IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カーネギー メロン ユニバーシティの特許一覧

<>
  • 特許-鋳型指向性の核酸標的化合物 図1
  • 特許-鋳型指向性の核酸標的化合物 図2
  • 特許-鋳型指向性の核酸標的化合物 図3
  • 特許-鋳型指向性の核酸標的化合物 図4A
  • 特許-鋳型指向性の核酸標的化合物 図4B
  • 特許-鋳型指向性の核酸標的化合物 図4C
  • 特許-鋳型指向性の核酸標的化合物 図5
  • 特許-鋳型指向性の核酸標的化合物 図6
  • 特許-鋳型指向性の核酸標的化合物 図7
  • 特許-鋳型指向性の核酸標的化合物 図8
  • 特許-鋳型指向性の核酸標的化合物 図9
  • 特許-鋳型指向性の核酸標的化合物 図10
  • 特許-鋳型指向性の核酸標的化合物 図11
  • 特許-鋳型指向性の核酸標的化合物 図12
  • 特許-鋳型指向性の核酸標的化合物 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-25
(45)【発行日】2023-11-02
(54)【発明の名称】鋳型指向性の核酸標的化合物
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/68 20180101AFI20231026BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20231026BHJP
   G01N 33/542 20060101ALI20231026BHJP
   C07H 21/02 20060101ALI20231026BHJP
   C07H 21/04 20060101ALI20231026BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20231026BHJP
【FI】
C12Q1/68
G01N33/53 M
G01N33/542 A
C07H21/02
C07H21/04 B
C12N15/11 Z ZNA
【請求項の数】 36
(21)【出願番号】P 2020534394
(86)(22)【出願日】2018-12-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 US2018067096
(87)【国際公開番号】W WO2019126646
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-12-20
(31)【優先権主張番号】62/708,789
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504337958
【氏名又は名称】カーネギー メロン ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】リー,ダニス・エイチ
(72)【発明者】
【氏名】シェ,ウェイ‐チェ
(72)【発明者】
【氏名】バハール,ラマン
【審査官】松村 真里
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0197793(US,A1)
【文献】Targeting abnormal triplet repeat containing hairpin RNA by using mini-PEG PNA, Abstracts of Papers, 242nd ACS National Meeting & Exposition, Denver, CO, United States, August 28-September 1, 2011 (2011),オンライン検索日:2022年11月9日, <URL: https://www.morressier.com/article/targeting-abnormal-triplet-repeatcontaining-hairpin-rna-using-minipeg-pna/5fc62c9d9e0a135cbec67caf?>
【文献】Acta Neuropathologica Communications, (2017) 5:63, 2017.08.29
【文献】BioTechniques, 24:472-476, 1998
【文献】THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY,1997年,Vol. 272, No. 49,pp. 31079-31085
【文献】Biochemistry,2018年01月15日,Vol. 57, No. 6,pp. 907-911,DOI: 10.1021/acs.biochem.7b01239
【文献】COMMUNICATIONS CHEMISTRY,2018年11月07日,Vol. 1, No. 79,pp. 1-10,DOI: 10.1038/s42004-018-0080-5
【文献】Biochemistry,2018年03月21日,Vol. 57,pp. 2094-2108,DOI: 10.1021/acs.biochem.8b00062
【文献】J. AM. CHEM. SOC.,2003年,Vol. 125, No. 23,pp. 6878-6879
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00
C12Q 1/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の末端および第二の末端を有するとともに3個~8個の核酸アナログ骨格残基を有する核酸アナログ骨格と、
複数の前記核酸アナログ骨格残基に標的核酸に相補的な配列で連結された同一または異なってよい複数の核酸塩基と、
前記核酸アナログ骨格の前記第一の末端にリンカーによって連結された第一のアリール部分と、
記核酸アナログ骨格の前記第二の末端にリンカーによって連結された前記第一のアリール部分と任意に同一である第二のアリール部分と、を含む遺伝子認識試薬であって、
前記認識試薬が標的核酸の隣接する配列にハイブリダイズするときに、前記アリール部分は隣接する認識試薬のアリール部分とスタッキングし、
前記第一のアリール部分と前記第二のアリール部分の各々は、リボフラビン(ビタミンB2)、マンゴスチンまたはマンギフェリンを含む、遺伝子認識試薬。
【請求項2】
構造:
【化1】
ここで、nは、1~6の範囲の整数であり、
Rの各々は、独立して、核酸塩基であり、
Bは、核酸アナログ骨格残基であり、
Lは、独立して、前記核酸アナログ骨格の第一の末端、または、前記核酸アナログ骨格
の第二の末端に対するリンカーであり、かつ、
Arの各々は、独立して、前記第一のアリール部分、または、前記第二のアリール部分
である、を有する、請求項1に記載の遺伝子認識試薬。
【請求項3】
前記核酸アナログ骨格残基は、立体構造的に事前組織化された残基を含む、請求項に記載の遺伝子認識試薬。
【請求項4】
前記立体構造的に事前組織化された核酸アナログ骨格残基は、γPNA、LNAまたはグリコール核酸骨格残基である、請求項に記載の遺伝子認識試薬。
【請求項5】
前記立体構造的に事前組織化された核酸アナログ骨格残基は、γPNA骨格残基である、請求項に記載の遺伝子認識試薬。
【請求項6】
前記γPNA骨格残基の1以上は、以下の基、
-(OCH-CHOP、-(OCH-CH-NHP、-(SCH-CH-SP、-(OCH-CH-OH、-(OCH-CH-NH、-(OCH-CH-NHC(NH)NHまたは-(OCH-CH-S-S[CHCHNHC(NH)NH であって、ここで、Pは、H、(C~C)アルキル、(C~C)アルケニル、(C~C)アルキニル、(C~C)アリール、(C~C)シクロアルキル、(C~C)アリール(C~C)アルキレンまたは(C~C)シクロアルキル(C~C)アルキレンであり、qは0~50の整数であり、rは1~50の整数であり、かつsは1~50の整数である、基で置換されており、
前記基は、任意に(C~C)二価ヒドロカルビルリンカーによって前記1以上のγPNA骨格残基に結合されている、請求項に記載の遺伝子認識試薬。
【請求項7】
前記立体構造的に事前組織化された核酸アナログ骨格残基は、L-γPNAである、請求項に記載の遺伝子認識試薬。
【請求項8】
構造:
【化2】
ここで、Rの各々は、独立して、核酸塩基であり、
nは、1~6の範囲の整数であり、
Lは、独立して、リンカーであり、前記リンカーの各々は、独立して1以上のグアニジ
ン含有基、1以上のアミノ酸側鎖、または、1以上の近接連続(contiguous)アミノ酸残
基を含み、
およびRは、それぞれガンマ炭素に結合されており、独立して、H、グアニジン含有基、アミノ酸側鎖、1個~50個のエチレングリコール部を含むエチレングリコール単位で任意に置換されたメチル、エチル、直鎖状もしくは分岐状の(C~C)アルキル、(C~C)アルケニル、(C~C)アルキニル、(C~C)ヒドロキシアルキル、(C~C)アリール、(C~C)シクロアルキル、(C~C)アリール(C~C)アルキレン、(C~C)シクロアルキル(C~C)アルキレン;-CH-(OCH-CHOP、-CH-(OCH-CH-NHP、-CH-(SCH-CH-SP、-CH-(OCH-CH-OH、-CH-(OCH-CH-NH、-CH-(OCH-CH-NHC(NH)NHまたは-CH-(OCH-CH-S-S[CHCHNHC(NH)NHであり、ここで、PはH、(C~C)アルキル、(C~C)アルケニル、(C~C)アルキニル、(C~C)アリール、(C~C)シクロアルキル、(C~C)アリール(C~C)アルキレンまたは(C~C)シクロアルキル(C~C)アルキレンであり、qは0~50の整数であり、rは1~50の整数であり、かつsは1~50の整数であり、そして、
の各々は、独立して、前記第一のアリール部分、または、前記第二のアリール部分である、
を有する、または、その薬学的に許容可能な塩を有する、請求項1に記載の遺伝子認識試薬。
【請求項9】
前記Lの各々は、側
【化3】
ここで、nは、1~5の範囲である、
を有する第一のアミノ酸残基ならびに前記第一のアミノ酸残基の各々に結合されたN末端
アルギニン残基およびC末端アルギニン残基の双方を含む、請求項8に記載の遺伝子認識
試薬。
【請求項10】
前記nは、1~3の範囲である、請求項に記載の遺伝子認識試薬。
【請求項11】
構造:
【化4】
ここで、Rの各々は、独立して、核酸塩基であり、
nは、1~6の範囲の整数であり、
およびRは、それぞれガンマ炭素に結合されており、独立して、H、グアニジン含有基、アミノ酸側鎖、1個~50個のエチレングリコール部を含むエチレングリコール単位で任意に置換されたメチル、エチル、直鎖状もしくは分岐状の(C~C)アルキル、(C~C)アルケニル、(C~C)アルキニル、(C~C)ヒドロキシアルキル、(C~C)アリール、(C~C)シクロアルキル、(C~C)アリール(C~C)アルキレン、(C~C)シクロアルキル(C~C)アルキレン;-CH-(OCH-CHOP、-CH-(OCH-CH-NHP、-CH-(SCH-CH-SP、-CH-(OCH-CH-OH、-CH-(OCH-CH-NH、-CH-(OCH-CH-NHC(NH)NHまたは-CH-(OCH-CH-S-S[CHCHNHC(NH)NHであり、ここで、PはH、(C~C)アルキル、(C~C)アルケニル、(C~C)アルキニル、(C~C)アリール、(C~C)シクロアルキル、(C~C)アリール(C~C)アルキレンまたは(C~C)シクロアルキル(C~C)アルキレンであり、qは0~50の整数であり、rは1~50の整数であり、かつsは1~50の整数であり、
若しくはの1つおよびR、R 若しくはの1つは-L-Rであり、ここで、Rは、独立して、前記第一のアリール部分、または、前記第二のアリール部分であり、かつLはリンカーであり、R、R、R、RおよびRの残りは、各々独立して、H、1以上の連続アミノ酸残基、グアニジン含有基、アミノ酸側鎖、1個~50個のエチレングリコール部を含むエチレングリコール単位で任意に置換された直鎖状もしくは分岐状の(C~C)アルキル、(C~C)アルケニル、(C~C)アルキニル、(C~C)ヒドロキシアルキル、(C~C)アリール、(C~C)シクロアルキル、(C~C)アリール(C~C)アルキレン、(C~C)シクロアルキル(C~C)アルキレン;-CH-(OCH-CHOP、-CH-(OCH-CH-NHP、-CH-(SCH-CH-SP、-CH-(OCH-CH-OH、-CH-(OCH-CH-NH、-CH-(OCH-CH-NHC(NH)NHまたは-CH-(OCH-CH-S-S[CHCHNHC(NH)NHであり、ここで、PはH、(C~C)アルキル、(C~C)アルケニル、(C~C)アルキニル、(C~C)アリール、(C~C)シクロアルキル、(C~C)アリール(C~C)アルキレンまたは(C~C)シクロアルキル(C~C)アルキレンであり、qは0~50の整数であり、rは1~50の整数であり、かつsは1~50の整数である、
を有する、または、その薬学的に許容可能な塩を有する、請求項1に記載の遺伝子認識試
薬。
【請求項12】
、R、R、R、R、RまたはRの1以上は、-(OCH-CHOP、-(OCH-CH-NHP、-(SCH-CH-SP、-(OCH-CH-OH、-(OCH-CH-NH、-(OCH-CH-NHC(NH)NHまたは-(OCH-CH-S-S[CHCHNHC(NH)NHで置換された(C~C)アルキルであり、ここで、Pは、H、(C~C)アルキル、(C~C)アルケニル、(C~C)アルキニル、(C~C)アリール、(C~C)シクロアルキル、(C~C)アリール(C~C)アルキレンまたは(C~C)シクロアルキル(C~C)アルキレンであり、qは0~50の整数であり、rは1~50の整数であり、かつsは1~50の整数である、請求項11に記載の遺伝子認識試薬。
【請求項13】
およびRは、-L-Rである、請求項11に記載の遺伝子認識試薬。
【請求項14】
およびRは、アルギニン残基を含む、請求項11に記載の遺伝子認識試薬。
【請求項15】
構造:
【化5】
ここで、Rの各々は、独立して、核酸塩基であり、
nは、1~8の範囲の整数であり、
mは、1~5の範囲の整数であり、
は、ガンマ炭素に結合されており、グアニジン含有基、アミノ酸側鎖、1個~50個のエチレングリコール部を含むエチレングリコール単位で任意に置換されたメチル、エチル、直鎖状もしくは分岐状の(C~C)アルキル、(C~C)アルケニル、(C~C)アルキニル、(C~C)ヒドロキシアルキル、(C~C)アリール、(C~C)シクロアルキル、(C~C)アリール(C~C)アルキレン、(C~C)シクロアルキル(C~C)アルキレン;-CH-(OCH-CHOP、-CH-(OCH-CH-NHP、-CH-(SCH-CH-SP、-CH-(OCH-CH-OH、-CH-(OCH-CH-NH、-CH-(OCH-CH-NHC(NH)NHまたは-CH-(OCH-CH-S-S[CHCHNHC(NH)NHであり、ここで、PはH、(C~C)アルキル、(C~C)アルケニル、(C~C)アルキニル、(C~C)アリール、(C~C)シクロアルキル、(C~C)アリール(C~C)アルキレンまたは(C~C)シクロアルキル(C~C)アルキレンであり、qは0~50の整数であり、rは1~50の整数であり、かつsは1~50の整数であり、
の各々は、独立して、前記第一のアリール部分、または、前記第二のアリール部分であり、
、RおよびRの各々は、独立して、H、グアニジン含有基、アミノ酸側鎖、または1以上の連続アミノ酸残基である、を有する、または、その薬学的に許容可能な塩を有する、請求項1に記載の遺伝子認識試薬。
【請求項16】
、R、R、R、R、RまたはRの1以上は、-(OCH-CHOP、-(OCH-CH-NHP、-(SCH-CH-SP、-(OCH-CH-OH、-(OCH-CH-NH、-(OCH-CH-NHC(NH)NHまたは-(OCH-CH-S-S[CHCHNHC(NH)NHで置換された(C~C)アルキルであり、ここで、Pは、H、(C~C)アルキル、(C~C)アルケニル、(C~C)アルキニル、(C~C)アリール、(C~C)シクロアルキル、(C~C)アリール(C~C)アルキレンまたは(C~C)シクロアルキル(C~C)アルキレンであり、qは0~50の整数であり、rは1~50の整数であり、かつsは1~50の整数である、請求項15に記載の遺伝子認識試薬。
【請求項17】
前記Rおよび前記Rは、2以上のガンマ炭素において異なっている、請求項8~16のいずれか一項に記載の遺伝子認識試薬。
【請求項18】
前記Rは、2以上のガンマ炭素においてHであり、前記Rおよび前記Rは異なっている、請求項17に記載の遺伝子認識試薬。
【請求項19】
は、2以上のガンマ炭素においてHであり、前記Rおよび前記Rは異なっている、請求項17に記載の遺伝子認識試薬。
【請求項20】
グアニジン部分を含む、請求項1に記載の遺伝子認識試薬。
【請求項21】
グアニジン含有基
【化6】
ここで、nは、1、2、3、4または5である、
を含む、請求項20に記載の遺伝子認識試薬。
【請求項22】
前記Rは、-CH-(OCH-CH-OHであり、ここで、rは、1~50、1~10、または2の整数である、請求項8~16のいずれか一項に記載の遺伝子認識試薬。
【請求項23】
前記Rは、-CH-O-CH-CH-O-CH-CH-OHである、請求項8~16のいずれか一項に記載の遺伝子認識試薬。
【請求項24】
前記リンカーは、5~25の原子、または、合計で1個~10個の総C原子、O原子、P原子、N原子およびS原子を含む、請求項1に記載の遺伝子認識試薬。
【請求項25】
前記核酸塩基配列は、FRDA、FRAXA、FRAXE、SCA1、SCA2、SCA3(MJD)、SCA6、SCA7、SCA17、DRPLA、SBMA、HD、DM1DM2、FXTAS、SCA8、SCA10、SCA12、HDL2またはALSである、リピート伸長疾患と関連する伸長したリピートを有する核酸に完全に相補的である、請求項1に記載の遺伝子認識試薬。
【請求項26】
前記伸長したリピートは、以下の配列、(GAA)、(CGG)、(CCG)、(CAG)、(CTG)、(CCTG)、(ATTCT)または(GGGGCC)の一つを有し、ここで、nは少なくとも3である、請求項25に記載の遺伝子認識試薬。
【請求項27】
標的配列を有する核酸を、請求項1に記載の遺伝子認識試薬と接触させることを含む、核酸の結合方法。
【請求項28】
前記遺伝子認識試薬の核酸塩基配列は、FRDA、FRAXA、FRAXE、SCA1
、SCA2、SCA3(MJD)、SCA6、SCA7、SCA17、DRPLA、SB
MA、HD、DM1DM2、FXTAS、SCA8、SCA10、SCA12、HDL
2またはALSである、リピート伸長疾患と関連する伸長したリピートを有する核酸に完
全に相補的である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記伸長したリピートは、以下の配列、(GAA)、(CGG)、(CCG)、(CAG)、(CTG)、(CCTG)、(ATTCT)または(GGGGCC)の一つを有し、ここで、nは少なくとも3である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
mRNAの標的配列を、前記標的配列に相補的な核酸塩基配列を有する請求項1に記載の遺伝子認識試薬と接触させることを含む、細胞内のmRNAの発現をノックダウンする方法。
【請求項31】
前記遺伝子認識試薬の核酸塩基配列は、FRDA、FRAXA、FRAXE、SCA1
、SCA2、SCA3(MJD)、SCA6、SCA7、SCA17、DRPLA、SB
MA、HD、DM1DM2、FXTAS、SCA8、SCA10、SCA12、HDL
2またはALSである、リピート伸長疾患と関連する伸長したリピートを有する核酸に完
全に相補的である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記伸長したリピートは、以下の配列、(GAA)、(CGG)、(CCG)、(CAG)、(CTG)、(CCTG)、(ATTCT)または(GGGGCC)の一つを有し、ここで、nは少なくとも3である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
核酸を含む試料を、前記アリール部分が、標的配列上で連結されていない場合に励起周波数の光にさらされたときに第一の蛍光発光を生じ、標的配列上で連結されている場合に励起周波数の光にさらされたときに前記第一の蛍光発光とは異なる第二の蛍光発光を生じる請求項1に記載の遺伝子認識試薬と接触させることと、前記蛍光性芳香族部分を励起することによって前記試料中の前記標的配列の存在を決定することと、前記蛍光性芳香族部分によって前記試料中に生じた前記第二の蛍光シグナルの量を測定することとを含む、試料中の核酸の標的配列の同定方法。
【請求項34】
前記遺伝子認識試薬の核酸塩基配列は、FRDA、FRAXA、FRAXE、SCA1
、SCA2、SCA3(MJD)、SCA6、SCA7、SCA17、DRPLA、SB
MA、HD、DM1DM2、FXTAS、SCA8、SCA10、SCA12、HDL
2またはALSである、リピート伸長疾患と関連する伸長したリピートを有する核酸に完
全に相補的である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記伸長したリピートは、以下の配列:(GAA)、(CGG)、(CCG)、(CAG)、(CTG)、(CCTG)、(ATTCT)または(GGGGCC)の一つを有し、ここで、nは少なくとも3である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
請求項1に記載の遺伝子認識試薬と、薬学的に許容可能な担体とを含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦資金に関する表示
