(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-25
(45)【発行日】2023-11-02
(54)【発明の名称】静電チャック
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20231026BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20231026BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20231026BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20231026BHJP
H02N 13/00 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/302 101G
H01L21/205
H01L21/31 C
H02N13/00 D
(21)【出願番号】P 2019086028
(22)【出願日】2019-04-26
【審査請求日】2022-02-18
(31)【優先権主張番号】P 2018142895
(32)【優先日】2018-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】籾山 大
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 均
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-119654(JP,A)
【文献】特開平09-172056(JP,A)
【文献】特開2016-201411(JP,A)
【文献】特表2016-512393(JP,A)
【文献】特開2007-281161(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/3065
H01L 21/205
H01L 21/31
H02N 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着の対象物が載置される第1主面と、前記第1主面とは反対側の第2主面と、を有するセラミック誘電体基板と、
前記セラミック誘電体基板を支持するベースプレートと、
前記セラミック誘電体基板の内部に設けられ、高周波電源と接続される少なくとも1つの電極層と、
を備え、
前記電極層は、前記ベースプレートから前記セラミック誘電体基板に向かうZ軸方向において、前記第1主面と前記第2主面との間に設けられ、
前記電極層は、前記第1主面側の第1面と、前記第1面とは反対側の第2面と、を有し、前記第2面側から給電される静電チャックにおいて、
前記電極層は、金属とセラミックスとのサーメットを含み、
前記電極層は、前記Z軸方向において前記電極層を貫通する貫通孔を有し、
前記電極層は、前記Z軸方向
に沿って見たときに
前記電極層の外周の縁部を含む第1端部と、前記Z軸方向
に沿って見たときに
前記貫通孔の縁部を含む第2端部と
、前記第1端部と前記第2端部との間に位置し前記第1端部と前記第2端部とを接続する中央部と、を有し、
前記第1面と前記第1主面との間の前記Z軸方向に沿う距離は一定であり、
前記電極層の前記第2端部における前記第2面と前記第1面との間の前記Z軸方向に沿う距離は、前記電極層の
前記中央部における前記第2面と前記第1面との間の前記Z軸方向に沿う距離よりも小さいことを特徴とする静電チャック。
【請求項2】
前記電極層の
前記中央部における前記第2面と前記第1面との間の前記Z軸方向に沿う距離は、1μm以上500μm以下であることを特徴とする請求項1記載の静電チャック。
【請求項3】
前記電極層の
前記中央部における前記第2面と前記第1面との間の前記Z軸方向に沿う距離は、10μm以上100μm以下であることを特徴とする請求項2記載の静電チャック。
【請求項4】
前記電極層は、Ag、Pd、及びPtの少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載の静電チャック。
【請求項5】
前記セラミックスは、前記セラミック誘電体基板に含まれるセラミックスと同じ元素を含むことを特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載の静電チャック。
【請求項6】
前記セラミックスは、前記セラミック誘電体基板に含まれるセラミックスとは異なる元素を含むことを特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載の静電チャック。
【請求項7】
前記セラミック誘電体基板は、酸化アルミニウムを含み、
前記セラミック誘電体基板における前記酸化アルミニウムの濃度は、90質量%以上であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1つに記載の静電チャック。
【請求項8】
前記電極層は、吸着用電源と接続されることを特徴とする請求項1~7のいずれか1つに記載の静電チャック。
【請求項9】
前記第1端部及び前記第2端部の少なくとも一方の幅は、前
