(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-25
(45)【発行日】2023-11-02
(54)【発明の名称】PCa製束石状体を有する耐圧版式グリッドポスト基礎構造とその設計システム
(51)【国際特許分類】
E02D 27/01 20060101AFI20231026BHJP
E02D 27/00 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
E02D27/01 Z
E02D27/00 Z
(21)【出願番号】P 2019188977
(22)【出願日】2019-09-02
【審査請求日】2022-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】593053977
【氏名又は名称】ジェイ建築システム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】手塚 純一
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-261945(JP,A)
【文献】特開2013-227787(JP,A)
【文献】登録実用新案第3204340(JP,U)
【文献】特開平06-306872(JP,A)
【文献】特開平01-260159(JP,A)
【文献】特開2000-291204(JP,A)
【文献】特公昭52-33403(JP,B2)
【文献】特開2000-248558(JP,A)
【文献】特開平07-216906(JP,A)
【文献】特開2019-007192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/01
E02D 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周基礎梁と耐圧版スラブ及び内部地中梁を鉄筋と現場打ちコンクリート一体で構成し、内部立上りのある基礎梁に代えてプレキャストコンクリート(以下PCaという)製の束石状体(グリッドポスト)を有する耐圧版式グリッドポスト基礎であって、
PCa製束石状体(グリッドポスト)は、基礎内部立上りのある基礎梁に代わるものであり、PCa製束石状体部材の組合せ方、取付方法によって鉛直力、水平力に対応する基礎であり、
鉛直力のみを負担するコの字PCa製部材2個を平面十字型に上下嵌合して用い金物2個で内部地中梁に取り付けるAタイプと、
さらに水平力をも負担するコの字PCa製部材2個を平面十字型に上下嵌合して用い金物4個で内部地中梁に取り付けるBタイプと、
床荷重のみを負担するコの字単体PCa製部材を平面I型に用い金物2個で内部地中梁に取り付けるCタイプと、を有することを特徴とし、
PCa製束石状体(グリッドポスト)部材には、
上用∩(H-1)と下用∪(H-2)を有し、コンクリート内部には鉄筋コンクリート基準に適合(かぶり厚さ確保、溶接による鉄筋端部のフック規定に適合)のスポット溶接をした組立鉄筋が挿入され、
コの字単体の足部の2本の鉄筋は先端がU型に折り曲げ加工されており、
上用∩(H-1)には上面所定箇所に土台アンカー用ボルト挿入のための引き抜き耐力に優れたYインサートが2か所埋設されており、
さらに足部のU型に折り曲げ加工された鉄筋と直角方向に接合金物とPCa製束石状体(グリッドポスト)をボルトで止めつけるための両端がインサートとなったWインサートがU型鉄筋内側にて直交十字状に固定されており、
また、下用∪(H-2)には足部のU型に折り曲げ加工された鉄筋と足部上面所定箇所に土台アンカー用ボルト挿入のための引き抜き耐力に優れたYインサートが2か所埋設されており、
さらに底面の鉄筋と直角方向にPCa製束石状体(グリッドポスト)接合金物とPCa製束石状体(グリッドポスト)をボルトで止めつけるための両端がインサートとなったWインサートが鉄筋内側にて直交十字状に固定されていることを特徴とし、
