(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】タービンハウジング、ターボチャージャおよびガソリンエンジン
(51)【国際特許分類】
F02B 37/18 20060101AFI20231025BHJP
F02B 39/00 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
F02B37/18 E ZAB
F02B39/00 D
(21)【出願番号】P 2022572845
(86)(22)【出願日】2020-12-28
(86)【国際出願番号】 JP2020049197
(87)【国際公開番号】W WO2022145002
(87)【国際公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】316015888
【氏名又は名称】三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】三好 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】新田 憲司
(72)【発明者】
【氏名】中川 大志
(72)【発明者】
【氏名】入江 宗祐
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-069664(JP,A)
【文献】特開2015-165096(JP,A)
【文献】特開2017-145719(JP,A)
【文献】特開2018-053727(JP,A)
【文献】実開昭63-128242(JP,U)
【文献】国際公開第2017/158378(WO,A1)
【文献】米国特許第10590793(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/18
F02B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガソリンエンジンから排出される排ガスにより駆動するタービン翼を収容するように構成されたタービンハウジングであって、
前記排ガスを前記タービン翼に導くためのスクロール状に形成されたスクロール流路を形成するスクロール流路壁面、
前記タービン翼を通過した前記排ガスを排出するための排ガス排出路を形成する排ガス排出路壁面、および
前記タービン翼を迂回して前記スクロール流路と前記排ガス排出路とを接続するウェイストゲート通路を形成するウェイストゲート通路壁面、を内部に有する本体部と、
前記本体部における前記スクロール流路の上流端に設けられた入口フランジ部であって、前記スクロール流路に繋がる排ガス導入口が形成された入口フランジ部と、を備え、
前記スクロール流路壁面に形成された前記ウェイストゲート通路の入口側開口縁は、前記入口側開口縁の少なくとも一部が前記排ガス導入口を通じて前記タービンハウジングの外部から視認可能な位置に設けられ
、
前記入口側開口縁は、前記入口側開口縁における下流端を含む下流端部に設けられた、熱伸びによる応力が集中するように構成された応力集中部を含む、
タービンハウジング。
【請求項2】
前記応力集中部は、
前記下流端部から前記スクロール流路の流れ方向における上流側に向かうにつれて、前記入口側開口縁における上流端と前記下流端とを結ぶ第1直線に対する一方側に向かって傾斜する第1辺と、
前記下流端部から前記スクロール流路の流れ方向における前記上流側に向かうにつれて、前記第1直線に対する他方側に向かって傾斜する第2辺と、を含む、
請求項
1に記載のタービンハウジング。
【請求項3】
前記応力集中部は、前記入口側開口縁における前記下流端部から前記スクロール流路の流れ方向における下流側に向かって延在するスリットを含む、
請求項
1に記載のタービンハウジング。
【請求項4】
前記応力集中部は、前記スクロール流路壁面における前記ウェイストゲート通路の入口開口の開口幅方向の中央部に設けられた、
請求項
1に記載のタービンハウジング。
【請求項5】
前記排ガス排出路は、前記タービン翼の軸線の延在方向のおける一方側から他方側に前記排ガスを導くように構成され、
前記ウェイストゲート通路の出口開口の中心を通過する法線が、前記タービン翼の前記軸線に対して交差する方向に延在するように構成された、
請求項
1に記載のタービンハウジング。
【請求項6】
前記タービン翼の前記軸線と前記出口開口の前記中心とが存在する平面視において、
前記軸線と前記法線とのなす角度をθとした場合に、30°≦θ≦60°を満たす、
請求項
5に記載のタービンハウジング。
【請求項7】
請求項1に記載のタービンハウジングを備えるターボチャージャ。
【請求項8】
複数の気筒を有するシリンダブロックと、
前記複数の気筒の各々から排出される排ガスが合流する排気マニホールドであって、少なくとも一部が前記シリンダブロックの内部に設けられた排気マニホールドと、
請求項
7に記載のターボチャージャと、を備え、
前記タービンハウジングの前記入口フランジ部が、前記排気マニホールドに接続された
ガソリンエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タービンハウジング、該タービンハウジングを備えるターボチャージャ、および該ターボチャージャを備えるガソリンエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などに用いられるエンジンには、エンジンの出力や燃費を向上させるためのターボチャージャが搭載されることがある。ターボチャージャは、エンジンから排出される排ガスなどの高温流体が有するエネルギーによりタービン翼を回転させることで、回転シャフトを介してタービン翼に機械的に連結されたコンプレッサのインペラを回転させる。ターボチャージャは、回転駆動するインペラにより、エンジンにおける燃焼に用いる気体(例えば、空気)を圧縮してエンジンに送り込む。
【0003】
特許文献1には、排ガスの一部をタービン翼に導入せずに迂回させるウェイストゲート通路(バイパス流路)が内部に形成されたタービンハウジングと、ウェイストゲート通路の開閉を行うウェイストゲート弁と、を備えるターボチャージャが開示されている。また、特許文献2には、エンジン(内燃機関)の排気系に設けられる排ガス浄化触媒が開示されている。排ガス浄化触媒は、排ガスに含まれる有害成分、例えば、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)を浄化したり、排ガスに含まれる粒子状物質(PM)を捕集したりする機能を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5846351号公報