記電極層の前記中央部における前記第2面と前記第1面との間の前記Z軸方向に沿う距離よりも大きいことを特徴とする請求項1~8のいずれか1つに記載の静電チャック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、静電チャックに関する。
【背景技術】
【0002】
エッチング、CVD(Chemical Vapor Deposition)、スパッタリング、イオン注入、アッシングなどを行うプラズマ処理チャンバ内では、半導体ウェーハやガラス基板などの処理対象物を吸着保持する手段として、静電チャックが用いられている。静電チャックは、内蔵する電極に静電吸着用電力を印加し、シリコンウェーハ等の基板を静電力によって吸着するものである。
【0003】
プラズマ処理を行う際には、例えば、チャンバ内の上部に設けられた上部電極と、上部電極よりも下方に設けられた下部電極と、にRF(Radio Frequency)電源(高周波電源)から電圧を印加し、プラズマを発生させる。
【0004】
従来の静電チャックでは、静電チャックの下部に設けられるベースプレートを下部電極としてプラズマを発生させていた。しかし、適切な周波数を選択してプラズマ密度のウェーハ面内分布の更なる制御が求められる状況では、このような構成でのプラズマ制御には限界がある。
【0005】
そこで、近年、ベースプレートの上に設けられる誘電体層にプラズマ発生用の下部電極を内蔵させて、プラズマ制御性を高める試みがなされている。しかし、誘電体層に下部電極を内蔵させるだけでは、プラズマ密度の面内均一性を十分に得ることができない場合があるという問題がある。
【0006】
また、近年、プラズマ密度の面内均一性の向上に加えて、RF出力の変更などの制御に対する応答性(RF応答性)をより高めることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2008-277847号公報
【文献】特開2011-119654号公報
【文献】特開2004-103648号公報
【文献】特開2016-201411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、プラズマ密度の面内均一性を高めつつ、RF応答性も高めることができる静電チャックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、吸着の対象物が載置される第1主面と、前記第1主面とは反対側の第2主面と、を有するセラミック誘電体基板と、前記セラミック誘電体基板を支持するベースプレートと、前記セラミック誘電体基板の内部に設けられ、高周波電源と接続される少なくとも1つの電極層と、を備え、前記電極層は、前記ベースプレートから前記セラミック誘電体基板に向かうZ軸方向において、前記第1主面と前記第2主面との間に設けられ、前記電極層は、前記第1主面側の第1面と、前記第1面とは反対側の第2面と、を有し、前記第2面側から給電される静電チャックにおいて、前記電極層は、金属とセラミックスとのサーメットを含み、前記第1面と前記第1主面との間の前記Z軸方向に沿う距離は一定であり、前記電極層の端部における前記第2面と前記第1面との間の前記Z軸方向に沿う距離は、前記電極層の中央部における前記第2面と前記第1面との間の前記Z軸方向に沿う距離よりも小さいことを特徴とする静電チャックである。
【0010】
この静電チャックによれば、高周波電源と接続される電極層をセラミック誘電体基板の内部に設けることで、静電チャックよりも上方に設けられるプラズマ発生用の上部電極と電極層(下部電極)との間の距離を短くすることができる。これにより、例えば、ベースプレートをプラズマ発生用の下部電極とする場合などに比べて、低い電力でプラズマ密度を高めることができる。また、この静電チャックによれば、第1面と第1主面との間のZ軸方向に沿う距離を一定とすることで、プラズマ密度の面内均一性を向上させることができる。
一般に、交流電流が電極を流れる場合には、電流密度が電極表面で高く、表面から離れると低くなる表皮効果と呼ばれる現象が生じる。交流電流の周波数が高くなるほど電流の表面への集中が大きくなることが知られている。本発明では、電極層は高周波電源と接続されるため、電極層において表皮効果が生じ、高周波電源から印加された交流電流は、電極層の表面を伝って流れると考えられる。この静電チャックによれば、第2面側から高周波電源と接続され給電される電極層において、電極層の端部における第2面と第1面との間のZ軸方向に沿う距離を、電極層の中央部における第2面と第1面との間のZ軸方向に沿う距離よりも小さくしている。そのため、第2面から第1面までの給電距離を短くすることができる。これにより、RF出力の変更などの制御に対する応答性(RF応答性)を高めることができる。
