(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】電解水生成装置及び水処理装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/461 20230101AFI20231025BHJP
B01D 61/04 20060101ALI20231025BHJP
C02F 1/44 20230101ALI20231025BHJP
【FI】
C02F1/461 A
B01D61/04
C02F1/44 A
(21)【出願番号】P 2022094666
(22)【出願日】2022-06-10
【審査請求日】2022-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】591201686
【氏名又は名称】株式会社日本トリム
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】小泉 義信
(72)【発明者】
【氏名】三宅 正人
【審査官】石岡 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-114449(JP,A)
【文献】特開2006-263663(JP,A)
【文献】特開2006-247553(JP,A)
【文献】特開2019-13873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/44-1/48
B01D61/00-61/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解水生成装置であって、
供給された水を電気分解するために、並列に接続された複数の電解ユニットと、
各電解ユニットごとに設けられ、対応する前記電解ユニットによって生成された電解水に含まれる気泡に関連する物理量を検出するための複数の測定部と、
前記各電解ユニットの電解電流を制御する制御部とを備え、
少なくとも一つの前記電解ユニットが他の前記電解ユニットに対して装置の設置面から異なる高さで配置され、
前記制御部は、各測定部によって検出された前記物理量に基づいて、対応する前記電解ユニットの前記電解電流を
前記設置面から同一高さの前記電解ユニットごとに、制御する、
電解水生成装置。
【請求項2】
電解水生成装置であって、
供給された水を電気分解するために、並列に接続された複数の電解ユニットと、
各電解ユニットごとに設けられ、対応する前記電解ユニットによって生成された電解水に含まれる気泡に関連する物理量を検出するための複数の測定部と、
前記各電解ユニットの電解電流を制御する制御部とを備え、
前記各電解ユニットには、前記各電解ユニットから前記電解水を取り出すための出水路が接続され、
前記制御部は、対応する前記電解ユニットの前記電解電流を前記出水路の長さに応じて制御する、
電解水生成装置。
【請求項3】
前記各電解ユニットは、単一または複数の電解槽を含む、請求項1または2に記載の電解水生成装置。
【請求項4】
前記測定部は、前記電解水に含まれる前記気泡の量を検出する気泡センサーを含む、請求項1または2に記載の電解水生成装置。
【請求項5】
前記測定部は、単位時間内に前記各電解ユニットに供給される水量を検出する流量センサーを含む、請求項1または2に記載の電解水生成装置。
【請求項6】
単位時間内に前記各電解ユニットに供給される水量を調整する複数の流量調整弁をさらに備える、請求項1または2に記載の電解水生成装置。
【請求項7】
各出水路には、前記出水路を流れる前記電解水の一部を排出するための分岐路が接続されている、請求項2に記載の電解水生成装置。
【請求項8】
前記分岐路の接続部には、流路切替弁が設けられている、請求項7に記載の電解水生成装置。
【請求項9】
請求項1または2に記載の電解水生成装置と、
前記各電解ユニットに供給される水または前記各電解ユニットによって生成された前記電解水に逆浸透処理を施す逆浸透膜ユニットとを含む、
水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解水生成装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気分解によって水素が溶け込んだ電解水を生成する電解水生成装置が知られている(例えば、特許文献1 参照)。水素が溶け込んだ電解水は、例えば、透析治療に用いられる。透析治療において、上記電解水は、患者の酸化ストレスの低減に寄与するとして注目されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記電解水生成装置では、電解槽の陰極室にて水素ガスが発生し、陰極室内の電解水に溶け込む。上記電解水は、逆浸透膜を用いた逆浸透処理が施された後、透析原液の希釈に適用される。
