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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-25
(45)【発行日】2023-11-02
(54)【発明の名称】吐出装置
(51)【国際特許分類】
   A47K 3/20 20060101AFI20231026BHJP
   B05B 1/12 20060101ALI20231026BHJP
   B05B 1/02 20060101ALI20231026BHJP
   E03C 1/086 20060101ALI20231026BHJP
   A61H 33/00 20060101ALN20231026BHJP
【FI】
A47K3/20
B05B1/12
B05B1/02
E03C1/086
A61H33/00 F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019048348
(22)【出願日】2019-03-15
(65)【公開番号】P2020146360
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】松本 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】竹内 立行
(72)【発明者】
【氏名】牧 道太郎
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 弘明
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-156202(JP,A)
【文献】特開2000-140710(JP,A)
【文献】特開2009-090203(JP,A)
【文献】特表2008-517762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/20
B05B 1/02、1/12
E03C 1/00-1/10
A61H 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出流路が内部に形成される装置本体を備え、
前記吐出流路は、前記吐出流路の下流側端部に形成される吐出孔を有し、上流側から流入した液体を前記吐出孔から外部に吐出可能であり、
前記吐出孔から直進流を吐出する第1吐出形態と、前記吐出孔から波状流を放射状に吐出する第2吐出形態とに切り替え可能な切替部材を備え、
前記切替部材は、前記吐出流路から退避する退避位置と、前記吐出流路の一部を塞ぐ塞ぎ位置との間を進退方向に進退することで、前記第1吐出形態と前記第2吐出形態に切り替え可能であり、
前記進退方向は、前記吐出孔の中心線方向と交差する方向であり、
記吐出流路は、
上流側から液体が流入する入口流路と、
前記入口流路から液体が流入する一対の中間流路と、
前記一対の中間流路のそれぞれから流入する液体が合流する合流室と、を有し、
前記吐出流路は、前記入口流路から前記一対の中間流路のそれぞれを介して前記合流室内に液体を流入させることで前記吐出孔から前記波状流を吐出可能であり、
前記吐出流路は、前記入口流路内にて下流側に流れる液体が衝突する第1衝突部と、前記合流室内にて下流側に流れる液体が衝突する第2衝突部とを備え、
前記切替部材は、前記第1衝突部及び前記第2衝突部のうちの一方の衝突部を構成する一の切替部材を含み、
前記一の切替部材によって前記第1吐出形態及び前記第2吐出形態のいずれに切り替えたときも、前記吐出流路内にて下流側に流れる液体は、前記第1衝突部及び前記第2衝突部のうちの他方の衝突部に衝突する吐出装置。
【請求項2】
吐出流路が内部に形成される装置本体を備え、
前記吐出流路は、前記吐出流路の下流側端部に形成される吐出孔を有し、上流側から流入した液体を前記吐出孔から外部に吐出可能であり、
前記吐出孔から直進流を吐出する第1吐出形態と、前記吐出孔から波状流を放射状に吐出する第2吐出形態とに切り替え可能な切替部材を備え、
前記切替部材は、前記吐出流路から退避する退避位置と、前記吐出流路の一部を塞ぐ塞ぎ位置との間を進退方向に進退することで、前記第1吐出形態と前記第2吐出形態に切り替え可能であり、
前記進退方向は、前記吐出孔の中心線方向と交差する方向であり、
記吐出流路は、前記吐出孔より上流側に設けられる主流路を備え、
前記切替部材には、前記主流路に対して進退可能に設けられる第1切替部材が含まれ、
前記第1切替部材が前記退避位置にあるときの前記主流路内の液体通流箇所は、前記第1切替部材が前記塞ぎ位置にあるときに前記第1切替部材が塞いでいた前記主流路の一部と、前記第1切替部材が前記塞ぎ位置にあるときの前記主流路内の液体通流箇所とを合わせたものとなる吐出装置。
【請求項3】
吐出流路が内部に形成される装置本体を備え、
前記吐出流路は、前記吐出流路の下流側端部に形成される吐出孔を有し、上流側から流入した液体を前記吐出孔から外部に吐出可能であり、
前記吐出孔から直進流を吐出する第1吐出形態と、前記吐出孔から波状流を放射状に吐出する第2吐出形態とに切り替え可能な切替部材を備え、
前記切替部材は、前記吐出流路から退避する退避位置と、前記吐出流路の一部を塞ぐ塞ぎ位置との間を進退方向に進退することで、前記第1吐出形態と前記第2吐出形態に切り替え可能であり、
前記進退方向は、前記吐出孔の中心線方向と交差する方向であり、
記装置本体の内部には、前記切替部材を進退可能に収容する収容孔が形成され、
前記切替部材は、前記吐出流路の一部を形成する大形部と、前記大形部から前記切替部材の退出方向に突き出る小形部と、を有し、
前記収容孔の内面と前記切替部材の間をシールするシール部材を備え、
前記シール部材は、前記収容孔の内面と前記小形部との間に配置される吐出装置。
【請求項4】