また、高周波電源と接続される電極層をセラミック誘電体基板の内部に設け、さらに、プラズマ密度を高めるために電極層に印加される電源をハイパワー化する場合には特に、電極層の発熱によりチャンバ内環境が変化し、プラズマ密度の面内均一性に悪影響が出るという新たな課題を見出した。この静電チャックによれば、電極層の端部における第2面と第1面との間のZ軸方向に沿う距離を、電極層の中央部における第2面と第1面との間のZ軸方向に沿う距離よりも小さくすることで、冷却機能を有するベースプレート側に位置する電極層の第2面の表面積を相対的に大きくすることができる。これにより、電極層をより効果的に放熱させることができ、プラズマ密度の面内均一性をより高めることができる。また、この静電チャックによれば、電極層をサーメットで形成することで、電極層とセラミック誘電体基板との密着性を高めることができるとともに、電極層の強度を高めることができる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、前記電極層の中央部における前記第2面と前記第1面との間の前記Z軸方向に沿う距離は、1μm以上500μm以下であることを特徴とする静電チャックである。
【0012】
この静電チャックによれば、電極層の中央部における第2面と第1面との間のZ軸方向に沿う距離(中央部における電極層の厚さ)をこの範囲とすることで、表皮効果の影響を低減し、プラズマ密度の面内均一性をさらに高めるとともに、RF応答性の低下を抑制することができる。
【0013】
第3の発明は、第2の発明において、前記電極層の中央部における前記第2面と前記第1面との間の前記Z軸方向に沿う距離は、10μm以上100μm以下であることを特徴とする静電チャックである。
【0014】
この静電チャックによれば、電極層の中央部における第2面と第1面との間のZ軸方向に沿う距離(中央部における電極層の厚さ)をこの範囲とすることで、表皮効果の影響を低減し、プラズマ密度の面内均一性をより一層高めるとともに、RF応答性の低下を抑制することができる。
【0015】
第4の発明は、第1~第3のいずれか1つの発明において、前記電極層は、Ag、Pd、及びPtの少なくともいずれかを含むことを特徴とする静電チャックである。
【0016】
このように、実施形態に係る静電チャックによれば、例えば、Ag、Pd、及びPtなどの金属とセラミックスとのサーメットを含む電極層を用いることができる。
【0017】
第5の発明は、第1~第4のいずれか1つの発明において、前記セラミックスは、前記セラミック誘電体基板に含まれるセラミックスと同じ元素を含むことを特徴とする静電チャックである。
【0018】
この静電チャックによれば、電極層をセラミック誘電体基板に含まれるセラミックスと同じ元素を含むセラミックスのサーメットで形成することで、電極層の熱膨張率とセラミック誘電体基板の熱膨張率との差を小さくすることができる。これにより、電極層とセラミック誘電体基板との密着性を高め、剥離等の不具合を抑制できる。
【0019】
第6の発明は、第1~第4のいずれか1つの発明において、前記セラミックスは、前記セラミック誘電体基板に含まれるセラミックスとは異なる元素を含むことを特徴とする静電チャックである。
【0020】
このように、実施形態に係る静電チャックによれば、電極層をセラミック誘電体基板に含まれるセラミックスとは異なる元素を含むセラミックスのサーメットで形成することで熱特性、機械特性、電気特性などを任意に設計することができる。
【0021】
第7の発明は、第1~第6のいずれか1つの発明において、前記セラミック誘電体基板は、酸化アルミニウムを含み、前記セラミック誘電体基板における前記酸化アルミニウムの濃度は、90質量%以上であることを特徴とする静電チャックである。
【0022】
この静電チャックによれば、高純度の酸化アルミニウムを用いることで、セラミック誘電体基板の耐プラズマ性を向上させることができる。
【0023】
第8の発明は、第1~第7のいずれか1つの発明において、前記電極層は、吸着用電源と接続されることを特徴とする静電チャックである。
【0024】
このように、実施形態に係る静電チャックによれば、プラズマを発生させるための下部電極である電極層を、対象物を吸着させるための吸着電極としても使用することができる。
【0025】
第9の発明は、第1~第8のいずれか1つの発明において、前記端部の幅は、前記第1電極層の前記中央部における前記第2面と前記第1面との間の前記Z軸方向に沿う距離よりも大きいことを特徴とする静電チャックである。
【0026】
この静電チャックによれば、第1電極層の端部の幅を第1電極層の中央部における第2面と第1面との間のZ軸方向に沿う距離(すなわち、第1電極層の中央部における厚さ)よりも大きくすることで、給電距離を短くすることができる。これにより、RF出力の変更などの制御に対する応答性(RF応答性)をより高めることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の態様によれば、プラズマ密度の面内均一性を高めつつ、RF応答性も高めることができる静電チャックが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】実施形態に係る静電チャックを模式的に表す断面図である。
【
図2】実施形態に係る静電チャックの一部を拡大して模式的に表す断面図である。
【
図3】
図3(a)及び
図3(b)は、実施形態に係る静電チャックの電極層の変形例を模式的に表す断面図である。
【
図4】
図4(a)及び
図4(b)は、実施形態に係る静電チャックの一部を模式的に表す平面図である。
【
図5】
図5(a)及び
図5(b)は、実施形態に係る静電チャックの一部を模式的に表す平面図である。
【
図6】
図6(a)及び