本発明は、アメリカ国立科学財団により授与された助成番号CHE1039870およびアメリカ国立衛生研究所により授与された助成番号R21NS098102による政府支援によりなされた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年12月21日に出願された同時係属中の米国仮出願第62/708,789号の利益を主張し、当該米国仮出願は、引用することによりその全体が本出願の一部をなす。
【0003】
本出願に関連する配列表は、EFS-Web経由で電子フォーマットで提出され、その全体は参照により明細書中に組み込まれる。配列表を含むテキストファイルの名称は、6526-1807599_ST25.txtである。当該テキストファイルのサイズは404バイトであり、当該テキストファイルは2018年12月21日に作成された。
【0004】
1.発明の分野
本明細書には、核酸を結合する組成物ならびに核酸および核酸オリゴマー組成物を使用する核酸の結合方法が記載される。また、筋強直性ジストロフィー1型(DM1)および2型(DM2)等のリピート伸長障害の治療方法も提供される。
【背景技術】
【0005】
2.関連技術の記載
ほとんどの生物に関して、遺伝情報は、アデニン(A)がチミン(T)と対合し、シトシン(C)がグアニン(G)と対合するワトソン-クリック塩基対合の形で二本鎖DNAでコードされている。この遺伝情報のどのセットが転写および翻訳によってデコードされるかに依存して、発生プログラムおよび生理学的状態が決定される。この遺伝子生体高分子の任意の部分に配列特異的に結合するように適合させて設計し得、それによって、遺伝情報の流れの制御ならびにゲノムの構造および機能の評価および操作を可能にする分子の開発は、生物学的研究および生物医学的研究にとって重要である。この取組みは、遺伝性疾患の治療および検出のための医療用途および治療用途のためにも重要である。
【0006】
タンパク質と比較すると、RNA分子は四つの構成要素(A、C、G、U)だけで構成されているため、標的としやすく、RNA分子の相互作用は、ワトソン-クリックの塩基対合の十分に確立された規則によって規定される。標準的な二本鎖DNA(またはRNA)と比較して、RNAの二次構造は一般的に熱力学的に安定性が低いため、結合のためのエネルギー的要求は低い。それというのも、規範的な(完全マッチした)塩基対であることに加えて、塩基対の多くは非規範的(ミスマッチがある)であり、一本鎖のループ、バルジおよびジャンクションを含むからである。これらの局所的な相互作用ドメインの存在は、「三次」相互作用および二次構造のコンパクトな三次元形状への組み立てに不可欠である。したがって、これらの領域内の相互作用パターンまたは結合強度のわずかな変動は、RNAの全体的な三次元折り畳みパターンに大きな影響を与える。したがって、RNA相互作用を調整することによりRNAの折り畳み挙動を干渉するために使用され得る分子は、RNA機能を評価するための分子ツールとしてのみならず、治療試薬および診断試薬としても重要である。
【0007】
遺伝性疾患は一般に、DNAコード配列における突然変異または転写レベルもしくは翻訳レベルでの調節不全による異常なタンパク質機能の結果として起こり、タンパク質機能の喪失または獲得をもたらす。しかしながら、過去三十年間で、筋強直性ジストロフィーI型(DMI)および2型(DM2)を含む二十種を超える多数の神経筋障害が不安定なリピート伸長の結果として起こることを示す圧倒的多数の証拠が浮かび上がってきた。遺伝子のコーディング領域の伸長はタンパク質機能の変化につながり得る一方で、非コーディング領域で生ずる伸長は、RNA機能の毒性獲得によってタンパク質配列を干渉することなく疾患を引き起こす場合があり、場合によっては、リピート関連非ATG(RAN)翻訳によって有害なポリペプチドの偶発的な産生を引き起こす場合がある。
【0008】
後者のクラスの遺伝性障害のプロトタイプは、有効な治療法がない世界で成人8000人に一人が罹患している衰弱性の筋萎縮症であるDMIである。DMIは、筋強直性ジストロフィータンパク質キナーゼ(DMPK)遺伝子の3’-非翻訳領域(3’-UTR)における5~35リピートの正常な範囲から80~2500超の病原的範囲までのCTGリピート伸長によって引き起こされる。DMIの病因は、主にRNA毒性に起因する。転写に際して、伸長したrCUGリピート(rCUGexp)は、重要なRNAスプライシングレギュレーターであるマッスルブラインド様タンパク質I(MBNLI)を隔離する不完全なヘアピン構造をとる。それらが会合することで、rCUGexp-MBNLI複合体が生じ、当該複合体は核内に閉じ込められ、こうしてDMPKタンパク質の産生のために当該複合体が細胞質に核外輸送されることが妨げられるだけでなく、MBNLIが正常な生理学的機能を発揮することが妨げられる。蓄積された証拠は、上記した突然変異型転写物を標的とすることによって、DMIおよび場合によっては他の関連する神経筋状態についても治療的介入が開発され得ることを示唆している。しかしながら、野生型(wt)を干渉せずに伸長した転写物を標的とし、かつMBNLI等の非同族タンパク質をrCUGexpから排除することができる分子をどのように設計するかが問題である。
【0009】
上記の目標の追求により、ペンタミジン類、トリアミノトリアジン類およびペプチド模倣物を含むrCUGexpを標的とするための幾つかのクラスの分子の開発につながった。近年、Disneyと共同研究者は、モジュラーペプトイドの開発ならびに高い親和性および有効性を有する幾つかの小分子の同定を報告した。モルホリノおよび2’-O-メトキシエチルギャップマーを利用したアンチセンスアプローチも検討されており、rCUGexp-MBNLI複合体の破壊、毒性RNAの分解、および動物モデルでのDMI表現型の逆転に有効であることが示されている。ごく最近では、TALENおよびCRISPR/Cas9を使用した、罹患アレルの修飾に向けられたアンチジーンストラテジーが、DMIおよび関連する医学的状態の可能な対応策として調査されている。有望な見通しにもかかわらず、前記クラスのデザイナー分子、特にアンチセンス剤の多くには、認識特異性および/または選択性および細胞内送達に関連するかなりの課題がある程度残っている。今までに開発されたほとんどの合成オリゴヌクレオチド分子の低ないし中程度の親和性に加えて、実質的な結合協調性の欠如により、より大幅に細胞内送達をしやすくし、伸長した(疾患の)RNA反復転写物を野生型からより良く識別するためにより短いプローブを適用することはできなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
RNA-RNAおよびRNA-タンパク質相互作用等の核酸相互作用は、複製、翻訳、折り畳みおよびパッケージングを含む遺伝子調節において重要な役割を果たす。RNAの二次構造内のこれらの無秩序な領域に選択的に結合する能力は、RNAの生理学的機能を操作する上で重要である。したがって、核酸の選択的な結合を可能にする改善された試薬および方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の概要
一態様では、遺伝子認識試薬が提供される。前記遺伝子認識試薬は、第一の末端および第二の末端を有するとともに3個~8個のリボース、デオキシリボースまたは核酸アナログ骨格残基を有する核酸または核酸アナログ骨格と、複数の前記リボース、デオキシリボースまたは核酸アナログ骨格残基に標的核酸に相補的な配列で結合された同一または異なってよい核酸塩基と、前記核酸または核酸アナログ骨格の前記第一の末端にリンカーによって結合された第一のアリール部分と、前記核酸または核酸アナログ骨格の前記第二の末端にリンカーによって結合された前記第一のアリール部分と任意に同一である第二のアリール部分とを含み、ここで、認識試薬が標的核酸の隣接する配列にハイブリダイズするときに、前記アリール部分は隣接する認識試薬のアリール部分とスタッキングする。前記遺伝子認識試薬と、薬学的に許容可能な担体とを含む組成物も提供される。
【0012】
別の態様では、mRNAの標的配列を、第一の末端および第二の末端を有するとともに3個~8個のリボース、デオキシリボースまたは核酸アナログ骨格残基を有する核酸または核酸アナログ骨格と、複数の前記リボース、デオキシリボースまたは核酸アナログ骨格残基に標的核酸に相補的な配列で結合された同一または異なってよい核酸塩基と、前記核酸または核酸アナログ骨格の前記第一の末端にリンカーによって結合された第一のアリール部分と、前記核酸または核酸アナログ骨格の前記第二の末端にリンカーによって結合された前記第一のアリール部分と任意に同一である第二のアリール部分とを含む遺伝子認識試薬であって、認識試薬が標的核酸の隣接する配列にハイブリダイズするときに前記アリール部分が隣接する認識試薬のアリール部分とスタッキングし、前記標的配列に相補的な核酸塩基配列を有する前記遺伝子認識試薬と接触させることを含む、細胞内の核酸の結合方法が提供される。
【0013】
別の態様では、mRNAの標的配列を、第一の末端および第二の末端を有するとともに3個~8個のリボース、デオキシリボースまたは核酸アナログ骨格残基を有する核酸または核酸アナログ骨格と、複数の前記リボース、デオキシリボースまたは核酸アナログ骨格残基に標的核酸に相補的な配列で結合された同一または異なってよい核酸塩基と、前記核酸または核酸アナログ骨格の前記第一の末端にリンカーによって結合された第一のアリール部分と、前記核酸または核酸アナログ骨格の前記第二の末端にリンカーによって結合された前記第一のアリール部分と任意に同一である第二のアリール部分とを含む遺伝子認識試薬であって、認識試薬が標的核酸の隣接する配列にハイブリダイズするときに前記アリール部分が隣接する認識試薬のアリール部分とスタッキングし、前記標的配列に相補的な核酸塩基配列を有する前記遺伝子認識試薬と接触させることを含む、細胞内のmRNAの発現をノックダウンする方法が提供される。
【0014】
別の態様では、試料中の核酸の標的配列を同定する方法が提供される。当該方法は、核酸を含む試料を、第一の末端および第二の末端を有するとともに3個~8個のリボース、デオキシリボースまたは核酸アナログ骨格残基を有する核酸または核酸アナログ骨格と、複数の前記リボース、デオキシリボースまたは核酸アナログ骨格残基に標的核酸に相補的な配列で結合された同一または異なってよい核酸塩基と、前記核酸または核酸アナログ骨格の前記第一の末端にリンカーによって結合された第一のアリール部分と、前記核酸または核酸アナログ骨格の前記第二の末端にリンカーによって結合された前記第一のアリール部分と任意に同一である第二のアリール部分とを含む遺伝子認識試薬であって、認識試薬が標的核酸の隣接する配列にハイブリダイズするときに前記アリール部分が隣接する認識試薬のアリール部分とスタッキングし、前記アリール部分が、標的配列上で連結されていない場合に励起周波数の光にさらされたときに第一の蛍光発光を生じ、標的配列上で連結されている場合に励起周波数の光にさらされたときに前記第一の蛍光発光とは異なる第二の蛍光発光を生じる前記遺伝子認識試薬と接触させることと、前記蛍光性芳香族部分を励起することによって前記試料中の前記標的配列の存在を決定することと、前記蛍光性芳香族部分によって前記試料中に生じた前記第二の蛍光シグナルの量を測定することとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本明細書に記載される遺伝子認識試薬の非限定的な例の協同的結合を示す概略図である。前記遺伝子認識試薬の配列は、リピートを含むRNA(配列番号1)への結合を表すために3’から5’の方向に描かれている。
図2図2、パネルA~Fは、核酸アナログの例示的な構造を示す。
図3図3は、例示的な核酸塩基の構造を示す。
図4A図4A図4Cは、例示的な二価の核酸塩基の構造を示す。
図4B図4A図4Cは、例示的な二価の核酸塩基の構造を示す。
図4C図4A図4Cは、例示的な二価の核酸塩基の構造を示す。
図5図5は、アミノ酸側鎖の例を示す。
図6図6は、実施例に記載される化学的構成要素(A、パネルA)、MPγPNAオリゴマー(B)およびRNA標的(C)を説明する。
図7図7は、P1~P4とT6とのUV融解プロファイルである。生理的に適切なバッファー中で調製されて、T6の濃度は1μMであり、各プローブの濃度は6μMであった。協同的結合の証拠は明確にP4とで観察された。
図8図8は、生理的に適切なバッファー中で8μMの鎖濃度でのP4-RNAヘテロデュプレックスのUV融解プロファイルである。8μMのP4をそれぞれのRNA標的と生理的バッファー中で以下の濃度、T1=8.0μM、T2=4.0μM、T4=2.0μM、T6=1.3μM、T8=1.0μMで混合することによって試料を調製し、90℃で5分間アニーリングした後に、室温まで徐々に冷却した。
図9図9は、標的中のr(CUGCUG)n結合部位の数の関数としての、RNAならびに完全マッチした配列およびミスマッチのある配列を含む対応するプローブ-RNAヘテロデュプレックスのUV融解遷移である。挿入図は、RNAとそれぞれ単一塩基ミスマッチおよび二重塩基ミスマッチを含むP5およびP6とのUV融解プロファイルである。
図10図10は、37℃で一時間インキュベートして345nmで励起した後の等モル濃度(P4=1μM、T1=1μM、T2=1/2、T4 1/4、T6=1/6、T8 1/8)でのP4-RNA二本鎖の蛍光スペクトルである。挿入図は、37℃でP4(1μM)をT8(1/8μM)に添加した後、およびP4(1μM)を[T1(1μM)+T8(1/8μM)]に添加した後の、時間に対する480nmでの蛍光シグナルである。
図11図11は、手持ち式のUVランプで照明した際の、図10に示される蛍光測定で使用された試料の写真。個々の成分の濃度は以下の通りであった。P4=1μM、T1=1μM、T2=1/2μM、T4=1/4μM、T6=1/6μMおよびT8=1/8μM。
図12図12は、P4によるr(CUGCUG)-RNA転写物の選択的結合。事前にアニーリングされたRNAとプローブとを37℃で4時間混合することによって試料を調製した。P4対全RNA結合部位の比率は、0(レーン3)、1/4(レーン4)、1/2(レーン5)、1/1(レーン6)であり、ミスマッチのあるP5については1/1(レーン7)であった。
図13図13は、P4によるT48からのMBNLの排除である。P4の添加前に、P-T48とGST-MBNL-FIとの複合体を形成させた。試料を、生理学的に適切なバッファー中でそれぞれ25nMおよび400nMの最終T48濃度およびGST-MBNL-FI濃度で調製した。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本出願で特定される様々な範囲での数値の使用は、特に明示しない限り、規定された範囲内の最小値と最大値のどちらの前にも「約」が付けられるかのように近似として示される。このように、規定された範囲の上下のわずかな変動を使用しても、前記範囲内の値と実質的に同一の結果を達成することができる。また、別段の指示がない限り、範囲の開示は、最小値と最大値との間のすべての値を含む連続的な範囲としても意図される。本明細書で使用される場合に、単数形(aおよびan)は一以上を指す。
【0017】
本明細書で使用される場合に、「含む(comprising)」という用語はオープンエンドであり、「含む(including)」、「含有する(containing)」または「~を特徴とする(characterized by)」と同義であり得る。「~から実質的になる(consisting essentially of)」という用語は、特許請求の範囲を、指定された材料または工程ならびに特許請求の範囲に記載された発明の1以上の基礎的で新規な特徴に実質的に影響しない材料または工程に限定する。「~からなる(consisting of)」という用語は、特許請求の範囲で特定されていないあらゆる要素、工程または成分を除外する。本明細書で使用される場合に、1以上の要素または工程を「含む(comprising)」実施形態はまた、限定されるものではないが、これらの指定された要素または工程「から実質的になる(consisting essentially of)」および「からなる(consisting of)」実施形態も含む。
【0018】
本明細書では、核酸中の標的配列の結合のための、例えば、核酸配列のリピート伸長を伴う疾患に関連するリピート伸長の結合のための組成物および方法が提供される。図1は、DM1で見られるRNAヘアピン構造におけるCUGリピートを標的とする、本明細書に記載される認識試薬(遺伝子認識試薬)の非限定的な例の協同的結合を示す概略図である。隣接するモジュール間の協同的結合は、この例では、以下の実施例に記載されるスタッキングしていない場合に380nmおよび480nmで発光し、スタッキングしている場合には480nmで発光する例示的なピレン基等の末端芳香族基によって促進される。複数の認識試薬は、ワトソン-クリックまたはワトソン-クリック様の協同的塩基対合によって鋳型核酸に結合する。細胞内では、鋳型核酸はRNAまたはDNA分子であるが、in vitroでは、鋳型核酸は、任意のRNAまたはDNA、ならびに修飾された核酸または核酸アナログであり得る。十分な近さの、例えば鋳型核酸上の隣接する配列に結合している認識試薬はπ-πスタッキングを介して連結するため、連結して本質的により長いオリゴマーまたはポリマーを形成することとなる。さらなる詳細は以下に示す。
【0019】
本明細書で使用される場合に、「患者」は、霊長類(例えば、ヒト、非ヒト霊長類、例えば、サルおよびチンパンジー)、非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ラクダ、ラマ、ウマ、ヤギ、ウサギ、ヒツジ、ハムスター、モルモット、ネコ、イヌ、ラット、マウス、ウマ、およびクジラ)を含む哺乳動物または鳥類(例えば、アヒルまたはガチョウ)等の動物である。
【0020】
本明細書で使用される場合に、「治療する」または「治療」という用語は、1以上の肝機能または疾患の症状の改善等の有益または所望の結果を指す。「治療する」または「治療」という用語には、限定されるものではないが、DM1、DM2またはハンチントン病等のリピート伸長疾患の1以上の症状の緩和または改善も含まれる。「治療」はまた、治療を行わない場合に予想される生存と比較した場合の生存の延長も意味し得る。
【0021】
疾患マーカーまたは症状の関連における「より低い」とは、そのようなレベルの臨床的に関連する減少および/または統計的に有意な減少を意味する。前記減少は、例えば少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%以上であり、そのような障害を有しない個体にとっての正常な範囲内として許容されるレベルまで、またはアッセイの検出レベルを下回るまでの減少であり得る。特定の態様では、前記減少は、レベルの正常化とも称せ得る、そのような障害を有しない個体にとっての正常な範囲内として許容されるレベルまでの減少である。特定の態様では、前記減少は、疾患の徴候または症状のレベルの正常化、前記疾患の徴候の対象体レベルと前記疾患についての徴候の正常なレベルとの間の差の減少である(例えば、正常値に到達するためには前記対象体に関する前記レベルを減少させねばならない場合には正常の上限レベルまで、および正常レベルに到達するためには前記対象体に関する前記値を増大させねばならない場合には正常の下限レベルまで)。特定の態様では、前記方法は、例えば、本明細書に記載される認識試薬による対象体の治療後の臨床的に関連する結果によって裏付けられるように、DM1、DM2またはハンチントン病等のリピート伸長疾患のmRNAの発現の臨床的に関連する阻害を含む。
【0022】
本明細書で使用される「治療的有効量」は、疾患を有する対象体に投与される場合に(例えば、既存の疾患または疾患の1以上の症状の軽減、改善または維持により)、前記疾患の治療をもたらすのに十分である本明細書に記載される認識試薬の量を含むことが意図される。前記「治療的有効量」は、認識試薬(薬剤)、薬剤の投与方法、疾患および疾患の重症度ならびに病歴、年齢、体重、家族歴、遺伝子構成、もしあれば先行治療または併用治療の種類、および治療されるべき対象体の他の個体特性に応じて変動し得る。
【0023】
「治療的有効量」はまた、任意の治療に適用可能な合理的な便益/リスク比で、幾つかの所望の局所的効果または全身効果を生ずる薬剤の量も含む。本明細書に記載される方法で使用される認識試薬薬剤は、そのような治療に適用可能な妥当な便益/リスク比をもたらすのに十分な量で投与され得る。
【0024】
