(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-25
(45)【発行日】2023-11-02
(54)【発明の名称】釣用ウキ
(51)【国際特許分類】
A01K 93/00 20060101AFI20231026BHJP
【FI】
A01K93/00 Z
(21)【出願番号】P 2023070961
(22)【出願日】2023-04-24
(62)【分割の表示】P 2022044944の分割
【原出願日】2021-12-16
【審査請求日】2023-04-25
(31)【優先権主張番号】P 2021101488
(32)【優先日】2021-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593036062
【氏名又は名称】遠矢 国利
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100128392
【氏名又は名称】服部 秀一
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(72)【発明者】
【氏名】遠矢 国利
(72)【発明者】
【氏名】遠矢 佐知子
【審査官】吉原 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-304745(JP,A)
【文献】登録実用新案第3154598(JP,U)
【文献】実開昭60-106473(JP,U)
【文献】特開平09-172924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 93/00 - 93/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣り竿から延びる道糸に下部の連結部が連結される長尺状のウキ本体部と、該ウキ本体部の上端部から上方に延出するトップ部とを備え
た釣用ウキであって、
ウキ本体部を、
・浮力素材により構成される本体素材と、
・
釣用ウキを自立させるため
ウキ本体部の下端部に形成の下側取り付け孔に取り付けられる主錘と、
・
釣用ウキの自立を補完するため
ウキ本体部の上端部に取り付けられる補助錘とを備え、
前記主錘、補助錘は、釣用ウキが予め設定される所定姿勢に自立するよう
錘重量の調節がなされ、
釣仕掛けと共に飛ばされる遠投用として用いられる釣用ウキにおいて、
前記ウキ本体部には、
・該ウキ本体部の上端部に下端部が埋設され、上端部がウキ本体部の上端から上方に突出する筒体と、
・該筒体のウキ本体部から突出した部位に下端部が外嵌し、上端部にトップ部の下端部が内嵌することでトップ部のウキ本体部への連結をするための連結体とが備えられ、
補助錘は、同一太さで直線状をし、前記筒体の上端開口から挿入取り付けされるものであり、
主錘、補助錘は、
釣用ウキを前記所定姿勢に自立させるための全錘重量に対し、主錘が98.5%~65%
、補助錘が1.5%~35%の錘重量の割合に設定されていることを特徴とする釣用ウキ。
【請求項2】
全錘重量に対し、主錘の錘重量の割合が98.5%~75%
、補助錘の錘重量の割合が1.5%~25%であることを特徴とする請求項1記載の釣用ウキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣りにおいて使用される釣用ウキに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、魚釣りをする際に、水面(海面)からの針(釣り針)の沈み込み位置(水深位置)を設定すると共に、魚信の確認をするため、釣り竿側から延びる釣り糸である道糸(ライン)にウキ(浮子、浮木)を取り付けることがあり、このようなウキのなかには、水中に全部または一部が没入するウキ本体部と、該ウキ本体部の上端縁部から延出して設けられるトップ部とを用いて構成された所謂「棒ウキ」と称するものが知られている。
ところでこのようなウキを用いて魚釣りをする場合、釣り針が接続される(取り付けられる)釣り糸であるハリスと道糸との結び部位(連結部位、結束部位)に、ウキを起立させるための錘を設けるのが一般的である。ところで魚は、大物になるほど警戒心が強くなって微妙な引き(食い込み)をする傾向が高く、例えば海釣りにおいて、黒鯛(チヌ)やメジナ(グレ)のような磯や防波堤等の沿岸でも大物が生息しているような魚を釣るような場合、前記結び部位にウキを起立させるための錘を取り付けたとき、該錘は重いもの(動きづらいもの)になって釣り針を含めたハリスの水中での動きに不自然さが生じて魚に警戒感を与え、大物ほど食いが悪くなる、といわれている。そこで前記結び部位に設ける錘の重量を軽くして餌が付いた釣り針の動きを可及的に自然に見せるようにすることが試みられるが、このようにした場合には錘が軽すぎてウキの起立性が損なわれ、場合によっては正常に起立しない(倒伏した、または傾斜した)状態になって敏感で精度の高い魚信伝達機能が損なわれてしまうという問題がある。
さらに前記錘とウキとを取り付けた仕掛けを遠投しようとしたときに、ウキ自体、軽いものであるため、錘が先頭となって飛び、その後を追随する状態でウキが飛んでいくことになるが、ウキが棒ウキのように長尺状である場合、ヒラヒラと空気抵抗を受ける不自然な状態で錘の後を飛んでいくことになって空気抵抗を大きく受けたものになる結果、どうしても飛距離が伸びず、遠投が難しいだけでなく、道糸やハリスが絡み合い易くなるという問題もある。
そこでウキ自体を、ウキ本体部の下端部に錘が設けられたものにして水面に投入されたときに自立する自立型にし、これによってハリス側の錘を小さくすることで、遠投したときにウキが弓矢のごとく整然とした姿勢で投げられるようにし、これによって飛距離を伸ばすと共に糸の絡み合い防止も図ることができるようにしたものが提唱され(例えば特許文献1~3参照)、今日においても好ましいものとして評価を受けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭59-98780号公報
