IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コーロン インダストリーズ インクの特許一覧

特許7373071向上した耐久性を有するエアバッグ布およびその製造方法
<>
  • 特許-向上した耐久性を有するエアバッグ布およびその製造方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】向上した耐久性を有するエアバッグ布およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/564 20060101AFI20231025BHJP
   D06M 13/395 20060101ALI20231025BHJP
   D06M 15/263 20060101ALI20231025BHJP
   D06M 13/322 20060101ALI20231025BHJP
   D03D 1/02 20060101ALI20231025BHJP
   D03D 15/283 20210101ALI20231025BHJP
   B32B 5/28 20060101ALI20231025BHJP
   B60R 21/16 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
D06M15/564
D06M13/395
D06M15/263
D06M13/322
D03D1/02
D03D15/283
B32B5/28
B60R21/16
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022529098
(86)(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-26
(86)【国際出願番号】 KR2019018637
(87)【国際公開番号】W WO2021132778
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】キム,キ ジョン
(72)【発明者】
【氏名】イ,サン-モク
(72)【発明者】
【氏名】キム,ギ-ウン
(72)【発明者】
【氏名】ホ,ジン ウク
【審査官】中西 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-329468(JP,A)
【文献】特開2019-006956(JP,A)
【文献】特開2019-006952(JP,A)
【文献】特開2015-165059(JP,A)
【文献】特開2009-062643(JP,A)
【文献】特開平11-240027(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M
D03D
B32B
B60R
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維基材(textile substrate)と、
前記繊維基材の少なくとも一面上のコーティング層(coating layer)と、を含み、
前記コーティング層は、ポリウレタン樹脂、架橋剤、および親水性増粘剤(hydrophilic thickener)を含み、
前記架橋剤は、ブロッキングされた活性基(blocked active group)を有する化合物であり、
前記親水性増粘剤は、非ニュートン型(non-newtonian)の擬塑性(pseudoplastic)アクリル系増粘剤である、エアバッグ布。
【請求項2】
下記の式1によって定義される前記コーティング層の前記繊維基材への浸透率は、10~50%である、
請求項1に記載のエアバッグ布。
*式1:浸透率(%)=(D/T)×100
ここで、Dは、前記コーティング層が前記繊維基材の内部に浸透した最大深さであり、Tは、前記繊維基材の厚さである。
【請求項3】
前記繊維基材は、経糸および緯糸を含む織物であり、
70±2℃の温度および95±2%の相対湿度下で408時間エージングを行った後、ISO5981規格にしたがって測定された前記エアバッグ布の耐スクラブ性は、経糸方向および緯糸方向ともにおいて1,000strokes以上である、
請求項1に記載のエアバッグ布。
【請求項4】
前記親水性増粘剤は、非会合性(non-associative)増粘剤である、請求項1に記載のエアバッグ布。
【請求項5】
前記ブロッキングされた活性基は、100℃以上にて活性基から解離するブロッキング成分を含む、請求項1に記載のエアバッグ布。
【請求項6】
前記活性基は、イソシアネート基(isocyanate group)またはカルボジイミド基(carbodiimide group)である、請求項1に記載のエアバッグ布。
【請求項7】
前記ブロッキング成分は、3,5-ジメチルピラゾール(3,5-dimethyl pyrazole)(DMP)、カプロラクタム(ε-caprolactam)、またはメチルエチルケトキシム(methyl ethyl ketoxime)である、請求項1または6に記載のエアバッグ布。
【請求項8】
前記架橋剤は、3,5-ジメチルピラゾール(3,5-dimethyl pyrazole)(DMP)、カプロラクタム(ε-caprolactam)、およびメチルエチルケトキシム(methylethylketoxime)からなる群より選択された1種以上のブロッキング成分が結合したポリイソシアネート化合物またはポリカルボジイミド化合物である、請求項1に記載のエアバッグ布。