PCa製束石状体(グリッドポスト)部材は、上用∩(H-1)のように内部鉄筋とWインサートが鉄筋内側にて直交十字状に固定されていることや、上用∩(H-1)と下用∪(H-2)の上下嵌合とPCa製束石状体(グリッドポスト)接合金物によるPCa製束石状体(グリッドポスト)同士を接合・固定する役割と、PCa製束石状体(グリッドポスト)部材と接合金物とを内部地中梁に緊結するあと施工アンカーとによって、小型のPCa製品にも関わらずPCaコンクリートのひび割れ発生後も、耐力・剛性(図27、図30参照)を有し、かつ靭性に富む組合せ構造体となることを特徴とする基礎構造。
【請求項2】
請求項1の基礎構造において、上部建物による本基礎構造に加わる応力を建物全体で計算する応力計算手段と、PCa製束石状体(グリッドポスト)の設計ク
ライテリアによるPCa製束石状体(グリッドポスト)の組合せタイプ別耐力及び試験結果による許容耐力により使用タイプの選択手段を備えたことを特徴とし、
耐力壁両端の柱下にBタイプを設置することで、耐力壁に生じる水平力と引張力の複合応力を負担し、Bタイプには、せん断力と引張力が同時に生じるため、複合応力の設定式よりグリッドポストの設計クライテリア(図39)を定め、Bタイプの引張力は15kN、せん断力は8.95kNを設計耐力とし、
さらに、水平力を負担するBタイプは、PCa製束石状体(グリッドポスト)と現場打設コンクリートである内部地中梁の接点に回転曲げモーメントが生じるため、内部地中梁にグリッドポストに生じる付加曲げモーメントを考慮して内部地中梁の断面算定を行う(図37の付加曲げモーメント参照、図41の(2)▲3▼Bタイプの付加曲げモーメントに対する算定参照)設計方法とし、
この考えを計算プログラムに導入し、一般べた基礎計算とグリッドポスト基礎計算を合算した専用計算プログラムとしたことを特徴としたPCa製束石状体を有する耐圧版式グリッドポスト基礎構造設計システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の基礎内部立ち上がり基礎梁にPCa製の束石状体を組合せて使用し、内部立上り基礎に代える基礎構造と、その設計方法および構造計算プログラムを用いた設計システムに関するものである。
【0002】
外周基礎梁と耐圧版スラブ及び内部地中梁を一体で構成し、内部立上りのある基礎梁に代わってPCa製束石状体(グリッドポスト)を有する耐圧版式グリッドポスト基礎構造と、構造計算プログラムを用いた設計システムを構築するものである。
【背景技術】
【0003】
束石状体と耐圧盤式基礎の形成方法による基礎構造が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示すような束石状体と耐圧盤式基礎の形成方法による基礎は、用いる手段によりコンクリート打設が2回以上となり、基礎としての品質・工期・束石状体の性能などの均一化が図れないなどの問題を有していた。
【0006】
また、内部の立上がりのある内部基礎梁に代えて、PCa製のグリッドポストを用いる場合においても、内部基礎としての役割である鉛直力に加えて地震力、風圧力(短期荷重)を含む水平荷力をも負担しなければならないが、その耐力の検証とその基礎の設計プロセス及び設計プログラムが確立していなかった。
【0007】
さらにPCa製束石状体(グリッドポスト)が重量軽減のため小型になると、コンクリートのひび割れ発生後は大きな応力(曲げ、せん断、引張りなど)の負担が困難になる他、曲げ破壊やせん断破壊などによって終局時の変形性能が乏しい脆性的な破壊となっていた。
【0008】
したがって、PCa製束石状体が単にプレキャストコンクリートの製造基準や鉄筋コンクリート基準に準拠しているだけでは、PCa製品が一般的な内部立ち上がり基礎として機能し、建築基準法に適合した基礎として評価・評定を受けることが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
