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特許7373082燃料電池スタック、燃料電池装置、および燃料電池装置を備えた自動車
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  • 特許-燃料電池スタック、燃料電池装置、および燃料電池装置を備えた自動車 図1
  • 特許-燃料電池スタック、燃料電池装置、および燃料電池装置を備えた自動車 図2
  • 特許-燃料電池スタック、燃料電池装置、および燃料電池装置を備えた自動車 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】燃料電池スタック、燃料電池装置、および燃料電池装置を備えた自動車
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/247 20160101AFI20231025BHJP
   H01M 8/2465 20160101ALI20231025BHJP
   H01M 8/24 20160101ALI20231025BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20231025BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20231025BHJP
【FI】
H01M8/247
H01M8/2465
H01M8/24
H01M8/00 Z
H01M8/10 101
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022575914
(86)(22)【出願日】2021-06-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-06
(86)【国際出願番号】 EP2021065206
(87)【国際公開番号】W WO2022089787
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2022-12-09
(31)【優先権主張番号】102020128312.1
(32)【優先日】2020-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591006586
【氏名又は名称】アウディ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】AUDI AG
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】カイチュ,オリバー
(72)【発明者】
【氏名】ジーベル,アルミン
(72)【発明者】
【氏名】フォークト,セバスティアン
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-209231(JP,A)
【文献】特開2006-107789(JP,A)
【文献】特開2021-072237(JP,A)
【文献】特開2009-163909(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110323463(CN,A)
【文献】韓国登録特許第10-1966553(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/24
H01M 8/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層方向に配置されるとともに、クランプ要素(3)によって締結された複数の燃料セル(2)を有する燃料電池スタック(1)であって、少なくとも1つのクランプ要素(3)が、セル監視ユニット(7)への電気的接続のためのセル電圧タップ(6)を有し、
少なくとも1つのセル電圧タップ(6)が、燃料セル(2)への接続に関して、少なくとも1つのクランプ要素(3)によって機械的に固定されており、
セル電圧タップ(6)の各々が、プラグイン接続用のプラグ(8)を備え、プラグ(8)が、クランプ要素(3)上に予め組み立てられている、または、各プラグ(8)が、燃料セル(2)の1つに配置されており、
クランプ要素(3)には、セル監視ユニット(7)への電気的接続のためのプラグ(8)用の締結部品(9)が収容された、燃料電池スタック。
【請求項2】
クランプ要素(3)が、セル監視ユニット(7)に案内されるケーブル用のダクトを有することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池スタック(1)。
【請求項3】
プラグ(8)がソケット(10)によって形成され、締結部品(9)が射出成形部品(11)によって形成され、その射出成形部品(11)を通してプリント回路基板(12)への電気的接続が案内されて、プリント回路基板(12)がセル監視ユニット(7)に接続されることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池スタック(1)。
【請求項4】
プラグ(8)と締結部品(9)とが1つの構成要素(13)に一体的に組み合わされていることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池スタック(1)。
【請求項5】
燃料セル(2)が、剛性のタイロッドとして形成されたクランプ要素(3)によって2つのエンドプレート(4)の間に締結されることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の燃料電池スタック(1)。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の燃料電池スタック(1)を備えた、燃料電池装置。
【請求項7】