【請求項9】
前記繊維基材は、複数の経糸および緯糸を含むワンピース製織(One Piece Woven:OPW)タイプの織物であり、
前記経糸および前記緯糸それぞれは、210~1500デニールの繊度を有し、
前記経糸の密度および前記緯糸の密度は、前記織物のチャンバー領域の1つの層(one layer)を基準として40th/inch~80th/inch(糸数/インチ)であり、
前記経糸および前記緯糸それぞれは、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリエステル、およびポリオレフィンのうちの少なくとも1つを含む、
請求項1に記載のエアバッグ布。
【請求項10】
繊維基材を用意する段階と、
前記繊維基材の少なくとも一面上にコーティング層を形成する段階と、を含み、
前記コーティング層形成段階は、
水分散ポリウレタンに架橋剤および親水性増粘剤を添加することによってコーティング液を用意する段階と、
前記コーティング液を前記繊維基材の少なくとも一面上に加える段階と、
前記コーティング液が塗布された前記繊維基材を乾燥させる段階と、
前記乾燥した繊維基材を熱処理する段階と、
を含み、
前記架橋剤は、ブロッキングされた活性基(blocked active group)を有する化合物であり、
前記増粘剤は、非ニュートン型の擬塑性アクリル系増粘剤である、エアバッグ布の製造方法。
【請求項11】
前記ブロッキングされた活性基は、100℃以上で活性基から解離するブロッキング成分を含む、請求項10に記載のエアバッグ布の製造方法。
【請求項12】
前記活性基は、イソシアネート基(isocyanate group)またはカルボジイミド基(carbodiimide group)である、請求項10記載のエアバッグ布の製造方法。
【請求項13】
前記ブロッキング成分は、3,5-ジメチルピラゾール(3,5-dimethyl pyrazole)(DMP)、カプロラクタム(ε-caprolactam)、またはメチルエチルケトキシム(methylethylketoxime)である、請求項10または11に記載のエアバッグ布の製造方法。
【請求項14】
前記架橋剤は、3,5-ジメチルピラゾール(3,5-dimethyl pyrazole)(DMP)、カプロラクタム(ε-caprolactam)、およびメチルエチルケトキシム(methylethylketoxime)からなる群より選択された1種以上のブロッキング成分が結合したポリイソシアネート化合物またはポリカルボジイミド化合物である、請求項10に記載のエアバッグ布の製造方法
【請求項15】
前記増粘剤は、非会合性増粘剤である、請求項10に記載のエアバッグ布の製造方法。
【請求項16】
前記増粘剤は、25,000~60,000cpsの粘度を有し、
前記コーティング液は、6,000~30,000cpsの粘度を有する、
請求項10に記載のエアバッグ布の製造方法。
【請求項17】
前記繊維基材の少なくとも一面上に加えられる前記コーティング液の量は、15~50gsmである、
請求項10に記載のエアバッグ布の製造方法。
【請求項18】
前記乾燥段階は、80℃と150℃との間の範囲で昇温させることによって行われ、
前記熱処理段階は、150℃を超える温度で行われる、
請求項10に記載のエアバッグ布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグ布(生地)およびその製造方法に関し、より具体的には、優れた気密性を有すると同時に、向上した耐久性を有するエアバッグ布、および、このようなエアバッグ布を高い生産性で製造できる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の速度以上で走行中の車両が衝突または転覆する際に車両に加えられる衝撃を衝撃検知センサが検知すれば、エアバッグが膨張展開されることによって、車両の運転者および乗員が事故から保護される。
【0003】
エアバッグ布は、繊維基材(textile substrate)のほか、布の気密性(air tightness)を高めるためのコーティング層(coating layer)をさらに含む。
【0004】
一般に、空気膨張性エアバッグは、平織(plain weave)またはバスケット織(basket weave)で製織された繊維基材を裁断および縫製(cut&sewing)する方式によって製造されるか、前記裁断および縫製の方式によって形成された接合部(seam)をシーラントで処理する接合部-シーリング(seam-sealing)の方式によって製造されるか、または製織過程にて二重層構造の膨張部を形成するワンピース製織(One Piece Woven:OPW)タイプの繊維基材を用いて製造される。
【0005】
繊維基材上に形成されるコーティング層は、エアバッグに要求される気密性を提供するためのものである。例えば、サイドカーテンエアバッグは、転覆事故(roll-over)の際、搭乗者の保護のために、相対的に長い時間(例えば、6秒)にわたって膨らんだ形態に維持されなければならないため、他の種類のエアバッグに比べて、相対的により高い気密性を有しなければならない。
【0006】
前記コーティング層の主な材料としてネオプレンゴムが草創期に用いられていた。しかし、エアバッグ布、特にサイドカーテン用布に要求される高い気密性を満足させるためには、過度に多量のネオプレンゴムがコーティングされることが要求された。したがって、ネオプレンゴムで前記コーティング層を形成することは、エアバッグの生産費用および収納性(packability)の面で望ましくなかった。また、ネオプレンゴムで前記コーティング層を形成する場合、エアバッグが過度に重くなって自動車燃費の低下をもたらす。
