(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-25
(45)【発行日】2023-11-02
(54)【発明の名称】フッ化カルシウム汚泥の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
C01F 11/22 20060101AFI20231026BHJP
C02F 11/00 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
C01F11/22
C02F11/00 C ZAB
(21)【出願番号】P 2019135692
(22)【出願日】2019-07-03
【審査請求日】2022-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】512004372
【氏名又は名称】株式会社興徳クリーナー
(72)【発明者】
【氏名】湯川 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】世古 遼
(72)【発明者】
【氏名】上出 広幸
【審査官】青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-074575(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 11/22
C01b 7/19
C02F 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸カルシウムおよび/または硫酸カルシウムと、アルミニウム化合物および/またはケイ素化合物を含有し、固形分中のフッ化カルシウム濃度が60~85重量%であるフッ化カルシウム汚泥を
(1)水に分散してスラリー化する工程
(2)(1)で得たスラリーにフッ酸水溶液を添加して
0.5時間攪拌した時の液のpHが7以下になるようにして、0.5時間以上攪拌する工程
(3)(2)の液に
水酸化ナトリウム水溶液および/または水酸化カリウム水溶液を添加して0.5時間攪拌した時の液のpHが10以上になるようにして、0.5時間以上攪拌する工程
(4)(3)の液を固液分離して、固体を回収した後、水で洗浄し乾燥する工程を行うことを特徴とする、フッ化カルシウム汚泥の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造や金属加工・ガラス加工における排水処理工程から排出されるフッ化カルシウムを主成分とする汚泥について、純度を向上させるための洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造や金属加工あるいはガラス加工といったプロセスにおいては、薬剤としてフッ酸が多く用いられており、使用後の薬剤については排水処理設備において、カルシウム系薬剤を添加することで、フッ化カルシウムとして沈殿させ、汚泥として固液分離を行うことで安定化処理を行っている。
【0003】
排水中のフッ素イオンは環境への影響を考慮して、フッ化カルシウムの水への溶解度から算出されるフッ素イオン濃度よりも厳しく規定されており、安定化処理においはカルシウム系化合物が大過剰になるように添加されることがほとんどであった。また、安定化処理の際には排水中に含まれるケイ素やアルミニウム化合物も同時に沈殿として析出し、不純物としてフッ化カルシウムに混入する状態であった。
【0004】
一方、フッ化カルシウムに目を向けると、当該化合物はフッ酸製造時の原料である蛍石の主成分であり、フッ酸製造において排水処理プロセスからのフッ化カルシウム汚泥を使用することが検討されてきている。しかしながら当該汚泥に余剰のカルシウム化合物が含まれる場合、フッ酸製造時に水を生成するためにハンドリングに問題が発生するとともに、得られるフッ酸に水が混入するためにその価値が低下する結果となっていた。
【0005】
さらに、フッ化カルシウム汚泥に、ケイ素やアルミニウムの化合物が多く含まれると、フッ酸製造時に副生する石膏中にこれら元素が残存し、更にこれら元素はフッ素を含む化合物となるため、フッ酸の収率が低下するとともに石膏中のフッ素濃度の許容値を超えてしまうために、副生物を資材として利用することができない状況であった。
【0006】
