(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】除草装置
(51)【国際特許分類】
A01B 39/18 20060101AFI20231025BHJP
A01C 11/02 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
A01B39/18 Z
A01C11/02 340
A01C11/02 342Z
(21)【出願番号】P 2023067807
(22)【出願日】2023-04-18
【審査請求日】2023-04-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】717000894
【氏名又は名称】北郷 俊明
(72)【発明者】
【氏名】北郷 俊明
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-208873(JP,A)
【文献】特開昭63-269919(JP,A)
【文献】実開昭60-156907(JP,U)
【文献】実開昭59-095822(JP,U)
【文献】実開昭58-113319(JP,U)
【文献】実開昭57-177412(JP,U)
【文献】実開昭53-035833(JP,U)
【文献】中国実用新案第207305375(CN,U)
【文献】中国実用新案第201878526(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 39/18
A01C 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
田植機に装着して苗植付条間の雑草を除草可能に構成された除草装置であって、
前記田植機の植付フロートに配設された引き掻き部を備え、
前記引き掻き部は、前記植付フロートの下面に着脱可能に構成されて田面に密着する接地板と、当該接地板における前記苗植付条間に対応する位置に配設されて当該接地板から下方に延出する掻棒とを備えていることを特徴とする除草装置。
【請求項2】
前記掻棒は、前記田植機の進行方向に対して鈍角に傾斜するように前記接地板から延出していることを特徴とする請求項1に記載の除草装置。
【請求項3】
前記掻棒は、前記田植機の前面または背面から見て鉛直方向または鉛直に対して傾斜する方向で、下方に延出していることを特徴とする請求項1または2に記載の除草装置。
【請求項4】
前記接地板は、接地荷重を軽減するための浮力を有していることを特徴とする請求項1に記載の除草装置。
【請求項5】
前記田植機に装着して、当該除草装置の接地荷重を軽減するために当該除草装置を引き上げる向きに付勢する減荷部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の除草装置。
【請求項6】
前記減荷部を支持する支持具を備え、当該
支持具は前記減荷部との接続位置の移動によって当該減荷部の付勢力を調整可能に構成されていることを特徴とする請求項5に記載の除草装置。
【請求項7】
苗植付条部に対応する位置に配設されて、苗に付着した前記田植機の車輪による巻上げ土を排除するとともに前記苗植付条部の除草を行なうための掻櫛を備えていることを特徴とする請求項1に記載の除草装置。
【請求項8】
前記接地板と田面との密着度を確認するための接地インジケーターを備えていることを特徴とする請求項1に記載の除草装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、田植機に装着して水田の除草を行うための除草装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の機器として、下記特許文献1に開示された水田除草作業機が知られている。この水田除草作業機は、走行機と、走行機の前方に配されて稲株の条間となる位置において上下方向に回転する複数のカッターを有して雑草の切断を行う草切断装置と、草切断装置の前方に配されて水平方向に対して傾斜して回転する掻取体で稲株の周りの雑草を掻き取る草掻取装置とを備えて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上述した既往の除草装置には、解決すべき以下の課題がある。具体的には、上述の除草装置は、草切断装置および草掻取装置を備えて雑草を切断および掻き取りを行なうように構成されているが、機構が複雑なため低価格での製造が困難となっている。また、従来の乗用型除草装置と同様に、専用の走行機が必要となっている。このため、取得費用および保管場所や維持費用が大きな負担となっており、容易に導入可能で有効かつ簡便な除草装置の開発が望まれている。