【0007】
このような理由から、最近は、シリコーン樹脂またはポリウレタン樹脂がネオプレンゴムを代替している。特に、環境問題および費用問題などによって揮発性有機溶剤の使用に制約が加えられるにつれ、水分散ポリウレタン(aqueous polyurethane dispersion)コーティング層に対する関心が高まっている。
【0008】
一般に、水分散ポリウレタンは、シリコーン樹脂に比べて相対的に少ないコーティング量でも優れた内圧(internal pressure)保持特性をエアバッグに提供することができる。しかし、水分散ポリウレタンコーティング層は、繊維基材との接着力が相対的に低くて、自動車内に収納された状態で長時間保管される場合、前記コーティング層が前記繊維基材から剥離される危険がある。このようなコーティング層の剥離は、車両の転覆事故の際、サイドカーテンエアバッグが膨らんだ形態に維持されることを不可能にする。
【0009】
水分散ポリウレタンコーティング層を含むエアバッグの低い耐久性を克服するために、水分散ポリウレタンコーティング液に架橋剤を添加することが提案された。
【0010】
しかし、水分散ポリウレタンコーティング液に架橋剤が添加された直後、コーティング液の硬化が比較的速やかに進行するため、エアバッグ製造業者は、前記コーティング液に架橋剤を添加した後、約2、3時間内にコーティング工程を完了しなければならないという負担がある。つまり、コーティング工程が少しでも遅延される場合、材料の浪費および生産性の低下につながる危険がある。
【0011】
また、架橋剤が添加された水分散ポリウレタンコーティング液でコーティング層を形成するとしても、エアバッグの耐久性が期待通りに多く向上しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明は、上記の関連技術分野における要求を満足させることができるエアバッグ布およびその製造方法に関する。
【0013】
発明の一観点は、優れた気密性を有すると同時に、向上した耐久性を有するエアバッグ布を提供することである。
【0014】
発明の他の観点は、優れた気密性を有すると同時に、向上した耐久性を有するエアバッグ布を、材料の浪費なしに高い生産性で製造できる方法を提供することである。
【0015】
前述した発明の観点以外にも、発明の他の特徴および利点について、以下に説明されるか、そのような説明から、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の発明の一観点によると、繊維基材(textile substrate)と、前記繊維基材の少なくとも一面上のコーティング層(coating layer)とを含み、
前記コーティング層は、ポリウレタン樹脂、架橋剤、および親水性増粘剤(hydrophilic thickener)を含み、前記架橋剤は、ブロッキングされた活性基(blocked active group)を有する化合物である、エアバッグ布が提供される。
【0017】
下記の式1によって定義される、前記コーティング層の前記繊維基材への浸透率は、10~50%であってもよい。
【0018】
*式1:浸透率(%)=(D/T)×100
【0019】
ここで、Dは、前記コーティング層が前記繊維基材の内部に浸透した最大深さであり、Tは、前記繊維基材の厚さである。
【0020】
前記繊維基材は、経糸および緯糸を含む織物であってもよく、70±2℃の温度および95±2%の相対湿度下で408時間エージングを行った後、ISO5981規格により測定された前記エアバッグ布の耐スクラップ性は、経糸方向および緯糸方向のいずれにおいても1,000strokes以上であってもよい。
【0021】
前記親水性増粘剤は、非会合性(non-associative)増粘剤であってもよい。
【0022】
前記親水性増粘剤は、非ニュートン型(nonnewtonian)の擬塑性(pseudoplastic)アクリル系増粘剤であってもよい。
【0023】
前記繊維基材は、複数の経糸および緯糸を含むワンピース製織(One Piece Woven:OPW)タイプの織物であってもよく、前記経糸および前記緯糸のそれぞれは、210~1500デニールの繊度を有することができ、前記経糸の密度および前記緯糸の密度は、前記織物のチャンバー領域の1つの層(one layer)を基準として40th/inch(thread per inch; インチ当たり糸数)~80th/inchでありうるのであり、前記経糸および前記緯糸のそれぞれは、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリエステル、およびポリオレフィンのうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0024】
前記ブロッキングされた活性基は、100℃以上にて活性基から解離するブロッキング成分を含むことができる。
【0025】
前記活性基は、イソシアネート基(isocyanate group)またはカルボジイミド基(carbodiimide group)であってもよい。
【0026】
前記ブロッキング成分は、3,5-ジメチルピラゾール(3,5-dimethyl pyrazole)(DMP)、カプロラクタム(ε-caprolactam)、またはメチルエチルケトキシム(methylethylketoxime)であってもよい。