前記第1吐出形態及び前記第2吐出形態のいずれにあるときも共通する前記吐出孔から液流が吐出される請求項1から3のいずれかに記載の吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出形態を切り替え可能な吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吐出形態を切り替え可能な吐出装置が提案される。特許文献1には、第1吐出孔と第2吐出孔が形成された吐出装置が記載される。これは、第1吐出孔から直流状に湯水を吐出する吐出形態と、第2吐出孔からシャワー状の湯水を吐出する吐出形態とに切り替え可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-274634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、検討を進めた結果、次の新たな認識を得るに至った。特許文献1の開示技術では、いずれの吐出形態にあるときも吐出孔から直進流が吐出される。製品としての付加価値を高めるうえでは、新たな吐出形態に切り替え可能な吐出装置の提案が望まれる。
【0005】
本発明のある態様は、このような課題に鑑みてなされ、その目的の1つは、新たな吐出形態に切り替え可能な吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の課題を解決するための本発明の第1態様は吐出装置である。第1態様は、吐出流路が内部に形成される装置本体を備え、前記吐出流路は、前記吐出流路の下流側端部に形成される吐出孔を有し、上流側から流入した液体を前記吐出孔から外部に吐出可能であり、前記吐出孔から直進流を吐出する第1吐出形態と、前記吐出孔から波状流を放射状に吐出する第2吐出形態とに切り替え可能な切替部材を備える。
【0007】
第1態様によれば、吐出孔から直進流を吐出する第1吐出形態の他に、新たな吐出形態として、吐出孔から液状流を吐出する第2吐出形態に切り替え可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の吐出システムの構成図である。
図2】第1実施形態の吐出装置の要部の側面断面図である。
図3図2のA-A断面図である。
図4図3のB-B断面図である。
図5】第1実施形態の吐出装置の要部の平面図である。
図6】退避位置にある第1切替部材を示す図である。
図7】塞ぎ位置にある第1切替部材を示す図である。
図8】第1吐出形態にある吐出装置を示す図である。
図9】第1吐出形態にある吐出装置を示す他の図である。
図10】第1吐出形態にある吐出装置を示す更に他の図である。
図11】第2吐出形態にある吐出装置を示す図である。
図12図12(A)は、図8の直進流を模式的に示す正面断面図であり、図12(B)は、図10の直進流を模式的に示す正面断面図である。
図13図11の吐出装置を示す断面図である。
図14】第1流れ状態に関する説明図である。
図15】第2流れ状態に関する説明図である。
図16】第1実施形態の第1切替部材の斜視図である。
図17】第2実施形態の吐出装置の平面断面図である。
図18】第2実施形態の吐出装置の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態の一例を説明する。同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面では、説明の便宜のため、構成要素の一部を適宜省略したり、その寸法を適宜拡大、縮小する。図面は符号の向きに合わせて見るものとする。本明細書で言及する形状には、言及している形状に厳密に一致する形状のみでなく、寸法誤差や製造誤差等の誤差の分だけずれた形状も含まれる。
【0010】
図1を参照する。本実施形態の吐出装置10は水回り設備12に用いられる。本実施形態の水回り設備12は浴室設備である。水回り設備12は、吐出装置10の他に、吐出装置10から吐出される液体が内側に流れ込む槽体14とを備える。本実施形態の槽体14は浴槽である。本実施形態の吐出装置10は、槽体14内でユーザの身体、特に、座位姿勢にあるユーザの首や肩に当たるように液流W1を吐出する。これにより、ユーザにリラックス効果を付与できる。
【0011】
本実施形態の吐出装置10は吐出システム16に用いられる。吐出システム16は、液体W2を貯留する貯留槽18と、貯留槽18から吐出装置10の吐出流路30(後述する)に液体W2を供給する液体供給路20と、液体供給路20の途中に設けられるポンプ22と、ポンプ22を制御する制御装置24と、を備える。
【0012】
本実施形態の貯留槽18は、液体W2として水を貯留する槽体14である。吐出装置10には液体供給路20を通して槽体14内の水が供給されることになる。ポンプ22は、貯留槽18から吸引した液体W2を圧送することで、液体供給路20を通して吐出装置10に液体W2を供給する。
【0013】
図2図3を参照する。吐出装置10は、装置本体26を備える。装置本体26の内部には、液体供給路20から液体W2が供給される中継流路28と、液体供給路20から中継流路28を介して液体W2が供給される吐出流路30とが形成される。本実施形態では、液体供給路20から中継流路28に鉛直方向の下側から液体が供給され、中継流路28から吐出流路30に上向きに液体が供給される。
【0014】
本実施形態の装置本体26は、水回り設備12に設けられるベース32に固定される。本実施形態の吐出装置10は、不図示の固定構造を用いてベース32に固定される。この固定構造とは、たとえば、ねじ構造、爪と爪受け等である。本実施形態のベース32は槽体14の上面開口部の周縁部に設けられる槽体14のフランジ部が構成する。
【0015】
