(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-25
(45)【発行日】2023-11-02
(54)【発明の名称】車両用電源制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 10/26 20060101AFI20231026BHJP
B60L 1/00 20060101ALI20231026BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20231026BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20231026BHJP
B60L 58/20 20190101ALI20231026BHJP
B60K 6/485 20071001ALI20231026BHJP
B60K 6/28 20071001ALI20231026BHJP
B60K 6/54 20071001ALI20231026BHJP
B60W 20/13 20160101ALI20231026BHJP
B60R 16/033 20060101ALI20231026BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
B60W10/26 900
B60L1/00 L ZHV
B60L50/16
B60L50/60
B60L58/20
B60K6/485
B60K6/28
B60K6/54
B60W20/13
B60R16/033 D
H02J7/00 P
H02J7/00 B
(21)【出願番号】P 2019099050
(22)【出願日】2019-05-28
【審査請求日】2022-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100059959
【氏名又は名称】中村 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】栗原 健
(72)【発明者】
【氏名】中野 雄介
(72)【発明者】
【氏名】冨依 英将
(72)【発明者】
【氏名】添田 征洋
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 亜紀菜
(72)【発明者】
【氏名】大塚 雄太
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-166675(JP,A)
【文献】特開2001-320807(JP,A)
【文献】特開2005-110496(JP,A)
【文献】特開2016-195473(JP,A)
【文献】特開2017-061182(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/26
B60L 1/00
B60L 50/16
B60L 50/60
B60L 58/20
B60K 6/485
B60K 6/28
B60K 6/54
B60W 20/13
B60R 16/033
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される電源の制御装置であって、
車両に搭載され、車両の運動エネルギーを回生して発電する発電機と、
この発電機によって生成された電力を蓄積する高電圧バッテリと、
この高電圧バッテリよりも公称電圧が低い低電圧バッテリと、
上記高電圧バッテリからの出力電圧を降圧するための電圧変換器と、
上記電圧変換器を制御する制御ユニットと、
を有し、
上記電圧変換器は、上記高電圧バッテリからの出力電圧を降圧して上記低電圧バッテリに充電するように構成され、
上記制御ユニットは、車両の電源投入後、車両に搭載されたエンジンを始動させる前に、上記電圧変換器を作動させ、上記低電圧バッテリへの充電を開始させ、
上記制御ユニットは、
車両の電源投入後、停車状態において、車両に搭載されたエンジンを始動させる前には、上記電圧変換器から上記低電圧バッテリへの出力電流を、所定の最大電流よりも低い所定の第1電流以下に制限し、車両に搭載されたエンジンの始動後においては、上記最大電流以下の出力電流を許容するように上記電圧変換器を制御することを特徴とする車両用電源制御装置。
【請求項2】
上記制御ユニットは、車両の電源投入時において、上記高電圧バッテリの電圧が所定の電圧以下である場合には、上記電圧変換器による上記低電圧バッテリへの充電を開始させない請求項1記載の車両用電源制御装置。
【請求項3】
上記制御ユニットは、車両の電源投入後、クランキングが実行されている状態においては、上記高電圧バッテリから上記低電圧バッテリへの充電が停止されるように上記電圧変換器を制御する請求項1又は2に記載の車両用電源制御装置。
【請求項4】