【0027】
前記架橋剤は、3,5-ジメチルピラゾール(3,5-dimethyl pyrazole)(DMP)、カプロラクタム(ε-caprolactam)、およびメチルエチルケトキシム(methylethylketoxime)からなる群より選択された1種以上のブロッキング成分が結合した、ポリイソシアネート化合物またはポリカルボジイミド化合物であってもよい。
【0028】
発明の他の観点により、繊維基材を用意する段階と、前記繊維基材の少なくとも一面上にコーティング層を形成する段階とを含み、前記コーティング層形成段階は、水分散ポリウレタンに架橋剤および親水性増粘剤を添加することによってコーティング液を用意する段階と、前記コーティング液を前記繊維基材の少なくとも一面上に加える段階と、前記コーティング液が塗布された前記繊維基材を乾燥させる段階と、前記乾燥した繊維基材を熱処理する段階とを含み、前記架橋剤は、ブロッキングされた活性基(blocked active group)を有する化合物である、エアバッグ布の製造方法が提供される。
【0029】
前記ブロッキングされた活性基は、100℃以上で活性基から解離するブロッキング成分を含むことができる。
【0030】
前記活性基は、イソシアネート基(isocyanate group)またはカルボジイミド基(carbodiimide group)であってもよい。
【0031】
前記ブロッキング成分は、3,5-ジメチルピラゾール(3,5-dimethyl pyrazole)(DMP)、カプロラクタム(ε-caprolactam)、またはメチルエチルケトキシム(methylethylketoxime)であってもよい。
【0032】
前記架橋剤は、3,5-ジメチルピラゾール(3,5-dimethyl pyrazole)(DMP)、カプロラクタム(ε-caprolactam)、およびメチルエチルケトキシム(methyl ethyl ketoxime)からなる群より選択された1種以上のブロッキング成分が結合したポリイソシアネート化合物またはポリカルボジイミド化合物であってもよい。
【0033】
前記増粘剤は、非会合性増粘剤であってもよい。
【0034】
前記増粘剤は、非ニュートン型の擬塑性アクリル系増粘剤であってもよい。
【0035】
前記増粘剤は、25,000~60,000cpsの粘度を有することができ、前記コーティング液は、6,000~30,000cpsの粘度を有することができる。
【0036】
前記繊維基材の少なくとも一面上に加えられる前記コーティング液の量は、15~50gsmであってもよい。
【0037】
前記乾燥段階は、80℃と150℃との間の範囲で昇温させることによって行われ、前記熱処理段階は、150℃を超える温度で行われうる。
【0038】
上記のような一般的記述および以下の詳細な説明のすべては、本発明を例示または説明するためのものに過ぎず、特許請求の範囲の発明に関する、より詳しい説明を提供するためのものと理解されなければならない。
【発明の効果】
【0039】
優れた内圧保持特性を提供できる水分散ポリウレタンでもって繊維基材上にコーティング層を形成するものであって、
(i)水分散ポリウレタンコーティング液に架橋剤および親水性増粘剤を添加することによって、繊維基材とコーティング層との間の接着力を強化させて、水分散ポリウレタンの固有の耐久性問題を克服することができ、
(ii)前記架橋剤としてブロッキングされた活性基を有する架橋剤を用いることによって、前記コーティング液の保存安定性(storage stability)および可使時間(pot lifetime)を増加させて、工程効率性および生産性を向上させることができる。
【0040】
添付した図面は、発明の理解を助け、本明細書の一部を構成するためのものであって、発明の実施例を例示し、発明の詳細な説明とともに発明の原理を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】発明の一実施例によるエアバッグ布の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、添付した図面を参照して、発明の実施例を詳細に説明する。ただし、以下に説明される実施例は、発明の明確な理解のための例示的な目的として提示されるに過ぎず、発明の範囲を制限しない。
【0043】
発明の技術的な思想および範囲を逸脱しない範囲内で、発明の多様な変更および変形が可能であることは、当業者に自明であろう。したがって、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明、およびその均等物の範囲内に属する変更および変形をすべて含む。
【0044】
発明の一実施例によるエアバッグ布(生地)100は、繊維基材110と、コーティング層120とを含む。
【0045】
発明の一実施例によれば、発明の布100は、サイドカーテンエアバッグ用であり、前記繊維基材110は、経糸111および緯糸112を含むワンピース製織(OPW)タイプの織物である。前記経糸111の密度および前記緯糸112の密度は、OPW織物におけるチャンバー領域の1つの層(one layer)を基準として40~80th/inch(糸数/インチ)である。
【0046】
