(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-25
(45)【発行日】2023-11-02
(54)【発明の名称】アルコールの辛みが低減されたアルコール飲料およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C12G 3/06 20060101AFI20231026BHJP
A23L 27/00 20160101ALI20231026BHJP
A23L 27/29 20160101ALI20231026BHJP
A23L 27/20 20160101ALI20231026BHJP
【FI】
C12G3/06
A23L27/00 C
A23L27/29
A23L27/00 Z
A23L27/20 G
(21)【出願番号】P 2018241496
(22)【出願日】2018-12-25
【審査請求日】2021-09-29
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000253503
【氏名又は名称】キリンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】野畑 順子
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】太田 麗子
【審査官】河島 拓未
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-030517(JP,A)
【文献】特開2017-099354(JP,A)
【文献】特開2016-063809(JP,A)
【文献】特開2015-100294(JP,A)
【文献】特開2016-135110(JP,A)
【文献】特開2017-225359(JP,A)
【文献】特開2013-017488(JP,A)
【文献】国際公開第2006/064919(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/017115(WO,A1)
【文献】Gulsun Akdemir Evrendilek et al.,Assessing impacts of pulsed electric fields on quality attributes and furfural and hydroxymethylfurfural formations in apple juice,Journal of Food Process Engineering,2017年,Vol.40,p.1-10
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12G
A23L
Mintel GNPD
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルフラールの濃度が5~500ppbであり、
クエン酸換算した酸濃度(%(w/v))に対するショ糖換算した糖濃度(%(w/v))の比が5~50であり、クエン酸換算した酸濃度が0.4%(w/v)以下であ
り、
アルコール濃度が5~10%(v/v)である、アルコール飲料。
【請求項2】
ソフトフルーツ風味のアルコール飲料である、請求項
1に記載のアルコール飲料。
【請求項3】
果汁の濃度が0~10%(w/v)である、請求項
1または2に記載のアルコール飲料。
【請求項4】
前記果汁がソフトフルーツの果汁である、請求項
3に記載のアルコール飲料。
【請求項5】
前記ソフトフルーツが、ブドウ、リンゴ、モモおよびパイナップルからなる群から選択される、請求項
2~
4のいずれか一項に記載のアルコール飲料。
【請求項6】
フルフラールを含有する、
アルコール濃度が4~12%(v/v)であるアルコール飲料中のフルフラール濃度を5~500ppbに調整することによりアルコールの辛みを低減するための香味調節剤。
【請求項7】
アルコール飲料を製造する方法であって、
前記アルコール飲料中のフルフラールの濃度を5~500ppbに調整すること、
前記アルコール飲料中のクエン酸換算した酸濃度(%(w/v))に対するショ糖換算した糖濃度(%(w/v))の比を5~50に調整し、クエン酸換算した酸濃度を0.4%(w/v)以下に調整すること
、および
アルコール濃度を5~10%(v/v)に調整すること
を含んでなる、前記方法。
【請求項8】
アルコール飲料におけるアルコールの辛みを低減する方法であって、
前記アルコール飲料中のフルフラールの濃度を5~500ppbに調整すること、
前記アルコール飲料中のクエン酸換算した酸濃度(%(w/v))に対するショ糖換算した糖濃度(%(w/v))の比を5~50に調整し、クエン酸換算した酸濃度を0.4%(w/v)以下に調整すること
、および
アルコール濃度を4~12%(v/v)に調整すること
