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特許7373035中性子比例計数管のためのクエンチガスとしての三フッ化ホウ素
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】中性子比例計数管のためのクエンチガスとしての三フッ化ホウ素
(51)【国際特許分類】
   G01T 3/00 20060101AFI20231025BHJP
   G01T 1/18 20060101ALI20231025BHJP
   H01J 47/06 20060101ALI20231025BHJP
   H01J 47/12 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
G01T3/00 C
G01T1/18 A
H01J47/06
H01J47/12
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022128009
(22)【出願日】2022-08-10
(65)【公開番号】P2023026391
(43)【公開日】2023-02-24
【審査請求日】2022-08-10
(31)【優先権主張番号】17/401,988
(32)【優先日】2021-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517318263
【氏名又は名称】ベイカー ヒューズ ホールディングス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・フリーマン
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-034829(JP,A)
【文献】特開2008-281568(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0283762(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0133447(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0307768(US,A1)
【文献】T. E. Sampson et al.,An absolute measurement of the efficiency of a BF3 proportional counter,Nuclear Instruments and Methods,NL,Elsevier,1971年,Vol. 95,pp. 563-569
【文献】Robert D. McElroy, Jr.,3He Alternatives Summary Report,ORNL/TM-2015/310,米国,OAK RIDGE NATIONAL LABORATORY,2015年11月
【文献】T. W. Crane et al.,Neturon Detectors,Passive nondestructive assay of nuclear materials,NUREG/CR-5550; LA-UR-90-732, Section 13,米国,1991年03月01日,pp. 379-406
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 3/00
G01T 1/18
H01J 47/06
H01J 47/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中性子比例計数管であって、
アノード及びカソードを含むチャンバと、
前記チャンバ内に収容されたガス混合物であって、
少なくとも1つの中性子感受性充填ガス、及び
BFを含むクエンチガスを含む、ガス混合物と、を含み、
前記充填ガスが、He-3を含む、比例計数管。
【請求項2】
中性子比例計数管であって、
アノード及びカソードを含むチャンバと、
前記チャンバ内に収容されたガス混合物であって、
少なくとも1つの中性子感受性充填ガス、及び
BF を含むクエンチガスを含む、ガス混合物と、を含み、
前記充填ガスが、H 、又はUF のうちの少なくとも1つを含む、比例計数管。
【請求項3】
前記充填ガスが、00~5600バーンの範囲内の熱中性子吸収断面積を有する、請求項1又は2に記載の比例計数管。
【請求項4】