【0005】
しかしながら、電解水中に溶け込めなかった水素ガスが含まれると、逆浸透膜の表面に気泡化した水素ガスが付着し、十分な逆浸透処理が害される。
【0006】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、水素ガスの気泡化を抑制し、適切な逆浸透処理を行える電解水生成装置等を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、電解水生成装置であって、
供給された水を電気分解するために、並列に接続された複数の電解ユニットと、
各電解ユニットごとに設けられ、対応する前記電解ユニットによって生成された電解水に含まれる気泡に関連する物理量を検出するための複数の測定部と、
前記各電解ユニットの電解電流を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、各測定部によって検出された前記物理量に基づいて、対応する前記電解ユニットの前記電解電流を個別に制御する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の前記電解水生成装置では、前記測定部が前記電解水に含まれる前記気泡に関連する前記物理量を前記各電解ユニットごとに検出し、前記制御部が前記物理量に基づいて前記電解ユニットの前記電解電流を個別に制御する。例えば、前記気泡が生じていると認定した前記電解ユニットの前記電解電流が小さくなるように制御する。これにより、電解ユニットでの気泡の発生が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の電解水生成装置の電気的構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1の電解水生成装置の流路構成を示す図である。
【
図3】
図2の電解ユニットの概略構成を示す図である。
【
図7】電解水生成装置における複数の電解ユニットの配置を示す図である。
【
図8】
図2の電解水生成装置の変形例を示す図である。
【
図9】
図2の電解水生成装置の別の変形例を示す図である。
【
図10】
図2の電解水生成装置のさらに別の変形例を示す図である。
【
図11】電解水生成装置を含む水処理装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態の電解水生成装置1の電気的構成を示している。
図2は、電解水生成装置1の流路構成を示している。
【0011】
電解水生成装置1は、並列に接続された複数の電解ユニット2と、各電解ユニットごとに設けられた複数の測定部3と、各電解ユニット2の電解電流を制御する制御部9とを備える。
【0012】
電解ユニット2は、供給された水を電気分解する。電解ユニット2によって電気分解された水すなわち電解水は、例えば、血液透析または腹膜透析の治療に適用される。
【0013】
各電解ユニット2は、並列に接続されている。これにより、単位時間内に大量の電解水を生成できる。各電解ユニット2には、電気分解前の原水を供給するための給水路51と電解水を取り出すための出水路56とが接続されている。
【0014】
給水路51の上流側には、例えば、原水に前処理を施すための前処理装置(図示せず)が接続される。前処理装置は、例えば、軟水化処理装置と、活性炭処理装置等によって構成される。軟水化処理装置は、原水からカルシウムイオン及びマグネシウムイオン等の硬度成分を除去して軟水化する。活性炭処理装置は、微細な多孔質物質である活性炭を有し、軟水化処理装置から供給される水から塩素等を吸着・除去する。軟水化処理装置の上流側には、原水を貯えるためのタンクが設けられていてもよい。なお、前処理装置と電解水生成装置1とは、1つの装置として統合された構成であってもよい。
【0015】
給水路51は、下流側で給水路52に分岐した後、各電解ユニット2と接続されている。各電解ユニット2から下流側にのびる出水路55は、出水路56に束ねられる。出水路56は、下流側で例えば、後述する逆浸透膜ユニット10(
図11参照)に接続される。逆浸透膜ユニット10は、電解水を浄化して透析液調製用水を生成する。
【0016】
