(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-25
(45)【発行日】2023-11-02
(54)【発明の名称】抗C-MET抗体又はその抗原結合断片を含むキメラ抗原受容体、及びその用途
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20231026BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20231026BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20231026BHJP
C12N 5/078 20100101ALI20231026BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20231026BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231026BHJP
A61K 35/15 20150101ALI20231026BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20231026BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/63 Z
C07K19/00
C12N5/078
C12N5/10
A61P35/00
A61K35/15
A61K35/17
(21)【出願番号】P 2022519423
(86)(22)【出願日】2020-09-25
(86)【国際出願番号】 KR2020013127
(87)【国際公開番号】W WO2021060932
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-03-25
(31)【優先権主張番号】10-2019-0119148
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518069438
【氏名又は名称】ヘリックスミス カンパニー, リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェ、チン-ア
(72)【発明者】
【氏名】ヨ、スン シン
【審査官】福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106008721(CN,A)
【文献】特表2017-523812(JP,A)
【文献】特表2019-507137(JP,A)
【文献】LIU Bing et al.,Development of c-MET-specific chimeric antigen receptor-engineered natural killer cells with cytotoxic effects on human liver cancer HepG2 cells,Mol Med Rep, Epub 2019 Jul 25, vol. 20, no. 3, p. 2823-2831
【文献】TCHOU Julia et al.,Safety and Efficacy of Intratumoral Injections of Chimeric Antigen Receptor (CAR) T Cells in Metastatic Breast Cancer,Cancer Immunol Res, 2017, vol. 5, no. 12, p. 1152-1161
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
SwissProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
c-Met結合ドメイン、膜
貫通ドメイン、及び細胞内信号伝達ドメイン
を含む抗c-Metキメラ抗原受容体をエンコードする核酸分子であって、
前記c-Met結合ドメインは、c-Metに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片であり、前記抗体又はその抗原結合断片は、配列番号21のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域(heavy chain variable region,VH);及び、配列番号22のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域(light chain variable region,VL)を含む、前記核酸分子。
【請求項2】
前記キメラ抗原受容体は、
リーダー配列(leader sequence,LS)をさらに含むものである、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項3】
前記
リーダー配列は、CD8アルファの
リーダー配列、hGM-CSF受容体アルファ鎖(hGM-CSF receptor alpha-chain)の
リーダー配列、又は3E8抗体の
リーダー配列である、請求項
2に記載の核酸分子。
【請求項4】
前記
リーダー配列は、配列番号26、28又は30の塩基配列によってエンコードされるアミノ酸配列を含む
リーダー配列である、請求項
2に記載の核酸分子。
【請求項5】
前記c-Met結合ドメイン及び膜
貫通ドメインは、ヒンジ領域、スぺーサ領域、又はそれらの組合せによって連結されるものである、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項6】
前記ヒンジ領域又はスぺーサ領域は、IgG1のヒンジ、IgG4のヒンジ、IgDのヒンジ、CD8アルファのヒンジ、IgG1 CH3、CD28の細胞外ドメイン又はそれらの組合せである、請求項
5に記載の核酸分子。
【請求項7】
前記ヒンジ領域又はスペース領域は、配列番号32、34、36、38、40又は44の塩基配列によってエンコードされるアミノ酸配列を含
む、請求項
5に記載の核酸分子。
【請求項8】
前記キメラ抗原受容体は、T細胞受容体、CD28、CD3、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137及びCD154からなる群から選ばれるタンパク質の膜
貫通ドメインを含む、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項9】
前記膜
貫通ドメインは、配列番号42、46又は47の塩基配列によってエンコードされるアミノ酸配列を含むものである、請求項
8に記載の核酸分子。
【請求項10】
前記細胞内信号伝達ドメインは、CD3ゼータの信号伝達ドメインを含むものである、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項11】
前記CD3ゼータの信号伝達ドメインは、配列番号55、57又は59の塩基配列によってエンコードされるアミノ酸配列を含むものである、請求項
10に記載の核酸分子。
【請求項12】
前記細胞内信号伝達ドメインは、OX40、CD2、CD27、CD28、CDS、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、ICOS(CD278)及
びCD13
7からなる群から選ばれるタンパク質の信号伝達ドメインを共同刺激ドメインとしてさらに含むものである、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項13】
前記共同刺激ドメインは、配列番号49、51又は53の塩基配列によってエンコードされるアミノ酸配列を含む共同刺激ドメインである、請求項
12に記載の核酸分子。
【請求項14】
請求項1~
13のいずれか一項の核酸分子を含むベクター。
【請求項15】
請求項1~
13のいずれか一項の核酸分子によってエンコードされるポリペプチドを含む抗c-Metキメラ抗原受容体分子。
【請求項16】
請求項
15の抗c-Metキメラ抗原受容体分子を細胞表面に発現させるエフェクター細胞。
【請求項17】
前記エフェクター細胞は、樹状細胞、キラー樹状細胞、肥満細胞、
ナチュラルキラー細胞、Bリンパ球、Tリンパ球、大食細胞及びそれらの前駆細胞からなる群から選ばれるものである、請求項
16に記載のエフェクター細胞。
【請求項18】
請求項
16のエフェクター細胞及び薬剤学的に許容される担体を含む、c-Met免疫治療用薬剤学的組成物。
【請求項19】
請求項
16のエフェクター細胞及び薬剤学的に許容される担体を含む、c-Met発現に関連した疾患の治療用薬剤学的組成物。
【請求項20】
前記c-Met発現に関連した疾患は、脳癌、神経膠腫、乳癌、膵癌、胸膜中皮腫、肝癌、胃癌、肺癌、卵巣癌、及び大腸癌からなる群から選ばれる疾病である、請求項
19に記載の薬剤学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、2019年9月26日に大韓民国特許庁に提出された大韓民国特許出願第10-2019-0119148号に対して優先権を主張し、該特許出願の開示事項は、本明細書に参照によって組み込まれる。
【0002】
本発明は、c-Met結合ドメインを含むキメラ抗原受容体、及びその用途に関する。
【背景技術】
【0003】
c-Metの活性化は、細胞成長、分散(scattering)及び運動性(motility)、侵襲(invasion)、細胞死滅からの保護、分枝形態形成(branching morphogenesis)及び新生血管形成(angiogenesis)の増加を誘導する様々な生物学的反応を招く。このため、病理学的条件下でc-Metの不適切な活性化は癌細胞に増殖、生存及び侵襲/転移能力を付与することがある。c-Met活性に影響を受ける様々な生物学的、生理学的機能を考慮する時、c-Metタンパク質は多用途の治療標的とされた。
【0004】
近年、免疫細胞療法として、体内の免疫細胞を強化させるか或いは遺伝工学的に変形させて再び入れる養子的細胞治療(adoptive cell therapy)への関心が高まりつつある。特に、遺伝子組換え修飾を用いた人工受容体であるキメラ抗原受容体(Chimeric Antigen Receptor,CAR)を用いた研究が活発に行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、c-Met発現に関連した疾患を効果的に治療できるキメラ抗原受容体及びこれを含むエフェクター細胞を開発しようと鋭意研究努力した。その結果、c-Metに特異的に結合する抗c-Met CAR及びこれを発現させるT細胞を作製し、抗c-Met CAR-Tが、様々なc-Met発現に関連した癌腫に対して治療効果があることを究明し、本発明を完成するに至った。
【0006】
したがって、本発明の目的は、抗c-Metキメラ抗原受容体をエンコードする核酸分子及びこれを含むベクターを提供することである。
【0007】
本発明の他の目的は、前記核酸分子によってエンコードされるポリペプチドを含む抗c-Metキメラ抗原受容体分子及びこれを細胞表面に発現させるエフェクター細胞を提供することである。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、前記エフェクター細胞及び薬剤学的に許容される担体を含む薬剤学的組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、本発明は、次を含む抗c-Metキメラ抗原受容体をエンコードする核酸分子を提供する:
【0010】