【文献】実開昭57-167680号公報
【文献】実開昭53-89468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで前記自立型のウキは、下端部が道糸に接続されるウキ本体部と、該ウキ本体部の上端縁から上方に延出されるトップ部とを備えたもので構成され、ウキ本体部の下端部位に、ウキ自立用の錘を取り付けた構成にしているが、この場合に、ウキ本体部を浮力の大きい材質、例えばバルサ材のような比重の小さい木材から切り出して製造した場合に、該木材からの切り出し部位によってウキ本体部の浮力が異なることになり、これを用いてウキ本体部を形成した場合に、ウキとして重要な要素であるウキ全体の浮力についてもバラツキが生じる。
このため前記錘を、ウキ本体部の個々の材質性状に合わせて重量調節し、これによって所望の状態で自立させるよう構成することが提唱されるが、ウキ本体部の形成工程には、木材から切り出した本体素材を所望の形状に切削し、その表面に塗料を塗布する等の必要な加工処理を施すことになるが、この様な処理を施した場合の作業のバラツキもあって前記重量調節された錘とのあいだにどうしても誤差が生じ、所望の自立性が損なわれるという問題がある。
そのうえ、ウキ本体部の下端部のみに錘を付けた構造にした場合、ウキ自体は、下端部の錘部位またはその上方近傍部位の低い部位が重心位置となり、該重心位置よりも上側(トップ部側)が上下方向に長いものとなっている。この結果、ウキは、下側の重心部位を支点とする状態で横方向(前後左右方向)に振れ易く、また一旦振れ出した場合にその振れの納まりが遅くなるという性状を有したものとなって、トップ部側が風や波等により横方向の負荷を受けたとき、該トップ部側が横揺れしやすいうえ、横揺れしたものの納まり(横揺れの停止)が遅いものとなって見づらいものになる、という問題もある。
さらにウキを、ウキ本体部の下端部に錘を付けで自立する構成にしたとしても、前述したようにウキ本体部の浮力にバラツキがあるため、自立したときのウキの水面位置(吃水位置)が個々のウキによって異なるものとなって所望の吃水位置で自立するものにはならず、このようなウキを使用して釣りをした場合に、ウキが沈み過ぎたり沈み足らない状態で自立するものとなる結果、ウキの安定した感度の高い自立性が損なわれ、警戒心が強い大物の慎重な喰いに伴う微妙で繊細な引き(ウキの動き)に対応した沈み込みをするものとはならず、このため、竿を掛け合わせるタイミングが遅くなったり見逃しやすくなって魚の針掛かりが悪く釣果に影響することになる等の問題もあり、これらに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、釣り竿から延びる道糸に下部の連結部が連結される長尺状のウキ本体部と、該ウキ本体部の上端部から上方に延出するトップ部とを備えた釣用ウキであって、ウキ本体部を、浮力素材により構成される本体素材と、釣用ウキを自立させるためウキ本体部の下端部に形成の下側取り付け孔に取り付けられる主錘と、釣用ウキの自立を補完するためウキ本体部の上端部に取り付けられる補助錘とを備え、前記主錘、補助錘は、釣用ウキが予め設定される所定姿勢に自立するよう錘重量の調節がなされ、釣仕掛けと共に飛ばされる遠投用として用いられる釣用ウキにおいて、前記ウキ本体部には、該ウキ本体部の上端部に下端部が埋設され、上端部がウキ本体部の上端から上方に突出する筒体と、該筒体のウキ本体部から突出した部位に下端部が外嵌し、上端部にトップ部の下端部が内嵌することでトップ部のウキ本体部への連結をするための連結体とが備えられ、補助錘は、同一太さで直線状をし、前記筒体の上端開口から挿入取り付けされるものであり、主錘、補助錘は、釣用ウキを前記所定姿勢に自立させるための全錘重量に対し、主錘が98.5%~65%、補助錘が1.5%~35%の錘重量の割合に設定されていることを特徴とする釣用ウキである。
請求項2の発明は、全錘重量に対し、主錘の錘重量の割合が98.5%~75%、補助錘の錘重量の割合が1.5%~25%であることを特徴とする請求項1記載の釣用ウキである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、ウキを所定姿勢に自立させるための主錘の重量割合が98.5%~65%となる結果、該ウキを取り付けた仕掛けを遠投したときのウキの飛距離、飛び姿勢、自立時の安定性が優れたものになる。
請求項2の発明とすることにより、主錘の錘重量割合が98.5%~75%にすることで、飛距離、飛び姿勢を損なうことがない状態で、より自立時の安定性の優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】(A)(B)は第一、第二の実施の形態のウキの縦断面図である。
【
図3】(A)(B)は第一、第二の実施の形態のウキの要部の縦断面図である。
【
図4】(A)(B)(C)(D)は主錘の正面図、平面図、底面図、縦断面正面図である。
【
図5】(A)~(D)はウキ本体部の前半の製造過程を示す縦断面図である。
【
図6】(A)~(D)はウキ本体部の後半の製造過程を示す縦断面図である。
【
図7】(A)はトップ部の縦断面図、(B)(C)は二種類のトップ部の正面図である。
【
図8】(A)(B)(C)はさらに他例のトップ部の正面図、該トップ部を第一、第二補助錘が取り付けられたウキ本体部に取り付けた状態の要部縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図面において、1は第一の実施の形態のウキであって、該ウキ1は、下部側が大径になった下膨れ状に形成されたウキ本体部2と、該ウキ本体部2の上部から上方に突出するよう設けられる細棒状のトップ部3とを用いて構成され、ウキ本体部2の下部には自立用の主錘4が設けられ、上部には自立を補助するための補助錘5が設けられたものとなっている。