提案する本基礎構造1は、上部の木造耐力壁線を考慮して構造設計・計画された基礎で、現場打の外周基礎梁10(FG1)、玄関部の内部立ち上がり基礎梁10(FG2)、耐圧版スラブ12及び内部地中梁11で構成され、従来の耐力壁線下に設ける内部の立上がりのある内部基礎梁に代えてPCa製束石状体のグリッドポスト(以下GPという)13を用いる耐圧版式GP基礎1である。(
図1参照)
【0010】
また、GP13は内部地中梁11上に設置することとし、GP接合金物13-2を用い、内部地中梁11のコンクリートに穴をあけ、モルタル系注入材のあと施工アンカー13-3を挿入しボルトを埋め込み、あと施工アンカー13-3が凝固後に結合する。また、GP接合金物13-2は、後述するGP13同士を嵌合して接合・固定する役割も有する。
【0011】
前記のGP13は、従来の基礎内部立上りのある基礎梁に代わるものであり、PCa製部材の組合せ方、取付方法によって鉛直力(圧縮や引張力)、水平力に対応する基礎構造であって、コの字PCa製部材2個を平面十字型に嵌合して用いGP接合金物13-2を2個で取り付ける13Aタイプと、さらに水平力をも負担するコの字PCa製部材2個を平面十字型に嵌合して用いGP接合金物13-2を4個で取り付ける13Bタイプと、床荷重のみを負担するコの字単体PCa製部材を平面I型に用いGP接合金物13-2を2個で取り付ける13Cタイプと、を有することを特徴とする基礎構造である。したがってGPには使用部品の組合せによりAタイプ、Bタイプ、Cタイプを有している。(
図10~
図15参照)
【0012】
さらに、GP13の部材には、上用∩(13H1)と下用∪(13H2)がある。コンクリート内部には鉄筋コンクリート基準に適合(かぶり厚さ確保、溶接による鉄筋端部のフック規定に適合)のスポット溶接をした組立鉄筋(ユニット鉄筋13-1)が挿入され、コの字単体の足部の2本の鉄筋は先端がU型に折り曲げ加工されている。(
図17イ~
図17ハ参照)
【0013】
GP13部材の上用∩(13H1)には上面所定箇所に土台アンカー用ボルト挿入のための引き抜き耐力に優れたYインサート13-Yが2か所埋設されている。さらに足部のU型に折り曲げ加工された鉄筋13-1と直角方向にGP接合金物13-2とGP13をボルトで止めつけるための両端がインサートとなったWインサート13-WがU型鉄筋内側にて直交十字状に固定されている。(
図17イ~
図17ハ参照)
【0014】
GP13の下用∪(13H2)には足部のU型に折り曲げ加工された鉄筋13-1と足部上面所定箇所に土台アンカー用ボルト挿入のための引き抜き耐力に優れたYインサート13-Yが2か所埋設されている。さらに底面の鉄筋と直角方向にGP接合金物13-2とGP13をボルトで止めつけるための両端がインサートとなったWインサート13-Wが鉄筋13-1内側にて直交十字状に固定されている。(
図18イ~
図18ハ参照)
【0015】
GP13部材は、上記のように上用∩(13H1)の内部鉄筋13-1とWインサート13-Wが鉄筋13-1内側にて直交十字状に固定されていることや、上用∩(13H1)と下用∪(13H2)の嵌合とGP接合金物13-2のGP同士を接合・固定する役割によって、小型のPCa製束石状体にも関わらずひび割れ発生後も、耐力・剛性を有し、かつ靭性に富む組合せ構造体となっている。つまり、小型でコの字単体PCa製部材を用いたGPであっても強く、粘るPCa製束石状体となる工夫がなされていることを特徴としている。(
図5~
図9参照)
【0016】
本基礎構造の応力伝達機構について述べる。特に水平力をも負担するコの字PCa製部材2個(13H1と13H2)を平面十字型に嵌合して用いGP接合金物13-2を4個で取り付ける13Bタイプで説明すると、上部構造による長期の鉛直力(圧縮力)を基礎に伝える役割に加え、短期水平力に抵抗できる機構が特徴となる。短期時には上部に設置される耐力壁より、GP13には柱3から生じる鉛直力(圧縮GPN・引張力GPT)と土台2を介して生じるせん断力GPQが生じる。(