図6(b)は、実施形態に係る静電チャックの一部を模式的に表す平面図である。
【
図7】実施形態に係る静電チャックを備えたウェーハ処理装置を模式的に表す断面図である。
【
図8】
図8(a)~
図8(d)は、実施形態に係る第1電極層の端部を拡大して模式的に表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0030】
図1は、実施形態に係る静電チャックを例示する模式的断面図である。
図1に表したように、静電チャック100は、セラミック誘電体基板10と、電極層11と、ベースプレート50と、を備える。
【0031】
セラミック誘電体基板10は、例えば焼結セラミックによる平板状の基材である。例えば、セラミック誘電体基板10は、酸化アルミニウム(アルミナ:Al2O3)を含む。例えば、セラミック誘電体基板10は、高純度の酸化アルミニウムで形成される。セラミック誘電体基板10における酸化アルミニウムの濃度は、例えば、90質量パーセント(mass%)以上100mass%以下、好ましくは、95質量パーセント(mass%)以上100mass%以下、より好ましくは、99質量パーセント(mass%)以上100mass%以下である。高純度の酸化アルミニウムを用いることで、セラミック誘電体基板10の耐プラズマ性を向上させることができる。なお、酸化アルミニウムの濃度は、蛍光X線分析などにより測定することができる。
【0032】
セラミック誘電体基板10は、第1主面10aと、第2主面10bと、を有する。第1主面10aは、吸着の対象物Wが載置される面である。第2主面10bは、第1主面10aとは反対側の面である。吸着の対象物Wは、例えば、シリコンウェーハなどの半導体基板である。
【0033】
なお、本願明細書において、ベースプレート50からセラミック誘電体基板10に向かう方向をZ軸方向とする。Z軸方向は、例えば、各図に例示する通り、第1主面10aと第2主面10bとを結ぶ方向である。Z軸方向は、例えば、第1主面10a及び第2主面10bに対して略垂直な方向である。Z軸方向と直交する方向の1つをX軸方向、Z軸方向及びX軸方向に直交する方向をY軸方向ということにする。本願明細書において、「面内」とは、例えばX-Y平面内である。
【0034】
セラミック誘電体基板10の内部には、電極層11が設けられる。電極層11は、第1主面10aと、第2主面10bと、の間に設けられる。すなわち、電極層11は、セラミック誘電体基板10の中に挿入されるように設けられる。電極層11は、例えば、セラミック誘電体基板10に一体焼結されることで内蔵されてもよい。
【0035】
このように、電極層11をセラミック誘電体基板10の内部に設けることで、静電チャック100よりも上方に設けられる上部電極(
図7の上部電極510)と電極層11(下部電極)との間の距離を短くすることができる。これにより、例えば、ベースプレート50を下部電極とする場合などに比べて、低い電力でプラズマ密度を高めることができる。換言すれば、高いプラズマ密度を得るために必要となる電力を低減させることができる。
【0036】
電極層11の形状は、セラミック誘電体基板10の第1主面10a及び第2主面10bに沿った薄膜状である。電極層11の断面形状については、後述する。
【0037】
電極層11は、高周波電源(
図7の高周波電源504)と接続される。上部電極(
図7の上部電極510)及び電極層11に高周波電源から電圧(高周波電圧)が印加されることで、処理容器501内部においてプラズマが発生する。電極層11は、換言すれば、プラズマを発生させるための下部電極である。高周波電源は、高周波のAC(交流)電流を電極層11に供給する。ここでいう「高周波」は、例えば、200kHz以上である。
【0038】
電極層11は、金属とセラミックスとのサーメットを含む。サーメットは、金属とセラミックス(酸化物、炭化物など)とを含む複合材料である。電極層11をサーメットで形成することで、電極層11とセラミック誘電体基板10との密着性を高めることができる。また、電極層11の強度を高めることができる。
【0039】
サーメットに含まれる金属は、例えば、Ag、Pd、及びPtの少なくともいずれかを含む。また、サーメットに含まれるセラミックスは、例えば、セラミック誘電体基板10に含まれるセラミックスと同じ元素を含む。電極層11を、セラミック誘電体基板10に含まれるセラミックスと同じ元素を含むセラミックスのサーメットで形成することで、電極層11の熱膨張率とセラミック誘電体基板10の熱膨張率との差を小さくすることができる。これにより、電極層11とセラミック誘電体基板10との密着性を高め、剥離等の不具合を抑制できる。なお、サーメットに含まれるセラミックスは、セラミック誘電体基板10に含まれるセラミックスとは異なる元素を含んでもよい。
【0040】
電極層11は、例えば、高周波電源に加えて、吸着用電源(
図7の吸着用電源505)とも接続される。静電チャック100は、吸着用電源から電極層11に電圧(吸着用電圧)を印加することによって、電極層11の第1主面10a側に電荷を発生させ、静電力によって対象物Wを吸着保持する。換言すれば、電極層11は、対象物Wを吸着させるための吸着電極であってもよい。実施形態によれば、このように、プラズマを発生させるためのプラズマ発生用の下部電極である電極層を、対象物を吸着させるための吸着電極としても使用することができる。吸着用電源は、直流(DC)電流またはAC電流を電極層11に供給する。吸着用電源は、例えば、DC電源である。吸着用電源は、例えば、AC電源であってもよい。
