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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-25
(45)【発行日】2023-11-02
(54)【発明の名称】個片体形成装置および個片体形成方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20231026BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
H01L21/78 V
H01L21/78 M
H01L21/68 N
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018063687
(22)【出願日】2018-03-29
(65)【公開番号】P2019176039
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-01-20
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120592
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 崇裕
(72)【発明者】
【氏名】杉下 芳昭
【合議体】
【審判長】瀧内 健夫
【審判官】松永 稔
【審判官】市川 武宜
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-086611(JP,A)
【文献】特開2008-132710(JP,A)
【文献】特開2012-033636(JP,A)
【文献】特表2013-543262(JP,A)
【文献】特開2013-203799(JP,A)
【文献】特開2004-260083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/301, H01L21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被着体を個片化して個片体を形成する個片体形成装置において、
前記被着体には、所定のエネルギーが付与されることで膨張する膨張性微粒子が添加された接着シートが予め貼付されており、
前記被着体に改質部を形成し、当該改質部で囲繞または当該改質部と前記被着体の外縁とで囲繞された個片化予定領域を前記被着体に形成する改質部形成手段と、
前記被着体に外力を付与して前記改質部を起点として当該被着体に亀裂を形成し、当該被着体を個片化して前記個片体を形成する個片化手段とを備え、
前記個片化手段は、前記接着シートに対して部分的に前記エネルギーを付与し、当該エネルギーが付与された接着シート部分に添加されている前記膨張性微粒子を膨張させ、当該接着シート部分に貼付されている前記個片化予定領域を変位させて前記個片体を形成していきながら、前記エネルギーの付与を前記接着シートにおける前記被着体が貼付されている領域全体に行き渡らせて前記被着体を個片化することを特徴とする個片体形成装置。
【請求項2】
被着体を個片化して個片体を形成する個片体形成装置において、
前記被着体には、所定のエネルギーが付与されることで膨張する膨張性微粒子が添加された接着シートが予め貼付されており、且つ、前記被着体には、改質部が形成され、当該改質部で囲繞または当該改質部と前記被着体の外縁とで囲繞された個片化予定領域が予め形成されており、
前記被着体に外力を付与して前記改質部を起点として当該被着体に亀裂を形成し、当該被着体を個片化して前記個片体を形成する個片化手段を備え、
前記個片化手段は、前記接着シートに対して部分的に前記エネルギーを付与し、当該エネルギーが付与された接着シート部分に添加されている前記膨張性微粒子を膨張させ、当該接着シート部分に貼付されている前記個片化予定領域を変位させて前記個片体を形成していきながら、前記エネルギーの付与を前記接着シートにおける前記被着体が貼付されている領域全体に行き渡らせて前記被着体を個片化することを特徴とする個片体形成装置。
【請求項3】
前記被着体と個片化手段とを相対移動させる移動手段を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の個片体形成装置。
