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  • 特許-溢水防止カバー及びその設置方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-25
(45)【発行日】2023-11-02
(54)【発明の名称】溢水防止カバー及びその設置方法
(51)【国際特許分類】
   E03F 5/06 20060101AFI20231026BHJP
   B21D 31/04 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
E03F5/06 B
B21D31/04 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020013691
(22)【出願日】2020-01-30
(65)【公開番号】P2021120511
(43)【公開日】2021-08-19
【審査請求日】2022-10-03
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 試験日 平成31年2月1日 試験場所 兵庫県西宮市すみれ台3丁目1番地 試験を行った者 有限会社太田ジオリサーチ 試験内容 有限会社太田ジオリサーチが、下記発明者らによって発明された溢水防止カバーを、屋外設置による機能確認のため、自社敷地内の排水溝に設置して試験を行った。
(73)【特許権者】
【識別番号】000133294
【氏名又は名称】株式会社ダイクレ
(74)【代理人】
【識別番号】100180079
【弁理士】
【氏名又は名称】亀卦川 巧
(74)【代理人】
【識別番号】230101177
【弁護士】
【氏名又は名称】木下 洋平
(73)【特許権者】
【識別番号】506199396
【氏名又は名称】株式会社地盤リスク研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100180079
【弁理士】
【氏名又は名称】亀卦川 巧
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓之
(72)【発明者】
【氏名】冨田 匡邦
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 靖
(72)【発明者】
【氏名】太田 英将
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-227041(JP,A)
【文献】登録実用新案第3077424(JP,U)
【文献】特開2018-150779(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 5/06
B21D 31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の設置部と、前記一対の設置部の間に亘って連結されているカバー体を具え、
前記設置部は、下面に接地面を具え、
前記カバー体は、前記設置部の上面側に頂上部を有し、前記一対の設置部の間で前記頂上部を境にして第一傾斜部と第二傾斜部を形成し、
前記第一傾斜部は、前記上面側であって水平方向に向けて延出する第一延出部を具えた複数の第一孔部を具え、
前記第二傾斜部は、前記上面側に向けて延出する第二延出部を具えた複数の第二孔部を具え
前記第一延出部が前記第一孔部それぞれの前記第一傾斜部に対する上方側半分に設けられ、
前記第二延出部が前記第二孔部それぞれの前記第二傾斜部に対する下方側半分に設けられていることを特徴とする、
溢水防止カバー。
【請求項2】
前記第一孔部と第二孔部が全体として網目状に形成されている、請求項1の溢水防止カバー。
【請求項3】
前記カバー体が折曲げられたメタルラスで構成され、該メタルラスのフィンが前記第一延出部と第二延出部を構成している、請求項2の溢水防止カバー。
【請求項4】
上側法面と下側法面の間に設けられた小段に形成される排水溝に対する溢水防止カバーの設置方法であって、
前記溢水防止カバーは、一対の設置部と、前記一対の設置部の間に亘って連結されているカバー体を具え、
前記設置部は、下面に接地面を具え、
前記カバー体は、前記設置部の上面側に頂上部を有し、前記一対の設置部の間で前記頂上部を境にして第一傾斜部と第二傾斜部を形成し、
前記第一傾斜部は、前記上面側であって水平方向に向けて延出する第一延出部を具えた複数の第一孔部を具え、
前記第二傾斜部は、前記上面側に向けて延出する第二延出部を具えた複数の第二孔部を具え