図3は、電解ユニット2の概略構成を示している。電解ユニット2は、単一または複数の電解槽4を含んでいる。同図に示される電解ユニット2では、各電解槽4は、並列に接続されている。これにより、単位時間内に大量の電解水を生成できる。各電解槽4は、直列に接続されていてもよい。これにより、溶存水素濃度を高めることができる。
【0017】
電解ユニット2には、各電解槽4に電気分解前の原水を供給するための給水路21と、各電解槽4によって生成された電解水を取り出すための出水路22が設けられている。給水路21の一端は給水路52と、他端は分岐し各電解槽4と接続されている。給水路51から供給された原水は、給水路52及び給水路21を介して各電解槽4に流入する。出水路22の一端は各電解槽4と、他端は束ねられ出水路55と接続されている。各電解槽4で生成された電解水は、出水路22及び出水路55を介して出水路56から取り出される。
【0018】
図4は、電解槽4の構成を示している。電解槽4は、電解室40を備え、電解室40内に第1給電体41と、第2給電体42と、を有する。第1給電体41及び第2給電体42は、電解室40に設けられている。
【0019】
第1給電体41と第2給電体42との間には、隔膜43が設けられている。電解室40は、隔膜43によって第1給電体41が配された第1極室40aと、第2給電体42が配された第2極室40bとに区分される。
【0020】
第1給電体41及び第2給電体42の極性及び第1給電体41及び第2給電体42に印加される電圧は、制御部9によって制御される。
【0021】
以下、特に断りのない限り、 第1給電体41を陽極、第2給電体42を陰極として説明するが、第1給電体41を陰極、第2給電体42を陽極として運用することも可能である。
【0022】
給電体41、42と制御部9との間の電流供給ラインには、電流検出器(図示せず)が設けられている。電流検出器は、第1給電体41、第2給電体42に供給する電解電流を検出し、その値に相当する電気信号を制御部9に出力する。
【0023】
制御部9は、例えば、電流検出器から出力された電気信号に基づいて、第1給電体41及び第2給電体42に印加する直流電圧を制御する。より具体的には、制御部9は、電流検出器によって検出される電解電流が予め設定された所望の値となるように、第1給電体41及び第2給電体42に印加する直流電圧をフィードバック制御する。例えば、電解電流が過大である場合、制御部9は、上記電圧を減少させ、電解電流が過小である場合、制御部9は、上記電圧を増加させる。これにより、第1給電体41及び第2給電体42に供給する電解電流が適切に制御される。
【0024】
電解室40内で水が電気分解されることにより、水素ガス及び酸素ガスが発生する。例えば、陰極側の第2極室40bでは、水素ガスが発生し、当該水素分子が溶け込んだ溶存水素水が生成される。なお、このような電気分解を伴って生成された溶存水素水は、「電解水素水」とも称され、電解水素水を用いた透析治療は、「電解水透析」とも称される。一方、陽極側の第1極室40aでは、酸素ガスが発生する。
【0025】
隔膜43には、例えば、スルホン酸基を有するフッ素系樹脂からなる固体高分子膜が適宜用いられている。固体高分子膜は、電気分解により、陽極側の第1極室40aで発生したオキソニウムイオンを陰極側の第2極室40bへと移動させて、水素ガスの生成原料とする。従って、電気分解の際に水酸化物イオンが発生することなく、溶存水素水のpHが変化しない。
【0026】
第2極室40bでの水素ガスが発生量は、電解電流に依存する。電解電流を大きくすると、大量の水素ガスが発生し第2極室40bで生成される電解水の溶存水素濃度が高められる。一方、電解電流が過度に大きくなると、電解水に溶け切れなかった水素ガスが気泡として電解水に混在する。
【0027】
以下、特に断りのない限り、電解水とは、第2極室40bで生成される電解水を意図するものとするが、第1極室40aで生成される電解水にも適用可能である。
【0028】
測定部3は、各電解ユニット2の出水路22に設けられている。測定部3は、対応する電解ユニット2によって生成された電解水、すなわち、対応する電解ユニット2に接続された出水路22を流れる電解水に含まれる気泡に関連する物理量を検出する。「電解水に含まれる気泡」とは、電解水に溶け切れなかった水素ガスを意図しており、電解水に溶け込んだ水素ガスは含まれない。そして「気泡に関連する物理量」とは、「気泡の量」を特定するための物理量である。測定部3は、検出した物理量に対応する電気信号を制御部9に出力する。