そしてウキ1は、ウキ本体部2の下端に弧状に湾曲形成された連結部6が、釣り竿(図示せず)側からの釣り糸である道糸(テグス、ライン)7に連結されることになるが、この場合の道糸7に対する連結部6の連結は、道糸7に対して上下動自在になる所謂誘導式の連結であって、図示するように道糸7を連結部6に直接遊嵌状に貫通する場合だけでなく、道糸7に一端側が遊嵌状に貫通するスイベルジョイント等の市販(公知)の連結金具(図示せず)の他端側に連結部6を着脱自在な状態で連結する場合があり、後者の場合には、ウキ1を交換したい場合に、連結金具を道糸に連結したままの状態でウキ1の交換ができるという利点がある。
【0009】
前記ウキ本体部2は、バルサ材、桐材等の浮力のある木材や発泡性素材(発泡ポリスチレン、発泡ポリウレタン等の合成樹脂材)を用いて構成される本体素材8の下部に主錘4が取り付けられたものであり、本実施の形態では本体素材8として、比重が低く浮力のあるバルサ材が用いられている。そして本体素材8は、バルサ材を円柱状に切り出し加工したものを用意し、上下両端面部に主錘4用の下側取り付け孔8aと補助錘5用の上側取り付け孔8bとが形成される。
【0010】
下側取り付け孔8aに取り付けられる主錘4としては、逆円錐形状になった錘本体部4aと、該錘本体部4aの上面(円錐の底面)4eから上方に突出していて前記下側取り付け孔に挿入可能となるよう円柱形をした挿入部4bと、錘本体部4aの下端である頂点部4fから下方に直線状(円柱の針金状)に突出する支持部4cとを備えて構成されている。そしてこの場合に主錘4は、錘本体部4aと挿入部4bとが、鉛、タングステン、ニッケル等の比重が大きい金属の単独若しくはこれら金属を主素材として含んだ合金を用いて形成されているのに対し、支持部4cは外部に露出するものでもあるためステンレス、鋼等の強度のある加工性の高い金属を用いて形成されている。
主錘4は、支持部4cが錘本体部4aの頂点部4fから挿入部4bの中途部位まで埋設される状態で設けられるが、該支持部4cの前記埋設される部位の先端部4dは平板状に加工されている。そして主錘4は、支持部4cを鋳型に組み込んだ状態で溶融金属を流しむことで金型成形(鋳造)されることになり、このようにして形成された主錘4は、先端部4dが平板状に加工(潰し加工)されていることにより、支持部4cが錘本体部4aに対して回り止めかつ抜け止めされた状態で設けられたものとなっている。
【0011】
そしてこのようにして形成された主錘4を、本体素材8の下部に取り付けることになるが、この場合に主錘4は、予め測定しておいた本体素材8の重量からウキ1を、予め設定される所定の吃水位置(ウキ1を自立させたときの水面位置)Hに水面(海面)が位置する状態で自立させるために必要とされる重量(全錘重量)よりも少し軽く設定される設定重量、例えば全錘重量に対して95%の重量になることを目標として挿入部4bの先端部位を切断するという重量調節(調整)作業が施されたものが用いられる。因みに、主錘4の重量割合を前記95%としたときに、正確に95%に調節する必要はなく、凡そ95%に調節されたものであれば十分であり、主錘4、補助錘5を合算した錘重量を必要な全錘重量にするための最終的な調節は、後述するように補助錘5の重量調節によって行われる。そして主錘4と補助錘5との重量の割合については後述する。
このように重量調節された主錘4は、挿入部4bを下側取り付け孔8aに挿入し接着材にて固着することで本体素材8の下部に、上面4eが本体素材8の下面8cに当接する状態で取り付けられることになる。
因みに本実施の形態においては、ウキ1が適正姿勢で自立したときの吃水位置Hを、
図6に示すようにウキ本体部2の上端位置となるように設定している。
【0012】
一方、本体素材8の上部については、上側取り付け孔8bに、ポリカルボネート、硬質ポリ塩化ビニル等の硬質合成樹脂材から形成された筒体9を挿入し、該挿入された筒体9は接着材にて固定されることになるが、筒体9の上端部は、本体素材8の上端8dよりも上方に突出した突出部9aとなるよう設けられたものとなっており、このように構成することで、本体素材8は、上端部が挿入された筒体9によって補強されたものとなっている。
因みに筒体9は、突出部9aの本体素材上端8dからの突出量を製品間において一定となるよう揃えることが要求されるが、この場合に、筒体9を上側取り付け孔8bに挿入する際の誤差があることによって突出部9aの突出量を一定になるよう挿入することが難しい場合があり、そこで筒体9を所定寸法よりも長いものとし、該長い筒体9を、上側取り付け孔8bに挿入組み込みした後、本体素材8から突出している部位を、突出部9aの突出量が揃うよう切断するようにし、このようにして作業性の向上を図ることができる。
【0013】
そしてこのように主錘4、筒体9が取り付けられた状態の素材本体8の表面を、回転切削機や回転研磨機等の適宜の加工機械を用いて所定形状に加工することになるが、この場合に前記主錘4に設けられる支持部4cと筒体突出部9aとを加工機械のチャックに支持して素材本体8を回転することができ、この場合に、支持部4cは、埋設する先端部4dが平板状になっているため、錘本体部4aと挿入部4bとが鉛素材である場合のように軟弱な金属であったときに、支持部4cだけが空回り状態になってしまうことを回避できるよう配慮されている。
【0014】
次にこのように素材本体部8の表面が加工されたものの表面に塗料10を塗布することになるが、この場合の塗料10は、素材本体部8および主錘4の露出する錘本体部4aと、筒体9の素材本体10の上端から突出する突出部9aの塗布とをする。