図37~
図38参照)
【0017】
上記引張力GPTは、Yインサート13-Yを介してGP13に伝わり、Wインサート13-WとGP接合金物13-2の固定部を介して金物とあと施工アンカー部の引張力として、内部地中梁11に伝達される。(
図37~
図38参照)
【0018】
上記せん断力GPQは、Yインサート13-Yを介してGP13に伝わり、GP13を回転させる曲げモーメントに置換される。この付加曲げモーメントでGP13に生じる圧縮力は、GP13本体で内部地中梁11に伝達される。一方引張力は、Wインサート13-WとGP接合金物13-2の固定部を介して金物とあと施工アンカー部の引張力として、内部地中梁11に伝達される。(上述の引張力と同じ)(
図37~
図38参照)
【0019】
上述のようにGP13に生じる引張力GPT・圧縮力GPNと、せん断力GPQによって生じる付加曲げモーメントを考慮して内部地中梁11は設計される。
【0020】
また、従来の鉄筋コンクリート基準に準じた配筋(鉄筋かぶり厚確保と結束鉄筋の配置)されたBタイプの13B‘(
図16イ~
図16ハ参照)と、今回の内部鉄筋が足部のU型に折り曲げ加工された鉄筋13-1と直角方向に接合金物13-2とGP13をボルトで止めつけるための両端がインサートとなったWインサート13-WがU型鉄筋内側にて直交十字状に固定されているBタイプ13B(
図17イ~
図17ハ参照)のGPで試験(上述のせん断力をGPに載荷)を行った。
【0021】
PCa製品断面が小さいため、GP13のコの字柱に引抜きが生じると、
図23の配筋図と
図24の亀裂状況写真のように通常の鉄筋コンクリート基準に準じた配筋(鉄筋かぶり確保+曲げ鉄筋配置)を行う13B’接合方式の場合、PCa製品のコンクリート本体にひび割れが発生し脆性的な破壊となってしまう(コンクリートのひび割れで耐力が決定)。
【0022】
一方、本発明の場合、
図25のユニット配筋図と
図26のWインサート応力曲げ変形写真に示すようにWインサート13-Wとユニット鉄筋13-1の十字接合により、ひび割れ発生後もインサート13-Wが曲げ変形しながら抵抗し、耐力も急激に低下せず、靭性がある応力伝達機構とすることができる。この試験結果を
図27、
図28、
図29に示す。ここで、
図28は、GP13に水平荷重Qを受けるとWインサート埋設部近くに曲げ亀裂が発生する。さらに水平荷重Qを受けると
図29に示すWインサート自体がU字加工したユニット鉄筋13-1の十字接合部より曲げ変形を生じるまで抵抗し、曲げ亀裂発生後も靱性を発揮する。(
図27グラフ参照)
【0023】
この時、土台2の長手方向に13H1の長手方向を合わせる。それは、13H1だけがコの字単体の足部の2本の鉄筋は先端がU型に折り曲げ加工された内部鉄筋13-1とWインサート13-Wが鉄筋13-1内側にて、物理的に直交十字状に固定されているためである。
【0024】
また、コの字上のPCa製部材同士を嵌合接合させることで耐力・靭性の確保(13H1+13H2+接合金物13-2×4個の13BタイプのGP13を前提に考える)が可能となる。その試験結果を
図30のグラフで示す。ここで嵌合有の試験体を
図31・
図32に示し、嵌合無しの試験体(13H1+接合金物13-2×4個)
図33、
図34とし、13Bタイプの接合金物13-2×4個と耐圧版12の固定度を同じ条件にて行う。嵌合無しの試験体は、
図36のように曲げ亀裂13-kの発生に伴い、13H1が回転して変形する。一方、嵌合有りの試験体は、
図35のように13H2が13H1の回転を拘束し,嵌合部が圧壊13-aしながら粘るため、耐力や靭性能を向上させることができる。このような小型PCa製品同士を嵌合させて応力に抵抗させる機構は、他には無いと考える。
【0025】
GPの設計クライテリアの設定を行う。GPの検定に用いる設計クライテリアの設定方法の概略を