前記充填ガスが、~8バーンの範囲内の高速中性子全断面積を有する、請求項1又は2に記載の比例計数管。
【請求項5】
He-3が、1.5Psia~150Psiaの範囲内の分圧を提供するのに十分な量で前記ガス混合物中に存在する、請求項に記載の比例計数管。
【請求項6】
前記充填ガスが、He-4、H、又はUFのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の比例計数管。
【請求項7】
前記ガス混合物が、前記ガス混合物内の一次イオンの平均自由行程を低減するように構成された少なくとも1つの停止ガスを更に含む、請求項1又は2に記載の比例計数管。
【請求項8】
前記停止ガスが、Ar、Kr、又はXeのうちの少なくとも1つを含む、請求項7に記載の比例計数管。
【請求項9】
BF、0.002Psia~3.9Psiaの範囲内の分圧を提供するのに十分な量で前記ガス混合物中に存在する、請求項1又は2に記載の比例計数管。
【請求項10】
中性子比例計数管を調製する方法であって、
アノード及びカソードを含むチャンバを備える中性子比例計数管を提供することと、
前記チャンバに、少なくとも1つの中性子感受性充填ガスと、BFを含むクエンチガスとを含むガス混合物を充填することと、を含み、
前記充填ガスが、He-3を含む、方法。
【請求項11】
中性子比例計数管を調製する方法であって、
アノード及びカソードを含むチャンバを備える中性子比例計数管を提供することと、
前記チャンバに、少なくとも1つの中性子感受性充填ガスと、BF を含むクエンチガスとを含むガス混合物を充填することと、を含み、
前記充填ガスが、H 又はUF のうちの少なくとも1つを含む、方法。
【請求項12】
前記充填ガスが、100~5600バーンの範囲内の熱中性子吸収断面積を有する、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記充填ガスが、1~8バーンの範囲内の高速中性子全断面積を有する、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項14】
He-3が、1.5Psia~150Psiaの範囲内の分圧を提供するのに十分な量で前記ガス混合物中に存在する、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記充填ガスが、He-4、H、又はUFのうちの少なくとも1つを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記ガス混合物が、前記ガス混合物内の一次イオンの平均自由行程を低減するように構成された少なくとも1つの停止ガスを更に含む、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項17】
前記停止ガスが、Ar、Kr、又はXeのうちの少なくとも1つを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
BF、0.002Psia~3.9Psiaの範囲内の分圧を提供するのに十分な量で前記ガス混合物中に存在する、請求項10又は11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
電離放射線は、原子核の崩壊中に、電磁波(例えば、ガンマ線、X線)又は粒子(例えば、中性子、アルファ粒子、ベータ粒子)の形態の原子によって放出されるエネルギーのタイプである。電離放射線源は、自然界(例えば、土壌、水、空気、宇宙線などの中の放射性物質)及び人工源(例えば、原子力発電、医療用放射線など)中に見られる。
【発明の概要】
【0002】
ガス電離検出器は、電離放射線粒子の存在を検出するための粒子物理学で、及び電離放射線を測定するための放射線防護で使用される放射線検出機器である。比例計数管は、ガス電離検出器のタイプであり、放射線のタイプ間の弁別(例えば、アルファ対ベータ粒子)が望まれるとき、並びに事前電気信号増幅、改善された信号対雑音比及び/又は強化されたノイズ弁別が望まれる状況で一般的に使用される。
【0003】
本開示の実施形態は、改善された比例計数管及び対応する方法を提供する。以下で詳細に論じられるように、この比例計数管は、従来のガス混合物を用いる比例計数管と比較して、改善された検出感度(例えば、熱中性子に対する感度)を提供する新規のガス混合物を含む。
【0004】