この場合に、突出部9aについては上端まで塗布する必要はなく、後述するように水密性の観点から中途部位までで良い。また主錘4の支持部4cの素材本体部8から突出している部位については塗料10の塗布がないようにすることが好ましいが、塗料が塗布されてしまった場合、該塗布された塗料について必要において剥離する等の除去作業が要求されることがある。
因みに、支持部4cまたは突出部9aは、塗布作業時や塗料の乾燥時において本体素材8をクランプ等の保持部材を介して保持される保持部材として利用することができる。そしてこのように塗料10を塗布することで、主錘4の上面4eと本体素材8の下面8cとのあいだの隙間、本体素材8の上端8dから筒体9が突出する部位の隙間が塗料10によつて塞がれることになって水が本体素材8に入らないよう水密状に形成される。因みに塗料10は、一度のみの塗布ではなく、複数回の塗布を繰り返すことで、釣り現場においては太陽光が直射する状態の海水に浸漬する、という厳しい使用条件下において繰り返し使用した場合においても、塗料10の剥離防止を図ることができ、長期に亘る使用が可能となる。
【0015】
次いで、前記塗料10が塗布された素材本体部8に設けられる支持部4cについて、適当長さを残して切断し、該残った部分を弧状に湾曲加工することで前記連結部6が形成されることになり、このようにして、補助錘5が取り付けられた正規のウキ本体部2となる前の前駆体11、つまり補助錘5が組み付けられる前段階の状態の前駆体11が形成される。
さらにこの場合に前駆体11としては、素材本体8の上端縁から突出する筒体9の突出部9aに、筒状の連結体12の下側部(連結体12は下側部と上側部とが正確に二分されたものでなくて良いことは勿論である。)が外嵌組み込みされ、接着により筒体9に固定されたものとなっている。そして連結体12の筒体突出部9aから突出する上側部に、トップ部3の下端部を、前記突出部9aの上端縁に当接する位置を最大嵌入量として抜き差し自在に嵌入できるよう構成されており、このようにすることでトップ部3のウキ本体部2に対する着脱自在な取り付けができるよう構成されている。この場合に、連結体12は、ゴム質弾性を有した摩擦係数の高い樹脂材で形成され、嵌入したトップ部3の不用意な抜け出し防止ができるよう配慮されている。
【0016】
次に斯かる構成になったウキ本体部2の前駆体11に補助錘5を組み込むことになるが、この場合に補助錘5は同一太さで直線状をしたものが好適であって、例えば主錘4と同材質の比重の高い金属材であっても良く、またステンレスや鋼材等の防錆が配慮された針金等の金属材を用いることができ、補助錘5の全体が筒体9に埋没する(筒体9の上端縁よりも低位になる)状態で組み込まれる第一の実施の形態(
図6(C)参照)の第一補助錘5aと、上端部が筒体9から突出する(筒体9の上端縁よりも高位になる)状態で組み込まれる第二の実施の形態(
図6(D)参照)の第二補助錘5bとが存在したものとなっていて、二種類(二態様)のウキ本体部2として提供される。
【0017】
そして補助錘5は、筒体9に組み込む前に予め重量調節されたものが筒体9に組み込まれ、これによってウキ1の吃水位置Hでの自立を補完(補助、追完)することになる。この場合に補助錘5は、前述したように吃水位置Hに水面が位置する状態でウキ1を自立させるために必要な全錘重量に対して主錘4の重量を減じた分に相当する錘重量の追加となる。つまり補助錘5は、吃水位置Hに水面が位置する状態のウキ1の自立、という適正姿勢での自立を補完するために追加されるものであるが、そのためには、前記主錘4が組み付けられたウキ本体部2に追加される補助錘5の重量設定をする必要がある。
因みに、一般に提供されている自立ウキとしては、前記主錘4に相当する錘が設けられるだけで、補助錘5に相当する錘が設けられていないものが通常であり、このようなウキであっても自立する構成にはできるが、このような自立ウキは、後述するように吃水位置Hに水面が位置するよう調節された状態での自立ではなく未調節状態での自立であって、本発明が実施されたウキ1の本来目的とする吃水位置Hに水面が位置する自立とはいえない。
【0018】
次に、補助錘5を設けてウキ1の本来の自立姿勢(目的とする自立姿勢)に自立をさせるため、補助錘5の重量についての調節作業をする必要があるが、このためには前記形成された個々の前駆体11について、本体素材8の浮力の相違、切削や塗装、接着剤の過多等の加工誤差等を考慮したものに、さらに道糸Xのウキ1よりも下のハリス側部位に取り付ける本来の錘Yの重量を加味する必要があり、そのための設定作業が要求される。
因みにこのようなウキを用いた釣り(一般に「ウキ釣り」と言うが、「フカセ釣り」と言うこともある。)に使用される錘Yとしては「カミツブシ」、「ガン玉」、「割ビシ」等の軽いものが一般であり、何れの錘Yについても、例えば錘Yがガン玉である場合に、サイズ(号)としてB、2B、3B、・・・があり、これらサイズのガン玉の重さは、B=0.55g、2B=0.80g、3B=1.00g、・・・のように基準化されている。
そして本発明が実施されたウキ1は、前記錘Yとして、どの種類の錘のどのサイズのものが適合錘14を取り付けた場合に吃水位置Hが水面となる自立をするもの、つまりこの適合錘14をウキ1に取り付けた状態で、該ウキ1は前記吃水位置Hが水面になる状態の自立をするよう設定されている。具体的には、ウキ本体部2の表面に適合錘14の種類が記号として明示されている。そして釣り人は、到着した釣りのポイント(釣り場)に対応して例えば「2B」と明示されているウキを選択し、仕掛けに該対応するウキ1を取り付けると共に、ウキ下の道糸7に錘Yとして「ガン玉の2B」を取り付けることで、ウキ1は、前記吃水位置Hが水面に位置する自立になるよう補助錘5の重量設定される。勿論、釣り人は、このように所定のウキ1を取り付けた状態でも、実際のポイントの状況、変化に応じて錘Yの増減をする場合があることは言うまでもなく、このようなことは釣り人に技量、経験に応じて適宜なされるものである。
