(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-25
(45)【発行日】2023-11-02
(54)【発明の名称】そろばんの計算能力判定システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/20 20120101AFI20231026BHJP
【FI】
G06Q50/20
(21)【出願番号】P 2019122572
(22)【出願日】2019-06-29
【審査請求日】2022-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】519203286
【氏名又は名称】宮本 丈裕
(74)【代理人】
【識別番号】100101845
【氏名又は名称】佐藤 明子
(72)【発明者】
【氏名】宮本 丈裕
【審査官】谷川 智秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-258730(JP,A)
【文献】特開2017-211497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生徒に出題される試験問題をレベル別・種類別に蓄積した試験問題情報記憶手段と、
種目別に、1つの計算問題をそろばんで計算する場合に計算を行わなければならない数字の量(これを以下「計算数字量」という)を、
1つの計算問題に含まれる数字の桁数の組み合わせに対応して蓄積した計算数字量情報記憶手段と、
試験を行った生徒の点数を、生徒別・試験問題別・種目別・
計算問題の桁数の組み合わせ別に蓄積する入力点数情報記憶手段と、
ユーザー端末からの試験問題選択を受信して、試験問題情報記憶手段から選択された試験問題を抽出してユーザー端末にダウンロード
させる試験問題ダウンロード手段と、
試験を行った生徒の点数を入力するため、ユーザー端末から送信される点数アップロード指示を受信して、
選択されていた試験問題に対応した点数入力用ファイルをユーザー端末に送信する点数入力用ファイル送信手段と、
ユーザー端末で入力された点数入力用ファイルを受信して入力点数情報記憶手段に保存する入力点数
保存手段と、
計算数字量情報記憶手段に記憶されている計算数字量情報と、入力点数情報記憶手段に記憶されている
計算問題の桁数の組み合わせ別の点数と、試験問題の制限時間とから、
桁数の組み合わせ別の点数に、それぞれ該当する桁数の組み合わせに対応する計算数字量を掛け合わせ、種目別に合計して制限時間で割ることによって、生徒別・試験問題別・種目別に計算速度を演算する計算速度演算手段と、
を備えた、そろばんの計算能力判定システム。
【請求項2】
演算した計算速度を生徒別・試験問題別・種目別に蓄積する計算速度演算結果情報記憶手段をさらに備え、
ユーザー端末からの指示を受信して、計算速度演算結果情報記憶手段に記憶されている計算速度演算結果情報から、生徒別・試験問題別・種目別の計算速度の証明書をユーザー端末に表示させる、請求項1に記載のそろばんの計算能力判定システム。
【請求項3】
計算数字量情報記憶手段に記憶される計算数字量は、1つの計算問題をそろばんで計算する場合の数字のうち、
当該数字の桁数が一桁の場合には0が出現せず、計算問題の数字の桁数が2桁以上の場合には、一桁目の数字には0が出現せず、2桁目以下は10分の1の確率で0が出現するとして、計算数字量を求める、請求項1に記載のそろばんの計算能力判定システム。
【請求項4】
各試験問題において
0の実際の出現率に基づいて計算数字量を修正する係数を、それぞれの試験問題に対応して蓄積する計算数字量修正値情報記憶手段をさらに備え、当該係数を使用して演算される計算速度を修正することができる、請求項1に記載のそろばんの計算能力判定システム。
【請求項5】
生徒に出題される試験問題をレベル別や種類別に蓄積した試験問題情報記憶手段と、
種目別に、1つの計算問題をそろばんで計算する場合に計算を行わなければならない数字の量(これを以下「計算数字量」という)を、
1つの計算問題に含まれる数字の桁数の組み合わせに対応して蓄積した計算数字量情報記憶手段と、
試験を行った生徒の点数と計算速度を、生徒別・試験問題別・種目別に蓄積する計算速度演算結果情報記憶手段と、
ユーザー端末からの試験問題選択を受信して、試験問題情報記憶手段から選択された試験問題を抽出してユーザー端末にダウンロード
させる試験問題ダウンロード手段と、
試験を行った生徒の点数を入力するため、ユーザー端末から送信されるユーザー端末からの点数アップロード指示を受信して、