吐出流路30は、上流側から液体W2が流入する主流路34と、主流路34内の液体W2を外部に吐出する吐出孔36とを備える。主流路34は、吐出孔36より上流側に設けられる。主流路34の内面には中継流路28の出口となる流入口38が開口し、流入口38から主流路34内に液体が流入する。吐出孔36は、吐出流路30の下流側端部に形成される。吐出孔36は、装置本体26の外面部、詳しくは、装置本体26の前面部26aに開口する。
【0016】
以下、吐出流路30に関する構成を説明するとき、吐出孔36の中心線CL1に沿った中心線方向Xを前後方向Xともいう。また、前後方向Xと直交する水平方向を左右方向Yといい、前後方向X及び左右方向Yと直交する方向を高さ方向Zという。この前後方向Xの両側のうち、吐出孔36の吐出方向を前側といい、それとは反対側を後側という。
【0017】
図2図4を参照する。吐出流路30は、鉛直方向に対向する内上面40及び内下面42と、左右方向Yに対向する一対の内側面44とを備える。吐出流路30は、前後方向Xに直交する断面において矩形状をなす。この断面において、一対の内側面44間の寸法を吐出流路30の内幅寸法Waといい、内上面40と内下面42の間の寸法を吐出流路30の高さ寸法Haという。吐出流路30は、内幅寸法Waより高さ寸法Haが小さい矩形状をなす。吐出流路30の高さ寸法Haは、少なくとも主流路34を含む範囲で同じである。本実施形態では吐出孔36を含む範囲でも同じである。
【0018】
吐出流路30は、高さ方向Zから見て、吐出孔36の中心線CL1を対称軸として左右対称な形状を持つ。また、吐出流路30は、前後方向Xから見て、吐出孔36の中心線CL1に対して高さ方向Zに対称な形状を持つ。この条件は、吐出流路30の主流路34において、少なくとも満たされる。本実施形態では、吐出孔36においても満たされる。ここでの「高さ方向Zから見て」とは、図3の視点から見ることと同義である。
【0019】
図2図5を参照する。吐出装置10は、吐出装置10の吐出形態を切り替え可能な切替部材46、48を備える。本実施形態の切替部材46、48は、吐出流路30の体積の増減を伴い吐出流路30に対して方向Daに進退可能に設けられる。本実施形態の切替部材46,48の進退方向Daは、吐出孔36の中心線方向Xと交差する方向となり、詳しくは、高さ方向Zと平行な方向となる。切替部材46,48は、モータ等の駆動源や手動により進退方向Daに移動させられる。
【0020】
本実施形態の切替部材46、48には、主流路34に対して進退可能に設けられる第1切替部材46と、吐出孔36に対して進退可能に設けられる第2切替部材48とが含まれる。本実施形態の第2切替部材48は、左右方向Yに間を置いて複数設けられる。第1切替部材46と第2切替部材48は、多くの構成が共通するため、その共通する構成に関して、第1切替部材46を示す図面を参照しながら説明する。
【0021】
図6図7を参照する。図6は、図2の第1切替部材46の拡大図でもある。本実施形態の切替部材46、48は、吐出流路30から退避する退避位置Pa1と、吐出流路30の一部50を塞ぐ塞ぎ位置Pa2の間を進退可能である。切替部材46、48は、塞ぎ位置Pa2にあるとき、退避位置Pa1にあるときに切替部材46、48に対して進退方向Daに重なる位置にある吐出流路30の一部50を塞ぐ。切替部材46、48は、退避位置Pa1にあるとき、吐出流路30の一部50を開放する。
【0022】
装置本体26の内部には、切替部材46、48を進退可能に収容する収容孔52が形成される。収容孔52は、複数の切替部材46、48のそれぞれに対応して個別に設けられる。収容孔52は、切替部材46、48との接触を伴い切替部材46、48の進退方向Daでの動きをガイド可能である。本実施形態の収容孔52は、吐出流路30の内上面40に開口する。これにより、吐出流路30の内下面42や内側面44に収容孔52が開口するより、吐出流路30内から収容孔52を通して液体W2を漏れ難くできる。
【0023】
図8図11を参照する。図8では、各切替部材46、48が退避位置Pa1にある状態を示す。図9では、第1切替部材46が塞ぎ位置Pa2にあり、第2切替部材48が退避位置Pa1にある状態を示す。図10では、第1切替部材46が退避位置Pa1にあり、第2切替部材48が塞ぎ位置Pa2にある状態を示す。図11では、各切替部材46、48が塞ぎ位置Pa2にある状態を示す。
【0024】
第1切替部材46は、主流路34に対して進退することで、主流路34の形状を変化させることができる。詳しくは、第1切替部材46は、塞ぎ位置Pa2にあるとき(図9参照)、退避位置Pa1にあるときよりも(図8参照)、主流路34内で液体が流通可能な箇所の内幅寸法を狭めるように主流路34の形状を変化させる。
【0025】
第2切替部材48は、吐出流路30に対して進退することで、吐出孔36の形状を変化させることができる。詳しくは、第2切替部材48は、塞ぎ位置Pa2にあるとき(図10参照)、退避位置Pa1にあるときよりも(図8参照)、吐出孔36の内幅寸法を狭めるように吐出孔36の形状を変化させる。第2切替部材48が塞ぎ位置Pa2にあるとき、本実施形態の吐出孔36は、前後方向Xで前側に向かうにつれて内幅寸法が連続的に広がるように形成される。
【0026】
図8図11の状態にあるときの吐出装置10の動作を説明する。主流路34内には上流側となる中継流路28から流入口38を通して液体が流入する。主流路34内に流入した液体W2は、その流入箇所から拡散しつつ前後方向Xで前側に向けて流れる。この過程で主流路34内には液体W2が溜められる。主流路34内に溜められる液体W2は吐出孔36から外部に吐出される。
【0027】
ここで、図8図10の状態にあるとき、主流路34内では、吐出孔36から外部に吐出される液流の進行方向を左右方向Yに揺動させるための流れ(後述する)が形成されない。この結果、吐出流路30は、吐出孔36から直進流W3を外部に吐出する。この直進流W3とは、吐出孔36を通り抜けた直後の液流W1の進行方向が時間的に一定となる液流をいう。ここでの「進行方向が時間的に一定」とは、一定の流量の液体を吐出流路30に供給したとき、吐出孔36を通り抜けて外部に吐出されようとする液体の進行方向が時間的にほとんど変化しないことを意味する。
