品名「ボンドファースト BF-E」)
【0079】
<(E)ポリオルガノシロキサン系改質剤>
(E)ABS樹脂とポリオルガノシロキサンの混合物(株式会社ヘキサケミカル製 商品名「ML-430」)
【0080】
実施例1~9及び比較例1~5
表1に記載の配合割合(質量部)で混合した後、シリンダー温度230℃に設定したφ26mmの2軸押出機にて主スクリュー回転数300rpm、吐出量25kg/hrの条件で溶融混練し、ペレット化した。得られたペレットを用いて各種物性評価を実施した。結果を表1に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
表1から明らかなように、本発明の熱可塑性樹脂組成物を使用した実施例1~9は、金型転写性と表面外観のバランスに優れるものが得られた。さらに、実施例1~6、8については、滞留熱安定性により優れるものが得られ、実施例1~3、7~9については、曲げ弾性率により優れるものが得られた。
・比較例1、2は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の含有量が本願規定の下限量に達しないため、金型転写性に劣るものであった。
・比較例3は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の含有量が本願規定の上限量を超えるため、金型転写性と表面外観に劣るものであった。
・比較例4、5は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の曲げ弾性率が本願規定の上限を超えるため、金型転写性に劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0083】
上記の通り、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、金型転写性と表面外観及のバランスに優れることから、例えば車両内装用部品、電子・電気部品、住宅設備部品等、成形品表面に意匠性が求められる多彩な用途に使用することができる。