図38に示す。ここで、下記の式1は水平加力試験、引張加力試験の結果より短期基準耐力(Qa、Ta)を設定した。ここで、GP本体には、水平力GPQと引張力GPTが同時に働くので、その複合応力下の影響を想定し、下式をGP本体の設計クライテリアとした。これらにより、
図39の半円の範囲が、GPの許容する短期許容水平力と引張力となる。尚、下記の設計式を用いることで、GPの変形角は少なくとも1/150rad以内に納めることが可能となる。
【0026】
GP13に生じる圧縮力(GPN)に対する検定を
図40の設計クライテリアにて行う。許容圧縮耐力は、安全をみて13H1+13H2の十字型ではなく、13H1単独であるとして検討する。また、短期時の圧縮力と水平力の複合応力に関する検定は、圧縮側の安全率が非常に高いため、木造住宅においては、引張側の危険度の方が高くなり、省略することとした。ここで、圧縮力に関しては、コンクリートで負担する。長期及び短期の許容圧縮耐力Naを設定し、下式で設計する。
【0027】
上部建物による本基礎構造に加わる応力を建物全体で計算する応力計算手段と、GPの組合せタイプ別による使用選択手段を備えたことを特徴とするPCa製束石状体を有する耐圧版式GP基礎構造設計システムを確立するものである。
【0028】
また、建物全体の設計・計算方針について示す。上部建物と本基礎の一貫計算が可能なプログラムソフトを用い、木部の計算と連動した耐圧版式GP基礎の計算は、GPの設計クライテリアによるGPおよび内部地中梁、GPとは直接関わらない外周基礎梁[内部立上り(玄関部)]、耐圧版スラブで構成され、各部位それぞれについて基礎の設計・計算を行う。(
図43、
図44参照)
【0029】
ここで、上部木造の構造計画による設計フローを
図41に示す。木造部の設計において耐震等級などを考慮し、耐力壁線の設定を行う。耐圧版式GP基礎の設計において、▲1▼外周基礎梁を建物外周部に配置する。▲2▼GPの配置計画は、耐力壁両端柱下には13Bタイプ、その他の鉛直荷重のみ負担する柱下に13Aタイプ、柱を受けない土台下に13Cタイプを1,820mm以内に設置するのを基本する。計算により軸力値8kN以下により13Aタイプから床束に置き換え可能とし、また、土台が交差する場合の配置検討など次項のGPの配置計画により決定する。▲3▼内部地中梁の設計は、13Aタイプ、13Bタイプ上の柱の長期、短期軸力に対する算定と、13Bタイプ設置付加曲げモーメントに対する算定、13Cタイプ床荷重に対する算定に基づき設計する。▲4▼耐圧版スラブ12の設計は、外周基礎梁10、内部地中梁11で囲まれた範囲で算定、設置する。▲5▼土台用アンカーボルトの算定設置は、土台交差部に13Aタイプまたは13Cタイプを配置し、耐力壁線に生じるせん断力に対して13Bタイプも含め必要本数を算定、設置する。
【0030】
GPの配置計画は
図42を参照に、第1検討として設置順位1~5に基づきGP13のA,B,Cタイプを決定し配置する。設置順1は、耐力壁両端部の柱下は13Bタイプとし、設置順位2は通し柱の下は13Aタイプ、設置順位3は管柱の下は13Aタイプ、設置順位4は土台がT字又は十字に交差する箇所には13Aタイプ、設置順位5は土台下でGP間隔が1,820mm以内となる箇所には13Cタイプを仮配置する。
【0031】
しかし、設置順位3、4に関しては各条件によって設置するタイプを置換えできるため第2検討にてGPタイプを決定する。設置順位3管柱の長期軸力8kN(短期軸力12kN)超える場合で耐力壁線上にある場合は13Aタイプとし、耐力壁線上にない場合は13Cタイプとする。また、管柱の長期軸力8kN(短期軸力12kN)以下の場合で耐力壁線上にある場合は13Cタイプとし、耐力壁線上にない場合は一般鋼製束とする。 さらに、設置順位4土台交差部のGPの配置については土台交差部をまたぎ、GPが1,820mm以内の間隔で配置されている場合は13Cタイプとする。(
図42チャート参照)