このような排水処理及びリサイクルの問題を受け、処理プロセスの検討が行われている。例えば、特許文献1に記載されるように、ケイ素及び/またはアルミとフッ素を含有する排水から、ケイ酸化合物及び/またはアルミ化合物を分離し、当該ケイ酸化合物及び/またはアルミ化合物からフッ素を抽出する段階的なプロセスが提案されている。このプロセスによれば、不純物となる成分をあらかじめ分離することで、フッ化カルシウム合成時に他の反応の発生を抑え、高純度のフッ化カルシウムを得ることが可能となっている。しかしながら、プロセスが多段にわたり、しかも手間がかかる固液分離プロセスを複数回行わねばならないなど、問題ある方法であった。
【0007】
また、特許文献2では、水溶性カルシウム化合物を添加し排水中のフッ素と反応させる際に、液のpHを制御することでケイ素化合物のゲル化を防止して高純度のフッ化カルシウムを製造する方法が提案されている。この方法によれば、工程は短くなりハンドリングも容易になるが、排水にケイ素以外の元素が含まれる場合は制御が難しくなり、フッ化カルシウム中に他の物質が混入するなどの問題が発生していた。
【0008】
さらに特許文献3では、排水に酸を添加した後カルシウムを添加したものを固液分離し、得られた固形分をアルカリで洗浄することで、固体中に含まれるケイ素分を低減する方法が示されている。当該方法によれば、不純物中のケイ素化合物を低減させることが可能であるが、カルシウムを添加して反応させた後の経過時間が長いとアルカリ洗浄の効率が低下するなど反応時の条件が厳しく汎用性に欠けるものであった。
【0009】
このように、フッ素を含有する排水から高純度フッ化カルシウムを得る方法は数多く提案されており、実用化されているプロセスもあるが、フッ酸系排水の性状に合わせて制御することが必要であり設備が複雑になること、製造品目が変化しても安定化処理を実施することが必須であることから、広く展開するには至っておらず、上述したように単純にカルシウム系薬剤を過剰に添加することで、フッ化カルシウムとして沈殿させ、汚泥として固液分離を行い、埋め立て処分を行うことが大半であった。
【0010】
ところで汚泥となったフッ化カルシウムを含有する固体からフッ化カルシウムを分離回収する方法についても、特許文献4に示すような固体中に含まれる炭酸カルシウムや水酸化カルシウムを酸によって水に溶解し、そのあとフッ酸を添加することでフッ化カルシウムとして回収する方法が提案されている。この方法は、フロンガスの分解物を捕集した固体のように、ケイ素やアルミニウムあるいは他の金属元素を含有しない固体に対しては有効な方法であるが、前記元素を含むようなフッ化カルシウム汚泥については不純物を除去することができなかった。
【0011】
また、特許文献5では、ケイ素成分を含有するフッ化カルシウムの洗浄方法について提示されている。この方法では含有するケイ素成分を低減することは可能であるが、塩酸-フッ酸の混酸で洗浄することが必要であり、汚泥中に塩素成分が残存する恐れがあり、また塩酸-フッ酸の混酸による酸条件下で濃縮しその後中和し固液分離をする必要があり処理設備に制約を生じたり、処理工程が長くなったりするものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特許第5896118号公報
【文献】特許第6024910号公報
【文献】特開2018-58048号公報
【文献】特許第5405857号公報
【文献】特許第6244799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、汚泥として排出されたフッ化カルシウム含有排水の安定化処理後物を洗浄処理することで、リサイクルに適した、フッ酸製造等に用いることができる高純度のフッ化カルシウムを製造する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、フッ化カルシウム汚泥をフッ酸で洗浄した後、アルカリ成分を添加して洗浄することで、不純物を溶解することで前期課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0015】
すなわち本発明は、固形分中のフッ化カルシウム濃度が60~85重量%であるフッ化カルシウム汚泥を
(1)水に分散してスラリー化する工程
(2)(1)で得たスラリーにフッ酸水溶液を添加して0.5時間以上攪拌する工程
(3)(2)の液にアルカリ水溶液を添加して0.5時間以上攪拌する工程
(4)(3)の液を固液分離して、固体を回収した後、水で洗浄し乾燥する工程
を行うことからなる、フッ化カルシウム汚泥の洗浄方法である。
【0016】
この構成によれば、(1)の工程で操作性を上げたフッ化カルシウム汚泥に対して、(2)の工程でフッ酸水溶液と混合することで固形分中に存在する炭酸カルシウムと反応させ、炭酸カルシウム濃度を低下させるとともに、ケイ素分を溶解することで、フッ化カルシウム中の不純物濃度を低下させる。
