(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-25
(45)【発行日】2023-11-02
(54)【発明の名称】磁気結合インダクタ
(51)【国際特許分類】
H01F 17/04 20060101AFI20231026BHJP
H01F 37/00 20060101ALI20231026BHJP
H01F 27/30 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
H01F17/04 F
H01F37/00 A
H01F27/30 101C
(21)【出願番号】P 2020026615
(22)【出願日】2020-02-19
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000107804
【氏名又は名称】スミダコーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097984
【氏名又は名称】川野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(72)【発明者】
【氏名】山口 喬之
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-44811(JP,A)
【文献】特開2007-12686(JP,A)
【文献】特開2008-85004(JP,A)
【文献】特開2021-19030(JP,A)
【文献】特開2020-38967(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/75231(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/290458(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00-21/12
H01F 27/00
H01F 27/02
H01F 27/06
H01F 27/08
H01F 27/23-27/26
H01F 27/28-27/29
H01F 27/30-27/32
H01F 27/36
H01F 27/42
H01F 30/00-38/12
H01F 38/16
H01F 38/42
H01F 41/12
H02M 3/00- 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中脚部と、前記中脚部の少なくとも両側に位置する外脚部と、前記中脚部および前記外脚部を接続する接続部と、を各々有する第1の磁気コアおよび第2の磁気コアと、
前記第1の磁気コアおよび前記第2の磁気コアの前記中脚部が挿通され、これら中脚部各々の外側に配されたボビンと、
前記ボビンの各々に巻回された第1のコイル巻線および第2のコイル巻線と、
2つの前記ボビンに挟持されつつ、前記中脚部が嵌挿される環状の第3の磁気コアとを備え、
前記第1および第2の磁気コアは、対応する脚部同士が互いに突き合わされるとともに、これら対応する脚部同士の各間にはギャップが設けられ、
前記第1のコイル巻線と前記第2のコイル巻線を通る各電流により生成された前記第3の磁気コアを通る磁束は互いに同一方向とされ、
前記第3の磁気コアの厚みをa、前記第1および第2の磁気コアの外脚部同士のギャップ量をbとしたとき、
a≧b (1)
の条件が成立するように構成されていることを特徴とする磁気結合インダクタ。
【請求項2】
前記第3の磁気コアの厚みをa、前記第1および第2の磁気コアの前記接続部の厚みをcとしたとき、
a≧c (2)
の条件が成立するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気結合インダクタ。
【請求項3】
前記第3の磁気コアの厚み方向中間部を、2つの前記中脚部の先端面間の中間位置に固定する、位置決め固定部材を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の磁気結合インダクタ。
【請求項4】