本明細書で使用される「薬学的に許容可能な担体」という用語は、対象化合物をある臓器または身体の一部分から別の臓器または身体の別の部分に運搬または輸送することに関与する、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、製造助剤(例えば、滑沢剤、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムもしくはステアリン酸亜鉛、またはステアリン酸)または溶媒封入材料等の、薬学的に許容可能な材料、組成物またはビヒクルを意味する。各担体は、製剤の他の成分と適合性があり、治療されるべき対象体に有害でないという意味で「許容可能」でなければならない。薬学的に許容可能な担体として作用し得る材料の幾つかの例には、(1)糖類、例えば、ラクトース、グルコースおよびスクロース、(2)デンプン類、例えば、トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプン、(3)セルロースおよびセルロースの誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース、(4)粉末状トラガカント、(5)麦芽、(6)ゼラチン、(7)滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム(magnesium state)、ラウリル硫酸ナトリウムおよびタルク、(8)賦形剤、例えば、カカオバターおよび坐剤ワックス、(9)油類、例えば、落花生油、綿実油、ベニバナ油、ごま油、オリーブ油、トウモロコシ油および大豆油、(10)グリコール類、例えば、プロピレングリコール、(11)ポリオール類、例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール、(12)エステル類、例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル、(13)寒天、(14)緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム、(15)アルギン酸、(16)パイロジェンフリー水、(17)等張食塩水、(18)リンゲル溶液、(19)エチルアルコール、(20)pH緩衝液、(21)ポリエステル類、ポリカーボネート類および/またはポリ無水物類、(22)増量剤、例えば、ポリペプチド類およびアミノ酸類、(23)血清成分、例えば、血清アルブミン、HDLおよびLDL、ならびに(22)医薬製剤に使用される他の非毒性の適合性物質が含まれる。
【0025】
本明細書で使用される場合に、「細胞(cellおよびcells)」という用語は、限定されるものではないが、ラット、マウス、サルおよびヒト等の任意の動物由来の任意の種類の細胞を指す。例えば、限定されるものではないが、細胞は、幹細胞等の前駆細胞、または内皮細胞、平滑筋細胞等の分化細胞であり得る。特定の実施形態では、医療処置のための細胞は、自家処置のために患者から得ることができ、または同種異系処置のために他のドナーから得ることができる。
【0026】
「発現」または「遺伝子発現」とは、遺伝子産物(典型的には、タンパク質、任意に翻訳後修飾されたまたは機能的/構造的RNA)の産生のための遺伝子からの全体的な情報の流れを意味する(限定されるものではないが、細胞内でRNAもしくはタンパク質等の遺伝子産物を産生するための機能的遺伝単位、または核酸上にコードされ、転写プロモーターおよび他のシス作用エレメント、例えば応答エレメントおよび/またはエンハンサー、典型的にはタンパク質(オープンリーディングフレームまたはORF)または機能的/構造的RNAをコードする発現される配列ならびにポリアデニル化配列を含む他の発現系)。指定された配列の「転写制御下での遺伝子の発現」、あるいは指定された配列による「制御を受ける」とは、前記遺伝子に作動可能に連結された(典型的にはシスに機能的に結合された)前記指定された配列を含む遺伝子からの遺伝子発現を意味する。前記指定された配列は、転写要素(限定されるものではないが、プロモーター、エンハンサーおよび応答エレメント)の全部または一部分であってよく、遺伝子の転写を全体的または部分的に調節し、および/または遺伝子の転写に影響し得る。示された遺伝子産物の「発現のための遺伝子」は、適切な環境に置かれたとき、すなわち、例えば、細胞に形質転換、トランスフェクション、形質導入等がされて、発現に適した条件に供されたときに、前記示された遺伝子の産物を発現することができる遺伝子である。構成的プロモーターの場合に、「適切な条件」とは、遺伝子が典型的には宿主細胞に導入されることだけを必要とすることを意味する。誘導性プロモーターの場合に、「適切な条件」とは、遺伝子の発現を引き起こすのに有効な量のそれぞれのインデューサーが、発現系(例えば細胞)に投与される場合を意味する。
【0027】
本明細書で使用される場合に、「ノックダウン」という用語は、生物における1以上の遺伝子の発現が、機能的遺伝子に関して、例えば治療的に有効な程度まで、典型的には有意に低下することを意味する。遺伝子ノックダウンには、完全な遺伝子サイレンシングも含まれる。本明細書で使用される場合に、「遺伝子サイレンシング」は、遺伝子の発現が実質的に完全に妨げられることを意味する。ノックダウンおよび遺伝子サイレンシングは、転写段階または翻訳段階のいずれかで起こり得る。記載される認識試薬を使用してmRNA等の細胞内のRNAを標的とすると、翻訳段階で1以上の遺伝子をノックダウンまたはサイレンシングすることにより、遺伝子発現を改変することができる。
【0028】
本明細書で使用される場合に、「核酸」という用語は、デオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)を指す。核酸アナログには、例えば、限定されるものではないが、2’-O-メチル置換RNA、ロックド核酸、アンロックド核酸、トリアゾール結合DNA、ペプチド核酸、モルホリノオリゴマー、ジデオキシヌクレオチドオリゴマー、グリコール核酸、トレオース核酸および任意に1以上のリボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチド残基を含むそれらの組合せが含まれる。本明細書では、核酸および核酸アナログに関して「核酸」およびヌクレオチドで構成される短い一本鎖構造である「オリゴヌクレオチド」は区別なく使用される。オリゴヌクレオチドは、命名法「~マー」によって、鎖の長さ(すなわち、ヌクレオチドの数)によって言及され得る。例えば、22個のヌクレオチドのオリゴヌクレオチドは、22マーと言及されることとなる。
【0029】
「核酸アナログ」は、ポリマー骨格等の基質上に配置された核酸塩基の配列を含む組成物であり、ワトソン-クリック水素結合塩基対合またはワトソン-クリック様水素結合塩基対合によるハイブリダイゼーションによってDNAおよび/またはRNAを結合することができる。一般的な核酸アナログの非限定的な例には、ペプチド核酸、例えば、γPNA、モルホリノ核酸、ホスホロチオエート、ロックド核酸(オキシ型、チオ型またはアミノ型を含む2’-O-4’-C-メチレン架橋)、アンロックド核酸(C2’-C3’結合が切断されている)、2’-O-メチル置換RNA、トレオース核酸、グリコール核酸等が含まれる。
【0030】
立体構造的に事前組織化された核酸アナログは、前記核酸骨格の構造に応じて、右巻きヘリックスまたは左巻きヘリックスのいずれかのみを形成する骨格(予備組織化された骨格)を有する核酸アナログである。本明細書に示されるように、立体構造的に事前組織化された核酸アナログの一例は、γ炭素にキラル中心を有し、γ炭素にある基のキラリティーに応じて、そして前記キラリティーのため、右巻きヘリックスまたは左巻きヘリックスのみを形成するγPNAである。同様に、リボースを3’-エンド(ノース)コンフォメーションへと「ロック」する2’酸素と4’炭素との間の架橋を有するリボースを含むロックド核酸である。
【0031】
本開示の文脈において、「ヌクレオチド」は、少なくとも一つの核酸塩基と、RNAまたはDNA等の核酸においてリボースまたはデオキシリボースである骨格要素(骨格部)とを含むモノマーを指す。「ヌクレオチド」はまた、典型的には、特定の条件下での重合を可能にする反応性基を含む。天然のDNAおよびRNAでは、これらの反応性基は5’リン酸基および3’ヒドロキシル基である。核酸および核酸アナログの化学合成のために、塩基および骨格モノマーは、当該技術分野で知られているように、ブロックされたアミン等の修飾基を含み得る。「ヌクレオチド残基」は、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドに組み込まれている単一のヌクレオチドを指す。同様に、「核酸塩基残基」は、ヌクレオチドもしくは核酸または核酸アナログに組み込まれた核酸塩基を指す。「遺伝子認識試薬」は、包括的には、協同的塩基対合、例えばワトソン-クリック塩基対合またはワトソン-クリック様塩基対合によって核酸上の相補的核酸または核酸アナログ配列にハイブリダイズすることができる核酸塩基の配列を含む核酸または核酸アナログを指す。
【0032】
さらに詳細には、ヌクレオチドは、RNA、DNAまたは核酸アナログのいずれかについては、構造A-Bを有し、ここで、Aは骨格モノマー部であり、Bは本明細書に記載される核酸塩基である。骨格モノマーは、リボース三リン酸もしくはデオキシリボース三リン酸等の任意の適切な核酸骨格モノマー、またはペプチド核酸(PNA)、例えばガンマPNA(γPNA)等の核酸アナログのモノマーであり得る。一例では、骨格モノマーは、リボース一リン酸、二リン酸、若しくは、三リン酸またはデオキシリボース一リン酸、二リン酸、若しくは三リン酸、例えば、リボースまたはデオキシリボースの5’一リン酸、二リン酸、若しくは、三リン酸である。骨格モノマーは、RNA中のリボース等の構造的な「残基」成分と、モノマーをともに結合する際に改変される任意の活性基、例えばRNAへと重合する場合に改変されてホスホジエステル結合を残すリボヌクレオチドの5’三リン酸基および3’ヒドロキシル基の両方を含む。PNAの場合と同様に、N-(2-アミノエチル)グリシン骨格モノマーのC末端カルボキシル基およびN末端アミン活性基は、重合の間に縮合してペプチド(アミド)結合を残す。別の態様では、前記活性基は、当該技術分野で広く知られているように、ホスホロアミダイトオリゴマー合成に有用なホスホロアミダイト基である。前記ヌクレオチドはまた、任意に4,4’-ジメトキシトリチル(DMT)等の当該技術分野で知られる本明細書に記載される1以上の保護基を含む。合成遺伝子認識試薬を調製する多くの追加の方法が知られており、前記方法は骨格構造および塩基付加過程の特定の化学的特性に依存する。ヌクレオチドモノマーの結合にどの活性基を利用するか、前記塩基においてどの基を保護するかの決定と、オリゴマーの調製において必要とされる工程は、十分に化学技術、並びに、核酸および核酸アナログオリゴマー合成の分野の当業者の能力の範囲内である。
【0033】
一般的な核酸アナログの非限定的な例には、ペプチド核酸、例えば、γPNA、ホスホロチオエート(例えば、図2(A))、ロックド核酸(オキシ型、チオ型またはアミノ型を含む2’-O-4’-C-メチレン架橋、例えば図2(B))、アンロックド核酸(C2’-C3’結合が切断されている、例えば図2(C))、2’-O-メチル置換RNA、モルホリノ核酸(例えば図2(D))、トレオース核酸(例えば図2(E))、グリコール核酸(例えば図2(F)、R形およびS形を示す)等が含まれる。図2(A~F)は、核酸アナログの様々な例についてのモノマー構造を示している。図2(A~F)はそれぞれ、波線で示されているより長い鎖に組み込まれた二つのモノマー残基を示している。組み込まれたモノマーは、本明細書では「残基」と称され、前記核酸塩基を除く前記核酸または核酸アナログの部分は、前記核酸または核酸アナログの「骨格」と称される。一例としては、RNAの場合に、例示的な核酸塩基はアデニンであり、対応するモノマーはアデノシン三リン酸であり、組み込まれた残基はアデノシン一リン酸残基である。RNAの場合に、前記「骨格」はリン酸によって結合されたリボースサブユニットからなり、したがって、前記骨格モノマーは、組み込み前はリボース三リン酸であり、組み込み後はリボース一リン酸残基である。γPNAと同様に、ロックド核酸(図2(B))は予備組織化されたコンフォメーションを有する。
【0034】
「部分」は分子の一部分であり、一つのクラスとして、より大きな分子に化合物またはモノマーを組み込んだ後にポリマー鎖等のより大きな分子中に残る化合物またはモノマーの部分である「残基」、例えば核酸中に組み込まれた状態のヌクレオチドまたはポリペプチドもしくはタンパク質中に組み込まれた状態のアミノ酸を含む。
【0035】
「ポリマー組成物」という用語は、1以上のポリマーを含む組成物である。一つのクラスとして、「ポリマー」には、限定されるものではないが、ホモポリマー、ヘテロポリマー、コポリマー、ブロックポリマー、ブロックコポリマーが含まれ、天然および合成のどちらであってもよい。ホモポリマーは、一種類の構成要素またはモノマーを含む一方で、コポリマーは二種以上のモノマーを含む。「オリゴマー」は、例えば、3個~100個のモノマー残基等の少数のモノマーを含むポリマーである。したがって、「ポリマー」という用語にはオリゴマーが含まれる。「核酸」および「核酸アナログ」という用語には、核酸ならびに核酸ポリマーおよびオリゴマーが含まれる。
【0036】
ポリマーは、モノマーが前記ポリマーに組み込まれている場合に、指定されたモノマーを「含む」または指定されたモノマーから「得られる」。したがって、前記ポリマーに含まれる、組み込まれるモノマーは、ポリマー中に組み込む前のモノマーと同一ではなく、少なくとも特定の結合基が前記ポリマー骨格に組み込まれているか、または特定の基が重合過程で除去されている。ポリマー中に特定の種類の結合が存在する場合に、前記ポリマーは前記結合を含むと考えられる。組み込まれたモノマーは「残基」である。核酸または核酸アナログに典型的なモノマーは、ヌクレオチドと称される。
【0037】
「非反応性」により、化学部分、例えば、分子、化合物、組成物、基、部分、イオンなどの関連で、部分は、その使用目的において他の化学部分と実質的に反応しないことを意味する。非反応性部分は、認識試薬としての部分、部分、または基の使用目的を干渉しないか、またはほとんど干渉しないように選択される。本明細書中で記載するリンカー部分の関連で、それらは、認識試薬の標的鋳型に対する結合を干渉せず、かつ、標的鋳型上の認識試薬の連結を干渉しない点で、非反応性である。
【0038】
本明細書で使用される場合に、「アルキル」は、例えば1個~約20個の炭素原子を含む直鎖状、分岐鎖状または環状の炭化水素基および、例えば限定されるものではないが、C1~3基、C1~6基、C1~10基および、限定されるものではないが、直鎖状、分岐鎖状のアルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル等を指す。「置換されたアルキル」は、1以上の位置、例えば1、2、3、4、5またはさらには6の位置で置換されたアルキルを指し、前記アルキルの置換基は、任意の利用可能な原子で結合されて、本明細書に記載される置換を有する安定な化合物が生成される。「任意に置換されたアルキル」はアルキルまたは置換されたアルキルを指す。「ハロゲン」、「ハロゲン化物」および「ハロ」は、-F、-Cl、-Brおよび/または-Iを指す。「アルキレン」および「置換されたアルキレン」は、限定されるものではないが、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン(hepamethylene)、オクタメチレン、ノナメチレンまたはデカメチレンを含む、それぞれ二価のアルキルおよび二価の置換されたアルキルを指す。「任意に置換されたアルキレン」はアルキレンまたは置換されたアルキレンを指す。
【0039】
「アルケンまたはアルケニル」は、例えば2個~約20個の炭素原子を含む直鎖状、分岐鎖状または環状のヒドロカルビル基、例えば、限定されるものではないが、例えば1個、2個、3個、4個または5個の炭素と炭素との二重結合を有するC1~3基、C1~6基、C1~10基を指す。「置換されたアルケン」は、1以上の位置、例えば一つ、二つ、三つ、四つまたは五つの位置で置換されたアルケンを指し、前記アルケンの置換基は、任意の利用可能な原子で結合されて、本明細書に記載される置換を有する安定な化合物が生成される。「任意に置換されたアルケン」はアルケンまたは置換されたアルケンを指す。同様に、「アルケニレン」は二価のアルケンを指す。アルケニレンの例には、限定されるものではないが、エテニレン(-CH=CH-)ならびにエテニレンのすべての立体異性体および立体配座異性形が含まれる。「置換されたアルケニレン」は二価の置換されたアルケンを指す。「任意に置換されたアルケニレン」はアルケニレンまたは置換されたアルケニレンを指す。
【0040】
「アルキン」または「アルキニル」は、示された炭素原子数および少なくとも一つの三重結合を有する直鎖状または分岐鎖状の不飽和炭化水素を指す。(C~C)アルキニル基の例には、限定されるものではないが、アセチレン、プロピン、1-ブチン、2-ブチン、1-ペンチン、2-ペンチン、1-ヘキシン、2-ヘキシン、3-ヘキシン、1-ヘプチン、2-ヘプチン、3-ヘプチン、1-オクチン、2-オクチン、3-オクチンおよび4-オクチンが含まれる。アルキニル基は、非置換であるか、または本明細書で以下に記載される1以上の置換基で任意に置換されていてよい。「アルキニレン」という用語は、二価のアルキンを指す。アルキニレンの例には、限定されるものではないが、エチニレン、プロピニレンが含まれる。「置換されたアルキニレン」は二価の置換されたアルキンを指す。
【0041】
「アルコキシ」という用語は、示された炭素原子数を有する-O-アルキル基を指す。例えば、(C~C)アルコキシ基には、-O-メチル(メトキシ)、-O-エチル(エトキシ)、-O-プロピル(プロポキシ)、-O-イソプロピル(イソプロポキシ)、-O-ブチル(ブトキシ)、-O-sec-ブチル(sec-ブトキシ)、-O-tert-ブチル(tert-ブトキシ)、-O-ペンチル(ペントキシ)、-O-イソペンチル(イソペントキシ)、-O-ネオペンチル(ネオペントキシ)、-O-ヘキシル(ヘキシルオキシ)、-O-イソヘキシル(イソヘキシルオキシ)および-O-ネオヘキシル(ネオヘキシルオキシ)が含まれる。「ヒドロキシアルキル」は、アルキル基の水素原子の1以上が-OH基で置換されている(C~C10)アルキル基を指す。ヒドロキシアルキル基の例には、限定されるものではないが、-CHOH、-CHCHOH、-CHCHCHOH、-CHCHCHCHOH、-CHCHCHCHCHOH、-CHCHCHCHCHCHOH、およびそれらの分岐型が含まれる。「エーテル」または「酸素エーテル」という用語は、アルキル基の炭素原子の1以上が-O-基で置換されているアルキル基を指す。エーテルという用語には、Pが保護基、-Hまたは(C~C10)アルキルである-CH-(OCH-CHOP化合物が含まれる。例示的なエーテルには、ポリエチレングリコール、ジエチルエーテル、メチルヘキシルエーテル等が含まれる。
【0042】
「PEG」はポリエチレングリコールを指す。「PEG化」とは、2個以上の連続したエチレングリコール部分を含む、部分を含む化合物を指す。化合物のPEG化のためのPEG部の非限定的な例には、-(O-CH-CH-、-(CH-CH-O)-または-(O-CH-CH-OH(nは2~50の範囲である)等の1個~50個のエチレングリコール部の1以上の鎖のブロックが含まれる。
【0043】
「ヘテロ原子」とは、N、O、PおよびSを指す。N原子またはS原子を含む化合物は、任意に対応するN-オキシド化合物、スルホキシド化合物またはスルホン化合物に酸化され得る。「ヘテロ置換された」とは、1以上の炭素原子がN、O、PまたはSで置換されている本明細書に記載される任意の実施形態における有機化合物を指す。
【0044】
「アリール」は、単独でまたは組み合わされて、フェニルまたはナフチル等の芳香族環系を指す。「アリール」には、シクロアルキル環と任意に縮合された芳香族環系も含まれる。「置換されたアリール」は、任意の利用可能な原子に結合した1以上の置換基で独立して置換されて安定な化合物が生成されたアリールであり、ここで、前記置換基は本明細書に記載される通りである。「任意に置換されたアリール」はアリールまたは置換されたアリールを指す。「アリーレン」は二価のアリールを示し、「置換されたアリーレン」は二価の置換されたアリールを指す。「任意に置換されたアリーレン」はアリーレンまたは置換されたアリーレンを指す。本明細書で使用される場合に、「多環式アリール基」という用語および「多環式芳香族基」等の関連する用語は、少なくとも二つの縮合芳香族環から構成される基を意味する。「ヘテロアリール」または「ヘテロ置換されたアリール」は、N、O、Pおよび/またはS等の1以上のヘテロ原子で置換されたアリール基を指す。
【0045】
「シクロアルキル」とは、飽和、不飽和または芳香族のいずれかである単環式、2環式、3環式または多環式の3員環系~14員環系を指す。前記シクロアルキル基は、任意の原子を介して結合されていてもよい。シクロアルキルには、シクロアルキルがアリール環またはヘテロアリール環に縮合されている縮合環も検討される。シクロアルキルの代表的な例には、限定されるものではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルが含まれる。シクロアルキル基は、非置換であるか、または本明細書で以下に記載される1以上の置換基で任意に置換されていてよい。「シクロアルキレン」は、二価のシクロアルキルを指す。「任意に置換されたシクロアルキレン」という用語は、任意の利用可能な原子に結合した1、2または3個の置換基で置換されて安定な化合物が生成されたシクロアルキレンを指し、ここで、前記置換基は本明細書に記載される通りである。
【0046】
「カルボキシル」または「カルボキシルの(carboxylic)」とは、示された場合に、示された炭素原子数を有し、-C(O)OH基を末端とし、したがって構造-R-C(O)OHを有する基を指し、ここで、Rは直線状、分岐状または環状の炭化水素を含む二価の有機基である。これらの非限定的な例には、C1~8カルボキシル基、例えば、エタノイック、プロパノイック、2-メチルプロパノイック、ブタノイック、2,2-ジメチルプロパノイック、ペンタノイック等が含まれる。「アミン」または「アミノ」とは、示された場合に示された炭素原子数を有し、-NH基を末端とし、したがって構造-R-NHを有する基を指し、ここで、Rは、直線状、分岐状または環状の炭化水素を含み、任意に1以上のヘテロ原子を含む非置換または置換された二価の有機基である。
【0047】