ある実施形態では、中性子比例計数管が提供される。比例計数管は、チャンバ及びガス混合物を含み得る。チャンバは、アノード及びカソードを含み得る。ガス混合物は、チャンバ内に収容され、ガス混合物は、少なくとも1つの中性子感受性充填ガスと、BFを含むクエンチガスとを含み得る。
【0005】
別の実施形態では、充填ガスは、約100~5600バーンの範囲内の熱中性子吸収断面積を有し得る。
【0006】
別の実施形態では、充填ガスは、約1~8バーンの範囲内の高速中性子全断面積を有し得る。
【0007】
別の実施形態では、充填ガスは、He-3であり得る。He-3は、約1.5Psia~約150Psiaの範囲内の分圧を提供するのに十分な量でガス混合物中に存在し得る。
【0008】
別の実施形態では、充填ガスは、He-4、H、又はUFうちの少なくとも1つであり得る。
【0009】
別の実施形態では、ガス混合物は、ガス混合物内の一次イオンの平均自由行程を低減するように構成された少なくとも1つの停止ガスを更に含み得る。別の実施形態では、停止ガスは、Ar、Kr、又はXeのうちの少なくとも1つであり得る。
【0010】
別の実施形態では、BFは、約0.002Psia~約3.9Psiaの範囲内の分圧を提供するのに十分な量でガス混合物中に存在し得る。
【0011】
ある実施形態では、中性子比例計数管を調製する方法が提供される。この方法は、中性子比例計数管を提供することを含み得る。比例計数管は、アノード及びカソードを含むチャンバを含み、チャンバにガス混合物を充填することができる。ガス混合物は、少なくとも1つの中性子感受性充填ガスと、BFを含むクエンチガスとを含み得る。
【0012】
別の実施形態では、充填ガスは、約100~5600バーンの範囲内の熱中性子吸収断面積を有し得る。
【0013】
別の実施形態では、充填ガスは、約1~8バーンの範囲内の高速中性子全断面積を有し得る。
【0014】
別の実施形態では、充填ガスは、He-3であり得る。He-3は、約1.5Psia~約150Psiaの範囲内の分圧を提供するのに十分な量でガス混合物中に存在し得る。
【0015】
別の実施形態では、充填ガスは、He-4、H、又はUFうちの少なくとも1つであり得る。
【0016】
別の実施形態では、ガス混合物は、ガス混合物内の一次イオンの平均自由行程を低減するように構成された少なくとも1つの停止ガスを更に含み得る。
【0017】
別の実施形態では、停止ガスは、Ar、Kr、又はXeのうちの少なくとも1つであり得る。
【0018】
別の実施形態では、BFは、約0.002Psia~約3.9Psiaの範囲内の分圧を提供するのに十分な量でガス混合物中に存在し得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
これらの特徴及び他の特徴は、添付図面と併せて講じられる以下の発明を実施するための形態からより容易に理解されるであろう。
【0020】
図1】He-3充填ガスとBFクエンチガスとを含むガス混合物を含む比例計数管の例示的な一実施形態を示す図である。
【0021】
図2図1の比例計数管を調製する方法の例示的な一実施形態を示す流れ図である。
【0022】
図面は必ずしも縮尺どおりではないことに留意されたい。図面は、本明細書に開示される主題の典型的な態様のみを描写することを意図しており、したがって、本開示の範囲を限定するものとみなされるべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0023】
比例計数管は、新規のガス混合物を含む放射線(例えば、中性子)の検出のために提供される。以下で詳細に論じられるように、比例計数管は、中性子感受性充填ガスと、BFを含むクエンチガスとを含むガス混合物を含み得る。一態様では、ガス混合物は、BFを含まないガス混合物と比較して、中性子の検出のための改善された感度を提供する。別の態様では、BFクエンチガスの分解生成物は、再結合することができ、効果的な無限寿命を有するクエンチガスを提供する。
【0024】
図1は、比例計数管100の例示的な一実施形態を示す。示されるように、比例計数管100は、互いに分離された2つの電極(例えば、カソード104及びアノード106)を有するチャンバ102を含む。チャンバ102は、圧力下で、ガス混合物110を更に含有するか、又はそれを含有するために充填され得る。つまり、チャンバ102は、ガス混合物110又はその成分を受容するためのガス源に結合するように構成された少なくとも1つのポート(図示せず)を含み得る。チャンバ102は、チャンバ102が実質的に流体密封であり、加圧されたガス混合物110の漏出を抑制することを確実にするように構成された1つ以上の封止部(図示せず)を更に含み得る。