【0017】
さらに(3)の工程では、(2)の反応液にアルカリ水溶液を添加することで、汚泥中に存在するアルミニウム成分の抽出を行うとともに、含有する石膏のフッ化カルシウムへのイオン交換を促進し、フッ化カルシウム汚泥の不純物濃度をさらに低下させる。また、(2)で添加したフッ酸のうち未反応分について中和を行うことで、(4)の工程の取り扱いを容易にし、固液分離装置の選定や除害設備の構成を簡易にすることが可能となる。
【0018】
本発明において用いられるフッ化カルシウム汚泥は、固形分中にフッ化カルシウムを60~85重量%含むものであり、不純物としてアルミニウム化合物、ケイ素化合物および石膏や炭酸カルシウムまたは水酸化カルシウムを含むものを用いることができる。これらの汚泥は半導体製造・液晶製造・ガラス加工等の工程から排出される排水を安定化処理されたものが好適に用いられるが、それ以外のプロセスから排出されたものであっても使用に問題はない。
【0019】
(2)の工程で用いられるフッ酸は工業薬品として流通されているものを使用することもできるが、副生物や再使用物、あるいは廃棄物であってもかまわない。フッ酸に不純物が含まれている場合は、(1)のスラリー濃度を調整することでフッ化カルシウムへの混入を防止することが可能となるが、不純物量はHFに対して10%以下が好ましい。また、フッ酸の添加量としては、フッ酸添加後0.5時間攪拌した時のpHが7以下であることが好ましく、さらに好ましくはpHが3以下である。pHが7以上の場合は、炭酸カルシウムあるいは水酸化カルシウムが未反応分として残存し、得られるフッ化カルシウムの濃度を低下させ、リサイクル原料としてフッ酸製造時に水分を発生させる要因となる。また、フッ酸添加後0.5時間攪拌した時の液中に存在するフッ素イオン濃度は0.5g/L以下が好ましく、さらに好ましくは、0.2g/L以下である。フッ素イオン濃度が0.5g/L以上の場合、(3)工程でアルカリ水溶液を添加する際に中和のためのアルカリを多く消費するだけでなく、フッ化アルカリ塩が析出することで、フッ化カルシウムの純度を低下させたり、(4)の工程での洗浄に多大の労力が必要となる。
【0020】
(3)で用いられるアルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液および/または水酸化カリウム水溶液が好適に用いられる。これらの薬品は工業薬品として流通しているものを使用することもできるが、副生物や再使用物、あるいは廃棄物であっても構わない。アルカリ水溶液に不純物が含まれている場合は、(1)のスラリー濃度を調整することでフッ化カルシウムへの混入を防止することが可能となる。また、アルカリ水溶液の添加量としては、アルカリ水溶液添加後0.5時間攪拌した時のpHが10以上であることが好ましく、さらに好ましくはpHが12以上である。pHが10以下の場合は、原料汚泥中に含まれるアルミニウム成分を抽出することが難しく、得られるフッ化カルシウムの濃度を低下させ、リサイクル原料としてフッ酸製造時の収率を低下させる。また、フッ酸製造時に副生する石膏中に不純物としてフッ素を取り込む要因となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明による方法によれば、従来再利用が困難であったフッ化カルシウムを含有する汚泥について、フッ酸製造における原料として用いることのできる純度の高いフッ化カルシウムとして利用可能となる。
また、本プロセスにより洗浄されるフッ化カルシウムをフッ酸製造に用いることは、戦略的物質として位置付けられる天然鉱物である蛍石の使用量を低減することができるとともに、最終処分されるフッ化カルシウム汚泥の量が減少することで、最終処分場枯渇の問題への対応にも寄与するものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係る、フッ化カルシウム汚泥の洗浄方法の一実施形態を示す処理フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本発明は排水処理設備等で安定化処理されたフッ化カルシウム汚泥について、第1工程として、水に分散して均一なスラリーとし、第2工程として、第1工程で得られたスラリーに対してフッ酸を添加することで固体中に残存する炭酸カルシウム等の不純物を溶解せしめ、第3工程として、第2工程で得られたスラリーにアルカリ水溶液を添加することで、固体中に残存するアルミニウム成分ならびに石膏を溶解し、第4工程で固液分離および洗浄することで、液中の不純物とフッ化カルシウムを分離するものである。