【文献】特許第6487982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、排ガス浄化触媒の性能は、触媒の温度や酸素の濃度に影響される。このため、ウェイストゲート通路を通過する排ガス、すなわち、タービン翼にエネルギーが回収されて温度低下していない排ガス、をウェイストゲート通路の下流側に配置された排ガス浄化触媒に送り、排ガス浄化触媒を昇温し、活性化させることが行われることがある。ウェイストゲート通路を通過する排ガスのタービンハウジングにおける放熱損失が大きいと、排ガス浄化触媒の昇温を効果的に行うことができない虞がある。特に、エンジンがガソリンエンジンである場合には、ディーゼルエンジンなどに比べて、エンジンから排出される排ガスが高温になり、排ガスとタービンハウジングとの間の温度差が増大するため、タービンハウジングにおける放熱損失が増大する虞がある。このため、ウェイストゲート通路を通過する排ガスのタービンハウジングにおける放熱損失を抑制する必要がある。
【0006】
上述した事情に鑑みて、本開示の少なくとも一実施形態の目的は、ウェイストゲート通路を通過する排ガスのタービンハウジングにおける放熱損失を抑制でき、タービンハウジングの下流側に配置された排ガス浄化触媒の昇温を効果的に行うことができるタービンハウジング、ターボチャージャ、およびガソリンエンジンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施形態にかかるタービンハウジングは、
ガソリンエンジンから排出される排ガスにより駆動するタービン翼を収容するように構成されたタービンハウジングであって、
前記排ガスを前記タービン翼に導くためのスクロール状に形成されたスクロール流路を形成するスクロール流路壁面、
前記タービン翼を通過した前記排ガスを排出するための排ガス排出路を形成する排ガス排出路壁面、および
前記タービン翼を迂回して前記スクロール流路と前記排ガス排出路とを接続するウェイストゲート通路を形成するウェイストゲート通路壁面、を内部に有する本体部と、
前記本体部における前記スクロール流路の上流端に設けられた入口フランジ部であって、前記スクロール流路に繋がる排ガス導入口が形成された入口フランジ部と、を備え、
前記スクロール流路壁面に形成された前記ウェイストゲート通路の入口側開口縁は、前記入口側開口縁の少なくとも一部が前記排ガス導入口を通じて前記タービンハウジングの外部から視認可能な位置に設けられた。
【0008】
本開示の一実施形態にかかるターボチャージャは、前記タービンハウジングを備える。
【0009】
本開示の一実施形態にかかるガソリンエンジンは、
複数の気筒を有するシリンダブロックと、
前記複数の気筒の各々から排出される排ガスが合流する排気マニホールドであって、少なくとも一部が前記シリンダブロックの内部に設けられた排気マニホールドと、
前記ターボチャージャと、を備え、
前記タービンハウジングの前記入口フランジ部が、前記排気マニホールドに接続された。
【発明の効果】
【0010】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、ウェイストゲート通路を通過する排ガスのタービンハウジングにおける放熱損失を抑制でき、タービンハウジングの下流側に配置された排ガス浄化触媒の昇温を効果的に行うことができるタービンハウジング、ターボチャージャ、およびガソリンエンジンが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の一実施形態にかかるターボチャージャを備えるエンジンの構成を概略的に示す概略構成図である。
【
図2】本開示の一実施形態にかかるタービンハウジングの軸線に沿った概略断面図である。
【
図3】本開示の一実施形態にかかるタービンハウジングを説明するための説明図である。
【
図4】本開示の一実施形態にかかるタービンハウジングのウェイストゲート通路の入口側開口縁を説明するための説明図である。
【
図5】本開示の一実施形態にかかるタービンハウジングの熱伸びを説明するための説明図である。
【
図6】本開示の一実施形態にかかるタービンハウジングのウェイストゲート通路の入口側開口縁を説明するための説明図である。
【
図7】本開示の一実施形態にかかるタービンハウジングのウェイストゲート通路の入口側開口縁を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
なお、同様の構成については同じ符号を付し説明を省略することがある。
【0013】
(エンジン)
図1は、本開示の一実施形態にかかるターボチャージャを備えるエンジンの構成を概略的に示す概略構成図である。
図1に示されるように、幾つかの実施形態にかかるターボチャージャ2は、ガソリンエンジン1に搭載される。ガソリンエンジン1は、
図1に示されるように、複数の気筒12を有するシリンダブロック11と、複数の気筒12の各々から排出される排ガスが合流する排気マニホールド13と、上記ターボチャージャ2と、を少なくとも備える。
【0014】
図示される実施形態では、ガソリンエンジン1は、ターボチャージャ2により圧縮された圧縮気体を複数の気筒12の夫々に導くための圧縮気体供給ライン14と、圧縮気体供給ライン14に設けられる冷却機15と、シリンダブロック11の内部に設けられたウォータージャケット16と、ウォータージャケット16にシリンダブロック11の外部から冷媒を供給するための冷媒供給ライン17と、をさらに備える。冷却機15は、圧縮気体供給ライン14を流れる圧縮気体を冷却するように構成されている。ウォータージャケット16は、複数の気筒12の夫々の周囲を囲むように設けられた冷媒が流通可能な流路を含む。冷媒供給ライン17は、ウォータージャケット16に冷媒を供給するように構成されている。上記圧縮気体には、圧縮空気が含まれる。上記冷媒には、冷却水が含まれる。
【0015】
図1に示される実施形態では、冷媒供給ライン17は、冷却水を貯留するように構成された冷却水貯留タンク171と、冷却水貯留タンク171に貯留された冷却水をウォータージャケット16に送るための冷却水供給管172と、冷却水供給管172に設けられる冷却水ポンプ173と、を含む。冷却水供給管172は、その一方側が冷却水貯留タンク171に接続され、その他方側がウォータージャケット16に接続されている。冷却水ポンプ173は、冷却水を冷却水供給管172の他方側に送るように構成されている。冷却水ポンプ173を駆動させることにより、冷却水貯留タンク171に貯留される冷却水が冷却水供給管172に送られて、冷却水供給管172を上記他方側に向かって流れた後に、ウォータージャケット16に供給される。ウォータージャケット16内の冷却水(冷媒)により、複数の気筒12やシリンダブロック11などが冷却される。
【0016】
(ターボチャージャ)
ターボチャージャ2は、
図1に示されるように、タービン翼3と、コンプレッサ翼21と、タービン翼3およびコンプレッサ翼21の夫々に連結された回転シャフト22と、タービン翼3を回転可能に収容するように構成されたタービンハウジング4と、コンプレッサ翼21を回転可能に収容するように構成されたコンプレッサハウジング23と、を備える。図示される実施形態では、ターボチャージャ2は、回転シャフト22を回転可能に支持する軸受24と、軸受24を収容するように構成された軸受ハウジング25と、をさらに備える。