さらに、上記高電圧バッテリと上記電圧変換器の接続、非接続を切り替えるリレー装置と、車両のボンネットの開状態、閉状態を検出するボンネットセンサと、を有し、上記制御ユニットは、車両の電源投入後、上記ボンネットセンサによってボンネットの開状態が検出された場合には、上記リレー装置を非接続に切り替え、又は上記リレー装置を非接続に切り替えられたままにする請求項1乃至3の何れか1項に記載の車両用電源制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用電源制御装置に関し、特に、車両に搭載される電源の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2016-118126号公報(特許文献1)には、エンジンの停止制御装置が記載されている。このエンジンの停止制御装置には、第1蓄電部と第2蓄電部が備えられており、エンジンの始動に必要な始動電力量以上の電力が第2蓄電部に貯蔵されていない場合には、発電機に第2蓄電部を蓄電させ、所要の電力が貯蔵された後にエンジンが停止される。また、このエンジンの停止制御装置においては、第1蓄電部と第2蓄電部の充電状態に応じてDC-DCコンバータを作動させ、高圧の第2蓄電部に蓄積された電力を降圧して低圧の第1蓄電部に充電するように構成されている。
【0003】
特許文献1記載の発明のように、作動する電圧が異なる2つの蓄電部を備え、それらの充電状態に応じてDC-DCコンバータを作動させて、各蓄電部に蓄積されている電力を移し替え、効率的に電力を使用しようとする車両用の電源制御装置が知られている。例えば、第1、第2の蓄電部として、高電圧バッテリと低電圧バッテリを備えた車両用の電源装置や、キャパシタと低電圧バッテリである鉛バッテリを備えた車両用の電源装置が知られている。これらの電源装置において、高電圧の蓄電部に蓄積された電力やモータジェネレータで生成された電力の一部を、エンジンの始動後にDC-DCコンバータで降圧して、鉛バッテリや、各種電気負荷に供給することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、車両の電源を投入した後(イグニッションスイッチを「オン」の位置にした後)、エンジンが始動される前に、車両に搭載された電気機器が比較的長時間使用される場合があり、このような場合には、低電圧バッテリに蓄積された電気エネルギーが不足するという問題がある。また、高電圧バッテリが満充電の状態で車両が運転されると、発電機により回生された電気エネルギーを高電圧バッテリに蓄積することができず、回生された電気エネルギーを有効に活用することができないという問題がある。
【0006】
従って、本発明は、エンジン始動前にも、車載電気機器を十分に使用することができると共に、発電機により回生された電気エネルギーを有効に活用することができる車両用電源制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、車両に搭載される電源の制御装置であって、車両に搭載され、車両の運動エネルギーを回生して発電する発電機と、この発電機によって生成された電力を蓄積する高電圧バッテリと、この高電圧バッテリよりも公称電圧が低い低電圧バッテリと、高電圧バッテリからの出力電圧を降圧するための電圧変換器と、電圧変換器を制御する制御ユニットと、を有し、電圧変換器は、高電圧バッテリからの出力電圧を降圧して低電圧バッテリに充電するように構成され、制御ユニットは、車両の電源投入後、車両に搭載されたエンジンを始動させる前に、電圧変換器を作動させ、低電圧バッテリへの充電を開始させ、制御ユニットは、車両の電源投入後、停車状態において、車両に搭載されたエンジンを始動させる前には、電圧変換器から低電圧バッテリへの出力電流を、所定の最大電流よりも低い所定の第1電流以下に制限し、車両に搭載されたエンジンの始動後においては、最大電流以下の出力電流を許容するように電圧変換器を制御することを特徴としている。
【0008】
このように構成された本発明においては、発電機が車両の運動エネルギーを回生して発電し、生成された電力は高電圧バッテリに蓄積される。電圧変換器は、高電圧バッテリからの出力電圧を降圧し、高電圧バッテリよりも公称電圧が低い低電圧バッテリに充電する。制御ユニットは、車両の電源投入後、車両に搭載されたエンジンを始動させる前に、電圧変換器を作動させ、低電圧バッテリへの充電を開始させる。
【0009】
このように構成された本発明によれば、車両の電源投入後、車両に搭載されたエンジンを始動させる前に、電圧変換器を作動させ、低電圧バッテリへの充電が開始されるので、エンジン始動前に、車載電気機器が比較的長時間使用された場合でも、低電圧バッテリが充電不足に陥るのを抑制することができる。また、上記のように構成された本発明によれば、搭載されたエンジンを始動させる前に、電圧変換器が作動され、高電圧バッテリからの出力電圧を降圧して低電圧バッテリに充電が行われる。このため、高電圧バッテリが満充電にされていた場合においても、エンジン始動時には、高電圧バッテリに充電を行う余地が生まれ、車両の運転中に回生された電力を高電圧バッテリに充電することが可能になり、回生電力を有効に活用することができる。
一般に、電圧変換器は大電流を出力することにより発熱する。このため、電圧変換器は、比較的長時間大電流を出力していると温度が上昇してしまい、電圧変換器を保護するために出力電流を低下させざるを得なくなる。上記のように構成された本発明によれば、車両の電源投入後、エンジン始動前には、電圧変換器からの出力電流が最大電流よりも低い所定の第1電流以下に制限されるので、エンジン始動前に電圧変換器の温度が過度に上昇するのを防止することができる。これにより、エンジンの始動後、車両の運転中に電圧変換器から必要な電流を供給できなくなることを抑制することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、制御ユニットは、車両の電源投入時において、高電圧バッテリの電圧が所定の電圧以下である場合には、電圧変換器による低電圧バッテリへの充電を開始させない。