【0028】
一方、図11の状態にあるとき、主流路34内では、吐出孔36から外部に吐出される液流の進行方向を左右方向Yに揺動させるための流れ(後述する)が形成される。この結果、吐出流路30は、吐出孔36から波状の液流(以下、波状流W4ともいう)を放射状に外部に吐出する。ここでの「波状」とは、吐出孔36の中心線方向Xで液流W1の進行方向に向かうにつれて、その中心線方向Xと直交する水平方向Yに周期的にうねる形状をいう。この「波状」には、物理的に厳密に波としての形状を満たす形状の他に、その形状に似た形状も含まれる。また、ここでの「放射状」とは、波状流W4の進行方向に向かうにつれて波状流W4がなす波状形状のうねる方向Yに広がる形状をいう。図11では波状流が通過する範囲S1を示す。この波状流W4は、吐出孔36を通り抜けた直後の液流W1の進行方向が左右方向Yに揺動するように時間的に変化する液流と捉えられる。
【0029】
このように、第1切替部材46、第2切替部材48の何れかが退避位置Pa1にあるとき、吐出孔36が直進流W3を吐出する第1吐出形態となる。また、第1切替部材46、第2切替部材48の両方が塞ぎ位置Pa2にあるとき、吐出孔36が波状流W4を放射状に吐出する第2吐出形態となる。第1吐出形態及び第2吐出形態のいずれにあるときも、装置本体26の向きを変えることなく、共通する吐出孔36から液流W1が吐出される。第1切替部材46は、主流路34の形状を変化させることにより、第1吐出形態と第2吐出形態に切り替え可能といえる。また、第2切替部材48は、吐出孔36の形状を変化させることにより、第1吐出形態と第2吐出形態に切り替え可能といえる。
【0030】
このように、本実施形態の切替部材46、48は、吐出孔36から直進流W3を吐出する第1吐出形態の他に、新たな吐出形態として、吐出孔36から波状流W4を吐出する第2吐出形態に切り替え可能である。この第2吐出形態に切り替えることで、第1吐出形態より広範囲に液体を届かせ易くなる。
【0031】
いずれの吐出形態にあるときも共通する吐出孔36から液流が吐出される。これにより、吐出形態の切り替え前後で共通する吐出孔36に液体を流し続けることができ、その吐出孔36に汚れを溜め難くできる。
【0032】
本実施形態の切替部材46、48は、吐出流路30から退避する退避位置Pa1と、吐出流路30の一部50を塞ぐ塞ぎ位置Pa2との間を進退することで、吐出孔36の吐出形態を切り替え可能である。よって、切替部材46、48が退避位置Pa1にある場合、切替部材46、48が塞ぎ位置Pa2にある場合と比べ、切替部材46、48が塞いでいた吐出流路30の一部50の分だけ、吐出流路30の前後方向Xに直交する流路断面積を大きくできる。これに伴い、吐出孔36から大流量の液体を吐出し易くできる。
【0033】
なお、主流路34内の液体流通箇所は、第1切替部材46が進退する前後において、第1切替部材46が塞ぐ吐出流路30の一部50の他は同じとなる。これは、第1切替部材46が退避位置Pa1にあるときの主流路34内の液体流通箇所(図10参照)は、第1切替部材46が開放する吐出流路30の一部50の他は、第1切替部材46が塞ぎ位置Pa2にあるときの主流路34内の液体流通箇所(図11参照)と同じになることを意味する。第1切替部材46が退避位置Pa1にあるとき、第1切替部材46が開放する吐出流路30の一部50も液体流通箇所となる。
【0034】
これにより、第1切替部材46が進退する前後で主流路34内の広い範囲で液体を流し続けることができ、その広い範囲で汚れを溜めにくくできる。
【0035】
この条件は、複数の切替部材46、48を吐出装置10が備える場合、他の切替部材48が退避位置Pa1、塞ぎ位置Pa2の何れかにある場合に満たされていればよい。本実施形態では、第2切替部材48が退避位置Pa1にある場合にこの条件を満たし(図10図11参照)、かつ、第2切替部材48が塞ぎ位置Pa2にある場合にもこの条件を満たす例を示す(図8図9参照)。この条件は、たとえば、第2切替部材48が退避位置Pa1にある場合には満たされず、第2切替部材48が塞ぎ位置Pa2にある場合にのみ満たされてもよいということである
【0036】
次に、第1吐出形態に関する他の特徴を説明する。
【0037】
図8図9の状態にあるとき、吐出孔36の内幅寸法Wbは、主流路34内の液体の流れを絞ることなく吐出孔36に流入させることができる大きさに設定される。図10の状態にあるとき、吐出孔36の内幅寸法Wbは、主流路34内の液体の流れを絞ることができる大きさに設定される。なお、図11の状態にあるときも、吐出孔36の内幅寸法Wbは、図10の状態にあるときと同じ大きさとなる。
【0038】
図8図10図12を参照する。図12(A)は、図8の直進流W3を示す正面断面図であり、図12(B)は、図10の直進流W3を示す正面断面図である。各図では、吐出孔36を通り抜けた直後の直進流W3の断面形状と吐出孔36の形状を示す。
【0039】
吐出孔36は、第1吐出形態にあるとき、吐出孔36の内幅寸法Wbに応じた外幅寸法Wdの直進流W3を吐出する。図8の状態にあるとき、図12(A)に示すように、吐出孔36の内幅寸法Wbが大きくなり、それに応じて直進流W3の外幅寸法Wdが大きくなる。図10の状態にあるとき、図12(B)に示すように、吐出孔36の内幅寸法Wbが小さくなり、それに応じて直進流W3の外幅寸法Wdが小さくなる。また、図8の例では、図12(A)に示すように、直進流W3は、高さ寸法Hbより外幅寸法Wdが大きい膜状をなす。ここでの外幅寸法Wd、高さ寸法Hbとは、前後方向Xから見て、吐出孔36を通り抜けた直後の液流W1の左右方向Yに沿った寸法、高さ方向Zに沿った寸法をいう。ここでの「前後方向Xから見て」とは、図12の視点から見ることと同義である。