【0029】
測定部3の例としては、電解水に含まれる気泡の量を検出する気泡センサー31が挙げられる。気泡センサー31は、出水路55を構成する管55aに設けられている。より具体的には、気泡センサー31は、出水路22を介して第2極室40bに接続された管55aに設けられている。
【0030】
図5及び6は、気泡センサー31の構成を示している。本実施形態の気泡センサー31は、光を照射する照射部31aと、照射部31aから照射された光を受ける受光部31bとを有する。
【0031】
照射部31aは、例えば、発光ダイオード等によって構成されている。照射部31aは、制御部9によって制御され、受光部31bに向って赤外線光Lを照射する。受光部31bは、例えば、フォトディテクターなどの受光素子等によって構成されている。受光部31bは、出水路22を透過した赤外線光Lを光電変換し、その値に相当する電気信号を制御部に出力する。気泡センサー31は、照射部31aと受光部31bとの間の光路に出水路55が位置されるように配置される。
【0032】
図5は、出水路22内が電解水で満たされている場合を示している。
図5に示されるように、出水路22が電解水で満たされている場合、照射部31aから照射された光は、出水路22内を直進し、その結果、受光部31bには入射せず検出されない。この場合には、受光部31bから制御部9に、気泡を検出しなかった旨の信号(ロー信号)が出力される。
【0033】
一方、
図6に示されるように、出水路55内の電解水に気泡が含まれている場合、照射部31aから照射された光は、出水路55内で屈折し、一部が受光部31bに入射して検出される。この場合、受光部31bから制御部9に、気泡を検出した旨の信号(ハイ信号)が出力される。
【0034】
気泡センサー31は、電気信号を伝達するケーブル等によって電解水生成装置1の制御部9と電気的に接続されている。制御部9は、受光部31bから出力された電気信号に基づいて、電解水生成装置1の動作を制御する。例えば、制御部9は、気泡センサー31から入力される電気信号に含まれる単位時間あたりのハイ信号の頻度を計数することによって、電解水に含まれる気泡の量を知得する。
【0035】
制御部9は、電解水生成装置1の各部に制御を司る。制御部9は、例えば、各種の演算処理、情報処理等を実行するCPU(Central Processing Unit)及びCPUの動作を司るプログラム及び各種の情報を記憶するメモリ等を有している。制御部9の各種の機能は、CPU、メモリ及びプログラムによって実現される。
【0036】
第1給電体41と第2給電体42との間に印加される電圧は、制御部9によって制御される。制御部9は、第1給電体41及び第2給電体42に供給される電解電流が予め設定された所望の値となるように、第1給電体41及び第2給電体42に印加する電解電圧をフィードバック制御する。例えば、電解電流が過大である場合、制御部9は、上記電圧を減少させ、電解電流が過小である場合、制御部9は、上記電圧を増加させる。これにより、電解電流が適切に制御される。
【0037】
制御部9は、測定部3から入力された電気信号に基づいて、気泡に関連する物理量を知得する。そして、制御部9は、各測定部3によって検出された物理量に基づいて、対応する電解ユニット2の電解電流を個別に制御する。例えば、気泡が生じていると認定した電解ユニット2の電解電流が小さくなるように制御する。すなわち、制御部9は、第1給電体41及び第2給電体42に印加する電解電圧を小さくする。これにより、電解ユニット2での気泡の発生が抑制される。
【0038】
制御部9は、気泡が生じていると認定した電解ユニット2の電解電流が小さくなるように制御するとき、他の電解ユニット2の電解電流が一時的または恒久的に増加するように、複数の電解ユニット2を協調制御してもよい。これにより、生成される電解水の品質(例えば、溶存水素濃度等)が安定する。
【0039】
測定部3として気泡センサー31が適用されている形態にあっては、制御部9は、気泡センサー31によって検出された気泡の量に基づいて、対応する電解ユニット2の電解電流を個別に制御する。これにより、これにより、水素ガスの気泡化がより一層正確に抑制される。
【0040】
なお、各電解ユニット2が単一の電解槽4で構成される形態では、制御部9は実質的に各電解槽4の電解電流を個別に制御することになる。各電解ユニット2が複数の電解槽4で構成される形態であっても、制御部9は各電解槽4の電解電流を個別に制御するように構成されていてもよい。この場合、測定部3は、各電解槽4ごとに設けられるのが望ましい。測定部3として気泡センサー31が適用されている形態にあっては、気泡センサー31は、各電解槽4の第2極室40bに接続された出水路22を構成する管に設けられるのが望ましい。