【請求項4】
前記改質部は、第1方向に沿う第1改質部と、当該第1方向に交差する第2方向に沿う第2改質部とを含み、
前記個片化手段は、前記エネルギーを付与した位置に、当該エネルギーの付与領域が所定の方向に延びるライン状付与領域を形成可能に設けられ、
前記移動手段は、前記ライン状付与領域を前記第1方向と平行となるように移動させ、さらに、前記ライン状付与領域を前記第2方向と平行となるように移動させることを特徴とする請求項3に記載の個片体形成装置。
【請求項5】
前記膨張性微粒子は、第1エネルギーで膨張する第1膨張性微粒子と、第2エネルギーで膨張する第2膨張性微粒子とを有し、
前記個片化手段は、前記第1エネルギーを付与する第1個片化手段と、前記第2エネルギーを付与する第2個片化手段とを備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の個片体形成装置。
【請求項6】
前記個片化手段によって変位される前の被着体部分が変位することを抑制する変位抑制手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の個片体形成装置。
【請求項7】
被着体を個片化して個片体を形成する個片体形成方法において、
前記被着体には、所定のエネルギーが付与されることで膨張する膨張性微粒子が添加された接着シートが予め貼付されており、
前記被着体に改質部を形成し、当該改質部で囲繞または当該改質部と前記被着体の外縁とで囲繞された個片化予定領域を前記被着体に形成する改質部形成工程と、
前記被着体に外力を付与して前記改質部を起点として当該被着体に亀裂を形成し、当該被着体を個片化して前記個片体を形成する個片化工程とを実施し、
前記個片化工程は、前記接着シートに対して部分的に前記エネルギーを付与し、当該エネルギーが付与された接着シート部分に添加されている前記膨張性微粒子を膨張させ、当該接着シート部分に貼付されている前記個片化予定領域を変位させて前記個片体を形成していきながら、前記エネルギーの付与を前記接着シートにおける前記被着体が貼付されている領域全体に行き渡らせて前記被着体を個片化することを特徴とする個片体形成方法。
【請求項8】
被着体を個片化して個片体を形成する個片体形成方法において、
前記被着体には、所定のエネルギーが付与されることで膨張する膨張性微粒子が添加された接着シートが予め貼付されており、且つ、前記被着体には、改質部が形成され、当該改質部で囲繞または当該改質部と前記被着体の外縁とで囲繞された個片化予定領域が予め形成されており、
前記被着体に外力を付与して前記改質部を起点として当該被着体に亀裂を形成し、当該被着体を個片化して前記個片体を形成する個片化工程を備え、
前記個片化工程は、前記接着シートに対して部分的に前記エネルギーを付与し、当該エネルギーが付与された接着シート部分に添加されている前記膨張性微粒子を膨張させ、当該接着シート部分に貼付されている前記個片化予定領域を変位させて前記個片体を形成していきながら、前記エネルギーの付与を前記接着シートにおける前記被着体が貼付されている領域全体に行き渡らせて前記被着体を個片化することを特徴とする個片体形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個片体形成装置および個片体形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被着体に形成した改質部を起点とし、当該被着体を個片化して個片体を形成する個片体の製造方法に用いる個片体形成装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-211080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された従来の個片体形成装置では、半導体ウエハ4(被着体)に貼付されたダイシングテープ1(接着シート)を引っ張って、改質領域41(改質部)を起点にして当該被着体を個片化し、ダイボンド用チップ(個片体)を形成するため、装置が複雑化するという不都合を発生する。
【0005】