表形式で入力した点数にファイルの各入力欄に設定された計算数字量を掛け合わせて制限時間で割ることによって計算速度を計算する計算手段を組みこんだ
選択されていた試験問題に対応した点数入力用ファイルをユーザー端末に送信する点数入力用ファイル送信手段と、
ユーザー端末で入力された点数入力用ファイルを受信して、入力点数と計算された計算速度を計算速度演算結果情報記憶手段に保存する
入力点数・計算速度保存手段と、
ユーザー端末からの指示を受信して、計算速度演算結果情報記憶手段に記憶されている計算速度演算結果情報から、生徒別・試験問題別・種目別の計算速度の証明書をユーザー端末に表示させる、計算速度演算結果表示手段と
を備えた、そろばんの計算能力判定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、客観的で統一された指標に基づいてそろばんの計算能力を判定する手段を提供するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
そろばんの能力については、全国珠算教育連盟(全珠連)、日本珠算連盟/日本商工会議所(日珠連)、全国珠算学校連盟(学連)等がそれぞれ実施している検定試験により、10級から十段までの20段階のレベルで、その実力の判定が行われている。近年は、検定試験を受ける選手のレベルの向上が著しく、十段合格者があまりにも多いため、その実力を判断するために、十段合格の実績のみでなく、主要な全国大会において何点を取れたか、またこれらの大会において入賞・優勝できたか、も判断の基準とされている。2018年には、二十段を上限とする検定試験も登場しており、そろばんの能力の判定基準について、いささか混乱が生じているのが実情である。
【0003】
出願される問題の難易度については、全国規模の珠算選手権大会に出場している選手が実際に計算を行ってみて、「〇〇の全国大会で100点を取れている生徒なら、この問題は200点を取れる」という漠然とした指標を出すぐらいしか、判定をすることができない。
【0004】
一方、問題に含まれる数字の量から、「1問あたり何秒で計算しなければならない」という指標を単純計算で算出して用いる場合もあるが、これは実力の判定に使用するというよりは、指導上・問題攻略上のテクニックの一つだと考えられる。
【0005】
なお、ネットワークを介してそろばんの計算問題を提供し、端末側で計算を行って、サーバ側に解答を送信し、正誤判定結果や、正解率や解答時間を提供するシステムに関して、下記の特許文献1及び特許文献2が存在する。
【0006】
特許文献1では、ユーザー(生徒)側の端末にプログラムをインストールさせて、ユーザーがスタートボタンをクリックすることにより問題の表示と解答時間の計測が開始され、一問解答を入力する毎に時間を計測し、最終問題まで解答が完了すると、正答率及び解答時間が集計され、これらの結果をサーバに送信して、サーバ側で情報分析及び成績リストを作成し、ユーザー側に送信するようにしている。
【0007】
特許文献2では、サーバ側からユーザー側端末に問題を送信し、ユーザー側で問題を再生して解答を入力し、解答がサーバ側に送信されると、サーバ側では解答の正誤を判定した上で、判定結果をユーザー側端末に送信する。また、複数のユーザーの判定結果に基づいてランキング情報をユーザー側端末に送信することもできる。
【0008】
特許文献1及び特許文献2に開示されているシステムは、主として、ユーザー個人の実力の向上を目的とするもので、成績リストやランキングが提供されるにしても、参加している他のユーザーとの相対的な成績の評価を示すにすぎない。
【0009】
一方、近年、そろばんの習得は、単に計算力の向上のみならず、集中力・記憶力の向上や、計数処理能力の向上など右脳の活性化も含めた脳のバランス良い発達に貢献するとして、注目を集めている。そのため、そろばんの能力に関する判定結果や大会における成績等が、高校・大学の推薦入試や入社のための書類審査における評価要素の一つとして多く用いられるようになっている。このように、そろばんの実力が進路や就職の場面で、重要なファクターとなっているにもかかわらず、従来からの団体に加え、現在新たな珠算連盟や協会が数多く設立され、各団体で用いられている実力の指標が、信用度の高いものもあれば、一定金額を納付することにより級段位の賞状が付与される等、信用度の高くないものもある、といった状況にあり、そろばんの実力指標について信頼を高めることが望まれる。また、信用性の高い団体によって主催される選手権大会であっても、出場する選手の実力によって、入賞難易度は大幅に変わってしまうという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2002-229436号公報