【0011】
このように構成された本発明によれば、車両の電源投入時において、高電圧バッテリの電圧が所定の電圧以下である場合には、電圧変換器による低電圧バッテリへの充電が開始されないため、低電圧バッテリへ充電を行うことにより、高電圧バッテリが充電不足に陥るのを回避することができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、制御ユニットは、車両の電源投入後、クランキングが実行されている状態においては、高電圧バッテリから低電圧バッテリへの充電が停止されるように電圧変換器を制御する。
【0015】
一般に、クランキング実行時には、始動用のモータを駆動するために比較的大きな電流が必要になる。上記のように構成された本発明によれば、クランキングが実行されている状態においては、高電圧バッテリから低電圧バッテリへの充電が停止されるので、高電圧バッテリから過度の電流が引き出され、過度の電圧降下等が発生するのを抑制することができる。
【0016】
本発明において、好ましくは、さらに、高電圧バッテリと電圧変換器の接続、非接続を切り替えるリレー装置と、車両のボンネットの開状態、閉状態を検出するボンネットセンサと、を有し、制御ユニットは、車両の電源投入後、ボンネットセンサによってボンネットの開状態が検出された場合には、リレー装置を非接続に切り替え、又はリレー装置を非接続に切り替えられたままにする。
【0017】
車両のボンネットが開状態にされた場合には、電源制御装置の制御プログラムの更新等、車両のメンテナンスが実行されることが考えられる。しかしながら、車両の電源が投入され、エンジンが始動される前の状態で、電圧変換器が作動され低電圧バッテリへの充電が行われていると、一部のメンテナンスを実行することができなくなる。上記のように構成された本発明によれば、ボンネットセンサによってボンネットの開状態が検出された場合には、高電圧バッテリと電圧変換器の接続、非接続を切り替えるリレー装置が非接続に切り替えられるので、車両のメンテナンスを妨げるのを防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の車両用電源制御装置によれば、エンジン始動前にも、車載電気機器を十分に使用することができると共に、発電機により回生された電気エネルギーを有効に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態による車両用電源制御装置が適用されたハイブリッド車両の全体構成を概略的に示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態による車両用電源制御装置の電気的構成を概略的に示すブロック図である。
【
図3A】本発明の実施形態による車両用電源制御装置の作用を示すフローチャートである。
【
図3B】本発明の実施形態による車両用電源制御装置の作用を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の実施形態による車両用電源制御装置の作用を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態による車両用電源制御装置を説明する。
【0021】
[装置構成]
まず、本発明の実施形態による車両用電源制御装置に関する装置構成について説明する。
図1は、本発明の実施形態による車両用電源制御装置が適用されたハイブリッド車両の全体構成を概略的に示すブロック図である。
図1に示すように、ハイブリッド車両1は、主に、エンジン11と、ギヤ駆動式スタータ12と、ISG(Integrated Starter Generator)13と、リチウムイオン電池14と、電圧変換器であるDC-DCコンバータ17と、鉛蓄電池19と、高電圧電気負荷20と、低電圧電気負荷21と、を有する。以下では、リチウムイオン電池14の電圧(公称電圧)が鉛蓄電池19の電圧(公称電圧)よりも高いことから、リチウムイオン電池14を適宜「高電圧バッテリ14」と呼び、鉛蓄電池19を適宜「低電圧バッテリ19」と呼ぶ。
【0022】
エンジン11は、ハイブリッド車両1の駆動力を発生する内燃機関(ガソリンエンジンやディーゼルエンジン)である。エンジン11の駆動力は、出力軸9、トランスミッション2、減速機3及び駆動軸4を介して、車輪5に伝達される。エンジン11の出力軸9には、ギヤを介してギヤ駆動式スタータ12が連結されている。ギヤ駆動式スタータ12は、ユーザによりイグニッションスイッチ22(
図2)がオンにされると、低電圧バッテリ19から供給される電力を用いて、エンジン11を始動する。また、ハイブリッド車両1は、ドライバによるブレーキペダルの操作に応じた制動力を車両1に付与するためのブレーキシステム7を有する。このブレーキシステム7は、例えば電動ブレーキにより構成される。
【0023】
ISG13は、エンジン11により駆動されて発電する発電機能と、ハイブリッド車両1の駆動力を発生する電動機能とを備えるモータジェネレータである。ISG13は、ベルト8を介してエンジン11の出力軸9に連結されている。また、ISG13は、抵抗器6a及びスイッチ素子6b、6cを介して、高電圧バッテリ14に電気的に接続されるようになっている。これらのスイッチ素子6b、6cは、高電圧バッテリ14とDC-DCコンバータ17の接続、非接続を切り替えるリレー装置として機能する。ISG13と高電圧バッテリ14とを最初に接続する際には、抵抗器6aが設けられた側のスイッチ素子6bをオンにして、突入電流による電子部品などの破損を防止している。そして、この後にスイッチ素子6cをオンにして、ISG13と高電圧バッテリ14との接続を維持するようになっている。