【0025】
ある実施形態では、ガス混合物110は、充填ガス112(例えば、中性子感受性ガス)とクエンチガス114とを含み得る。充填ガス112は、入射放射線116と相互作用するか、又はそれによって電離されるように構成され得る。クエンチガス114は、パルス放電を終了させるように構成することができる。
【0026】
使用中、電極104、106間に電圧ΔVが印加されて、それらの間に電界Eを発生させる。比例計数管100に入る入射放射線116(例えば、中性子)は、充填ガス112の分子に衝突し、それを電離して、総称してイオン対120、本明細書では一次イオンとも称される電子-(一次電子)及び正に帯電した原子又は分子+を生成することができる。電圧ΔVは、チャンバ102内の条件が計数管100の比例領域に対応するように、十分である。一態様では、電界強度は、イオン対の再結合を阻止するのに十分な高く、正イオンがカソードに向かってドリフトし、電子がアノードに向かってドリフトする。アノードの近くでは、電界強度はまた、一次電子を加速させるのに十分に大きく、充填ガス112の追加の原子の電離を引き起こし、更なるイオン対(二次電子を含む)を発生させる。アノード106で収集された電子は、比例検出器100の出力(例えば、イオン電流I)を形成し、電流計A又は他の電流測定デバイスによって測定することができる。有益なことに、比例領域では、各電離粒子は、1つの電子なだれのみを生成する。したがって、事象(電離粒子)の数と総イオン電流Iとの間に比例関係が提供される。加えて、電子なだれによって提供された電荷増幅は、比例検出器100の信号対雑音比を改善し、必要な後続の信号増幅の量を削減する。
【0027】
本開示の実施形態は、充填ガス112(例えば、ヘリウム-3)としての中性子感受性ガスと、クエンチガス114としてのBFとを含むガス混合物110を提案する。以下で詳細に論じられるように、この組み合わせは、当業者によって理解される従来の知見に反しており、クエンチガス114として有機ガスを使用するよりも有利である。
【0028】
いくつかの初期の比例検出器は、三フッ化ホウ素BFを充填ガスとして用いている。ホウ素-10は、優れた熱中性子捕獲断面積を呈し、作製は、熱中性子束を測定するための使用に好適である。熱中性子ホウ素反応では、
10B+n→[11B]→He+Li+2.8MeV
ホウ素-10(10B)が中性子(n)を吸収して、ホウ素-11(11B)を得る。その後、ホウ素-11は、反応生成物ヘリウム-4(He)及びリチウム-7(Li)並びに2.8MeV(ガンマ線)へと減衰する。反応生成物の短い範囲は、総エネルギーが比較的短い距離で収集され得ることを意味する。これにより、比較的小さいパッケージにおける熱中性子信号からのより低エネルギーのガンマ線の弁別が可能になる。
【0029】
しかしながら、比例検出器内の充填ガスとしてのBFの使用は、ほとんどヘリウム-3に置き換えられている。一態様では、BFと比較して、ヘリウム-3は、著しく高い捕獲断面積を呈する。別の態様では、BFは、危険(例えば、吸入による毒性)であるため、その取り扱いには細心の注意が必要であり、水中に溶解されたときに腐食性の高いフッ化水素酸を形成する場合があるため腐食性が高い。したがって、多くの検出作業については、中性子検出は、ヘリウム-3を使用してより容易に実施される。
【0030】
ヘリウム-3と組み合わせて使用されるクエンチガスは、典型的には、有機ガス(例えば、二酸化炭素CO、メタンCH、四フッ化炭素CF)である。一般に、クエンチング活性は、パルスからのエネルギーがクエンチガスによって散逸されるときを説明する。この散逸は、クエンチガスの分子が(ガス混合物中の他のガスのように)別の光子を電離又は再放出するのではなく、入射放射線のエネルギーを使用して、それらの別個の元素に分かれる(又は解離する)ときに起こる。
【0031】
有機ガスは、比例計数管の多くの用途のための好適なクエンチ剤であるが、いくつかの欠点を呈し得る。一態様では、これらの有機ガスは、それらがクエンチするときのそれらの解離の性質により、検出器の寿命にわたって消費される。つまり、一旦これらの分子が分裂すると、それらは再形成することができない。更に、場合によっては、分裂分子は、比例計数管の内部構成要素上に炭素の堆積をもたらし、その性能を低下させる場合がある。
【0032】