上記を組み合わせた用語は、上記の任意の適切な組合せ、例えば、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロシクリルアルケニル、ヘテロシクリルアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルキルアリールアルキル、アルキルアリールアルケニル、アルキルアリールアルキニル、アルケニルアリールアルキル、アルケニルアリールアルケニル、アルケニルアリールアルキニル、アルキニルアリールアルキル、アルキニルアリールアルケニル、アルキニルアリールアルキニル、アルキルヘテロアリールアルキル、アルキルヘテロアリールアルケニル、アルキルヘテロアリールアルキニル、アルケニルヘテロアリールアルキル、アルケニルヘテロアリールアルケニル、アルケニルヘテロアリールアルキニル、アルキニルヘテロアリールアルキル、アルキニルヘテロアリールアルケニル、アルキニルヘテロアリールアルキニル、アルキルヘテロシクリルアルキル、アルキルヘテロシクリルアルケニル、アルキルヘテロシクリルアルキニル、アルケニルヘテロシクリルアルキル、アルケニルヘテロシクリルアルケニル、アルケニルヘテロシクリルアルキニル、アルキニルヘテロシクリルアルキル、アルキニルヘテロシクリルアルケニル、アルキニルヘテロシクリルアルキニル、アルキルアリール、アルケニルアリール、アルキニルアリール、アルキルヘテロアリール、アルケニルヘテロアリール、アルキニルヘレロアリール(alkynylhereroaryl)を指す。一例として、「アリールアルキレン」とは、アルキレン基中の1以上の水素原子が(C~C)アリール基等のアリール基によって置換されている二価のアルキレンを指す。(C~C)アリール-(C~C)アルキレン基の例には、限定されるものではないが、1-フェニルブチレン、フェニル-2-ブチレン、1-フェニル-2-メチルプロピレン、フェニルメチレン、フェニルプロピレンおよびナフチルエチレンが含まれる。「(C~C)シクロアルキル-(C~C)アルキレン」という用語は、C~Cアルキレン基中の1以上の水素原子が(C~C)シクロアルキル基によって置換されている二価のアルキレンを指す。(C~C)シクロアルキル-(C~C)アルキレン基の例には、限定されるものではないが、1-シクロプロピルブチレン、シクロプロピル(cycloproyl)-2-ブチレン、シクロペンチル-1-フェニル-2-メチルプロピレン、シクロブチルメチレンおよびシクロヘキシルプロピレンが含まれる。
【0048】
「アミノ酸」は、HN-C(R)-C(O)OHの構造を有し、ここで、Rは、アミノ酸側鎖等の側鎖である。「アミノ酸残基」は、アミノ酸鎖へと組み込まれた場合の、例えば構造-NH-C(R)-C(O)-、HN-C(R)-C(O)-(ポリペプチドのN末端にある場合)または-NH-C(R)-C(O)OH(ポリペプチドのC末端にある場合)を有する、本明細書に開示される認識試薬に組み込まれた場合のアミノ酸の残部を表す。「アミノ酸側鎖」は、タンパク質原性または非タンパク質原性のアミノ酸を含む、アミノ酸の側鎖である。アミノ酸は、構造:
【化1】
を有し、ここでRはアミノ酸側鎖である。アミノ酸側鎖の非限定的な例は図5に示されている。グリシン(HN-CH-C(O)OH)は側鎖を有しない。
【0049】
「ペプチド核酸」とは、DNAまたはRNAの糖ホスホジエステル骨格がN-(2-アミノエチル)グリシン単位によって置き換えられている、核酸アナログまたはDNA模倣物もしくはRNA模倣物を指す。ガンマPNA(γPNA)は、以下の構造:
【化2】
のγ-修飾N-(2-アミノエチル)グリシンモノマーのオリゴマーまたはポリマーであり、ここで、ガンマ炭素に結合したRまたはRの少なくとも一つは水素ではないため、ガンマ炭素はキラル中心である。RおよびRが水素である場合(N-(2-アミノエチル)-グリシン骨格)または同一のものである場合、ガンマ炭素についてはそのようなキラリティーはない。組み込まれたPNAまたはγPNAモノマー
【化3】
は、本明細書では、オリゴマーへとインテグレションした後の残存する構造に関して、PNAまたはγPNA「残基」と称され、ここで、各残基は、塩基(核酸塩基)として同一または異なるR基、例えば、アデニン塩基、グアニン塩基、シトシン塩基、チミン塩基およびウラシル塩基または他の塩基、例えば本明細書に記載される前記の一価の塩基および二価の塩基を有し、こうして、前記PNA上の塩基の順序は、DNAまたはRNAと同様に塩基の「配列」である。核酸または核酸アナログのオリゴマーまたはポリマー、例えばPNAまたはγPNAオリゴマーまたはポリマー中の核酸塩基の配列は、核酸鎖または核酸アナログ鎖におけるアデニン残基、グアニン残基、シトシン残基、チミン残基および/またはウラシル残基の相補配列に、実質的に二本鎖DNAまたはRNAと同様に、ワトソン-クリック方式またはワトソン-クリック様方式での核酸塩基対合によって結合する。
【0050】
「グアニジン」または「グアニジニウム」基を認識試薬に加えることで、溶解度および/または生物学的利用能を高めることができる。PNAは合成ペプチドと同様に生産されるため、グアニジン基を付加する簡単な方法は、1以上の末端アルギニン(Arg)残基をPNA、例えばγPNA認識試薬のN末端および/またはC末端に付加することである。同様に、アルギニン側鎖、
【化4】
もしくはグアニジン含有部分、例えば、
【化5】
ここで、nは、例えば、限定されるものではないが、1~5の範囲である、
または、その塩は、本明細書に記載される認識試薬骨格に結合され得る。グアニジン含有基は、グアニジン部分を含む基であり、100個未満の原子、50個未満の原子、例えば30個未満の原子を有し得る。一態様では、前記グアニジン含有基は、構造:
【化6】
を有し、
ここで、Lは、本明細書に記載される任意の態様によるリンカー、例えば、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレンまたはペンタメチレンリンカー等の非反応性脂肪族ヒドロカルビルリンカーである。複数の態様では、前記グアニジン含有基は構造:
【化7】
を有し、
ここで、nは、1~5であり、例えば、前記グアニジン基はアルギニンであり得る。
【0051】
「核酸塩基」には、主要な核酸塩基、すなわち、アデニン、グアニン、チミン、シトシンおよびウラシルだけでなく、改変されたプリン塩基およびピリミジン塩基、例えば、限定されるものではないが、ヒポキサンチン、キサンテン、7-メチルグアニン、5,6-ジヒドロウラシル、5-メチルシトシンおよび5-ヒドロキシメチルシトシンが含まれる。図3および図4A~4Cはまた、一価の核酸塩基(例えば、核酸または核酸アナログの1つの鎖に結合するアデニン、シトシン、グアニン、チミンまたはウラシル)およびDNAの2つの鎖上の相補的な核酸塩基に同時に結合する二価の核酸塩基(例えば、本明細書に記載されるJB1~JB16)および増強された強度で相補的な核酸塩基に結合する「Gクランプ」等の「クランプ」核酸塩基を含む核酸塩基の非限定的な例を示す。さらなるプリン、プリン様、ピリミジンおよびピリミジン様の核酸塩基は、例えば、米国特許第8,053,212号明細書、同第8,389,703号明細書、および同第8,653,254号明細書に開示されているように当該技術分野で知られている。図4Aに示される二価の核酸塩基JB1~JB16の場合に、表Aは種々の核酸塩基の特異性を示している。注目すべきことに、JB1~JB4シリーズは相補的な塩基(C-G、G-C、A-TおよびT-A)に結合する一方で、JB5~JB16はマッチおよび/またはミスマッチのある塩基の2つの鎖を結合するために使用され得る。二価の核酸塩基は、米国特許出願公開第20160083434号明細書および国際公開第2018/058091号にさらに詳細に記載されており、どちらも引用することにより本明細書の一部をなす。
【0052】
【表A】
【0053】
本明細書に記載されるようにアリール基で末端修飾されていないが、本明細書に記載されている通りであり得る例示的なγPNA構造は、国際公開第2012/138955号に開示され、前記国際公開は、引用することにより本明細書の一部をなす。
【0054】
相補的とは、ポリヌクレオチド(核酸)が互いにハイブリダイズして、鎖間塩基対を形成する能力を指す。塩基対は、逆平行ポリヌクレオチド鎖においてヌクレオチド単位間の水素結合によって形成される。相補的なポリヌクレオチド鎖は、ワトソン-クリック方式(例えば、AとT、AとU、CとG)、またはデュプレックスの形成を可能にする任意の他の方式で塩基対合(ハイブリダイズ)することができる。DNAではなくRNAを使用する場合に、アデノシンに相補的な塩基はチミンではなくウラシルである。相補的な配列を含む二つの配列は、それらが、水、生理食塩水(例えば、通常生理食塩水、または0.9%(重量/容量)の生理食塩水)またはリン酸緩衝生理食塩水等の特定された条件下で、または他のストリンジェンシー条件下で、例えば限定されるものではないが、0.1×SSC(生理食塩水クエン酸ナトリウム)~10×SSC(ここで、1×SSCは水中の0.15MのNaClおよび0.015Mのクエン酸ナトリウムである)下でデュプレックスを形成する場合にハイブリダイズすることができる。相補的な配列のハイブリダイゼーションは、例えば、塩濃度および温度によって規定され、ここで、ミスマッチの増加およびストリンジェンシーの増加に伴って融解温度(Tm)は低下する。完全マッチした配列は「完全に相補的」であると言われるが、リピート伸長を含むmRNA等の連結が行われる大幅により長い標的配列に対する本明細書に記載される小さな認識試薬のように、ある配列(例えば、mRNA中の標的配列)は他の配列より長い場合がある。
【0055】
伸長したトリヌクレオチドリピートを含む毒性RNAは多くの神経筋障害の原因であり、一つは筋強直性ジストロフィーI型(DMI)である。DMIは、DMP K遺伝子の3’-UTR中のCTGリピート伸長によって引き起こされることから、中でもMBNLIタンパク質の滞留によってRNA機能の毒性獲得がもたらされる。本明細書には、配列特異的かつ選択的に反復核酸配列等の核酸配列に結合することができる短いプローブが記載されている。例えば、実施例に記載されるように、末端ピレン部を含む二つのトリプレットリピートの長さの短いPNAプローブは、配列特異的かつ選択的にrCUGリピートに結合することができることが実証されている。このプローブは、病原性rCUGexpを野生型の転写物から区別し、rCUGexp-MBNL1複合体を破壊させることができる。したがって、複数の態様では、本明細書では、DMIおよび他の関連する神経筋障害に関連するRNAリピート伸長を標的とするための、遺伝子認識試薬と称される短い核酸プローブが記載される。
【0056】
本明細書に記載される方法および組成物は、従来のアンチセンスおよびアンチジーンアプローチが現在直面している三つの主要な困難を克服する。一つ目の困難は、オリゴヌクレオチド合成の規模およびコストに関するものである。オリゴヌクレオチドは慣例的に固体支持体上で段階的に合成されるため、生産の規模を拡大することは難しい。これは、オリゴヌクレオチド治療薬に対する高コストかつ満たされていない需要につながる。前記認識試薬のサイズが比較的小さく、長さが3~8ヌクレオチドであり、小分子および生体模倣物の分子量に近いため、本明細書に記載される方法および組成物はこの課題を克服する。本明細書に記載される化合物は、収束的な、液相合成法を使用して大規模に製造することができ、これは製造コストの低下およびこれらの治療用材料へのアクセス可能性の向上につながることとなる。
【0057】
二つ目の困難は、細胞送達、詳細にはこれらの核酸プローブを細胞膜の脂質二重層を横断して、どのようにして標的細胞の細胞質および核に到達させるかに関するものである。ほとんどのオリゴヌクレオチドは、分子量が比較的大きいため細胞膜を透過しない。オリゴヌクレオチドの細胞への送達は、トランスフェクション試薬、または機械的もしくは電気的形質導入の補助を必要とすることとなる。これらのアプローチは、オリゴヌクレオチドおよび他の巨大分子を細胞内に輸送するために効果的に使用されてきたが、小規模な規模拡大、in vitro(組織培養)実験構成に限定される。in vivoでは、特に中枢神経系の疾患の場合に、全身送達(遺伝性疾患およびほとんどの感染性疾患の治療に必要)が依然として問題である。本発明では、前記認識試薬のサイズの縮小および化学修飾の柔軟性のため、この制限が克服される。前記認識試薬のサイズが比較的小さいことで、前記認識試薬は細胞によってより容易に取り込まれ、核膜に対してより透過性である。さらに、γPNA等のPNAに関して、前記PNAの合成の柔軟性のため、任意の化学基をPNAの骨格に組み込むことができ、これらの認識試薬は、特定の化学官能基で容易に修飾して、細胞取り込みおよび全身送達を促進することができる。
【0058】
三つ目の困難は、非特異的結合および細胞毒性効果である。細胞に導入されたときに、10ヌクレオチド~30ヌクレオチドの長さの合成または他の方法での裸のオリゴヌクレオチドは、その指定された標的だけでなく、関連する配列を有する他のたくさんのDNA領域またはRNA領域にも結合する。そのような非特異的結合はプローブを捕捉することから、プローブが自由に拡散してプローブの標的を探して結合することを妨げる。非特異的結合によるプローブの有効濃度の低下は有効性の低下につながる。さらに、そのような非特異的結合は、遺伝子発現の誤調節および/または他の主要なタンパク質の機能の混乱の結果として細胞毒性効果をもたらす場合もある。実際、非特異的結合は、オリゴヌクレオチド治療薬(および小分子薬物)の副作用の主な原因であるとされており、現在のところ解決の糸口はつかめていない。本発明は、短い認識試薬(典型的には長さが3ヌクレオチド~8ヌクレオチド)と標的との間の弱い相互作用を利用することによりこの制限を克服している。この弱い「キッシング」相互作用により、モジュールは、その標的を探すにあたり細胞内環境中を自由に拡散することが可能となる。この場合に、その指定された標的は、「ランダム」な「単一結合部位」のヒットとは、前記標的が、協同的に隣接した塩基のスタッキングによって隣り合って集成して、「ネイティブ・ケミカル・ライゲーション」反応を開始することで、一連の様々な長さの伸長したオリゴマーを形成することを可能にする反復配列エレメントを含むという点で異なる。
【0059】
現在、表Bに示されるように、ヌクレオチド配列の不安定なリピート伸長に関連する幾つかの既知の遺伝病がある。標的、この場合にはDNAまたはRNAの三次元構造がタンパク質と比較して単調であることが課題である。これにより、小分子が特定の部位を多数の他のDNAまたはRNA配列から区別することが困難になる。
【0060】
「小分子薬物」アプローチに対する本発明の利点は、突然変異の速さが急速であるため標的が急速に進化する癌の治療ならびに細菌、ウイルス、および寄生虫感染との闘いにある。腫瘍形成性クローン、ならびに本方法およびアプローチで標的とされる可能性のある細菌性、ウイルス性、および寄生性の病原体のゲノムおよびトランスクリプトーム内に保存された反復エレメントが多数存在する。これらの腫瘍細胞または病原体が、本明細書に記載されるこれらの認識試薬を回避して耐性を獲得する可能性は、「小分子-タンパク質認識」アプローチと比較すると、DNA/RNA鋳型内のすべてのリピート要素で変異が発生する必要があるため、まずあり得ない。
【0061】
本明細書に記載される認識試薬は、前記認識試薬が細胞の細胞質および/または核に入るまで化学的に不活性であるように設計されており、その条件下で前記認識試薬は核酸中の相補的配列にハイブリダイズし、別の認識試薬がハイブリダイズする配列に隣接する場合は、前記認識試薬の隣接する芳香族基がスタッキングし、それにより前記認識試薬は連結される。前記認識試薬は、前記認識試薬のDNA標的またはRNA標的を、隣接するモジュールがそれらの末端アリール基のπ-πスタッキング(「πスタッキング」)を介して非共有結合的に連結して、伸長して連結されたオリゴマーが、例えば図1に示されるようにヘッドトゥーテイル(head-to-tail)様式で形成される協同的なワトソン-クリック(またはワトソン-クリック様水素結合)塩基対合相互作用によって認識し結合する。前記認識試薬の分子内対分子間のπスタッキングの割合は、認識試薬の骨格の剛性を調整することによって制御することができ、ここで剛性の、例えば立体構造的に事前組織化された骨格、例えばγPNAまたはLNA骨格により、末端芳香族基の分子内πスタッキング、したがって前記認識試薬の潜在的な不活性化は制限される。つまり、幾らかの分子内πスタッキングが発生したとしても、その標的配列にハイブリダイズするときに、前記認識試薬は「広がる」ことができる。前記標的配列の存在下では、前記標的配列へのハイブリダイゼーションおよび連結が優勢である。
【0062】
本明細書に記載される認識試薬は、低分子の特徴、例えば、低分子量、大規模生産の容易さ、低い生産コスト、細胞透過性、および望ましい薬物動態と、ワトソン-クリック塩基対合を介した配列特異的なオリゴヌクレオチド認識とを兼ね備えている。オリゴマー認識試薬の連結は、幾つかの例にしたがって示され説明されたが、それらの例は、すべての態様において説明することを意図するものであって、限定することを意図するものではない。したがって、本発明は、詳細な実装において多くの変更が可能である。
【0063】
本明細書に記載される認識試薬のための用途の例は、表Bに列挙される遺伝子疾患等の小さな配列のリピート伸長を伴う遺伝子疾患の治療におけるものである。
【0064】
【表B】
【0065】
表Bに基づいて、前記の遺伝子産物を標的とする認識試薬は、5’から3’方向で配列:GAA、CGG、CCG、CAG、CTG、CCTG、ATTCT、およびGGGGCC、または前記配列に相補的な配列、例えばRNAを標的とするためにはTTC、CCG、CGG、CTG、CAG、CAGG、AGAATまたはGGCCCCを含むか、またはGAA、CGG、CCG、CAG、CTG、CCTG、ATTCT、およびGGGGCCのリピートを含む標的配列もしくは前記配列に相補的な配列にハイブリダイズする。
【0066】
本発明の他の潜在的な用途は、癌(テロメア)、細菌感染(耐性株、病原性株に特有の反復エレメントおよび保存エレメントを標的とする)、C型肝炎(世界人口の3%が罹患し、ウイルスRNAゲノム内の反復エレメントを標的とすることによる有効な治療が存在しない)、マラリア(マラリア原虫の複製およびライフサイクルに不可欠であることが示されているマイクロサテライトを標的とする)、およびAIDS(これは、新しい突然変異配列を、前記認識試薬中の対応する核酸塩基配列のダイアルイン(dialing-in)により追い掛けることができる迅速に動く標的である)の治療におけるものである。
【0067】
したがって、本明細書では、前記核酸鋳型上で集成し、前記鋳型上で互いに協同的に結合して連結する認識試薬(修飾核酸)が提供される。前記認識試薬は、末端芳香族(アリール)基、例えば、2員環~5員環の、または8個~20個の環もしくは環原子を含む縮合環多環式芳香族基を末端(例えば、核酸または核酸アナログに対する5’末端および3’末端)に含む、例えば、3個~10個の塩基、例えば、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個の塩基または3個~8個の塩基の長さの核酸または核酸アナログのオリゴマーである。縮合環多環式芳香族基の非限定的な例には、ペンタレン、インデン、ナフタレン、アズレン、ヘプタレン、ビフェニレン、as-インダセン、s-インダセン、アセナフチレン、フルオレン、フェナレン、フェナントレン、アントラセン、フルオランテン、アセフェナントリレン、アセアントリレン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、ナフタセン/テトラセン、プレイアデン、ピセンおよびペリレンが含まれ、これらのすべては化学技術において広く知られている。前記芳香族基は、その構造中の任意の適切な結合点で任意の適切な様式で、例えばリンカーを用いて、任意の適切な結合化学を使用して前記認識試薬骨格に結合されている。例えば、以下の例に示されるように、アミノ酸または2個のアミン基を含むアミノ酸、例えば、ジアミノ酪酸(Dab)、オルニチン(Orn)またはリジン(Lys)は、カルボキシル官能化された芳香族化合物、例えばピレンについての例として、ピレン-1-カルボン酸、ピレン-2-カルボン酸、ピレン-4-カルボン酸、ピレン-1-酢酸、ピレン-2-酢酸またはピレン-4-酢酸に結合されて、前記リンカー中にアミド結合が形成され得る。
【0068】
前記芳香族基は、前記芳香族基がヘテロ原子を含まない、または環のいずれかに1以上のヘテロ原子、例えばS、OもしくはNを含むという点で、ヘテロ環式または非ヘテロ環式であり得る。さらに、前記芳香族基は、標的配列へのハイブリダイズおよび連結における前記認識試薬の機能を実質的に干渉しない1以上の非反応性基で置換されてもよい。
【0069】
さらに、前記芳香族基は、前記認識試薬を連結するためのその使用とは別の機能を有し得る。複数の態様では、前記芳香族基は、ビタミン等の抗酸化物質、またはリボフラビン(ビタミンB2)、マンゴスチンもしくはマンギフェリン等の抗酸化物質、または果物および野菜中に存在する他の天然の芳香族抗酸化物質、例えば酸化的ストレス、炎症、癌、老化もしくは他の病気に対抗するための一般的に使用される栄養補助食品である。
【0070】
複数の態様では、前記遺伝子認識試薬は、γPNAおよびロックド核酸骨格と同様に剛性であるか、または予備組織化されたコンフォメーションを有する。すべてのヌクレオチド配列は、別段の指示がない限り、左から右へと5’から3’の方向で示される。平行方向または逆平行方向でハイブリダイズし得るPNAオリゴマーの関連において、別段の指示がない限り、その配列は、それらの相補的な核酸鎖に対する特異的なワトソン-クリック結合またはワトソン-クリック様結合に関連して、核酸塩基配列に対して5’から3’の方向で示される。
【0071】