【0017】
図示される実施形態では、回転シャフト22は、その長手方向の一方側がタービン翼3に連結されており、その長手方向の他方側がコンプレッサ翼21に連結されている。回転シャフト22は、その長手方向におけるタービン翼3とコンプレッサ翼21との間において、軸受24に回転可能に支持されている。タービン翼3およびコンプレッサ翼21の夫々は、回転シャフト22を介して一体的に回転可能になっている。軸受ハウジング25は、タービンハウジング4とコンプレッサハウジング23との間に配置され、タービンハウジング4およびコンプレッサハウジング23の夫々に、例えばボルトやVクランプなどの不図示の締結部材により機械的に連結されている。
【0018】
図1に示されるように、タービンハウジング4には、その内部に排ガスを導入するための排ガス導入口41と、排ガスを外部に排出するための排ガス排出口42と、が形成されている。コンプレッサハウジング23には、その内部に気体を導入するための気体導入口231と、コンプレッサ翼21を通過した気体を外部に排出するための気体排出口232と、が形成されている。圧縮気体供給ライン14は、その一方側が気体排出口232に接続され、その他方側が複数の気筒12の夫々に接続されている。
【0019】
ターボチャージャ2は、排気マニホールド13から排出された排ガスが排ガス導入口41を通じてタービンハウジング4の内部に導入される。タービンハウジング4の内部に導入された排ガスの少なくとも一部は、タービン翼3に導かれる。ターボチャージャ2は、タービン翼3に導かれた排ガスのエネルギーにより、タービン翼3を回転させる。コンプレッサ翼21は、回転シャフト22を介してタービン翼3に連結されているため、タービン翼3の回転に連動して回転する。ターボチャージャ2は、コンプレッサ翼21の回転により、気体導入口231を通じてコンプレッサハウジング23の内部に導入された気体を圧縮し、圧縮気体を気体排出口232および圧縮気体供給ライン14を通じて複数の気筒12の夫々に送るように構成されている。複数の気筒12の夫々に送られた圧縮気体は、燃料とともに燃焼し、排ガスを発生させる。また、タービン翼3を通過した排ガスは、排ガス排出口42を通じてタービンハウジング4の外部に排出される。
【0020】
(排ガス浄化触媒)
図示される実施形態では、ガソリンエンジン1は、タービンハウジング4の下流側に設置される排ガス浄化触媒18をさらに備える。排ガス排出口42を通じてタービンハウジング4の外部に排出された排ガスは、排ガス浄化触媒18に送られる。排ガス浄化触媒18は、排ガスに含まれる有害成分、例えば、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)を浄化したり、排ガスに含まれる粒子状物質(PM)を捕集したりする機能を有する。排ガス浄化触媒18は、従来公知の3元触媒、酸化触媒(DOC)又はNOx吸着還元触媒などの何れかであってもよい。排ガス浄化触媒18は、担体と、該担体に担持された貴金属と、を含んでいてもよい。ここで、担体に担持される貴金属には、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、又は白金(Pt)のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。排ガス浄化触媒18は、例えば排ガスの熱などにより昇温することで、排ガス浄化反応を活性化させるようになっている。
【0021】
(タービンハウジング)
図2は、本開示の一実施形態にかかるタービンハウジングの軸線に沿った概略断面図である。
図2に示されるように、タービンハウジング4は、本体部5を備える。本体部5は、排ガスをタービン翼3に導くためのスクロール状に形成されたスクロール流路60を形成するスクロール流路壁面6、タービン翼3を通過した排ガスを排出するための排ガス排出路70を形成する排ガス排出路壁面7、およびタービン翼3を迂回してスクロール流路60と排ガス排出路70とを接続するウェイストゲート通路80を形成するウェイストゲート通路壁面8、を内部に有する。以下、排ガスの流れ方向における上流側を単に上流側と表し、排ガスの流れ方向における下流側を単に下流側と表すことがある。上述した排ガス導入口41は、スクロール流路60に繋がり、上述した排ガス排出口42は、排ガス排出路70に繋がる。
【0022】
タービンハウジング4は、スクロール流路60の内周側にタービン翼3を収容している。以下、タービン翼3の軸線LAが延在する方向を軸方向Xとし、軸線LAに直交する方向を径方向Yと定義する。軸方向Xのうち、タービン翼3に対して排ガス排出口42が位置する側(
図2中右側)をタービン側XFと定義する。また、軸方向Xのうち、タービン側XFとは反対側、すなわち、排ガス排出口42に対してタービン翼3が位置する側(
図2中左側)をコンプレッサ側XRと定義する。
【0023】
(タービン翼)
タービン翼3は、
図2に示されるように、ハブ31と、ハブ31の外面32に設けられた複数のタービン羽根33と、を含む。ハブ31は、回転シャフト22の長手方向の上記一方側に連結されているため、ハブ31や複数のタービン羽根33は、タービン翼3の軸線LAを中心として回転シャフト22と一体的に回転可能になっている。ハブ31は、その外面32がタービン側XFからコンプレッサ側XRに向かうにつれて軸線LAからの距離が大きくなる凹湾曲状に形成されている。複数のタービン羽根33の夫々は、軸線LA周りの周方向に互いに間隔を開けて配置されている。
【0024】
タービンハウジング4は、タービン側XFからコンプレッサ側XRに向かうにつれて軸線LAからの距離が大きくなる凸湾曲状に形成された凸湾曲面43を含むシュラウド面44を内部に有する。凸湾曲面43は、複数のタービン羽根33の夫々の先端34との間に隙間が形成されている。シュラウド面44は、スクロール流路壁面6と排ガス排出路壁面7との間に形成されている。シュラウド面44の下流端441は、スクロール流路壁面6に連なり、シュラウド面44の上流端442は、排ガス排出路壁面7に連なる。
【0025】
タービン翼3は、スクロール流路60と排ガス排出路70との間に配置され、スクロール流路60を通じて径方向Yにおける外側から導入される排ガスを、軸方向Xにおけるタービン側XFに導くように構成されている。排ガス排出路70は、タービン翼3を通過した排ガスを軸方向Xにおけるコンプレッサ側XRからタービン側XFに導くように構成されている。タービン翼3を通過した排ガスは、排ガス排出路70をタービン側XFに向かって流れた後に、排ガス排出口42からタービンハウジング4の外部に排出される。
【0026】
タービンハウジング4は、スクロール流路壁面6に形成されたウェイストゲート通路80の入口側開口縁81と、排ガス排出路壁面7に形成されたウェイストゲート通路80の出口側開口縁82と、有する。ウェイストゲート通路壁面8は、入口側開口縁81を介してスクロール流路壁面6に連なり、出口側開口縁82を介して排ガス排出路壁面7に連なる。ウェイストゲート通路80は、入口側開口縁81の内側に形成される入口開口810と、出口側開口縁82の内側に形成される出口開口820と、を有する。ウェイストゲート通路80は、入口開口810がスクロール流路60に繋がり、出口開口820が排ガス排出路70に繋がる。