c-Met結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内信号伝達ドメイン。
【0011】
本発明の一具現例において、前記c-Met結合ドメインは、c-Metに特異的に結合する抗体(antibody)又はその抗原結合断片(antigen binding fragment thereof)である。
【0012】
本発明の具体的な具現例において、前記抗体又はその抗原結合断片は、配列番号15、16、17のアミノ酸配列をそれぞれ含む重鎖相補性決定領域1(complementarity determining region 1 of heavy chain,CDRH1)、重鎖相補性決定領域2(CDRH2)、及び重鎖相補性決定領域3(CDRH3);及び、配列番号18、19、20のアミノ酸配列をそれぞれ含む軽鎖相補性決定領域1(complementarity determining region 1 of light chain,CDRL1)、軽鎖相補性決定領域2(CDRL2)、及び軽鎖相補性決定領域3(CDRL3)を含むものである、核酸分子。
【0013】
本発明の他の具体的な具現例において、前記抗体又はその抗原結合断片は、配列番号21のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域(heavy chain variable region,VH);及び、配列番号22のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域(light chain variable region,VL)を含むものである、核酸分子。
【0014】
本発明の他の具体的な具現例において、前記抗体又はその抗原結合断片は、配列番号64のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域(heavy chain variable region,VH);及び、配列番号22のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域(light chain variable region,VL)を含むものである、核酸分子。
【0015】
本発明の他の具体的な具現例において、前記抗体又はその抗原結合断片は、配列番号65のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域(heavy chain variable region,VH);及び、配列番号22のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域(light chain variable region,VL)を含むものである、核酸分子。
【0016】
本発明の他の具体的な具現例において、前記抗体又はその抗原結合断片は、配列番号65のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域(heavy chain variable region,VH);及び、配列番号66のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域(light chain variable region,VL)を含むものである、核酸分子。
【0017】
本明細書において、用語“抗体(antibody又はAb)”とは、特定の抗原に特異的に結合するイムノグロブリン分子に由来するタンパク質、又はポリペプチド配列を意味する。前記抗体は、天然抗体又は組換え抗体であってよい。
【0018】
前記用語“組換え抗体”とは、組換えDNA技術を用いて生成された抗体、例えば、動物細胞発現システムによって発現した抗体を意味する。或いは、前記用語は、抗体をエンコードする合成されたDNA分子の翻訳によって生成された抗体を意味する。
【0019】
前記抗体は、完全な抗体形態の他、抗体分子の抗原結合断片(antigen binding fragment)も含む。完全な抗体は、2本の全長の軽鎖及び2本の全長の重鎖を有する構造であり、それぞれの軽鎖は、重鎖とジスルフィド結合で連結されている。
【0020】
用語“重鎖(heavy chain)”は、その天然発生立体形態で抗体分子に存在し、抗体の属するクラスを一般に決定する、ポリペプチド鎖の2種類のうち相対的に大きいものを意味する。前記“重鎖”とは、抗原に特異性を付与するための十分の可変領域配列を有するアミノ酸配列を含む抗体の重鎖可変領域(variable region of heavy chain)ドメインVH、及び3個の重鎖定常領域(constant region of heavy chain)ドメインCH1、CH2及びCH3を含む全長重鎖及びその断片のいずれをも意味する。重鎖定常領域は、ガンマ(γ)、ミュー(μ)、アルファ(α)、デルタ(δ)及びエプシロン(ε)タイプを有し、サブクラスとして、ガンマ1(γ1)、ガンマ2(γ2)、ガンマ3(γ3)、ガンマ4(γ4)、アルファ1(α1)及びアルファ2(α2)を有する。
【0021】
用語“軽鎖(light chain)”は、その天然発生立体形態で抗体分子に存在するポリペプチド鎖の2種類のうち相対的に小さいものを意味する。前記“軽鎖”とは、抗原に特異性を付与するための十分の可変領域配列を有するアミノ酸配列を含む抗体の軽鎖可変領域(variable region of light chain)ドメインVL、及び軽鎖定常領域(constant region of light chain)ドメインCLを含む全長軽鎖及びその断片のいずれをも意味する。軽鎖の定常領域(constant region of light chain)は、カッパ(κ)及びラムダ(λ)タイプを有する(Cellular and Molecular Immunology,Wonsiewicz,M.J.,Ed.,Chapter 45,pp.41-50,W.B.Saunders Co.Philadelphia,PA(1991);Nisonoff,A.,Introduction to Molecular Immunology,2nd Ed.,Chapter 4,pp.45-65,sinauer Associates,Inc.,Sunderland,MA(1984))。
【0022】
用語“抗原(antigen又はAg)”は、免疫反応を誘発する分子を意味する。前記免疫反応は、抗体生産、又は特異的免疫適格細胞の活性化、又は両方を伴うことができる。
【0023】
本明細書において、用語“CDR(complementarity determining region)”は、免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の超可変領域(hypervariable region)のアミノ酸配列を意味する(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,4th Ed.,U.S.Department of Health and Human Services,National Institutes of Health(1987))。重鎖(CDRH1、CDRH2及びCDRH3)及び軽鎖(CDRL1、CDRL2及びCDRL3)にはそれぞれ3個のCDRが含まれている。CDRは、抗体が抗原又はエピトープに結合する際に主要な接触残基を提供する。
【0024】
本発明の抗体は、単一クローン抗体、多特異的抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、単鎖Fvs(scFV)、単鎖抗体、Fab断片、F(ab’)断片、ジスルフィド結合Fvs(sdFV)及び抗イディオタイプ(抗Id)抗体、並びにこれら抗体のエピトープ-結合断片などを含むが、これに限定されるものではない。
【0025】
本明細書において、用語“フレームワーク(Framework)”又は“FR”は、超可変領域(hypervariable region,HVR)残基以外の可変ドメイン残基を表す。可変ドメインのFRは、一般に4個のFRドメインFR1、FR2、FR3及びFR4で構成される。したがって、HVR及びFR配列は一般に、VH(又は、VL/Vk)において次の順序で表される:
【0026】
(a)FRH1(Framework region 1 of Heavy chain)-CDRH1(complementarity determining region 1 of Heavy chain)-FRH2-CDRH2-FRH3-CDRH3-FRH4;及び
【0027】
(b)FRL1(Framework region 1 of Light chain)-CDRL1(complementarity determining region 1 of Light chain)-FRL2-CDRL2-FRL3-CDRL3-FRL4。
【0028】
本明細書において、用語“c-Met(mesenchymal-epithelial transition factor)”は、細胞表面で発現するMet原発癌遺伝子(proto-oncogene)によってエンコードされる受容体チロシンキナーゼである。構造的に、c-Metは、細胞外アルファサブユニット(extracellular alpha subunit,50kDa)と膜貫通ベータサブユニット(transmembrane beta subunit,140kDa)で構成されたジスルフィド結合した離合体である。c-Metは、リガンド結合のための細胞外ドメイン、膜貫通部分、及び細胞内ドメイン内のチロシン残基のリン酸化に関与するチロシンキナーゼ触媒モチーフを含む(Dean et al.,Nature,4:318(6044):385,1985;Park et al.,PNAS,84(18):6379,1976;Maggiora et al.,J.Cell Physiol.,173:183,1997)。c-MetがリガンドであるHGF(hepatocyte growth factor)に結合すると、c-Metの細胞質チロシン残基が二量化され、自己リン酸化され(autophosphorylate)、続いて、下位信号伝達経路を媒介する様々なタンパク質と相互作用する。c-Met活性化は、細胞成長、分散(scattering)及び運動性(motility)、侵襲(invasion)、細胞死滅からの保護、分枝形態形成(branching morphogenesis)及び新生血管形成(angiogenesis)の増加を誘導する様々な生物学的反応を招く。病理学的条件下でc-Metの不適切な活性化は癌細胞に増殖、生存及び侵襲/転移能力を付与することがある。c-Met活性に影響を受ける様々な生物学的、生理学的機能を考慮する時、c-Metタンパク質は多用途の治療標的とされた。
【0029】
本明細書において、用語“特異的に結合する”又はそれと類似の表現は、抗体又はその抗原結合断片、又はscFvのような他の構成物が生理的条件下で比較的安定した抗原と複合体を形成するということを意味する。
【0030】
本発明の一具現例において、本発明の抗c-Met抗体又は抗原結合断片の特異的結合は、少なくとも約1×10-6M以下(例えば、9×10-7M、8×10-7M、7×10-7M、6×10-7M、5×10-7M、4×10-7M、3×10-7M、2×10-7M、又は1×10-7M)、少なくとも約1×10-7M以下(例えば、9×10-8M、8×10-8M、7×10-8M、6×10-8M、5×10-8M、4×10-8M、3×10-8M、2×10-8M、又は1×10-8M)、又は少なくとも約1×10-8M以下(例えば、9×10-9M、8×10-9M、7×10-9M、6×10-9M、5×10-9M、4×10-9M、3×10-9M、2×10-9M、又は1×10-9M)の平衡解離定数(小さいKDであるほど強固な結合を示す。)と特性化されてよい。2個の分子が特異的に結合するか否かを決定する方法は、当業界によく知られており、例えば、平衡透析、表面プラスモン共鳴などを含む。ただし、ヒトc-Metに特異的に結合する分離された抗体は、他の種(species)のc-Met分子のような他の抗原に対する交差反応性を示すことができる。