【0024】
また、ISG13は、発電機能により動作する際は、エンジン11の出力軸9と連動して回転するロータを磁界中で回転させることにより発電を行う発電機として機能する。ISG13は、整流器(図示省略)を内蔵しており、この整流器を用いて、発電した交流電力を直流電力に変換する。ISG13の発電により生成された電力は、高電圧バッテリ14に供給されて充電されたり、高電圧電気負荷20に供給されたりする。他方で、ISG13は、電動機能により動作する際は、高電圧バッテリ14に充電された電力を用いて、ベルト8を介してエンジン11の出力軸9を駆動する。なお、ISG13における発電機能による動作と電動機能による動作との切り替え時などにおいてベルト8のテンションを調整するために、振り子式可変張力テンショナー(デカップリング・オルタネータ・テンショナー)をベルト8に適用するのがよい。
【0025】
高電圧バッテリ14は、直列接続された複数のリチウムイオン電池を含み、低電圧バッテリ19は、直列接続された複数の鉛蓄電池を含む。例えば、高電圧バッテリ14の公称電圧はDC24Vであり、低電圧バッテリ19の公称電圧はDC12Vである。これら高電圧バッテリ14及び低電圧バッテリ19は、化学反応によって電気エネルギーを蓄えるものであるため、急速な充放電には不向きであるが、充電容量を確保し易いため、比較的多量の電力を蓄えることができるという特性を有する。
【0026】
DC-DCコンバータ17は、高電圧バッテリ14と低電圧バッテリ19との間に設けられている。DC-DCコンバータ17は、例えば、内蔵するスイッチング素子のオンオフスイッチングによって入力電圧を変化させて出力する。具体的には、DC-DCコンバータ17は、高電圧バッテリ14の出力電圧を降圧して低電圧バッテリ19側へ供給し、低電圧バッテリ19に充電する。例えば、DC-DCコンバータ17は、高電圧バッテリ14側から供給されるDC24V程度の電圧をDC12V程度に降圧して低電圧バッテリ19側へと出力する。また、DC-DCコンバータ17の出力側には、DC-DCコンバータ17からの出力電流を検出するための電流センサであるコンバータ出力電流センサ18が接続されている。このコンバータ出力電流センサ18には、DC-DCコンバータ17から低電圧バッテリ19、低電圧電気負荷21等に供給される電流が流れ、これらの電流の合計値を測定することができる。
【0027】
高電圧電気負荷20は、例えばDC24V程度の電圧で動作する電気負荷であり、低電圧電気負荷21は、高電圧電気負荷20よりも低い、例えばDC12V程度の電圧で動作する電気負荷である。高電圧電気負荷20には、ISG13の発電により生成された電力及び高電圧バッテリ14に充電された電力の少なくともいずれかが供給される。また、低電圧電気負荷21には、ISG13の発電により生成されて高電圧バッテリ14に充電され、DC-DCコンバータ17により降圧された電力、及び低電圧バッテリ19に充電された電力の少なくともいずれかが供給される。1つの例では、高電圧電気負荷20は、ヒータ(シートヒータなど)などを含み、低電圧電気負荷21は、電動式パワーステアリング機構(EAPS)やエアコンやオーディオ機器などを含む。
【0028】
次に、
図2を参照して、本発明の実施形態による車両用電源制御装置の電気的構成を説明する。
図2は、本発明の実施形態による車両用電源制御装置の電気的構成を概略的に示すブロック図である。
【0029】
本実施形態においては、ハイブリッド車両1は、
図2に示すような制御ユニットである制御器10によって制御される。この制御器10は、1つ以上のプロセッサ、当該プロセッサ上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及びプログラムや各種のデータを記憶するためのROMやRAMの如き内部メモリを備えるコンピュータにより構成される。
【0030】
具体的には、
図2に示すように、制御器10は、主に、イグニッションスイッチ22、コンバータ入力電圧センサ30、バッテリ電圧センサ34、バッテリ温度センサ35、ISG温度センサ36、コンバータ出力電流センサ18、及びボンネットセンサ38のそれぞれによって検出されたパラメータに対応する検出信号が入力される。イグニッションスイッチ22は、イグニッションスイッチ22の状態を制御器10に出力する。コンバータ入力電圧センサ30は、DC-DCコンバータ17の入力電圧を検出する。バッテリ電圧センサ34は、高電圧バッテリ14、及び低電圧バッテリ19の端子電圧を検出する。バッテリ温度センサ35は、低電圧バッテリ19の温度を検出する。ISG温度センサ36は、ISG13の温度を検出する。
【0031】
コンバータ出力電流センサ18は、DC-DCコンバータ17から出力される電流を検出する。このコンバータ出力電流センサ18には、DC-DCコンバータ17から低電圧バッテリ19、低電圧電気負荷21等に供給される電流が流れ、これらの電流の合計値を測定することができる。ボンネットセンサ38は、車両1のボンネットが、開状態にあるか、閉状態にあるかを示す検出信号を出力するように構成されている。