本発明の目的は、装置が複雑化することを防止することができる個片体形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、請求項に記載した構成を採用した。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、添加されている膨張性微粒子を膨張させることで、個片化予定領域を変位させて個片体を形成するので、装置が複雑化することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】(A)~(D)は、本発明の実施形態に係る個片体形成装置の説明図。
図2】(A)~(C)は、本発明の変形例の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、本実施形態におけるX軸、Y軸、Z軸は、それぞれが直交する関係にあり、X軸およびY軸は、所定平面内の軸とし、Z軸は、前記所定平面に直交する軸とする。さらに、本実施形態では、Y軸と平行な図1(A)中手前方向から観た場合を基準とし、図を指定することなく方向を示した場合、「上」がZ軸の矢印方向で「下」がその逆方向、「左」がX軸の矢印方向で「右」がその逆方向、「前」がY軸と平行な図1(A)中手前方向で「後」がその逆方向とする。
【0010】
本発明の個片体形成装置EAは、被着体としての半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」ともいう)WFを個片化して個片体としての半導体チップ(以下、単に「チップ」ともいう)CPを形成する装置であって、ウエハWFに改質部MTを形成し、当該改質部MTで囲繞された個片化予定領域WFPをウエハWFに形成する改質部形成手段10と、ウエハWFに外力を付与して改質部MTを起点として当該ウエハWFに亀裂CKを形成し、当該ウエハWFを個片化してチップCPを形成する個片化手段20と、ウエハWFと個片化手段20とを相対移動させる移動手段30と、個片化手段20によって変位される前のウエハWF部分が変位することを抑制する変位抑制手段40とを備え、ウエハWFを支持するウエハ支持手段50の近傍に配置されている。
なお、ウエハWFには、所定のエネルギーとしての赤外線IRが付与されることで膨張する膨張性微粒子SGが添加された接着シートASが予め貼付されている。また、本実施形態では、接着シートASは、基材BSと接着剤層ALとを備え、当該接着剤層ALのみに膨張性微粒子SGが添加されたものが採用されている。
【0011】
改質部形成手段10は、複数のアームによって構成され、その作業範囲内において、作業部である先端のアーム11Aで支持したものを何れの位置、何れの角度にでも変位可能な駆動機器としての所謂多関節ロボット11と、先端のアーム11Aに支持され、ウエハWFにレーザLSを照射し、改質部MTを形成するレーザ照射機12とを備え、第1方向としてのY軸方向に沿う第1改質部MTYと、Y軸方向に交差する第2方向としてのX軸方向に沿う第2改質部MTXとを形成し、第1改質部MTYと第2改質部MTXとで囲繞された個片化予定領域WFPを形成するように構成されている。なお、多関節ロボット11は、例えば、特開2016-81974に例示されている多関節ロボット111等が例示できる。
【0012】
個片化手段20は、移動手段30に支持された光源ボックス21と、光源ボックス21内に支持され、赤外線IRを発光する発光源22と、当該発光源22で発光した赤外線IRを集光させる集光板23とを備え、赤外線IRを付与した位置に、当該赤外線IRの付与領域が所定の方向に延びるライン状付与領域LGを形成可能に設けられ、接着シートASに対して部分的に赤外線IRを付与し、当該赤外線IRが付与された接着シート部分ASPに添加されている膨張性微粒子SGを膨張させ、当該接着シート部分ASPに貼付されている個片化予定領域WFPを変位させてチップCPを形成する構成となっている。
【0013】
移動手段30は、駆動機器としての回動モータ31と、その出力軸31Aに支持され、光源ボックス21をそのスライダ32Aで支持する駆動機器としてのリニアモータ32とを備え、個片化手段20が形成したライン状付与領域LGをY軸方向と平行となるように移動させ、さらに、ライン状付与領域LGをX軸方向と平行となるように移動させる構成となっている。
【0014】
変位抑制手段40は、多関節ロボット11と同等の図示しない駆動機器の先端のアームに支持された押え板41を備えている。