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、有効性や作業性を向上しつつ低コストに実現し得る除草装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく請求項1に記載の除草装置は、田植機に装着して苗植付条間の雑草を除草可能に構成された除草装置であって、前記田植機の植付フロートに配設された引き掻き部を備え、前記引き掻き部は、前記植付フロートの下面に着脱可能に構成されて田面に密着する接地板と、当該接地板における前記苗植付条間に対応する位置に配設されて当該接地板から下方に延出する掻棒とを備えていることを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に記載の除草装置は、請求項1に記載の除草装置において、前記掻棒は、前記田植機の進行方向に対して鈍角に傾斜するように前記接地板から延出していることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に記載の除草装置は、請求項1または2に記載の除草装置において、前 記掻棒は、前記田植機の前面または背面から見て鉛直方向または鉛直に対して傾斜する方向で、下方に延出していることを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に記載の除草装置は、請求項1に記載の除草装置において、前記接地板は、接地荷重を軽減するための浮力を有していることを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に記載の除草装置は、請求項1に記載の除草装置において、前記田植機に装着して、当該除草装置の接地荷重を軽減するために当該除草装置を引き上げる向きに付勢する減荷部を備えていることを特徴とする。
【0011】
また、請求項6に記載の除草装置は、請求項5に記載の除草装置において、前記減荷部を支持する支持具を備え、当該支持具は前記減荷部との接続位置の移動によって当該減荷部の付勢力を調整可能に構成されていることを特徴とする。
【0012】
また、請求項7に記載の除草装置は、請求項1に記載の除草装置において、苗植付条部に対応する位置に配設されて、苗に付着した前記田植機の車輪による巻上げ土を排除するとともに前記苗植付条部の除草を行なうための掻櫛を備えていることを特徴とする。
【0013】
また、請求項8に記載の除草装置は、請求項1に記載の除草装置において、前記接地板と田面との密着度を確認するための接地インジケーターを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の除草装置によれば、田植機を利用しながらも植付フロートが苗を損傷することを回避できる。また、田植機の植付装置の荷重を利用することにより、掻棒を田面に押し込むことが容易である。そのため、田植機のほかに別途専用の走行機や動力は不要である。さらに、田植え時にできる車輪の轍が除草走行の際の軌道となるので、操舵が不要である。
【0015】
また、請求項2に記載の除草装置によれば、雑草および前作の藁や根などは、引き掻き部に絡みつかずに地中に埋め込まれる。さらに、除草走行の牽引抵抗が低減される。
【0016】
また、請求項3に記載の除草装置によれば、引き掻き除草の範囲が、条間の全面となる。
【0017】
また、請求項4に記載の除草装置によれば、植付装置から接地板底面に作用する過剰な荷重が軽減される。
【0018】
また、請求項5に記載の除草装置によれば、接地部が田植え時の植付フロートから除草時の接地板に変わって接地面積が減少することに伴う接地圧の増大が、植付装置からの荷重が低減されることによって相殺される。
【0019】
また、請求項6に記載の除草装置によれば、接地圧が増減調整されることによって、一様ではない田面の硬軟に応じて接地板が田面に密着状態で追従することが可能となる。
【0020】
また、請求項7に記載の除草装置によれば、車輪の巻上げ土が稲苗に被る障害を解決し、併せて苗植付部における田面の表層が撹拌されて除草される。
【0021】
また、請求項8に記載の除草装置によれば、接地板と田面との密着度が除草作業中に確認可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】田植機11および除草装置1の形態を示す側面図である。
【
図2】植付装置12および除草装置1の形態を示す背面図である。
【
図3】接地板2と田面122との密着度を示す接地インジケーター8の作動状態を説明する説明図である。なお、a)図は接地板2が田面122から離れている状態、b)図は接地板2と田面122とが密着している状態、c)図は接地板2が田面122に食い込んでいる状態を示す。
【
図4】田植機11の車輪13および植付フロート14、除草装置1の接地板2、田面122との位置関係、および車輪13に形成される轍軌道103を説明する説明図(進方向に直交する断面を示した図)である。なお、a)図は田植え時の状態、b)図は田植え後および除草作業前の状態、c)図は除草作業時の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、除草装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0024】