請求項6に記載の燃料電池装置を備えた、自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層方向に配置されるとともに、クランプ要素によって締結された複数の燃料セルを有する燃料電池スタックに関し、少なくとも1つ、好ましくは各々のクランプ要素が、セル監視ユニットへの電気的接続のためのセル電圧タップを有しており、少なくとも1つのセル電圧タップは、燃料セルへの接続に関してクランプ要素の少なくとも1つによって機械的に固定される。本発明はさらに、燃料電池装置および燃料電池装置を備えた自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料セルは、電気エネルギーを生成するために、燃料と酸素を化学反応させて水を生成するように使用される。この目的のために、燃料セルは、プロトン伝導性膜と、その膜の両側に配置された電極、すなわちアノードおよびカソードと、の組み合わせである、いわゆる膜電極アセンブリをコアコンポーネントとして含む。さらに、ガス拡散層は、膜電極アセンブリの両側の、各電極における膜とは反対側を向く側に配置することができる。性能を向上させるために、直列に接続された複数の燃料セルを燃料電池スタックに組み合わせることができる。
【0003】
動作中、燃料、特に水素(H)または水素含有ガス混合物がアノードに供給され、そこでHのHへの電気化学的酸化が生じて電子eを放出する。アノードチャンバからカソードチャンバへのプロトンHの、水と結合したまたは無水の輸送が、反応チャンバを互いに気密に分離し、それらを電気的に絶縁する膜を介して生じる。アノードで供給された電子は、電線を介してカソードに供給される。酸素または酸素含有ガス混合物がカソードに供給されるため、電子が吸収されている間にOのO2-への還元が生じる。同時に、カソードチャンバ内の酸素陰イオンは、膜を横切って輸送されたプロトンと反応して水を形成する。反応物質に加えて、反応物質から分離された燃料電池スタックの適切な温度制御のための冷却剤が、燃料セルの各々の活性領域に供給されるように、注意深い温度管理も必要であり、供給や排出は所謂媒体ガイドを介して行なわれる。したがって、燃料電池は、膜電極配置に加えて、通常、供給ライン、排出ライン、および反応物の場合、通常は拡張されて流れ場を形成する少なくとも1つの媒体チャネルが媒体ごとに形成された、バイポーラプレートを備える。
【0004】
燃料電池スタックに結合された燃料セルの大部分は、一般に、抵抗損失を低減し、高圧縮により漏れを防止するように、触媒コーティングされた膜に十分な接触圧力を実現するために、クランプ要素を使用して数万Nの範囲の力で圧縮される。
【0005】
燃料電池スタックでは、故障のない機能を診断するために、個々の燃料セルの電圧が監視され、その目的のために、個々の燃料セルは電気的に接続されて、セル監視ユニットに接続される。特に、自動車用の燃料電池装置で燃料電池スタックを使用する場合、この電気接点は、対応する品質要件に準拠する必要がある。各燃料セルにプラグコネクタを使用する場合、振動や機械的衝撃の影響で電気的接触が損なわれないように、通常はロックプラグ接続が必要である。しかしながら、使用されるバイポーラプレート上で利用できるスペースはわずかしかなく、その複雑さはさらに増している。構造と組み立ての労力に関するもう1つの欠点は、通常、プラグコネクタとセル監視ユニットとの間にケーブル接続があることである。
【0006】
特許文献1は、牽引体を有するクランプ装置を備えた燃料電池スタックを示しており、セル監視ユニット用のケーブルが牽引体に固定されている。特許文献2は、個々の燃料セルがタイロッドによって一緒にクランプ締結された燃料電池スタックを開示している。タイロッドはバスバーとしても機能する。特許文献3からは、バスバーの1つに接触するために使用される導電性クランプ要素が知られている。特許文献4では、エンドプレートがタイロッドによってクランプ締結された燃料電池スタックが示されている。タイロッドには、セル監視ユニット用の電気接続を通すための穴が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】独国特許出願公開第102017215560号明細書
【文献】欧州特許出願公開第1037296号明細書
【文献】欧州特許出願公開第3035430号明細書
【文献】米国特許出願公開第2007/0087237号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上述した欠点を軽減し、あるいは解消さえする、改良された燃料電池スタック、改良された燃料電池装置、および改良された燃料電池装置を備えた自動車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、請求項1の特徴を有する燃料電池スタック、請求項6の特徴を有する燃料電池装置、および請求項7の特徴を有する自動車によって達成される。本発明の適切な更なる改善点を有する有利な実施形態を従属項に特定する。
【0010】
上記の燃料電池スタックは、セル電圧タップの機械的固定が、その使用目的のために機械的に非常に頑丈で安定している既存の不可欠な構成要素によって実現されることを特徴とする。セル電圧タップの位置の変化は、クランプ要素によって防止される。
【0011】
各セル電圧タップがプラグイン接続用のプラグを備えている場合、およびプラグがクランプ要素に事前に組み立てられている場合、クランプ要素を同時に組み立て補助として使用することができ、燃料電池スタックの製造がコストの削減とともに簡素化されるため、好ましい。
【0012】
これに関連して、必要な接続を短い距離で行い、外部の影響から保護できるように、クランプ要素が、セル監視ユニットに配線されるケーブル用のダクトを有する場合、有利である。
【0013】
さらなる実施形態によれば、各プラグが燃料セルの1つに配置され、プラグの締結部品が、セル監視ユニットへの電気接続のためにクランプ要素に収容される可能性がある。プラグはソケットによって形成され、締結部品は射出成形部品によって形成され、それを通して電気接続が、セル監視ユニットに接続されたプリント回路基板へと送られる。