【0041】
図7は、電解水生成装置1における複数の電解ユニット2の配置を示している。電解水生成装置1では、複数の電解ユニット2のうち、少なくとも一つ(同図では2つ)の電解ユニット2aが他の電解ユニット2bに対して装置の設置面Gから異なる高さH(最低地上高)で配置されている。
【0042】
例えば、本実施形態では、2つの電解ユニット2aが他の3つの電解ユニット2bに対して高い位置に配置されている。このような電解ユニット2a及び2bの配置は、電解水生成装置1の設置面積の削減に貢献する。
【0043】
ところで、各電解ユニット2への給水量は、各電解ユニット2に接続されている給水路内の水圧に依存する。そして、各給水路の水圧は、その設置面Gからの高さHに依存する。従って、設置面Gから高さHが異なる電解ユニット2を含む電解水生成装置1では、より高位置に配された電解ユニット2aへの水圧が不足し、供給される水量が不足する傾向にある。
【0044】
一方、第2極室40bで生成された電解水に含まれる気泡の量は、供給される水量に依存する。従って、電解水生成装置1では、より高位置に配された電解ユニット2aで生成される電解水に含まれる気泡の量が多くなる傾向にある。
【0045】
電解水生成装置1では、制御部9は、電解ユニット2aの電解電流と電解ユニット2bの電解電流とを個別に制御する。すなわち、制御部9は、設置面から同一高さの電解ユニット2ごとに、電解電流を制御する。例えば、より高位置に配された電解ユニット2aの電解電流が小さくなるように、電解ユニット2aの第1給電体41及び第2給電体42に印加する電解電圧を小さく制御する。これにより、電解ユニット2aの第2極室40bでの気泡の発生が抑制される。
【0046】
図3に示される電解ユニット2では、一つの電解ユニット2を構成する複数の電解槽4は、全て設置面Gから高さが全て同一である。設置面Gから高さが異なる電解槽4が含まれる場合、制御部9は、同一高さの電解槽4ごとに電解電流を制御するように構成されていてもよい。また、設置面Gから高さHが異なる複数の電解ユニット2において、高さが同一の電解槽4が含まれる場合、制御部9は、同一高さの電解槽4ごとに電解電流を制御するように構成されていてもよい。
【0047】
図8は、
図2の電解水生成装置1の変形例である電解水生成装置1Aの概略構成を示している。電解水生成装置1Aのうち、以下で説明されてない部分については、上述した電解水生成装置1の構成が採用されうる。
【0048】
電解水生成装置1Aにおいて、測定部3は、流量センサー32を含んでいる。流量センサー32は、各電解ユニット2に接続されている給水路52に設けられている。流量センサー32は、単位時間内に各電解ユニット2に供給される水量を検出し、対応する電気信号を制御部9に出力する。水漏れ等が生じない限り、各電解ユニット2Aに供給される水量と、各電解ユニット2から取り出される水量は等しい。従って、流量センサー32は、各電解ユニット2に接続されている出水路55に設けられていてもよい。
【0049】
既に述べたように、第2極室40bで生成された電解水に含まれる気泡の量は、供給される水量に依存する。例えば、第2極室40bに供給される水量が多くなると、電解水に含まれる気泡の量は減少する。一方、上記気泡の量は、第1給電体41、第2給電体42に供給する電解電流にも依存する。制御部9は、流量センサー32によって検出された水量と電解電流に基づいて、電解水に含まれる気泡の量を特定できる。この場合、流量センサー32によって検出される水量は、「気泡の量」を特定するための物理量、すなわち、「気泡に関連する物理量」である。
【0050】
電解水生成装置1Aにおいて、各電解ユニット2ごとに測定部3として気泡センサー31または流量センサー32が択一的に設けられていてもよい。
【0051】
図9は、
図2の電解水生成装置1Aの変形例である電解水生成装置1Bの概略構成を示している。電解水生成装置1Bのうち、以下で説明されてない部分については、上述した電解水生成装置1または1Aの構成が採用されうる。
【0052】