前記位置決め固定部材は、平板状の基部の中央に上方に延びる縦片が立設され、該基部の内側辺の両側にはスリット形状の係合溝が形成され、該係合溝には前記ボビンの2つの内鍔部の延長部が係合され得るように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の磁気結合インダクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1対のPQコア(Eコア等を含む)の間に環状コアを挟んで、2イン1(2in1)構造の結合インダクタを備える構成とされた磁気結合インダクタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、下記特許文献1に開示されるような、実質的に2個の独立した高圧トランスとして機能する2イン1構造を実現するPFC磁気結合インダクタが提案され、製品外形寸法を小型化することが可能とされている。
また、下記特許文献2では、1対のPQコアの間にリングコアを挟むように構成された変圧器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5062439号
【文献】特公平4-14487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの特許文献の態様では、1対のPQコアと、それらの間に挟む磁気コアの組み合わせの構成によっては、合成された磁束を通過させるためにコアの断面積が大きくなり磁気結合インダクタが大型化し、小型化が十分に達成できない虞がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、実質的に2個の独立した磁気結合インダクタとして機能する2イン1構造を有し、各コアの組み合わせに係る配置の条件の最適化を図ることによって、外形寸法のさらなる小型化を図り得る磁気結合インダクタを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の磁気結合インダクタは、
中脚部と、前記中脚部の少なくとも両側に位置する外脚部と、前記中脚部および前記外脚部を接続する接続部と、を各々有する第1の磁気コアおよび第2の磁気コアと、
前記第1の磁気コアおよび前記第2の磁気コアの前記中脚部が挿通され、これら中脚部各々の外側に配されたボビンと、
前記ボビンの各々に巻回された第1のコイル巻線および第2のコイル巻線と、
2つの前記ボビンに挟持されつつ、前記中脚部が嵌挿される環状の第3の磁気コアとを備え、
前記第1および第2の磁気コアは、対応する脚部同士が互いに突き合わされるとともに、これら対応する脚部同士の各間にはギャップが設けられ、
前記第1のコイル巻線と前記第2のコイル巻線を通る各電流により生成された前記第3の磁気コアを通る磁束は互いに同一方向とされ、
前記第3の磁気コアの厚みをa、前記第1および第2の磁気コアの外脚部同士のギャップ量をbとしたとき、
a≧b (1)
の条件が成立するように構成されていることを特徴とするものである。
【0007】
ここで、前記第3の磁気コアの厚みをa、前記第1および第2の磁気コアの前記接続部の厚みをcとしたとき、
a≧c (2)
の条件が成立するように構成されることが好ましい。
【0008】
また、前記第3の磁気コアの厚み方向中間部を、2つの前記中脚部の先端面間の中間位置に固定する、位置決め固定部材を備えることが好ましい。
【0009】
また、前記位置決め固定部材は、平板状の基部の中央に上方に延びる縦片が立設され、該基部の内側辺の両側にはスリット形状の係合溝が形成され、該係合溝には前記ボビンの2つの内鍔部の延長部が係合され得るように構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る磁気結合インダクタによれば、複数コアの組合せからなる磁気コア組立体の外形寸法を削減しつつ、実質的に2個の独立した磁気結合インダクタとして機能する2イン1構造を実現することが可能である。また、各コアの組み合わせに係る配置の条件の最適化を図ることによって、外形寸法のさらなる小型化を図ることができ、実装スペースも削減可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る磁気結合インダクタの全体斜視図である。
【
図3】磁気ループを説明するためのコア部分の断面図である。
【
図4】コア構造の配置条件を説明する部分平面図である。
【
図5】コア構造の他の配置条件を説明する部分平面図である。
【
図6】第1の実施形態のコア構造の寸法関係を説明するための断面図である。
【
図7a】他の実施形態を示すコア部分の正面図である。
【
図7c】
図7aの一方のPQコアを除去して示す斜視図である。
【
図8】2つのボビンと位置決め固定部材の組み合わせを示す斜視図である。