【0015】
ウエハ支持手段50は、減圧ポンプや真空エジェクタ等の図示しない減圧手段(保持手段)によって吸着保持が可能な支持面51Aを有し、赤外線IRを透過可能な支持テーブル51を備えている。
【0016】
以上の個片体形成装置EAの動作を説明する。
先ず、図1(A)中実線で示す初期位置に各部材が配置された個片体形成装置EAに対し、当該個片体形成装置EAの使用者(以下、単に「使用者」という)または、多関節ロボットやベルトコンベア等の図示しない搬送手段が、接着シートASが貼付されたウエハWFを同図に示すように支持テーブル51上に載置する。すると、ウエハ支持手段50が図示しない減圧手段を駆動し、支持面51AでのウエハWFの吸着保持を開始する。次いで、改質部形成手段10が多関節ロボット11およびレーザ照射機12を駆動し、レーザ照射機12を前後方向に移動させ、図1(A)中二点鎖線で示すように、ウエハWFに第1改質部MTYを形成した後、レーザ照射機12を左右方向に移動させ、図1(B)中二点鎖線で示すように、ウエハWFに第2改質部MTXを形成し、個片化予定領域WFPを形成する。
【0017】
その後、個片化手段20および移動手段30が発光源22およびリニアモータ32を駆動し、Y軸方向に延びるライン状付与領域LGを形成した後、図1(C)に示すように、光源ボックス21を右方から左方に向けて移動させる。すると、赤外線IRが付与された接着シート部分ASPに添加されている膨張性微粒子SGが同図に示すように次々に膨張し、接着剤層ALに無数の凸部CVが形成される。これにより、ウエハWFは、右方から左方に向けて次々に部分的に持ち上げられて変位し、第1改質部MTYが起点となってY軸方向に延びる亀裂CKYが形成され、Y軸方向に延びる短冊状のウエハWFSとなる。このとき、変位抑制手段40が図示しない駆動機器を駆動し、変位させたくない個片化予定領域WFP上に押え板41を配置させておく。これにより、変位する個片化予定領域WFPに追従して隣接する個片化予定領域WFPも一緒に変位することを抑制し、改質部MTを起点とした亀裂CKの形成ができなくなることを防止することができる。
【0018】
次に、光源ボックス21がウエハWFの左端部の左方所定位置に到達すると、個片化手段20および移動手段30が発光源22およびリニアモータ32の駆動を停止する。なお、本実施形態では、上記のようにして亀裂CKYを形成する際、個片化手段20は、赤外線IRが付与された接着シート部分ASPに添加されている個々の膨張性微粒子SGが完全に膨張しないように、または、赤外線IRが付与された接着シート部分ASPに添加されている膨張性微粒子SG全てが膨張しないように赤外線IRを照射するようになっている。
【0019】
そして、移動手段30が回動モータ31を駆動し、個片化手段20をXY平面内で90度回転移動させる。次いで、個片化手段20および移動手段30が発光源22およびリニアモータ32を駆動し、X軸方向に延びるライン状付与領域LGを形成した後、図1(D)に示すように、光源ボックス21を前方から後方に向けて移動させる。すると、同図に示すように、赤外線IRが付与された接着シート部分ASPに添加されている個々の膨張性微粒子SGが次々にさらに大きく膨張し、または、赤外線IRが付与された接着シート部分ASPに添加されている膨張性微粒子SGのさらに多くが膨張し、接着剤層ALに形成されていた無数の凸部CVが拡大する。これにより、短冊状のウエハWFSは、前方から後方に向けて次々に部分的に持ち上げられて変位し、第2改質部MTXが起点となってX軸方向に延びる亀裂CKXが形成され、当該亀裂CKXと先に形成されていた亀裂CKYとで複数のチップCPとなる。このときも、変位抑制手段40が図示しない駆動機器を駆動し、変位させたくない個片化予定領域WFPを押え板41で押さえておくとよい。
【0020】
その後、光源ボックス21がウエハWFの後端部の後方所定位置に到達すると、個片化手段20が発光源22の駆動を停止した後、移動手段30がリニアモータ32を駆動し、光源ボックス21を初期位置に復帰させる。次に、ピックアップ装置や保持装置等の図示しないチップ搬送手段や使用者が、全てのチップCPまたは所定数のチップCPを接着シートASから取り外し、当該チップCPを別の工程に搬送すると、ウエハ支持手段50が図示しない減圧手段の駆動を停止した後、使用者または図示しない搬送手段が支持テーブル51上から接着シートASを取り外し、以降上記同様の動作が繰り返される。