【0040】
このように、第2切替部材48は、吐出流路30に対して進退することで、第1吐出形態にあるときに吐出孔36から吐出される液流の形状を調整可能である。これにより、ユーザの好みに応じた液流の形状に調整できる。
【0041】
図9の状態にあるとき、図8の状態にあるときと比べ、第1切替部材46により主流路34内で液体が流通可能な箇所の内幅寸法が狭められる。この結果、図9の状態にあるとき、図8の状態にあるときと比べ、吐出孔36からは少ない流量の液流W1が吐出される。このように、第1切替部材46は、第2切替部材48が退避位置Pa1にあるとき、主流路34に対して進退することで、吐出孔36から吐出される液流W1の流量を調整可能である。これにより、ユーザの好みに応じた液流の流量に調整できる。
【0042】
次に、第2吐出形態の詳細を説明する。
【0043】
図13を参照する。吐出流路30は、塞ぎ位置Pa2にある各切替部材46、48と装置本体26によって、次を備えるように構成される。詳しくは、吐出流路30は、上流側から液体W2が流入する入口流路54と、入口流路54から液体W2が流入する一対の中間流路56L、56Rとを備える。また、吐出流路30は、一対の中間流路56L、56Rのそれぞれから流入する液体W2が合流する合流室58と、合流室58内の液体W2を外部に吐出する吐出孔36と、を備える。入口流路54、中間流路56L、56R、合流室58は主流路34を構成する。
【0044】
入口流路54は、前後方向Xで吐出流路30の後側の部分に設けられ、合流室58は入口流路54より前後方向Xの前側に設けられる。入口流路54の内面には前述の流入口38が開口している。
【0045】
吐出流路30には、入口流路54内にて前後方向Xで前側(下流側)に流れる液体W2が衝突する第1衝突部60が設けられる。本実施形態の第1衝突部60は、入口流路54と合流室58を前後方向Xに隔てる壁状をなす。
【0046】
一対の中間流路56L、56Rは、吐出流路30の第1衝突部60に対して左右方向Yの両側に設けられる。一対の中間流路56L、56Rには、左右方向Yの左側に設けられる左側中間流路56Lと、左右方向Yの右側に設けられる右側中間流路56Rとが含まれる。本実施形態の中間流路56L、56Rは入口流路54内から流入する液体W2を合流室58に噴射可能な形状である。本実施形態の中間流路56L、56Rの中心軸線CL3は、高さ方向Zから見て、吐出孔36の中心線CL1を左右方向Yに横切るように設けられる。
【0047】
吐出流路30には、合流室58内にて前後方向Xで前側(下流側)に流れる液体W2が衝突する第2衝突部62L、62Rが設けられる。本実施形態の第2衝突部62L、62Rは、合流室58と外部空間を隔てる壁状をなし、合流室58の下流側(前側)に位置する下流側面を構成する。第2衝突部62L、62Rは、一対の中間流路56L、56Rのそれぞれに対応して設けられる。本実施形態の第2衝突部62L、62Rには、左側中間流路56Lに対応する右側第2衝突部62Rと、右側中間流路56Rに対応する左側第2衝突部62Lとが含まれる。中間流路56L、56Rを通り抜けた流れ(噴流)は、その中間流路56L、56Rに対応する第2衝突部62L、62Rに衝突可能である。本実施形態の第2衝突部62L、62Rは、高さ方向Zから見て、吐出孔36の中心線CL1に対して対応する中間流路56L、56Rとは左右方向Yで反対側に設けられる。
【0048】
本実施形態の合流室58には、一対の第2衝突部62L、62Rのそれぞれに衝突した液体W2の噴流を前後方向Xで吐出孔36とは反対側(後側)に折り返すように誘導する一対の誘導面64L、64Rが設けられる。一対の誘導面64L、64Rには、右側第2衝突部62Rに対応する右側誘導面64Rと、左側第2衝突部62Lに対応する左側誘導面64Lとが含まれる。各誘導面64L、64Rは、合流室58内において一対の内側面44のそれぞれに設けられる。
【0049】
第1切替部材46は、塞ぎ位置Pa2にあるとき、前述の第1衝突部60を構成する。この第1衝突部60を構成する第1切替部材46は、入口流路54、中間流路56L、56R及び合流室58の一部を形成している。また、第2切替部材48は、塞ぎ位置Pa2にあるとき、前述の第2衝突部62L、62Rを構成する。この第2衝突部62L、62Rを構成する第2切替部材48は、吐出孔36や合流室58の一部を形成している。
【0050】
第2吐出形態にあるときの吐出装置10の動作を説明する。図11を参照する。本図や図14図15では、吐出流路30内での主な液体の流れ方向に矢印を付して示す。主流路34の入口流路54内には上流側となる中継流路28から流入口38を通して液体W2が流入する。入口流路54内に流入した液体W2は、その流入箇所から拡散しつつ前後方向Xで前側に向けて流れる。この過程で入口流路54内には液体W2が溜められる。
【0051】
入口流路54内で前側に流れる液体W2の一部は第1衝突部60に衝突することで左右方向Yに分かれたうえで一対の中間流路56L、56R内に流入する液流Faを形成する。入口流路54内の液体W2は一対の中間流路56L、56Rを介して合流室58内に流入する。この過程で合流室58内には液体W2が溜められる。
【0052】
図14図15を参照する。合流室58内には一対の中間流路56L、56Rのそれぞれから液体の噴流FbL、FbRが噴射される。本実施形態では、一対の中間流路56L、56Rのそれぞれから噴射される噴流FbL、FbRが合流室58内で衝突する。以下、左側中間流路56Lが噴射する噴流を左側噴流FbLといい、右側中間流路56Rが噴射する噴流を右側噴流FbRという。
【0053】
これら噴流FbL、FbRは、流体のランダム性に起因する揺らぎの影響を受けて、いずれか一方が他方より勢いの強い支配的な流れとなる。たとえば、図14の例では、右側噴流FbRが左側噴流FbLより勢いの強い支配的な流れとなっている第1流れ状態を示す。