【
図9】2つのボビンの組み合わせ構造を示す斜視図である。
【
図10】一方のPQコアと位置決め固定部材の組み合わせ構造を示す斜視図である。
【
図12a】磁気結合インダクタを上方から見た全体斜視図である。
【
図12b】ボビンにコイルを巻回する工程の斜視図である。
【
図12c】位置決め固定部材を固定する工程の斜視図である。
【
図12d】コア部材とボビンを組み合わせる工程の部分斜視図である。
【
図12e】最終的な接着工程を説明する底面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る磁気結合インダクタの構成について、図面に基づいて説明する。
図1は製品としての磁気結合インダクタ100の外観斜視図であり、
図2は分解斜視図である。
【0013】
この実施形態の磁気結合インダクタ100は、PQコアによる第1および第2の磁気コア1,2と、環状コア(リングコア)による第3の磁気コア3と、2つのボビン4,5と、第1および第2のコイル巻線6,7と、2つの位置決め固定部材8,8と、両側で8本の端子ピン9と、外周に巻装した固定用のテープ10とを備えている。
【0014】
第1の磁気コア1および第2の磁気コア2の一対のPQコアは、例えばフェライトコア製で同一外形寸法であり、中脚部11,21と、中脚部11,21の両側に位置する外脚部12,22と、中脚部11,21と外脚部12,22とを接続する平板状の接続部13,23とをそれぞれ有し、前記第1および第2の磁気コア1,2は対向配置される。
【0015】
前記中脚部11,21は円柱状であり、長さは対向する接続部13,23の間隔距離の略1/2であり、外脚部12,22は内側面が円弧状で外側面が平面状の板形状である。
【0016】
第3の磁気コア3は、例えばフェライトコア製であって、断面矩形の円環状(円板状)である。
【0017】
図8に示す2つのボビン4,5は、絶縁樹脂製であって、両ボビン4,5は対称形状であり、
図9にも示すように一体に組み合わされるものであって、それぞれ端部に端子台41,51を有し、各端子台41,51には4本の端子ピン9,9がそれぞれ設けられている。
【0018】
前記端子台41,51の上に筒部42,52が軸方向に延びて配置されている。筒部42,52の端子台41,51側の一端部には円板状の外鍔部43,53が、反対側の端部には円板状の内鍔部44,54が設けられ、この内鍔部44,54の下方に延びる延長部44a,54aには後述の位置決め規制部材8,8が係合され、下端部には突起44b,54bが形成されている(
図9を参照)。また、前記ボビン4,5の外鍔部43,53の上下端には蝶型突起45,55が設けられ、第1および第2の磁気コア1,2の接続部13,23における上下傾斜面に当接するように構成されている。
【0019】
このように、ボビン4,5の外鍔部43,53の上下端に、蝶型突起45,55が設けられたことにより、第1および第2のコイル巻線6,7(引き出し線を含む)と、第1および第2の磁気コア1,2との絶縁性が向上し、各磁気コア1,2,3と各ボビン4,5とを互いに安定して固定することができる。
【0020】
前記ボビン4,5の筒部42,52の端部は、係合用に対称凹凸形状に設けられ一方のボビン4の凹部42bに他方のボビン5の凸部52a(
図8参照)が係合し、両者の筒部42,52の軸心が一致するようにしている。
【0021】
前記ボビン4,5の連続した筒部42,52には、一端側から前記第1の磁気コア1の中脚部11が、他端側から前記第2の磁気コア2の中脚部21がそれぞれ挿通されることにより、これら中脚部11,21の各々の外側に前記ボビン4,5が配された形態となる。
【0022】
そして、前記第1および第2の磁気コア1,2は、対応する中脚部11,21および両側の外脚部12,22の同士が互いに突き合わされるとともに、これら対応する脚部同士の各間にはギャップG1,G2が設けられ(
図3を参照)、このギャップG1,G2の大きさb(基本的に同じ寸法)は後述の位置決め固定部材8(いわゆるスペーサー)によって規定される。
【0023】
前記ボビン4,5の構成において、一方のボビン4の外鍔部43と内鍔部44の間に第1のコイル巻線6が巻回されるとともに、他方のボビン5の外鍔部53と内鍔部54の間に第2のコイル巻線7が巻回される(
図2を参照)。この第1のコイル巻線6の端末は所定の端子ピン9に接続され、第2のコイル巻線7の端末は所定の端子ピン9に接続されている。
【0024】