を含んでなる、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコールの辛みが低減されたアルコール飲料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、いわゆるストロング系アルコール飲料と呼ばれる、高濃度のアルコールを含むアルコール飲料が好まれる傾向が見られる。そのような高濃度アルコール飲料は、飲用時に、アルコール(エタノール)に起因する辛みが強く感じられることが多い。
【0003】
一方で、高濃度アルコール飲料を、アルコールの辛みを強く感じることなく飲用したいというニーズも存在する。
【0004】
アルコールの辛みは、アルコール飲料のアルコール感を想起させる要素の一つであり、従来、アルコール飲料のアルコール感を低減する様々な技術が開発されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、アルコール飲料にソーマチンを添加することにより、アルコール飲料の苦味およびバーニング感を抑制する方法が開示されている。
【0006】
特許文献2には、アルコール飲料にモルトエキスを添加することにより、アルコール飲料の苦味およびバーニング感を抑制する方法が開示されている。
【0007】
特許文献3には、アルコール飲料に5-ヒドロキシメチルフルフラール(5-HMF)または5-HMFを含む糖類の加熱処理物を添加することにより、アルコール飲料の苦味およびバーニング感を抑制する方法が開示されている。
【0008】
しかしながら、アルコール飲料におけるアルコールの辛みとフルフラールとの関係についてはこれまで何ら知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2014-018162号公報
【文献】特開2014-073098号公報
【文献】特開2017-099354号公報
【発明の概要】
【0010】
本発明者らは、アルコール飲料におけるフルフラール(2-フランカルボキシアルデヒド)の含有量を所定の範囲に調整することにより、そのアルコール飲料の飲用時に、実際のアルコール濃度よりもアルコールに起因する辛みを低く感じることを見出した。本発明はこの知見に基づくものである。
【0011】
従って、本発明は、アルコールの辛みが低減されたアルコール飲料およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
本発明によれば以下の発明が提供される。
(1)フルフラールの濃度が0.5~500ppbである、アルコール飲料。
(2)クエン酸換算した酸濃度(%(w/v))に対するショ糖換算した糖濃度(%(w/v))の比が5~50であり、クエン酸換算した酸濃度が0.4%(w/v)以下である、(1)に記載のアルコール飲料。
(3)アルコール濃度が4~12%(v/v)である、(1)または(2)に記載のアルコール飲料。
(4)ソフトフルーツ風味のアルコール飲料である、(1)~(3)のいずれかに記載のアルコール飲料。
(5)果汁の濃度が0~10%(w/v)である、(1)~(4)のいずれかに記載のアルコール飲料。
(6)前記果汁がソフトフルーツの果汁である、(5)に記載のアルコール飲料。
(7)前記ソフトフルーツが、ブドウ、リンゴ、モモおよびパイナップルからなる群から選択される、(4)~(6)のいずれかに記載のアルコール飲料。
(8)フルフラールを含有する、アルコールの辛みを低減するための香味調節剤。
(9)アルコール飲料を製造する方法であって、前記飲料中のフルフラールの濃度を0.5~500ppbに調整することを含んでなる、方法。
(10)アルコール飲料におけるアルコールの辛みを低減する方法であって、前記飲料中のフルフラールの濃度を0.5~500ppbに調整することを含んでなる、方法。
【0013】
本発明によれば、アルコール飲料、特にソフトフルーツ風味のアルコール飲料において、アルコールに起因する辛みを低減することができる。よって、本発明によれば、致酔性を損なうことなく、弱いアルコールの辛みを有するアルコール飲料を提供することが可能となる。
【発明の具体的説明】
【0014】
本発明において「アルコール飲料」とは、酒税法上アルコール飲料とみなされる、アルコール度数1度(アルコール濃度1%(v/v))以上の飲料を意味する。
【0015】
本発明においてアルコールの「辛み」とは、アルコール飲料の飲用時に感じられるアルコール(エタノール)特有の口蓋や舌を刺すような感覚(辛み)を意味する。また、アルコールの辛みの「低減」とは、アルコール飲料を飲んだ時に、その飲料のアルコール濃度よりも低いアルコール濃度を有する飲料を飲んだ時のアルコールの辛みを感じることを意味する。
【0016】
本明細書において、1ppbは1μg/Lに相当する。
【0017】
アルコール飲料
本発明のアルコール飲料は、フルフラールの濃度が所定の範囲内にあるアルコール飲料である。本発明のアルコール飲料は、アルコール飲料の製造過程において、飲料中のフルフラールの濃度を調整することにより製造することができる。フルフラールの濃度調整は、フルフラールそのものを添加することによって行ってもよいし、フルフラールを含有する原料の配合量を増減することによって行ってもよい。フルフラールの濃度を調整することにより、アルコール飲料におけるアルコールの辛みを低減することができる。また、アルコールの辛みは、アルコール飲料のアルコール感を想起させる要素の一つであることから、本発明のアルコール飲料は、アルコール感が低減されたアルコール飲料でもある。