【0041】
電極層11には、セラミック誘電体基板10の第2主面10b側に延びる接続部20が設けられている。接続部20は、例えば、電極層11と導通するビア(中実型)やビアホール(中空型)である。接続部20は、ロウ付けなどの適切な方法によって接続された金属端子でもよい。
【0042】
ベースプレート50は、セラミック誘電体基板10を支持する部材である。セラミック誘電体基板10は、接着部材60によってベースプレート50の上に固定される。接着部材60としては、例えばシリコーン接着剤が用いられる。
【0043】
ベースプレート50は、例えば、アルミニウムなどの金属製である。ベースプレート50は、例えば、セラミック製であってもよい。ベースプレート50は、例えば、上部50aと下部50bとに分けられており、上部50aと下部50bとの間に連通路55が設けられている。連通路55の一端側は、入力路51に接続され、連通路55の他端側は、出力路52に接続される。
【0044】
ベースプレート50は、静電チャック100の温度調整を行う役目も果たす。例えば、静電チャック100を冷却する場合には、入力路51からヘリウムガスなどの冷却媒体を流入し、連通路55を通過させ、出力路52から流出させる。これにより、冷却媒体によってベースプレート50の熱を吸収し、その上に取り付けられたセラミック誘電体基板10を冷却することができる。一方、静電チャック100を保温する場合には、連通路55内に保温媒体を入れることも可能である。セラミック誘電体基板10やベースプレート50に発熱体を内蔵させることも可能である。ベースプレート50やセラミック誘電体基板10の温度を調整することで、静電チャック100によって吸着保持される対象物Wの温度を調整することができる。
【0045】
この例では、セラミック誘電体基板10の第1主面10a側に、溝14が設けられている。溝14は、第1主面10aから第2主面10bに向かう方向(Z軸方向)に窪み、X-Y平面内において連続して延びている。溝14が設けられていない部分を凸部13とすると、対象物Wは、凸部13に載置される。第1主面10aは、対象物Wの裏面と接する面である。すなわち、第1主面10aは、凸部13の上面を含む平面である。静電チャック100に載置された対象物Wの裏面と溝14との間に空間が形成される。
【0046】
セラミック誘電体基板10は、溝14と接続された貫通孔15を有する。貫通孔15は、第2主面10bから第1主面10aにかけて設けられる。すなわち、貫通孔15は、第2主面10bから第1主面10aまでZ軸方向に延び、セラミック誘電体基板10を貫通する。
【0047】
凸部13の高さ(溝14の深さ)、凸部13及び溝14の面積比率、形状等を適宜選択することで、対象物Wの温度や対象物Wに付着するパーティクルを好ましい状態にコントロールすることができる。
【0048】
ベースプレート50には、ガス導入路53が設けられる。ガス導入路53は、例えば、ベースプレート50を貫通するように設けられる。ガス導入路53は、ベースプレート50を貫通せず、他のガス導入路53の途中から分岐してセラミック誘電体基板10側まで設けられていてもよい。また、ガス導入路53は、ベースプレート50の複数箇所に設けられてもよい。
【0049】
ガス導入路53は、貫通孔15と連通する。すなわち、ガス導入路53に流入した伝達ガス(ヘリウム(He)等)は、ガス導入路53を通過した後に、貫通孔15に流入する。
【0050】
貫通孔15に流入した伝達ガスは、貫通孔15を通過した後に、対象物Wと溝14との間に設けられた空間に流入する。これにより、対象物Wを伝達ガスによって直接冷却することができる。
【0051】
図2は、実施形態に係る静電チャックの一部を拡大して模式的に表す断面図である。
図3(a)及び
図3(b)は、実施形態に係る静電チャックの電極層の変形例を模式的に表す断面図である。
図2は、
図1に示す領域R1を拡大して示す。
【0052】
図2に表したように、電極層11は、第1面11aと、第2面11bと、を有する。第1面11aは、第1主面10a側の面である。第2面11bは、第1面11aとは反対側の面である。第1面11aは、換言すれば、第1主面10aと対向する面である。第2面11bは、換言すれば、第2主面10bと対向する面である。
【0053】
第1面11aと第1主面10aとの間のZ軸方向に沿う距離D1は、一定である。距離D1は、換言すれば、第1主面10aから電極層11の上面(第1面11a)までの距離である。ここで、「一定」とは、例えば第1面11aのうねりなどを含むことができる。例えば、静電チャック100の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)等で低倍率(例えば100倍程度)で観察したときに、距離D1が概ね一定であればよい。例えば、電極層11の中央部11cにおける距離D1cと電極層11の端部11dにおける距離D1dとの差は0±150μmである。距離D1(距離D1c及び距離D1d)は、例えば、300μm程度である。第1面11aは、例えば、第1主面10aに対して、平行な面である。