【0027】
ターボチャージャ2は、ウェイストゲート通路80の出口開口820を開閉可能に構成されたウェイストゲートバルブ26をさらに備える。ウェイストゲートバルブ26は、出口開口820を閉止する弁体261と、弁体261を支持するとともに、弁体261を駆動可能に構成された弁体駆動部262と、を含む。ウェイストゲートバルブ26は、弁体駆動部262により弁体261を駆動し、出口開口820を閉止又は開放することで、ウェイストゲート通路80から排ガス排出路70に流れる排ガスの流量を制御するようになっている。ウェイストゲートバルブ26により出口開口820を開放し、スクロール流路60をタービン翼3に向かって流れる排ガスの一部を、ウェイストゲート通路80に分流させることで、タービン翼3に送られる排ガスの量や熱エネルギーを低減させることができ、ひいては複数の気筒12の夫々に送られる圧縮気体の過給圧を低減させることができる。
【0028】
図2には、タービン翼3の軸線LAと出口開口820の中心C1とが存在する平面が概略的に示されている。図示される実施形態では、排ガス排出路壁面7は、
図2に示されるように、その周方向の少なくとも一部に、タービン側XFに向かうにつれて軸線LAに対する距離が長くなるように傾斜する傾斜面71と、傾斜面71の下流端72から軸方向Xに沿ってタービン側XFに延在するバルブ収容面73と、を含む。上述した排ガス排出路70は、ウェイストゲートバルブ26の弁体261が収容されるバルブ収容空間70Aを含む。バルブ収容空間70Aは、傾斜面71とバルブ収容面73により画定される。出口側開口縁82は、傾斜面71又はバルブ収容面73の少なくとも一方に形成され、出口開口820は、バルブ収容空間70Aに繋がる。
【0029】
図3は、本開示の一実施形態にかかるタービンハウジングを説明するための説明図である。
図3には、軸線LAに沿って排ガス排出路70の出口側(タービン側XF)から視認した平面視におけるタービンハウジング4を概略的に示している。
図3に示されるように、タービンハウジング4は、上述した本体部5と、入口フランジ部9と、を備える。
【0030】
入口フランジ部9は、
図3に示されるように、本体部5におけるスクロール流路60の上流端61に設けられており、外周側に突出する鍔部91を含む。入口フランジ部9には、スクロール流路60に繋がる上述した排ガス導入口41が形成されている。
図1に示される実施形態では、入口フランジ部9は、排気マニホールド13に接続されている。このため、スクロール流路60には、排ガス導入口41を通じて排気マニホールド13から排ガスが流入するようになっている。図示される実施形態では、タービンハウジング4は、鋳造によりその形状が形成されている。
【0031】
幾つかの実施形態にかかるタービンハウジング4は、
図3に示されるように、上述したスクロール流路壁面6、排ガス排出路壁面7、およびウェイストゲート通路壁面8を内部に有する上述した本体部5と、スクロール流路60に繋がる排ガス導入口41が形成された上述した入口フランジ部9と、を備える。スクロール流路壁面6に形成されたウェイストゲート通路80の入口側開口縁81は、入口側開口縁81の少なくとも一部が排ガス導入口41を通じてタービンハウジング4の外部から視認可能な位置に設けられた。
【0032】
図示される実施形態では、
図3に示されるような平面視において、スクロール流路壁面6は、スクロール流路60の外周側を形成するスクロール外壁面6Aと、スクロール外壁面6Aよりも内周側に形成されて、スクロール外壁面6Aとの間にスクロール流路60を形成するスクロール内壁面6Bと、を含む。スクロール内壁面6Bは、スクロール流路60の内周側を形成している。
図3に示されるような平面視において、スクロール外壁面6Aの上流端61A(排ガス導入口41の外周端)を通過してスクロール内壁面6Bに接する接線TLと、スクロール内壁面6Bと、が接する接点をP1とする。上述した入口側開口縁81は、スクロール内壁面6Bにおける接点P1よりも上流側に設けられている。この場合には、入口側開口縁81は、その少なくとも一部が排ガス導入口41を通じてタービンハウジング4の外部から視認可能な位置に設けられている。なお、排ガス導入口41を通じてタービンハウジング4の外部から入口側開口縁81が視認できない場合であっても、排ガス導入口41を通じてタービンハウジング4の外部から、スクロール内壁面6Bにおける入口側開口縁81よりも下流側(舌部P2側)が視認できる場合には、入口側開口縁81は、排ガス導入口41を通じてタービンハウジング4の外部から視認可能な位置に設けられているものとする。
【0033】
図示される実施形態では、入口側開口縁81は、
図3に示されるような平面視において、スクロール内壁面6Bにおける上流端61B(排ガス導入口41の内周端)と舌部P2とを結ぶ曲線の長さ中央位置P3よりも上流側(上流端61B側)に、入口側開口縁81の少なくとも一部が設けられている。
【0034】
上記の構成によれば、タービンハウジング4は、ウェイストゲート通路80の入口側開口縁81の少なくとも一部が排ガス導入口41を通じてタービンハウジング4の外部から視認可能な位置に設けられている。この場合には、ウェイストゲート通路80の入口開口810と、入口フランジ部9の排ガス導入口41との間におけるスクロール流路60(上流側スクロール流路60A)の長さが短いものになっている。上流側スクロール流路60Aの長さを短いものにすることで、ウェイストゲート通路80を通過する排ガス、すなわち、排ガス導入口41から上流側スクロール流路60Aを通じてウェイストゲート通路80に流入する排ガス、の上流側スクロール流路60Aにおける放熱損失を抑制できる。これにより、ウェイストゲート通路80を通過してタービンハウジング4の下流側に流れる排ガスの温度低下を抑制できるため、タービンハウジング4の下流側に配置された排ガス浄化触媒18の昇温を効果的に行うことができる。
【0035】
タービンハウジング4がガソリンエンジン1に搭載される場合には、ディーゼルエンジンなどの他の内燃機関に搭載される場合に比べて、ガソリンエンジン1から排出される排ガスが高温になり、排ガスとタービンハウジング4との間の温度差が増大するため、タービンハウジング4における放熱損失が増大する虞がある。上記の構成によれば、タービンハウジング4がガソリンエンジン1に搭載される場合であっても、ウェイストゲート通路80を通過する排ガスのタービンハウジング4における放熱損失を効果的に抑制できる。
【0036】
なお、以下の幾つかの実施形態は、入口側開口縁81が排ガス導入口41を通じてタービンハウジング4の外部から視認可能な位置に設けられていない場合にも適用可能である。
【0037】
幾つかの実施形態では、