【0019】
そして補助錘5の重量設定をするには、例えば前記前駆体11の補助錘5が取り付けられる部位に相当する外周面に、該補助錘5と適合錘14を粘着テープ(セロファンテープやビニールテープ等)13で仮保持させた状態で前駆体11を水中(必要において海水(塩水))に投入して自立させ、前駆体11を自立させたときの水面位置が、予め設定される吃水位置Hとなるよう補助錘5の長さ調節をする手法があり、この手法は前記第一、第二補助錘5a、5bの何れの場合にも採用することができる。つまり補助錘5は、ウキ1を吃水位置Hに水面が位置する状態に自立させるときに要する重量から適合錘14の重量を減じた重量になるよう設定されている。
因みにウキ1を、吃水位置Hに水面が位置する所望姿勢に自立させるには、トップ部3の重量も加味する必要があり、この場合に、トップ部3を前駆体11に粘着テープ13により取り付けた状態で補助錘5の重量調節をしても良いが、トップ部3は予め重量測定がなされた定量のものであり、そこでトップ部3の重量に相当する錘を別途前駆体11に取り付けた状態で補助錘5の重量調節をすることもできる。
さらにはトップ部3の下端部に連結部12が取り付けられたものとし、該トップ部3が取り付けられた連結部12を、前駆体11の上端縁部に着脱できるよう仮保持状に外嵌取り付けした状態で補助錘5の重量調節をすることができる。この手法としては、補助錘5が前駆体11の上端縁から突出する第二補助錘5bである場合に、トップ部3付きの連結部12を、第二補助錘5bの突出部に嵌合取り付けした状態で補助錘5の重量の塩梅を確認し、重すぎた場合には連結部12を第二補助錘5bから外して補助錘5の上端部を切断した後、連結部12を再び第二補助錘5bの突出する先端部に取り付けて補助錘5の重量の塩梅を確認する、という作業を繰り返すことで補助錘5の重量確定をすることができ、このようにすることで補助錘5の重量調節の作業が容易になって作業性が向上するという利点がある。因みにこの場合に、連結部12を筒部9に必要において仮保持状に外嵌してもよい。
この手法は、埋め込み式の第一補助錘5aの場合であっても、連結部12を筒体9に仮保持状に外嵌取り付けすることでできることは言うまでもない。
【0020】
これに対し、補助錘5が前述したように筒体9から延出する第二補助錘5bである場合には、該第二補助錘5bを筒体9に実際に挿入した状態で前駆体11を水中に自立させ、その自立したときの水面位置を見て第二補助錘5bの重量調節をする、という手法を採用できる。この場合、適合錘14は、単独でウキ本体部2に仮保持させてもよいが、この仮保持の手法として、前述したように粘着テープ13を用いてウキ本体部2に仮保持することもできるが、
図6(B)において仮想線で示すように、連結部6に紐(糸)等の連結材15を介して適合錘14を仮保持させる手法もあり、第一、第二補助錘5a、5bの重量設定をするため、適合錘14を仮保持する手法として何れを採用しても良いことは勿論である。勿論、トップ部3の重量も当然に前述したように加味する必要がある。
【0021】
これに対し埋め込み式の第一補助錘5aをこの手法で重量調節してもよいが、この場合、第一補助錘5aが筒体9内に没入して抜き出しづらくなることがあり、作業性の点から、この手法を採用することは必ずしも好ましいとは言えない。
そこで第一補助錘5aの重量調節をする手法として、仮のトップ部3を用意し、該仮のトップ部3に重量調節された錘を組み込んだものを前駆体11に取り付け、このものを水中に自立させたときの自立状態を観測し、錘重量に過不足があった場合に、錘重量を変更した仮のトップ部3を組み付けたものを水中に自立させる作業を適宜繰り返すことで適正な錘重量を割り出し、該割り出された適正な錘重量に調節された第一補助錘5aを筒体9に挿入組み込みをする、という手法もある。勿論、この手法は、第二補助錘5bの場合においても採用することができる。
【0022】
そして前記補助錘5の重量調節をする作業において、トップ部3は、合成樹脂製であって個々の重量変化はなく同一されてたものであるため、このトップ部3を、ウキ本体部2に取り付ける前後の水面H位置の変化状態は予め判っており、そこで仮のトップ部を用いる場合を除いて、このトップ部3の重量を勘案した状態で、前駆体11の設定される位置に水面が位置するよう補助錘5の重量調節(長さ調節)をすることができる。勿論、補助錘5の重量調節をする工程として、トップ部3を筒体9に抜き差し自在に挿入した状態で補助錘5の重量調節をしても良い。
【0023】
そして該重量調節された補助錘5を筒体9に取り付けることになるが、補助錘5が第一補助錘5aである場合には、該第一補助錘5aを筒体9の下端位置まで挿入固定する。この場合に、第一補助錘5aが、筒体9に対して無理嵌め状の挿入であって抜け出る可能性がない場合には接着剤による固定は不要であるが、抜け出る惧れがある場合には接着剤による固定ができることになる。この場合に接着剤による固定としては、接着剤を第一補助錘5aの外周面に塗布して筒体9の内周面に固定するもの、筒部9の挿入された第一補助錘5aの上側を塞ぐようにして充填して第一補助錘5aの上動を規制するようにしたものであってもよい。
また、第一補助錘5aが鉛材のように軟質金属である場合、該第一補助錘5aを筒体9に嵌入した後、該第一補助錘5aの上端縁部を筒体9に挿入した工具によって打ち込み加工することで、第一補助錘5aの上端縁部が周方向に拡開状に変形して筒体9に密接することになって抜け止めされることになり、この場合には接着剤による接着が不要になる。
【0024】
これに対し補助錘5が第二補助錘5bである場合、該第二補助錘5bは、先端部5cが筒体突出部9aの上端から突出したものとなるが、その場合の先端部5cの突出は、筒体9の上端を越え、連結体12の上端から突出したものとなるが、連結体12からの突出状態が同位置となるよう高さ調節した状態で態で補助錘5bを筒体9に挿入し、接着剤により補助錘5を筒体9に固定することになり、このようにして、主錘4、補助錘5により重さ調節がなされたウキ本体部2が形成される。