【0054】
図2に表したように、電極層11の端部(end portion)11dは、電極層11のX-Y平面における縁部(edge)11eを含む領域である。電極層11の縁部11eとは、第1面11aに位置し、Z軸方向からみたときの電極層11とセラミック誘電体基板10との界面を指す。電極層11の中央部11cは、X-Y平面において、2つの端部11dの間に位置する領域である。電極層11の中央部11c及び端部11dについては、後述する。
【0055】
このように、第1面11aと第1主面10aとの間のZ軸方向に沿う距離D1を一定とすることで、上部電極(
図7の上部電極510)と電極層11(下部電極)との間の距離を一定とすることができる。これにより、例えば、第1面11aと第1主面10aとの間のZ軸方向に沿う距離D1が一定でない場合などに比べて、プラズマ密度の面内均一性を向上させることができる。例えば、電極層11の断面形状が上に凸である場合など、端部11dにおける第1面11aと第1主面10aとの間のZ軸方向に沿う距離が、中央部11cにおける第1面11aと第1主面10aとの間のZ軸方向に沿う距離とは異なる場合に比べて、プラズマ密度の面内均一性を向上させることができる。
【0056】
電極層11の断面形状は、下に凸である。より具体的には、電極層11の端部11dにおける第2面11bと第1面11aとの間のZ軸方向に沿う距離D2dは、電極層11の中央部11cにおける第2面11bと第1面11aとの間のZ軸方向に沿う距離D2cよりも小さい。距離D2cは、換言すれば、中央部11cにおける電極層11の厚さである。距離D2dは、換言すれば、端部11dにおける電極層11の厚さである。つまり、端部11dにおける電極層11の厚さは、中央部11cにおける電極層11の厚さよりも小さい。例えば、電極層11の厚さは、中央部11cから端部11dに向かうにつれて小さくなる。電極層11は、第2面11b側に凸の形状である。
【0057】
距離D2cは、例えば、1μm以上500μm以下、好ましくは、10μm以上100μm以下、より好ましくは、20μm以上70μm以下である。中央部11cにおける電極層11の厚さ(距離D2c)をこの範囲とすることで、表皮効果の影響を低減し、プラズマ密度の面内均一性をさらに高めることができる。距離D2cは、例えば、電極層11の断面SEM(Scanning Electron Microscope)画像における中央部11cにおける3点の厚さの平均値として求めることができる。本願明細書においては、この平均値を距離D2cと定義する。
【0058】
電極層11には、第2面11b側から高周波電流が給電される。通常、AC電流が電極層を流れるときには、電流密度が電極層の表面で高く、表面から離れると低くなる表皮効果が生じる。また、流れるAC電流が高周波であるほど、電流の表面集中は顕著となる。つまり、第2面11b側から電極層11に流れ込む高周波のAC電流は、電極層11の第2面11bを伝って第1面11aに流れ込むこととなる。
【0059】
実施形態においては、電極層11の端部11dにおける第2面11bと第1面11aとの間のZ軸方向に沿う距離D2dを、電極層11の中央部11cにおける第2面11bと第1面11aとの間のZ軸方向に沿う距離D2cよりも小さくすることで、給電される第2面11bから第1面11aまでの給電距離を短くすることができる。これにより、RF出力の変更などの制御に対する応答性(RF応答性)をより高めることができる。
【0060】
本発明者らは、高周波電源と接続される電極層11をセラミック誘電体基板10の内部に設け、さらに、プラズマ密度を高めるために電極層11に印加される高周波電源をハイパワー化する場合には特に、電極層11が発熱して、チャンバ(
図7の処理容器501)内環境が変化し、プラズマ密度の面内均一性に悪影響が出るという新たな課題を見出した。これに対し、実施形態によれば、電極層11の端部11dにおける第2面11bと第1面11aとの間のZ軸方向に沿う距離D2dを、電極層11の中央部11cにおける第2面11bと第1面11aとの間のZ軸方向に沿う距離D2cよりも小さくする。例えば、電極層11を第2面11b側(すなわち、ベースプレート50側)に凸の形状とすることで、電極層11の冷却機能を有するベースプレート50側の面である第2面11bの表面積を相対的に大きくすることができる。これにより、電極層11をより効果的に放熱させることができ、プラズマ密度の面内均一性をより高めることができる。
【0061】
なお、この例では、中央部11cにおいて、電極層11の厚さは、一定である。換言すれば、中央部11cにおいて、第2面11bは、第1面11aに対して、平行である。一方、端部11dにおいて、電極層11の厚さは、中央部11c側から縁部11eに向かって小さくなる。換言すれば、端部11dにおいて、第2面11bは、中央部11c側から縁部11eに向かって上方に傾斜する傾斜面を有する。この例では、傾斜面は、平面状である。傾斜面は、
図3(a)に表したように、曲面状であってもよい。
【0062】
電極層11の断面形状は、これに限定されない。例えば、