さらに、一方のボビン4の内鍔部44と他方のボビン5の内鍔部54の間に、環状の第3の磁気コア3が配設される。この第3の磁気コア3は、前記2つのボビン4,5に挟持されつつ、その円環内には前記第1および第2の磁気コア1,2の中脚部11,21の大部分が嵌挿されており、中脚部11,21の先端面間に前記ギャップG1が配置されている。
【0025】
前記第1~第3の磁気コア1~3と両ボビン4,5とを組み立てる際には、両ボビン4,5の下部両側に位置決め固定部材8,8を配設して行うものである。この位置決め固定部材8,8は、
図8、
図10および
図11にも示すように、平板状の基部81,81の中央に上方に延びる縦片82,82が立設され、基部81の内側辺の両側にはスリット形状の係合溝83,83が形成されている。
【0026】
前記係合溝83,83には前記ボビン4,5の2つの内鍔部44,54の延長部44a,54aが係合される。これにより、2つのボビン4,5の内鍔部44,54の軸方向の位置と、その中心位置が規定される。
【0027】
さらに、前記縦片82,82は、前記第1の磁気コア1の外脚部12の先端面と、前記第2の磁気コア2の外脚部22の先端面との間に挟持され、この第1および第2の磁気コア1,2の外脚部12,22の先端面間の隙間ギャップG2の寸法bの大きさを、該位置決め固定部材8,8の縦片82,82の厚さ寸法によって規定するものである。
【0028】
上記位置決め固定部材8,8の縦片82,82の形状は、
図10に示されるように、前記外脚部12,22の断面形状に相似し、全面的に当接して偏らない。また、縦片82,82には上下に三角形状の開口84が形成され、組み立て時に接着剤が充填され、第1および第2の磁気コア1,2の外脚部12,22の先端面に固着される。
【0029】
このように、第1および第2の磁気コア1,2の間において、位置決め固定部材8,8と第3の磁気コア3を組合わせるようにしたことにより、各ボビン4,5に巻回された第1および第2のコイル巻線6,7の中間位置に中脚部11,21間のギャップG1を正確に位置設定することができ、2イン1タイプの磁気結合インダクタにおいて、各インダクタのインダクタンスを互いに等しく設定することが可能である。
【0030】
これにより、各インダクタから磁気ギャップまでの距離の偏りによって、いずれかのインダクタが磁気飽和を起こす等の従来の不都合を解消することができる。
【0031】
また、
図9に示すように、前記2つのボビン4,5の各内鍔部44,54の下端部に形成された突起44b,54bは、その先端が基板面等に当接することで、組立工程等における作製時の姿勢が安定するように機能する。
【0032】
上記のように実施形態の磁気結合インダクタ100は、第1および第2の磁気コア1,2と各々組付けられた2つのボビン4、5の間に環状磁気コアによる第3の磁気コア3を挟んで、2イン1(2in1)構造の結合インダクタを備える構成とされたものである。そして、前記第1のコイル巻線6と前記第2のコイル巻線7を通る各電流により生成された第3の磁気コア3を通る磁束は互いに同一方向とされる。
【0033】
具体的には、
図3に示すように、第1の磁気コア1と第2の磁気コア2とは中脚部11,21および外脚部12,22間にそれぞれギャップG1,G2が形成されて分離している。したがって、第1の磁気コア1においては、両側の外脚部12,12から接続部13,13を通る磁束は中脚部11にて合流し、共に、この中脚部11の先端面に向かって流れる。
【0034】
一方、第2の磁気コア2においては、両側の外脚部22,22から接続部23,23を通る磁束は、中脚部22にて合流し、共に、この中脚部11の先端面に向かって流れる。これら2つの中脚部11を流れる磁束は、中脚部11,21の先端面で互いに衝突して左右に分かれ、第3の磁気コア3を通って、第1および第2の磁気コア1,2の外脚12,22に至る。
この結果、第1および第2の各磁気コア1,2ならびに第3の磁気コア3には、
図3に示すような方向に循環する磁気ループL1,L2が形成される。
【0035】
上記のような実施形態の磁気結合インダクタ100においては、
図4に示すように、前記第3の磁気コア3の厚みをa、前記第1および第2の磁気コア1,2の外脚部12,22同士のギャップG2のギャップ量をbとしたとき、
a≧b (1)
の条件が成立するように構成されている。
【0036】
上記条件(1)が成立するように構成することで、磁気結合インダクタを小型化することができる。