【0032】
また、制御器10は、上述した各センサ18、30、33、34、35、36からの検出信号に基づき、ISG13、DC-DCコンバータ17、ギヤ駆動式スタータ12、スイッチ素子6b、6c、高電圧電気負荷20及び低電圧電気負荷21のそれぞれに対して制御信号を出力する。こうして、制御器10は、ISG13の発電動作及び電動動作と、DC-DCコンバータ17による降圧動作と、高電圧電気負荷20、低電圧電気負荷21及びギヤ駆動式スタータ12の駆動及び停止と、スイッチ素子6b、6cのオンオフと、を制御する。
【0033】
典型的には、制御器10は、燃費の改善などを目的としてハイブリッド車両1の運転状態に応じて規定された複数の制御を、少なくともISG13を用いて実行するよう構成されている。この複数の制御は、ハイブリッド車両1が加速するときに、ISG13から動力を発生させてエンジン11による加速をアシストするための加速アシスト制御と、ハイブリッド車両1が減速するときに、ISG13を回生発電させる減速回生制御と、所定条件が成立したときに(例えばISG13の発電によるエンジン11の負荷の増加を抑制すべき状況など)、高電圧電気負荷20や低電圧電気負荷21に電力を供給するためのISG13の発電を禁止する無発電制御と、ハイブリッド車両1が停止したときにエンジン11を自動停止させ、この後にハイブリッド車両1が発進するときにISG13から動力を発生させてエンジン11を再始動させるアイドリングストップ制御と、を含む。
【0034】
更に、制御器10は、高電圧電気負荷20及び低電圧電気負荷21のそれぞれを動作させるための制御を行う。具体的には、制御器10は、高電圧電気負荷20を動作させる場合には、ISG13の発電により生成された電力及び高電圧バッテリ14に充電された電力の少なくともいずれかを高電圧電気負荷20に供給するための制御を行う。また、制御器10は、低電圧電気負荷21を動作させる場合には、高電圧バッテリ14に充電され、DC-DCコンバータ17によって降圧された電力、及び低電圧バッテリ19に充電された電力の少なくともいずれかを低電圧電気負荷21に供給するための制御を行う。
【0035】
なお、本発明の実施形態による「車両用電源制御装置」は、主に、「発電機」としてのISG13と、高電圧バッテリ14と、低電圧バッテリ19と、「電圧変換器」としてのDC-DCコンバータ17と、「制御ユニット」としての制御器10と、によって構成される。
【0036】
次に、
図3及び
図4を参照して、本発明の実施形態による車両用電源制御装置の作用を説明する。
図3A及び
図3Bは、本発明の実施形態による車両用電源制御装置の作用を示すフローチャートである。
図4は、本発明の実施形態による車両用電源制御装置の作用を示すタイムチャートである。
【0037】
図3A及び
図3Bに示すフローチャートは、ハイブリッド車両1の電源投入直後に制御器10において実行されるDC-DCコンバータ17の制御処理を示している。
図4のタイムチャートは、ハイブリッド車両1の電源投入直後における車両用電源制御装置の作用の一例を示しており、上段から順に、イグニッションスイッチ22の状態、ギヤ駆動式スタータ12の状態、エンジン回転数、低電圧バッテリ19の目標電圧、DC-DCコンバータ17への指示電圧、DC-DCコンバータ17の出力電流、DC-DCコンバータ17の出力指示を示している。
【0038】
まず、ハイブリッド車両1の電源が投入されると、制御器10により
図3A及び
図3Bに示すフローチャートが実行される。
図4に一例を示すタイムチャートでは、時刻t
1においてハイブリッド車両1の電源が投入されている。なお、本明細書において、「車両の電源投入」とは、車両に搭載された電気機器(高電圧電気負荷20及び/又は低電圧電気負荷21)を使用可能な状態にすることを意味している。本実施形態においては、キー操作によりイグニッションスイッチ22をオンにすることができ、キーを「Lock」の位置から「ACC(アクセサリ電源オン)」の位置、又は「ON(イグニッション電源オン)」の位置まで回動させることにより、車両の電源が投入される。また、プッシュスタートボタンタイプの車両では、スタートボタンを1回(アクセサリ電源オン)又はスタートボタンを2回(イグニッション電源オン)押すことにより、車両の電源が投入される。
【0039】
図3Aに示すフローチャートのステップS1においては、スイッチ素子6cがcloseの位置に切り替えられる。即ち、制御器10は、スイッチ素子6cに制御信号を送り、リレー装置であるスイッチ素子6cを閉位置に切り替え、高電圧バッテリ14と発電機であるISG13、高電圧バッテリ14とDC-DCコンバータ17が夫々接続された状態にする。
【0040】
次に、ステップS2においては、ボンネットセンサ38から送信された検出信号に基づいて、ハイブリッド車両1のボンネット(図示せず)が開状態にあるか、閉状態にあるかが判断される。ボンネットが閉じられている場合には、ステップS3に進み、ボンネットが開けられている場合には、ステップS15に進む。
【0041】
ステップS15においては、スイッチ素子6cが再び開位置に切り替えられ、高電圧バッテリ14とDC-DCコンバータ17が切り離された状態として、
図3A及び