【0054】
図14に示すように、この支配的な右側噴流FbRは、合流室58の下流側面(左側第2衝突部62L)に衝突するまで勢いを持って流れ易い。一方で、左側噴流FbLは、支配的な右側噴流FbRと衝突することで流れを阻害され(範囲Sa参照)、合流室58の下流側面(右側第2衝突部62R)に衝突するまで勢いを持って流れ難い。合流室58の下流側面に衝突した右側噴流FbRは、その左側誘導面64Lにより前後方向Xで折り返すように誘導される液流Fcを形成し、左側噴流FbLと合流する(範囲Sb参照)。この結果、左側噴流FbLの勢いが増幅され、図15に示すように、左側噴流FbLが右側噴流FbRより勢いの強い支配的な流れとなる第2流れ状態に切り替わる。
【0055】
支配的な左側噴流FbLは、合流室58の下流側面(右側第2衝突部62R)に衝突するまで勢いを持って流れ易い。一方で、右側噴流FbRは、支配的な左側噴流FbLと衝突することで流れを阻害され(範囲Sc参照)、合流室58の下流側面(左側第2衝突部62L)に衝突するまで勢いを持って流れ難い。合流室58の下流側面に衝突した左側噴流FbLは、その右側誘導面64Rにより前後方向Xで折り返すように誘導される液流Fdを形成し、右側噴流FbRと合流する(範囲Sd参照)。この結果、右側噴流FbRの勢いが増幅され、図14に示すように、右側噴流FbRが左側噴流FbLより勢いの強い支配的な流れとなる第1流れ状態に切り替わる。
【0056】
以上の結果、流体のランダム性に起因する揺らぎの影響を受けて、右側噴流FbRが支配的な流れになる第1流れ状態と、左側噴流FbLが支配的な流れになる第2流れ状態とが周期的に切り替わる。図14に示すように、第1流れ状態にあるとき、支配的な右側噴流FbRの一部は、合流室58の下流側面に衝突せずに吐出孔36を通り抜ける液流Feを形成する。この液流Feは、前後方向Xで前側に向かうとともに左右方向Yで左側に向かう速度ベクトルを持つ。図15に示すように、第2流れ状態にあるとき、支配的な左側噴流FbLの一部は、合流室58の下流側面に衝突せずに吐出孔36を通り抜ける液流Ffを形成する。この液流Ffは、前後方向Xで前側に向かうとともに左右方向Yで右側に向かう速度ベクトルを持つ。
【0057】
第1流れ状態と第2流れ状態が周期的に切り替わることで、吐出孔36を通り抜ける液流Fe、Ffの左右方向Yでの速度ベクトルの向きが周期的に切り替わる。この過程で、この液流Fe、Ffの左右方向Yでの速度ベクトルは、その向きの切り替えを伴いベクトル量が周期的に増減する。この結果、吐出孔36から外部に吐出される液流W1の進行方向が左右方向Yに揺動するように時間的に変化し、吐出孔36から波状流W4が放射状に吐出される(図11も参照)。
【0058】
このように、吐出流路30は、入口流路54から一対の中間流路56L、56Rのそれぞれを介して合流室58内に液体W2を流入させることで吐出孔36から波状流W4を放射状に吐出可能である。このように波状流W4を吐出するうえで、主流路34内では、吐出孔36から外部に吐出される液体の進行方向を時間的に変化させるための流れとして、一対の噴流FbL、FbRや液流Fc、Fdが形成される。
【0059】
次に、吐出装置10の他の特徴を説明する。
【0060】
図6図7図16を参照する。切替部材46、48は、切替部材46、48の進退方向Daのうちの退出方向Da1を向く退出方向面70を備える。退出方向面70は、切替部材46、48の進退方向Daの可動範囲での位置によらず、吐出流路30内での収容孔52の開口箇所より収容孔52の奥側に配置される。これにより、切替部材46、48を退出方向Da1に動かすとき、切替部材46、48の退出方向面70に吐出流路30内を流れる液体W2の動圧が作用しなくなり、切替部材46、48を動かし易くなる。
【0061】
装置本体26は、吐出流路30を形成する本体流路面72を有する。切替部材46、48は、進退方向Daのうち進入方向Da2を向く先端面74を有する(図6参照)。本実施形態の切替部材46、48の先端面74は、切替部材46、48が退避位置Pa1にあるとき、装置本体26の本体流路面72と面一となる。よって、切替部材46、48が退避位置Pa1にあるとき、吐出流路30内に切替部材46、48が出っ張らず、吐出流路30内を流れる液体の圧力損失を軽減できる。これに伴い、切替部材46、48が退避位置Pa1にあるとき、吐出孔36から大流量の液体を吐出し易くなる。
【0062】
切替部材46、48は、吐出流路30の一部を形成する大形部76と、大形部76から退出方向Da1に突き出る小形部78とを有する。小形部78は、切替部材46、48の進退方向Daから見て、大形部76の外形輪郭の内側に収まる形状である(図5も参照)。小形部78は、大形部76より周長が小さくなるように構成される。ここでの周長とは、切替部材46、48の進退方向Daから見て、言及している箇所の進退方向軸周りの周長をいう。
【0063】
収容孔52は、吐出流路30の内面に開口する大孔部52aと、大孔部52aより収容孔52の奥側に設けられる小孔部52bとを有する。切替部材46、48が退避位置Pa1にあるとき、大孔部52aには切替部材46、48の大形部76が収容され、小孔部52bには切替部材46、48の小形部78が収容される。
【0064】
吐出装置10は、収容孔52の内面と切替部材46、48との間をシールするシール部材80を備える。シール部材80は、Oリング等の弾性体である。シール部材80は、吐出流路30内の液体W2の外部への漏れを規制する役割を持つ。
【0065】