すなわち、a<bとなると、結合インダクタの重要なパラメータである結合係数が低下する。結合係数が低下した場合、結合インダクタの大型化を図らないと大電流を許容することができない。
したがって、a≧bとなる条件(1)を満足するように構成して、製品の小型化を図ることが好ましい。
【0037】
また、上記磁気結合インダクタ100においては、
図5に示すように、前記第3の磁気コア3の厚みをa、前記第1および第2の磁気コア1,2の接続部13,23の厚みをcとしたとき、
a≧c (2)
の条件が成立するように構成されている。
【0038】
上記条件(2)が成立するように構成することで、磁気結合インダクタを小型化することができる。
すなわち、a<cとなると、通常循環する磁束がcに係る位置(第1および第2の磁気コア1,2の接続部13,23の位置)ではなく、aに係る位置(第1および第2の磁気コア1,2の中脚部11,21の先端面間のギャップG1位置)で飽和してしまうので、結合インダクタとしての機能を担保することが難しくなる。
【0039】
また、デューティー(スイッチングON・OFF比率)を所定の値としたときに、第1および第2の磁気コア1,2を流れる磁束が合流してa(ギャップG1)に流入し、第3の磁気コア3が飽和し易くなるため、aがc以上となるように(第3の磁気コア3の横断面積が上記接続部13,23の横断面積以上となるように)設定されている(出力電圧Vout/入力電圧Vin≧2の場合)。
したがって、a=cとなる条件(2)を満足するように回路を構成して、製品の小型化を図ることが最も好ましい。
ただし、上記条件(2)おいて、cの公差分(±5%程度)があっても、インダクタの小型化という効果を奏することが確認できていることから、実際の数値範囲としては、下記条件(2´)が成立する範囲として差し支えない。
a≧0.95c (2´)
【0040】
さらに、上記磁気結合インダクタ100においては、
図6に示すように、前記第1および第2の磁気コア1,2の中脚部11,21同士のギャップG1および両側の外脚部12,22同士の2つのギャップG2,G2のギャップ量bの合計(基本的に3b)と、第3の磁気コア3における環状コアの内周面と中脚部11,21の外周面との隙間量をfとし、または、第3の磁気コア3における環状コアの外周面と外脚部12,22の内周面との隙間量をgとしたとき、
3b≧f (3)
または、
3b≧g (4)
の条件が成立するように構成されている。
【0041】
上記条件(3)または(4)が成立するように構成することで、磁気結合インダクタを小型化することができる。
すなわち、3b<f 、および3b<g となると、上記条件(1)を満足しない場合と同様に、結合インダクタの重要なパラメータである結合係数が低下する。結合係数が低下した場合、結合インダクタの大型化を図らないと大電流を許容することができない。
したがって、3b≧f となる条件(3)、または3b≧g となる条件(4)を満足するように構成して、製品の小型化を図ることが好ましい。
【0042】
なお、各コア1,2,3の物理的な一体化は前記実施形態では固定用テープ10を使用して行っているが、接着剤、接着テープ、締め付け金具等を使用してもよい。
【0043】
第1コイル巻線6と第2コイル巻線7に流れる電流方向およびコイル巻回方向は、以下のような構成とすることができ、かつ以下のような作用効果を奏することができるのであれば、任意に選択可能である。
すなわち、
図3のように2つの磁気コア1,2を互いに対向させるように配置した場合、第1コイル巻線6による第1の磁気コア1における両側の外脚部12,12から中脚部11を通る磁束と、第2コイル巻線7による第2の磁気コア2における両側の外脚部22,22から中脚部21を通る磁束とが、中脚部11,21の先端面間において、互いに逆向きに衝突するように形成される構成である。
そして、このような構成とされた結果、
図3において、第1コイル巻線6による第1の磁気コア1における両側の外脚部12,12から中脚部11を通る磁束により形成される磁束ループL1と、第2コイル巻線7による第2の磁気コア2における両側の外脚部22,22から中脚部21を通る磁束により形成される磁束ループL2とが、中脚部11,21の先端面間において、互いに逆向きで磁束を打ち消し合う関係となり、大電流を許容し得る磁気構成(磁束の流れ)を形成する、との作用効果を奏する態様である。
【0044】