エアバッグが展開される際に高温-高圧の展開エネルギーを吸収できる吸収性能の面で優れた機械的物性(例えば、強度)が維持されるようにするために、前記経緯糸111、112の繊度は、210デニール以上でなければならない。これに対し、エアバッグのフォールディング性および軽量化のために、前記経緯糸111、112の繊度は、1500デニール以下であることが好ましい。
【0047】
また、柔軟性、コーティング面の平滑性などの観点からして、前記経緯糸111、112それぞれは、72以上のフィラメント111a、112aを含むマルチフィラメントであることが好ましい。
【0048】
前記経糸111および緯糸112のそれぞれは、脂肪族ポリアミド(例えば、ナイロン6またはナイロン66)、芳香族ポリアミド(例えば、アラミド)、ポリエステル(例えば、PET)、およびポリオレフィン(例えば、PEまたはPP)のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0049】
発明の一実施例によれば、前記繊維基材110の少なくとも一面上の前記コーティング層120は、ポリウレタン樹脂、架橋剤、および親水性増粘剤(hydrophilic thickener)を含むことができる。
【0050】
ポリオールとイソシアネートとがウレタン結合をすることにより形成される発明のポリウレタン樹脂は、ポリオール成分として、ポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、およびシリコーン系ポリオールのうちの1つ以上を含むことができる。
【0051】
発明の一実施例によれば、前記ポリウレタン樹脂は、水分散性(water dispersible)ポリウレタン樹脂であってもよい。
【0052】
前記増粘剤は、前記コーティング層120形成のために使用されるコーティング液に、一定水準以上の粘度を付与することによって、コーティングの均一性およびコーティング工程の効率性を向上させる。
【0053】
本発明によれば、前記増粘剤は、親水性増粘剤である。親水性増粘剤が、水分散ポリウレタンを主成分として含むコーティング液に、添加剤として含有されるため、湿潤効果によってコーティング液の媒質である水が、前記繊維基材110の内部に浸透する際、ポリウレタン粒子が前記繊維基材110の内部に、より良く、そして均一に浸透される。
【0054】
前記親水性増粘剤は、コーティング液の媒質である水を膨潤(swelling)させる非会合性(non-associative)増粘剤であってもよく、より好ましくは、低剪断(low shear)タイプとして、剪断力が加えられる際に粘度の変形が発生する、非ニュートン型(nonnewtonian)の擬塑性(pseudoplastic)アクリル系増粘剤であってもよい。
【0055】
具体的には、前記増粘剤は、(メタ)アクリル官能基を含む親水性非会合型増粘剤であってもよいし、このような増粘剤は、約5~20重量%の固形分を含む液状であってもよい。
【0056】
前記コーティング層120の前記繊維基材110への浸透率は、10~50%、好ましくは25~40%であってもよい。前記浸透率は、下記の式1によって定義される。
【0057】
*式1:浸透率(%)=(D/T)×100
【0058】
ここで、Dは、前記コーティング層120が前記繊維基材110の内部に浸透した最大深さであり、Tは、前記繊維基材110の厚さである。DとTは、エアバッグ布100の断面のSEM写真により測定される。
【0059】
前記コーティング層120の浸透率が10%未満であれば、エアバッグ布100が優れた柔軟性を有することはできるが、前記繊維基材110と前記コーティング層120との接着力が低いことから、長時間自動車内に保管される場合、互いに分離される危険がある。このようなコーティング層の剥離は、車両の転覆事故の際、サイドカーテンエアバッグが膨らんだ形態に維持されることを不可能にする。
【0060】
本発明によれば、前記コーティング層120の浸透率が10%以上であるため、70±2℃の温度および95±2%の相対湿度下で408時間エージングを行った後、ISO5981規格にしたがって測定された前記エアバッグ布100の耐スクラブ(scrub resistance)性は、経糸方向および緯糸方向のいずれにおいても1,000ストローク(strokes)以上であるが、これは、1,000以上のストローク(strokes)の後に、はじめて前記コーティング層120が前記繊維基材110から剥離されることを意味する。このようなエアバッグ布100の耐スクラブ性の向上は、繊維基材110の内部に深く浸透して形成された、コーティング層120の部分のアンカー効果(anchoring effect)に起因する。
【0061】
一方、前記コーティング層120の浸透率が50%を超えると、エアバッグ布100の剛軟度が急激に増加して(つまり、柔軟性が急激に低下して)、そのフォールディング性、引裂強度およびエアバッグの収納性が悪くなる。
【0062】
選択的に、発明のコーティング層120は、ポリウレタン粒子の繊維基材110の内部への均一な浸透をより容易にする湿潤剤(例えば、アクリルエステル系の湿潤剤)、エアバッグ布100の難燃性を向上させるための難燃剤(例えば、非ハロゲンリン系難燃剤)、エアバッグ布100の表面特性向上のためのブロッキング防止剤(anti-blocking agent)、および/またはスリップ剤(slip agent)をさらに含んでもよい。
【0063】
上述のように、前記架橋剤は、ブロッキングされた活性基(blocked active group)を有する化合物であってもよい。
【0064】