【0024】
(第1工程)
第1工程においては、排水処理設備等で安定化処理されたフッ化カルシウム汚泥を反応槽に供給するとともに水を添加する。反応槽に投入する順は限定されないが、例えば、あらかじめ反応槽に所定量の水を仕込み攪拌している状況で汚泥を添加していく方法や、ニーダー等で汚泥を混錬している状況で水を投入して流動化し、それを反応槽に供給した後濃度調整を行う方法などをとることができる。スラリー濃度としては、汚泥に含まれる不純物の種類や量によって調整することができる。スラリー濃度は5~60重量%、好ましくは10~40重量%である。スラリー濃度が5重量%より薄い場合、1回あたりで洗浄できる汚泥量が少なくなるため生産性に問題を生じやすくなる。一方、濃度が60重量%を超える場合、スラリー粘度が大きくなりハンドリングが難しくなることに加えて、不純物量に対して水の割合が小さくなるために洗浄効果が小さくなる。
【0025】
(第2工程)
第2工程においては、第1工程で得られたスラリーに対してフッ酸を添加する。フッ酸の添加量の目安としては、汚泥中に含まれる炭酸カルシウムおよび水酸化カルシウムの合計量に対して当量以上であるが、含有する不純物の種類や量によって大きな影響を受ける。しかるに、添加量はフッ酸添加して0.5時間程度経過した後の液のpHおよびフッ素イオン濃度で管理することが望ましい。
【0026】
(第3工程)
第3工程においては、第2工程で得られたスラリーを固液分離することなく、直接アルカリ水溶液を添加する。アルカリ水溶液添加後のpHによって、汚泥からのアルミニウムの抽出量および石膏の塩交換が進行し、pHが高くなるほど洗浄効果は高くなる。
【0027】
(第4工程)
第4工程においては、第3工程で得られたスラリーを固液分離した後、水で洗浄することで抽出した不純物の除去を行う。なお固液分離装置としては、一般的に使用されるものであれば特に制限を受けないが、常圧ろ過、減圧濾過、フィルタープレス、スクリュープレス、遠心分離機、スクリューデカンターやシックナーなど適宜選択することができる。
【0028】
上述した工程によって得られたフッ化カルシウム洗浄物は、乾燥後そのままあるいは蛍石と混合してフッ酸の製造に用いることが可能となる。
【0029】
以下実施例で本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例の記載によって限定されるものではない。
【実施例】
【実施例1】
【0030】
・第1工程
500mL容ビーカーに表1に示す成分からなるフッ化カルシウム汚泥1を100gと水80gを投入し、30分間攪拌して均一なスラリーを作成した。
・第2工程
上記第1工程で得たスラリーに、5.5wt%のフッ酸水溶液20gを添加して攪拌を行ったところ発泡が見られた。攪拌を30分間継続し液のpHを測定したところ2.25であり、液中に存在するフッ素イオン濃度は1206ppmであった。
・第3工程
第2工程で得られたスラリーに、24wt%の水酸化ナトリウム水溶液を14g添加して攪拌を30分間継続したところ、液のpHは12.8であった。
・第4工程
第3工程で得られた液を減圧濾過によって固液分離し、100mlの水で洗浄することを3回繰り返した後乾燥し、フッ化カルシウム洗浄物1を63.5g得た。得られたフッ化カルシウム洗浄物1の成分を表2に示す。
【0031】
本処理によって汚泥中に含まれる、フッ化カルシウム濃度が向上するとともに、炭酸カルシウム・アルミニウム・ケイ素および石膏由来の硫黄元素の低減を図ることができた。
【表1】
【表2】
【実施例2】
【0032】
・第1工程
500mL容ビーカーに表1に示す成分からなるフッ化カルシウム汚泥2を80gと水320gを投入し、30分間攪拌して均一なスラリーを作成した。
・第2工程
上記第1工程で得たスラリーに、5.5wt%のフッ酸水溶液27gを添加して攪拌を行ったところ発泡が見られた。攪拌を30分間継続し液のpHを測定したところ2.67であり、液中に存在するフッ素イオン濃度は401ppmであった。
・第3工程
第2工程で得られたスラリーに、24wt%の水酸化ナトリウム水溶液を17.3g添加して攪拌を30分間継続したところ、液のpHは12.8であった。
・第4工程
第3工程で得られた液を減圧濾過によって固液分離し、100mlの水で洗浄することを3回繰り返した後乾燥し、フッ化カルシウム洗浄物2を43.0g得た。得られたフッ化カルシウム洗浄物2の成分を表2に示す。
【0033】
本処理によって汚泥中に含まれる、フッ化カルシウム濃度が向上するとともに、炭酸カルシウム・アルミニウム・ケイ素および石膏由来の硫黄元素の低減を図ることができた。