化合物の部分、例えば、アリール部分または核酸塩基は認識試薬骨格と共有結合し、したがって、骨格に「連結」されるといわれる。化合物を調製するために使用される化学的性質に応じて、結合は直接的であってもよいし、または二つの他の部分または基と共有結合する部分である「リンカー」を介してであってよい。一態様において、末端芳香族(アリール)基はリンカーを介して認識試薬に結合される。リンカーは、芳香族基を認識試薬の骨格に連結させる非反応性部分であり、そして、いくつかの態様では、ヘテロ原子、例えば、N、S、若しくはOで任意に置換されていてもよい、1~10個の炭素原子(C~C10)、または、非反応性結合、例えば、アミンをカルボキシル基と反応させることによって形成されるアミド結合(ペプチド結合)である。C~C10アルキレンの例は、任意に環状部分を含んでもよい、線状若しくは分枝状アルキレン(二価)部分、例えば、任意にアミド結合を含んでもよい、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン(hepamethylene)、オクタメチレン、ノナメチレン、またはデカメチレン部分(すなわち、-CH-[CH-であり、ここで、n=1~9)である。リンカーは、認識試薬の標的核酸に対する結合を、実質的に、立体的に遮蔽または他の方法で干渉せず、標的核酸上の認識試薬の連結を干渉しない点で、嵩高くない。リンカーは、認識試薬の芳香族基および骨格の連結に起因する残存部分、例えば、
【化8】
、または、非限定的な一例では、ピレン-1-酢酸等の酢酸置換アリール化合物(A)のDab(n=1)、Orn(n=2)、またはLys(n=3)残基に対する結合に起因する、
【化9】
である。
【0072】
さらなる態様において、リンカーまたは連結基は、化合物の二つの部分と接続する、例えば、化合物の二つの部分と共有結合する有機部分、例えば本発明の関連で限定されるものではないが、認識試薬の骨格に対する芳香族基の接続、核酸若しくは核酸アナログ骨格に対する核酸塩基の接続、および/または認識試薬に対するグアニジウム基の接続である。リンカーは、典型的には、直接結合または酸素もしくは硫黄等の原子、C(O)、C(O)NH、SO、SO、SONHもしくは原子鎖等の単位、例えば、限定されるものではないが、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアルケニル、置換もしくは非置換のアルキニル、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロシクリルアルケニル、ヘテロシクリルアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルキルアリールアルキル、アルキルアリールアルケニル、アルキルアリールアルキニル、アルケニルアリールアルキル、アルケニルアリールアルケニル、アルケニルアリールアルキニル、アルキニルアリールアルキル、アルキニルアリールアルケニル、アルキニルアリールアルキニル、アルキルヘテロアリールアルキル、アルキルヘテロアリールアルケニル、アルキルヘテロアリールアルキニル、アルケニルヘテロアリールアルキル、アルケニルヘテロアリールアルケニル、アルケニルヘテロアリールアルキニル、アルキニルヘテロアリールアルキル、アルキニルヘテロアリールアルケニル、アルキニルヘテロアリールアルキニル、アルキルヘテロシクリルアルキル、アルキルヘテロシクリルアルケニル、アルキルヘテロシクリルアルキニル、アルケニルヘテロシクリルアルキル、アルケニルヘテロシクリルアルケニル、アルケニルヘテロシクリルアルキニル、アルキニルヘテロシクリルアルキル、アルキニルヘテロシクリルアルケニル、アルキニルヘテロシクリルアルキニル、アルキルアリール、アルケニルアリール、アルキニルアリール、アルキルヘテロアリール、アルケニルヘテロアリール、アルキニルヘテロアリールを含み、ここで、1個以上の炭素、例えばメチレンまたはメチリジン(-CH=)は、任意にO、SもしくはN等のヘテロ原子、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のヘテロ環式化合物によって中断または終端化されている。一態様では、前記リンカーは、約5個から25個の間の原子、例えば5個~20個、5個~10個、例えば5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個または20個の原子、または全体で1個~10個、例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個のCおよびヘテロ原子、例えばO原子、P原子、N原子またはS原子を含む。
【0073】
γPNA等のPNAへの結合のためには、適切で利用可能なリンカーは、例えばアミノ酸を前記認識試薬に付加させるためによく知られたペプチド合成化学を使用して、アミンとカルボキシル基とが反応してアミド結合を形成するリンカーであり、ここで、前記アミノ酸は、アリール部分等の化学部分またはグアニジン基で、以下の例に示されるように予め修飾されていてよく、アリール修飾されたアミノ酸の付加によりピレンアリール部分が前記認識試薬に結合され、アルギニンの使用により前記グアニジン部分が得られる。非ペプチド核酸アナログへの結合は、広く知られている任意の適切な結合化学、例えば、カルボジイミド化学、例えばEDC(EDAC、1-エチル-3-[3-ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩)を使用して、アミン修飾されたAr基を前記認識試薬へと、例えば末端リン酸を介して結合することで達成される。
【0074】
前記芳香族基を前記認識試薬の骨格に結合させるにあたり、前記リンカーは、本明細書に記載される標的核酸配列上での前記認識試薬の連結の間に前記芳香族基をπ-πスタッキングのための位置に配置するのに適切なサイズまたは長さを有する。
【0075】
本発明の一態様によれば、3個以上、例えば3個~10個または3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個もしくは10個、または3個~8個の任意に立体構造的に事前組織化された核酸または核酸アナログ骨格残基から作製された第一の末端および第二の末端を有する核酸または核酸アナログ骨格と、複数の前記核酸または核酸アナログ骨格残基に対する配列で接続または結合された同一または異なってよい核酸塩基の配列と、前記核酸または核酸骨格の前記第一の末端に結合された第一のアリール部分と、前記核酸または核酸骨格の前記第二の末端に結合された前記第一のアリール部分と任意に同一である第二のアリール部分とを含む認識試薬が提供される。前記アリール部分は、独立して、2員環~5員環の縮合多環式芳香族部分、例えば2個~5個の縮合環を有する置換または非置換のアリール部分またはヘテロアリール部分、例えば、限定されるものではないが、任意にO、Nおよび/またはS等の1以上のヘテロ原子で置換された、非置換または置換されたペンタレン、インデン、ナフタレン、アズレン、ヘプタレン、ビフェニレン、as-インダセン、s-インダセン、アセナフチレン、フルオレン、フェナレン、フェナントレン、アントラセン、フルオランテン、アセフェナントリレン、アセアントリレン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、ナフタセン/テトラセン、プレイアデン、ピセンまたはペリレン、例えばキサンテン、リボフラビン(ビタミンB2)、マンゴスチンまたはマンギフェリンであり、同一または異なってよく、複数の態様では同一であるが、ただし、各々は、認識試薬が標的核酸の隣接配列にハイブリダイズすると、隣接する認識試薬のAr基とスタッキングする。
【0076】
本発明の一態様によれば、構造:
【化10】
ここで、Rは、独立して、核酸塩基であり、Rの各々は同一または異なる核酸塩基であってよく、
nは、1~6の範囲の整数、例えば1、2、3、4、5または6であり、
各Bは、独立して、リボース5’リン酸残基、デオキシリボース-5-リン酸残基、または核酸アナログ骨格残基であり、一態様では、立体構造的に事前組織化された核酸アナログ、例えばγPNAまたはLNAの骨格残基であり、
Lは、独立して、リンカー、例えば、非反応性リンカーまたは非反応性の嵩高くないリンカーであり、Lの各々は同一または異なってよく、
Arの各々は、独立して、2員環~5員環の縮合多環式芳香族部分、例えば2個~5個の縮合環を有する置換または非置換のアリール部分またはヘテロアリール部分、例えば、限定されるものではないが、任意にO、Nおよび/またはS等の1以上のヘテロ原子で置換された、非置換または置換されたペンタレン、インデン、ナフタレン、アズレン、ヘプタレン、ビフェニレン、as-インダセン、s-インダセン、アセナフチレン、フルオレン、フェナレン、フェナントレン、アントラセン、フルオランテン、アセフェナントリレン、アセアントリレン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、ナフタセン/テトラセン、プレイアデン、ピセンまたはペリレン、例えばキサンテン、リボフラビン(ビタミンB2)、マンゴスチンまたはマンギフェリンであり、同一または異なってよく、複数の態様では同一である、を有する認識試薬(認識モジュール)が提供される。幾つかの態様では、各Arは、認識試薬が標的核酸の隣接配列にハイブリダイズすると、隣接する認識試薬のAr基とスタッキングする。
【0077】
一態様では、前記認識試薬は、PNA骨格を含み、したがって構造:
【化11】
ここで、Rは、独立して、核酸塩基であり、Rの各々は同一または異なる核酸塩基であってよく、
nは、1~6の範囲の整数、例えば1、2、3、4、5または6であり、
Lの各々は、独立して、リンカーであり、1以上のアミノ酸残基、または置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアルケニル、置換もしくは非置換のアルキニル、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロシクリルアルケニル、ヘテロシクリルアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルキルアリールアルキル、アルキルアリールアルケニル、アルキルアリールアルキニル、アルケニルアリールアルキル、アルケニルアリールアルケニル、アルケニルアリールアルキニル、アルキニルアリールアルキル、アルキニルアリールアルケニル、アルキニルアリールアルキニル、アルキルヘテロアリールアルキル、アルキルヘテロアリールアルケニル、アルキルヘテロアリールアルキニル、アルケニルヘテロアリールアルキル、アルケニルヘテロアリールアルケニル、アルケニルヘテロアリールアルキニル、アルキニルヘテロアリールアルキル、アルキニルヘテロアリールアルケニル、アルキニルヘテロアリールアルキニル、アルキルヘテロシクリルアルキル、アルキルヘテロシクリルアルケニル、アルキルヘテロシクリルアルキニル、アルケニルヘテロシクリルアルキル、アルケニルヘテロシクリルアルケニル、アルケニルヘテロシクリルアルキニル、アルキニルヘテロシクリルアルキル、アルキニルヘテロシクリルアルケニル、アルキニルヘテロシクリルアルキニル、アルキルアリール、アルケニルアリール、アルキニルアリール、アルキルヘテロアリール、アルケニルヘテロアリール、アルキニルヘテロアリールを含み、ここで、1個以上の炭素、例えばメチレンまたはメチリジン(-CH=)は、任意にO、SもしくはN等のヘテロ原子、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のヘテロ環式化合物によって中断または終端化されており、任意に、
【化12】
ここで、nは、1、2、3、4または5である、等のグアニジン含有基および/またはアミノ酸側鎖を含み、
は、独立して、2員環~5員環の縮合多環式芳香族部分、例えば2個~5個の縮合環を有する置換または非置換のアリール部分またはヘテロアリール部分、例えば、限定されるものではないが、任意にO、Nおよび/またはS等の1以上のヘテロ原子で置換された、非置換または置換されたペンタレン、インデン、ナフタレン、アズレン、ヘプタレン、ビフェニレン、as-インダセン、s-インダセン、アセナフチレン、フルオレン、フェナレン、フェナントレン、アントラセン、フルオランテン、アセフェナントリレン、アセアントリレン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、ナフタセン/テトラセン、プレイアデン、ピセンまたはペリレン、例えばキサンテン、リボフラビン(ビタミンB2)、マンゴスチンまたはマンギフェリンであり、同一または異なってよく、複数の態様では同一である、を有する。幾つかの態様では、各々は、認識試薬が標的核酸の隣接配列にハイブリダイズすると、隣接する認識試薬の芳香族部分とスタッキングし、
およびRは、それぞれ独立して、H、グアニジン含有基、例えば
【化13】
ここで、nは、1、2、3、4または5である、
アミノ酸側鎖、例えば、
【化14】
1個~50個のエチレングリコール部を含むエチレングリコール単位で任意に置換された線状もしくは分岐状の(C~C)アルキル、(C~C)アルケニル、(C~C)アルキニル、(C~C)ヒドロキシアルキル、(C~C)アリール、(C~C)シクロアルキル、(C~C)アリール(C~C)アルキレン、(C~C)シクロアルキル(C~C)アルキレン、-CH-(OCH-CHOP、-CH-(OCH-CH-NHP、-CH-(SCH-CH-SP、-CH-(OCH-CH-OH、-CH-(OCH-CH-NH、-CH-(OCH-CH-NHC(NH)NHまたは-CH-(OCH-CH-S-S[CHCHNHC(NH)NHであり、ここで、PはH、(C~C)アルキル、(C~C)アルケニル、(C~C)アルキニル、(C~C)アリール、(C~C)シクロアルキル、(C~C)アリール(C~C)アルキレンまたは(C~C)シクロアルキル(C~C)アルキレンであり、qは0~50の整数であり、rは1~50の整数であり、かつsは1~50の整数であり、一態様では、RおよびRは異なり、RはHであり、かつRはHではないか、またはRはHであり、かつRはHではない。RNAまたはDNA等の天然の核酸に結合するためには、RはHであり、かつRはHではなく、それにより「右巻き」のL-γPNAが形成される。RがHであり、かつRがHではない「左巻き」のD-γPNAは、天然の核酸には結合しない。一態様では、前記リンカーは、約5個から25個の間の原子、例えば5個~20個、5個~10個、例えば5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個または20個の原子、または全体で1個~10個、例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個のCおよびヘテロ原子、例えばO原子、P原子、N原子またはS原子を含む。一態様では、RまたはRは、-(OCH-CHOP、-(OCH-CH-NHP、-(SCH-CH-SP、-(OCH-CH-OH、-(OCH-CH-NH、-(OCH-CH-NHC(NH)NHまたは-(OCH-CH-S-S[CHCHNHC(NH)NHで置換された(C-C)アルキルであり、ここで、Pは、H、(C~C)アルキル、(C~C)アルケニル、(C~C)アルキニル、(C~C)アリール、(C~C)シクロアルキル、(C~C)アリール(C~C)アルキレンまたは(C~C)シクロアルキル(C~C)アルキレンであり、qは0~50の整数であり、rは1~50の整数であり、かつsは1~50の整数である。
【0078】
さらなる態様では、前記認識試薬は、構造:
【化15】
ここで、Rの各々は、独立して、核酸塩基であり、Rの各々は同一または異なる核酸塩基であってよく、
nは、1~6の範囲の整数、例えば1、2、3、4、5または6であり、
およびRは、それぞれ独立して、H、グアニジン含有基、例えば
【化16】
ここで、nは、1、2、3、4または5である、アミノ酸側鎖、例えば、
【化17】
1個~50個のエチレングリコール部を含むエチレングリコール単位で任意に置換された線状もしくは分岐状の(C~C)アルキル、(C~C)アルケニル、(C~C)アルキニル、(C~C)ヒドロキシアルキル、(C~C)アリール、(C~C)シクロアルキル、(C~C)アリール(C~C)アルキレン、(C~C)シクロアルキル(C~C)アルキレン、-CH-(OCH-CHOP、-CH-(OCH-CH-NHP、-CH-(SCH-CH-SP、-CH-(OCH-CH-OH、-CH-(OCH-CH-NH、-CH-(OCH-CH-NHC(NH)NHまたは-CH-(OCH-CH-S-S[CHCHNHC(NH)NHであり、ここで、PはH、(C~C)アルキル、(C~C)アルケニル、(C~C)アルキニル、(C~C)アリール、(C~C)シクロアルキル、(C~C)アリール(C~C)アルキレンまたは(C~C)シクロアルキル(C~C)アルキレンであり、qは0~50の整数であり、rは1~50の整数であり、かつsは1~50の整数であり、一態様では、RおよびRは異なり、RはHであり、かつRはHではないか、またはRはHであり、かつRはHではなく、
およびRの一つならびにR、R、Rの一つは-L-Rであり、ここで、Rの各々は、独立して、2員環~5員環の縮合多環式芳香族部分、例えば2個~5個の縮合環を有する置換または非置換のアリール部分またはヘテロアリール部分、例えば、限定されるものではないが、任意にO、Nおよび/またはS等の1以上のヘテロ原子で置換された、非置換または置換されたペンタレン、インデン、ナフタレン、アズレン、ヘプタレン、ビフェニレン、as-インダセン、s-インダセン、アセナフチレン、フルオレン、フェナレン、フェナントレン、アントラセン、フルオランテン、アセフェナントリレン、アセアントリレン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、ナフタセン/テトラセン、プレイアデン、ピセンまたはペリレン、例えばキサンテン、リボフラビン(ビタミンB2)、マンゴスチンまたはマンギフェリンであり、同一または異なってよく、複数の態様では同一であり、幾つかの場合には、認識試薬が標的核酸の隣接配列にハイブリダイズすると、隣接する認識試薬のR基とスタッキングし、かつLは、リンカー、例えば非反応性リンカーまたは非反応性の嵩高くないリンカーであり、
Lの各々は同一または異なってよく、かつアミノ酸残基、または置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアルケニル、置換もしくは非置換のアルキニル、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロシクリルアルケニル、ヘテロシクリルアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルキルアリールアルキル、アルキルアリールアルケニル、アルキルアリールアルキニル、アルケニルアリールアルキル、アルケニルアリールアルケニル、アルケニルアリールアルキニル、アルキニルアリールアルキル、アルキニルアリールアルケニル、アルキニルアリールアルキニル、アルキルヘテロアリールアルキル、アルキルヘテロアリールアルケニル、アルキルヘテロアリールアルキニル、アルケニルヘテロアリールアルキル、アルケニルヘテロアリールアルケニル、アルケニルヘテロアリールアルキニル、アルキニルヘテロアリールアルキル、アルキニルヘテロアリールアルケニル、アルキニルヘテロアリールアルキニル、アルキルヘテロシクリルアルキル、アルキルヘテロシクリルアルケニル、アルキルヘテロシクリルアルキニル、アルケニルヘテロシクリルアルキル、アルケニルヘテロシクリルアルケニル、アルケニルヘテロシクリルアルキニル、アルキニルヘテロシクリルアルキル、アルキニルヘテロシクリルアルケニル、アルキニルヘテロシクリルアルキニル、アルキルアリール、アルケニルアリール、アルキニルアリール、アルキルヘテロアリール、アルケニルヘテロアリール、アルキニルヘテロアリールを含んでよく、ここで、1個以上の炭素、例えばメチレンまたはメチリジン(-CH=)は、任意にO、SもしくはN等のヘテロ原子、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のヘテロ環式化合物によって中断または終端化されており、残りのR、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、H、1以上の連続アミノ酸残基、グアニジン含有基、例えば
【化18】
ここで、nは、1、2、3、4または5である、
アミノ酸側鎖、例えば、
【化19】
1個~50個のエチレングリコール部を含むエチレングリコール単位で任意に置換された線状もしくは分岐状の(C~C)アルキル、(C~C)アルケニル、(C~C)アルキニル、(C~C)ヒドロキシアルキル、(C~C)アリール、(C~C)シクロアルキル、(C~C)アリール(C~C)アルキレン、(C~C)シクロアルキル(C~C)アルキレン、-CH-(OCH-CHOP、-CH-(OCH-CH-NHP、-CH-(SCH-CH-SP、-CH-(OCH-CH-OH、-CH-(OCH-CH-NH、-CH-(OCH-CH-NHC(NH)NHまたは-CH-(OCH-CH-S-S[CHCHNHC(NH)NHであり、ここで、PはH、(C~C)アルキル、(C~C)アルケニル、(C~C)アルキニル、(C~C)アリール、(C~C)シクロアルキル、(C~C)アリール(C~C)アルキレンまたは(C~C)シクロアルキル(C~C)アルキレンであり、qは0~50の整数であり、rは1~50の整数であり、かつsは1~50の整数である)を有する。
【0079】