【0014】
さらなる好ましい実施形態によれば、プラグおよび締結部品は、1つの構成要素に一体的に組み合わせることができる。
【0015】
燃料セルは、プラグまたはソケットの位置を固定するのに適した高い機械的弾性を有するように、剛性タイロッドとして設計されたクランプ要素によって2つのエンドプレートの間に締結される。
【0016】
上述の効果および利点は、必要な変更を加えて、そのような燃料電池スタックを備えた燃料電池装置、およびそのような燃料電池装置を備えた自動車にも適用される。
【0017】
本明細書中において上述した特徴および特徴の組み合わせ、ならびに図の説明で以下に述べた、および/または図に単独で示した特徴および特徴の組み合わせは、それぞれの場合に示された組み合わせだけでなく、他の組み合わせでも、または単独でも、本発明の範囲から逸脱することなく使用することができる。したがって、実施形態はまた、図に明示的に示したり説明したりしていないが、それらの特徴の別個の組み合わせにより、説明された実施形態から生じ、生成可能である本発明に包含され、開示されていると見なされるべきである。
【0018】
本発明のさらなる利点、特徴、および詳細は、特許請求の範囲、以下の好ましい実施形態の説明、および図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】プラグ接続を固定する役割も果たすクランプ要素によって圧縮される複数の燃料セルから構成された燃料電池スタックの概略図である。
図2】クランプ要素に割り当てられた接続要素によってセル電圧監視ユニットに接続されたプラグが燃料セル上に組み合わされた、図1に対応する図である。
図3】プラグおよび締結部品がクランプ要素に組み込まれた、図1に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
燃料電池装置が、積層方向に配置された複数の燃料セル2を備えた燃料電池スタック1を有する。
【0021】
燃料セル2の各々は、アノードと、カソードと、アノードをカソードから分離するプロトン伝導膜と、を含む。膜は、イオノマ、好ましくはスルホン化テトラフルオロエチレンポリマ(PTFE)またはパーフルオロスルホン酸(PFSA)のポリマから形成される。代替的に、膜は、スルホン化炭化水素膜として形成することもできる。
【0022】
アノードには、燃料タンクからアノードチャンバを介して燃料、特に水素を供給することができる。高分子電解質膜燃料電池(PEM燃料電池)では、燃料または燃料分子がアノードでプロトンと電子とに分離される。PEMは、プロトンを通過させるが、電子は透過しない。例えば、アノードでは、次の反応が生じる:2H→4H+4e(酸化/電子放出)。プロトンがPEMを通過してカソードに向かう間、電子は外部回路を介してカソードまたはエネルギー蓄電池に伝達される。
【0023】
カソードガス(酸素または酸素含有空気など)は、カソードチャンバを介してカソードに供給されるため、カソード側で次の反応が生じる:O+4H+4e→2HO(還元/電子取り込み)。
【0024】
燃料電池スタック1はまた、複数の燃料セル2を圧縮するためのクランプ要素3によって形成されるクランプ装置を有する。末端の燃料セル2には、力を印加するようにクランプ装置が接続されたエンドプレート4が割り当てられ、燃料、酸化剤および冷却剤の媒体ガイド5(図3のみに示す)が、片側のエンドプレート4または両側のエンドプレート4に配置され、図示の実施例では左側のエンドプレート4に配置される。クランプ要素3は、剛性のタイロッドとして形成され、特に、強度および曲げ強度に関して対応する機械的特性を有する金属で作ることができる。
【0025】
燃料電池スタック1はまた、故障のない機能の診断を可能にするために、セル監視ユニット7への電気的接続のために、燃料セル2のそれぞれに対してセル電圧タップ6を有することが好ましい。セル電圧タップ6は、燃料セル2への接続に関して、クランプ要素3の少なくとも1つによって機械的に固定される。
【0026】
図1は、各セル電圧タップ6がプラグイン接続用のプラグ8を備えた実施形態を示しており、この実施形態では追加の機械的固定が焦点となる。しかしながら、加えて、クランプ要素3を組立て補助として使用できるようにするために、プラグ8をクランプ要素3に予め組み立てることも可能であり、クランプ要素3は、セル監視ユニット7に送られるケーブル用のダクトを有する。
【0027】
図2は、各プラグ8が燃料セル2の1つに配置されている実施形態を示しており、プラグ8の締結部品9が、セル監視ユニット7への電気接続のためにクランプ要素3に収容されている。すなわち、プラグ8をソケット10により形成し、締結部品9を射出成形部品11で形成することにより、その射出成形部品11を通して電気的接続がプリント回路基板12へと案内され、そのプリント回路基板12は、セル監視ユニット7に電気的に、特に機械的に接続される。
【0028】
図3は、プラグ6と締結部品9とが、クランプ要素3に一体化された1つの構成要素13に一体的に組み合わされている実施形態を示している。接点はオーバーラップ部14を有する構成要素13上に組み入れられているので、セル監視ユニット7への接続は、プリント回路基板12を介してはんだ接点で実現することができる。
【0029】
このような燃料電池スタック1を備えた燃料電池装置は、特別な機械的負荷および衝撃があるため、特に自動車で使用される場合にその利点を示す。
【符号の説明】
【0030】
1…燃料電池スタック
2…燃料セル
3…クランプ要素
4…エンドプレート
5…媒体ガイド
6…セル電圧タップ
7…セル監視ユニット
8…プラグ
9…締結部品
10…ソケット
11…射出成形部品
12…プリント基板
13…構成要素
14…オーバーラップ部
図1
図2
図3