このように補助錘5を組み込む工程を、ウキ本体部2を形成する工程の最終工程としていることにより、本体素材8の性状により生じる個々の本体素材8の浮力変化に加えて、これ以前の工程で生じる加工誤差も吸収した状態での調節ができることになって、精度の高い状態で錘の重量調節がなされた自立型のウキ1を形成することができる。
【0025】
そして前述したように前駆体11となったものに補助錘5を組み込んでウキ本体部2を形成し、このウキ本体部2にトップ部3を取り付けることでウキ1として用いられることになるが、この場合に、補助錘5が第一補助錘5aである場合には、トップ部3の下端部を、連結体12に無理嵌め状に挿入する状態で筒井突出部9aに挿入組み込みすることでトップ部3の取り付けができる。
これに対し第二補助錘5bである場合には、トップ部3の下端部を、補助錘5bの連結体12から突出する先端部5cに外嵌する状態で連結体12に無理嵌め状に挿入することでトップ部3の取り付けができることになり、このようにしてウキ1の釣り現場での組み立てができることになるが、ウキ1自体をさらに錘を追加して重くしたい場合には、釣り人自らが、錘をトップ部3の筒内に挿入したり、第一補助錘5aが取り付けられるものである場合には、筒体9の上端から錘を挿入したりして調節できるものである。
【0026】
前記トップ部3は、天面(上面)が封止され下面が開口した有天円筒状に形成されたものであって、一本ものであっても、複数本を継ぎ足し形成したものであっても良いが、トップ部3が長いものである場合に、中間部において半部同士を雄雌嵌合したり、半部同士を芯材を介して連結したりして継ぎ足したものとした場合には、該中間部での補強ができることになるという利点がある。
トップ部3は、黒色部3aをあいだに挟む状態で、赤色(朱色)、黄色、緑色等の適宜の色彩が施されたものとなっているが、本実施の形態のものは、中央部3bが赤色となっており、その上下が黒色部3aを介して黄色部3c、さらにその上下が黒色部3aを介して緑色部3d、さらにその上下が黒色部3aを介してオレンジ色部3e等の黒色以外の有色の色分けがなされているが、本実施の形態のトップ部3は、黒色部3aが単純に色彩部位を色分け(区分け)するために幅狭なものとなっているものではなく、色彩部と同等前後の幅を有したものになっている。
【0027】
ところで海を水平線に向けて視認した場合に、黒色が天候状態に拘わらず遠くからでも視認されやすい色であることが古くから確認されている。これは、水面(海面)が一般に太陽光(昼光)を受けて白色に反射するものとして認識され、その反対色(補色)である黒色が最も視認されやすい色であり、また逆光の場合には黒色が視認されやすい色として認識されており、このことは、例えば沖縄県地方の海洋において設置されることが多い浮き漁礁であるパヤオの目印の旗の色を、遠方から最も視認しやすいということが経験上認識されている黒色にしていることからも立証される。そして本発明が実施されたトップ部3についても、前記視認されやすい黒色部3aを幅広状態として設けることにして、黒色を従来のように隣接する色間の輪郭になる数mm程度の幅狭なものとは異なった一つ幅広な色彩部とし、これによって遠投した場合においてもトップ部3の実際の動き状態を視認しやすいよう配慮されたものとなっている。
【0028】
そのうえ本実施の形態のウキ1は、前記吃水位置Hの直上となる連結部12の色を、前述した遠くからでも視認しやすい黒色としている。この場合に、連結部12の長さは、12mm~25mmの幅であることが好ましい。この連結部12の長さは、連結部12が水中に沈んだか否かの判別が遠目からでもしやすい長さに設定している。さらにこの連結部12の長さは、主錘4、補助錘5によって錘重量が調節されたウキ1自体の残留浮力(自立状態で浮いているウキ1が沈むために必要な力)との関係もあるが、実際に釣をしている際の経験として、慎重で繊細な大物(特に黒鯛(チヌ)の場合)が引いたアタリ(魚信)の引き長さ(沈み込み長さ)に凡そ相当する長さに設定されており、そして吃水位置H直上となる連結部12を長さ(幅)がある黒色とすることで、吃水位置H直上において、水面(海面)において視認しやすいものとなり、この連結部12が水中に引き込まれて黒色が見えなくなってその上のオレンジ色部3eに変化した、というアタリに即座に感応して竿のアワセ動作ができるようし、これによってアタリを見落としてしまうことを低減し、釣果の向上に寄与できる、という利点がある。
勿論、吃水位置H直上となる連結部12の色彩としては、黒色に限定されず、オレンジ、黄色、緑等、適宜の色を採用することができ、またこれらを蛍光色とすることも勿論できることは言うまでもない。
【0029】
次に、前記ウキ本体部2に組み込まれる主錘4と補助錘5との重量割合について説明する。
前述したようにウキ1を自立させたときに吃水位置Hに水面が来るように調節される錘全重量(実際には適合錘14の重量を減じた重量)に対し、主錘4の重量割合を95%に設定した場合、補助錘5は残りの5%に設定されることになるが、このような主錘4と補助錘5との重量割合の設定は、ウキ1が取り付けられた状態の仕掛けを実際に飛ばした時の飛距離および飛び姿勢、起立安定性に大きく影響する。
主錘4としては、重量割合を100%とすることで、弓矢の場合と同様、正面に向けて一直線状に飛んでいく理想的な飛び姿勢となり、距離が優れ、自立時の安定性の高いものとなるが、それでは本体素材8の比重のバラツキ等に対応した所望の重量の錘が組み込まれた自立性の優れたウキ1とすることができず、補助錘5による重量調節が必要になる。このような観点から主錘4の重量割合の高値を検討したところ、98.5%が高値であり、これ以上主錘4の割合が高くなると、補助錘5による吃水位置Hでの自立調節ができない製品が発生することもなってウキ1の生産性だけでなく信頼性に支障を来すことになる。