前記第一延出部が前記第一孔部それぞれの前記第一傾斜部に対する上方側半分に設けられ、
前記第二延出部が前記第二孔部それぞれの前記第二傾斜部に対する下方側半分に設けられ
前記第一傾斜部が前記上側法面側に、前記第二傾斜部が前記下側法面側に位置するように、且つ、前記排水溝を覆うようにして、前記溢水防止カバーが設置されることを特徴とする、溢水防止カバーの設置方法。
【請求項5】
前記第一孔部と第二孔部が全体として網目状に形成されている、請求項4の溢水防止カバーの設置方法。
【請求項6】
前記カバー体が折曲げられたメタルラスで構成され、該メタルラスのフィンが前記第一延出部と第二延出部を構成している、請求項5の溢水防止カバーの設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水溝の上面に設置される溢水防止カバーに関し、特に、法面上を流れる水分を排水するための、小段(平坦部)に設けられる排水溝への設置に適した溢水防止カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
道路建設や宅地造成などの開発工事に伴い、地山掘削や盛土などにより法面を形成することが行われている。また、法面上を流れる雨水などの排水のため、法面に小段を設け、小段にコンクリート製などの排水溝を設置することも行われている。一方で、小段より上側に位置する法面(以下、「上側法面」という。)から落葉や枯れ枝、ごみなどの異物が排水溝に流入して堆積し、水路を閉鎖させ、本来排水溝によって排水されるべき水分が小段より下側に位置する法面(以下、「下側法面」という。)に流れ出てしまうことがある。このような状況は、法面の崩壊に繋がるので問題である。そこで、排水溝に異物が堆積することを防止するための、排水溝に設置するカバー(以下、「溢水防止カバー」という。)が開発されており、その例として、特許文献1,2に示すものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-150779号公報
【文献】特開2006-132250号公報
【0004】
特許文献1には、排水溝の開口端部に装着可能な基部と、基部に設けられた多孔体の蓋部を具え、蓋部が平面構成部と上方に突出する傾斜構成部を有し、傾斜構成部が頂点を有する溢水防止カバーが開示されている。
【0005】
特許文献2には、排水溝の開口端部に設置され、開口端部から下方に傾斜する目皿本体を具え、目皿本体には水分だけを通過させる貫通孔が設けられている溢水防止カバーが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の溢水防止カバーは、平坦構成部に異物が堆積し易く、これらの異物が傾斜構成部を覆うことにより排水機能が失われることが考えられる。特許文献2の溢水防止カバーは、目皿本体上に異物を堆積させるように構成されているため、良好な排水機能を維持するためには、異物除去のための頻繁な清掃作業をする必要がある。また、目皿本体が排水溝内部に延出しているので、排水溝内部の流水断面が減少するという問題もある。
【0007】
そこで、本発明は、前述した事情に鑑み、異物が堆積しても良好な排水機能を保持することができ、頻繁な清掃作業が不要な溢水防止カバー及びその設置方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、一対の設置部と、前記一対の設置部の間に亘って連結されているカバー体を具え、
前記設置部は、下面に接地面を具え、
前記カバー体は、前記設置部の上面側に頂上部を有し、前記一対の設置部の間で前記頂上部を境にして第一傾斜部と第二傾斜部を形成し、
前記第一傾斜部は、前記上面側であって水平方向に向けて延出する第一延出部を具えた複数の第一孔部を具え、
前記第二傾斜部は、前記上面側に向けて延出する第二延出部を具えた複数の第二孔部を具え
前記第一延出部が前記第一孔部それぞれの前記第一傾斜部に対する上方側半分に設けられ、
前記第二延出部が前記第二孔部それぞれの前記第二傾斜部に対する下方側半分に設けられていることを特徴とする溢水防止カバー、
または、
上側法面と下側法面の間に設けられた小段に形成される排水溝に対する溢水防止カバーの設置方法であって、
前記溢水防止カバーは、一対の設置部と、前記一対の設置部の間に亘って連結されているカバー体を具え、
前記設置部は、下面に接地面を具え、
前記カバー体は、前記設置部の上面側に頂上部を有し、前記一対の設置部の間で前記頂上部を境にして第一傾斜部と第二傾斜部を形成し、