【0032】
本基礎を設計するにあたり、長期及び地震・暴風時水平荷重の伝達フロー及び基礎を構成する部材の断面算定方針を以下に示す。
【0033】
長期鉛直荷重の伝達フローは、本基礎上部の1階柱軸力・1階床荷重を一方は外周基礎梁10から耐圧版スラブ12へ、一方はGP13(GPはA,B,Cタイプが該当する)から内部地中梁11・耐圧版スラブ12へ、一方は床束6から耐圧版スラブ12へとそれぞれ伝達され、伝達された各荷重は、負担相当とされる耐圧版12に配分し、最終的には支持地盤に伝達される。(
図43参照)
【0034】
地震・暴風時水平荷重の伝達フローは、全水平力は外周基礎梁10、内部地中梁11で負担する。さらに、耐力壁の鉛直成分荷重のうち基礎内部GP13(13Bタイプ)が負担する分は、内部地中梁11への付加応力を考慮する。伝達された各荷重は、耐圧版スラブから最終的には支持地盤に伝達される。(
図44参照)
【0035】
GP13Bタイプの応力伝達機構は、13Bタイプの上部にある耐力壁を支持し、長期時の鉛直力(GPN)及び短期時の水平力により生じる鉛直荷重(GPT)とともに水平荷重(GPQ)を負担し、内部地中梁11へ応力を伝達する機能を担う。
【0036】
GP13Bタイプの回転を考慮した内部地中梁11の追加検討を下記計算式により行う。GP13Bタイプが負担する水平力GPQを算定し、内部地中梁11に生じる付加曲げ応力GPM、付加せん断応力GPQ’を求める。耐力壁線上の内部地中梁11については、一貫計算の短期時応力にこの付加応力を加算して断面検定を行う。
Pi:検討する通りの耐力壁の短期許容せん断耐力[kN]
支持点数:検討する通りの耐力壁両端の柱本数
H:スラブ芯からGP上端までの高さ[cm]
L:GPQを負担するGP間距離の最小値[cm]
GPが負担する水平力 GPQ=Pi/支持点数
付加曲げ応力 GPM=GPQ×H
付加せん断応力 GPQ’=2×GPM/L
【0037】
ここで、付加応力のイメージと計算例を示すと、
図45の付加応力イメージ図よりGPQの算定は、GPQ=Pi/支持点数=7.13kN/2=3.56kNとなる。ここでPiは次のように計算する。Pi=Σ(壁倍率×壁長L)×1.96=(4.0倍×0.91m)×1.96kN/m=7.13kN。また、支持点数は検討する通りの耐力壁両端の柱本数=2とする。
【0038】
このように、内部地中梁11は、通常の基礎に生じる応力(地盤からの長期応力や、柱軸力)に加えて、GPに生じる水平力の影響で基礎に生じるGPMを加味して設計すること、GPを支持点として、地中梁を設計することで、PCa製のGP工法独自の付加モーメントGPMを考慮した設計手法といえる。
【発明の効果】
【0039】
既往の束石状体と耐圧盤式基礎の形成方法による基礎は、用いる手段によりコンクリート打設が2回以上となり、基礎としての品質・工期・束石状体の性能などの均一化が図れないなどの問題を有していたが、H1・H2の嵌合とGP接合金物のGP同士を接合し、耐圧版スラブに固定する役割に、あと施工アンカーを用いることでコンクリート打設が1回となり、基礎としての品質・工期・束石状体の性能などの均一化が図れる。
【0040】
小型のプレキャストコンクリート部材であるにも関わらず、GPのユニット化の鉄筋と柱部U字加工、Wインサートの挿入位置、GPのH1・H2性能向上での嵌合により破壊モードの靭性を確保し、従来の基礎立上りと同等の性能を有することが証明された。
【0041】
従来の内部の立上がりのある内部基礎梁に代えて、プレキャストコンクリート製のGPを用いる場合において、内部基礎としての役割である鉛直力に加えて地震力、風圧力(短期荷重)を含む水平荷力をも負担しなければならないが、その耐力の検証とその基礎の設計プロセス及び設計プログラムを確立することで、鉄筋コンクリート造基礎に代わるプレキャストコンクリート部材GPを用いた「建築基準法に適合する基礎」としての評価を得た。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図3】耐圧版式GP基礎と木造軸組の構造概要斜視図