図3Bに示すフローチャートの処理を終了する。即ち、ボンネットが開けられている状態では、ハイブリッド車両1のメンテナンスが行われることが想定される。しかしながら、例えば、高電圧バッテリ14とDC-DCコンバータ17が接続状態にされ、制御器10によって制御されたDC-DCコンバータ17を介して低電圧バッテリ19に充電を行っている状態では、制御器10の制御プログラムのアップデート作業等を行うことができない。このため、ボンネットが開けられている場合には、制御器10はスイッチ素子6cを開位置に切り替え、様々なメンテナンスが可能な状態とする。
【0042】
一方、
図4に示すタイムチャートでは、ボンネットが開けられていないので、フローチャートにおける処理はステップS3に進み、ステップS3においては、高電圧バッテリ14の充電量(SOC:State of Charge)が判断される。具体的には、制御器10は、バッテリ電圧センサ34によって検出された高電圧バッテリ14の端子電圧に基づいて、高電圧バッテリ14の充電量を推定し、この充電量が50%以上である場合にはステップS4に進む。一方、充電量が50%未満である場合にはステップS15に進み、ボンネットが開いている場合と同様に、スイッチ素子6cを開位置に切り替えて、
図3A及び
図3Bに示すフローチャートの処理を終了する。即ち、高電圧バッテリ14の充電量が50%未満である場合には、高電圧バッテリ14の出力電圧を降圧して、低電圧バッテリ19に充電を行うと、高電圧バッテリ14の蓄電量が過度に低下してしまう虞があるため、ステップS4以下の処理は実行されない。
【0043】
次に、
図4に示すタイムチャートでは充電量が50%以上であるため、ステップS4に進み、そこで、高電圧バッテリ14の出力電圧の降圧を開始させる指示信号が、制御器10からDC-DCコンバータ17に送信される。即ち、
図4のタイムチャートの時刻t
1において、DC-DCコンバータ17の出力指示が、オフからオンに切り替えられる。
【0044】
さらに、ステップS5においては、DC-DCコンバータ17から低電圧バッテリ19に出力される目標出力電圧が14[V]に設定される。即ち、DC-DCコンバータ17は、制御器10の指示信号に基づいて、高電圧バッテリ14から出力される電力の電圧を低下させた上で、低電圧バッテリ19に電流を流入させ、低電圧バッテリ19に充電を行う。この際、DC-DCコンバータ17から低電圧バッテリ19に出力される電圧が低いと、低電圧電気負荷21に対して電力が供給されるものの、実質的に低電圧バッテリ19への充電電流は流れず、低電圧バッテリ19への充電は行われない。
【0045】
本実施形態においては、公称電圧12[V]の低電圧バッテリ19に対し、DC-DCコンバータ17から14[V]の電圧を出力することにより、低電圧バッテリ19へ充電電流を流し、低電圧バッテリ19に充電を行う。また、
図4のタイムチャートにおいては、時刻t
1において電源が投入されると、DC-DCコンバータ17の指示電圧が引き上げられると共に、低電圧バッテリ19の目標端子電圧も引き上げられ、これに伴いDC-DCコンバータ17からの出力電流も上昇している。
【0046】
このように、高電圧バッテリ14の出力を降圧して、低電圧バッテリ19に充電を行うことにより、低電圧バッテリ19の蓄電量が増加する一方、高電圧バッテリ14の蓄電量が低下する。このため、ハイブリッド車両1の運転中にISG13により大きな電力が回生された場合でも、高電圧バッテリ14には、この電力を受け入れる余地があり、回生された電力を高電圧バッテリ14に有効に蓄積することができる。一方、低電圧バッテリ19として鉛バッテリ等が使用されている場合には自然放電が発生するため、車両の電源を投入した時点では、通常、低電圧バッテリ19は満充電状態ではなく、高電圧バッテリ14からの電力を蓄積することができる。
【0047】
次いで、
図3AのステップS6においては、ボンネットセンサ38から送信された検出信号に基づいて、ハイブリッド車両1のボンネット(図示せず)が開状態にあるか、閉状態にあるかが再び判断される。ボンネットが開けられている場合においては、ステップS16に進み、DC-DCコンバータ17による降圧が停止され、
図3A及び
図3Bに示すフローチャートの処理を終了する。即ち、DC-DCコンバータ17による降圧が開始された後であっても、ボンネットが開けられた場合には、DC-DCコンバータ17による降圧が停止され、ハイブリッド車両1のメンテナンスが可能な状態に移行する。
【0048】
また、本実施形態においては、DC-DCコンバータ17による降圧中に、ボンネットが開けられ、降圧が中止された場合には、その後、ボンネットが閉じられた後も降圧が再開されることはない。この場合においては、エンジン11が始動された後で、DC-DCコンバータ17による降圧が再開される。
図4に示すタイムチャートにおいては、時刻t
1において電源が投入された後、ボンネットは開けられていないため、DC-DCコンバータ17による降圧が継続される。
【0049】
さらに、ステップS7においては、高電圧バッテリ14の充電量が判断される。具体的には、制御器10は、高電圧バッテリ14の端子電圧に基づいて、高電圧バッテリ14の充電量を推定し、この充電量が50%以上である場合にはステップS8に進む。一方、充電量が50%未満である場合にはステップS16に進み、ボンネットが開いている場合と同様に、DC-DCコンバータ17による降圧が停止され、
図3A及び