【0018】
本発明のアルコール飲料におけるフルフラールの濃度は0.5~500ppbであり、好ましくは0.5~300ppb、より好ましくは0.5~200ppb、より一層好ましくは1~200ppbである。このような範囲にフルフラールの濃度を調整することにより、アルコール飲料におけるアルコールの辛みを低減することができる。
【0019】
飲料におけるフルフラールの濃度は、二次元ガスクロマトグラフ飛行時間型質量分析装置(GC×GC TOFMS)を用いて測定することができる。具体的には、以下の測定機器および条件により測定することができる。
<測定機器>
Agilent 7890A GCシステム(アジレント・テクノロジー株式会社製)
Pegasus(登録商標)4D GC×GCシステム(レコジャパン合同会社製)
1次元目カラム:DB-WAX 60m×0.25mm、I.D.0.25μm(アジレント・テクノロジー株式会社製)
2次元目カラム:DB-5 1.2m×0.325mm、I.D.0.35μm(アジレント・テクノロジー株式会社製)
<測定条件>
飲料サンプル50mLに20mm長のソーブスター(IMT株式会社製)を1本入れ、スターラーで16時間撹拌する。このソーブスターを加熱脱着用チューブに入れ、クルードインジェクションシステム(TDS3/CIS4、ゲステル株式会社製)により、飲料サンプルをGC×GC TOFMSシステムに注入し、分析を行う。飲料サンプルの注入条件およびカラムの昇温条件は以下の通りとする。
注入条件:
TDS3:40℃で0.5分保持し、その後200℃まで60℃/分で昇温し、さらに1分で230℃まで昇温し、230℃で1分保持する。
CIS4:-50℃で0.5分保持し、その後250℃まで12℃/秒で昇温し、250℃で13分保持する。
昇温条件:
1次元目カラム:50℃で4分保持し、その後230℃まで5℃/分で昇温し、230℃で10分保持する。
2次元目カラム:1次元目カラムの温度の10℃増しとする。
【0020】
一つの実施態様によれば、本発明のアルコール飲料は、クエン酸換算した酸濃度(%(w/v))に対するショ糖換算した糖濃度(%(w/v))の比(糖酸比=ショ糖換算した糖濃度/クエン酸換算した酸濃度)が5~50であり、好ましくは6~48、より好ましくは6~47である。
【0021】
アルコール飲料におけるショ糖換算した糖濃度は、アルコール飲料に含まれる甘味成分の濃度(%(w/v))に、該甘味成分の相対甘味度を乗じた値である。アルコール飲料が2種以上の甘味成分を含む場合には、甘味成分の種類ごとにショ糖換算した糖濃度を算出し、各甘味成分のショ糖換算した糖濃度の合計を、アルコール飲料におけるショ糖換算した糖濃度とする。飲料における甘味成分の濃度は、例えば、液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)システムを用いて測定することができる。具体的には、以下の測定機器および条件により測定することができる。
<測定機器>
LC/MSシステム(Waters社製)
サンプルマネージャー(2767)
バイナリーグラジエントモジュール(2545)
PDA検出器(2998)
四重極MS検出器(3100)
システムオーガナイザー(SFO)
HPLCポンプ(515)
カラム(Waters社製、Atrantis T3、C18カラム、粒径5μm、内径4.6mm、カラム長150mm)
<LC分析条件>
カラム温度:室温(約25℃)
移動相組成:移動相A 0.1%(v/v)ギ酸超純水
移動相B 0.1%(v/v)ギ酸アセトニトリル
移動相流速:毎分1.5ml(一定)
0.0~8.0分 A相90.0%(v/v)B相10.0%(v/v)
8.0~10.10分 A相40.0%(v/v)B相60.0%(v/v)
10.10~12.20分 A相0%(v/v)B相100.0%(v/v)
12.20~20.00分 A相90.0%(v/v)B相10.0%(v/v)
<MS分析条件>
イオン化モード:ESI、ネガティブモード
キャピラリー電圧:2.0kV
コーン電圧:30V
SIM:スクラロース m/z=395
アセスルファムカリウム m/z=161.7
【0022】
アルコール飲料における糖の組成については、イオンクロマトグラフィー等の公知の分析手段を用いて決定することができる。
【0023】
「甘味成分」とは、飲料に甘味を付与し得る成分を意味し、例えば、相対甘味度0.05以上の甘味成分を意味する。甘味成分としては、飲食品に含まれる成分として通常用いられるものであれば特に限定されず、例えば、ブドウ糖、ショ糖、果糖、麦芽糖等の糖、ソルビトール、マルチトール等の糖アルコール、ステビア、グリチルリチン、ソーマチン等の天然甘味料、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、サッカリン、スクラロース、アリテーム等の人工甘味料等が挙げられる。甘味成分としては、アルコール飲料の製造過程において添加される成分だけでなく、アルコール飲料の原材料(例えば、果汁、果実片等)に由来する成分も包含される。