【
図16】イ 従来のH1上面透視図 ロ 従来のH1正面透視図 ハ 従来のH1側面透視図
【
図17】イ 本発明のH1上面透視図 ロ 本発明のH1正面透視図 ハ 本発明のH1側面透視図
【
図18】イ 本発明のH2上面透視図 ロ 本発明のH2正面透視図 ハ 本発明のH2側面透視図
【
図19】イ GPのBタイプの取付設置状況透視上面図 ロ GPのBタイプの取付設置状況透視正面図(矢視
図A) ハ GPのBタイプの取付設置状況透視側面図(矢視
図B)
【
図24】GP柱下部の引張亀裂状況を示す試験結果写真
【
図26】Wインサートの試験結果後の変形したWインサート単体の写真
【
図27】本発明GPのBタイプとRC規準のGPのB’タイプの荷重-変形曲線図
【
図28】Bタイプの比較試験結果の加力Q方向と主な曲げ亀裂発生状況図
【
図29】Bタイプの鉄筋の引張力によるWインサート曲げ抵抗概要図
【
図30】GPの勘合ありと無しの場合の比較試験結果のグラフ
【
図35】GPの勘合ありの場合の試験体破壊状況概要図
【
図36】GPの勘合なしの場合の試験体破壊状況概要図
【
図38】GPの設計クライテリアの設定方法の概略図
【
図40】GPに生じる圧縮力に対する検定の設計クライテリア
【
図41】上部木造の構造計画による本基礎の設計フロー
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。なお、以下に示す各実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0044】
まず、
図1は、本発明基礎1の一実施例の斜視図である。耐圧版式GPべた基礎1は、外周基礎梁10、内部地中梁11、GP13(13A、13B、13C)、耐圧版スラブ12で構成されている。
【0045】
図2は、本発明基礎1と1階床組を示す一実施例の斜視図で、本基礎1と土台2、大引4、床束6で構成されている。
【0046】
図3は、本発明基礎1を用いた木造建物の構造概要を示す一実施例の斜視図である。この概要図は軸組工法で示しているが、ツーバイフォー工法や木質パネル工法であってもよい。
【0047】
図4は、本基礎1と1階木造部断面を示す一実施例のものである。
【0048】
【0049】
図6は、GP13の上用∩13H1と下用∪13H2とを勘合することを示す概要斜視図である。
【0050】
図7は、GPの13Bタイプを用いて、図中A部の付属品およびB部の付属品を示すための斜視図である。
【0051】
図8は、GPの
図7中A部の付属品で土台固定用アンカーボルトおよびナットを示す斜視図である。
【0052】
図9は、GPの
図7中B部の付属品でGPの接合金物13-2およびGP同士をこの金物とボルトなどで固定するのと、さらにこの金物で耐圧版スラブ12とを固定するための接合用あと施工アンカー13-3、ボルト、ナットなどを示す斜視図である。
【0053】
図10は、GP13Aタイプの上面図で、GPの上用∩13H1を示し、GPの下用∪13H2と嵌合してして接合金物13-2を取り付けた状態を示す。
【0054】
図11は、GP13Aタイプの正面図で、GPの上用∩13H1を示し、GPの下用∪13H2と嵌合して接合金物13-2を取り付けた状態を示す。
【0055】
図12は、GP13Bタイプの上面図で、GPの上用∩13H1を示し、GPの下用∪13H2と嵌合して接合金物13-2を取り付けた状態を示す。
【0056】
図13は、GP13Bタイプの正面図で、GPの上用∩13H1を示し、GPの下用∪13H2と嵌合して接合金物13-2を取り付けた状態を示す。
【0057】
図14は、GP13Cタイプの上面図で、GPの上用∩13H1を示して接合金物13-2を取り付けた状態を示す。
【0058】
図15は、GP13Cタイプの正面図で、GPの上用∩13H1を示して接合金物13-2を取り付けた状態を示す。