図3(b)に表したように、第2面11bは、第2面11bのX-Y平面における中心から縁部11eに向かって上方に傾斜する傾斜面を有していてもよい。換言すれば、中央部11cにおいて、電極層11の厚さは、一定でなくてもよい。換言すれば、中央部11cにおいて、第2面11bは、第1面11aに対して、平行でなくてもよい。また、このとき、傾斜面は、
図3(b)に表したように、曲面状であってもよい。
【0063】
図4(a)、
図4(b)、
図5(a)、
図5(b)、
図6(a)、及び
図6(b)は、実施形態に係る静電チャックの一部を模式的に表す平面図である。
これらの図は、静電チャック100において、セラミック誘電体基板10のうち電極層11(第2面11b)よりもベースプレート50側(下側)に位置する部分、及び、ベースプレート50などを省略した状態で、第2面11b側(下側)から電極層11を見た平面図である。
【0064】
図4(a)、
図4(b)、
図5(a)、
図5(b)、
図6(a)、及び
図6(b)に表したように、静電チャック100には、例えば、X-Y平面に沿って拡がる少なくとも1つの電極層11が設けられる。電極層11の数は、例えば、
図4(a)及び
図4(b)に表したように1つでもよいし、
図5(a)及び
図5(b)に表したように2つでもよいし、
図6(a)及び
図6(b)に表したように3つ以上(この例では、4つ)でもよい。複数の電極層11が設けられる場合、電極層11のそれぞれは、例えば、同一平面上に位置してもよいし、Z軸方向において異なる平面上に位置してもよい。
【0065】
図4(a)及び
図4(b)に示した例では、Z軸方向に沿って見たときに円形である電極層11が、例えば、電極層11の中心とセラミック誘電体基板10の中心とが重なるように配置されている。電極層11の縁部11eは、例えば、セラミック誘電体基板10の縁部に対して同心円状である。この例において、電極層11の端部11dは、セラミック誘電体基板10の外周側に環状に配置される。
【0066】
図5(a)及び
図5(b)に示した例では、例えば、内側の電極層11Aと外側の電極層11Bとが同心円状に設けられている。内側の電極層11Aは、例えば、Z軸方向に沿って見たときに円形である。外側の電極層11Bは、例えば、Z軸方向に沿って見たときに内側の電極層11Aを囲む円環形である。内側の電極層11A及び外側の電極層11Bのそれぞれは、例えば、内側の電極層11Aの中心とセラミック誘電体基板10の中心とが重なる同心円状に配置される。この例において、外側の電極層11Bの端部11dは、セラミック誘電体基板10の中心側、及び、セラミック誘電体基板10の外周側に、それぞれ環状に配置される。また、内側の電極層11Aの端部11dは、セラミック誘電体基板の外周側に環状に配置される。なお、電極層11の数は、2つに限定されず、3つ以上の電極層11が、同心円状に配置されてもよい。
【0067】
図6(a)及び
図6(b)に示した例では、Z軸方向に沿って見たときに円形である複数の電極層11が、それぞれ、例えば、セラミック誘電体基板10の中心に対して、点対称となる位置に配置されている。なお、電極層11の1つが、この電極層11の中心とセラミック誘電体基板10の中心とが重なるように配置されてもよい。換言すれば、電極層11の1つが、セラミック誘電体基板10の中央に配置されてもよい。この例において、各電極層11の端部11dは、各電極層11の外周側に環状に配置される。
【0068】
また、
図4(b)、
図5(b)、及び
図6(b)に表したように、電極層11には、Z軸方向において電極層11を貫通する孔11pが設けられてもよい。孔11pが設けられる場合、孔11pの外周付近にも端部11dが配置される。
【0069】
実施形態においては、これら端部11dのいずれの箇所においても、端部11dにおける第1面11aと第2面11bとの間の距離D2dと、中央部11cにおける第1面11aと第2面11bとの間の距離D2cとの関係がD2d<D2cを満たしていてもよい。一方で、本発明の効果を奏す範囲において、D2d<D2cを満たさない箇所を含むことを排除しない。換言すれば、実施形態においては、上記のような端部11dの少なくとも一部において、D2d<D2cが満たされていればよい。例えば、端部11dのうち、D2d<D2cを満たす箇所が多いと、RF応答性をさらに高めることができる。
【0070】
上述のように、電極層11の中央部11cは、X-Y平面において、2つの端部11dの間に位置する領域である。例えば、電極層11において、端部11d以外のすべての領域を中央部11cとみなしてもよい。換言すれば、電極層11において、例えば、縁部11eの近傍を端部11dとし、それ以外を中央部11cとみなすことができる。
【0071】
以下、電極層11が内部に設けられたセラミック誘電体基板10の作製方法について説明する。
【0072】
電極層11が内部に設けられたセラミック誘電体基板10は、例えば、第1主面10a側を下にした状態で各層を積層して、積層体を焼結することで作製することができる。より具体的には、例えば、第1主面10aを含むセラミックス層となる第1層の上に、電極層11を積層させる。電極層11の上に、第2主面10bを含むセラミックス層となる第2層を積層させる。そして、この積層体を焼結させる。
【0073】