【0024】
「相対甘味度」とは、ショ糖1%(w/v)の甘味度を1とした場合の各甘味成分の相対的な甘味の強さを示すパラメータである。本発明においては、各甘味成分の相対甘味度は以下の通りとする。
ブドウ糖 :0.7
果糖 :0.6
麦芽糖 :0.4
ソルビトール :0.7
マルチトール :0.8
ステビア :150
グリチルリチン:170
ソーマチン :3000
アセスルファムカリウム:200
アスパルテーム:200
サッカリン :300
スクラロース :500
アリテーム :2000
【0025】
アルコール飲料におけるクエン酸換算した酸濃度は、アルコール飲料に含まれる酸味成分の濃度(%(w/v))に、該酸味成分の相対酸度を乗じた値である。アルコール飲料が2種以上の酸味成分を含む場合には、酸味成分の種類ごとにクエン酸換算した酸濃度を算出し、各酸味成分のクエン酸換算した酸濃度の合計を、アルコール飲料におけるクエン酸換算した酸濃度とする。飲料におけるクエン酸およびクエン酸以外の酸の濃度は、BCOJビール分析法-2003 8.24.2キャピラリー電気泳動法により測定することができる。
【0026】
「酸味成分」とは、飲料に酸味を付与し得る成分を意味し、例えば、相対酸度0.05以上の酸味成分を意味する。酸味成分としては、飲食品に含まれる成分として通常用いられるものであれば特に限定されず、例えば、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、酢酸、グルコン酸、コハク酸、フマル酸等の有機酸、リン酸等の無機酸、およびそれらのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等の塩が挙げられる。酸味成分としては、アルコールの製造過程において添加される成分だけでなく、アルコール飲料の原材料(例えば、果汁、果実片等)に由来する成分も包含される。
【0027】
「相対酸度」とは、クエン酸1%(w/v)の酸度を1とした場合の各酸味成分の相対的な酸味の強さを示すパラメータである。本発明においては、各酸味成分の相対酸度は以下の通りとする。
乳酸 :1.15
クエン酸ナトリウム:0.74
リンゴ酸 :1.1
酒石酸 :1.25
酢酸 :1.05
グルコン酸:0.65
コハク酸 :1.15
フマル酸 :1.65
リン酸 :2.25
【0028】
一つの実施態様によれば、本発明のアルコール飲料におけるクエン酸換算した酸濃度の上限値は0.4%(w/v)であり、好ましくは0.37%(w/v)、より好ましくは0.35%(w/v)である。一方、本発明のアルコール飲料におけるクエン酸換算した酸濃度の下限値は0%(w/v)より大きく、好ましくは0.05%(w/v)、より好ましくは0.13%(w/v)である。飲料におけるクエン酸換算した酸濃度は、上述した酸味成分の濃度の測定方法により測定された酸味成分の濃度および相対酸度に基づいて算出することができる。
【0029】
一つの実施態様によれば、本発明のアルコール飲料のアルコール濃度(エタノール濃度)は4~12%(v/v)であり、好ましくは5~10%(v/v)、より好ましくは8~10%(v/v)である。また、アルコール濃度の調整は、飲食品としての安全性が確認されたエタノール含有材料を添加することによって行うことができる。エタノール含有材料としては、醸造酒を蒸留して製造された蒸留酒(スピリッツ)を用いることができ、好ましい蒸留酒の例としては、ウォッカ、焼酎、テキーラ、ラム、ジン、原料用アルコール等が挙げられる。
【0030】
一つの実施態様によれば、本発明のアルコール飲料はソフトフルーツ風味のアルコール飲料である。ここで、「ソフトフルーツ風味のアルコール飲料」とは、飲用したときにソフトフルーツ類の風味を感じるアルコール飲料を意味する。また、「ソフトフルーツ」とは、柑橘系以外の果実(非柑橘系果実)を意味するものと定義され、例えば、ブドウ、リンゴ、モモ、アンズ、スイカ、メロン、カキ、イチゴ、バナナ、ナシ、ライチ、マンゴー、パイナップル、ベリー、パッションフルーツ、キウイフルーツ、チェリー、ウメ等が挙げられる。これらのソフトフルーツのうち、ブドウ、リンゴ、モモおよびパイナップルを特に好ましく用いることができる。ソフトフルーツ風味のアルコール飲料は、ソフトフルーツ系フレーバーやソフトフルーツ系果汁等のソフトフルーツ系香味成分をアルコール飲料に添加することによって得ることができる。ソフトフルーツのフレーバーや香味成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
一つの実施態様によれば、本発明のアルコール飲料における果汁の濃度は0~10%(w/v)であり、好ましくは0~7%(w/v)であり、より好ましくは0~5%(w/v)である。
【0032】