【0034】
(比較例1)
1000mL容ビーカーに表1に示す成分からなるフッ化カルシウム汚泥1を100gと水517gを投入し、30分間攪拌して均一なスラリーを作成した
上記スラリーに、3.0wt%のフッ酸水溶液25.7gを添加して攪拌を行ったところ発泡が見られた。攪拌を30分間継続し液のpHを測定したところ4.53であり、液中に存在するフッ素イオン濃度は225ppmであった。
この液を減圧濾過によって固液分離し、100mlの水で洗浄することを3回繰り返した後乾燥し、比較フッ化カルシウム洗浄物1を67.7g得た。得られた比較フッ化カルシウム洗浄物1の成分を表3に示す。
【0035】
本処理によって汚泥中に含まれる、フッ化カルシウム濃度が向上するとともに、炭酸カルシウムおよびケイ素については低減を図ることができたが、アルミニウムならびに石膏由来の硫黄元素については十分低減させることができなかった。
【表3】
【0036】
(比較例2)
500mL容ビーカーに表1に示す成分からなるフッ化カルシウム汚泥1を100gと水80gを投入し、30分間攪拌して均一なスラリーを作成した。
上記スラリーに、14.3wt%の水酸化ナトリウム水溶液20gを添加して攪拌を行った。攪拌を30分間継続し液のpHを測定したところ13.0であった。
この液を減圧濾過によって固液分離し、100mlの水で洗浄することを3回繰り返した後乾燥し、比較フッ化カルシウム洗浄物2を63.7g得た。得られた比較フッ化カルシウム洗浄物2の成分を表3に示す。
【0037】
本処理によって汚泥中に含まれる、フッ化カルシウム濃度が向上するとともに、アルミニウムおよび石膏由来の硫黄元素については低減を図ることができたが、炭酸カルシウムならびにケイ素については十分低減させることができなかった。
【0038】
(比較例3)
500mL容ビーカーに表1に示す成分からなるフッ化カルシウム汚泥1を100gと水100gを投入し、30分間攪拌して均一なスラリーを作成した。
この時スラリーのpHを測定したところ7.42であった。
この液を減圧濾過によって固液分離し、100mlの水で洗浄することを3回繰り返した後乾燥し、比較フッ化カルシウム洗浄物3を68.8g得た。
得られた比較フッ化カルシウム洗浄物3の成分を表3に示す。
【0039】
本処理によって汚泥中に含まれる、フッ化カルシウム濃度が向上させることができたが、炭酸カルシウム・アルミニウム・ケイ素ならびに石膏由来の硫黄元素については十分低減させることができなかった。
【0040】
(比較例4)
・第1工程
500mL容ビーカーに表1に示す成分からなるフッ化カルシウム汚泥1を100gと水80gを投入し、30分間攪拌して均一なスラリーを作成した。
・第2工程
上記第1工程で得たスラリーに、5.5wt%のフッ酸水溶液15gを添加して攪拌を行ったところ発泡が見られた。攪拌を30分間継続し液のpHを測定したところ4.02であり、液中に存在するフッ素イオン濃度は994ppmであった。
・第3工程
第2工程で得られたスラリーに、24wt%の水酸化ナトリウム水溶液を3.2g添加して攪拌を30分間継続したところ、液のpHは8.1であった。
・第4工程
第3工程で得られた液を減圧濾過によって固液分離し、100mlの水で洗浄することを3回繰り返した後乾燥し、フッ化カルシウム洗浄物3を65.6g得た。得られた比較フッ化カルシウム洗浄物4の成分を表3に示す。
【0041】
本処理によって汚泥中に含まれる、フッ化カルシウム濃度が向上するとともに、炭酸カルシウム・ケイ素および石膏由来の硫黄元素の低減を図ることができたが、アルミニウムについては十分低減させることができなかった。
【実施例3】
【0042】
・第1工程
500mL容ビーカーに表1に示す成分からなるフッ化カルシウム汚泥1を100gと水80gを投入し、30分間攪拌して均一なスラリーを作成した。
・第2工程
上記第1工程で得たスラリーに、5.5wt%のフッ酸水溶液20gを添加して攪拌を行ったところ発泡が見られた。攪拌を30分間継続し液のpHを測定したところ2.26であり、液中に存在するフッ素イオン濃度は780ppmであった。
・第3工程
第2工程で得られたスラリーに、33wt%の水酸化カリウム水溶液を12.4g添加して攪拌を30分間継続したところ、液のpHは12.6であった。
・第4工程
第3工程で得られた液を減圧濾過によって固液分離し、100mlの水で洗浄することを3回繰り返した後乾燥し、フッ化カルシウム洗浄物4を66.0g得た。得られたフッ化カルシウム洗浄物3の成分を表2に示す。
【0043】