【0031】
本明細書において、用語“親和度(Affinity)”は、分子(例えば、抗体)の単一結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)間の非共有相互作用の総和の強度を意味する。別に断らない限り、本願に使われているように、“結合親和力(binding affinity)”は、結合対(例えば、抗体及び抗原)の構成員間の1:1相互作用を反映する内因性(intrinsic)結合親和力を表す。分子YとそのパートナーYの親和度は、一般に、解離定数(Kd)で示すことができる。親和度は、本願に記述されたものを含めて当業界に公知の通常の方法によって測定されてよい。
【0032】
また、本明細書において、用語“ヒト抗体(human antibody)”は、ヒト又はヒト細胞によって生成された抗体、又はヒト抗体レパートリー(repertoires)又は他のヒト抗体エンコーディング配列を利用する非ヒト根源に由来する抗体のアミノ酸配列に相応するアミノ酸配列を保有する。ヒト抗体のこのような定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化(humanized)抗体を排除する。
【0033】
本明細書において、用語“キメラ(chimeric)”抗体は、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の根源(source)又は種(species)に由来し、重鎖及び/又は軽鎖の他部が、異なる根源又は種に由来する抗体を意味する。
【0034】
本明細書において、用語“ヒト化抗体”とは、非ヒト(例えば、マウス)抗体の非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有するキメラ免疫グロブリン、その免疫グロブリン鎖又は断片(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2又は抗体の他の抗原結合下位配列)である。大部分の場合に、ヒト化抗体は、受容者の相補性決定領域(CDR)の残基が、目的とする特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(供与者抗体)、例えば、マウス、ラット又はウサギのCDRの残基に代替されたヒト免疫グロブリン(受容者抗体)である。一部の場合に、前記ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(framework region,FR)残基は、相応する非ヒト残基に代替される。また、ヒト化抗体は、受容者抗体からも又は取り込まれたCDR又はフレームワーク配列からも発見されない残基を含むことができる。このような変形は、抗体性能をさらに改善及び最適化するためになされる。一般に、前記ヒト化された抗体は、少なくとも1個、及び典型的に2個の実質的に全ての可変ドメインを含んでよく、前記ドメインにおいて前記CDR領域の全部又は実質的全部は、非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に相応し、前記FR領域の全部又は実質的全部は、ヒト免疫グロブリンのFR領域の配列を有する。前記ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc region)の少なくとも一部又は実質的なヒト免疫グロブリンの定常領域(Fc region)配列を含む。
【0035】
本発明の抗c-Met抗体又はその抗原結合断片は、通常の技術者が認知しているように、c-Metを特異的に認識できる範囲内でアミノ酸配列の変異体を含むことができる。例えば、抗体の結合親和度及び/又はその他生物学的特性を改善させるために抗体のアミノ酸配列に変化を与えることができる。このような変形は、例えば、抗体のアミノ酸配列残基の欠失、挿入及び/又は置換を含む。
【0036】
このようなアミノ酸変異は、アミノ酸側鎖置換体の相対的類似性、例えば、疎水性、親水性、電荷、大きさなどに基づいてなされる。アミノ酸側鎖置換体の大きさ、形態及び種類に対する分析によって、アルギニン、リジン及びヒスチジンはいずれも陽電荷を帯びている残基であり;アラニン、グリシン及びセリンは類似の大きさを有し;フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンは類似の形態を有する、ということがわかる。したがって、このような考慮事項に基づき、アルギニン、リジン及びヒスチジン;アラニン、グリシン及びセリン;そしてフェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンは、生物学的に機能均等物であるといえる。
【0037】
変異を導入するに当たって、アミノ酸の疎水性インデックス(hydropathic idex)が考慮されてよい。それぞれのアミノ酸は、疎水性と電荷によって疎水性インデックスが与えられている:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスタイン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(-0.4);トレオニン(-0.7);セリン(-0.8);トリプトファン(-0.9);チロシン(-1.3);プロリン(-1.6);ヒスチジン(-3.2);グルタミン酸(-3.5);グルタミン(-3.5);アスパラギン酸(-3.5);アスパラギン(-3.5);リジン(-3.9);及び、アルギニン(-4.5)。
【0038】
タンパク質の相互的な生物学的機能(interactive biological function)を付与する上で疎水性アミノ酸インデックスは非常に重要である。類似の疎水性インデックスを有するアミノ酸に置換してこそ類似の生物学的活性が保有できるということは公知の事実である。疎水性インデックスを参照して変異を導入させる場合に、好ましくは±2以内、より好ましくは±1以内、より好ましくは±0.5以内の疎水性インデックス差を示すアミノ酸間の置換を行う。
【0039】
一方、類似の親水性値(hydrophilicity value)を有するアミノ酸間の置換が、均等な生物学的活性を有するタンパク質を招くということもよく知られている。米国特許第4,554,101号に開示されているように、次の親水性値がそれぞれのアミノ酸残基に与えられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);トレオニン(-0.4);プロリン(-0.5±1);アラニン(-0.5);ヒスチジン(-0.5);システイン(-1.0);メチオニン(-1.3);バリン(-1.5);ロイシン(-1.8);イソロイシン(-1.8);チロシン(-2.3);フェニルアラニン(-2.5);トリプトファン(-3.4)。
【0040】
親水性値を参照して変異を導入させる場合に、好ましくは±2以内、より好ましくは±1以内、さらに好ましくは±0.5以内の親水性値差を示すアミノ酸間の置換を行う。
【0041】
分子の活性を全体的に変更させないタンパク質におけるアミノ酸交換は、当該分野に公知されている(H.Neurath,R.L.Hill,The Proteins,Academic Press,New York,1979)。最も一般的に起きる交換は、アミノ酸残基Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Thy/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/Glu、Asp/Gly間の交換である。
【0042】
本発明の一具現例において、本発明の抗c-Met抗体又はその抗原結合断片は、上述した具体的なアミノ酸配列に限定された抗c-Met抗体又はその抗原結合断片(例えば、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列、又はそれらのCDRH1~CDRH3及びCDRL1~CDRL3を含むアミノ酸配列の断片)を含む。
【0043】
また、本発明の一具現例において、抗c-Met抗体又はその抗原結合断片は、上述した具体的なアミノ酸配列に限る抗体又はその抗原結合断片のCDR、重鎖可変領域、又は軽鎖可変領域のアミノ酸配列と少なくとも約60%以上の相同性(例えば、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、又は69%)、より好ましくは、少なくとも70%以上の相同性(例えば、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、又は79%)、さらに好ましくは、少なくとも80%以上(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、又は89%)の相同性、最も好ましくは90%以上(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%)の相同性を有する配列を含む。前記70%以上~100%以下の範囲の全ての整数及び小数は、%相同性と関連して本発明の範囲内に含まれる。
【0044】
本明細書において、用語“キメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor,CAR)”は、少なくとも一つの細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び刺激分子に由来する細胞内信号伝達ドメインを含む組換えポリペプチドを意味する。
【0045】
本発明のキメラ抗原受容体は、上述した抗c-Met抗体又はその抗原結合断片を細胞外抗原結合ドメインとして含む。したがって、本発明のキメラ抗原受容体は、抗c-Metキメラ抗原受容体(anti-c-Met CAR)、抗c-Met CARなどと表現される。
【0046】
本発明の実施例において使われる“c-Met CAR-001~c-Met CAR-003”、“pMT-c-Met-CAR”、又は“pGemT-c-Met-CAR”などの用語中の“c-Met CAR”は、本発明者らが発明した抗c-Metキメラ抗原受容体のコード名であり、上述したc-Metに特異的に結合する細胞外抗原結合ドメインを含むキメラ抗原受容体のことを指す。
【0047】
本明細書において、用語“刺激分子”とは、T細胞信号伝達経路の少なくともいくつかの側面に対する刺激方式においてTCR複合体の1次活性化を調節する1次細胞質信号伝達配列を提供するT細胞によって発現する分子のことを指す。より具体的に、1次信号は、例えば、ペプチドにロードれたMHC分子とTCR/CD3複合体の結合によって開始され、これは増殖、活性化、分化などを含むが、これに制限されないT細胞反応を媒介する。刺激方式で働く1次細胞質信号伝達配列(又は、“1次信号伝達ドメイン”)は、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ又はITAMと知られた信号伝達モチーフを含むことができる。本発明において、特に有用な1次細胞質信号伝達配列を含むITAMの例は、TCRのゼータ、FcRガンマ、FcRベータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3エプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79b、CD278(“ICOS”とも知られている。)及びCD66dに由来するものを含むが、これに制限されない。