より具体的には、前記ブロッキングされた活性基は、100℃以上で活性基から解離するブロッキング成分を含むことができる。
【0065】
前記活性基は、イソシアネート基(isocyanate group)またはカルボジイミド基(carbodiimide group)であってもよい。
【0066】
前記ブロッキング成分は、3,5-ジメチルピラゾール(3,5-dimethyl pyrazole)(DMP)、カプロラクタム(ε-caprolactam)、またはメチルエチルケトキシム(methylethylketoxime)であってもよい。
【0067】
前記架橋剤は、3,5-ジメチルピラゾール(3,5-dimethyl pyrazole)(DMP)、カプロラクタム(ε-caprolactam)、およびメチルエチルケトキシム(methylethylketoxime)からなる群より選択された1種以上のブロッキング成分が結合した、ポリイソシアネート化合物またはポリカルボジイミド化合物であってもよい。
【0068】
前記ポリイソシアネート化合物は、2以上のNCO官能基を有する化合物であって、脂肪族、シクロ脂肪族、芳香族、芳香脂肪族(araliphatic)のポリイソシアネートまたはこれらの混合物が使用できる。
【0069】
前記ポリカルボジイミド化合物は、カルボジイミド当量が200~600である化合物が使用できる。前記カルボジイミド当量は、ポリカルボジイミド系架橋剤のカルボジイミド基のモル数に対するポリカルボジイミド系架橋剤の重量を意味することができる。
【0070】
前記ポリカルボジイミド系架橋剤は、可使時間(pot lift)が長くて架橋効率に優れるというメリットがある。このようなポリカルボジイミド系架橋剤としては、日清紡ケミカル株式会社(Nisshinbo Chemical Inc.)から提供されるCarbodilite V-02、SV-02、V-02-L2、V-04、E-01、E-02、E-03AまたはE-05などを使用することができる。
【0071】
以下、発明の一実施例によるエアバッグ布100の製造方法を具体的に説明する。
【0072】
発明の方法は、繊維基材110を用意する段階と、前記繊維基材110の少なくとも一面上にコーティング層120を形成する段階とを含む。
【0073】
前記繊維基材110は、経糸111および緯糸112を含むワンピース製織(OPW)タイプの織物であってもよいし、前記経糸111の密度、および前記緯糸112の密度は、前記織物のチャンバー領域の1つの層を基準として、それぞれ40~80th/inch(thread per inch; インチ当たり糸数)であってもよい。
【0074】
前記経緯糸111、112のそれぞれは、72個以上のフィラメント111a、112aを含み、210~1500デニールの総繊度を有するマルチフィラメントであってもよいし、脂肪族ポリアミド(例えば、ナイロン6またはナイロン66)、芳香族ポリアミド(例えば、アラミド)、ポリエステル(例えば、PET)、およびポリオレフィン(例えば、PEまたはPP)のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0075】
一般に、製織特性を向上させるために、製織前に、原糸に油剤または糊剤を付与する。したがって、前記繊維基材110の少なくとも一面上に前記コーティング層120を形成する前に、前記繊維基材110から前記油剤または糊剤を除去するために、前記繊維基材110を精練する段階と、前記精練された繊維基材を水洗する段階とがさらに行われる。
【0076】
前記繊維基材110の少なくとも一面上に前記コーティング層120を形成するために、まず、コーティング液を用意する。
【0077】
前記コーティング液は、前記繊維基材110とコーティング層120との間の接着力を強化させるための架橋剤、およびコーティング液の粘度調節のための増粘剤を、水分散ポリウレタンに添加することによって用意される。
【0078】
ポリオールとイソシアネートとがウレタン結合をすることにより形成される発明の水分散性ポリウレタン樹脂は、ポリオール成分として、ポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、およびシリコーン系ポリオールのうちの1つ以上を含むことができる。
【0079】
上述のように、水分散ポリウレタンに架橋剤が添加された直後、コーティング液の硬化が比較的速やかに進行するため、エアバッグ製造業者は、架橋剤を添加した後、約2、3時間内にコーティング工程を完了しなければならないという負担がある。つまり、コーティング工程が少しでも遅延される場合、材料の浪費および生産性の低下につながる危険がある。
【0080】
このような問題点を解決するために、前記架橋剤は、ブロッキングされた活性基(blocked active group)を有する。架橋剤の活性基が高温(例えば、100℃以上)にて解離する成分でもってブロッキングされるため、水分散ポリウレタンに架橋剤を添加した後、常温にて硬化が始まるまで、相当の時間[つまり、相当の可使時間(pot lifetime)]がかかる。したがって、本発明によれば、架橋剤を水分散ポリウレタンに添加した後、コーティング液を実際に繊維基材110上に塗布するまで相当の余裕時間(例えば、約48時間以上)が確保される。
【0081】
発明の一実施例によれば、前記活性基は、イソシアネート基(isocyanate group)またはカルボジイミド基(carbodiimide group)であってもよい。
【0082】