別の態様では、これらの有機ガスは、単にクエンチ剤として機能することが理解されよう。つまり、それらは、熱中性子に感受性ではない検出器内の全ガスの一部分を表す。ガス混合物110の最大圧力によって制限される検出器設計については、クエンチガス114の量は、所望の検出用途に必要な感度によって注意深く平衡化されなければならない。
【0033】
したがって、上述の有機ガスと比較して、改善された性能を呈する異なるクエンチガスを含むガス混合物が必要とされている。本開示の実施形態は、充填ガス112(例えば、ヘリウム-3)としての中性子感受性ガスと、クエンチガス114としてのBFとを含むガス混合物110を提案する。ある特定の実施形態では、クエンチガスのみがBFである。以下で更に論じられるように、クエンチガスとしてのBFの使用は、従来のものではなく、充填ガスとしてのBFの認知された欠点を考慮している。しかしながら、BFは、充填ガス112と組み合わせてクエンチガス114として使用されるとき、圧倒的な利点を供与する。
【0034】
一般に、BFは、電気陰性ガスである。BFが多すぎると、動作に必要な電圧が高すぎて、使用することができなくなる(例えば、比例範囲外になる)場合がある。つまり、BFクエンチング機能のため、追加されるものが多いほど、アルファ粒子(He)用の検出器として動作するために必要な電圧ΔVが高くなる。この理由のために、使用中のBFの圧力は、一般に、比例計数管内で混合せずに使用したときに約1気圧に制限される。
【0035】
別の態様では、BFが多すぎると、計数管の応答を遅らせる場合がある。一例として、比例計数管がすべての電荷を所与の事象から収集する速度は、充填ガス中の電子のドリフト速度によって決定され、ドリフト速度は、所与のガス混合物ごとに変化する。BFは、比較的速いドリフト速度を生じさせるガスではないため、ガス混合物中に多すぎると、電荷の収集が遅くなり、したがって、比例計数管が個々の事象を解決することができる速度が制限される場合がある。
【0036】
更なる態様では、BFが多すぎると、単一の事象からのパルスの形状又は数を潜在的に変更する場合がある。理論によって束縛されるものではないが、BFの低いドリフト速度と電気陰性度との組み合わせにより、残りのパルスと同じ期間にパルスの全エネルギーを捕獲することができないと考えられている。
【0037】
追加の態様では、上記で論じられるように、ヘリウム-3は、BFと比較して、熱中性子捕獲のためにはるかに高い断面積を有し、より高い圧力で充填することができる。したがって、ガンマフィールドがヘリウム-3の使用を可能にするのに十分に低い事例では、BFは、熱中性子を吸収するための充填ガスとしてヘリウム-3の代わりに使用しても、利点を提供しない。
【0038】
しかしながら、旧来の有機ガスと比較して、ガス混合物110中のクエンチガス114としてのBFの使用は、以下に詳細に論じられる様々な利点を有する。
【0039】
一態様では、BFはハロゲンクエンチ剤であるため、その分解生成物は、再結合することができる。結果として、クエンチング時にごくわずかな量のBFが消費され、高束環境中でも効果的に無限寿命を与える。
【0040】
別の態様では、BFは、少なくとも熱中性子感受性であるため、クエンチガス114としてのその使用は、比例検出器100の少なくとも総熱中性子感度を改善するように働く。
【0041】
更なる態様では、ホウ素-10は、ヘリウム-3よりも中性子相互作用当たり多くのエネルギーを蓄積するため、BFの存在は、中程度のガンマフィールド(例えば、約10~約1000R/時間)で用いたとき、ヘリウム-3比例計数管が受ける感度損失を軽減するのに役立ち得る。これらのガンマ放射線レベルでは、ガンマ干渉を除去するには、波高弁別レベルを上げる必要がある。したがって、ヘリウム-3パルスのある一部を弁別することはできるが、ボロン-10からのより高いエネルギーパルスは弁別しないであろう。
【0042】
BFは、約0.002Psia~約3.9Psiaの範囲内の分圧を提供するのに十分な量でガス混合物110内に存在し得る。下限は、クエンチングに十分なBFの最小分圧を表す。この圧力は、ガイガー・ミュラー管内でのハロゲンクエンチングに典型的に使用される圧力に対応する。上限は、BFが充填ガス112にわたって効果的に支配する前のBFの最大分圧を表す。それは、ガス混合物110の動作特性が純粋なBFの動作特性に近づく前である。これらの分圧は、例として提供され、BFの最小/最大分圧は、検出器サイズ、検出器構造、望ましい感度及び最大圧力に照らして他の値を採用することができることを理解されたい。