最初に、除草装置1の構成について説明する。当該装置1は、本発明に係る除草装置の一例であって、4条植え田植機の一機種に対応したものである。
【0025】
具体的には、除草装置1は、
図1~3に示すように、接地板2、接地板取付具3、掻棒4、減荷バネ5、および減荷バネ支持具6を備えて構成され、掻櫛7および接地インジケーター8を付設することができる。
【0026】
接地板2は、
図1~2に示すように、接地板取付具3を介して植付フロート14の下部に固定されている。また、接地板2の配置位置は、隣接する苗植付条部101(苗を植え付ける部位)の間(苗植付条間102)に対応する位置に規定されている。また、接地板2は、田面122に対する接地荷重を軽減するための浮力を有している。
【0027】
また、掻棒4は、接地板2の下部に配設されるが、田面122への押し込みと牽引の抵抗に耐えうる金属などの材質で構成される。また、掻棒4は、
図1に示すように、田植機11の進行方向(同図における左方向)に対して鈍角(一例として、135°)に傾斜するように接地板2から延出している。
【0028】
また、減荷バネ5は、減荷部の一例であって、田植機11に装着されて田面122に対する除草装置1の接地荷重を軽減するために除草装置1を引き上げる向きに付勢する。減荷バネ支持具6は、田植機11に取り付けられて減荷バネ5を支持する。また、減荷バネ支持具6は減荷バネ5との接続位置を移動することが可能に構成されており、接続位置の移動によって減荷バネ5の長さ(伸縮量)を変更し、これによって減荷バネ5の付勢力を調整することが可能となっている。
【0029】
また、掻櫛7は、苗植付条部に配設され、田面122の表層(撹拌軟泥124)に掻き入り、かつ、植付稲苗121が逃げられる適度な強度を持つ材質形状と櫛歯間隔で構成される。
【0030】
また、接地インジケーター8は、接地板2と田面122との密着度を確認できるよう、例えば
図3に示すように、接地板2の側面に配設される。
【0031】
次に、除草装置1の使用方法および動作について図面を参照して説明する。なお、この例では、田植えが終了して苗がある程度活着した状態(
図4のb図参照)において除草作業を行うものとする。
【0032】
最初に、田植機11に除草装置1を取り付ける。この場合、田植えの際に使用した田植機11(
図4のa図参照)を用いることによって後述する効果を得ることができるため、本実施例では田植えの際に使用した田植機11に除草装置1を取り付けるものとする。
【0033】
次に、
図1,2に示すように植付装置12を降下し、
図3のa図~c図に示すように接地インジケーター8を用いて接地板2と田面122との密着度を確認調整する。次に、植付装置12を上昇させて田植え時の轍軌道103に合わせて車輪13を操舵進入させる。続いて、
図4のc図に示すように再度植付装置12を降下して走行する。この時、接地板2と田面122とが密着し、田面122に押し込まれた掻棒4が苗植付条間102を除草し、掻櫛7が苗植付条部101を除草する。
【0034】
ここで、
図4のa図に示すように、田植えの際に田植機11の車輪13によって耕盤125に凹状の轍軌道103が形成され、
図4のb図に示すように、田植えの終了後においてもその轍軌道103が残っている。本実施例では、田植えの際に使用した田植機11に除草装置1を取り付けて除草作業を行っている。このため、除草の際には、車輪13が凹状の轍軌道103にはまって走行し、走行中の操舵が不要となる(または、操舵性が向上する)。したがって、苗植付条間102に掻棒4が正確に位置すると共に、苗植付条部101に掻櫛7が正確に位置した状態で田植機11を走行させることができる結果、除草を確実に行うことができる。
【0035】
なお、上述した除草装置の構成は、本願の除草装置の一例であって、適宜変更した構成を採用することができる。例えば、減荷バネ5は、引張バネの他に圧縮バネやガススプリングを採用することもできる。
【0036】
また、上記した除草装置1の接地圧調整機構(接地板2の浮力による接地圧調整や、減荷バネ5による接地圧調整)は、圧力センサーと油圧装置などの他の制御機構によることもできる。
【符号の説明】
【0037】
1 除草装置
2 接地板
3 接地板取付具
4 掻棒
5 減荷バネ
6 減荷バネ支持具
7 掻櫛
8 接地インジケーター
11 田植機
12 植付装置
13 車輪
14 植付フロート
101 苗植付条部
102 苗植付条間
103 轍軌道
121 植付稲苗
122 田面
123 水面
124 撹拌軟泥
125 耕盤
【要約】
【課題】有効性や作業性を向上しつつ低コストに実現し得る除草装置を提供する。
【解決手段】田植機11に装着して苗植付条間102の雑草を除草可能に構成され、田植機11の植付フロート14の下部に配設された引き掻き部を備え、引き掻き部は、植付フロート14の下面に着脱可能に構成されて田面122に密着する接地板2と、接地板2における苗植付条間102に対応する位置に設けられて接地板2から下方に延出する掻棒4とを備えて構成されている。
【選択図】
図1