図2に示されるようなタービン翼3の軸線LAと出口開口820の中心C1とが存在する平面において、上述した排ガス排出路70は、タービン翼3の軸線LAの延在方向(軸方向X)における一方側(コンプレッサ側XR)から他方側(タービン側XF)に排ガスを導くように構成されている。ウェイストゲート通路80の出口開口820の中心C1を通過する法線N1(中心C1を通過して出口開口820に垂直な直線)が、タービン翼3の軸線LAに対して交差する方向に延在するように構成されている。
【0038】
図示される実施形態では、スクロール流路60は、下流側(タービン翼3側)に向かうに連れて軸方向Xにおけるコンプレッサ側XRに向かうようならせん状に形成されている。このため、スクロール流路60の上流側の部分は、排ガス排出路70の外周側に設けられる。ウェイストゲート通路80は、径方向に沿って延在し、その出口開口820の中心C1がその入口開口810の中心C2よりもタービン側XFに位置するように傾斜している。入口開口810および出口開口820の夫々は、法線N1の延在方向に沿う方向に向かって開口している。
【0039】
上記の構成によれば、ウェイストゲート通路80は、その出口開口820が排ガス排出路70に繋がるとともに、その入口開口810が排ガス排出路70の外周側に設けられるスクロール流路60に繋がる。ウェイストゲート通路80は、出口開口820の中心C1を通過する法線N1が、タービン翼3の軸線LAに対して交差する方向に延在するように構成されている。この場合には、上記法線N1がタービン翼3の軸線LAが延在する方向に沿って延在する場合に比べて、ウェイストゲート通路80の長さ(入口開口810から出口開口820までの距離)を短くできる。ウェイストゲート通路80の長さを短いものにすることで、ウェイストゲート通路80を通過する排ガスのウェイストゲート通路80における放熱損失を抑制できる。これにより、ウェイストゲート通路80を通過してタービンハウジング4の下流側に流れる排ガスの温度低下を抑制できるため、タービンハウジング4の下流側に配置された排ガス浄化触媒18の昇温を効果的に行うことができる。
【0040】
幾つかの実施形態では、
図2に示されるようなタービン翼3の軸線LAと出口開口820の中心C1とが存在する平面において、軸線LAと法線N1とのなす角度をθとした場合に、30°≦θ≦60°を満たす。
【0041】
上記の構成によれば、上記角度θが30°≦θ≦60°を満たす場合には、ウェイストゲート通路80の長さを短くできる。また、上記角度θが30°≦θ≦60°を満たす場合には、ウェイストゲート通路80の出口開口820から排ガス排出路70に流入した排ガスを、排ガス排出路壁面7により排ガス排出口42に導いて、排ガス排出口42からタービンハウジング4の外部に排出できる。この場合には、ウェイストゲート通路80を通過した排ガスの排ガス排出路70における流れを良好なものにすることができるため、ウェイストゲート通路80を通過する排ガスの排ガス排出路70における放熱損失を抑制できる。これにより、ウェイストゲート通路80を通過してタービンハウジング4の下流側に流れる排ガスの温度低下を抑制できるため、タービンハウジング4の下流側に配置された排ガス浄化触媒18の昇温を効果的に行うことができる。
【0042】
幾つかの実施形態にかかるターボチャージャ2は、
図1に示されるように、上述したタービンハウジング4を備える。この場合には、ターボチャージャ2は、タービンハウジング4の上流側スクロール流路60Aの長さが短いため、ウェイストゲート通路80を通過する排ガスの上流側スクロール流路60Aにおける放熱損失を抑制でき、ひいてはタービンハウジング4の下流側に配置された排ガス浄化触媒18の昇温を効果的に行うことができる。
【0043】
幾つかの実施形態にかかるガソリンエンジン1は、
図1に示されるように、上述したターボチャージャ2と、複数の気筒12を有する上述したシリンダブロック11と、複数の気筒12の各々から排出される排ガスが合流する上述した排気マニホールド13と、を備える。排気マニホールド13は、少なくとも一部がシリンダブロック11の内部に設けられている。上述したタービンハウジング4の入口フランジ部9が、排気マニホールド13に接続されている。
【0044】
上記の構成によれば、複数の気筒12の各々から排出された排ガスは、排気マニホールド13を通過した後に、入口フランジ部9の排ガス導入口41からスクロール流路60に流入する。上記排気マニホールド13は、複数の気筒12を有するシリンダブロック11の内部に少なくとも一部が設けられており、この排気マニホールド13に入口フランジ部9が接続されている。この場合には、複数の気筒12の各々から排出された排ガスの排気マニホールド13における放熱損失を抑制できる。ウェイストゲート通路80を通過してタービンハウジング4の下流側に流れる排ガスの上流側での温度低下を抑制することで、タービンハウジング4の下流側に配置された排ガス浄化触媒18の昇温を効果的に行うことができる。
【0045】
図4は、本開示の一実施形態にかかるタービンハウジングのウェイストゲート通路の入口側開口縁を説明するための説明図である。
図4では、上述したスクロール内壁面6B(スクロール流路壁面6)の入口側開口縁81を正面、すなわち、ウェイストゲート通路80の入口開口810の中心C2を通過する法線N2(中心C2を通過して入口開口810に垂直な直線)に沿ってスクロール流路60側、から視認した平面視におけるタービンハウジング4を概略的に示している。幾つかの実施形態では、
図4に示されるように、上述した入口側開口縁81は、正面から視て円環状に形成されている。なお、他の幾つかの実施形態では、入口側開口縁81は、正面から視て楕円環状に形成されていてもよいし、正面から視て矩形環状に形成されていてもよい。
【0046】
以下、入口側開口縁81を法線N2に沿って視認した平面視において、入口側開口縁81における上流端841と下流端831とを結ぶ直線LCに直交する方向を、ウェイストゲート通路80の入口開口810の開口幅方向Wと定義する。
入口側開口縁81は、
図4に示されるように、入口側開口縁81における下流端831を含む下流端部83と、入口側開口縁81における上流端841を含む上流端部84と、入口側開口縁81における開口幅方向Wの一方端851を含む一方側端部85と、入口側開口縁81における開口幅方向Wの他方端861を含む他方側端部86と、を含む。
【0047】
近年、ガソリンエンジン1の高出力化を図るため、タービンハウジング4に導入される排ガスの温度が高温(例えば、1000℃以上)になる傾向がある。上述したように、ウェイストゲート通路80の入口開口810と、入口フランジ部9の排ガス導入口41との間におけるスクロール流路60(上流側スクロール流路60A)の長さを短くすると、入口側開口縁81が従来よりも高温の排ガスに曝されることになる。
【0048】
図5は、本開示の一実施形態にかかるタービンハウジングの熱伸びを説明するための説明図である。
図5では、上述したタービンハウジング4の熱ひずみの解析結果を示しており、熱ひずみが大きい箇所ほど濃い表示がなされている。