また、発明の一実施例によれば、前記ブロッキング成分は、100℃以上にて前記活性基から、はじめて解離されうるのであり、150℃を超える温度では完全に気化されうる(つまり、コーティング液の硬化のための熱処理工程中に、完全に除去できる)任意の化合物であってもよいが、例えば、3,5-ジメチルピラゾール(3,5-dimethyl pyrazole)(DMP)、カプロラクタム(ε-caprolactam)、またはメチルエチルケトキシム(methyl ethyl ketoxime)であってもよい。
【0083】
より具体的には、前記架橋剤は、3,5-ジメチルピラゾール(3,5-dimethyl pyrazole)(DMP)、カプロラクタム(ε-caprolactam)、およびメチルエチルケトキシム(methylethylketoxime)からなる群より選択された1種以上のブロッキング成分が結合したポリイソシアネート化合物またはポリカルボジイミド化合物であってもよい。
【0084】
前記コーティング液は、水分散ポリウレタン100重量部に対して1~5重量部の前記架橋剤を含むことができる。
【0085】
上述のように、水分散ポリウレタンに添加される、発明の増粘剤は、親水性増粘剤であり、湿潤効果によって、コーティング液の媒質である水が前記繊維基材110の内部へと浸透する際、ポリウレタン粒子が前記繊維基材110の内部へと、より良く、そして均一に浸透できるようにする。
【0086】
前記親水性増粘剤は、コーティング液の媒質である水を膨潤(swelling)させる非会合性(non-associative)増粘剤であってもよく、より好ましくは、低剪断(low shear)タイプとして、コーティングナイフヘッド部によって剪断力が加えられる際、粘度の変形が発生する非ニュートン型(nonnewtonian)の擬塑性(pseudoplastic)アクリル系増粘剤であってもよい。
【0087】
具体的には、前記増粘剤は、(メタ)アクリル官能基を含む親水性非会合型増粘剤であってもよいし、このような増粘剤は、約5~20重量%の固形分を含む液状であってもよい。
【0088】
発明の一実施例によれば、前記親水性添加剤は、25,000~60,000cpsの粘度を有することができ、前記コーティング液の粘度を6,000~30,000cpsとする量で、前記水分散ポリウレタンに添加されうる。
【0089】
前記コーティング液の粘度が30,000cpsを超えると、コーティング液の塗布量を50gsm(g/m2)以下に調節することが困難であり(コーティング液の塗布量を50gsm以下に調節しなければならない理由は後述する)、過剰な増粘剤が要求され、高粘度による均質性(homogeneity)の低下がもたらされ、前記コーティング液が、前記繊維基材110の内部に浸透しにくくなる。これに対し、前記コーティング液の粘度が6,000cps未満であれば、十分なコーティング液の塗布が難しく、所望の機械的物性が前記コーティング層120に発現しにくく、毛細管現象によってコーティング液が前記繊維基材110の内部に過度に深く浸透して、エアバッグのフォールディング性および収納性の低下がもたらされうる。
【0090】
前記粘度は、回転型粘度測定機器で測定されるが、例えば、ブルックフィールド(Brookfield)DV2Tでもって、スピンドルLV-3(63)またはLV-4(64)、速度10rpmで測定される。
【0091】
選択的に、ポリウレタン粒子が繊維基材110の内部に容易に浸透可能にする湿潤剤(例えば、アクリルエステル系の湿潤剤)、エアバッグ布100の難燃性を向上させるための難燃剤(例えば、非ハロゲンリン系難燃剤)、エアバッグ布100の表面特性向上のためのブロッキング防止剤(anti-blocking agent)、および/またはスリップ剤(slip agent)などが、前記水分散ポリウレタンにさらに添加されてもよい。
【0092】
例えば、前記コーティング液は、30~60重量%の固形分を含み、水分散ポリウレタン100重量部に1~5重量部の架橋剤、3~10重量部の増粘剤、5~20重量部の難燃剤、および0.1~2重量部のその他の添加剤(シリコーン系のブロッキング防止剤および/またはスリップ剤)を添加することによって製造される。
【0093】
次に、前記コーティング液を前記繊維基材110の少なくとも一面上に加える。前記コーティング液は、ナイフコーティング方式またはロールコーティング方式でもって、前記繊維基材110上に均一にコーティングされる。塗布量の制御が容易であり、均一なコーティングが可能であるという点でナイフコーティング方式が好ましい。
【0094】
発明の一実施例によれば、前記繊維基材の少なくとも一面上に加えられる前記コーティング液の塗布量は、15~50gsmであってもよい。前記塗布量が15gsm(g/m2)未満であれば、エアバッグの内圧保持性が低下し、前記塗布量が50gsmを超えると、エアバッグ布100の剛軟度が急激に増加して(つまり、柔軟性が急激に低下して)、そのフォールディング性およびエアバッグの収納性が悪くなり、エアバッグの軽量化を実現することができない。
【0095】
次に、前記コーティング液が塗布された前記繊維基材110を乾燥させる。例えば、前記繊維基材110は、テンターオーブン(tenter oven)で乾燥できる。
【0096】