【0059】
図16イは、従来の鉄筋コンクリート基準に準じて配筋されたGPの従来のH1’の上面透視図である。
【0060】
図16ロは、従来の鉄筋コンクリート基準に準じて配筋されたGPの従来のH1’の正面透視図で、内部鉄筋のGP足部のアール加工は無く、結束線で固定しているだけである。上部インサートや下部両端インサートも一般的強度のものである。
【0061】
図16ハは、従来の鉄筋コンクリート基準に準じて配筋されたGPの従来のH1’の側面透視図である。
【0062】
【0063】
図17ロは、本発明の13H1正面透視図で、内部鉄筋のGP足部がアール加工され、スポット溶接で固定しているユニット鉄筋である。上部インサートも引張強度の高いY型インサート13-Yや下部両端W型インサート13-Wも引張・曲げ強度の高いものである。
【0064】
【0065】
【0066】
図18ロは、本発明の13H2正面透視図で、内部鉄筋のGP足部がアール加工され、スポット溶接で固定しているユニット鉄筋である。上部インサートも引張強度の高いY型インサート13-Yや下部両端W型インサート13-Wも引張・曲げ強度の高いものである。
【0067】
【0068】
図19イは、柱3下GPの13Bタイプの取付設置状況透視上面図である。図中の矢印の方向の矢視
図A(正面図)、矢視
図B(側面図)にて透視内部詳細を説明する。
【0069】
図19ロは、柱3下GPの13Bタイプの取付設置状況透視正面図である。耐圧版12と同時に形成された地中梁11上に接合用あと施工アンカー13-3を介してボルト、座金、ナットなどで接合金物13-2×4個によりGP13の13H1上用∩+13H2下用∪が緊結され、GP上の横架された土台2とアンカーボルトで緊結される。
【0070】
図19ハは、GPの13Bタイプの取付設置状況透視側面図である。
【0071】
図20は、1階床組の一実施例伏図である。ここでは、耐力線区画を◎で示し土台及び柱を表記し、大引きを記入している。さらに耐力壁の筋かいや構造用合板位置も明記する。
【0072】
図21は、1階床組の一実施例伏図に準じた本基礎1の計画図である。建物外周の耐力壁線に外周基礎梁10(FG1)、玄関部の内部立ち上がり基礎梁10(FG2)、基礎スラブ(耐圧版)12及び内部地中梁11を配置する。
【0073】
図22は、1階床組の一実施例伏図による本基礎1伏図である。ここでは、内部地中梁11、外周基礎梁10(FG1)及び玄関部の内部立ち上がり基礎梁10(FG2)、耐圧版スラブ12(FS1、FS2)を明記する。またGPの配置計画により、13A、13B、13Cを配置する。さらに大引を受けるための床束を配置して完成する。
【産業上の利用可能性】
【0074】
許容応力度計算で、木部から基礎までの一貫計算が可能な計算ソフトを用い、GPに関わらない一般的なべた基礎部分の外周基礎梁(FG1)[内部立上り(FG2)]、耐圧版スラブ(FS1,FS2)の計算、さらにGPに関わる部分の内部地中梁(FG3)とGPによる付加応力を算定、加算により計算を行うことにより、合理的なRC断面算定を可能とし、大幅なコストダウンと工期短縮が図れる。
【符号の説明】
【0075】
1 耐圧版式GPべた基礎
2 土台
3 柱
4 大引
5 根太又は構造用合板
6 床束
10 立上り基礎梁[外周基礎梁(FG1)内部立上り(FG2)]
11 内部地中梁
12 耐圧版スラブ(FS1,FS2)
13 GP
13A GPのAタイプ
13B GPのBタイプ
13B’従来の鉄筋コンクリート基準に準じて配筋されたGPのBタイプ
13C GPのCタイプ
13H1 GPの上用∩
13H2 GPの下用∪
13-1 GPのユニット鉄筋
13-2 GPの接合金物
13-3 GPの接合用あと施工アンカー
13-Y GPの土台接合ボルト用のY型インサート
13-W GPの接合金物取付ボルト用のW型インサート
13-a GPの嵌合部圧壊
13-k GPの曲げ亀裂