一態様では、RおよびRは-L-Arであり、別の態様では、RおよびRは-L-Arであり、かつRおよびRはArgである。一態様では、前記リンカーは、約5個から25個の間の原子、例えば5個~20個、5個~10個、例えば5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個または20個の原子、または全体で1個~10個、例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個のCおよびヘテロ原子、例えばO原子、P原子、N原子またはS原子を含む。別の態様では、R、R、R、R、R、RまたはRの1以上は、-(OCH-CHOP、-(OCH-CH-NHP、-(SCH-CH-SP、-(OCH-CH-OH、-(OCH-CH-NH、-(OCH-CH-NHC(NH)NHまたは-(OCH-CH-S-S[CHCHNHC(NH)NHで置換された(C-C)アルキルであり、ここで、Pは、H、(C~C)アルキル、(C~C)アルケニル、(C~C)アルキニル、(C~C)アリール、(C~C)シクロアルキル、(C~C)アリール(C~C)アルキレンまたは(C~C)シクロアルキル(C~C)アルキレンであり、qは0~50の整数であり、rは1~50の整数であり、かつsは1~50の整数である。
【0080】
さらなる別の態様では、前記認識試薬は、PNA骨格を含み、したがって構造:
【化20】
ここで、nは、1、2、3、4、5、6、7または8を含む、1~8の範囲の整数であり、
mは、1、2、3、4または5を含む、1~5、例えば1~3の範囲の整数であり、
は、グアニジン含有基、例えば
【化21】
ここで、nは、1、2、3、4または5である、
アミノ酸側鎖、例えば、
【化22】
1個~50個のエチレングリコール部を含むエチレングリコール単位で任意に置換された線状もしくは分岐状の(C~C)アルキル、(C~C)アルケニル、(C~C)アルキニル、(C~C)ヒドロキシアルキル、(C~C)アリール、(C~C)シクロアルキル、(C~C)アリール(C~C)アルキレン、(C~C)シクロアルキル(C~C)アルキレン、-CH-(OCH-CHOP、-CH-(OCH-CH-NHP、-CH-(SCH-CH-SP、-CH-(OCH-CH-OH、-CH-(OCH-CH-NH、-CH-(OCH-CH-NHC(NH)NHまたは-CH-(OCH-CH-S-S[CHCHNHC(NH)NHであり、ここで、PはH、(C~C)アルキル、(C~C)アルケニル、(C~C)アルキニル、(C~C)アリール、(C~C)シクロアルキル、(C~C)アリール(C~C)アルキレンまたは(C~C)シクロアルキル(C~C)アルキレンであり、qは0~50の整数であり、rは1~50の整数であり、かつsは1~50の整数であり、
は、非置換の縮合環多環式芳香族部分、例えば、ペンタレン、インデン、ナフタレン、アズレン、ヘプタレン、ビフェニレン、as-インダセン、s-インダセン、アセナフチレン、フルオレン、フェナレン、フェナントレン、アントラセン、フルオランテン、アセフェナントリレン、アセアントリレン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、ナフタセン/テトラセン、プレイアデン、ピセンまたはペリレンであり、
、RおよびRの各々は、独立して、H、グアニジン含有基、例えば
【化23】
ここで、nは、1、2、3、4または5である、
アミノ酸側鎖、または1以上の連続アミノ酸残基、例えば1以上のArg残基である、を有する。一態様では、Rはピレンである。
【0081】
別の態様では、Rは、-CH-(OCH-CH-OHであり、ここで、rは1~50、例えば、1~10の範囲の整数、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10であり、一例では2である。別の態様では、R、R、RまたはRの1以上は、-(OCH-CHOP、-(OCH-CH-NHP、-(SCH-CH-SP、-(OCH-CH-OH、-(OCH-CH-NH、-(OCH-CH-NHC(NH)NHまたは-(OCH-CH-S-S[CHCHNHC(NH)NHで置換された(C-C)アルキルであり、ここで、Pは、H、(C~C)アルキル、(C~C)アルケニル、(C~C)アルキニル、(C~C)アリール、(C~C)シクロアルキル、(C~C)アリール(C~C)アルキレンまたは(C~C)シクロアルキル(C~C)アルキレンであり、qは0~50の整数であり、rは1~50の整数であり、かつsは1~50の整数である。
【0082】
上記したPNAベースの認識試薬はキラリティーなしで示されており、一例では、ガンマ炭素(RおよびRが結合されている)は(R)配向にあり、RはHであり、かつRはHではないか、またはガンマ炭素は(S)配向にあり、RはHであり、かつRはHではない。さらに、一例では、存在する場合に、R、R、R、R、Rおよび/またはRの位置において、1以上またはすべてのキラルアミノ酸残基は、L-アミノ酸であり得る。別の例では、存在する場合に、R、R、R、R、Rおよび/またはRの位置において、1以上またはすべてのキラルアミノ酸残基は、D-アミノ酸であり得る。
【0083】
前記のいずれの構造においても、前記認識試薬の配列は伸長したリピートを標的とすることができ、したがって、例示的な核酸塩基配列には(例えば、単一の認識試薬中または連結された場合のいずれかで)、mRNA(センス)を標的とするために、以下:TTC、CCG、CGG、CTG、CAG、CAGG、AGAATまたはGGCCCCが含まれる。これらの配列は単なる例示であり、…CAGCAGCAG…等の反復エレメント中の配列を標的とする場合に、リピート配列のあらゆる順次の組み合わせが単一の認識試薬に含まれ得る。例えば、配列CTGは、相補的なCAGリピートを標的とするが、TGCおよびGCT、ならびにそれらの二量体、CTGCTG、TGCTGCおよびGCTGCTも標的とする。したがって、以下の配列:TTC、TTCTTC、TCT、TCTTCT、CTT、CTTCTT、CCG、CCGCCG、CGC、CGCCGC、GCC、GCCGCC、CGG、CGGCGG、GCG、GCGGCG、GGC、GGCGGC、CTG、CTGCTG、TGC、TGCTGC、GCT、GCTGCT、CAG、CAGCAG、AGC、AGCAGC、GCA、GCAGCA、CAGG、CAGGCAGG、AGGC、AGGCAGGC、GGCA、GGCAGGCA、GCAG、GCAGGCAG、AGAAT、GAATA、AATAG、ATAGA、TAGAA、GGCCCC、GCCCCG、CCCCGG、CCCGGC、CCGGCCおよびCGGCCCを、表Bに示されるmRNA中の伸長したリピートを標的とするために使用することができる。上記した配列は、前記センスmRNA鎖に対して5’から3’の逆平行に列記されており、例えば、γPNAにおけるC末端からN末端の方向にある。
【0084】
本明細書に記載される認識試薬のR基は、前記組成物が1以上の鋳型核酸中の核酸塩基の配列に結合するように、1以上の鋳型核酸中の核酸塩基の配列に相補的であるべき配列で配置される。「鋳型核酸」は、任意の核酸または核酸アナログを含む。前記鋳型が細胞内にある場合に、前記鋳型は、サイレンシングする核酸、例えばDNAまたはRNA、例えばmRNAである可能性が高い。前記認識試薬がin vitroで集成されるのであれば、前記鋳型は、本明細書に記載される認識試薬への特異的なハイブリダイゼーションを可能にする核酸または前記核酸の任意のアナログであり得る。
【0085】
別段の指示がない限り、本明細書に記載される認識試薬は、核酸塩基の任意の特定の配列に関して記載されない。本開示は、前記の認識試薬、例えばγPNA骨格を基礎とする認識試薬を連結する方法および組成物を対象とし、前記骨格に結合される塩基の同一性および配列とは無関係である。前記のγPNAオリゴマーの骨格に結合される任意の核酸塩基配列は、予想される特定の様式で、ワトソンクリック水素結合またはワトソンクリック様水素結合によって、標的核酸または核酸アナログの相補的な核酸塩基配列とハイブリダイズすることとなる。本明細書に記載される組成物および方法は配列非依存的であり、より短いγPNA(前駆体)配列からのより長いγPNA配列の鋳型指向性の集成のための新規の一般化された方法および関連の組成物を記載している。
【0086】
本明細書に記載される認識試薬の核酸塩基は、鋳型核酸、例えばmRNA、例えば伸長したリピートを含むmRNAの標的配列に相補的な配列で配置されるため、本明細書に記載される二つ以上の認識試薬は、塩基対合によって、例えばワトソン-クリック塩基対合またはワトソン-クリック様塩基対合によって、前記鋳型核酸上の塩基配列に結合して連結する。本明細書に記載される方法により集成され得る認識試薬の組合せの非限定的な例は、第一の認識試薬が鋳型核酸または核酸アナログの第一の配列に相補的な核酸塩基配列を有し、第二の認識試薬が前記鋳型上の前記第一の配列に直接隣接する前記鋳型上の第二の配列に相補的な核酸塩基配列を有し、こうして、二つの前駆体が、例えば図1に示されるように前記鋳型上で近接した一連の塩基に結合する二つの認識試薬である。二つ以上の異なる認識試薬をそのようにして集成させることができ、各々は前記鋳型核酸のより長い近接配列中の隣接する短い配列に結合し、隣接する認識試薬と連結する。一例では、図1に示されるように、前記認識試薬は前記鋳型上の反復配列に相補的な核酸塩基の単一配列を有するため、二つ以上の同一の認識試薬は、前記鋳型上でリピートの近接配列にタンデムに結合する。前記のように、表Bに基づいて、前記の遺伝子産物を標的とするであろう認識試薬には、TTC、CCG、CGG、CTG、CAG、CAGG、AGAATまたはGGCCCCが含まれる。別の例では、異なる配列を有する二つ以上の異なる認識試薬は、ユニークな非反復配列上で連結するように選択され得る。例えば、mRNA等の標的配列中に存在するユニークな12個のヌクレオチド配列上で互いに隣接してハイブリダイズするように、二つの異なるヘキサマー型の認識試薬を製造することができる。
【0087】
前記のように、連結された核酸または核酸アナログ、例えば、γPNA等の立体構造的に事前組織化された核酸アナログの製造方法であって、前記の任意の態様による複数の前記認識試薬を鋳型核酸または核酸アナログに結合させることを含む前記方法が提供される。末端アリール基が互いに近接していると、前記組成物は連結することとなる。前記アリール基は、例えば図1に示されるように、前記アリール基が十分に近いことで前記アリール基がスタッキングする場合に、互いに近接しているとみなされる。
【0088】
別の方法では、本明細書に記載される認識試薬は、治療効果のために細胞に導入される。本明細書に記載される組成物の細胞への送達のために、in vitroまたはin vivoでの使用に適したさまざまなトランスフェクション試薬、例えばFuGENE(登録商標)またはリポソーム調製物(多くの供給元から市販される。Immordino et al.“Stealth liposomes:review of the basic science,rationale,and clinical applications,existing and potential,”(2006)Int’l J.Nanomedicine 1(3):297-316も参照)が適している。細胞内では、前記認識試薬は、天然のmRNA等の適切な核酸鋳型上で連結することとなる。前記認識試薬の二つ以上が同一鋳型核酸にハイブリダイズして、末端アリール基が互いに近接して、例えば互いに近接配列で並んで配置されると、前記認識試薬は、近接のアリール基のπスタッキングにより連結することとなる。前記認識試薬の配列のリピート、または送達された認識試薬の二つ以上に相補的な隣接配列のいずれかを含む核酸に結合しない化合物は、前記結合された核酸から放出される。それというのも、例えば3マー~8マーの結合の強さが、前記結合された核酸上に化合物を維持するほど十分に強くないからである。二つ以上の認識試薬が標的核酸配列、例えば隣接する反復配列に結合する場合に、それらの認識試薬は、前記標的配列にハイブリダイズした状態にするのに十分な強さで前記核酸を結合するのに十分な長さの連結された構造を形成し、こうして前記組成物がsiRNA、miRNA、ミルトロンまたは類似の組成物の配列を有する場合に遺伝子サイレンシング等の所望の効果が達成される。
【0089】
複数の態様では、表Bに列記される疾患、例えば、筋強直性ジストロフィー1型(DM1)および2型(DM2)またはハンチントン病を有する患者を治療する方法が提供される。前記方法は、患者におけるリピート伸長標的配列を含むmRNAの発現をノックダウンするのに有効な量の、本明細書に記載される任意の態様による前記患者のmRNAにおけるリピート伸長標的配列に相補的な認識試薬を投与することを含む。DM1の場合に、前記標的配列は、(CTG)であり、したがって、前記認識試薬は、配列:CTG、CTGCTG、TGC、TGCTGC、GCT、またはGCTGCTを有する。DM2の場合に、前記標的配列は、(CCTG)であり、したがって前記認識試薬は、配列:CAGG、CAGGCAGG、AGGC、AGGCAGGC、GGCA、GGCAGGCA、GCAG、またはGCAGGCAGを有する。ハンチントン病の場合に、前記標的配列は、(CAG)であり、したがって、前記認識試薬は、配列:CTG、CTGCTG、TGC、TGCTGC、GCT、またはGCTGCTを有する。前記のこれらの配列に相補的な配列は、伸長したリピートを含むDNAのアンチセンス鎖に結合するために有用である。
【0090】
患者の治療のために、前記認識試薬は、あらゆる有効な投与経路によって、例えば、限定されるものではないが、非経口投与、例えば静脈内、腹腔内、臓器内、例えば肝臓への送達によって、または筋肉内注射、例えばスプレーもしくはエアロゾル定量噴霧式吸入器での吸入によって、局所的に、例えば皮膚送達、経皮送達、耳送達もしくは眼送達によって、経粘膜、例えば経膣もしくは頬側で、または経口で投与することができる。前記組成物を個別の用量として、または経時的に複数の用量で投与することで、標的RNAの発現の低下を維持することができる。
【0091】
複数の態様では、本明細書において、本明細書に記載される認識試薬を含む医薬組成物および製剤が提供される。一態様では、本明細書において、本明細書に記載される認識試薬と、薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物が提供される。前記認識試薬を含む医薬組成物は、例えば表Bに列記されるリピート伸長疾患等の疾患の治療のために有用である。そのような医薬組成物は、送達の様式に基づいて製剤化される。一例は、非経口送達を介した、例えば静脈内(IV)投与による全身投与のために、または皮下送達のために製剤化された組成物である。前記医薬組成物は、例えば、リピート伸長疾患でのように、mRNAの発現をノックダウンすることによって、前記疾患を治療するのに十分な投与量で投与され得る。一般に、認識試薬の適切な用量は、一日当たりレシピエントの体重1キログラム当たり約0.001ミリグラム~約200.0ミリグラムの範囲、一般的に一日当たり体重一キログラム当たり約1mg~50mgの範囲である。反復投与レジメンは、一日置きまたは一年に一回等の定期的な前記認識試薬の治療量の投与を含み得る。特定の態様では、前記認識試薬は、一ヶ月に約一回から四半期に約一回(例えば、三ヶ月毎に約一回)で投与される。最初の治療レジメンの後に、前記治療は、より少ない頻度で施すことができる。当業者は、限定されるものではないが、疾患または障害の重症度、以前の治療、対象体の一般的な健康状態および/または年齢、ならびにその他の現症を含む特定の要因が、対象体を効果的に治療するために必要とされる投与量およびタイミングに影響し得ることを理解するであろう。さらに、治療的有効量の組成物による対象体の治療は、単独の治療または一連の治療を含み得る。本明細書に含まれる個々の認識試薬の有効投与量およびin vivo半減期の推定は、従来の方法論を使用して、または適切な動物モデルを使用したin vivo試験に基づいて行うことができる。
【0092】
前記医薬組成物は、局所治療または全身治療のどちらが望ましいか、および治療される領域に応じて、多くのあらゆる方法で投与することができる。投与は、局所投与(例えば、経皮パッチによる)、経肺投与、例えば、ネブライザーによる投与を含む粉末またはエアロゾルの吸入または吹送による投与、気管内投与、鼻腔内投与、表皮投与および経皮投与、経口投与または非経口投与であり得る。非経口投与には、静脈内投与、動脈内投与、皮下投与、腹腔内投与または筋肉内注射もしくは注入、例えば埋め込みデバイスを介した皮下投与または、例えば実質内投与、クモ膜下内投与もしくは脳室内投与による頭蓋内投与が含まれる。前記認識試薬は、肝臓等の特定の組織(例えば、肝臓の肝細胞)を標的とする様式で送達され得る。
【0093】
局所投与用の医薬組成物および製剤には、経皮パッチ、軟膏剤、ローション剤、クリーム剤、ゲル剤、滴剤、坐剤、スプレー剤、液剤および粉剤が含まれ得る。従来の医薬用担体、水性基剤、粉末基剤または油性基剤、増粘剤等が必要または望ましい場合がある。コーティングされたコンドーム、手袋等が有用である場合もある。適切な局所製剤には、前記認識試薬が脂質、リポソーム、脂肪酸、脂肪酸エステル、ステロイド、キレート剤、および界面活性剤等の局所送達剤との混合物である製剤が含まれる。適切な脂質およびリポソームには、中性(例えば、ジオレオイルホスファチジルDOPEエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルコリンDMPC、ジステアロリルホスファチジルコリン)、負性(例えば、ジミリストイルホスファチジルグリセロールDMPG)、およびカチオン性(例えば、ジオレオイルテトラメチルアミノプロピルDOTAPおよびジオレオイルホスファチジルエタノールアミンDOTMA)が含まれる。認識試薬は、リポソーム内に封入することができ、またはリポソーム、特にカチオン性リポソームとの複合体を形成することができる。あるいは、認識試薬は、脂質、特にカチオン性脂質と複合体化することができる。適切な脂肪酸およびエステルには、限定されるものではないが、アラキドン酸、オレイン酸、エイコサン酸、ラウリン酸、カプリル酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ジカプレート、トリカプレート、モノオレイン、ジラウリン、1-モノカプリン酸グリセリル、1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オン、アシルカルニチン、アシルコリン、またはC1~20アルキルエステル(例えば、ミリスチン酸イソプロピルIPM)、モノグリセリドもしくはジグリセリドまたはそれらの薬学的に許容可能な塩が含まれる。局所用製剤は、米国特許第6,747,014号明細書に詳細に記載されている。製薬および配合技術における当業者であれば、本明細書に記載される認識試薬の送達に適した製剤を調製することができる。
【0094】
別の態様では、核酸を含む試料を本明細書に記載される遺伝子認識試薬と接触させることと、前記遺伝子認識試薬の標的配列を含む核酸の存在下で前記遺伝子認識試薬の連結を検出することとを含む診断方法が提供される。一態様では、核酸は、細胞、例えば患者の細胞から得られる。前記核酸を、πスタッキングされたとき、例えば連結されたときに異なる発光波長または発光強度を生ずる蛍光性の末端アリール基を有する本明細書に記載される遺伝子認識試薬と接触させる。ピレン等の多くの縮合環多環式芳香族化合物は、このような蛍光検出のために有用である。前記遺伝子認識試薬が前記試料の核酸内の標的配列と結合すると検出可能な蛍光発光が生じるため、前記発光の検出は、前記試料中の前記標的配列を含む核酸の存在の指標となる陽性応答であるとみなされる。これは、核酸試料を得た患者におけるリピート伸長疾患の指標となる配列のリピート伸長を含む核酸の存在を検出するための簡単な方法である。
【0095】
幾つかの実施形態では、本開示は、a)i)第一の単位、ii)最後の単位、およびiii)前記第一の単位と前記最後の単位との間の少なくとも一つの中間単位を含む一連のペプチド核酸(PNA)単位であって、前記一連の単位における各単位が、A)骨格部とB)前記骨格部に共有結合された核酸塩基とを含み、ここで、1)前記第一の単位の骨格部は一つの他の単位の骨格部に共有結合されており、2)前記最後の単位の骨格部は一つの他の単位の骨格部に共有結合されており、かつ3)各中間単位の骨格部は二つの他の単位の骨格部に共有結合されている前記一連のペプチド核酸(PNA)単位と、b)前記第一の単位に共有結合された第一のアリール部分と、c)前記最後の単位に共有結合された最後のアリール部分とを含む化合物を提供する。
【0096】
幾つかの実施形態では、本開示は、a)i)第一の単位、ii)最後の単位、およびiii)前記第一の単位と前記最後の単位との間の少なくとも一つの中間単位を含む一連のPNA単位であって、前記一連の単位における各単位が、A)骨格部とB)前記骨格部に共有結合された核酸塩基とを含み、ここで、1)前記第一の単位の骨格部は一つの他の単位の骨格部に共有結合されており、2)前記最後の単位の骨格部は一つの他の単位の骨格部に共有結合されており、かつ3)各中間単位の骨格部は二つの他の単位の骨格部に共有結合されている前記一連のPNA単位と、b)前記第一の単位に共有結合された一つのアリール部分および前記最後の単位に共有結合されたもう一つのアリール部分の二つのアリール部分とを含む化合物を提供する。
【0097】
幾つかの実施形態では、本開示は、前記第一のアリール部分が前記第一の単位に第一のリンカー部によって共有結合され、かつ前記最後のアリール部分が前記最後の単位に最後のリンカー部によって共有結合された化合物を提供する。幾つかの実施形態では、本開示は、前記第一のリンカー部および前記最後のリンカー部がそれぞれ独立してグアニジン基を含む化合物を提供する。幾つかの実施形態では、本開示は、前記第一のリンカー部および前記最後のリンカー部がそれぞれ独立してアミノ酸残基を含む化合物を提供する。幾つかの実施形態では、本開示は、前記第一のリンカー部および前記最後のリンカー部がそれぞれ独立して三つのグアニジン含有アミノ酸残基を含む化合物を提供する。