電極層11は、例えば、スクリーン印刷、ペーストの塗布(スピンコート、コーター、インクジェット、ディスペンサーなど)及び蒸着などにより形成される。例えば、第1主面10aを下にした状態で、複数回に分けて各層を積層させて電極層11を形成することができる。このとき、例えば積層範囲の調整などにより、端部11dにおける第1面11aと第2面11bとの間の距離D2dと、中央部11cにおける第1面11aと第2面11bとの間の距離D2cとの関係がD2d<D2cを満たすようにすることができる。
【0074】
図7は、実施形態に係る静電チャックを備えたウェーハ処理装置を模式的に表す断面図である。
図7に表したように、ウェーハ処理装置500は、処理容器501と、高周波電源504と、吸着用電源505と、上部電極510と、静電チャック100と、を備えている。処理容器501の天井には、処理ガスを内部に導入するための処理ガス導入口502、及び、上部電極510が設けられている。処理容器501の底板には、内部を減圧排気するための排気口503が設けられている。静電チャック100は、処理容器501の内部において、上部電極510の下に配置されている。静電チャック100の電極層11及び上部電極510は、高周波電源504と接続されている。静電チャック100の電極層11は、吸着用電源505と接続されている。
【0075】
電極層11と上部電極510とは、互いに所定の間隔を隔てて略平行に設けられている。より具体的には、電極層11の第1面11aは、上部電極510の下面510aに対して略平行である。また、セラミック誘電体基板10の第1主面10aは、上部電極510の下面510aに対して略平行である。対象物Wは、電極層11と上部電極510との間に位置する第1主面10aに載置される。
【0076】
高周波電源504から電極層11及び上部電極510に電圧(高周波電圧)が印加されると、高周波放電が起こり処理容器501内に導入された処理ガスがプラズマにより励起、活性化されて、対象物Wが処理される。
【0077】
吸着用電源505から電極層11に電圧(吸着用電圧)が印加されると、電極層11の第1主面10a側に電荷が発生し、静電力によって対象物Wが静電チャック100に吸着保持される。
【0078】
図8(a)~
図8(d)は、実施形態に係る第1電極層の端部を拡大して模式的に表す断面図である。
図8(a)~
図8(d)に表したように、断面視における第1電極層11の端部11dのX軸方向の長さである幅tは、例えば、第1電極層11の中央部11cにおける厚さD2cよりも大きい(厚さD2c<幅t)。端部11dの幅tは、換言すれば、第2面11bの傾斜面の幅である。つまり、幅tは、第2面11bの傾斜面の下端P(傾斜が終わるところ)と縁部11eとの間のX軸方向の長さである。このように、端部11dの幅tを第1電極層11の中央部11cにおける厚さD2cよりも大きくすることで、給電距離を短くすることができる。これにより、RF出力の変更などの制御に対する応答性(RF応答性)をより高めることができる。
【0079】
傾斜面の下端Pは、第1電極層11を含むように切断したサンプルの断面画像から求めることができる。実施形態においては、例えば、サンプルのうち少なくとも1か所が上記の関係(厚さD2c<幅t)を満たす。実施形態においては、サンプルのうち複数個所が上記の関係(厚さD2c<幅t)を満たすことがより好ましい。
【0080】
また、第2面11bの傾斜面の角度θは、例えば、10度以上80度以下、好ましくは20度以上60度以下である。角度θは、縁部11eと第2面11bの傾斜面の下端P(傾斜が終わるところ)とを結ぶ直線を線Lとしたときに、第1面11aと線Lとのなす角度(劣角)で表すことができる。角度θを小さくすることで、給電距離を短くすることができる。これにより、RF出力の変更などの制御に対する応答性(RF応答性)をより高めることができる。
【0081】
なお、これらの図では下端Pと縁部11eの間が曲線状の断面形状を示しているが、下端Pと縁部11eの間は、これに限らず、直線状の断面形状でも良い。直線状とすることで、例えば給電距離をより短くすることができる。
【0082】
以上、説明したように、実施形態によれば、プラズマ密度の面内均一性を高めつつ、RF応答性も高めることができる静電チャックを提供することができる。
【0083】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、静電チャックが備える各要素の形状、寸法、材質、配置、設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0084】
10 セラミック誘電体基板、 10a 第1主面、 10b 第2主面、 11、11A、11B 電極層、 11a 第1面、 11b 第2面、 11c 中央部、 11d 端部、 11e 縁部、 11p 孔、 13 凸部、 14 溝、 15 貫通孔、 20 接続部、 50 ベースプレート、 50a 上部、 50b 下部、 51 入力路、 52 出力路、 53 ガス導入路、 55 連通路、 60 接着部材、 100 静電チャック、 500 ウェーハ処理装置、 501 処理容器、 502 処理ガス導入口、 503 排気口、 504 高周波電源、 505 吸着用電源、 510 上部電極、 510a 下面、 D1、D1c、D1d、D2c、D2d 距離、 P 下端、 R1 領域、 t 幅、 W 対象物