なお、接着シートASは、無数の凸部CVによってチップCPとの接着領域が減少するので、当該チップCPとの接着力が減少し、接着シートASとしてチップCP(ウエハWF)との接着力が強力なものが採用された場合にでも、チップCPを簡単に接着シートASから取り外すことができるようになっている。
【0021】
以上のような実施形態によれば、添加されている膨張性微粒子SGを膨張させることで、個片化予定領域WFPを変位させてチップCPを形成するので、装置が複雑化することを防止することができる。
【0022】
本発明における手段および工程は、それら手段および工程について説明した動作、機能または工程を果たすことができる限りなんら限定されることはなく、まして、前記実施形態で示した単なる一実施形態の構成物や工程に全く限定されることはない。例えば、改質部形成手段は、被着体に改質部を形成し、当該改質部で囲繞または当該改質部と被着体の外縁とで囲繞された個片化予定領域を被着体に形成可能なものであれば、出願当初の技術常識に照らし合わせ、その技術範囲内のものであればなんら限定されることはない(その他の手段および工程も同じ)。
【0023】
改質部形成手段10は、レーザ照射機12を移動させずにまたは移動させつつ、ウエハWFを移動させて当該ウエハWFに改質部MTを形成してもよいし、X軸またはY軸と平行な1本の改質部MTを形成してもよいし、X軸またはY軸と平行でない1本または複数の改質部MTを形成してもよいし、相互に不等間隔な複数の改質部MTを形成してもよいし、相互に平行または平行でない複数の改質部MTを形成してもよいし、相互に交差しない複数の改質部MTを形成してもよいし、相互に直交または斜交する複数の改質部MTを形成してもよいし、曲線状または折線状の1本または複数の改質部MTを形成してもよく、そのような改質部MTによって形成される個片化予定領域WFPやチップCPの形状は、円形、楕円形、三角形または四角形以上の多角形等、どのような形状でもよいし、第1、第2方向以外に、その他の1または2以上の方向それぞれに1本または複数の改質部MTを形成してもよい。
改質部形成手段10は、レーザ光、電磁波、振動、熱、薬品、化学物質等の付与によって、ウエハWFの特性、特質、性質、材質、組成、構成、寸法等を変更することで、ウエハWFを脆弱化、粉砕化、液化または空洞化して改質部MTを形成してもよく、このような改質部MTは、膨張性微粒子SGの膨張を外力とし、被着体を個片化して個片体を形成することができればどのようなものでもよい。
改質部MTが予めウエハWFに形成されている場合、本発明の個片体形成装置EAに改質部形成手段10が備わっていなくてもよいし、備わっていてもよい。
【0024】
個片化手段20は、図2(A)に示すように、接着シートAS全体に一括で赤外線IRを付与可能な発光源24と、当該発光源24で発光した赤外線IRを反射させる反射板25と、反射板25の上部の開口部25Aを開閉可能な開閉板26とで構成し、開口部25Aを開閉板26で全閉にした状態から当該開閉板26を右方から左方に向けて徐々に移動させ、図2(A-1)に示すように、右方から左方に向けて次々に亀裂CKYを形成し、Y軸方向に延びる短冊状のウエハWFSを形成する。次いで、個片化手段20をXY平面内で90度回転移動させた後、開口部25Aを開閉板26で全閉にした状態から当該開閉板26を前方から後方に向けて徐々に移動させ、図2(A-2)に示すように、前方から後方に向けて次々に亀裂CKXを形成し、亀裂CKXと亀裂CKYとでチップCPを形成してもよい。この場合、開閉板26の代わりに、図2(B-1)、(B-2)に示すように、発光源24が発光した赤外線IRでライン状付与領域LGを形成するスリット27Aを備えた開閉板27を採用してもよい。なお、スリット27Aには、赤外線IRを集光させたり平行光としたりするレンズを設けてもよい。