なお、本実施形態によれば、第1コイル巻線6およびその周辺の磁気コア部分により第1の磁気結合インダクタ部が、第2コイル巻線7およびその周辺の磁気コア部分により第2の磁気結合インダクタ部が、互いに結合した状態で構成されることになり、独立した2個のインダクタにより構成された場合よりも大電流を許容し得る磁気構成(磁束の流れ)とすることができる。
【0045】
図7a~cは、他の実施形態を示すものであり、第3の磁気コア31の外周の一部を除去し、図で上下方向の寸法を小型化した例である。つまり、第3の磁気コア31の円環形状において、第1および第2の磁気コア1,2の外脚部12,22の内周面に面していない上下の弓形部分をカット面3Aによって除去したものである(
図7a、7bを参照)。
【0046】
この場合に、この第3の磁気コア31の外周面のうち微小ギャップを介して外脚部12,22の円弧状内面と対向する円弧面3Bの表面積をdとし、第1または第2の磁気コア1,2の外脚部12,22の先端面の表面積をeとしたとき(
図7cを参照)、
d≧e (5)
の条件が成立するように構成されているのが好適である。
上記条件(5)が成立するように構成することで、磁気結合インダクタを小型化することができる。
【0047】
この条件(5)のdを上記条件(2)のaと、また、この条件(5)のeを上記条件(2)のcと、各々置き換えて考えることができるので、d<eとなると、上記条件(2)等を満足しない場合と同様に、結合インダクタの重要なパラメータである結合係数が低下する。
すなわち、結合係数が低下した場合、結合インダクタの大型化を図らないと大電流を許容することができない。したがって、d<eとなると、製品の小型化を図ることが困難となる。
【0048】
次に
図12a~
図12eを参照して前記実施形態の磁気結合インダクタ100の作製工程を説明する。
【0049】
まず、
図12aは完成品状態を示している。これを作製する際には、まず、
図12bに示すように、ボビン5に第2のコイル巻線7を巻回する。図示してないが、同様に他方のボビン4に第1のコイル巻線6を巻回する。そして、各コイル巻線6,7の端部を端子台41,51の所定の端子ピン9にそれぞれ半田固定する。
【0050】
次に、
図12cに示すように、位置決め固定部材8,8を用意し、その縦片82の各開口84に接着剤を充填塗布する。そして、
図12dに示すように、コイル巻線6,7をそれぞれ巻回したボビン4,5を、両ボビン4,5の間に第3の磁気コア3を挟持しつつ、一方のボビン4の筒部42の端部と他方の筒部52の端部とを凹凸形状を合致させるように一軸状に組み付ける(
図9を参照)。
これとともに、両側に位置決め固定部材8,8を、その係合溝83にボビンの内鍔部4,54の下部延長部44a,55aを係合し、さらに、この組付けたボビン4,5の両端部にそれぞれ第1の磁気コア1および第2の磁気コア2を対向させて、中脚部11,21を筒部42,52にそれぞれ挿入し、外脚部12,22をボビン4,5の外側側方に位置させて組み付ける(
図8,9を参照)。
【0051】
その際、両磁気コア1,2の外脚部12,22の先端面で前記位置決め固定部材8,8を挟持して、先に塗布していた接着剤で固定する。なお、
図12dにおいては、第1の磁気コア1は省略している。
【0052】
次に、上記のようにボビン4,5に第1~第3の磁気コア1~3を組み付けた状態において、
図12eに示すように、固定用テープ10を第1および第2の磁気コア1,2の外周に締結して全体を仮固定する。また、底面において、位置決め固定部材8,8の基部81と第3の磁気コア3の周面との接触部分Pに接着剤を塗布して両者を固定し乾燥させて作製を終了する。なお、この場合、接着剤を塗布する前に、電気的特性の検査を行うことが好ましい。
【0053】
上記実施の形態で用いた一対のPQコアの代わりに、EE型コアやEER型コア、さらには一対のポットコア(外脚部が中脚部を囲むもの)等も使用可能である。
また、ボビンの形状としても種々の形状を採用可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 第1の磁気コア
2 第2の磁気コア
3,31 第3の磁気コア
4,5 ボビン
6 第1のコイル巻線
7 第2のコイル巻線
8 位置決め固定部材
9 端子ピン
10 固定用テープ
11,21 中脚部
12,22 外脚部
13,23 接続部
41,51 端子台
42,52 筒部
43,53 外鍔部
44,54 内鍔部
81 基部
82 縦片
83 係合溝
100 磁気結合インダクタ
G1,G2 ギャップ