【0043】
ガス混合物の実施形態は、クエンチガス114としてのBFと組み合わせて、充填ガス112としての様々な中性子感受性ガスを用いることができる。ある特定の実施形態では、中性子感受性ガスは、ヘリウム-3であり得る。一例として、ヘリウム-3は、比較的ゆっくりと移動する熱中性子(例えば、約0.025eVのエネルギーを有する中性子)の検出に使用することができる。ヘリウム-3は、約1.5Psia~約150Psiaの範囲内の分圧を提供するのに十分なマウント中に存在し得る。最小分圧は、比例計数管100の実行可能な動作に必要なヘリウム-3の最小量の推定値を表す。対照的に、最大分圧を超えると、感度の増加がヘリウム-3分圧の所与の増加に対して劇的に落ちる。したがって、この最大分圧を超えて充填することは経済的に望ましくない。
【0044】
他の実施形態では、中性子感受性ガスは、ヘリウム-4(He)、水素H、又は六フッ化ウランUFのうちの少なくとも1つであり得る。一例として、ヘリウム-4及び水素は、高速中性子(例えば、約1MeV~約20MeVの範囲内のエネルギーを有する中性子)の検出に使用することができ、ここで、ヘリウム-3は、好適ではない。六フッ化ウランは、熱中性子又は高速中性子のいずれかの検出に使用することができる。更なる実施形態では、少なくとも1つの中性子感受性ガスは、約100バーン~約5600バーンの範囲内の熱中性子吸収断面積を有する。追加の実施形態では、少なくとも1つの中性子感受性ガスは、約1バーン~約8バーンの範囲内の高速中性子断面積を有する。
【0045】
ガス混合物110は、1つ以上の停止ガスを更に含み得る。停止ガスは、クエンチガス114とは異なる。とりわけ、クエンチガス114は、パルスを終了させるように構成されており、一方、停止ガスは、一次イオンのガス増幅を可能にする電離ポテンシャルを有する。したがって、この文脈において、停止は、ガス混合物110内の一次イオン(例えば、イオン対120のいずれか又は両方)の平均自由行程を低減するための停止ガスの能力を指す。そのような停止ガスの例としては、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、又はキセノン(Xe)のうちの少なくとも1つが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0046】
更なる実施形態では、比例計数管を調製するための方法200が提供される。図2は、方法200の例示的な一実施形態を示す流れ図である。示されるように、方法200は、動作202~204を含み得る。しかしながら、代替的な実施形態では、方法は、図2に示されるものよりも多い又は少ない動作を含むことができ、これらの動作は、図2に示されるものとは異なる順序で実施され得ることを理解されたい。
【0047】
動作202では、比例計数管が提供される。ある実施形態では、比例計数管は、アノード及びカソードを有するチャンバ102を含む、図1の比例計数管100であり得る。
【0048】
動作204では、チャンバ102にガス混合物110を充填することができる。ガス混合物110は、充填ガス112(例えば、少なくとも1つの中性子感受性ガス)とクエンチガス114(例えば、BF)とを含み得る。少なくとも1つの中性子感受性ガスの例としては、He-3、He-4、H、又はUFが挙げられ得るが、これらに限定されない)。ある実施形態では、ガス混合物110内の充填ガス112の分圧は、約1.5Psia~約150Psiaの範囲内で提供することができる。更なる実施形態では、ガス混合物110内のBFの分圧は、約0.002Psia~約3.9Psiaの範囲内であり得る。
【0049】
更なる実施形態では、少なくとも1つの中性子感受性ガスは、熱中性子、高速中性子、及び/又はそれらの組み合わせを検出するように構成され得る。一例として、一例では、少なくとも1つの中性子感受性ガスは、約100~5600バーンの範囲内の熱中性子吸収断面積を有し得る。別の例として、少なくとも1つの中性子感受性ガスは、約1~8バーンの範囲内の高速中性子断面積を有し得る。
【0050】
実施形態では、ガス混合物110はまた、少なくとも1つの停止ガスを含み得る。少なくとも1つの停止ガスは、ガス混合物内の一次イオンの平均自由行程を低減するように構成され得る。一次イオンは、入射放射線116によって電離された充填ガス112の電子又は分子であり得る。停止ガスの例としては、Ar、Kr、又はXeが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0051】