個片化手段20は、集光板23や反射板25がなくてもよいし、集光板23の代わりにまたは集光板23と併用し、赤外線IRを集光させたり平行光としたりするレンズを設けてもよいし、膨張性微粒子SGの特性、特質、性質、材質、組成および構成等を考慮して、接着シートASに赤外線IRを照射する時間を任意に決定することができるし、発光源22、24として、LED(Light Emitting Diode、発光ダイオード)ランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ等何を採用したり、それらを適宜に組み合わせたものを採用したりしてもよいし、エネルギーとしてレーザ光、電磁波、振動、熱、薬品、化学物質等を付与するものを採用したり、それらを適宜に組み合わせたものを採用したりしてもよく、膨張性微粒子SGの特性、特質、性質、材質、組成および構成等を考慮して任意の構成を採用することができるし、被着体が所定のエネルギーを透過可能なものの場合、当該所定のエネルギーを被着体側から付与してもよいし、接着シートAS側から付与してもよいし、被着体側と接着シートAS側との両方から付与してもよい。
個片化手段20は、例えば、赤外線IRを付与する接着シート部分ASPを、任意の位置の個片化予定領域WFPの1つまたは複数の区画に対応するものだけとし、当該接着シート部分ASPに貼付されている1つまたは複数の区画からなる個片化予定領域WFPを変位させてチップCPを形成してもよい。
個片化手段20は、前記実施形態では、ライン状付与領域LGを形成して接着シートASに対して部分的に赤外線IRを付与したが、赤外線IRの付与領域が点状となる点状付与領域を形成して接着シートASに対して部分的に赤外線IRを付与したり、個片化予定領域WFPの平面形状に対応した面状付与領域または、個片化予定領域WFPの平面形状に対応していない面状付与領域を形成して接着シートASに対して部分的に赤外線IRを付与したりしてもよい。
【0025】
移動手段30は、図2(C)に示すように、第1改質部MTYおよび第2改質部MTXに斜交するライン状付与領域LG(不図示)をウエハWFの一端から他端に向けて移動させることで、第1、第2改質部MTY、MTXの両方を起点として亀裂CKY、CKXを同時に形成し、チップCPを形成してもよい。なお、この場合の斜交角度は、例えば、X軸やY軸に対して1度、5度、10度、45度、60度、89度等、どのような角度でもよい。
移動手段30は、個片化手段20を移動させずにまたは移動させつつ、ウエハWFを移動させ、個片化手段20に対してウエハWFをXY平面内で90度回転移動させたり、ライン状付与領域LGをY軸方向と平行となるように移動させたり、ライン状付与領域LGをX軸方向と平行となるように移動させたりしてもよいし、ライン状付与領域LGをX軸やY軸方向と平行とならないように移動させてもよいし、本発明の個片体形成装置EAを構成する構成物として備わっていてもよいし、他の装置でウエハWFおよび個片化手段20の少なくとも一方を移動させる場合、本発明の個片体形成装置EAに備わっていなくてもよい。
【0026】
変位抑制手段40は、変位させたくない個片化予定領域WFP上に押え板41を当接させてもよいし、当接させなくてもよいし、気体の吹き付けにより、個片化手段20によって変位される前のウエハWFが変位することを抑制したり、プーリとベルトとで個片化手段20によって変位される前のウエハWFが変位することを抑制したりする他の構成を採用してもよいし、本発明の個片体形成装置EAに備わっていなくてもよい。
【0027】
ウエハ支持手段50は、基材BS側に鉄板や硝子板等の板状部材(保持部材)を貼付してウエハWFを支持する構成でもよいし、被着体が所定のエネルギーを透過不可能なものであれば、支持テーブル51や板状部材として、当該所定のエネルギーを透過可能なもので構成すればよいし、被着体が所定のエネルギーを透過可能なものであれば、支持テーブル51や板状部材として、当該所定のエネルギーを透過不可能なもので構成してもよいし、透過可能なもので構成してもよい。
ウエハ支持手段50は、保持手段がなくてもよいし、本発明の個片体形成装置EAを構成する構成物として備わっていてもよいし、他の装置でウエハWFを支持する場合、本発明の個片体形成装置EAに備わっていなくてもよい。
【0028】