【文献】特開2007-256833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、大会出場者の実力や主催団体によって、成績や判定された実力が異なってしまう従来の実力指標を一元化し、その実力を可視化出来るシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によるそろばんの計算能力判定システムは、生徒に出題される試験問題をレベル別・種類別に蓄積した試験問題情報記憶手段と、種目別に、1つの計算問題をそろばんで計算する場合に計算を行わなければならない数字の量(これを以下「計算数字量」という)を、問題に含まれる数字の桁数の組み合わせに対応して蓄積した計算数字量情報記憶手段と、試験を行った生徒の点数を、生徒別・試験問題別・種目別に蓄積する入力点数情報記憶手段と、ユーザー端末からの試験問題選択を受信して、試験問題情報記憶手段から選択された試験問題を抽出してユーザー端末にダウンロードする試験問題ダウンロード手段と、試験を行った生徒の点数を入力するため、ユーザー端末から送信される点数アップロード指示を受信して、点数入力用ファイルをユーザー端末に送信する点数入力用ファイル送信手段と、ユーザー端末で入力された点数入力用ファイルを受信して入力点数情報記憶手段に保存する入力点数アップロード処理手段と、計算数字量情報記憶手段に記憶されている計算数字量情報と、入力点数情報記憶手段に記憶されている入力点数情報と、試験問題の制限時間とから、生徒別・試験問題別・種目別に計算速度を演算する計算速度演算手段と、を備えている。
【0013】
このそろばんの計算能力判定システムは、演算した計算速度を生徒別・試験問題別・種目別に蓄積する計算速度演算結果情報記憶手段をさらに備え、ユーザー端末からの指示を受信して、計算速度演算結果情報記憶手段に記憶されている計算速度演算結果情報から、生徒別・試験問題別・種目別の計算速度の証明書をユーザー端末に表示させることができる。
【0014】
また、上記のそろばんの計算能力判定システムが備える計算数字量情報記憶手段に記憶される計算数字量は、1つの計算問題をそろばんで計算する場合の数字のうち、0が出現する場合は計算する数字としてみなさないとして、計算問題に0が出現する確率を反映して求めた計算数字量とすることができる。
【0015】
さらに、上記のそろばんの計算能力判定システムは、各試験問題において実際に0が出現する確率を反映して計算数字量を修正する係数を、それぞれの試験問題に対応して蓄積する計算数字量修正値情報記憶手段をさらに備え、当該係数を使用して演算される計算速度を修正することができる。
【0016】
そろばんの計算能力判定システムの他の実施形態は、生徒に出題される試験問題をレベル別や種類別に蓄積した試験問題情報記憶手段と、種目別に、1つの計算問題をそろばんで計算する場合に計算を行わなければならない数字の量(これを以下「計算数字量」という)を、問題に含まれる数字の桁数の組み合わせに対応して蓄積した計算数字量情報記憶手段と、試験を行った生徒の点数と計算速度を、生徒別・試験問題別・種目別に蓄積する計算速度演算結果情報記憶手段と、ユーザー端末からの試験問題選択を受信して、試験問題情報記憶手段から選択された試験問題を抽出してユーザー端末にダウンロードする試験問題ダウンロード手段と、試験を行った生徒の点数を入力するため、ユーザー端末から送信されるユーザー端末からの点数アップロード指示を受信して、表形式で入力した点数からファイルの各入力欄に設定された計算数字量に基づいて計算速度を計算する計算手段を組みこんだ点数入力用ファイルをユーザー端末に送信する点数入力用ファイル送信手段と、ユーザー端末で入力された点数入力用ファイルを受信して、入力点数と計算された計算速度を計算速度演算結果情報記憶手段に保存する入力点数アップロード処理手段と、ユーザー端末からの指示を受信して、計算速度演算結果情報記憶手段に記憶されている計算速度演算結果情報から、生徒別・試験問題別・種目別の計算速度の証明書をユーザー端末に表示させる、計算速度演算結果表示手段とを備えている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、大会出場者の実力や主催団体によって成績や判定された実力が異なってしまう従来の実力指標を一元化し、その実力を可視化することにより、信頼度の高い実力指標として、推薦入試や会社の採用における正当な評価基準を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明によるシステムの概略構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明によるシステムが備えるサーバとユーザー端末との間で行われる操作や処理の流れを示す図である。