【0030】
これに対し、主錘4の重量割合の低値であるが、この低値の検討のため、主錘4の重量割合を段階的に低くしたウキ1を作成し、これらを実際に仕掛けに取り付けたときの飛距離、飛び姿勢、自立時の安定性について検討した。この結果、主錘4の重量割合が60%以下のものは、トップ部3が上側になる傾斜した飛び姿勢となって空気抵抗を大きく受けるためか、飛距離が大きく低下するだけでなく、自立姿勢の安定性(横風や横波を受けたときの倒伏のしづらさ)も悪くなることが確認され、そこで65%を低値とすることが確認された。
そしてこのように設定された主錘4の重量割合98.5%~65%としたものにおいて、さらにウキ1が横風や横波を受けて倒伏した姿勢から起立姿勢に復帰(復元)する安定性についても検討したところ、75%以上のものは倒伏後、起立した自立姿勢に復帰する時間が短く、実釣りに支障を来す恐れも少ないが、70%以下のものは復帰に時間がかかり、実釣りに支障を来す恐れがあると考えられ、そこで主錘4の重量割合について98.5%~75%とすることが好ましいといえる。ただし、横風や横波によるウキ1の倒伏は、釣り現場において常に発生ものではなく、70%以下のものであっても横風や横波のない凪の状態で使用する分においては問題がないと判断される。
前記事実を確認したことに基づく観点からウキ1として好ましい主錘4と補助錘5との重量配分として、主錘4の重量割合が98.5%~65%の範囲であり、好ましくは97%~75%の範囲であることがウキ1として好ましい主錘4と補助錘5との重量配分であると結論した。
【0031】
叙述の如く構成された本発明の実施の形態において、ウキ本体部2の下部に、ウキ1を自立させるための主錘4を設けたウキ1において、本体素材8の性状や本体素材8の切削、塗装等の加工工程において生じるバラツキがあったとしても、該ウキ1の自立を補完するための補助錘5の本体素材8の上部への取り付けが、主錘4を取り付ける工程、本体素材8の切削、塗装工程を経たウキ本体部2となる前の最終段階の前駆体とした状態で、水に入れた状態で補助錘5の重さ調節をし、その後、該重さ調節された補助錘5を本体素材8に組み込むことになる結果、精度の高い自立ウキ1とすることを、製品間のバラツキを可及的に低減する状態でできることになって高品質のウキを提供できることになる。
【0032】
しかもこの場合に、主錘4は、本体素材8の重量に対応して重さ調節されたものが取り付けられることになって補助錘5側での重量調節の幅を小さいものにできると共に、主錘4に設けられ、本体素材を切削するための切削工具のチャックに支持される支持部4cが、ウキ1を道糸に連結するための連結部6として兼用されることになってウキ加工の容易化を図りながら部品の兼用化が図れることになる。
そのうえ補助錘5を素材本体8へ取り付ける場合に、予め上側取り付け孔8bに挿入された筒体9に補助錘5を組み込むことがなされるため、ウキ1の自立を補完するための補助錘5の取り付けが精度よく統一した状態で行われることになって高品質の自立ウキ1の製造が容易になる。
【0033】
尚、トップ部3のウキ本体部2に対する取り付け構造としては、前記実施の形態のように、連結部12にトップ部3の下端部を嵌入する取り付け構造に限定されず、例えば
図8に示す他例のもののように、トップ部3の下端部に、外周面部を研磨や切削する等の加工をするか別部材を挿入して細径の導入部3fが設けられたもの(図面では別部材を挿入組み込みしたものが示されている。)とし、そしてトップ部3の下端部を連結体12に嵌入(挿入)する際に、細径の導入部3fを案内体として連結体12に嵌入することでトップ部3のウキ本体部2への取り付けが容易にできるように配慮されたものとなっている。
【0034】
さらにこの場合に、トップ部3の最下端部を、例えば着色をしない無着色部3gとして確保し、その上側のオレンジ色部(彩色部)3eとは区別できるように構成したものとしている。そしてトップ部3をウキ本体部2の上端部に差し込む際に、この無着色部3gを連結部12に対する適正な嵌入量(嵌入深さ、嵌入代、挿入代)を示すものとしておくことで、釣り人は、この無着色部3gを適正な嵌入部と判断し、無着色部3gを目安として連結部12に嵌入組み込みする(差し込む)ことで、トップ部3の適正な嵌入組み込みができ、この様に構成することによって、実釣り中において嵌入不良(不足)によりトップ部3が不用意にウキ本体部2から脱落してしまうことの防止だけでなく、ウキ1を仕舞う際に嵌入過剰によりトップ部3がウキ本体部2から抜き取れなくなることの防止も図ることができる、という利点がある。
勿論、無着色部3gを、例えば黒色等、適宜の色に着色したものとしても良く、その場合に、該無着色部3gが連結部12への挿入代であることを明示する機能を呈するものであるため、その無着色部3gを、直上のオレンジ色部3eとは区別される他色の色彩とすることが必要となる。
因みにトップ部3は、
図7(A)に示すように、円筒状のものの上端縁部にトップ3hの下半部が嵌入組み込みされたものとして形成され、そして該トップ3hも含めて本実施の形態ではオレンジ色部3eとして着色されており、このようにすることで、先端のトップ3hのみが異色となるという違和感のないものとなると共に、その分、オレンジ色部3eが長いものとなって視認性の向上に寄与できるという利点がある。
【0035】
そしてこのように導入部3fを形成する場合に、該導入部3fを細径の筒部材を別部材としてトップ部3に挿入組み込みしたものでは、該導入部3fの内周面と第二補助錘5bとの間隔が狭いものとなって、トップ部3の揺れが第二補助錘5bによって抑制され、トップ部3を連結体12で連結したものでありながらトップ部3の安定性が向上するだけでなく、トップ部3が第二補助重の5bに当接したときの異音発生の低減が図れるという利点がある。