本発明のアルコール飲料は、アルコール飲料の製造に用いられる他の成分を含んでいてもよい。このような他の成分としては、例えば、色素、食品添加剤(例えば、気泡・泡持ち向上剤、苦味剤、保存剤、酸化防止剤、増粘安定剤、乳化剤、食物繊維、pH調整剤等)等を適宜添加することがでる。
【0033】
本発明のアルコール飲料は、二酸化炭素を圧入したもの、すなわち、炭酸飲料とすることができる。炭酸ガス圧は、アルコール飲料の種類や消費者の嗜好に応じて適宜調整することができる。アルコール飲料の炭酸ガス圧は、例えば、0.049~0.4MPa(20℃における圧力)の範囲で調整することができる。
【0034】
本発明のアルコール飲料は、好ましくは容器詰飲料として提供される。本発明のアルコール飲料に使用される容器は、飲料の充填に通常使用される容器であれば特に限定されず、例えば、金属缶、樽容器、プラスチック製ボトル(例えば、PETボトル、カップ)、紙容器、瓶、パウチ容器等が挙げられる。これらの容器のうち、好ましくは金属缶、樽容器、プラスチック製ボトル(例えば、PETボトル)および瓶が好ましく使用される。
【0035】
アルコール飲料の製造方法
本発明の別の実施態様によれば、アルコール飲料を製造する方法であって、該アルコール飲料中のフルフラールの濃度を0.5~500ppbに調整することを含んでなる方法が提供される。本発明の製造方法によれば、アルコール飲料中のフルフラールの濃度を調整することにより、アルコールの辛みが低減されたアルコール飲料を製造することができる。また、アルコールの辛みは、アルコール飲料のアルコール感を想起させる要素の一つであることから、本発明の製造方法により製造されたアルコール飲料は、アルコール感が低減されたアルコール飲料でもある。
【0036】
アルコールの辛みの低減方法
本発明のさらに別の実施態様によれば、アルコール飲料におけるアルコールに起因する辛みを低減する方法であって、アルコール飲料中のフルフラール濃度を0.5~500ppbに調整することを含んでなる方法が提供される。本発明の方法によれば、アルコール飲料中のフルフラールの濃度を調整することにより、該アルコール飲料におけるアルコールに起因する辛みを低減することができる。また、アルコールの辛みは、アルコール飲料のアルコール感を想起させる要素の一つであることから、本発明の方法により、アルコール飲料におけるアルコール感を低減することもできる。
【0037】
アルコールの辛みを低減する香味調節剤
本発明のさらに別の実施態様によれば、フルフラールを含有する、アルコールの辛みを低減するための剤が提供される。フルフラールはアルコールの辛みを低減することから、本発明の剤を、アルコールを含む飲食品に添加することにより、該飲食品の香味を調節することができる。また、アルコールの辛みはアルコール感を想起させる要素の一つであることから、本発明の剤を、アルコールを含む飲食品に添加することにより、該飲食品のアルコール感を低減することもできる。
【0038】
本発明の剤におけるフルフラールの含有量は、本発明の剤を飲食品に添加した場合に、本発明の効果が奏される量であれば特に限定されず、添加される飲食品に応じて適宜設定することができる。
【0039】
本発明の剤は、固化防止剤、酸化防止剤、光沢剤、ビタミン類、香料、着色料等の薬理上または食品衛生上許容可能な他の成分を含んでいてもよい。このような他の成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
本発明の剤の剤形は、本発明の剤を飲食品に添加した場合に、本発明の効果が奏される剤形であれば特に限定されず、添加される飲食品に応じて適宜設定することができる。本発明の剤の剤形としては、例えば、粉剤、顆粒剤、錠剤、液剤等が挙げられる。
【実施例】
【0041】
以下の実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0042】
実施例1:アルコール飲料におけるフルフラール濃度の検討
(1)飲料サンプルの調製
純水に、アセスルファムカリウムを0.01%(w/v)、スクラロースを0.004%(w/v)、クエン酸を0.22%(w/v)、クエン酸ナトリウムを0.06%(w/v)、ブドウ香料を0.1%(w/v)、95.3%(v/v)の原料用アルコールを9.8%(v/v)および炭酸水を71%(v/v)の濃度となるようにそれぞれ添加して飲料サンプルを調製した。飲料サンプル中の酸の含有量(酸濃度)は、クエン酸換算で0.26%(w/v)であった。また、飲料サンプル中の糖の含有量(糖濃度)は、ショ糖換算で4%(w/v)であった。また、飲料サンプルの糖酸比(ショ糖換算した糖濃度/クエン酸換算した酸濃度)は15.38であった。
【0043】
得られた飲料サンプルに、フルフラールを0ppb(無添加)、0.5ppb、1ppb、5ppb、20ppb、50ppbおよび200ppbとなるようにそれぞれ添加して、試験区1~7の飲料サンプルとした。
【0044】
(2)飲料サンプルの評価