本明細書に記載の方法、システム及びデバイスの例示的な技術的効果は、非限定的な例として、中性子感受性ガスと、クエンチガスとしてのBFとを含む新規のガス混合物を含む比例計数管を含む。一態様では、ガス混合物は、BFを含まないガス混合物と比較して、中性子の検出のための改善された感度を提供する。別の態様では、BFクエンチガスの分解生成物は、再結合することができ、効果的に無限寿命でクエンチガスを提供する。
【0052】
本明細書に開示されるシステム、デバイス、及び方法の構造、機能、製造、及び使用の原理の全体的な理解を提供するために、特定の例示的な実施形態を記載してきた。これらの実施形態の1つ以上の例が添付の図面に示されている。当業者は、本明細書に明確に記載され、添付の図面に例示されるシステム、デバイス、及び方法が、非限定的な例示的な実施形態であること、及び本発明の範囲が特許請求の範囲によってのみ定義されることを理解するであろう。例示的な一実施形態に関連して図示又は記載される特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わされてもよい。そのような修正及び変形は、本開示の範囲内に含まれることが意図される。更に、本開示では、実施形態の類似する名称の構成要素は、概して類似の特徴を有しており、ゆえに、特定の実施形態において類似する名称のそれぞれの構成要素のそれぞれの特徴については、必ずしも完全には詳述していない。
【0053】
本明細書及び特許請求の範囲全体を通して本明細書で使用するとき、近似言語は、それが関連する基本機能の変化をもたらすことなく、許容可能に変化し得る、任意の定量的表現を修正するために適用されてもよい。「およそ」、「実質的に」、又は「約」は、特に明記されない限り、又は特に文脈から明らかでない限り(そのような数が、可能な値の100%を許容不可能なほど超える場合を除く)、いずれかの方向で、1%の範囲内、又はいくつかの実施形態では、数の5%の範囲内、又はいくつかの実施形態では、数の10%の範囲内(この数よりも大きいか、又はそれ未満)に収まる数を含み得る。したがって、「約」、「およそ」、及び「実質的に」など、1つ又は複数の用語によって修飾された値は、指定された正確な値に限定されるものではない。少なくともいくつかの例において、近似言語は、値を測定するための器具の精度に対応し得る。本明細書において、本明細書及び特許請求の範囲全体を通して、範囲制限の組み合わせ及び/又は交換が行われてもよく、かかる範囲は識別され、文脈又は言語が別段の指示をしていない限り、そこに含まれるすべての部分範囲を含む。
【0054】
本明細書における説明及び「特許請求の範囲」において、「~のうちの少なくとも1つ」又は「~のうちの1つ以上」などの語句が、要素又は特徴の接続的なリストに続いて現れる場合がある。「及び/又は」という用語も、2つ以上の要素又は特徴のリスト内に現れる場合がある。それが使用される文脈によって暗黙的又は明示的に否定されない限り、そのような語句は、列記された個々の要素若しくは特徴のいずれか、又は列挙された要素若しくは特徴のいずれかと他の列挙された要素若しくは特徴のいずれかとの組み合わせを意味することが意図される。例えば、「A及びBのうちの少なくとも1つ」、「A及びBのうちの1つ以上」、並びに「A及び/又はB」という語句は各々、「Aのみ、Bのみ、又はA及びBの双方」を意味することを意図している。3つ以上の項目を含むリストにも、同様の解釈が意図される。例えば、「A、B、及びCのうちの少なくとも1つ」、「A、B、及びCのうちの1つ以上」、並びに「A、B、及び/又はC」という語句は、それぞれ、「Aのみ、Bのみ、Cのみ、A及びBの双方、A及びCの双方、B及びCの双方、又はA及びB及びCのすべて」を意味することを意図している。加えて、上記及び「特許請求の範囲」での「~に基づいて」という用語の使用は、列挙されていない特徴又は要素も許容可能であるように、「~に少なくとも部分的に基づいて」を意味することが意図される。
【0055】
当業者は、上述の実施形態に基づいて本発明の更なる特徴及び利点を理解するであろう。したがって、本出願は、添付の特許請求の範囲によって示されるものを除き、特に示され説明されてきたものによって限定されるものではない。本明細書に引用されるすべての刊行物及び参考文献は、その全体が参照により明示的に組み込まれる。
図1
図2