【0048】
本明細書において、用語“信号伝達ドメイン”は、第2メッセンジャー(second messenger)を生成するか又は前記メッセンジャーに反応して定められた信号伝達経路を通じた細胞活性を調節するために情報を細胞内に伝達することによって作用するタンパク質の機能性部分を意味する。
【0049】
本発明の一具現例において、前記キメラ抗原受容体は、リーダー配列(leader sequence,LS)を選択的にさらに含む。前記リーダー配列は、キメラ抗原受容体を構成する組換えポリペプチドのアミノ末端(N-terminal)に位置する。前記リーダー配列は、キメラ抗原受容体の細胞内プロセス及び細胞膜に局在化(localization)されながら抗原結合ドメインから任意に切断される。
【0050】
本発明の具体的な具現例において、前記リーダー配列は、CD8アルファ(CD8 alpha)のリーダー配列、hGM-CSF受容体アルファ鎖(hGM-CSF receptor alpha-chain)のリーダー配列、又は3E8抗体のリーダー配列であってよい。
【0051】
本発明のより具体的な具現例において、前記リーダー配列は、配列番号26、28又は30の塩基配列によってエンコードされるアミノ酸配列を含むリーダー配列である。
【0052】
本発明の一具現例において、前記キメラ抗原受容体のc-Met結合ドメイン及び膜貫通ドメインは、ヒンジ領域、スぺーサ領域、又はそれらの組合せによって連結される。
【0053】
本発明の具体的な具現例において、前記ヒンジ領域、スぺーサ領域、又はそれらの組合せは、ヒトIgG1のヒンジ、IgG4のヒンジ、IgDのヒンジ、CD8アルファのヒンジ、IgG1のCH3、CD28の細胞外ドメイン又はそれらの全部又は一部の配列の組合せであってよい。
【0054】
本発明のより具体的な具現例において、前記ヒンジ領域は、配列番号32、34、36、38、40又は44の塩基配列によってエンコードされるアミノ酸配列を含む。
【0055】
本発明の具体的な具現例において、前記膜貫通ドメインは、T細胞受容体、CD28、CD3エプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137及びCD154のアルファ、ベータ又はのゼータ鎖からなる群から選ばれるタンパク質の膜貫通ドメインを含む。
【0056】
本発明のより具体的な具現例において、前記膜貫通ドメインは、配列番号42、46又は47の塩基配列によってエンコードされるアミノ酸配列を含む。
【0057】
本発明の一具現例において、前記細胞内信号伝達ドメインは、CD3ゼータの信号伝達ドメインを含む。
【0058】
本発明の具体的な具現例において、前記CD3ゼータの信号伝達ドメインは、配列番号55、57又は59の塩基配列によってエンコードされるアミノ酸配列を含む。
【0059】
本発明の他の具現例において、前記細胞内信号伝達ドメインは、OX40、CD2、CD27、CD28、CDS、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、ICOS(CD278)及び4-1BB(CD137)からなる群から選ばれるタンパク質の信号伝達ドメインを共同刺激ドメインとしてさらに含む。すなわち、本発明のキメラ抗原受容体は、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、刺激分子に由来する細胞内信号伝達ドメイン及び共同刺激分子に由来する信号伝達ドメインを含む組換えポリペプチドであってよい。
【0060】
本発明の具体的な具現例において、前記共同刺激ドメインは、配列番号49、51又は53の塩基配列によってエンコードされるアミノ酸配列を含む。
【0061】
本発明の他の態様において、本発明は、上述したキメラ抗原受容体をエンコードする核酸分子を含むベクターを提供する。
【0062】
本明細書において、用語“核酸(nucleic acids)”は、DNA(gDNA及びcDNA)及びRNA分子を包括的に含む意味を有し、核酸分子において基本構成単位であるヌクレオチドは、自然のヌクレオチドの他、糖又は塩基部位が変形された類似体(analogue)も含む(Scheit,Nucleotide Analogs,John Wiley,New York(1980);Uhlman and Peyman,Chemical Reviews,90:543-584(1990))。
【0063】
本発明の一具現例において、本発明の前記キメラ抗原受容体ポリペプチドをエンコードするヌクレオチド配列は、前記キメラ抗原受容体分子を構成するアミノ酸配列をエンコードするヌクレオチド配列であればよく、如何なる特定ヌクレオチド配列にも限定されないということは、当業者に明らかである。
【0064】
これは、ヌクレオチド配列の変異が発生しても、変異されたヌクレオチド配列をタンパク質として発現させると、タンパク質配列において変化をもたらさない場合もあるためである。これをコドンの縮退性という。したがって、前記ヌクレオチド配列は、機能的に均等なコドン又は同一のアミノ酸をエンコードするコドン(例えば、コドンの縮退性により、アルギニン又はセリンに対するコドンは6個である。)、又は生物学的に均等なアミノ酸をエンコードするコドンを含むヌクレオチド配列を含む。
【0065】
上述した生物学的均等活性を有する変異を考慮すると、本発明のキメラ抗原受容体ポリペプチドをエンコードする核酸分子は、配列目録に記載された配列と実質的な同一性(substantial identity)を示す配列も含むものと解釈される。上述の実質的な同一性は、上述した本発明の配列と任意の他の配列とを極力対応するようにアラインし、当業界で一般に利用されるアルゴリズムを用いてアラインされた配列を分析した場合に、少なくとも60%以上の相同性(例えば、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、又は69%)、より好ましくは、少なくとも70%以上の相同性(例えば、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、又は79%)、さらに好ましくは、少なくとも80%以上(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、又は89%)の相同性、最も好ましくは、90%以上(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%)の相同性を示す配列を意味する。前記70%以上~100%以下の範囲の全ての整数及び小数は、%相同性と関連して本発明の範囲内に含まれる。
【0066】
配列比較のためのアラインメント方法は、当業界に公知されている。アラインメントに対する様々な方法及びアルゴリズムは、Smith and Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981);Needleman and Wunsch,J.Mol.Bio.48:443(1970);Pearson and Lipman,Methods in Mol.Biol.24:307-31(1988);Higgins and Sharp,Gene 73:237-44(1988);Higgins and Sharp,CABIOS 5:151-3(1989);Corpet et al.,Nuc.Acids Res.16:10881-90(1988);Huang et al.,Comp.Appl.BioSci.8:155-65(1992) and Pearson et al.,Meth.Mol.Biol.24:307-31(1994)に開示されている。NCBI BLAST(Basic Local Alignment Search Tool)(Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403-10(1990))は、NCBI(National Center for Biological Information)などから接近可能であり、インターネット上でblastp、blastn、blastx、tblastn及びtblastxのような配列分析プログラムと連動して利用可能である。BLASTは、ncbiウェブサイトのBLASTページから接続可能である。このプログラムを用いた配列相同性比較方法は、ncbiウェブサイトのBLAST helpページから確認できる。
【0067】
本発明の一具現例において、前記ベクターは、DNA、RNA、プラスミド、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター又はレトロウイルスベクターからなる群から選ばれる。
【0068】
本発明の一具現例において、前記ベクターは、レンチウイルスベクターである。本発明の具体的な一具現例において、前記ベクターは、プロモーターをさらに含む。前記プロモーターは、例えば、EF-1プロモーターであってよいが、これに限定されるものではない。
【0069】
本発明の他の具現例において、前記ベクターは、レトロウイルスベクターであってよい。レトロウイルスは、遺伝子伝達システムのための便利なプラットホームを提供する。遺伝子伝達のために選択された遺伝子は、レトロウイルスベクター内に挿入され、レトロウイルス粒子内にパッケージングされてよい。次いで、組み換えられたレトロウイルスは、インビボ、又はインビトロで目的とする宿主細胞に伝達されてよい。多くのレトロウイルスベクターが関連技術分野に知られており、本発明の具体的な具現例において、前記レトロウイルスベクターは、MLVベースのレトロウイルスベクターであるpMTレトロウイルスベクターであるが、これに限定されるものではない。
【0070】
本発明のベクターを細胞内に導入し、発現させる方法は、関連技術分野によく知られている。ベクターは、当業界に公知された方法によって宿主細胞、例えば哺乳動物、バクテリア、酵母、又は昆虫細胞内に容易に導入されてよい。例えば、ベクターは、物理的、化学的、又は生物学的手段によって宿主細胞内に伝達されてよい。前記物理的手段は、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、粒子衝撃(particle bombardment)、微細注入、電気穿孔などを含む。前記化学的手段は、コロイド分散液システム、例えば、巨大分子複合体、ナノカプセル、マイクロスフィア、ビーズ、及び水中油エマルジョン、ミセル(micelle)、混合されたミセル、及びリポソームを含む脂質ベースのシステムを含む。また、前記生物学的手段は、上述したレンチウイルス、レトロウイルスなど、DNA又はRNAベクターの使用を含む。
【0071】
本発明の他の態様によれば、本発明は、上述した核酸分子によってエンコードされるポリペプチドを含む抗c-Metキメラ抗原受容体分子を提供する。
【0072】
本発明の一態様による抗c-Metキメラ抗原受容体分子は、上述した核酸分子、又はこれを含むベクターを細胞内に導入し発現させることによって得られる。したがって、上述した核酸分子及びそれを含むベクターと重複する範囲内では、その記載を省略する。
【0073】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、上述した抗c-Metキメラ抗原受容体分子を細胞表面に発現させるエフェクター細胞を提供する。
【0074】