例えば、膨張性微粒子SGが、第1エネルギーとしての80℃の熱で膨張する図示しない第1膨張性微粒子と、第2エネルギーとしての100℃の熱で膨張する図示しない第2膨張性微粒子とを有し、個片化手段20が、第1エネルギーとしての80℃の熱を付与する図示しない第1個片化手段と、第2エネルギーとしての100℃の熱を付与する図示しない第2個片化手段とを備えていてもよく、この場合、上記実施形態と同様の動作で、個片化手段20が、80℃の熱を付与して第1改質部MTYを起点として亀裂CKYを形成した後、100℃の熱を付与して第2改質部MTXを起点として亀裂CKXを形成し、チップCPを形成することができる。なお、第1エネルギーや第2エネルギーは、何度の熱でもよいし、膨張性微粒子SGが、第1、第2エネルギー以外の他の温度の熱で膨張する他の膨張性微粒子を有する場合、個片化手段20は、他の温度の熱を付与する他の個片化手段を増設することができる。
また、膨張性微粒子SGとして、第1エネルギーとしての赤外線で膨張する図示しない第1膨張性微粒子と、第2エネルギーとしての紫外線で膨張する図示しない第2膨張性微粒子とが添加されている接着シートASを採用し、上記実施形態と同様の動作で、個片化手段20が、赤外線を付与して第1改質部MTYを起点として亀裂CKYを形成した後、紫外線を付与して第2改質部MTXを起点として亀裂CKXを形成し、チップCPを形成してもよい。なお、第1エネルギーと第2エネルギーとの組み合わせは、赤外線、紫外線、可視光線、音波、X線またはガンマ線等の電磁波や、熱湯や熱風等、接着シートASに添加されている第1、第2膨張性微粒子の組み合わせによってどのような組み合わせでもよいし、第1、第2エネルギー以外の他のエネルギーで膨張する他の膨張性微粒子が添加されている接着シートASが採用された場合、当該他のエネルギーを付与する他の個片化手段を増設することができる。
さらに、前記実施形態では、ウエハWFの一端から他端に向けて徐々にライン状付与領域LGを移動させたが、改質部MTが形成されている位置のみにライン状付与領域LGが位置するように個片化手段20を移動させ、改質部MTを起点として亀裂CKを形成したり、発光源22、24を消灯させておき、改質部MTが形成されている位置にライン状付与領域LGが位置するように個片化手段20やスリット27Aを移動させてから発光源22、24を駆動し、改質部MTを起点として亀裂CKを形成したりしてもよい。
また、接着シートASとして、紫外線、可視光線、音波、X線またはガンマ線等の電磁波や、熱湯や熱風等の熱を所定のエネルギーとして膨張する膨張性微粒子SGが添加されているものが採用されてもよく、個片化手段20は、それら膨張性微粒子SGの特性、特質、性質、材質、組成および構成等を考慮して当該膨張性微粒子SGを膨張させ、被着体を個片化して個片体を形成できればよい。
【0029】
接着シートASは、当該接着シートASを構成する基材BSのみに膨張性微粒子SGが添加されているものが採用されてもよいし、接着剤層ALと基材BSとの両方に膨張性微粒子SGが添加されているものが採用されてもよいし、接着剤層ALと基材BSとの中間に中間層が存在し、当該中間層、接着剤層ALおよび基材BSのうち少なくとも1つまたは少なくとも2つに膨張性微粒子SGが添加されているものが採用されてもよいし、ウエハWFにおける回路が形成された面に貼付されていてもよいし、回路が形成されていない面に貼付されていてもよいし、ウエハWFの両面に貼付されていてもよく、このように、ウエハWFの両面に接着シートASが貼付されている場合、それら接着シートASは、同一のものでもよいし、同一でないものでもよいし、一方の接着シートには、膨張性微粒子SGが添加されていなくてもよい。
個片体は、チップCPに限らず、例えば、短冊状のウエハWFSでもよく、この場合の個片化予定領域は、第1改質部MTYとウエハWFの外縁とで囲繞された領域となり、移動手段30は、個片化手段20が形成したライン状付与領域LGを、Y軸、X軸またはその他の方向と平行となるように移動させるだけでよい。
被着体が予め短冊状のウエハWFSのようなものであれば、移動手段30は、個片化手段20が形成したライン状付与領域LGを、X軸、Y軸またはその他の方向と平行となるようにだけ移動させ、チップCPを形成してもよい。