【
図3】本発明によるシステムをユーザーが利用するためのメニュー画面の一例を示す図である。
【
図6】みとりざんの試験問題の一例を示す図である。
【
図7】
図4に示した試験問題の点数をアップロードするための画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明によるそろばんの計算能力判定システム(以下、「本システム」という)を、そろばん教室において実施した形態の一例について説明する。従って、以下の説明で記載する「ユーザー」とは、そろばん教室で指導を行う指導者あるいは教室運営者、「生徒」とは、そろばん教室で指導を受ける者を指す。なお、本明細書では、便宜上、生徒のそろばん能力を判定するために実施する模擬試験・大会・検定試験で生徒に出題する問題1セットを「試験問題」、単に生徒がそろばんで計算する問題を指すときは「計算問題」という。
【0020】
図1は、本システムの実施形態の全体構成を示す図である。本システムは、インターネットを含むネットワーク接続環境及び表示機能を備えた端末装置4(スマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータを含む)がネットワークを介して接続可能なシステムサーバ2とシステムサーバ2がアクセス可能なデータベースサーバ3とで構成されている。
【0021】
システムサーバ2は、ウェブサーバ等として機能し、端末装置4からのアクセス又は要求や指示を受けて、a~hの参照番号で示す各機能、すなわち、メニュー表示機能a、ログイン管理機能b、試験問題ダウンロード機能c、点数入力用ファイル送信機能d、入力点数アップロード処理機能e、計算速度演算機能f、計算速度演算結果表示機能g、計算数字量修正機能h、の各機能を実行する。システムサーバ2は、これらの機能の実行に関する処理を、コンピュータプログラム及びコンピュータハードウェアの連携により、データベースサーバ3に対するデータの生成・登録・更新や検索・抽出・呼出し等の処理を行いながら実行する。
【0022】
データベースサーバ3は、システムサーバ2が実行する各機能の実行・処理に必要なデータを記憶し管理し提供するために、利用者情報記憶部31、表示画面情報記憶部32、試験問題情報記憶部33、計算数字量情報記憶部34、計算数字量修正値情報記憶部35、入力点数情報記憶部36、計算速度演算結果情報記憶部37を備えている。
【0023】
なお、
図1では、データベースサーバ3がシステムサーバ2の外側に存在しているが、これは構成を機能的に示しているものであって、システムサーバ2とデータベースサーバ3とが同一のハードウェアに含まれていても良いし、データベースサーバ3が外部サーバに含まれていてもよい。また、
図1に示したデータベースサーバ3に含まれる各情報記憶部のブロックの構成は、ハードウェアの構成としてこのように記憶されていることを必ずしも意味するものではなく、機能的にこのような情報が蓄積されていることを示すものである。
【0024】
次に、データベースサーバ3に含まれる各情報記憶部についてさらに詳しく説明する。
【0025】
本システムでは、実行される計算速度の演算結果や計算速度に関する証明書発行についての信頼性を保つために、利用者登録制を採用している。利用者情報記憶部31は、登録された利用者について、識別番号を付与し、識別番号に関連して、氏名、生年月日、資格(生徒であるか、指導者であるか)、メールアドレス、住所等の情報を蓄積し、利用者のログイン処理に使用されると共に、大会や試験に参加した生徒の点数アップロードや成績管理等にも利用される。
【0026】
表示画面情報記憶部32は、端末装置4からのアクセスに対応して、システムサーバ2側から端末装置4に表示させる画面についての情報を蓄積する。
【0027】
試験問題情報記憶部33は、大会・試験で生徒に出題される試験問題をレベル別や種類別に蓄積しており、端末装置4からのメニュー画面における試験問題選択を受けたとき、システムサーバ2が選択された試験問題をダウンロードするためのものである。