図3Bに示すフローチャートの処理を終了する。即ち、高電圧バッテリ14から低電圧バッテリ19への充電が開始された後であっても、高電圧バッテリ14の充電量が50%未満に低下した場合には、低電圧バッテリ19への充電を停止する。これにより、高電圧バッテリ14の蓄電量の過度の低下が防止される。
図4に示すタイムチャートにおいては、時刻t
1において低電圧バッテリ19への充電が開始された後、高電圧バッテリ14の充電量が50%未満に低下していないため、DC-DCコンバータ17による降圧が継続される。
【0050】
次いで、
図3AのステップS8においては、エンジン11のスタータスイッチがオンにされたか否かが判断され、オンにされた場合には
図3BのステップS9に進み、オンにされていない場合にはステップS6に戻る。即ち、
図3Aのフローチャートにおいては、DC-DCコンバータ17による降圧が開始された後、スタータスイッチがオンにされるまで、ステップS6→S7→S8→S6の処理が繰り返される。本実施形態においては、車両のイグニッションスイッチ22を「ON」の位置から「START」の位置に回動させることにより、エンジン11のスタータスイッチがオンにされる。
【0051】
図4の時刻t
1において低電圧バッテリ19への充電が開始された後、DC-DCコンバータ17を介して、低電圧バッテリ19への充電電流、及び低電圧電気負荷21に供給される電流が出力される。ここで、低電圧バッテリ19に蓄積されている蓄電量が少ない場合や、消費電力の大きい低電圧電気負荷21が作動されている場合には、DC-DCコンバータ17からの出力電流が大きくなる。しかしながら、DC-DCコンバータ17に対して大きな出力電流が要求された場合でも、DC-DCコンバータ17からの出力電流は、所定の第1電流以下に抑制される。なお、DC-DCコンバータ17からの出力電流は、エンジン11の運転中においても所定の最大電流以下に抑えられているが、エンジン11が始動される前に設定される上記の第1電流は、最大電流よりも小さい電流に設定されている。
【0052】
即ち、DC-DCコンバータ17から大きな出力電流を取り出すと、DC-DCコンバータ17の温度が上昇するが、継続的に大きな電流が取り出され、所定温度まで上昇すると、DC-DCコンバータ17の回路部品を保護するために電流の出力が停止される。このため、エンジン11の始動前に大きな電流を取り出し、DC-DCコンバータ17の温度を大きく上昇させてしまうと、エンジン11の運転中にDC-DCコンバータ17から必要な電力が取り出せなくなる場合がある。これを回避するために、エンジン11が始動される前においては、最大電流よりも小さい第1電流に、出力電流を抑制している。本実施形態においては、第1電流は20[A]に設定されており、出力電流が20[A]に到達すると、DC-DCコンバータ17の出力電圧を低下させ、低電圧バッテリ19への充電電流を減少させている。
【0053】
一方、
図4に示すタイムチャートにおいては、時刻t
1において低電圧バッテリ19への充電が開始された後、ステップS6→S7→S8→S6の処理が繰り返され、時刻t
2においてスタータスイッチがオンにされる。
【0054】
スタータスイッチがオンにされると、フローチャートにおける処理は
図3BのステップS9に進み、ステップS9においては、DC-DCコンバータ17による降圧が停止される。即ち、制御器10は、DC-DCコンバータ17に制御信号を送信し、DC-DCコンバータ17による降圧を停止させる。
【0055】
次いで、ステップS10においては、DC-DCコンバータ17の停止処理が完了したか否かが判断される。即ち、制御器10から降圧を停止させる制御信号が入力されたDC-DCコンバータ17は、停止処理が完了すると、停止処理が完了した旨の信号を制御器10に戻す。制御器10は、停止処理が完了した旨の信号をDC-DCコンバータ17から受信すると、DC-DCコンバータ17の停止処理が完了したと、判断する。停止処理が完了した場合にはステップS12に進み、停止処理が完了していない場合にはステップS12に進む。
【0056】
ステップS11においては、ステップS9において、DC-DCコンバータ17に制御信号を送信した後、所定時間経過したか否かが判断され、所定時間経過した場合にはステップS12に進み、経過していない場合にはステップS10に戻る。この処理により、DC-DCコンバータ17から停止処理が完了した旨の信号が入力されるか、ステップS9において制御信号を送信した後、所定時間経過すると、ステップS12の処理が実行される。これにより、何らかの原因で停止処理が完了した旨の信号が受信されなかった場合にも、確実にステップS12以下の処理を実行することができる。
【0057】
次に、ステップS12においては、ギヤ駆動式スタータ12が駆動され、エンジン11のクランキングが実行される。
図4のタイムチャートにおいては、時刻t
2において、イグニッションスイッチ22が「START」の位置に回動され(スタータスイッチ「ON」にされ)ている。これに伴い、DC-DCコンバータ17への出力指示が「OFF」に切り替えられ、DC-DCコンバータ17の出力電流がゼロにされる。また、ギヤ駆動式スタータ12が駆動されることにより、エンジン11の出力軸9の回転数が上昇する。
【0058】
さらに、ステップS13においてエンジン11が始動すると、次いで、ステップS14において、DC-DCコンバータ17による降圧が再開され、
図3A及び