このような乾燥工程(「1次硬化」と称されたりもする)により、前記コーティング液の水成分が蒸発すると同時に、前記架橋剤の活性基からブロッキング成分が解離して、前記コーティング液の硬化が進行することによってコーティング層120が形成される。前記コーティング層120の損傷の誘発を防止するために、前記乾燥工程は、80℃と150℃との間の範囲で昇温させることによって行われる。
【0097】
次に、コーティング層120の完全硬化(「2次硬化」と称されたりもする)のために、前記乾燥した繊維基材を熱処理する。前記熱処理段階は、150℃を超える温度、例えば、155~200℃で120~350秒の間行われる。前記乾燥工程中に、前記活性基から解離したブロッキング成分が、このような熱処理工程中に気化して完全に除去される。
【0098】
エアバッグ布100の温度を下げるための冷却工程が、例えば、クーリングシリンダ(図示せず)を用いてさらに行われてもよいし、このように冷却された布100がワインダ(図示せず)に巻取られる。
【0099】
以下、発明の具体的な実施例および比較例を通じて発明の効果を説明する。ただし、下記の実施例は発明の理解のためのものに過ぎず、これらが本発明の権利範囲を制限するのではない。
【0100】
[実施例および比較例:エアバッグ布の製造]
実施例1
ポリエチレンテレフタレート(PET)原糸を用いてOPW繊維基材(経糸密度:57th/inch、緯糸密度:49th/inch)を製造した。前記OPW繊維基材について、精練槽および水洗槽を順次に通過させた後、乾燥させた。
【0101】
水分散ポリウレタン100重量部に、3重量部の架橋剤IMPRAFIX(登録商標)2794(Covestro)[DMP(3,5-dimethyl pyrazole)でブロッキングされたポリイソシアネート]、および5重量部の親水性の非会合性アクリル系増粘剤Borchi(登録商標) Gel A-LA(Borchers)を添加して、15,000cpsの粘度を有するコーティング液を得た。
【0102】
前記架橋剤を前記水分散ポリウレタンに添加して24時間経過した後、ナイフコーティング方式を用いて、前記繊維基材上に前記コーティング液を30gsmの量で均一に塗布した。
【0103】
80℃と150℃との間の範囲で昇温させることによって乾燥工程を行った。以後、連続的に、コーティング面のスリップ性および耐ブロッキング性を付与するために、別途にトップコート塗装(Top coating)を処理したのであり、この際に、適用したTop coatingは、Talcを含有したシリコーン系のトップコート塗装(Top coating)組成物として、グラビアローラを用いてベース(Base)コーティング層の表面に転写させた後、約150℃の温度で乾燥を実施する。その後、180℃で熱処理工程を追加的に行うことによってエアバッグ布(生地)を完成した。
【0104】
比較例1
コーティング液に前記架橋剤が含まれていないことを除けば、実施例1と同様の方法でエアバッグ布を得た。
【0105】
比較例2
イソシアネート基がブロッキングされていない架橋剤DESMODUR(登録商標)N3900(Covestro)が使用されたことを除けば、実施例1と同様の方法で繊維基材およびコーティング液をそれぞれ用意した。次に、このコーティング液を実施例1と同様の方法で繊維基材上に塗布しようとしたが(つまり、前記架橋剤を水分散ポリウレタンに添加して24時間経過した後、コーティング液を繊維基材上に塗布しようとしたが)、コーティング液の硬化がすでに相当に進行していて塗布が不可能であった。
【0106】
比較例3
親水性の非会合性アクリル系増粘剤の代わりに、疎水性PU増粘剤Borchi(登録商標)Gel L75N(Borchers)が使用されたことを除けば、実施例1と同様の方法でエアバッグ布(生地)を得た。
【0107】
[実験例:エアバッグ布(生地)の物性測定]
上記のように製造された実施例および比較例のエアバッグ布のコーティング層浸透率およびエージング後の耐スクラブ性を下記のようにそれぞれ測定し、その結果を下記の表1に示した。
【0108】
実験例:コーティング層浸透率
布サンプルを緯糸と平行な方向に切断した。次に、その断面のSEM写真を撮影した後、コーティング層が繊維基材の内部に浸透した最大深さD、および前記繊維基材の厚さTを、それぞれ測定し、その測定値を用いて、下記の式1により各布のコーティング層浸透率を算出した。
【0109】
式1:浸透率(%)=(D/T)×100
【0110】
実験例2:エージング後の耐スクラブ性(scrub resistance)
布サンプルを70±2℃の温度および95±2%の相対湿度下で408時間放置することによってエージング(aging)を行った。次に、ISO5981規格にしたがって測定された前記エアバッグ布の経糸方向および緯糸方向に対する耐スクラブ性をそれぞれ測定した。具体的には、布サンプルの両末端をクランプで固定した状態にて、布サンプルに10Nの荷重を付与した状態で、前記布サンプルを繰り返し往復運動させ、コーティング層が剥がれる直前までの回数(strokes)を測定した。
【0111】
【表1】
【0112】
前記表1から確認されるように、前記実施例1にて、コーティング液が相対的に高い浸透率でエアバッグ布に浸透することが確認され、最終的に製造されたエアバッグ布が高い耐スクラブ性を有することが確認された。
【0113】
これに対し、比較例1~3でコーティング液が低い浸透率でエアバッグ布に浸透し、これによって、エアバッグ布が有する耐スクラブ性も相対的に低い水準であることが確認された。
【符号の説明】
【0114】
100:エアバッグ布 110:繊維基材
111:経糸 112:緯糸
120:コーティング層
図1