【0028】
計算数字量情報記憶部34は、各種目別(かけ算・わり算・見取算(たし算・ひき算)など)に、1つの計算問題をそろばんで計算する場合に計算を行わなければならない数字の量(これを以下「計算数字量」という)を、問題に含まれる数字の桁数の組み合わせに対応して蓄積している。本発明においては、この計算数字量を、計算問題に含まれる数字に0が出現する確率を反映して求めていることに特徴がある。出題される計算問題に含まれる数字中に0が出現する場合、0は計算する数字とみなさない(そろばんの珠を操作しない)という考えに基づいている。なお、計算数字量情報記憶部34で蓄積される計算数字量を求めるために反映する0の出現する確率は、計算問題に含まれる数字の各桁において0が均等に出現するとした確率である。
【0029】
計算数字量修正値情報記憶部35は、計算数字量情報記憶部34で蓄積されている計算数字量が0の平均的な出現確率に基づいているのに対して、各試験問題において実際に0が出現する確率を反映して計算数字量を修正する係数を、それぞれの試験問題に対応して蓄積する。
【0030】
入力点数情報記憶部36は、端末装置4でダウンロードした試験問題により試験を行った生徒の各々の正答数を入力して端末装置4からシステムサーバ2にアップロードした結果、その入力点数情報を生徒の識別番号に対応して蓄積する。
【0031】
計算速度演算結果情報記憶部37は、入力点数情報記憶部36に蓄積された各生徒の入力点数と、計算数字量情報記憶部34に蓄積された、それぞれの試験問題に含まれる計算問題についての計算数字量とから、種目別に計算速度を演算した結果を、試験問題の種類と生徒に関連付けて蓄積する。計算速度は、制限時間内に正答した問題について、各計算問題の桁数の組み合わせに対応した計算数字量に正答数を掛け合わせて合計し、制限時間で割って求めることが出来る。
【0032】
次に、
図2~
図8を用いて、本システムにおける処理の流れについて説明する。
図2は、本システムにおける処理の流れの一例を示す図である。
図2に示す例では、端末装置4はそろばん教室において指導者が使用するパーソナルコンピュータであり、システムサーバ2とネットワークを介して接続可能である。
【0033】
端末装置4から、システムサーバ2のウェブサイトにアクセスすることにより、端末装置4にメニュー画面が送信される(S1)。
図3は、メニュー画面の一例を示しており、△△が主催する計算速度認定試験のトップメニュー画面である。
図3に示すように、当該画面には、会員登録、ログイン、レベル別試験問題ダウンロード、点数ファイルアップロード、等のメニューが表示されている。
【0034】
ユーザーが本システムを利用するためには、ログインが必要であるため、ユーザーが端末装置4でログインメニューを選択すると(T1)、それを受信したシステムサーバ2は、ログイン画面を端末装置4側に送信し(S2)、端末装置4側でパスワード等の利用者識別情報を入力すると、これを受信したシステムサーバ2では、利用者情報記憶部31にアクセスして利用者識別情報を確認(S3)し、ログイン完了となる(S4)。
【0035】
ユーザーは、ログイン完了後、端末装置4に表示されたメニューから、生徒が受ける試験問題を選択すると(T3),それを受信したシステムサーバ2は、試験問題情報記憶部33から選択された試験問題を抽出して端末装置4にダウンロードする(S5)。なお、ダウンロードされる試験問題には、試験問題とは別に正答票も含まれている。
【0036】
図4~
図6は、システムサーバ2からダウンロードされる試験問題1セットの例であり、
図4はかけざん、
図5はわりざん、
図6はみとりざんの計算問題である。このように、通常、そろばんの大会・検定試験で出題される試験問題は、いくつかの種目が組み合わされており、それぞれの種目においても、例えば
図4に示すかけざんの計算問題には50題の計算問題が含まれているが、1問から20問が「一桁の数字×二桁の数字」、21問から30問が「一桁の数字×三桁の数字」、31問から40問が「一桁の数字×四桁の数字」、41問から45問が「一桁の数字×五桁の数字」、46問から48問が「一桁の数字×六桁の数字」、49問から50問が「一桁の数字×七桁の数字」であり、異なる桁数の計算問題が組み合わされている。これは
図5に示すわりざんにおいても同様であり、
図6に示す見取り算では、何桁の数字をいくつ加減するかによって、それぞれ複数の計算問題が組み合わされている。
図4~
図6に示されている試験問題は初級の例であり、試験問題のレベルが上がるにつれ、組み合わされる試験問題もそれぞれレベルアップする。