図3Bに示すフローチャートの処理を終了する。
図4のタイムチャートでは、時刻t
2においてギヤ駆動式スタータ12が駆動された後、時刻t
3においてエンジンが始動される。これに伴い、DC-DCコンバータ17への出力指示が「ON」に切り替えられ、DC-DCコンバータ17からの電流出力が再開される。なお、エンジン11の始動後においては、高電圧バッテリ14、低電圧バッテリ19に要求される出力電流や、これらのバッテリの蓄電量等に基づいて、制御器10により、DC-DCコンバータ17からの出力電流が設定される。また、エンジン11の始動後においては、DC-DCコンバータ17からの出力電流は、第1電流(20[A])よりも大きく設定された所定の最大電流以下の電流に制限される。
【0059】
なお、
図4のタイムチャートでは、時刻t
2~t
3においてクランキングが行われている間、DC-DCコンバータ17への出力指示が「OFF」にされている一方、低電圧バッテリ目標電圧、及びDC-DCコンバータ指示電圧は、クランキングが開始される前の値のままに維持されている。このように、本実施形態の車両用電源制御装置においては、DC-DCコンバータ17への出力指示が「OFF」にされていれば、目標電圧や指示電圧に関わらず、DC-DCコンバータ17からの出力電流はゼロにされる。また、これらの低電圧バッテリ目標電圧、及びDC-DCコンバータ指示電圧についても、DC-DCコンバータ17への出力指示に合わせて、低下させ、或いはゼロにするように、本発明を構成することもできる。或いは、DC-DCコンバータ17への出力指示を「ON」に維持したまま、低電圧バッテリ目標電圧、及びDC-DCコンバータ指示電圧を低下させ、又はゼロにすることにより、低電圧バッテリ19への充電が停止されるように本発明を構成することもできる。
【0060】
本発明の実施形態の車両用電源制御装置によれば、車両1の電源投入後(
図4の時刻t
1の後)、車両1に搭載されたエンジン11を始動させる前に(
図4の時刻t
3の前)、DC-DCコンバータ17を作動させ、低電圧バッテリ19への充電が開始されるので、エンジン始動前に、低電圧電気負荷21が比較的長時間使用された場合でも、低電圧バッテリ19が充電不足に陥るのを抑制することができる。また、本実施形態の車両用電源制御装置によれば、搭載されたエンジン11を始動させる前に、DC-DCコンバータ17が作動され、高電圧バッテリ14からの出力電圧を降圧して低電圧バッテリ19に充電が行われる。このため、高電圧バッテリ14が満充電にされていた場合においても、エンジン始動時には、高電圧バッテリ14に充電を行う余地が生まれ、車両1の運転中に回生された電力を高電圧バッテリ14に充電することが可能になり、回生電力を有効に活用することができる。
【0061】
また、本実施形態の車両用電源制御装置によれば、車両1の電源投入時において、高電圧バッテリ14の電圧が所定の電圧以下である場合には、DC-DCコンバータ17による低電圧バッテリ19への充電が開始されない(
図3AのステップS3→S15)ため、低電圧バッテリ19へ充電を行うことにより、高電圧バッテリ14が充電不足に陥るのを回避することができる。
【0062】
さらに、本実施形態の車両用電源制御装置によれば、車両1の電源投入後、エンジン始動前には、DC-DCコンバータ17からの出力電流が最大電流よりも低い所定の第1電流以下に制限されるので、エンジン始動前にDC-DCコンバータ17の温度が過度に上昇するのを防止することができる。これにより、エンジン11の始動後、車両1の運転中にDC-DCコンバータ17から必要な電流を供給できなくなることを抑制することができる。
【0063】
また、本実施形態の車両用電源制御装置によれば、クランキングが実行されている状態(
図4の時刻t
2~t
3)においては、高電圧バッテリ14から低電圧バッテリ19への充電が停止されるので、高電圧バッテリ14から過度の電流が引き出され、過度の電圧降下等が発生するのを抑制することができる。
【0064】
さらに、本実施形態の車両用電源制御装置によれば、ボンネットセンサ38によってボンネットの開状態が検出された場合(
図3AのステップS2→S15)には、高電圧バッテリ14とDC-DCコンバータ17の接続、非接続を切り替えるスイッチ素子6cが非接続に切り替えられる(
図3AのステップS15)ので、車両1のメンテナンスを妨げるのを防止することができる。
【0065】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した実施形態においては、ハイブリッド車両に本発明の車両用電源制御装置が適用されていたが、ハイブリッド車両以外の車両に本発明を適用することもできる。
【符号の説明】
【0066】
1 ハイブリッド車両
2 トランスミッション
3 減速機
4 駆動軸
5 車輪
6a 抵抗器
6b、6c スイッチ素子(リレー装置)
7 ブレーキシステム
8 ベルト
9 出力軸
10 制御器(制御ユニット)
11 エンジン
12 ギヤ駆動式スタータ
13 ISG(発電機)
14 高電圧バッテリ
17 DC-DCコンバータ(電圧変換器)
18 コンバータ出力電流センサ(電流センサ)
19 低電圧バッテリ
20 高電圧電気負荷
21 低電圧電気負荷
22 イグニッションスイッチ
30 コンバータ入力電圧センサ
34 バッテリ電圧センサ
35 バッテリ温度センサ
36 ISG温度センサ
38 ボンネットセンサ