因みに誘導部3fを下端側ほど細径になるテーパー形状(逆円錐形状)にすることもでき、この様にしたときには、トップ部3の連結体12に対する挿入案内がより容易にできるという利点もある。
【0036】
前記実施の形態の釣り用のウキには、釣り竿から延びる道糸に下部の連結部が連結される長尺状のウキ本体部と、該ウキ本体部の上部から上方に延出するトップ部とを備え、
ウキ本体部を、
・浮力素材により構成され、表面が所定形状に加工される本体素材と、
・ウキを自立させるための主錘と、
・ウキの自立を補完するための補助錘と
を備えて構成される釣用のウキにおいて、
前記ウキ本体部を、
主錘が、ウキ本体部の下部に設けた下側取り付け孔に取り付けられ、補助錘が、ウキ本体部の上部に設けた上側取り付け孔に取り付けられた構成にするにあたり、
主錘は、ウキを所定姿勢に自立させる重量よりも軽く設定され、
補助錘は、主錘が下側取り付け孔に取り付けられ、かつ所定形状に加工された本体素材に塗料が塗布された状態のウキ本体部の前駆体を水に入れて前記所定の姿勢に自立させるために不足する分を補完する重量に設定されていることを特徴とする釣用ウキの発明を含むものである。
そしてこのように構成することで、下部にウキを自立させるための主錘を備えたウキにおいて、本体素材の性状や本体素材の切削、塗装等の加工工程において生じるバラツキがあったとして、ウキを所定姿勢に自立させるために設けられる補助錘が、水に入れた状態で重さ調節されたものが組み込まれることになる結果、精度の高い自立ウキとすることを、製品間のバラツキを可及的に低減する状態でできることになって高品質のウキを提供できることになる。
そしてこの場合のウキの所定姿勢の自立は、ウキの水面位置が予め設定される吃水位置に位置する自立であり、このようにすることによって、個々のウキにおいて吃水位置にバラツキが生じることを回避し、ウキとしての統一性を担保できることになる。
しかもこの場合に、補助錘の重量は、道糸に取り付けるものと推奨する適合錘の重量を減じた重量として設定されたものとなっている。そしてこのように構成することで、実釣りの現場においてより優れた自立性を確保することができ、釣果の向上に寄与できることになる。
【0037】
さらに実施の形態の釣り用のウキは、釣り竿から延びる道糸に下部の連結部が連結される長尺状のウキ本体部と、該ウキ本体部の上端部から上方に延出するトップ部とを備え、
ウキ本体部を、
・浮力素材により構成される本体素材と、
・ウキを自立させるための主錘と、
・ウキの自立を補完するための補助錘と
を備えて構成される釣用のウキにおいて、
前記ウキ本体部を、
主錘がウキ本体部の下端部に取り付けられ、補助錘がウキ本体部の上端部に取り付けられた構成にするにあたり、
ウキを所定姿勢に自立させるための全錘重量に対し、主錘が98.5%~65%の錘重量の割合に設定されることを特徴とする釣用ウキの発明を含むものである。
そしてこのようにすることにより、ウキを所定姿勢に自立させるための主錘の重量割合が98.5%~65%となる結果、該ウキを取り付けた仕掛けを遠投したときのウキの飛距離、飛び姿勢、自立時の安定性が優れたものになる。
さらにこの場合に、主錘の錘重量割合が98.5%~75%であることが好ましく、この様にすることで、飛距離、飛び姿勢を損なうことがない状態で、より自立時の安定性の優れたものとなる。
そしてこの場合のウキの所定姿勢の自立は、ウキの水面位置が予め設定される吃水位置に位置する自立であり、このようにすることによって、個々のウキにおいて吃水位置にバラツキが生じることを回避し、ウキとしての統一性を担保できることになる。
【0038】
前記実施の形態の釣り用のウキには、釣り竿から延びる道糸に下部の連結部が連結される長尺状のウキ本体部と、該ウキ本体部の上部から上方に延出するトップ部とを備え、
ウキ本体部は、
・浮力素材により構成される本体素材と、
・ウキを自立させるため下部に取り付けられる主錘と、
・ウキの自立を補完するため上部に取り付けられる補助錘と、
を備えて構成され、
トップ部は、複数の色彩が段状に彩色されて構成される釣用のウキにおいて、
前記ウキ本体部の上端部に、ゴム質弾性を存した筒状の連結体の下半部が外嵌組み付けされ、該連結体の上半部にトップ部の下端部を嵌入することでトップ部をウキ本体部に抜き差し自在に取り付ける構成にするにあたり、
前記トップ部の下端部をその直上部とは異なった色の異色部とし、該異色部を、トップ部を連結体に嵌入取り付けするための嵌入量の目安になる嵌入代に設定していることを特徴とする釣用ウキの発明を含むものである。
そしてこのようにすることで、トップ部を抜き差し自在にウキ本体部に嵌入取り付けする際に、トップ部下端部の異色部を嵌入代の目安として連結部に嵌入することで、実釣り時において不用意なトップ部のウキ本体部からの抜け止めが図れながら、ウキを収納する際のトップ部のウキ本体部からの取り外し作業がしやすいものとなる。
そしてこのものにおいて、異色部の下端部には、小径の誘導部が延設されていることを特徴とするものであり、このようにすることで、トップ部を連結部に嵌入するための嵌入作業の容易性が図れることになる。
異色部は無着であることを特徴とするものであり、このようにすることで、異色部の形成が容易になる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、魚釣りにおいて使用される釣用ウキの製造方法として利用することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 ウキ
2 ウキ本体部
3 トップ部
4 主錘
4a 錘本体部
4b 挿入部
4c 支持部
4d 先端部
5 補助錘
5a 第一補助錘
5b 第二補助錘
6 連結部
8 本体素材
8a 下側取り付け孔
8b 上側取り付け孔
9筒体
11 前駆体
12 連結体