電解水生成装置1Bでは、各電解ユニット2に接続されている給水路52に、流量調整弁33が設けられている。流量調整弁33は、制御部9によって制御され、単位時間内に各電解ユニット2に供給される水量を調整する。例えば、電解水に大量の気泡が含まれるとき、対応する各電解ユニット2に接続されている給水路21に設けられた流量調整弁33が電解ユニット2に供給される水量を増加させる。これにより、電解電流を抑制することなく、大量の電解水が生成されると共に、電解水に含まれる気泡を減少させることができる。
【0053】
なお、流量調整弁33によっていずれかの電解ユニット2に供給される水量が制限されたとき、電解水生成装置1Bの全体として電解水の供給量が不足することも懸念される。しかしながら、多くの電解ユニット2で気泡が同時に生ずることは希であることを考慮すると、他の電解ユニット2からの電解水の供給により電解水の不足を十分に補うことが可能である。
【0054】
電解水生成装置1内での電解ユニット2のレイアウト(
図6参照)の都合上、電解ユニット2ごとに出水路55等の長さが異なることがある。出水路55等を流れる電解水の水量は出水路55等の長さにも依存する。そこで、制御部9は、出水路55等の長さに応じて電解電流を制御するように構成されているのが望ましい。例えば、より長い出水路55等が接続されている電解ユニット2に対して、制御部9は、電解電流を抑制する。これにより、当該電解ユニット2での気泡の発生が抑制される。
【0055】
図10は、
図2の電解水生成装置1のさらに別の変形例である電解水生成装置1Cの概略構成を示している。電解水生成装置1Cのうち、以下で説明されてない部分については、上述した電解水生成装置1ないし1Bの構成が採用されうる。
【0056】
各出水路55には、出水路55を流れる電解水の一部を排出するための分岐路57が接続されていてもよい。これにより、気泡が含まれる電解水が出水路56の下流に流れ込むことが抑制される。
【0057】
分岐路57の接続部には、流路切替弁34が設けられている、のが望ましい。流路切替弁34は、制御部9によって制御される。制御部9は、各測定部3によって検出された気泡に関連する物理量に基づいて、対応する出水路55に設けられている流路切替弁34の開閉を制御する。例えば、いずれかの電解ユニット2で気泡の発生が検出されたとき、制御部9は、その電解ユニット2に接続されている出水路55の流路切替弁34を開放し、気泡が含まれる電解水を分岐路57にバイパスさせる。これにより、電解電流が制御される前に発生した気泡が出水路56の下流に流れ込むことが抑制される。
【0058】
分岐路57は、分岐路58として束ねられ、不要な水を電解水生成装置1Cの外部に排出するための排水路(図示せず)へと導かれる。分岐路58は、第1極室40aで生成された電解水を電解水生成装置1Cの外部に排出するための排水路に接続されていてもよい。なお、各分岐路57には、他の分岐路57からの逆流を防止するための逆止弁(図示せず)が設けられてもよい。
【0059】
なお、いずれかの流路切替弁34が開放されたとき、電解水生成装置1Cの全体として電解水の供給量が不足することも懸念される。しかしながら、多くの電解ユニット2で気泡が同時に生ずることは希であることを考慮すると、他の電解ユニット2からの電解水の供給により電解水の不足を十分に補うことが可能である。
【0060】
図11は、電解水生成装置1を含む水処理装置100の概略構成を示している。本実施形態の水処理装置100は、血液透析の透析液の調製に用いられる調製水を生成するための装置である。
【0061】
水処理装置100は、電解水生成装置1と逆浸透膜ユニット10とを含んでいる。逆浸透膜ユニット10は、逆浸透膜(図示せず)を有し、電解水生成装置1の下流側に配されている。電解水生成装置1と逆浸透膜ユニット10との間には、電解水生成装置1によって生成された電解水を逆浸透膜ユニット10に圧送するためのポンプ(図はせず)が必要に応じて設けられている。
【0062】
逆浸透膜ユニット10に供給された電解水は、逆浸透膜を透過する際に浄化される。こうして逆浸透処理によって不純物等が除去された電解逆浸透水が生成され、透析液の調製用水として透析原剤の希釈等に用いられる。上記電解逆浸透水は、溶け込んだ水素ガスを含んでおり、血液透析治療の際に発生する活性酸素を除去し、患者の酸化ストレスの軽減に適しているとして注目されている。なお、逆浸透膜によって浄化処理された電解逆浸透水は、例えば、透析液調製用水の浄化基準であるISO13959の基準を満たす。
【0063】
本実施形態の水処理装置100によると、電解ユニット2での気泡の発生が抑制されるので、逆浸透膜の湿潤性が良好に維持される。従って、電解逆浸透水を効率よく生成できるようになる。また、電解水生成装置1と逆浸透膜ユニット10との間に設けられたポンプのエアー噛みが抑制される。