本発明の一具現例において、前記エフェクター細胞は、樹状細胞、キラー樹状細胞、肥満細胞、ナチュラルキラー細胞、Bリンパ球、Tリンパ球、大食細胞及びそれらの前駆細胞からなる群から選ばれるが、これに限定されるものではない。ここで、前記Tリンパ球は、炎症性Tリンパ球、細胞毒性Tリンパ球、調節Tリンパ球又はヘルパーTリンパ球からなる群から選ばれる。
【0075】
本発明において、前記エフェクター細胞は、自己細胞又は同種細胞の集団を含む。すなわち、前記エフェクター細胞は、本抗c-Met CARポリペプチドを発現させる自己細胞又は同種細胞の集団を含む。
【0076】
本明細書において、用語“自己”とは、個体に再導入される予定である、同じ個体に由来する任意の物質のことを指す。本明細書において、用語“同種”とは、物質が導入される個体と同じ種の異なる動物に由来する任意の物質のことを指す。
【0077】
また、本発明の一具現例によれば、前記エフェクター細胞は、抗c-Met CARポリペプチドをエンコードする核酸分子を含むベクターで形質感染又は形質導入された細胞の集団を含む。前記形質感染又は形質導入は、上述したように、当業界に知られた様々な手段によって制限なくなされてよい。
【0078】
したがって、本発明の具体的な具現例によれば、本発明のエフェクター細胞、例えば、Tリンパ球、又はナチュラルキラー細胞に伝達され、抗c-Met CARエンコーディング核酸分子は、mRNAに転写され、該mRNAから抗c-Met CARポリペプチドが翻訳されてエフェクター細胞の表面に発現する。
【0079】
本発明の実施例から立証されたように、本発明の抗c-Metキメラ抗原受容体を発現させるエフェクター細胞は、癌細胞株であるA549、PC-3、MCF-7、SKOV3、及びSK-HEP-1細胞を効果的に死滅させる。したがって、本発明の抗c-Metキメラ抗原受容体を発現させるエフェクター細胞は、様々な癌腫に対する治療用組成物の有効成分として有用に使用可能である。
【0080】
本発明の他の態様によれば、本発明は、上述した抗c-Met CARを発現させるエフェクター細胞及び薬剤学的に許容される担体を含む免疫治療用薬剤学的組成物を提供する。
【0081】
本明細書において、“免疫治療(immunotherapy)”とは、兔疫体系が癌を除去するように助ける癌の治療方法のことを指す。免疫治療は、能動的免疫治療と受動的免疫治療とに区別される。能動的免疫治療は、i)癌細胞又は癌細胞によって生成された物質を人体に注入して兔疫体系を活性化させる癌ワクチン治療(cancer vaccine therapy)、ii)サイトカイン(インターフェロン、インターロイキンなど)、成長因子などの免疫調節剤(immune-modulating agents)を投与して特定の白血球を活性化させる免疫調節治療を含む。受動的免疫治療は、特定の癌細胞に結合する治療的抗体(therapeutic antibody)と免疫細胞治療(immune cell therapy)を含む。免疫細胞治療は、具体的に、樹状細胞ワクチン治療(dendritic cell vaccine therapy)とCAR-T(chimeric antigen receptor T cell)治療、NK細胞治療(natural killer cell therapy)、CTL治療(cytotoxic T lymphocyte therapy)、養子細胞転移(adoptive cell transfer)などを含むが、これに限定されるものではない。本発明において、免疫治療は、主に、上述の免疫細胞治療を意味する。
【0082】
本発明の薬剤学的組成物は、標的細胞のc-Met抗原に結合する抗体又は抗原結合断片、又はこれを含むキメラ抗原受容体を発現させるエフェクター細胞を含むので、c-Metの発現に関連した疾患の診断又は治療に効果的である。
【0083】
したがって、本発明の一具現例において、前記免疫治療用薬剤学的組成物は、c-Met発現に関連した疾患の治療用薬剤学的組成物である。
【0084】
本発明において、前記c-Met発現に関連した疾患は、脳癌(悪性脳腫瘍)、神経膠腫、乳癌、膵癌、胸膜中皮腫、肝癌、胃癌、肺癌、卵巣癌、大腸癌などからなる群から選ばれる疾病であるが、これに限定されるものではない。
【0085】
本発明の一具現例において、前記神経膠腫は、人体の神経系に存在する細胞の一つである神経膠細胞で発生する腫瘍である。前記神経膠細胞は、中枢神経膠細胞である星状膠細胞(astrocyte)、乏突起膠細胞(稀突起膠細胞、oligodendroglia)、及び脳室膜細胞(ependymal cell)と;末梢神経膠細胞であるシュワン細胞(Schwann’s cell)、及び神経節膠細胞(capsular cell)がある。神経膠腫は、神経膠腫を構成する主な神経膠細胞の種類によって、i)星状細胞腫(Astrocytic Tumor)(膠芽細胞腫(glioblastoma)を含む。)、ii)乏突起膠腫(Oligodendroglial Tumor)、及びiii)上衣細胞腫(脳室膜細胞腫,Ependymoma)を含む。
【0086】
本発明の薬剤学的組成物は、上述したCAR発現エフェクター細胞、例えば、複数のCAR発現エフェクター細胞を一つ以上の製薬上又は生理学上に許容される担体、希釈剤又は賦形剤と組み合わせて含むことができる。前記薬剤学的組成物は、緩衝剤、例えば、中性緩衝塩水、ホスフェート緩衝塩水など;炭水化物、例えば、グルコース、マンノース、スクロース又はデキストラン、マンニトール;タンパク質;ポリペプチド又はアミノ酸、例えば、グリシン;抗酸化剤;キレート剤、例えば、EDTA又はグルタチオン;アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム);及び、防腐剤を含むことができる。本発明の一具現例において、前記薬剤学的組成物は、静脈内投与のために製剤化される。
【0087】
本発明の薬剤学的組成物は、経口又は非経口で投与でき、例えば、静脈内投与、皮下投与、血内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、胸骨腫瘍内投与、脳内投与、頭蓋骨内投与、肺内投与及び直腸内投与などで投与できるが、これに限定されるものではない。
【0088】
本発明のエフェクター細胞を含む薬剤学的組成物は、皮膚内又は皮下注射によって患者に投与される。一具現例において、本発明の薬剤学的組成物は、静脈内注射によって投与される。他の具現例において、本発明の薬剤学的組成物は、腫瘍、リンパ節、又は感染部位内に直接投与されてよい。
【0089】
本発明を必要とする対象体は、末梢血液幹細胞移植後に高容量化学療法を用いた標準治療を受けることができる。本発明の一具現例において、本発明を必要とする対象体は、前記末梢血液幹細胞移植後に又は移植と同時に、本発明の拡張されたCAR T細胞が投与されてよい。他の具現例において、拡張された細胞は、手術以前又は手術以後に投与される。
【0090】
本発明の薬剤学的組成物の“免疫学的有効量”、“抗腫瘍有効量”、“腫瘍抑制有効量”、又は“治療量”に適合する投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性別、病的状態、食べ物、投与時間、投与経路、排泄速度及び反応感応性のような要因によって決定され、熟練した普通の医師は所望する治療又は予防に効果的な投与量を容易に決定及び処方でき、適切な投与量は臨床試験によって決定されるであろう。本明細書において用語“治療”とは、疾患状態の減少、抑制、鎮静又は根絶を意味する。本明細書において用語“抗腫瘍”は、腫瘍体積の減少、腫瘍細胞数の減少、転移の数の減少、期待寿命の増加、腫瘍細胞増殖の減少、腫瘍細胞生存の減少、又は癌的病態に関連した様々な生理学的症状の改善を含むが、これに制限されない。
【0091】
本願に記載のT細胞を含む薬剤学的組成物は、一般に、104~109細胞/kg体重、場合によっては105~106細胞/kg体重(前記範囲内の全ての整数値を含む。)の投与量で投与可能であるといえよう。T細胞組成物は、また、上記の投与量を、回数を分けて投与できる。細胞は、免疫療法に一般に知られた注入技術を用いて投与できる(例えば[Rosenberg et al.,New Eng.J.of Med.319:1676,1988]参照)。
【0092】
本発明の薬剤学的組成物は、また、上述した有効成分の他、別の薬剤学的活性薬剤及び療法との組合せで使用されてもよい。前記“組合せ”は、同時又は併用投与と表現されてもよい。本願に記載のCAR発現エフェクター細胞及び少なくとも一つの追加の治療剤は同時に、同一の組成物内に又は別個の組成物内に、又は順次に投与されてよい。順次投与のために、本願に記載のCAR発現細胞がまず投与され、続いて追加の作用剤が投与されてもよく、その逆の投与順序も可能である。
【0093】
前記本発明の薬剤学的組成物との組合せで使用可能な治療剤には、当業界に公知の1以上の化学治療剤、1以上の標的治療剤、PD-1/PD-L1特異的な免疫関門抑制剤があるが、これに限定されるものではない。
【0094】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、前記のキメラ抗原受容体を発現させるエフェクター細胞を、治療が必要な対象体に投与する段階を含む免疫治療方法を提供する。
【0095】
本発明の免疫治療方法の対象疾病であるc-Met発現に関連した疾患は、薬剤学的組成物の治療対象疾病と関連して定義した通りである。
【0096】
本発明の一具現例において、前記対象体は、哺乳動物又はヒトである。
【0097】
本発明のc-Met発現に関連した疾患の治療方法は、有効成分として上述のキメラ抗原受容体を発現させるエフェクター細胞を共通に使用する方法であるので、重複する内容については、本明細書の過度な複雑性を避けるためにその記載を省略する。
【発明の効果】
【0098】
本発明は、抗c-Metキメラ抗原受容体とこれを用いた薬剤学的組成物を提供することを目的とする。本発明のc-Met結合ドメインを含むキメラ抗原受容体を用いる場合に、様々なc-Metの発現に関連した疾患に対する治療剤として有用に使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【
図1】本発明のc-Met-CAR-001コンストラクトの構造を示す図である。
【
図2】本発明のpBHA-c-Met-CAR-001プラスミドの構造を示す図である。
【
図3】本発明のpMT-CAR-001プラスミドの構造を示す図である。
【
図4】本発明のpMT-CAR-002プラスミドの構造を示す図である。
【
図5】本発明のpMT-CAR-003プラスミドの構造を示す図である。
【
図6】本発明のc-Met-CAR-002のPCR増幅過程を示す図である。
【
図7】本発明のc-Met-CAR-002コンストラクトの構造を示す図である。
【
図8】本発明のc-Met-CAR-003のPCR増幅過程を示す図である。
【
図9】本発明のc-Met-CAR-003コンストラクトの構造を示す図である。
【
図10】本発明のc-Met-CAR-004のPCR増幅過程を示す図である。
【
図11】本発明のc-Met-CAR-004コンストラクトの構造を示す図である。
【
図12A】本発明のpMT-c-Met-CAR-001、pMT-c-Met-CAR-002、pMT-c-Met-CAR-003、及びpMT-c-Met-CAR-004プラスミドの構造を示す図である。
【
図12B】本発明のpMT-c-Met-CAR-001、pMT-c-Met-CAR-002、pMT-c-Met-CAR-003、及びpMT-c-Met-CAR-004プラスミドの構造を示す図である。
【
図12C】本発明のpMT-c-Met-CAR-001、pMT-c-Met-CAR-002、pMT-c-Met-CAR-003、及びpMT-c-Met-CAR-004プラスミドの構造を示す図である。