膨張性微粒子SGは、例えば、イソブタン、プロパン、ペンタンなどの加熱によって容易にガス化して膨張する物質が弾性を有する殻内に内包された微粒子等が例示でき、特願2017-73236、特開2013-159743、特開2012-167151、特開2001-123002等で開示されている熱発泡性微粒子や、特開2013-47321、特開2007-254580、特開2011-212528、特開2003-261842等で開示されている膨張性微粒子等、何ら限定されるものではなく、例えば、熱分解して、水、炭酸ガス、窒素を発生させて膨張性微粒子と類似の効果を奏する発泡剤を採用してもよいし、特開2016-53115、特開平7-278333で開示されている紫外線により気体を発生するアゾ化合物等の気体発生剤で殻を膨張させるものでもよいし、例えば、加熱によって膨張するゴムや樹脂等でもよいし、その他、重曹、炭酸水素ナトリウム、ベーキングパウダ等でもよい。
膨張性微粒子SGは、所定のエネルギーとして、赤外線以外に、紫外線、可視光線、音波、X線またはガンマ線等の電磁波や、熱湯や熱風等の熱等が付与されることで膨張するものでもよく、そのような膨張性微粒子SGの特性、特質、性質、材質、組成および構成等に応じてエネルギー付与手段が選択されればよい。
ウエハWFは、一方の面および他方の面のうち少なくとも一方に所定の回路が形成されていてもよいし、それら両方に回路が形成されていなくてもよい。
【0030】
本発明の個片体形成装置EAは、ウエハWFに接着シートASを貼付する公知のシート貼付手段が備わっていてもよいし、ウエハWFを所定の厚みにまで研削(研磨)する公知の研削(研磨)手段が備わっていてもよいし、チップCPを接着シートASから取り外す公知のピックアップ手段が備わっていてもよいし、接着シートASから取り外したチップCPを基板や載置台等の他の部材に接着する公知の接着手段が備わっていてもよい。
【0031】
本発明における接着シートASおよび被着体の材質、種別、形状等は、特に限定されることはない。例えば、接着シートASは、円形、楕円形、三角形や四角形等の多角形、その他の形状であってもよいし、感圧接着性、感熱接着性等の接着形態のものであってもよく、感熱接着性の接着シートASが採用された場合は、当該接着シートASを加熱する適宜なコイルヒータやヒートパイプの加熱側等の加熱手段を設けるといった適宜な方法で接着されればよい。また、このような接着シートASは、例えば、接着剤層ALだけの単層のもの、基材BSと接着剤層ALとの間に中間層を有するもの、基材BSの上面にカバー層を有する等3層以上のもの、更には、基材BSを接着剤層ALから剥離することのできる所謂両面接着シートのようなものであってもよく、両面接着シートは、単層又は複層の中間層を有するものや、中間層のない単層又は複層のものであってよい。また、被着体としては、例えば、食品、樹脂容器、シリコン半導体ウエハや化合物半導体ウエハ等の半導体ウエハ、回路基板、光ディスク等の情報記録基板、ガラス板、鋼板、陶器、木板または樹脂等の単体物であってもよいし、それら2つ以上で形成された複合物であってもよく、任意の形態の部材や物品なども対象とすることができる。なお、接着シートASは、機能的、用途的な読み方に換え、例えば、情報記載用ラベル、装飾用ラベル、保護シート、ダイシングテープ、ダイアタッチフィルム、ダイボンディングテープ、記録層形成樹脂シート等の任意のシート、フィルム、テープ等でもよい。
【0032】
前記実施形態における駆動機器は、回動モータ、直動モータ、リニアモータ、単軸ロボット、2軸または3軸以上の関節を備えた多関節ロボット等の電動機器、エアシリンダ、油圧シリンダ、ロッドレスシリンダ及びロータリシリンダ等のアクチュエータ等を採用することができる上、それらを直接的又は間接的に組み合せたものを採用することもできる。
前記実施形態において、支持(保持)手段や支持(保持)部材等の被支持部材を支持または保持するものが採用されている場合、メカチャックやチャックシリンダ等の把持手段、クーロン力、接着剤(接着シート、接着テープ)、粘着剤(粘着シート、粘着テープ)、磁力、ベルヌーイ吸着、吸引吸着、駆動機器等で被支持部材を支持(保持)する構成を採用してもよい。
【符号の説明】
【0033】
EA…個片体形成装置
10…改質部形成手段
20…個片化手段
30…移動手段
AS…接着シート
ASP…接着シート部分
CK…亀裂
CP…半導体チップ(個片体)
IR…赤外線(エネルギー)
LG…ライン状付与領域
MT…改質部
MTX…第2改質部
MTY…第1改質部
SG…膨張性微粒子
WF…半導体ウエハ(被着体)
WFP…個片化予定領域
図1
図2