シール部材80は、収容孔52の小孔部52bの内面と切替部材46、48の小形部78との間に配置される。本実施形態では、収容孔52の小孔部52bに装着溝82が形成され、その装着溝82にシール部材80が装着される。これにより、収容孔52の内面と切替部材46、48の大形部76との間にシール部材80を配置するより、シール部材80の小型化を図れる。これに伴い、切替部材46、48が進退するときにシール部材80から付与される抵抗力を軽減でき、切替部材46、48を動かし易くなる。
【0066】
(第2実施形態)
第1実施形態のように、一対の中間流路56L、56Rから合流室58内に流入する複数の液体の流れを利用して波状流W4を吐出するタイプを合流タイプという。第1実施形態では、このような合流タイプの吐出流路30として、一対の中間流路56L、56Rから合流室58内に流入する一対の噴流FbL、FbRを衝突させる噴流タイプの吐出流路30を説明した。本実施形態では、合流タイプの吐出流路30として、カルマン渦を利用するカルマン渦タイプの吐出流路30を説明する。
【0067】
図17を参照する。本図は、図13と同じ視点から第2実施形態の吐出装置10を見た断面図である。吐出流路30は、第1実施形態と同様、塞ぎ位置Pa2にある各切替部材46、48と装置本体26によって、次を備えるように構成される。詳しくは、吐出流路30は、入口流路54と、一対の中間流路56L、56Rと、合流室58と、吐出孔36と、を備える。本実施形態の吐出流路30も、図示はしないが、前後方向Xに直交する断面において矩形状をなす。
【0068】
吐出流路30には、入口流路54内にて前後方向Xで前側(下流側)に流れる液体W2が衝突する第1衝突部60が設けられる。また、吐出流路30には、合流室58内にて前後方向Xで前側(下流側)に流れる液体W2が衝突する第2衝突部62L、62Rが設けられる。本実施形態の左側第2衝突部62Lは、左側中間流路56Lに対応して設けられ、右側第2衝突部62Rは、右側中間流路56Rに対応して設けられる。中間流路56L、56Rを通り抜けた流れ(後述のカルマン渦)は、その中間流路56L、56Rに対応する第2衝突部62L、62Rに衝突可能である。
【0069】
以上の吐出装置10の動作を説明する。
【0070】
図18を参照する。入口流路54内には中継流路28から流入口28aを通して液体W2が流入する。入口流路54内に流入した液体W2は、その流入箇所から拡散しつつ前後方向Xで前側に向けて流れる。入口流路54内で前側に流れる液体W2の一部は第1衝突部60に衝突することで、一対の中間流路56L、56Rを交互に通り抜けるカルマン渦100を形成する。この結果、合流室58内には、複数のカルマン渦100からなる左右で一対の渦列102L、102Rが形成される。
【0071】
カルマン渦100は、合流室58内で成長しながら合流室58の下流側面(第2衝突部62L、62R)に衝突し、その衝突により流れ方向を変えつつ吐出孔36を通り抜ける液流を形成する。左側のカルマン渦100は、吐出孔36を通り抜ける液流として、前後方向Xで前側に向かうとともに左右方向Yで右側に向かう速度ベクトルを持つ液流を形成する。右側のカルマン渦100は、吐出孔36を通り抜ける液流として、前後方向Xで前側に向かうとともに左右方向Yで左側に向かう速度ベクトルを持つ液流を形成する。
【0072】
このように、一対の渦列102L、102Rそれぞれのカルマン渦100が形成する液流の左右方向Yでの速度ベクトルの向きは周期的に切り替わる。この結果、吐出孔36から外部に吐出される液流の進行方向が左右方向Yに揺動するように時間的に変化し、吐出孔36から波状流W4が吐出される。このように波状流W4を吐出するうえで、主流路34内では、吐出孔36から外部に吐出される液体の進行方向を時間的に変化させるための流れとして、一対の渦列102L、102Rが形成される。
【0073】
このカルマン渦タイプの吐出流路30でも、第1衝突部60が第1切替部材46を構成し、第2衝突部62L、62Rが第2切替部材48を構成してもよい。
【0074】
このように、吐出流路30は、上流側から流入した液体W2を吐出孔36から波状流W4として放射状に吐出可能であればよい。また、吐出流路30の具体例は合流タイプに限られない。また、合流タイプの吐出流路30において、第1衝突部60及び第2衝突部62L、62Rの何れか一方が装置本体26が構成し、それらの他方が切替部材46、48が構成していてもよい。
【0075】
各構成要素の他の変形例を説明する。
【0076】
水回り設備12の具体例は特に限定されず、たとえば、キッチン設備、洗面設備、トイレ設備等でもよい。水回り設備12の槽体14の具体例は特に限定されず、たとえば、キッチンシンク、手洗シンク等のシンクでもよい。水回り設備12のベース32の具体例は特に限定されず、たとえば、室内空間を区画する壁部でもよい。
【0077】
吐出システム16の貯留槽18は、水回り設備12の槽体14に限定されず、たとえば、槽体14とは別に設けられていてもよい。
【0078】
吐出装置10の具体例は特に限定されず、たとえば、シャワー装置、水栓装置等でもよい。吐出装置10が吐出する液体W2は水に限定されず、たとえば、洗剤を含有する洗剤液でもよい。
【0079】
吐出流路30内での流入口28aの開口位置は特に限定されない。流入口28aは、たとえば、吐出流路30の内側面44や奥底面に開口してもよい。この奥底面は、吐出流路30内の前後方向Xで最も後側に設けられる。
【0080】
吐出装置10は、第1切替部材46及び第2切替部材48の一方のみを備えていてもよい。
【0081】
切替部材46、48の進退方向Daは特に限られない。たとえば、切替部材46、48の進退方向Daは前後方向Xと平行でもよい。
【0082】
切替部材46、48は、第1吐出形態と第2吐出形態のいずれにあるときも共通する吐出孔36から液流が吐出される例を説明した。この他にも、第1吐出形態にあるときは第1吐出孔から直進流W3を吐出し、第2吐出形態にあるときは第1吐出孔とは別の第2吐出孔から波状流W4を吐出してもよい。これは、たとえば、第1吐出孔と第2吐出孔に対応する個別の主流を吐出流路30に設け、液体供給先となる主流路を第1切替部材46により切り替える場合を想定している。第1切替部材46が進退する前後で主流路34内での液体流通箇所が異なっていてもよいとも捉えられる。