【
図12D】本発明のpMT-c-Met-CAR-001、pMT-c-Met-CAR-002、pMT-c-Met-CAR-003、及びpMT-c-Met-CAR-004プラスミドの構造を示す図である。
【
図13A】本発明の抗c-Met-CAR発現T細胞におけるCD3ゼータ(CD3 zeta)の発現を用いてCAR発現を確認した図である。
【
図13B】本発明の抗c-Met-CAR発現T細胞におけるCD3ゼータ(CD3 zeta)の発現を用いてCAR発現を確認した図である。
【
図13C】本発明の抗c-Met-CAR発現T細胞におけるCD3ゼータ(CD3 zeta)の発現を用いてCAR発現を確認した図である。
【
図14】本発明の抗c-Met-CAR発現T細胞表面においてCARの発現を確認した図である。
【
図15A】癌細胞株であるA549、PC-3、MCF-7、SKOV3、SK-HEP-1及びJurkat細胞におけるc-Met発現率を確認した図である。
【
図15B】癌細胞株であるA549、PC-3、MCF-7、SKOV3、SK-HEP-1及びJurkat細胞におけるc-Met発現率を確認した図である。
【
図15C】癌細胞株であるA549、PC-3、MCF-7、SKOV3、SK-HEP-1及びJurkat細胞におけるc-Met発現率を確認した図である。
【
図15D】癌細胞株であるA549、PC-3、MCF-7、SKOV3、SK-HEP-1及びJurkat細胞におけるc-Met発現率を確認した図である。
【
図15E】癌細胞株であるA549、PC-3、MCF-7、SKOV3、SK-HEP-1及びJurkat細胞におけるc-Met発現率を確認した図である。
【
図15F】癌細胞株であるA549、PC-3、MCF-7、SKOV3、SK-HEP-1及びJurkat細胞におけるc-Met発現率を確認した図である。
【
図16A】A549癌細胞株に対する本発明の抗c-Met CAR発現T細胞の抗癌活性能を示す図である。
【
図16B】A549癌細胞株に対する本発明の抗c-Met CAR発現T細胞の抗癌活性能を示す図である。
【
図16C】A549癌細胞株に対する本発明の抗c-Met CAR発現T細胞の抗癌活性能を示す図である。
【
図16D】A549癌細胞株に対する本発明の抗c-Met CAR発現T細胞の抗癌活性能を示す図である。
【
図17A】PC-3癌細胞株に対する本発明の抗c-Met CAR発現T細胞の抗癌活性能を示す図である。
【
図17B】PC-3癌細胞株に対する本発明の抗c-Met CAR発現T細胞の抗癌活性能を示す図である。
【
図17C】PC-3癌細胞株に対する本発明の抗c-Met CAR発現T細胞の抗癌活性能を示す図である。
【
図17D】PC-3癌細胞株に対する本発明の抗c-Met CAR発現T細胞の抗癌活性能を示す図である。
【
図18A】MCF-7癌細胞株に対する本発明の抗c-Met CAR発現T細胞の抗癌活性能を示す図である。
【
図18B】MCF-7癌細胞株に対する本発明の抗c-Met CAR発現T細胞の抗癌活性能を示す図である。
【
図18C】MCF-7癌細胞株に対する本発明の抗c-Met CAR発現T細胞の抗癌活性能を示す図である。
【
図18D】MCF-7癌細胞株に対する本発明の抗c-Met CAR発現T細胞の抗癌活性能を示す図である。
【
図19A】SKOV3癌細胞株に対する本発明の抗c-Met CAR発現T細胞の抗癌活性能を示す図である。
【
図19B】SKOV3癌細胞株に対する本発明の抗c-Met CAR発現T細胞の抗癌活性能を示す図である。
【
図19C】SKOV3癌細胞株に対する本発明の抗c-Met CAR発現T細胞の抗癌活性能を示す図である。
【
図19D】SKOV3癌細胞株に対する本発明の抗c-Met CAR発現T細胞の抗癌活性能を示す図である。
【
図20】SK-HEP-1癌細胞株に対する本発明の抗c-Met CAR発現T細胞の抗癌活性能を示す図である。
【
図21A】Jurkat細胞株に対する本発明の抗c-Met CAR発現T細胞の抗癌活性能を示す図である。
【
図21B】Jurkat細胞株に対する本発明の抗c-Met CAR発現T細胞の抗癌活性能を示す図である。
【
図21C】Jurkat細胞株に対する本発明の抗c-Met CAR発現T細胞の抗癌活性能を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0100】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の要旨により、本発明の範囲がこれらの実施例に制限されないということは、当業界における通常の知識を有する者にとって明らかであろう。
【0101】
実施例
本明細書全体を通じて、特定物質の濃度を示すために使われる“%”は、別に断りのない限り、固体/固体は(重量/重量)%、固体/液体は(重量/体積)%、そして液体/液体は(体積/体積)%である。
【0102】
実施例の目次
実施例1~4:抗c-Met-キメラ抗原受容体遺伝子の準備
実施例5.pGemT-c-Met-CARベクターの製造
実施例6.pMT-c-Met-CARレトロウイルスベクターの製造
実施例7.抗c-Met-CAR遺伝子発現T細胞の製造
実施例8.生体外(In vitro)における抗c-Met-CAR発現T細胞の抗癌活性能の確認
【0103】
実施例1.c-Met-CAR-001遺伝子の準備
実施例1-1.抗c-Met scFv抗体遺伝子の準備
本発明のc-Met特異的抗体の重鎖可変領域と軽鎖可変領域をエンコードするポリヌクレオチドの塩基配列を、先行の特許(出願番号10-2018-0140196)から確保した(表1)。
【0104】
【0105】
実施例1-2.c-Met-CAR-001遺伝子の準備
本発明の抗c-Met scFv抗体可変重鎖(variable heavy chain;VH)の5’部位には、BamH I制限酵素塩基配列及びCD8アルファの
リーダー配列(leader sequence;LS)を含み、抗c-Met scFv抗体可変軽鎖(variable light chain;VL)の3’部位には、hCD8アルファのヒンジとTM、共同刺激ドメインである4-1BB及びCD3ζ-iso2M(modified CD3ζ-iso2)及びXho I制限酵素塩基配列を含むように塩基配列を確保した。確保された塩基配列は、BamH I-hCD8αLS-scFv-hCD8α hinge-hCD8αTM-41BB-CD3ζ-iso2M-Xho Iの塩基配列(表2)を有し、これに基づいて配列番号60のc-Met-CAR-001(
図1)構造を合成した。合成されたpBHA-c-Met-CAR-001(
図2)は、他のc-Met-CAR構造を確保するために使用した。
【0106】
【0107】
実施例2.c-Met-CAR-002遺伝子の準備
実施例2-1.抗c-Met scFv抗体遺伝子の準備
遺伝子合成を用いて確保されたpBHA-c-Met-CAR-001(
図2)を鋳型とし、プライマー配列番号1(表3)と配列番号2(表3)を用いてPCR方法で増幅して使用した。このとき、抗c-Met scFv抗体可変重鎖(VH)の5’部位に結合するプライマーがhGM-CSF rec.α(Human GM-CSF receptor alpha-chain,ヒトGM-CSF受容体アルファ鎖)の12個塩基配列を有し、抗c-Met scFv抗体可変軽鎖(VL)の3’部位に結合するプライマーがヒンジの9個塩基配列とhCD28 pECDの3個塩基配列を有して増幅されたPCR生成物は、hGM-CSF rec.α-scFv-hinge-hCD28 pECDの塩基配列を有する(表4)。増幅したPCR生成物は次のPCR増幅過程に使用した。
【0108】
【0109】
実施例2-2.hGM-CSF受容体アルファ鎖(hGM-CSF receptor alpha-chain)の信号配列遺伝子の準備
hGM-CSF rec.αの信号配列を含むpMT-CAR-001プラスミド(
図3)を鋳型とし、プライマー配列番号3(表3)と配列番号4(表3)を用いてPCR方法で増幅して使用した。このとき、hGM-CSF rec.αの5’部位に結合するプライマーがBamH I制限酵素塩基配列を有し、hGM-CSF rec.αの3’部位に結合するプライマーが抗c-Met抗体の可変重鎖(VH)の12個塩基配列を有して増幅されたPCR生成物は、BamHI-hGM-CSF rec.α-scFvの塩基配列を有する(表4)。増幅した生成物は次のPCR増幅過程に使用した。
【0110】
【0111】
実施例2-3.ヒンジ、TM、ICD、共同刺激ドメイン及びCD3ζ遺伝子の準備
ヒンジ、hCD28のpECDとTM、ICD及びhCD3ζ-iso2を含むpMT-CAR-001プラスミド(
図3)を鋳型とし、プライマー配列番号5(表3)と配列番号6(表3)を用いてPCR方法で増幅して使用した。このとき、ヒンジの5’部位に結合するプライマーが抗c-Met抗体の可変軽鎖(VL)の12個塩基配列を有し、CD3ζ-iso2の3’部位に結合するプライマーがXho I制限酵素塩基配列を有して増幅されたPCR生成物は、scFv- hinge-hCD28 pECD-hCD28 TM-hCD28 ICD-CD3ζ-iso2-XhoI塩基配列を有する(表4)。増幅した生成物は次のPCR増幅過程に使用した。
【0112】
実施例3.c-Met-CAR-003遺伝子の準備
実施例3-1.抗c-Met scFv抗体遺伝子の準備
遺伝子合成を用いて確保されたpBHA-cMet-CAR-001(
図2)を鋳型とし、プライマー配列番号7(表3)と配列番号8(表3)を用いてPCR方法で増幅して使用した。このとき、抗c-Met scFv抗体可変重鎖(VH)の5’部位に結合するプライマーが3E8
リーダー配列(LS)の12個塩基配列を有し、抗c-Met scFv抗体可変軽鎖(VL)の3’部位に結合するプライマーがhIgD hingeの12個塩基配列を有して増幅されたPCR生成物は、3E8 LS-scFv-hIgD hingeの塩基配列を有する(表5)。増幅したPCR生成物は次のPCR増幅過程に使用した。
【0113】
【0114】
実施例3-2.3E8抗体の
リーダー配列(LS)遺伝子の準備
3E8抗体の
リーダー配列(LS)を含むpMT-CAR-002プラスミド(
図4)を鋳型とし、プライマー配列番号9(表3)と配列番号10(表3)を用いてPCR方法で増幅して使用した。このとき、3E8
リーダー配列(LS)の5’部位に結合するプライマーがBamH I制限酵素塩基配列を有し、3E8
リーダー配列(LS)の3’部位に結合するプライマーが抗c-Met scFv抗体可変重鎖(VH)の12個塩基配列を有して増幅されたPCR生成物は、BamH I-3E8 LS-scFvの塩基配列を有する(表5)。増幅した生成物は次のPCR増幅過程に使用した。
【0115】
実施例3-3.ヒンジ、TM、ICD、共同刺激ドメイン及びCD3ζ遺伝子の準備
ヒトIgDのヒンジとIgG1のヒンジ、CH3、CD28のTMとICD、共同刺激ドメインであるOX40及びCD3ζ-iso1を含むpMT-CAR-002プラスミド(
図4)を鋳型とし、プライマー配列番号11(表3)と配列番号12(表3)を用いてPCR方法で増幅して使用した。このとき、hIgDヒンジの5’部位に結合するプライマーが抗c-Met scFv抗体可変軽鎖(VL)の12個塩基配列を有し、CD3ζ-iso1の3’部位に結合するプライマーがXho I制限酵素塩基配列を有して増幅されたPCR生成物は、scFv-IgD hinge-IgG1 hinge-CH3-CD28 TM-CD28 ICD-OX40-CD3ζ-iso1-Xho I塩基配列を有する(表5)。増幅したPCR生成物は次のPCR増幅過程に使用した。