図4に示されるように、入口側開口縁81は、スクロール流路60を流れる排ガスの熱により、その下流側(排ガス導入口41の軸線LBの延在方向における排ガス導入口41から離隔する側、
図4中上側)の端部(下流端部83)において、開口幅方向W(
図4中左右方向)に沿うような熱伸びが生じる。入口フランジ部9は、排気マニホールド13に接続されているため、ウォータージャケット16内の冷却水(冷媒)により、冷却される。このため、入口側開口縁81の上流側(軸線LBの延在方向における排ガス導入口41に近接する側、
図4中下側)の端部(上流端部84)は、下流端部83に比べて、開口幅方向Wに沿うような熱伸びが抑制される。入口側開口縁81の上流端部84と下流端部83との間の熱伸びの差により、
図5に示されるように、開口幅方向Wの両端部近傍、すなわち、一方側端部85近傍や他方側端部86近傍にて熱ひずみが大きくなり、き裂が発生する可能性がある。該き裂が進展してタービンハウジング4を貫通し、排ガスがタービンハウジング4の外部へ漏洩することを抑制する必要がある。
【0049】
図6および
図7の夫々は、本開示の一実施形態にかかるタービンハウジングのウェイストゲート通路の入口側開口縁を説明するための説明図である。
図6および
図7の夫々には、上述したスクロール内壁面6B(スクロール流路壁面6)の入口側開口縁81を正面、すなわち、スクロール流路60側から視た状態を概略的に示している。
【0050】
幾つかの実施形態では、
図6、
図7に示されるように、上述したタービンハウジング4の入口側開口縁81は、入口側開口縁81における下流端831を含む下流端部83に設けられた応力集中部100を含む。応力集中部100は、入口側開口縁81が排ガスの熱に晒された際に、熱伸びによる応力が集中するように構成されている。
【0051】
下流端部83は、入口側開口縁81の一方端851および他方端861の夫々よりも下流側に設けられる下流端831を含む領域からなる。図示される実施形態では、下流端部83(応力集中部100)は、入口側開口縁81における開口幅方向Wの中央部に設けられる。換言すると、
図6に示されるような、入口側開口縁81を法線N2に沿って視認した平面視において、入口側開口縁81における開口幅方向Wの長さが最大となる、一方端851から他方端861までの開口幅方向Wにおける距離をW1にした場合に、下流端部83(応力集中部100)は、一方端851からの開口幅方向Wにおける距離W2(他方端861に向かう方向を正とする)が、0.25W1≦W2≦0.75W1の条件を満たす範囲内に設けられる。
【0052】
上記の構成によれば、入口側開口縁81は、入口側開口縁81の下流端部83に設けられた、熱伸びによる応力が集中するように構成された応力集中部100を含む。この応力集中部100は、タービンハウジング4を流れる排ガスの熱により初期的に熱伸びによる応力集中が生じてき裂が発生するようになっている。入口側開口縁81の下流端部83に上記応力集中部100を設けることで、入口側開口縁81のうち、下流端部83以外の部分(例えば、一方側端部85近傍や他方側端部86近傍)に、熱伸びによる応力集中が生じてき裂が発生することを抑制できる。入口側開口縁81の下流端部83は、下流端部83以外の部分に比べて、タービンハウジング4の外面45までの肉厚が厚いため、上記き裂が進展してタービンハウジング4を貫通し、排ガスがタービンハウジング4の外部へ漏洩することを防止できる。
【0053】
幾つかの実施形態では、
図6に示されるように、上述した応力集中部100(下流端部83)は、上述したスクロール流路壁面6におけるウェイストゲート通路80の入口開口810の開口幅方向Wの中央部6Cに設けられている。すなわち、
図6に示されるような、入口側開口縁81を法線N2に沿って視認した平面視において、スクロール流路壁面6の開口幅方向Wにおける一方端62から他方端63までの開口幅方向Wにおける距離をW3にした場合に、応力集中部100(下流端部83)は、一方端62からの開口幅方向Wにおける距離W4(他方端63に向かう方向を正とする)が、0.25W3≦W4≦0.75W3の条件を満たす範囲(中央部6C、開口幅方向Wにおける2つの二点鎖線間)内に設けられる。
【0054】
上記の構成によれば、応力集中部100をスクロール流路壁面6における上記開口幅方向Wの中央部6Cに設けることにより、タービンハウジング4のき裂進展距離(応力集中部100に生じたき裂が進展してタービンハウジング4を貫通するまでの距離)を長いものにできるため、排ガスがタービンハウジング4の外部へ漏洩することを効果的に抑制できる。
【0055】
幾つかの実施形態では、
図6に示されるように、上述した応力集中部100は、上述した下流端部83からスクロール流路60の流れ方向における上流側に向かうにつれて、入口側開口縁81における上流端841と下流端831とを結ぶ直線LCに対する一方側(図中左側)に向かって傾斜する第1辺101と、下流端部83からスクロール流路60の流れ方向における上流側に向かうにつれて、上記直線LCに対する他方側(図中右側)に向かって傾斜する第2辺102と、を含む。
【0056】
図示される実施形態では、第1辺101および第2辺102の夫々は、直線状に延在している。
図6に示される実施形態では、入口側開口縁81を法線N2に沿って視認した平面視において、第1辺101の延在方向と第2辺102の延在方向とのなす角度とαとした場合に、第1辺101および第2辺102の夫々は、上記角度αが0°≦α≦90°の条件を満たすように構成されている。また、
図6に示される実施形態では、応力集中部100は、第1辺101の下流端103および第2辺102の下流端104を結ぶ下流側連結部105をさらに含む。下流側連結部105は、スクロール流路60の下流側に向かって湾曲しており、上述した下流端831を含む。なお、他の幾つかの実施形態では、下流側連結部105は、第1辺101の下流端103と第2辺102の下流端104との間を軸方向Xに沿って延在する直線状に形成されていてもよい。また、他の幾つかの実施形態では、第1辺101の下流端103が第2辺102の下流端104に直接繋がるようになっていてもよい。また、入口側開口縁81のうちの、第1辺101の上流端106および第2辺102の上流端107の夫々よりも上流側の形状は、図示されるような、スクロール流路60の上流側に向かって湾曲して、第1辺101および第2辺102の夫々の上流端(106、107)同士を結ぶ湾曲形状に限定されない。
【0057】
上記の構成によれば、応力集中部100は、上記第1辺101と上記第2辺102とを含む。この場合には、第1辺101の下流端103と第2辺102の下流端104との間において、タービンハウジング4を流れる排ガスの熱により初期的に熱伸びによる応力集中が生じてき裂が発生するようになっている。これにより、第1辺101や第2辺102の上流端(106、107)近傍に熱伸びによる応力集中が生じるのを抑制できる。また、上記の構成によれば、排ガスの熱による熱伸びが第1辺101および第2辺102の夫々に分離されるため、第1辺101や第2辺102の上流端(106、107)近傍に熱伸びによる応力集中が生じるのを抑制できる。