【0098】
幾つかの実施形態では、本開示は、前記第一のリンカー部および前記最後のリンカー部がそれぞれ独立して三つの近接アルギニン残基を含む化合物を提供する。
【0099】
幾つかの実施形態では、本開示は、前記一連の単位が3個~8個の単位である化合物を提供する。幾つかの実施形態では、本開示は、前記一連の単位がガンマPNAである化合物を提供する。幾つかの実施形態では、本開示は、前記第一のアリール部分および前記最後のアリール部分がそれぞれ独立して2員環~5員環の縮合多環式芳香族部分、例えばピレン等の多環芳香族炭化水素である化合物を提供する。幾つかの実施形態では、本開示は、前記第一のアリール部分および前記最後のアリール部分が同一である化合物を提供する。幾つかの実施形態では、本開示は、エチレングリコール単位、例えばジエチレングリコール単位をさらに含む化合物を提供する。
【0100】
幾つかの実施形態では、本開示は、標的核酸配列に相補的な順序で核酸塩基が存在する化合物を提供する。幾つかの実施形態では、本開示は、前記標的核酸配列がリピート伸長疾患と関連している化合物を提供する。幾つかの実施形態では、本開示は、前記リピート伸長疾患が筋強直性ジストロフィー1型(DM1)または筋強直性ジストロフィー2型(DM2)である化合物を提供する。幾つかの実施形態では、本開示は、二つの化合物が一つの核酸にハイブリダイズするときに、一方の化合物の前記第一のアリール部分およびもう一方の化合物の前記最後のアリール部分がスタッキングする化合物を提供する。
【0101】
幾つかの実施形態では、本開示は、式:H-Arg-CAGCAG-Arg-NH(P1)、H-Arg-Dab(Pyr)-CAGCAG-Orn(Pyr)-Arg-NH(P2)、H-Arg-Orn(Pyr)-CAGCAG-Orn(Pyr)-Arg-NH(P3)、H-Arg-Lys(Pyr)-CAGCAG-Lys(Pyr)-Arg-NH(P4)、H-Arg-Lys(Pyr)-CATCAG-Lys(Pyr)-Arg-NH(P5)またはH-Arg-Lys(Pyr)-CTGCTG-Lys(Pyr)-Arg-NH(P6)の化合物(ここで、Ornはオルニチンであり、Dabはジアミノ酪酸であり、かつPyrはカルボキシル官能化された芳香族化合物、例えばピレン-1-カルボン酸、ピレン-2-カルボン酸、ピレン-4-カルボン酸、ピレン-1-酢酸、ピレン-2-酢酸またはピレン-4-酢酸等のピレンである)の化合物を提供する。
【0102】
幾つかの実施形態では、本開示は、核酸を本開示の化合物と接触させることを含む核酸の結合方法であって、前記化合物は接触時に前記核酸に結合する前記方法を提供する。幾つかの実施形態では、本開示は、細胞を本開示の化合物と接触させることを含む前記細胞内のmRNAの発現をノックダウンする方法であって、前記化合物は、前記mRNAに相当する細胞内のDNA配列に結合する際に前記細胞内のmRNAの発現をノックダウンする前記方法を提供する。
【0103】
幾つかの実施形態では、本開示は、構造:
【化24】
ここで、各Bは、独立して、骨格残基であり、
nは、1、2、3、4、5または6であり、
各Rは、独立して、核酸塩基であり、
各Lは、独立して、リンカーであり、かつ、
各Arは、独立して、2員環~5員環の縮合多環式芳香族部分である、の化合物または前記化合物の薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0104】
幾つかの実施形態では、本開示は、構造:
【化25】
ここで、各Rは、独立して、核酸塩基であり、nは、1、2、3、4、5または6であり、各Lは、独立して、リンカーであり、かつ各RおよびRは、独立して、H、グアニジン含有基、アミノ酸側鎖、1個~50個のエチレングリコール部を含むエチレングリコール単位で任意に置換された線状もしくは分岐状の(C~C)アルキル、(C~C)アルケニル、(C~C)アルキニル、(C~C)ヒドロキシアルキル、(C~C)アリール、(C~C)シクロアルキル、(C~C)アリール(C~C)アルキレン、(C~C)シクロアルキル(C~C)アルキレン、-CH-(OCH-CHOP、-CH-(OCH-CH-NHP、-CH-(SCH-CH-SP、-CH-(OCH-CH-OH、-CH-(OCH-CH-NH、-CH-(OCH-CH-NHC(NH)NHまたは-CH-(OCH-CH-S-S[CHCHNHC(NH)NHであり、ここで、PはH、(C~C)アルキル、(C~C)アルケニル、(C~C)アルキニル、(C~C)アリール、(C~C)シクロアルキル、(C~C)アリール(C~C)アルキレンまたは(C~C)シクロアルキル(C~C)アルキレンであり、qは0~50の整数であり、rは1~50の整数であり、かつsは1~50の整数であり、かつ各Rは、独立して、2員環~5員環の縮合多環式芳香族部分である、
を有する化合物または前記化合物の薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0105】
幾つかの実施形態では、本開示は、構造:
【化26】
ここで、各Rは、独立して、核酸塩基であり、
nは、1、2、3、4、5または6であり、
各RおよびRは、独立して、H、グアニジン含有基、アミノ酸側鎖、1個~50個のエチレングリコール部を含むエチレングリコール単位で任意に置換された線状もしくは分岐状の(C~C)アルキル、(C~C)アルケニル、(C~C)アルキニル、(C~C)ヒドロキシアルキル、(C~C)アリール、(C~C)シクロアルキル、(C~C)アリール(C~C)アルキレン、(C~C)シクロアルキル(C~C)アルキレン、-CH-(OCH-CHOP、-CH-(OCH-CH-NHP、-CH-(SCH-CH-SP、-CH-(OCH-CH-OH、-CH-(OCH-CH-NH、-CH-(OCH-CH-NHC(NH)NHまたは-CH-(OCH-CH-S-S[CHCHNHC(NH)NHであり、ここで、PはH、(C~C)アルキル、(C~C)アルケニル、(C~C)アルキニル、(C~C)アリール、(C~C)シクロアルキル、(C~C)アリール(C~C)アルキレンまたは(C~C)シクロアルキル(C~C)アルキレンであり、qは0~50の整数であり、rは1~50の整数であり、かつsは1~50の整数であり、RまたはRの一つおよびR、RまたはRの一つは-L-Rであり、R、R、R、RおよびRの残りは、それぞれ独立して、H、1以上の連続アミノ酸残基、グアニジン含有基、アミノ酸側鎖、1個~50個のエチレングリコール部を含むエチレングリコール単位で任意に置換された線状もしくは分岐状の(C~C)アルキル、(C~C)アルケニル、(C~C)アルキニル、(C~C)ヒドロキシアルキル、(C~C)アリール、(C~C)シクロアルキル、(C~C)アリール(C~C)アルキレン、(C~C)シクロアルキル(C~C)アルキレン、-CH-(OCH-CHOP、-CH-(OCH-CH-NHP、-CH-(OCH-CH-SP、-CH-(SCH-CH-SP、-CH-(OCH-CH-OH、-CH-(OCH-CH-NH、-CH-(OCH-CH-NHC(NH)NHまたは-CH-(OCH-CH-S-S[CHCHNHC(NH)NHであり、ここで、Pは、H、(C~C)アルキル、(C~C)アルケニル、(C~C)アルキニル、(C~C)アリール、(C~C)シクロアルキル、(C~C)アリール(C~C)アルキレンおよび(C~C)シクロアルキル(C~C)アルキレンからなる群から選択され、qは0~50の整数であり、rは1~50の整数であり、かつsは1~50の整数であり、各Rは、独立して、2員環~5員環の縮合多環式芳香族部分であり、かつ各Lは、独立して、リンカーである、
を有する化合物または前記化合物の薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0106】
幾つかの実施形態では、本開示は、構造:
【化27】
ここで、nは、1、2、3、4、5、6、7または8であり、
mは、1、2、3、4または5であり、
は、グアニジン含有基、アミノ酸側鎖、1個~50個のエチレングリコール部を含むエチレングリコール単位で任意に置換された線状もしくは分岐状の(C~C)アルキル、(C~C)アルケニル、(C~C)アルキニル、(C~C)ヒドロキシアルキル、(C~C)アリール、(C~C)シクロアルキル、(C~C)アリール(C~C)アルキレン、(C~C)シクロアルキル(C~C)アルキレン、-CH-(OCH-CHOP、-CH-(OCH-CH-NHP、-CH-(SCH-CH-SP、-CH-(OCH-CH-OH、-CH-(OCH-CH-NH、-CH-(OCH-CH-NHC(NH)NHまたは-CH-(OCH-CH-S-S[CHCHNHC(NH)NHであり、ここで、PはH、(C~C)アルキル、(C~C)アルケニル、(C~C)アルキニル、(C~C)アリール、(C~C)シクロアルキル、(C~C)アリール(C~C)アルキレンまたは(C~C)シクロアルキル(C~C)アルキレンであり、qは0~50の整数であり、rは1~50の整数であり、かつsは1~50の整数であり、
は、ペンタレン、インデン、ナフタレン、アズレン、ヘプタレン、ビフェニレン、as-インダセン、s-インダセン、アセナフチレン、フルオレン、フェナレン、フェナントレン、アントラセン、フルオランテン、アセフェナントリレン、アセアントリレン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、ナフタセン/テトラセン、プレイアデン、ピセンまたはペリレンであり、かつ、
、RおよびRの各々は、独立して、H、アミノ酸側鎖、少なくとも1の連続アミノ酸残基の鎖、または
【化28】
であり、ここで、nは、1、2、3、4または5である、を有する化合物または前記化合物の薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0107】
幾つかの実施形態では、本開示は、第一の末端および第二の末端を有するとともに3個~8個のリボース-5-リン酸、デオキシリボース-5-リン酸または核酸アナログ骨格残基を有する核酸または核酸アナログ骨格と、複数の前記リボース-5-リン酸、デオキシリボース-5-リン酸または核酸アナログ骨格残基に結合される同一または異なってよい核酸塩基と、前記核酸または核酸アナログ骨格の前記第一の末端にリンカーによって結合された第一のアリール部分と、前記核酸または核酸アナログ骨格の前記第二の末端にリンカーによって結合された前記第一のアリール部分と任意に同一である第二のアリール部分とを含む遺伝子認識試薬を提供する。
【0108】
幾つかの実施形態では、本開示は、a)第一の発光体部に接続された第一の末端および第二の発光体部に接続された第二の末端を含む第一のプローブ核酸を前記標的核酸の第一のリピート部にハイブリダイズさせることと、b)第三の発光体部に接続された第一の末端および第四の発光体部に接続された第二の末端を含む第二のプローブ核酸を標的核酸の第二のリピート部にハイブリダイズさせることとを含む検出方法であって、i)前記標的核酸の前記第一のリピート部および前記第二のリピート部がリピート伸長障害と関連しており、ii)前記第一のプローブ核酸および前記第二のプローブ核酸が前記標的に結合すると、前記第一の発光体部または前記第二の発光体部は前記第三の発光体部または前記第四の発光体部に近接して存在し、かつiii)前記第一の発光体部または前記第二の発光体部が前記第三の発光体部または前記第四の発光体部に近接して存在すると、近接する発光体部の発光波長に変化が生ずる前記方法を提供する。
【0109】
幾つかの実施形態では、前記検出方法は、近接する発光体部の発光波長の変化を検出することをさらに含む。幾つかの実施形態では、前記第一のプローブ核酸が前記第一のリピート部にハイブリダイズすると、前記第二のプローブ核酸の前記第二のリピート部への親和性が増加する。幾つかの実施形態では、前記第一の発光体部または前記第二の発光体部が前記第三の発光体部または前記第四の発光体部に近接して存在すると、前記第一の発光体部または前記第二の発光体部と前記第三の発光体部または前記第四の発光体部との間にπ-πスタッキング相互作用が生ずる。幾つかの実施形態では、前記標的核酸は、生物学的試料から直接的に得られる。
【実施例
【0110】
疑似ペプチド骨格を含むランダムに折り畳まれた核酸模倣物であるペプチド核酸(PNA)は、右巻きの螺旋モチーフに予備組織化されていてよく、その水溶性および生物学的利用可能性は、(R)-ジエチレングリコール(miniPEG、またはMP)単位をガンマ骨格に取り付けることによって改善され得る(図6)。そのような分子フォルダマーは、DNAまたはRNAに対して超高親和性および配列特異性を示す。これらの熱力学的特性は、rCUGexp等のリピート伸長を標的とするための比較的短いMPγPNAプローブを開発する可能性を支援する。
【0111】
方法
UV融解実験:
すべてのUV融解試料を、生理学的に模擬されたバッファー(10mMのNaPi(リン酸ナトリウムバッファー)、150mMのKCl、2mMのMgCl、pH7.4)中で示された濃度でMPγPNAをRNA標的と混合することによって調製し、そして、90℃で5分間インキュベートすることによってアニーリングし後に室温に徐冷した。UV融解曲線は、熱電制御式マルチセルホルダーを備えたAgilent Cary UV-Vis 300分光計を使用して収集した。UV融解スペクトルは、両者とも一分間につき0.2℃の速度での25℃から95℃までの加熱過程および95℃から25℃までの冷却過程で260nmでのUV吸収を観察することによって収集した。冷却曲線および加熱曲線はほぼ同一であったことから、ハイブリダイゼーション過程が可逆的であることが示唆された。記録されたスペクトルを、20ポイントの隣接平均化アルゴリズムを使用してスムージングした。デュプレックスの融解温度を決定するために、前記融解曲線の一次導関数を取った。
【0112】
定常状態蛍光測定:
すべての定常状態蛍光試料を、P-RNAデュプレックスを生理学的に模擬されたバッファー中で指定された濃度で混合することによって調製し、90℃で5分間インキュベートすることによってアニーリングした後に37℃に徐冷した。前記試料を、前記測定前に37℃で一時間インキュベートした。定常状態蛍光データは、37℃でCary Eclipse蛍光分光計(εex=350nmおよびεem=480nm)によってスリットを用いて収集した。
【0113】
リアルタイム蛍光結合動態:
リアルタイム蛍光動態実験のために、以下のように試料を調製した。(1)Pのみ、(2)P、TおよびT8を測定前にアニーリング、(3)PをTに37℃で添加、および(4)等モルの結合部位でTの存在下でP4をTに添加。リアルタイム蛍光データを、37℃でCary Eclipse蛍光分光計(εex=350nmおよびεem=480nm)によってスリットを用いて収集した。
【0114】
競合結合アッセイ:
T6はIDT社から購入した。r(CUG)96と同一であるT48を、DNA鋳型が(CTG)96であることを除いて前記のように調製した。T6およびT8は、90℃まで5分間加熱することによって別々にアニーリングし、室温まで徐冷した。プローブおよびRNA標的を、シリコンコーティングされたエッペンドルフチューブ内で、指定された濃度で混合し、生理学的に模擬されたバッファー中で37℃で4時間インキュベートした。次いで、1×SYBR-GoldとともにTris-ホウ酸バッファーを含む2%アガロースゲルに前記試料をロードし、100Vで15分間電気泳動により分離した。UV-トランスイルミネーターによって、バンドを視覚化した。
【0115】
プローブによるT8-MBNL1分裂の分析:
T48およびGST-MBNL-Fを前記のように調製した。放射性同位元素で標識されたT8を、GST-MBNL-Fと一緒に、50mMのTris、50mMのNaCl、50mMのKClおよび1mMのMgClを含むバッファー(pH8.0)中で指定された濃度で25℃で30分間インキュベートした。指定された濃度のPをT8-MBNL複合体に添加した。直ちに、前記試料を1×Tris-ホウ酸バッファーを有する1.5%アガロースゲルにロードし、100Vで2時間電気泳動により分離した。バンドを蛍光体イメージングによって可視化し、ImageQuant(Molecular Dynamics社)によって定量化した。
【0116】
末端ピレンを含む長さが六塩基の一連のMPγPNAプローブ(P2からP6、図6)を、P1コントロールとともに合成し、前記プローブの結合特性を特徴付けた。P2からP4は、ピレンをプローブの骨格に連結する種々のリンカー長で構成された(図6、II)。P5およびP6は、認識特異性を試験するために設計された対応する一塩基および二塩基のミスマッチを含んでいた。以前の研究では、同様の長さのMPγPNAが生理的温度でRNA標的と一過的に相互作用することができることが示されたので、タンデムトリプレットリピートを選択した。結合協調性を促進するためのモデル化合物としてピレンが採用された。それというのも、ピレンの芳香族表面は広がっており、二量化に際して発光が大きく深色シフトし、杉山と共同研究者によりポリアミドのDNAへの協同的結合において前記深色シフトの実証に成功した事実があるからである。前記の光化学特性は、プローブのハイブリダイゼーションおよびピレン-ピレン相互作用を観察するための簡便な手段を提供する。出版物に記載されたプロトコルにしたがってモノマーを調製した。プローブはHMBA樹脂上で合成し、RP-HPLCによって精製し、MALDI-TOF MSによって検証した。結合研究のために、種々の数のヘキサマー型r(CUGCUG)リピートを含む一連のモデルRNA標的を選択した(図6(C))。
【0117】
すべての実験は、生理学的に適切なイオン強度(10mMのNaPi、150mMのKCl、および二mMのMgCl(pH7.4))で行った。RNA濃度は、各試料中のr(CUGCUG)リピートの数が同一になるように調製した。予備研究では、三つのリンカーの長さ(図6、P2からP4)の中で、リジンで最も高度な結合協調性が得られることが明らかになった(図7)。この知見に基づいて、P4を選択し、さまざまなRNA標的を用いてUV融解研究を行った。本発明者らの結果により、P4-RNAシリーズの融解転移(T)が、標的内の結合部位の数とともに単調に増加することが示された(図8)。ピレン-ピレン相互作用は、40℃~70℃の温度範囲におけるP4-T6およびP4-T8の逆吸収プロファイルから明らかである。さらなる加熱時の解離の前のピレンエキシマーのモノマーに対する約0.6の振電遷移Ae0→0/Am0→0の逆強度分布のため、加熱時に疎溶媒性効果はより顕著になった。一連の三つのP4-RNA、P1-RNA、およびRNAのTを比較することで、明確なパターンが明らかになった。P4-RNAシリーズのTは、正の線形相関Y=66+2Xに従い、ここで、Xは、標的内の結合部位の数である(図9)。しかしながら、前記の後者の二つのシリーズの場合と同様に、TはXが約三の時点でプラトーになったことから、RNA内の結合部位の数が三つを超えて増えても、対応するヘアピン構造が必ずしも熱力学的により安定となるとは限らないことを示唆している。完全マッチした配列とは異なり、ミスマッチのあるP5およびP6プローブでは、RNAのTに識別可能な違いは観察されなかった(図の挿入図)。まとめると、これらの結果は、P4が協同的かつ配列特異的にRNAリピート標的に結合することを示している。このような現象は、PNA-リガンドコンジュゲートでも観察された。
【0118】
これらの知見をさらに実証するために、同一の条件下で蛍光測定を行った。試料を340nmで励起し、蛍光シグナルを345nm~650nmで記録した。ピレン-ピレンエキシマー形成の特徴は、480nmでの発光である(図10)。UV融解データと一致して、480nmでの蛍光強度の漸増で観察されるように、P4の結合協調性の程度はRNA内の結合部位の数とともに増加する。前記試料はUV照明下で著しく異なっていたため、前記試料は肉眼で識別することができた(図11)。動態測定により、P4のT8へのハイブリダイゼーションが十分以内にほぼ完了したことがさらに明らかになった(図10、挿入図)。競合するT1鎖を等モル比の結合部位で添加することで、2分間のハイブリダイゼーション遅延時間がもたらされ、遅延時間後に、完全な蛍光回復およびP4のT8への結合が観察された。この結果は、生理学的に模擬された条件下で、P4と単一結合部位のRNAとの相互作用が弱く一過的であること、そして同様の時間枠内でプローブの完全な回復およびRNAリピートへの結合が達成されることを示している。
【0119】
P4プローブの認識選択性を評価するために、競合結合アッセイを実施した。本発明者らの出版物に記載されたプロトコルにしたがって調製された等モルの結合部位の正常な長さのT6および病原性T48[r(CUG)96]を、種々の濃度のP4と一緒に37℃で16時間インキュベートした。得られた混合物をアガロースゲルによって分析し、視覚化のためにSYBR-Goldで染色した。図12の検査により、P4が病原性T48を野生型T12から区別することができたことが明らかである(レーン6とレーン3との比較)。単一塩基ミスマッチのあるP5プローブでは、結合の証拠は観察されなかった(レーン7とレーン3との比較)。これらの結果は、P4が伸長したT48転写物を野生型T6から区別することができること、そしてプローブの結合が配列特異的に生ずることを示唆している。
【0120】