【0116】
実施例4.c-Met-CAR-004遺伝子の準備
実施例4-1.抗c-Met scFv抗体遺伝子の準備
遺伝子合成を用いて確保されたpBHA-cMet-CAR-001(
図2)を鋳型とし、プライマー配列番号7(表3)と配列番号8(表3)を用いてPCR方法を増幅して使用した。このとき、抗c-Met scFv抗体可変重鎖(VH)の5’部位に結合するプライマーが3E8
リーダー配列(LS)の12個塩基配列を有し、抗c-Met scFv抗体可変軽鎖(VL)の3’部位に結合するプライマーがhIgDヒンジの12個塩基配列を有して増幅されたPCR生成物は、3E8 LS-scFv-hinge-hIgDヒンジの塩基配列を有する(表6)。増幅したPCR生成物は次のPCR増幅過程に使用した。
【0117】
【0118】
実施例4-2.3E8抗体の
リーダー配列(LS)遺伝子の準備
3E8抗体の
リーダー配列(LS)を含むpMT-CAR-003プラスミド(
図5)を鋳型とし、プライマー配列番号9(表3)と配列番号10(表3)を用いてPCR方法で増幅して使用した。このとき、3E8
リーダー配列(LS)の5’部位に結合するプライマーがBamH I制限酵素塩基配列を有し、3E8
リーダー配列(LS)の3’部位に結合するプライマーが抗c-Met scFv抗体可変重鎖(VH)の12個塩基配列を有して増幅されたPCR生成物は、BamH I-3E8 LS-scFvの塩基配列を有する(表6)。増幅した生成物は次のPCR増幅過程に使用した。
【0119】
実施例4-3.ヒンジ、TM、ICD、共同刺激ドメイン及びCD3ζ遺伝子の準備
ヒトIgDのヒンジとCD28のTMとICD、共同刺激ドメインであるOX40及びCD3ζ-iso1を含むpMT-CAR-003プラスミド(
図5)を鋳型とし、プライマー配列番号11(表3)と配列番号12(表3)を用いてPCR方法で増幅して使用した。このとき、hIgDヒンジの5’部位に結合するプライマーが抗c-Met scFv抗体可変軽鎖(VL)の12個塩基配列を有し、CD3ζ-iso1の3’部位に結合するプライマーがXho I制限酵素塩基配列を有して増幅されたPCR生成物は、scFv-hIgD hinge-CD28 TM-CD28 ICD-OX40-CD3ζ-iso1-Xho I塩基配列を有する(表6)。増幅したPCR生成物は次のPCR増幅過程に使用した。
【0120】
実施例5.pGemT-c-Met-CARベクターの製造
実施例5-1.pGemT-c-Met-CAR-002ベクターの製造
増幅したPCR生成物であるBamH I-hGM-CSF rec.α-scFvとhGM-CSF rec.α-scFv-hinge-hCD28 pECDを鋳型とし、プライマー配列番号3(表3)と配列番号2(表3)を用いてOE-PCR(overlap extension PCR)方法で増幅した。増幅したPCR生成物であるBamH I-hGM-CSF rec.α-scFv-hinge-hCD28 pECDとscFv- hinge-hCD28 pECD-hCD28 TM-hCD28 ICD-CD3ζ-iso2-Xho Iを鋳型とし、プライマー配列番号3(表3)と配列番号6(表3)を用いてOE-PCR方法で増幅した(
図6)。増幅されたPCR生成物は、BamH I-hGM-CSF rec.α-scFv- hinge-hCD28 pECD-hCD28 TM-hCD28 ICD-CD3ζ-iso2-Xho I塩基配列を有し、配列番号61のc-Met-CAR-002の構造を有することになる(
図7)。増幅したPCR生成物は、直線形DNAの両端に多重T配列を有するpGemT EASYベクター(Promega,WI,USA)に結紮し、構造物pGemT-c-Met-CAR-002が得られたし、配列分析を用いて原本配列と同一であることを確認した。配列分析のためにプライマー配列番号13と14(表3)を使用した。
【0121】
実施例5-2.pGemT-c-Met-CAR-003ベクターの製造
増幅したPCR生成物であるBamH I-3E8 LS-scFvと3E8 LS-scFv-hIgDヒンジを鋳型とし、プライマー配列番号9(表3)と配列番号8(表3)を用いてOE-PCR方法で増幅した。増幅したPCR生成物であるBamH I-3E8 LS-scFv-hIgD hingeとscFv-IgD hinge-IgG1 hinge-CH3-CD28 TM-CD28 ICD-OX40-CD3ζ-iso1-Xho Iを鋳型とし、プライマー配列番号9(表3)と配列番号12(表3)を用いてOE-PCR方法で増幅した(
図8)。増幅されたPCR生成物はBamH I-3E8 LS-scFv-hIgD hinge-IgG1 hinge-CH3-CD28 TM-CD28 ICD-OX40-CD3ζ-iso1-Xho I塩基配列を有し、配列番号62のc-Met-CAR-003の構造を有することになる(
図9)。増幅したPCR生成物は、直線形DNAの両端に多重T配列を有するpGemT EASYベクターに結紮し、構造物pGemT-c-Met-CAR-003が得られたし、配列分析を用いて原本配列と同一であることを確認した。配列分析のためにプライマー配列番号13と14(表3)を使用した。
【0122】
実施例5-3.pGemT-c-Met-CAR-004ベクターの製造
増幅したPCR生成物であるBamH I-3E8 LS-scFvと3E8 LS-scFv-hIgD hingeを鋳型とし、プライマー配列番号9(表3)と配列番号8(表3)を用いてOE-PCR方法で増幅した。増幅したPCR生成物であるBamH I-3E8 LS-scFv-hIgD hingeとscFv-IgD hinge-CD28 TM-CD28 ICD-OX40-CD3ζ-iso1-Xho Iを鋳型とし、プライマー配列番号9(表3)と配列番号12(表3)を用いてOE-PCR方法で増幅した(
図10)。増幅されたPCR生成物はBamH I-3E8 LS-scFv-IgD hinge-CD28 TM-CD28 ICD-OX40-CD3ζ-iso1-Xho I塩基配列を有し、配列番号63のc-Met-CAR-004の構造を有することになる(
図11)。増幅したPCR生成物は、直線形DNAの両端に多重T配列を有するpGemT EASYベクターに結紮し、構造物pGemT-c-Met-CAR-004が得られたし、配列分析を用いて原本配列と同一であることを確認した。配列分析のためにプライマー配列番号13と14(表3)を使用した。
【0123】
実施例6.pMT-c-Met-CARレトロウイルスベクターの製造
1種のpBHA-c-Met-CAR-001と3種のpGemT-c-Met-CARベクター(pGemT-c-Met-CAR-002、pGemT-c-Met-CAR-003、pGemT-c-Met-CAR-004)にBamH IとXho I制限酵素処理してDNA切片を得た。得られたDNA切片を、あらかじめBamH IとXho I制限酵素で処理されたpMTレトロウイルスベクター(米国登録特許第US6,451,595号)に結紮し、4種のpMT-c-Met-CARレトロウイルスベクター(pMT-c-Met-CAR-001、-002、-003、-004)を作製した(
図12A~
図12D)。こうに製造されたpMT-c-Met-CARレトロウイルスベクターは、MLV LTRプロモーターの調節下でc-Met-CARをエンコードする配列を含む。
【0124】
実施例7.Anti-c-Met-CAR遺伝子発現T細胞の製造
実施例7-1.Anti-c-Met-CAR遺伝子発現レトロウイルスの製造
Anti-c-Met-CAR遺伝子の伝達のためのレトロウイルスは、プラスミドDNA形質転換法を用いて作製した(Soneoka Y et al.,1995)。TransIT 293形質転換システム(Mirus Bio LLC,WI,USA)を用い、メーカーのプロトコルに従って行った。前日に60mm皿に1×106個で播種した293T細胞株に、4種のpMT-c-Met-CARレトロウイルスベクター、gag-pol発現ベクター及びRD114 env発現ベクターを形質転換後に、細胞を約48時間培養した。培養完了後に細胞培養液を全て収穫し、0.45μmフィルターを用いて濾過した後、使用するまで-80℃に冷凍保管した。生産された4種の抗c-Met-CARレトロウイルスは、レトロウイルスタイターセットキット(retrovirus titer set kit)(TaKaRa,JAPAN)を用いて実時間PCRで力価測定後に使用した。
【0125】
実施例7-2.抗c-Met-CAR遺伝子発現T細胞の製造
ドナーのヒト血液からSepMate(商標)-50(STEMCELL)とFicoll-Paque PLUS(GE healthcare,Sweden)を用いて単核細胞を得た。単核細胞は、5%ヒト血清が含まれたAIMV培地(Invitrogen)を培養液として使用し、100mm皿に1×107個で分注した後、抗CD3(OKT3,eBioscience)抗体を、mL当たりに50ng添加してT細胞を活性化させた。T細胞の成長のために、培養液にヒトIL-2(R&D)をmL当たりに300U添加して培養した。48時間培養後に、活性化されたT細胞を収穫し、4種の抗c-Met-CARレトロウイルス伝達に使用した。
【0126】
6ウェルプレートに10ug/mL濃度で準備したレトロネクチン(retronectin,TaKaRa,Japan)をウェル当たりに2mL添加した後、常温で2時間反応させてプレートにコートした。反応後にレトロネクチンは除去し、2.5%ヒトアルブミン含有PBS(phosphate-buffered saline)をウェル当たりに2mL添加し、常温で30分反応させてブロッキングした。反応後、ブロッキングに使用した溶液を除去し、1M HEPESが2.5%含まれたHBSSをウェル当たりに3mL添加して洗浄した。抗c-Met-CARレトロウイルスをウェル当たりに3×1010copiesで5%ヒト血清含有のAIMV培地に希釈し、4mL添加後に2000xg、32℃条件で2時間遠心分離し、レトロウイルスをレトロネクチンに固定した。対照群として使用するウェルには、レトロウイルス希釈に使用した培地を同量添加した。反応後、レトロウイルスを除去し、活性化されたT細胞をウェル当たりに2×106個で添加後に1000xgで15分間遠心分離し、T細胞に抗c-Met-CARレトロウイルスを伝達した。伝達効率を高めるために翌日に伝達過程を1回さらに反復し、合計2回行った。伝達24時間後にT細胞を全て収穫し、5%ヒト血清と300U/mLのヒトIL-2が含まれたAIMV培地を用いてmL当たりに5×105個でTフラスコに継代培養した。3~4日間隔でmL当たりに5×105個で継代培養し、mL当たりに2×10個を超えないように維持した。
【0127】
次に、抗c-Met-CARレトロウイルスを伝達した活性化T細胞(抗c-Met-CAR発現T)において抗c-Met-CARが発現するか確認しようとした。2×10
6個の細胞を収穫してタンパク質を抽出し、抽出されたタンパク質はブラッドフォード(Bradford)分析法で定量後に、4xサンプルバッファー(Invitrogen)とジチオトレイトールを混ぜて95℃で5分間沸かして還元処理した。ウェスタンブロット方法で抗c-Met-CAR発現を確認した。発現確認に使用した1次抗体はマウス抗ヒトCD247(BD,CA,USA)であって、CD3ζに付着させ、2次抗体は、ヤギ抗マウスIgG(H+L)-HRP(Thermo,USA)を使用した。4種の抗c-Met-CAR発現T細胞でウェスタンブロットした結果、50~80KDa位置でそれぞれバンドが確認され、抗c-Met-CARがよく発現していることを確認した(