上記(1)で調製された試験区1~7の各飲料サンプルを、官能評価試験に供した。官能評価試験では、フルフラールを含有しない試験区1の飲料サンプルの評価スコアを「5」とし、良く訓練され、ビール、チューハイおよびカクテル系飲料の評価に熟練したパネル6名により、以下の基準に基づく評価を行った。
5:アルコールの辛みの低減が感じられない。
4:アルコールの辛みの低減が感じられる。
3:アルコールの辛みの低減が顕著に感じられる。
2:アルコールの辛みの低減がより顕著に感じられる。
1:アルコールの辛みが感じられない。
【0045】
官能評価試験の結果を下記の表1に示す。なお、評価スコアは、6名のパネルの評価スコアの平均とした。
【表1】
【0046】
表1に示す結果から、ブドウ風味のアルコール飲料において、フルフラールの濃度を適正な範囲に調整することにより、該アルコール飲料のアルコールの辛みが低減されることが分かった。また、フルフラールの濃度が1~200ppbの範囲である場合には、アルコール飲料におけるアルコールの辛みが顕著に低減されることが分かった。
【0047】
実施例2:アルコール飲料における糖酸比の検討
(1-1)低糖低酸飲料サンプルの調製
純水に、アセスルファムカリウムを0.005%(w/v)、スクラロースを0.002%(w/v)、クエン酸を0.11%(w/v)、クエン酸ナトリウムを0.03%(w/v)、ぶどうストレート果汁を2%(w/v)(フルフラール濃度4.14ppb、ショ糖換算した糖濃度0.2%(w/v))、ブドウ香料を0.1%(w/v)、アルコール濃度95.3%(v/v)の原料用アルコールを9.8%(v/v)および炭酸水を71%(v/v)の濃度となるようにそれぞれ添加した。さらに、フルフラールを1ppb、20ppbおよび50ppbとなるようにそれぞれ添加して、フルフラール濃度が異なる低糖低酸飲料サンプルを調製した。低糖低酸飲料サンプル中の酸の含有量(酸濃度)は、クエン酸換算で0.13%(w/v)であった。また、低糖低酸飲料サンプル中の糖の含有量(糖濃度)は、ショ糖換算で2.2%(w/v)であった。また、低糖低酸飲料サンプルの糖酸比は16.92であった。
(1-2)低糖高酸飲料サンプルの調製
純水に、アセスルファムカリウムを0.005%(w/v)、スクラロースを0.002%(w/v)、クエン酸を0.33%(w/v)、クエン酸ナトリウムを0.06%(w/v)、ぶどうストレート果汁を2%(w/v)(フルフラール濃度4.14ppb、ショ糖換算した糖濃度0.2%(w/v))、ブドウ香料を0.1%(w/v)、アルコール濃度95.3%(v/v)の原料用アルコールを9.8%(v/v)および炭酸水を71%(v/v)の濃度となるようにそれぞれ添加した。さらに、フルフラールを1ppb、20ppbおよび50ppbとなるようにそれぞれ添加して、フルフラール濃度が異なる低糖高酸飲料サンプルを調製した。低糖高酸飲料サンプル中の酸の含有量(酸濃度)は、クエン酸換算で0.37%(w/v)であった。また、低糖高酸飲料サンプル中の糖の含有量(糖濃度)は、ショ糖換算で2.2%(w/v)であった。また、低糖高酸飲料サンプルの糖酸比は5.95であった。
(1-3)中糖低酸飲料サンプルの調製
純水に、アセスルファムカリウムを0.01%(w/v)、スクラロースを0.004%(w/v)、クエン酸を0.11%(w/v)、クエン酸ナトリウムを0.03%(w/v)、ぶどうストレート果汁を2%(w/v)(フルフラール濃度4.14ppb、ショ糖換算した糖濃度0.2%(w/v))、ブドウ香料を0.1%(w/v)、アルコール濃度95.3%(v/v)の原料用アルコールを9.8%(v/v)および炭酸水を71%(v/v)の濃度となるようにそれぞれ添加した。さらに、フルフラールを1ppb、20ppbおよび50ppbとなるようにそれぞれ添加して、フルフラール濃度が異なる中糖低酸飲料サンプルを調製した。中糖低酸飲料サンプル中の酸の含有量(酸濃度)は、クエン酸換算で0.13%(w/v)であった。また、中糖低酸飲料サンプル中の糖の含有量(糖濃度)は、ショ糖換算で4.2%(w/v)であった。また、中糖低酸飲料サンプルの糖酸比は32.31であった。
(1-4)中糖高酸飲料サンプルの調製
純水に、アセスルファムカリウムを0.01%(w/v)、スクラロースを0.004%(w/v)、クエン酸を0.33%(w/v)、クエン酸ナトリウムを0.06%(w/v)、ぶどうストレート果汁を2%(w/v)(フルフラール濃度4.14ppb、ショ糖換算した糖濃度0.2%(w/v))、ブドウを香料0.1%(w/v)、アルコール濃度95.3%(v/v)の原料用アルコールを9.8%(v/v)および炭酸水を71%(v/v)の濃度となるようにそれぞれ添加した。さらに、フルフラールを1ppb、20ppbおよび50ppbとなるようにそれぞれ添加して、フルフラール濃度が異なる中糖高酸飲料サンプルを調製した。中糖高酸飲料サンプル中の酸の含有量(酸濃度)は、クエン酸換算で0.37%(w/v)であった。また、中糖高酸飲料サンプル中の糖の含有量(糖濃度)は、ショ糖換算で4.2%(w/v)であった。また、中糖高酸飲料サンプルの糖酸比は11.35であった。
(1-5)高糖低酸飲料サンプルの調製