前記第一傾斜部は、前記上面側であって水平方向に向けて延出する第一延出部を具えた複数の第一孔部を具え、
前記第二傾斜部は、前記上面側に向けて延出する第二延出部を具えた複数の第二孔部を具え
前記第一延出部が前記第一孔部それぞれの前記第一傾斜部に対する上方側半分に設けられ、
前記第二延出部が前記第二孔部それぞれの前記第二傾斜部に対する下方側半分に設けられ
前記第一傾斜部が前記上側法面側に、前記第二傾斜部が前記下側法面側に位置するように、且つ、前記排水溝を覆うようにして、前記溢水防止カバーが設置されることを特徴とする溢水防止カバーの設置方法によって前記課題を解決した。
【発明の効果】
【0009】
上側法面と下側法面の間に設けられる小段は、通常、上側法面と下側法面の斜面に直交するように設けられる。ここで、本発明の溢水防止カバーを、第一傾斜部が上側法面側に、第二傾斜部が下側法面側に位置するように、且つ、排水溝を覆うようにして設置することにより、上側法面から転落してくる異物を第一傾斜部に堆積させ、第二傾斜部への堆積を防止することができるので、排水機能を保持することができる。また、第一孔部と第二孔部は、上面側に延出する第一延出部と第二延出部を有するので、落葉などの異物が第一孔部及び第二孔部に入り難い。また、第一孔部と第二孔部の開口部の断面が立体的になるので、第一孔部と第二孔部に被さるようにして堆積した落葉が乾燥すると自然に飛散し易い。よって、頻繁な清掃作業は不要である。
【0010】
また、第一孔部と第二孔部が全体として網目状に形成され、第一延出部が第一孔部それぞれの第一傾斜部の上方側半分に設けられ、第二延出部が第二孔部それぞれの第二傾斜部の下方側半分に設けられている構成とすれば、良好な排水機能を発揮させることができる。
【0011】
また、カバー体が折曲げられたメタルラスで構成されていれば、製造コストを抑えることができるとともに、軽量なので、簡便に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第一実施形態の溢水防止カバーの概略平面図。
図2図1の側面図。
図3図1の溢水防止カバーのカバー体の一部断面図。
図4図1の溢水防止カバーのカバー体の第一斜視図。
図5図1の溢水防止カバーのカバー体の第二斜視図。
図6図1の溢水防止カバーの設置例を表した図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態を図1~6を参照して説明する。但し、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。
【0014】
図1は、本発明の第一実施形態の溢水防止カバー10を示している。溢水防止カバー10は、一対の設置部12,14と、一対の設置部12,14の間に亘って連結されているカバー体20を具えている。
【0015】
図2に示すように、一対の設置部12,14は、それぞれの下面に接地面15,17を具えている。接地面15,17は、基本的に平面で構成され、接地面15,17を排水溝などの設置対象物に当接させることにより、溢水防止カバー10を設置させることができる。
【0016】
一対の設置部12,14は、それぞれ、垂下方向に延出する側面16,18を具えることができる。側面16,18は、基本的に平面で構成される。側面16,18を、排水溝などの設置対象物の側壁に接し得る位置に設ければ、溢水防止カバー10を設置対象物に設置した際、溢水防止カバー10の設置位置がずれて設置対象物内に落下することを防止することができる。
【0017】
カバー体20は、設置部12,14の上面側に頂上部22を有し、一対の設置部12,14の間で、頂上部22を境にして第一傾斜部24と第二傾斜部26が形成されるように構成されている。頂上部22の位置は、一対の設置部12,14の間であればどこでもよい。また、図示しての説明は省略するが、設置部12と第一傾斜部24、設置部14と第二傾斜部26、第一傾斜部24と第二傾斜部26のそれぞれの間に平面部や別の傾斜部を具える構成とすることも可能である。
【0018】
溢水防止カバー10は、図1に示すように、カバー体20と同様の形状の連結部材32を所定の間隔で具えている。連結部材32は、板状であり、設置部12,14とカバー体20のそれぞれにボルトなどの連結具(図示省略)で固定されることにより、設置部12,14とカバー体20を連結させる(図2も参照)。このように連結部材32を具える構成とすることにより、設置部12,14とカバー体20の連結が容易となり、カバー体20の形状を維持させ、強度を高めることもできる。
【0019】