【0037】
端末装置4にダウンロードされた試験問題は、ユーザーによって出力され(T4)、生徒に配布される。種目ごとに制限時間が定められているので、制限時間に従って生徒に試験問題を行わせ、解答を試験問題に記入させる。このように試験の実施が、本システムを使用せずに紙ベースで行われるのは、一般に行われている大会や検定試験と同様の実施環境で生徒に計算を行わせるためである。そして、試験が終了すると、正答票を見ながら、生徒が記入した各計算問題の解答が正しかった場合に〇をつけ、
図4~
図6の下部に示されている〇のかずの記入欄に、問題のグループ毎に、正答の数がいくつかを記入させる(この正答の数を、以下「点数」という)。ここまでの作業が完了すると、次に端末装置4を使用して、各生徒の解答結果をシステムサーバ2にアップロードすることになる。
【0038】
ユーザーが端末装置4に表示されているメニュー画面(
図3参照)から点数ファイルアップロードを選択すると(T5)、これを受信したシステムサーバ2は、選択されていた試験問題に対応した点数入力用ファイル(入力用画面を含む)を端末装置4に送信する(S6)。
【0039】
図7は、システムサーバ2から表示される点数入力用画面の一部の一例を示している。生徒の計算結果の正答点数をまとめてアップロード可能にするために、生徒毎に点数の入力を表形式で入力できるようになっている。
図7は、
図4で示したかけざんの試験問題の点数の入力に対応した例を示している。システムサーバ2から送信される点数入力用画面は、ダウンロードした試験問題に対応して、その試験問題に含まれる種目すべてについて(例えば、
図4~
図6に示したかけざん・わりざん・みとりざんの点数がそれぞれまとめて)入力出来るようになっており、
図7はその一部のみを例示している。
【0040】
ユーザーが点数入力用画面で点数入力を完了しアップロードボタンを操作すると、入力された点数ファイルがシステムサーバ2にアップロードされ(T6)、入力点数情報記憶部36に一時的に保存される。次に、入力点数情報記憶部36に記憶された生徒毎の入力点数と、計算数字量情報記憶部34に記憶されている、種目別及び計算問題1題に含まれる数字の桁数の組み合わせ別の計算数字量から、種目別に計算速度を演算し、試験問題の種類と生徒に関連付けて計算速度を計算速度演算結果情報記憶部37に蓄積する。具体的には、入力された桁数の組み合わせ別の点数に、それぞれ該当する桁数の組み合わせに対応する計算数字量を掛け合わせ、種目別に合計して制限時間で割ることによって、計算速度を演算する(S7)。例えば、
図7の最上段に入力されている生徒〇〇〇〇のかけざんにおける計算速度は、制限時間が3分なので、以下のようにして求める。
{20×(一桁の数と二桁の数のかけざんの計算数字量)+10×(一桁の数と三桁の数のかけざんの計算数字量)+10×(一桁の数と四桁の数のかけざんの計算数字量)+5×(一桁の数と五桁の数のかけざんの計算数字量)+3×(一桁の数と六桁の数のかけざんの計算数字量)+2×(一桁の数と七桁の数のかけざんの計算数字量)}÷180秒
入力点数のアップロード後に、ユーザーが端末装置4の表示メニューにおいて証明書メニューを選択すると(T7)、これを受信したシステムサーバ2では、例えば点数入力ファイルのアップロード毎に、計算速度演算結果情報記憶部37から必要情報を抽出し、必要事項を記載した証明書を端末装置4にダウンロードする(S8)。端末装置4で表示させた証明書の一例を
図8に示す。
【0041】
なお、
図2のステップS7で求めた計算速度は、0の平均的な出現確率に基づいて求めた計算数字量により演算されているが、計算数字量修正値情報記憶部35に蓄積されている、各試験問題別に実際に0が出現する確率を反映して計算数字量を修正する係数を用いて、それぞれの試験問題の計算速度の演算結果を修正することが可能である。この係数とは、例えば、0の均等な出現確率に基づいて求めた計算数字量を1とした場合の、0の実際の出現率に基づいて求めた計算数字量の比較値をいう。すなわち、ステップS7で求める計算数字量に当該係数を掛けあわせることにより、0の実際の出現率に基づいて計算速度を演算することが出来る。
【0042】
また、以上に述べた処理の流れでは、端末装置4から入力した点数のみをシステムサーバ2に送信し、システムサーバ2側においてすべての計算速度の演算を行っているが、ステップS6において端末装置4にダウンロードする点数入力用ファイルに、表形式で入力した点数からファイルの各入力欄に設定された計算数字量に基づいて計算速度を計算するプログラムを組みこんでダウンロードし、端末装置4側で計算速度を計算してアップロード用ファイルに保存した上で、システムサーバ2側に送信するようにしてもよい。