図13A~
図13C)。
【0128】
抗c-Met-CAR発現Tにおいて細胞表面に抗c-Met-CARが発現するか確認しようとした。5×10
5個の細胞を収穫し、PBS(Phosphate buffered saline)で2回洗浄後に、CARの単鎖可変断片(Single-chain variable Fragment)に特異的に結合するFITC融合されたProtein L(AcroBiosystem,RPL-PF141)を2.5ug添加し、4℃で30分間反応させた。反応後、細胞をPBSで2回洗浄し、流動細胞分析法を用いて抗c-Met-CAR発現を確認した。その結果、MT-c-Met-CAR-004レトロウイルスを伝達したT細胞の表面で抗c-Met-CARが約57.7%発現していることを確認した(
図14)。
【0129】
実施例8.生体外(In vitro)における抗c-Met-CAR発現T細胞の抗癌活性能の確認
実施例8-1.ターゲット細胞におけるc-Met発現率の確認
ヒト肺癌細胞株であるA549は、c-Metを高く発現するものと知られており、抗c-Met-CAR発現T細胞の抗癌活性能を確認するのに適した細胞株である。そのために、A549細胞株をPBS 100uLに5×105個で準備し、1E4-H4k2抗体を1ug添加した後、4℃で30分間反応した。反応後に細胞をPBSで2回洗浄した後、ヤギ抗ヒトIgG-PE(Southern Biotech)を2uL添加し、4℃で30分間反応した。反応後に細胞をPBSで2回洗浄した後、流動細胞分析法を用いてc-Met発現を確認した。その結果、A549癌細胞から約83.9%のc-Met発現率を確認した。同一の方法を用いてヒト前立腺癌細胞株であるPC-3とヒト乳癌細胞株であるMCF-7、卵巣癌細胞株であるSKOV3、ヒト急性T細胞白血病細胞株であるJurkat、ヒト肝癌細胞株であるSK-HEP-1からc-Metの発現を確認した結果、PC-3では約48.5%、MCF-7では約66.0%、SKOV3では約58.0%、SK-HEP-1では約99.9%、Jurkatでは約2.37%の発現率を確認した。
【0130】
実施例8-2.CellTox(商標)グリーン色素を用いた抗癌活性能の確認
ターゲット細胞(target細胞,T)に対する抗c-Met-CAR発現T細胞(effector細胞,E)の抗癌活性能を確認するために、CellTox(商標)グリーン色素を使用した。CellTox(商標)グリーン色素は、死んだ細胞から放出されるDNAに付着して蛍光を示す染料であり、抗癌活性能(cytotoxicity)を確認するために用いられる。ターゲット細胞を培養培地50uLに1×104個で準備し、CellTox(商標)グリーン色素を0.2uL添加し、黒色96ウェルプレートに添加した。抗c-Met-CAR発現T細胞を、ヒト血清とヒトIL-2が含まれたAIMV培地50uLに、5×103個、1×104個、5×104個(E:T比率=0.5、1、5)で準備し、ターゲット細胞を含んでいるウェルに添加して37℃、CO2培養器で24時間反応させた。CellTox(商標)グリーン色素とターゲット細胞の培養培地を含んでいるウェルに、抗c-Met-CAR発現T細胞のみを添加した群を準備し、反応時間の間に死ぬ抗c-Met-CAR発現T細胞から放出されるDNAに付着して発生する染料の反応値を除外させた。また、ターゲット細胞のみを含んでいるウェルを準備し、ロー制御(How control)(自発的(spontaneous)DNA放出)値を補正し、ターゲット細胞のみを含んでいるウェルに溶菌液(lysis solution)を添加してハイ制御(High control)(最大DNA放出)値を補正した。ターゲット細胞に対する殺傷能は、下の式で計算した。
【0131】
式
Cytotoxicity(%)={(Target細胞とEffector細胞の反応値)-(Effector細胞の反応値)}-(Low control)/(High control-Low control)×100
【0132】
その結果、4種のc-Met-CAR-001、-002、-003、-004発現T細胞のA549癌細胞に対する抗癌活性能は、抗c-Met-CARを発現させないT細胞である対照群に比べて高いことを確認した(
図16)。
【0133】
同一の実験方法を用いてPC-3癌細胞に対する殺傷能を確認した。c-Met-CAR-001、-002、-003、-004発現T細胞のPC-3癌細胞に対する抗癌活性能は、抗c-Met-CARを発現させないT細胞である対照群に比べて高いことを確認した(
図17)。特に、c-Met-CAR-001に比べて他の構造のCARがより優れたな効果を示した。
【0134】
同一の実験方法を用いてMCF-7癌細胞に対する殺傷能を確認した。c-Met-CAR-001、-002、-003、-004発現T細胞のMCF-7癌細胞に対する抗癌活性能は、抗c-Met-CARを発現させないT細胞である対照群に比べて高いことを確認した(
図18)。
【0135】
同一の実験方法を用いてSKOV3癌細胞に対する殺傷能を確認した。c-Met-CAR-001、-002、-003、-004発現T細胞のSKOV3癌細胞に対する抗癌活性能は、抗c-Met-CARを発現させないT細胞である対照群に比べて高いことを確認した(
図19)。
【0136】
同一の実験方法を用いてSK-HEP-1に対する殺傷能を確認した。c-Met-CAR-001、-002、-003、-004発現T細胞のSK-HEP-1癌細胞に対する抗癌活性能は、抗c-Met-CARを発現させないT細胞である対照群に比べて高いことを確認した(
図20)。
【0137】
同一の実験方法を用いてJurkatに対する殺傷能を確認した。c-Metを低く発現するJurkatを用いてc-Met-CAR-001、-002、-003、-004発現T細胞の殺傷能を確認した結果、Jurkatに対する殺傷能はほとんど観察されなかった。このことから、抗c-Met-CAR発現T細胞が、c-Metを高く発現させる細胞に対してのみ特異的に殺傷能を有することを確認した(
図21)。
【0138】
以上、本発明の特定の部分を詳細に記述したところ、当業界における通常の知識を有する者にとって、それらの具体的な記述は単に好ましい具現例に過ぎず、それらに本発明の範囲が制限されないという点は明らかである。
本発明の態様は以下を含む。
<1>
次を含む抗c-Metキメラ抗原受容体をエンコードする核酸分子:c-Met結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内信号伝達ドメイン。
<2>
前記c-Met結合ドメインは、抗c-Metに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片である、<1>に記載の核酸分子。
<3>
前記抗体又はその抗原結合断片は、配列番号15~配列番号17のアミノ酸配列をそれぞれ含む重鎖相補性決定領域1(complementarity determining region 1 of heavy chain,CDRH1)、重鎖相補性決定領域2(CDRH2)、及び重鎖相補性決定領域3(CDRH3);及び、配列番号18~配列番号20のアミノ酸配列をそれぞれ含む軽鎖相補性決定領域1(complementarity determining region 1 of light chain,CDRL1)、軽鎖相補性決定領域2(CDRL2)、及び軽鎖相補性決定領域3(CDRL3)を含むものである、<1>に記載の核酸分子。
<4>
前記抗体又はその抗原結合断片は、配列番号21のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域(heavy chain variable region,VH);及び、配列番号22のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域(light chain variable
region,VL)を含むものである、<1>に記載の核酸分子。
<5>
前記キメラ抗原受容体は、リーダー配列(leader sequence,LS)をさらに含むものである、<1>に記載の核酸分子。
<6>
前記リーダー配列は、CD8アルファのリーダー配列、hGM-CSF受容体アルファ鎖(hGM-CSF receptor alpha-chain)のリーダー配列、又は3E8抗体のリーダー配列である、<5>に記載の核酸分子。
<7>
前記リーダー配列は、配列番号26、28又は30の塩基配列によってエンコードされるアミノ酸配列を含むリーダー配列である、<5>に記載の核酸分子。
<8>
前記c-Met結合ドメイン及び膜貫通ドメインは、ヒンジ領域、スぺーサ領域、又は
それらの組合せによって連結されるものである、<1>に記載の核酸分子。
<9>
前記ヒンジ領域又はスぺーサ領域は、IgG1のヒンジ、IgG4のヒンジ、IgDのヒンジ、CD8アルファのヒンジ、IgG1 CH3、CD28の細胞外ドメイン又はそれらの組合せである、<8>に記載の核酸分子。
<1>0>
前記ヒンジ領域又はスペース領域は、配列番号32、34、36、38、40又は44の塩基配列によってエンコードされるアミノ酸配列を含むリーダー配列である、<8>に記載の核酸分子。
<11>
前記キメラ抗原受容体は、T細胞受容体、CD28、CD3エプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137及びCD154のアルファ、ベータ又はゼータ鎖からなる群から選ばれるタンパク質の膜貫通ドメインを含む、<1>に記載の核酸分子。
<12>
前記膜貫通ドメインは、配列番号42、46又は47の塩基配列によってエンコードされるアミノ酸配列を含むものである、<11>に記載の核酸分子。
<13>
前記細胞内信号伝達ドメインは、CD3ゼータの信号伝達ドメインを含むものである、<1>に記載の核酸分子。
<14>
前記CD3ゼータの信号伝達ドメインは、配列番号55、57又は59の塩基配列によってエンコードされるアミノ酸配列を含むものである、<13>に記載の核酸分子。
<15>
前記細胞内信号伝達ドメインは、OX40、CD2、CD27、CD28、CDS、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、ICOS(CD278)及び4-1BB(CD137)からなる群から選ばれるタンパク質の信号伝達ドメインを共同刺激ドメインとしてさらに含むものである、<1>に記載の核酸分子。
<16>
前記共同刺激ドメインは、配列番号49、51又は53の塩基配列によってエンコードされるアミノ酸配列を含む共同刺激ドメインである、<15>に記載の核酸分子。
<17>
<1>~<16>のいずれか一項の核酸分子を含むベクター。
<18>
<1>~<16>のいずれか一項の核酸分子によってエンコードされるポリペプチドを含む抗c-Metキメラ抗原受容体分子。
<19>
<18>の抗c-Metキメラ抗原受容体分子を細胞表面に発現させるエフェクター細胞。
<20>
前記エフェクター細胞は、樹状細胞、キラー樹状細胞、肥満細胞、ナチュラルキラー細胞、Bリンパ球、Tリンパ球、大食細胞及びそれらの前駆細胞からなる群から選ばれるものである、>9に記載のエフェクター細胞。
<21>
<19>のエフェクター細胞及び薬剤学的に許容される担体を含む、c-Met免疫治療用薬剤学的組成物。
<22>
<19>のエフェクター細胞及び薬剤学的に許容される担体を含む、c-Met発現に関連した疾患の治療用薬剤学的組成物。
<23>
前記c-Met発現に関連した疾患は、脳癌、神経膠腫、乳癌、膵癌、胸膜中皮腫、肝癌、胃癌、肺癌、卵巣癌、及び大腸癌からなる群から選ばれる疾病である、<22>に記載の薬剤学的組成物。
【配列表】