第一傾斜部24は、複数の第一孔部25が設けられており、第二傾斜部26にも同様に、複数の第二孔部27が設けられている。溢水防止カバー10の第一孔部25と第二孔部27は、全体として網目状に形成されている。このような構成とすることにより、良好な排水機能を実現することができる。なお、第一孔部と第二孔部は、プレート状のカバー体に穿設することにより設けることも可能である。第一孔部と第二孔部の形状は、円形、四角形、六角形などを適用することができる。
【0020】
図3は、カバー体20の一部断面図を示している。第一傾斜部24の第一孔部25は、設置部12,14の上面側(第一傾斜部24の上面側でもある。)に延出する第一延出部28をそれぞれ具え、第二傾斜部26の第二孔部27も同様に、設置部12,14の上面側(第二傾斜部26の上面側でもある。)に延出する第二延出部29をそれぞれ具えている。カバー体20の場合、第一延出部28と第二延出部29は、第一孔部25と第二孔部27の各々の周りの一部に設けられている。なお、第一孔部と第二孔部をバーリング加工でカバー体に設けるなどして、第一延出部と第二延出部を第一孔部と第二孔部の周りの全てに設ける構成としてもよい。
【0021】
図4は、カバー体20を第一傾斜部24の上面側から見た斜視図である。図示されているように、第一孔部25は六角形である。第一延出部28は、第一孔部25に対し、第一傾斜部24の上方側半分に設けられている。具体的には、カバー体20の場合、第一孔部25の六角形に対して、第一傾斜部24の上方側に位置する3辺が延出することにより、第一延出部28を形成している。
【0022】
一方、図5は、カバー体20を第二傾斜部26の上面側から見た斜視図である。第二延出部29は、第二孔部27に対し、第二傾斜部26の下方側半分に設けられている。具体的には、カバー体20の場合、第二孔部27の六角形に対して、第二傾斜部26の下方側に位置する3辺が延出することにより、第二延出部29を形成している。このような構成とすることで、良好な排水機能を発揮させることができる。
【0023】
カバー体20は、金属製の薄板を使用して常温引伸切断法によって製造されたメタルラスを折曲げることにより構成することができる。メタルラスとしては、日本国実用新案登録第3077424号に開示されているような、各孔に延出部(フィン)が形成されるブラインドメタル(ブラインドラス)が好適である。このように、カバー体20にメタルラスを使用すれば、製造コストを抑えることができるとともに、軽量なので、溢水防止カバー10を簡便に設置することができる。
【0024】
図6に示すように、溢水防止カバー10は、上側法面52と下側法面54の間に設けられた小段56に形成される排水溝40に設置することができる。小段56は、通常、上側法面52と下側法面54の斜面に直交するように設けられる。溢水防止カバー10は、設置部12,14のそれぞれの下面である接地面15,17が排水溝40の側壁の上面に載置されることによって排水溝40を覆うようにして設置されている。このとき、溢水防止カバー10の第一傾斜部24が上側法面52側に、第二傾斜部26が下側法面54側に位置している。
【0025】
上記のように溢水防止カバー10を排水溝40に設置することにより、上側法面52から転落してくる異物を第一傾斜部24に堆積させ、第二傾斜部26への堆積を防止することができる。よって、特に、第二傾斜部26の第二孔部27から排水溝40内への排水経路を確保し易いので、良好な排水機能を保持することができる。また、図3乃至5に示しているように、第一傾斜部24の第一孔部25と第二傾斜部26の第二孔部27は、それぞれ、第一延出部28と第二延出部29を有するので、落葉などの異物が第一孔部25と第二孔部27に入り難い。また、第一孔部25と第二孔部27の開口部の断面が立体的になるので(図3参照)、第一孔部25と第二孔部27に被さるようにして堆積した落葉は、乾燥すると、排水溝40内部からの風などにより自然に飛散し易い。よって、頻繁な清掃作業は不要である。
【0026】
以上説明したように、本発明によれば、異物が堆積しても良好な排水機能を保持することができ、頻繁な清掃作業が不要な溢水防止カバー及びその設置方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0027】
10 溢水防止カバー
12,14 設置部
15,17 設置面
20 カバー体
22 頂上部
24 第一傾斜部
25 第一孔部
26 第二傾斜部
27 第二孔部
28 第一延出部
29 第二延出部
40 排水溝
52 上側法面
54 下側法面
56 小段
図1
図2
図3
図4
図5
図6