【0058】
なお、入口側開口縁81の下流端部83を上記第1辺101および上記第2辺102を含む形状にした場合には、入口側開口縁81を円環状や楕円環状、矩形環状にした従来の場合に比べて、タービンハウジング4の性能(例えば、ウェイストゲート通路80への排ガスの流入量やウェイストゲート通路80を通過した排ガスによる排ガス浄化触媒18の昇温効果)への影響は少ない。
【0059】
幾つかの実施形態では、
図7に示されるように、上述した応力集中部100は、入口側開口縁81における下流端部83からスクロール流路60の流れ方向における下流側に向かって延在するスリット110を含む。図示される実施形態では、スリット110は、下流端831に形成されているが、他の幾つかの実施形態では、スリット110は、下流端部83における下流端831以外に形成されていてもよい。スリット110は、下流端部83における下流端831寄りの位置に形成されることが好ましい。また、他の幾つかの実施形態では、
図6に示されるような、第1辺101および第2辺102を含む上述した入口側開口縁81の下流端部83にスリット110が形成されていてもよい。
【0060】
上記の構成によれば、応力集中部100は、下流端部83から上記下流側に向かって延在するスリット110を含む。この場合には、スリット110の先端111近傍において、タービンハウジング4を流れる排ガスの熱により初期的に熱伸びによる応力集中が生じてき裂が発生するようになっている。これにより、入口側開口縁81の下流端部83以外の部分(例えば、一方側端部85近傍や他方側端部86近傍)に熱伸びによる応力集中が生じるのを抑制できる。上記スリット110は、既存のタービンハウジング4への追設が容易である。
【0061】
なお、入口側開口縁81に上記スリット110が形成された場合には、入口側開口縁81に上記スリット110が形成されていない場合に比べて、タービンハウジング4の性能(例えば、ウェイストゲート通路80への排ガスの流入量やウェイストゲート通路80を通過した排ガスによる排ガス浄化触媒の昇温効果)への影響は少ない。
【0062】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0063】
上述した幾つかの実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握されるものである。
【0064】
1)本開示の少なくとも一実施形態にかかるタービンハウジング(4)は、
ガソリンエンジン(1)から排出される排ガスにより駆動するタービン翼(3)を収容するように構成されたタービンハウジング(4)であって、
前記排ガスを前記タービン翼(3)に導くためのスクロール状に形成されたスクロール流路(60)を形成するスクロール流路壁面(6)、
前記タービン翼(3)を通過した前記排ガスを排出するための排ガス排出路(70)を形成する排ガス排出路壁面(7)、および
前記タービン翼(3)を迂回して前記スクロール流路(60)と前記排ガス排出路(70)とを接続するウェイストゲート通路(80)を形成するウェイストゲート通路壁面(8)、を内部に有する本体部(5)と、
前記本体部(5)における前記スクロール流路(60)の上流端(61)に設けられた入口フランジ部(9)であって、前記スクロール流路(60)に繋がる排ガス導入口(41)が形成された入口フランジ部(9)と、を備え、
前記スクロール流路壁面(6)に形成された前記ウェイストゲート通路(80)の入口側開口縁(81)は、前記入口側開口縁(81)の少なくとも一部が前記排ガス導入口(41)を通じて前記タービンハウジング(4)の外部から視認可能な位置に設けられた。
【0065】
上記1)の構成によれば、タービンハウジングは、ウェイストゲート通路の入口側開口縁の少なくとも一部が排ガス導入口を通じてタービンハウジングの外部から視認可能な位置に設けられている。この場合には、ウェイストゲート通路の入口開口と、入口フランジ部の排ガス導入口との間におけるスクロール流路(上流側スクロール流路60A)の長さが短いものになっている。上流側スクロール流路の長さを短いものにすることで、ウェイストゲート通路を通過する排ガス、すなわち、排ガス導入口から上流側スクロール流路を通じてウェイストゲート通路に流入する排ガス、の上流側スクロール流路における放熱損失を抑制できる。これにより、ウェイストゲート通路を通過してタービンハウジングの下流側に流れる排ガスの温度低下を抑制できるため、タービンハウジングの下流側に配置された排ガス浄化触媒の昇温を効果的に行うことができる。
【0066】
2)幾つかの実施形態では、上記1)に記載のタービンハウジング(4)であって、
前記入口側開口縁(81)は、前記入口側開口縁(81)における下流端(831)を含む下流端部(83)に設けられた、熱伸びによる応力が集中するように構成された応力集中部(100)を含む。
【0067】
上記2)の構成によれば、入口側開口縁は、入口側開口縁の下流端部に設けられた、熱伸びによる応力が集中するように構成された応力集中部を含む。この応力集中部は、タービンハウジングを流れる排ガスの熱により初期的に熱伸びによる応力集中が生じてき裂が発生するようになっている。入口側開口縁の下流端部に上記応力集中部を設けることで、入口側開口縁のうち、下流端部以外の部分に、熱伸びによる応力集中が生じてき裂が発生することを抑制できる。入口側開口縁の下流端部は、下流端部以外の部分に比べて、タービンハウジングの外面までの肉厚が厚いため、上記き裂が進展してタービンハウジングを貫通し、排ガスがタービンハウジングの外部へ漏洩することを防止できる。
【0068】
3)幾つかの実施形態では、上記2)に記載のタービンハウジング(4)であって、
前記応力集中部(100)は、
前記下流端部(83)から前記スクロール流路(60)の流れ方向における上流側に向かうにつれて、前記入口側開口縁(81)における上流端(841)と前記下流端(842)とを結ぶ第1直線(直線LC)に対する一方側に向かって傾斜する第1辺(101)と、
前記下流端部(83)から前記スクロール流路(60)の流れ方向における前記上流側に向かうにつれて、前記第1直線(直線LC)に対する他方側に向かって傾斜する第2辺(102)と、を含む。
【0069】
上記3)の構成によれば、応力集中部は、上記第1辺と上記第2辺とを含む。この場合には、第1辺の下流端と第2辺の下流端との間において、タービンハウジングを流れる排ガスの熱により初期的に熱伸びによる応力集中が生じてき裂が発生するようになっている。これにより、第1辺や第2辺の上流端近傍に熱伸びによる応力集中が生じるのを抑制できる。また、上記の構成によれば、排ガスの熱による熱伸びが第1辺および第2辺の夫々に分離されるため、第1辺や第2辺の上流端近傍に熱伸びによる応力集中が生じるのを抑制できる。
【0070】
4)幾つかの実施形態では、上記2)に記載のタービンハウジング(4)であって、
前記応力集中部(100)は、前記入口側開口縁(81)における前記下流端部(83)から前記スクロール流路(60)の流れ方向における下流側に向かって延在するスリット(110)を含む。