本処理によって汚泥中に含まれる、フッ化カルシウム濃度が向上するとともに、炭酸カルシウム・アルミニウム・ケイ素および石膏由来の硫黄元素の低減を図ることができた。
【0044】
(比較例5)
・第1工程
500mL容ビーカーに表1に示す成分からなるフッ化カルシウム汚泥1を100gと水80gを投入し、30分間攪拌して均一なスラリーを作成した。
・第2工程
上記第1工程で得たスラリーに、13.2wt%のフッ酸水溶液20gを添加して攪拌を行ったところ発泡が見られた。攪拌を30分間継続し液のpHを測定したところ2.00であり、液中に存在するフッ素イオン濃度は5986ppmであった。
・第3工程
第2工程で得られたスラリーに、24wt%の水酸化ナトリウム水溶液を10.2g添加して攪拌を30分間継続したところ、液のpHは7.00であった。
・第4工程
第3工程で得られた液を減圧濾過によって固液分離し、100mlの水で洗浄することを3回繰り返した後乾燥し、比較フッ化カルシウム洗浄物4を65.6g得た。得られた比較フッ化カルシウム洗浄物5の成分を表3に示す。
【0045】
本処理によって汚泥中に含まれる、フッ化カルシウム濃度が向上するとともに、炭酸カルシウムおよび石膏由来の硫黄元素については低減を図ることができたが、アルミニウムならびにケイ素については十分低減させることができなかった。
【実施例4】
【0046】
・第1工程
500mL容ビーカーに表1に示す成分からなるフッ化カルシウム汚泥3を100gと水80gを投入し、30分間攪拌して均一なスラリーを作成した。
・第2工程
上記第1工程で得たスラリーに、5.5wt%のフッ酸水溶液45.8gを添加して攪拌を行ったところ発泡が見られた。攪拌を30分間継続し液のpHを測定したところ1.93であり、液中に存在するフッ素イオン濃度は3312ppmであった。
・第3工程
第2工程で得られたスラリーに、24wt%の水酸化ナトリウム水溶液を17.4g添加して攪拌を30分間継続したところ、液のpHは12.6であった。
・第4工程
第3工程で得られた液を減圧濾過によって固液分離し、100mlの水で洗浄することを3回繰り返した後乾燥し、フッ化カルシウム洗浄物5を66.3g得た。得られたフッ化カルシウム洗浄物4の成分を表2に示す。
【0047】
本処理によって汚泥中に含まれる、フッ化カルシウム濃度が向上するとともに、炭酸カルシウム・アルミニウム・ケイ素および石膏由来の硫黄元素の低減を図ることができた。
【実施例5】
【0048】
・第1工程
500mL容ビーカーに表1に示す成分からなるフッ化カルシウム汚泥3を100gと水80gを投入し、30分間攪拌して均一なスラリーを作成した。
・第2工程
上記第1工程で得たスラリーに、5.5wt%のフッ酸水溶液45.8gを添加して攪拌を行ったところ発泡が見られた。攪拌を30分間継続し液のpHを測定したところ2.00であり、液中に存在するフッ素イオン濃度は3398ppmであった。
・第3工程
第2工程で得られたスラリーに、33wt%の水酸化カリウム水溶液を15.3g添加して攪拌を30分間継続したところ、液のpHは12.2であった。
・第4工程
第3工程で得られた液を減圧濾過によって固液分離し、100mlの水で洗浄することを3回繰り返した後乾燥し、フッ化カルシウム洗浄物6を67.4g得た。得られたフッ化カルシウム洗浄物5の成分を表2に示す。
【0049】
本処理によって汚泥中に含まれる、フッ化カルシウム濃度が向上するとともに、炭酸カルシウム・アルミニウム・ケイ素および石膏由来の硫黄元素の低減を図ることができた。
【実施例6】
【0050】
・第1工程
500mL容ビーカーに表1に示す成分からなるフッ化カルシウム汚泥2を80gと水60gを投入し、30分間攪拌して均一なスラリーを作成した。
・第2工程
上記第1工程で得たスラリーに、5.5wt%のフッ酸水溶液20gを添加して攪拌を行ったところ発泡が見られた。攪拌を30分間継続し液のpHを測定したところ3.39であり、液中に存在するフッ素イオン濃度は220ppmであった。
・第3工程
第2工程で得られたスラリーに、24wt%の水酸化ナトリウム水溶液を9.8g添加して攪拌を30分間継続したところ、液のpHは12.6であった。
・第4工程
第3工程で得られた液を減圧濾過によって固液分離し、100mlの水で洗浄することを3回繰り返した後乾燥し、フッ化カルシウム洗浄物7を41.9g得た。得られたフッ化カルシウム洗浄物6の成分を表2に示す。
【0051】
本処理によって汚泥中に含まれる、フッ化カルシウム濃度が向上するとともに、炭酸カルシウム・アルミニウム・ケイ素および石膏由来の硫黄元素の低減を図ることができた。