純水に、アセスルファムカリウムを0.015%(w/v)、スクラロースを0.006%(w/v)、クエン酸を0.11%(w/v)、クエン酸ナトリウムを0.03%(w/v)、ぶどうストレート果汁を2%(w/v)(フルフラール濃度4.14ppb、ショ糖換算した糖濃度0.2%(w/v))、ブドウを香料0.1%(w/v)、アルコール濃度95.3%(v/v)の原料用アルコールを9.8%(v/v)および炭酸水を71%(v/v)の濃度となるようにそれぞれ添加した。さらに、フルフラールを1ppb、20ppbおよび50ppbとなるようにそれぞれ添加して、フルフラール濃度が異なる高糖低酸飲料サンプルを調製した。高糖低酸飲料サンプル中の酸の含有量(酸濃度)は、クエン酸換算で0.13%(w/v)であった。また、高糖低酸飲料サンプル中の糖の含有量(糖濃度)は、ショ糖換算で6.2%(w/v)であった。また、高糖低酸飲料サンプルの糖酸比は47.69であった。
(1-6)高糖高酸飲料サンプルの調製
純水に、アセスルファムカリウムを0.015%(w/v)、スクラロースを0.006%(w/v)、クエン酸を0.33%(w/v)、クエン酸ナトリウムを0.06%(w/v)、ぶどうストレート果汁を2%(w/v)(フルフラール濃度4.14ppb、ショ糖換算した糖濃度0.2%(w/v))、ブドウ香料を0.1%(w/v)、アルコール濃度95.3%(v/v)の原料用アルコールを9.8%(v/v)および炭酸水を71%(v/v)の濃度となるようにそれぞれ添加した。さらに、フルフラールを1ppb、20ppbおよび50ppbとなるようにそれぞれ添加して、フルフラール濃度が異なる高糖高酸飲料サンプルを調製した。高糖高酸飲料サンプル中の酸の含有量(酸濃度)は、クエン酸換算で0.37%(w/v)であった。また、高糖高酸飲料サンプル中の糖の含有量(糖濃度)は、ショ糖換算で6.2%(w/v)であった。また、高糖高酸飲料サンプルの糖酸比は16.76であった。
【0048】
(2)飲料サンプルの評価
上記(1-1)~(1-6)で調製された各飲料サンプルを、官能評価試験に供した。官能評価試験は、実施例1における「試験区1」の飲料サンプルの評価スコアを「5」とし、良く訓練され、ビール、チューハイおよびカクテル系飲料の評価に熟練したパネルにより、実施例1と同様の基準に基づく評価を行った。なお、低糖低酸飲料サンプル、低糖高酸飲料サンプルおよび中糖低酸飲料サンプルについては、それぞれ6名のパネルにより評価を行い、その他の飲料サンプルについては5名のパネルにより評価を行った。
【0049】
官能評価試験の結果を下記の表2に示す。なお、評価スコアは、上述した6名または5名のパネルの評価スコアの平均とした。
【表2】
【0050】
表2に示す結果から、ブドウ果汁入りアルコール飲料において、同じフルフラール濃度であっても、クエン酸換算した酸濃度および糖酸比を適正な範囲に調整することにより、該アルコール飲料のアルコールの辛みがより低減されることが分かった。
【0051】
実施例3:フルフラールを含有するアルコール飲料のアルコール濃度の検討
(1)飲料サンプルの調製
純水に、アセスルファムカリウムを0.01%(w/v)、スクラロースを0.004%(w/v)、クエン酸を0.22%(w/v)、クエン酸ナトリウムを0.06%(w/v)、ブドウ香料を0.1%(w/v)および炭酸水を71%(v/v)の濃度となるようにそれぞれ添加した。さらに、95.3%(v/v)の原料用アルコールを4,2%(v/v)、5.2%(v/v)、10.5%(v/v)および12.6%(v/v)それぞれ添加して、アルコール濃度が異なる飲料サンプルを調製した。飲料サンプル中の酸の含有量(酸濃度)は、クエン酸換算で0.26%(w/v)であった。また、飲料サンプル中の糖の含有量(糖濃度)は、ショ糖換算で4%(w/v)であった。また、飲料サンプルの糖酸比は15.38であった。
【0052】
得られたそれぞれの飲料サンプルに、フルフラールを20ppbとなるように添加して、試験区8~11の飲料サンプルとした。
【0053】
一方で、フルフラールを添加しないこと以外は試験区8~11と同様にして、比較区8~11の飲料サンプルを調製した。
【0054】
(2)飲料サンプルの評価
上記(1)で調製された各試験区および比較区の飲料サンプルを、官能評価試験に供した。官能評価試験では、比較区8~11のそれぞれの飲料サンプルの評価スコアを「5」とし、比較区8~11の飲料サンプルと同濃度のアルコールを含む試験区8~11の飲料サンプルをそれぞれ評価した。評価は、良く訓練され、ビール、チューハイおよびカクテル系飲料の評価に熟練したパネル5名により、実施例1と同様の基準に基づく評価を行った。
【0055】
官能評価試験の結果を下記の表3に示す。なお、評価スコアは、5名のパネルのスコアの平均とした。
【表3】
【0056】
表3に示す結果から、アルコール飲料として想定される範囲のアルコール濃度のいずれのアルコール飲料においても、フルフラールを添加することによって、アルコールの辛みが低減されることが分かった。また、アルコール濃度が5~10%(w/v)の範囲である場合には、アルコールの辛みが顕著に低減されることが分かった。