【0071】
上記4)の構成によれば、応力集中部は、下流端部から上記下流側に向かって延在するスリットを含む。この場合には、スリットの先端近傍において、タービンハウジングを流れる排ガスの熱により初期的に熱伸びによる応力集中が生じてき裂が発生するようになっている。これにより、入口側開口縁の下流端部以外の部分に熱伸びによる応力集中が生じるのを抑制できる。上記スリットは、既存のタービンハウジングへの追設が容易である。
【0072】
5)幾つかの実施形態では、上記2)~4)の何れかに記載のタービンハウジング(4)であって、
前記応力集中部(100)は、前記スクロール流路壁面(6)における前記ウェイストゲート通路(80)の入口開口(810)の開口幅方向(W)の中央部(6C)に設けられた。
【0073】
上記5)の構成によれば、応力集中部をスクロール流路壁面における上記開口幅方向の中央部に設けることにより、タービンハウジングのき裂進展距離(応力集中部に生じたき裂が進展してタービンハウジングを貫通するまでの距離)を長いものにできるため、排ガスがタービンハウジングの外部へ漏洩することを効果的に抑制できる。
【0074】
6)幾つかの実施形態では、上記2)~5)の何れかに記載のタービンハウジング(4)であって、
前記排ガス排出路(70)は、前記タービン翼(3)の軸線(LA)の延在方向のおける一方側から他方側に前記排ガスを導くように構成され、
前記ウェイストゲート通路(80)の出口開口(820)の中心(C1)を通過する法線(N1)が、前記タービン翼(3)の前記軸線(LA)に対して交差する方向に延在するように構成された。
【0075】
上記6)の構成によれば、ウェイストゲート通路は、その出口開口が排ガス排出路に繋がるとともに、その入口開口が排ガス排出路の外周側に設けられるスクロール流路に繋がる。ウェイストゲート通路は、出口開口の中心を通過する法線が、タービン翼の軸線に対して交差する方向に延在するように構成されている。この場合には、上記法線がタービン翼の軸線が延在する方向に沿って延在する場合に比べて、ウェイストゲート通路の長さ(入口開口から出口開口までの距離)を短くできる。ウェイストゲート通路の長さを短いものにすることで、ウェイストゲート通路を通過する排ガスのウェイストゲート通路における放熱損失を抑制できる。これにより、ウェイストゲート通路を通過してタービンハウジングの下流側に流れる排ガスの温度低下を抑制できるため、タービンハウジングの下流側に配置された排ガス浄化触媒の昇温を効果的に行うことができる。
【0076】
7)幾つかの実施形態では、上記6)に記載のタービンハウジング(4)であって、
前記タービン翼(3)の前記軸線(LA)と前記出口開口(820)の前記中心(C1)とが存在する平面視において、
前記軸線(LA)と前記法線(N1)とのなす角度をθとした場合に、30°≦θ≦60°を満たす。
【0077】
上記7)の構成によれば、上記角度θが30°≦θ≦60°を満たす場合には、ウェイストゲート通路の長さを短くできる。また、上記角度θが30°≦θ≦60°を満たす場合には、ウェイストゲート通路の出口開口から排ガス排出路に流入した排ガスを、排ガス排出路壁面により排ガス排出口に導いて、排ガス排出口からタービンハウジングの外部に排出できる。この場合には、ウェイストゲート通路を通過した排ガスの排ガス排出路における流れを良好なものにすることができるため、ウェイストゲート通路を通過する排ガスの排ガス排出路における放熱損失を抑制できる。これにより、ウェイストゲート通路を通過してタービンハウジングの下流側に流れる排ガスの温度低下を抑制できるため、タービンハウジングの下流側に配置された排ガス浄化触媒の昇温を効果的に行うことができる。
【0078】
8)本開示の少なくとも一実施形態にかかるターボチャージャ(2)は、
上記1)~7)の何れかに記載のタービンハウジング(4)を備える。
【0079】
上記8)の構成によれば、ターボチャージャは、タービンハウジングの上記上流側スクロール流路の距離を短いものにすることで、ウェイストゲート通路を通過する排ガスの上流側スクロール流路における放熱損失を抑制でき、ひいてはタービンハウジングの下流側に配置された排ガス浄化触媒の昇温を効果的に行うことができる。
【0080】
9)本開示の少なくとも一実施形態にかかるガソリンエンジン(1)は、
複数の気筒(12)を有するシリンダブロック(11)と、
前記複数の気筒(12)の各々から排出される排ガスが合流する排気マニホールド(13)であって、少なくとも一部が前記シリンダブロック(11)の内部に設けられた排気マニホールド(13)と、
上記8)の記載のターボチャージャ(2)と、を備え、
前記タービンハウジング(4)の前記入口フランジ部(9)が、前記排気マニホールド(13)に接続された。
【0081】
上記9)の構成によれば、複数の気筒の各々から排出された排ガスは、排気マニホールドを通過した後に、入口フランジ部の排ガス導入口からスクロール流路に流入する。上記排気マニホールドは、複数の気筒を有するシリンダブロックの内部に少なくとも一部が設けられており、この排気マニホールドに入口フランジ部が接続されている。この場合には、複数の気筒の各々から排出された排ガスの排気マニホールドにおける放熱損失を抑制できる。ウェイストゲート通路を通過してタービンハウジングの下流側に流れる排ガスの上流側での温度低下を抑制することで、タービンハウジングの下流側に配置された排ガス浄化触媒の昇温を効果的に行うことができる。
【符号の説明】
【0082】
1 ガソリンエンジン
2 ターボチャージャ
3 タービン翼
4 タービンハウジング
5 本体部
6 スクロール流路壁面
6A スクロール外壁面
6B スクロール内壁面
7 排ガス排出路壁面
8 ウェイストゲート通路壁面
9 入口フランジ部
11 シリンダブロック
12 気筒
13 排気マニホールド
14 圧縮気体供給ライン
15 冷却機
16 ウォータージャケット
17 冷媒供給ライン
18 排ガス浄化触媒
21 コンプレッサ翼
22 回転シャフト
23 コンプレッサハウジング
24 軸受
25 軸受ハウジング
26 ウェイストゲートバルブ
41 排ガス導入口
42 排ガス排出口
43 凸湾曲面
44 シュラウド面
60,60A スクロール流路
70 排ガス排出路
70A バルブ収容空間
71 傾斜面
73 バルブ収容面
80 ウェイストゲート通路
81 入口側開口縁
82 出口側開口縁
83 下流端部
84 上流端部
85 一方側端部
86 他方側端部
91 鍔部
100 応力集中部
101 第1辺
102 第2辺
105 下流側連結部
110 スリット
171 冷却水貯留タンク
172 冷却水供給管
173 冷却水ポンプ
231 気体導入口
232 気体排出口
261 弁体
262 弁体駆動部
810 入口開口
820 出口開口
C1,C2 中心
LA 軸線
LC 直線
N1,N2 法線
P1 接点
TL 接線
X 軸方向
XF タービン側
XR コンプレッサ側
Y 径方向