【0043】
最後に、本発明においては、計算数字量(1つの計算問題をそろばんで計算する場合に計算を行わなければならない数字の量)を、計算問題に含まれる数字に0が出現する確率を反映して求めており、ここでの0の出現する確率は、計算問題に含まれる数字の各桁において0が均等に出現するとした場合の確率であるが、この0が出現する確率をどのような方法で計算数字量に反映するかについては特に限定しない。以下では、その具体的な方法の一例について説明する。
【0044】
まず、たし算・ひき算について、三桁同士のたし算の計算問題「ABC+abc」を例に説明する。ここで、Aとaは百の位の数字、Bとbは十の位の数字、Cとcは一の位の数を表している。
1.三桁同士のたし算で、計算を行う数字を単純に数えると、三桁の数字と三桁の数字を計算するので、3+3=6となる。
2.三桁の数字であることから、双方の数字の百の位の数(すなわち、Aとa)は、0であることはない。すなわち、Aとaの取り得る数字は、1~9であり、必ず計算を行うから、計算を行う数字の数は2である。
3.一方、十の位の数(Bとb)と、一の位の数(Cとc)とは、0が出現する可能性がある。すなわち、Bとb及びCとcの取り得る数字は、0~9であり、0が1/10の確率で出現する。1.で求めた6から、2.で求めた2を引くと、残りは4であり、これに9/10を掛けた数字である3.6が、0が出現する確率(計算をしなくてよい数字が出現する確率)を反映させた数値となる。
4.そうすると、三桁の数同士のたし算の計算数字量は、2+3.6=5.6となる。
5.ひき算の計算数字量も同様の方法で算出できる。
【0045】
次に、かけ算・わり算について、三桁同士のかけ算の計算問題「DEF×def」を例に説明する。ここで、Dとdは百の位の数字、Eとeは十の位の数字、Fとfは一の位の数を表している。そして、かける数をDEF、かけられる数をdefとし、全ての数字を左から右に掛けることとして考える。
【0046】
0~9の自然数同士のかけ算の値は、値が一桁になる場合が23個(数字量1)、値が二桁で一桁目が0となる場合が8個(数字量1)、値が二桁で一桁目が0にならない場合が50個(数字量2)、値が0となる場合が19個(数字量0)、存在する。
【0047】
DEFとdefは三桁の数字であることから、双方の数字の百の位の数(すなわち、Dとd)は、0であることはない。すなわち、Dとdの取り得る数字は、1~9であり、十の位の数(Eとe)と、一の位の数(Fとf)とは、0が出現する可能性がある。すなわち、Eとえ及びFとfの取り得る数字は、0~9である。
【0048】
そうすると、D×dでは、その取り得る値は、9×9で求める81通りとなり、その数字量の平均値は、{(23×1)+(8+1)+(50×2)}÷81=1.617となる。
【0049】
また、D×e、D×f、E×d、F×dでは、その取り得る値は、9×10で求める90通りとなり、その数字量の平均値は、{(23×1)+(8×1)+(50×2)+(9×0)}÷90=1.455となる。
【0050】
さらに、E×e、E×f、F×e、F×fでは、その取り得る値は、10×10で求める100通りとなり、その数字量の平均値は、{(23×1)+(8×1)+(50×2)+(19×0)}÷100=1.310となる。
【0051】
1.三桁同士のかけ算で、計算を行う数字を単純に数えると、D×d、D×e、D×f、E×d、F×d、E×e、E×f、F×e、F×f、すなわち、三桁の数字と三桁の数字を掛けあわせるので、3×3=9となる。
2.D×dにおける計算の数字量は、1.617となる。
3.D×e、D×f、E×d、F×dにおける計算の数字量は、合計で、1.455×4=5.820となる。
4.E×e、E×f、F×e、F×fにおける計算の数字量は、合計で、1.310×4=5.240となる。
5.そうすると、三桁の数同士のかけ算の計算数字量は、1.617+5.820+5.240=12.677となる。
6.わり算の場合は、÷桁=〇桁の検算をすることで、かけ算と同様の方法で算出する。
【符号の説明】
【0052】
2 システムサーバ
3 データベースサーバ
4 端末装置
31 利用者情報記憶部
32 表示画面情報記憶部
33 試験問題情報記憶部
34 計算数字量情報記憶部
35 計算数字量修正値情報記憶部
36 入力点数情報記憶部
37 計算速度演算結果情報記憶部