【0057】
実施例4:フルフラールを含有するアルコール飲料の果汁濃度の検討
(1)飲料サンプルの調製
純水に、アセスルファムカリウムを0.01%(w/v)、スクラロースを0.004%(w/v)、クエン酸を0.22%(w/v)、クエン酸ナトリウムを0.06%(w/v)、ブドウ香料を0.1%(w/v)、95.3%(v/v)の原料用アルコールを9.8%%(v/v)および炭酸水を71%(v/v)の濃度となるようにそれぞれ添加した。さらに、ぶどうストレート果汁を0.1%(v/v)、0.5%(v/v)、5%(v/v)および10%(v/v)となるようにそれぞれ添加して、果汁濃度が異なる飲料サンプルを調製した。
【0058】
得られたそれぞれの飲料サンプルに、フルフラールを20ppbとなるように添加して、試験区12~15の飲料サンプルとした。各飲料サンプル中のクエン酸換算の酸の含有量(酸濃度)、ショ糖換算の糖の含有量(糖濃度)および糖酸比は、下記の表4に示すとおりであった。
【0059】
(2)飲料サンプルの評価
上記(1)で調製された試験区12~15の各飲料サンプルを、官能評価試験に供した。官能評価試験では、実施例1における「試験区1」の飲料サンプルの評価スコアを「5」とし、良く訓練され、ビール、チューハイおよびカクテル系飲料の評価に熟練したパネル5名により、実施例1と同様の基準に基づく評価を行った。
【0060】
官能評価試験の結果を下記の表4に示す。なお、評価スコアは、5名のパネルのスコアの平均とした。
【表4】
【0061】
表4に示す結果から、アルコール飲料として想定される範囲の果汁濃度のいずれのアルコール飲料においても、フルフラールを添加することによって、アルコールの辛みが低減されることが分かった。また、果汁濃度が0.10~5%(w/v)の範囲である場合には、アルコールの辛みが顕著に低減されることが分かった。
【0062】
実施例5:フルフラールを含有するアルコール飲料における果汁の種類の検討
(1-1)ピーチ果汁入り飲料サンプルの調製
純水に、アセスルファムカリウムを0.01%(w/v)、スクラロースを0.003%(w/v)、クエン酸を0.06%(w/v)、クエン酸ナトリウムを0.06%(w/v)、リンゴ酸フソウMを0.144%(w/v)、ピーチストレート果汁を2.0%(w/v)(フルフラール濃度1.12ppb、ショ糖換算した糖濃度0.1%(w/v))、ピーチ香料を0.13%(w/v)、アルコール濃度95.3%(v/v)の原料用アルコールを9.8%(v/v)および炭酸水を71%(v/v)の濃度となるようにそれぞれ添加した。さらに、フルフラールを20ppb添加して、ピーチ果汁入り飲料サンプルとした。
(1-2)リンゴ果汁入り飲料サンプルの調製
純水に、アセスルファムカリウムを0.01%(w/v)、スクラロースを0.002%(w/v)、クエン酸を0.22%(w/v)、クエン酸ナトリウムを0.07%(w/v)、リンゴ酸フソウMを0.097%(w/v)、赤リンゴストレート果汁を2.0%(w/v)(フルフラール濃度1.14ppb、ショ糖換算した糖濃度0.1%(w/v))、リンゴ香料を0.22%(w/v)、アルコール濃度95.3%(v/v)の原料用アルコールを9.8%(v/v)および炭酸水を71%(v/v)の濃度となるようにそれぞれ添加した。さらに、フルフラールを20ppb添加して、リンゴ果汁入り飲料サンプルとした。
(1-3)パイナップル果汁入り飲料サンプルの調製
純水に、アセスルファムカリウムを0.01%(w/v)、スクラロースを0.004%(w/v)、クエン酸を0.144%(w/v)、クエン酸ナトリウムを0.07%(w/v)、リンゴ酸フソウMを0.132%(w/v)、パイナップルストレート果汁を2.0%(w/v)(フルフラール濃度検出限界以下、ショ糖換算した糖濃度0.2%(w/v))、パイナップル香料を0.12%(w/v)、アルコール濃度95.3%(v/v)の原料用アルコールを9.8%(v/v)および炭酸水を71%(v/v))の濃度となるようにそれぞれ添加した。さらに、フルフラールを20ppb添加して、パイナップル果汁入り飲料サンプルとした。
【0063】
各飲料サンプル中のクエン酸換算の酸の含有量(酸濃度)、ショ糖換算の糖の含有量(糖濃度)および糖酸比は、下記の表5に示すとおりであった。
【0064】
(2)飲料サンプルの評価
上記(1-1)~(1-3)で調製された各飲料サンプルを、官能評価試験に供した。官能評価試験では、実施例1における「試験区1」の飲料サンプルの評価スコアを「5」とし、良く訓練され、ビール、チューハイおよびカクテル系飲料の評価に熟練したパネル6名により、実施例1と同様の基準に基づく評価を行った。
【0065】
官能評価試験の結果を下記の表5に示す。なお、評価スコアは、6名のパネルのスコアの平均とした。
【表5】
【0066】
表5に示す結果から、アルコール飲料に使用されることが想定される果汁を含むアルコール飲料において、フルフラールを添加することによって、アルコールの辛みが低減されることが分かった。