【0064】
なお、水処理装置100では、電解水生成装置1の替わりに電解水生成装置1Aないし電解水生成装置1Cが適用されていてもよい。
【0065】
以上、本発明の電解水生成装置1等が詳細に説明されたが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施される。すなわち、電解水生成装置1は、少なくとも、供給された水を電気分解するために、並列に接続された複数の電解ユニット2と、各電解ユニット2ごとに設けられ、対応する電解ユニット2によって生成された電解水に含まれる気泡に関連する物理量を検出するための複数の測定部3と、各電解ユニット2の電解電流を制御する制御部9とを備え、制御部9は、各測定部3によって検出された物理量に基づいて、対応する電解ユニット2の電解電流を個別に制御する、ように構成されていればよい。
【0066】
[付記]
本発明は以下の態様を含む。
【0067】
[本発明1]
電解水生成装置であって、
供給された水を電気分解するために、並列に接続された複数の電解ユニットと、
各電解ユニットの電解電流を制御する制御部と、
前記各電解ユニットごとに設けられ、対応する前記電解ユニットによって生成された電解水に含まれる気泡に関連する物理量を検出するための複数の測定部とを備え、
前記制御部は、各測定部によって検出された前記物理量に基づいて、対応する前記電解ユニットの前記電解電流を個別に制御する、
電解水生成装置。
[本発明2]
少なくとも一つの前記電解ユニットが他の前記電解ユニットに対して装置の設置面から異なる高さで配置されている、本発明1に記載の電解水生成装置。
[本発明3]
前記制御部は、前記設置面から同一高さの前記電解ユニットごとに、前記電解電流を制御する本発明2に記載の電解水生成装置。
[本発明4]
前記各電解ユニットは、単一または複数の電解槽を含む、本発明1ないし3のいずれかに記載の電解水生成装置。
[本発明5]
前記測定部は、前記電解水に含まれる前記気泡の量を検出する気泡センサーを含む、本発明1ないし4のいずれかに記載の電解水生成装置。
[本発明6]
前記測定部は、単位時間内に前記各電解ユニットに供給される水量を検出する流量センサーを含む、本発明1ないし5のいずれかに記載の電解水生成装置。
[本発明7]
単位時間内に前記各電解ユニットに供給される水量を調整する複数の流量調整弁をさらに備える、本発明1ないし6のいずれかに記載の電解水生成装置。
[本発明8]
前記各電解ユニットには、前記各電解ユニットから前記電解水を取り出すための出水路が接続される、本発明1ないし7のいずれかに記載の電解水生成装置。
[本発明9]
前記制御部は、前記出水路の長さに応じて前記電解電流を制御する本発明8に記載の電解水生成装置。
[本発明10]
各出水路には、前記出水路を流れる前記電解水の一部を排出するための分岐路が接続されている、本発明8または9に記載の電解水生成装置。
[本発明11]
前記分岐路の接続部には、流路切替弁が設けられている、本発明10に記載の電解水生成装置。
[本発明12]
本発明1ないし11のいずれかに記載の電解水生成装置と、
前記各電解ユニットに供給される水または前記各電解ユニットによって生成された前記電解水に逆浸透処理を施す逆浸透膜ユニットとを含む、
水処理装置。
【符号の説明】
【0068】
1 :電解水生成装置
1A :電解水生成装置
1B :電解水生成装置
1C :電解水生成装置
2 :電解ユニット
2A :電解ユニット
2a :電解ユニット
2b :電解ユニット
3 :測定部
4 :電解槽
9 :制御部
10 :逆浸透膜ユニット
21 :給水路
22 :出水路
23 :分岐路
31 :気泡センサー
32 :流量センサー
33 :流量調整弁
34 :流路切替弁
55 :出水路
56 :出水路
57 :分岐路
58 :分岐路
100 :水処理装置
G :設置面
H :高さ
【要約】
【課題】水素ガスの気泡化を抑制し、適切な逆浸透処理を行える電解水生成装置等を提供する。
【解決手段】電解水生成装置1は、供給された水を電気分解するために、並列に接続された複数の電解ユニット2と、各電解ユニット2ごとに設けられ、対応する電解ユニット2によって生成された電解水に含まれる気泡に関連する物理量を検出するための複数の測定部3と、各電解ユニット2の電解電流を制御する制御部9とを備え、制御部9は、各測定部3によって検出された物理量に基づいて、対応する電解ユニット2の電解電流を個別に制御する。
【選択図】
図1