次いで、P4がrCUGexp-MBNL複合体を分裂させ得るかどうかをゲルシフトアッセイの実施によって調べた。RNA-タンパク質複合体を、生理学的に適切な条件で5’-32P標識されたT48をMBNLと一緒にインキュベートすることによって調製した。T48とMBNLの結合が確認されたら、P4を添加し、非変性PAGEおよびオートラジオグラフィーにより分析する前に、得られた混合物を37℃で4時間インキュベートした。T48-MBNL複合体の形成は、図13のレーン2からレーン4で観察される尾を引いたパターンによって明らかである。P4の添加により、バンドの形成のシフトがもたらされ、前記シフトは、プローブ濃度の増加に伴ってより顕著になった(レーン5からレーン7)。この結果は、P4がrCUGexp-MBNL複合体を分裂させ、T48-P4ヘテロデュプレックスの形成およびRNA転写物からのすべてのMBNLタンパク質の排除をもたらすことができる証拠と見なされる。このような能力は、DMI疾患経路の干渉に重要である。
【0121】
典型的には長さが15ヌクレオチド~30ヌクレオチドの範囲である従来のアンチセンス剤またはオールロックド核酸(LNA)を含むより短い型と比較して、MPγPNAが合成的により柔軟性がある。MPγPNAの構造および化学的機能性は、手元の用途要件を満たすために簡単に変更することができる。プローブサイズが小さいほど、化学合成および規模拡大がより容易になること、認識特異性および選択性(およびおそらく薬物動態特性)の向上を含む生物学的および生物医学的用途にとっての幾つかの明確な利益がもたらされる。魅力的な化学的および光物理的特性のため、ピレンを、分子間π-π相互作用の誘導のためのモデル化合物として選択した。しかしながら、実際の生物学的および生物医学的用途では、このような芳香族ペンダント基は、健康上の利益をもたらすより生物学的に良好な産物または天然の産物、例えば、すべて芳香族縮合環構造によりπ-π相互作用を促進し得るリボフラビン(ビタミンB2)、マンゴスチンまたはマンギフェリン(下記)で容易に置き換えることができる。これらは果物および野菜に存在する天然の抗酸化物質であり、酸化ストレス、炎症、癌、老化およびその他の病気に対抗するための栄養補助食品として一般的に使用されている。
【化29】
【0122】
前記実施例は、末端芳香族部分を含む、長さが二つのトリプレットリピートである比較的短い核酸プローブが、病原性rCUGexpを、短いCUGリピートを含む転写物から区別することができ、rCUGexp-MBNL複合体を分裂させ得ることを裏付けている。サイズが小さいという利点に加えて、モジュール式設計、高い認識特異性およびMPγPNAプローブの選択性は、RNAリピート伸長を標的とすることを可能にし、DM1ならびに他の多くの関連する神経筋障害および神経変性障害の可能な治療としてrCUGexpだけでなく、他の幅広い反復配列にも適用可能である。
【0123】
以下の番号付きの条項は、本発明の様々な態様の非限定的な例を提供する。
【0124】
条項1:第一の末端および第二の末端を有するとともに3個~8個のリボース、デオキシリボースまたは核酸アナログ骨格残基を有する核酸または核酸アナログ骨格と、
複数の前記リボース、デオキシリボースまたは核酸アナログ骨格残基に標的核酸に相補的な配列で連結された同一または異なってよい核酸塩基と、
前記核酸または核酸アナログ骨格の前記第一の末端にリンカーによって連結された第一のアリール部分と、
前記核酸または核酸アナログ骨格の前記第二の末端にリンカーによって結合された前記第一のアリール部分と任意に同一である第二のアリール部分と、を含む遺伝子認識試薬であって、
前記認識試薬が標的核酸の隣接する配列にハイブリダイズするときに、前記アリール部分は隣接する認識試薬のアリール部分とスタッキングする、遺伝子認識試薬。
【0125】
条項2:構造:
【化30】
ここで、nは、1~6の範囲の整数であり、
Rの各々は、独立して、任意に標的核酸に相補的な核酸塩基の配列を生ずる核酸塩基であり、
Bは、リボース、デオキシリボース、または核酸アナログ骨格残基であり、
Lは、独立して、リンカーであり、かつ
Arの各々は、独立して、2員環~5員環の縮合多環式芳香族部分である、
を有する、条項1に記載の遺伝子認識試薬。
【0126】
条項3:前記核酸または核酸アナログ骨格残基は、核酸アナログ骨格残基である、条項1または2に記載の遺伝子認識試薬。
【0127】
条項4:前記核酸アナログ骨格残基は、立体構造的に事前組織化された残基を含む、条項3に記載の遺伝子認識試薬。
【0128】
条項5:前記立体構造的に事前組織化された核酸アナログ骨格残基は、γPNA、LNAまたはグリコール核酸骨格残基である、条項4に記載の遺伝子認識試薬。
【0129】
条項6:前記立体構造的に事前組織化された核酸アナログ骨格残基は、γPNA骨格残基である、条項4に記載の遺伝子認識試薬。
【0130】
条項7:前記γPNA骨格残基の1以上は、1個~100個のエチレングリコール残基を有するエチレングリコール単位、例えば-(OCH-CHOP、-(OCH-CH-NHP、-(SCH-CH-SP、-(OCH-CH-OH、-(OCH-CH-NH、-(OCH-CH-NHC(NH)NHまたは-(OCH-CH-S-S[CHCHNHC(NH)NH、ここで、Pは、H、(C~C)アルキル、(C~C)アルケニル、(C~C)アルキニル、(C~C)アリール、(C~C)シクロアルキル、(C~C)アリール(C~C)アルキレンまたは(C~C)シクロアルキル(C~C)アルキレンであり、qは0~50の整数であり、rは1~50の整数であり、かつsは1~50の整数である、を含み、任意に(C~C)二価ヒドロカルビルリンカーによって前記1以上のγPNA骨格残基に結合された基で置換されている、条項6に記載の遺伝子認識試薬。
【0131】
条項8:前記立体構造的に事前組織化された核酸アナログ骨格残基は、L-γPNAである、条項4に記載の遺伝子認識試薬。
【0132】
条項9:構造:
【化31】
ここで、Rは、独立して、核酸塩基であり、
nは、1~6の範囲の整数、例えば1、2、3、4、5または6であり、
Lは、独立して、リンカーであり、
およびRは、それぞれガンマ炭素に結合されており、独立して、H、グアニジン含有基、アミノ酸側鎖、1個~50個のエチレングリコール部を含むエチレングリコール単位で任意に置換された直線状もしくは分岐状の(C~C)アルキル、(C~C)アルケニル、(C~C)アルキニル、(C~C)ヒドロキシアルキル、(C~C)アリール、(C~C)シクロアルキル、(C~C)アリール(C~C)アルキレン、(C~C)シクロアルキル(C~C)アルキレン、-CH-(OCH-CHOP、-CH-(OCH-CH-NHP、-CH-(SCH-CH-SP、-CH-(OCH-CH-OH、-CH-(OCH-CH-NH、-CH-(OCH-CH-NHC(NH)NHまたは-CH-(OCH-CH-S-S[CHCHNHC(NH)NHであり、ここで、PはH、(C~C)アルキル、(C~C)アルケニル、(C~C)アルキニル、(C~C)アリール、(C~C)シクロアルキル、(C~C)アリール(C~C)アルキレンまたは(C~C)シクロアルキル(C~C)アルキレンであり、qは0~50の整数であり、rは1~50の整数であり、かつsは1~50の整数であり、そして、
は、独立して、2員環~5員環の縮合多環式芳香族部分である、
を有する、または、その薬学的に許容可能な塩を有する、条項1~8のいずれか一つに記載の遺伝子認識試薬。
【0133】
条項10:各リンカーは、独立して、1以上のグアニジン含有基、1以上のアミノ酸側鎖、または1以上の連続(contiguous)アミノ酸残基を含む、条項9に記載の遺伝子認識試薬。
【0134】
条項11:前記Lの各々は、側鎖
【化32】
ここで、nは、1~5の範囲である、
を有する第一のアミノ酸残基ならびに前記第一のアミノ酸残基の各々に結合された二つのN末端アルギニン残基およびC末端アルギニン残基を含む、条項9に記載の遺伝子認識試薬。
【0135】
条項12:前記nは、1~3の範囲である、条項11に記載の遺伝子認識試薬。
【0136】
条項13:構造:
【化33】
ここで、Rは、独立して、核酸塩基であり、
nは、1~6の範囲の整数、例えば1、2、3、4、5または6であり、
およびRは、それぞれガンマ炭素に結合されており、独立して、H、グアニジン含有基、アミノ酸側鎖、1個~50個のエチレングリコール部を含むエチレングリコール単位で任意に置換された直線状もしくは分岐状の(C~C)アルキル、(C~C)アルケニル、(C~C)アルキニル、(C~C)ヒドロキシアルキル、(C~C)アリール、(C~C)シクロアルキル、(C~C)アリール(C~C)アルキレン、(C~C)シクロアルキル(C~C)アルキレン、-CH-(OCH-CHOP、-CH-(OCH-CH-NHP、-CH-(SCH-CH-SP、-CH-(OCH-CH-OH、-CH-(OCH-CH-NH、-CH-(OCH-CH-NHC(NH)NHまたは-CH-(OCH-CH-S-S[CHCHNHC(NH)NHであり、ここで、PはH、(C~C)アルキル、(C~C)アルケニル、(C~C)アルキニル、(C~C)アリール、(C~C)シクロアルキル、(C~C)アリール(C~C)アルキレンまたは(C~C)シクロアルキル(C~C)アルキレンであり、qは0~50の整数であり、rは1~50の整数であり、かつsは1~50の整数であり、
またはRの1つおよびR、RまたはRの1つは-L-Rであり、ここで、Rは、独立して、2員環~5員環の縮合多環式芳香族部分であり、かつLはリンカーであり、R、R、R、RおよびRの残りは、それぞれ独立して、H、1以上の連続アミノ酸残基、グアニジン含有基、アミノ酸側鎖、1個~50個のエチレングリコール部を含むエチレングリコール単位で任意に置換された線状もしくは分岐状の(C~C)アルキル、(C~C)アルケニル、(C~C)アルキニル、(C~C)ヒドロキシアルキル、(C~C)アリール、(C~C)シクロアルキル、(C~C)アリール(C~C)アルキレン、(C~C)シクロアルキル(C~C)アルキレン、-CH-(OCH-CHOP、-CH-(OCH-CH-NHP、-CH-(SCH-CH-SP、-CH-(OCH-CH-OH、-CH-(OCH-CH-NH、-CH-(OCH-CH-NHC(NH)NHまたは-CH-(OCH-CH-S-S[CHCHNHC(NH)NHであり、ここで、PはH、(C~C)アルキル、(C~C)アルケニル、(C~C)アルキニル、(C~C)アリール、(C~C)シクロアルキル、(C~C)アリール(C~C)アルキレンまたは(C~C)シクロアルキル(C~C)アルキレンであり、qは0~50の整数であり、rは1~50の整数であり、かつsは1~50の整数である、
を有する、または、その薬学的に許容可能な塩を有する、条項1~12のいずれか一つに記載の遺伝子認識試薬。
【0137】
条項14:R、R、R、R、R、RまたはRの1以上は、-(OCH-CHOP、-(OCH-CH-NHP、-(SCH-CH-SP、-(OCH-CH-OH、-(OCH-CH-NH、-(OCH-CH-NHC(NH)NHまたは-(OCH-CH-S-S[CHCHNHC(NH)NHで置換された(C-C)アルキルであり、ここで、Pは、H、(C~C)アルキル、(C~C)アルケニル、(C~C)アルキニル、(C~C)アリール、(C~C)シクロアルキル、(C~C)アリール(C~C)アルキレンまたは(C~C)シクロアルキル(C~C)アルキレンであり、qは0~50の整数であり、rは1~50の整数であり、かつsは1~50の整数である、条項13に記載の遺伝子認識試薬。
【0138】
条項15:RおよびRは、-L-Rである、条項13または14に記載の遺伝子認識試薬。
【0139】
条項16:RおよびRは、アルギニン残基を含む、条項13~15のいずれか一つに記載の遺伝子認識試薬。
【0140】
条項17:構造:
【化34】
ここで、nは、1~8の範囲の整数であり、
mは、1~5の範囲の整数であり、
は、ガンマ炭素に結合されており、グアニジン含有基、アミノ酸側鎖、1個~50個のエチレングリコール部を含むエチレングリコール単位で任意に置換された線状もしくは分岐状の(C~C)アルキル、(C~C)アルケニル、(C~C)アルキニル、(C~C)ヒドロキシアルキル、(C~C)アリール、(C~C)シクロアルキル、(C~C)アリール(C~C)アルキレン、(C~C)シクロアルキル(C~C)アルキレン、-CH-(OCH-CHOP、-CH-(OCH-CH-NHP、-CH-(SCH-CH-SP、-CH-(OCH-CH-OH、-CH-(OCH-CH-NH、-CH-(OCH-CH-NHC(NH)NHまたは-CH-(OCH-CH-S-S[CHCHNHC(NH)NHであり、ここで、PはH、(C~C)アルキル、(C~C)アルケニル、(C~C)アルキニル、(C~C)アリール、(C~C)シクロアルキル、(C~C)アリール(C~C)アルキレンまたは(C~C)シクロアルキル(C~C)アルキレンであり、qは0~50の整数であり、rは1~50の整数であり、かつsは1~50の整数であり、
は、非置換の縮合環多環式芳香族部分、例えば、ペンタレン、インデン、ナフタレン、アズレン、ヘプタレン、ビフェニレン、as-インダセン、s-インダセン、アセナフチレン、フルオレン、フェナレン、フェナントレン、アントラセン、フルオランテン、アセフェナントリレン、アセアントリレン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、ナフタセン/テトラセン、プレイアデン、ピセンまたはペリレンであり、かつ
、RおよびRの各々は、独立して、H、グアニジン含有基、例えば
【化35】
ここで、nは、1、2、3、4または5である、
アミノ酸側鎖、または1以上の連続アミノ酸残基である、
を有する、または、その薬学的に許容可能な塩を有する、条項1~16のいずれか一つに記載の遺伝子認識試薬。
【0141】
条項18:R、R、R、R、R、RまたはRの1以上は、-(OCH-CHOP、-(OCH-CH-NHP、-(SCH-CH-SP、-(OCH-CH-OH、-(OCH-CH-NH、-(OCH-CH-NHC(NH)NHまたは-(OCH-CH-S-S[CHCHNHC(NH)NHで置換された(C-C)アルキルであり、ここで、Pは、H、(C~C)アルキル、(C~C)アルケニル、(C~C)アルキニル、(C~C)アリール、(C~C)シクロアルキル、(C~C)アリール(C~C)アルキレンまたは(C~C)シクロアルキル(C~C)アルキレンであり、qは0~50の整数であり、rは1~50の整数であり、かつsは1~50の整数である、条項17に記載の遺伝子認識試薬。
【0142】
条項19:Rは、-CH-O-CH-CH-O-CH-CH-OHであり、Rは、Hであり、Rは、Arg-Dab(ピレン)-、Arg-Orn(ピレン)-またはArg-Lys(ピレン)-であり、かつRは、-Dab(ピレン)-Arg、-Orn(ピレン)-Argまたは-Lys(ピレン)-Argであり、任意に、Arg、Dab、OrnおよびLysのキラル中心は、L-Arg、L-Dab、L-OrnおよびL-Lysである、条項17に記載の遺伝子認識試薬。
【0143】
条項20:2員環~5員環の縮合多環式芳香族部分の双方は同一である、条項2~19のいずれか一つに記載の遺伝子認識試薬。
【0144】
条項21:前記2員環~5員環の縮合多環式芳香族部分の一方または双方は、任意にO、N、Pおよび/またはS等の1以上のヘテロ原子で置換された、非置換または置換されたペンタレン、インデン、ナフタレン、アズレン、ヘプタレン、ビフェニレン、as-インダセン、s-インダセン、アセナフチレン、フルオレン、フェナレン、フェナントレン、アントラセン、フルオランテン、アセフェナントリレン、アセアントリレン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、ナフタセン/テトラセン、プレイアデン、ピセンまたはペリレンである、条項2~20のいずれか一つに記載の遺伝子認識試薬。
【0145】
条項22:前記2員環~5員環の縮合多環式芳香族部分の一方または双方は、リボフラビン(ビタミンB2)、マンゴスチンまたはマンギフェリンを含む、条項2~21のいずれか一つに記載の遺伝子認識試薬。
【0146】
条項23:前記Rおよび前記Rは、2以上のガンマ炭素において異なっている、条項9~22のいずれか一つに記載の遺伝子認識試薬。
【0147】
条項24:前記Rは、2以上のガンマ炭素においてHであり、前記Rおよび前記Rは異なっている、条項23に記載の遺伝子認識試薬。
【0148】
条項25:前記Rは、2以上のガンマ炭素においてHであり、前記Rおよび前記Rは異なっている、条項23に記載の遺伝子認識試薬。
【0149】
条項26:グアニジン部分を含む、条項1~25のいずれか一つに記載の遺伝子認識試薬。
【0150】
条項27:グアニジン含有基
【化36】
ここで、nは、1、2、3、4または5である、
を含む、条項1~26のいずれか一つに記載の遺伝子認識試薬。
【0151】
条項28:前記Rは、-CH-(OCH-CH-OHであり、ここで、rは、1~50、1~10、または2の整数である、条項9~27のいずれか一つに記載の遺伝子認識試薬。
【0152】
条項29:前記Rは、-CH-O-CH-CH-O-CH-CH-OHであり、かつ、前記Rは、ピレンである、条項9~27のいずれか一つに記載の遺伝子認識試薬。
【0153】
条項30:前記リンカーは、5~25の原子、または、合計で1~10の総C原子、O原子、P原子、N原子およびS原子を含む、条項1~29のいずれか一つに記載の遺伝子認識試薬。
【0154】
条項31:前記核酸塩基配列は、リピート伸長疾患、例えばFRDA、FRAXA、FRAXE、SCA1、SCA2、SCA3(MJD)、SCA6、SCA7、SCA17、DRPLA、SBMA、HD、MD1、MD2、FXTAS、SCA8、SCA10、SCA12、HDL2またはALSと関連する伸長したリピートを有する核酸に完全に相補的である、条項1~30のいずれか一つに記載の遺伝子認識試薬。
【0155】
条項32:前記伸長したリピートは、以下の配列、(GAA)、(CGG)、(CCG)、(CAG)、(CTG)、(CCTG)、(ATTCT)または(GGGGCC)の一つを有し、ここで、nは少なくとも3である、条項31に記載の遺伝子認識試薬。
【0156】
条項33:標的配列を有する核酸を、条項1~32のいずれか一つに記載の遺伝子認識試薬と接触させることを含む、核酸の結合方法。
【0157】
条項34:前記遺伝子認識試薬の核酸塩基配列は、リピート伸長疾患、例えばFRDA、FRAXA、FRAXE、SCA1、SCA2、SCA3(MJD)、SCA6、SCA7、SCA17、DRPLA、SBMA、HD、MD1、MD2、FXTAS、SCA8、SCA10、SCA12、HDL2またはALSと関連する伸長したリピートを有する核酸に完全に相補的である、条項33に記載の方法。
【0158】
条項35:前記伸長したリピートは、以下の配列、(GAA)、(CGG)、(CCG)、(CAG)、(CTG)、(CCTG)、(ATTCT)または(GGGGCC)の一つを有し、ここで、nは少なくとも3である、条項34に記載の方法。
【0159】
条項36:mRNAの標的配列を、前記標的配列に相補的な核酸塩基配列を有する条項1~32のいずれか一つに記載の遺伝子認識試薬と接触させることを含む、細胞内のmRNAの発現をノックダウンする方法。
【0160】
条項37:前記遺伝子認識試薬の核酸塩基配列は、リピート伸長疾患、例えばFRDA、FRAXA、FRAXE、SCA1、SCA2、SCA3(MJD)、SCA6、SCA7、SCA17、DRPLA、SBMA、HD、MD1、MD2、FXTAS、SCA8、SCA10、SCA12、HDL2またはALSと関連する伸長したリピートを有する核酸に完全に相補的である、条項36に記載の方法。
【0161】
条項38:前記伸長したリピートは、以下の配列、(GAA)、(CGG)、(CCG)、(CAG)、(CTG)、(CCTG)、(ATTCT)または(GGGGCC)の一つを有し、ここで、nは少なくとも3である、条項37に記載の方法。
【0162】
条項39:核酸を含む試料を、前記アリール部分が、標的配列上で連結されていない場合に励起周波数の光にさらされたときに第一の蛍光発光を生じ、標的配列上で連結されている場合に励起周波数の光にさらされたときに前記第一の蛍光発光とは異なる第二の蛍光発光を生じる条項1~32のいずれか一つに記載の遺伝子認識試薬と接触させることと、前記蛍光性芳香族部分を励起することによって前記試料中の前記標的配列の存在を決定することと、前記蛍光性芳香族部分によって前記試料中に生じた前記第二の蛍光シグナルの量を測定することとを含む、試料中の核酸の標的配列の同定方法。
【0163】
条項40:前記蛍光性芳香族部分は、ピレンである、条項39に記載の方法。
【0164】
条項41:前記遺伝子認識試薬の核酸塩基配列は、リピート伸長疾患、例えばFRDA、FRAXA、FRAXE、SCA1、SCA2、SCA3(MJD)、SCA6、SCA7、SCA17、DRPLA、SBMA、HD、MD1、MD2、FXTAS、SCA8、SCA10、SCA12、HDL2またはALSと関連する伸長したリピートを有する核酸に完全に相補的である、条項39に記載の方法。
【0165】
条項42:前記伸長したリピートは、以下の配列、(GAA)、(CGG)、(CCG)、(CAG)、(CTG)、(CCTG)、(ATTCT)または(GGGGCC)の一つを有し、ここで、nは少なくとも3である、条項39に記載の方法。
【0166】
条項43:条項1~32のいずれか一つに記載の遺伝子認識試薬と、薬学的に許容可能な担体とを含む組成物。
【0167】
本発明を、特定の例示的な実施形態、分散可能な組成物および前記組成物の使用を参照して説明した。しかしながら、当業者によれば、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、前記例示的な実施形態のいずれかの様々な置換、変更または組合せを行うことができることが認識されるであろう。したがって、本発明は、前記例示的な実施形態の記載によって限定されない。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【配列表】
0007373205000001.app