【0083】
切替部材46、48は、吐出流路30に対して進退することで、吐出孔36の吐出形態を切り替え可能である例を説明した。吐出孔36の吐出形態を切り替えるうえで、切替部材46、48の動き方は特に限られない。たとえば、切替部材46、48は、吐出流路30の一部を開閉することで、吐出孔36の吐出形態を切り替えてもよい。
【0084】
切替部材46、48は、吐出流路30に対して進退可能に設けるうえで、その具体的な構造は特に限定されない。切替部材46、48は大形部76と小形部78を備えなくともよい。また、収容孔52の内面と切替部材46、48の大形部76の間にシール部材80が配置されてもよい。
【0085】
切替部材46、48の退出方向面70は、吐出流路30内に配置されていてもよい。切替部材46、48は、退避位置Pa1にあるとき、装置本体26の本体流路面72と面一になっていなくともよい。
【0086】
第2切替部材48は、吐出孔36に対して進退することで、液流の外幅寸法Wdを調整可能である例を説明した。第2切替部材48は、吐出孔36に対して進退することで、液流の形状を調整可能であればよい。たとえば、第2切替部材48は、吐出孔36の左右方向Yの全長に亘る範囲で進退可能な構成とすることで、液流の高さ寸法Hbを調整可能でもよい。
【0087】
収容孔52の開口位置は特に限定されない。収容孔52は、たとえば、吐出流路30の内下面42、内側面44、奥底面に開口していてもよい。
【0088】
以上、本発明の実施形態や変形例について詳細に説明した。前述した実施形態や変形例は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施形態や変形例の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。前述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態」との表記を付して強調しているが、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。また、以上の構成要素の任意の組み合わせも、本発明の態様として有効である。
【0089】
以上の実施形態、変形例により具体化される発明を一般化すると、以下の技術的思想が導かれる。以下、発明が解決しようとする課題に記載の態様を用いて説明する。
【0090】
第2態様の吐出装置は、第1態様において、前記第1吐出形態及び前記第2吐出形態のいずれにあるときも共通する前記吐出孔から液流が吐出されてもよい。この態様によれば、吐出形態の切り替え前後で共通する吐出孔に液体を流し続けることができ、その吐出孔に汚れを溜め難くできる。
【0091】
第3態様の吐出装置は、第1または第2態様において、前記切替部材は、前記吐出流路に対して進退することで、前記第1吐出形態と前記第2吐出形態に切り替え可能であってもよい。
【0092】
第4態様の吐出装置は、第3態様において、前記切替部材は、前記吐出流路から退避する退避位置と、前記吐出流路の一部を塞ぐ塞ぎ位置との間を進退することで、前記第1吐出形態と前記第2吐出形態に切り替え可能であってもよい。この態様によれば、切替部材が退避位置にある場合、切替部材が塞ぎ位置にある場合と比べ、吐出流路の吐出孔から大流量の液体を吐出し易くなる。
【0093】
第5態様の吐出装置は、第4態様において、前記吐出流路は、上流側から液体が流入する入口流路と、前記入口流路から液体が流入する一対の中間流路と、前記一対の中間流路のそれぞれから流入する液体が合流する合流室と、を有し、前記吐出流路は、前記入口流路から前記一対の中間流路のそれぞれを介して前記合流室内に液体を流入させることで前記吐出孔から前記波状流を吐出可能であり、前記切替部材は、前記塞ぎ位置にあるとき、前記入口流路内にて下流側に流れる液体が衝突する第1衝突部、又は、前記合流室内にて下流側に流れる液体が衝突する第2衝突部を構成してもよい。
【0094】
第6態様の吐出装置は、第4または第5態様において、前記吐出流路は、前記吐出孔より上流側に設けられる主流路を備え、前記切替部材には、前記主流路に対して進退可能に設けられる第1切替部材が含まれ、前記主流路内の液体流通箇所は、前記第1切替部材が進退する前後において、前記第1切替部材が塞ぐ前記吐出流路の一部の他は同じとなってもよい。この態様によれば、第1切替部材が進退する前後で主流路内の広い範囲で液体を流し続けることができ、その広い範囲で汚れを溜めにくくできる。
【0095】
第7態様の吐出装置は、第3から第6態様において、前記装置本体の内部には、前記切替部材を進退可能に収容する収容孔が形成され、前記切替部材は、前記吐出流路の一部を形成する大形部と、前記大形部から前記切替部材の退出方向に突き出る小形部と、を有し、前記収容孔の内面と前記切替部材との間をシールするシール部材を備え、前記シール部材は、前記収容孔の内面と前記小形部との間に配置されてもよい。この態様によれば、収容孔の内面と切替部材の大形部との間にシール部材を配置するより、シール部材の小型化を図れる。これに伴い、切替部材が進退するときにシール部材から付与される抵抗力を軽減できる。
【符号の説明】
【0096】
10…吐出装置、26…装置本体、30…吐出流路、34…主流路、36…吐出孔、46…第1切替部材、48…第2切替部材、50…(吐出流路の)一部、52…収容孔、54…入口流路、56L、56R…中間流路、58…合流室、60…第1衝突部、62L,62R…第2衝突部、76…大形部、78…小形部、80…シール部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18